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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126118
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20230831BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61F13/496 100
A61F13/49 319
A61F13/49 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192264
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2022030404
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花生 裕之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】丹下 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】笹津 嵩礼
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA11
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA06
3B200CA07
3B200CA08
3B200CA09
3B200CB03
3B200DA01
3B200DA21
3B200DA27
3B200DE01
3B200EA09
3B200EA11
3B200EA23
(57)【要約】
【課題】本発明は、腹側から引っ張って剥がしやすいサイドシール部を備える吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】吸収性物品は、股下領域を含む位置に設けられ、着用者の排出液を吸収可能な吸収体と、前身頃領域の外表面を形成する前身頃外装体と、後身頃領域の外表面を形成する後身頃外装体と、前身頃外装体および後身頃外装体の幅方向端部の端部同士を接合するサイドシール部であって、着用者の腹囲を挿通可能な胴回り開口部と着用者の脚を挿通可能な左右の脚回り開口部とを形成するサイドシール部と、胴回り開口部に沿って伸長状態で幅方向に伸縮するように前身頃外装体および後身頃外装体に接着された第1伸縮部材と、を備え、胴回り開口部を幅方向に最大長まで10秒間引っ張った後、外力を外して1分後の状態において、サイドシール部の長手方向の両端部のうち少なくとも一方は、前身頃領域側に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用状態において着用者の腹側に位置する前身頃領域、股下部に位置する股下領域、及び背側に位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、
前記股下領域を含む位置に設けられ、前記着用者の排出液を吸収可能な吸収体と、
前記前身頃領域の外表面を形成する前身頃外装体と、
前記後身頃領域の外表面を形成する後身頃外装体と、
前記前身頃外装体および前記後身頃外装体の幅方向端部の端部同士を接合するサイドシール部であって、前記着用者の腹囲を挿通可能な胴回り開口部と前記着用者の脚を挿通可能な左右の脚回り開口部とを形成するサイドシール部と、
前記胴回り開口部に沿って伸長状態で前記幅方向に伸縮するように前記前身頃外装体および前記後身頃外装体に接着された第1伸縮部材と、
を備え、
前記胴回り開口部を前記幅方向に最大長まで10秒間引っ張った後、外力を外して1分後の状態において、前記サイドシール部の前記長手方向の両端部のうち少なくとも一方は、前記前身頃領域側に位置する、
吸収性物品。
【請求項2】
前記前身頃外装体は、前記後身頃外装体よりも前記幅方向の長さが短い、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記前身頃外装体と前記後身頃外装体は、前記幅方向の長さが実質的に同じであり、
前記前身頃領域側において、一方の前記脚回り開口部に沿い、前記股下領域を横切るように設けられ、他方の前記脚回り開口部に沿うように延在し、伸長状態で前記前身頃外装体に接着された第2伸縮部材と、
前記後身頃領域側において、左右の前記脚回り開口部の各々に沿うように伸長状態で前記後身頃外装体に接着された一対の第3伸縮部材と、
を備え、
前記第2伸縮部材は、前記第3伸縮部材よりもドラフト率が高い、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記前身頃領域側において、一方の前記脚回り開口部に沿い、前記股下領域を横切るように設けられ、他方の前記脚回り開口部に沿うように延在し、伸長状態で前記前身頃外装体に接着された第2伸縮部材と、
前記後身頃領域側において、左右の前記脚回り開口部の各々に沿うように伸長状態で前記後身頃外装体に接着された一対の第3伸縮部材と、
を備え、
前記第3伸縮部材は、厚み方向に見て前記吸収体と重なる領域の少なくとも一部において収縮力を有さない、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記前身頃外装体と前記後身頃外装体は、前記幅方向の長さが実質的に同じであり、
前記前身頃領域側において、一方の前記脚回り開口部に沿い、前記股下領域を横切るように設けられ、他方の前記脚回り開口部に沿うように延在し、伸長状態で前記前身頃外装体に接着された第2伸縮部材と、
前記後身頃領域側において、左右の前記脚回り開口部の各々に沿うように伸長状態で前記後身頃外装体に接着された一対の第3伸縮部材と、
を備え、
前記第2伸縮部材は、前記第3伸縮部材よりも前記幅方向の成分が大きい、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記サイドシール部は、前記股下領域側の端部が前記後身頃領域側よりも前記前身頃領域側に配置されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記前身頃領域側において、一方の前記脚回り開口部に沿い、前記股下領域を前記幅方向に横切るように設けられ、他方の前記脚回り開口部に沿うように延在し、伸長状態で前記前身頃外装体に接着された第2伸縮部材と、
前記第2伸縮部材と前記吸収体とが重なる前記股下部の重なり領域において、前記吸収体と前記前身頃外装体とが非接着である非接着領域と、
前記非接着領域よりも前記後身頃領域側に配置され、前記前身頃外装体と前記吸収体を含む内装体を接着する接着部と、
を備え、
前記接着部は、前記幅方向に延在しつつ前記内装体の前記幅方向端部よりも前記幅方向の内側に設けられ、前記長手方向で互いに離間して設けられた複数の線状接着部を有する、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、パンツ型の使い捨ておむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-115459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パンツ型の使い捨ておむつは、着用者から脱がせる場合、または着用者自信が脱ぐ場合にサイドシール部を剥がすことで、着用者の股下から取り外すことが想定されている。一般的には、サイドシール部は、おむつの腹側が上を向いた状態で腹側から引っ張っては剥がされる。しかしなら、腹側から引っ張って剥がしやすいサイドシール部を実現する技術は具体的に提案されていない。
【0005】
本発明は、腹側から引っ張って剥がしやすいサイドシール部を備える吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、サイドシール部の長手方向の両端部のうち少なくとも一方を前記前身頃領域側に位置するように構成した。
【0007】
詳細には、本発明は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った長さを有し、着用状態において着用者の腹側に位置する前身頃領域、股下部に位置する股下領域、及び背側に位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、前記股下領域を含む位置に設けられ、前記着用者の排出液を吸収可能な吸収体と、前記前身頃領域の外表面を形成する前身頃外装体と、前記後身頃領域の外表面を形成する後身頃外装体と、前記前身頃外装体および前記後身頃外装体の幅方向端部の端部同士を接合するサイドシール部であって、前記着用者の腹囲を挿通可能な胴回り開口部と前記着用者の脚を挿通可能な左右の脚回り開口部とを形成するサイドシール部と、前記胴回り開口部に沿って伸長状態で前記幅方向に伸縮するように前記前身頃外装体および前記後身頃外装体に接着された第1伸縮部材と、を備え、前記胴回り開口部を前記幅方向に最大長まで10秒間引っ張った後、外力を外して1分後の状態において、前記サイドシール部の前記長手方向の両端部のうち少なくとも一方は、前記前身頃領域側に位置する。
【0008】
上記の吸収性物品において、前記前身頃外装体は、前記後身頃外装体よりも前記幅方向の長さが短くてもよい。
【0009】
上記の吸収性物品において、前記前身頃外装体と前記後身頃外装体は、前記幅方向の長さが実質的に同じであり、前記前身頃領域側において、一方の前記脚回り開口部に沿い、前記股下領域を横切るように設けられ、他方の前記脚回り開口部に沿うように延在し、伸長状態で前記前身頃外装体に接着された第2伸縮部材と、前記後身頃領域側において、左右の前記脚回り開口部の各々に沿うように伸長状態で前記後身頃外装体に接着された一対
の第3伸縮部材と、を備え、前記第2伸縮部材は、前記第3伸縮部材よりもドラフト率が高くてもよい。
【0010】
上記の吸収性物品は、前記前身頃領域側において、一方の前記脚回り開口部に沿い、前記股下領域を横切るように設けられ、他方の前記脚回り開口部に沿うように延在し、伸長状態で前記前身頃外装体に接着された第2伸縮部材と、前記後身頃領域側において、左右の前記脚回り開口部の各々に沿うように伸長状態で前記後身頃外装体に接着された一対の第3伸縮部材と、を備え、前記第3伸縮部材は、厚み方向に見て前記吸収体と重なる領域の少なくとも一部において収縮力を有さなくてもよい。
【0011】
上記の吸収性物品において、前記前身頃外装体と前記後身頃外装体は、前記幅方向の長さが実質的に同じであり、前記前身頃領域側において、一方の前記脚回り開口部に沿い、前記股下領域を横切るように設けられ、他方の前記脚回り開口部に沿うように延在し、伸長状態で前記前身頃外装体に接着された第2伸縮部材と、前記後身頃領域側において、左右の前記脚回り開口部の各々に沿うように伸長状態で前記後身頃外装体に接着された一対の第3伸縮部材と、を備え、前記第2伸縮部材は、前記第3伸縮部材よりも前記幅方向の成分が大きくてもよい。
【0012】
上記の吸収性物品において、前記サイドシール部は、前記股下領域側の端部が前記後身頃領域側よりも前記前身頃領域側に配置されていてもよい。
【0013】
上記の吸収性物品は、前記前身頃領域側において、一方の前記脚回り開口部に沿い、前記股下領域を前記幅方向に横切るように設けられ、他方の前記脚回り開口部に沿うように延在し、伸長状態で前記前身頃外装体に接着された第2伸縮部材と、前記第2伸縮部材と前記吸収体とが重なる前記股下部の重なり領域において、前記吸収体と前記前身頃外装体とが非接着である非接着領域と、前記非接着領域よりも前記後身頃領域側に配置され、前記前身頃外装体と前記吸収体を含む内装体を接着する接着部と、を備え、前記接着部は、前記幅方向に延在しつつ前記内装体の前記幅方向端部よりも前記幅方向の内側に設けられ、前記長手方向で互いに離間して設けられた複数の線状接着部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、腹側から引っ張って剥がしやすいサイドシール部を備える吸収性物品を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態1に係るおむつの斜視図の一例である。
図2図2は、実施形態1に係るおむつの分解斜視図の一例である。
図3図3は、実施形態1に係るおむつの展開図の一例である。
図4図4は、実施形態1の実施例1に係るおむつを展開図の一例である。
図5図5は、実施形態1の実施例5に係るおむつを展開図の一例である。
図6図6は、実施形態2に係るおむつの分解斜視図の一例である。
図7図7は、実施形態2に係るおむつの展開図の一例である。
図8図8は、実施形態3に係るおむつの分解斜視図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下に、図面を参照して本発明の実施形態1に係るおむつについて説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0017】
図1は、実施形態1に係る大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)の斜視図の一例である。おむつにおいて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向(前後方向ともいう)とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、肌面側の反対側を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向(左右方向ともいう)とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った長さとを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0018】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲を挿通可能な胴回り開口部と、着用者の左右の各下肢を挿通可能な左右一対の脚回り開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示する。また、本実施形態では、大人用のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、子供用のパンツ型使い捨ておむつが含まれる。
【0019】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下部に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴回りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴回りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁とを互いに接合するサイドシール部3SLと、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁とを互いに接合するサイドシール部3SRとが設けられている。サイドシール部3SL,3SRによって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部2T(本開示の「胴回り開口部」の一例)が形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されている。サイドシール部3SL,3SRによって、おむつ1には、左右の下肢開口部2L,2Rが形成されているといえる。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。なお、左下肢開口部2Lおよび右下肢開口部2Rは、本開示の「左右の脚回り開口部」の一例である。
【0020】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BR(図1において不図示)が設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rおよびタミーギャザー12が設けられている。また、着用者の脚の付け根を取り巻く位置には、レグギャザー3LF、3LR(図1において
レグギャザー3LRは不図示)が設けられる。なお、レグギャザー3LFは、前身頃領域1Fに設けられ、レグギャザー3LRは、後身頃領域1Rに設けられる。そして、図1では、レグギャザー3LFのみ例示されている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、伸縮部材の弾性力によって収縮することで着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LF、3LRは、着用者の脚の付け根とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出液は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0021】
なお、おむつ1は、図示しないインナーパッドと組み合わせて使用することができる。インナーパッドは、吸収体を備える略長方形の吸収性物品であり、着用者の排出液を吸収する。おむつ1とインナーパッドとを組み合わせて使用する場合、おむつ1の肌面側に、着用者の排出孔と当接するようにインナーパッドを置く。排出液は、まずインナーパッドに吸収され、インナーパッドで吸収できなかった排出液のみがおむつ1の吸収体に到達し、更に吸収される。このため、排出液の量が多い場合でも、排出液がおむつ1から漏出するのを防ぐことができる。また、排出液の量が少なく、インナーパッドで全て吸収できる場合には、排出液が排出されてもインナーパッドのみを交換すればよいので、介助コストを軽減できる。また、おむつ1の交換頻度を低くし、おむつ1を長時間使用できる。
【0022】
図2は、実施形態1に係るおむつ1の分解斜視図の一例である。おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5とを有する。カバーシート4とインナーカバーシート5は、貼り合わされておむつ1の外表面を形成する略砂時計形状(瓢箪形状)のシートであり、前身頃領域1F側の端部と後身頃領域1R側の端部以外は同形状でほぼ同じ大きさである。着用者に着用された状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側、インナーカバーシート5は着用者の肌面側に積層されている。カバーシート4とインナーカバーシート5の間には、ウェストギャザー3R、タミーギャザー12,およびレグギャザー3LF、3LRを形成するための伸縮部材が設けられている。本実施形態では、伸縮部材として糸ゴムが採用されている。なお、伸縮部材としては、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。
【0023】
カバーシート4とインナーカバーシート5は、例えば、排出物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。以下、吸収体8および吸収体8にバックシート6、トップシート9、サイドシート10L,10Rを組み合わせたものを内装体とし、内装体に対応する概念として、糸ゴムが配置されたカバーシート4とインナーカバーシート5とを合わせて外装体(本開示の「外装体」の一例)と表現することがある。
【0024】
おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5の着用者側の面において順に積層されるバックシート6と、吸収体8と、トップシート9とを有する。バックシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略長方形のシートである。吸収体8、トップシート9は、何れもバックシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がバックシート6の長手方向と一致する状態で、バックシート6に対して順に積層されている。バックシート6は、排出物の漏れを抑制するために非透液性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、バックシート6には、微小な孔が設けられている。この孔は、透液を防止しつつ通気可能である。孔は、例えば吸収体8と重なる領域に設けられている。また、トップシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が着用された状態において、着用者から排出された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8
に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していてもよい。
【0025】
吸収体8は、吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。吸収コア8cは括れ部を有する略砂時計型である。吸収コア8cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸収材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排出された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。吸収コア8cは、目的に応じた適宜の形状を採ることができる。吸収コア8cの形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、その他各種の形状が挙げられる。なお、本実施形態では、1枚のマットで吸収コア8cが形成されているが、吸収コア8cは複数枚のマットで形成されていてもよい。
【0026】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、上述の吸収コア8cのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア8cの型崩れが抑制される。コアラップシート7は、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コア8cの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシート6、トップシート9)に包まれる構造になっていてもよい。なお、吸収体8はバックシート6とトップシート9に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート7を設けないこともできる。
【0027】
バックシート6、吸収体8、トップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、トップシート9を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、トップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0028】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って伸長された状態で接着される。よって、カバーシート4の、前身頃領域1Fの左側の縁となる縁4F4と、後身頃領域1Rの左側の縁となる縁4R4とが互いに接合されてサイドシール部3SL(図1参照)が形成され、且つ、カバーシート4の、前身頃領域1Fの右側の縁となる縁4F5と、後身頃領域1Rの右側の縁となる縁4R5とが互いに接合されてサイドシール部3SR(図1参照)が形成されることにより、図1に示したような完成状態のおむつ1になると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。
【0029】
ここで、サイドシート10L、10Rは、立体ギャザー3BL、3BRが形成された場
合に立体ギャザー3BL、3BRの夫々の起立線間の幅方向の間隔は、インナーパッドが入る程度に設けられる。なお、縁4F4及び縁4R4、縁4F5及び縁4R5の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0030】
更に、おむつ1は、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rを挟んで、カバーシート4の前身頃領域1Fにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Fと、カバーシート4の後身頃領域1Rにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Rとを有する。エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4、インナーカバーシート5に重ねられる短冊状のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴回り当接部分においてカバーシート4とインナーカバーシート5を補強する。また、エンドシート11F,11Rには、それぞれ接着剤が塗布されており、当該接着剤によりインナーカバーシート5と接着している。エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の端が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。
【0031】
図3は、実施形態1に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図の一例である。図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図である。
【0032】
図3に示されるように、レグギャザー3LFを形成する糸ゴム4F3(本開示の「第2伸縮部材」の一例)は、おむつ1が組み立てられた場合に着用者の脚が入る右下肢開口部2Rおよび左下肢開口部2Lの前身頃領域1F側の縁に沿うように設けられる。糸ゴム4F3は、カバーシート4とインナーカバーシート5に伸長状態で接着されている。そして、糸ゴム4F3は、前身頃側の股下領域1Bにおいて、左右方向に横切るように設けられる。このように左右方向に横断するように糸ゴム4F3が設けられる場所では、おむつ1の厚み方向において糸ゴム4F3と吸収体8とは重なっている。また、このような横断領域の幅方向中央部は、おむつ1が着用された場合の着用者の尿道口に対応する領域となる。なお、厚み方向において吸収体8が重なっている領域において、糸ゴム4F3の配置形態は図3に示されるように横断することに限定されない。糸ゴム4F3の延在方向が、幅方向の成分を有していればよく、好ましくは糸ゴム4F3の延在方向の幅方向成分が長手方向成分よりも大きければよい。
【0033】
一方、レグギャザー3LRを形成する糸ゴム4R3(本開示の「第3伸縮部材」の一例)は、右下肢開口部2Rおよび左下肢開口部2Lの後身頃領域1R側の縁に沿うように設けられる。糸ゴム4R3は、着用者の背側において、左右の下肢開口部2R,2Lに沿って吸収体8よりもおむつ1の幅方向外側に延在している。糸ゴム4R3は、カバーシート4とインナーカバーシート5に伸長状態で接着されている。そして、後身頃側の股下領域1Bにおいて、糸ゴム4R3の先端部は幅方向を向いている。また、糸ゴム4R3は、幅方向の中央部において切断されており、左側の糸ゴム4R3と右側の糸ゴム4R3とは繋がっていない。
【0034】
また、インナーカバーシート5と吸収体8とは前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけてバックシート6を介して接着剤で適宜接着されている。しかしながら、図3に示されるように前身頃領域1Fにおいて糸ゴム4F3が横断する領域では、インナーカバーシート5と吸収体8とは非接着とされる(非接着領域15とする)。実際には、非接着領域15においては、インナーカバーシート5とバックシート6が非接着とされている。本実施
形態では、糸ゴム4F3と吸収体8とが重なる股下領域1Bの重なり領域の全域に非接着領域15が設けられている。
【0035】
カバーシート4は、図2に記載の折り返し線4FF、4RFにおいて一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4の前身頃領域1Fに糸ゴム4F1が伸長された状態で接着され、カバーシート4の後身頃領域1Rに糸ゴム4R1が伸長された状態で接着されることで形成される。糸ゴム4F1,4F2は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F2の順に設けられている。同様にして、タミーギャザー12は、カバーシート4の前身頃領域1Fに糸ゴム4F2が伸長された状態で接着され、カバーシート4の後身頃領域1Rに糸ゴム4R2が伸長された状態で接着されることで形成される。糸ゴム4R1,4R2も、糸ゴム4F1,4F2と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R2の順に設けられている。
【0036】
このため、糸ゴム4F1,4F2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1,4R2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。よって、縁4F4と縁4R4が互いに接合され、縁4F5と縁4R5が互いに接合されると、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴回り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。糸ゴム4F2,糸ゴム4R2は、その股下領域1B側の一部において、吸収体8と重畳する。なお、糸ゴム4F1,4F2、糸ゴム4R1,4R2は、本開示における第1伸縮部材の一例である。
【0037】
糸ゴム4F1,4R1は、図1に示した前身頃領域1F,後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って左右方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2,4R2は、所定の間隔を空けて平行に設けられている。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F2,4R2よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出液が漏出するのを防ぐ機能を担う。糸ゴム4F2,4R2は、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。
【0038】
カバーシート4は、折り返し線4FF、4RFで折り返されて糸ゴム4F1,糸ゴム4R1の配置領域まで延在し、その折り返された部分で糸ゴム4F1、糸ゴム4R1の配置領域を補強している。エンドシート11F,11R(図2参照)は、折り返し線4FF、4RFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域に設けられ糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域を補強している。
【0039】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、エンドシート11Fは、バックシート6の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート4の一部分に触れる状態で重ねられる。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、エンドシート11F,11R、インナーカバーシート5、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0040】
ここで、本実施形態に係るおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつである。パンツ型のおむつ1は、着用者から脱がせる場合に、または着用者自信が脱ぐ場合に、図1に示すサイドシール部3SL、3SRを剥がすことで、着用者の股下から取り外すことが想定されている。一般的には、サイドシール部3SL、3SRは、おむつ1の腹側が上を向いた状態で、腹側(前身頃領域側)から引っ張って剥がすことが想定される。そのため、本実施形態に係るおむつ1は、定常状態において、サイドシール部3SL,3SRの長手方向の両端部のうちの少なくとも一方は、前身頃領域1F側に位置する。定常状態とは、例えば、胴開口部2Tを幅方向に最大長まで10秒間引っ張った後、外力を外して1分後の状態のことである。定常状態は、着用状態におけるおむつ1の状態とみなすことができる。また、定常状態とは、おむつ1が股下領域1Bの幅方向の折り線でたたまれている状態(通常、パッケージに収納されている状態)であってもよい。
【0041】
本実施形態に係るおむつ1は、サイドシール部3SL、3SRが前身頃領域1F側に位置しているので、サイドシール部3SL,3SRを腹側と背側に剥がす際に、サイドシール部3SL,3SRを剥がす始点を視認し易く、着用状態のまま当該始点の背側および腹側の外装体をつまみ、腹側から引っ張って剥がすことが可能となる。このように、本実施形態に係るおむつ1は、腹側から引っ張って剥がしやすいサイドシール部3SL,3SRを備えることができる。
【0042】
<実施例1>
次に、本実施形態の実施例1について説明する。図4は、本実施例に係るおむつ1を展開及び伸長した状態のおむつ1を模式的に示す平面図である。本実施例では、定常状態において、サイドシール部3SL、3SRを前身頃領域1F側に配置するために、前身頃領域1F側の外装体を、後身頃領域1R側の外装体よりも幅方向の長さを短く形成する。これにより、サイドシール部3SL、3SRを形成すると、サイドシール部3SL、3SRを前身頃領域1F側に配置することができる。
【0043】
<実施例2>
次に、本実施形態の実施例2について説明する。本実施例では、糸ゴム4F3を糸ゴム4R3のドラフト率よりも高くすることで、サイドシール部3SL、3SRを前身頃領域1F側に配置する。ここで、糸ゴムのドラフト率(%)は、糸ゴムをおむつに組み込んだ場合の長さ(カット長)を当該糸ゴムの自然長で除して100分率で表したものである。糸ゴムは、収縮力を発揮するために伸長状態でおむつ1に組み込まれる。このため、ドラフト率は、100%よりも大きな値となる。
【0044】
糸ゴムは、ドラフト率を高くすることで、弾性力を大きくすることができる。前身頃領域1F側に配置された糸ゴム4F3の弾性力を、後身頃領域1R側に配置された糸ゴム4R3の弾性力よりも大きくすることで、サイドシール部3SL、3SRを前身頃領域1F側に引っ張ることができ、サイドシール部3SL、3SRを前身頃領域1F側に配置することができる。
【0045】
<実施例3>
次に、本実施形態の実施例3について説明する。本実施例では、糸ゴム4F3を股下領域1Bで切断せずに糸ゴム4F3が股下領域1Bを幅方向に横断するように設け、糸ゴム4R3を股下領域1Bの中央で切断して糸ゴム4R3が、厚み方向に見て吸収体8と重なる領域において収縮力を有さないようにすることで、前身頃領域1F側を後身頃領域1R側よりも外装体を幅方向中央側に収縮させ、サイドシール部3SL,3SRの長手方向の股下側端部を前身頃領域1F側に配置させることができる。なお、本実施例において、前身頃領域1F側の外装体と後身頃領域1R側の外装体は、おむつ1の幅方向の長さが実質的に同じである。
【0046】
糸ゴム4R3は、厚み方向に見て吸収体8と重なる領域の少なくとも一部において収縮力を有さないように、左右の糸ゴム4R3を配置してもよい。例えば、糸ゴム4R3は、吸収体8と重なる領域において、断続的に収縮力を有していたり、幅方向中央部は収縮力を有しないが、当該中央部の外側では収縮力を有していたりしてもよい。例えば、吸収体8と重なる領域において糸ゴム4R3を断続的に配置することで、当該領域で断続的に収縮力を有するものとできる。
【0047】
ここで、左右の糸ゴム4R3間の長さ(以下、「糸ゴム4R3間の幅」とする)を調整して、サイドシール部3SL,3SRが前身頃領域1F側に配置できることを確認した。糸ゴム4F3,4R3の条件は以下の通りとした。なお、糸ゴム4R3間の幅とは、左右の糸ゴム4R3の間であって糸ゴム4R3が存在していない部分の幅である。
(1)糸ゴム4F3,4R3の本数は、2本、3本、4本、5本とした。
(2)糸ゴム4F3,4R3の太さは、620dtex、780dtex、940dtex、1240dtexとした。
(3)糸ゴム4F3,4R3のドラフト率(%)は、160%、180%、200%、220%、240%、260%とした。なお、糸ゴムのドラフト率(%)は、糸ゴムをおむつに組み込んだ場合の長さ(カット長)を当該糸ゴムの自然長で除して100分率で表したものである。糸ゴム4F3,4R3は、収縮力を発揮するために伸長状態でおむつ1に組み込まれる。このため、ドラフト率は、100%よりも大きな値となる。
(1)~(3)の条件の全ての組み合わせを確認した結果を以下の表1に示す。なお、全条件において、左右の糸ゴム4R3間における吸収体8の幅は、コアラップシート7の幅を180mmとし、吸収コア8cの幅を100mmとした。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示す通り、糸ゴム4R3間の幅を40mm~200mmに設定することで、サイドシール部3SL,3SRの位置を腹側とすることができる。なお、糸ゴム4R3間の幅が狭い場合には、糸ゴム4R3は、厚み方向に見て吸収体8と重なる領域の少なくとも一部において収縮力を有さないということになる。糸ゴム4R3の幅方向内側は、厚み方向に視て吸収コア8cと重なる位置まで延在していてもよい。
【0050】
<実施例4>
次に、本実施形態の実施例4について説明する。本実施例では、糸ゴム4F3は、糸ゴム4R3よりもおむつ1の幅方向成分が大きい。これにより、前身頃領域1F側を後身頃領域1R側よりも外装体を幅方向中央側に収縮させ、サイドシール部3SL,3SRの長手方向の股下側端部を前身頃領域1F側に配置させることができる。
【0051】
なお、サイドシール部3SL,3SRの長手方向の両端部のうちの、下側(股下側)の端部を後身頃領域1R側よりも前身頃領域1F側に配置することが好ましい。これは、着
用者自信がサイドシール部3SL,3SRを剥がす場合、サイドシール部3SL,3SRの下側端部を掴むと、腕を伸ばした状態から曲げる状態に動作させることで、下から上にサイドシール部3SL,3SRを剥がせるからである。このように構成することで、被介護者である老人(高齢者)でもサイドシール部3SL,3SRを剥がし易くなる。逆に、サイドシール部3SL,3SRの長手方向の両端部のうちの、上側の端部を後身頃領域1R側よりも前身頃領域1F側に配置すると、着用者自信がサイドシール部3SL,3SRを剥がす場合、サイドシール部3SL,3SRの上側端部は下側端部よりも持ちやすいが、サイドシール部3SL,3SRの上側端部をつかむと、サイドシール部3SL,3SRを剥がす際に腕を折り曲げた状態から伸ばす状態に動作させる必要があり、サイドシール部3SL,3SRを剥がし難くなる。
【0052】
なお、本実施形態では、前身頃領域側の外装体(前身頃外装体)と後身頃領域側の外装体(後身頃外装体)は、一体的に形成されているが、前身頃領域側の外装体と後身頃領域側の外装体とが、別体で設けられていてもよい。
【0053】
<実施例5>
次に本実施形態の実施例5について説明する。図5は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図である。なお、上述した実施形態1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0054】
糸ゴム4F3が前身頃側の股下領域1Bにおいて左右に横断する領域では、インナーカバーシート5と吸収体8とは非接着とされる(非接着領域15とする)。実際には、非接着領域15においては、インナーカバーシート5とバックシート6が非接着とされている。本実施形態では、糸ゴム4F3と吸収体8とが重なる股下領域1Bの重なり領域の全域に非接着領域15が設けられている。非接着領域15は、バックシート6を含む内装体の幅方向の全域に亘って設けられている。
【0055】
また、図5では、内装体と外装体との接着部を図示している。おむつ1は、内装体と外装体を接着する接着部として、第1接着部30、第2接着部31(本開示の「接着部」の一例)、第3接着部32を備えている。
【0056】
第1接着部30は、非接着領域15よりも前側に配置されており、おむつ1の幅方向に延在しつつ、おむつ1の長手方向で互いに離間して設けられた複数の線状接着部30Aを有する。複数の線状接着部30Aは、外装体と内装体の間であるインナーカバーシート5とバックシート6の間にホットメルト接着剤が塗布されることによって形成されている。なお、複数の線状接着部30Aは、内装体の全幅よりも少し狭い幅に形成されている。
【0057】
第2接着部31は、非接着領域15よりも後側(股下側)に配置されており、おむつ1の幅方向に延在しつつ、おむつ1の長手方向で互いに離間して設けられた複数の線状接着部31Aを有する。第2接着部31は、股下領域1Bにおいて、外装体と内装体を接着する接着部である。複数の線状接着部31Aは、外装体と内装体の間であるインナーカバーシート5とバックシート6の間にホットメルト接着剤が塗布されることによって形成されている。なお、複数の線状接着部31Aは、内装体の全幅よりも狭い幅に形成されており、線状接着部31Aの幅方向外側には、内装体と外装体が非接着である非接着領域16L,16Rが設けられている。
【0058】
第3接着部32は、第2接着部31よりも後側に配置されており、おむつ1の幅方向に延在しつつ、おむつ1の長手方向で互いに離間して設けられた複数の線状接着部32Aを有する。複数の線状接着部32Aは、外装体と内装体の間であるインナーカバーシート5とバックシート6の間にホットメルト接着剤が塗布されることによって形成されている。
なお、複数の線状接着部32Aは、内装体の全幅よりも少し狭い幅に形成されている。
【0059】
本実施例に係るおむつ1は、非接着領域15と、両側に非接着領域16L,16Rが設けられた第2接着部31を備えることによって、左右に横切る部位の糸ゴム4F3で外装体を幅方向の内側に収縮させつつ、非接着領域15と線状接着部31Aの境界で外装体を非肌面側(下方)に折り曲げる。また、非接着領域15の股下側には第2接着部31が設けられているため、非接着領域15の股下側の外装体が過度に収縮するのを抑制しつつ、非接着領域16L,16R内の外装体を糸ゴム4F3の収縮力で幅方向内側に収縮させることができる。よって、おむつ1は、前身頃領域1F側において、外装体の幅方向端部に形成されたサイドシール部3SL,3SR(図1参照)を幅方向内側に引っ張り、サイドシール部3SL,3SRの長手方向の股下側端部を前身頃領域1F側に配置させることができる。
【0060】
また、非接着領域15における外装体が糸ゴム4F3によって前身頃領域1F側に持ち上げられ、糸ゴム4F3がおむつ1の幅方向内側に収縮することで、非接着領域15における吸収体8よりも幅方向外側の外装体(図5に示す領域55L,55R)が吸収体8と重なる範囲に収まるか、少なくとも、糸ゴム4F3を設けなかった場合よりも吸収体8よりも幅方向外側への外装体のはみ出し量が少なくなる。例えば、糸ゴム4F3によって前身頃領域1F側に持ち上げられる非接着領域15上の吸収体8の幅が持ち上げられる前の位置よりも広ければ、より確実に外装体が吸収体8の幅内に収まりやすくなる。これにより、おむつ1の着用時に、左右の下肢開口部2L,2Rが外装体によって塞がれにくくなる。よって、着用者が自力でおむつ1を履く場合には胴開口部2Tから左右の下肢開口部2L,2Rが見やすくなり、介護者等が着用者におむつ1を履かせる場合には外部から左右の下肢開口部2L,2Rを見つけやすくなるため、おむつ1の着用が容易となる。また、着用者が左右の下肢開口部2L,2Rに足を入れる際に、親指が外装体に引っかかり難くなる。
【0061】
ここで、非接着領域15と第2接着部31との配置関係について説明する。複数の線状接着部31Aは、非接着領域15の股下側に配置されている。非接着領域15の非肌面側において糸ゴム4F3が収縮し、外装体を幅方向の内側に引っ張る。非接着領域15の股下側において、外装体と、バックシート6および吸収体8を含む内装体とは、線状接着部31Aによってバックシート6の幅方向中心から所定幅で接着されていることから、最も前側の線状接着部31Aを起点に外装体が非肌面側に折れ曲がる。この状態のおむつ1を着用すると、股下領域1Bの幅方向端部は着用者の内ももに沿った状態となる。おむつ1は、股下領域1Bにおいて線状接着部31Aが長手方向に互いに離間することで、肌当たりを柔らかくすることができ、さらに、股下領域1Bの幅方向端部を内ももに沿わせた状態とし、外装体の肌への食い込みを抑止する。これにより、おむつ1は、股下領域1Bにおける着用感の低下を抑制できる。また、おむつ1の製造工程において、非接着領域16L,16Rの幅方向端部では、外装体を切断することによって外装体が毛羽立ち嵩高になっている。これにより、おむつ1は、股下領域1Bの幅方向端部を内ももに沿わせた状態とした場合に、外装体の肌当たりを柔らかくすることができる。
【0062】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るおむつ1について説明する。図6は、実施形態2に係るおむつ1の分解斜視図の一例である。なお、上述した実施形態1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0063】
本実施形態に係るおむつ1では、バックシート6とコアラップシート7の間には、前身頃領域1Fから股下領域1Bにかけて長手方向に伸長状態で糸ゴム4F7が幅方向中央部に設けられている。糸ゴム4F7は、バックシート6に接着されており、バックシート6
を介してインナーカバーシート5およびカバーシート4に接着されている。糸ゴム4F7は、インナーカバーシート5およびカバーシート4を長手方向に収縮される力を発揮する。なお、糸ゴム4F7を設ける領域は、吸収体8とインナーカバーシート5が非接着とされている領域であることが好ましい。なお、糸ゴム4F7は、カバーシート4とインナーカバーシート5との間に設けられてもよい。
【0064】
また、糸ゴム4F7の肌面側には糸ゴムカバーシート13が配置されている。糸ゴムカバーシート13は、糸ゴム4F7を肌面側から覆ってバックシート6に接着されている。糸ゴムカバーシート13は、糸ゴム4F7と吸収体8の間に配置されている。また、糸ゴムカバーシート13は、吸収体8のコアラップシート7とは全体が接着されていない。糸ゴムカバーシート13は、吸収体8とバックシート6の間に配置され、バックシート6に接着され且つ吸収体8のコアラップシート7と一部が非接着である。これにより、吸収体8に糸ゴム4F7の弾性力(収縮力)が作用しすぎるのを防ぎ、吸収体8が過度に変形するのを防ぐことができる。なお、糸ゴム4F7に代えて帯状の伸縮部材を用いる場合は、糸ゴムカバーシート13を設けることなく、伸縮部材とコアラップシート7を一部で非接着とすることができる。また、本実施形態では、糸ゴムカバーシート13は、バックシート6と同じ長さで形成されている。なお、糸ゴムカバーシート13は、糸ゴム4F7の延在領域に合わせた長さで形成されていてもよいし、糸ゴム4F7の延在領域より長く且つバックシート6よりも短く形成されていてもよい。なお、糸ゴムカバーシート13は、吸収体8と一部が非接着である。糸ゴムカバーシート13は、吸収体8と全体が非接着であってもよい。
【0065】
図7は、実施形態2に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図の一例である。図7(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。図7(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図である。
【0066】
図7に示されるように、糸ゴム4F7は、前身頃領域1Fから股下領域1Bにかけて長手方向に伸長した状態でバックシート6とコアラップシート7との間の幅方向中央部に設けられる。また、吸収体8は、糸ゴム4F7を囲むように線状に圧搾されており、図7ではライン14として表示される。ライン14は、後側の端部では幅方向に設けられる。また、ライン14は、前身頃領域1F側の端部では、幅方向の外側に折れ曲がっている。なお、このような吸収体8の圧搾は、例えばローラによってエンボス加工されることで実現される。
【0067】
本実施形態に係るおむつ1では、図7に示されるように前身頃領域1Fから股下領域1Bにかけて、長手方向に伸長した状態で糸ゴム4F7がバックシート6とコアラップシート7(吸収体8の一部)との間に設けられている。よって、カバーシート4およびインナーカバーシート5が長手方向に収縮される。また、吸収体8には圧搾領域であるライン14が設けられているため、ライン14が折れ曲がることで吸収体8が肌面側に凸となることが誘導される。よって、吸収体8は尿道口に確実に当接可能となる。よって、着用者から排泄された尿がおむつ1の外部に漏出することを防止できる。なお、糸ゴム4F7が吸収体8に設けられている場合も同様の効果を奏する。
【0068】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係るおむつ1について説明する。図8は、実施形態3に係るおむつの分解斜視図の一例である。なお、上述した実施形態1の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0069】
本実施形態では、吸収体8は複数のマットを有する。吸収体8は、複数のマットからな
る吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。なお、本実施形態では、図8に示されるように吸収コア8cは上層吸収マット8aと下層吸収マット8bを有する。上層吸収マット8aは、括れ部を有する略砂時計型であり、下層吸収マット8bは矩形状である。また、下層吸収マット8bの幅は、上層吸収マット8aの括れ部の幅と略同一である。このように、吸収マットを2層積層して吸収コア8cを形成してもよい。
【0070】
以上で開示した実施形態や変形例は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0071】
1B :股下領域
1F :前身頃領域
1R :後身頃領域
2L :左下肢開口部
2R :右下肢開口部
2T :胴開口部
3BL,3BR:立体ギャザー
3LF,3LR:レグギャザー
3R :ウェストギャザー
3SL,3SR:サイドシール部
4 :カバーシート
4F1,4F2,4F3,4F7:糸ゴム
4F4,4F5:縁
4FF :折り返し線
4R1,4R2,4R3,4R3:糸ゴム
4R4,4R5:縁
4RF :折り返し線
5 :インナーカバーシート
6 :バックシート
7 :コアラップシート
8 :吸収体
8c :吸収コア
9 :トップシート
10L,10R:サイドシート
10L1,10R1:糸ゴム
10L2,10R2:折り返し線
11F,11R:エンドシート
12 :タミーギャザー
13 :糸ゴムカバーシート
14 :ライン
15,16L,16R :非接着領域
30 :第1接着部
31 :第2接着部
33 :第3接着部
30A,31A,32A :線状接着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8