(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126233
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ウィルス不活性化フィルタ、ウィルス不活性化フィルタの製造方法、および抗ウィルス処理方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/16 20060101AFI20230831BHJP
B03C 3/28 20060101ALI20230831BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20230831BHJP
B01D 39/14 20060101ALI20230831BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20230831BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20230831BHJP
F24F 8/24 20210101ALI20230831BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20230831BHJP
D06M 11/46 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61L9/16 F
B03C3/28
A61L9/00 C
B01D39/14 E
B01D39/16 A
F24F8/108 110
F24F8/108 120
F24F8/108 310
F24F8/24
F24F8/80 214
F24F8/80 232
D06M11/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100461
(22)【出願日】2023-06-20
(62)【分割の表示】P 2021123571の分割
【原出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2020127020
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020146740
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020160635
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520280346
【氏名又は名称】株式会社スクエアプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】木下 稔
(57)【要約】
【課題】室内空間の抗ウィルス処理を簡易におこなう。
【解決手段】粒子11は第2フィルタ5の表面で、1μm未満の粒子13、14については、第2フィルタ5内および第1フィルタ3内で、約70%弱が捕集され、残りは、第1フィルタ3を通過する(
図3A)。粒子11は、薬剤層7と接するので、これらに付着していたウィルスは、薬剤層7によって、抗ウィルス処理される(
図3B)。この堆積物面には、前記薬剤8が再度、塗布され(
図3C)、堆積物11の上には、さらに堆積物15が堆積する(
図3D)。堆積物15に付着しているウィルスは、堆積物11の表面に塗布された薬剤により、無害化される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調設備の吸気口に、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上のフィルタを設置し、前記フィルタの前記吸気口側とは逆側の面にウィルス不活性剤を吹きつけ、前記吸気口より空気を取り入れ、抗ウィルス処理をおこなう抗ウィルス処理方法。
【請求項2】
請求項1の抗ウィルス処理方法において、
前記フィルタ表面で捕集した固体粒子の上に、前記ウィルス不活性剤を吹きつける処理を実行すること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の抗ウィルス処理方法において、
前記フィルタは、
0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタと、
前記第2フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタを有しており、
前記ウィルス不活性剤は、前記第2フィルタの上に吹き付けられること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項4】
請求項3の抗ウィルス処理方法において、
前記第1フィルタの、前記第2フィルタが設けられているのとは逆側の面に、さらに前記第2フィルタを有すること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項5】
請求項1の抗ウィルス処理方法において、
前記第1フィルタは、帯電式の不織布または割繊フィルタであり、
前記第2フィルタは、前記吹き付けられるウィルス不活性化剤が前記第1フィルタへの到達を阻止する液剤到達阻止機能を有すること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項6】
請求項1の抗ウィルス処理方法において、
前記第1フィルタは、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上であること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項7】
請求項6の抗ウィルス処理方法において、
前記第1フィルタは、0.3μmの粒子の捕集効率が60~69%であること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかの抗ウィルス処理方法において、
前記空調設備は、吸気口および排気口を有し、送風機を内蔵する筐体であり、前記吸気口および排気口には、前記フィルタが設けられていること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項9】
請求項8の抗ウィルス処理方法において、
前記筐体は、前記吸気口および排気口が水平方向に位置するように、回転可能であること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項10】
空調設備の吸気口に設置されるフィルタであって、
風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタ、
前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、親水性素材の繊維で構成された不織布または割繊で、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタ、
を有しており、
前記第2フィルタの上にウィルス不活性剤が吹き付けられること、
を特徴とするウィルス不活性化フィルタ。
【請求項11】
吸入口および排気口を有する筐体、
前記筐体に内蔵されたファン、
前記吸入口に設けられた吸入口側フィルタ、
前記排気口に設けられた排気口側フィルタ、
を備えた空調装置であって、
前記吸入口側フィルタ、および前記排気口側フィルタは、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上のフィルタであること、
を特徴とする空調装置。
【請求項12】
請求項11の空調装置において、
前記吸入口側フィルタ、および前記排気口側フィルタは、
風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタ、
前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、親水性素材の繊維で構成された不織布または割繊で、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタ、
を有すること、
を特徴とする空調装置。
【請求項13】
請求項12の空調装置であって、
前記第2フィルタの上に前記ウィルス不活性剤が吹き付けられていること、
を特徴とする空調装置。
【請求項14】
請求項13の空調装置の使用方法であって、
前記第2フィルタ表面で捕集した固体粒子の上に、前記ウィルス不活性剤を吹きつける処理を実行すること、
を特徴とする空調装置の使用方法。
【請求項15】
フィルタ表面に不活性化させたウィルスを捕捉させた不活性化ウィルス捕捉フィルタの製造方法であって、
室内の空気の温度を調整する空調設備の吸気口に、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上のフィルタを設置し、前記フィルタ表面にウィルス不活性剤を吹きつけ、前記吸気口より空気を取り入れ、前記フィルタ表面にウィルスの付着した固体粒子を捕捉させ、これにより、不活性化させたウィルスを捕捉させること、
を特徴とする不活性化ウィルス捕捉フィルタの製造方法。
【請求項16】
A)空調設備の吸気口にフィルタを設置し、前記フィルタの前記吸気口側とは逆側の面にウィルス不活性剤を吹きつけ、前記吸気口より空気を取り入れ、抗ウィルス処理をおこなう抗ウィルス処理方法であって、
B)前記フィルタは、以下の第1フィルタの上に以下の第2フィルタがシート状に積層されており、
b1)帯電式の不織布または帯電式の割繊の繊維で構成され、風速1m/sで、初期圧力損失20pa(N/m2)以上60pa(N/m2)以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上である第1フィルタ、
b2)前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタであって、吹き付けられるウィルス不活性化剤が前記第1フィルタへの到達を阻止する液剤到達阻止機能を有する第2フィルタ、
C)前記第2フィルタ表面にて固体粒子を捕集した後、当該捕集した固定粒子の上から前記ウィルス不活性剤を吹きつけて前記捕集した固体粒子の表面を抗ウィルス処理し、これにより前記捕集した固体粒子の上にさらに捕集される固体粒子についての抗ウィルス処理すること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【請求項17】
A)以下のa1)~a6)を有する空調装置を用いた抗ウィルス処理方法であって、
a1)吸入口および排気口を有する筐体、
a2)前記筐体に内蔵されたファン、
a3)前記吸入口に設けられた吸入口側フィルタ、
a4)前記排気口に設けられた排気口側フィルタ、
を備えており、
a5)前記吸入口側フィルタおよび前記排気口側フィルタは、いずれも以下の第1フィルタの上に以下の第2フィルタがいずれもシート状に積層されており、
a51)帯電式の不織布または帯電式の割繊の繊維で構成され、シート状の状態で風速1m/sで、初期圧力損失20pa(N/m2)以上60pa(N/m2)以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタ、
a52)前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタであって、吹き付けられるウィルス不活性化剤が前記第1フィルタへの到達を阻止する液剤到達阻止機能を有する第2フィルタ、
a6)前記吸入口側フィルタおよび前記排気口側フィルタの前記第2フィルタは、いずれも、吹き付けられるウィルス不活性化剤が前記第1フィルタへの到達を阻止する液剤到達阻止機能を有する、
B)前記第2フィルタ表面にて固体粒子を捕集した後、当該捕集した固定粒子の上から前記ウィルス不活性剤を吹きつけて前記捕集した固体粒子の表面を抗ウィルス処理し、これにより前記捕集した固体粒子の上にさらに捕集される固体粒子についての抗ウィルス処理すること、
を特徴とする抗ウィルス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルタを用いた抗ウィルス処理方法に関し、特に、空気調和装置の外側に取り付けるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
2020年の春に世界中で大流行した新型肺炎(COVID-19)騒ぎは、室内における細菌の殺菌、およびウィルスを不活性化する(以下、それぞれ、抗菌処理および抗ウィルス処理という)ことの重要性を認識させた。
【0003】
かかる抗菌処理および抗ウィルス処理用薬剤として、株式会社1line製の除菌/抗菌スプレー「菌滅」が知られている。物体に付着した細菌・ウィルスは、かかる薬剤で拭き取ることで抗菌処理、および抗ウィルス処理が可能である。
【0004】
一方、空間に漂う細菌・ウィルスについての抗菌処理・抗ウィルス処理は困難であった。
【0005】
特許文献1には、室内におけるウィルスの拡散、感染の拡大を防止できる空調設備を設けた部屋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
たしかに、特種の環境下、例えば、防護服で出入りする研究室のような施設では、ウィルスを捕集可能な特殊微細フィルタを設けて、室内の細菌およびウィルスを当該フィルタで捕集することも可能である。
【0008】
しかし、ウィルスは0.1μm以下と小さく、これらを確実に捕集できるフィルタは、圧力損失が高く、その分、吸引力が保持できる空調設備を設ける必要がある。また、これらを可能とするために、厳密な閉空間とする必要があり、出入りが頻繁におこなわれるような一般の室内には適用することができない。
【0009】
この発明は、上記の問題点を解決して、室内において、空間に漂う細菌・ウィルスの抗菌処理、および抗ウィルス処理ができる抗ウィルス処理方法または、そのためのフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明にかかるウィルス不活性化フィルタは、空調設備の吸気口の上から貼りつけられるシート状のウィルス不活性化フィルタであって、不織布または割繊フィルタで構成されており、前記吸気口側とは逆側の第1表面にはウィルス不活性剤を含む親水性塗料層が設けられており、前記親水性塗料層を構成する繊維は前記第1表面側には前記親水性塗料が塗布されており、前記第1表面側の逆側には前記親水性塗料が塗布されておらず、前記親水性塗料層以外は帯電おり、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上である。したがって、空気中に存在するウィルスについて、簡易に抗ウィルス処理ができる。
【0011】
(2)本発明にかかるウィルス不活性化フィルタの製造方法は、空調設備の吸気口の上から貼りつけられるシート状のウィルス不活性化フィルタの製造方法であって、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の不織布または割繊のシート状フィルタを準備し、前記第1表面がへこむ方向に所定圧力を与えつつ、ウィルス不活性剤を含む親水性塗料層を印刷し、前記印刷後、前記シート状フィルタを帯電処理する。したがって、空気中に存在するウィルスについて、簡易に抗ウィルス処理ができるフィルタを提供することができる。
【0012】
(3)本発明にかかる抗ウィルス処理方法は、空調設備の吸気口に、前記フィルス不活性フィルタをシート状に貼り付けて、前記吸気口より空気を取り入れ、抗ウィルス処理をおこない、前記ウィルス不活性剤の効力が消失する時機になると、前記吸気口側とは逆側の第1表面で捕集された粉塵の上から前記ウィルス不活性剤を吹きつけ、これにより、前記捕集した粉塵ごと前記親水性塗料層を抗ウィルス処理する。このように使用後、前記粉塵の上から前記ウィルス不活性剤を吹きつけることにより、前記粉塵毎抗ウィルス処理が可能となる。
【0013】
(4)本発明にかかる抗ウィルス処理方法は、室内の空気の温度を調整する空調設備の吸気口に、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上のフィルタを設置し、前記フィルタの前記吸気口側とは逆側の面にウィルス不活性剤を吹きつけ、前記吸気口より空気を取り入れ、ウィルスを捕集するとともに前記ウィルス不活性剤により、抗ウィルス処理をおこなう。したがって、空気中に存在するウィルスについて、簡易に抗ウィルス処理ができる。
【0014】
(5)本発明にかかる抗ウィルス処理方法においては、前記フィルタ表面で捕集した固体粒子の上に、前記ウィルス不活性剤を吹きつける処理を実行する。したがって、フィルタ表面に付着した固体粒子ごと抗ウィルス処理ができる。
【0015】
(6)本発明にかかる抗ウィルス処理方法においては、前記フィルタは、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタと、前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタを有しており、前記ウィルス不活性剤は、前記第2フィルタの上に吹き付けられる。
【0016】
したがって、フィルタ表面に付着した固体粒子ごと抗ウィルス処理ができる。
【0017】
(7)本発明にかかる抗ウィルス処理方法においては、前記第1フィルタの、前記第2フィルタが設けられているのとは逆側の面に、さらに前記第2フィルタを有する。このように、前記第1フィルタの両面を前記第2フィルタで挟み込むことで、セットする際に方向をまちがえることがない。また、前記第2フィルタによる粒子のさらなる捕獲が可能となるとともに、前記ウィルス不活性剤による抗ウィルス処理が可能となる。
【0018】
(8)本発明にかかる抗ウィルス処理方法においては、前記第1フィルタは、帯電式の不織布または割繊フィルタであり、前記第2フィルタは、前記吹き付けられるウィルス不活性化剤が前記第1フィルタへの到達を阻止する液剤到達阻止機能を有する。したがって、第1フィルタとして帯電式のフィルタを採用することができる。
【0019】
(9)本発明にかかる抗ウィルス処理方法においては、前記第1フィルタは、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上である。したがってより短時間で、空中のウィルスの抗ウィルス処理ができる。
【0020】
(10)本発明にかかる抗ウィルス処理方法においては、前記第1フィルタは、0.3μmの粒子の捕集効率が60~69%である。したがってより短時間で、空中のウィルスの抗ウィルス処理ができる。
【0021】
(11)本発明にかかる抗ウィルス処理方法においては、前記空調設備は、吸気口および排気口を有し、送風機を内蔵する筐体であり、前記吸気口および排気口には、前記フィルタが設けられている。このように2つのフィルタを有することにより、より効率的にウィルス除去が可能となる。
【0022】
(12)本発明にかかる抗ウィルス処理方法においては、前記筐体は、前記吸気口および排気口が水平方向に位置するように、回転可能である。したがって、天井方向にウィルス処理を行った空気を供給できる。これにより、天井にエアコンの吸入口がある部屋におけるウィルス処理が向上する。
【0023】
(13)本発明にかかる抗ウィルス化フィルタは、室内の空気の温度を調整する空調設備の吸気口に設置されるフィルタであって、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタ、前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、親水性素材の繊維で構成された不織布または割繊で、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタ、を有しており、前記第2フィルタの上にウィルス不活性剤が吹き付けられる。したがって、空気中に存在するウィルスについて、簡易に抗ウィルス処理ができる。
【0024】
(14)本発明にかかる空調装置は、 吸入口および排気口を有する筐体、
前記筐体に内蔵されたファン、前記吸入口に設けられた吸入口側フィルタ、前記排気口に設けられた排気口側フィルタ、を備えた空調装置であって、前記吸入口側フィルタ、および前記排気口側フィルタは、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上のフィルタである。したがって、これらの吸入口側フィルタおよび排気口側フィルタにウィルス不活性剤が吹き付けることができる。これにより、効率的に抗ウィルス処理をした空気を循環させることかできる。
【0025】
(15)本発明にかかる空調装置においては、前記吸入口側フィルタ、および前記排気口側フィルタは、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタ、前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、親水性素材の繊維で構成された不織布または割繊で、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタを有する。したがって、フィルタ表面に付着した固体粒子ごと抗ウィルス処理ができる。
【0026】
(16)本発明にかかる空調装置においては、前記第2フィルタの上に前記ウィルス不活性剤が吹き付けられている。したがって、空気中に存在するウィルスについて、簡易に抗ウィルス処理ができる。
【0027】
(17)本発明にかかる空調装置の使用方法においては、前記第2フィルタ表面で捕集した固体粒子の上に、前記ウィルス不活性剤を吹きつける処理を実行する。したがって、フィルタ表面に付着した固体粒子ごと抗ウィルス処理ができる。
【0028】
(18)本発明にかかるウィルス捕捉フィルタの製造方法は、室内の空気の温度を調整する空調設備の吸気口に、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上のフィルタを設置し、前記フィルタ表面にウィルス不活性剤を吹きつけ、前記吸気口より空気を取り入れ、前記フィルタ表面にウィルスの付着した固体粒子を捕捉させ、これにより、不活性化させたウィルスを捕捉させる。これにより、フィルタ表面で抗ウィルス処理したフィルタを得ることができる。
【0029】
本発明にかかる抗ウィルス処理方法は、A)空調設備の吸気口にフィルタを設置し、前記フィルタの前記吸気口側とは逆側の面にウィルス不活性剤を吹きつけ、前記吸気口より空気を取り入れ、抗ウィルス処理をおこなう抗ウィルス処理方法であって、B)前記フィルタは、以下の第1フィルタの上に以下の第2フィルタがシート状に積層されており、b1)帯電式の不織布または帯電式の割繊の繊維で構成され、風速1m/sで、初期圧力損失20pa(N/m2)以上60pa(N/m2)以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上である第1フィルタ、b2)前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタであって、吹き付けられるウィルス不活性化剤が前記第1フィルタへの到達を阻止する液剤到達阻止機能を有する第2フィルタ、C)前記第2フィルタ表面にて固体粒子を捕集した後、当該捕集した固定粒子の上から前記ウィルス不活性剤を吹きつけて前記捕集した固体粒子の表面を抗ウィルス処理し、これにより前記捕集した固体粒子の上にさらに捕集される固体粒子についての抗ウィルス処理する。このように、前記第2フィルタ表面にて固体粒子を捕集した後、当該捕集した固定粒子の上から前記ウィルス不活性剤を吹きつけて前記捕集した固体粒子の表面を抗ウィルス処理することで、前記捕集した固体粒子の上にさらに捕集される固体粒子を抗ウィルス処理することができる。
【0030】
本発明にかかる抗ウィルス処理方法は、A)以下のa1)~a6)を有する空調装置を用いた抗ウィルス処理方法であって、a1)吸入口および排気口を有する筐体、a2)前記筐体に内蔵されたファン、a3)前記吸入口に設けられた吸入口側フィルタ、a4)前記排気口に設けられた排気口側フィルタ、を備えており、a5)前記吸入口側フィルタおよび前記排気口側フィルタは、いずれも以下の第1フィルタの上に以下の第2フィルタがいずれもシート状に積層されており、a51)帯電式の不織布または帯電式の割繊の繊維で構成され、シート状の状態で風速1m/sで、初期圧力損失20pa(N/m2)以上60pa(N/m2)以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタ、a52)前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタであって、吹き付けられるウィルス不活性化剤が前記第1フィルタへの到達を阻止する液剤到達阻止機能を有する第2フィルタ、a6)前記吸入口側フィルタおよび前記排気口側フィルタの前記第2フィルタは、いずれも、吹き付けられるウィルス不活性化剤が前記第1フィルタへの到達を阻止する液剤到達阻止機能を有する、B)前記第2フィルタ表面にて固体粒子を捕集した後、当該捕集した固定粒子の上から前記ウィルス不活性剤を吹きつけて前記捕集した固体粒子の表面を抗ウィルス処理し、これにより前記捕集した固体粒子の上にさらに捕集される固体粒子についての抗ウィルス処理する。このように、前記第2フィルタ表面にて固体粒子を捕集した後、当該捕集した固定粒子の上から前記ウィルス不活性剤を吹きつけて前記捕集した固体粒子の表面を抗ウィルス処理することで、前記捕集した固体粒子の上にさらに捕集される固体粒子を抗ウィルス処理することができる。
【0031】
本明細書における用語の意義について説明する。実施形態においては、「室内」として、ビルなどの部屋の内部である場合について説明したが、「室内」とは、車内、航空機内、船内など、複数の人間が存在できる閉鎖可能空間を含む概念である。
【0032】
また「空調装置」とは、第1実施形態のようなエアコンはもちろん、第3実施形態のような空気調和装置を含む。
【0033】
この発明の特徴、他の目的、用途、効果等は、実施形態および図面を参酌することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】室内の天井に設置されたエアコンの吸入口にフィルタ1を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図2】フィルタ1の構成および機能を説明する図である。
【
図3】フィルタ1で捕集される埃およびウィルスを説明するための図である。
【
図5】空気調和装置50を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明における実施形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
1.第1実施形態
図1に、室内の天井に設置されたエアコン100の吸入口にフィルタ1を取り付けた状態を示す。本実施形態においては、フィルタ1でエアコン100の吸入口を完全に覆うように、両面テープ等で貼り付けようにした。
【0037】
フィルタ1の構成について
図2Aを用いて説明する。フィルタ1は、エアコン100の吸入口側に位置する第1フィルタ3および第2フィルタ5で構成されている。本実施形態においては、第1フィルタ3は、直径0.3μmの粒子を69?65%程度捕集でき、風速1m/sで圧力損失30pa以下の、ポリオレフィン繊維の帯電不織布をプリーツ状とすることなく、シート状のままで構成した。これはエアコン100の吸入口に貼り付ける際に、プリーツ状とすると隙間ができてしまうからである。また、プリーツ状として吸気口に取り付けるためには、折り曲げた状態を保持する為のフレームが必要となる。このため、給気口の形状、サイズ違いなどにがさまざまなをフレームがないと、空調機の吸気口に取り付けができなくなる。かかる問題を回避するために、フィルタを折り曲げ加工をせずにシート状のままとした。これにより、世界中にある様々な形状・サイズの空調機に取り付けが可能となる。
【0038】
なお、この種のフィルタは0.3μmの粒子を捕集する効率が一番悪く、これよりも大きくても、小さくても0.3μmの粒子に比べると捕集率は高い。なぜなら、0.3μmよりも大きな粒子はフィルタの隙間で捕集され、一方、小さな粒子はフィルター内通過時のブラウン運動、クーロン力、または帯電による静電効果で繊維に吸着されるからである。
【0039】
また、本実施形態においては、第2フィルタ5として、1?10μm程度の断面直径のビニロン繊維を採用し、密度は0.25~0.34g/ccの乾式短繊維不織布を採用した。第2フィルタ5は、第1フィルタ3の整形、保持の役割を果たす。また、ビニロンは高い親水性を有するので、後述するように、第2フィルタ5の表面に液剤を吹き付けても、この液剤を帯電不織布に浸透させないとともに、ビニロン不織布表面において、吹き付けた液剤を拡散させることができる。
【0040】
なお、第1フィルタ3および第2フィルタ5の複合は、スプレーラミ法を採用したがこれに限定されない。
【0041】
フィルタ1の密度は、目付:96.5±5 g/m2程であり、厚み:4±1.5mm程である。これにより、隙間としては、1m2あたりの体積:84.1cm3/m2 、空隙を合わせた不織布の1m2あたりの体積:4000cm3/m2 、計算上は約97.9%が空隙である。
【0042】
第2フィルタ5の表面には抗菌および抗ウィルス効果を有する薬剤層7が形成されている。薬剤層7は、殺菌、除菌の効果があるジョードメチルトリスルフォン、殺菌、除菌の効果があり、かつ、試験結果にてインフルエンザ等のウイルスを不活性化させるビグナイドβ、および光触媒素材である酸化チタンを含む液剤を吹き付けて形成されている。光触媒素材である酸化チタンは酸化によって、菌やカビを分解、ウイルスのエンベロープを破壊する。
【0043】
本実施形態においては、上記薬剤を15ml/m2で使用した。
【0044】
薬剤層7を有するフィルタ1の物性評価としては、以下の計測条件にて、圧力損失 2.5Pa、捕集効率68.5%であった。
【0045】
計測条件
ワンパス(一回の送風)で風速:0.053m/sec、測定面積:0.01平方メートル、風量:0.00053立方メートル/sec、測定時間:4sec(空気量: 0.00212立方メートル)、試験粉塵:NaCl 粒子径:0.3μm、粉塵濃度:14mg/m3。
【0046】
かかる条件(風速:0.053m/sec、圧力損失 2.5Pa)は、風速1m/sであれば、圧力損失30paに近似相当する。
【0047】
図2Bにフィルタ1の断面図を示す。エアコン100を作動させると、矢印α方向に、空気中に浮遊しているウィルス13、細菌14、ウィルスまたは細菌が付着した埃11を吸い込む。
【0048】
図3を用いて、フィルタ1による細菌・ウィルスの抗菌・抗ウィルス処理について、説明する。
【0049】
まず、1μm以上の粒子11は、主に第2フィルタ5の表面で捕集され、1μm未満の粒子13、14については、第2フィルタ5内および第1フィルタ3内で、約70%弱が捕集され、残りは、第1フィルタ3を通過する(
図3A参照)。これは、第1フィルタ3の捕集率が0.3μmで65~69%程度だからである。
【0050】
ここで、第2フィルタ5の表面で捕集された粒子11は、薬剤層7と接する。したがって、粒子11に付着していた細菌およびウィルスは、第2フィルタ5の表面に形成された薬剤層7によって、抗ウィルス処理される(
図3B参照)。また、室内で使用する場合、光触媒効果による抗ウィルス処理もなされる。
【0051】
このように、吸気面に堆積した埃などの粒子に付着している細菌・ウィルスは、第2フィルタ5の表面の薬剤により、無害化される。
【0052】
なお、この粒子の堆積面には、薬剤が再度、塗布され、追加薬剤層8が形成される(
図3C参照)。これにより、第2フィルタ5表面の粒子11の上には、さらに別の粒子15が堆積する(
図3D参照)。
【0053】
このように、堆積物11の上に堆積した堆積物15に付着している細菌・ウィルスは、堆積物11の表面に塗布された薬剤により、無害化される。
【0054】
これにより、堆積物の無害化と薬液効能期間内での効力を継続させることができる。したがって、堆積物が剥離した場合でも特に問題が発生しない。
【0055】
第1フィルタ1に採用した捕集率および圧力損失について、説明する。従来、細かな粒子を捕集できるフィルタは存在する。しかし、通常のエアコンの吸入口に、このような一度のフィルタ通過でウィルスを99.7%以上捕集するフィルタを取り付けることはできない。なぜなら、そのようなフィルタは圧力損失が高く故障の原因となるからである。
【0056】
本実施形態においては、捕集率は、0.3μmの粒子を65~69%程度捕集できる、風速1m/sで圧力損失30pa以下のフィルタである。この程度の捕集率でも、60分で約99.9%以上のウィルスを除去できる。以下説明する。
【0057】
面積が48平方メートル、天井高さ2.5mの室内に、天井カセットエアコン(2馬力(5.0KW)、弱運転吸気量750立方メートル)が設置されているとすると、以下の計算式が成り立つ。
【0058】
上記エアコンは、1時間稼働すると、750立方メートルの吸気をする。一方、室内には48平方メートル*2.5メートル=120立方メートルの空気量があるので、1時間で6.25回の循環が可能である。
【0059】
実際は、0.3μmの粒子よりも小さい粒子または大きい粒子は65~69%よりも捕集されやすいので、これを仮に70%とすると、以下のように遷移する。
【0060】
1回目-30%残捕集
2回目-30*70%=21%捕集され、9%が残捕集
3回目-9*70%=6.3%が捕集され、2.7%が残捕集
4回目-2.7*70%=1.89%が捕集され、0.81%が残捕集
5回目-0.81*70%=0.56%が捕集され、0.25%が残捕集
6回目-0.25*70%=0.17%が捕集され、0.08%が残捕集
すなわち、1時間で約99.92%の抗菌および抗ウィルス処理が可能となる。
【0061】
なお、本実施形態においては、使用時に、第2フィルタ5の表面に薬効剤7を形成するようにしたが、予め形成しておいてもよい。薬剤層7を構成する薬液は、化学的反応によって抗菌・抗ウィルス処理するので、イオン交換や化学反応をさせなければ、薬効がなくなるわけではないからである。
【0062】
通常、酸化チタンコーティングは、テーブルや壁といった固形物の表面を除菌処理した後、酸化チタンを噴霧しておき、酸化チタンの表面に付着する菌・ウィルスを無力化させる。これに対して、本件は、埃、チリ、または固体粒子がフィルタ表面に捕集された状態で、その上から酸化チタンによるコーティングをすることで、チリ、粒子も含めて抗菌・不活性化面にする。すなわち、一定期間で取り替えるフィルタ表面に薬剤を付着させて、フィルタ表面に付着した固体粒子ごと抗菌・抗ウィルス処理をするというものである。
【0063】
2.第2実施形態
本実施形態においては、フィルタ1として、第1フィルタ3と第2フィルタ5の2つのフィルタを複合させたフィルタを採用したが、これらに代えて、0.3μmの粒子を65~69%程度捕集でき、風速1m/sで圧力損失30pa以下のナノファイバー不織布(セルロースナノファイバー等)を採用してもよい。
【0064】
ナノファイバー不織布を採用する場合、帯電不織布フィルターと異なり、表面に薬液を付着させてもフィルタリング性能は変わらない。したがって、第1実施形態のような第2フィルタ5は特に無くてもよいが、第1実施形態と同様に第2フィルタのような2つのフィルタを採用してもよい。
【0065】
3.第3実施形態
図4Aに、フィルタ1を吸入口と排気口の双方に設置した空気調和装置50を示す。空気調和装置50は、側壁に一対の軸57を有する筐体51、軸を支持する支持台53を有する。支持台53はローラ54で設置面上を移動可能である。本体部51は、後述するように、軸57を中心に矢印55方向に回動可能に支持されている。
【0066】
筐体51の前面および後面には、フィルタ付き枠60が取り付けられている。フィルタ付き枠60は、
図4Bに示すように、本体51の溝55にはめ込まれており、矢印67方向にスライド可能である。
【0067】
フィルタ付き枠60について
図5Aを用いて説明する。フィルタ付き枠60は、フィルタ1および、枠62で構成される。フィルタ1は一対の枠62a,62bに挟み込まれて、シート状に固定される。枠62a,62bは、6ヶ所の留金64で固定される。
【0068】
筐体51の内部のモータおよびファンについて
図5Bを用いて説明する。モータ73は、X型のアーム75によって、筐体51の内壁に固定されている。モータ73にはファン71が取り付けられている。本実施形態においては、ファンの羽径は600ミリ、羽の枚数は3枚、モータ73の消費電力は320Wとした。
【0069】
しかし、これに限定されず、たとえば、羽径は500~600ミリ、枚数は3~5枚、消費電力は250~320Wとであってもよい。
【0070】
モータ73が回転すると、
図5Bに示すように、吸入口77から空気を取り入れ、排出口78から排出される。
【0071】
なお、フィルタ付き枠60におけるフィルタ1の向きは、吸入口77側は、第1実施形態と同様に、第2フィルタ5が外側(ファンとは逆側)に位置するように挿入される。これに対して、排気口78側は、第2フィルタ5が内側(ファン側)に位置するように挿入される。いずれのフィルタも第1実施形態と同様に、第2フィルタ5の表面に薬剤層7が形成され、使用に伴って、定期的に粒子の上から薬剤が塗布され、追加薬剤層が形成される。
【0072】
空気調和装置50は、フィルタ1が吸入口77、排出口78の双方に設けられているので、2倍の効率で抗菌・不活性化が可能となる。 また、排気口78側のフィルタ1には、ファンによって高い速度の風が供給される。フィルタ1の第1フィルタ3は、クーロン力、ブラウン運動によっても粒子を捕捉する。かかるブラウン運動は風速が高いほど捕捉率が高くなる。したがって、第1実施形態と比べて、第1フィルタ3による粒子の捕捉効率が向上する。
【0073】
なお、筐体51は軸57で支持台53に保持されているので、
図6 Aの状態から、排出口78が天井を向くように、軸57を中心に回転させることができる(
図6B参照)。かかる状態を保持するロック機能も有する(図示せず)。これにより、床の方向から吸い込んだ空気を抗菌・不活性化し、これを天井方向に放出することができる。
【0074】
空気調和装置50は、例えば、天災の時の避難所など、空調機(エアコン)が設置困難な場所に好適である。また、空気清浄時間の短縮も期待することができる。
【0075】
また、
図6Cに示すようにファンの数を2つに増やした空気調和装置80として構成することもできる。また、かかるファンの数については限定されない。
【0076】
4.他の実施形態
本実施形態においては、第1フィルタ3および第2フィルタ5でフィルタ1を構成したが、第1フィルタ3の表裏を第2フィルタ5で挟み込むようにしてもよい。これにより、裏表がなくなるので、取り付けを間違うことがなくなる。また、第1フィルタ3の両面からの触媒効果も期待できる。
【0077】
第1実施形態においては、第1フィルタ3として、サーマルボンド法で生成された乾式短繊維不織布を採用したが、これ以外であってもよい。また、第2フィルタ5として、ケミカルボンド法で生成した乾式短繊維不織布を採用したが、これ以外であってもよい。
【0078】
第1実施形態においては、0.3μmの粒子を65~69%程度捕集でき、風速1m/sで圧力損失30pa以下の帯電不織布を採用したが、同等の性能を果たすのであれば、無帯電不織布フィルターであってもよい。さらに、不織布ではなく割繊(スプリットファイバー)を採用してもよい。
【0079】
また、第1フィルタ3の捕集効率は0.3μmの粒子を65~69%程度捕集でき、風速1m/sで圧力損失30pa以下の帯電不織布を採用した。これは、これ以上捕集効率を高くすると、圧力損失が増大するからであり、もし、捕集効率を高くかつ圧力損失が低いフィルタであればそれを採用するようにしてもよい。逆に常に循環させておき、あまり室内にウィルスが持ち込まれない環境下であれば、フィルタ1の捕集効率は同条件で50%程度でもよい。すなわち、フィルタ1の捕集効率は同条件で50%以上であればもよい。なぜなら、捕集効率は、抗菌および抗ウィルス処理にかかる時間およびどの程度の抗菌および抗ウィルス処理するかという問題だからである。さらに、フィルタ1の捕集効率は30%以上であってもよい。
【0080】
上記実施形態では、圧力損失30pa以下の帯電不織布を採用したが、これに限定されず、圧力損失20~40paであってもよく、さらに、圧力損失40~50paであってもよく、さらに、50pa~60paであってもよい。これは、圧力損失が大きいと、取り付ける空調機のモータに高負担がかかるからである。初期圧力損失は低い方が好ましいが、初期圧力損失30pa程度であれば、特に悪影響はなく、60pa程度であれば一般の空調機のモータには実用上は問題ないと発明者は考えた。
【0081】
本実施形態においては、フィルタ1を空調機の外側に貼り付けている。フィルタ1は、20pa以上60pa以下の圧力損失があるので、空調機稼働時に、フィルタ1は負圧で内側に引っ張られる。したがって、空調機外側表面との間に両面テープとの間に100μm程度の隙間があっても、これが塞がれるという効果もある。
【0082】
本実施形態においては、第1フィルタを単層としたが、これを複層で構成してもよい。具体的には、第1フィルタよりも空気圧損失が低く捕集率が低いフィルタを2つ準備し、これらを複層にしたフィルタを採用すればよい。これにより、圧損を損なわず、より捕集率が高いフィルタが得られる。
【0083】
本実施形態においては、第2フィルタとしてビニロン不織布を採用したが、親水性素材の繊維で構成された不織布または割繊であれば、他の素材を採用することもできる。
【0084】
本実施形態においては、フィルタ1をエアコンの吸入口に、両面テープで貼り付けたが、他の取り付け方法であってもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、室内としてはビルなどの部屋の内部である場合を例として説明したが、車内、航空機内、船内など、複数の人間が存在できる閉鎖可能空間であってもよい。また、常に閉空間でなく、一定時間で外気または人の出入りがあってもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、前記除菌/抗菌スプレー「菌滅」を採用した場合について説明したが、抗ウィルス処理だけであれば、インフルエンザ等のウイルスを不活性化させる薬剤だけでもよい。また、光触媒素材である酸化チタンだけでもよい。
【0087】
また、本実施形態においては、ウイルスを不活性化させる薬剤を採用したが、かかる薬剤無しのフィルタ(帯電式の第1フィルタおよび第2フィルタ)でウィルスを捕獲するようにしてもよい。
【0088】
この場合、以下のような発明として把握できる。
【0089】
空調設備の吸気口を覆うフィルタであって、風速1m/sで、初期圧力損失20pa以上60pa以下、0.3μmの粒子の捕集効率が30%以上の第1フィルタ、前記第1フィルタの前記吸気口側とは逆側に位置し、親水性素材の繊維で構成された不織布または割繊で、1~10μmの粉塵を捕集する第2フィルタ、を有するウィルス除去フィルタ。この場合、さらに、第2フィルタ無しで構成してもよい。
【0090】
上記においては、本発明を好ましい実施形態として説明したが、限定のために用いたのではなく、説明のために用いたものであって、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、添付のクレームの範囲において、変更することができるものである。