(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126248
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】細胞培養培地
(51)【国際特許分類】
C12P 21/00 20060101AFI20230831BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230831BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
C12P21/00 C
C12P21/08
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101764
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2021062942の分割
【原出願日】2017-04-26
(31)【優先権主張番号】62/327,964
(32)【優先日】2016-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518377997
【氏名又は名称】タンベックス バイオファーマ ユーエスエー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ティー.ルバー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ダブリュ.ワイ.シェン
(72)【発明者】
【氏名】イーウェン タオ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー ユージーン ムーラリー,ザ フォース
(57)【要約】
【課題】
本出願には特に、哺乳動物の細胞を培養するための組成物と方法が開示されている。
【解決手段】
いくつかの側面では、その組成物は、1つのリチウムイオン供給源と、1種類以上の脂肪酸と、エタノールのうちの1つ以上を含有する培地である。1種類以上の組み換えポリペプチド(例えば抗体)を産生するように遺伝子操作されている細胞を培養するための本出願に記載した任意の細胞培養培地を利用すると、1つのリチウムイオン供給源と、1種類以上の脂肪酸と、エタノールのうちの1つ以上を含有しない培地の中で培養した細胞と比べて、力価を増加させること、および/またはより好ましいグリコシル化プロファイルにすること、および/または高分子量と低分子量の種の量を変化させる(例えば減少させる)こと、および/または酸性または塩基性の電荷バリアントの量を変化させる(例えば減少させる)ことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)基本培地または(ii)流加培地と;
(b)リチウムイオンの1種類以上の供給源
を含む、哺乳動物の細胞を培養するための培地。
【請求項2】
前記細胞が1種類以上の組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作されている、請求項1に記載の培地。
【請求項3】
(c)エタノールおよび/または(d)1種類以上の脂肪酸をさらに含む、請求項1または2に記載の培地。
【請求項4】
前記1種類以上の脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、コレステロール、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、マルガリン酸(C17)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコシル酸(C25)、セロチン酸(C26)、ヘプタコシル酸(C27)、モンタン酸(C28)、ノナコシル酸(C29)、メリシン酸(C30)、ヘントリアコンチル酸(C31)、ラッセル酸(C32)、プシリン酸(C33)、ゲジン酸(C34)、セロプラスチン酸(C35)、ヘキサトリアコンチル酸(C36)、ヘプタトリアコンタン酸(C37)、オクタトリアコンタン酸(C38)からなる群より選択される、請求項3に記載の培地。
【請求項5】
リチウムイオンの前記1種類以上の供給源は、酢酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、オキシ酪酸リチウム、オロチン酸リチウム、臭化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウムのうちの1種類以上の群より選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の培地。
【請求項6】
前記リチウムイオンが約0.1μM~約25 mMの濃度で存在している、請求項1~5のいずれか1項に記載の培地。
【請求項7】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドの力価が、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドの力価と比べて増大している、請求項2~6のいずれか1項に記載の培地。
【請求項8】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種の量が、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項2~7のいずれか1項に記載の培地。
【請求項9】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの低分子量種の量が、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項2~8のいずれか1項に記載の培地。
【請求項10】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルが、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項2~9のいずれか1項に記載の培地。
【請求項11】
前記変化したグリコシル化プロファイルが、変化した末端マンノースグリカン種を含む、請求項10に記載の培地。
【請求項12】
前記変化したグリコシル化プロファイルが、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)から選択された1種類以上のグリカン種の変化を含む、請求項10に記載の培地。
【請求項13】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷バリアントが、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項2~12のいずれか1項に記載の培地。
【請求項14】
エタノールが約0.001%~約4%(v/v)の濃度で存在する、請求項3~13のいずれか1項に記載の培地。
【請求項15】
前記1種類以上の脂肪酸が約1μM~約4 mMの濃度で存在する、請求項3~14のいずれか1項に記載の培地。
【請求項16】
(a)(i)基本培地または(ii)流加培地と;
(b)エタノール
を含む、哺乳動物の細胞を培養するための培地。
【請求項17】
前記細胞が1種類以上の組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作されている、請求項16に記載の培地。
【請求項18】
(c)1種類以上の脂肪酸をさらに含む、請求項16または17に記載の培地。
【請求項19】
前記1種類以上の脂肪酸は、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコシル酸(C25)、セロチン酸(C26)、ヘプタコシル酸(C27)、モンタン酸(C28)、ノナコシル酸(C29)、メリシン酸(C30)、ヘントリアコンチル酸(C31)、ラッセル酸(C32)、プシリン酸(C33)、ゲジン酸(C34)、セロプラスチン酸(C35)、ヘキサトリアコンチル酸(C36)、ヘプタトリアコンタン酸(C37)、オクタトリアコンタン酸(C38)からなる群より選択される、請求項18に記載の培地。
【請求項20】
前記エタノールが約0.001%~約4%(v/v)の濃度で存在する、請求項16~19のいずれか1項に記載の培地。
【請求項21】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドの力価が、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドの力価と比べて増大している、請求項17~20のいずれか1項に記載の培地。
【請求項22】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種の量が、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項17~21のいずれか1項に記載の培地。
【請求項23】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの低分子量種の量が、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項17~22のいずれか1項に記載の培地。
【請求項24】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルが、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項17~23のいずれか1項に記載の培地。
【請求項25】
前記変化したグリコシル化プロファイルが、変化した末端マンノースグリカン種を含む、請求項24に記載の培地。
【請求項26】
前記変化したグリコシル化プロファイルが、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)から選択された1種類以上のグリカン種の変化を含む、請求項24に記載の培地。
【請求項27】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷バリアントが、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項17~26のいずれか1項に記載の培地。
【請求項28】
前記1種類以上の脂肪酸が約1μM~約4 mMの濃度で存在する、請求項18~27のいずれか1項に記載の培地。
【請求項29】
(a)(i)基本培地または(ii)流加培地と;
(b)1種類以上の脂肪酸
を含む、哺乳動物の細胞を培養するための培地。
【請求項30】
前記細胞が1種類以上の組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作されている、請求項29に記載の培地。
【請求項31】
前記1種類以上の脂肪酸が毎日供給されて約1μM~1 mMの濃度で存在する、請求項29または30に記載の培地。
【請求項32】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種の量が、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項30~31のいずれか1項に記載の培地。
【請求項33】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの低分子量種の量が、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項30~31のいずれか1項に記載の培地。
【請求項34】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルが、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項30~33のいずれか1項に記載の培地。
【請求項35】
前記変化したグリコシル化プロファイルが、変化した末端マンノースグリカン種を含む、請求項34に記載の培地。
【請求項36】
前記変化したグリコシル化プロファイルが、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)から選択された1種類以上のグリカン種の変化を含む、請求項34に記載の培地。
【請求項37】
前記細胞によって産生される前記1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷バリアントが、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している、請求項30~36のいずれか1項に記載の培地。
【請求項38】
前記脂肪酸が、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のうちの1種類以上である、請求項30~37のいずれか1項に記載の培地。
【請求項39】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルが、この培地の中で培養されない哺乳動物細胞と比べて変化している、請求項2~15、17~28、30~38のいずれか1項に記載の培地。
【請求項40】
操作された哺乳動物細胞から1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させる方法であって、
(a)その操作された哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養し;
(b)その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させること
を含む方法。
【請求項41】
(c)前記1種類以上の組み換えポリペプチドを単離することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記培地が基本培地である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記培地が流加培地である、請求項40または41に記載の方法。
【請求項44】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドが、抗体またはそのフラグメントである、請求項40~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記モノクローナル抗体が、増殖している細胞の増殖を抑制する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体またはそのフラグメントが結合するのが、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
遺伝子操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルを変化させる方法であって、
(a)その操作された哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養し;
(b)その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを含んでいて、その1種類以上の組み換えポリペプチドが、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化したグリコシル化プロファイルを有する方法。
【請求項50】
前記変化したグリコシル化プロファイルが、変化した末端マンノースグリカン種を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記変化したグリコシル化プロファイルが、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)から選択された1種類以上のグリカン種の変化を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
グリカン種の総和に対する前記末端マンノースグリカン種の比が約40%~約50%変化する、請求項49~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドが、抗体またはそのフラグメントである、請求項49~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記モノクローナル抗体が、増殖している細胞の増殖を抑制する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記抗体またはそのフラグメントが結合するのが、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種または低分子量種の量を変化させる方法であって、
(a)その哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養し;
(b)その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを含んでいて、その1種類以上の組み換えポリペプチドは、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて高分子量種または低分子量種の量が減少している方法。
【請求項59】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドは高分子量種の量が減少している、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドは低分子量種の量が減少している、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記低分子量種が、完全には組み立てられていない、および/または折り畳まれていないポリペプチドフラグメントを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記高分子量種が、組み換えポリペプチドのサブユニットを2つ以上含む、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
(1)非凝集物、(2)低分子量種、(3)高分子量種の総和に対する低分子量種のパーセント比が、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドでのパーセント比と比べて変化している、請求項60または61に記載の方法。
【請求項64】
(1)非凝集物、(2)低分子量種、(3)高分子量種の総和に対する高分子量種のパーセント比が、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドでのパーセント比と比べて変化している、請求項59または62に記載の方法。
【請求項65】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドが、抗体またはそのフラグメントである、請求項58~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記モノクローナル抗体が、増殖している細胞の増殖を抑制する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記抗体またはそのフラグメントが結合するのが、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷種の量を変化させる方法であって、
(a)その哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養し;
(b)その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを含んでいて、その1種類以上の組み換えポリペプチドは、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて酸性電荷種の量が減少している方法。
【請求項71】
(1)酸性電荷種、(2)主要電荷種、(3)塩基性電荷種の総和に対する酸性または塩基性の電荷種のパーセント比が、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて低下している、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記1種類以上の組み換えポリペプチドが、抗体またはそのフラグメントである、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項70~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記抗体またはそのフラグメントが結合するのが、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである、請求項70~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記培地が基本培地である、請求項49~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記培地が流加培地である、請求項49~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
(a)(i)哺乳動物の細胞を培養する基本培地および/または(ii)哺乳動物の細胞を培養する流加培地と;
(b)リチウムイオンの1種類以上の供給源
を含むキット。
【請求項79】
(c)エタノール、および/または(d)1種類以上の脂肪酸をさらに含む、請求項78に記載のキット。
【請求項80】
前記1種類以上の脂肪酸は、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコシル酸(C25)、セロチン酸(C26)、ヘプタコシル酸(C27)、モンタン酸(C28)、ノナコシル酸(C29)、メリシン酸(C30)、ヘントリアコンチル酸(C31)、ラッセル酸(C32)、プシリン酸(C33)、ゲジン酸(C34)、セロプラスチン酸(C35)、ヘキサトリアコンチル酸(C36)、ヘプタトリアコンタン酸(C37)、オクタトリアコンタン酸(C38)からなる群より選択される、請求項79に記載のキット。
【請求項81】
前記1種類以上の脂肪酸は、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のうちの1種類以上より選択される、請求項79に記載のキット。
【請求項82】
(e)哺乳動物細胞を培養するための指示書をさらに含む、請求項78~81のいずれか1項に記載のキット。
【請求項83】
リチウムイオンの前記1種類以上の供給源は、酢酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、オキシ酪酸リチウム、オロチン酸リチウム、臭化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウムのうちの1種類以上の群より選択される、請求項77~81のいずれか1項に記載のキット。
【請求項84】
組み換えポリペプチドであって、操作された哺乳動物細胞を、その組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、請求項1~39のいずれか1項に記載の培地の中で培養することによって産生される組み換えポリペプチド。
【請求項85】
前記ポリペプチドが、抗体またはそのフラグメントである、請求項84に記載の組み換えポリペプチド。
【請求項86】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項84または85に記載の組み換えポリペプチド。
【請求項87】
前記モノクローナル抗体が、増殖している細胞の増殖を抑制する、請求項86に記載の組み換えポリペプチド。
【請求項88】
前記抗体またはそのフラグメントが結合するのが、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである、請求項85に記載の組み換えポリペプチド。
【請求項89】
前記モノクローナル抗体が、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである、請求項86に記載の組み換えポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月26日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第62/327,964号の優先権を主張するものであり、その開示内容の全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
発明の分野
本発明は、全体として、細胞培養培地と、その細胞培養培地を用いて、培養された細胞に由来する産物を産生させる方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞培養物に由来する産物(例えばタンパク質をベースとした産物であるモノクローナル抗体(mAb)など)を市販用に製造するには、細胞が臨床と市場の要求を満たすのに十分な産物を産生するように細胞培養パラメータを最適化する必要がある。しかし細胞培養パラメータを最適化してタンパク質産物の生産性を向上させるとき、その産物に望まれている品質仕様(例えばグリコシル化プロファイル、凝集レベル、電荷の不均質性、アミノ酸配列の完全性)も維持する必要がある(Li他、2010年、mAbs.、第2巻(5):466~477ページ)。
【0004】
例えば容積力価を20%より大きくすると、大規模にモノクローナル抗体を製造する際の経済性が顕著に改善される。それに加え、細胞培養培地の中で産生されるタンパク質のグリカン形態を制御できることが重要である。グリカン種は、治療用タンパク質(例えばmAb)の薬力学(PK)と薬物動態(PD)に大きな影響を与えることがわかっている。さらに、さまざまなグリカン種の相対的な割合を調節できると、生体内のタンパク質の挙動に劇的な結果をもたらす可能性がある。例えばマンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(「Man5」)や他の高マンノースグリカン種が増えると、mAbの生体内半減期が短くなることがわかっている(Liu、2015年、J Pharm Sci.、第104巻(6):1866~1884ページ;Goetze他、2011年、Glycobiology、第21巻(7):949~959ページ;Kanda他、2007年、Glycobiology、第17巻(1):104~118ページ)。その一方で、マンノース-3-N-アセチルグリコサミン-4(「G0」)でグリコシル化されたmAbは、抗体依存性細胞毒性(ADCC)に影響を与えることが示されている。
【0005】
バイオリアクターを流加モード、固定化モード、灌流モード、連続モードで用いて治療用タンパク質を細胞に産生させることがうまくいっている。培養物の中で細胞によるタンパク質の産生を増大させるのに、温度、培地の組成(増殖阻害剤、自己分泌因子、環状モノヌクレオチドの添加を含む)、浸透圧モル濃度ストレスによる過剰刺激の利用などの戦略が用いられてきた。これらのアプローチは、これまでうまくいっていた範囲にかろうじて入るにしても、ほんのわずかにしか成功していない。
【0006】
そのようなわけで、医学的または工業的に有用な産物(例えば抗体)を産生させるために細胞培養物の中で用いる改善された組成物が特に必要とされている。理想的には、そのような組成物と、その組成物を用いる方法により、細胞培養物の中に得られる産物が、より大きな力価、変化(例えば減少)した高分子量種と低分子量種、より好ましいグリコシル化プロファイルになると考えられる。
【0007】
本明細書全体を通じ、さまざまな特許、特許出願、他のタイプの刊行物(例えば学術誌の論文、電子的データベース入力など)を参照する。あらゆる特許、特許出願、他の刊行物の開示内容の全体が、あらゆる目的で、参照によって本明細書に組み込まれている。
【発明の概要】
【0008】
本明細書に提示する本発明では、特に、哺乳動物の細胞を培養するための組成物と方法が開示されている。いくつかの側面では、その組成物は、1つのリチウムイオン供給源と、1種類以上の脂肪酸と、エタノールのうちの1つ以上を含有する培地である。1種類以上の組み換えポリペプチド(例えば抗体)を産生するように遺伝子操作されている細胞を、本明細書に記載した任意の細胞培養培地を用いて培養すると、1つのリチウムイオン供給源と、1種類以上の培地と、エタノールのうちの1つ以上を含有しない培地を用いた場合と比較して、力価を大きくすること、および/またはグリコシル化プロファイルを変化させること、および/または酸性または塩基性の電荷種の量を変化させること、および/または高分子量種と低分子量種の量を変化させることができる。
【0009】
したがっていくつかの側面では、本明細書において、哺乳動物の細胞を培養するための培地として、(a)(i)基本培地または(ii)流加培地と;(b)リチウムイオンの1種類以上の供給源を含む培地が提供される。いくつかの実施態様では、細胞は、1種類以上の組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作されている。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、培地は、(c)エタノールおよび/または(d)1種類以上の脂肪酸をさらに含んでいる。いくつかの実施態様では、その1種類以上の脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸からなる群より選択される。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、リチウムイオンの上記1種類以上の供給源は、酢酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、オキシ酪酸リチウム、オロチン酸リチウム、臭化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウムのうちの1つ以上からなる群より選択される。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記リチウムイオンは、約0.1μM~約25 mMの濃度で存在する。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の組み換えポリペプチドの力価は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドの力価と比べて増加している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの低分子量種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイル(例えばグリコシル化の量)は、前記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している。いくつかの実施態様では、その変化したグリコシル化プロファイルは、変化(例えば減少)した末端マンノースグリカン種を含んでいる。いくつかの実施態様では、その変化したグリコシル化プロファイルは、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)から選択した1種類以上のグリカン種の変化を含んでいる。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、エタノールは、約0.001%~約4%v/vの濃度で存在する。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の脂肪酸は、約1μM~約4 mMの濃度(例えば毎日供給する濃度)で存在する(例えば約1μΜ、10μΜ、25μΜ、50μΜ、75μΜ、100μΜ、200μΜ、300μΜ、400μΜ、500μΜ、600μΜ、700μΜ、800μΜ、900μΜ、1 mM、1.5 mΜ、2 mM、2.5 mM、3 mM、3.5 mM、4 mMのいずれかであり、これらの数の間に入るあらゆる値も含まれる)。
【0010】
別の側面では、本明細書において、哺乳動物の細胞を培養するための培地として、(a)(i)基本培地または(ii)流加培地と;(b)エタノールを含む培地が提供される。いくつかの実施態様では、細胞は、1種類以上の組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作されている。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、培地は、(c)1種類以上の脂肪酸をさらに含んでいる。いくつかの実施態様では、その1種類以上の脂肪酸は、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコシル酸(C25)、セロチン酸(C26)、ヘプタコシル酸(C27)、モンタン酸(C28)、ノナコシル酸(C29)、メリシン酸(C30)、ヘントリアコンチル酸(C31)、ラッセル酸(C32)、プシリン酸(C33)、ゲジン酸(C34)、セロプラスチン酸(C35)、ヘキサトリアコンチル酸(C36)、ヘプタトリアコンタン酸(C37)、オクタトリアコンタン酸(C38)より選択される。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、エタノールは、約0.001%~約4%(v/v)の濃度で存在する。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の組み換えポリペプチドの力価は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドの力価と比べて増加している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの低分子量種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイル(例えばグリコシル化の量)は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している。いくつかの実施態様では、その変化したグリコシル化プロファイルは、変化(例えば減少)した末端マンノースグリカン種を含んでいる。いくつかの実施態様では、変化したグリコシル化プロファイルは、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)から選択した1種類以上のグリカン種の変化を含んでいる。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の脂肪酸は、約1μM~約4 mMの濃度(例えば毎日供給する濃度)で存在する(例えば約1μΜ、10μΜ、25μΜ、50μΜ、75μΜ、100μΜ、200μΜ、300μΜ、400μΜ、500μΜ、600μΜ、700μΜ、800μΜ、900μΜ、1 mM、1.5 mΜ、2 mM、2.5 mM、3 mM、3.5 mM、4 mMのいずれかであり、これらの数の間に入るあらゆる値も含まれる)。
【0011】
さらに別の側面では、本明細書において、哺乳動物の細胞を培養するための培地として、(a)(i)基本培地または(ii)流加培地と;(b)1種類以上の脂肪酸を含む培地が提供される。いくつかの実施態様では、細胞は、1種類以上の組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作されている。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の脂肪酸は、約1μM~1 mMという毎日の供給濃度で存在する。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの低分子量種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイル(例えばグリコシル化の量)は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化している。いくつかの実施態様では、その変化したグリコシル化プロファイルは、変化(例えば減少)した末端マンノースグリカン種を含んでいる。いくつかの実施態様では、変化したグリコシル化プロファイルは、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)から選択した1種類以上のグリカン種の変化を含んでいる。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記細胞によって産生される上記1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷種の量は、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルは、上記培地の中で培養されない哺乳動物細胞と比べて変化して(変更されて)いる。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記脂肪酸は、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のうちの1つ以上である。
【0012】
さらに別の側面では、本明細書において、操作された哺乳動物細胞から1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させる方法が提供され、この方法は、(a)その操作された哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養し;(b)その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを含んでいる。いくつかの実施態様では、この方法は、(c)その1種類以上の組み換えポリペプチドを単離することを含んでいる。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、培地は基本培地である。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、培地は流加培地である。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の組み換えポリペプチドは、抗体またはそのフラグメントである。いくつかの実施態様では、その抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、増殖している細胞の増殖を抑制する。いくつかの実施態様では、その抗体またはそのフラグメントが結合するのは、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである。いくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである。
【0013】
別の1つの側面では、本明細書において、遺伝子操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルを変化させる方法が提供され、この方法は、(a)その操作された哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養し;(b)その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを含んでいて、その1種類以上の組み換えポリペプチドが、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化したグリコシル化プロファイルを有する。いくつかの実施態様では、その変化したグリコシル化プロファイルは、変化(例えば減少)した末端マンノースグリカン種を含んでいる。いくつかの実施態様では、その変化したグリコシル化プロファイルは、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)から選択した1種類以上のグリカン種の変化を含んでいる。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、グリカン種の総和に対する末端マンノースグリカン種の比は、約40%~約50%変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の組み換えポリペプチドは、抗体またはそのフラグメントである。いくつかの実施態様では、その抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、増殖している細胞の増殖を抑制する。いくつかの実施態様では、その抗体またはそのフラグメントが結合するのは、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである。いくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである。
【0014】
別の1つの側面では、本明細書において、操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種または低分子量種の量を変化(例えば減少)させる方法が提供され、この方法は、(a)その哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養し;(b)その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを含んでいて、その1種類以上の組み換えポリペプチドは、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて高分子量種または低分子量種の量が減少している。いくつかの実施態様では、その1種類以上の組み換えポリペプチドは、高分子量種の量が減少している。いくつかの実施態様では、その1種類以上の組み換えポリペプチドは、低分子量種の量が減少している。いくつかの実施態様では、その低分子量種は、完全には組み立てられていない、および/または折り畳まれていないポリペプチドフラグメントを含んでいる。いくつかの実施態様では、その高分子量種は、組み換えポリペプチドのサブユニットを2つ以上含んでいる。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、(1)非凝集物、(2)低分子量種、(3)高分子量種の総和に対する低分子量種のパーセント比が、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドでのパーセント比と比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、(1)非凝集物、(2)低分子量種、(3)高分子量種の総和に対する高分子量種のパーセント比が、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドでのパーセント比と比べて変化(例えば減少)している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の組み換えポリペプチドは、抗体またはそのフラグメントである。いくつかの実施態様では、その抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、増殖している細胞の増殖を抑制する。いくつかの実施態様では、その抗体またはそのフラグメントが結合するのは、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである。いくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである。
【0015】
さらに別の側面では、本明細書において、操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷種の量を変化させる方法が提供され、この方法は、(a)その哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養し;(b)その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを含んでいて、その1種類以上の組み換えポリペプチドは、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて酸性電荷種の量が減少している。いくつかの実施態様では、(1)酸性電荷種、(2)主要電荷種、(3)塩基性電荷種の総和に対する酸性または塩基性の電荷種のパーセント比が、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて低下している。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、上記1種類以上の組み換えポリペプチドは、抗体またはそのフラグメントである。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、その抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、その抗体またはそのフラグメントが結合するのは、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、培地は基本培地である。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、培地は流加培地である。
【0016】
別の1つの側面では、本明細書において、(a)(i)哺乳動物の細胞を培養する基本培地および/または(ii)哺乳動物の細胞を培養する流加培地と;(b)リチウムイオンの1種類以上の供給源を含むキットが提供される。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、このキットは、(c)エタノール、および/または(d)1種類以上の脂肪酸をさらに含んでいる。いくつかの実施態様では、その1種類以上の脂肪酸は、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコシル酸(C25)、セロチン酸(C26)、ヘプタコシル酸(C27)、モンタン酸(C28)、ノナコシル酸(C29)、メリシン酸(C30)、ヘントリアコンチル酸(C31)、ラッセル酸(C32)、プシリン酸(C33)、ゲジン酸(C34)、セロプラスチン酸(C35)、ヘキサトリアコンチル酸(C36)、ヘプタトリアコンタン酸(C37)、オクタトリアコンタン酸(C38)より選択される。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、このキットは、(e)哺乳動物の細胞を培養するための指示書をさらに含んでいる。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、リチウムイオンの上記1種類以上の供給源は、酢酸リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、オキシ酪酸リチウム、オロチン酸リチウム、臭化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウムのうちの1つ以上の群より選択される。
【0017】
別の側面では、本明細書において、組み換えポリペプチドとして、操作された哺乳動物細胞を、その組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、本明細書に開示した任意の細胞培養培地の中で培養することによって産生される組み換えポリペプチドが提供される。いくつかの実施態様では、そのポリペプチドは、抗体またはそのフラグメントである。本明細書に開示したあらゆる実施態様のうちのいくつかの実施態様では、その抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、増殖している細胞の増殖を抑制する。いくつかの実施態様では、その抗体またはそのフラグメントが結合するのは、HER2、TNF-α、VEGF-A、α4-インテグリン、CD20、CD52、CD25、CD11a、EGFR、呼吸器系合胞体ウイルス(RSV)、糖タンパク質IIb/IIIa、IgG1、IgE、補体成分5(C5)、B細胞活性化因子(BAFF)、CD19、CD30、インターロイキン-1β(IL-1β)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、CD38、RANKL、GD2、SLAMF7(CD319)、プロタンパク質変換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、ダビガトラン、細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)、インターロイキン-5(IL-5)、プログラムされた細胞死タンパク質(PD-1)、VEGFR2(KDR)、炭疽菌の保護抗原(PA)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-6受容体(IL6R)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-23(IL-23)、スクレロスチン(SOST)、ミオスタチン(GDF-8)、アクチビン受容体様キナーゼ1、デルタ様リガンド4(DLL4)、アンジオポエチン3、VEGFR1、セレクチン、酸化された低密度リポタンパク質(oxLDL)、血小板由来増殖因子受容体β、ニューロピリン1、フォンビルブラント因子(vWF)、インテグリンαvβ3、神経アポトーシス調節プロテイナーゼ1、インテグリンαIIbβ3、β-アミロイド、レティキュロン4(RXN4)/神経突起成長インヒビター(NOGO-A)、神経成長因子(NGF)、LINGO-1、ミエリン結合糖タンパク質、インテグリンα4β7のいずれかである。いくつかの実施態様では、そのモノクローナル抗体は、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブである。
【0018】
本明細書に記載した側面と実施態様のそれぞれは、その実施態様または側面の文脈から明示的に除外されるか明らかに除外されない限り、組み合わせて利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、典型的な成熟経路をたどる主要なN-グリカン結合種の模式図を示している。グリコシル化プロセシングは小胞体の中で始まり、さらなるプロセシングがゴルジ体シス部、中間部、トランス部においてなされる。図示した主要なグリカン種に含まれているのは、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース-1-N-アセチルノイラミニック-1(GIF-NANA)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース-1-N-アセチルノイラミニック-2(G2F-2NANA)である。
【0020】
【
図2】
図2は、力価とMan5%グリカン種に対する影響を示している。力価は、容積力価として示され、Man5%グリカン種は、検出された全グリカンプールに対する割合として示されている。数値はベースラインに規格化されている。12日間の流加プロセスにおいてリチウムを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.11 mM(低リチウム)と1.11 mM(高リチウム)だけ上昇させた。リチウムの用量をより多くすると、ベースラインと比較して力価が21%増大し、Man5%が13%減少した。
【0021】
【
図3】
図3は、2lのベンチスケールのバイオリアクターを用いたときの力価、Man5種%、G0種%、HMW種%、LMW種%、酸性種%、塩基性種%の予測応答プロファイルを示している。14日間の流加プロセスにおいてリチウムを毎日供給してバイオリアクターの濃度を1 mMだけ増加させた。数値は、各応答について観察された最大値に規格化されている。点線は、各応答の信頼区間を示す。
【0022】
【
図4】
図4は、力価、Man5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、HMW種%、LMW種%、酸性種%、塩基性種%の予測応答プロファイルを示している。温度とpHの設定点を変えることによって物理的条件を変化させた。12日間の流加プロセスにおいてリチウムを毎日供給してバイオリアクターの動作濃度を0.5 mMまたは1 mMだけ増加させた。応答値は、各応答について観察された最大値に規格化されている。点線は、各応答の信頼区間を示す。
【0023】
【
図5】
図5は、力価、Man5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、HMW種%、LMW種%、酸性種%、塩基性種%の組み合わせ予測応答プロファイルを示している。12日間の流加プロセスにおいてリチウムを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.5 mMまたは1 mMだけ増加させた。応答値は、各応答について観察された最大値に規格化されている。点線は、各応答の信頼区間を示す。
【0024】
【
図6】
図6は、mAb2を産生するCHO DG44宿主を用いたときのMan6%、Man5%、HMW%のレベルに対する影響を示している。Man6%グリカン種とMan5%グリカン種は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。HMW%は、検出された全ポリペプチド分子量バリアントに対する%として示してある。数値はベースラインに規格化されている。13日間の流加プロセスにおいてリチウムを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.11 mM(低リチウム)、0.44 mM(中リチウム)、1.11 mM(高リチウム)だけ上昇させた。高リチウムではMan6%グリカン種とMan5%グリカン種がそれぞれベースラインから29%と12%減少した。高リチウムでは、高分子量種がベースラインと比較して24%減少した。
【0025】
【
図7】
図7は、mAb1を産生するCHO.DXB11宿主(細胞系A)を用いたときのMan5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、酸性種%、塩基性種%に対する影響を示している。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。酸性%と塩基性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値はベースラインに規格化されている。12日間の流加プロセスにおいてエタノールを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.0%(ベースライン)と0.057%(エタノールあり)v/vだけ増加させた。
【0026】
【
図8】
図8は、mAb1を産生するCHO.DXB11宿主(細胞系B)を用いたときのMan5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、酸性種%、塩基性種%に対する影響を示している。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。酸性%と塩基性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値はベースラインに規格化されている。12日間の流加プロセスにおいてエタノールを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.0%(ベースライン)と0.057%(エタノールあり)v/vだけ増加させた。
【0027】
【
図9】
図9は、力価、Man5種%、G0種%、酸性種%、塩基性種%の予測応答プロファイルを示している。12日間の流加プロセスにおいてエタノールを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.0%または0.1%v/vだけ増加させた。応答値は、各応答について観察された最大値に規格化されている。点線は、各応答の信頼区間を示す。
【0028】
【
図10】
図10は、ベンチ-スケールのバイオリアクターを用いたときのMan5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、HMW種%、LMW種%に対する影響を示している。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。HMW%とLMW%は、検出された全ポリペプチド分子量バリアントに対する%として示してある。数値は低エタノールに規格化されている。14日間の流加プロセスにおいてエタノールを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.072%(低エタノール)と0.144%(高エタノール)だけ上昇させた。
【0029】
【
図11】
図11は、2つの異なる供給調製物を用いたときのMan5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、酸性種%、塩基性種%に対する影響を示している。同じ基本培地を調製物1と2で用いた。調製物1と2は組成が非常によく似ており、同じ種類と同じ量のアミノ酸とビタミンを含有している。塩と金属イオンの種類と濃度をわずかに変えた。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。酸性%と塩基性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値は、エタノールを欠くベースラインに規格化されている。14日間の流加プロセスにおいてエタノールを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.0%(ベースライン)と0.018%(調製物1と2)v/vだけ増加させた。
【0030】
【
図12】
図12は、ミクロスケールのバイオリアクターと、mAb 2を産生するCHO.DG44細胞系を用いたときのMan5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%、HMW%に対する影響を示している。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。HMW%は、検出された全ポリペプチド分子量バリアントに対する%として示してある。数値はベースラインに規格化されている。13日間の流加プロセスにおいてエタノールを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.0%(ベースライン)、0.05%(低エタノール)、0.15%(高エタノール)v/vだけ上昇させた。
【0031】
【
図13】
図13は、エタノールとオレイン酸の両方を補充したベンチ-スケールのバイオリアクターを用いたときの力価、Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%、HMW%、LMW%、酸性%、塩基性%に対する相乗的な影響を示している。力価は、容積力価として示してある。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。HMW%とLMW%は、検出された全ポリペプチド分子量バリアントに対する%として示してある。酸性%と塩基性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値は、エタノールまたはオレイン酸を含有しないベースラインに規格化されている。14日間の流加プロセスにおいて、エタノールを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.0%(ベースライン)と0.057%(エタノール+オレイン酸あり)v/vだけ増加させ、オレイン酸を毎日供給してバイオリアクターの濃度を0μM(ベースライン)と40μM(エタノール+オレイン酸あり)だけ増加させた。
【0032】
【
図14】
図14は、ベンチ-スケールのバイオリアクターを用いたときの力価、Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%、HMW%、LMW%、酸性%、塩基性%に対する影響を示している。力価は、容積力価として示してある。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。HMW%とLMW%は、検出された全ポリペプチド分子量バリアントに対する%として示してある。酸性%と塩基性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値は、エタノールを含有するベースラインに規格化されている。14日間の流加プロセスにおいてオレイン酸を毎日供給してバイオリアクターの濃度を0μM(エタノールありのベースライン)と40μM(エタノール+オレイン酸あり)だけ増加させた。
【0033】
【
図15A】
図15Aは、マイクロスケールのバイオリアクターを用いたとき、細胞培養培地に塩化ナトリウムを添加することが力価、Man5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、HMW種%、LMW種%、酸性種%、塩基性種%に及ぼす影響を示している。プロセス戦略1は、温度を1回だけシフトさせる戦略を含んでいた。力価は、容積力価として示してある。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。酸性%と塩基性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値はベースラインに規格化してある。12日間の流加プロセスにおいて塩化ナトリウムを毎日供給してバイオリアクターの濃度を4.59 mM(低NaCl)と9.18 mM(高NaCl)だけ増加させた。
【0034】
【
図15B】
図15Bは、マイクロスケールのバイオリアクターを用いたとき、細胞培養培地に塩化ナトリウムを添加することが力価、Man5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、HMW種%、LMW種%、酸性種%、塩基性種%に及ぼす影響を示している。プロセス戦略2は、温度を2回シフトさせる戦略を含んでいた。力価は、容積力価として示してある。グリカン種Man5%、G0%、G0F%、G1F%、G2F%は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。酸性%と塩基性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値はベースラインに規格化してある。12日間の流加プロセスにおいて塩化ナトリウムを毎日供給してバイオリアクターの濃度を4.59 mM(低NaCl)と9.18 mM(高NaCl)だけ増加させた。
【0035】
【
図16】
図16は、2つの別々の細胞系によって産生される2つの別々のモノクローナル抗体(mAb1とmAb4)について、さまざまなタイプの脂肪酸を培地に添加することが力価に及ぼす影響を示している。力価は、容積力価として示してある。数値は対照に規格化してある。
【0036】
【
図17A】
図17Aは、2つの別々の細胞系によって産生される2つの別々のモノクローナル抗体(mAb1とmAb4)について、さまざまなタイプの脂肪酸を培地に添加することが高分子量(HMW)種に及ぼす影響を示している。HMW%は、検出された全ポリペプチド分子量バリアントに対する%として示してある。数値は対照に規格化してある。
【0037】
【
図17B】
図17Bは、2つの別々の細胞系によって産生される2つの別々のモノクローナル抗体(mAb1とmAb4)について、さまざまなタイプの脂肪酸を培地に添加することが低分子量(LMW)種に及ぼす影響を示している。LMW%は、検出された全ポリペプチド分子量バリアントに対する%として示してある。数値は対照に規格化してある。
【0038】
【
図18A】
図18Aは、2つの別々の細胞系によって産生される2つの別々のモノクローナル抗体(mAb1とmAb4)について、さまざまなタイプの脂肪酸を培地に添加することが酸性電荷種に及ぼす影響を示している。酸性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値は対照に規格化してある。
【0039】
【
図18B】
図18Bは、2つの別々の細胞系によって産生される2つの別々のモノクローナル抗体(mAb1とmAb4)について、さまざまなタイプの脂肪酸を培地に添加することが塩基性電荷種に及ぼす影響を示している。塩基性%は、検出された全ポリペプチド電荷種バリアントに対する%として示してある。数値は対照に規格化してある。
【0040】
【
図19A】
図19Aは、2つの別々の細胞系によって産生される2つの別々のモノクローナル抗体(mAb1とmAb4)について、さまざまなタイプの脂肪酸を培地に添加することがMan5%グリカン種に及ぼす影響を示している。Man5%グリカン種は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。数値は対照に規格化してある。
【0041】
【
図19B】
図19Bは、2つの別々の細胞系によって産生される2つの別々のモノクローナル抗体(mAb1とmAb4)について、さまざまなタイプの脂肪酸を培地に添加することがG0%グリカン種に及ぼす影響を示している。G0%グリカン種は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。数値は対照に規格化してある。
【0042】
【
図20】
図20は、2つの別々の細胞系によって産生される2つの別々のモノクローナル抗体(mAb1とmAb4)について、さまざまなタイプの脂肪酸を培地に添加することがG0F%グリカン種に及ぼす影響を示している。G0F%グリカン種は、検出された全グリカンプールに対する%として示してある。数値は対照に規格化してある。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本発明により、特に、哺乳動物の細胞を培養するための方法、組成物、キットが提供される。本発明の一部は、1種類以上の組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作された哺乳動物細胞を、1つのリチウムイオン供給源と、1種類以上の脂肪酸と、エタノールのうちの1つ以上を含有する培地の中で培養すると、ポリペプチドの力価が増大するとともに、高分子量種と低分子量種が減少するという発明者の発見に基づいている。それに加え、本明細書に記載した組成物を用いると、本明細書に記載した培地の中で培養されない哺乳動物細胞と比べてより有利なグリコシル化プロファイルを有するポリペプチド産物になった。その帰結として、本明細書に開示した細胞培養培地組成物を用いると、遺伝子操作された細胞によって産生される産物の量を増加させ、そのことによってより好ましい製造を経済的に実現することができるだけでなく、それら産物を生体内投与する上での利点(例えば改善された薬力学(PK)および/または薬物動態(PD))が付加されたグリコシル化プロファイルを有する産物も得ることもできる。
【0044】
1.一般的な技術
本発明を実施するには、特に断わらない限り、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、免疫学において当業者に周知の一般的な技術を利用することになる。そのような技術は文献に十分に説明されており、文献として、例えば『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、第4版(Sambrook他、2012年)と『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、第3版(SambrookとRussel、2001年)、 (その両方を合わせて本明細書では「Sambrook」として言及する);『Current Protocols in Molecular Biology』(P.M. Ausubel他編、1987年、2014年までの補足事項を含む);『PCR: The Polymerase Chain Reaction』、(Mullis他編、1994年);『Antibodies: A Laboratory Manual』、第2版、Cold Spring Harbor Press、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州(Greenfield編、2014年)、Beaucage他編、『Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry』、John Wiley & Sons, Inc.社、ニューヨーク、2000年(2014年までの補足事項を含む)、『Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells』(Makrides編、Elsevier Sciences B.V.社、アムステルダム、2003年)、『Current Protocols in Immunology』 (Horgan K.とS. Shaw (1994年)(2014年までの補足事項を含む)がある。
【0045】
II.定義
本明細書では、「基本培地」は、真核生物の細胞を培養するのに用いる培地であり、その細胞を培養するのにそのまま用いられ、他の培地への添加剤としては使用されない。しかしさまざまな成分を基本培地に添加することができる。例えばCHO細胞をDMEM(市販されている哺乳動物細胞用の周知の培地)の中で培養し、定期的にグルコースその他の栄養素を供給するのであれば、DMEMを基本培地と見なすことができよう。基本培地の非限定的な別の例に含まれるのは、MEM培地、IMDM培地、199/109培地、HamF10/F12培地、マッコイの5A培地、RPMI 1640培地である。
【0046】
「流加培地」は、真核生物の細胞(例えば哺乳動物細胞が可能である)の培養における流加物として用いられる。流加培地は、基本培地と同様、培養する個々の細胞の要求性に応じて設計される。したがって基本培地を基礎として用いて流加培地を設計することができる。以下により詳しく説明するように、流加培地は、基本培地の大半の成分(だがすべての成分ではない)の濃度よりも高い濃度を持つ可能性がある。例えばいくつかの成分(例えばアミノ酸や炭水化物などの栄養素)を、基本培地内の通常の濃度の約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、14倍、16倍、20倍、30倍、50倍、100倍、200倍、400倍、600倍、800倍、それどころか約1000倍にすることができる。流加物を基本培地と等張に維持することを望むときには、他の諸成分(例えば塩)を基本培地の濃度の約1倍に維持することになろう。したがっていくつかの実施態様では、さまざまな成分を添加して流加培地を生理的状態に維持し、他の成分を添加するのは、細胞培養物に栄養素を補充するという理由による。
【0047】
「組み換えポリペプチド」または「組み換えタンパク質」は、遺伝子操作のプロセスから得られるタンパク質である。細胞が「遺伝子操作されている」のは、その組み換えタンパク質の発現を可能にする組み換え核酸配列が、組み換えウイルスを用いたウイルス感染、トランスフェクション、形質転換、電気穿孔などによって細胞の中に導入されているときである。例えばKaufman他(1990年)、Meth. Enzymol. 第185巻:487~511ページ、『Current Protocols in Molecular Biology』、Ausubel他編(Wiley & Sons社、ニューヨーク、1988年と、2015年までの3ヶ月ごとの更新事項を参照されたい。いくつかの実施態様では、組み換えポリペプチドは、抗体またはその機能性フラグメントである。
【0048】
「遺伝子操作する」という用語は、ある遺伝子を高レベルまたは低レベルで発現する宿主細胞、またはその遺伝子の変異体を発現する宿主細胞を作り出すのに用いられる組み換えDNA法または組み換えRNA法を意味する。言い換えると、細胞に組み換えポリヌクレオチド分子をトランスフェクトすること、または細胞を組み換えポリヌクレオチド分子で形質転換すること、または細胞に組み換えポリヌクレオチド分子を形質導入することにより、その細胞が望むタンパク質の発現を変化させるようにしてある。「遺伝子操作する」方法にも多くの方法があり、その非限定的な例に含まれるのは、ポリメラーゼ連鎖反応を利用した核酸の増幅、組み換えDNA分子を大腸菌の中でクローニングすることによる組み換えDNA分子の組み立て、制限酵素による核酸の消化、核酸の連結、核酸の末端への塩基の移動であり、これら以外にも本分野で周知の多数の方法がある。例えばSambrook他、『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、第2版、第1巻~第3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、1989年と、現在までの更新事項を参照されたい。
【0049】
「含む」というつなぎ語は、「含有する」または「~を特徴とする」の同義語であり、包括的であるため、または終わりが決められていないため、記載されていない追加の要素または方法の工程を排除しない。逆に、「~からなる」というつなぎ表現は、請求項に具体的に記載されていないあらゆる要素、構成、成分を排除する。「主に~からなる」というつなぎ表現は、請求項の範囲を、具体的に記載されている材料または工程と、請求項の発明の「基本的かつ新規な性質に実質的に影響しない材料または工程」に限定する。
【0050】
特に断わらない限り、本明細書で用いる科学技術用語は、本発明が関係する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を持つ。
【0051】
本明細書では、単数形の「1つの」と「その」には、特に断わらない限り、複数形が含まれる。
【0052】
III.本発明の組成物
いくつかの側面では、本明細書において、基本培地または流加培地と、(1)リチウムイオンの供給源、(2)エタノール、(3)1種類以上の脂肪酸のうちの1つ以上を含有する、哺乳動物の細胞を培養するための培地が提供される。
【0053】
A.哺乳動物の細胞
培養することのできるどの哺乳動物細胞も本発明で用いるのに適している。その中には、ヒト由来の細胞のほか、齧歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター(例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)、モルモット)に由来する細胞が含まれる。他の種、特に霊長類種に由来する哺乳動物細胞も含まれる。
【0054】
本発明の培地の中で培養することのできる哺乳動物細胞の非限定的な例に含まれるのは、マウスC127細胞、3T3細胞、COS細胞、ヒト骨肉腫細胞、MRC-5細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、VERO細胞、HEK 293細胞、rHEK 293細胞、正常なヒト線維芽細胞、ストロマ細胞、肝細胞、PER.C6細胞である。本発明の方法で培養することのできるハイブリドーマの例に含まれるのは、DA4.4細胞、123A細胞、127A細胞、GAMMA細胞、67-9-B細胞である。
【0055】
本明細書に開示した組成物で用いるのに適した哺乳動物細胞のさらに別の例は、COP細胞、L細胞、C 127細胞、Sp2/0細胞、NS-O細胞、NS-I細胞、NIH3T3細胞、PC12細胞、PC12h細胞、COS1細胞、COS3細胞、COS7細胞、CV1細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、アフリカミドリザル腎臓(AGMK)細胞、二倍体線維芽細胞に由来する細胞、がん細胞(例えば骨髄腫細胞)に由来する細胞、HepG2細胞である。
【0056】
B.組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作された細胞
別の1つの側面では、本明細書に記載した任意の培地の中で培養された哺乳動物細胞を遺伝子操作して1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることができる。本発明の目的では、本分野で知られている任意の方法に従って哺乳動物細胞を遺伝子操作することができる。例えば、所定の宿主哺乳動物細胞株のために遺伝子発現を最適化する核酸配列を含有する発現ベクターを設計することができる。そのような最適化要素の非限定的な例に含まれるのは、複製起点、プロモーター、エンハンサーである。本明細書で言及するベクターと要素は例示を目的として記載しているのであり、本発明の範囲を狭くする意図はない。適切なベクターは、使用する哺乳動物宿主細胞に適合したベクターである。適切なベクターは、例えば細菌、ウイルス(例えばバクテリオファージT7やM-13由来のファージ)、コスミド、酵母、植物に由来するものが可能である。適切なベクターは、哺乳動物宿主細胞の中でコピー数を少なく、または中程度に、または多く維持することができる。そのようなベクターを取得して用いるためのプロトコルは当業者に知られている(例えばSambrook他、『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、第4版、Cold Spring Harbor、2012年を参照されたい)。
【0057】
望むポリペプチドをコードする核酸配列、またはその核酸配列を含む発現ベクターを哺乳動物細胞(例えばCHO細胞や、本明細書に記載した他の任意の哺乳動物細胞)に挿入するのに、DNAコンストラクトまたはベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するための標準的な技術(形質転換、電気穿孔、核マイクロインジェクション、形質導入、トランスフェクション(例えばリポフェクションを媒介としたトランスフェクション、またはDEAE-デキストリンを媒介としたトランスフェクション、または組み換えファージウイルスを用いたトランスフェクション)、リン酸カルシウムとのインキュベーション、DNA沈降、DNAで被覆した射出微粒子の高速打ち込み、プロトプラスト融合)を利用することができる。一般的な形質転換技術が本分野で知られている(例えばSambrook他、『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、第4版、Cold Spring Harbor、2012年を参照されたい)。導入された核酸は、染色体DNAと一体化させること、または染色体外複製配列として維持することができる。形質転換細胞は、本分野で知られている任意の方法によって選択することができる。
【0058】
C.リチウムイオンの供給源
本明細書に記載した任意の哺乳動物細胞培養培地のいくつかの側面では、培地は、1種類以上のリチウムイオン供給源を含有している。どのリチウムイオン供給源も本発明で用いるのに適しており、その中には、リチウム塩、リチウム溶媒和物、金属リチウムが含まれる。
【0059】
非限定的なリチウムイオン供給源に含まれるのは、水酸化リチウム(LiOHとLiOH・H2O)、炭酸リチウム(Li2CO3)、リチウムメトキシド、酢酸リチウム、酸化リチウム(Li2O)、過酸化リチウム(Li2O2)、水素化リチウム(LiH)、塩化リチウム(LiCl)、フッ化リチウム(LiF)、ヨウ化リチウム(LiI)、硫化リチウム(Li2S)、亜硫酸リチウム(LiSO3)、硫酸リチウム(LiSO4)、リチウムスーパーオキシド(LiO2)、炭化リチウム(Li2C2)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、リチウムアルミニウムオキシド(LiAlO2)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ホウ水素化リチウム(LiBH4)、メタホウ酸リチウム(LiBO2)、テトラホウ酸リチウム(Li2B4O7)、トリホウ酸リチウム(LiB3O5)、次亜塩素酸リチウム(LiClO)、塩素酸リチウム(LiClO3)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、リチウムコバルトオキシド(LiCoO2)、ヨウ化リチウム(LiIO3)、リチウムアミド(LiNH2)、リチウムイミド(Li2NH)、アジ化リチウム(Li'N3)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、硝酸リチウム(LiNO3)、テトラホウ酸リチウム(Li2B4O7)、モリブデン酸リチウム(Li2MoO4)である。
【0060】
いくつかの実施態様では、培地(例えば基本培地または流加培地)の中に存在するリチウムイオン供給源の量として可能な範囲は、約0.05 mM~約15 mMであり、例えば約0.05 mM~約0.5 mM、約0.1 mM~約0.75 mM、約0.25 mM~約1 mM、約0.5 mM~約1.25 mM、約0.75 mM~約1.5 mM、約1 mM~約1.75 mM、約1.25 mM~約1.75 mM、約1.25 mM~約2.25 mM、約1.5 mM~約2.5 mM、約1.75 mM~約2.75 mM、約2 mM~約3 mM、約2.5 mM~約3.5 mM、約3 mM~約4 mM、約3.5 mM~約4.5 mM、約4 mM~約5 mM、約4.5 mM~約5.5 mM、約5 mM~約6 mM、約5.5 mM~約6.5 mM、約6 mM~約7 mM、約6.5 mM~約8.5 mM、約7.5 mM~約9.5 mM、約8.5 mM~約11.5 mM、約9.5 mM~約12.5 mM、約11.5 mM~約13.5 mM、約12.5 mM~約15 mM、約14 mM~約17 mM、約16 mM~約19 mM、約18 mM~約21 mM、約20 mM~約23 mM、約22 mM~約25 mM、約0.75 mM~約1.75 mM、約0.5 mM~約10 mM、約0.5 mM~約7.5 mM、約1 mM~約5 mM、約1 mM~約4 mM、約1 mM~約3 mM、約1 mM~約2 mM、約1 mM~約1.25 mMのうちの任意の範囲が挙げられる。
【0061】
別の実施態様では、培地(例えば基本培地または流加培地)の中に存在するリチウムイオン供給源の量は、約0.05 mM、0.1 mM、0.15 mM、0.2 mM、0.25 mM、0.3 mM、0.35 mM、0.4 mM、0.45 mM、0.5 mM、0.55 mM、0.6 mM、0.65 mM、0.7 mM、0.75 mM、0.8 mM、0.85 mM、0.9 mM、0.95 mM、1 mM、1.1 mM、1.2 mM、1.3 mM、1.4 mM、1.5 mM、1.6 mM、1.7 mM、1.8 mM、1.9 mM、2 mM、2、1 mM、2.2 mM、2.3 mM、2.4 mM、2.5 mM、2.6 mM、2.7 mM、2.8 mM、2.9 mM、3 mM、3.1 mM、3.2 mM、3.3 mM、3.4 mM、3.5 mM、3.6 mM、3.7 mM、3.8 mM、3.9 mM、4 mM、4.1 mM、4.2 mM、4.3 mM、4.4 mM、4.5 mM、4.6 mM、4.7 mM、4.8 mM、4.9 mM、5 mM、5.1 mM、5.2 mM、5.3 mM、5.4 mM、5.5 mM、5.6 rnM、5.7 mM、5.8 mM、5.9 mM、6 mM、6.1 mM、6.2 mM、6.3 mM、6.4 mM、6.5 mM、6.6 mM、6.7 mM、6.8 mM、6.9 mM、7 mM、7.1 mM、7.2 mM、7.3 mM、7.4 mM、7.5 mM、7.6 mM、7.7 mM、7.8 mM、7.9 mM、8 mM、8.1 mM、8.2 mM、8.3 mM、8.4 mM、8.5 mM、8.6 mM、8.7 mM、8.8 mM、8.9 mM、9 mM、9.1 mM、9.2 mM、9.3 mM、9.4 mM、9.5 mM、9.6 mM、9.7 mM、9.8 mM、9.9 mM、10 mM、10.1 mM、10.2 mM、10.3 mM、10.4 mM、10.5 mM、10.6 mM、10.7 mM、10.8 mM、10.9 mM、11 mM、11.1 mM、11.2 mM、11.3 mM、11.4 mM、11.5 mM、11.6 mM、11.7 mM、11.8 mM、11.9 mM、12 mM、12.1 mM、12.2 mM、12.3 mM、12.4 mM、12.5 mM、12.6 mM、12.7 mM、12.8 mM、12.9 mM、13 mM、13.1 mM、13.2 mM、13.3 mM、13.4 mM、13.5 mM、13.6 mM、13.7 mM、13.8 mM、13.9 mM、14 mM、14.1 mM、14.2 mM、14.3 mM、14.4 mM、14.5 mM、14.6 mM、14.7 mM、14.8 mM、14.9 mM、15 mM、16 mM、17 mM、18 mM、19 mM、20 mM、21 mM、22 mM、23 mM、24 mM、25 mMのうちの任意の量、またはそれ以上であり、これらの数値の間のあらゆる数値が含まれる。
【0062】
D.脂肪酸
本明細書に記載した任意の哺乳動物細胞培養培地のいくつかの側面では、培地は1種類以上の脂肪酸を含有する。どの脂肪酸も本発明で用いるのに適している。本明細書では、「脂肪酸」は、カルボン酸を含有するとともに、少なくとも1つの飽和した炭素-炭素結合、または不飽和の炭素-炭素結合、または一部が不飽和の炭素-炭素結合、または共役した炭素-炭素結合を含有する天然または合成の炭化水素のファミリーのあらゆるメンバーを意味する。さらに、脂肪酸という用語は、一般に、脂肪酸、C2~C38脂肪酸、共役型脂肪酸、脂質、リン脂質、油、脂肪、トリアシルグリセリド、脂肪酸誘導体、ジアシルグリセロール、イソプレノイド、スフィンゴ脂質、糖脂質などを記述するのに用いられる。
【0063】
いくつかの実施態様では、脂肪酸は飽和脂肪酸であり、その非限定的な例は、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、ノナデシル酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンイコシル酸(C21)、ベヘン酸(C22)、トリコシル酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコシル酸(C25)、セロチン酸(C26)、ヘプタコシル酸(C27)、モンタン酸(C28)、ノナコシル酸(C29)、メリシン酸(C30)、ヘントリアコンチル酸(C31)、ラッセル酸(C32)、プシリン酸(C33)、ゲジン酸(C34)、セロプラスチン酸(C35)、ヘキサトリアコンチル酸(C36)、ヘプタトリアコンタン酸(C37)、オクタトリアコンタン酸(C38)のうちの1つ以上である。
【0064】
別の実施態様では、脂肪酸はオメガ-3(ω-3)不飽和脂肪酸であり、その非限定的な例は、α-リノレン酸(18:3)、ステアリドン酸(18:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、ドコサヘキサエン酸(22:6)のうちの1つ以上である。
【0065】
追加の実施態様では、脂肪酸はオメガ-6(ω-6)不飽和脂肪酸であり、その非限定的な例は、リノール酸(18:2)、γ-リノレン酸(18:3)、ジホモ-γ-リノレン酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)、アドレン酸(22:4)のうちの1つ以上である。
【0066】
さらに別の実施態様では、脂肪酸はオメガ-7(ω-7)不飽和脂肪酸であり、その非限定的な例は、パルミトレイン酸(16: 1)、バクセン酸(18: 1)、パウリン酸(20: 1)のうちの1つ以上である。
【0067】
別の一実施態様では、脂肪酸はオメガ-9(ω-9)不飽和脂肪酸であり、その非限定的な例は、オレイン酸(18 : 1)、エライジン酸(トランス-18: 1)、ゴンドイン酸(20 : 1)、エルカ酸(22: 1)、ネルボン酸(24: 1)、ミード酸(20:3)のうちの1つ以上である。
【0068】
本明細書では、「イソプレノイド」という用語は、それぞれが特定のパターンに配置された5個の炭素原子からなる炭化水素ユニットが2つ以上で構成された天然のクラスの有機化合物の大きくて多彩なクラスを意味する。本明細書では、「テルペノイド」という用語は、多彩なやり方で組み立てられ、修飾されていて、グループのメンバーの中で用いられているイソプレノイドユニットの数に基づいて分類された、炭素原子が5個のイソプレノイドユニットに由来する大きくて多彩なクラスの有機分子を意味する。ヘミテルペノイドは、1個のイソプレノイドユニットを有する。モノテルペノイドは、2個のイソプレノイドユニットを有する。セキテルペノイドは、3個のイソプレノイドユニットを有する。ジテルペノイドは4個のイソプレンユニットを有する。セキテルペノイドは、5個のイソプレノイドユニットを有する。トリテルペノイドは、6個のイソプレノイドユニットを有する。テトラテルペノイドは、8個のイソプレノイドユニットを有する。ポリテルペノイドは、9個以上のイソプレノイドユニットを有する。
【0069】
いくつかの実施態様では、培地(例えば基本培地または流加培地)の中に存在する脂肪酸の量として可能な範囲は、約1μΜ~約1 mMであり、例えば約1μΜ~約5μΜ、約1μM~約10μΜ、約1μΜ~約15μΜ、約1μΜ~約20μΜ、約1μΜ~約25μΜ、約1μΜ~約30μ.Μ、約1μΜ~約35μM、約1μΜ~約40μM、約1μΜ~約45μΜ、約1μΜ~約50μΜ、約1μΜ~約55μM、約1μΜ~約60μΜ、約1μM~約65μM、約1μM~約70μM、約1μΜ~約75μM、約1μΜ~約80μM、約10μΜ~約20μΜ、約10μΜ~約30μΜ、約10μΜ~約40μΜ、約10μM~約50μM、約10μΜ~約60μΜ、約10μM~約70μΜ、約10μΜ~約80μM、約10μΜ~約90μM、約20μΜ~約40μM、約20μM~約60μΜ、約20μΜ~約80μM、約20μΜ~約100μΜ、約30μΜ~約50μM、約30μΜ~約60μΜ、約30μM~約70μΜ、約30μM~約80μΜ、約30μΜ~約90μΜ、約40μΜ~約50μΜ、約40μΜ~約60μM、約40μM~約80μM、約40μM~約90μΜ、約50μΜ~約60μM、約50μM~約70μΜ、約50μM~約80μΜ、約50μΜ~約90μM、約50μM~約100μM、約60μM~約70μΜ、約60μΜ~約80μM、約60μM~約90μΜ、約60μΜ~約100μΜ、約70μΜ~約80μΜ、約70μΜ~約90μΜ、約70μΜ~約100μΜ、約50μΜ~約150μΜ、約100μΜ~約200μΜ、約150μΜ~約250μΜ、約200μΜ~約300μΜ、約250μΜ~約350μM、約300μΜ~約400μΜ、約350μΜ~約450μΜ、約400μΜ~約500μM、約450μM~約550μΜ、約500μΜ~約600μM、約550μΜ~約650μΜ、約600μM~約700μΜ、約650μM~約750μM、約700μM~約800μΜ、約750μΜ~約850μΜ、約800μΜ~約900μΜ、約850μΜ~約950μΜ、約900μΜ~約1 mMのいずれかが挙げられる。
【0070】
別の実施態様では、培地(例えば基本培地または流加培地)の中に存在する脂肪酸の量は、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μΜ、7μΜ、8μΜ、9μΜ、10μΜ、11μΜ、12μΜ、13μΜ、14μΜ、15μ.Μ、16μΜ、17μΜ、18μΜ、19μΜ、20μΜ、21μΜ、22 μΜ、23μΜ、24μΜ、25μΜ、26μΜ、27μΜ、28μΜ、29μΜ、30μΜ、31μΜ、32μΜ、33μΜ、34μΜ、35μM、36μΜ、37μΜ、38μΜ、39μΜ、40μΜ、41μΜ、42μΜ、43μΜ、44μΜ、45μΜ、46μΜ、47μΜ、48μΜ、49μΜ、50μΜ、51μΜ、52μΜ、53 μΜ、54μΜ、55μΜ、56μΜ、57μΜ、58μΜ、59μΜ、60μΜ、61μΜ、62μΜ、63μΜ、64μΜ、65μΜ、66μΜ、67μΜ、68μΜ、69μΜ、70μΜ、71μΜ、72μΜ、73μΜ、74μΜ、75μΜ、76μΜ、77μΜ、78μΜ、79μΜ、80μΜ、81μΜ、82μΜ、83μΜ、84 μΜ、85μΜ、86μΜ、87μΜ、88μΜ、89μΜ、90μΜ、91μΜ、92μΜ、93μΜ、94μΜ、95μM、96μΜ、97μΜ、98μΜ、99μΜ、100μΜ、125μΜ、150μΜ、175μΜ、200 μΜ、225μΜ、250μΜ、275μΜ、300μΜ、325μΜ、350μΜ、375μΜ、400μΜ、425μΜ、450μΜ、475μΜ、500μΜ、525μΜ、550μΜ、575μΜ、600μΜ、625μΜ、650μΜ、675μΜ、700μΜ、725μΜ、750μΜ、775μΜ、800μΜ、825μΜ、850μΜ、875μΜ、900μΜ、925μΜ、950μΜ、975μΜのいずれか、またはこれらの数値の間のあらゆる数値である。
【0071】
いくつかの実施態様では、脂肪酸は、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のうちの1つ以上である。
【0072】
一実施態様では、チモール、1-オクタノイル-rac-グリセロール、リノール酸、リノレン酸のうちの1つ以上を補充した細胞培養培地は、その培地の中で増殖した細胞系によって産生される組み換えタンパク質の力価を、これら脂肪酸のうちの1種類以上を補充していない培地の中で産生される組み換えタンパク質の力価と比べて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のいずれか(その中には、これらの値の間に入る%が含まれる)だけ増大させる。
【0073】
いくつかの実施態様では、1)HMW種および/またはLMW種、または2)酸性および/または塩基性の電荷種の相対的割合に関する「変化している」または「変化させる」という表現は、組み換えポリペプチドの1)特定のHMW種および/またはLMW種、または2)特定の酸性および/または塩基性の電荷種の相対的割合の増加を意味する。しかし別の実施態様では、1)HMW種および/またはLMW種、または2)酸性および/または塩基性の電荷種の相対的割合に関する「変化している」または「変化させる」という表現は、組み換えポリペプチドの1)特定のHMW種および/またはLMW種、または2)特定の酸性および/または塩基性の電荷種の相対的割合の減少を意味する。
【0074】
別の一実施態様では、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のうちの1つ以上を補充した細胞培養培地は、その培地の中で増殖した組み換えタンパク質産生細胞系によって産生されるHMW種の相対的割合を、これら脂肪酸のうちの1種類以上を補充していない培地の中で産生される組み換えタンパク質のHMW種の量と比べて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のいずれか(その中には、これらの値の間に入る%が含まれる)だけ変化させる。
【0075】
別の一実施態様では、チモール、酢酸コレステリル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸のうちの1つ以上を補充した細胞培養培地は、その培地の中で増殖した組み換えタンパク質産生細胞系によって産生されるLMW種の相対的割合を、これら脂肪酸のうちの1種類以上を補充していない培地の中で産生される組み換えタンパク質のLMW種の量と比べて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のいずれか(その中には、これらの値の間に入る%が含まれる)だけ変化させる。
【0076】
さらに別の実施態様では、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸のうちの1つ以上を補充した細胞培養培地は、その培地の中で増殖した組み換えタンパク質産生細胞系によって産生される酸性電荷種の相対的割合を、これら脂肪酸のうちの1種類以上を補充していない培地の中で産生される組み換えタンパク質の酸性電荷種の量と比べて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のいずれか(その中には、これらの値の間に入る%が含まれる)だけ変化させる。
【0077】
追加の実施態様では、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のうちの1つ以上を補充した細胞培養培地は、その培地の中で増殖した組み換えタンパク質産生細胞系によって産生される塩基性電荷種の相対的割合を、これら脂肪酸のうちの1種類以上を補充していない培地の中で産生される組み換えタンパク質の塩基性電荷種の量と比べて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のいずれか(その中には、これらの値の間に入る%が含まれる)だけ変化させる。
【0078】
別の一実施態様では、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のうちの1つ以上を補充した細胞培養培地は、その培地の中で増殖した組み換えタンパク質産生細胞系によって産生されるMan5%グリカン種の相対的割合を、これら脂肪酸のうちの1種類以上を補充していない培地の中で産生される組み換えタンパク質のMan5%グリカン種の量と比べて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のいずれか(その中には、これらの値の間に入る%が含まれる)だけ変化(例えば増加または減少)させる。
【0079】
さらに別の実施態様では、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸のうちの1つ以上を補充した細胞培養培地は、その培地の中で増殖した組み換えタンパク質産生細胞系によって産生されるG0%グリカン種の相対的割合を、これら脂肪酸のうちの1種類以上を補充していない培地の中で産生される組み換えタンパク質のG0%グリカン種の量と比べて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のいずれか(その中には、これらの値の間に入る%が含まれる)だけ変化(例えば増加または減少)させる。
【0080】
追加の実施態様では、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、ミリスチン酸のうちの1つ以上を補充した細胞培養培地は、その培地の中で増殖した組み換えタンパク質産生細胞系によって産生されるG0F%グリカン種の相対的割合を、これら脂肪酸のうちの1種類以上を補充していない培地の中で産生される組み換えタンパク質のG0F%グリカン種の量と比べて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のいずれか(その中には、これらの値の間に入る%が含まれる)だけ変化(例えば増加または減少)させる。
【0081】
E.エタノール
本明細書に記載した任意の哺乳動物細胞培養培地のさらに別の側面では、培地はエタノールを含有する。
【0082】
いくつかの実施態様では、培地(例えば基本培地または流加培地)の中に存在するエタノールの量として可能な範囲は、約0.001%~約4%(v/v)であり、例えば約0.001%~約0.01%(v/v)、約0.001%~約0.02%(v/v)、約0.001%~約0.05%(v/v)、約0.001%~約0.075%(v/v)、約0.001%~約0.09%(v/v)、約0.001%~約0.1%(v/v)、約0.001%~約0.15%(v/v)、約0.001%~約0.2%(v/v)、約0.001%~約0.25%(v/v)、約0.001%~約0.3%(v/v)、約0.05%~約0.075%(v/v)、約0.05%~約0.1%(v/v)、約0.05%~約0.15%(v/v)、約0.05%~約0.2%(v/v)、約0.05%~約0.25%(v/v)、約0.05%~約0.3%(v/v)、約0.1%~約0.15%(v/v)、約0.1%~約0.2%(v/v)、約0.1%~約0.25%(v/v)、約0.1%~約0.3%(v/v)、約0.1%~約0.4%(v/v)、約0.1%~約0.5%(v/v)、約0.25%~約0.5%(v/v)、約0.5%~約1.5%(v/v)、約0.75%~約1.75%(v/v)、約1%~約2%(v/v)、約1.25%~約2.25%(v/v)、約1.5%~約2.5%(v/v)、約1.75%~約2.75%(v/v)、約2%~約3%(v/v)、約2.25%~約3.25%(v/v)、約2.5%~約3.5%(v/v)、約2.75%~約3.75%(v/v)、約3%~約4%(v/v)が挙げられる。
【0083】
別の実施態様では、培地(例えば基本培地または流加培地)の中に存在するエタノールの量は、0.001%(v/v)、0.005%(v/v)、0.01%(v/v)、0.011%(v/v)、0.012%(v/v)、0.013%(v/v)、0.014%(v/v)、0.015%(v/v)、0.016%(v/v)、0.017%(v/v)、0.018%(v/v)、0.019%(v/v)、0.02%(v/v)、0.021%(v/v)、0.022%(v/v)、0.023%(v/v)、0.024%(v/v)、0.025%(v/v)、0.026%(v/v)、0.027%(v/v)、0.028%(v/v)、0.029%(v/v)、0.03%(v/v)、0.031%(v/v)、0.032%(v/v)、0.033%(v/v)、0.034%(v/v)、0.035%(v/v)、0.036%(v/v)、0.037%(v/v)、0.038%(v/v)、0.039%(v/v)、0.04%(v/v)、0.041%(v/v)、0.042%(v/v)、0.043%(v/v)、0.044%(v/v)、0.045%(v/v)、0.046%(v/v)、0.047%(v/v)、0.048%(v/v)、0.049%(v/v)、0.05%(v/v)、0.051%(v/v)、0.052%(v/v)、0.053%(v/v)、0.054%(v/v)、0.055%(v/v)、0.056%(v/v)、0.057%(v/v)、0.058%(v/v)、0.059%(v/v)、0.06%(v/v)、0.061%(v/v)、0.062%(v/v)、0.063%(v/v)、0.064%(v/v)、0.065%(v/v)、0.066%(v/v)、0.067%(v/v)、0.068%(v/v)、0.069%(v/v)、0.07%(v/v)、0.071%(v/v)、0.072、%(v/v)0.073%(v/v)、0.074%(v/v)、0.075%(v/v)、0.076%(v/v)、0.077%(v/v)、0.078%(v/v)、0.079%(v/v)、0.08%(v/v)、0.081%(v/v)、0.082%(v/v)、0.083%(v/v)、0.084%(v/v)、0.085%(v/v)、0.086%(v/v)、0.087%(v/v)、0.088%(v/v)、0.089%(v/v)、0.09%(v/v)、0.091%(v/v)、0.092%(v/v)、0.093%(v/v)、0.094%(v/v)、0.095%(v/v)、0.096%(v/v)、0.097%(v/v)、0.098%(v/v)、0.099%(v/v)、0.1%(v/v)、0.11%(v/v)、0.12%(v/v)、0.13%(v/v)、0.14%(v/v)、0.15%(v/v)、0.16%(v/v)、0.17%(v/v)、0.18%(v/v)、0.19%(v/v)、0.2%(v/v)、0.21%(v/v)、0.22%(v/v)、0.23%(v/v)、0.24%(v/v)、0.25%(v/v)、0.26%(v/v)、0.27%(v/v)、0.28%(v/v)、0.29%(v/v)、0.3%(v/v)、0.31%(v/v)、0.32%(v/v)、0.33%(v/v)、0.34%(v/v)、0.35%(v/v)、0.36%(v/v)、0.37%(v/v)、0.38%(v/v)、0.39%(v/v)、0.4%(v/v)、0.41%(v/v)、0.42%(v/v)、0.43%(v/v)、0.44%(v/v)、0.45%(v/v)、0.46%(v/v)、0.47%(v/v)、0.48%(v/v)、0.49%(v/v)、0.5%(v/v)、0.6%(v/v)、0.7%(v/v)、0.8%(v/v)、0.9%(v/v)、1%(v/v)、1.1%(v/v)、1.2%(v/v)、1.3%(v/v)、1.4%(v/v)、1.5%(v/v)、1.6%(v/v)、1.7%(v/v)、1.8%(v/v)、1.9%(v/v)、2%(v/v)、2.1%(v/v)、2.2%(v/v)、2.3%(v/v)、2.4%(v/v)、2.5%(v/v)、2.6%(v/v)、2.7%(v/v)、2.8%(v/v)、2.9%(v/v)、3%(v/v)、3.1%(v/v)、3.2%(v/v)、3.3%(v/v)、3.4%(v/v)、3.5%(v/v)、3.6%(v/v)、3.7%(v/v)、3.8%(v/v)、3.9%(v/v)、4%(v/v)のいずれか、またはそれ以上であり、これらの割合の間のあらゆる数値が含まれる。
【0084】
IV.本発明の方法
A.組み換えポリペプチドを産生させる方法
いくつかの側面では、本明細書において、操作された哺乳動物細胞から1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させる方法が提供される。この方法では、操作された哺乳動物細胞を、1種類以上の組み換えポリペプチドの産生に適した条件下にて、本明細書に記載した任意の哺乳動物細胞培養培地組成物の中で培養し;1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させる。
【0085】
組み換えポリペプチドを産生させるための組み換え哺乳動物細胞の培養は、本分野で周知である。本発明の細胞培養培地から産生させることのできるポリペプチドには制限がない。本明細書では、「ポリペプチド」という用語は、3個以上のアミノ酸がペプチド結合によって接合された鎖からなる分子;そのような鎖を2本以上含有する分子;そのような鎖を1本以上含んでいて、(例えばグリコシル化によって)さらに修飾されている分子を包含する。ポリペプチドという用語は、タンパク質を包含することを想定している。
【0086】
哺乳動物宿主細胞の中で発現させることのできる任意のポリペプチドを本発明に従って産生させることができる。ポリペプチドは、本発明の培地の中で産生された後、具体的な産物と使用する細胞系に応じ、細胞外に分泌されて細胞に結合するか、細胞内に留まる。ポリペプチド産物は、培地の上清から直接回収すること、または標準的な手続きによって細胞を溶解させた後に回収することができる。さらに別の実施態様では、本分野で知られている標準的な技術を利用して組み換えポリペプチドの単離と精製を実施する。そうした技術の非限定的な例に含まれるのは、サイズ排除クロマトグラフィ、プロテインAアフィニティクロマトグラフィ、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、混合モードクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィである。
【0087】
本発明の細胞培養培地によって産生されるポリペプチドの1つのクラスの非限定的な例は、組み換え抗体である。「抗体」という用語は最も広い意味で用いられ、この用語が特にカバーするのは、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、ナノボディで修飾された抗体、抗体のサブユニット、抗体誘導体、人工抗体、抗体とタンパク質の組み合わせ、十分に長くて望む生物活性を示す抗体フラグメントである。本明細書で用いるモノクローナル抗体として、ヒト抗体またはヒト化抗体が可能である。一実施態様では、組み換えポリペプチドはモノクローナル抗体であり、トラスツズマブ、ペルツズマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ナタリズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、ダクリズマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、パリビズマブ、アブシキシマブ、バシリキシマブ、イブリツモマブ、オマリズマブ、エクリズマブ、アブシキシマブ、アリロクマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ、カナキヌマブ、カプロマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、イダルシズマブ、イピリムマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、パリビズマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ラキシバクマブ、エクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、アラシズマブ、デノスマブ、ブロソズマブ、ロモソズマブ、スタムルマブ、アリロクマブ、アスクリンバクマブ、エノチクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、イクルクマブ、インクラクマブ、ネスバクマブ、オルチクマブ、ラムシルマブ、リヌクマブ、ベセンクマブ、ボコシズマブ、カプラシズマブ、デムシズマブ、エタラシズマブ、イダルシズマブ、ラルパンシズマブ、タドシズマブ、アデュカヌマブ、アチヌマブ、ファシヌマブ、フルラヌマブ、ガンテネルマブ、オピシヌマブ、バピヌズマブ、クレネズマブ、オザネズマブ、ポネズマブ、レファネズマブ、ソラネズマブ、タネズマブ、ベドリズマブからなる群より選択される。
【0088】
しかし細胞培養物と本発明の細胞培養培地を用いて抗体以外のポリペプチドも産生させることができる。それは例えば治療用ポリペプチドであり、その非限定的な例は、膜貫通タンパク質、受容体、ホルモン、増殖因子、プロテアーゼ、凝固タンパク質と抗凝固タンパク質、阻害タンパク質、インターロイキン、輸送因子、融合タンパク質などである。そのため本発明の細胞培養培地の中で産生されるポリペプチドの1つのクラスの別の非限定的な例は、治療用ポリペプチドである。一実施態様では、組み換えポリペプチドは治療用ポリペプチドであり、アバタセプト、アボボツリヌス毒素A、アフリベルセプト、アガルシダーゼβ、アルビグルチド、アルデスロイキン、アルグルコシダーゼα、アルテプラーゼ、Cathfloアクチバーゼ、アナキンラ、アスホターゼα、アスパラギナーゼ、ベカプレルミン、ベラタセプト、コラゲナーゼ、クロストリジウム・ヒストリチクムのコラゲナーゼ、ダルベポエチンα、デニロイキン、ジフチトクス、ドルナーゼα、デュラグルチド、エカランチド、エロスルファーゼα、エポエチンα、エタナーセプト、フィルグラスチム、ガルスルファーゼ、グルカルピダーゼ、イデュルスルファーゼ、インコボツリヌス毒素A、インターフェロンα-2b、インターフェロンα-n3、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b、インターフェロンγ-1b、ラロニダーゼ、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンβ、メトレレプチン、オクリプラスミン、オナボツリヌス毒素A、オプレルベキン、パリフェルミン、副甲状腺ホルモン、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンα-2a、リバビリン、ペグインターフェロンα-2b、ペグインターフェロンβ-1a、ペグロチカーゼ、ラスブリカーゼ、レテプラーゼ、リロナセプト、リマボツリヌス毒素B、ロミプロスチム、サルグラモスチム、セベリパーゼ、tbo-フィルグラスチム、テネクテプラーゼ、ziv-アフリベルセプトからなる群より選択される。
【0089】
いくつかの実施態様では、哺乳動物細胞の培養中に温度を変化させること、したがって所定の時点で開始する1回以上の温度シフトを含めることが有利である可能性がある。温度の変化/シフトは、温度の自発的なゆらぎを意味することはなく、意図的な少なくとも1℃、または少なくとも2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃いずれかの温度変化を意味し、2番目の温度を少なくとも1日間維持する。変化/シフトは、培養物の温度設定点を変えることによって実現できる。そのタイミングは、培養物の増殖状態、あらかじめ決めておいた培養開始後の日数、細胞の代謝要求性のいずれかに依存する。温度は、例えば培養開始後の約1~10日の期間にシフトさせることができる。いくつかの実施態様では、温度シフトは、細胞の増殖期になされるか、この期間の終わり近く、かつ組み換えタンパク質の産生期が始まる前になされる。変化は、培養容器の容積に応じ、迅速に起こったり、よりゆっくりと起こったりする可能性があり、数時間継続する。一例では、温度のそのようなシフトは、培養物の増殖期にあって密度が最大密度の約40~90%であるときに実施する。一例では、最初の温度は約33~約38℃であり、別の例では、最初の温度は約35~約37℃である。2番目の温度は、約28~約36℃であるか、約29~約35℃である。
【0090】
本発明の別の一実施態様では、1回以上のpHシフトを含めることにより哺乳動物細胞の培養中にpHを変化させることが有利である可能性がある。本発明のさらに別の側面では、温度のシフトをpHの1回以上のシフトと組み合わせることもできる。別の実施態様では、培地(例えば本明細書に記載した任意の哺乳動物細胞培養培地)のpHが発酵中に変化する可能性があり、例えばpHが約6.7~約7.3、例えば約6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3のいずれかになる可能性がある。
【0091】
本発明の細胞培養培地は、さまざまな哺乳動物細胞培養法で用いることができる。細胞の培養は、接着培養(例えば単層培養または懸濁培養)で実施することができる。細胞の大規模培養は、例えば小規模または大規模のバイオリアクターを用いた工業的バイオテクノロジーで確立されているさまざまな発酵プロセスで用いることができる。本発明の細胞培養培地を用いた連続的な細胞培養法と不連続な細胞培養法を利用することができる。知られている他のリアクター技術(例えば灌流技術など)も利用することができる。
【0092】
バッチ法も、1つの可能な実施態様である。バッチ細胞培養には、流加培養または単純なバッチ培養が含まれる。「流加細胞培養」という用語は、哺乳動物細胞と細胞培養培地が最初に培養溶液に供給され、追加の培養栄養素が培養プロセスの間に培養物に連続的に、または離散的な増分で供給され、培養の終了前に定期的に細胞および/または産物の回収がなされる、またはなされない細胞培養を意味する。「単純なバッチ培養」という用語は、培養プロセスが始まるときに細胞を培養するための全成分(その中には哺乳動物細胞と細胞培養培地が含まれる)が培養容器に供給される手続きに関係する。
【0093】
本発明の一実施態様によれば、培養物の供給は、流加プロセスにおいてなされる。そのような供給は、細胞が、培養プロセスの間に培地に欠乏する培地成分と栄養素を置き換えるのに有利である。典型的には、供給溶液は、アミノ酸、エネルギー源としての少なくとも1種類の炭化水素、微量元素、ビタミン、特定のイオンのいずれかを含んでいる。供給溶液は、細胞の要求性に応じて添加される。その要求性は、具体的な細胞系または細胞クローンと産物について定めたあらかじめ決めておいたスケジュールに基づくか、培養プロセスの間に測定される。培地が大きな体積に増えて希釈されることを避けるため、濃縮した供給溶液を用いることが特に有利である。いくつかの実施態様では、少なくとも2つの異なる供給溶液を用意することも有用である可能性がある。そうすると、異なる2種類以上のグループの栄養素と成分を独立に細胞に投与することができ、したがって所定の栄養素の最適な供給に関する供給条件をよりよく調節することが可能になる。
【0094】
このような細胞培養法から得られる産物を医薬組成物の調製に用いることができる。「医薬組成物」という用語は、哺乳動物(例えばヒト)に投与するのに適した、すなわち適合した組成物を示す。それに加え、本発明のタンパク質は、生物活性剤の他の諸成分(例えば医薬として許容可能な界面活性剤、レシピエント、基剤、希釈剤、ビヒクル)とともに投与することができる。さらに別の実施態様では、本発明の任意の方法で産生させた組み換えポリペプチドを凍結乾燥させ、静脈内投与、または非経口投与、または皮下投与のための製剤にすることができる。
【0095】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示した任意の方法を用いて本明細書に開示した任意の培地の中で哺乳動物細胞を培養すると、本明細書に開示した任意の方法を用いて本明細書に開示した任意の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される場合と比べて組み換えタンパク質の力価が増大する。いくつかの実施態様では、この方法による組み換えタンパク質の力価の増大は、本明細書に開示した任意の方法を用いて本明細書に開示した任意の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えタンパク質の力価と比べて、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2.5%~約5%、約2.5%~約7.5%、約5%~約7.5%、約5%~約10%、約1~約15%、約7.5%~約12.5%、約7.5%~約15%、約7.5%~約17.5%、約10%~約12.5%、約10%~約15%、約10%~約17.5%、約10%~約20%、約12.5%~約15%、約12.5%~約17.5%、約12.5%~約20%、約12.5%~約22.5%、約15%~約17.5%、約15%~約20%、約15%~約22.5%、約15%~約25%、約17.5%~約20%、約17.5%~約22.5%、約17.5%~約25%、約17.5%~約27.5%、約20%~約22.5%、約20%~約25%、約20%~約27.5%、約20%~約30%、約22.5%~約25%、約22.5%~約27.5%、約22.5%~約30%、約22.5%~約32.5%、約25%~約27.5%、約25%~約30%、約25%~約32.5%、約25%~約35%のいずれか、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%のうちの少なくとも1つになる(その中には、これらの%の間に入る値が含まれる)。
【0096】
B.組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルを変化させる方法
グリカン種は、治療用タンパク質(例えばmAb)の薬力学(PK)と薬物動態(PD)に大きな影響を与えることがわかっている。したがって本発明の別の側面では、本明細書において、遺伝子操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドのグリコシル化プロファイルを変化させる方法が提供される。いくつかの実施態様では、この方法は、哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、本明細書に記載した任意の細胞培養培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養し;その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを含んでいて、その1種類以上の組み換えポリペプチドは、本明細書に開示した任意の培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて変化したグリコシル化プロファイルを持つ。いくつかの実施態様では、「グリコシル化プロファイルを変化させる」は、組み換えポリペプチド上の特定のグリカン種の相対的な割合を増加させることを意味する。しかし別の実施態様では、「グリコシル化プロファイルを変化させる」という表現は、組み換えポリペプチド上の特定のグリカン種の相対的な割合を減少させることを意味する。組み換えポリペプチドが本明細書に開示した方法で産生されたとき、その組み換えポリペプチドに付加することのできる任意のグリカン種の相対的な割合を自由に変えることができる。
【0097】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載した任意の培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作されている哺乳動物細胞を培養することで、1種類以上のグリカン種の量を変化させた。グリカン種の非限定的な例に含まれるのは、組み換えポリペプチドに結合するマンノース-9-N-アセチルグリコサミン-2(Man9)、マンノース-8-N-アセチルグリコサミン-2(Man8)、マンノース-7-N-アセチルグリコサミン-2 (Man7)、マンノース-6-N-アセチルグリコサミン-2(Man6)、マンノース-5-N-アセチルグリコサミン-2(Man5)、マンノース-3-N-アセチルグリコサミン-2(Man3)、マンノース-3-N-アセチルグリコサミン-3、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4(G0)、マンノース-3 -N-アセチルグリコサミン-3-フコース、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-フコース(G0F)、マンノース-3-N-アセチルグリコサミン-4-ガラクトース-1(G1)、マンノース-3-N-アセチルグリコサミン-4-ガラクトース-2(G2)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース(G1F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース(G2F)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-1-フコース1-N-アセチルノイラミニック-1(G1F-NANA)、マンノース-3-N-アセチルグリコサミン-4-ガラクトース-2-フコース-1-N-アセチルノイラミニック-1(G2F-NANA)、マンノース-3-N-アセチルグルコサミン-4-ガラクトース-2-フコース-1-N-アセチルノイラミニック-2(G2F-2NANA)である。
図1に、主要なN-グリカン結合種の模式図を示す。
【0098】
組み換えポリペプチド上のグリカン種の変化は、本分野で知られている任意の手段で分離して測定することができる。方法の非限定的な例に含まれるのは、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)、順相HPLC(NP)、親水性相互作用液体クロマトグラフィ(HILIC)、イオン交換HPLC(IEX)、弱陰イオン交換HPLC(WAX-HPLC)、両性イオンスルホベタイン(ZIC- HILIC)、多孔性グラファイトHPLC(PGC)、キャピラリー電気泳動レーザー誘導蛍光(CE-LIF)、マトリックス支援脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)、タンデム質量分析(MS/MS)である。
【0099】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示されている培養法は、組み換えポリペプチド上の全グリカン種に規格化すると、すなわち組み換えポリペプチド上の全グリカン種に対する特定のグリカン種の相対的な割合を減少させる。例えばいくつかの実施態様では、この方法により、組み換えポリペプチド上の1種類以上の特定のグリカン種の変化(例えば減少)が、本明細書に記載した方法を用いて本明細書に開示した任意の培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドのグリカン種の量と比べて、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2.5%~約5%、約2.5%~約7.5%、約5%~約7.5%、約5%~約10%、約1~約15%、約7.5%~約12.5%、約7.5%~約15%、約7.5%~約17.5%、約10%~約12.5%、約10%~約15%、約10%~約17.5%、約10%~約20%、約12.5%~約15%、約12.5%~約17.5%、約12.5%~約20%、約12.5%~約22.5%、約15%~約17.5%、約15%~約20%、約15%~約22.5%、約15%~約25%、約17.5%~約20%、約17.5%~約22.5%、約17.5%~約25%、約17.5%~約27.5%、約20%~約22.5%、約20%~約25%、約20%~約27.5%、約20%~約30%、約22.5%~約25%、約22.5%~約27.5%、約22.5%~約30%、約22.5%~約32.5%、約25%~約27.5%、約25%~約30%、約25%~約32.5%、約25%~約35%のいずれか、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%のうちの少なくとも1つになる(その中には、これらの%の間に入る値が含まれる)。いくつかの実施態様では、グリカン種は、Man5、G0、G0Fのいずれかである。
【0100】
いくつかの実施態様では、本明細書に提示されている培養法は、組み換えポリペプチド上の全グリカン種に規格化すると、すなわち組み換えポリペプチド上の全グリカン種に対する特定のグリカン種の相対的な割合を増加させる。例えばさらに別の実施態様では、この方法により、1種類以上の特定の組み換えポリペプチドの増加が、本明細書に記載した方法を用いて本明細書に開示した任意の培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドのグリカン種の量と比べて、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2.5%~約5%、約2.5%~約7.5%、約5%~約7.5%、約5%~約10%、約1~約15%、約7.5%~約12.5%、約7.5%~約15%、約7.5%~約17.5%、約10%~約12.5%、約10%~約15%、約10%~約17.5%、約10%~約20%、約12.5%~約15%、約12.5%~約17.5%、約12.5%~約20%、約12.5%~約22.5%、約15%~約17.5%、約15%~約20%、約15%~約22.5%、約15%~約25%、約17.5%~約20%、約17.5%~約22.5%、約17.5%~約25%、約17.5%~約25.7%、約20%~約22.5%、約20%~約25%、約20%~約27.5%、約20%~約30%、約22.5%~約25%、約22.5%~約27.5%、約22.5%~約30%、約22.5%~約32.5%、約25%~約27.5%、約25%~約30%、約25%~約32.5%、約25%~約35%のいずれか、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%のうちの少なくとも1つになる(その中には、これらの%の間に入る値が含まれる)。
【0101】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載した方法に従って本明細書に開示した任意の培地の中で1種類以上の組み換えポリペプチドを産生するように遺伝子操作された哺乳動物細胞を培養すると、末端マンノースグリカン種の量が、ポリペプチド上の全グリカン種の総和と比べて変化する(減少する)。本明細書では、「末端マンノースグリカン種」という用語は、マンノース-5-N-アセチルグルコサミン-2(Man5)部分、マンノース-6-N-アセチルグルコサミン-2(Man6)部分、マンノース-7-N-アセチルグルコサミン-2(Man7)部分、マンノース-8-N-アセチルグルコサミン-2(Man8)部分、マンノース-9-N-アセチルグルコサミン-2(Man9)部分のうちの1つ以上を意味する。
【0102】
そのため本明細書に開示した任意の細胞培養培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)を利用して本明細書に記載した任意の方法で産生させた組み換えポリペプチドについて、ポリペプチド上のグリカン種の総和に対する末端マンノースグリカン種の比を変化(例えば減少)させることができ、その割合は、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、約45%~約55%、約47.5%~約52.5%のいずれか、例えば、約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%のいずれか、またはそれ以上である。
【0103】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載した方法に従って本明細書に開示した任意のエタノール含有培地の中で1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるように遺伝子操作された哺乳動物細胞を培養すると、ポリペプチド上のグリカン種の総和と比較して、G1F、G2F、G0Fのうちの任意の1つの量が変化する。そのため本明細書に開示した任意の細胞培養培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)を利用して本明細書に記載した任意の方法で産生させた組み換えポリペプチドについて、ポリペプチド上のグリカン種の総和に対するG1Fグリカン種、G2Fグリカン種、G0Fグリカン種のうちの任意の1つの比を変化させることができ、その割合は、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、約45%~約55%、約47.5%~約52.5%のいずれか、例えば、約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%のいずれか、またはそれ以上である。
【0104】
C.高分子量種または低分子量種を変化させる方法
さらに別の側面では、本明細書において、遺伝子操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドの高分子量種または低分子量種の量を変化(例えば減少)させる方法が提供される。この方法は、哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、本明細書に開示した任意の細胞培養培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養し;その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを伴っていて、その組み換えポリペプチドは、本発明の任意の細胞培養培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて高分子量種または低分子量種の量が減少している。
【0105】
本発明の文脈で用いる「高分子量種」(HMWS)は、組み換えポリペプチド(オリゴマー、例えば二量体、三量体、四量体、五量体なども含む)の2つ以上のサブユニットからなる任意の粒子の発達を意味する。HMWSは、3個以上のサブユニット、例えば3個、4個、5個、6個、7個、8個いずれかの個数のサブユニット、またはそれ以上の個数のサブユニットで構成することもできる。HMWSは、さまざまなサイズにすることができ、そのサイズは、完全に組み立てられた組み換えポリペプチドの質量よりも大きな質量を有する。
【0106】
本発明の文脈で用いる「低分子量種」(LMWS)は、組み換えポリペプチド(オリゴマー、例えば二量体、三量体、四量体、五量体なども含む)の1つ以上のサブユニットからなる任意の粒子の発達を意味する。LMWSは、完全に組み立てられていない、および/または折り畳まれていないポリペプチドフラグメントを含むことができる。LMWSは、さまざまなサイズにすることができ、そのサイズは、完全に組み立てられた組み換えポリペプチドの質量よりも小さな質量を有する。
【0107】
組み換えポリペプチドの高分子量種または低分子量種の量は、本分野で知られている任意の手段で測定することができる。手段の非限定的な例は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)、分析用超遠心分離(AUC)、動的または静的な光散乱分光法(DLS)、示差走査熱量測定法(DSC)、非対称型流動場分画法(AF4)である。
【0108】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示した細胞培養法は、検出されるポリペプチドのあらゆる分子量バリアントと比べたHMW種の量を、本明細書に記載した方法を用いて本明細書に開示した任意の培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドのHMWの量と比べて変化(例えば減少)させる割合が、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2.5%~約5%、約2.5%~約7.5%、約5%~約7.5%、約5%~約10%、約1~約15%、約7.5%~約12.5%、約7.5%~約15%、約7.5%~約17.5%、約10%~約12.5%、約10%~約15%、約10%~約17.5%、約10%~約20%、約12.5%~約15%、約12.5%~約17.5%、約12.5%~約20%、約15%~約17.5%、約15%~約20%、約17.5%~約20%、約17.5%~約22.5%、約17.5%~約25%、約20%~約22.5%、約20%~約25%、約22.5%~約25%のいずれか、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%のうちの少なくとも1つ、またはそれ以上である(その中には、これらの%の間に入る値が含まれる)。
【0109】
別の実施態様では、本明細書に開示した細胞培養法は、検出されるポリペプチドのあらゆる分子量バリアントと比べたLMW種の量を、本明細書に記載した方法を用いて本明細書に開示した任意の培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドのLMWの量と比べて変化(例えば減少)させる割合が、約1%~約5%、約2.5%~約7.5%、約5%~約7.5%、約5%~約10%、約7.5%~約12.5%、約7.5%~約15%、約7.5%~約17.5%、約10%~約15%、約10%~約17.5%、約10%~約20%、約12.5%~約17.5%、約12.5%~約20%、約12.5%~約22.5%、約15%~約20%、約15%~約22.5%、約15%~約25%、約17.5%~約22.5%、約17.5%~約25%、約17.5%~約27.5%、約20%~約25%、約20%~約27.5%、約20%~約30%、約22.5%~約27.5%、約22.5%~約30%、約22.5%~約32.5%、約25%~約30%、約25%~約32.5%、約25%~約35%、約27.5%~約37.5%、約30%~約40%、約32.5%~約44.5%、約35%~約45%、約37.5%~約47.5%、約40%~約50%、約42.5%~約52.5%、約45%~約55%、約47.5%~約57.5%、約50%~約60%、約52.5%~約62.5%、約55%~約65%、約57.5%~約67.5%、約60%~約70%、約62.5%~約72.5%、約65%~約75%のいずれか、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%のうちの少なくとも1つ、またはそれ以上である(その中には、これらの%の間に入る値が含まれる)。
【0110】
D.酸性または塩基性の電荷種の量を変化させる方法
さらに別の側面では、本明細書において、遺伝子操作された哺乳動物細胞によって産生される1種類以上の組み換えポリペプチドの酸性または塩基性の電荷種の量を変化(例えば減少)させる方法が提供される。この方法は、哺乳動物細胞を、その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるのに適した条件下にて、本明細書に開示した任意の細胞培養培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養し;その1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させることを伴っていて、その組み換えポリペプチドは、本発明の任意の細胞培養培地の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドと比べて酸性または塩基性の電荷種の量が減少している。
【0111】
本明細書では、「酸性電荷種」または「酸性電荷バリアント」は、産生された組み換えタンパク質の全集団の全ポリペプチド電荷バリアントと比較したときの、哺乳動物細胞培養物の中で産生された酸性電荷を有する組み換えタンパク質の割合を意味する。同様に、本明細書では、「塩基性電荷種」または「塩基性電荷バリアント」は、産生された組み換えタンパク質の全集団の全ポリペプチド電荷バリアントと比較したときの、哺乳動物細胞培養物の中で産生された塩基性電荷を有する組み換えタンパク質の割合を意味する。
【0112】
いくつかの実施態様では、本明細書に開示した培養法法は、検出されるすべてのポリペプチド電荷バリアントと比べたときの酸性電荷種の量を、本明細書に記載した方法を用いて本明細書に開示した任意の培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドの酸性電荷種の量と比べて変化(例えば減少)させる割合が、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2.5%~約5%、約2.5%~約7.5%、約5%~約7.5%、約5%~約10%、約1~約15%、約7.5%~約12.5%、約7.5%~約15%、約10%~約12.5%、約10%~約15%、約12.5%~約15%のいずれか、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%のうちの少なくとも1つ、またはそれ以上である(その中には、これらの%の間に入る値が含まれる)。
【0113】
別の実施態様では、本明細書に開示した培養法は、検出されるすべてのポリペプチド電荷バリアントと比べたときの塩基性電荷種の量を、本明細書に記載した方法を用いて本明細書に開示した任意の培地(例えばリチウム含有細胞培養培地、および/またはエタノール含有細胞培養培地、および/または脂肪酸含有細胞培養培地)の中で培養されない哺乳動物細胞によって産生される組み換えポリペプチドの塩基性電荷種の量と比べて変化(例えば減少)させる割合が、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2.5%~約5%、約2.5%~約7.5%、約5%~約7.5%、約5%~約10%、約1~約15%、約7.5%~約12.5%、約7.5%~約15%、約10%~約12.5%、約10%~約15%、約12.5%~約15%のいずれか、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%のうちの少なくとも1つ、またはそれ以上である(その中にはこれらの%の間に入る値が含まれる)。
【0114】
V.キット
それに加え、本発明は、本明細書に開示した任意の方法で哺乳動物細胞を培養するためのキットを含んでいる。このキットは、哺乳動物細胞培養基本培地および/または哺乳動物細胞培養流加培地のうちの1つ以上を含有することができる。さらに、このキットは、1つのリチウムイオン供給源、エタノール、1種類以上の脂肪酸のうちの1つ以上をさらに含有することができる。このキットは、キットを使用するための指示書(例えば本明細書に開示した任意の哺乳動物細胞培養培地を作製するための指示と、培地を用いて哺乳動物細胞を培養する(例えば1種類以上の組み換えポリペプチドを産生させるように遺伝子操作された哺乳動物細胞を培養する)ための指示)も含むことができる。
【0115】
本明細書全体を通じ、与えられている最大値のあらゆる制限には、より小さなあらゆる数値制限が、そのようなより小さな数値制限が本明細書に明示的に書かれているかのように含まれる。本明細書全体を通じ、与えられている最小値のあらゆる制限には、より大きなあらゆる数値制限が、そのようなより大きな数値制限が本明細書に明示的に書かれているかのように含まれる。本明細書全体を通じ、与えられているあらゆる数値範囲は、それよりも狭くてそのようなより広い数値範囲に入るすべての数値範囲が、そのようなより狭い数値範囲が本明細書にすべて明示的に書かれているかのように含まれる。
【0116】
本発明は、以下の実施例を参照することによってさらによく理解できる。実施例は、説明のために提示されているのであり、制限することは意図していない。
【実施例0117】
実施例1:細胞培養培地にリチウムを添加すると組み換えポリペプチドの産生と品質が向上する
この実施例では、培地へのリチウムの添加が組み換えポリペプチドの産生に及ぼす効果を示す。
【0118】
I. 細胞毒性の測定
1回だけボーラスを添加することにより、CHO.DXB11細胞に対する塩化リチウムの細胞毒性を調べた。4 mlのCHO細胞を6×106個/mlの細胞密度で6ウエルの深いプレートに播種し、150 rpmで混合し、塩化リチウムを5 mM~250 mMの作用濃度で添加した。細胞増殖速度と細胞生存率は、1回だけ添加した塩化リチウムが10 mMを超えたときにマイナスの影響を受けた。
【0119】
II. マイクロスケールのバイオリアクターを用いてリチウムを添加したモノクローナル抗体の産生
LiClがmAbの特性を変化させるかどうかを調べるため、特性が完全に明確にされている合成流加培地にLiClを組み込むとともに、流加プロセスにおいてマイクロ-(作動容積15 ml)バイオリアクターを用いてLiClを毎日供給した。
【0120】
材料と方法
モノクローナル抗体1(mAb 1)は、組み換えDNA技術を利用して産生させたモノクローナル抗体である。発現ベクターは完全に合成したものであり、強力な構成的プロモーターによって調節される重鎖遺伝子配列と軽鎖遺伝子配列の両方を有する。遺伝子配列はDNAシークエンシングによって確認した。発現ベクターを制限酵素によって直線状にし、電気穿孔によってCHO.DXB11細胞の中に安定にトランスフェクトした。
【0121】
遺伝子増幅の後に単一細胞クローニングを実施した。選択された単一細胞クローンを増殖させて低温で保管した。
【0122】
Thermo Ultimate 3000 Series HPLCを用い、検出波長を280 nmに設定して力価を測定した。移動相Aはリン酸ナトリウムと塩化ナトリウムを含有しており、移動相Bは酢酸と塩化マグネシウムを含有していた。Applied Biosystems社のPOROS A20カラムを使用し、Thermo Chromeleonソフトウエアを用いて分析を実施した。精製した抗体を定量のための基準として使用した。
【0123】
Thermo Ultimate 3000 Series HPLCとThermo Q Exactive質量分析器を用いてグリコシル化種を測定した。移動相Aはギ酸とトリフルオロ酢酸を含む水からなり、移動相Bはギ酸とトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルからなる。Agilent社のPLRP-S 1000 A 5μΜカラムを使用し、Thermo ChromeleonソフトウエアにThermo Protein Deconvolutionソフトウエアを組み合わせて用いて分析を実施した。
【0124】
LiClを毎日供給してバイオリアクターの作用濃度を0.11 mM~1.11 mMに増加させた。細胞培養物内のリチウムの累積濃度(細胞回収時の容器内の濃度)の計算値は、1 mM~10 mMの範囲であった。バイオリアクターの物理的条件は、pHを7.0±0.2に、溶けた酸素を空気飽和の30%に、温度を対数細胞増殖期の間は37℃または35℃に維持し、細胞産生期の間は31℃にシフトさせた(温度は、生存細胞の密度が最大値に到達した1日前にシフトさせた)。基本培地と流加培地は完全に合成したものであり、動物由来の成分を含有しないことが化学的に明確にされていた。
【0125】
結果
リチウムは、使用した高濃度で抗体の力価を増大させることが示された(
図2)。より大きな用量のリチウムは、力価をベースラインと比べて21%超増大させた。さらに、より大きな濃度のリチウムは、Man5グリカン種を13%超減少させた(
図2)。
【0126】
III. 実験計画(DOE)研究でマイクロスケールのバイオリアクターを用いてリチウムを添加したモノクローナル抗体の産生
JMP統計ソフトウエア(World Wide Web.jmp.com/en_us/home.html)を用いてカスタムDOE設計で作成した実験計画(DOE)でリチウムを用いた。12日間の流加プロセスにおいてリチウムを毎日供給し、バイオリアクターの作用濃度を0.5 mMまたは1 mMだけ増加させた。標準的な最小自乗法を利用して応答モデルを作り、リチウム補充からの応答の有意性を調べた。補充した他の諸成分との潜在的な相互作用も考慮した。
【0127】
図3は、DOE分析の結果を示している。力価、Man5種%、G0種%、HMW種%、LMW種%、酸性種%、塩基性種%を評価した。予測プロファイルは、個々の因子が変化するにつれてモデルがいかに変化するかを示していて、これら因子の変化に対するモデルの感度が評価される。下記の表1に示したように、1 mMのリチウムを添加すると力価が20%超増加し、Man5グリカン種が6%超減少し、高分子量種と低分子量種がそれぞれ9%超と46%減少し、酸性電荷バリアントと塩基性電荷バリアントもそれぞれ9%超と3%減少した。
【表1】
【0128】
IV. 代わりの変数を用いた実験計画(DOE)研究でマイクロスケールのバイオリアクターを用いてエタノールを添加したモノクローナル抗体の産生
代わりのプロセス条件を利用し、上に記載した実験計画でリチウムを用いた。物理的条件は、温度とpH設定点を変えることによって変化させた。供給調製物を変更し、追加のアミノ酸と微量元素が含まれるようにした。13日間の流加プロセスにおいてリチウムを毎日供給し、バイオリアクターの作用濃度を0.5 mMまたは1 mMだけ増加させた。標準的な最小自乗法を利用して応答モデルを作り、リチウム補充からの応答の有意性を調べた。補充した他の諸成分との潜在的な相互作用も考慮した。
【0129】
結果を
図4に示す。力価、Man5種%、G0種%、G0F種%、G1F種%、G2F種%、HMW種%、LMW種%、酸性種%、塩基性種%を評価した。予測プロファイルから抜き出した応答値の変化を下記の表2に示す。リチウムは、1 mMの濃度では、ベースラインと比較して力価を17%近く増加させ、Man5グリカンバリアントを26%超減少させ、高分子量種と低分子量種をそれぞれ12%超と61%超減少させ、酸性と塩基性の電荷バリアントを4%超減少させた。
【表2】
【0130】
合計48個の独立なバイオリアクター条件を使用し、上記の2つの分析からのDOE実験の結果を合わせて1つの予測モデルにした。データセットを組み合わせることで、信頼区間が確実になり、p値が小さくなるため、応答の有意性がより大きくなる。この組み合わせデータに関する予測応答プロファイルを
図5に示すとともに、予測プロファイルから抜き出した応答値を下記の表3に示す。この表に示したように、リチウムは、1 mMの濃度では、力価を20%近く増加させ、Man5グリカンバリアントを14%超減少させ、高分子量種と低分子量種をそれぞれ10%超と52%超減少させ、酸性と塩基性の電荷バリアントをそれぞれ6%超と3%減少させた。
【表3】
【0131】
V. リチウム補充培地を利用した異なるモノクローナル抗体の産生
モノクローナル抗体2(mAb 2)は、組み換えDNA技術を利用して産生させたモノクローナル抗体である。発現ベクターは完全に合成したものであり、強力な構成的プロモーターによって調節される重鎖遺伝子配列と軽鎖遺伝子配列の両方を有する。遺伝子配列はDNAシークエンシングによって確認した。発現ベクターを制限酵素によって直線状にし、電気穿孔によってCHO.DG44細胞の中に安定にトランスフェクトした。単一細胞クローニングを2回実施した。単一細胞クローンを増殖させて低温で保管した。
【0132】
モノクローナル抗体#2(mAb 2)を産生する異なるCHO宿主(CHO DG44)を用いてリチウムを調べた。細胞の培養とモノクローナル抗体の産生は上記のようにして実施した。13日間の流加プロセスにおいて細胞をマイクロスケールのバイオリアクターの中で増殖させ、リチウムを毎日供給してバイオリアクターの濃度を0.11 mM(低Li)、0.44 mM(中Li)、1.11 mM(高Li)だけ増加させた。結果は、リチウムを細胞培養培地の中に補充するとMan6%グリカンのレベルがベースラインと比べて29%低下し(
図6)、Man5%グリカンのレベルが12%低下する(
図6)ことを示していた。さらに、より大きな濃度のリチウムでは、高分子量種がベースラインと比べて24%減少した(
図6)。
【0133】
実施例2:細胞培養培地にエタノールを添加すると組み換えポリペプチドの産生が向上する
以前、直線状低密度ポリエチレンに基づく廃棄可能なバイオリアクターシステムの中でコレステロール依存性NS0細胞を培養するため、エタノールをベースとしたコレステロールサプリメントが開発された。エタノールをベースとしたこのサプリメントは、コレステロールと、オレイン酸と、リノレン酸を含有していた(Tao他、Biotechnol Lett、2012年;第34巻(8):1453~1458ページ)。本実施例では、さまざまな脂肪酸の可溶化剤としてエタノールを使用し、mAb産物の産生を調べた。
【0134】
I. 細胞毒性の測定
CHO.DXB11細胞に対するエタノール細胞毒性を、毎日エタノールを供給することによって調べた。4 mlのCHO細胞を3×106個/mlの細胞密度で6ウエルの深いプレートに播種し、150 rpmで混合し、0.1~0.4%(v/v)の範囲のエタノールを1日1回供給した。細胞増殖速度と細胞生存率は、毎日供給するエタノールが0.3%v/vを超えたときにマイナスの影響を受けた。
II. マイクロスケールのバイオリアクターを用いてエタノールを添加したモノクローナル抗体の産生
エタノールがmAbの特性を変化させるかどうかを調べるため、特性が完全に明確にされている合成流加培地にエタノールを組み込むとともに、流加プロセスにおいてマイクロ-(作動容積15 ml)バイオリアクターを用いてエタノールを毎日供給した。
【0135】
材料と方法:
mAb 1に関して上に説明したようにして抗体を産生させた。
【0136】
細胞系Aは、mAb 1を産生するCHO.DXB11由来のクローンである。細胞系Bは、mAb 1を産生する異なるCHO.DXB11由来のクローンである。発現カセットは、これら2つの細胞系で同じである。
【0137】
マイクロスケールのバイオリアクターを用いてエタノールを毎日0.0%または0.057%v/v供給し、2つの異なる細胞クローンにmAb 1を産生させた。細胞培養物内のエタノールの累積濃度(細胞回収時の容器内の濃度)の計算値は、0.0%~0.51%v/vの範囲であった。バイオリアクターの物理的条件は、pHを7.0±0.2に、溶けた酸素を空気飽和の30%に、温度を対数細胞増殖期の間は35℃に維持し、細胞産生期の間は温度を31℃にシフトさせた(温度は、生存細胞の密度が最大値に到達した1日前にシフトさせた)。基本培地と流加培地は完全に合成したものであり、動物由来の成分を含有しないことが化学的に明確にされていた。
【0138】
結果
エタノールを補充すると、グリコシル化プロファイルが変化すること、高分子量種と低分子量種が変化すること、酸性と塩基性の電荷種が変化することが観察された。
図7と
図8に示したように、エタノールは、使用した両方の細胞系でMan5種%を全体として減少させたのに対し、G0%グリカン種とG0F%グリカン種に対する効果は細胞系によって異なっていた(
図7と
図8)。さらに、エタノールは、全体としてG1F%とG2F%を増加させたが、使用した両方の細胞系で増加の様子は異なっていた(
図7と
図8)。さらに、エタノールは、調べた両方の細胞系で検出された全電荷種と比べると、酸性電荷バリアントの量を減少させたのに対し、塩基性電荷の相対的な割合をわずかに増加させた(
図7と
図8)。
【0139】
III. 実験計画(DOE)研究でマイクロスケールのバイオリアクターを用いてエタノールを添加したモノクローナル抗体の産生
JMP統計ソフトウエア(World Wide Web.jmp.com/en_us/home.html)を用いてカスタムDOE設計で作成した実験計画(DOE)でリチウムを用いた。標準的な最小自乗法を利用して応答モデルを作り、リチウム補充からの応答の有意性を調べた。補充した他の諸成分との潜在的な相互作用も考慮した。マイクロスケールのバイオリアクターを用いてエタノールを毎日0.0%~0.1%供給した。
図9は、力価、Man5種%、G0種%、酸性種%、塩基性種%の予測応答プロファイルであり、そのそれぞれの応答値の変化を下記の表4に示す。
【表4】
【0140】
IV. バッチ-スケールのバイオリアクターを用いたエタノールの添加
材料と方法:
mAb 1に関して上に説明したようにして抗体を産生させた。
【0141】
エタノールを0.072%v/v(低エタノール)または0.144%v/v(高エタノール)で毎日供給した。細胞培養物内のエタノールの累積濃度(細胞回収時の容器内の濃度)の計算値は、0.79%~1.58%v/vの範囲であった。バイオリアクターの物理的条件は、pHを7.0±0.2に、溶けた酸素を空気飽和の30%に、温度を対数細胞増殖期の間は35℃に維持し、細胞産生期の間は温度を31℃にシフトさせた(温度は、生存細胞の密度が最大値に到達した1日前にシフトさせた)。基本培地と流加培地は完全に合成したものであり、動物由来の成分を含有しないことが化学的に明確にされていた。
【0142】
結果
図10に示したように、高濃度のエタノールでは、Man5グリカン種とG0グリカン種がより少なく、G1Fグリカン種とG2Fグリカン種がより多く、高分子量種と低分子量種がより少なくなった。
【0143】
V. ベンチ-スケールのバイオリアクターを用いたエタノールの添加と2つの異なる供給調製物
材料と方法:
mAb 1に関して上に説明したようにして抗体を産生させた。
【0144】
エタノールを0.0%~0.018%v/vで毎日供給した。細胞培養物内のエタノールの累積濃度(細胞回収時の容器内の濃度)の計算値は、0.0%~0.2%v/vであった。バイオリアクターの物理的条件は、pHを7.0±0.2から6.8±0.1にシフトした状態に、溶けた酸素を空気飽和の30%に、温度を35℃の一定値に維持した。基本培地と流加培地は完全に合成したものであり、動物由来の成分を含有しないことが化学的に明確にされていた。
【0145】
調製物#1と#2で同じ基本培地を使用した。供給調製物#1と#2は組成が似ており、同じタイプと量のアミノ酸とビタミンを含んでいた。塩と金属イオンのタイプと濃度がわずかに異なっていた。どちらの供給物も完全に合成したものであり、動物由来の成分を含有しないことが化学的に明確にされていた。
【0146】
結果
図11に示したように、エタノールを調製物1に補充すると、グリカン種Man5、G1F、G2Fとともに塩基性電荷バリアントが増加した。逆に、この組み合わせでは、グリカン種G0とG0Fとともに酸性電荷バリアントが減少した。エタノールを調製物2に補充すると、グリカン種Man5、G0、G1Fは減少したが、グリカン種G0FとG2Fが増加するとともに、酸性電荷バリアントの量が増加した(
図11)。
【0147】
III. ミクロスケールのバイオリアクターを用いてエタノールを添加した異なるモノクローナル抗体の産生
材料と方法:
mAb 2に関して上に説明したようにして抗体を産生させた。この細胞系は、mAb 2を産生するCHO.DG44由来のクローンである。
【0148】
エタノールを0.0%~0.15%v/vで毎日供給した。細胞培養物内のエタノールの累積濃度(細胞回収時の容器内の濃度)の計算値は、0.0%~1.35%v/vであった。バイオリアクターの物理的条件は、pHを7.0±0.1から6.8±0.1にシフトした状態に、溶けた酸素を空気飽和の30%に、温度を35℃の一定値に維持した。基本培地と流加培地は完全に合成したものであり、動物由来の成分を含有しないことが化学的に明確にされていた。
【0149】
結果
図12に示したように、エタノールの濃度がより大きいと、グリカン種Man5とG0Fが減少し、グリカン種G0、G1F、G2Fが増加し、高分子量種が減少した。
【0150】
エタノールを補充することで、グリコシル化プロファイルと、抗体の凝集と、酸性と塩基性の電荷バリアントが変化した。これらの効果は、細胞系、および/またはmAb産物、および/または供給調製物が異なると違っていることがときどきあった。
【0151】
たいていの場合にエタノールはMan5%、G0%、G0F%を減少させ、成熟グリカン種G1F%とG2F%を増加させた。
【0152】
実施例3:脂肪酸を細胞培養培地に添加すると組み換えポリペプチドの産生が改善される
外来性脂肪酸を補充すると細胞内のエネルギー消費が低下する可能性がある。なぜならアセチル-CoAがマロニル-CoA(細胞内脂肪酸の主要な建築ブロック)に変換されるときにアデノシン三リン酸(ATP)が消費されるからである。さらに、細胞膜は長さがC16とC18のリン脂質で構成されているため、脂肪酸を補充すると膜の完全性が強化される可能性がある。
【0153】
I. 細胞毒性の測定
CHO.DXB11細胞に対する脂肪酸の細胞毒性を、脂肪酸を毎日供給することによって調べた。4 mlのCHO細胞を細胞密度4×106個/mlで6ウエルの深いプレートに播種し、150 rpmで混合し、脂肪酸を毎日供給した。脂肪酸は、エタノールに溶かして1日1回供給し、プレートのウエル内の濃度を10μMから160μMに上昇させた。細胞増殖速度と細胞生存率は、個々の脂肪酸に応じて異なるレベルでマイナスの影響を受けた。オレイン酸、リノール酸、リノレン酸は、約40μMの濃度で毎日供給すると有毒になった。ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸は、約80μMの濃度で毎日供給すると有毒になった。コレステロールは、約50μMの濃度で毎日供給すると有毒になり始めた。
【0154】
II. ベンチ-スケールのバイオリアクターを用いたオレイン酸の添加
材料と方法:
mAb 1に関して上に説明したようにして抗体を産生させた。
【0155】
流加培地に脂肪酸を補充し、脂肪酸がmAbの特性を変化させるかどうかを調べた。流加培地は、流加プロセスにおいてベンチ-スケール(作動容積2l)のバイオリアクターを用いて毎日供給した。オレイン酸を毎日供給してバイオリアクターの作用濃度を40μMだけ上昇させた。細胞培養物内のオレイン酸の累積濃度(細胞回収時の容器内の濃度)の計算値は、440μMであった。ベースラインの測定に用いた培地は、脂肪酸もエタノールも含有していなかった。
【0156】
バイオリアクターの物理的条件は、pHを7.0±0.2に、溶けた酸素を空気飽和の30%に、温度を対数細胞増殖期の間は35℃に維持し、細胞産生期の間は温度を29℃にシフトさせた(温度は、生存細胞の密度が最大値に到達した1日前にシフトさせた)。基本培地と流加培地は完全に合成したものであり、動物由来の成分を含有しないことが化学的に明確にされていた。
【0157】
結果
図13に示したように、培地にオレイン酸を添加するとモノクローナル抗体の力価が大きくなり、グリカン種Man5、G0、G0Fが減少し、グリカン種G1FとG2Fが増加し、高分子量種が減少し、酸性電荷バリアントが減少した。
【0158】
III. 異なる物理的条件と供給条件でベンチ-スケールのバイオリアクターを用いたオレイン酸の添加
材料と方法:
mAb 1に関して上に説明したようにして抗体を産生させた。
【0159】
エタノールを補充した培地にさらに脂肪酸を補充し、脂肪酸がmAbの特性を変化させるかどうかを調べた。流加培地は、流加プロセスにおいてベンチ-スケール(作動容積2l)のバイオリアクターを用いて毎日供給した。オレイン酸を毎日供給してバイオリアクターの作用濃度を40μMだけ上昇させた。細胞培養物内のオレイン酸の累積濃度(細胞回収時の容器内の濃度)の計算値は、440μMであった。ベースラインの測定に用いた培地は、エタノールは含有していたが、脂肪酸は含有していなかった。
【0160】
バイオリアクターの物理的条件は、pHを7.0±0.2に、溶けた酸素を空気飽和の30%に、温度を対数細胞増殖期の間は35℃に維持し、細胞産生期の間は温度を31℃にシフトさせた(温度は、生存細胞の密度が最大値に到達した1日前にシフトさせた)。基本培地と流加培地は完全に合成したものであり、動物由来の成分を含有しないことが化学的に明確にされていた。
【0161】
結果
図14に示したように、オレイン酸を添加するとモノクローナル抗体の力価が減少し、グリカン種Man5、G0、G1F、G2Fが減少し、グリカン種G0Fが増加し、高分子量種と低分子量種が増加し、酸性電荷バリアントが減少し、塩基性電荷バリアントが増加した。オレイン酸の補充により、Man5%のレベルは、エタノールだけを補充した場合からさらに低下するように見えた。それに加え、オレイン酸の補充により、フコシル化されたグリカン種が変化し、酸性電荷バリアントが減少した。
【0162】
結局、エタノールに溶かしたオレイン酸は、G0F%グリカン種のプロファイルを増加させることが観察された。補充により、酸性電荷種が減少することに加え、グリカン種Man5%、G0%、G1F%、G2F%のプロファイルが減少することが明らかになった。
【0163】
実施例4:塩化リチウムの添加と比較するための、培地への塩化ナトリウムの添加
正常な細胞間環境のナトリウムの濃度は、典型的には136~145 mMであり、塩化物は、典型的には96~106 mMである。リチウムを補充した上記の培地では、約1 mMの塩化リチウムを毎日添加した。これは、塩化物イオンの濃度のほぼ1%の上昇である。したがってこの実施例では、細胞生産性の改善が、塩化物イオンの量の増加ではなくてリチウムイオンの濃度上昇によって生じることを示す。
【0164】
材料と方法:
モノクローナル抗体3(mAb3)は、組み換えDNA技術を利用して作製したモノクローナル抗体である。発現ベクターは完全に合成したものであり、強力な構成的プロモーターによって調節される重鎖遺伝子配列と軽鎖遺伝子配列の両方を有する。遺伝子配列はDNAシークエンシングによって確認した。発現ベクターを制限酵素によって直線状にし、電気穿孔によってCHO.DXB11細胞の中に安定にトランスフェクトした。メトトレキサートの濃度を増加させながら遺伝子増幅の諸工程を実施した。遺伝子増幅の後に単一細胞クローニングを実施した。選択された単一細胞クローンを増殖させて低温で保管した。使用した細胞系は、CHO.DXB11由来のクローンであった。
【0165】
2つの異なるプロセス戦略を利用して塩化ナトリウムを毎日4.59 mMと9.18 mMで供給した。プロセス戦略1では、36.5℃に維持した後、産生期の間は31℃にシフトさせた。プロセス戦略2では、36.5℃に維持した後、産生期の間は31℃にシフトさせ、次いで後期産生期の間は36.5℃に再び戻した。どちらのプロセス戦略でも、溶けた酸素を空気飽和の30%に、pHを7.0±0.2に維持した。他のグリカン種とHMW%、LMW%はリストに載せていない。なぜなら塩化ナトリウムの補充によるレベルの有意な変化は観察されなかったからである。
【0166】
結果
図15Aと
図15Bに示したように、培地に塩化ナトリウムを添加するとモノクローナル抗体の力価が低下し、G0Fグリカン種が減少した。グリカン種Man5、G0、G1F、G2Fと、酸性および塩基性の電荷バリアントは増加した。
【0167】
高レベルの塩化ナトリウムを補充すると、mAbの特性が変化し、塩化リチウムを補充したときとは顕著に異なるものになった。塩化ナトリウムは力価のレベルを低下させ、グリコシル化プロファイルを異なるものに変え、塩基性%を増加させたが、LMW%またはHMW%は変化させなかった。このデータは、塩化リチウムで観察された効果がリチウムに起因し、塩化物に起因するのではないことを示している。
【0168】
実施例5:培地への脂肪酸、メチルエステル、ステロール、グリセリド、イソプレノイドの補充
多彩な脂肪酸、メチルエステル、ステロール、グリセリド、イソプレノイドを細胞培養培地に添加し、2つの別々のモノクローナル抗体を産生させた後、力価と産物の品質を評価した。
【0169】
材料と方法:
2つの別々の細胞系を用い、前の実施例に記載した方法に従ってモノクローナル抗体1(mAb1)と4(mAb 4)を産生させた。力価、高分子量種と低分子量種、酸性と塩基性の電荷バリアント、グリコシル化種のプロファイルを前の実施例のようにして評価した。
【0170】
mAb1とmAb4について2つの異なるプロセス戦略を利用し、脂肪酸をエタノールに溶かして表5に従って毎日供給した。mAb1プロセス戦略では、37℃に維持した後、後期指数関数期の間は31℃にシフトさせ、培養中を通じてpHを7.0±0.2に維持した。mAb4プロセス戦略では、36.5℃に維持した後、産生期の間は33℃にシフトさせ、後期指数増殖期の間はpHを7.0±0.1から6.8±0.1にシフトさせた。両方のプロセス戦略で30%空気飽和に維持した。
【表5】
【0171】
結果
図16に示したように、チモール、1-オクタノイル-rac-グリセロール、リノール酸、リノレン酸を培地に補充すると、mAb1の力価が上昇したのに対し、リノレン酸は、mAb4の産生を増加させた。HMW種に関しては、mAb1でパルミチン酸が対照と比べて相対的割合を減少させた(
図17A)のに対し、mAb4では、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸が、HMW種の相対的割合を減少させた(
図17A)。低分子量種は、mAb1で、チモール、1-オクタノイル-rac-グリセロール、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を用いると減少した(
図17B)のに対し、mAb4では、チモール、酢酸コレステリル、リノール酸、パルミチン酸がLMW種を減少させた(
図17B)。
【0172】
mAb1の産生に関し、酸性電荷バリアントは、チモール、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸を補充することによって減少した(
図18A)のに対し、mAb4に関しては、チモール、酢酸コレステリル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸が、酸性電荷バリアントを減少させた(
図18A)。mAb1の産生に関しては、培地にコレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸を補充すると塩基性電荷バリアントが減少した(
図18B)のに対し、mAb4に関しては、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸が、塩基性電荷バリアントの相対的割合を減少させた(
図18B)。
【0173】
mAb1の産生に関し、Man5グリカン種の減少が観察されたのは培地に酢酸コレステリルを補充した後であった(
図19A)のに対し、mAb4の産生に関し、チモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸を補充すると、Man5グリカン種の相対的割合が低下した(
図19A)。mAb1に関しては、G0グリカン種の減少が観察されたのは、培地にチモール、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、オレイン酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸を補充した後であった(
図19B)のに対し、mAb4の産生に関しては、酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コレステロール、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸を補充すると、G0グリカン種の相対的割合が低下した(
図19B)。最後に、mAb1の産生に関し、G0Fグリカン種の減少が観察されたのは、培地に酢酸コレステリル、オクタン酸メチル、1-オクタノイル-rac-グリセロール、オレイン酸、ミリスチン酸を補充した後であった(
図20)のに対し、mAb4の産生に関しては、1-オクタノイル-rac-グリセロールを補充すると、G0Fグリカン種の相対的割合が低下した(
図20)。