(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126194
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】パネルの生産方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20230831BHJP
E04C 2/288 20060101ALI20230831BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230831BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20230831BHJP
B32B 13/04 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B28B1/30
E04C2/288
B33Y10/00
B32B5/18
B32B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029714
(22)【出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022030079
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521399777
【氏名又は名称】セレンディクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522079218
【氏名又は名称】トゥエンテ アディティーブ マヌーファクトリング
【氏名又は名称原語表記】Twente Additive Manufacturing B.V.
【住所又は居所原語表記】Talmaplein 16,7523ZA,Enschede,Overijssel,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】飯田 國大
(72)【発明者】
【氏名】ジムランスキ ジム
(72)【発明者】
【氏名】ブロデサー チム
(72)【発明者】
【氏名】ヂヂロポル ニコレタ
(72)【発明者】
【氏名】コミシン イアン
【テーマコード(参考)】
2E162
4F100
4G052
【Fターム(参考)】
2E162CA01
2E162CA11
2E162DA09
4F100AD00A
4F100AD00C
4F100AE01A
4F100AE01C
4F100BA03
4F100DJ01B
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100GB07
4F100JJ02B
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】従来の建築物と比較して、自然災害等に耐える強度を維持したうえで、時間(施工期間)及びコストを削減可能な建築物の部品を提供すること。
【解決手段】建築物の一部を構成するパネルの生産方法において、3Dプリンタのヘッダから、コンクリート等を吐出することで、コンクリート等からなるA面部材11を形成させる。3Dプリンタのヘッダから断熱用フォーム材を、A面部材11の所定面に吐出して断熱用フォーム材をA面部材11の所定面に塗布することで、断熱用フォーム材からなる断熱部材12を積層させる。3Dプリンタのヘッダからコンクリート等を断熱部材12の所定面に吐出してコンクリート等を断熱部材12の所定面に塗布することで、断熱部材12の所定面に、コンクリート等からなるB面部材13を積層させて、A面部材11とB面部材13の間に断熱部材12が挟まれたパネルを製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の一部を構成するパネルの生産方法において、
建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから、コンクリート、モルタル又はセラミックの第1材料を吐出することで、当該第1材料からなる第1部材を形成させる第1ステップと、
前記3Dプリンタのヘッダから断熱用フォーム材たる第2材料を、第1部材の所定面に吐出して、当該第2材料を第1部材の当該所定面に塗布することで、前記第1部材の当該所定面の上に、当該第2材料からなる断熱部材を積層させる第2ステップと、
前記3Dプリンタのヘッダから前記第1材料を前記断熱部材の所定面に吐出して、当該第1材料を当該断熱部材の所定面に塗布するか、又は、人手で当該第1材料を当該断熱部材の当該所定面に塗布することで、当該断熱部材の当該所定面に、当該第1材料からなる第2部材を積層させて、前記第1部材と前記第2部材の間に前記断熱部材が挟まれた前記パネルを製造する第3ステップと、
を含むパネルの生産方法。
【請求項2】
前記第2材料は、前記第1部材に対して塗布されたときに発泡する材料を含む、
請求項1に記載のパネルの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、特に家については、施工するためのコスト及び時間(施工期間)が非常にかかるという課題があった。
この課題を解決すべく、3Dプリンタ(例えば特許文献1参照)で建築物を生産する技術が想定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、従来の建築物と比較して、自然災害等に耐える強度を維持したうえで、時間(施工期間)及びコストを削減可能な建築物の部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一態様のパネルの生産方法は、
建築物の一部を構成するパネルの生産方法において、
建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから、コンクリート、モルタル又はセラミックの第1材料を吐出することで、当該第1材料からなる第1部材を形成させる第1ステップと、
前記3Dプリンタのヘッダから断熱用フォーム材たる第2材料を、第1部材の所定面に吐出して、当該第2材料を第1部材の当該所定面に塗布することで、前記第1部材の当該所定面の上に、当該第2材料からなる断熱部材を積層させる第2ステップと、
前記3Dプリンタのヘッダから前記第1材料を前記断熱部材の所定面に吐出して、当該第1材料を当該断熱部材の所定面に塗布するか、又は、人手で当該第1材料を当該断熱部材の当該所定面に塗布することで、当該断熱部材の当該所定面に、当該第1材料からなる第2部材を積層させて、前記第1部材と前記第2部材の間に前記断熱部材が挟まれた前記パネルを製造する第3ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の建築物と比較して、自然災害等に耐える強度を維持したうえで、時間(施工期間)及びコストを削減可能な建築物の部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造されたパネルであって、両外面の基準形状が平面に基づくパネルの等角図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造された、
図1とは異なり、両外面の基準形状が曲面に基づく複合曲線状構成に基づいたパネルの等角図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造された、
図1乃至
図4とは異なり、一方の外面の基準形状が平面に基づき、他法の外面の基準形状が局面に基づいたパネルの等角図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造された、
図1乃至
図6とは異なり、両外面の基準形状が夫々独立した2つの複合曲線に基づくパネルの等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
ここで、以下、4種類の形状のパネルの例を用いて説明する。そこで、
図1及び
図2の例のパネルをパネル1-1、
図3及び
図4の例のパネルをパネル1-2、
図5及び
図6のパネルをパネル1-3、
図7及び
図8の例のパネルをパネル1-4と呼ぶ。なお、パネル1-1乃至1-4を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「パネル1」と呼ぶ。
また、詳しくは後述するが、パネル1-2乃至1-4の夫々を構成する部材は、パネル1-1を構成する部材と対応づいている。そこで、「パネル1」と呼んでいる際に、パネル1を構成する部材を説明する際には、適宜パネル1-1を構成する部材の符号を用いて説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造されたパネルの等角図である。
図2は、
図1に示すパネルの断面図である。
図1及び
図2に示すパネル1-1は、A面部材11と、断熱部材12と、B面部材13と、から構成されている。
本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造されたパネル1は、工場に配置された積層造形を行う3Dプリンタを用いて製造される。
【0010】
まず、以下、建築において、3Dプリンタ印刷された建築物の組立用の部品を用いる意義について説明する。
【0011】
3Dプリンタは、パネルの材料を、3Dプリンタのヘッダから吐出させる。
まず、3Dプリンタからの材料の吐出の概念について、図示はしないが、xyzからなる3次元直交座標系を用いて説明する。
例えば、3Dプリンタは、予め用意されたパネルの3次元モデルに基づいて、xy平面に略平行な所定面に対して材料を配置させることで1つの層を形成すると、さらに、ヘッダを略z方向(略垂直方向)に移動させて、当該層に積み重ねるように次の層を形成する。このようにして、3Dプリンタは、略z方向(略垂直方向、重力方向)に複数の層を積み重ねることで、家の壁面を成形する。
このように、本発明の生産方法の一実施形態は、予め用意されたパネル(例えば、パネル1)の3次元モデルに基づいて、積層造形を行う3Dプリンタのヘッダから出力されるコンクリート、モルタル又はセラミックの材料を、略z方向(略垂直方向)に積層させていくことで、家1の壁面を成形する手法(以下、「3Dプリント積層造形工法」と呼ぶ)を採用した生産方法である。
【0012】
具体的には、従来の家のコストの多くは、木材の物流費が占めていた。即ち、木材は、ヨーロッパやカナダで伐採され、日本の港に運びこまれ、さらに日本の工場へ運びこまれて加工されていた。このため、約100日間、大工や左官が、従来の家の建築のために現場に車で通う等する必要があった。このように、従来の家のコストの半分は物流費である。
また、日本国では、大工や左官の減少が大きな課題となっており、人件費も従来の家のコストの多くを占めることになる。
これに対して、3Dプリント積層造形工法を採用することで、木材は不要となり、かつ、3Dプリンタを操作するための必要最低限の人数を除けば多くの大工や左官が不要になるため、従来の家を造る場合と比較して、コストと時間(施工期間)という点で削減することができる。
【0013】
ところで、3Dプリント積層造形工法を採用して、曲線が存在しない直方体状の壁面から構成される家を造ることも可能である。
しかしながら、このような家は鉄筋等の構造体が必要となるため、従来の家と比較してコスト及び施工の削減効果は少ないものとなる。
そこで、本発明の生産方法の一実施形態として、単に3Dプリント積層造形工法を採用するだけではなく、
図1乃至
図8に示すように、3Dプリント積層造形工法により建築物(家)の部品である壁面となるパネルを生産する方法が採用されている。
【0014】
また、建築物(例えば家)の壁面は、曲線が存在しない直方体状の壁面とせず、家が略「球体」となる壁面から構成される家とすると好適である。即ち、3Dプリンタを用いて製造可能な建築物の「球体」の形状自体が、自然災害等に耐える強度を維持可能な構造体の役割をはたすため、鉄筋等の構造体が不要になる。その結果、本発明の生産方法の一実施形態は、従来の家を生産する場合や、3Dプリンタで直方体状の家を生産する場合と比較して、自然災害等に耐える強度を維持したうえで、コストと時間(施工期間)という点で大幅に削減することが可能になる。
しかしながら、3Dプリント積層造形工法を用いる場合、単にコンクリート、モルタル又はセラミックの材料のみを用いただけでは、住宅として十分な断熱を確保することが困難である。
【0015】
ここで、従来、建築物においては、所定の2つの板状の構造の間に断熱材を挟み込むことで断熱を行うのが通常である。住宅の断熱材には、多くの場合、所定の幅及び厚みのシート状に加工されたグラスウールが用いられる。即ち例えば、木造建築の場合においては、柱壁の内側の間柱の間にグラスウールを敷き詰めることが行われる。
【0016】
しかしながら、従来の断熱材は、手作業で挟み込む必要がある。そのため、上述したように、3Dプリンタを用いて作業を効率化させることによりコストを削減することと相性が悪い。そこで、本実施形態においては、2つの板状の構造の間に、3Dプリンタを用いて断熱材を設置することで、このデメリットを解消することが出来る。
【0017】
具体的には、本実施形態のパネル1は、発泡ポリウレタンまたは他の同様の断熱用フォーム材から形成される断熱部材12が、2層のコンクリートまたは他のセメント系材料からなるA面部材11及びB面部材13の間に接着されたサンドイッチ構造より構成される、建物または建物の一部分の部品に関する。
断熱用フォーム材とは、所定条件では粘性体として3Dプリンタのヘッダから吐出される材料であって、吐出後所定時間が経過すると硬化して断熱の機能を発揮する材料をいう。
【0018】
このような部品たるパネル11は、次の第1工程乃至第3工程により製造される。
【0019】
第1工程は、3Dプリント積層造形工法が適用された3Dプリンタが、外側コンクリート層のうちの少なくとも1層(ここではA面部材11の層とする)を3D印刷することで、当該1層(A面部材11)が、組立品たるパネル11の外形寸法を形成する工程である。
具体的には例えば、第1層たるA面部材11は、3Dプリンタにより、自由空間に印刷されてもよいし、既存の形状に対して印刷されてもよい。上述したように、3Dプリンタから吐出されて印刷される材料は、コンクリート、モルタル又はセラミックの材料である。
【0020】
ここで、自由空間に印刷するとは、3Dプリンタが、重力方向である
図2に占めすX軸方向に、コンクリート、モルタル又はセラミックの材料を積層することをいう。その結果、XY平面と略平行にA面部材11が形成される。そして、A面部材11が適切な硬度まで硬化した後、重力方向が
図2に示すZ軸負方向になるように、A面部材11を回転させる。そして、軸Z正方向に後述する断熱部材12を形成していくのである。
このように、自遊空間に印刷することで、後述の型や型からの取り外し作業が不要となる。即ち、型を利用するための工程の作業分のコストを削減することができる。
【0021】
また、既存の形状に対して印刷するとは、次の通りである。即ち、既存の形状を有する型(所望する平面や曲面の形状の金属等からなる型)が用意される。この型は、面が重力方向と略垂直方向となるように配置される。そして、3Dプリンタは、この型の上面(重力と逆方向の面)に、コンクリート、モルタル又はセラミックの材料を積層する。そして、A面部材11が適切な硬度まで硬化した後、軸Z正方向に後述する断熱部材12を形成していくのである。
即ち、型の面は、A面部材の軸Z負方向の面を保持する部材として利用される。このように、(所望する)既存の形状に対して印刷することで、A面部材の回転等の工程を不要とすることができる。即ち、回転させるための工程の作業分のコストを削減することができる。
【0022】
ここで、印刷されるA面部材11には、鋼鉄もしくはガラス繊維などの補強材、またはコンクリート形成工程で知られている他の引張改良材が適宜含まれてもよい。これらは、3D印刷時に挟み込まれることも、その後塗布されることもある。
【0023】
そして、最終組立品たるパネル1は、次の第2工程及び第3工程により作られる。
【0024】
第2工程は、次のような工程である。
即ち、3Dプリンタは、最初に印刷された第1層のA面部材11の所定面(パネル1の内側の面)に対して、フォーム材を吐出して硬化させることで、A面部材11の当該所定面上に断熱部材12を積層させる。
【0025】
第3工程は、次のような工程である。
3Dプリンタは、第2工程により硬化した断熱部材12に対して、コンクリート等の材料(第1工程と同一の材料)を吐出させて硬化させる(3D印刷をする)ことで、断熱部材12に対して第2層(外層)のB面部材13を積層させる。
なお、第3工程において、3Dプリンタではなく、手作業で、コンクリート等の材料を発熱断熱座12に対して塗布してもよい。
【0026】
このような第1工程乃至第3工程により、最終組立品たるパネル1が製造される。
この完成した部品(パネル1)は、壁要素、屋根および/または床要素、基礎および/土台要素、または建築用組立品に用いられる他のいずれかの構造部品になる。そして、最終組立品は、耐荷重要素として、また、熱伝導性、水分伝導性、ノイズ伝導性、放射伝導性、電気伝導性等が低い。即ち、その他絶縁特性に関連するすべてのもののようなエネルギー伝達を遅らせる絶縁要素として機能するように設計される。
即ち、上述の説明では、A面部材11とB面部材13との間には、断熱部材12が用いられているが、所望の機能を持たせるべく、その機能に対応した部材を用いてもよく、所望の複数の機能を持たせるべく混合された材料が3Dプリンタから吐出されてもよい。
【0027】
本実施形態の生産方法で生産されたパネル1は、他の建築要素に明確に既に用いられている既存の材料から構成された建築要素の構造組立品に用いられている。
ここで、従来の建築物用の断熱パネルは、鋼板、合板または既製のプレスウッドなどの直線状の型枠を用いて製造されていた。
【0028】
これに対して本実施形態の生産方法は、画定された型枠に関連する画定特性を取り除き、3D印刷という作業を利用して、直線状(略平面)又は線形曲線と複合曲線(曲面)の両方の曲線要素も含み得る、画定された要素の形状を作ることができる。
即ち、
図1及び
図2には略平面の形状のパネル1-1が図示されているが、本実施形態の生産方法は、少なくとも一方が曲面の形状のパネルを生産する際にも有用である。少なくとも一方が曲面の形状のパネル1-2乃至1-4について、
図3乃至
図8を用いて後述する。
これにより、上述した略「球体」の形状をした建築物をコスト削減して実現することができるのである。
【0029】
また、本技術を応用することにより、建築物用の断熱パネルは、単一の断面寸法にとらわれない形状をとることができるようになるが、これは、要素が、製造される部品の構造的要求または島状の要求の強化または改善を満たすように、より厚い部分およびより薄い部分を有することができるためである。
【0030】
パネル1は、建築用途の既製の建築用パネルに含まれる全要素の最終組立品である。パネル1には、コンクリートからなる外層が2層(A面部材11及びB面部材13)と、断熱用フォームからなる内層(断熱部材12)が1層ある。パネル1には、他の材料から作られた補強材のより多くの要素が含まれている場合があるが、これらの追加材料の使用は、本組立品を形成するのに専ら必要なわけではない。パネル1は、外層のうちの少なくとも1層(例えば、A面部材11の層)を印刷して、組立品を作る際に残りの部品の参照となる形状を形成することによって製造される。
【0031】
このように、本実施形態の生産方法は、各種各様な形状のパネル1を生産することができるため、高度な構造組立品を作ることができる。
耐荷重設計では、従来の組み立て方法を用いる建築物用の断熱パネルでは実現できなかった、技術者または建築家が利用可能なより複雑な形状を考慮に入れることができる。本実施形態の生産方法は、生産対象のパネル1にアーチ型、球型、放物線型およびジャイロイド状の形状を含めることが可能なことにより、従来実現されていたものよりも低い質量または低い製造コストで、高い耐荷重性能が可能となる。本質的に、本製品は、本実施形態のパネル1以前には実現できなかった組み立て技術を創出することができる。コンクリート要素を作るのに用いられる従来の型枠には、3D印刷にはない制限がある場合がある。即ち、部品の製造を検討する場合、型枠を外す際に機械的干渉によってコンクリート部品を製造することができないとき、3D印刷では部品を製造することができることがある。このような創造の自由度をパネル1に適用すると、本技術では、これまでに存在したことのない組立品が可能となる。
【0032】
パネル1を作るために、その製造工程では、所定の位置に押し出され硬化して最終形状を形成する粘性材料(11及び13の材料たるコンクリート等、並びに、12の材料たる断熱用フォーム材)を積み重ねる自動堆積システム(3Dプリンタ)を用いる。最終組立品の構成要素であるこの硬化材料は、空気または他のガスを透過しない状態にして封じ込める発泡剤(断熱用フォーム材)である。この発泡剤(断熱用フォーム材)は、硬化して、発泡剤自体と捕捉されたガスとの硬質の集塊となり、この集塊は、B面部材13の層の接着部位を形成し、B面部材13の層は、自動堆積のA面部材11と同じ工程、またはA面部材11と同等の構造保全を有するが全く新しい堆積工程を用いることによって製造される。硬化させた発泡剤の接着部位の表面は、B面部材13の層および最終組立品全体の形状をより正確に画定するために、修正してもよい。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造された、
図1とは異なり、両外面の基準形状が曲面に基づく複合曲線状構成に基づいたパネルの等角図である。
図4は、
図3に示すパネルの断面図である。
【0034】
図3及び
図4に示すパネル1-2は、A面部材21と、断熱部材22と、B面部材23と、から構成されている。
図3及び
図4に示すパネル1-2のA面部材21は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1のA面部材11に対応する。
図3及び
図4に示すパネル1-2の断熱部材22は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1の断熱部材12に対応する。
図3及び
図4に示すパネル1-2のB面部材23は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1のB面部材13に対応する。
【0035】
図3及び
図4に示すパネル1-2の生産方法は、上述の実施形態の説明のパネル1-1の生産方法と基本的に同様であるが、
図1及び
図2の例と比較して、以下のような特徴を有する。
図3及び
図4に示すように、パネル1-2のA面部材21、断熱部材22及びB面部材23のすべての形状は、A面部材21に基づく複合曲線状(曲面)形状に基づいている。そして、サンドイッチ構造体(A面部材21及びB面部材23)とインフィル(断熱部材22)はすべて、それぞれの要素の平行平面内にある。
【0036】
図5は、本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造された、
図1乃至
図4とは異なり、一方の外面の基準形状が平面に基づき、他法の外面の基準形状が局面に基づいたパネルの等角図である。
図6は、
図5に示すパネルの断面図である。
【0037】
図5及び
図6に示すパネル1-3は、A面部材31と、断熱部材32と、B面部材33と、から構成されている。
図5及び
図6に示すパネル1-3のA面部材31は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1のA面部材11に対応する。
図5及び
図6に示すパネル1-3の断熱部材32は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1の断熱部材12に対応する。
図5及び
図6に示すパネル1-3のB面部材33は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1のB面部材13に対応する。
【0038】
図5及び
図6に示すパネル1-3の生産方法は、上述の実施形態の説明のパネル1-1の生産方法と基本的に同様であるが、
図1及び
図2の例と比較して、以下のような特徴を有する。
まず、
図1及び
図2の例においては、3Dプリンタは各材料を吐出してZ軸正方向に各部材を生成したが、
図5及び
図6の例においては、Z軸負方向に各部材を生成する。
図5及び
図6に示すように、パネル1-3のA面部材31のみについて直線状(平面)構成に基づいている。そして、断熱部材12の初期基準(Z軸正方向の形状は、A面部材31の形状)に基づいている。そして、3Dプリンタは、各XY平面上の位置において指定された軸Z方向の厚みとなるように断熱用フォーム材を吐出する。これにより、各XY平面上の位置により異なる厚みの断熱部材32が生成される。即ち、断熱部材32のZ軸負方向の面の形状は、所定の曲面形状となる。そして、そのような断熱部材32のZ軸負方向の面に対してB面部材33が形成される。これにより、XY平面の任意の位置において任意の厚みの断熱部材を有するパネル1-3が生産される。
【0039】
図7は、両外面の基準形状が夫々独立した2つの複合曲線に基づくパネルの等角図である。
図7は、本発明の一実施形態に係るパネルの生産方法で製造された、
図1乃至
図6とは異なり、両外面の基準形状が夫々独立した2つの複合曲線に基づくパネルの等角図である。
図8は、
図7に示すパネルの断面図である。
【0040】
図7及び
図8に示すパネル1-4は、A面部材41と、断熱部材42と、B面部材43と、から構成されている。
図7及び
図8に示すパネル1-4のA面部材41は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1のA面部材11に対応する。
図7及び
図8に示すパネル1-4の断熱部材42は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1の断熱部材12に対応する。
図7及び
図8に示すパネル1-4のB面部材43は、上述の
図1及び
図2に示すパネル1-1のB面部材13に対応する。
【0041】
図7及び
図8に示すパネル1-4の生産方法は、上述の実施形態の説明のパネル1-1の生産方法と基本的に同様であるが、
図1及び
図2の例と比較して、以下のような特徴を有する。
図7及び
図8に示すように、パネル1-4のA面部材41は、所定の曲面(即ち、型の曲面)を基準形状として形成されている。そして、断熱部材12の初期基準(Z軸負方向の形状は、A面部材41の形状)に基づいている。そして、3Dプリンタは、各XY平面上の位置において指定された軸Z方向の厚みとなるように断熱用フォーム材を吐出する。これにより、各XY平面上の位置により異なる厚みの断熱部材42が生成される。即ち、断熱部材42のZ軸正方向の面の形状は、所定の曲面形状となる。そして、そのような断熱部材42のZ軸正方向の面に対してB面部材43が形成される。これにより、A面部材41及びB面部材43の夫々が異なる曲面形状に基づき、各XY平面上の点において任意の厚みの断熱部材42を有するパネル1-4が生産される。
【0042】
このように、本実施形態の生産方法は、3Dプリンタを用いて、コストを削減しつつ、パネル1の両面(A面部材11及びB面部材13)の夫々を任意の形状の面(平面や曲面)を実現することが出来るのである。
【符号の説明】
【0043】
1,1-1,1-2,1-3,1-4・・・断熱パネル、11,21,31,41・・・A面、12,22,32,42・・・断熱部材、31,32,33,43・・・B面