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特開2023-126155金属液滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及び支持構造体を構築するための動作方法
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  • 特開-金属液滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及び支持構造体を構築するための動作方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126155
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】金属液滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及び支持構造体を構築するための動作方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/43 20210101AFI20230831BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20230831BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20230831BHJP
   B22F 12/82 20210101ALI20230831BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230831BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230831BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B22F10/43
B22F10/22
B22F12/50
B22F12/82
B33Y30/00
B33Y10/00
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023408
(22)【出願日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】17/652,911
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】コリン、アレクサンダー、ラッド
(72)【発明者】
【氏名】ポール、ジェイ.、マッコンビル
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア、エス.、ヒルトン
【テーマコード(参考)】
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4K018AA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】構築環境に悪影響を及ぼすことなく、金属液滴吐出プリンタが金属物体のオーバーハング部、他の延出特徴部、及び内部空洞を形成することを可能にする支持構造体を形成することができる金属液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】本発明の三次元(3D)金属物体製造装置には、いずれかのタイプの支持構造体によって支持される金属物体特徴部を製造する前に、ケイ酸塩スラリー中に懸濁された溶融微粒子を有する支持構造体層を構築するための、又はケイ酸塩スラリーの層を金属支持構造体に塗布するためのケイ酸塩スラリー塗布システムが装備されている。ケイ酸塩支持構造体又は金属支持構造体の表面に塗布された層の溶融微粒子は、ガラス質の脆性層を形成し、その上に金属物体特徴部が形成される。このガラス質の脆性構造体は、物体が製造された後に物体から比較的容易に除去される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容部を有する容器を有するエジェクタヘッドであって、前記収容部は、溶融金属を保持し、溶融金属の液滴を吐出するように構成されている、エジェクタヘッドと、
平面部材と、
ケイ酸塩スラリーの層を表面に塗布するように構成された押出機と、
を備える、金属液滴吐出装置。
【請求項2】
塗布器が動作可能に接続された関節アームと、
前記ケイ酸塩スラリーの体積を保持するように構成されたリザーバと、
前記リザーバを前記塗布器に流体接続するように構成された導管と、
前記関節アーム及び前記押出機に動作可能に接続されたコントローラを更に備え、前記コントローラは、
前記関節アームを動作させて、前記平面部材上の三次元(3D)空間内で前記押出機を移動させ、かつ前記押出機が前記3D空間内で移動するときに、前記押出機を動作させて、前記表面に前記ケイ酸塩スラリーの前記層を塗布するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記押出機は、
前記押出機から前記ケイ酸塩スラリーを放出するように構成されたアクチュエータを更に備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、プランジャを駆動するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、主ねじを駆動するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラが、
前記エジェクタヘッドを動作させて、溶融金属液滴を吐出して支持構造体の層を形成し、
前記関節アーム及び前記押出機を動作させて、前記溶融金属液滴で形成された前記支持構造体の表面に前記ケイ酸塩スラリーの前記層を塗布し、
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記支持構造体の前記表面上の前記ケイ酸塩スラリーの前記層上に溶融金属液滴を吐出するように
更に構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラが、
前記エジェクタヘッドを動作させて前記ケイ酸塩スラリーの前記層上に溶融金属液滴を吐出する前に、所定の期間遅延させるように
更に構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラが、
前記関節アーム及び前記押出機を動作させて、前記ケイ酸塩スラリーで支持構造体の層を形成し、
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記ケイ酸塩スラリーで形成された前記支持構造体上に溶融金属液滴を吐出するように
更に構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記コントローラが、
前記エジェクタヘッドを動作させて前記ケイ酸塩スラリーの前記層で形成された前記支持構造体上に溶融金属液滴を吐出する前に、所定の期間遅延させるように
更に構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記コントローラが、
前記押出機を動作させて、前記平面部材上に前記ケイ酸塩スラリーの層を形成するように
更に構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項11】
金属液滴吐出装置を動作させる方法であって、
押出機を動作させて、ケイ酸塩スラリーの層を表面に塗布することと、
エジェクタヘッドを動作させて、前記ケイ酸塩スラリーの前記層上に溶融金属液滴を吐出することと、
を含む、方法。
【請求項12】
関節アームを動作させて、平面部材上の三次元(3D)空間内で前記押出機を移動させることと、
前記押出機が前記3D空間内で移動している間に、前記押出機を動作させて、前記ケイ酸塩スラリーの前記層を前記表面に塗布することと、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アクチュエータを動作させて前記押出機から前記ケイ酸塩スラリーを放出すること
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アクチュエータの前記動作は、プランジャを駆動して前記ケイ酸塩スラリーを放出するよう、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アクチュエータの前記動作は、主ネジを駆動して前記ケイ酸塩スラリーを放出する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記エジェクタヘッドを動作させて、溶融金属液滴を吐出して支持構造体の層を形成することと、
前記関節アーム及び前記押出機を動作させて、前記溶融金属液滴で形成された前記支持構造体の表面に前記ケイ酸塩スラリーの前記層を塗布することと、
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記支持構造体の前記表面上の前記ケイ酸塩スラリーの前記層上に溶融金属液滴を吐出することと、
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記エジェクタヘッドを動作させて前記ケイ酸塩スラリーの前記層上に溶融金属液滴を吐出する前に、所定の期間遅延させること
を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記関節アーム及び前記押出機を動作させて、前記ケイ酸塩スラリーで支持構造体の層を形成することと、
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記ケイ酸塩スラリーで形成された前記支持構造体上に溶融金属液滴を吐出することと、
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記ケイ酸塩スラリーの前記層で形成された前記支持構造体上に溶融金属液滴を吐出する前に、所定の期間遅延させること
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記押出機を動作させて、前記平面部材上に前記ケイ酸塩スラリーの層を形成すること
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融金属液滴を吐出して物体を形成する三次元(three-dimensional、3D)物体プリンタを対象とし、より具体的には、かかるプリンタで構築された金属物体上にオーバーハング特徴部などが形成されることを可能にする支持構造体の構築を対象とする。
【背景技術】
【0002】
積層造形(additive manufacturing)としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、積層造形デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する積層プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、フォトポリマー又はエラストマーなどの紫外線硬化材料を吐出するエジェクタを使用するが、他の技術は、エラストマーを溶融し、熱可塑性材料を押出して物体層にする。プリンタは、典型的には、可塑性又は熱可塑性材料の連続層を形成して、様々な形状及び構造を有する三次元印刷物体を構築するように、1つ以上のエジェクタ又は押出機を動作させる。三次元被印刷物体の各層が形成された後、可塑性材料は、紫外線硬化され、固まり、その層を三次元被印刷物体の下地層に接着する。この積層造形法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
1つ以上のエジェクタから、溶融金属の液滴を吐出して3D物体を形成するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール又はペレットなどの固体金属源を有し、この固体金属源は、固体金属が溶融されるプリンタ内の容器の加熱された収容部に固体金属を供給し、溶融金属が収容部を充填する。収容部は、周囲に電気ワイヤが巻き付けられてコイルを形成する非導電性材料で作製されている。電流がコイルを通過することにより、電磁場を生成し、その電磁場により、収容部のノズルにおいて溶融金属のメニスカスが収容部内の溶融金属から分離し、ノズルから推進する。ビルドプラットフォームは、エジェクタのノズルから吐出された溶融金属液滴を受容するように位置付けられ、このプラットフォームは、コントローラ動作アクチュエータによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内を移動する。これらの吐出された金属液滴は、プラットフォーム上に物体の金属層を形成し、別のアクチュエータは、コントローラによって動作され、エジェクタとプラットフォームとの間の距離を変化させて、エジェクタと、形成される金属物体の直近に印刷された層との間で適切な距離を維持する。このタイプの金属液滴吐出プリンタは、磁気流体力学(magnetohydrodynamic、MHD)プリンタとしても知られている。
【0004】
MHDプリンタを用いて金属物体を構築するプロセスの間、先に形成された層は、次に印刷される層のための支持体として作用する。次の層が前の層の周囲を超えて延出し、次の層のステップアウトと呼ばれることもある延出部が比較的小さい場合、部品は正しく形成される。しかし、ステップアウトが比較的大きい場合、延出部の材料が基板に落ち、部品を正しく形成することができない。ステップアウトが材料を落下させる距離に達していない場合であっても、オーバーハング特徴部は垂れ下がる可能性がある。この問題に対処するために、支持構造体は、一般に、物体の製造中に延出部を支持するように構築され、その後、これらの支持体は物体から除去される。ポリマー積層造形において、これらの支持体は、手で簡単に剥がすか、又は溶媒に溶解させるかのいずれかが可能である。
【0005】
そのようなものは、金属液滴吐出システムについては当てはまらない。プリンタを用いて物体を形成するために使用される溶融金属が支持構造体を形成するために使用される場合、支持構造体は、凝固する間に支持を必要とする物体の特徴部と強く結合する。その結果、物体から支持体を取り外すために、相当な量の切削、機械加工、及び研磨が必要である。異なる金属を使用する別の金属液滴吐出プリンタを調和して働かせることは、異なる金属の熱的条件が2つのプリンタの構築環境に影響を及ぼし得るため、困難である。例えば、より高い溶融温度を有する支持構造体金属は、物体を形成する金属を弱化若しくは軟化させ得る、又は物体よりも低い溶融温度を有する支持金属構造体は、より高い温度の溶融金属で作製された物体特徴部が支持構造体に接触するときに弱化され得る。加えて、チャネル及び湾曲した貫通孔などの中空の内部空洞もまた、これらの空洞の壁を支持するために使用される支持材料を除去するには、工具が支持材料に到達する必要があるので、印刷に対する課題を提起する。構築環境に悪影響を及ぼすことなく、金属液滴吐出プリンタが金属物体のオーバーハング部、他の延出特徴部、及び内部空洞を形成することを可能にする支持構造体を形成することができることは、有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
3D金属物体プリンタを動作させる新しい方法は、製造中に物体特徴部を適切に支持するが、完成した金属物体から物体を損傷することなく除去され得る支持構造体を構築する。この方法は、押出機を動作させてケイ酸塩スラリーの層を表面に塗布することと、エジェクタヘッドを動作させて溶融金属液滴をケイ酸塩スラリーの層上に吐出することと、を含む。
【0007】
新しい3D金属物体プリンタは、ケイ酸塩スラリーを塗布して、表面上に吐出された溶融金属液滴に対する表面の結合を弱める。新しい3D金属物体プリンタは、内部に収容部を有する容器を有するエジェクタヘッドであって、収容部は、溶融金属を保持し、溶融金属の液滴を吐出するように構成されている、エジェクタヘッドと、平面部材と、ケイ酸塩スラリーの層を表面に塗布するように構成された押出機と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
製造中に物体特徴部を適切に支持するが、完成した金属物体から物体を損傷することなく除去され得る支持構造体を構築する3D金属物体プリンタを動作させるための方法と、本方法を実施する3D金属物体プリンタの前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して以下の説明において説明される。
図1】ケイ酸塩スラリーを少なくとも1つの表面に塗布し、塗布されたケイ酸塩スラリーは、物体製造中に金属物体特徴部を支持し、その後、完成した金属物体から容易に除去され得る、新しい3D金属物体プリンタを示す。
図2】物体特徴部を支持するために、ケイ酸塩スラリーを表面に塗布し、硬化させるプロセスの概略図である。
図3】製造中に物体特徴部を適切に支持するが、完成した金属物体から物体を損傷することなく除去され得る支持構造体を構築する、図1のシステムを動作させるためのプロセスのフロー図である。
図4】溶融金属液滴で支持構造体を構築する従来技術の3D金属プリンタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示された3D金属物体プリンタ及びその動作のための環境、並びにプリンタ及びその動作の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は、同様の要素を表す。
【0010】
図4は、溶融金属の液滴を吐出して、金属物体と、オーバーハング又は内部空洞などの特徴部が形成されることを可能にするために使用される支持構造体との両方を形成する、既知の3D金属物体プリンタ100の一実施形態を示す。図4のプリンタでは、溶融バルク金属の液滴は、単一のノズル108を有する取り外し可能な容器104の収容部から吐出され、ノズルからの液滴が、ビルドプラットフォーム112に直接塗布されたスワスによって物体の基層を形成する。本文書で使用されるとき、「取り外し可能な容器」という用語は、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味し、コンテナは全体として、3D金属物体プリンタにおける設置及び取り外し可能に構成されている。本文書で使用されるとき、「容器」という用語は、3D物体金属プリンタに対して設置及び取り外しを行うように構成され得る、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味する。本文書で使用されるとき、「バルク金属」という用語は、一般に利用可能な標準規格のワイヤ、マクロサイズの比率のペレット、及び金属粉末などの、集合形態で入手可能な導電性金属を意味する。
【0011】
図4を更に参照すると、金属ワイヤ120などのバルク金属源116が、エジェクタヘッド140内の上部ハウジング122を通って延びるワイヤガイド124に供給され、取り外し可能な容器104の収容部内で溶融されて、エジェクタヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110を通ってノズル108から吐出される溶融金属を提供する。本文書で使用されるとき、「ノズル」という用語は、容器内の収容部から溶融金属液滴を排出するように構成されている、溶融金属を含む容器の収容部内の体積に流体的に接続されたオリフィスを意味する。本文書で使用されるとき、「エジェクタヘッド」という用語は、金属物体の製造のための溶融金属液滴の溶融、吐出、及び吐出の調整を行う3D金属物体プリンタのハウジング及び構成要素を意味する。溶融金属レベルセンサ184は、レーザー及び反射センサを含む。溶融金属レベルからのレーザーの反射は、反射センサによって検出され、溶融金属レベルまでの距離を示す信号を生成する。コントローラは、この信号を受信し、取り外し可能な容器の収容部内の適切なレベル118に維持することができるように、取り外し可能な容器104内の溶融金属の体積のレベルを求める。取り外し可能な容器104がヒータ160内へと摺動し、ヒータの内径が取り外し可能な容器に接触し、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を、固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱することが可能になる。本文書で使用されるとき、「固体金属」という用語は、元素の周期表で定義されている金属、又は液体若しくは気体ではなく固体の形態でこれらの金属によって形成される合金を意味する。ヒータは、取り外し可能な容器から分離されて、ヒータと取り外し可能な容器104との間に体積を形成する。不活性ガス供給部128は、ガス供給管132を通してエジェクタヘッドにアルゴンなどの不活性ガスの圧力調整された供給源を提供する。ガスは、ヒータと取り外し可能な容器との間の体積を通って流れ、ノズル108の周りのエジェクタヘッド及びベースプレート114内のオリフィス110から出ていく。ノズルに近接するこの不活性ガスの流れは、溶融金属の吐出された液滴をベースプレート114の周囲空気から絶縁して、吐出された液滴の飛行中に金属酸化物が形成されるのを防止する。ノズルと、吐出された金属液滴が着地する表面との間の隙間は、不活性ガス流内の液滴が着地する前に、ノズルの周りから出るこの不活性ガスが放散しない程度に意図的に十分に小さく保たれる。
【0012】
エジェクタヘッド140は、プラットフォーム112に対する吐出器ヘッドの移動に対応するように、Z軸軌道内に移動可能に装着される。1つ以上のアクチュエータ144は、エジェクタヘッドをZ軸に沿って移動させるためにエジェクタヘッド140に動作可能に接続され、プラットフォームをエジェクタヘッド140の下のX-Y平面内で移動させるために、プラットフォーム112に動作可能に接続される。アクチュエータ144は、コントローラ148によって動作されて、エジェクタヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の適切な距離を維持する。システム100のいくつかの変形例におけるビルドプラットフォームは、本質的に酸化鋼からなり、他の場合では、酸化鋼は、タングステン又はニッケルの上面コーティングを有する。
【0013】
溶融金属の液滴がプラットフォーム112に向かって吐出されるときに、X-Y平面内でプラットフォーム112を移動させることにより、形成される物体上に溶融金属液滴のスワスが形成される。コントローラ148はまた、アクチュエータ144を動作させ、エジェクタヘッド140と、基材上に最も近時に形成された層との間の距離を調節して、物体上の他の構造体の形成を容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直方向で動作されるように図4に示されるが、他の別の向きを使用することができる。また、図4に示される実施形態がX-Y平面内で移動するプラットフォームを有し、エジェクタヘッドがZ軸に沿って移動するが、他の構成も可能である。例えば、アクチュエータ144は、エジェクタヘッド140をX-Y平面内で、Z軸に沿って移動させるように構成されても、又はX-Y平面及びZ軸の両方でプラットフォーム112を移動させるように構成されてもよい。
【0014】
コントローラ148は、スイッチ152を動作させる。1つのスイッチ152は、供給源156からヒータ160に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得、別のスイッチ152は、ノズル108から液滴を吐出する電場を生成するために別の電源156からコイル164に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得る。ヒータ160は高温で大量の熱を生成するため、コイル164は、エジェクタヘッド140の1つ(円形)又は2つ以上の壁(直線形状)によって形成されたチャンバ168内に位置決めされる。本文書で使用されるとき、「チャンバ」という用語は、3D金属物体プリンタのヒータ、コイル、及び取り外し可能な容器が位置する、金属液滴吐出プリンタ内の1つ以上の壁内に収容された体積を意味する。取り外し可能な容器104及びヒータ160は、かかるチャンバ内に位置している。チャンバは、ポンプ176を介して流体源172に流体的に接続されており、また、熱交換器180にも流体的に接続されている。本文書で使用されるとき、「流体源」という用語は、熱を吸収するのに有用な特性を有する液体のコンテナを指す。熱交換器180は、流体源172への戻りを介して接続される。供給源172からの流体は、チャンバを通って流れて、コイル164から熱を吸収し、流体は、交換器180を通して吸収された熱を搬送し、熱は、既知の方法によって除去される。冷却された流体は、適切な動作範囲内のコイルの温度を維持する際に更に使用するために、流体源172に戻される。
【0015】
3D金属物体プリンタ100のコントローラ148は、金属物体製造のためにプリンタを制御するために、外部供給源からのデータを必要とする。一般に、形成されるべき物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ148に動作可能に接続されたメモリ内に記憶される。コントローラは、サーバなどを通してデジタルデータモデルに、デジタルデータモデルが記憶されたリモートデータベースに、又はデジタルデータモデルが記憶されているコンピュータ可読媒体に、選択的にアクセスすることができる。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラと共に実装されるスライサによって処理され、既知の方法でコントローラ148が実行するマシン対応命令を生成して、プリンタ100の構成要素を動作させ、そのモデルに対応する金属物体を形成する。マシン対応命令の発生は、デバイスのCADモデルがSTLデータモデル、多角形メッシュ、又は他の中間表現に変換されるときなどの、中間モデルの生成を含むことができ、次いで、この中間モデルを処理して、プリンタによって物体を製造するためのGコードなどのマシン命令を発生させることができる。本文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、3D金属物体付加製造システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するために、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラによって実行されるコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ148は、マシン対応命令を実行して、ノズル108からの溶融金属液滴の吐出、プラットフォーム112の位置付け、並びにオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の距離の維持を制御する。
【0016】
同様の構成要素について同様の参照番号を使用し、金属物体形成中に支持構造体を構築するために使用されない構成要素のうちのいくつかを除去する、新しい3D金属物体プリンタ100’を図1に示す。プリンタ100’は、ケイ酸塩スラリー塗布システム200、並びに、コントローラに接続された非一時的なメモリに記憶されたプログラムされた命令で構成されているコントローラ148’を含む。コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行して、以下に説明するようにシステム200を動作させて、ケイ酸塩支持構造体を形成するか、又は金属支持体の表面にケイ酸塩材料の層を塗布するかのいずれかを行うので、どちらのタイプの支持構造体も、物体製造が完了した後に容易に除去され得る。
【0017】
図1に示されるプリンタの実施形態は、ビルドプラットフォーム112の上方の三次元(3D)空間内で押出機208を操作するように構成された関節アーム204を含むケイ酸塩スラリー塗布システム200を有する。図1に示される実施形態では、押出機208は、ホース216を介して、ケイ酸塩スラリーを収容するリザーバ220に接続されている。押出機208は、プランジャ又は主ねじなどの変位部材を駆動するアクチュエータ210に動作可能に接続され、押出機からケイ酸塩スラリーを放出する。コントローラ148’は、アクチュエータ210を選択的に動作させて、押出機からケイ酸塩スラリーを放出する。
【0018】
一実施形態では、リザーバ220は、ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩の溶媒及び溶質で形成された溶液などのケイ酸塩スラリーを収容する。溶媒は、水、又はケイ酸塩粒子を含有するエチレングリコール、プロピレングリコールなどの非水性液体であってよい。粒子状ケイ酸塩物質をこの溶液中に懸濁させてスラリーを形成する。ケイ酸塩スラリーが表面に塗布され、加熱されると、溶液中の溶媒及び水が追い出され、残りのケイ酸塩粒子が互いに結合する。「ケイ酸塩粒子」という用語は、砂、シリカゲル、粘土、ヒュームドシリカなどを意味する。一実施形態では、ケイ酸塩スラリーは、純粋なケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、又はケイ酸カリウムの1~40重量%の範囲のケイ酸ナトリウムの水溶液を含む。この水溶液は、湿潤用のドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤も含み得る。本明細書で使用される場合、「ケイ酸塩スラリー」という用語は、水又は非水性溶媒と、溶媒中に溶解された共役ケイ酸塩との溶液であって、ケイ酸塩粒子が溶液中に懸濁されている溶液を意味する。リザーバ212に貯蔵された未硬化混合物中のケイ酸塩粒子及び充填材の固体粒子サイズは、材料から作製された支持構造体の機械的完全性を維持しながら、高い印刷温度での急速な溶媒損失を許容するのに十分な多孔性である。ケイ酸塩溶液中の粒子は、約50ナノメートル~約250ミクロンの範囲の平均直径を有するが、約10ミクロン~約250ミクロンの範囲の平均直径を有する粒子は、より強固な支持構造体を形成する。
【0019】
ケイ酸塩スラリーを金属支持構造体に塗布する間、又はケイ酸塩支持構造体を構築する間に起こるプロセス、及び金属物体特徴部とケイ酸塩層との反応が、図2に示されている。このプロセスを開始するために、関節アーム204がコントローラ148’によって動作されて、押出機208をビルドプラットフォームの上方に移動させ、押出機ヘッド140から吐出された溶融金属液滴で形成された支持構造体上にケイ酸塩スラリーの1つ以上の層を押し出すか、又は物体層と共に層状支持構造体212を形成する。工程A、図2。コントローラ148’は、抵抗ヒータ214によって生成された構築環境内の熱と、エジェクタヘッド140から吐出された溶融金属液滴とが、支持構造体のケイ酸塩スラリー層又は金属支持構造体の表面に塗布された上部ケイ酸塩スラリー層から溶媒及び水を蒸発させて、支持構造体又は上面のケイ酸塩粒子状物質が互いに融合して不溶性のガラス質層になるように、所定の時間遅延させる。工程B、図2。異なる金属は、金属液滴吐出及び物体形成のために異なる温度で維持されるので、所定の遅延期間は、物体を形成するために使用される金属のタイプごとに経験的に決定される。一実施形態では、ヒータ214がビルドプラットフォームの熱を約400℃~約450℃の範囲に維持するように構成され、溶融アルミニウム又はアルミニウム合金液滴が660℃を超える温度を有するので、プリンタ構築環境は、約400℃~約500℃の温度範囲にある。コントローラ148’が、エジェクタヘッド140を動作させて、支持構造体212によって支持された物体特徴部を含む物体層を形成すると、溶融アルミニウム液滴は、支持構造体のガラス質層に遭遇し、反応的に層を濡らし、部分酸化還元反応を介してケイ酸塩層に結合する。工程C、図2。金属物体の製造後、物体及びプラットフォームが約500℃以下の温度に冷却され得るように、抵抗ヒータ214は停止される。この温度範囲において、物体及び支持構造体は、物体に損傷を与えることなく、ビルドプラットフォームから機械的に分離され得る。工程D、図2。ビルドプラットフォーム112から支持構造体及び物体を除去した後に物体特徴部に依然として付着しているいずれのケイ酸塩層も、水などの溶媒又は軽い機械的作用によって除去され得る。工程E、図2
【0020】
図1及び図2を参照して説明したシステム及び方法では、ケイ酸塩支持体の表面又は溶融金属支持体の表面上のケイ酸塩層は、溶融アルミニウムの濡れ及び物体特徴部を構築するために使用される溶融アルミニウムとの接着を促進する。アルミニウム物体特徴部への脆性ケイ酸塩支持構造体の接着により、物体を損傷することなく支持構造体から物体を除去することを可能にする。
【0021】
コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に記載され、並びに以下に記載される動作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内に提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体の形成中、製造される構造体の画像データが、プラットフォーム112上に物体を形成するようにプリンタ100’の構成要素を動作させる信号を処理するため及び発生させるために、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ148’のプロセッサ(単数又は複数)に送信される。
【0022】
ビルドプラットフォーム112上にケイ酸塩支持構造体を形成するように、又はケイ酸塩スラリーの層を金属支持構造体に塗布するように、3D金属物体プリンタ100’を動作させるためのプロセス300が、図3に示されている。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを操作して、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を動作させてタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ148’は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0023】
図3は、いずれかのタイプの構造体によって支持される金属物体特徴部を形成する前に、ケイ酸塩スラリー塗布システム200を動作させて、ケイ酸塩支持構造体を形成するか、又は金属支持構造体の表面にケイ酸塩スラリーの層を塗布するかのいずれかを行うプロセス300のフロー図である。コントローラ148’は、この目的のためにシステム200を動作させるために、コントローラに動作可能に接続された非一時的なメモリに記憶されたプログラムされた命令を実行するように構成されている。プリンタが初期化された後(ブロック304)、エジェクタヘッド140を動作させて物体層を形成し(ブロック308)、プロセスは、支持構造体層が印刷されるべきかどうか、及び形成されている支持体のタイプを決定する(ブロック312)。ケイ酸塩支持層の検出に応答して、ケイ酸塩支持構造体の層を形成するように、押出機208をビルドプラットフォームの上方の位置に移動させる(ブロック314)。支持構造体が溶融金属で形成される場合、エジェクタヘッド140を動作させて金属支持構造体層を形成し(ブロック316)、プロセスは、金属支持体の最近形成された層が最後の層であるかどうかを決定する(ブロック318)。そうである場合、押出機208を動作させて、金属支持構造体の最後の層にケイ酸塩スラリーの層を塗布する(ブロック320)。支持層が形成された後、又は支持層が検出されなかった場合、プロセスは、別の物体層が印刷されるべきかどうかを決定する(ブロック322)。物体層及び支持構造体層を印刷するプロセスは、それ以上印刷される物体層がなくなるまで継続する。その時点で、プリンタ内のヒータは停止され(ブロック324)、物体及びビルドプラットフォームは、約25℃~約500℃の範囲の温度に冷却し、その結果、物体及び脆性ケイ酸塩層の部分は、物体を損傷することなく、ビルドプラットフォームから機械的に分離され得る(ブロック328)。物体形成中にチャネル壁を支持するためにケイ酸塩材料を使用してチャネルが形成された場合、ケイ酸塩材料は、水などの適切な溶媒を使用して除去され得る。
【0024】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。例えば、コントローラ148’は、溶融金属液滴を吐出して金属物体の基層を形成する前に、ケイ酸塩スラリー塗布システムを動作させてケイ酸塩スラリーの層をプラットフォーム112に塗布するように構成され得る。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。
図1
図2
図3
図4