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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126133
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】静電気除去システム
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/02 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
H05F3/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000184
(22)【出願日】2023-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2022029600
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523031367
【氏名又は名称】一般社団法人日本アーシング協会
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】古川 鉄兵
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA01
5G067BA02
5G067DA01
5G067DA02
(57)【要約】
【課題】人体の静電気の帯電に起因する車両の操縦性能の低下等を抑制し、かつ、人が急速な放電によるショックを受けないようにする。
【解決手段】静電気除去システムは、導電性の車体12に搭乗する人の人体に接触可能な導電性の人体接触部材31と、人体接触部材31と電気的に接続されて電気特性調整可能な電流調整部32と、を有する。人体に蓄積する静電気を人体接触部材31および電流調整部32を通して静電気除去システムに流すことにより車両操縦者の操縦機能を向上させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する人の人体に接触する電気導電性を有する布あるいはシートにより構成される人体接触部と、
前記人体接触部の導電性を有する布あるいはシートの導電部と導通を有する第1接続部を有し、前記第1接続部と接続する電気的素子を、直列及び/あるいは並列に結合できる第2接続部を有し、前記第2接続部と前記電気的素子を介して結合する第3接続部を有する結合部と
を有して人体に蓄積される静電気を車両金属部に放電し、車両の操縦機能を向上させること特徴とする、静電気除去システム。
【請求項2】
前記人体に蓄積する静電気は、前記車両の操舵装置を通じて蓄積するものであること、を特徴とする請求項1に記載の静電気除去システム。
【請求項3】
前記第3接続部に接地線、あるいは静電気放電部もしくは静電気蓄積部が接続されることを特徴とする、請求項1記載の静電気除去システム。
【請求項4】
前記人体接触部と前記結合部とを一体化したことを特徴とすることを特徴とする、請求項1記載の静電気除去システム。
【請求項5】
前記電気的素子として、抵抗、コイル、コンデンサ、ヒューズ、短絡素子のうちの少なくともいずれか1つを用いることを特徴とすることを特徴とする、請求項1記載の静電気除去システム。
【請求項6】
前記電気的素子を容易に交換可能な手段により回路構成を行うことを特徴とする、請求項1記載の静電気除去システム。
【請求項7】
交換手段として前記回路構成中にホルダを更に設け、該ホルダに前記電子的素子が挿入されることを特徴とする、請求項6記載の静電気除去システム。
【請求項8】
前記回路構成中に複数の前記電気的素子が配置され、前記複数の電気的素子が切り替えスイッチにより前記回路構成中に挿入されることを特徴とする、請求項6記載の静電気除去システム。
【請求項9】
前記電気的素子として、抵抗とコイルとが並列接続して用いられることを特徴とする、請求項1記載の静電気除去システム。
【請求項10】
前記結合部の出力が接地線あるいは静電気貯蔵装置に接続されることを特徴とする、請求項1記載の静電気除去システム。
【請求項11】
前記第3接続部に静電気蓄積部が接続され、前記静電気蓄積部として車両金属車体が用いられることを特徴とする、請求項1記載の静電気除去システム。
【請求項12】
前記車両金属車体に、金属鎖等の電気伝導体を付加し、該電気伝導体を車両走行地面に接触させることを特徴とする、請求項11に記載の静電気除去システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、車両を操縦する操縦者に蓄積された静電気を車両に放電除去することにより、操縦者の神経伝達をスムースに行えるようにする静電気除去システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両が走行すると、空気流が車両に摩擦接触する状態で流れることに起因して、車両に静電気が発生する。また、車輪の回転に伴ってタイヤの各部が路面に対し接触および非接触を繰り返すことや、エンジン、ブレーキ装置などにおいて構成部品が相対運動することなどによっても、静電気が発生する。車両は導電性が低いタイヤによって大地から実質的に電気絶縁された状態にあるため、車両に静電気が発生すると、電荷(一般的には正の電荷)が車体などに帯電する(特許文献1参照)。
【0003】
車両の操舵装置、制動装置などは、運転者によって操作されると、ステアリングホイールなどの操作装置の変位が変位伝達系を経て転舵装置などのアクチュエータへ伝達される。
【0004】
車両に電荷が帯電することにより車両が受ける悪影響は、ラジオノイズなどが生じ易くなることなどに留まらない。すなわち、車両に電荷が帯電すると、運転操作の変位の伝達が行われ難くなり、このことがアクチュエータの作動に影響する可能性がある。
【0005】
一方、人の帯電にともなう不快感や健康上の悪影響を軽減する観点や、放電時の人や電子機器へのショック軽減などの観点から、静電気を除去する技術が知られている(特許文献2~4参照)。
【0006】
特許文献2では、人体に帯電する静電気を除去するために、導電性ゴムと導電性織物とアース線とからなる静電気除去装置を設置し、靴下で踏んだ場合や、手で触れることで人体に帯電した静電気をアース線に逃すようにしている。
【0007】
また、特許文献3においては、人体の一部を受ける寝具において、人体に帯電した静電気を、炭マットとアルミ反射シートから構成される敷布団あるいは掛け布団をアース線によって接地し、人体に帯電した静電気を除去する。
【0008】
また、特許文献4には、人体に帯電する静電気を除去するための帯電防止靴が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6124020号公報
【特許文献2】特開2001-351794号公報
【特許文献3】特許第5347170号公報
【特許文献4】特許第6184685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された車両用帯電電荷低減装置を採用したとしても、たとえば操舵装置のステアリングホイールなどを通じて搭乗者が徐々に静電気を帯びることがありうる。こうして発生して蓄積された静電気は、人の神経系統に悪影響を及ぼし、身体の筋肉を異常に緊張した状態のままに維持してしまう。その場合、その人に不快感を与えるのみならず、その車両の運転者の動作に、操作の遅れ等の悪影響が生じる。その場合は、あたかも車両の操縦性能の低下が起きたような感覚になる。
【0011】
また、静電気を帯びている人が電子機器の操作を行うと、その人が不快を感じるのみならず、電子機器の操作性能の低下やノイズ発生の原因にもなる。また、その操作者の運動機能に悪影響が生じる可能性もある。
【0012】
さらに、電気絶縁材の底を有する靴を履いた人が地上や床上を走るときに、人体と空気との摩擦などによって静電気が発生して人体が帯電する。その場合に、その静電気によって、人体周りの空気流が乱れて空気抵抗が増し、また、人の帯電にともなう不快感や健康上の悪影響も生じる。また、当該走る人の運動機能に悪影響が生じる可能性もある。
【0013】
静電気を除去することにより、車に乗っていて、車の電磁波の関係で頭が痛くなったり、疲れやすかったり、眠くなったりなどを軽減することができる。あるいは、運転によるストレスを緩和したり、運転の集中力を上げたり、落ち着いた運転ができるとも言われている。
【0014】
また、静電気を除去することは、車の運転に関連して人の体の状態については、視界がスッキリすると言われている。
【0015】
本発明の発明者は、導電性繊維を織り込んだ布あるいはシートの導電性繊維と電気接触する導線(以下、アース線と略記)を車両金属部に接地(アーシング)することにより、当該布あるいはシートに接触する人体に蓄積された静電気を除去する試験を行った。
【0016】
車両への各種の接地方法や使用環境、様々な被験者について試験を行ったところ、以下に示す新しい知見を得た。
【0017】
試験結果その1として、静電気の除去を急速に行うことが、被験者により好まれる場合と好まれない場合がある。接地点の接地抵抗により静電気の除去効果が異なる。すなわち、工業用機械に用いるような接地抵抗が低い接地点に接続した方が静電気の除去が急速に行われるが、この状況を好む被験者がいるほかに、急速放電によって体に不快感を覚える被験者もいることが判明した。そのような被験者は、接地抵抗が大なる接地点にアース線を接続する方を好み、アース線に抵抗を挿入し、静電気放電を緩やかに行うことを好む。
【0018】
試験結果その2として、車両中で試験を行った結果、車体金属部への接地点の接地抵抗が大きかったり、接地点までの距離が遠く、アース線が長くなったりすると、被験者に入眠障害を起こす等の不快感を与えることがあることが判明した。特に、被験者が電磁波過敏症である場合に著しいものであった。また、電磁波過敏症と診断されていない人であっても、敏感な人もあった。この原因は、アース線に車両エンジンの火花放電電磁波、近傍の電気機械や電子機器の電磁気の影響あるいは電磁波がアース線に誘導結合して人体に届いてしまうため、人体に静電気を誘起することと考えられる。
【0019】
上記とは逆に、人体に直接誘起した電磁波がアース線を通してアースに放電する場合、敏感な被験者はピリピリと感じ、気持ちが悪くなる場合もあった。
【0020】
試験結果その3として、本発明の静電気除去システムを設置すると、車両の操縦性能の向上したような感覚が得られることが判明した。この原因は、操縦者に蓄積された静電気が除去されたために運動神経伝達(微小電流伝達)がスムースに行われ、ブレーキの即応、ハンドル操作の即応と言う俊二の操縦判断の向上に繋がり、あたかも車両の操縦性能が向上したかのように感じられるものと思われる。
【0021】
近年の車両には、種々の電気機器やWi-Fi、インターネット、GPS装置等の電磁波利用機器が存在し、その環境下で静電気除去装置を用いる場合、その環境状況は、たとえばアース線の長さ、アースの設置状況(接地抵抗の差)、周囲の電磁波環境が異なる。その上、一概に人体といっても色々な人体特性の人があり、人体に帯電する静電気の影響度、アース線よりの電磁波に対する反応が異なる。たとえば、人体帯電静電気の除去(放電)速度、電磁波の周波数が大きく影響することもわかってきた。
【0022】
本発明は、人体の静電気の帯電に起因する車両を操縦する操縦者の能力低下、人体を接触させて操作する機器の性能低下、人の運動機能の低下を抑制すること等を目的とする。その目的を達成するにあたり、上述の事情を考慮して、以下の3点を具体的な解決課題とする。
【0023】
第1には、人体に帯電した静電気を確実に除去すること、また急速な放電によるショックを緩和することを課題とする。
【0024】
第2には、使用周囲環境に存在する電磁波がアース線に結合誘起した電磁波が人体に届かないよう減衰させる一方、人体に蓄積された静電気は、同じアース線を通して静電気蓄積部としての車両金属車体に放電できることを課題とする。なお、前記車両金属車体に、金属鎖等の電気伝導体を付加し、該電気伝導体を車両走行地面に接触させれば、静電気除去をより確実に行うことが可能となる。
【0025】
第3には、本発明が使用される周囲状況、人体特性に対応した最適静電気除去を提供できる柔軟なシステムを構築することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明上記各課題を解決するためのものであって、本発明の第1の態様に係る静電気除去システムは、車両を運転する人の人体に接触する電気導電性を有する布あるいはシートにより構成される人体接触部と、前記人体接触部の導電性を有する布あるいはシートの導電部と導通を有する第1接続部を有し、前記第1接続部と接続する電気的素子を、直列及び/あるいは並列に結合できる第2接続部を有し、前記第2接続部と前記電気的素子を介して結合する第3接続部を有する結合部とを有して人体に蓄積される静電気を車両金属部に放電し、車両の操縦機能を向上させること特徴とする。
【0027】
本発明の第2の態様に係る静電気除去システムは、第1の態様において、前記人体に蓄積する静電気は、前記車両の操舵装置を通じて蓄積するものであることを特徴としてもよい。
【0028】
本発明の第3の態様に係る静電気除去システムは、第1の態様において、前記第3接続部に接地線、あるいは静電気放電部もしくは静電気蓄積部が接続されることを特徴としてもよい。
【0029】
本発明の第4の態様に係る静電気除去システムは、第1の態様において、前記人体接触部と前記結合部とを一体化したことを特徴としてもよい。
【0030】
本発明の第5の態様に係る静電気除去システムは、第1の態様において、前記電気的素子として、抵抗、コイル、コンデンサ、ヒューズ、短絡素子のうちの少なくともいずれか1つを用いることを特徴としてもよい。
【0031】
本発明の第6の態様に係る静電気除去システムは、第1の態様において、前記電気的素子を容易に交換可能な手段により回路構成を行うことを特徴としてもよい。
【0032】
本発明の第7の態様に係る静電気除去システムは、第6の態様において、交換手段として前記回路構成中にホルダを更に設け、該ホルダに前記電子的素子が挿入されることを特徴としてもよい。
【0033】
本発明の第8の態様に係る静電気除去システムは、第6の態様において、前記回路構成中に複数の前記電気的素子が配置され、前記複数の電気的素子が切り替えスイッチにより前記回路構成中に挿入されることを特徴としてもよい。
【0034】
本発明の第9の態様に係る静電気除去システムは、第1の態様において、前記電気的素子として、抵抗とコイルとが並列接続して用いられることを特徴としてもよい。
【0035】
本発明の第10の態様に係る静電気除去システムは、第1の態様において、前記結合部の出力が接地線あるいは静電気貯蔵装置に接続されることを特徴としてもよい。
【0036】
本発明の第11の態様に係る静電気除去システムは、第1の態様において、前記第3接続部に静電気蓄積部が接続され、前記静電気蓄積部として車両金属車体が用いられることを特徴としてもよい。
【0037】
本発明の第12の態様に係る静電気除去システムは、第11の態様において、前記車両金属車体に、金属鎖等の電気伝導体を付加し、該電気伝導体を車両走行地面に接触させることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の実施態様に係る静電気除去システムによれば、たとえば、人体の静電気の帯電に起因する車両操縦者の操縦機能の低下や電子機器の性能低下を抑制することができる。
【0039】
さらに、本発明の実施態様に係る静電除去システムによれば、従来行われていた静電気除去装置のごとく急激な静電気放電を避けることが可能となり、放電ショックによる不快感なしに、人体に蓄積された静電気を除去することができる。
【0040】
また、蓄積された静電気を大地に放電するためのアース線が不完全であったり、アース線が長すぎたりするため、アース線近傍に存在する電子機器等からの電磁波とアンテナ結合してアース線に混入する電磁波を減衰阻止し、電磁波過敏症の車両操縦者の体調に影響を及ぼすことを防止するという効果を生ずる。
【0041】
また、アース線の状況、状態の差に加えて、使用環境の差、車両操縦者の人体特性の差に応じて最適の静電気除去システムを構築できるという、今までにない効果を生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態に係る静電気除去システムを車両内に配置した状況を示す概略配置図である。
図2】本発明の一実施形態に係る静電気除去システムの機能構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電流調整部の電気素子取り換え構造の例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電流調整部の並列接続回路図である。
図5】本発明の一実施形態に係る電流調整部の電気素子切り替え構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る静電気除去システムを説明する。
【0044】
図1は、本発明の一実施形態に係る静電気除去システムを車両内に配置した状況を示す概略配置図である。図2は、本発明の一実施形態に係る静電気除去システムの機能構成図である。
【0045】
図1に示すように、車両11は、車体12と、前輪13と、後輪14と、操舵装置15とを備えている。操舵装置15は、前輪13の向きを変えるための操舵アクチュエータ16と、操縦者17が操舵アクチュエータ16を操作するためのステアリングホイール18と、を備えている。操舵装置15はさらに、ステアリングホイール18の動作を操舵アクチュエータ16に伝えるためのステアリングコラム19およびステアリングシャフト20を備えている。図1では、車両11の駆動装置などの図示は省略している。
【0046】
車両11は、車体12内で操縦者17を支持する座席22を備えている。車体12は、主として導電性の金属製である。
【0047】
この実施形態においては、車両11内に静電気除去システム30が配置されている。静電気除去システム30は、人体接触部材31と、電流調整部32と、静電気蓄積部33とを含む。
【0048】
人体接触部材31は、たとえばシート状であって、座席22の座面の上に広げられている。操縦者17が座席22に腰掛けたときに、操縦者17と座席22の間に人体接触部材31が介在するようになっている。人体接触部材31は、たとえば、導電性の金属線が編み込まれていて導電性であり、しかも、全体で柔軟性をもっている。それにより、人体接触部材31と人体とが面接触して電気的接触を維持することができるとともに座り心地をよくすることができる。ただし、人体接触部材31と人体との接触は、直接でも、また、人の衣服を通じてでもよい。
【0049】
人体接触部材31は、導線35により、電流調整部32および静電気蓄積部33を介して車体12に電気的に接続されている。
【0050】
図2に示すように、人体接触部材31は、編み込まれた金属線と電気接続されたコネクタからなる第1接続部41を備えている。
【0051】
電流調整部32は、第1接続部41と同様のコネクタによる第2接続部42を備えている。人体接触部材31は、第1接続部41のコネクタを介して、第2接続部42のコネクタと、導線35により電気的に接続される。
【0052】
電流調整部32の第2接続部42の反対側に第3接続部43が形成され、第3接続部43は、静電気蓄積部33を介して車両金属部(以下車体と略記)12に電気的に接続されている。車体12は絶縁材の前輪13および後輪14によって地面Eから電気的に絶縁されているが、車体12は大きな電気容量を有することから、車体12は電気的にアースと同様の機能を持つものと考えることができる(図1および図2参照)。
【0053】
静電気蓄積部33については後述する。図1および図2に示すように、電流調整部32から静電気蓄積部33を介さずに車体12に直接接続する導線を設けてもよい。その場合に、静電気蓄積部33をなくすこともできる。
【0054】
図3は、本発明の一実施形態に係る電流調整部の電気素子取り換え構造の例を示す図である。ここに示す例では、第2接続部42と2つの電気素子ホルダ51、52とが並列接続されている。電気素子ホルダ51、52の第2接続部42と反対側には電気素子ホルダ53が直列接続され、さらに電気素子ホルダ53が第3接続部43に接続されている。
【0055】
電気素子ホルダ51、52、53に、種々の電気素子601,602,603,・・・を挿入しまた取り外すことができる。
【0056】
前記の説明では、電気素子の接続を分かりやすくするため、ホルダやコネクタのような接続部を設ける例を挙げたが、接続部を別個に設けず、半田付け、ねじ止め等の接続でもよい。
【0057】
電気素子ホルダ51、52、53に挿入、あるいはねじ止め等(以下挿入と略記)により接続される電気素子601,602,603,・・・は、たとえば、電気抵抗素子(抵抗器)、チョークコイル、キャパシタ(コンデンサ)、ヒューズ、短絡素子のいずれかである。もちろん、上記電気素子には可変抵抗器、可変容量キャパシタ、タップ付きコイルが含まれていてもよい。
【0058】
アース線を、アース(車体12)に接続できる場合は、電気素子ホルダ51、52、53に短絡素子を挿入することにより人体接触部材31は直接接地され、人体に蓄積された静電気はアースに放電、除去される。その場合には、接地抵抗が低いため、放電が急激に行われ電撃ショックを起こす恐れがある。しかし、短絡素子を抵抗器に差し替えることにより、放電電流立ち上がりを緩やかにして電撃ショックを避けることができる。さらに、ループ電流路を形成しないよう、アース(車体12)への接続部は、車両中の他の電気設備とまとめて、一か所(いわゆる一点アース)とする。
【0059】
接地抵抗が大なる場合や、第3接続部43と車体12の距離が離れていて、アース線が長くなる場合は、周囲の電磁波がアース線に結合して人体接触部材31に到達し、不快感や各種の障害を引き起こす恐れがある。
【0060】
そのような場合は、並列ホルダ51,52にそれぞれ抵抗器80(抵抗値R)とコイル81(リアクタンスL)を挿入する。図4はこの状態を電気回路で表示したもので、アース線より結合混入した周波数fなる電磁波はR,L並列回路に到達する。
【0061】
現在、一般環境において存在する電磁波は数十~数百MHz以上の高周波が多く、チョークコイルが呈する高周波抵抗はωL=2πfLと大変大きくなる(ただし、角周波数をωとし、周波数をfとする)。そのため、電磁波は抵抗器80を通過して人体接触部材31に到達するが、抵抗器80を通過するため熱消費され、人体に影響を及ぼさない程度に弱められる。
【0062】
一方、人体からの静電気放電は微小直流であり、抵抗値がほぼゼロのコイル81を通してアースに放電される。
【0063】
静電気蓄積部33は、車体12をアースとして機能させるのが困難な場合に特に有用である。静電気蓄積部33は、たとえば、静電気が金属表面に帯電しやすい特性を利用し、電気伝導性の良い炭と金属板を組み合わせて静電気を蓄積する装置(特許文献3参照)であって、静電貯蔵マットなどとして市販されているものでもよい。
【0064】
また、本願発明者の試験の結果では、直流を蓄電するキャパシタ(コンデンサ)に静電気をためることでもよく、たとえば、2重層キャパシタは特に効果が大きかった。
【0065】
人体に蓄積された静電気を、人体より静電気を蓄積し易い上記静電気蓄積部33に移動させることにより、人体に蓄積された静電気を除去することができる。
【0066】
しかも、使用状況に応じて電流調整部32の電気特性を調整できる。たとえば、操縦者(ユーザ)17の好みに合わせて、人体に蓄積する静電気を速やかに放電したり、ショックを避けて徐々に放電したりすることができる。
【0067】
また、蓄積された静電気を大地に放電するためのアース線が不完全であったり、アース線が長すぎたりするため、アース線近傍に存在する電子機器等からの電磁波とアンテナ結合してアース線に混入する電磁波を減衰阻止し、電磁波過敏症のユーザの体調に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0068】
これにより、人体の静電気の帯電に起因する車両の操縦性能の低下や人体の機能低下を防ぐことができる。
【0069】
図5は、本発明の一実施形態に係る電流調整部の電気素子切り替え構造の例を示す図である。図3では、各種の電気素子601,602,603,・・・を電気素子ホルダ51、52、53に挿入する例を示したが、他の例として、図5のごとく、各種の電気素子51a,51b,・・・,51n,52a,52b,・・・,52n,53a,53b,・・・,53nを並べて、スイッチ71,72,73で選択する方法としてもよい。この図5に示す例では、電気素子の切り替えが極めて容易となる。
【0070】
なお、上記説明では、電流調整部32は、複数の電気素子を組み合わせて接続するものとしたが、たとえば電流調整部32を1個の可変抵抗器で実現することもできる。
【0071】
また、人体接触部材31と電流調整部32は別体とせずに一体に形成してもよい。
【0072】
上記説明では、人体接触部材31が、車両11の座席22の上に広げられる布あるいはシート状のものである場合を例に挙げて説明したが、座布団、マットや、靴などの履物の底または中敷き等に広く応用できるものである。履物から静電気を除去することにより、帯電による不快感除去や放電時のショック緩和を実現し、さらに、帯電や急速放電による人体の機能低下や、人が扱う機器の性能低下を緩和することができる。
【0073】
さらに、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されうるものである。
【符号の説明】
【0074】
11…車両、
12…車体、
13…前輪、
14…後輪、
15…操舵装置、
16…操舵アクチュエータ、
17…操縦者、
18…ステアリングホイール、
19…ステアリングコラム、
20…ステアリングシャフト、
22…座席、
30…静電気除去システム、
31…人体接触部材、
32…電流調整部、
33…静電気蓄積部、
35…導線、
41…第1接続部、
42…第2接続部、
43…第3接続部、
51,52,53…電気素子ホルダ、
51a,・・・,52a,・・・,53a,・・・…電気素子、
71,72,73…スイッチ、
80…抵抗器、
81…コイル、
601,602,603,・・・…電気素子
図1
図2
図3
図4
図5