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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126218
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】心膜アクセス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A61B17/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023097185
(22)【出願日】2023-06-13
(62)【分割の表示】P 2021500730の分割
【原出願日】2019-07-09
(31)【優先権主張番号】62/695,422
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516209360
【氏名又は名称】アトリキュア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドワイト・モアジョン
(72)【発明者】
【氏名】テイマー・イブラヒム
(57)【要約】
【課題】組織の層によって覆われている可能性がある内部の解剖学的構造に対してアクセスする必要性があり得る。
【解決手段】医療用具および医療測定器、特に心膜アクセスシステムおよび心膜アクセスデバイスならびに関連方法が開示される。いくつかの例示的心膜アクセスデバイスは、心膜と係合するように構成されて遠位に配置された拡張可能なスカートを含み得る。スカートは、拡張されたとき、デバイスの管状本体よりも広くなり得る。いくつかの例示的心膜アクセスデバイスは、少なくとも部分的に透明で再配置可能な先端を含み得る。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心膜腔にアクセスするための外科用デバイスであって、
近位端および遠位端を含む細長い管状本体であって、前記管状本体が、内視鏡を受け入れるように構成された長手方向の第1のチャネル、および心膜ニードルを受け入れるように構成された長手方向の第2のチャネルを含む、管状本体と、
前記管状本体の前記遠位端に配設された、少なくとも部分的に透明で再配置可能な先端であって、前記先端が、遠位へ配向された実質的に丸い切開ポイントおよび近位の再配置可能なコネクタを含み、前記近位の再配置可能なコネクタは、前記先端が、閉構成と開構成との間で再配置され得るように、前記管状本体の前記遠位端の近くで前記管状本体と再配置可能に係合している、先端と、
を備え、
前記先端が、前記閉構成において、前記管状本体の前記遠位端を実質的に覆い、かつ前記管状本体の前記遠位端を越えて遠位へ延び、
前記先端が、前記開構成において、前記管状本体の遠位面が露出するように、少なくとも部分的に前記管状本体の前記遠位端の傍らに配置される、外科用デバイス。
【請求項2】
前記近位の再配置可能なコネクタがピボットコネクタを備え、
前記先端が、前記管状本体の長手軸に対して概略垂直な先端ピボット軸のまわりで、前記閉構成と前記開構成との間で回動可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記管状本体の前記遠位端が、前記長手軸に対して傾斜した遠位端表面を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記管状本体の前記遠位端が、前記管状本体の長手軸に対して概略垂直な遠位端表面を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1の長手方向のチャネルが、前記内視鏡の遠位への移動を制限するように配置された停止部を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記心膜ニードルは前記管状本体の前記遠位面を越えて延びない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記心膜ニードルが回転可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記管状本体の前記近位端の近くの吸引ポートに対して流体結合された長手方向の第3のチャネルをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、参照によって本明細書に組み込まれている、2018年6月9日に出願した米国仮出願第62/695,422号の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、医療機器および医療デバイスならびに関連方法を対象とし、より具体的には心膜腔にアクセスするための外科用デバイスおよび関連方法を対象とするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の第1の態様は、患者の心膜腔にアクセスするための外科用デバイスを提供するものであり、このデバイスは、近位端および遠位端を含む細長い概略管状本体であって、管状本体は、近位端から遠位端まで延在する少なくとも1つの長手方向のチャネルを含み、少なくとも1つの長手方向のチャネルが、オブトラトール(obturator)およびニードルガイドシステムを選択的に受け入れることができる、管状本体、管状本体の近位端に配設されたハンドル、ならびに/あるいは径方向に縮小した収縮構成と径方向に拡張しかつ遠位開口部を画定する遠位縁端を含む拡張構成との間で動くことができる選択的に展開可能な吸込みスカートを含む。拡張構成では、スカートの遠位縁端が組織層の表面と密閉係合するように構成されてよく、スカートの遠位開口部が管状本体の遠位端よりも直径方向に広くてよく、かつ/または、スカートは、管状本体によって吸引力を付与されたとき、組織層の一部を近位へ受け入れるように構成されてよい。
【0004】
第1の態様のより詳細な実施形態において、スカートは、収縮構成では管状本体の内部に少なくとも部分的に存在してよく、拡張構成では管状本体の遠位端を越えて遠位へ延びてよい。拡張構成では、スカートは概略円錐台状でよい。スカートは、ハンドル上に配設されたアクチュエータと動作可能に結合された少なくとも1つのポジショナを含み得、少なくとも1つのポジショナは、スカートを収縮構成と拡張構成との間で動かすように構成され得る。少なくとも1つのポジショナは、スカートを収縮構成から拡張構成へと動かすときにはスカートを遠位へ移動させてよく、かつ/またはスカートを径方向に拡張させてよい。拡張構成では、スカートの遠位開口部の幅が、管状本体の遠位端の幅の少なくとも約1.5倍になり得る。オブトラトールは、少なくとも部分的に透明な、遠位へ配向された、先端が丸い切開ポイント(blunt-tipped dissecting point)および/またはこのポイントを通じて観察するように配置された内視鏡を含み得る。スカートはメッシュへと編まれたニチノールワイヤから構築されてよく、かつ/または少なくとも部分的にシリコーンで覆われてよい。スカートの遠位縁端を近位へ引っ張るとスカートが径方向に拡張するように、メッシュのワイヤの少なくともいくつかが管状本体の長手軸に対して約45度に配向されてよい。
【0005】
本開示の第2の態様は心膜にアクセスする方法を提供するものであり、この方法は、心膜アクセスデバイスの遠位端を心膜に向けて前進させる工程であって、オブトラトールの丸い切開ポイント(blunt dissecting point)が心膜アクセスデバイスの遠位端から遠位へ延びる、前進させる工程、オブトラトールの切開ポイントを、心膜アクセスデバイスの内部に少なくとも部分的に引っ込める工程、心膜アクセスデバイスの遠位端の近位の選択的に展開可能なスカートを、径方向の収縮構成から径方向の拡張構成へと再配置する工程であって、径方向の拡張構成では、スカートが、心膜アクセスデバイスを越えて遠位へ延び、遠位開口部を画定する遠位縁端を含む、再配置する工程、スカートの遠位縁端を心膜に密閉係合させる工程、スカートに吸引力を付与することによって心膜の一部をスカートの中へと近位へ引き込み、心膜を心外膜から変位させて、それまで存在しなかった可動範囲を形成する工程、ニードルガイドシステムの作業端がスカートの中へ延びるように、心膜アクセスデバイスにニードルガイドシステムを挿入する工程、ニードルガイドシステムの中空のニードルを延ばして心膜に穴をあける工程、ガイドワイヤを、中空のニードルを通して心膜腔の中へ延ばす工程、スカートにおける吸引力を解除する工程、スカートを、径方向の拡張構成から径方向の収縮構成へと再配置する工程、および/またはガイドワイヤを心膜腔の中に延ばしたまま、心膜アクセスデバイスを心膜から引き離す工程を含む。
【0006】
第2の態様のより詳細な実施形態では、選択的に展開可能なスカートを、径方向の収縮構成から径方向の拡張構成へと再配置する工程が、スカートを遠位へ延ばす工程を含み得、かつ/またはスカートを、径方向の拡張構成から径方向の収縮構成へと再配置する工程が、スカートを近位へ収縮させる工程を含み得る。前進させる工程は、少なくとも部分的に透明な切開ポイントを通じて観察するように配置された内視鏡を使用して心膜を視覚化する工程を含み得る。選択的に展開可能なスカートを再配置する工程は、心膜アクセスデバイスのハンドル上のアクチュエータを操作する工程を含み得る。スカートの遠位開口部は、心膜アクセスデバイスの管状本体の遠位端よりも広くなり得る。この方法は、スカートにおける吸引力を解除する前に中空のニードルを引っ込める工程を含み得る。
【0007】
本開示の第3の態様は患者の心膜腔にアクセスするための外科用デバイスを提供するものであり、このデバイスは、近位端および遠位端を含む細長い管状本体であって、管状本体は、内視鏡を受け入れるように構成された長手方向の第1のチャネルおよび心膜ニードルを受け入れるように構成された長手方向の第2のチャネルを含む、管状本体ならびに/あるいは管状本体の遠位端に配設された、少なくとも部分的に透明で再配置可能な先端を含み、この先端は、遠位へ配向された実質的に丸い切開ポイントおよび近位の再配置可能なコネクタを含み、近位の再配置可能なコネクタは、先端が、閉構成と開構成との間で再配置され得るように、管状本体の遠位端の近くで管状本体と再配置可能に係合している。閉構成では、先端は、管状本体の遠位端を実質的に覆ってよく、かつ/または管状本体の遠位端を越えて遠位へ延びてもよい。開構成では、先端は、管状本体の遠位面が露出するように、少なくとも部分的に管状本体の遠位端の傍らに配置されてよい。
【0008】
第3の態様のより詳細な実施形態では、近位の再配置可能なコネクタがピボットコネクタを含み得、かつ/または先端が、管状本体の長手軸に対して概略垂直な先端ピボット軸のまわりで、閉構成と開構成との間で回動可能であり得る。管状本体の遠位端は、長手軸に対して傾斜した遠位端表面を含み得る。管状本体の遠位端は、管状本体の長手軸に対して概略垂直な遠位端表面を含み得る。第1の長手方向のチャネルは、内視鏡の遠位への移動を制限するように配置された停止部を含み得る。心膜ニードルは、管状本体の遠位面を越えて延びなくてもよい。心膜ニードルは回転可能であり得る。このデバイスは、管状本体の近位端の近くの吸引ポートに対して流体結合された長手方向の第3のチャネルを含み得る。
【0009】
本開示の第4の態様は心膜にアクセスする方法を提供するものであり、この方法は、管状本体と、閉構成と開構成との間で再配置可能な、先端が丸い切開ポイントを含む先端と、を含む心膜アクセスデバイスを、心膜の方へ導く工程、少なくとも部分的に透明な切開ポイントを通じて観察するように配置された内視鏡を使用して心膜を視覚化する工程、先端を、閉構成から、管状本体の遠位面が露出される開構成へと再配置する工程、管状本体の遠位面を心膜に密閉係合させる工程、心膜を心外膜から変位させて、それまで存在しなかった可動範囲を形成するように、吸引キャビティに吸引力を付与することにより、遠位面によって少なくとも部分的に画定された吸引キャビティに心膜の一部を引き込む工程、吸引キャビティの中へ心膜ニードルを延ばすことによって心膜に穴をあける工程、ガイドワイヤを、心膜ニードルを通して心膜腔の中へ延ばす工程、吸引キャビティにおける吸引力を解除する工程、および/またはガイドワイヤを心膜腔の中に延ばしたまま、心膜アクセスデバイスを心膜から引き離す工程を含む。
【0010】
第4の態様のより詳細な実施形態では、閉構成から開構成へと先端を再配置する工程は、先端を先端ピボット軸のまわりで回動させる工程を含み得る。視覚化する工程中に、管状本体を通って延在する第1のチャネルの内部に内視鏡が配置されてよく、かつ/または穴をあける工程中に、管状本体を通って延在する第2のチャネルの内部に心膜ニードルが配置されてよい。この方法は、吸引キャビティにおける吸引力を解除する前に心膜ニードルを引っ込める工程を含み得る。再配置する工程は、先端を解剖学的構造に横方向へ押しつけて、先端を開構成へと再配置する工程を含み得る。閉構成では、先端は、管状本体の遠位端を実質的に覆ってよい。穴をあける工程は、心膜ニードルを回転させる工程を含み得る。
【0011】
本開示の第4の態様は、本明細書で開示された、上記の態様のうちの2つ以上および/または任意の組合せにおける実施形態、および/または上記のうち任意のものの任意の要素の任意の組合せのような、任意の装置、方法、または組合せを提供するものである。
【0012】
例示的実施形態が添付図面とともに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例示的心膜アクセスシステムの側面図である。
図2】選択的に展開可能なスカートを収縮構成において示す、例示的心膜アクセスデバイスの遠位端の斜視図である。
図3】選択的に展開可能なスカートを中間構成において示す、例示的心膜アクセスデバイスの遠位端の斜視図である
図4】選択的に展開可能なスカートを拡張構成において示す、例示的心膜アクセスデバイスの遠位端の斜視図である。
図5】例示的管状本体の遠位端から丸い切開ポイントが延びる様子を示す詳細な側面図である。
図6】オブトラトール/内視鏡が引っ込められた後の例示的管状本体の遠位端の詳細な側面図である。
図7】スカートを拡張構成において示す、例示的管状本体の遠位端の詳細な側面図である。
図8】例示的管状本体の遠位端からニードルガイドシステムの作業端が延びる様子を示す詳細な側断面図である。
図9】例示的管状本体の遠位端からガイドワイヤが延びる様子を示す詳細な側断面図である。
図10】例示的心膜アクセスデバイスの引き込みを示す、管状本体の遠位端の詳細な側面図である。
図11】心膜にアクセスする例示的方法を示すフロー図である。
図12】閉構成における代替の例示的心膜アクセスデバイスの斜視図である。
図13】管状構造の長手軸から所定角度において全体的に傾斜した遠位面を含む、開構成の例示的心膜アクセスデバイスの側面図である。
図14】開構成における例示的心膜アクセスデバイスの遠位端の詳細な断面斜視図である。
図15】心膜アクセスニードルが延びた状態の例示的心膜アクセスデバイスの遠位端の詳細な断面斜視図である。
図16】ガイドワイヤが配備された例示的心膜アクセスデバイスの遠位端の詳細な断面斜視図である。
図17】閉構成の先端が心膜に接近する様子を示す、例示的管状本体の遠位端の詳細な側面図である。
図18】例示的管状本体の遠位端が開構成で心膜に接近する様子を示す詳細な側面図である。
図19】心膜と接触した例示的管状本体の遠位端の詳細な側面図である。
図20】例示的管状本体の遠位端の、心膜の一部を吸引キャビティに引き込んだ様子を示す詳細な側断面図である。
図21】例示的管状本体の遠位端の、ニードルが心膜に穴をあける様子を示す詳細な側断面図である。
図22】例示的管状本体の遠位端の、ガイドワイヤが心膜腔に延びる様子を示す詳細な側断面図である。
図23】ガイドワイヤを適切な位置に残したまま、例示的心膜アクセスデバイスを引き離す様子を示す管状本体の遠位端の詳細な側面図である。
図24A】管状本体の長手軸に対して概略垂直な遠位面を含む代替の例示的心膜アクセスデバイスの側面図である。
図24B】例示的保持機構を含む例示的心膜アクセスデバイスの側面図である。
図24C】傾斜したスカートを示す、例示的心膜アクセスデバイスの遠位端の詳細な断面斜視図である。
図25】心膜にアクセスする例示的方法を示すフロー図である。すべてが、本開示の少なくともいくつかの態様によるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示による例示的実施形態が、医療処置に関するデバイス、方法、および技術を包含するように以下で説明され、かつ例証される。もちろん、以下で論じられる実施形態は例示であり、本開示の範囲および精神から逸脱することなく再構成され得ることが当業者には明らかであろう。例示的実施形態の、当業者によって企図された変形形態は、同時にこの開示の一部を含むことも理解されたい。しかしながら、明瞭さおよび正確さのために、以下で論じられるような例示的実施形態は、当業者が本開示の範囲に入る必要条件ではないと認めるはずの任意選択のステップ、方法、および機構を含み得る。
【0015】
本開示は、とりわけ医療用具および医療測定器および関連方法を含み、より具体的には、心膜アクセスのために使用され得る外科用器具および関連方法を含む。本開示は、低侵襲性処置(たとえば内視鏡検査法の処置)などのいくつかの外科手術に関連して、組織の層によって覆われている可能性がある内部の解剖学的構造に対してアクセスする必要性があり得ることを企図するものである。たとえば、いくつかの低侵襲性心臓手術に関連して、外科用器具が心外膜に直接アクセスすることを可能にするために、心膜に侵入する必要性が生じることがある。心外膜へのアクセスを必要とする例示の低侵襲性心臓処置は、心房細動を治療するための心臓アブレーションおよび左心耳の閉塞を含み得る。
【0016】
本開示は、心膜アクセスに関連したいくつかの既存の外科用器具および方法の安全性および/または使用の容易さを改善することが望ましいであろうと企図するものである。たとえば、外科医が所望の心膜アクセスポイントに到達して患者の解剖学的差異に適応することを可能にする装置および方法を提供すること、(たとえば挿入中、操作中、および/または切除中の)隣接した解剖学的構造の損傷を制限すること、および/または様々な態様(たとえばデバイス配置、心膜面、および/または隣接した構造)の視覚化を可能にすることが望ましであろう。
【0017】
図1は、本開示の少なくともいくつかの態様による例示的心膜アクセスシステム10の側面図である。システム10が含み得る心膜アクセスデバイス100は、オブトラトール/内視鏡200および/またはニードルガイドシステム300に関連して使用するように構成され得るものである。
【0018】
いくつかの例示的実施形態では、デバイス100には、長手軸104、近位端106、および/または遠位端108を有する細長い概略管状本体102が含まれ得る。管状本体102は、近位端106から遠位端108まで延在する少なくとも1つの長手方向のチャネル110(図8)を含み得る。以下の説明はチャネル110を参照するが、いくつかの例示的実施形態は複数の類似の長手方向のチャネルを含み得る。管状本体102の近位端106にはハンドル112が配設され得る。吸引ポート114は、吸引ポート114に吸引源が結合されたとき少なくとも1つの長手方向のチャネル110を通じて真空引きするためにチャネル110に流体結合され得る。
【0019】
いくつかの例示的実施形態では、チャネル110はオブトラトール/内視鏡200を受け入れるように構成され得る。オブトラトール/内視鏡200の作業端202は、チャネル110に挿入されると、デバイス100の遠位端108から遠位へ延び得る。たとえば、オブトラトール/内視鏡200は、シャフト206の遠位端に配設されて遠位へ配向された、少なくとも部分的に透明な、先端が丸い切開ポイント204を含み得る。オブトラトール/内視鏡200がデバイス100の管状本体102に挿入されると、切開ポイント204は、管状本体102の遠位端108から少なくとも部分的に遠位へ延び得る(これも図5を参照されたい)。オブトラトール/内視鏡200が含み得るカップリング208は、ハンドル112の近位部分上の対応するカップリング116と解放可能に係合するように構成され得る。オブトラトール/内視鏡200は、ポイント204を通じて観察するように配置された内視鏡210を含み得る。
【0020】
いくつかの例示的実施形態では、チャネル110はニードルガイドシステム300を受け入れるように構成され得る。ニードルガイドシステム300の作業端302は、チャネル110に挿入されると、デバイス100の管状本体102の遠位端108から遠位へ延び得る(図8および図9を参照されたい)。ニードルガイドシステム300は、デバイス100がニードルガイドシステム300を受け入れると、ガイドワイヤ304を、チャネル110によって、シャフト306を通して心膜腔に挿入するように構成され得る。ニードルガイドシステム300が含み得るカップリング308は、ハンドル112の近位部分上の対応するカップリング116と解放可能に係合するように構成され得る。
【0021】
いくつかの例示的実施形態では、ハンドル112は、デバイス100の可動機構を再配置するように構成された回転ノブなどのアクチュエータ118を含み得る。図2図4はデバイス100の遠位端108の斜視図であり、すべてが本開示の少なくともいくつかの態様による収縮構成(図2)、中間構成(図3)、および/または拡張構成(図4)の間で動くことができる選択的に展開可能なスカート120の一例を示すものである。いくつかの例示的実施形態では、収縮構成において、スカート120は管状本体102の内部に少なくとも部分的に存在し得る。
【0022】
いくつかの例示的実施形態では、スカート120は、拡張構成において、管状本体102の遠位端108を越えて遠位へ延びてよい。拡張構成では、スカート120は、概略円錐台状の形状を有し得、かつ/または幅126を有する遠位開口部124を画定する遠位縁端122を有し得る。拡張構成では、遠位開口部124の幅126が、管状本体102の幅128よりも大きくなり得る。たとえば、スカート120の遠位開口部124の幅126は、管状本体102の幅128の、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2.0倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3.0倍、および/または少なくとも約3.5倍になり得る。図4に示される例示的実施形態などのいくつかの例示的実施形態では、スカート120の遠位開口部124は、管状本体102の幅128の約2.5倍~3.0倍になり得る。
【0023】
いくつかの例示的実施形態では、スカート120は、ハンドル112のアクチュエータ118に対して動作可能に結合され得る少なくとも1つのポジショナ130、132、134、136によって収縮構成(図2)と拡張構成(図4)の間で動くことができる。収縮構成では、スカート120は径方向に縮小され得る。拡張構成では、スカート120は径方向に拡張され得る。明瞭さのために、スカート120の拡張および収縮の以下の説明は、ポジショナ130に的を絞るが、(存在する場合には)他のポジショナ132、134、136も同様のやり方で動作し得ることを理解されたい。
【0024】
スカート120を収縮構成において示す図2を参照して、スカート120は、全体的または実質的に管状本体102の内部に配置され得る。たとえば、スカート120は内側チューブ138の内部に配置されてよく、内側チューブ138は、管状本体102の内部に全体的もしくは実質的に配設されてよく、かつ/または管状本体102から遠位へ延びてよい。ポジショナ130は、内側チューブ138の外側から延びてよく、内側チューブ138の遠位端140のあたりに折り重なってよく、かつ/または内側チューブ138の内部でスカート120の近位へ延びてもよい。いくつかの例示的実施形態では、ポジショナは、遠位縁端122において、または遠位縁端122の近くで、スカート120に結合され得る(図3および図4)。
【0025】
中間構成を示す図3を参照して、(たとえばアクチュエータ118の作用によって)ポジショナ130を近位へ再配置すると、ポジショナ130は、径方向に拡張し、かつ/または内側チューブ138から遠位へ延びる。ポジショナ130のこの移動によって、スカート120が、内側チューブ138から外へ向かって遠位へ引かれ得る。
【0026】
拡張構成を示す図4を参照して、ポジショナ130は、(たとえばアクチュエータ118の作用によって)さらに近位へ引き込まれると、遠位開口部124の幅126を管状本体102の幅128よりも大きくするように、遠位開口部124をさらに広げる。いくつかの例示的実施形態では、ポジショナ130を(たとえばアクチュエータ118の作用によって)近位へ引き込むと、ポジショナ130がスカート120の遠位縁端122を近位へ引き、スカート120が軸方向に短くなる。スカート120は、「チャイニーズフィンガトラップ」(たとえば円筒の螺旋状に巻かれた2軸の組物であって、軸方向に引っ張ると径方向に狭まり、軸方向に圧縮すると径方向に広がる)として知られているデバイスと全体的に類似のやり方で、軸方向に短くなると径方向に拡張するように構築され得る。それゆえに、拡張構成では、遠位開口部124の幅126が、管状本体102の幅128よりも大きくなり得る。いくつかの例示的実施形態では、スカート120の遠位縁端122が、長手軸104に対して傾斜され得る、角を成し得る、かつ/または付勢され得るように、ポジショナ130、132、134、136のうちの1つまたは複数が選択的に制御可能(たとえば拡張可能かつ/または伸縮自在)であり得、これによって、以下で説明されるように、スカート120の遠位縁端122が心膜400と密閉係合することが容易になり得る(図7)。たとえば、ポジショナ130、132、134、136のうちの1つまたは複数が、他のポジショナ130、132、134、136のさらなる後退および/または延長なしでさらに後退させられ得、したがって、遠位縁端122は、後退させられたポジショナ130、132、134、136の方へ全体的に傾斜する。図24Cは、本開示の少なくともいくつかの態様による、傾いたスカート120’を示す(心膜アクセスデバイス100に対して全体的に類似したものでよい)例示的心膜アクセスデバイス100’の遠位端108’の詳細な断面斜視図である。図24Cでは、ポジショナ130’がさらに後退させられており、かつ/またはポジショナ134’がさらに延長されており、それによってスカート120’の遠位縁端122’がポジショナ130’の方へ傾いている。図2図4に示されたような外部に配設されたポジショナ130、132、134、136および/または図24Cに示されたような内部に配設されたポジショナ130’、134’を利用することは本開示の範囲内である。
【0027】
図2図4を参照して、スカート120は、ハンドル112上のアクチュエータ118の動作によって、径方向および軸方向における収縮構成と拡張構成の間で動かされ得る。全体的に、拡張は前述のように進行してよい。スカート120は、全体的に逆の順序(たとえば図4図3、次いで図2)で収縮し得る。たとえば、図4に示された拡張構成から始めて、アクチュエータ118が、ポジショナ130を遠位へ延ばすように動作してよく、これによって、ポジショナ130がスカートの遠位縁端122を遠位へ押し進め得る。スカート120の遠位縁端122が遠位へ移動すると、スカート120の遠位開口部124が、図3に示されるように径方向に縮小し得る。ポジショナ130は、遠位へさらに移動すると、内側チューブ138の内部などへ、径方向に縮小し得る。ポジショナ130は、スカート120を、図2に示されるような収縮構成に戻してよい。
【0028】
いくつかの例示的実施形態では、スカート120は、ワイヤ、フィラメント、および/またはストランド142(たとえばニチノール)から構築されてよく、これらが、網目状のメッシュ144に織り込まれてよく、かつ/または低透磁率もしくは実質的に非浸透性のカバー146(たとえばシリコーン)によって少なくとも部分的に覆われてよく、これによって、スカートが実質的に流体密封になり得る。ニチノールおよび/またはシリコーン以外の、類似の特性を有する材料を利用することは本開示の範囲内である。たとえば、ニチノールと類似の曲げ特性を有する他の材料、および/またはシリコーンと類似の伸び特性を有する他の材料が利用され得る。いくつかの例示的実施形態では、スカート120の少なくとも一部分(たとえばカバー146)はパリレンなどの潤滑性コーティングを含み得る。いくつかの例示的実施形態では、メッシュ144を形成するワイヤ142は、スカート120が、軸方向に短縮されると拡張構成(図4)において径方向に拡張するように構成されてよく、かつ/または配向されてよい。たとえば、ワイヤ142のうちの少なくともいくつかは長手軸104(図1)に対して約45度に配向されてよい。いくつかの例示的実施形態では、拡張構成において、いくつかのワイヤ142は、遠位縁端122の近くなどで、ほぼ周方向に配向され得る。いくつかの例示的実施形態では、拡張構成において、いくつかのワイヤ142は、管状本体102の遠位端108の近くなどで、ほぼ軸方向に配向され得る。
【0029】
図5図10を参照しながら、本開示の少なくともいくつかの態様による心膜アクセスシステム10(図1)を使用する例示的方法が説明される。図5は、管状本体102の遠位端108の詳細な側面図であって、管状本体102の遠位端108を越えて少なくとも部分的に遠位へ延びるオブトラトール/内視鏡200の丸い切開ポイント204を示すものであり、図6は、オブトラトール/内視鏡200が引っ込められた後の管状本体102の遠位端108の詳細な側面図であり、図7は、管状本体102の遠位端108の詳細な側面図であって、拡張構成におけるスカート120を示すものであり、図8は、管状本体102の遠位端108の詳細な側断面図であって、遠位端108から延びるニードルガイドシステム300の作業端302を示すものであり、図9は、管状本体102の遠位端108の詳細な側断面図であって、遠位端108から延びるガイドワイヤ304を示すものであり、図10は、管状本体102の遠位端108の詳細な側面図であって、ガイドワイヤ304を適切な位置に残したまま心膜アクセスデバイス100を引き離す様子を示すものであり、すべてが、本開示の少なくともいくつかの態様によるものである。
【0030】
図5を参照して、オブトラトール/内視鏡200を挿入された心膜アクセスデバイス100(図1)は、心膜腔402にアクセスするために心膜400などの標的組織の方へ導かれ得る。オブトラトール/内視鏡200の、少なくとも部分的に透明で先端が丸い切開ポイント204により、心膜400上の適切なアクセス位置にアクセスすることおよび/またはこれを視覚化することが容易になり得る。加えて、デバイス100を心膜400の近くの所望位置へと導くために、透視検査、超音波、および/または他の画像技術が利用され得る。心膜アクセスデバイス100の1つまたは複数の構成要素が、そのような画像技術を使用すると見える材料から構築され得、かつ/またはそのような画像技術を使用すると見えるマーカを含み得る。
【0031】
図6を参照して、オブトラトール/内視鏡200は、心膜アクセスデバイス100から少なくとも部分的に引っ込められ得る。たとえば、オブトラトール/内視鏡200は、切開ポイント204がチャネル110の内部に来るように部分的に引っ込められてよい。図7を参照して、スカート120は、図2図4を参照しながら上記で説明されたような拡張構成に配置され得る。心膜400に接触してスカート120の遠位縁端122が配置され得る。スカート120の遠位縁端122は、心膜400の外表面と密閉係合するように構成され得る。
【0032】
図8を参照して、吸引ポート114(図1)および/または管状本体102によってなど、スカート120に吸引力が付与されてよく、それによって、心膜400の一部が下層組織(たとえば心臓)から離れてスカート120の中へと近位へ引かれ得、その結果、心膜400が心外膜401から変位して、それまで存在しなかった可動範囲403が形成される。心膜400に吸引力を付与したまま心膜アクセスデバイス100(図1)の中にニードルガイドシステム300が挿入されてよく、その結果、その作業端302は管状本体102の遠位端108を越えて遠位へ延びる。心膜400に穴をあけるために、ニードルガイドシステム300の中空のニードル310が延ばされてよい。図4図7、および図8を参照して、概略円錐台状のスカート120は少なくとも部分的に湾曲した(たとえば釣鐘状の)外側プロファイルを含み得、これによってスカート120の強度を改善し得る。たとえば、スカート120の遠位部は、遠位縁端122の近くに、概略筒状の部分を含み得る。そこから、スカート120は、径方向の内側へ曲がり、次いで遠位端108に向かって近位へ曲がり、概略S字形になり得る。特に概略筒状の部分のそのような構成により、スカート120のフープの強度が向上され得て、吸引力が付与されたときのスカート120の崩壊を防止し得る。それゆえに、概略円錐台状のスカート120が湾曲した外側プロファイルを含むことは、本開示の範囲内である。
【0033】
図9を参照して、心膜400に穴をあけた後に、ガイドワイヤ304が、中空のニードル310および心膜400を通って心膜腔402の中へ延ばされ得る。心膜400を通してガイドワイヤ304を位置決めするとき、ニードル310が少なくとも部分的に引っ込められてよい。その後、スカート120の内部の吸引力が解除されてよく、心膜400が緩められてスカート120の内部から遠位へ引っ込むことが可能になる。
【0034】
図10を参照して、ガイドワイヤ304は、心膜400を通って心膜腔402の中へ延びたままでよい。スカート120は、図2図4に関して上記で説明されたような収縮構成に設置されてよい。心膜アクセスデバイス100は、心膜400から離れて再配置され得、ガイドワイヤ304を適所に残す。ガイドワイヤ304は、当業者に知られている、心房細動を治療するための心臓アブレーションおよび/または左心耳の閉塞など、心外膜へのアクセスを必要とする処置に関連して要求通りに利用され得る。
【0035】
図11は、本開示の少なくともいくつかの態様によって心膜にアクセスする例示的方法500を示すフロー図である。参照数字は例示のやり方においてのみ与えられたものであり、この方法は参照された特定の構造に必ずしも結び付けられるわけではない。工程501は、心膜アクセスデバイス100の遠位端108を、切開またはトロカールを通じてなど、心膜400に向けて前進させる工程であって、オブトラトール200の丸い切開ポイント204が、心膜アクセスデバイス100の遠位端108から遠位へ延びる、工程を含み得る。前進させる工程は、少なくとも部分的に透明な切開ポイント204を通じて観察するように配置された内視鏡210を使用して心膜400を視覚化する工程を含み得る。工程502は、オブトラトール200のポイントを、心膜アクセスデバイス100の内部に少なくとも部分的に引っ込める工程を含み得る。工程503は、心膜アクセスデバイスの遠位端の近位の選択的に展開可能なスカート120を、径方向の収縮構成から径方向の拡張構成へと再配置する工程であって、径方向の拡張構成では、スカート120が、心膜アクセスデバイス100を越えて遠位へ延び、遠位開口部を画定する遠位縁端122を含む、再配置する工程を含み得る。動かす工程は、心膜アクセスデバイス100のハンドル112上のアクチュエータ118を操作する工程を含み得る。アクチュエータ118を操作する工程は、スカート120に結合されたポジショナ130を近位へ移動させる工程であって、遠位開口部124を画定するスカートの遠位縁端122を径方向に拡張させ得る、工程を含み得る。スカート120の遠位開口部は、心膜アクセスデバイス100の管状本体102の遠位端108よりも広くなり得る。工程504は、スカートの遠位縁端122を心膜400に密閉係合させる工程を含み得る。工程505は、スカート120に吸引力を付与することによって心膜400の一部をスカート120の中へと近位へ引き込み、心膜400を心外膜401から変位させて、それまで存在しなかった可動範囲403を形成する工程を含み得る。工程506は、ニードルガイドシステム300の作業端302がスカート120の中へ延びるように、心膜アクセスデバイス100にニードルガイドシステム300を挿入する工程を含み得る。工程507は、ニードルガイドシステム300の中空のニードル310を延ばすことによって心膜400に穴をあける工程を含み得る。工程508は、ガイドワイヤ304を、中空のニードル310を通して心膜腔402の中へ延ばす工程を含み得る。工程509は、スカート120における吸引力を解除する工程を含み得る。スカート120における吸引力を解除する前に中空のニードル310が引っ込められてよい。工程510は、スカート120を径方向の拡張構成から径方向の収縮構成へと再配置する工程を含み得る。工程511は、ガイドワイヤ304を心膜腔402の中に延ばしたまま、心膜アクセスデバイス100を心膜400から引き離す工程を含み得る。
【0036】
本開示の少なくともいくつかの態様による心膜アクセスデバイス600の代替例が図12図25に関連して説明される。図12は、閉構成における例示的心膜アクセスデバイス600の斜視図であり、図13は、管状構造の長手軸から所定角度において全体的に傾斜した遠位面を含む、開構成の例示的心膜アクセスデバイス600の側面図であり、図14は、開構成における例示的心膜アクセスデバイス600の遠位端の詳細な断面斜視図であり、図15は、心膜アクセスニードルが延びた状態の例示的心膜アクセスデバイス600の遠位端の詳細な断面斜視図であり、図16は、ガイドワイヤが配備された例示的心膜アクセスデバイス600の遠位端の詳細な断面斜視図であり、すべてが、本開示の少なくともいくつかの態様によるものである。
【0037】
図12図16を参照して、いくつかの例示的実施形態では、心膜アクセスデバイス600には、長手軸604、近位端606、および/または遠位端608を有する細長い管状本体602が含まれ得る。管状本体602は、内視鏡612を受け入れるように構成された長手方向の第1のチャネル610、および/または中空であり得る心膜ニードル616を受け入れるように構成された長手方向の第2のチャネル614を含み得る。いくつかの例示的実施形態は、Tuohyニードル、Whitacareニードル、および/またはSprotteニードルとして知られているものなどの市販の心膜ニードルを使用するように構成され得る。
【0038】
いくつかの例示的実施形態では、心膜アクセスデバイス600は、管状本体602の遠位端608に配設された再配置可能な先端618を含み得る。先端618は、遠位へ配向された実質的に丸い切開ポイント620を含み得る。先端618は、ピボット接続部622によって、管状本体602に対して回動可能に結合され得る。ピボット接続部622は管状本体602上で遠位端608の近くに配設されてよい。先端618が含み得る1つまたは複数のアーム624、626が、管状本体602の横方向の両側と係合してよい。たとえば、ピボット接続部622は、アーム624、626の近位部分と係合してよい。いくつかの例示的実施形態では、管状本体602上に配設されてピボット接続部622に含まれ得る少なくとも1つの横方向へ延びる突起が、先端618の1つまたは複数のアーム624、626上の対応する穴の中に受け入れられてよい。いくつかの例示的実施形態では、ピボット接続部622は、アーム624、626の各々の穴に対応する突起などの、管状本体602の両側面のそのような突起/穴の機構を含み得る。いくつかの例示的実施形態は、全体的に逆の機構を含み得、アーム624、626のうちの1つまたは複数が、管状本体602上に配設された対応する穴と係合するように構成された横方向内向きの突起を含み得る。ピボット接続部622により、管状本体602の長手軸604に対して概略垂直であり得る先端ピボット軸628のまわりで先端618を回動することが容易になり得る。
【0039】
いくつかの例示的実施形態では、先端618は、閉構成(図12)と開構成(図13図16)との間で回動可能であり得る。閉構成では、先端618は、管状本体602の遠位端608を実質的に覆い得る。開構成では、先端618は、管状本体602の遠位面630が露出するように、少なくとも部分的に管状本体602の遠位端608の傍らに配置されてよい。いくつかの例示的実施形態では、心膜アクセスデバイス600は、先端618を開構成および/または閉構成に向けて一方に付勢するように構成された1つまたは複数の付勢部材(たとえばトーションばね)を含み得る。いくつかの例示的実施形態では、心膜アクセスデバイス600は、開構成および/または閉構成の先端618を解放可能に保護するために、先端618に関連した1つまたは複数の保持機構を含み得る。図24Bは、本開示の少なくともいくつかの態様による、例示的保持機構690を含む(心膜アクセスデバイス600に対して全体的に類似したものでよい)例示的心膜アクセスデバイス600”の側面図である。一般に、保持機構690は、先端618”から延びるばねアーム692を含み得る。ばねアーム690は、先端618”がピボット接続部622”のまわりで回動するとき、管状本体602”上に形成された突起694と摺動自在に係合し得る。ばねアーム692および/または突起694は、保持機構690による、先端618”を閉構成および/または開構成に保つためのオーバセンタ機構の形成に対応するように成形され得る。他の例示的保持機構は、先端618と管状本体602との間の摩擦係合および/または回り止め係合を含み得る。
【0040】
図12図16に示された例示的実施形態では、遠位面630は、管状本体602の長手軸604に対して傾斜してよい。そのような構成は、ある特定の外科手術、アクセス位置、および/または標的の解剖学的構造に関して有利なことがある。たとえば、いくつかの環境では、傾斜した遠位面630は、垂直に配向された遠位面よりも大きくなり得るため、かつ/または心臓への所望の(たとえば、より接線方向の)アプローチ角が容易になり得るために有利なことがある。図24は、本開示の少なくともいくつかの態様による代替の例示的心膜アクセスデバイス600’の側面図であり、心膜アクセスデバイス600’は、心膜アクセスデバイス600に対して全体的に類似したものでよく、管状本体602’の長手軸604’に対して概略垂直な遠位面630’を含み得る。そのような構成は、他の外科手術、アクセス位置、および/または標的の解剖学的構造に関して有利なことがある。遠位面630、630’を、長手軸602、602’に対して任意の角度で利用することは本開示の範囲内である。
【0041】
いくつかの例示的実施形態では、先端618は、実質的に透明な(たとえば、光学的に透明な)材料から少なくとも部分的に形成されてよい。たとえば、先端618の実質的に全体が、実質的に透明なプラスチックから形成されてよい。一般に、いくつかの例示的先端618に適した材料は、ポリカーボネートおよび/またはアクリル樹脂などの、生物学的に適合する、射出成形可能な、光学的に透明なプラスチックを含み得る。いくつかの例示的実施形態では、切開ポイント620および/または先端618のアーム624、626などの他の部分は、実質的に透明な材料または透明性のない(たとえば半透明または不透明な)材料から形成され得る。いくつかの例示的実施形態では、少なくとも部分的に透明な先端618により、先端618が閉構成のとき、内視鏡612を使用して先端618を通じて観察することが容易になり得る。たとえば、いくつかの外科手術では、外科医は、心膜アクセスデバイス600の挿入を導くために、内視鏡612によって先端618を通じて取得された画像を利用してよく、これは切開ポイント620を使用する鈍的切開を含み得る。
【0042】
図14図16を参照して、いくつかの例示的実施形態では、長手方向の第1のチャネル610は、内視鏡612を受け入れるように構成され得、1つまたは複数の停止部632を含み得る。内視鏡612の過剰挿入を防止するために、停止部632は、第1の長手方向のチャネル610の中で一般的には遠位へ配設され得る。たとえば、停止部632が含み得る、第1の長手方向のチャネル610の穴の中への突起は、内視鏡612が停止部632を越えて遠位へ移動するのを妨げるように機能する。
【0043】
いくつかの例示的実施形態では、管状本体602の遠位端608(たとえば遠位面630)は、吸引キャビティ634を少なくとも部分的に画定し得る。たとえば、内部の遠位面636は、吸引キャビティ634を形成するために、遠位面630に対して近位へ凹んでよい。内部の遠位面636は、管状本体602を通って延在する第1の長手方向のチャネル610および/または第2の長手方向のチャネル614などの1つまたは複数のチャネル用の開口を含み得る。心膜ニードル616および/またはガイドワイヤ638などのいくつかの外科用デバイスは、内部の遠位面636を越えて選択的に遠位へ延ばされることがある。心膜ニードル616などのいくつかの外科用デバイスは、遠位面630は越えることなく内部の遠位面636を越えて延びるように構成され得る。ガイドワイヤ638などのいくつかの外科用デバイスは、内部の遠位面636および/または遠位面630を越えて延びるように構成され得る。内視鏡612などのいくつかの外科用デバイスは、(たとえば停止部632の働きによって)内部の遠位面636に対して近位にとどまるように構成され得る。
【0044】
図15を参照して、いくつかの例示的実施形態では、心膜アクセスデバイス600は心膜ニードル616が回転できるように構成され得る。たとえば、ニードル616は、片面(たとえば平坦な面640)を、全体的に、傾斜した遠位面630の反対方向へ向けて(たとえば丸みを帯びた面644を、全体的に、傾斜した遠位面630の方へ向けて)、近位から内部の遠位面636へと、吸引キャビティ634の中へ延びてよい。ニードル616は、平坦な面640を、全体的に、傾斜した遠位面630の方へ向ける(たとえば、丸みを帯びた面644を、全体的に、傾斜した遠位面630の反対方向へ向ける)ように回転されてよい。いくつかの例示的実施形態では、全体的に逆の手法も使用され得る。たとえば、ニードル616は、別の面(たとえば丸みを帯びた面644)を、全体的に、傾斜した遠位面630の反対方向へ向けて(たとえば平坦な面640を、全体的に、傾斜した遠位面630の方へ向けて)延びてよい。ニードル616は、丸みを帯びた面644を、全体的に、傾斜した遠位面630の方へ向ける(たとえば、平坦な面640を、全体的に、傾斜した遠位面630の反対方向へ向ける)ように回転されてよい。いくつかの例示的実施形態では、ニードル616を回転させると、所望のやり方で心膜652に穴をあけることが容易になり得、ガイドワイヤ638を所望の方向に挿入することが容易になり得、かつ/またはニードル616が心臓組織(たとえば心室)の中へ延びるリスクが低減する。
【0045】
図12図16を参照して、いくつかの例示的実施形態では、心膜アクセスデバイス600は全体的に近位に配設された吸引ポート646を含み得、これは、第1のチャネル610および/または第2のチャネル614のうちの1つまたは複数あるいは別の長手方向のチャネルによって、吸引キャビティ634に対して流体結合され得る。たとえば、図14図16を参照して、いくつかの例示的実施形態では、管状本体602は、第3のチャネル648および/または第4のチャネル650などの1つまたは複数のさらなる長手方向のチャネルを含み得る。第3のチャネル648、第4のチャネル650のうちの1つまたは複数が、たとえば吸引キャビティ634に吸引ポート646を結合するために利用され得る。
【0046】
図17図23を参照しながら、本開示の少なくともいくつかの態様による心膜アクセスデバイス600(図12)を使用する例示的方法が説明される。図17は、管状本体602の遠位端608の詳細な側面図であって、閉構成の先端618が心膜652に接近する様子を示すものであり、図18は、開構成で心膜652に接近する管状本体602の遠位端608の詳細な側面図であり、図19は、心膜652と接触した管状本体602の遠位端608の詳細な側面図であり、図20は、管状本体602の遠位端608の詳細な側断面図であって、吸引キャビティ634に引き込まれた心膜652の一部を示すものであり、図21は、管状本体602の遠位端608の詳細な側断面図であって、ニードル616が心膜652に穴をあける様子を示すものであり、図22は、管状本体602の遠位端608の詳細な側断面図であって、ガイドワイヤ638が心膜腔654の中へ延びる様子を示すものであり、図23は、管状本体602の遠位端608の詳細な側面図であって、ガイドワイヤ638を適切な位置に残したまま心膜アクセスデバイス600を引き離す様子を示すものであり、すべてが、本開示の少なくともいくつかの態様によるものである。
【0047】
図17を参照して、閉構成の先端618を有する心膜アクセスデバイス600が、心膜腔654にアクセスするために心膜652などの標的組織の方へ導かれ得る。先端618の、少なくとも部分的に透明で先端が丸い切開ポイント620により、心膜652上の適切なアクセス位置にアクセスすることおよび/またはこれを視覚化することが容易になり得る。加えて、デバイス600を心膜652の近くの所望位置へと導くために、透視検査、超音波、および/または他の画像技術が利用され得る。心膜アクセスデバイス600の1つまたは複数の構成要素が、そのような画像技術を使用すると見える材料から構築されてよく、かつ/またはそのような画像技術を使用すると見えるマーカを含み得る。
【0048】
図18を参照して、先端618は閉構成から開構成へと回動され得る。たとえば、先端618を開構成へと回動するために、先端618が心膜652および/または別の解剖学的構造に横方向へ押しつけられてよい。
【0049】
図19を参照して、心膜652に接触して遠位面630が配置され得る。遠位面630は、心膜652の外表面と密閉係合するように構成され得る。
【0050】
図20を参照して、吸引ポート646(図12)および/または管状本体602によってなど、吸引キャビティ634に吸引力が付与されてよく、それによって、心膜652の一部が下層組織(たとえば心臓)から離れて吸引キャビティ634の中へと近位へ引かれ得、その結果、心膜652が心外膜653から変位して、それまで存在しなかった可動範囲655が形成される。
【0051】
図21を参照して、心膜ニードル616は、内部の遠位面636を越え、心膜652を通って遠位へ延びてよい。いくつかの例示的実施形態では、ニードル616は、平坦な面640を、全体的に、傾斜した遠位面630の反対方向へ向けて(たとえば丸みを帯びた面644を、全体的に、傾斜した遠位面630へ向けて)、近位から内部の遠位面636へと、吸引キャビティ634の中へ延びてよい(たとえば心膜652を通る)。いくつかの例示的実施形態では、ニードル616の他の配向および/または回転が使用され得る。
【0052】
図22を参照して、ニードル616は、平坦な面640を、全体的に、傾斜した遠位面630の方へ向ける(たとえば、丸みを帯びた面644を、全体的に、傾斜した遠位面630の反対方向へ向ける)ように回転されてよい(図15も参照されたい)。いくつかの例示的実施形態では、ニードル616の他の配向および/または回転が使用され得る。ガイドワイヤ638は、ニードル616および心膜652の穴を通って心膜腔654の中へ延びてよい。
【0053】
図23を参照して、ニードル616は、心膜652および/またはデバイス600から少なくとも部分的に引っ込められてよい。吸引キャビティ634の内部の吸引力が解除されてよく、心膜652が緩められて吸引キャビティ634の内部から遠位へ引っ込むことが可能になる。ガイドワイヤ638は、心膜652を通って心膜腔654の中へ延びたままでよい。心膜アクセスデバイス600は、心膜652から引き離され得、ガイドワイヤ638を適所に残す。引き離し中に、先端618は部分的閉構成へと回動され得る。ガイドワイヤ638は、限定ではなく、心房細動を治療するための心臓アブレーションおよび/または左心耳の閉塞など、心外膜へのアクセスを必要とする処置に関連して要求通りに利用され得る。
【0054】
図25は、本開示の少なくともいくつかの態様によって心膜にアクセスする例示的方法700を示すフロー図である。参照数字は例示のやり方においてのみ与えられたものであり、この方法は参照された特定の構造に必ずしも結び付けられるわけではない。工程701は、管状本体602および先端618を含む心膜アクセスデバイス600を、心膜652の方へ導く工程を含み得る。先端618は、先端が丸い切開ポイント620を含み得、閉構成と開構成との間で再配置可能であり得る。工程702は、少なくとも部分的に透明であり得る切開ポイント620を通じて観察するように配置された内視鏡612を使用して心膜652を視覚化する工程を含み得る。閉構成では、先端618は、管状本体の遠位端608を実質的に覆ってよい。この工程中に、管状本体602を通って延在する第1のチャネル610を用いて内視鏡612が配置されてよい。工程703は、先端618を閉構成から開構成へと再配置する工程を含み得る。開構成では、管状本体602の遠位面630が露出され得る。この工程は、先端618を、開構成へと再配置するために解剖学的構造に横方向へ押しつける工程、および/または先端ピボット軸628のまわりで回動させる工程を含み得る。工程704は、管状本体602の遠位面630を心膜652に密閉係合させる工程を含み得る。工程705は、心膜652を心外膜653から変位させて、それまで存在しなかった可動範囲655を形成するように、吸引キャビティ634に吸引力を付与することにより、遠位面630によって少なくとも部分的に画定された吸引キャビティ634に心膜652の一部を引き込む工程を含み得る。工程706は、吸引キャビティ634の中へ心膜ニードル616を延ばすことによって心膜652に穴をあける工程を含み得る。この工程中に、管状本体602を通って延在する第2のチャネル614の内部に心膜ニードル616が配置されてよい。この工程は、心膜ニードル616を回転させる工程を含み得る。工程707は、ガイドワイヤ638を、心膜ニードル616を通して心膜腔654の中へ延ばす工程を含み得る。工程708は、吸引キャビティ634における吸引力を解除する工程を含み得る。心膜ニードル616を引っ込める工程がこの工程に先行してよい。工程709は、ガイドワイヤ638を心膜腔654の中に延ばしたまま、心膜アクセスデバイス600を心膜652から引き離す工程を含み得る。
【0055】
本明細書で説明された方法および装置は、上記の説明および発明の概要に従って、本開示による例示的実施形態を構成しているが、本明細書に含有される本開示の範囲は上記の正確な実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲によって定義されるような範囲から逸脱することなく変更がなされ得ることが理解されるべきであることは、当業者には明らかなはずである。同様に、本明細書で明示的に論じられていなくても本来の利点および/または予知されない利点が存在し得るので、特許請求の範囲の範囲内に入るために、本明細書で開示された、識別された利点または目的の、いずれかまたはすべてを満たす必要があるわけではないことを理解されたい。
【符号の説明】
【0056】
10 心膜アクセスシステム
100 心膜アクセスデバイス
102 管状本体
104 長手軸
106 近位端
108 遠位端
110 チャネル
112 ハンドル
114 吸引ポート
116 カップリング
118 アクチュエータ
120 スカート
122 遠位縁端
124 遠位開口部
126 幅
128 幅
130 ポジショナ
132 ポジショナ
134 ポジショナ
136 ポジショナ
138 内側チューブ
140 遠位端
142 ストランド
144 メッシュ
146 カバー
200 オブトラトール/内視鏡
202 作業端
204 切開ポイント
206 シャフト
208 カップリング
210 内視鏡
300 ニードルガイドシステム
302 作業端
304 ガイドワイヤ
306 シャフト
308 カップリング
310 ニードル
400 心膜
401 心外膜
402 心膜腔
403 可動範囲
600 心膜アクセスデバイス
602 管状本体
604 長手軸
606 近位端
608 遠位端
610 第1のチャネル
612 内視鏡
614 第2のチャネル
616 心膜ニードル
618 先端
620 切開ポイント
622 ピボット接続部
624 アーム
626 アーム
628 先端ピボット軸
630 遠位面
632 停止部
634 吸引キャビティ
636 遠位面
638 ガイドワイヤ
640 平坦な面
644 丸みを帯びた面
646 吸引ポート
648 第3のチャネル
650 第4のチャネル
652 心膜
653 心外膜
654 心膜腔
655 可動範囲
690 保持機構
692 ばねアーム
694 突起
100’ 心膜アクセスデバイス
120’ スカート
122’ 遠位縁端
130’ ポジショナ
134’ ポジショナ
600’ 心膜アクセスデバイス
602’ 管状本体
604’ 長手軸
630’ 遠位面
600” 心膜アクセスデバイス
602” 管状本体
618” 先端
622” ピボット接続部
図1
図2
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図24A
図24B
図24C
図25
【外国語明細書】