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特開2023-126198ルテニウムエッチング液組成物、これを用いたパターンの形成方法及びアレイ基板の製造方法、並びにこれにより製造されたアレイ基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126198
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ルテニウムエッチング液組成物、これを用いたパターンの形成方法及びアレイ基板の製造方法、並びにこれにより製造されたアレイ基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
H01L21/308 F
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029841
(22)【出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0025677
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 志 原
(72)【発明者】
【氏名】魯 珍 圭
(72)【発明者】
【氏名】尹 嚆 重
(72)【発明者】
【氏名】朴 漢 雨
(72)【発明者】
【氏名】成 ▲ミン▼ 哉
(72)【発明者】
【氏名】金 秀 珍
(72)【発明者】
【氏名】呉 政 ▲ミン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ペ▼ 相 元
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD10
(57)【要約】
【課題】本発明は、RuOガス生成なしにルテニウム金属膜のみを高速でエッチングすることができ、常温での保管安定性に優れたルテニウムエッチング液組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含むルテニウムエッチング液組成物であって、pHが6以上7.5以下であるルテニウムエッチング液組成物;前記エッチング液組成物を用いてルテニウム金属膜をエッチングするステップを含むパターン形成方法;前記パターン形成方法を含む表示装置用アレイ基板の製造方法;及び前記製造方法によって製造された表示装置用アレイ基板に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含むルテニウムエッチング液組成物であって、
pHが6以上7.5以下である、ルテニウムエッチング液組成物。
【請求項2】
第四級アルキルアンモニウムの水酸化物をさらに含む、請求項1に記載の方ルテニウムエッチング液組成物。
【請求項3】
ルテニウム金属膜エッチング速度が200Å/min以上である、請求項1に記載のルテニウムエッチング液組成物。
【請求項4】
20℃~25℃で3ヶ月経過後のルテニウム金属膜エッチング速度減少率が5%以下である、請求項1に記載のルテニウムエッチング液組成物。
【請求項5】
エッチング液組成物の総重量に対して、
前記過ヨウ素酸0.1~5重量%と、
前記アンモニウムイオン0.1~5重量%と、
残量の水と、を含む、請求項1に記載のルテニウムエッチング液組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のエッチング液組成物を用いてルテニウム金属膜をエッチングするステップを含む、パターン形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のパターン形成方法を含む、表示装置用アレイ基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法によって製造された、表示装置用アレイ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウムエッチング液組成物、前記エッチング液組成物を用いてルテニウム金属膜をエッチングするステップを含むパターン形成方法、前記パターン形成方法を含む表示装置用アレイ基板の製造方法、及び前記製造方法によって製造された表示装置用アレイ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ルテニウム(Ru)は、酸化後も伝導性を維持し続けて容量低下を起こさず、比較的価格が安い特性があるため、薄膜トランジスタのゲート電極、配線、バリア層の形成、及びコンタクトホールやビアホールなどの埋め込みに従来使用されていたタングステン(W)を代替することが可能な金属として最近注目を集めている。
【0003】
半導体基板上に配線やビアホールなどを形成するためには、必要な部分だけを残して不要な部分を除去する工程が必要である。特に、近年、キャパシタの占有面積を減らすために電極膜を狭いホールの中に形成する方式の工程が頻繁に採用されているので、狭いホールの中に薄いルテニウム金属膜を均一に形成することが可能なエッチング液組成物の開発が求められている。
【0004】
一方、酸性を帯びるエッチング液組成物を用いてルテニウム金属膜をエッチングする場合、毒性ガスであるRuOガスが形成できるため、中性乃至アルカリ領域でルテニウム金属膜のエッチングを行うことが好ましい。しかし、このようなRuOガスの生成を防止するために、エッチング液組成物のpHをあまり高く調節する場合、酸化剤の役目をする過ヨウ素酸の安定性が低下してエッチング速度が減少する。したがって、エッチング速度の減少を防止するために反応温度を上げる方法も考えられるが、RuOガスは、高温で反応を行う場合にも生成できるという問題がある。これにより、適切な範囲のpHを有し、常温でルテニウム金属膜をエッチングすることが可能な組成物の開発が求められている。
【0005】
また、半導体産業の場合、数ヶ月分の原料を予め確保して工程の連続性を維持する特性があるので、常温でエッチング液組成物を長期間安定して保管することができるべきである。特に、ルテニウムエッチング工程の場合、シングルタイプ(single type)装備で行われることができ、1回エッチングに用いられるエッチング液の量が比較的少量であるため、ルテニウムエッチング液が装備タンクに3ヶ月以上長期間保管できるという特殊性がある。これにより、ルテニウムエッチング液組成物の場合には、他の金属のエッチング液組成物に比べて特に保管安定性に優れることが求められる。
【0006】
例えば、韓国公開特許第10-2022-0051230号は、オニウム塩を含むpH8~14のRuOガス発生抑制剤を開示している。
【0007】
しかし、このようにpH8以上のアルカリ性エッチング液組成物でルテニウム金属膜をエッチングする場合、RuOガスの生成は抑制することができるものの、ルテニウム金属膜に対するエッチング速度及び常温での保管安定性が著しく減少して、ルテニウム金属膜に対する選択性及び有用性が低下するという問題点がある。
【0008】
従って、RuOガスの発生抑制のために中性乃至アルカリ性を帯びながらも、ルテニウム金属膜に対するエッチング速度及び常温での保管安定性を確保するために、適切なpHを有するルテニウムエッチング液組成物に対する要求が持続している実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2022-0051230号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、RuOガス生成なしにルテニウム金属膜のみを高速でエッチングすることができ、常温での保管安定性に優れたルテニウムエッチング液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含むルテニウムエッチング液組成物であって、pHが6以上7.5以下である、ルテニウムエッチング液組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によるルテニウムエッチング液組成物によれば、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含み、組成物のpHを6~7.5に調節することにより、RuO発生抑制剤を含まなくても、RuOの生成を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の一実施形態によるルテニウムエッチング液組成物によれば、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含み、組成物のpHを6~7.5に調節することにより、ルテニウム金属膜に対するエッチング速度がさらに向上することができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態によるルテニウムエッチング液組成物によれば、組成物のpHを6~7.5に調節することにより、常温での保管安定性がさらに向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含み、組成物のpHを6~7.5に調節することにより、RuO発生抑制剤を含まなくてもRuOの生成を抑えることができ、ルテニウム金属膜に対するエッチング速度及び常温での保管安定性をさらに向上させることができるルテニウムエッチング液組成物に関する。
【0016】
さらに具体的には、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含むルテニウムエッチング液組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、前記エッチング液組成物を用いてルテニウム金属膜をエッチングするステップを含むパターン形成方法、前記パターン形成方法を含む表示装置用アレイ基板の製造方法、及び前記製造方法によって製造された表示装置用アレイ基板に関する。
【0018】
本発明のルテニウムエッチング液組成物は、ルテニウム金属膜を選択的にエッチングして除去するための技術分野に特に適し、例えば、ルテニウム金属膜の他にも、シリコン酸化膜及び絶縁物質などを含む微小電子素子からルテニウム金属膜のみを選択的に迅速に除去するために使用できる。
【0019】
具体的には、本発明のルテニウムエッチング液組成物でルテニウム金属膜をエッチングするとき、ルテニウム金属膜エッチング速度が200Å/min以上であってもよく、20℃~25℃で3ヶ月経過後のルテニウム金属膜エッチング速度減少率が5%以下であってもよい。
【0020】
本発明のエッチング液組成物のエッチング対象であるルテニウム金属膜は、ルテニウムを含む金属膜を意味するものであってもよく、例えば、ルテニウム膜、ルテニウム合金膜又はルテニウム酸化膜からなる単一膜、及び前記単一膜、シリコン膜及びバリア膜よりなる群から選択される1種以上を含む多層膜を含む概念として理解できる。
【0021】
また、前記シリコン膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、炭化酸化シリコン膜、炭化シリコン膜及びシリコン窒化膜よりなる群から選択される1種以上を含むものであってもよく、前記バリア膜は、窒化チタン膜及び窒化タンタル膜よりなる群から選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0022】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本明細書で使用される用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0023】
本明細書で使用される含む(comprises及び/又はcomprising)は、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子以外の1つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素材の存在又は追加を排除しない意味で使用する。明細書全体にわたって、同じ参照符号は同じ構成要素を指す。
【0024】
<ルテニウムエッチング液組成物>
本発明のルテニウムエッチング液組成物は、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含み、pHが6以上7.5以下であり得る。また、本発明のルテニウムエッチング液組成物は、第四級アルキルアンモニウムの水酸化物をさらに含むことができる。
【0025】
前記過ヨウ素酸は、ルテニウムを酸化させてルテニウム金属膜をエッチングするために設けられるものであって、ルテニウムをRuO 又はRuO 2―に酸化させる役割を果たすものであり得る。酸性のエッチング液組成物を用いてルテニウム金属膜をエッチングする場合、毒性ガスであるRuOが生成できるが、本発明によるエッチング液組成物は、pHが6~7.5であって中性乃至アルカリ性を帯びるので、別途のRuO発生抑制剤を含まなくても、RuO発生なしにルテニウム金属膜を選択的にエッチングすることができることを一特徴とする。
【0026】
一つ又は複数の実施形態において、前記過ヨウ素酸は、過ヨウ素酸(HIO又はHIO)及びその塩の形態を含み、前記過ヨウ素酸の塩形態は、例えば、過ヨウ素酸カリウム(KIO)、 過ヨウ素酸テトラエチルアンモニウム(N(CHCHIO)及び過ヨウ素酸テトラブチルアンモニウム(N(CHCHCHCHIO)であり得るが、これに限定されない。
【0027】
一つ又は複数の実施形態において、前記過ヨウ素酸の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して0.1~5重量%であり、好ましくは0.5~3重量%であり得る。過ヨウ素酸の含有量がエッチング液組成物の総重量に対して0.1重量%未満である場合には、過ヨウ素酸の酸化力の減少によってルテニウム金属膜のエッチング速度が減少するおそれがあり、5重量%を超える場合には、混合安定性が低下するおそれがある。
【0028】
前記アンモニウムイオンは、NH で表されるカチオンであって、本発明によるエッチング液組成物のpHを調節し、ルテニウム酸化膜の表面のアニオンとの電気的な相互作用によって前記過ヨウ素酸によるルテニウム金属膜のエッチングを促進するために設けられるものであってもよい。
【0029】
一つ又は複数の実施形態において、前記アンモニウムイオンは、水溶液で解離してアンモニウムイオンを生成することができるようにアンモニウムイオンがアニオンと結合した形態を含む概念として理解でき、前記アニオンは、例えば、アセテート(C )、サルフェート(SO 2―)、スルファマート(HNO)、ホルメート(CHO )、オキサラト(C 2―)、ベンゾアート(C )、ペルサルフェート(SO 2―又はS 2―)、カーボネート(CO 2―)、カルバメート(NHCOO)、クロリド(Cl)及びホスフェート(PO 2―)であってもよいが、これに限定されない。
【0030】
一つ又は複数の実施形態において、前記アンモニウムイオンがアニオンと結合した形態は、酢酸アンモニウム(ammonium acetate)、硫酸アンモニウム(ammonium sulfate)、スルファミン酸アンモニウム(ammonium sulfamate)、ギ酸アンモニウム(ammonium formate)、シュウ酸アンモニウム(ammonium oxalate)、安息香酸アンモニウム(ammonium benzoate)、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)、炭酸アンモニウム(ammonium carbonate)、カルバミン酸アンモニウム(ammonium carbamate)、塩化アンモニウム(ammonium chloride)及びリン酸アンモニウム(ammonium phosphate)のうちの1種以上であり得る。
【0031】
一つ又は複数の実施形態において、前記アンモニウムイオンは、アンモニア(NH)及び/又は水酸化アンモニウム(ammonium hydroxide、NHOH)を含まないものであり得る。つまり、前記アンモニウムイオンは、NH で表されるカチオンのみを意味し、酸塩基反応の結果、生成されたアンモニア(NH)乃至水酸化アンモニウム(NHOH)は含まないものであってもよい。アンモニア(NH)及び/又は水酸化アンモニウム(NHOH)をアンモニウムイオンとして添加する場合、アンモニア(NH)及び/又は水酸化アンモニウムから解離した水酸化基(OH)がエッチング液組成物のpH上昇に影響を及ぼし、ルテニウム金属膜のエッチング速度が減少する可能性がある。
【0032】
一つ又は複数の実施形態において、前記アンモニウムイオン、又はこれとアニオンが結合した化合物の含有量は、エッチング液組成物の総重量に対して0.1~5重量%であり、好ましくは0.5~3重量%であり得る。アンモニウムイオン(又はこれとアニオンが結合した化合物)の含有量がエッチング液組成物の総重量に対して0.1重量%未満である場合、ルテニウム酸化膜の表面の負電荷との電気的な相互作用が不十分であって、過ヨウ素酸によるルテニウム金属膜のエッチング速度が減少する可能性がある。アンモニウムイオン(又はこれとアニオンが結合した化合物)の含有量がエッチング液組成物の総重量に対して5重量%を超える場合には、エッチング液組成物のpHを6~7.5に調節するために、後述する第四級アルキルアンモニウムの水酸化物の含有量を増加させなければならないが、第四級アルキルアンモニウムの水酸化物の大きな立体障害がルテニウム酸化膜の表面を防食してルテニウム金属膜のエッチング速度が減少する可能性がある。
【0033】
本発明のルテニウムエッチング液組成物のpHは、6以上7.5以下であり得る。本発明のルテニウムエッチング液組成物のpHが6未満の酸性を帯びる場合、過ヨウ素酸によってルテニウムが毒性及び揮発性を有するRuOに酸化する可能性がある。これに対し、pHが7.5を超える場合、過ヨウ素酸の安定性が急激に低下してルテニウム膜のエッチング速度が減少する可能性があり、過ヨウ素酸がHIO 2―、H10 4―、HIO 3―等に還元されることにより、常温でエッチング液組成物のエッチング性能及び保管安定性が減少する可能性がある。この時、前記「常温」は、20℃~25℃を意味するものであり得る。
【0034】
従来のルテニウムエッチング液組成物は、RuOガスの発生を抑制するために、中性乃至アルカリ領域である8以上のpHを有することが一般的であった。しかし、pH8以上のルテニウムエッチング液組成物は、常温で一定時間以上保管する場合、ルテニウム膜に対するエッチング速度が初期に比べて著しく減少して、ルテニウム膜エッチング工程の費用を上昇させるという問題点があった。これにより、本発明のルテニウムエッチング液組成物は、pH8よりも低い6以上7.5以下のpHを有しながらも、ルテニウム金属膜エッチングの際にRuOガスを生成せず、常温で保管安定性を向上させたことを特徴とする。具体的には、本発明のルテニウムエッチング液組成物を用いてルテニウム金属膜をエッチングする場合、エッチング速度が200Å/min、好ましくは300Å/min以上であり、20℃~25℃で72時間経過後もルテニウム金属膜に対するエッチング速度減少率が10%以下、好ましくは5%以下であり得る。
【0035】
一実施形態において、前記pHは、前記過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンによって調節できる。具体的には、前記過ヨウ素酸を単独で使用する場合、pHが約2であり、前記アンモニウムイオンは25℃でpKaが約9.3であるので、通常の技術者が前記過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンをエッチング液組成物の総重量に対してそれぞれ1~5重量%の範囲内で適切に混合することにより、エッチング液組成物のpHを6~7.5に調節することができる。
【0036】
他の実施形態において、本発明のルテニウムエッチング液組成物は、前記pHを6以上7.5以下に調節するために、第四級アルキルアンモニウムの水酸化物をさらに含むものであってもよい。具体的には、前記第四級アルキルアンモニウムの水酸化物は、水溶液で解離して水酸化イオン(OH)を生成するので、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンと共にエッチング液組成物のpHを調節する役割を果たすことができる。
【0037】
一つ又は複数の実施形態において、前記第四級アルキルアンモニウムの水酸化物は、水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide)、水酸化テトラエチルアンモニウム(tetraethylammonium hydroxide)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(tetrapropylammonium hydroxide)、水酸化テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium hydroxide)、水酸化テトラヘキシルアンモニウム(tetrahexylammonium hydroxide)、水酸化テトラオクチルアンモニウム(tetraoctylammonium hydroxide)、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム(benzyltrimethylammonium hydroxide)、水酸化ジエチルジメチルアンモニウム(diethyldimethylammonium hydroxide)、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(hexadecyltrimethylammonium hydroxide)及び水酸化メチルトリブチルアンモニウム(methyltributylammonium hydroxide)であってもよいが、これに限定されない。
【0038】
また、前記第四級アルキルアンモニウムの水酸化物は、アルキル基の大きな立体障害を利用してアンモニウムイオン(NH )とルテニウム酸化膜の表面のアニオンとの電気的相互作用を妨げることにより、ルテニウム金属膜を防食する役割を果たすこともできる。
【0039】
一つ又は複数の実施形態において、前記第四級アルキルアンモニウムの水酸化物の含有量は、ルテニウムエッチング液組成物の総重量に対して0.1~2重量%であり、好ましくは0.5~1重量%であり得る。第四級アルキルアンモニウムの水酸化物の含有量が上記の範囲から外れる場合、エッチング性能が低下し、工程時間が長くなるおそれがある。
【0040】
本発明のルテニウムエッチング液組成物は、水を含む水溶液形態であってもよく、前記水は、半導体工程用脱イオン水であることが好ましく、18MΩ/cm以上の脱イオン水であることがさらに好ましい。
【0041】
一つ又は複数の実施形態において、前記水は、残量で含まれてもよい。本明細書で使用される用語である「残量」は、本発明の必須成分及びその他の成分をさらに含む全組成物の重量が100重量%となるようにする量を意味するものであり得る。
一方、本発明のルテニウムエッチング液組成物は、本発明の目的を損傷させない範囲内で他の化合物をさらに含むことができるが、フッ素(HF)などのフッ素イオン(F)を生成する化合物は含まないことが好ましい。エッチング液組成物にフッ素イオン(F)を生成する化合物が含まれる場合、下部膜であるシリコン膜及びバリア膜が損傷するという問題が発生するおそれがある。
【0042】
本発明は、前記ルテニウムエッチング液組成物に加えて、これを用いてルテニウム金属膜をエッチングするステップを含むパターン形成方法、前記パターン形成方法を含む表示装置用アレイ基板の製造方法、及び前記製造方法によって製造された表示装置用アレイ基板を含む。
【0043】
<パターン形成方法>
本発明は、本発明によるエッチング液組成物を用いてルテニウム金属膜をエッチングするステップを含むパターン形成方法を提供する。
【0044】
前記パターン形成方法は、通常の技術者が当該技術分野における公知の方法を用いて適切に行うことができ、例えば、基板上に金属膜を形成するステップと、バッチタイプ(batch type)又はシングルタイプ(single type)のエッチング装置で本発明のエッチング液組成物に浸積する及び/又は本発明のエッチング液組成物を噴霧するステップと、を含むことができる。
【0045】
<表示装置用アレイ基板及び前記基板の製造方法>
本発明は、本発明によるパターン形成方法を含む表示装置用アレイ基板の製造方法、及び前記方法によって製造された表示装置用アレイ基板を提供する。
【0046】
前記表示装置用アレイ基板は、本発明によるエッチング液組成物を用いて製造される以外は、公知のアレイ基板の製造方法によって製造されるものであり得る。例えば、a)基板上にゲート電極を形成するステップと、b)前記ゲート電極を含む基板上にゲート絶縁層を形成するステップと、c)前記ゲート絶縁層上に半導体層(a-Si:H)を形成するステップと、d)前記半導体層上にソース/ドレイン電極を形成するステップと、e)前記ドレイン電極に連結された画素電極を形成するステップと、を含むアレイ基板の製造方法において、前記a)ステップ又はd)ステップは、前記基板上にルテニウム金属膜を形成するステップと、前記形成されたルテニウム金属膜を本発明によるエッチング液組成物を用いてエッチングするステップと、を含むものであり得る。
【0047】
前記表示装置用アレイ基板は、上述した製造方法によって製造された基板、及びこれを含む一体の素子を含むものであってもよく、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板であり得る。
【0048】
以下、具体的に本発明の実施例を説明する。しかし、本発明は、以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実現でき、本実施形態は、本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものに過ぎず、本発明は、請求の範囲の範疇のみによって定義される。
【0049】
ルテニウムエッチング液組成物の製造:実施例1~31及び比較例1~17
下記表1及び表2に示すような組成及び残量の水を含む実施例1~31及び比較例1~17のルテニウムエッチング液組成物をそれぞれ製造した(単位:重量%)。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
A-1:過ヨウ素酸(periodic acid)
A-2:過ヨウ素酸カリウム(potassium periodate)
A-3:過ヨウ素酸テトラエチルアンモニウム(tetraethylammonium periodate)
A-4:過ヨウ素酸テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium periodate)
B-1:酢酸アンモニウム(ammonium acetate)
B-2:硫酸アンモニウム(ammonium sulfate)
B-3:スルファミン酸アンモニウム(ammonium sulfamate)
B-4:ギ酸アンモニウム(ammonium formate)
B-5:シュウ酸アンモニウム(ammonium oxalate)
B-6:安息香酸アンモニウム(ammonium benzoate)
B-7:過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)
B-8:炭酸アンモニウム(ammonium carbonate)
B-9:カルバミン酸アンモニウム(ammonium carbamate)
B-10:塩化アンモニウム(ammonium chloride)
B-11:リン酸アンモニウム(ammonium phosphate)
C-1:酢酸テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium acetate)
C-2:酢酸テトラエチルアンモニウム(tetraethylammonium acetate)
C-3:酢酸テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium acetate)
C-4:酢酸エチル(ethyl acetate)
C-5:酢酸ベンジル(benzyl acetate)
D-1:水酸化テトラメチルアンモニウム(tetramethylammonium hydroxide)
実験例
(1)ルテニウム膜エッチング速度の評価
ルテニウムウェーハ上にルテニウムが300Åの厚さに蒸着されたウェーハを3.0×3.0cmの大きさに切って試験片を準備した。前記試験片を23℃、400rpmの条件で実施例1~31及び比較例1~17のエッチング液組成物に1分間浸漬した。次いで、試験片を取り出して水で洗浄した後、エア(air)を用いて乾燥させ、XRF分析によってエッチング後のルテニウム膜の厚さを測定した後、膜厚さの変化値でルテニウム膜のエッチング速度を計算した。このとき、エッチング速度は、次の基準で評価した。その結果を下記表3及び表4に示す。
【0053】
<評価基準>
◎:エッチング速度300Å/min以上
○:エッチング速度300Å/min未満~250Å/min以上
△:エッチング速度250Å/min未満~200Å/min以上
X:エッチング速度200Å/min未満
(2)RuO ガス発生の評価
実施例1~31、及びルテニウム膜エッチング速度が200Å/分以上である比較例のエッチング液組成物50mLをボトルに入れ、各ボトルに、ルテニウムが300Åの厚さに蒸着されたウェーハを1.5×1.5cmの大きさに切った試験片を添加した。前記試験片を添加した後、銅膜質を付着したキャップでボトルの入口を密封し、室温に3時間放置した後、銅膜質の変色を肉眼で確認した。ルテニウム膜のエッチング速度が200Å/分未満である組成物の場合、実質的にルテニウム膜のエッチングが起こるとは見えず、RuOを含むエッチング副生成物を生成しないので、評価対象から除外した。RuOガスを生成するか否かは、次の基準で評価し、その結果を表3及び表4に示す。
【0054】
<評価基準>
○:銅膜質の変色あり(RuOガスの発生)
X:銅膜質の変色無し(RuOガスの未発生)
(3)保管安定性の評価
実験例(1)で用いた実施例1~31及び比較例1~17のエッチング液組成物を23℃で3ヶ月間保管した。3ヶ月経過後の実施例1~31と比較例1~17のエッチング液組成物のルテニウム膜エッチング速度を再び測定した後、保管前後のルテニウム膜に対するエッチング速度減少率を計算して保管安定性を評価した。このとき、エッチング液組成物の保管安定性は、次の基準で評価し、その結果を下記表3及び表4に示す。
【0055】
<評価基準>
◎:エッチング速度減少率0%
○:エッチング速度減少率0%超過~3%以下
△:エッチング速度減少率3%超過~5%未満
X:エッチング速度減少率5%超過
(4)溶解性の評価
実施例1~31及び比較例1~17のエッチング液組成物に含まれる構成要素の溶解性を確認した。各構成要素の含有量比が適切ではないため溶解性が低下する場合、再結晶化/沈殿が誘発されるおそれがあり、このように減少した混合安定性は、エッチング工程における不純物生成の可能性を高めることができる。このとき、エッチング液組成物中の構成要素の溶解性は、UV-Vis spectroscopy装備を用いて各エッチング液組成物の透明度分析を行うことにより評価された。具体的な評価基準は、次の通りである。評価結果は、下記表3及び表4に示す。
【0056】
<評価基準>
◎:100%
○:98%以上~100%未満
△:95%以上~98%未満
Х:95%未満
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
上記表3及び表4を参照すると、実施例1~31のエッチング液組成物は、過ヨウ素酸及びアンモニウムイオンを含み、6以上7.5以下のpHを有するので、ルテニウム膜エッチング速度が250Å/min以上と速く、RuOガスを生成しないだけでなく、保管安定性及び溶解性にも優れることが分かる。
【0060】
一方、エッチング液組成物の総重量に対して、過ヨウ素酸の含有量が0.1~5重量%の範囲から外れるか、或いはアンモニウムイオンの含有量が0.1~5重量%の範囲から外れるか、或いはpHが6以上7以下の範囲から外れる比較例1~17のエッチング液組成物の場合、ルテニウム膜エッチング速度が200Å/min未満と遅いか、或いはRuOガスが発生するか、或いは保管安定性又は溶解性が不良であることが分かる。
【0061】
したがって、本発明のルテニウムエッチング液組成物による場合、RuOガスを生成することなく、ルテニウム金属膜に対するエッチング速度が著しく向上するだけでなく、20℃~25℃の常温での保管安定性も著しく向上するという利点がある。