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特開2023-126173吸収性物品および吸収性物品の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126173
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】吸収性物品および吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/531 20060101AFI20230831BHJP
   A61F 13/539 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61F13/531
A61F13/539
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/494 111
A61F13/475 111
A61F13/475 112
A61F13/49 315A
A61F13/49 315Z
A61F13/15 210
A61F13/536 100
A61F13/533 100
A61F13/511 110
A61F13/15 333
【審査請求】未請求
【請求項の数】37
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027334
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2022030410
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲
(72)【発明者】
【氏名】黒原 健志
(72)【発明者】
【氏名】木下 葵子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA03
3B200BB01
3B200BB03
3B200BB11
3B200BB17
3B200CA09
3B200DA02
3B200DA12
3B200DA13
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB16
3B200DB17
3B200DC02
3B200DC04
3B200DF08
3B200EA01
(57)【要約】
【課題】液体が複数回流入しても、吸収能力が低下しにくい吸収性物品を提供する。
【解決手段】長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、吸収コアの肌面側に重畳し、吸収コアと接着するコアラップシートと、を、含む吸収体と、吸収体の肌面側に配置された液体透過性のトップシートと、を、備え、吸収コアの肌面側の短繊維とSAPの粒子が、コアラップシートの非肌面側に接着することで、吸収体の肌面側構造を形成し、肌面側構造を形成する短繊維の坪量は、5g/m以上、90g/m以下であり、肌面側構造を形成するSAPの粒子の坪量は、5g/m以上、160g/m以下である、吸収性物品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、
高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、
前記吸収コアの肌面側に重畳し、前記吸収コアと接着するコアラップシートと、
を、含む吸収体と、
前記吸収体の肌面側に配置された液体透過性のトップシートと、
を、備え、
前記吸収コアの肌面側の前記短繊維と前記SAPの粒子が、前記コアラップシートの非肌面側に接着することで、前記吸収体の肌面側構造を形成し、
前記肌面側構造を形成する前記短繊維の坪量は、5g/m以上、90g/m以下であり、
前記肌面側構造を形成する前記SAPの粒子の坪量は、5g/m以上、160g/m以下である、
吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートと、前記肌面側構造の液体吸収速度は、液体を吸収していない状態で2.07cm/s以上である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートと、前記肌面側構造の液体吸収速度は、一旦液体を吸収した状態で1.71cm/s以上である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記肌面側構造に液体50mmを流した場合の液体浸透領域の面積は、241cm以下である、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記肌面側構造を形成する前記SAPの粒子の全部または一部は、前記コアラップシートに食い込んでいる、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記SAPの粒子は、破砕型である、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記コアラップシートは、前記吸収コアの側面側および非肌面側にも重畳し、前記吸収コアを覆っている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記コアラップシートは、
前記吸収コアの肌面側に重畳する上層コアラップシートと、
前記吸収コアの側面側と非肌面側に重畳する下層コアラップシートと、
に分割されており、前記上層コアラップシートと前記下層コアラップシートは、前記吸収コアの幅方向端部で相互に接着されている、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収コアの非肌面側の前記短繊維が、前記下層コアラップシートの肌面側に接着することで、前記吸収体の非肌面側構造を形成している、
請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記非肌面側構造には、更に、前記SAPの粒子を含む、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収コアに含まれる前記短繊維の大半は、前記肌面側構造と前記非肌面側構造に存在し、前記肌面側構造と前記非肌面側構造は、前記吸収コアの内部で、前記短繊維を殆ど介さずに当接している、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記肌面側構造にも前記非肌面側構造にも含まれない前記短繊維の坪量は、30g/m以下である、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記肌面側構造と、前記非肌面側構造にも属さない前記短繊維は、前記短繊維のうち5%重量以下であり、
前記吸収コアの肌面側構造の全領域において、前記短繊維の密度は均一であり、前記SAPの粒子の密度も均一である、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記非肌面側構造に含まれるSAP粒子の坪量は、10g/m以上である、
請求項10に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記非肌面側構造に含まれる前記短繊維の坪量は、10g/m以上である、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記肌面側構造と前記非肌面側構造の間には、どちらの構造にも属さないSAPの粒子が配置されることがあり、
配置される場合の前記SAPの粒子の坪量は、150g/m以下である、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記長手方向に延在し、前記幅方向の中心よりも外側に配置された左右一対の防漏シートであって、前記長手方向に延在する第1弾性部材を有する防漏シートを備え、
前記防漏シートは、着用時に前記第1弾性部材の付勢力により着用者の肌面側に向けて立ち上がって立体ギャザーを形成する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記吸収体よりも非肌面側に配置されたカバーシートを備え、
前記カバーシートは、幅方向端部に配置され、前記長手方向に延在する第2弾性部材を有し、
前記カバーシートの幅方向端部は、前記第2弾性部材によって収縮し、前記着用者の大腿部に密着する、
請求項17に記載の吸収性物品。
【請求項19】
前記カバーシートは、前記吸収体と重畳する位置に配置され、前記長手方向に延在する第3弾性部材を有し、
前記カバーシートは、前記第3弾性部材の弾性力によって前記着用者の股下に沿って屈曲する、
請求項18に記載の吸収性物品。
【請求項20】
包装状態において、前記吸収体を通る折り目は1箇所のみである、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項21】
前記吸収体は、略矩形であり、
前記吸収体の肌面側は、平板状である。
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項22】
前記吸収性物品には、着用状態において着用者の腹部側の腰回りに位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側の腰回りに位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられており、
前記吸収体は、略矩形であり、
前記吸収体の前記股下領域の肌面側には、圧搾溝が設けられている、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項23】
前記圧搾溝は、前記股下領域を中心として前記前身頃領域と前記後身頃領域に向かって、前記長手方向に延在している、
請求項22に記載の吸収性物品。
【請求項24】
前記圧搾溝は、前記幅方向に一対設けられている、
請求項22に記載の吸収性物品。
【請求項25】
前記吸収コアの前記長手方向の端部側面を覆う透液性シートを更に備える、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項26】
前記透液性シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長い、
請求項25に記載の吸収性物品。
【請求項27】
前記透液性シートは、エアスルー不織布である、
請求項25に記載の吸収性物品。
【請求項28】
前記吸収体の非肌面側に配置された非透水性のバックシートと、
前記吸収体と前記トップシートとの間に配置されて前記吸収体の肌面側を覆うセカンドシートと、を備える、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項29】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品の製造方法であって、
液体透過性を有する下層コアラップシートに接着剤を塗布する塗布工程と、
前記下層コアラップシートの幅方向中央に、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む、吸収コアを載置する載置工程と、
前記吸収コア上を上層コアラップシートで被覆する被覆工程と、
前記下層コアラップシートの幅方向端部を前記吸収コアの側に折り曲げて前記下層コアラップシートと前記上層コアラップシートを接着することで、前記吸収コアを前記下層コアラップシートおよび前記上層コアラップシートで包む包装工程と、
前記上層コアラップシート上に通液性シートを積層する工程と、
前記通液性シート上にトップシートを積層する工程と、
を、含む、吸収性物品の製造方法。
【請求項30】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子の含有割合は70質量%以上である、
請求項29に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項31】
前記通液性シートは、エアスルー不織布である、
請求項29に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項32】
前記通液性シートの繊維径は、2dtex以上8dtex以下であり、坪量が20g/m以上40g/m以下であり、
前記SAPの粒子の平均粒子径は、200μm以上600μm以下である、
請求項29に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項33】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子は、非破砕型である、
請求項29に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項34】
前記トップシートを準備する工程は、
吸収体側に配置する第2のシートに接着剤を間欠的に塗布する工程と、
着用者側に配置する第1のシートを前記第2のシートに積層し、前記接着剤によって前記第1のシートを前記第2のシートに接着させる工程と、
を、含む、
請求項25~29のうちいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項35】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品の製造方法であって、
高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、前記吸収コアの覆うコアラップシートと、を有する吸収体の連続体を切断する切断工程と、
前記吸収体の長手方向端部を透液性シートで覆う被覆工程と、
を、含む、
吸収性物品の製造方法。
【請求項36】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子の含有割合は60質量%以上である、
請求項35に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項37】
前記透液性シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長い、
請求項35に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品および吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつ等の吸収性物品が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-19728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、吸収体を有しており、人体から発生する液体を吸収する。吸収性物品は一定時間装着され、装着中に複数回の液体を受け止めることがある。しかし、液体を複数回受け止めると、次第に液体吸収能力が下がり、着用者に不快感を与えることがある。
【0005】
本発明は、液体が複数回流入しても、吸収能力が低下しにくい吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、吸収体の肌面側を覆うシートに高吸収性重合体粒子を接着する。
【0007】
本発明は、具体的には、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、前記吸収コアの肌面側に重畳し、前記吸収コアと接着するコアラップシートと、を、含む吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置された液体透過性のトップシートと、を、備え、前記吸収コアの肌面側の前記短繊維と前記SAPの粒子が、前記コアラップシートの非肌面側に接着することで、前記吸収体の肌面側構造を形成し、前記肌面側構造を形成する前記短繊維の坪量は、5g/m以上、90g/m以下であり、前記肌面側構造を形成する前記SAPの粒子の坪量は、5g/m以上、160g/m以下である、吸収性物品である。
【0008】
前記トップシートと、前記肌面側構造の液体吸収速度は、液体を吸収していない状態で2.07cm/s以上であってよい。
【0009】
前記トップシートと、前記肌面側構造の液体吸収速度は、一旦液体を吸収した状態で1.71cm/s以上であってよい。
【0010】
前記肌面側構造に液体50mmを流した場合の液体浸透領域の面積は、241cm以下であってよい。
【0011】
前記肌面側構造を形成する前記SAPの粒子の全部または一部は、前記コアラップシートに食い込んでいてよい。
【0012】
前記SAPの粒子は、破砕型であってよい。
【0013】
前記コアラップシートは、前記吸収コアの側面側および非肌面側にも重畳し、前記吸収コアを覆っていてよい。
【0014】
前記コアラップシートは、前記吸収コアの肌面側に重畳する上層コアラップシートと、前記吸収コアの側面側と非肌面側に重畳する下層コアラップシートと、に分割されており、前記上層コアラップシートと前記下層コアラップシートは、前記吸収コアの幅方向端部で相互に接着されていてよい。
【0015】
前記吸収コアの非肌面側の前記短繊維が、前記下層コアラップシートの肌面側に接着することで、前記吸収体の非肌面側構造を形成していてよい。
【0016】
前記非肌面側構造には、更に、前記SAPの粒子を含んでよい。
【0017】
前記吸収コアに含まれる前記短繊維の大半は、前記肌面側構造と前記非肌面側構造に存在し、前記肌面側構造と前記非肌面側構造は、前記吸収コアの内部で、前記短繊維を殆ど介さずに当接していてよい。
【0018】
前記肌面側構造にも前記非肌面側構造にも含まれない前記短繊維の坪量は、30g/m以下であってよい。
【0019】
前記肌面側構造と、前記非肌面側構造にも属さない前記短繊維は、前記短繊維のうち5%重量以下であり、前記吸収コアの肌面側構造の全領域において、前記短繊維の密度は均一であり、前記SAPの粒子の密度も均一であってよい。
【0020】
前記非肌面側構造に含まれるSAP粒子の坪量は、10g/m以上であってよい。
【0021】
前記非肌面側構造に含まれる短繊維の坪量は、10g/m以上であってよい。
【0022】
前記肌面側構造と前記非肌面側構造の間には、どちらの構造にも属さないSAPの粒子が配置されることがあり、配置される場合の前記SAPの粒子の坪量は、150g/m以下であってよい。
【0023】
前記長手方向に延在し、前記幅方向の中心よりも外側に配置された左右一対の防漏シートであって、前記長手方向に延在する第1弾性部材を有する防漏シートを備え、前記防漏シートは、着用時に前記第1弾性部材の付勢力により着用者の肌面側に向けて立ち上がって立体ギャザーを形成してよい。
【0024】
前記吸収体よりも非肌面側に配置されたカバーシートを備え、前記カバーシートは、幅方向端部に配置され、前記長手方向に延在する第2弾性部材を有し、前記カバーシートの幅方向端部は、前記第2弾性部材によって収縮し、前記着用者の大腿部に密着してよい。
【0025】
前記カバーシートは、前記吸収体と重畳する位置に配置され、前記長手方向に延在する第3弾性部材を有し、前記カバーシートは、前記第3弾性部材の弾性力によって前記着用者の股下に沿って屈曲してよい。
【0026】
包装状態において、前記吸収体を通る折り目は1箇所のみであってよい。
【0027】
前記吸収体は、略矩形であり、前記吸収体の肌面側は、平板状であってよい。
【0028】
前記吸収性物品には、着用状態において着用者の腹部側の腰回りに位置する前身頃領域
、股下に位置する股下領域、及び背部側の腰回りに位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられており、前記吸収体は、略矩形であり、前記吸収体の前記股下領域の肌面側には、圧搾溝が設けられていてよい。
【0029】
前記圧搾溝は、前記股下領域を中心として前記前身頃領域と前記後身頃領域に向かって、長手方向に延在していてよい。
【0030】
前記圧搾溝は、幅方向に一対設けられていてよい。
【0031】
前記吸収コアの前記長手方向の端部側面を覆う透液性シートを更に備えてよい。
【0032】
前記透液性シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長くてよい。
【0033】
前記透液性シートは、エアスルー不織布であってよい。
【0034】
前記吸収体の非肌面側に配置された非透水性のバックシートと、前記吸収体と前記トップシートとの間に配置されて前記吸収体の肌面側を覆うセカンドシートと、を備えてよい。
【0035】
また、本発明は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品の製造方法であって、液体透過性を有する下層コアラップシートに接着剤を塗布する塗布工程と、前記下層コアラップシートの幅方向中央に、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む、吸収コアを載置する載置工程と、前記吸収コア上を上層コアラップシートで被覆する被覆工程と、前記下層コアラップシートの幅方向端部を前記吸収コアの側に折り曲げて前記下層コアラップシートと前記上層コアラップシートを接着することで、前記吸収コアを前記下層コアラップシートおよび前記上層コアラップシートで包む包装工程と、前記上層コアラップシート上に通液性シートを積層する工程と、前記通液性シート上にトップシートを積層する工程と、を、含む、吸収性物品の製造方法であってよい。
【0036】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子の含有割合は70質量%以上であってよい。
【0037】
前記通液性シートは、エアスルー不織布であってよい。
【0038】
前記通液性シートの繊維径は、2dtex以上8dtex以下であり、坪量が20g/m以上40g/m以下であり、前記SAPの粒子の平均粒子径は、200μm以上600μm以下であってよい。
【0039】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子は、非破砕型であってよい。
【0040】
前記トップシートを準備する工程は、吸収体側に配置する第2のシートに接着剤を間欠的に塗布する工程と、着用者側に配置する第1のシートを前記第2のシートに積層し、前記接着剤によって前記第1のシートを前記第2のシートに接着させる工程と、を、含む、吸収性物品の製造方法であってよい。
【0041】
また、本発明は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品の製造方法であって、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、前記吸収コアの覆うコアラップシートと、を有する吸収体の連続体を切断する切断工程と、前記吸収体の長手方向端部を透液性シートで覆う被覆工程と、を、含む、吸収性物品の製造方法であってよい。
【0042】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子の含有割合は60質量%以上であってよい。
【0043】
前記透液性シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長くてよい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、液体が複数回流入しても、吸収能力が低下しにくい吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、おむつの分解斜視図である。
図3図3は、非着用状態におけるおむつを、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図4図4は、伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。
図5図5は、吸収体の構造を示す図である。
図6図6は、吸収コアの肌面側構造と非肌面側構造とを分離した図である。
図7図7は、吸収コアと接着したコアラップシートの顕微鏡写真である。
図8図8は、従来品との吸収体の折れ曲がりを比較した図である。
図9図9は、実施形態に係る吸収体の液体吸収の仕組みを概念的に示す図である。
図10図10は、実験における吸収速度の変化を示すグラフである。
図11図11は、実験における拡散長の変化を示すグラフである。
図12図12は、実験における吸収体の厚みの変化を示すグラフである。
図13図13は、第2の実施形態に係る吸収体を示す図である。
図14図14は、第3の実施形態に係る吸収体を示す図である。
図15図15は、第2の実施形態と第3の実施形態に係る吸収体の断面図である。
図16図16は、第4の実施形態に係る吸収体を示す図である。
図17図17は、第4の形態に係る吸収体の断面図である。
図18図18は、第5の実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
図19図19は、第5の実施形態に係る、非着用状態におけるおむつを、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図20図20は、第5の実施形態に係る、伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。
図21図21は、第5の実施形態に係る吸収体の構造を示す図である。
図22図22は、SAP固定率試験の概要を示した図である。
図23図23は、SAP固定試験の更に別の概要を示した図である。
図24図24は、SAP固定率とSAP比率との関係を示す図である。
図25図25は、第5の実施形態に係る吸収体の製造方法を示す図である。
図26図26は、第5の実施形態に係る吸収体の製造方法を示す図である。
図27図27は、トップシートをエンボス状の2枚構成とした例を示した図である。
図28図28は、第6の実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
図29図29は、第6の実施形態における吸収体の長手方向の断面図である。
図30図30は、第6の実施形態におけるおむつ1の製造方法を示す図である。
図31図31は、第6の実施形態におけるおむつ1の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、
以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0047】
<第1の実施形態>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部側の腰回りに対向して配置される前身頃と背部側の腰回りに対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に装着された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0048】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有している。おむつ1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0049】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位に、非透水性のレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもおむつ1の幅方向内側に非透水性の立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BR及びウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。
【0050】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、図3は、非着用状態におけるおむつ1を、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。図4は、伸長した状態のおむつ1を肌面側から見た平面図である。おむつ1は、着用状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する部位(図4に示す脚周り領域10L,10R)に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0051】
そして、おむつ1は、カバーシート4の肌面側において順に積層されるバックシート5(非肌面側シート)、吸収体6、トップシート7(本願でいう「肌面側シート」の一例)を有する。バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも略矩形(略長方形)の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部が液透過性を有している。トップシート7と吸収体6との間には、図示しないセカンドシートが更に配置されていてよい。セカンドシートも、トップシート7と同様に、液透過性を有している。セカンドシートは、本開示における通液性シートの一例である。おむつ1の着用状態において、着用者から排出された液体である排出液は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。また、吸収体6は、股下領域1Bを含んで配置されている。
【0052】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6に接触することになる。なお、吸収体6の非肌面側を包み込むカバーシート4を、外装体と呼ぶことがある。
【0053】
また、おむつ1は、上述したレグギャザー3AL,3ARを形成するための弾性部材4SL,4SRがカバーシート4とバックシート5の間におむつ1の長手方向に伸縮するように設けられる。弾性部材4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数(本実施形態では、3本)で、伸長状態で設けられる。なお、図4に示されるように、レグギャザー3AL,3ARは、股下領域1Bの幅方向両側端部において着用者の大腿部が位置する部位である脚周り領域を含んで配置されて、おむつ1の幅方向端部に自由端を有している。脚周り領域10L,10Rは、吸収体延在領域である股下領域1Bの幅方向両側端部に一対配置される。また、弾性部材4SL,4SRの配置領域が、レグギャザー3AL,3ARである。弾性部材4SL,4SRは、本開示における第2弾性部材に相当する。
【0054】
また、おむつ1は、細長い帯状であって、おむつ1の幅方向の中心よりも外側に配置された左右一対のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる非透水性のシートである。サイドシート8L,8Rには、カバーシート4と同様、着用者の大腿部が位置する部位(図4に示す脚周り領域10L,10R)に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには立体ギャザー3BL,3BRを形成するための弾性部材8EL,8ERが長手方向に沿って配置されている。サイドシート8L,8Rは、おむつ1が着用状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、弾性部材8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、幅方向への液体の流出を防ぐ防漏シートである立体ギャザー3BL,3BRとなる。弾性部材8EL,8ERは、本開示における第1弾性部材に相当する。
【0055】
なお、カバーシート4には、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されて、おむつがずれるのを防ぐ弾性部材4Cが、弾性部材4SL,4SRよりもおむつ1の幅方向内側でおむつ1の長手方向に沿って、少なくとも股下領域1Bを含む吸収体6の延在領域に設けられている。弾性部材4Cは、おむつ1を着用者の体形に合わせて変形させて、吸収体6の位置を着用者の尿道口に対応する位置に保つ役割を有している。弾性部材4Cは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて伸長状態で設けられる。弾性部材4Cが設けられたカバーシート4は、ずれ止めギャザーとしての役割を有している。弾性部材4Cは、本開示における第3弾性部材の一例である。
【0056】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための弾性部材9ERは、吸収体6の端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。弾性部材9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、弾性部材9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、弾性部材9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0057】
本実施形態に係る吸収体6は、略矩形形状を有している。吸収体を瓢箪型とした場合、吸収体は股下領域1B付近の括れ部分において屈曲することがあるが、吸収体6は矩形であるため、長手方向全領域において屈曲に強くなる。吸収体6は、吸収コア6Cと、当該吸収コア6Cを包み込むコアラップシート6Wとを有している。コアラップシート6Wは、透水性を有するシートにより構成されており、トップシート7を通過した液体を吸収コア6Cに流入させる。コアラップシート6Wは、一枚のシートから構成されていてもよいし、吸収コア6Cの肌面側を覆うシートと、吸収コア6Cの側面側と非肌面側を覆うシートとに分割されており、それを側面側ないし肌面側幅方向端部付近で相互に接着することにより構成してもよい。吸収コア6Cとコアラップシート6Wは接着されており、吸収コア6Cの型崩れを防止する。
【0058】
吸収コア6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6では、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体6の厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0059】
本開示に係るおむつ1では、吸収コア6Cの短繊維の坪量は、SAP粒子の坪量よりも少なくなっており、主にSAP粒子により流入した液体を吸収する。SAP粒子のみで吸収コア6Cを形成すると、水分を吸収していない状態の吸収コア6Cは非常に硬くなり、硬さが肌面に違和感を与え、装着感が低下する。短繊維は、吸収コア6Cに液体が流入した場合に液体を広範囲に拡散させる役割を果たすとともに、吸収コア6Cに適度なクッション性を与え、装着感の低下を抑制する役割を有している。
【0060】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加され
る表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0061】
また、サイドシート8L,8Rと弾性部材8EL,8ERとで形成される立体ギャザー3BL,3BRは、トップシート7の幅方向の両端に沿って伸長状態で配置され、おむつ1の長手方向に延在する。立体ギャザー3BL,3BRは、トップシート7に固定された固定部30L,30Rと、固定部30L,30Rから肌面側に起立する起立部31L,31Rとを、有する。固定部30L,30Rは、サイドシート8L,8Rのうちトップシート7とトップシート7の外側でバックシート5やカバーシート4に接合された部位である。これらの接合にはホットメルト接着剤が用いられる。起立部31L,31Rは、固定部30L,30Rよりもおむつ1の幅方向の内側の吸収体延在領域に位置する自由端部分であり、おむつ1の着用状態において、弾性部材8EL,8ERの収縮力によって肌面側に起立する部位である。固定部30L,30Rと起立部31L,31Rの境界が、起立部31L,31Rの起立起点となる起立線32L,32Rとなる。起立部31L,31Rは、固定部30L,30Rと起立部31L,31Rの境界である起立線32L,32Rを境に肌面側に起立可能である。
【0062】
本実施形態において、吸収体6は括れのない略矩形である。既存のおむつが採用する股下領域1B対応部分が前身頃領域1F、後身頃領域1Rよりも幅狭とされた括れ部分となっている吸収体では、吸収体の括れ部分が外部からの圧力に弱くなり、長手方向中央部の括れ部分と長手方向端部の幅広部分との境界で、折り曲がりが発生しやすくなる。矩形の吸収体6を採用することで圧力に弱い部分は存在しなくなり、折り曲がりの発生を抑制できる。なお、本実施形態では、吸収体6の肌面側は平板状である。
【0063】
図5は、吸収体6の構造を示す図である。上述の通り、吸収体6は、吸収コア6Cと、コアラップシート6Wを有している。コアラップシート6Wは、1枚のシートで構成されていてもよいが、吸収コア6Cの肌面側と非肌面側では、コアラップシート6Wに求められる機能が異なる(具体的には、肌面側のコアラップシートには、流入した液体を迅速に吸収コア6Cに通過させる機能が求められ、非肌面側のコアラップシートには、吸収コア6Cを補強して型崩れを防止する機能が求められる)ため、本図のように肌面側と非肌面側とを別のシートとすることが好適である。
【0064】
本図に示す形態では、コアラップシート6Wは、少なくとも吸収コア6Cの肌面側に重畳する上層コアラップシート6Waと、吸収コア6Cの側面側と非肌面側に重畳する下層コアラップシート6Wbとに分かれている。上層コアラップシート6Waは、流入した液体を吸収コア6Cに透過しやすいシートであり、一例としては細繊度エアスルー不織布を用いることができる。下層コアラップシート6Wbは、上層コアラップシート6Waと同じ素材を用いることもできるし、液体透過性に劣るが、吸収コア6Cの形状を保持しやすいティッシュペーパー等の別の素材を用いることもできる。上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、吸収コア6Cの幅方向端部において相互に接着されて接着部を形成し、吸収コア6Cを包み込んでいる。
【0065】
吸収コア6Cと上層コアラップシート6Waは、接着剤等で接着されている。上述の通り、吸収コア6Cは、パルプ等の短繊維と、SAP粒子とを含有して構成されている。このため、上層コアラップシート6Waと接着されているのは、より具体的に言えば、短繊維とSAP粒子である。上層コアラップシート6Waと、当該上層コアラップシート6Waに接着された吸収コア6Cの内容物が、本開示における吸収体6の肌面側構造に相当する。肌面側構造では、SAP粒子の坪量は短繊維の坪量よりも大きい。
【0066】
トップシート7を通過した液体は、吸収体6の肌面側構造に到達する。本開示における
吸収コア6Cの肌面側構造には、SAP粒子が非常に多く含まれている。吸収体6が液体を吸収していない状態では、上層コアラップシート6Waに接着されたSAP粒子は硬い砂粒状であって、吸収コア6Cの肌面側にはSAP粒子が敷き詰められた状態になっている。このため、最初に流入した液体の吸収コア6C内部への浸透は、SAP粒子に阻害される。
【0067】
肌面側構造には短繊維が含まれており、流入した液体は、砂粒状のSAP粒子の隙間に存在する短繊維部分を伝って吸収コア6Cの内部に到達する。このため、流入した液体は、吸収コア6Cの肌面側で吸収されずに横漏れを引き起こすことはない。しかし、最初に流入した液体の吸収コア6C内部への流入はSAP粒子に阻害されやすく、流入箇所で吸収コア6C内部に浸透しなかった液体は、吸収体6の肌面側を平面的に拡散し、順次吸収されることになる。なお、短繊維は、吸収コア6C内部で液体を拡散させる機能をも有している。
【0068】
一方、液体を吸収したSAP粒子は、柔らかいゲル状になり、その一部は上層コアラップシート6Waから剥離する。また、本開示におけるSAP粒子は、液体を吸収した場合には30cm/min以上の透水性を有する。このため、吸収体6が液体を吸収した状態で更に流入した液体は、流入箇所近傍で吸収体6の内部に容易に浸透する。
【0069】
透水性の測定方法について説明する。透水性は、1分間に透過する液体の容積(cm)で規定される。まず、フィルター(アズワン株式会社製バイオカラムフィルター30SUS等)を装着した内径が25.4mmのバイオカラム(アズワン株式会社製バイオカラムCF-30K等)を準備する。バイオカラムには、液量60cm及び40cmに印があるもの、又は、液量60cm及び40cmに印を付したものを用いる。次いで、容量が200cmのビーカーに濃度が0.900%(±0.009%)、温度が25℃(±2℃)の生理食塩水を150.0cm(±1.5cm)入れる。次いで、当該ビーカーにSAP粒子を0.320g(±0.003g)を入れ、攪拌しつつ30分間浸漬させる。次いで、ビーカーの内容物を全てバイオカラムに入れた後、目開き150μm、直径25mmの金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒をバイオカラム内筒に挿入して、金網がSAPに接するようにし、さらにSAPに0.3psiの荷重が加わるように円柱棒におもりを載せる。次いで、バイオカラムのコックを開き、バイオカラム管内の液面が60cmラインの約5cm上となるまで液面を下げ、その状態で1分間待つ。次いで、バイオカラムのコックを開き、液面が60cmラインから40cmラインまで下がるのに必要な時間(T1)を計測する。また、SAPを入れない状態で同様の試験を行い、時間(T0)を計測する。
【0070】
SAPの透水性は、上記試験によって得られたT1、T0の値を次の式(1)に当てはめることによって求められる。
透水性(cm/min)=20/(T1-T0)・・・(1)
【0071】
また、本実施形態では、吸収コア6Cと下層コアラップシート6Wbも、接着剤等で接着されている。吸収コア6Cが含有する短繊維とSAP粒子は、下層コアラップシート6Wbにも接着している。当該下層コアラップシート6Wbに接着された吸収コア6Cの内容物は、本開示における吸収体6の非肌面側構造に相当する。
【0072】
下層コアラップシート6Wbと接着されているのも、短繊維とSAP粒子である。なお、吸収コア6Cの非肌面側は、流入した液体を分散させて広範囲のSAP粒子に吸収させる拡散層としての役割を有しているため、肌面側構造よりも短繊維の含有量が大きく、SAP粒子の含有量が小さくなっていてよい。下層コアラップシート6Wbと、当該下層コアラップシートに接着された吸収コア6Cの内容物は、本開示における吸収体6の非肌面
側構造に相当する。
【0073】
このように、上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbには、吸収コア6Cの内容物が接着されている。特に、吸収コア6Cが含有している短繊維は、その殆ど(具体的には、95重量%以上)が上層コアラップシート6Waまたは下層コアラップシート6Wbに接着されて肌面側構造または非肌面側構造のいずれかに含まれている。
【0074】
肌面側構造を完全にSAP粒子で覆ってしまうと、液体は吸収コア6Cの内部に流入しにくくなる。液体を吸収していない状態では肌触りが硬くなって着用者に不快感を与えることがあるため、肌面側構造は一定程度の短繊維を含んでいる。これに対して、非肌面側構造には、SAP粒子の隙間に液体を透過させる必要がなく、また着用者の肌面に直接影響を与えない。このため、非肌面側構造は、肌面側構造よりも、短繊維に対してのSAP粒子の割合を高くすることが可能である。SAP粒子の割合が高いことにより、非肌面側構造は丈夫になり、撚れに対する抵抗性が高くなる。このため、本実施形態に係るおむつ1の吸収体6は、着用者が動き回っても撚れが発生しにくく、着用者の尿道口当接位置に対応する位置から移動しない。なお、本実施形態において、非肌面側構造を形成しているSAP粒子の坪量は、10g/m以上であり、短繊維の坪量は、10g/m以上である。
【0075】
吸収体6に最初に流入した液体は、SAP粒子に阻害されることもあり肌面側構造に留まりやすいが、2回目以降に流入した液体は、液体を吸収して透水性を持ったSAP粒子を容易に通過し、非肌面側構造に流入する。非肌面側構造に流入した液体は、短繊維により分散され、広範囲のSAP粒子に吸収される。このように、吸収コア6Cが肌面側構造と非肌面側構造とに分かれていることにより、肌面側のみならず非肌面側でも液体を効率的に保持固定可能であり、吸収コア6Cの厚みを薄くすることができる。
【0076】
本実施形態における吸収コア6Cの坪量は、266g/m以上、484g/m以下であり、一般的なおむつよりも密度が高い。更に、吸収コア6Cが含む短繊維の坪量は、88g/m以上、176g/m以下である。また、吸収コア6Cが含むSAP粒子の坪量は、167g/m以上、308g/m以下である。このように、本実施形態における吸収コア6Cの内容物のうち重量比60%以上をSAP粒子が占める。一般的なおむつの吸収体のSAP粒子比率は重量比50%前後のため、本実施形態における吸収体6は、SAP粒子を豊富に含んでいる。吸収コア6Cの肌面側構造の全領域において、短繊維の密度は均一であり、SAP粒子の密度も均一である。なお、コアラップシートWの坪量は、8g/m以上、25g/m以下である。液体を吸収していない状態のSAP粒子は砂粒状であることから、本実施形態における吸収体6は屈曲しにくいと言える。
【0077】
図6は、吸収コアの肌面側構造と非肌面側構造とを分離した図である。上述したように、吸収体6は肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbとに分かれており、肌面側構造6Caは、吸収コア6Cの肌面側を上層コアラップシート6Waに接着して形成されている。同様に、非肌面側構造6Cbも、吸収コア6Cの非肌面側を下層コアラップシート6Wbに接着して形成されている。肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbは、接着されていないものの当接しており、吸収体6を分解した場合、両者を容易に引き離すことができる。
【0078】
肌面側構造が含む短繊維の坪量は、5g/m以上、90g/m以下である。また、肌面側構造が含むSAP粒子の坪量は、5g/m以上、160g/m以下である。肌面側構造において、上層コアラップシート6Waに接着されている吸収コア6Cの内容物の6割以上は、SAP粒子となる。肌面側構造を完全にSAP粒子で覆ってしまうと、液体は吸収コア6Cの内部に流入しにくくなる。液体を吸収していない状態では肌触りが硬くなって着用者に不快感を与えることがあるため、肌面側構造は一定程度の短繊維を含ん
でいる。これに対して、非肌面側構造は、SAP粒子の隙間に液体を透過させる必要がなく、また着用者の肌面に直接影響を与えないため、吸収体6全体が屈曲しないように、内容物を比較的自由に設計することができる。本実施形態において、非肌面側構造を形成しているSAP粒子の坪量は、10g/m以上であり、短繊維の坪量は、10g/m以上である。
【0079】
肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbの層間には、肌面側構造6Caにも非肌面側構造6Cbにも含まれないSAP粒子が設けられていてよい。当該SAP粒子は、どちらの層にも接着されていないため、吸収コア6C内部を相対的に移動可能である。しかし、このようなSAP粒子の坪量を上述の範囲とすれば、肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbとに含まれる短繊維との摩擦により移動が規制される。このため、着用者が動き回るなどして肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbとの間に圧力がかかっても、肌面側構造6Caにも非肌面側構造6Cbにも含まれないSAP粒子が移動することで吸収コア6Cが変形し、撚れが生じるのを防ぐことができる。吸収体6製造上の観点からは、肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbの層間に配置されるSAP粒子の量は、吸収コア6Cが含む全SAP粒子の量の45%以下であることが望ましい。
【0080】
また、吸収コア6Cを図6のように分離し、肌面側構造6Caの非肌面側と、非肌面側構造6Cbの肌面側を下にした場合、層間に設けられたSAPは吸収コア6C内部からこぼれ落ちることになる。肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbとの間にSAP粒子を設けることにより、吸収コア6C内部に取り込まれた液体は、肌面側構造6Ca、非肌面側構造6Cbに含まれるSAP粒子の他、層間に設けられたSAP粒子によっても吸収される。肌面側構造6Caにも非肌面側構造6Cbにも含まれないSAPの粒子の坪量は、0g/m以上、150g/m以下であることが好適である。
【0081】
なお、肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbのどちらの層にも含まれない短繊維は殆ど存在せず、短繊維の全量またはその大半は、上層コアラップシート6Waまたは下層コアラップシート6Wbに接着されている。吸収体6を図6のように分離し、肌面側構造6Caの非肌面側と、非肌面側構造6Cbの肌面側を下にした場合でも、短繊維は殆どこぼれ出ない。肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbの間に短繊維を設けずに、肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbが接するようにすることで、肌面側構造6Caに接着した短繊維を伝って吸収コア6C内部に浸透した液体は、直接非肌面側構造6Cbにも浸透して迅速に拡散される。具体的には、肌面側構造6Caにも非肌面側構造6Cbにも含まれない短繊維の坪量は、30g/m以下である。
【0082】
このように、本実施形態に係るおむつ1では、肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbとの間には、どちらの構造にも属しない短繊維が殆ど存在しない。このため、着用者が動き回るなどして肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbとの間に圧力がかかっても、このような短繊維が移動することで吸収コア6Cが変形し、撚れが生じるのを防ぐことができる。
【0083】
図示したように吸収体6を分離して、コアラップシートWに接着されていない内部構造を容器に落下させた場合、落下物の大半はSAP粒子であって、短繊維は殆ど含まれていない。すなわち、短繊維はそのほぼ全量が上層コアラップシート6Waまたは下層コアラップシート6Wbに接着されて肌面側構造6Ca、非肌面側構造6Cbの一部となっており、肌面側構造6Ca、非肌面側構造6Cbに属しておらず、両構造の間に存在している短繊維は殆ど存在しない(全体の5重量%以下である)。このため、着用者が動き回るなどして吸収体6に圧力がかかっても、肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbの間に存在する短繊維が移動することにより肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbの位置がずれて、吸収体6が屈曲することがない。
【0084】
また、本実施形態におけるコアラップシートWは吸収コア6Cに接着されて肌面側構造と非肌面側構造を形成している。このため、コアラップシートWが吸収コア6Cに対して横滑りすることはない。また、吸収コア6Cの短繊維、SAP粒子の密度は、吸収コア6C全域において略同一である。この構成により、本実施形態における吸収体6では、コアラップシートWのみならず吸収コア6Cの内部構造のほぼ全域が圧力を分散する。本実施形態における吸収体6は、この面からも屈曲しにくいといえる。
【0085】
なお、流通状態において包装容量を小さくするため、おむつは折り畳まれていることが一般的であるが、本実施形態に係るおむつ1では、包装状態においても吸収体6を通る折り目は1箇所に限られる。包装状態における折り癖は、装着状態においても残り、吸収体6がおり曲がる原因となることがあるが、本実施形態にかかるおむつ1では、吸収体6の曲げ耐性は既存のおむつに比べて高いうえに、吸収体6に残る折り癖が最小限に限られるため、おむつ1装着時における吸収体6の屈曲は最小限に抑えられる。
【0086】
図7は、吸収コアと接着したコアラップシートの顕微鏡写真である。具体的には、一旦おむつ1の吸収体6を製造し、そこから切り出して短繊維を取り除いた上層コアラップシート6Waの顕微鏡写真である。上層コアラップシート6Waを構成する繊維内の円で囲った部分には、一部のSAP粒子が食い込んでいる。このように、肌面側構造6Caでは、上層コアラップシート6WaとSAP粒子の接着は、接着剤によるものだけでなく、SAP粒子が上層コアラップシート6Waの繊維間に食い込むことによっても実現されている。また、本実施形態で用いられるSAP粒子は、球形ではなく、鋭角部分を持つ破砕型である。このため、当該鋭角部分は上層コアラップシート6Waにより食い込みやすくなり、液体を吸収していない状態のSAP粒子の上層コアラップシート6Waからの逸脱がより強力に防止される。上層コアラップシート6Waに食い込むSAP粒子は、肌面側構造6Caが含有するSAP粒子の全てであってもよいし、そのうちの一部であってもよい。
【0087】
上層コアラップシート6Waの繊維間に食い込んで接着しているSAP粒子は、流入した液体を吸収して膨張すると、上層コアラップシート6Waから容易に離れる。SAP粒子が上層コアラップシート6Waから離れることで、肌面側構造6Caに液体が浸透しやすくなる。
【0088】
なお、破砕型のSAP粒子は、上層コアラップシート6Waのみならず、下層コアラップシートにも食い込みやすくなる。このため、肌面側構造6Caのみならず、非肌面側構造6Cbにおいても、SAP粒子のコアラップシートからの逸脱が防止される。
【0089】
本実施形態におけるSAP粒子は破砕型であり、図6における円形で囲った部分において、コアラップシート6Wに食い込む特性を有している。コアラップシート6W食い込んだSAP粒子は、水分を吸収していない状態でコアラップシートWの剛性を向上させる。このように、SAP粒子が食い込む特性を持ったコアラップシート6Wを有する本実施形態における吸収体6は、この面でも屈曲しにくいと言える。
【0090】
なお、流通状態において包装容量を小さくするため、おむつは折り畳まれていることが一般的であるが、本実施形態に係るおむつ1では、包装状態においても吸収体6を通る折り目は1箇所に限られる。包装状態における折り癖は、装着状態においても残り、吸収体6がおり曲がる原因となることがあるが、本実施形態にかかるおむつ1では、吸収体6の曲げ耐性は既存のおむつに比べて高いうえに、吸収体6に残る折り癖が最小限に限られるため、おむつ1装着時における吸収体6の屈曲は最小限に抑えられる。
【0091】
図8は、従来品との吸収体の折れ曲がりを比較した図である。図8(A)は、本実施形態におけるおむつ1を、張力を与えずに広げたものであり、図8(B)は、従来品の乳幼児用テープ型おむつを、張力を与えずに広げたものである。なお、従来品と本実施形態におけるおむつ1では、吸収体6の構造は異なるが、ずれ止めギャザー、レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BRの構造は同一であり、弾性部材の付勢力も同じである。
【0092】
おむつは、ずれ止めギャザー、レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BRに付されている弾性部材の働きにより長手方向内側に収縮し、これらの弾性部材の弾性力は吸収体にも伝わって、吸収体も屈曲する。本実施形態におけるおむつ1では、図8(A)に示すように吸収体6は比較的小さな角度で緩やかに屈曲し、肌面側には低い凸部が1つ形成されている。それに対して、従来品では、吸収体はより鋭角に屈曲しており、肌面側には高い凸部が2つ形成されている。
【0093】
吸収体に高い凸部が複数形成されていると、おむつを装着した場合にも吸収体に凸部が残存し、外装体を含むおむつ全体が長手方向に屈曲したままになることがある。おむつが長手方向に屈曲していると、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARはその効果を十分に発揮できなくなり、液体がおむつの側部から外部に漏れ出す虞がある。本実施形態におけるおむつ1では吸収体6の屈曲が最小限に抑えられるため、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARが効果を発揮しやすくなり、液体の横漏れを抑制できる。
【0094】
図9は、実施形態に係る吸収体の液体吸収の仕組みを概念的に示す図である。図9(A)は、吸収体6に最初に液体が流入した場合の液体吸収の仕組みを示す図である。吸収体6に液体が流入していない状態では、上層コアラップシート6Waの非肌面側には多くのSAP粒子が接着されており、液体はSAP粒子の合間に存在する短繊維を伝って吸収コア6C内部に流入する。このため、液体は、流入箇所ですぐに吸収されずに、上層コアラップシート6Waの肌面側を放射状(矢印の方向で示す)に広がり、吸収体6の広範囲でゆっくりと吸収されることになる。最初に流入した液体が吸収体6の表面を広がる範囲を液体到達範囲61とする。
【0095】
図9(B)は、一旦液体が流入した状態で更に液体が流入した場合の液体吸収の仕組みを示す図である。液体を吸収したSAP粒子は膨張して透水性になる。また、SAP粒子と上層コアラップシート6Waとの接着度合いも弱くなるため、吸収体6の肌面側の透水性は向上する。このため、更に流入した液体はより迅速に吸収体6の内部に浸透する。このため、液体到達範囲61に対して、更に流入した液体が吸収体6の表面を広がる範囲である液体到達範囲62は、液体到達範囲61に比べて小さくなる。
【0096】
吸収体6の内部構造の液体吸収能力は、液体が流入する毎に低下していく。このため、一般的なおむつは、繰り返し液体を吸収すると、流入位置の液体吸収能力が飽和し、吸収速度が低下してしまう。吸収範囲を広げて吸収能力の飽和を防ぐため、吸収コア6Cに導流溝を設けて液体を拡散させる構造が用いられることがある。これに対して、本実施形態に係るおむつでは、初回の液体流入では液体を広範囲で受け止め、再度の液体流入では速やかに内部に導くため、液体の吸収速度を保つことができ、吸収コア6Cに導流溝を設ける必要がなくなる。
【0097】
本実施形態におけるおむつ1の吸収効果を確認するため、おむつ1に液体を複数回吸収させる実験を行った。液体としては尿の化学組成を模した液体である人工尿を用いた。人工尿は、一例としては、純水(H2O)1Lに、尿素(NH2CONH2)19.4g、塩化ナトリ
ウム(NaCl)8.04g、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO4・7H2O)2.05g、塩化
カルシウム二水和物(CaCl2・2H2O)0.84gを溶解させ、必要に応じて更に着色料を
加えて作成する。流入させる液体の量は、生後2年までの乳幼児の1回あたりの尿量と同様の50cmとし、30分間隔で3回流入させることにした。
【0098】
液体の流入位置を規定するため、おむつ1の吸収体6の上にベビー用のストライクスルー板を重畳させ、ストライクスルー板の穴に、シリンジを用いて規定量の人工尿を注入し、人工尿の注入開始から、吸収が完了するまでの時間を計測した。吸収完了後、一旦ストライクスルー板を取り外し、トップシート7またはセカンドシート上の人工尿の拡散長を計測するとともに、前身頃領域1F,股下領域1B,後身頃領域1R領域における吸収体6の厚みを計測した。計測が終わったら、再び同じ位置にストライクスルー板を重畳させ、30分後経過毎に同量の人工尿を注入し、同様の計測を行い、この手順を2回繰り返した。比較のため、市販品の幼児用テープ型おむつ(王子ネピア株式会社製 Genki!テープタイプおむつMサイズ)についても同様の手順により実験を行い、本実施形態のおむつと比較した。本実施形態に係るおむつでは、吸収体6のSAP比は71~74%であった。これに対して、市販品のSAP比は、51%であった。
【0099】
図10は、実験における吸収速度の変化を示すグラフである。本実施形態に係るおむつの1の液体吸収速度は、初回注入では市販品よりも遅かったものの、実用上十分な水準であった(市販品:2.2cm/s、本実施形態:2.07cm/s)。一方、吸収速度の低下は市販品よりも緩やかであり、3回目で市販品を上回った(市販品:1.68cm/s、本実施形態:1.73cm/s)。この結果から、本実施形態に係るおむつ1では、複数回の液体浸透による吸収速度の変化が抑えられていることが分かる。
【0100】
図11は、実験における拡散長の変化を示すグラフである。本実施形態に係るおむつの人工尿の拡散長は、初回注入では市販品と同様であった(市販品:170mm、本実施形態:170mm)。しかし、市販品では注入毎に吸収範囲が広くなるのに対し、本実施形態では殆ど変化しなかった(3回注入した時点で、市販品:210mm、本実施形態:175mm)。本実施形態では、初回注入でこそSAP粒子により液体の浸透が阻害されて液体が広範囲に広がるが、2回目以降の注入では吸収体6の透液性が向上して液体が吸収コア6C内部に迅速に浸透するため、初回注入時よりも狭い範囲で吸収されて、拡散長が広がらないことが分かる。本実施形態での液体浸透領域の面積は、3回の液体浸透を経た後の最大拡散長を直径とする円形として近似すると、241cmとなる。
【0101】
図12は、実験における吸収体の厚みの変化を示すグラフである。市販品の吸収体の厚みは、人工尿注入回数によって大きく変化したが、本実施形態に係るおむつでは、厚みの変化は緩やかであった。また、前身頃領域1F,股下領域1B,後身頃領域1Rのいずれにおいても、本実施形態に係るおむつの吸収体の厚みが市販品を上回ることがなかった。この結果から、本実施形態に係るおむつ1は、市販品よりも薄い吸収体6を備えながらも、流入する液体を非常に効率的に処理することができることが分かる。
【0102】
次に、吸収体の撚れについても実験を行った。上述の市販品の幼児用テープ型おむつと、本実施形態に係るおむつ1を、各3枚用意した。各おむつを、下半身を模し、股関節を可動可能なダミー人形に装着し、歩行試験機にセットした。歩行試験機の股幅は、乳幼児を想定して狭く設定して固定した。歩行試験機により、ダミー人形に1分あたり170回の速度で、全体としては計2000回の歩行を模した変形を加え、吸収体6の変形を確認した。この状態で、今度は吸収体6に人工尿(上述の組成で作成)を流入させて、更に同様の歩行を模した変形を加えた。
【0103】
歩行試験後、市販品では平均45%の撚れが発生した。これに対して、本実施形態にかかるおむつ1では、撚れの発生は平均12%であった。この結果から、本実施形態に係る
おむつ1は、着用者が活発に動き回った後でも、市販品に比べて撚れの発生を抑制することができ、おむつからの液体漏れや着用感の低下を回避することができると言える。
【0104】
<第2の実施形態>
図13は、第2の実施形態に係る吸収体を示す図である。第2の実施形態でもおむつ1の全体構造は、上述の第1の実施形態とほぼ同様である。以下各実施形態に係る説明では、各図中、第1の実施形態と実質的に同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。第2の実施形態では、上述の実施形態における肌面側が平板状の吸収体6に代わり、股下領域に溝が設けられた吸収体6A1を有している。吸収体6A1の内部構造(SAPの比率、吸収体6が有する肌面側構造、非肌面側構造)は、概ね上述の実施形態と同一であるが、吸収体6A1の股下領域1Bには、長手方向に延在する圧搾溝61Hが設けられている。圧搾溝61Hは、吸収体6A1を肌面側から圧搾して構成されたものであり、圧搾溝61Hは、吸収体6A1の肌面側から非肌面側に貫通していない。また、圧搾溝61Hは、肉抜きにより構成されたものではない。このため、圧搾溝61H付近の吸収体6A1の密度は非常に高くなり、圧搾溝61Hの底面において吸収体6A1は硬化する。このため、吸収体6A1は、上述の実施形態に比べて、最も液体に触れる機会が多い股下領域1Bで長手方向に屈曲しにくくなる。このため、股下領域1Bにおいて、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARがより機能を発揮しやすくなる。なお、硬化しているのは圧搾溝61Hの底面であり、圧搾溝61Hを設けることによる着用者の肌触りへの影響は殆どない。
【0105】
また、圧搾溝61Hは、股下領域1Bに設けられており、股下領域1Bは着用者の尿道口に対応する。このため、流入した液体は、圧搾溝61Hを導流孔として吸収体6A1の股下領域の長手方向広範囲に広がって、吸収体6A1の長手方向広範囲で迅速に吸収されるため、おむつ1の液体吸収効果向上も期待できる。その他は、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0106】
<第3の実施形態>
図14は、第3の実施形態に係る吸収体を示す図である。第3の実施形態では、第2の実施形態における吸収体6A1が有する圧搾溝61Hを、股下領域1Bのみならず前身頃領域1F,後身頃領域1Rにまで延長し、圧搾溝62Hを有する吸収体6A2としたものである。このように、圧搾溝62Hの延在範囲を前身頃領域1F,後身頃領域1Rにまで広げると、吸収体6A2は、股下領域1Bのみならず前身頃領域1F,後身頃領域1Rにおいても、長手方向に屈曲しにくくなる。このため、吸収体6A2に対応するほぼ全領域において立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARが機能を発揮しやすくなる。
【0107】
また、第2の実施形態と同様、股下領域1Bにおいて圧搾溝62Hに流入した液体は、圧搾溝62Hを伝って吸収体6A2の前身頃領域1F,後身頃領域1Rにまで分散し、より広範囲で迅速に吸収されるため、第2の実施形態と比較して、おむつ1の液体吸収効果を更に高めることができる。なお、圧搾溝62Hを流れた液体が腰部から漏れ出すのを防ぐため、図示したように吸収体6A2の長手方向両端部には圧搾溝62Hを設けないことが望ましい。
【0108】
図15は、第2の実施形態と第3の実施形態に係る吸収体の断面図である。股下領域1Bでは、第2の実施形態と第3の実施形態の断面は同一であるので、第2の実施形態の吸収体6A1の断面図を用いて、第3の形態の断面についても説明をする。圧搾溝61H、62Hは、略逆台形状に形成されていることが望ましい。略逆台形状とすることで、圧搾溝61H,62Hを流れる液体が触れる壁面の面積が広くなるため、吸収体6A1,6A2の吸収性能を向上させることができる。
【0109】
本開示に係るコアラップシート6Wは、上述の通り吸収コア6Cと接着している。このため、上層コアラップシート6Waは、圧搾溝61H,62Hの落ち込みに追従して圧搾溝61H,62Hの底面まで落ち込む。本図では図示していないが、トップシート7も圧搾溝61H,62Hに相当する部分で上層コアラップシート6Waに接着して圧搾溝61H,62Hの底面まで落ち込んでいてもよい。トップシート7の肌面側に溝が形成されていることで、液体はより迅速に圧搾溝61H,62Hに流入する。なお、トップシート7と上層コアラップシート6Waを接着せず、トップシート7が圧搾溝61H,62Hに落ち込まないようにとすることで、肌触りを向上させることも考えられる。
【0110】
<第4の実施形態>
図16は、第4の実施形態に係る吸収体を示す図である。第4の実施形態では、吸収体6A3は、長手方向に平行する圧搾溝63HRと、圧搾溝63HLを有している。圧搾溝が2本になることで、吸収体6A3は、幅方向に複数の硬化部分を有することになり、長手方向の屈曲圧力に対してより強くなり、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3AR、ずれ止めギャザー等に設けられた弾性部材の付勢力に対抗する。このため、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARは、第2,第3の実施形態と比較してもより効果的に機能するようになる。
【0111】
図17は、第4の形態に係る吸収体の断面図である。吸収体6A3は、幅方向に一対設けられ、長手方向に延在する圧搾溝63HR,63HLを有することにより、長手方向の付勢力に対してより効果的に対抗できる。しかし、略逆台形状の溝が肌面側に2本設けられることにより、吸収体6A3は幅方向にはむしろ屈曲しやすくなり、着用者の下腹部・臀部の形状に沿いやすくなる。また、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3AR、ずれ止めギャザーは、おむつ1の横方向からの液体漏れを防ぐため、おむつ1の側面部分が着用者の肌面に沿うように付勢する。吸収体6A3は、幅方向の肌面側への付勢力には追従しやすくなっているため、おむつ1着用時に容易に屈曲し、着用者の肌面を包み込む。このため、吸収体6A3を有するおむつ1は、着用感を向上させることができる。
【0112】
吸収体6A3が肌面を覆う形になるため、液体は吸収体6A3に迅速に保持・吸収され、立体ギャザー3BL,3BR付近に到達しにくくなる。また、吸収体6A3は長手方向の屈曲には容易に対抗可能であり、立体ギャザー3BL,3BRとレグギャザー3AL,3ARは、は設計どおりの効果を発揮する。吸収体6A3の幅方向への変形と立体ギャザー3BL,3BRとレグギャザー3AL,3ARおよびずれ止めギャザーの適切な相乗効果により、第4の形態に係るおむつ1は、この面からも液体漏れを非常に効果的に抑制可能である。
【0113】
<第5の実施形態>
図18は、第5の実施形態に係るおむつの分解斜視図である。また、図19は、第5の実施形態に係る、非着用状態におけるおむつを、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。図20は、第5の実施形態に係る、伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。第5の実施形態に係るおむつ1は、トップシート7と吸収体6との間にセカンドシート11を備えている。
【0114】
セカンドシート11はトップシート7と同様に略長方形の外観を有しており、トップシートの非肌面側であって、吸収体6の吸水面を被覆するように配置されるシート状の部材である。セカンドシートは液透過性を有している。おむつ1の着用状態において、排出液は、トップシート7を通ってセカンドシートを通過して吸収体6に進入し、そこで吸収される。セカンドシートには、エアスルー不織布または、嵩高のエアスルー不織布を用いる
ことができる。なお、セカンドシートは、トップシート7と同一の素材であってもよい。セカンドシートは、吸収体6よりも長手方向に長く、前身頃領域1F,後身頃領域1Rにおいて、吸収体6の長手方向端部よりもおむつ1の長手方向端部側に延在していてよい。セカンドシートは、本開示における通液性シートの一例である。
【0115】
図21は、第5の実施形態に係る吸収体の構造を示す図である。第5の実施形態でも、コアラップシート6Wは、上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbとに分割されており、吸収コア6Cの肌面側の幅方向端部において、上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは相互に接着されて接着部を形成している。
【0116】
セカンドシート11は、この接着部の肌面側に更に接着されている。セカンドシート11の繊維径は、3dtex以上8dtex以下であり、一例としては、その平均繊維径は6dtexである。セカンドシート11の厚さは200μm以上600μm以下であり、その坪量は25g/m以上、40g/m以下であって、一例としては、その坪量は30g/mである。セカンドシート11は、透液性に優れるとともに、比較的厚く、柔軟性に富むシートであり、もし吸収体6の肌面側にSAP粒子がこぼれ出ていた場合にも、液体を吸収していない状態では固形であるSAP粒子の硬さを、トップシート7を介して着用者の肌面に伝えない。
【0117】
吸収コア6CとコアラップシートWは、ホットメルト接着剤等で接着されている。吸収コア6Cには、パルプ等の短繊維と、SAP粒子が含まれており、パルプ等の短繊維は、その殆どがコアラップシートWに接着されている。一方、SAP粒子の中には、コアラップシートWに接着していないものがあり、吸収コア6Cの内部を、また吸収コア6Cの外に移動することがある。
【0118】
一般的なおむつの吸収コアが含むSAP粒子の含有割合は50質量%程度であるが、本実施形態におけるSAP粒子の含有割合は70質量%以上、より具体的には72質量%以上であり、一般的なおむつに比べてSAP粒子の含有割合が非常に高い。また、吸収コア6C内部のSAP粒子のうちの一定のものはコアラップシートWと接着されていないため、吸収コア6Cの外に移動して、着用時の肌当たりを悪化させることがある。
【0119】
第5の実施形態におけるSAP粒子の平均粒子径は、200μm以上300μm以下であり、吸収コア6Cの内部を比較的動きにくくなっている。また、本実施形態に係るSAP粒子は非破砕型であって、万が一吸収体6の外にこぼれ出たとしても、比較的着用者のの肌面や他の構造に対して刺激を与えにくい。しかし、吸収体6の外に移動したSAP粒子は、製造工程において製造装置に入り込むことがある。製造装置に不要なSAP粒子が混入すると動作不良につながるため、SAP粒子は製造工程上においても可能な限り吸収体6の内部に留め置かれることが望ましい。
【0120】
図22は、SAP固定率試験の概要を示した図である。図22は、吸収体6にどの程度SAP粒子が固定されているかを調べるための装置である。土台32からポールが垂直に立ち上がっており、ポールの上方には長さ10cmのガイドレール31が鉛直に設置されている。ガイドレール31の内側には、落下棒30が配置されている。実験者が落下棒30をガイドレール31の上端まで持ち上げて手を離すと、落下棒30はガイドレール31に沿って10cm自由落下して、ガイドレールの下端で停止する。
【0121】
落下棒30には、長手方向中央部で2つに切断した吸収体6を配置する。落下棒30の直下には、落下したSAP粒子を計量する電子天秤33が設けられている。吸収体6に含まれるSAP粒子のうち固定されていないものは、落下の衝撃により吸収体6から電子天秤33に落下する。この状態で、落下動作を20回繰り返して固定されていないSAP粒
子を計量する。脱落したSAPの量をDR、設計上吸収体6に配合されているSAPの量をDFとした場合、SAPの固定率(%)は、(1-DR/DF)×100の式で求めることができる。
【0122】
図23は、SAP固定率試験の別の例を示した図である。試験装置の概要および試験方法は図22に示したものと同様であるが、図23に示す例では、吸収体6は、樹脂製の袋34に覆われた状態で試験装置に配置される。袋34は、一例を挙げれば塩化ビニル製やポリエチレン製である。図23に示す例では、落下棒30の落下の衝撃により吸収体6から離れたSAP粒子は、電子天秤33ではなく袋34の底に溜まる。そして、20回の落下動作の終了後に袋34の内容物を別途用意された電子天秤で計量し、固定されていないSAP粒子の量を求める。
【0123】
図23に示す実験手法では、吸収体6は袋34に覆われている。SAP粒子は落下の衝撃により実験装置の下以外の場所に飛散することがあるが、吸収体6を袋34で覆うことで、飛散したSAP粒子を確実に捕捉可能となり、吸収体6に固定されていないSAP粒子の量をより正確に計測可能である。SAPの固定率(%)の計算式の内容は上述したものと同様である。
【0124】
図24は、SAP固定率とSAP比率との関係を示すグラフである。図7からは、吸収体6のSAP比率が大きくなるにつれて、SAPの固定率が悪化することが分かる。図7において点線で囲った領域は、SAP粒子が十分に固定されており、製造工程上、製造装置に動作不良を起こすことがない範囲である。一般的なおむつの吸収コアが含むSAP粒子の含有割合は50質量%であって、SAP粒子はほぼ完全に固定されているため、製造工程上SAP粒子を考慮する必要はない。これに対して、本実施形態に係るSAP粒子の含有割合は70%以上であり、製造工程上問題を引き起こすことがあることが分かる。このため、本実施形態に係るおむつ1では、装着時は勿論、製造工程上もSAPを散乱させないための配慮が必要になると言える。
【0125】
図25は、第5の実施形態に係る吸収体の製造方法を示す図である。製造工程は図25(A)から図25(C)に向かって進んでいく。図25(A)では、下層コアラップシート6Wbを搬送装置上に準備する。図25(B)では、下層コアラップシートの吸収コア6Cと当接する側の幅方向内側に、ホットメルト等の接着剤HMを、吸収コア6Cの幅よりも広範囲に塗布する。図25(B)に示す工程は、本願でいう塗布工程に該当する。図25(C)では、下層コアラップシート6Wbの幅方向中央に存在する接着剤HMの上に、吸収コア6Cを接着する。図25(C)に示す工程は、本願でいう載置工程に該当する。
【0126】
図26は、第5の実施形態に係る吸収体の製造方法を示す図である。図26は、図25に続く工程を示した図である。図25と同様、製造工程は図26(D)から図26(F)に向かって進んでいく。図26(D)では、吸収コアの上(肌面側)に、吸収コア6C側にホットメルト接着剤等の接着剤HMを塗布した上層コアラップシート6Waを接着する。図26(D)に示す工程は、本願でいう被覆工程に該当する。接着剤HMは、上層コアラップシート6Waの吸収コア6C側全面に塗布されている訳ではなく、幅方向端部に一定のオフセットを有している。このため、この時点では、吸収コア6Cの肌面側の幅方向端部は、完全には接着されておらず、SAP粒子が吸収体6の肌面側に漏出する可能性がある。
【0127】
図26(E)は、下層コアラップシート6Wbの幅方向両端を吸収コア6Cの肌面側に向けて折り返し、吸収コア6Cの側面側を覆うとともに、吸収コア6Cの肌面側において、上層コアラップシート6Waの幅方向両端部を接着して、接着部を形成する。この工程
により、吸収コア6Cは、全面を上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbとに覆われて、SAP粒子の分散が抑制され、吸収体6が完成する。図26(E)に示す工程は、本願でいう包装工程に該当する。しかし、この状態でも、例えば図26(D)の状態で吸収コア6Cの側面側からこぼれたSAP粒子が、吸収体6の肌面側に残ることがある。SAP粒子は硬いため、吸収体6の肌面側に残っているとおむつ1着用感の低下につながり得る。
【0128】
図26(F)は、吸収体6の肌面側に、更にセカンドシート11を接着したものである。セカンドシート11は、上述の上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbの接着部に更に接着され、固定される。上述の通り、セカンドシート11は柔らかく厚いシートであり、吸収体6の肌面側にSAP粒子がこぼれ出ていても、その硬さをトップシート7に伝えない。このようにして完成した、セカンドシート11を積層した吸収体6の肌面側に、トップシート7が更に積層されたものが製品となる。
【0129】
なお、下層コアラップシート6Wbに代えて上層コアラップシート6Waを幅広とし、上層コアラップシート6Waが吸収コア6Cの側面部および非肌面側の幅方向端部を包み込むように構成した場合、吸収コア6Cからこぼれ出たSAP粒子は、吸収体6の非肌面側に存在することになる。吸収体6の非肌面側に存在するバックシート5はおむつ1に防水透湿性を与える薄い樹脂製フィルムであり、水分を吸収していない状態のSAP粒子は硬い砂粒状である。吸収体6とバックシート5の間にSAP粒子が存在し、かつ、その状態でおむつ1に着用者の体重がかかると、SAP粒子がバックシート5を突き破る虞がある。バックシート5が破れると、おむつ1の非肌面側への液体漏れを引き起こすため適切でない。このため、図25図26に示す巻き方が好適であると言える。
【0130】
図27は、トップシートをエンボス状の2枚構成とした例を示した図である。セカンドシート11を設けることに代えて、またはそれに加えて、トップシート7を2枚構成とし、肌当たりを改善し、こぼれ出たSAP粒子の影響を軽減することも可能である。図26に示す構成では、吸収体側に配置するセカンドトップシート72と、肌面側に配置するトップシート71との間を間欠的に接合し、非接着部分において互いに離間するように構成したものである。接着部分は、例えば斜め格子状に形成されていてよいし、平面視した場合に何らかのデザインが浮かび上がるように形成してもよい。トップシート71は、本願における第1のシートに該当し、セカンドトップシート72は、本願における第2のシートに該当する。
【0131】
上述の構成は、例えば、トップシート7を準備する際に、セカンドトップシート72の着用者側に間欠的に接着剤を塗布し、トップシート71を着用者側に積層し、当該間欠的に塗布した接着剤により、セカンドトップシート72とトップシート71を接着させることにより形成することができる。
【0132】
<第6の実施形態>
図28は、第6の実施形態に係るおむつの分解斜視図である。第6の実施形態に係るおむつ1も、第5の実施形態と同様に、略矩形形状の吸収体6と、セカンドシート11とを備えている。加えて、第6の実施形態では、おむつ1は、吸収体の長手方向端部側面を覆い、吸収体6とセカンドシート11の間に設けられた透液性シート12を備える。透液性シート12は、吸収体6の前後の両端に配置されている。透液性シート12には、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムなどの液体を透過するシートが用いられる。
【0133】
吸収体6は、その製造工程では連続体として作成され、おむつ1に組み込む際に、おむつ1枚分に切断される。吸収体6は、幅方向端部では下層コアラップシート6Wbによって包まれているが、長手方向端部では吸収コア6Cをコアラップシート6Wで巻いた後に
おむつ1枚用に切断されるため、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで巻くことができない。そこで、本実施形態に係るおむつ1は、上述の透液性シート12を備えている。透液性シート12には、セカンドシート11と同様の素材を用いてよい。
【0134】
図29は、第6の実施形態における吸収体の長手方向の断面図である。透液性シート12は、吸収コア6Cの長手方向端部側面を覆っている。透液性シート12は、肌面側が上層コアラップシート6Waとセカンドシート11の間に配置され、非肌面側が下層コアラップシート6Wbとバックシート5の間に配置されている。また、透液性シート12は、吸収体6よりも幅方向に長い。このように配置された透液性シート12によって、おむつ1は、SAPが吸収体6の長手方向端部からこぼれるのを防ぐことができる。なお、セカンドシート11と透液性シート12を同じ素材とすると共に、セカンドシート11の長手方向端部を延長し、延長部分を透液性シート12とすることもできる。
【0135】
図30は、第6の実施形態におけるおむつ1の製造方法を示す図である。製造工程は図30(A)から図30(C)に向かって進んでいく。図30(A)は、連続体としての吸収体60が搬送されている状態を上から見た図である。吸収体60は、吸収コア6Cがコアラップシート6Wで巻かれた状態である。図30(B)は、吸収体60をおむつ1枚分に切断した状態を示している。吸収体60は、搬送装置によって搬送されている状態で搬送方向に直交する幅方向(CD方向)で切断され、複数の吸収体6が作成される。図30(B)に示す工程は、本願でいう切断工程に該当する。
【0136】
図31は、第6の実施形態におけるおむつ1の製造方法を示す図である。図31は、図30に続く工程を示した図である。図30と同様、製造工程は図31(C)から図31(E)に向かって進んでいく。図31(C)では、透液性シート12の上(肌面側)に、ホットメルト等の接着剤HMを塗布する。図31(D)では、透液性シート12の上に吸収体6を載置する。図31(E)では、透液性シート12を吸収体6の長手方向端部に巻きように接着する。図31(C)から図31(E)に示す工程は、本願でいう被覆工程に該当する。
【0137】
第6の実施形態に係るおむつ1の製造方法によれば、吸収コア6Cの長手方向端部を透液性シートで覆うことができるので、吸収コア6CからSAPがこぼれるのを抑制可能である。
【0138】
以上、各実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態では、テープ型使い捨ておむつを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明は、吸収性パッドや、パンツ型使い捨ておむつ等の吸収性物品にも適用可能である。
【0139】
以上で開示した各実施形態に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0140】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L,2R・・弾性体
3BL,3BR・・弾性体
3L,3R・・立体ギャザー
4・・カバーシート
5・・バックシート
6,6A1,6A2,6A3・・吸収体
6C・・吸収コア
6Ca・・肌面側構造
6Cb・・非肌面側構造
61,62・・液体到達範囲
6W・・コアラップシート
6Wa・・上層コアラップシート
6Wb・・下層コアラップシート
7,71・・トップシート
72・・セカンドトップシート
8R,8L・・サイドシート
11・・セカンドシート
12・・透水性シート
30・・可動バー
31・・ガイドレール
32・・試験台
33・・電子天秤
34・・袋
SAP・・SAP
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