(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126151
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】OCT血管造影のためのOCT-Bスキャンの前処理
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023020209
(22)【出願日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】22159148.0
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509012991
【氏名又は名称】オプトス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤイコム、ガガーリン
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA10
4C316AB02
4C316AB11
4C316FB29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象血管系の描出を提供するOCT血管造影データの生成に用いる切り出しBスキャンを生成するために、身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャンを処理する、コンピュータ実装方法を提供する。
【解決手段】画像化領域は、画像化領域の第1のサブ領域の解剖学的特徴、及び画像化領域の第2のサブ領域の対象血管系を含む。前記方法は、選択されたデータ要素がBスキャンの解剖学的特徴の描出に沿って分布しているように、Bスキャンのデータ要素のサブセットを選択し、Bスキャンにおける、対象血管系を含む第2のサブ領域から取得されたOCTデータを含むそれぞれの対象サブ領域を定義すべく選択されたデータ要素を利用し、Bスキャンを切り出してBスキャンに対象サブ領域を残すことにより、繰り返しBスキャンの各Bスキャンを処理することを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象血管系の描出を提供するOCT血管造影データの生成に用いる切り出しBスキャンを生成するために、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像装置によって取得された身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャンを処理する、コンピュータ実装方法であって、前記画像化領域は、前記画像化領域の第1のサブ領域に限定される解剖学的特徴、及び前記画像化領域の第2のサブ領域に限定される対象血管系を含み、前記コンピュータ実装方法は、
前記Bスキャンのデータ要素から、選択されたデータ要素が前記Bスキャンの解剖学的特徴の描出に沿って分布しているように、前記データ要素のサブセットを選択し、
前記Bスキャンにおける、対象血管系を含む第2のサブ領域から取得されたOCTデータを含むそれぞれの対象サブ領域を定義すべく前記選択されたデータ要素を利用し、
前記Bスキャンに前記対象サブ領域を残すように前記Bスキャンを切り出すことにより、それぞれの切り出しBスキャンを生成する
ことにより、それぞれの切り出しBスキャンを生成するために、繰り返しBスキャンの各Bスキャンを処理することを含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記身体部位は目を含み、
前記身体部位の前記画像化領域は、眼の網膜を含み、
前記解剖学的特徴は、前記網膜の解剖学的層を含む
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記網膜の解剖学的層は、網膜の網膜色素上皮(RPE)であり
前記データ要素のサブセットの選択は、前記Bスキャンにおけるデータ要素のそれぞれの値が閾値に対して所定の関係を有するか否かを判断し、前記サブセットについて、値が前記閾値に対して所定の関係を有するデータ要素を選択する、ことを含み、前記閾値は、前記選択されたデータ要素の少なくとも一部が前記BスキャンにおけるRPEの描出に沿って分布するように設定される
請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記閾値は、前記Bスキャンにおけるデータ要素値の平均値μからの標準偏差の数kを超える所定数のデータ要素のみが存在するように前記Bスキャンにおけるデータ要素値から算出され、kは、前記選択されたデータ要素の少なくとも一部が、前記BスキャンにおけるRPEの描出に沿って分布するように設定され、前記閾値は、所定のタイプの統計分布に従って分布するように前記Bスキャンの前記データ要素値をモデル化することにより算出される
請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
各Bスキャンは、前記Bスキャンの第1の軸に沿って配列されたAスキャンのアレイを含み、前記Aスキャンの各々は前記Bスキャンの第2の軸に沿って配列されたデータ要素を含み、
前記解剖学的特徴は、前記画像化領域の前記第1のサブ領域に限定された前記身体部位の解剖学的層を含み、
前記選択されたデータ要素は、
前記選択されたデータ要素の前記Bスキャン内の分布に関数を適合させ、
前記Bスキャンの前記第2の軸に沿ったそれぞれの基準座標を算出するため、適合関数を使用し、
前記Bスキャンにおけるそれぞれの対象サブ領域を、前記算出されたそれぞれの基準座標に対する前記Bスキャンの前記第2の軸に沿った所定サイズと所定のオフセットを有するBスキャンのサブ領域として定義する
ことによって、前記選択されたデータ要素に対する前記Bスキャン内のそれぞれの対象サブ領域を定義すべく利用される
請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記身体部位は目を含み、
前記身体部位の前記画像化領域は、眼の網膜を含み、
前記解剖学的層は網膜の網膜色素上皮(RPE)を含み、
前記関数は二次関数である
請求項5に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
各Bスキャンは、前記Bスキャンの第1の軸に沿って配列されたAスキャンのアレイを含み、前記Aスキャンの各々は前記Bスキャンの第2の軸に沿って配列されたデータ要素を含み、
前記選択されたデータ要素は、
前記選択されたデータ要素の前記Bスキャン内の分布に関数を適合させ、
前記Bスキャン内の各Aスキャンについて、前記Aスキャンに沿った前記選択されたデータ要素の分布を示す、Aスキャン内の前記選択されたデータ要素の誤差測定のそれぞれの値を算出し、前記誤差測定のそれぞれの値は、前記第1の軸に沿った前記Aスキャンの座標における適合関数の値に対応する前記Aスキャンのそれぞれのデータ要素を参照して、前記Bスキャンの各Aスキャンについて算出され、
前記Bスキャンの各Aスキャンについて、前記Aスキャンの前記選択されたデータ要素について算出された前記誤差測定の値を、閾値誤差値と比較し、
前記閾値誤差値よりも大きい誤差測定算出値を有する前記Bスキャンの各Aスキャンに対して、前記Aスキャンの選択されたデータ要素から、前記Aスキャンのそれぞれのデータ要素の下にあるデータ要素を選択することにより、前記Bスキャン内のデータ要素の修正された選択を生成し、
前記データ要素の修正された選択の前記Bスキャン内の分布に関数を適合させ、
前記Bスキャンの前記第2の軸に沿ったそれぞれの基準座標を算出すべく前記データ要素の修正された選択の前記Bスキャン内の分布に適合する関数を使用し、
前記Bスキャンにおけるそれぞれの対象サブ領域を、前記算出されたそれぞれの基準座標に対する前記Bスキャンの前記第2の軸に沿った所定サイズと所定のオフセットを有するBスキャンのサブ領域として定義する
ことによって、前記選択されたデータ要素に対する前記Bスキャン内のそれぞれの対象サブ領域を定義すべく利用される
請求項3又は請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記誤差測定の値は、前記第1の軸に沿った前記Aスキャンの座標における前記適合関数の値に対応する前記Aスキャンのデータ要素の位置からの前記選択されたデータ要素の位置のそれぞれの偏差の正規化平均二乗誤差、前記第1の軸に沿った前記Aスキャンの座標における前記適合関数の値に対応する前記Aスキャンのデータ要素の位置からの前記選択されたデータ要素の位置の絶対偏差の総和、及び前記第1の軸に沿った前記Aスキャンの座標における前記適合関数の値に対応する前記Aスキャンのデータ要素の位置からの前記選択されたデータ要素のそれぞれの位置の二乗偏差の総和のうちいずれかを含む
請求項7に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記関数は、二次関数である請求項7又は請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記Bスキャンの前記第2の軸に沿ったそれぞれの基準座標を算出するため、前記適合関数を使用することは、
前記Bスキャンの前記Aスキャンの全体に及ぶ前記第1の軸に沿ったインターバルでの前記適合関数の最大値を決定し、
前記第1の軸に沿ったインターバルでの前記適合関数の最小値を決定し、
前記最大値と前記最小値の平均値を前記基準座標として算出する
ことを含む請求項5~9のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
各Bスキャンは、Bスキャンの第1の軸に沿って配列されたAスキャンのアレイを含み、Aスキャンの各々は、Bスキャンの第2の軸に沿って配列されたデータ要素を含み、
前記コンピュータ実装方法は、
前記定義された対象サブ領域が、前記第1の軸及び前記第2の軸のいずれかに沿って前記Bスキャンの端縁まで延在しているか否かを判断し、
前記第1の軸及び前記第2の軸のいずれかに沿った前記切り出しBスキャンのサイズが所定サイズよりも小さいか否かを判断し、
前記対象サブ領域が前記第1の軸及び前記第2の軸のいずれかに沿って前記Bスキャンの端縁まで延在していると判断され、かつ前記第1の軸及び前記第2の軸のいずれかに沿った切り出しBスキャンのサイズが前記所定サイズより小さいと判断された場合、データ要素値が前記Bスキャンから算出されたノイズプロファイルに基づく追加のデータ要素を有するように、前記第1の軸及び前記第2の軸のいずれかに沿って前記切り出しBスキャンを拡大することにより、前記切り出しBスキャンのサイズを前記所定サイズまで増大させる
ことをさらに含む請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
身体部位の画像化領域における対象血管系の描出を提供する光コヒーレンストモグラフィ血管造影(OCTA)データを生成するコンピュータ実装方法であって、
光コヒーレンストモグラフィ撮像装置によって取得された前記身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャンを受信し、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって、それぞれの切り出しBスキャンを生成するため、繰り返しBスキャンを処理し、
前記切り出しBスキャンを処理することによりOCTAデータを生成する
ことを含むコンピュータ実装方法。
【請求項13】
コンピュータ可読命令を含み、前記コンピュータ可読命令はプロセッサにより実行されると、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を前記プロセッサに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項14】
対象血管系の描出を提供するOCT血管造影データの生成に用いる切り出しBスキャンを生成するために、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像装置によって取得された身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャンを処理する、装置であって、前記画像化領域は、前記画像化領域の第1のサブ領域に限定される解剖学的特徴、及び前記画像化領域の第2のサブ領域に限定される対象血管系を含み、
選択されたデータ要素が前記Bスキャンにおける解剖学的特徴の描出に沿って分布するように、前記Bスキャンのデータ要素から前記データ要素のそれぞれのサブセットを選択することによって、前記繰り返しBスキャンの各Bスキャンを処理すべく構成された選択モジュールと、
前記Bスキャンにおけるそれぞれの対象サブ領域を定義するために、前記Bスキャンの前記データ要素から前記選択モジュールによって選択されたデータ要素のサブセットを用いて、繰り返しBスキャンの各Bスキャンを処理すべく構成されたサブ領域定義モジュールであって、それぞれの対象サブ領域は、対象血管系を含む第2のサブ領域から取得されたOCTデータを含む、サブ領域定義モジュールと、
前記サブ領域定義モジュールによって前記Bスキャンに定義されたそれぞれの対象サブ領域をBスキャンに残すため、前記繰り返しBスキャンの各Bスキャンを切り出すことによって切り出しBスキャンを生成すべく構成された切り出しモジュールと
を含む装置。
【請求項15】
身体部位の画像化領域における血管系の描出を提供する光コヒーレンストモグラフィ血管造影(OCTA)データを生成する装置であって、
光コヒーレンストモグラフィ撮像装置によって取得された前記身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャンを受信すべく構成された受信モジュールと、
請求項14に記載の装置であって、前記切り出しBスキャンを生成するため、前記受信した繰り返しOCT-Bスキャンを処理すべく構成された装置と、
前記切り出しBスキャンを処理してOCTAデータを生成するOCTAデータ生成モジュールと
を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書における例示的態様は、一般に光干渉断層撮像法(OCT)の分野に関し、より詳細には、画像化領域の血管系の描出を提供するOCT血管造影データの生成に用いる切り出しBスキャンを生成するため、身体部位の画像化領域の繰り返しOCT-Bスキャンを処理することに関する。
【背景技術】
【0002】
OCT血管造影(OCTA)は、低コヒーレンス干渉法によって、撮像した身体部位の構造情報と機能(血流)情報を並行して取得する非侵襲的な撮像技術であり、各種医療分野で利用されている。例えば、眼科では、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、動脈・静脈閉塞症、鎌状赤血球症、緑内障等、各種疾患の診断にOCTAが利用されている。
【0003】
OCTAでは、身体部位の共通のOCTスキャン領域の繰り返しBスキャン(すなわち、取得時間の異なる身体部位の同一断面のBスキャン)の、後方散乱OCT信号の差を比較し、血流マップを作成する。OCTAは、流動赤血球を含むOCTスキャン領域では後方散乱OCT信号が時間的に変動するのに対し、OCTスキャン領域の血流を含まない静止部分からの後方散乱OCT信号にはそれと比べて極めて小さい変動が生じるという原理に基づく。
【0004】
数タイプのOCTAが開発されており、血管系をマッピングする際に繰り返しOCTスキャンを処理する方法が異なっている。例えば、SSADA(split-spectrum amplitude decorrelation angiography)、OMAG(optical microangiography)、OCTARA(OCT angiography ratio analysis)等が挙げられる。これらのタイプのOCTA、ならびに市場に存在するOCTAシステムの一部についての論評が、非特許文献1に記載されている。その内容は参照することにより全文が本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Turgut.“Optical Coherence Tomography Angiography- A General View” European Ophthalmic Review, 2016,10(1),pp39-42
【非特許文献2】R.Kafieh et al.“A Review of Algorithms for Segmentation of Optical Coherence Tomography from Retina” J Med Signals Sens.2013 Jan-Mar 3(1),pp45-60
【発明の概要】
【0006】
本明細書の第1の例示的態様によれば、本発明者は、対象血管系の描出を提供するOCT血管造影データの生成に用いる切り出しBスキャンを生成するために、OCT撮像装置によって取得された身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャンを処理する、コンピュータ実装方法であって、前記画像化領域は、前記画像化領域の第1のサブ領域に限定される解剖学的特徴、及び前記画像化領域の第2のサブ領域に限定される対象血管系を含む、方法を考案した。前記方法は、前記Bスキャンのデータ要素から、選択されたデータ要素が前記Bスキャンの解剖学的特徴の描出に沿って分布しているように、前記データ要素のサブセットを選択し、前記Bスキャンにおける、対象血管系を含む第2のサブ領域から取得されたOCTデータを含むそれぞれの対象サブ領域を定義すべく前記選択されたデータ要素を利用し、前記Bスキャンに前記対象サブ領域を残すように前記Bスキャンを切り出すことにより、それぞれの切り出しBスキャンを生成する、ことにより、それぞれの切り出しBスキャンを生成するために、繰り返しBスキャンの各Bスキャンを処理することを含む。
【0007】
さらに、本明細書の第2の例示的態様によれば、本発明者は、身体部位の画像化領域における対象血管系の描出を提供する光コヒーレンストモグラフィ血管造影(OCTA)データを生成するコンピュータ実装方法を考案した。前記方法は、光コヒーレンストモグラフィ撮像装置によって取得された前記身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャンを受信し、上記第1の例示的態様に記載の方法に従って、それぞれの切り出しBスキャンを生成すべく繰り返しBスキャンを処理し、前記切り出しBスキャンを処理することによりOCTAデータを生成することを含む。
【0008】
本明細書の第3の例示的態様によれば、本発明者は、コンピュータ可読命令を含み、前記コンピュータ可読命令はプロセッサにより実行されると、上記第1の例示的態様及び第2の例示的態様のうちの少なくとも1つに従った方法を前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムをさらに考案した。前記コンピュータプログラムは、非一過性コンピュータ可読記憶媒体(例えば、CDやメモリスティック)に格納されてもよく、また信号(例えば、インターネットダウンロード)で搬送されてもよい。
【0009】
本明細書の第4の例示的態様によれば、本発明者は、対象血管系の描出を提供するOCT血管造影データの生成に用いる切り出しBスキャンを生成するために、OCT撮像装置によって取得された身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャンを処理する、装置であって、前記画像化領域は、前記画像化領域の第1のサブ領域に限定される解剖学的特徴、及び前記画像化領域の第2のサブ領域に限定される対象血管系を含む装置をさらに考案した。前記装置は、前記選択されたデータ要素が前記Bスキャンにおける解剖学的特徴の描出に沿って分布するように、前記Bスキャンのデータ要素から前記データ要素のそれぞれのサブセットを選択することによって、前記繰り返しBスキャンの各Bスキャンを処理すべく構成された選択モジュールを含む。前記装置は、前記Bスキャンにおけるそれぞれの対象サブ領域を定義するために、前記Bスキャンの前記データ要素から前記選択モジュールによって選択されたデータ要素のサブセットを用いて、繰り返しBスキャンの各Bスキャンを処理すべく構成されたサブ領域定義モジュールであって、それぞれの対象サブ領域は、対象血管系を含む第2のサブ領域から取得されたOCTデータを含む、サブ領域定義モジュールをさらに含む。前記装置は、前記サブ領域定義モジュールによって前記Bスキャンに定義されたそれぞれの対象サブ領域をBスキャンに残すため、前記繰り返しBスキャンの各Bスキャンを切り出すことによって切り出しBスキャンを生成すべく構成された切り出しモジュールをさらに含む。
【0010】
本明細書の第5の例示的態様によれば、本発明者は、身体部位の画像化領域における血管系の描出を提供する光コヒーレンストモグラフィ血管造影(OCTA)データを生成するための装置をさらに考案した。前記装置は、OCT撮像装置によって取得された身体部位の画像化領域の前記繰り返しBスキャンを受信すべく構成された受信モジュールと、上記第4の例示的態様に係る装置であって、切り出しBスキャンを生成すべく前記受信した繰り返しOCT-Bスキャンを処理すべく構成された装置と、を含む。OCTAデータを生成するための前記装置は、前記切り出しBスキャンを処理してOCTAデータを生成すべく構成されたOCTAデータ生成モジュールをさらに含む。
【0011】
以下に、例示的実施形態を、あくまで非限定的な例として、添付図面を参照しながら詳細に説明する。特に断りのない限り、類似の参照番号は別の図面においても同一の要素又は機能的に類似する要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】OCT血管造影データの生成に用いる切り出しBスキャンを生成すべく身体部位の画像化領域の繰り返しOCT-Bスキャンを処理する、本明細書の例示的実施形態の装置を示す概略図である。
【
図2A】それぞれの異なる走査高さで取得された繰り返しBスキャンのセットを示す概略図である。
【
図2B】例示的実施形態の装置が
図2Aに示す繰り返しBスキャンを処理することによって生成された、切り出した繰り返しBスキャンのそれぞれのセットを示す概略図である。
【
図3A】
図2Aに示す走査高さの1つについて、異なる時刻に取得されたN個の繰り返しBスキャンを示す概略図である。
【
図3B】例示的実施形態の装置が
図3Aに示すN個の繰り返しBスキャンを処理することによって生成された、N個の切り出した繰り返しBスキャンを示す概略図である。
【
図4】身体部位の画像化領域における血管系を表すOCTAデータを生成するための装置であり、画像化領域の繰り返しOCT-Bスキャンを処理するための例示的実施形態の装置を含む、概略図である。
【
図5】プログラマブル信号処理装置における例示的実施形態の装置の、例示的ハードウェア実装を示す図である。
【
図6】
図4に示す例示的実施形態の装置が、OCTAデータを生成すべく繰り返しOCT-Bスキャンを処理する方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示す例示的実施形態の装置が、対象血管系を表すOCTAデータの生成に用いる切り出しBスキャンを生成すべく、繰り返しBスキャンを処理する方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示すフローチャートの工程S210において、データ要素のサブセットを選択し得る例示的工程を示すフローチャートである。
【
図9】
図7の工程S210において、例示的実施形態の選択モジュールが
図3AのBスキャンを処理することで選択されたデータ要素の一例を示す図である。
【
図10】
図7の工程S220において、例示的実施形態のサブ領域定義モジュールがBスキャンにおける対象サブ領域を定義する処理を示すフローチャートである。
【
図11】例示的実施形態のサブ領域定義モジュールが
図3Aに示すBスキャンのデータ要素に対して行った、修正された選択のデータ要素の一例を示す図である。
【
図12】例示的実施形態の切り出しモジュールが
図3Bに示す切り出しBスキャン310-1のサイズを調整する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
OCTAデータ生成のため処理される一連の繰り返しBスキャンの取得中に、OCT撮像装置に対して身体部位が動くと、シーケンスにおけるBスキャン間にオフセットが生じることがあり、繰り返しBスキャンのうちの少なくとも一部が身体部位のわずかに異なる断面をカバーすることになる。このオフセットに起因する身体部位の静的特徴の位置のばらつきは、相互に対し完全にアライメントされた繰り返しBスキャン間の流動赤血球の位置のばらつきと同等の影響をOCTAデータ生成アルゴリズムの出力に与えることから、繰り返しBスキャン取得中の身体部位の動きはOCTAデータの品質低下を招き、ゆえに考慮すべき事項である。
【0014】
既知のOCT撮像装置は、OCTスキャン位置の変化を追跡し、OCTスキャン位置の目標OCTスキャン位置からのずれを補償すべくこの変化に基づいてOCTサンプル光の放出を調整することにより、繰り返しBスキャン間の横方向のオフセットを低減できることが多い。既知のOCTAデータ生成ソフトウェアは、繰り返しBスキャン間の軸方向のオフセットを補正するために画像位置合わせアルゴリズムに採用されることが多く、またOCT撮像装置のトラッキング/補正機能で完全には補正されなかった横方向のオフセットに対処し得る。しかし、Bスキャン間の軸方向の移動が大きい場合、画像位置合わせアルゴリズムが正しい結果に収束しない(あるいは全く収束しない)ことがある。その結果、OCTAデータ生成ソフトウェアの失敗率が上がり、不正確もしくは不適切な知見につながることがある。
【0015】
本発明者はまた、OCTAを実用に供する際に一般的に発生する、身体部位の画像化領域における血管系の分散のために、OCTA用に繰り返しOCT-Bスキャンを記憶する従来のアプローチは、データ記憶資源の浪費であるだけでなく、BスキャンからOCTAデータを生成するのに用いるOCTAデータ生成アルゴリズムのデータ処理及び記憶要件に対して徒に高い要件を与える傾向があることを認識している。具体的には、繰り返しBスキャンでカバーされる身体部位の領域は、通常OCTAでマッピングされる血管系を含む対象領域よりはるかに大きく、ゆえにOCTAデータ生成には保存や処理が不要な冗長情報を多く含む傾向がある。
【0016】
一例として、
図3Aに示す網膜Bスキャン210-1において、網膜血管系は、その上限及び下限(不図示)が、
図3Aにおいて暗い背景に対してBスキャン210-1の中央付近に示されるグレー領域の集合の上限及び下限に概ね対応するBスキャン210-1の帯域内に含まれる。網膜血管系は、神経線維層(NFL)及び網膜色素上皮(RPE)を含む網膜の層を表し、それらのBスキャン210-1における描出は、
図3Aに領域216内、及び217にそれぞれ示されている。この帯域の上下にあるBスキャン210-1の暗い領域(脈絡毛細管板と脈絡膜を除く)は、網膜血管系に関するOCTAデータの生成に有用ではない。領域216は、例えば、神経節細胞層、内網状層、NFL等の層を含む。
【0017】
本発明者は、暗い領域に関連するOCTデータをBスキャン210-1に含めることが、以下に述べる複数の問題を生じることを認識した。すなわち、記憶資源が浪費される点、(特に、相互に位置合わせされた繰り返しBスキャン間に大きな軸方向の移動がある場合に)上述の位置合わせ工程の速度が低下し場合によっては信頼性が低下する点、OCTAデータ生成アルゴリズムによるその処理が、貴重なプロセッサ資源及びメモリ資源を徒に消費する点である。こうした問題は網膜の繰り返しOCT-Bスキャンの処理に特有のものではなく、その中の血管系を表すOCTAデータを得るために処理され得る他の身体部位(皮膚等)の繰り返しOCT-Bスキャンの処理においても生じることに留意されたい。
【0018】
本明細書で説明される例示的実施形態は、上述した問題の少なくともいくつかに対処するものであり、以下に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本明細書の例示的実施形態による装置100の概略図である。装置100は、OCT撮像装置(不図示)により取得された身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャン200を処理すべく構成される。画像化領域は、画像化領域の第1のサブ領域に限定されかつ第1のサブ領域を完全に占有する、解剖学的特徴を含む。一例として、解剖学的特徴は、その境界が画像化領域を横切るように延出し、それにより画像化領域に跨がる解剖学的層であってもよく、あるいは、画像化領域を横切るように延出し、それにより画像化領域に跨がる、第1の解剖学的層と第2の解剖学的層との間の境界であってもよい。画像化領域には対象血管系も含まれ、対象血管系は画像化領域の第2のサブ領域に限定される。第1及び第2のサブ領域は、相互に重なり合っていてもいなくてもよいが、(少なくとも概ね)身体部位の解剖学的構造から既知の空間的関係を有する。装置100は、対象血管系の描出を提供するOCT血管造影(OCTA)データの生成に用いるそれぞれの切り出しBスキャン300を生成すべく繰り返しBスキャン200を処理する。
【0020】
装置100は、例であって何ら限定するものではないが、本例示的実施形態のように、領域のサブ領域の切り出しBスキャン300を生成すべく網膜の一部を含む眼の領域の繰り返しBスキャン200を処理し得る。切り出しBスキャン300も網膜の一部を含む。切り出しBスキャン300はより資源効率の良い方法で保存・共有することが可能であり、また既知のOCTAデータ生成アルゴリズムによって、より少ないワーキングメモリを使用して網膜血管系の描出をより迅速に生成することを可能とする。さらに、OCTAボリュームサイズの縮小は、所与のデバイス展開インフラストラクチャ内の資源需要、必要なメモリ割り当て、データ転送帯域幅を削減でき、このことは特にクラウドベースの提案において有用である。しかしながら、本明細書に記載されるBスキャン処理技術は、網膜のBスキャン処理のみならず、OCTAにより血管系がマップアウトされるべき、皮膚又は他の身体部位のBスキャン処理においても有用であることが理解されよう。
【0021】
図2Aは、装置100によって処理される繰り返しBスキャン200の概略図である。N個の繰り返しBスキャン(本明細書では「イメージングスライス」ともよぶ)210の各セットは、第1の軸212(例えば、デカルト座標系のX軸)に沿ったE個の走査高さの各々において撮影される。第1の軸212は、眼の被撮像三次元領域にある網膜の概ね平面の部分の表面(すなわち、眼の硝子体に隣接する網膜の表面)内に延びるように設定される。繰り返しBスキャン210の各セットは、異なる時間に取得されたそれぞれの走査高さにおける網膜の共通の二次元領域(これは、被撮像三次元領域を通るスライス又は断面である)をカバーするN個のBスキャンを含み、共通領域は、網膜の表面内の第2の軸213(例えば、デカルト座標系のy軸)に沿って、また網膜の深さ方向(すなわち、硝子体から脈絡膜及び強膜までの網膜の深さにわたって広がる方向)である第3の軸214(例えば、デカルト座標系のz軸)に沿って延在する。繰り返しBスキャン200は、本例示的実施形態のように、各Bスキャンのz軸方向に沿ってこの順に現れる、眼の硝子体の一部、網膜の一部、及び強膜の一部を含む目の領域をカバーしてもよい。
【0022】
図3Aは、N個の繰り返しBスキャン210のセットのうちの1つのセット内の繰り返しBスキャンを示す概略図である。
図3Aに示されるN個の繰り返しBスキャン210のセットのBスキャン210-1~210-Nは、眼の網膜を通る同じスライスのものであるが、Bスキャン210-1~210-Nが時間的に分離されるよう異なる時間に撮影された(
図3Aで時間軸に沿って間隔をあけて示されている)。
【0023】
Bスキャン210-1~210-Nの各々は、データ要素の二次元配列で定義される。
図3Aにおいて、Bスキャン210-1~210-Nの各々は、Bスキャンのy軸(本明細書では「Bスキャンの第1の軸」ともよばれ、この例では軸213と一致する)に沿って配列されたAスキャンを含み、Aスキャンの各々は、Bスキャンのz軸(本明細書では「Bスキャンの第2の軸」ともよばれ、この例では軸214と一致する)に沿って配列されたデータ要素を含む。Bスキャン210-1~210-Nの任意のBスキャンにおける各データ要素の値は、OCT撮像装置によって取得されたそれぞれの干渉信号の測定結果を提供し、Bスキャン内のデータ要素の位置(Bスキャンの第1の軸に沿ったデータ要素の座標、及びBスキャンの第2の軸に沿ったデータ要素の座標によって規定)は、干渉信号測定が行われた眼の被撮像三次元領域内の位置を示している。データ要素は一般に「ピクセル」(二次元画像の場合)又は「ボクセル」(三次元体積の場合)とよばれ、データ要素値はピクセル又はボクセルの強度、又は反射率値とよばれることもある。
【0024】
図3Bは、装置100が
図3AからのN個の繰り返しOCT-Bスキャン210-1~210-Nを処理することによって生成された、N個の切り出しBスキャン310-1~310-Nを示す図である。第1の軸(x軸)212に沿った各走査高さについて取得されたN個の繰り返しOCT-Bスキャンは、それぞれのセットの切り出しOCT-Bスキャンを生成すべく装置100によって同様に処理される。
【0025】
繰り返しBスキャンの数Nは、2以上の任意の整数とすることができる。Nの値は通常、OCTAデータ生成アルゴリズムが十分に多くの繰り返しBスキャンを処理することと、繰り返しBスキャンが目の動きによるOCTAデータの品質への悪影響を低減すべく可能な限り短いタイムインターバルで撮影されること、の競合する要件のバランスを取るように選択される。一例として、本例示的実施形態において、N=4である。Nの値は、原則として、繰り返しBスキャン210-1~210-Nのセットの間で変えることができるが、一般には繰り返しBスキャン210-1~210-Nの全てに共通であることに留意されたい。
【0026】
走査高さの数Eは、一般に1以上の整数である。Eが1より大きい場合、繰り返しOCT-Bスキャンは繰り返し体積スキャンを形成し、これを本明細書では繰り返しCスキャンともよぶ。なお、繰り返しCスキャン内の繰り返しBスキャンは、OCT撮像装置により任意の順序で取得され得ることに留意されたい。例えば、各イメージングスライスの繰り返しBスキャンは、隣接する(すなわち、x軸に沿った走査高さの次の)イメージングスライスの繰り返しBスキャンがOCT撮像装置によって取得される前に、全て取得され得る。あるいは、座標系の第1の軸212に沿った各連続的な走査高さでさらに1個以上のBスキャンを取得し、それによって繰り返しCスキャンを構築すべくBスキャン取得工程が繰り返される前に、単一もしくは所定の数の繰り返しBスキャンが各連続する走査高さで取得され得る。
【0027】
繰り返し体積スキャンを取得すべく使用されるOCT撮像装置は特に限定されず、当業者に知られている任意のタイプのものであってよい。例えば、眼の領域全体に横方向にレーザビームを走査することによってOCT画像を取得可能なポイントスキャンOCT撮像システムとすることができる。あるいは、OCT撮像システムは、フルフィールドOCT(FF-OCT)やラインフィールドOCT(LF-OCT)等の並列捕捉OCT撮像システムであってもよい。これは眼全体に単一のスポットを走査するのではなく、サンプル上の領域又はラインを照射することによって、優れたAスキャン取得速度(最大数十MHz)を提供し得るものである。FF-OCTでは、眼の二次元領域を同時に照明し、その領域の横方向の位置を高速CCDカメラ等の光検出器アレイで同時に捕捉する。OCT撮像システムがフルフィールドOCTである場合、例えばフルフィールドタイムドメインOCT(FF-TD-OCT)やフルフィールド波長掃引型OCT(FF-SS-OCT)の形態を取ることができる。FF-TD-OCTでは、眼の異なる深さの領域を撮影するため、走査中に参照アームの光学長を変化させることが可能である。FF-TD-OCTの高速度カメラで捕捉された各フレームは、ゆえに眼のそれぞれの深度におけるスライスに相当する。FF-SS-OCTでは、時間経過とともに波長が変化する掃引光源を用いてサンプル領域の全面を照射する。掃引光源の波長を光波長範囲で掃引すると、光波長に対する反射率情報を相関させたスペクトログラムを、カメラピクセル毎に高速カメラによって生成することができる。そのため、カメラで捕捉した各フレームは、掃引光源の1波長分の反射率情報に相当する。掃引光源の波長毎にフレームを取得し、カメラで生成したスペクトログラムのサンプルにフーリエ変換を行うことで、該当領域のCスキャンを取得することができる。ラインフィールドOCT(LF-OCT)では、サンプルに線状の光照射を行ってもよく、画像処理においてBスキャンを取得してもよい。ラインフィールドOCTは、例えば、ラインフィールドタイムドメインOCT(LF-TD-OCT)、ラインフィールド波長掃引型OCT(LF-SS-OCT)、ラインフィールドスペクトラルドメインOCT(LF-SD-OCT)に分類することができる。
【0028】
装置100は、PC、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ等のスタンドアロンデータプロセッサとして提供され得る。装置100は繰り返しBスキャンデータを受信すべくOCT撮像装置に(直接又はインターネット等のネットワークを介して)通信可能に接続され得る。あるいは、装置100は、OCT撮像装置の一部として提供されてもよく、この装置は、上述したように、任意の既知の種類の装置とすることができる。追加として又は代替として、装置100は、
図4に模式的に示されるように、OCTAデータ500を生成するための装置400の一部として提供され得る。
図4に示す例示的実施形態の装置400は受信モジュール410をさらに含み、受信モジュール410は、OCT撮像装置によって取得された眼の網膜(又は身体部位の他の画像化領域)の繰り返しBスキャン200を受信すべく構成されている。また、装置400はOCTAデータ生成モジュール420を有し、OCTAデータ生成モジュール420は、装置100が繰り返しBスキャン200を処理することで生成した切り出しBスキャン300を処理して、OCTAデータ500を生成すべく構成されている。
【0029】
図1に示すように、装置100は、選択モジュール110、サブ領域定義モジュール120、及び切り出しモジュール130を含み、これらは以下に述べるように相互に通信可能に接続されてデータを交換する。
【0030】
図5は、本明細書に記載された技術を用いて繰り返しBスキャン200を処理すべく構成され得る、例示的実施形態の選択モジュール110、サブ領域定義モジュール120及び切り出しモジュール130として機能できるプログラマブル信号処理ハードウェア600の概略図である。プログラマブル信号処理ハードウェア600は、さらに、受信モジュール410及びOCTAデータ生成モジュール420の機能性を提供すべく構成されてもよい。それによって
図4に示す例示的実施形態のOCTAデータ500を生成するための装置400のハードウェア実装が提供される。プログラマブル信号処理装置600は、繰り返しBスキャン200を受信し、生成されたOCTAデータ500及び/又はOCTAデータ500のグラフィカル表示を、LCDスクリーン等のディスプレイに表示するために出力する通信インタフェース(I/F)610を含む。信号処理装置600は、プロセッサ(例えばCPU及び/又はGPU)620、ワーキングメモリ630(例えば、ランダムアクセスメモリ)、及び命令ストア640をさらに含む。命令ストア640は、プロセッサ620によって実行されると、本明細書に記載された選択モジュール110、サブ領域定義モジュール120及び切り出しモジュール130、受信モジュール410及びOCTAデータ生成モジュール420の機能を含む各種機能をプロセッサ620に実行させるコンピュータ可読命令を含む、コンピュータプログラム645を格納する。ワーキングメモリ630は、コンピュータプログラム645の実行中にプロセッサ620によって使用される情報を格納する。命令ストア640は、コンピュータ可読命令が予め格納された(例えばEEPROM又はフラッシュメモリの形態の)ROMからなってもよい。あるいは、命令ストア640はRAM又は同様のタイプのメモリからなってもよく、コンピュータプログラム645のコンピュータ可読命令には、CD-ROM、DVDROM等の形態の非一過性コンピュータ可読記憶媒体650、又はコンピュータ可読命令を搬送するコンピュータ可読信号660等のコンピュータプログラム製品から入力することが可能である。いずれの場合も、コンピュータプログラム645は、プロセッサ620によって実行されると、本明細書に記載されるように、切り出した繰り返しBスキャン300を生成するため、繰り返しBスキャン200を処理する方法をプロセッサ620に実行させる。言い換えれば、例示的実施形態の装置100はコンピュータプロセッサ620と、コンピュータ可読命令を格納するメモリ640とを備えてもよい。コンピュータ可読命令は、コンピュータプロセッサ620によって実行されると、後述するようにOCTAデータ500の生成に用いる切り出しBスキャン300を生成するため、繰り返しBスキャン200を処理する方法をコンピュータプロセッサ620に実行させる。
【0031】
ただし、選択モジュール110、サブ領域定義モジュール120及び切り出しモジュール130(ならびに、含まれる場合には、受信モジュール410及びOCTAデータ生成モジュール420)の1つ以上は、上記に替えて、特定用途向け集積回路(ASIC)やフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の非プログラマブルハードウェアで実装され得ることに留意されたい。
【0032】
図6は、本例示的実施形態の装置400が、OCTAデータ500を生成するため、繰り返しOCT-Bスキャン200を処理する方法を示すフローチャートである。
【0033】
図6の工程S100において、受信モジュール410は、上述したように、OCT撮像装置によって取得された身体部位の画像化領域(例えば、眼の網膜)の繰り返しBスキャン200を受信する。
【0034】
図6の工程S200において、OCTAデータを生成するための装置400の一部を形成する装置100は、以下でより詳細に説明するように、切り出した繰り返しBスキャン300を生成するため、繰り返しOCT-Bスキャン200を処理する。
【0035】
図6の工程S300において、装置400のOCTAデータ生成モジュール420は、切り出した繰り返しBスキャン300を処理することにより、OCTAデータ500を生成する。OCTAデータ生成モジュール420は、任意の既知のOCTAデータ生成方法を用いてOCTAデータ500を生成し得る。OCTAデータ生成方法としては、例えばSSADA(split-spectrum amplitude-decorrelation angiography)、OMAG(optical microangiography)又はOCTARA(OCT angiography ratio analysis)で用いられるOCTAデータ生成方法、又はスペックル分散、位相のばらつき、もしくは相関マッピングに基づく既知のOCTAデータ生成方法が挙げられる。これらのタイプの既知のOCTAデータ生成方法についての論評が、非特許文献1に記載されている。その内容は参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0036】
切り出した繰り返しBスキャン300は、その各々が(OCTA信号が検出される可能性が高いボクセルを含む対象領域に加えて、血管系を含まない画像化領域の部分からの大量の追加のOCTデータを含む繰り返しBスキャン200全体ではなく)オリジナルBスキャンから切り出されたそれぞれの対象領域のみを含み、これがOCTAデータ500の生成に用いられるため、切り出した繰り返しBスキャン300によって形成されるOCTAボリュームは比較的小さく、OCTデータ500はより迅速に生成され得る。OCTAボリュームサイズを小さくすることで、OCTAデータ生成アルゴリズムのプロセッサとメモリの要件も、将来的な使用に備えてOCTAボリュームを保存するために必要なスペースの量も減少し、それにより展開インフラストラクチャの資源需要が減少する。ストレージ要件の低減及びその結果としてのデータ転送帯域幅の縮減は、装置400のクラウドベース実装において特に有益であり得る。
【0037】
さらに、後述するように、切り出した繰り返しBスキャン300の各々における対象領域は、全てのBスキャン200に存在する同様の解剖学的特徴の描出に沿って分布するデータ要素を用いて同様に定義されることから、切り出した繰り返しBスキャン300は、一般に、オリジナル繰り返しBスキャン200よりも相互に対して軸方向の(Bスキャンのz軸に沿った)移動が小さい。これは、上述の画像位置合わせアルゴリズムによって迅速かつ確実に補正され得る。
【0038】
図7は、
図6の工程S200において、例示的実施形態の装置100が、画像化領域における対象血管系を表すOCTAデータ500の生成に用いる切り出しBスキャン300を生成するため、繰り返しBスキャン200を処理する方法をより詳細に示すフローチャートである。装置100は、
図7に示す工程S210~S230、及び任意選択の工程S240に従い、Bスキャンのそれぞれの切り出し版を生成するため、繰り返しBスキャン200の各Bスキャンを処理しようと試みる。ただし画質等の要因により、装置100は、入力された全ての繰り返しBスキャン200の切り出しに成功しないことがあり、この場合入力された繰り返しBスキャン200の一部が廃棄されることがある点に留意されたい。以下の
図7の説明では、一例として
図3Aに示すBスキャン210-1の処理を参照する。
【0039】
画像化領域に含まれる解剖学的特徴は、Bスキャン210-1において、当業者に周知の技術を用いて識別可能な網膜の任意の解剖学的層であってよい。ただし、解剖学的特徴は、
図3Aに示すように、RPEであることが好ましい。RPEは、OCT反射率Bスキャンにおいて、その形状(曲率)、反射率強度、及び密度について被検体間のばらつきが比較的少なく、またBスキャンに典型的に現れるため、計算効率の良い画像処理技術で抽出可能な描出217を有する点で有利である。RPEのような概ね不変の解剖学的特徴を選択することで、本明細書に記載された技術を、様々な被検体から、被検体毎にキャリブレーションを行う必要なしに、既知のOCTAデータ生成アルゴリズムを用いて血管系を抽出するためのOCTデータを含むことが予測される特定の対象領域のBスキャンから確実に切り出すために利用できる。
【0040】
図7を参照すると、工程S210において、選択モジュール110は、Bスキャン210-1のデータ要素から、サブセット内のデータ要素がBスキャン210-1の解剖学的特徴の描出、すなわち
図3Aにおいて217で示されるRPEの描出に沿って分布するように、データ要素の(適切な)サブセットを選択する。言い換えれば、選択モジュール110は、Bスキャン210-1のデータ要素から、網膜部分においてRPEの描出217を定義する、より少ない数のデータ要素を選択する(選択されていない残りのデータ要素はRPEを描出しない)。選択されたデータ要素は、選択されたデータ要素がBスキャン210-1におけるRPE(又は他の解剖学的特徴)の描出217に沿って分布するように、所定の基準を満たすそれぞれのデータ要素値を有している。
【0041】
より詳細には、
図8のフローチャート(
図7の工程S210がどのように実行され得るかの例を提供する)に示されるように、選択モジュール110は、工程S212において、Bスキャン210-1のデータ要素のそれぞれの値が(所定の基準の一例としての)所定の閾値に対して所定の関係を有するか否かを判断する。具体的には、選択モジュール110は、本例示的実施形態のように、工程S212において、Bスキャン210-1におけるデータ要素のそれぞれの値が所定の閾値より大きいか否かを判断してもよい。
【0042】
次に、
図8の工程S214において、選択モジュール110は、サブセットについて、工程S212において値が閾値に対して所定の関係を有すると判断されたデータ要素を選択する。上記閾値は、選択されたデータ要素の少なくとも一部がBスキャン210-1のRPEの描出217に沿って分布するように設定される。具体的には、選択モジュール110は、本例示的実施形態のように、
図8の工程S214において、サブセットについて、値が所定の閾値より大きいデータ要素を選択してもよい。
【0043】
選択モジュール110は、本例示的実施形態のように、
図8の工程S214で選択されたデータ要素の行(横座標、y)及び列(縦座標、z)の値を(y,z)座標のリストに保存してもよい。行はBスキャン210-1の水平方向(第1の軸(y軸)方向)のピクセルインデックスであり、列は、Bスキャン210-1の軸方向(第2の軸(z軸)方向)のピクセルインデックスである。座標の原点は、Bスキャン210-1の左上に配置してもよい。したがって、列と行のインデックスは、デカルト座標系における(y,z)座標として扱うことができる。
【0044】
ただし、選択されたデータ要素(ピクセル)の座標は、他の方法によって指定されてもよいことに留意されたい。例えば、
図8の工程S214で選択されたデータ要素が上述した座標とは異なる座標を有し得るように、処理前にBスキャン210-1を時計回りに90度回転することによって指定し得る。選択されたデータ要素の座標は、後述するBスキャン210-1における解剖学的特徴(本例示的実施形態では、網膜のRPE)の曲線適合を実行可能な任意の座標系で指定され得る。したがって、例示的実施形態は、選択モジュール110によって選択されたデータ要素の座標を指定するための代替的な座標系、例えば例示的実施形態の座標系を回転させ、及び/又は縦方向及び/又は横方向に反転させることによって得られる座標系を採用してもよい。選択されたデータ要素のBスキャン210-1における位置の関係を保持する任意のアフィン変換が適用されてもよい。
【0045】
本実施形態におけるデータ要素値の所定の閾値に対する所定の関係はあくまで一例であり、所定の関係は、例えば、データ要素値が所定の閾値よりも小さい(又は小さいか等しい)関係であってもよいことが理解されよう。所定の関係の上記代替形態は、暗いピクセルが明るいピクセルとなるよう、あるいはその逆となるようにBスキャン210-1が反転された場合に用いられ得る。データ要素値と所定の閾値との間の所定の関係は、一般に、
図7の工程S210において選択モジュール110によって選択されたデータ要素がBスキャン210-1におけるRPEの描出217に沿って分布するように、(少なくとも部分的に)Bスキャンの性質に依存して(例えば、OCT測定値がデータ要素値にマッピングされる方法によって)設定され得る。
【0046】
所定の閾値は、本例示的実施形態のように、Bスキャン210-1にデータ要素値の平均値μからの標準偏差Sの数kを超えるデータ要素が所定数nのみ存在するように、Bスキャン210-1を形成するM個のデータ要素のデータ要素値から算出され得る。
【0047】
kは、選択されたデータ要素の少なくとも一部が、Bスキャン210-1のRPE217の描出に沿って分布するように設定される。本例示的実施形態において、閾値は、Bスキャンにおけるデータ要素値が所定のタイプの統計分布に従って分布するようにモデル化し、(M-n)の値を与える分布の(ゼロからの)積分の上限値を(例えば、既知の数値法を用いて)決定することによって算出される。言い換えれば、上記閾値は、Bスキャンのn個の選択されたデータ要素が閾値(μ+k・S)を上回るデータ要素値を有するように決定され、kは、Bスキャン210-1のRPE217の描出に沿った少なくとも一部のピクセルが選択されるように設定され得る、ユーザにより構成可能なパラメータである。kの値は、OCT撮像装置で捕捉されたサンプルCスキャンをキャリブレーションすることで決定でき、全てのBスキャン200の処理について同様である。kの値は、性能と精度のトレードオフを目的とした実用的な要件に基づいて決定され得る。キャリブレーションの1つの方法は、データ要素数nを、曲線適合時間をシステムの設計で許容される最大値よりも短く保持する経験的に決定した値よりも少なくすることで、曲線適合時間を短縮する方法である。代表的なサンプルCスキャンを処理した後、曲線適合時間をシステム設計で許容される最大値よりも短く保持するkの値を選択できる。いくつかのこうした実用的な考慮事項がkのキャリブレーションに影響を与える。
【0048】
本例示的実施形態では、Bスキャンのデータ要素値(又は「ピクセル強度」)はレイリー分布に従って分布している。これは、OCT撮像装置からのOCTインターフェログラムを逆高速フーリエ変換して生成されるOCT複素信号の係数として反射率を算出するためである。Bスキャン210-1のデータ要素値がレイリー分布に従って分布するようにモデル化することによって、閾値をより正確に算出し得るものの、本例示的実施形態では、レイリー分布ではなくガウス分布が想定されている。これにより閾値をより計算効率の良い方法で決定することができ、したがって、良好な実用上のトレードオフを提供できるためである。データ要素値の分布は、レイリー型及びガウス型以外の分布型、例えばベータ分布、カイ二乗分布、ポアソン分布等によりモデル化され得ることに留意されたい。
【0049】
図9は、
図7の工程S210において、選択モジュール110が
図3AのBスキャン210-1を処理することで選択されたデータ要素710の一例を示す。
図9に示すように、選択されたデータ要素710は、RPE(
図9に217で示す)及びNFL(
図9に216内)の両方の描出を提供する。
【0050】
再び
図7を参照すると、工程S220において、サブ領域定義モジュール120は、工程S210で選択されたデータ要素を使用して、Bスキャン210-1における各対象サブ領域を定義する。特に選択されたデータ要素を使用して、Bスキャン210-1の対象領域の位置を定義するための参照フレームを提供することによって、それぞれの対象サブ領域を定義する。したがって、画像化領域の第1のサブ領域に限定される解剖学的特徴と、画像化領域の第2のサブ領域に限定される対象血管系とを含む身体部位の画像化(身体)領域のBスキャン210-1に対して、
図7の工程S220で定義される対象サブ領域は、(身体部位の解剖学における常識から)対象血管系に関するOCTデータの検出が予期される、Bスキャン210-1のサブ領域である。よって、対象サブ領域は、身体部位の画像化領域の、対象血管系を含む第2の(身体的)サブ領域から取得されたOCTデータを含む。このようにして、サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1における(好ましくは不変の)解剖学的特徴の検出可能な描出を用いて、Bスキャン210-1における対象サブ領域を定義する。その対象サブ領域において、(一般にOCTAデータ生成用の既知のアルゴリズムにより多数の繰り返しBスキャンを処理することによってのみ検出可能な)対象血管系の検出が予期される。
【0051】
身体部位の画像化領域が眼の網膜を含み、解剖学的特徴が眼の解剖学的層(好ましくはRPE)を含む本例示的実施形態では、サブ領域定義モジュール120は、工程S210で選択されたデータ要素を使用して、Bスキャン210-1における対象サブ領域を定義する。対象サブ領域は、(以下に説明するように)Bスキャン210-1の第2の軸に沿ってRPEを中心とし、第2の軸に沿ったサイズは、Bスキャン210-1において画像化された網膜の断面全体が収まるサイズである。OCTAに有用なOCTデータを含まないBスキャン210-1の残りから切り出されることになる対象サブ領域は、それゆえ網膜血管系の測定値から得られたOCTデータを含み、このOCTデータは、網膜の画像化領域における網膜血管系の描出を生成するため、任意の既知のOCTAデータ生成アルゴリズムによって(画像化領域の他の繰り返しスキャンからのOCTデータと共に)処理される。
【0052】
繰り返しBスキャン200の各Bスキャンを処理する際、サブ領域定義モジュール120は、選択されたデータ要素を使用して、(i)BスキャンにおけるRPE(又は他の選択された解剖学的特徴)の描出の位置を示す少なくとも1つの基準位置指標を決定するため、選択されたデータ要素を使用すること、及び(ii)当該少なくとも1つの基準位置指標によって示されるBスキャン内の解剖学的特徴の描出の位置に対して、Bスキャン内のそれぞれの対象サブ領域を定義すること、によってBスキャン内のそれぞれの対象サブ領域を定義してもよい。具体的には、繰り返しBスキャン200の各Bスキャンを処理する際、本例示的実施形態に示すように、サブ領域定義モジュール120は、選択されたデータ要素を使用して、(i)BスキャンにおけるRPE(又は他の選択された解剖学的特徴)の描出の位置を示すそれぞれの基準位置指標を決定するため、選択されたデータ要素を使用すること、及び(ii)当該それぞれの基準位置指標によって示されるBスキャン内の解剖学的特徴の描出の位置に対して、Bスキャン内のそれぞれの対象サブ領域を定義すること、によってBスキャン内のそれぞれの対象サブ領域を定義してもよい。
【0053】
ステップ(i)は種々の異なる方法で実行され得る。例えば、サブ領域定義モジュール120が、処理中のBスキャンの基準位置指標として、Bスキャンの第2の軸(z軸)に沿った選択されたデータ要素の座標値の平均値、すなわち選択されたデータ要素のz軸座標値の平均値を決定することによって、ステップ(i)を実行してもよい。本例示的実施形態で用いられるステップ(i)の別の例示的実装を以下に説明する。
【0054】
ステップ(ii)において、サブ領域定義モジュール120は、本例示的実施形態と同様に、Bスキャンにおけるそれぞれの対象サブ領域を、Bスキャンに対して(任意の手法で)決定された基準位置指標に対してBスキャンの第2の軸(z軸)に沿って所定のオフセットを有し、好ましくは固定のサイズを有する、Bスキャンのサブ領域として定義してもよい。一般に、対象サブ領域のサイズは固定でなくともよく、処理されたBスキャンの少なくとも一部の間で異なってもよい。
【0055】
次に、サブ領域定義モジュール120が、
図7の工程S210で選択されたデータ要素を用いて、本例示的実施形態における
図7の工程S220でBスキャン210-1のそれぞれの対象サブ領域を定義する工程を、
図10を参照して説明する。
図10に、
図7のS220の処理の実行方法の一例を示す。
【0056】
図10の工程S221において、サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1内の選択されたデータ要素の空間分布に二次関数を適合する。
図9の例示的Bスキャン210-1では、適合された二次関数は二次曲線720で示される。本例示的実施形態のように解剖学的特徴が網膜のRPEである場合、健康な目のRPEが通常放物線を描き、正の曲率を有することから、サブ領域定義モジュール120は、好ましくは選択されたデータ要素に二次適合を適用する。しかしながら、上記の代わりに、データの過剰適合を生じ得る高次多項式や、低精度な線形適合が、選択されたデータ要素の適合にあたりサブ領域定義モジュール120によって使用されることもある。曲線適合に使用される関数によって、適合精度、ひいては後述するBスキャン210-1の切り出し精度が決定される。
図10の工程S221を実行した結果、サブ領域定義モジュール120により、方程式z=a
1y
2+b
1y+c
1を満足する係数a
1、b
1、及びc
1の値が決定される。
【0057】
サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1における選択されたデータ要素の空間分布に対する関数の適合度に関する統計的測定値(例えば、平均絶対残差、平均二乗残差、残差標準偏差、決定係数(R2)等の適合度メトリック)を評価し、装置100(例えばワーキングメモリ630)にBスキャン210-1と関連付けて格納され得るフラグ又は他の指標を生成してもよい。該フラグ又は他の指標は、RPEを歪曲している疾患の存在により曲線適合不良が発生し、RPEの形状があらゆる健常眼に期待される放物線形状から逸脱している場合に、Bスキャン210-1が検査される必要があることを示す。
【0058】
例えば、脈絡膜新生血管(CNV)や加齢黄斑変性(AMD)は、網膜の形状、ひいてはRPEの形状を歪める可能性がある疾患である。サブ領域定義モジュール120によって生成された指標は、(例えば、装置100に接続されたディスプレイ(例えば、LCDスクリーン)上に表示されるグラフィック、又は、装置100に接続されたスピーカーから発せられる音声信号の形態の)警告を装置100のユーザに通知させ、疾患の兆候についてBスキャン210-1を検査するようユーザに促してもよい。警告は、例えば、
図10の工程S221の実行時点でも、その後、繰り返しBスキャン200又はそれから生成されたOCTAデータ500がユーザによって検査されている時点のいずれにおいても、ユーザに通知され得る。
【0059】
選択されたデータ要素の空間分布に対する二次関数の適合が良好であることを条件として(これは、例えば、適合関数の適合度メトリックを評価すること、及び評価された適合度メトリックが所定の閾値を上回る際に適合が良好であると判断することによって決定できる)、
図10の工程S221でサブ領域定義モジュール120により取得された関数係数a
1、b
1、及びc
1は、Bスキャン210-1のz軸に沿ったRPEの位置を示す、Bスキャン210-1のz軸に沿った基準座標を算出するために使用され得る。Bスキャン210-1のRPEの範囲上限を推定するため、z
1とz
2の最大値が取得される。z
1=c
1、z
2=a
1(w-1)
2+b
1(w-1)+c
1はそれぞれBスキャン210-1の左端(y=0)と右端(y=w-1)の列の推定RPE位置となる。ここで、列番号を0とし、Bスキャン210-1の幅(列の数、すなわちAスキャンの数)をwで表すものとする。Bスキャン210-1におけるRPEの範囲下限を推定するため、Bスキャン210-1のある列について、二次曲線の微分が最小となるzの値を求める。健康な網膜では、網膜の曲率が正のため、最小点はy=-b
1/(2・a
1)で生じる。サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1のz軸に沿った基準座標を、Bスキャン210-1におけるRPEの範囲上限及び範囲下限の平均値として算出する。
【0060】
具体的には、サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1のAスキャン全体に及ぶ第1の軸に沿ったインターバルでの適合関数の最大値を決定し、第1の軸に沿ったインターバルでの適合関数の最小値を決定し、最大値と最小値の平均値を基準座標として算出することによって、適合関数を使用してBスキャン210-1の第2の軸に沿ったそれぞれの基準座標を算出してもよい。
【0061】
次いで、サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1内の対象サブ領域を、算出された基準座標に対して、Bスキャン210-1のz軸に沿った所定のサイズ及び所定のオフセットを有するBスキャン210-1のサブ領域として定義してもよい。Bスキャン210-1のz軸に沿った対象領域のサイズ及びz軸に沿った基準座標に対する対象領域のオフセットは、眼の解剖学に関する常識、特に網膜の血管系が網膜の深さ方向においてRPEに対して通常どのように分布しているかについての常識から予め決定され得る。このようにして、サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1を水平方向に横切る帯状の矩形の対象サブ領域を定義してもよい。その上縁及び下縁はBスキャン210-1のy軸に平行であり、Bスキャン210-1の全長にわたり延出する。帯状部は、対象網膜血管系を含む、上述の眼の画像化領域の第2のサブ領域から取得されたOCTデータを含むような、Bスキャン210-1のz軸に沿ったサイズ及びBスキャン210-1のz軸に沿った位置を有する。
【0062】
しかしながら、本例示的実施形態では、
図10の工程S221で実行される選択されたデータ要素の空間分布に対する二次関数の適合は、
図9の適合二次曲線720より分かるように、良好ではない。これは、
図7の工程S210の結果、選択モジュール110が、領域216内のBスキャン210-1のデータ要素の選択とともに、RPE217を描出するデータ要素も選択するためである。このことは、これらの領域が工程S210で使用される閾値の値をともに所々満足するデータ要素値を有することに起因する。特に、領域216内のNFLを表すデータ要素は、RPE217のデータ要素と極めて類似したデータ要素値を有することから選択される。このことは、領域216からのデータ要素を、RPEを表すデータ要素と共に含めることは、サブ領域定義モジュール120によって実行される二次曲線適合の品質を低下させるため、望ましくない場合がある。領域216内の少なくともNFLの描出は、さらに、異なる被検体の網膜のOCT-Bスキャンにおいて不変でない。その結果、適合二次曲線720は、
図9よりわかるように、RPEの形状にうまく追従していない。結果として、上述したBスキャン210-1のz軸に沿った基準座標を算出する処理は、この場合、Bスキャン210-1のz軸に沿ったRPE(したがって網膜の中心)の位置の正確な表示を提供しないことになる。
【0063】
しかしながら、Bスキャン210-1はあくまで一例であって、他のBスキャンにおいては、サブ領域定義モジュール120が上述のように
図10の工程S221において適合された二次曲線を用いてBスキャン210-1における対象サブ領域を定義し得る程度にNFLが顕著でなく、あるいは全く存在しない(OCT撮像装置の設定次第)ことがあることに留意されたい。
【0064】
Bスキャン210-1におけるRPEの描出217により良い適合を提供する二次関数を決定するために、本例示的実施形態のサブ領域定義モジュール120は、二次関数を再び適合させ得る、データ要素の修正された選択を生成する。
【0065】
再び
図10を参照すると、工程S222において、サブ領域定義モジュール120は、まず、Bスキャン210-1の各Aスキャンについて、
図7の工程S210で選択されたAスキャン内のデータ要素の誤差測定のそれぞれの値を算出することによって、データ要素の修正された選択を生成する。これは、Aスキャンに沿って選択されたデータ要素の空間分布を示す。サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1の第1の軸(y軸)に沿ったAスキャンの座標における適合関数の値に対応するAスキャンのそれぞれのデータ要素を参照して、Bスキャン210-1の各Aスキャンについて誤差測定のそれぞれの値を算出する。言い換えれば、
図10の工程S221で得られた適合二次関数は、Aスキャンが位置するBスキャン210-1の第1の軸の座標で評価される。そして、Aスキャンが位置する第1の軸の座標値において、適合二次関数の値に最もよく一致する第2の軸(z軸)の座標値を有するAスキャンのデータ要素を、基準データ要素として選択する。サブ領域定義モジュール120は、基準データ要素に対するAスキャンの誤差測定の値を算出する。
【0066】
誤差測定値は、多くの適切な形式のうち1つの形式を取ることができる。例えば、誤差測定値は、本例示的実施形態のように、Aスキャンにおいて選択されたデータ要素(すなわち、
図7の工程S210で選択されたデータ要素)の位置の、Aスキャンにおける基準データ要素の位置からのそれぞれの偏差の正規化平均二乗誤差(NMSE)であってもよい。NMSEは、Cスキャン体積全体に共通の閾値を指定できるという利点がある。別の例として、誤差測定値は、Aスキャンにおける基準データ要素の位置からの、Aスキャンにおいて選択されたデータ要素の位置の絶対偏差の総和であってもよい。さらに別の例として、誤差測定値は、Aスキャンにおける基準データ要素の位置からの、Aスキャンにおいて選択されたデータ要素の位置の二乗偏差の総和であってもよい。
【0067】
図9は、Bスキャン210-1におけるAスキャンについて算出されたNMSEの値を、Bスキャン210-1におけるAスキャンの位置の関数として示した棒グラフ730を示す。
図9では、Bスキャン210-1のイラストに棒グラフ730が重畳され、棒グラフ730の棒は、Bスキャン210-1の上端縁を0として下方に延伸している。
図9の棒の長さはNMSEのそれぞれの値を表し、棒グラフ730が選択されたデータ要素710を覆うことなくBスキャン210-1内に収まるよう、共通の縮尺比で縮小されている。
【0068】
図10を参照すると、工程S223において、サブ領域定義モジュール120は、NMSEの各値を閾値誤差値と比較し、NMSEの値が閾値誤差値を超えているか否かを判断する。
【0069】
図10の工程S224において、サブ領域定義モジュール120は、閾値誤差値よりも大きい誤差測定の算出値を有するBスキャン210-1の各Aスキャンに対して、
図7の工程S210で選択された、Aスキャンのデータ要素からのデータ要素であり、Aスキャンの基準データ要素を下回るデータ要素のみを選択することにより、Bスキャン210-1のデータ要素810(
図11参照)の修正された選択を生成する。
図7の工程S210で選択されたAスキャンの選択されたデータ要素であって、そのAスキャンについて選択された基準データ要素を上回る(すなわち、Aスキャンについて選択されたデータ要素のz軸座標よりもz軸座標の値が小さい)データ要素は、
図11に示されるように、データ要素の修正された選択に含まれない。
【0070】
Bスキャン210-1のデータ要素から取り出した修正された選択のデータ要素810を、
図11に示す。
図11に示すように、修正された選択のデータ要素には、RPEを表すデータ要素は含まれるが、NFLを表すデータ要素は含まれない。
【0071】
図10の工程S225において、サブ領域定義モジュール120は、
図10の工程S224において選択されたデータ要素の修正された選択のBスキャン210-1内の空間分布に二次関数を適合する。
図10の工程S225で適合された二次関数は、
図11の二次曲線820で表される。
図11に示すように、二次曲線820は
図9に示す二次曲線720よりもRPEの描出217にはるかよく適合している。これは、NFLの描出を含む領域216からの多数のデータ要素が
図10の工程S224でなされたデータ要素810の修正された選択に含まれていないためである。その結果、
図11のBスキャン210-1に重畳され、二次曲線820及びデータ要素の修正された選択810を用いて算出されたNMSEの値が、Bスキャン210-1全体においてどのように変化するかを示す(
図9と同じ垂直(z軸)縮尺を用いた)棒グラフ830は、これらのNMSE値がBスキャン210-1全体ではるかに低いことを示している。
図10の工程S225を実行した結果、方程式z=a
2y
2+b
2y+c
2を満足する係数a
2、b
2、及びc
2の値がサブ領域定義モジュール120により決定される。
【0072】
この段階で、サブ領域定義モジュール120は、上述と同様に、Bスキャン210-1におけるデータ要素の修正された選択の空間分布に対する二次関数の適合度(工程S225で適合)に関する統計的計測値を評価してもよい。また、曲線適合不良がRPEを歪ませた疾患によって引き起こされ、その形状があらゆる健常眼に期待される放物線形から逸脱する場合に、Bスキャン210-1と関連付けられ、かつBスキャン210-1がさらに徹底して検査される必要があることを示すフラグを生成してもよい。例えば、脈絡膜新生血管(CNV)や加齢黄斑変性(AMD)は、網膜の形状、ひいてはRPEの形状を歪める可能性がある疾患である。サブ領域定義モジュール120によって生成されたフラグは、(例えば、装置100に接続されたディスプレイ(例えば、LCDスクリーン)上に表示されるグラフィック、又は、装置100に接続されたスピーカーから発せられる音声信号の形態の)警告を装置100のユーザに通知させ、疾患の兆候についてBスキャン210-1を検査するようユーザに促してもよい。警告は、例えば、
図10の工程S225の実行時点でも、その後、繰り返しBスキャン200又はそれから生成されたOCTAデータ500がユーザによって検査されている時点のいずれにおいても、ユーザに通知され得る。
【0073】
データ要素の修正された選択の空間分布に対する二次関数の適合が良好であることを条件として(これは、例えば、適合関数の適合度メトリック(例えば、R
2又は上述の他のメトリックの1つ以上)を評価すること、及び評価された適合度メトリックが所定の閾値を上回る際に適合が良好であると判断することによって決定できる)、
図10の工程S225でサブ領域定義モジュール120により取得された関数係数a
2、b
2、及びc
2は、Bスキャン210-1のz軸に沿ったRPEの位置を示す、Bスキャン210-1のz軸に沿った基準座標を算出するために使用され得る。Bスキャン210-1のRPEの範囲上限を推定するため、z’
1とz’
2の最大値が取得される。z’
1=c
2、z’
2=a
2(w-1)
2+b
2(w-1)+c
2はそれぞれBスキャン210-1の左端(y=0)と右端(y=w-1)の列の推定RPE位置となる。上述と同様に、Bスキャン210-1におけるRPEの範囲下限を推定するため、Bスキャン210-1のある列について、二次曲線の微分が最小となるzの値を求める。健康な網膜では、網膜の曲率が正のため、最小点はy=-b
2/(2・a
2)で生じる。サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1のz軸に沿った基準座標を、Bスキャン210-1におけるRPEの範囲上限及び範囲下限の平均値として算出する。
【0074】
具体的には、サブ領域定義モジュール120は、
図10の工程S225において、Bスキャン210-1のAスキャン全体に及ぶ第1の軸に沿ったインターバルでの適合関数の最大値を決定し、第1の軸に沿ったインターバルでの適合関数の最小値を決定し、最大値と最小値の平均値を基準座標として算出することによって、適合関数を使用してBスキャン210-1の第2の軸に沿ったそれぞれの基準座標を算出してもよい。
【0075】
図10の工程S227において、サブ領域定義モジュール120は、Bスキャン210-1の対象サブ領域を、
図10の工程S226で算出された基準座標に対して、Bスキャン210-1のz軸に沿った所定サイズ及び所定のオフセットを有するBスキャン210-1のサブ領域として定義する。対象サブ領域は、
図11に860で示されている。Bスキャン210-1のz軸に沿った対象領域860のサイズ及びz軸に沿った基準座標に対する対象領域860のオフセットは、眼の解剖学、特に、網膜の血管系が網膜の深さ方向においてRPEに対して典型的にどのように分布するかについての常識から予め決定され得る。このようにして、サブ領域定義モジュール120は、その上縁840及び下縁850がBスキャン210-1のy軸に平行であり、Bスキャン210-1全体に及び、帯状をなしてBスキャン210-1を横切って延びる矩形の対象サブ領域860を定義してもよい。帯状部は、対象網膜血管系を含む、上述の眼の画像化領域の第2のサブ領域から取得されたOCTデータを含むような、Bスキャン210-1のz軸に沿ったサイズ及びBスキャン210-1のz軸に沿った位置を有する。
【0076】
切り出しモジュール130は、上縁840を基準座標より上の所定数αのピクセルと定義し、下縁850を基準座標より下の所定数βのピクセルと定義してもよい。ここで、αとβはユーザが設定可能なパラメータである。しかしながら、αとβは、代替的に、対象領域860の指定された上下比率(すなわち、基準座標と対象サブ領域860の上部との間の距離の、基準座標と対象サブ領域860の下部との間の距離に対する比率)及び指定された高さを使用して決定されてもよい。言い換えれば、対象領域860の必要な高さ(すなわち、Bスキャンの切り出し高さ)を指定し、指定された上下比率に合うようにα、βを決定してもよい。
【0077】
本例示的実施形態では、計算量の削減と必要な曲線適合精度のトレードオフとしての実用上の理由から、データ要素の修正された選択は一度のみ使用されている。しかしながら、この絞り込みを複数回行って、その結果選択されたデータ要素に適合する二次曲線を用いて、より多くの非RPEデータ要素を破棄してもよい。
【0078】
再び
図7を参照すると、
図7のステップS230において、切り出しモジュール130は、Bスキャン210-1を切り出して対象サブ領域860のみを残すことで、それぞれの切り出しBスキャン310-1を生成する。言い換えれば、それぞれの切り出しBスキャン310-1は、Bスキャン210-1のうち、対象サブ領域860の上縁840から上方に延在する不要な外側領域と、Bスキャン210-1のうち、対象サブ領域860の下縁850から下方に延在する不要な外側領域とを除去することで生成される。
【0079】
図7の任意選択の工程S240において、切り出しモジュール130は、以下に
図12を参照して説明する処理により、切り出しBスキャン310-1のサイズを所定サイズに調整する。
【0080】
図12の工程S242において、切り出しモジュール130は、
図10の工程S227で定義された所定の対象サブ領域860が、Bスキャン210-1の第1の軸(又は第2の軸)に沿ってBスキャン201-1の端縁まで延在しているか否かを判断する。
【0081】
図12の工程S244において、切り出しモジュール130は、第1の軸(場合により第2の軸)に沿った切り出しBスキャン130-1のサイズが所定サイズより小さいか否かを判断する。
【0082】
図12の工程S242で対象サブ領域860が第1の軸(場合により第2の軸)に沿ってBスキャン120-1の端縁まで延在していると判断され、また
図12の工程S244で第1の軸(場合により第2の軸)に沿った切り出しBスキャン130-1のサイズが所定サイズより小さいと判断された場合、
図12の工程S246において、切り出しモジュール130は、第1の軸(場合により第2の軸)に沿って切り出しBスキャン130-1を拡大することで、切り出しBスキャン130-1が、Bスキャン120-1から算出されたノイズプロファイルに基づくデータ要素値を有する追加のデータ要素(パディング)を有するように、切り出しBスキャン130-1のサイズを所定サイズまで増大させる。
【0083】
ノイズプロファイルを生成するため、切り出しモジュール130は、その位置がパディングが適用される場所に依存するBスキャン210-1の領域をサンプリングしてもよい。パディングがAスキャンの上部に必要な場合、切り出しモジュール130は、「浮遊物」のような生体アーチファクトを含まない硝子体中の領域をサンプリングすることによってノイズプロファイルを生成し得る。画像処理を利用して、このような領域を定義できる。Aスキャンの下部でのパディングについて、切り出しモジュール130は、脈絡膜領域と同様のサンプリングを実行し、ノイズプロファイルの生成に使用される領域にも脈絡膜等のアーチファクトがないことを確認してもよい。
【0084】
あるいは、切り出しモジュール130は、各切り出しBスキャン130-1について、情報が欠落している領域(パディングを必要としたピクセル)を単に維持してもよい。これらの領域は、後続のアルゴリズムによって、計算中に対応するピクセル値を破棄したり、使用を回避したりするために使用される。
【0085】
要約すると、前述では、OCTAデータ生成ソフトウェアがOCT-Bスキャンにおける大幅な軸方向の移動を修正することを可能とし、同時により迅速な処理とより少ないメモリ消費のためにOCTAボリュームサイズを低減し得る、例示的実施形態による装置100について説明した。従来のOCTAデータ生成ソフトウェアは一般的に位置合わせを利用し、繰り返しフレームからOCTA信号を算出する前に、Bスキャンの繰り返しをアライメントさせる。オリジナルBスキャンのサイズによっては、この作業に長い時間がかかり、軸方向の移動が大きい場合は、位置合わせアルゴリズムが収束しないことがある。例示的実施形態によれば、事前位置合わせ工程を提供することでこれらの課題に対処する。この工程により、各々が中央に網膜を有する、適切にアライメントされた部分Bスキャンのセットが取得される。連続した部分Bスキャンの画像位置合わせにより、さらにアライメントを向上させることができる。最後に、網膜を中心としたOCT体積を作成するためにオリジナルBスキャンを切り出したため、新しい体積にはOCTAフロー信号の検出に必要な全ての情報が含まれ、OCTAフロー信号のない関連性の低いピクセル(硝子体や脈絡膜深部等)は切り出し時に全て破棄されている。このように前処理されたOCT体積のボクセル数を減らすことで、その後のOCTAデータ生成アルゴリズムのメモリ要件及び計算要件を低減する。
[変形例]
【0086】
上述の実施形態及びその変形例には、種々の変更を加えることができる。
【0087】
例えば、説明したフローチャートの一部の工程の順序を変更してもよい。例えば、
図12において、工程S242と工程S244の実行順序は逆であってもよい。
【0088】
さらに、本例示的実施形態の選択モジュール110が、Bスキャン210-1におけるRPEの描出に沿って分布するデータ要素のサブセットを選択する、上述した
図7の工程S210は一例であり、この選択は他の方法で実行され得る。代替として、例えば選択モジュール110は、Bスキャン210-1のデータ要素から、サブセット内のデータ要素が解剖学的特徴(例えば、RPE)の描出に沿って分布するように、データ要素の(適切な)サブセットを選択すべく構成されてもよい。この選択は、網膜層セグメンテーションアルゴリズムを利用してBスキャン210-1を複数の網膜層にセグメント化し、(Bスキャン210-1が網膜層セグメンテーションアルゴリズムによりセグメント化されている)複数の網膜層中の所定の網膜層を識別し、サブセットについて、識別された網膜層中のデータ要素を選択する、ことによって行われ得る。網膜層セグメンテーションアルゴリズムは、OCT網膜画像を個別の網膜層に自動的にセグメント化するために使用されてきた各種画像分類アルゴリズムのうちの1つであってもよい。このようなアルゴリズムについての概観が、非特許文献2に記載されている。その内容は参照により本明細書に援用される。網膜層セグメンテーションアルゴリズムは、例えば、mクラス分類タスクに確率的な出力を提供するセマンティックセグメンテーションのための任意の種類のアルゴリズムであってもよい。網膜層セグメンテーションアルゴリズムは、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、ガウス混合モデル、ランダムフォレスト、ベイズ分類器、又はサポートベクターマシンを含んでもよい。そのような場合、RPEに属する(可能性が最も高い)と識別されたデータ要素は、例示的実施形態の装置100の変形例によって実行される方法におけるデータ要素の選択されたサブセットとなる。
【0089】
図7のステップS210の本例示的実施形態における実装のさらなる代替として、データ要素のサブセットの選択は、選択されたデータ要素がBスキャンにおける解剖学的特徴の描出に沿って分布するように、任意の既知のエッジ検出技術を用いて行われてもよい。具体的には、画像エッジ検出法を用いて、Bスキャン210-1における反射率の顕著な変化を特定してもよい。反射率の顕著な変化は、
図9では、RPE217の下方境界、RPE217の上方境界、内側/外側セグメント接合部219の下方境界、内側/外側セグメント接合部219の上方境界(すなわち領域216の下方境界)、及び領域216の上方境界で現れ得る。そして、エッジ検出結果を用いてRPE217の上方・下方境界を特定し、特定した境界の間にあるデータ要素をサブセットについて選択してもよい。あるいは、RPEの境界の1つに沿って配置されたデータ要素をサブセットについて選択してもよい。エッジ検出結果におけるRPEの一方又は両方の境界の特定は、例えば、Bスキャン210-1における下端縁をRPEの下方境界とみなすことによって、任意の適切な方法で達成され得る。使用する画像エッジ検出法は、サーチベースでもゼロクロスベースでもよく、画像処理カーネルを使用して実行されてもよい。例えば、Canny、Laplacian、Laplacian of Gaussian、Prewitt、Sobel、Robertのいずれかのエッジ検出法であってもよい。機械学習に基づくエッジ検出法を用いてもよい。エッジ検出の前に、エッジシニングやノイズ除去等の前処理技術を用いてもよい。
【0090】
上述の例示的実施形態及びその変形例で使用されるデータ処理技術は、網膜OCTスキャンのみならず、より一般的には、身体部位における血管系の描出を提供するOCTAデータを生成するために処理できる、他の身体部位の繰り返しOCT-Bスキャンにも適用可能である。例えば、ヒト又は動物の皮膚は身体部位の別の例とみなすことができ、その繰り返しOCT-Bスキャンを例えば真皮又は皮下脂肪等の皮膚の領域における血管系を表すOCTAデータを生成するために、既知のOCTAデータ生成技術を用いて処理され得る。例えば表皮と真皮をカバーする皮膚の繰り返しOCT-Bスキャンは、上述した例示的実施形態の網膜Bスキャンと同様の方法で処理され得る。この場合、真皮と表皮の境界を、(RPEもしくは網膜の他の層に代えて)上述の解剖学的特徴とみなしてもよい。この境界は通常、表皮を表すBスキャンの領域と、その下にある真皮を表すBスキャンの大幅に明るい領域又は大幅に暗い領域との境界として、Bスキャンに現れる。
【0091】
本明細書で説明した例示的態様は、OCT血管造影(OCTA)データを生成するためにOCT-Bスキャンを処理する従来の方法及びシステムに関する、特にコンピュータ技術に根ざした制限を回避するものである。同方法及びシステムは、通常、画像位置合わせアルゴリズムを用いて繰り返しBスキャン間の軸方向のオフセットを補償する、前処理段階を含む。このような従来の方法及びシステムは、コンピュータ資源に過度の負担をかける。一方、本明細書に記載された例示的態様によって、従来のシステム/方法よりも比較的少ないコンピュータ処理及びメモリ資源を必要とし得る方法でOCTAデータを生成でき、従来のシステム/方法よりも計算効率及び資源効率の高い方法でOCTAデータ生成を実行できる。また、コンピュータ技術に根ざした本明細書に記載された例示的態様の前述の能力により、本明細書に記載された例示的態様は、コンピュータ及びコンピュータ処理/機能を改善し、また少なくともOCT血管造影及びデータ処理、ならびにOCT画像データ処理の分野を改善する。
【0092】
上述した実施形態の一部を、以下の実施例E1~E12に要約する。
【0093】
E1.対象血管系の描出を提供するOCT血管造影データ(500)の生成に用いる切り出しBスキャン(300)を生成するために、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像装置によって取得された身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャン(200)を処理する、装置(100)であって、前記画像化領域は、前記画像化領域の第1のサブ領域に限定される解剖学的特徴、及び前記画像化領域の第2のサブ領域に限定される対象血管系を含み、前記装置(100)は、前記選択されたデータ要素が前記Bスキャン(210-1)における解剖学的特徴の描出(217)に沿って分布するように、前記Bスキャン(210-1)のデータ要素から前記データ要素のそれぞれのサブセットを選択することによって、前記繰り返しBスキャン(200)の前記各Bスキャン(210-1)を処理すべく構成された選択モジュール(110)と、前記Bスキャン(210-1)におけるそれぞれの対象サブ領域(860)を定義するために、前記Bスキャン(210-1)の前記データ要素から前記選択モジュール(110)によって選択されたデータ要素のサブセットを用いて、繰り返しBスキャン(200)の前記各Bスキャン(210-1)を処理すべく構成されたサブ領域定義モジュール(120)であって、前記それぞれの対象サブ領域(860)は、対象血管系を含む第2のサブ領域から取得されたOCTデータを含む、サブ領域定義モジュール(120)と、前記サブ領域定義モジュール(120)によって前記Bスキャンに対して定義されたそれぞれの対象サブ領域(860)をBスキャンに残すため、前記繰り返しBスキャン(200)の各Bスキャン(210-1)を切り出すことによって切り出しBスキャン(300)を生成すべく構成された切り出しモジュール(130)と、を含む。
【0094】
E2.E1に記載の装置(100)であって、前記身体部位は目を含み、前記身体部位の前記画像化領域は、眼の網膜を含み、前記解剖学的特徴は、前記網膜の解剖学的層を含む。
【0095】
E3.E2に記載の装置(100)であって、前記網膜の解剖学的層は、網膜の網膜色素上皮(RPE)であり、前記選択モジュール(110)は、前記Bスキャン(210-1)におけるデータ要素のそれぞれの値が閾値に対して所定の関係を有するか否かを判断し、前記サブセットについて、値が前記閾値に対して所定の関係を有するデータ要素を選択することによって、前記繰り返しBスキャン(200)の各Bスキャンに対するデータ要素のそれぞれのサブセットを選択すべく構成されている。前記閾値は、前記選択されたデータ要素の少なくとも一部が前記Bスキャン(210-1)におけるRPEの描出(217)に沿って分布するように設定される。
【0096】
E4.E3に記載の装置(100)であって、選択モジュール(110)が、前記Bスキャン(210-1)における前記データ要素値の平均値からの標準偏差の数kを超える所定数のデータ要素のみが存在するように、前記Bスキャン(210-1)におけるデータ要素値から前記閾値を算出するために、前記繰り返しBスキャン(200)の各Bスキャン(210-1)を処理すべく構成され、kは、前記選択されたデータ要素の少なくとも一部が、前記Bスキャン(210-1)におけるRPEの描出(217)に沿って分布するように設定され、前記選択モジュール(110)は、所定のタイプの統計分布に従って分布するように前記Bスキャン(210-1)におけるデータ要素値をモデル化することによって、前記閾値を算出すべく構成されている。
【0097】
E5.E1~E4のいずれか一項に記載の装置(100)であって、各Bスキャン(210-1)は、前記Bスキャン(210-1)の第1の軸(213)に沿って配列されたAスキャンのアレイを含み、前記Aスキャンの各々は、前記Bスキャンの第2の軸(214)に沿って配列されたデータ要素を含み、前記解剖学的特徴は、前記画像化領域の前記第1のサブ領域に広がる身体部位の解剖学的層を含み、前記サブ領域定義モジュール(120)は、前記Bスキャンにおけるそれぞれの対象サブ領域(860)を定義するために、前記選択されたデータ要素の前記Bスキャン内の分布に関数を適合させ、前記Bスキャン(210-1)の前記第2の軸(214)に沿ったそれぞれの基準座標を算出するため、適合関数を使用し、前記Bスキャン(210-1)におけるそれぞれの対象サブ領域(860)を、前記算出されたそれぞれの基準座標に対する前記Bスキャン(210-1)の前記第2の軸(214)に沿った所定サイズと所定のオフセットを有するBスキャン(210-1)のサブ領域として定義する、ことにより、前記Bスキャンの前記データ要素から前記選択モジュール(110)によって選択されたデータ要素の前記サブセットを利用して、前記繰り返しBスキャン(200)の各Bスキャン(210-1)を処理すべく構成されている。
【0098】
E6.E5に記載の装置(100)であって、前記身体部位は目を含み、前記身体部位の前記画像化領域は、眼の網膜を含み、前記解剖学的層は網膜の網膜色素上皮(RPE)を含み、前記関数は二次関数である
【0099】
E7.E3又はE4に記載の装置(100)であって、各Bスキャン(210-1)は、Bスキャン(210-1)の第1の軸(213)に沿って配列されたAスキャンのアレイからなり、Aスキャンの各々は、Bスキャン(210-1)の第2の軸(214)に沿って配列されたデータ要素からなり、かつ前記サブ領域定義モジュール(120)は、前記Bスキャンにおけるそれぞれの対象サブ領域(860)を定義するために、前記選択されたデータ要素の前記Bスキャン(210-1)内の分布に関数を適合させ、前記Bスキャン(210-1)内の各Aスキャンについて、前記Aスキャンに沿った前記選択されたデータ要素の分布を示す、Aスキャン内の前記選択されたデータ要素の誤差測定のそれぞれの値を算出し、前記誤差測定のそれぞれの値は、前記第1の軸(213)に沿った前記Aスキャンの座標における適合関数の値に対応する前記Aスキャンのそれぞれのデータ要素を参照して、前記Bスキャン(210-1)の各Aスキャンについて算出され、前記Bスキャン(210-1)の各Aスキャンについて、前記Aスキャンの前記選択されたデータ要素について算出された前記誤差測定の値を、閾値誤差値と比較し、前記閾値誤差値よりも大きい誤差測定算出値を有する前記Bスキャン(210-1)の各Aスキャンに対して、前記Aスキャンの選択されたデータ要素から、前記Aスキャンのそれぞれのデータ要素の下にあるデータ要素を選択することにより、前記Bスキャン(210-1)内のデータ要素の修正された選択を生成し、データ要素の修正された選択のBスキャン(210-1)内の分布に前記関数を適合させ、前記Bスキャン(210-1)の前記第2の軸(214)に沿ったそれぞれの基準座標を算出すべく前記データ要素の修正された選択の前記Bスキャン(210-1)内の分布に適合する関数を使用し、前記Bスキャン(210-1)におけるそれぞれの対象サブ領域(860)を、前記算出されたそれぞれの基準座標に対する前記Bスキャン(210-1)の前記第2の軸(214)に沿った所定サイズと所定のオフセットを有するBスキャンのサブ領域として定義する、ことにより、前記Bスキャンの前記データ要素から前記選択モジュール(110)によって選択されたデータ要素の前記サブセットを利用して、前記繰り返しBスキャン(200)の各Bスキャン(210-1)を処理すべく構成されている。
【0100】
E8.E7に記載の装置(100)であって、前記誤差測定値が、前記第1の軸(213)に沿った前記Aスキャンの座標における前記適合関数の値に対応する前記Aスキャンのデータ要素の位置からの前記選択されたデータ要素の位置のそれぞれの偏差の正規化平均二乗誤差、前記第1の軸(213)に沿った前記Aスキャンの座標における前記適合関数の値に対応する前記Aスキャンのデータ要素の位置からの前記選択されたデータ要素の位置の絶対偏差の総和、及び前記第1の軸(213)に沿った前記Aスキャンの座標における前記適合関数の値に対応する前記Aスキャンのデータ要素の位置からの前記選択されたデータ要素のそれぞれの位置の二乗偏差の総和のうち1つを含む。
【0101】
E9.前記関数は二次関数である、E7又はE8に記載の装置。
【0102】
E10.E5からE9のいずれか一項に記載の装置(100)であって、前記サブ領域定義モジュール(120)は、前記Bスキャンの前記第2の軸(214)に沿ったそれぞれの基準座標を算出するため、前記Bスキャン(210-1)の前記Aスキャン全体に及ぶ前記第1の軸(213)に沿ったインターバルでの前記適合関数の最大値を決定し、前記第1の軸(213)に沿ったインターバルでの前記適合関数の最小値を決定し、前記最大値と前記最小値の平均値を前記それぞれの基準座標として算出する、ことにより前記適合関数を使用すべく構成されている。
【0103】
E11.E1~E10のいずれか一項に記載の装置(100)であって、各Bスキャン(210-1)は、Bスキャン(210-1)の第1の軸(213)に沿って配列されたAスキャンのアレイからなり、Aスキャンの各々は、Bスキャン(210-1)の第2の軸(214)に沿って配列されたデータ要素からなり、かつ前記切り出しモジュール(130)は、さらに、前記定義された対象サブ領域(860)が、前記第1の軸(213)及び前記第2の軸(214)のいずれかに沿って、Bスキャン(210-1)の端縁まで延在しているか否かを判断し、前記第1の軸(213)及び前記第2の軸(214)のいずれかに沿った切り出しBスキャン(310-1)のサイズが所定サイズより小さいか否かを判断し、前記対象サブ領域(860)が前記第1の軸(213)及び前記第2の軸(214)のいずれかに沿って前記Bスキャンの端縁まで延在していると判断され、かつ前記第1の軸(213)及び前記第2の軸(214)のいずれかに沿った切り出しBスキャン(310-1)のサイズが前記所定サイズより小さいと判断された場合、データ要素値が前記Bスキャンから算出されたノイズプロファイルに基づく追加のデータ要素を有するように、前記第1の軸(213)及び前記第2の軸(214)のいずれかに沿って前記切り出しBスキャン(310-1)を拡大することにより、前記切り出しBスキャン(310-1)のサイズを前記所定サイズまで増大させるように構成されている。
【0104】
E12.身体部位の画像化領域における血管系の描出を提供する光コヒーレンストモグラフィ血管造影(OCTA)データ(500)を生成する装置(400)であって、装置(400)は、光コヒーレンストモグラフィ撮像装置によって取得された前記身体部位の画像化領域の繰り返しBスキャン(200)を受信すべく構成された受信モジュール(410)と、E1からE11のいずれか一項に記載の装置(100)であって、前記切り出しBスキャン(300)を生成するため、前記受信した繰り返しOCT-Bスキャン(200)を処理すべく構成された装置(100)と、前記切り出しBスキャン(300)を処理してOCTAデータ(500)を生成すべく構成されたOCTAデータ生成モジュール(420)とを含む。
【0105】
前述の説明では、いくつかの例示的実施形態を参照して例示的態様が説明される。したがって、本明細書は制限的でなく、例示的とみなされるべきである。同様に、例示的実施形態の機能及び利点をハイライトした図面中の図は、例示のためにのみ提示されるものである。例示的実施形態のアーキテクチャは、添付図面に示す以外の方法で利用することができるよう、柔軟性に富み、様々に構成可能である。
【0106】
本明細書中に提示されたソフトウェアの例示的実施形態は、機械アクセス可能媒体もしくは機械可読媒体、命令ストア、又はコンピュータ可読記憶装置等の製造物品に含有もしくは格納される、命令もしくは命令列を有する1又は複数のプログラム等のコンピュータプログラム、又はソフトウェアとして提供されてもよく、一例示的実施形態において、その各々は非一過性であってもよい。非一過性の機械アクセス可能な媒体、機械可読媒体、命令ストア、又はコンピュータ可読記憶装置上のプログラム又は命令は、コンピュータシステム又は他の電子装置をプログラムするために使用できる。機械可読媒体又はコンピュータ可読媒体、命令ストア、及び記憶装置は、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、及び光磁気ディスク、又は電子命令を格納又は送信するのに適した他のタイプの媒体/機械可読媒体/命令ストア/記憶装置を含んでもよいが、これらに限定されない。本明細書に記載された技術は、特定のソフトウェア構成に限定されない。任意のコンピュータ環境又は処理環境に適用可能である。本明細書で使用される用語「コンピュータ可読」、「機械アクセス可能媒体」、「機械可読媒体」、「命令ストア」、「コンピュータ可読記憶装置」は、機械、コンピュータ、又はコンピュータプロセッサによる実行のための命令又は命令列を記憶、符号化、又は送信することができ、機械/コンピュータ/コンピュータプロセッサに、本明細書に記載される方法のいずれか1つを実行させる、任意の媒体を含むものとする。さらに、当技術分野では、ソフトウェアを、いかなる形態にせよ(例えば、プログラム、手順、工程、アプリケーション、モジュール、ユニット、ロジック等)、アクションを起こす、又は結果を引き起こすものとみなすのが一般的である。このような表現は、処理システムによるソフトウェアの実行によって、プロセッサにあるアクションを実行させ、結果をもたらすことを示す単なる省略表現に過ぎない。
【0107】
また、一部の実施形態は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイの準備、又は従来の構成回路の適切なネットワークの相互接続によって実施できる。
【0108】
一部の実施形態は、コンピュータプログラム製品を含む。コンピュータプログラム製品は1又は複数の記憶媒体、1又は複数の命令ストア、あるいは1又は複数の記憶装置とすることができ、これらはコンピュータ又はコンピュータプロセッサの制御のため、あるいはコンピュータ又はコンピュータプロセッサに本明細書に記載される例示的実施形態の手順のいずれかを実行させるために使用可能な命令を記憶もしくは格納している。記憶媒体/命令ストア/記憶装置は、例えば、光ディスク、ROM、RAM、EPROM、EEPROM、DRAM、VRAM、フラッシュメモリ、フラッシュカード、磁気カード、光カード、ナノシステム、分子メモリ集積回路、RAID、リモートデータストレージ/アーカイブ/ウェアハウジング、及び/又は命令及び/又はデータの記憶に適した他のタイプのデバイスを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0109】
一部の実装は、1又は複数のコンピュータ可読媒体、1又は複数の命令ストア、あるいは1又は複数の記憶装置のいずれかに格納されたソフトウェアであって、該ソフトウェアはシステムのハードウェアを制御し、システム又はマイクロプロセッサが本明細書に記載された例示的実施形態の結果を利用して人間のユーザ又は他の機構と相互作用することを可能とするものである。これらのソフトウェアは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、ユーザアプリケーションを含んでもよいが、これらに限定されない。究極的には、これらのコンピュータ可読媒体又は1又は複数の記憶装置は、上述したように、本発明の例示的態様を実行するためのソフトウェアをさらに含む。
【0110】
本システムのプログラミング及び/又はソフトウェアには、本明細書で説明する手順を実行するためのソフトウェアモジュールが含まれる。本明細書の一部の例示的実施形態において、モジュールはソフトウェアを含み、本明細書の他の例示的実施形態では、モジュールはハードウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを含む。
【0111】
以上、本発明の各種例示的実施形態を説明したが、これらは一例であって、本発明をなんら限定するものでないことを理解されたい。形状や細部に各種変更が可能であることは、関連する技術分野の当業者には明らかであろう。ゆえに、本発明は上述したいずれの例示的実施形態によっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲とその均等物によってのみ定義されるべきものである。
【0112】
さらに、要約書の目的は、特許庁と一般人、特に特許用語や法律用語に精通していない科学者、技術者、当業者が、一読によって、本願の技術開示の性質と本質とを素早く判断できるようにすることにある。要約書は、本明細書に提示された例示的実施形態の範囲に関して、いかなる意味でも限定することを意図していない。また、特許請求の範囲に記載された手順は、提示された順序で実行される必要はないことを理解されたい。
【0113】
本明細書には多くの具体的な実施形態の詳細が記載されているが、これらは発明の範囲又は特許請求の範囲を制限するものと解釈されるべきではなく、むしろ本明細書に記載された特定の実施形態に固有の特徴の記述として解釈されるべきである。本明細書で別個の実施形態において説明された特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態において説明された各種の特徴は、複数の実施形態において別々に、又は任意の適切なサブ組み合わせで実施することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして記述されることがあり、当初そのように特許請求されることすらあり得るが、そうした特許請求される組み合わせの1つ以上の特徴は、場合によっては組み合わせから削除され、特許請求される組み合わせは、サブ組み合わせ又はサブ組み合わせの変形となることもある。
【0114】
状況によっては、マルチタスクや並列処理が有利な場合もある。さらに、上述した実施形態における各種構成要素の分離は、全ての実施形態においてそのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、説明したプログラム構成要素及びシステムは、一般に単一のソフトウェア製品において統合可能であり、又は複数のソフトウェア製品にパッケージング可能であることが理解されよう。
【0115】
いくつかの例示的実施形態及び態様を説明したが、上記は例示的に提示されたものであり、なんら限定するものではないことは明らかである。特に、本明細書に示した例の多くは、装置又はソフトウェア要素の特定の組み合わせを含むが、それらの要素は、同じ目的を達するために他の方法にて組み合わせることができる。一実施形態に関連してのみ論じられた行為、要素及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【外国語明細書】