(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126163
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
B29C 55/12 20060101AFI20230831BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230831BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230831BHJP
B29K 77/00 20060101ALN20230831BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
B29C55/12
B32B27/34
C08J5/18 CFG
B29K77:00
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025809
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022028856
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池本 章人
(72)【発明者】
【氏名】山根 周平
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F210
【Fターム(参考)】
4F071AA54
4F071AA55
4F071AF14
4F071AF53
4F071AF61Y
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4F210QG01
4F210QG15
4F210QG18
4F210QG20
4F210QL16
4F210QW12
(57)【要約】
【課題】熱や水分による寸法変化率が小さく、製袋後のS字カールを十分に抑制することができる二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】製膜時の縦方向(MD)に対して時計回りに45度方向と135度方向に切り出したフィルムの、160℃、5分間の乾熱処理における、45度方向の収縮率と、135度方向の収縮率との差の絶対値(乾熱斜め差)が1.0%以下であり、30℃、1時間の吸水処理直後に測定される長さと、前記吸水処理後、23℃、50%RH、24時間調湿後に測定される長さとから求められる、45度方向の寸法変化率と、135度方向の寸法変化率との差の絶対値(吸水斜め差)が1.5%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製膜時の縦方向(MD)に対して時計回りに45度方向と135度方向に切り出したフィルムの、160℃、5分間の乾熱処理における、45度方向の収縮率と、135度方向の収縮率との差の絶対値(乾熱斜め差)が1.0%以下であり、
30℃、1時間の吸水処理直後に測定される長さと、前記吸水処理後、23℃、50%RH、24時間調湿後に測定される長さとから求められる、45度方向の寸法変化率と、135度方向の寸法変化率との差の絶対値(吸水斜め差)が1.5%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項2】
MDに切り出したフィルムの、160℃、5分間の乾熱処理におけるMD収縮率が2.0%以下であることを特徴とする請求項1記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項3】
製膜時の横方向(TD)に切り出したフィルムの、160℃、5分間の乾熱処理におけるTD収縮率が1.0%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項4】
ポリアミド系樹脂が、ケミカルリサイクルによって再生された樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項5】
ポリアミド系樹脂が、植物由来の原料から得られた樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
【請求項6】
請求項1または2記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも一方の面にガスバリア層が積層されていることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂積層フィルム。
【請求項7】
請求項1または2記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に易接着層が積層されていることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂積層フィルム。
【請求項8】
請求項1または2記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを用いたラミネートフィルム。
【請求項9】
請求項8記載のラミネートフィルムを用いた製袋品。
【請求項10】
請求項1または2記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを製造するための方法であって、未延伸フィルムを二軸延伸する工程後、二軸延伸フィルムを縦方向(MD)に弛緩する工程において、フィルム走行速度の減速度を0.08m/s2以下とし、弛緩率を8%以下とすることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
二軸延伸工程が同時二軸延伸法であることを特徴とする請求項10記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、引張強度、突刺強度、衝撃強度、耐ピンホール性などの機械的特性に優れ、かつ耐熱性に優れている。このため、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを基材とし、これにポリオレフィン系樹脂からなるシーラントフィルムをドライラミネートや押出しラミネートなどの方法で貼合した積層フィルムは、ボイルやレトルトなどの殺菌処理用の包装材料をはじめとして、幅広い分野に使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリアミド系樹脂フィルムは、水分あるいは温度による影響で、寸法が変化することがある。ポリアミド系樹脂フィルムを包装材料の分野で用いる場合、斜め方向の寸法変化率に差があると、製袋加工後の寸法変化で、袋の角がカールしやすくなる。袋がカールしてしまうと、内容物を充填する工程で、2枚取りや袋口が開きづらいなどのトラブルが生じるおそれがある。
【0004】
一般に、テンター式で生産されるポリアミド系樹脂フィルムは、ボーイング現象(弓型に変形する現象)の影響により、斜め方向の寸法変化率に差が生じやすい。たとえば、ポリアミド系樹脂フィルムは、延伸時の残留応力の影響で、高温に曝すと収縮する特性を持っており、この収縮は、ボーイング現象の影響で、特にフィルムの横方向の端部において異方性が生じやすい。この異方性が大きくなると、製袋加工時の熱シールの際に、袋は収縮し、カールが生じやすくなる。
【0005】
また、ポリアミド系樹脂フィルムは、アミド基を有するため吸水性が高く、水分を含有することで膨張する特性を持っている。この膨張も、ボーイング現象の影響で、特にフィルムの横方向の端部において異方性が生じやすい。この異方性が大きくなると、製袋加工後の吸湿によって、袋にカールが生じやすくなる。
【0006】
このようなポリアミド系樹脂フィルムの問題に対して、特許文献1では、ミルロールの端に近い製品でも、製袋後の吸湿によるS字カールを小さくできる手法が開示され、特許文献2では、基材フィルムとして二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムを使用した包装袋のひねりを低減させる手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-42386号公報
【特許文献2】特開2012-254804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの従来技術においても、以下に示すように、なお改善の余地がある。
特許文献1においては、20℃、20%RHのような低湿度環境下でのS字カールは抑制できたとしても、20℃、65%RHのような一般的な湿度環境下においてS字カールの抑制は十分ではなかった。
特許文献2においては、サイズの小さな袋のS字カールは抑制できたとしても、製品の大容量化が進んでいる現在において、サイズの大きな袋のS字カールの抑制は十分ではなかった。
このように、ポリアミド系樹脂フィルムの製袋後のS字カールを十分に抑制できる手法は未だ開発されるに至っていない。
したがって、本発明の目的は、熱や水分による寸法変化率が小さく、製袋後のS字カールを十分に抑制することができる二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の製法を採用することによって、上記目的を達成できる特異的な物性を有する二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
【0010】
(1)製膜時の縦方向(MD)に対して時計回りに45度方向と135度方向に切り出したフィルムの、160℃、5分間の乾熱処理における、45度方向の収縮率と、135度方向の収縮率との差の絶対値(乾熱斜め差)が1.0%以下であり、
30℃、1時間の吸水処理直後に測定される長さと、前記吸水処理後、23℃、50%RH、24時間調湿後に測定される長さとから求められる、45度方向の寸法変化率と、135度方向の寸法変化率との差の絶対値(吸水斜め差)が1.5%以下であることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
(2)MDに切り出したフィルムの、160℃、5分間の乾熱処理におけるMD収縮率が2.0%以下であることを特徴とする(1)記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
(3)製膜時の横方向(TD)に切り出したフィルムの、160℃、5分間の乾熱処理におけるTD収縮率が1.0%以下であることを特徴とする(1)または(2)記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
(4)ポリアミド系樹脂が、ケミカルリサイクルによって再生された樹脂を含むことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
(5)ポリアミド系樹脂が、植物由来の原料から得られた樹脂を含むことを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム。
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも一方の面にガスバリア層が積層されていることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂積層フィルム。
(7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に易接着層が積層されていることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂積層フィルム。
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを用いたラミネートフィルム。
(9)上記(8)記載のラミネートフィルムを用いた製袋品。
(10)上記(1)~(7)のいずれかに記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを製造するための方法であって、未延伸フィルムを二軸延伸する工程後、二軸延伸フィルムを縦方向(MD)に弛緩する工程において、フィルム走行速度の減速度を0.08m/s2以下とし、弛緩率を8%以下とすることを特徴とする二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの製造方法。
(11)二軸延伸工程が同時二軸延伸法であることを特徴とする(10)記載の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱や水分による寸法変化率が小さく、製袋後のS字カールを十分に抑制することができる二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムが得られる。そのため、本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを用いた製袋品は、内容物を充填する工程で袋の2枚取りなどのトラブルが生じにくく作業性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、製膜時の縦方向(MD)に対して時計回りに45度方向と135度方向にフィルムを切り出し、160℃、5分間の乾熱処理前後に、23℃、50%RH、2時間調湿後に測定される長さから求められる、45度方向の収縮率と、135度方向の収縮率との差の絶対値(乾熱斜め差)が1.0%以下であり、30℃、1時間の吸水処理後に測定される長さと、前記吸水処理後、23℃、50%RH、24時間調湿後に測定される長さとから求められる、45度方向の寸法変化率と、135度方向の寸法変化率との差の絶対値(吸水斜め差)が1.5%以下である。
【0013】
<ポリアミド系樹脂>
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを構成するポリアミド系樹脂としては、例えば、a)ラクタム類をモノマー成分とする開環重合、b)ω-アミノ酸類、二塩基酸類とジアミン類等をモノマー成分とする縮合重合等によって得られるポリアミド系樹脂を挙げることができる。
ラクタム類としては、例えば、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム等を挙げることができる。
ω-アミノ酸類としては、例えば、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸等を挙げることができる。
二塩基酸類としては、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、2,2,4-トリメチルアジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸等を挙げることができる。
ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)-トリメチルヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4,4′-アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン等を挙げることができる。
これらのモノマーを重合して得られる重合体又は共重合体として、例えば、ポリアミド6、7、10、11、12、46、410、56、66、69、610、611、612、6T、6I、810、9T、1010、1012、10T、MXD6(メタキシレンジパンアミド6)等の重合体のほか、6/66、6/12、6/6T、6/6I、6/MXD6等の共重合体を挙げることができる。これらの中でも、耐熱性と機械的特性のバランスに優れるポリアミド6を含むことが好ましい。
また、ポリアミド系樹脂は、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの特性を向上させるために、これらの重合体又は共重合体のポリアミド系樹脂の2種以上を混合してもよい。例えば、ポリアミド6とMXD6とを、質量比(ポリアミド6/MXD6)95/5~30/70で混合したポリアミド系樹脂は、得られる二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの直線カット性等を向上させることができる。
【0014】
<リサイクル樹脂>
本発明におけるポリアミド系樹脂は、従来の化石燃料由来の原料(特にヴァージンモノマー)を用いて得られたポリアミド樹脂以外に、環境を配慮する観点から、ケミカルリサイクルによって再生された樹脂を含むことが好ましい。ケミカルリサイクルによって再生されたポリアミド樹脂(ケミカルリサイクルポリアミド樹脂)とは、樹脂廃材となったポリアミド樹脂を解重合し、得られた再生モノマーを再度重合することで得られるものである。
【0015】
ポリアミド系樹脂における、ケミカルリサイクルポリアミド樹脂の含有量は、特に限定されないが、環境配慮、乾熱斜め差低減、および、吸水斜め差低減の観点から、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。なお、ケミカルリサイクルポリアミド樹脂の含有量の上限は、例えば、100質量%程度とすることができるが、これに限定されない。
【0016】
また、本発明におけるポリアミド系樹脂は、同じく環境を配慮する観点から、マテリアルリサイクルポリアミド系樹脂を含有してもよい。ポリアミド系樹脂フィルムの製造に際して発生する廃材として、例えば、耳部トリミング屑、スリット屑等の廃屑のほか、不良品等として製品化されなかったフィルム等がある。これらを粉砕したり、再溶融してペレットとして用いることができる。マテリアルリサイクルポリアミド系樹脂の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、限定されない。
【0017】
<植物由来樹脂>
また、本発明におけるポリアミド系樹脂は、同じく環境を配慮する観点から、植物由来の原料から得られた樹脂を含むことが好ましく、植物由来のモノマー成分を含むポリアミド系樹脂を含有してもよい。例えば、植物由来のモノマー成分としてひまし油由来原料を用いたデカンジアミン、アミノウンデカン酸、セバシン酸が挙げられ、これらを重合して得られるポリアミド樹脂として、ポリアミド1010、ポリアミド11等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂における、植物由来ポリアミド樹脂の含有量は、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、環境配慮の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。なお、植物由来ポリアミド樹脂の含有量の上限は、例えば100質量%程度とすることができるが、これに限定されない。
【0018】
<二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルム>
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、上記ポリアミド系樹脂の未延伸フィルムを二軸延伸してなるものである。未延伸フィルムや一軸延伸フィルムは、引張強度が低く、異方性が大きいため、包装袋を作製する際の基材として適当なものではない。
【0019】
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、製膜時の縦方向(MD)に対して時計回りに45度方向と135度方向における、160℃、5分間の乾熱処理における乾熱収縮率の差の絶対値(乾熱斜め差)が1.0%以下であることが必要であり、0.8%以下であることが好ましく、0.6%以下であることがより好ましく、0.55%以下であることがさらに好ましい。乾熱斜め差が1.0%を超えると、製袋加工における熱シール時の熱収縮で、異方性が生じ、カールが生じやすくなる。
上記乾熱収縮率は、測定方向に対しフィルムを長さ10cm、巾1cmで切り出し、23℃、50%RH、2時間調湿後の長さ(処理前)と、160℃、5分間の乾熱処理後に23℃、50%RH、2時間調湿後の長さ(処理後)から求められる。
【0020】
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、MDの160℃、5分間の乾熱収縮率が2.0%以下であることが好ましく、1.9%以下であることがより好ましく、1.8%以下であることがさらに好ましい。MDの乾熱収縮率が2.0%を超えると、製袋加工におけるMDの熱シール時の熱収縮が大きくなり、シール部と未シール部の長さが合わなくなるためカールを助長することがある。
【0021】
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、横方向(TD)の160℃、5分間の乾熱収縮率が1.0%以下であることが好ましく、0.9%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましい。TDの乾熱収縮率が1.0%を超えると、製袋加工におけるTDの熱シール時の熱収縮が大きくなり、シール部と未シール部の長さが合わなくなるためカールを助長することがある。
【0022】
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、MDに対して時計回りに45度方向と135度方向における、吸水時の長さと前記吸水後、23℃、50%RH調湿時の長さから算出される寸法変化率の差の絶対値(吸水斜め差)が1.5%以下であること必要であり、1.2%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、吸水斜め差が1.5%を超えると、吸湿による寸法変化の異方性が大きくなり、製袋後に角がカールしやすくなる。
上記寸法変化率は、測定方向に対しフィルムを長さ10cm、巾1cmで切り出し、30℃、1時間の吸水処理後に測定される長さと、前記吸水処理後、23℃、50%RH、24時間調湿後に測定される長さから求められる。
なお、二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、一般的に、吸水によって残留応力が解放されるため、吸水による純粋な寸法変化を求める目的で、吸水後の測定値と吸水後調湿時の測定値を採用している。
【0023】
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、一般的には、5~100μmであり、5~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。ポリアミド系樹脂フィルムは、厚みが5μm未満では機械的強度が不足し、100μmを超えると重量増加や透明性低下などの問題が生じることがある。
【0024】
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも片方の面には、コロナ処理やプラズマ処理、オゾン処理などの公知の表面処理がなされることが好ましい。表面処理されたポリアミド系樹脂フィルムは、フィルム面上にラミネートされたシーラントなどの他フィルムとの密着力が向上する。
【0025】
<ガスバリア層>
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、フィルムの少なくとも片面にガスバリア層を積層した構成とすることもできる。ガスバリア層を積層する方法としては、無機物を蒸着する方法やガスバリアコート液を塗布する方法が挙げられる。無機物を蒸着する場合、用いる無機物としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、パラジウム、亜鉛、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタンなどの金属類および、これらの各金属の酸化物または化合物が挙げられる。ガスバリアコート液を塗布する場合、用いるガスバリアコート液としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン系共重合体(PVDC)を含むガスバリアコート液や無機層状化合物と樹脂を含むガスバリアコート液などが挙げられる。ガスバリア層を積層したフィルムの酸素透過度は、100ml/(m2・day・MPa)以下であることが好ましく、0ml/(m2・day・MPa)に近いほどガスバリア性に優れている。
【0026】
<易接着層>
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、フィルムの少なくとも片面に易接着層を積層した構成とすることもできる。易接着層を積層する方法としては、易接着コート液を塗布する方法が挙げられる。用いる易接着コート液としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の各種の合成樹脂を含む易接着コート液が挙げられる。
【0027】
<添加剤>
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、本発明の特性を損なわない範囲において、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離形剤、強化剤等の添加剤を含有してもよい。例えば、熱安定剤又は酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、燐化合物、ヒンダードアミン類、硫黄化合物、銅化合物、アルカリ金属ハロゲン化物等が挙げられる。
また、本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、フィルムのスリップ性等の向上のために、各種無機系滑剤や有機系滑剤を含有してもよい。滑剤の具体例としては、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイド、層状ケイ酸塩、エチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
これらの添加剤の添加量は、本発明の効果を妨げない限り、限定的ではないが、通常は合計で5質量%以下とすればよい。
【0028】
<二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの製造方法>
次に、本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの製造方法について説明をする。
まず、ポリアミド系樹脂を押出機にて溶融した後、溶融シートとしてTダイより押出し、表面温度0~30℃に温調した冷却ドラム上に密着させて急冷し、連続した未延伸フィルムを得る。
【0029】
得られた未延伸フィルムは、二軸延伸するに先立って吸水処理することが望ましい。吸水処理は、未延伸フィルムを、20~90℃に温調された温水槽に送り、10分間以下の条件で実施する。この吸水処理により、未延伸フィルムは、適度に可塑化し、ポリアミド樹脂の結晶化が抑制されることで、延伸工程におけるフィルムの切断を防止することができる。
【0030】
上記処理により吸水した未延伸フィルムの水分率は、樹脂の混合比により一概には言えないが、1.0~7.0質量%であることが好ましく、1.5~5.0質量%であることがより好ましい。未延伸フィルムは、水分率が1.0質量%未満であると、結晶化が進み切断するおそれがある。一方、未延伸フィルムは、水分率が7.0質量%を超えると、吸水処理中に折れしわが生じ、蛇行などのトラブルが生じやすくなり、また、得られる二軸延伸フィルムは、強度が低下したり、横方向におけるフィルムの厚みムラが増大することがある。
【0031】
吸水処理された上記未延伸フィルムは、延伸前に予熱することが好ましい。予熱温度は、使用する樹脂の割合にもよるが、200~230℃であることが好ましく、215~230℃であることがより好ましい。予熱温度が200℃未満であると、得られるフィルムは、ボーイング現象が大きくなり、フィルム端部の吸湿伸び率及び熱水収縮率の異方性が大きくなり、一方、予熱温度が230℃を超えると、フィルムは、白化や切断が生じることがある。
【0032】
本発明において、未延伸フィルムの二軸延伸は、得られるフィルムの寸法安定性をバランスよく高めるために、同時二軸延伸法により実施することが好ましい。逐次二軸延伸法は、縦延伸と横延伸を個別に実施するため、得られるフィルムの端部の異方性が大きくなることがある。
【0033】
同時二軸延伸は、吸湿時の伸び率抑制による寸法安定性向上や厚み精度向上の観点で、テンター方式により実施することが好ましい。
テンター式同時二軸延伸は、例えば、パンタグラフ方式テンター、スクリュー方式テンター、リニアモーター式テンターなどのテンターを用いて行うことができる。その中でも、個々のクリップがリニアモーター方式で単独に駆動されるリニアモーター式テンターは、可変周波数ドライバを制御することで、縦方向の延伸倍率や縦方向の弛緩率を任意に細かく設定でき、しかも正確に滑らかに制御できる柔軟性を有している。このリニアモーター式テンターを用いる同時二軸延伸法は、ボーイング現象が低減され、横方向の物性の均一性が向上した二軸延伸フィルムが得られることから、最も好ましい延伸法である。
【0034】
予熱された未延伸フィルムの同時二軸延伸は、170~210℃で行うことが好ましく、190~200℃で行うことがより好ましい。延伸温度が170℃未満であると、得られる二軸延伸フィルムは、収縮応力が大きくなり、また、熱水収縮率が高くなることがある。一方、延伸温度が210℃を超えると、二軸延伸フィルムは、厚みが不均一となり、品質が劣ることがある。
【0035】
同時二軸延伸において、未延伸フィルムを延伸する倍率は、MDおよびTDそれぞれ2.5~4.5倍であることが好ましい。また、縦延伸倍率と横延伸倍率との積で表される面積延伸倍率は、7~12倍であることが好ましい。面積延伸倍率が7倍未満であると、得られる二軸延伸フィルムは、機械特性が劣る場合がある。一方、面積延伸倍率が12倍を超えると、得られる二軸延伸フィルムは、収縮応力が高くなり、乾熱処理時の収縮率が高くなる。乾熱処理時の収縮率が高くなると、乾熱斜め差が大きくなり、製袋時にカールが生じやすくなる。
【0036】
また、延伸する際に、公知の手法で、ボーイング現象を低減することが好ましい。手法としては、未延伸フィルムの延伸において、フィルムの中央部に対して端部の延伸温度を上げることにより、横方向で温度勾配を設ける手法や、MD延伸を先行して行う手法などが挙げられる、
【0037】
二軸延伸されたフィルムは、延伸後に熱処理することが好ましい。熱処理温度は、200~225℃であることが好ましく、210~220℃であることがより好ましい。熱処理温度が200℃未満であると、得られる二軸延伸フィルムは、乾熱収縮率が高くなり、異方性も大きくなることがある。一方、熱処理温度が220℃を超えると、得られる二軸延伸フィルムは、吸水伸び率が高く、異方性も大きくなり、引張伸度などの機械特性が低下したり、白化することがある。
【0038】
二軸延伸されたフィルムは、熱処理後に弛緩処理を行う。MDの弛緩処理において、フィルム走行速度の減速度を0.08m/s2以下とすることが必要であり、0.001~0.08m/s2とすることが好ましく、0.001~0.06m/s2とすることがより好ましく、0.001~0.05m/s2とすることがさらに好ましい。フィルム走行速度の減速度が0.08m/s2を超えると、得られる二軸延伸フィルムは、乾熱収縮率が高くなり、異方性も大きくなることがある。一方、フィルム走行速度の減速度が0.001m/s2未満であると、弛緩処理に要するゾーン長が長くなり過ぎ、膨大なスペースを要するという点で現実的ではない。
【0039】
また、MDの弛緩処理におけるフィルムの弛緩率は、吸水斜め差低減の観点で、8%以下であることが必要であり、1~8%であることが好ましく、1~6%であることがより好ましく、1~5%であることがさらに好ましい。MDの弛緩率が8%を超えると、得られる二軸延伸フィルムは、吸水伸び率が高くなり、寸法安定性が損なわれることがある。一方、MDの弛緩率が1%未満であると、得られる二軸延伸フィルムは、乾熱収縮率が高くなることがある。
【0040】
乾熱収縮率低減の観点で、TDの弛緩処理におけるフィルムの弛緩率は、1~8%であることが好ましい。
フィルムの機械的物性(突刺強力)向上の観点で、MDの弛緩率とTDの弛緩率の比率(MD/TD)は0.20~1.80であることが好ましく、0.80~1.20であることがより好ましい。
【0041】
<ケミカルリサイクルポリアミド樹脂の製造方法>
二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの原料として使用するケミカルリサイクルポリアミド樹脂の製造方法は、限定されないが、例えば、(1)解重合用原料(A)からモノマーを生成する工程(解重合工程)、(2)前記モノマーを含む原料を用いて重合することによりポリアミド樹脂(B)を製造する工程(重合工程)、(3)前記ポリアミド樹脂(B)を精練する工程(精練工程)を含む製造方法によって好適に得ることができる。
【0042】
解重合工程では、解重合用原料(A)からモノマーを再生する(以下、このようなモノマーを「再生モノマー」という。)。
再生モノマーとしては、特にラクタム類が好ましく、例えば、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタム等を挙げることができる。この中でも特にε-カプロラクタムがより好ましい。
【0043】
解重合用原料(A)の種類としては、特に限定されず、各種ポリアミド樹脂のほか、各種ポリアミド樹脂のオリゴマーを用いることもできる。より具体的には、後述するポリアミド樹脂(B)で挙げた各種樹脂を例示することができる。また、オリゴマーとしては、2量体から7量体程度までの鎖状体、2量体から9量体程度までの環状体等が挙げられる。
特に、本発明では、ポリアミド6樹脂及びそのオリゴマーの少なくとも1種を解重合用原料(A)として好適に用いることができる。特に、ポリアミド6は、実質的にε-カプロラクタム単独がモノマー単位として構成される樹脂であることから、モノマー化及び精製分離が容易という点もメリットとなる。
解重合用原料(A)としてのポリアミド樹脂の形態としては、重合時の銘柄間の切替分、フィルム製品の製品化までの切替分を含む放流樹脂屑のほか、フィルム製造時に発生した耳部トリミング屑、スリット屑等の廃屑、不良品等として製品化されなかったフィルム等が挙げられる。廃材の利用により環境保全にも貢献することができる。
解重合用原料(A)としてのオリゴマーの形態としては、例えば、ポリアミド樹脂の精練時に生じた、精練水から回収した水溶性が高いオリゴマーだけでなく、水溶性の低い2~8量体を含む濾過後の残渣物等が挙げられる。
【0044】
解重合用原料(A)からモノマーを生成する方法としては、所定のモノマーが得られる限りは特に制限されないが、好ましくは解重合用原料(A)の解重合反応を採用することができる。すなわち、解重合反応により解重合用原料(A)を化学的に分解して好適に再生モノマーを得ることができる。
解重合反応の方法及び条件は、特に限定されず、公知の方法に従って実施することもできる。従って、例えば、触媒を用いてもよいし、触媒を使用しなくてもよい。また、水の不存在下(乾式)又は水の存在下(湿式)でもよい。特に生産性の観点から、触媒の存在下において熱水蒸気中にて解重合を実施する方法が好ましい。水溶性の低い環状オリゴマーは、アミド結合の加水分解速度が遅いため直接解重合することは難しいが、開環重合し、鎖状分子とした後に上記のような条件で解重合することで、環状オリゴマーからも再生モノマーを好適に得ることができる。
【0045】
重合工程では、前記モノマー(再生モノマー)を含む原料を用いて重合することによりポリアミド樹脂(B)を製造する。
上記原料としては、全てのモノマーが再生モノマーからなる原料であってもよいが、ヴァージンモノマーを併用することが好ましい。例えば、ポリアミド6樹脂の解重合反応によって再生されたε-カプロラクタム(以降「C-CL」と表記する。)を、モノマー原料中において100質量%近い範囲内で使用することも可能であるが、C-CL以外のモノマーとして、ヴァージンモノマーとしてのε-カプロラクタム(以降「V-CL」と表記する。)をモノマー原料に含有させることが好ましい。ここに、ヴァージンモノマーとは、再生モノマーの対義語であり、ポリマーの解重合工程を経ていないモノマーをいう。ヴァージンモノマーとして、例えば、通常市販されているモノマーを使用することができる。
【0046】
再生モノマーには、分離が難しい副生成物が含まれることがある。これにより、ヴァージンモノマーのみを原料として得られたポリアミド樹脂の結晶化速度よりも、再生モノマーのみを原料として得られたポリアミド樹脂の結晶化速度を僅かに低下させることができ、再生モノマーとヴァージンモノマーを併用して得られたポリアミド樹脂の結晶化速度をより低下させることができる。
結晶化速度は、ポリアミド樹脂の降温結晶化温度(Tc)を測定して得られる結晶化ピークの半値幅を指標とすることができる。本発明において半値幅は、通常は10℃以上が好ましく、11℃以上がより好ましく、12℃以上がさらに好ましい。半値幅が広いほど結晶化速度に幅があり、フィルムは、延伸結晶化していく際に、フィルム表面の結晶状態の局所的なムラが生じにくく、均一性を高めることができる。かかる観点から、再生モノマーとヴァージンモノマーとを併用して重合したポリアミド樹脂を用いることが好ましい。なお、前記半値幅の上限は、例えば20℃程度とすることができるが、これに限定されない。
原料中における再生モノマー含有量は、特に限定されないが、半値幅を広げる観点等から、90質量%以下とすることが好ましく、80質量%以下とすることがより好ましく、リサイクル比率を高める観点から、5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましい。重合工程では、上記のように、再生モノマー以外の成分として、ヴァージンモノマーを併用することが好ましく、上記原料中のヴァージンモノマーの含有量は、10~95質量%とすることが好ましく、20~90質量%とすることがより好ましい。
【0047】
重合工程で製造されるポリアミド樹脂(B)は、必要に応じて、溶融時のモノマー生成を抑制する等の目的で末端封鎖されていてもよい。このため、前記原料中には、必要に応じて末端封鎖剤等の添加剤が含まれていてもよい。末端封鎖剤としては、特に限定されず、例えば、有機グリシジルエステル、無水ジカルボン酸、安息香酸等のモノカルボン酸、ジアミン等が挙げられる。
【0048】
ポリアミド樹脂(B)を得るための重合方法は、特に限定されず、公知のモノマーの重合方法も採用することができる。一例としては、ε-カプロラクタムと水と末端封鎖剤として安息香酸とを混合し、重合釜で加熱し、加圧した後、減圧、脱水しながら目的の粘度まで重合反応を行う方法を採用することができる。
【0049】
精練工程では、前記ポリアミド樹脂(B)を精練する。これにより、ポリアミド樹脂(B)中に含有するモノマーを除去し、ポリアミド樹脂(B)の相対粘度を所望の範囲まで上げることができる結果、フィルム化に適した物性とすることができる。
精練は、限定的ではないが、特にポリアミド樹脂(B)の相対粘度(25℃)が2.5~4.5程度の範囲内になるように、例えば、ポリアミド樹脂(B)をペレット等の成形体の形態で、90~100℃の熱水を用いて、15~30時間程度浸漬することが好ましい。
精練工程の精練処理の回数は、Tcの半値幅が10℃以上である限り特に限定されないが、1回もしくは2回であることが好ましい。精錬工程を行わないと副生成物が多くなり、相対粘度が上記範囲を下回り、製膜が困難になる可能性や、フィルムにした際に強度が低下する可能性がある。一方、精練回数が3回以上となると副生成物が少なくなり、半値幅が10℃未満になる可能性がある。
精練工程後のポリアミド樹脂(B)は、必要に応じて乾燥することが好ましい。乾燥条件は、特に限定されるものではない。例えば、100~130℃程度で10~30時間程度の熱風乾燥を実施することができるが、これに限定されない。より具体的には、110℃で20時間の熱風乾燥を行うこともできる。
【0050】
<ガスバリア層の積層方法>
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも片面に、ガスバリア層を積層する方法として、ポリ塩化ビニリデン系共重合体(PVDC)を用いた積層方法について説明する。
【0051】
ガスバリア層は、ラテックスの形のPVDCを用いて、ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも片面にコートして積層することができる。PVDCは、塩化ビニリデン単位を60質量%以上含むことが好ましく、70~97質量%含むことがより好ましい。ラテックス中のPVDCの平均粒径は、0.05~0.5μmであることが好ましく、0.07~0.3μmであることがより好ましい。PVDCには、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、アンチブロッキング剤、架橋剤、撥水剤、帯電防止剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0052】
PVDCを用いたガスバリア層の厚みは、0.5~3.5μmであることが好ましく、0.7~3.0μmであることがより好ましく、1.0~2.5μmであることがさらに好ましい。ガスバリア層は、0.5μmよりも薄いと、十分なガスバリア性が発現しにくく、3.5μmよりも厚いと、効果が飽和するばかりでなく、フィルムの物性が損なわれることがある。
【0053】
ガスバリア層の形成は、吸水処理後かつ延伸前の、モノマーが少ない段階のポリアミド系樹脂フィルムに行うことが好ましく、これにより、ガスバリア層は、ポリアミド系樹脂フィルムとの密着力が向上する。
【0054】
コートの方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアロール法、リバースロール法、エアーナイフ法、リバースグラビア法、マイヤーバー法、インバースロール法、またはこれらの組み合わせによる各種コート方式や、各種噴霧方式などを採用することができる。コートの直前に、ポリアミド系樹脂フィルムにコロナ放電処理などを行ってもよい。
【0055】
<易接着層の積層方法>
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも片面に、易接着層を積層する方法として、ポリウレタン樹脂を用いた積層方法について説明する。
【0056】
易接着層は、ポリウレタン樹脂を含む易接着コート液を用いて、ポリアミド系樹脂フィルムの少なくとも片面にコートして積層することができる。ポリウレタン樹脂とは、多官能イソシアネートと水酸基含有化合物との反応により得られるポリマーである。より詳細には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等の多官能イソシアネートと、ポリーエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール等の水酸基含有化合物との反応により得られるウレタン樹脂を例示することができる。
【0057】
上記易接着層の耐水性、耐熱性などの向上を目的として、易接着層に硬化剤を含有させることができる。硬化剤としては、メラミン、イソシアネート、カルボジイミド、オキソザリン、エポキシなどが挙げられるが、特にメラミン樹脂やカルボジイミド樹脂を含有させることが好ましく、メラミン樹脂の含有量は、易接着層として用いる樹脂100質量部に対して、1~15質量部とすることが好ましい。また、カルボジイミド樹脂の含有量は、易接着層として用いる樹脂100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。
【0058】
ポリウレタン樹脂を用いた易接着層の厚みは、0.01~0.5μmであることが好ましく、0.02~0.1μmであることがより好ましい。易接着層の厚みが0.01μm未満であると、フィルム上に均一な膜厚の易接着層を形成することが困難となる。一方、易接着層の厚みが0.1μmを超えると、ポリアミド系樹脂フィルムと金属箔の接着性が良好になる効果が飽和し、コスト的に不利になる。
【0059】
易接着コート液を塗布するポリアミド系樹脂フィルムは、吸水処理後かつ延伸前の未延伸フィルムでも、延伸後の延伸フィルムでもよい。
【0060】
コートの方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアロール法、リバースロール法、ワイヤーバー法、エアーナイフ法、またはこれらの組み合わせによる各種コート方式などを採用することができる。
【0061】
<ラミネートフィルム>
本発明の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどのシーラントフィルムと貼り合わせて、ラミネートフィルムとすることができる。また、このラミネートフィルムは、熱シールや超音波シールなどの公知の方法で袋状に融着することで、包装袋として使用することができる。
【0062】
<製袋品>
上記包装袋などの製袋品は、特に食品、飲料などの包装袋として好適に用いることができる。特に、包装袋を構成する二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、吸湿や熱による寸法変化の異方性が小さいため、印刷中および印刷後の吸湿で印刷が歪むことなく、印刷図柄がずれることなく、袋にすることが可能である。また、製袋後においてもカールすることなく、内容物充填時にトラブルが起きにくい。
【実施例0063】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0064】
下記の実施例および比較例における各種特性の評価方法は次のとおりである。
(1)相対粘度ηR
原料のポリアミド樹脂を、96%硫酸に濃度1.0g/dlとなるよう溶解した試料溶液(液温25℃)の相対粘度を、ウベローデ型粘度計を用いて測定した。
【0065】
(2)降温結晶化温度Tcと半値幅
パーキンエルマー社製、示差走査熱量計(入力補償型DSC8000)を用い、得られた樹脂を10mg量り、昇温速度10℃/minにて室温から260℃まで昇温し、260℃で10分間保持した後、降温速度10℃/minにて100℃まで冷却し、降温結晶化温度を測定した。縦軸に熱流(mW)、横軸に温度のDSC曲線において、降温時のピークトップの温度をTc(℃)、高温側からベースラインを引き、Tcの絶対値の1/2強度の2点間の間隔を半値幅(℃)とした。
【0066】
(3)酸素透過度
モコン社製の酸素バリア測定器(OX-TRAN 2/20)を用いて、測定面積50cm2、窒素のガス流量10cc/min、酸素のガス流量20cc/min、20℃、65%RHの雰囲気下における、ガスバリアコート層が積層された二軸延伸ポリアミド系樹脂積層フィルムの酸素透過度を測定した。測定は1サイクルあたり20minとし、3サイクル間隔の酸素透過度の変動率が1%以内になれば測定終了とした。
【0067】
(4)乾熱収縮率および乾熱斜め差
得られたロール状の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムについて、23℃、50%RH環境下で、MD、TD、MDに対し45度方向と135度方向に、長さ10cm、巾1cmの大きさの試料を5本ずつ切り出した。
試料を23℃、50%RH環境下で2時間調湿した後の長さを測定し、L1(乾熱処理前)とした。
測定後の試料を160℃のオーブンの中で5分間乾熱処理し、再度23℃、50%RH環境下で2時間調湿し、長さを測定し、L2(乾熱処理後)とした。
各方向の試料について、それぞれ乾熱収縮率を下記の式より算出し、平均値を求めた。
乾熱収縮率A(%)=(L1-L2)/(L1)×100
また、MDに対し45度方向の試料の乾熱収縮率(A(45度))と、135度方向の試料の乾熱収縮率(A(135度))との差の絶対値を乾熱斜め差として、下記の式より算出した。
乾熱斜め差(%)=│A(45度)-A(135度)│
【0068】
(5)吸水寸法変化率および吸水斜め差
得られたロール状の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムについて、23℃、50%RH環境下で、MDに対し45度方向と135度方向に、長さ10cm、巾1cmの大きさの試料を5本ずつ切り出した。
試料を30℃の水に1時間浸して吸水させ、水から取り出した直後の試料の長さを測定し、L3(吸水時)とした。
吸水後の試料を、再度23℃、50%RH環境下で24時間調湿し、長さを測定し、L4(吸水後調湿時)とした。
各方向の吸水試料について、それぞれ調湿後の寸法変化率を下記の式より算出し、平均値を求めた。
吸水試料の調湿後の寸法変化率B(%)=(L3-L4)/L3×100
MDに対し45度方向の吸水試料の調湿後の寸法変化率(B(45度))と、135度方向の吸水試料の調湿後の寸法変化率(B(135度))との差の絶対値を吸水斜め差として、下記の式より算出した。
吸水斜め差(%)=│B(45度)-B(135度)│
【0069】
(6)製袋S字カール
二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムと、シーラントフィルム(CP;東セロ社製無延伸ポリプロピレンフィルム、RXC-22、厚み50μm)とを、ウレタン系接着剤(三井化学社製 タケラック A-525/A-52 二液型)を用いてドライラミネート(接着剤塗布量3g/m2)することにより、ラミネートフィルムを作製した。
得られたラミネートフィルムを、その縦方向に沿った折り目となるよう2つに折りたたみつつ、テストシーラーを用いて折り目部を縦方向に巾10mm、180℃で熱シールし、またそれと垂直方向に200mm間隔で巾20mmを断続的に熱シールした。その後、横方向に両縁部のシール部分が10mmになるように裁断し、長さ300mm(TD)、巾200mm(MD)、シール巾10mmの横取りの3方シール袋を10枚作製した。それらの3方シール袋を20℃、20%RHまたは20℃、65%RH環境下で48時間調湿し、さらに、それらの10枚の3方シール袋を重ね、3方シール袋と同サイズの重しを用いて、上から袋全面に9.8N(1kgf)の荷重をかけ、24時間保持した後に荷重を取り去り、袋を置いた水平面からの、一番下の袋の反り返りの高さ(h)を指標としてS字カールの程度を評価した。また、同様の方法で長さ390mm(TD)、巾260mm(MD)の3方シール袋を10枚作製し、それらの3方シール袋を20℃、65%RH環境下で48時間調湿し、同様にS字カールの程度を評価した。下記評価において、包装袋としての使用可能なレベルは○および△であり、○が最も好ましい。
○:0mm≦h≦5mm
△:5mm<h≦10mm
×:10mm<h
【0070】
(7)厚み精度
得られた二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムにおける、巻幅の中心付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置(a)と、巻幅の右端付近であって、かつ、巻量の半分にあたる位置(b)と、巻幅の左端付近であって、かつ、巻終わり付近の位置(c)の3位置から、それぞれ、縦50cm、横50cmのサイズの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを試料として切り出した。
3位置から切り出した試料それぞれに、縦、横方向に5cmごとに直線を引き、直線が交わる点(81点)において、厚みを測定した。これらの値より、各位置の試料について平均厚みを算出した。また、下記式で厚み精度を算出し、評価した。なお、厚み測定は、ハイデンハイン社製のHEIDENHAIN-METOR MT1287を用いた。厚み精度は、1.7%以下が好ましく、1.6%以下がより好ましく、1.5%以下が最も好ましい。
厚み精度(%)=((フィルムの最大厚み-フィルムの最小厚み)/2/フィルムの平均厚み)×100
【0071】
(8)直線カット性
上記「(6)製袋S字カール」に記載の方法で、長さ300mm(TD)、巾200mm(MD)、シール巾10mmの横取りの3方シール袋を作製した。
側部シール部に5mmの切り込みノッチを設け、3方シール袋の巾方向(MD)に右手前、左手前方向にそれぞれ100mm引き裂き、切り込みノッチ部から3方シール袋の巾方向(MD)に引いた直線から引き裂き伝播端がずれた巾を測定した。この操作を5回繰り返し、引き裂き伝播端がずれた巾の平均値が10mm未満の場合を「〇」、10mm以上の場合を「×」と評価した。
【0072】
(9)突刺強力
得られた二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを、23℃、50%RH環境下で、2時間調湿した後、内径100mmの円形型枠にフィルムを緊張させて固定し、このサンプル面の中央部に、先端の曲率半径が0.5mmの針を、50mm/分の速度で垂直に当てて突刺し、フィルムが破れる際の強力値を測定した。サンプル数5で測定を行い、その平均値を算出した。なお、突刺強力は、実用的に9.5N以上が求められ、好ましくは10.0N以上であり、最も好ましくは10.5N以上である。
【0073】
下記の実施例および比較例における使用材料は次のとおりである。
(1)PA6:ポリアミド6、ユニチカ社製「A1030BRF」
(2)MXD6:メタキシレンジパンアミド6、三菱ガス化学社製「MXナイロン 6007」
(3)PA11:ポリアミド11、アルケマ社製「Rilsan BESN O TL PA11」
(4)C-PA6:ケミカルリサイクルポリアミド樹脂
以下の方法によって製造した。
ポリアミド6樹脂フィルム製造時に発生したフィルム屑又は不良品と、ポリアミド6樹脂の重合時に生じたオリゴマー等とを含む樹脂屑(樹脂廃材)を解重合用原料(A)として用いた。解重合用原料(A)にリン酸を加え、湿式法にて加熱下で解重合反応を行い、活性炭処理、濃縮、蒸留により精製した後、再生されたε-カプロラクタム「C-CL」を回収した。
C-CLと、水と、末端封鎖剤として安息香酸とを原料として、重合釜で加熱、加圧、減圧、脱水した後、相対粘度3.0ηRとなるまで重合反応を行った。重合した後、ペレット化し、95℃の熱水処理による精練を10時間及び15時間の合計2回行った後、110℃で20時間乾燥した。このようにして、ケミカルリサイクルポリアミド樹脂(C-PA6)を得た。得られた樹脂の相対粘度は3.0、Tcは172.2℃、Tcの半値幅は10℃であった。
(5)PVDCラテックス:旭化成社製「サランラテックス L536B」
(6)易接着コート液:DIC社製ウレタン樹脂「ハイドランKU-400SF」に対して、硬化剤としてDIC社製メチロールメラミン樹脂「アミディアAPM(固形分80質量%)」を、ポリウレタン樹脂固形分100質量部あたりメチロールメラミン樹脂固形分が10質量部となるように添加し、イオン交換水で希釈して、樹脂固形分10質量%に調整した。
【0074】
実施例1
PA6を260℃でTダイより溶融押出しし、15℃のドラム上で冷却して、厚さ150μmの実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを40℃の温水槽に10秒間浸漬、その後60℃の温水槽に100秒間浸漬して吸水処理を行った。
吸水処理された未延伸フィルムを、同時二軸延伸機に導き、220℃で予熱した後、延伸温度195℃、MD延伸倍率3.0倍、TD延伸倍率3.3倍の条件で同時二軸延伸した。
次に、同時二軸延伸後のフィルムを、215℃に設定された熱処理ゾーンで4秒間熱処理し、その後、フィルム走行速度の減速度を0.05m/s2として、MD、TDにそれぞれ200℃で5.0%の弛緩処理を施し、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0075】
実施例2~14、比較例1~3
表1のように、ポリアミド系樹脂の組成、フィルムの製造条件を変更した以外は実施例1と同様に行い、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0076】
実施例15
吸水処理後の未延伸フィルムの片面に、PVDCラテックスをエアーナイフ法により塗布し、220℃の赤外線照射機により30秒間予熱乾燥処理を行い、ラテックス中の水分を蒸発乾燥させた以外は実施例1と同様に行い、厚さ1.5μmのガスバリアコート層が積層された厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂積層フィルムを得た。得られた二軸延伸ポリアミド系樹脂積層フィルムの酸素透過度は65ml/(m2・day・MPa)であった。
【0077】
実施例16
吸水処理後の未延伸フィルムの片面に、易接着コート液をエアーナイフ法により塗布し、ドライヤーにて60℃、10秒の条件で乾燥させた以外は実施例1と同様に行い、厚さ0.1μmの易接着コート層が積層された厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂積層フィルムを得た。
【0078】
比較例4
PA6を270℃でTダイより溶融押出しし、18℃のドラム上で冷却して、厚さ150μmの実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを水槽に導き、吸水処理を行って吸水率4.0%に調整した。
吸水処理された未延伸フィルムを、同時二軸延伸機に導き、225℃で予熱した後、延伸温度195℃、MD延伸倍率3.3倍、TD延伸倍率3.0倍の条件で同時二軸延伸した。
次に、同時二軸延伸後のフィルムを、215℃に設定された熱処理ゾーンで5秒間熱処理し、その後、TDに200℃で5.0%の弛緩処理を施し、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0079】
実施例17
PA6を260℃でTダイより溶融押出しし、15℃のドラム上で冷却して、厚さ180μmの実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
未延伸フィルムをMD延伸機に導き、延伸温度100℃、MD延伸倍率3.0倍の条件でMD延伸した。次に、このMD延伸フィルムをテンターに導入し、予熱温度60℃、延伸温度135℃、TD延伸倍率4.0倍の条件でTD延伸した。
次に、逐次二軸延伸後のフィルムを、220℃に設定された熱処理ゾーンで4秒間熱処理し、その後、フィルム走行速度の減速度を0.05m/s2として、MD、TDにそれぞれ200℃で5.0%の弛緩処理を施し、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0080】
比較例5
表1のように、フィルムの製造条件を変更した以外は実施例17と同様に行い、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0081】
実施例18
PA6を97質量%、MXD6を3質量%含む原料を260℃でTダイより溶融押し出しし、30℃のドラム上で冷却して、厚さ200μmの実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
未延伸フィルムをMD延伸機に導き、延伸温度80℃、MD延伸倍率1.03倍の条件で第一段目の予備MD延伸し、次いで延伸温度80℃、MD延伸倍率1.03倍の条件で第二段目の予備MD延伸し、次いで延伸温度85℃、MD延伸倍率2.1倍の条件で第一段目の主MD延伸し、更に延伸温度70℃、MD延伸倍率1.5倍の条件で第二段目の主MD延伸した。次に、このMD延伸フィルムをテンターに導入し、延伸温度130℃、TD延伸倍率4.0倍の条件でTD延伸した。
次に、逐次二軸延伸後のフィルムを、210℃に設定された熱処理ゾーンで熱固定処理し、その後、フィルム走行速度の減速度を0.05m/s2として、MD、TDにそれぞれ210℃で5.0%の弛緩処理を施し、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0082】
比較例6
表1のように、フィルムの製造条件を変更した以外は実施例18と同様に行い、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0083】
実施例19
PA6を260℃で環状ダイより溶融押し出し、水冷固化して、厚さ135μmの実質的に無配向のチューブ状の未延伸フィルムを得た。
次に、チューブフィルムを、低速ニップロールと高速ニップロールの速度差及びその間に存在する空気圧により、延伸温度80℃、MD延伸倍率3.0倍、TD延伸倍率3.3倍の条件でMDとTDに同時に二軸延伸した。
次に、チューブラー延伸後のフィルムを、210℃に設定された熱処理ゾーンで100秒間熱処理し、その後、フィルム走行速度の減速度を0.05m/s2として、MD、TDにそれぞれ200℃で5.0%の弛緩処理を施し、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0084】
実施例20
PA6を80質量%、MXD6を20質量%含む原料を270℃でTダイより溶融押し出しし、20℃のドラム上で冷却して、厚さ150μmの実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを60℃の温水槽に60秒間浸漬、その後90℃の温水槽に60秒間浸漬して吸水処理を行った。
吸水処理された未延伸フィルムを、同時二軸延伸機に導き、220℃で予熱した後、延伸温度195℃、MD延伸倍率3.0倍、TD延伸倍率3.3倍の条件で同時二軸延伸した。
次に、同時二軸延伸後のフィルムを、210℃に設定された熱処理ゾーンで4秒間熱処理し、その後、フィルム走行速度の減速度を0.05m/s2として、MD、TDにそれぞれ200℃で5.0%の弛緩処理を施し、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0085】
実施例21、22、比較例7
表1のように、フィルムの製造条件を変更した以外は実施例20と同様に行い、厚さ15μmの二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0086】
実施例、比較例で得られたフィルムの構成、製造条件、特性を表1に示す。
【0087】
【0088】
実施例1~22の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、乾熱斜め差および吸水斜め差が小さく、製袋後のS字カールを十分に抑制することができた。特に、実施例7~10、21の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、ケミカルリサイクルポリアミド樹脂を含有しているため、乾熱斜め差および吸水斜め差がさらに小さい傾向にあった。
また、実施例1~3、5、7~22の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、MDの弛緩率とTDの弛緩率の比率(MD/TD)がより好ましい範囲の条件で製膜されたため、優れた突刺強力を有していた。
さらに、実施例20~22の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、直線カット性に優れていた。
一方、比較例1~7の二軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムは、乾熱斜め差もしくは吸水斜め差、或いはその両方が大きく、製袋後のS字カールを十分に抑制することができなかった。