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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126156
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】編成樹脂構造体製造装置
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/033 20120101AFI20230831BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
D04H3/033
A47C27/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023911
(22)【出願日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2022029995
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511192768
【氏名又は名称】株式会社エコ・ワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】尹 炳五
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 亮
【テーマコード(参考)】
3B096
4L047
【Fターム(参考)】
3B096AD04
3B096BA00
4L047AA13
4L047AA14
4L047AA15
4L047AA19
4L047AB03
4L047BA08
4L047BD01
4L047CA12
4L047CB02
4L047CC06
4L047EA05
(57)【要約】
【課題】編成樹脂構造体の表面に凹凸を形成できるほか、様々な形状の編成樹脂構造体を効率よく製造できる編成樹脂構造体製造装置を提供すること。
【解決手段】溶融状態の樹脂を糸状に流れ落とす線状化部20と、樹脂を冷却する液体が貯留された冷却槽30と、傾斜面41を有して樹脂を冷却槽30に導くガイダー部40と、樹脂が液体で冷却されてなる編成樹脂構造体2を冷却槽30の底面方向へ誘導する誘導部50と、誘導部50よりも上方であってガイダー部40よりも下方において冷却槽30内に配置され、表面に凹凸を有して回転しながら編成樹脂構造体2と接触することにより編成樹脂構造体2に凹凸を形成する棒状の凹凸形成回転部60と、凹凸形成回転部60を軸支する軸支部70とを備え、凹凸形成回転部60が軸支部70に着脱自在であり、ガイダー部40及び凹凸形成回転部60は、それぞれ鉛直位置が可変である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状態の樹脂を底面の複数の孔から糸状に流れ落とす線状化部と、
前記線状化部よりも下方に配置され、前記線状化部から流れ落ちた前記樹脂を冷却する液体が貯留された冷却槽と、
前記線状化部よりも下方に配置され、前記線状化部から流れ落ちる前記樹脂が接触する傾斜面を有して前記樹脂を前記冷却槽に導くガイダー部と、
前記ガイダー部の下方において前記冷却槽内に配置され、前記樹脂が前記液体で冷却されてなる編成樹脂構造体が通る通路を鉛直方向に有して前記編成樹脂構造体を前記冷却槽の底面方向へ誘導する誘導部と、
前記誘導部よりも上方であって前記ガイダー部よりも下方において前記冷却槽内に配置され、表面に凹凸を有して回転しながら前記編成樹脂構造体と接触することにより前記編成樹脂構造体に凹凸を形成する棒状の凹凸形成回転部と、
前記凹凸形成回転部を軸支する軸支部と、を備え、
前記凹凸形成回転部が前記軸支部に着脱自在であり、
前記ガイダー部及び前記凹凸形成回転部は、それぞれ鉛直位置が可変であることを特徴とする編成樹脂構造体製造装置。
【請求項2】
前記凹凸形成回転部は、回転軸と、前記凹凸を有し前記回転軸の回転に伴い回転する本体とを有し、前記本体が前記回転軸に着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項3】
前記凹凸形成回転部の前記本体が木製であることを特徴とする請求項2に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項4】
前記凹凸形成回転部の前記本体は、輪切り状の分割体を長手方向に組み合わせてなることを特徴とする請求項2に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項5】
前記分割体同士の長さが異なることを特徴とする請求項4に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項6】
前記ガイダー部及び前記凹凸形成回転部は、それぞれ水平位置が可変であることを特徴とする請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項7】
前記ガイダー部の前記傾斜面の傾斜角度を変更する傾斜角度変更部を有することを特徴とする請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項8】
前記編成樹脂構造体を底面方向へ引っ張る引張部が、前記冷却槽において前記誘導部よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項9】
前記編成樹脂構造体を液面より上方へ引き揚げて前記冷却槽の外へ送り出す送出部として複数の送出ローラーを備え、
前記送出ローラーの外周には前記編成樹脂構造体の空隙に入る突起が複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項10】
前記突起は、先端にかけて漸次径が小さくなっており、前記先端が丸みを帯びていることを特徴とする請求項9に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【請求項11】
前記誘導部の前記通路の幅が前記ガイダー部の出口の幅以上であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の編成樹脂構造体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレス、クッション材、枕、又は生活用品等に利用できる編成樹脂構造体を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の樹脂が無秩序に絡まり合い部分的に熱溶着した網状の三次元構造を有する編成樹脂構造体が、マットレス等に利用されている。編成樹脂構造体は、溶融樹脂の集合体を冷却することによって得ることができる。
例えば、特許文献1には、溶融樹脂を押し出す押出機と、押出機から押し出された溶融樹脂を受けて底面の多数の孔から溶融樹脂を糸状に流れ落とす樹脂プールと、樹脂プールから流れ落ちる糸状溶融樹脂を受けて冷却水に導く成形誘導ローラと、冷却水を貯留する冷却水槽とを備え、樹脂プールから流れ落ちる糸状溶融樹脂を冷却水で冷却して編成樹脂を形成し、成形誘導ローラの一部を冷却水中に位置させた編成樹脂の製造装置が開示されている。
また、特許文献2には、溶融した熱可塑性樹脂を複数のノズルより下方へ押出し、一部水没した1対のベルトコンベアーの間に自然降下させ、降下速度より遅く引き取ることにより立体網状構造体を製造する際に、押出された溶融樹脂の束の巾より1対のベルトコンベアーの間隔が狭く、かつベルトコンベアーが水没する前に溶融樹脂の束の両面あるいは片面がベルトコンベアーに接触するようにした立体網状構造体の製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、対向するシュートと、シュート表面にそれぞれ水を供給する水供給部と、シュートの長手方向と交差するように、対向して設けられる幅設定板とからなる網状構造体ループ形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-030876号公報
【特許文献2】特開平11-241264号公報
【特許文献3】国際公開第2012/035736号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
編成樹脂構造体は、表面に凹凸が設けられる場合がある。この点、特許文献1には、成形誘導ローラの表面に凹凸を形成することで、編成樹脂の表面に凹凸を形成することが開示されている。しかしながら近頃は編成樹脂構造体の需要が増え、様々な形状の編成樹脂構造体をより一層効率的に製造する必要性が高まってきている。
そこで本発明は、編成樹脂構造体の表面に凹凸を形成できるほか、様々な形状の編成樹脂構造体を効率よく製造できる編成樹脂構造体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の編成樹脂構造体製造装置は、溶融状態の樹脂を底面の複数の孔から糸状に流れ落とす線状化部20と、線状化部20よりも下方に配置され、線状化部20から流れ落ちた樹脂を冷却する液体が貯留された冷却槽30と、線状化部20よりも下方に配置され、線状化部20から流れ落ちる樹脂が接触する傾斜面41を有して樹脂を冷却槽30に導くガイダー部40と、ガイダー部40の下方において冷却槽30内に配置され、樹脂が液体で冷却されてなる編成樹脂構造体2が通る通路を鉛直方向に有して編成樹脂構造体2を冷却槽30の底面方向へ誘導する誘導部50と、誘導部50よりも上方であってガイダー部40よりも下方において冷却槽30内に配置され、表面に凹凸を有して回転しながら編成樹脂構造体2と接触することにより編成樹脂構造体2に凹凸を形成する棒状の凹凸形成回転部60と、凹凸形成回転部60を軸支する軸支部70とを備え、凹凸形成回転部60が軸支部70に着脱自在であり、ガイダー部40及び凹凸形成回転部60は、それぞれ鉛直位置が可変であることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置において、凹凸形成回転部60は、回転軸61と、凹凸を有し回転軸61の回転に伴い回転する本体62とを有し、本体62が回転軸61に着脱自在であることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の編成樹脂構造体製造装置において、凹凸形成回転部60の本体62が木製であることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2に記載の編成樹脂構造体製造装置において、凹凸形成回転部60の本体62は、輪切り状の分割体62A、62Bを長手方向に組み合わせてなることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の編成樹脂構造体製造装置において、分割体62A、62B同士の長さが異なることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置において、ガイダー部40及び凹凸形成回転部60は、それぞれ水平位置が可変であることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置において、ガイダー部40の傾斜面41の傾斜角度を変更する傾斜角度変更部100を有することを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置において、編成樹脂構造体2を底面方向へ引っ張る引張部80が、冷却槽30において誘導部50よりも下方に配置されていることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項1に記載の編成樹脂構造体製造装置において、編成樹脂構造体2を液面Wより上方へ引き揚げて冷却槽30の外へ送り出す送出部90として複数の送出ローラー91を備え、送出ローラー91の外周には編成樹脂構造体2の空隙に入る突起91Aが複数設けられていることを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項9に記載の編成樹脂構造体製造装置において、突起91Aは、先端にかけて漸次径が小さくなっていると共に、先端が丸みを帯びていることを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項8又は請求項9に記載の編成樹脂構造体製造装置において、誘導部50の通路の幅がガイダー部40の出口の幅以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、編成樹脂構造体の表面に凹凸を形成できるほか、様々な形状の編成樹脂構造体を効率よく製造できる編成樹脂構造体製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第一実施例による編成樹脂構造体製造装置の構成図
図2】同編成樹脂構造体製造装置の凹凸形成回転部周辺を示す図
図3】同編成樹脂構造体製造装置の誘導部周辺を示す図
図4】同凹凸形成回転部の構成図
図5】同凹凸形成回転部の本体の形状例を示す図
図6】本発明の第二実施例による編成樹脂構造体製造装置の構成図
図7】同送出ローラーの突起の一つを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施形態による編成樹脂構造体製造装置は、溶融状態の樹脂を底面の複数の孔から糸状に流れ落とす線状化部と、線状化部よりも下方に配置され、線状化部から流れ落ちた樹脂を冷却する液体が貯留された冷却槽と、線状化部よりも下方に配置され、線状化部から流れ落ちる樹脂が接触する傾斜面を有して樹脂を冷却槽に導くガイダー部と、ガイダー部の下方において冷却槽内に配置され、樹脂が液体で冷却されてなる編成樹脂構造体が通る通路を鉛直方向に有して編成樹脂構造体を冷却槽の底面方向へ誘導する誘導部と、誘導部よりも上方であってガイダー部よりも下方において冷却槽内に配置され、表面に凹凸を有して回転しながら編成樹脂構造体と接触することにより編成樹脂構造体に凹凸を形成する棒状の凹凸形成回転部と、凹凸形成回転部を軸支する軸支部とを備え、凹凸形成回転部が軸支部に着脱自在であり、ガイダー部及び凹凸形成回転部は、それぞれ鉛直位置が可変としたものである。
本実施形態によれば、凹凸形成回転部が着脱可能であると共にガイダー部を備えているため、凹凸付きの編成樹脂構造体を製造しようとする場合のみ凹凸形成回転部を取り付ければよい。また、ガイダー部及び凹凸形成回転部の鉛直位置が可変であるため、ガイダー部から凹凸形成回転部又は誘導部までの距離を変えることによって編成樹脂構造体の表面状態や凹凸量を調整することができ、また凹凸形成回転部の着脱作業や手入れを迅速に行うことができる。よって、様々な形状の編成樹脂構造体を効率よく製造することができる。
【0009】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、凹凸形成回転部は、回転軸と、凹凸を有し回転軸の回転に伴い回転する本体とを有し、本体を回転軸に着脱自在としたものである。
本実施形態によれば、本体が破損した場合や、凹凸の形状を変更しようとする場合は、本体のみを取り替えることで対応可能なため、回転軸と本体を一体的に取り替える場合よりもコストを抑制できる。
【0010】
本発明の第3の実施形態は、第2の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、凹凸形成回転部の本体を木製としたものである。
本実施形態によれば、木材は加工が比較的容易であることから、編成樹脂構造体の製造現場においても本体に所望の凹凸を新たに加工したり凹凸量などを調整したりできるため、編成樹脂構造体の製造効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の第4の実施形態は、第2の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、凹凸形成回転部の本体は、輪切り状の分割体を長手方向に組み合わせてなるものである。
本実施形態によれば、本体の一部が破損した場合などに、本体を丸ごと取り替えるのではなく一部の分割体の交換で対応できるため、コストを抑制できる。
【0012】
本発明の第5の実施形態は、第4の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、分割体同士の長さを異ならせたものである。
本実施形態によれば、凹凸をつけて製造しようとする編成樹脂構造体が凹凸形成回転部の略全長にわたって接触させる必要の無い大きさである場合において、編成樹脂構造体と接触させる分割体を適切に選定しやすくなる。
【0013】
本発明の第6の実施形態は、第1の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、ガイダー部及び凹凸形成回転部は、それぞれ水平位置が可変としたものである。
本実施形態によれば、集合体に対するガイダー部による圧縮度合いや、集合体又は編成樹脂構造体と凹凸形成回転部との接触度合いを任意に変えられることで、編成樹脂構造体の表面状態や凹凸量を調整することができる。
【0014】
本発明の第7の実施形態は、第1の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、ガイダー部の傾斜面の傾斜角度を変更する傾斜角度変更部を有したものである。
本実施形態によれば、ガイダー部の傾斜面の角度を任意に変えられることで、編成樹脂構造体の表面状態等を調整しやすくなる。
【0015】
本発明の第8の実施形態は、第1の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、編成樹脂構造体を底面方向へ引っ張る引張部が、冷却槽において誘導部よりも下方に配置されているものである。
本実施形態によれば、編成樹脂構造体をスムーズに冷却槽の底面側へ引っ張ることができる。
【0016】
本発明の第9の実施形態は、第1の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、編成樹脂構造体を液面より上方へ引き揚げて冷却槽の外へ送り出す送出部として複数の送出ローラーを冷却槽内に備え、送出ローラーの外周には編成樹脂構造体の空隙に入る突起が複数設けられているものである。
本実施形態によれば、回転している送出ローラーの突起が編成樹脂構造体の表層部分の空隙に入ることにより、編成樹脂構造体を所定速度でスムーズに冷却槽の外へ送り出すことができる。
【0017】
本発明の第10の実施形態は、第9の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、突起は、先端にかけて漸次径が小さくなっていると共に、先端が丸みを帯びていることを特徴とする。
本実施形態によれば、突起が入ることによる編成樹脂構造体の空隙の広がりや樹脂の切断を抑制できる。
【0018】
本発明の第11の実施形態は、第8又は第9の実施形態による編成樹脂構造体製造装置において、誘導部の通路の幅をガイダー部の出口の幅以上としたものである。
本実施形態によれば、編成樹脂構造体をスムーズに冷却槽の底面側へ誘導することができる。
【実施例0019】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は第一実施例による編成樹脂構造体製造装置の構成図である。
本実施例による編成樹脂構造体製造装置は、溶融樹脂を線状にして流し落とし、線状となった溶融樹脂の集合体1を水等の液体に浸漬して冷却することで、多数の樹脂が無秩序に絡まり合い部分的に熱溶着した網状の三次元構造を有した編成樹脂構造体2を連続的に形成する。
完成した編成樹脂構造体2は、マットレスや枕、クッション等として用いられる。
【0020】
編成樹脂構造体製造装置は、溶融樹脂を供給する供給部10と、溶融樹脂を線状にする線状化部20と、線状となった溶融樹脂を冷却する液体が貯留された冷却槽30と、線状化部20から冷却槽30へ向けて流れ落ちる線状の溶融樹脂の集合体1が通過するガイダー部40と、冷却槽30内に配置され編成樹脂構造体2を挟むようにして冷却槽30の底面方向へ導く誘導部50と、誘導部50よりも上方であってガイダー部40よりも下方に配置され、表面に凹凸を有して回転しながら編成樹脂構造体2と接触することにより編成樹脂構造体2に凹凸を形成する凹凸形成回転部60と、凹凸形成回転部60を軸支する軸支部70と、編成樹脂構造体2を挟んで底面方向へ引っ張る引張部80と、編成樹脂構造体2を液面Wより上方へ引き揚げて冷却槽30の外へ送り出す送出部90を備える。
【0021】
供給部10は、熱可塑性樹脂を所定温度で溶融混練して溶融状態の樹脂(溶融樹脂)とし、所定の押し出し速度で溶融樹脂を押し出して線状化部20に供給する。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂などを、単独で又は複数混合したものが用いられる。
【0022】
線状化部20は、供給部10から押し出された溶融樹脂を受け入れる受入口を上部に備え、受け入れた溶融樹脂を流出させる流出口を底面に備える。流出口には、複数の孔が配置されている。供給部10から供給された溶融樹脂は線状化部20の孔から流出することで線状となる。
【0023】
線状化部20の下方には、第一ガイダー40Aと第二ガイダー40Bとからなる一対のガイダー部40が設けられており、線状化部20の各孔から流出した溶融樹脂の集合体1は、ガイダー部40を通り、冷却槽30へ向けて流れ落ちる。
ガイダー部40は、溶融樹脂の集合体1を厚み方向に圧縮しながら冷却槽30へ導くものであり、第一ガイダー40Aと第二ガイダー40Bが向かい合わせに配置されている。第一ガイダー40A及び第二ガイダー40Bは、相手方に向けて徐々に下方へ傾斜した傾斜面41を有する。また、第一ガイダー40Aの下端部と第二ガイダー40Bの下端部とは離れており、両者の間を集合体1が通過する。第一ガイダー40Aの下端部と第二ガイダー40Bの下端部との距離は集合体1の厚みよりも小さく設定されているため、集合体1は、第一ガイダー40Aと第二ガイダー40Bとの間を通過した後は、通過前よりも厚みが小さくなる。
【0024】
送出部90は、冷却槽30内に配置されている。送出部90は、例えば傾斜コンベアを有する。冷却槽30の底面側に引き込まれた集合体1(編成樹脂構造体2)は、傾斜コンベアによって斜め上方に引き揚げられて冷却槽30の外へと送出される。なお、傾斜コンベアの代わりにローラー等の回転体を用いて編成樹脂構造体2を引き揚げて冷却槽30の外へ送出することもできる。
【0025】
図2は編成樹脂構造体製造装置の凹凸形成回転部周辺を示す図である。なお、構造を分かりやすくするため一部を透視化している。
編成樹脂構造体製造装置には、第一ガイダー40A及び第二ガイダー40Bの傾斜面41の傾斜角度を変更する傾斜角度変更部100が設けられている。傾斜角度変更部100の一端は支柱に固定され、他端は傾斜面41に接続されている。傾斜角度変更部100は伸縮自在であり、傾斜角度変更部100を伸ばすと傾斜面41の傾斜角度は水平に近づく方向(緩傾斜側)に変更され、傾斜角度変更部100を縮ませると傾斜面41の傾斜角度は鉛直に近づく方向(急傾斜側)に変更される。ガイダー部40の傾斜面41の傾斜角度を任意に調節できることで、集合体1が傾斜面41を滑り落ちる速度を変えて編成樹脂構造体2の表面状態等を調整しやすくなる。
【0026】
図3は編成樹脂構造体製造装置の誘導部周辺を示す図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は側面図である。なお、構造を分かりやすくするため一部を透視化している。
ガイダー部40を通過した集合体1が冷却槽30内の液体に流れ落ちる位置の下方には、第一回転体50Aと第二回転体50Bとからなる一対の誘導部50が設けられている。
誘導部50は、編成樹脂構造体2を冷却槽30の底面側へ誘導するものであり、第一回転体50Aと第二回転体50Bが向かい合わせに配置されている。第一回転体50Aと第二回転体50Bとの対向方向は、第一ガイダー40Aと第二ガイダー40Bとの対向方向と同じであり、第一回転体50Aは第一ガイダー40Aの鉛直下方に位置し、第二回転体50Bは第二ガイダー40Bの鉛直下方に位置している。
第一回転体50A及び第二回転体50Bは、水平方向及び鉛直方向に所定の長さを有している。第一回転体50A及び第二回転体50Bは、それぞれ、上下に設けた二つの回転ローラー51と、回転ローラー51に架渡されたベルト52とを有し、当該ベルト52が無限軌道のごとく周回するように構成されている。なお、第一回転体50A及び第二回転体50Bは、ベルト無しの構成とすることもできる。
第一回転体50Aと第二回転体50Bは離隔して並列に設けられており、誘導部50に至った集合体1又は編成樹脂構造体2は、第一回転体50Aと第二回転体50Bとの間を通り、浮力によって若干左右に振れつつ第一回転体50Aと第二回転体50Bの少なくとも一方に接触しながら順に冷却槽30の底面側へ移動する。第一回転体50Aと第二回転体50Bとの間隔、すなわち編成樹脂構造体2が通る通路の幅は、所定範囲内で任意に調整可能であるが、ガイダー部40の出口の幅(第一ガイダー40Aの下端部と第二ガイダー40Bの下端部との間隔)以上とする。これにより、編成樹脂構造体2をスムーズに冷却槽30の底面側へ誘導することができる。
【0027】
誘導部50よりも下方には、第三回転体81第四回転体(図示無し)とからなる一対の引張部80が設けられている。引張部80は、誘導部50を通過した編成樹脂構造体2を冷却槽30の底面側へ引っ張るものであり、第三回転体81と第四回転体が向かい合わせに配置されている。第三回転体81と第四回転体との対向方向は、第一回転体50Aと第二回転体50Bとの対向方向が南北方向に設定されているとすれば東西方向に設定されるというように、第一回転体50Aと第二回転体50Bとの対向方向とは90度異なる。第三回転体81及び第四回転体は、第一回転体50A及び第二回転体50Bよりも水平方向及び鉛直方向の長さが小さい。
引張部80の水平位置は、第一回転体50Aの水平位置と第二回転体50Bの水平位置との間である。第三回転体81と第四回転体は離隔して設けられており、第三回転体81と第四回転体との間を編成樹脂構造体2が通る。なお、第三回転体81と第四回転体との間隔は、所定範囲内で任意に調整可能である。
引張部80は、誘導部50と略同速度で回転し、編成樹脂構造体2の側面(厚み方向の面)を第三回転体81と第四回転体とで挟むようにして下方へ引っ張る。これにより、編成樹脂構造体をスムーズに送ることができる。
第三回転体81及び第四回転体の表面には複数の細長い突起が設けられており、回転中にこの突起が編成樹脂構造体2の空隙へ入ることにより、編成樹脂構造体2が第三回転体81及び第四回転体との接触時に滑ることを抑制して編成樹脂構造体2をよりスムーズに下方へ送ることができる。
【0028】
図4は凹凸形成回転部の構成図であり、図5は凹凸形成回転部の本体の形状例を示す図である。なお、構造を分かりやすくするため一部を透視化している。
ガイダー部40と誘導部50との間に配置される凹凸形成回転部60は、断面が円形の棒状であって水平方向の長さは誘導部50の第一回転体50A及び第二回転体50Bと略同一である。凹凸形成回転部60は、編成樹脂構造体2の製造時には液体に少なくとも一部が浸かった状態で用いられる。
凹凸形成回転部60は、軸支部70に軸支された状態で回転する回転軸61と、凹凸が設けられ回転軸61の回転に伴い回転する円筒状の本体62を有する。回転軸61と本体62を組み合わせると、回転軸61が本体62の中心を貫通した状態となる。本体62は回転軸61への着脱が自在となっている。これにより、本体62が破損した場合や、凹凸の形状を変更しようとする場合は、本体62のみを取り替えることで対応可能なため、回転軸61と本体62を一体的に取り替える場合よりもコストを抑制できる。
凹凸形成回転部60の本体62は、木製であることが好ましい。木材は鉄材等と比べて加工が容易であるため、編成樹脂構造体2の製造現場においても、本体62への新たな凹凸加工や、凹凸量の修正等を行いやすくなる。このため、凹凸付きの編成樹脂構造体2の製造効率を向上させることができる。
凹凸形成回転部60は、軸支部70に着脱自在としている。これにより、凹凸付きの編成樹脂構造体2を製造しようとする場合のみ凹凸形成回転部60を取り付ければよく、編成樹脂構造体2に凹凸をつける必要が無い場合は、凹凸形成回転部60を取り外すことで、ガイダー部40の直下に誘導部50を位置させることができる。また、凹凸形成回転部60が木製の場合は水による腐食が特に問題になる可能性があるが、非製造時には凹凸形成回転部60を取り外して乾燥させることで腐食を抑制できる。
【0029】
凹凸形成回転部60の本体62は、一つの本体62を複数個所で切断してなるような複数の分割体を長手方向に組み合わせて形成することが好ましい。輪切り状(円筒状)の分割体は、基本的に全て同径であり、分割体同士は、例えば、一方の分割体に設けた穴に他方の分割体に設けた突起を嵌め込むことで結合する。
本体62が複数の分割体の結合であることにより、本体62の一部が破損した場合などに、本体62を丸ごと取り替えるのではなく一部の分割体を交換することで対応できるため、コストを抑制できる。また、凹凸をつけようとする編成樹脂構造体2の大きさによっては、凹凸形成回転部60の略全長にわたって接触させる必要はない場合もあり得るが、その場合は、編成樹脂構造体2と接触する分割体だけを所望の凹凸表面を有するものに交換することもできる。
【0030】
複数の分割体を組み合わせて本体62を形成する場合は、各分割体の長さを均等とするのではなく、二種類以上の長さを有するようにすることが好ましい。分割体同士の長さを異ならせることにより、一部の分割体にのみ編成樹脂構造体2を接触させようとする場合に、接触させる分割体を適切に選定しやすくなる。
例えば、図4においては、三つの分割体62A、62Bを組み合わせて本体62とした場合の分割体同士の結合位置を点線で示している。分割体の長さは二種類であり、中央に位置する分割体62Aはその両側に位置する分割体62Bよりも長くしている。本体62をこのように形成することで、編成樹脂構造体2のうち本体62と接触する部分の大きさが、分割体62Aの長さよりも小さく分割体62Bの長さよりも大きい場合には、分割体62Aのみに接触させることで対応でき、分割体62Bの長さよりも小さい場合には、どちらか一方の分割体62Bのみに接触させることで対応できる。
【0031】
ガイダー部40及び凹凸形成回転部60は、固定ボルトを挿入する穴を選択することなどにより、それぞれ、上下に所定範囲内で動かすことが可能である。ガイダー部40や凹凸形成回転部60の鉛直方向位置が可変であることで、ガイダー部40から凹凸形成回転部60又は誘導部50までの距離を任意に変えて編成樹脂構造体2の表面状態や凹凸量を調整することができ、また凹凸形成回転部60の着脱作業や手入れを迅速に行うことができるため、様々な形状の編成樹脂構造体2を効率よく製造することができる。
また、ガイダー部40及び凹凸形成回転部60は、固定ボルトを挿入する穴を選択することなどにより、それぞれ、左右に所定範囲内で動かすことが可能である。ガイダー部40や凹凸形成回転部60の水平方向位置が可変であることで、ガイダー部40による集合体1の圧縮度合いや、集合体1又は編成樹脂構造体2と凹凸形成回転部60との接触度合いを任意に変えて編成樹脂構造体2の表面状態や凹凸量を調整することができる。
また、凹凸形成回転部60を取り外してガイダー部40の直下に誘導部50を位置させる場合においては、ガイダー部40の鉛直位置を下げることでガイダー部40と誘導部50との距離を調節することができる。なお、誘導部50の鉛直位置を上げることでガイダー部40と誘導部50との距離を調節してもよい。
【0032】
次に本発明の第二実施例について説明する。なお、上記した第一実施例と同一機能部材については同一符号を付して説明を省略する。
図6は第二実施例による編成樹脂構造体製造装置の構成図、図7は送出ローラーの突起の一つを示す図である。
本実施例による編成樹脂構造体製造装置は、供給部10と、線状化部20と、冷却槽30と、ガイダー部40と、誘導部50と、凹凸形成回転部60と、軸支部70と、送出部90としての複数の送出ローラー91を備える。
【0033】
線状化部20の下方には、第一ガイダー40Aと第二ガイダー40Bとからなる一対のガイダー部40が設けられており、線状化部20の各孔から流出した溶融樹脂の集合体1は、ガイダー部40を通り、冷却槽30へ向けて流れ落ちる。
ガイダー部40は、溶融樹脂の集合体1を厚み方向に圧縮しながら冷却槽30へ導くものであり、第一ガイダー40Aと第二ガイダー40Bが向かい合わせに配置されている。第一ガイダー40A及び第二ガイダー40Bは、相手方に向けて徐々に下方へ傾斜した傾斜面41を有する。また、第一ガイダー40Aの下端部と第二ガイダー40Bの下端部とは離れており、両者の間を集合体1が通過する。第一ガイダー40Aの下端部と第二ガイダー40Bの下端部との距離は集合体1の厚みよりも小さく設定されているため、集合体1は、第一ガイダー40Aと第二ガイダー40Bとの間を通過した後は、通過前よりも厚みが小さくなる。
なお、第一実施例と同様に、第一ガイダー40A及び第二ガイダー40Bの傾斜面41の傾斜角度を変更する傾斜角度変更部100を設けてもよい。
【0034】
ガイダー部40を通過した集合体1が冷却槽30内の液体に流れ落ちる位置の下方には、第一回転体50Aと第二回転体50Bとからなる一対の誘導部50が設けられている。
第一回転体50Aと第二回転体50Bは離隔して並列に設けられており、誘導部50に至った集合体1又は編成樹脂構造体2は、第一回転体50Aと第二回転体50Bとの間を通り、浮力によって若干左右に振れつつ第一回転体50Aと第二回転体50Bの少なくとも一方に接触しながら順に冷却槽30の底面側へ移動する。第一回転体50Aと第二回転体50Bとの間隔、すなわち編成樹脂構造体2が通る通路の幅は、所定範囲内で任意に調整可能であるが、ガイダー部40の出口の幅(第一ガイダー40Aの下端部と第二ガイダー40Bの下端部との間隔)以上とする。これにより、編成樹脂構造体2をスムーズに冷却槽30の底面側へ誘導することができる。
【0035】
送出ローラー91は、冷却槽30内において、誘導部50の下方と、編成樹脂構造体2を引き揚げる側の水面近傍に配置されている。
送出ローラー91の外周には複数の突起91Aが設けられており、回転している送出ローラー91の突起91Aが編成樹脂構造体2の表層部分の空隙に瞬間的に入ることにより、編成樹脂構造体2を引っ張って所定速度でスムーズに冷却槽30の外へ送り出すことができる。図7に示すように、突起91Aは、先端にかけて漸次径が小さくなったテーパー状であり、先端が丸みを帯びている。これにより、突起91Aが入ることによって編成樹脂構造体の空隙が広がったり樹脂が切断されてしまったりすることを抑制できる。突起91Aの後端部にはネジ溝が形成されており、この後端部を送出ローラー91に螺入して固定する。
誘導部50によって冷却槽30の底面側に引き込まれた編成樹脂構造体2は、誘導部50の下方に位置する送出ローラー91の下側を通り、かつ水面近傍に位置する送出ローラー91の上側を通るように、送出ローラー91によって斜め上方に引き揚げられて冷却槽30の外へと送出される。
なお、送出ローラー91の回転速度は、誘導部50の回転速度と同じとする。送出ローラー91及び誘導部50の回転駆動源は、例えばモーターである。
また、送出ローラー91の数は三つ以上としてもよい。また、誘導部50を送出ローラー91のように突起を設けた複数のローラーで構成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 集合体
2 編成樹脂構造体
10 供給部
20 線状化部
30 冷却槽
40 ガイダー部
41 傾斜面
50 誘導部
60 凹凸形成回転部
61 回転軸
62 本体
70 軸支部
80 引張部
90 送出部
91 送出ローラー
91A 突起
100 傾斜角度変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7