IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

特開2023-126282不織布積層体、並びに、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスク
<>
  • 特開-不織布積層体、並びに、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスク 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126282
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】不織布積層体、並びに、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスク
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20230831BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20230831BHJP
   D01F 8/06 20060101ALI20230831BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20230831BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20230831BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/14
D01F8/06
B32B5/26
A41D13/11 Z
A61F13/49 310
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109618
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2020552634の分割
【原出願日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2018201247
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼久 翔一
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】本村 茂之
(57)【要約】
【課題】伸縮特性に優れ、かつ、応力維持に優れる不織布積層体を提供する。
【解決手段】40℃における貯蔵弾性率E40と23℃における貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布と、前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布と、を有する不織布積層体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃における貯蔵弾性率E40と23℃における貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布(但し、プロピレン単独重合体を含む弾性不織布を除く)と、
前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布と、
を有し、
前記弾性不織布中の前記α-オレフィン共重合体のMFRが15g/10min~50g/10minである不織布積層体。
【請求項2】
前記α-オレフィン共重合体の前記23℃における貯蔵弾性率E23が30MPa以下である請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項3】
前記α-オレフィン共重合体がエチレン及びプロピレンの共重合体を含む請求項1又は請求項2に記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記α-オレフィン共重合体の引張弾性率が30MPa以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項5】
前記弾性不織布の両面側に前記伸長性スパンボンド不織布が配置されている請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項6】
前記伸長性スパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が45%以上である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項7】
前記弾性不織布は、弾性スパンボンド不織布である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項8】
前記伸長性スパンボンド不織布が、芯部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある低MFRのオレフィン系重合体とし、鞘部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある高MFRのオレフィン系重合体とし、且つ、前記低MFRのオレフィン系重合体と前記高MFRのオレフィン系重合体のMFRの差が1g/10分以上である、同芯の芯鞘型複合繊維からなる伸長性スパンボンド不織布である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項9】
前記伸長性スパンボンド不織布が、80質量%~99質量%の結晶性プロピレン系重合体と、1質量%~20質量%の高密度ポリエチレンと、を含むオレフィン系重合体組成物を含有する請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項10】
前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が10:90~90:10の範囲にある請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の不織布積層体の延伸加工物である伸縮性不織布積層体。
【請求項12】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項11に記載の伸縮性不織布積層体を含む繊維製品。
【請求項13】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項11に記載の伸縮性不織布積層体を含む吸収性物品。
【請求項14】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項11に記載の伸縮性不織布積層体を含む衛生マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布積層体、並びに、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は通気性及び柔軟性に優れることから各種用途に幅広く用いられている。そのため、不織布には、その用途に応じた各種の特性が求められるとともに、その特性の向上が要求されている。
【0003】
例えば、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、湿布材の基布等に用いられる不織布は、耐水性があり、且つ透湿性に優れることが要求される。また、使用される箇所によっては伸縮性及び嵩高性を有することも要求される。
【0004】
不織布に伸縮性を付与する方法の一つとして、スパンボンド不織布の原料として熱可塑性エラストマーを用いる方法(例えば、特許文献1参照)、低結晶性ポリプロピレンを用いる方法(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)などが提案されている。
【0005】
特許文献2又は特許文献3では、スパンボンド不織布のべたつき等を改良するために、低結晶性ポリプロピレンに、高結晶性ポリプロピレン又は離型剤を添加することが提案されている。特許文献4には、低結晶性ポリプロピレンを含む不織布と熱可塑性エラストマー長繊維と熱可塑性樹脂の長繊維の混繊スパンボンド不織布との積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平7-503502号公報
【特許文献2】特開2009-62667号公報
【特許文献3】特開2009-79341号公報
【特許文献4】国際公開第2007/138733号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2又は特許文献3に記載の方法では、不織布を製造する際に、装置内の各回転機器その他の不織布と接触する部位への付着を防ぐために、低結晶性ポリプロピレンに高結晶性ポリプロピレン又は離型剤の添加量を増す必要があり、その結果、得られるスパンボンド不織布の残留歪が大きくなり、伸縮性が劣る傾向にある。特許文献4に記載の方法では、低結晶性ポリプロピレンを含む不織布と混繊スパンボンド不織布とを積層することで伸縮性を保持しているが、更なる伸縮性の向上が強く求められている。
【0008】
また、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、湿布材の基布等の用途では、弱い力で装着できるように伸長時応力が小さいことが求められ、且つ着用時にずれないように回復時応力が大きいことが求められている。すなわち、上記用途では、伸縮特性(回復時応力/伸長時応力の比)の値を大きくすることが求められている。
【0009】
さらに、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、湿布材の基布等の用途では、常温室温(23℃)~体温の範囲(例えば、23℃~40℃の範囲)で回復時応力が低下しないこと、つまり、応力維持に優れることが求められている。これにより、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料が装着時に体温にまで上昇しても、ずれ難いことになる。
本発明の一形態は、上記課題に鑑み、伸縮特性に優れ、かつ、応力維持に優れる不織布積層体、並びに、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
[1] 40℃における貯蔵弾性率E40と23℃における貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布と、
前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布と、
を有する不織布積層体。
【0011】
[2] 前記α-オレフィン共重合体の前記23℃における貯蔵弾性率E23が30MPa以下である前記[1]に記載の不織布積層体。
【0012】
[3] 前記α-オレフィン共重合体がエチレン及びプロピレンの共重合体を含む前記[1]又は[2]に記載の不織布積層体。
【0013】
[4] 前記α-オレフィン共重合体の引張弾性率が30MPa以下である前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0014】
[5] 前記弾性不織布の両面側に前記伸長性スパンボンド不織布が配置されている前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0015】
[6] 前記伸長性スパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が45%以上である前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0016】
[7] 前記弾性不織布は、弾性スパンボンド不織布である前記[1]~[6]のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0017】
[8] 前記伸長性スパンボンド不織布が、芯部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある低MFRのオレフィン系重合体とし、鞘部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある高MFRのオレフィン系重合体とし、且つ、前記低MFRのオレフィン系重合体と前記高MFRのオレフィン系重合体のMFRの差が1g/10分以上である、同芯の芯鞘型複合繊維からなる伸長性スパンボンド不織布である前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0018】
[9] 前記伸長性スパンボンド不織布が、80質量%~99質量%の結晶性プロピレン系重合体と、1質量%~20質量%の高密度ポリエチレンと、を含むオレフィン系重合体組成物を含有する前記[1]~[8]のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0019】
[10] 前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が10:90~90:10の範囲にある前記[1]~[9]のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【0020】
[11] 前記[1]~[10]のいずれか1項に記載の不織布積層体の延伸加工物である伸縮性不織布積層体。
[12] 前記[1]~[10]のいずれか1項に記載の不織布積層体又は前記[11]に記載の伸縮性不織布積層体を含む繊維製品。
[13] 前記[1]~[10]のいずれか1項に記載の不織布積層体又は前記[11]に記載の伸縮性不織布積層体を含む吸収性物品。
[14] 前記[1]~[10]のいずれか1項に記載の不織布積層体又は前記[11]に記載の伸縮性不織布積層体を含む衛生マスク。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一形態によれば、伸縮特性に優れ、かつ、応力維持に優れる不織布積層体、並びに、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、ギア延伸装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0024】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0025】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0026】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本開示において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0027】
-不織布積層体-
本開示に係る不織布積層体は、40℃における貯蔵弾性率E40と23℃における貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布と、前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布と、を有する。不織布積層体は、その他の層を含んで構成されていてもよい。
【0028】
本開示に係る不織布積層体は、弾性不織布としてα-オレフィン共重合体を含む。そのため、α-オレフィン共重合体を含まない弾性不織布、例えば、ポリプロピレン単独重合体からなる弾性不織布を用いた場合に比べ、伸縮特性に優れ、かつ、応力維持に優れる不織布積層体が得られると考えられる。
また、前記α-オレフィン共重合体は、40℃における貯蔵弾性率E40と23℃における貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上である。すなわち、温度変化環境下(例えば、40℃~23℃)においても弾性不織布における弾性の低下が抑制され易い。そのため、応力維持に優れる不織布積層体が得られると考えられる。
【0029】
本開示の不織布積層体は、弾性不織布の少なくとも片面側に伸長性スパンボンド不織布が配置されている。これにより、エンボス工程等で使用する装置内の各種回転機器等の部材への不織布積層体の付着が防止され易く、成形性及び生産性に優れると考えられる。また、伸長性スパンボンド不織布は伸長性を有するため、弾性不織布の、優れた弾性による伸縮性が維持され易くなる。
【0030】
不織布積層体は、伸縮特性に優れ、かつ、応力維持に優れる不織布積層体を得る観点から、弾性不織布の両面側に伸長性スパンボンド不織布が配置されていることが好ましい。
【0031】
本開示の不織布積層体は、目付が360g/m以下であることが好ましく、240g/m以下であることがより好ましく、150g/m以下であることがさらに好ましく、120g/m~15g/mであることが特に好ましく、80g/m~20g/mであることがより一層好ましく、70g/m~25g/mであることが極めて好ましい。
【0032】
弾性不織布と伸長性スパンボンド不織布との目付比(構成比)は、種々の用途に応じて適宜設定してよい。例えば、弾性不織布と伸長性スパンボンド不織布の目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド)は、10:90~90:10の範囲内であることが好ましく、20:80~80:20の範囲内であることがより好ましく、40:60~60:40の範囲内であることがさらに好ましい。
弾性不織布の目付比が10以上であると、不織布積層体の伸縮性の低下が抑制される傾向にある。一方、弾性不織布の目付比が90以下であると、弾性不織布を構成する繊維が伸長性スパンボンド不織布層を超えて表面に露出する割合が減る傾向にある。そのため、成形性及び触感に優れた不織布積層体が得られ易くなる。
【0033】
弾性不織布(又は伸長性スパンボンド不織布)が2以上存在する場合、弾性不織布(又は伸長性スパンボンド不織布)の目付は2以上の合計である。
【0034】
不織布積層体の目付(g/m)は、以下の様に測定して求めた値とする。なお、弾性不織布及び伸長性スパンボンド不織布それぞれの目付も、同様の手法によって求める。
不織布積層体から流れ方向(MD)が200mm、横方向(CD)が50mmの試験片を6枚採取する。採取場所は、MD、CDともに任意の3箇所とする(計6箇所)。次いで、採取した各試験片の質量(g)を、上皿電子天秤(研精工業社製)を用いてそれぞれ測定し、各試験片の質量の算術平均値を求める。求めた算術平均値から、1m当たりの質量(g)に換算し、小数点第1位を四捨五入して、これを目付〔g/m〕とする。
【0035】
不織布積層体は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が100%以上であることが好ましく、150%以上であることがより好ましく、さらに220%以上であることが好ましい。
【0036】
不織布積層体の最大荷重伸度(%)は、以下の様に測定して求めた値とする。
不織布積層体から、流れ方向(MD)が200mm、横方向(CD)が50mmの試験片を5枚採取する。この試験片について、定速伸長型引張試験機を用いて、チャック間100mm、引張速度100mm/分の条件で引張試験を行う。試験片に掛かる最大の荷重〔N/50mm〕を測定し、前記最大荷重における試験片の伸び率〔%〕を測定する。5枚の試験片の算術平均値を求め、これを最大荷重伸度とする。
【0037】
[弾性不織布]
本開示に係る弾性不織布は、40℃における貯蔵弾性率E40と23℃における貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む。
【0038】
弾性不織布の目付は、120g/m以下であることが好ましく、80g/m以下であることがより好ましく、50g/m以下であることがさらに好ましく、40g/m~2g/mであることが特に好ましく、30g/m~5g/mであることがより一層好ましく、25g/m~8g/mであることが極めて好ましい。
弾性不織布を構成する繊維は、繊維径が50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。弾性不織布を構成する繊維は、繊維径が1.0μm以上であってもよい。
【0039】
弾性不織布の製造方法は、特に限定されず、種々公知の方法を適用してよい。例えば、弾性不織布は、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等の手法により製造された弾性不織布であってもよい。上記の中でも、弾性不織布は、不織布を形成する繊維を長繊維とする観点から、スパンボンド法により製造された弾性スパンボンド不織布であることが好ましい。
【0040】
(α-オレフィン共重合体)
弾性不織布は、α-オレフィン共重合体を含む。
α-オレフィン共重合体は、2種以上のα-オレフィン骨格を有する共重合成分が共重合された共重合体を表す。
α-オレフィン骨格を有する共重合成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等のα-オレフィンが挙げられる。
上記の中でも、α-オレフィン共重合体は、不織布積層体を、より低応力であり、且つ、伸縮性により優れたものとする観点から、エチレン(下記表1及び表2中「C2」と表記する)及びプロピレン(下記表1及び表2中「C3」と表記する)を共重合成分とするエチレン及びプロピレンの共重合体を含むことが好ましい。
【0041】
エチレン及びプロピレンの共重合体における、エチレンに由来する構成単位の含有率(以下、単に「エチレン含量」とも称する)は、1質量%~50質量%であることが好ましく、5質量%~25質量%であることがより好ましく、10質量%~20質量%であることがさらに好ましく、12質量%~18質量%であることが特に好ましい。
【0042】
α-オレフィン共重合体は、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0043】
α-オレフィン共重合体の40℃における貯蔵弾性率E40と23℃における貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)としては、応力維持に優れた不織布積層体を得る観点より、37%以上である。前記比(E40/E23)は、値が大きいほど好ましく、40%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることが特に好ましい。前記比(E40/E23)の上限は特に限定されず、100%以下であってもよく、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
【0044】
α-オレフィン共重合体における前記貯蔵弾性率の比E40/E23を、上記特定範囲とする手法としては、例えば、α-オレフィン共重合体をエチレンとプロピレンとの共重合体とする手法等が挙げられる。
【0045】
α-オレフィン共重合体の23℃における貯蔵弾性率E23は、不織布積層体を、伸縮性により優れたものとする観点から、30MPa以下であることが好ましく、22MPa以下であることがより好ましく、20MPa以下であることがさらに好ましく、18MPa以下であることが特に好ましい。
α-オレフィン共重合体の40℃における貯蔵弾性率E40は、不織布積層体を、より低応力であり、且つ、伸縮性により優れたものとする観点から、10MPa以下であることが好ましく、9MPa以下であることがより好ましい。
α-オレフィン共重合体の23℃における貯蔵弾性率E23は5MPa以上であってもよく、10MPa以上であってもよい。
α-オレフィン共重合体の40℃における貯蔵弾性率E40は3MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよい。
【0046】
α-オレフィン共重合体の各貯蔵弾性率は下記の装置及び条件にて測定した値とする。
温度:23℃又は40℃
装置 :RSA-III(ティー・アイ・インスツルメント社製)
変形モード :引張りモード
温度範囲 :-20℃~120℃
昇温速度 :2℃/分
変形周波数 :10Hz
初期歪 :0.1%
測定温度感覚 :0.3℃
環境 :窒素雰囲気下
【0047】
α-オレフィン共重合体の密度(ASTM D 1505)は、0.850g/cm~0.950g/cmの範囲にあることが好ましく、0.855g/cm~0.900g/cmの範囲にあることがより好ましく、0.860g/cm~0.895g/cmの範囲にあることがさらに好ましい。
α-オレフィン共重合体の密度は、JIS K7112(1999)の密度勾配法に従って測定して得られた値である。
【0048】
α-オレフィン共重合体の引張弾性率は、不織布積層体を、伸縮性により優れたものとする観点から、30MPa以下であることが好ましく、20MPa以下であることがより好ましく、15MPa以下であることがさらに好ましい。α-オレフィン共重合体の引張弾性率の上限は特に限定されず、例えば5MPa以上であってもよい。
引張弾性率は、JIS K7161(2011)に準拠した方法で測定して得られた値である。
【0049】
α-オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~5.0であることが好ましい。紡糸性が良好であり、かつ繊維強度が特に優れる繊維が得られる点で、Mw/Mnは、1.5~4.5であることがより好ましい。
【0050】
α-オレフィン共重合体の質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、求めた値であり、以下の条件で測定した値である。質量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算の質量平均分子量であり、分子量分布(Mw/Mn)は、同様にして測定した数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)より算出した値である。
<GPC測定条件>
カラム:TOSO GMHHR-H(S)HT
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン
測定温度:145℃
流速:1.0ml/分
試料濃度:2.2mg/ml
注入量:160μl
検量線:Universal Calibration
解析プログラム:HT-GPC(Ver.1.0)
【0051】
α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されず、例えば、1g/10分~100g/10分であることが好ましく、10g/10分~80g/10分であることがより好ましく、15g/10分~70g/10分であることがさらに好ましく、15g/10分~50g/10分であることが特に好ましい。
【0052】
α-オレフィン共重合体のメルトフローレートは、ASTM D-1238、230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
【0053】
α-オレフィン共重合体は、合成品であってもよく、市販品であってもよい。
α-オレフィン共重合体が合成品である場合、α-オレフィン共重合体は、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン系触媒などの従来公知の触媒の存在下に、モノマーを気相法、バルク法、スラリー法、溶液法などの従来公知の重合法により重合あるいは共重合させることにより調製することができる。
α-オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、タフマー(三井化学社製)、Vistamaxxシリーズ(エクソンモービルケミカル社製)等が挙げられる。
【0054】
α-オレフィン共重合体の組成については、従来公知の方法(例えば、IR分析、NMR分析、微量分析等)を用いて行うことができる。
【0055】
弾性不織布の総量に対するα-オレフィン共重合体の割合は、90質量%~100質量%であることが好ましく、98質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0056】
α-オレフィン共重合体がエチレン及びプロピレンの共重合体を含む場合、弾性不織布の総量に対するエチレン及びプロピレンの共重合体の割合は、不織布積層体における伸縮特性の観点から、80質量%~100質量%であることが好ましく、90質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0057】
α-オレフィン共重合体がエチレン及びプロピレンの共重合体である場合、α-オレフィン共重合体の結晶化度は、不織布積層体における伸縮特性の観点から、1%~15%であることが好ましく、1%~13%であることがより好ましく、2%~10%であることがさらに好ましく、4%~10%であることが特に好ましい。
【0058】
α-オレフィン共重合体の結晶化度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下-100℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱カーブより算出される。具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC-7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下-100℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブのうち主成分の融解に由来する融解熱カーブより下記の式を用いて算出することができる。
結晶化度=(ΔH/ΔH0)×100(%)
式中、ΔHはエチレンとプロピレンを含むα-オレフィン共重合体の主成分の融解に由来する融解熱カーブより求めた融解熱量(J/g)であり、ΔH0は主成分の完全結晶の融解熱量(J/g)である。つまり、主成分がエチレンの場合、ΔH0は293J/gであり、主成分がプロピレンの場合、ΔH0は210J/gである。
【0059】
α-オレフィン共重合体がエチレン及びプロピレンの共重合体である場合、α-オレフィンの融点は、130℃以下であってもよく、115℃以下であってもよく、100℃以下であってもよく、40℃~85℃であってもよく、40℃~60℃であってもよい。
【0060】
α-オレフィン共重合体の融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下-100℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も低温側に観測されるピークのピークトップとして定義される。具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、DSC-7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下-100℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も低温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
【0061】
[伸長性スパンボンド不織布]
本開示に係る伸長性スパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が45%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、100%以上であることがさらに好ましく、150%以上であることが特に好ましい。伸長性スパンボンド不織布は、弾性回復が殆どない性質を有する不織布であることが好ましい。伸長性スパンボンド不織布の最大荷重伸度〔%〕は、不織布積層体の最大荷重伸度と同様の方法で求める。本開示に係る伸長性スパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が600%以下であってもよく、500%以下であってもよい。
【0062】
伸長性スパンボンド不織布は、目付が120g/m以下であることが好ましく、80g/m以下であることがより好ましく、50g/m以下であることがさらに好ましく、40g/m~5g/mであることが特に好ましく、30g/m~5g/mであることがより一層好ましく、25g/m~8g/mであることが極めて好ましい。
【0063】
伸長性スパンボンド不織布を構成する繊維は、繊維径が50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。伸長性スパンボンド不織布を構成する繊維は、繊維径が1.0μm以上であってもよい。
【0064】
伸長性スパンボンド不織布は、芯部と鞘部とを有する同芯の芯鞘型複合繊維、海部と島部とを有する海島型複合繊維、並列型複合繊維、及び、捲縮複合繊維のいずれであってもよい。伸長性スパンボンド不織布は、同芯の芯鞘型複合繊維又は海島型複合繊維であることが好ましい。
【0065】
前記同芯の芯鞘型複合繊維を含む伸長性スパンボンド不織布は、芯部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある低MFRのオレフィン系重合体とし、鞘部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある高MFRのオレフィン系重合体とし、且つ、前記低MFRのオレフィン系重合体と前記高MFRのオレフィン系重合体のMFRの差が1g/10分以上であることが好ましい。前記MFRの差は、15g/10分以上であることがより好ましく、30g/10分以上であることがさらに好ましく、40g/10分以上であることが特に好ましい。前記MFRの差は、100g/10分以下であってもよく、70g/10分以下であってもよい。
【0066】
前記海島型複合繊維を含む伸長性スパンボンド不織布は、海部をプロピレン系重合体(好ましくはプロピレンの単独重合体)とし、島部をエチレン系重合体(好ましくは高密度ポリエチレン)とした、海島型複合繊維であってもよい。
【0067】
伸長性スパンボンド不織布としては、例えば、後述するオレフィン系重合体組成物を1種又は2種以上を用いた不織布が挙げられる。
【0068】
(オレフィン系重合体組成物)
伸長性スパンボンド不織布は、オレフィン系重合体を含むことが好ましく、オレフィン系重合体を含むオレフィン系重合体組成物から形成されることが好ましい。オレフィン系重合体としては、ポリオレフィン系エラストマーであってもよい。
【0069】
オレフィン系重合体組成物は、本開示の目的を損なわない範囲で、任意成分として、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、親水剤等の種々公知の添加剤を含んでもよい。
【0070】
オレフィン系重合体は、結晶性を有する重合体であることが好ましい。前記結晶性を有する重合における結晶性成分は、例えば、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。オレフィン系重合体は、1種単独であってもよく、2種以上の併用であってもよい。
【0071】
オレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。α-オレフィンの共重合体としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体等が挙げられる。
【0072】
エチレン系重合体としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン(所謂HDPE)等のエチレン単独重合体、エチレンとα-オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体などが挙げられる。
【0073】
エチレン系重合体の密度は、特に制限されないが、例えば、0.94g/cm~0.97g/cmであることが好ましく、0.95g/cm~0.97g/cmであることがより好ましく、0.96g/cm~0.97g/cmであることがさらに好ましい。
【0074】
エチレン系重合体のMFRは、紡糸性を有する限り特に限定されないが、例えば、伸長性を発現させる観点から、0.1g/10分~100g/10分であることが好ましく、0.5g/10分~50g/10分であることがより好ましく、1g/10分~30g/10分であることがさらに好ましい。
【0075】
プロピレン系重合体は、一般に、ポリプロピレンの名称で製造・販売されている結晶性樹脂をいう。プロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体又はプロピレンを主成分とした共重合体であることが好ましい。
プロピレンを主成分とした共重合体としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2以上のα-オレフィン(好ましくは炭素数2~8のα-オレフィン)を共重合成分とする共重合体が挙げられる(但し炭素数3のアルケン、つまりプロピレンを除く)。なお、プロピレンを主成分とした共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等のいずれであってもよい。
【0076】
プロピレンの単独重合体の融点(Tm)は、155℃以上であることが好ましく、157℃~165℃であることがより好ましい。
プロピレンを主成分とした共重合体の融点(Tm)は、130℃以上155℃未満であることが好ましく、130℃~150℃であることがより好ましい。
プロピレン系重合体のMFRは、溶融紡糸することができれば、特に限定されない。プロピレン系重合体のMFRは、例えば、1g/10分~1000g/10分であることが好ましく、5g/10分~500g/10分であることがより好ましく、10g/10分~100g/10分であることがさらに好ましい。
【0077】
伸長性スパンボンド不織布は、オレフィン系重合体以外の重合体(以下、「その他の重合体」とも称する)を含んでいてもよく、その他の重合体を含んでいなくてもよい。その他の重合体としては、例えば、熱可塑性エラストマー及びオレフィン系重合体以外の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0078】
熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、フッ素系エラストマー等が挙げられる。
【0079】
オレフィン系重合体以外の熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-一酸化炭素共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0080】
伸長性スパンボンド不織布におけるオレフィン系重合体の含有量は、オレフィン系重合体及びその他の重合体(熱可塑性エラストマー及びオレフィン系重合体以外の熱可塑性樹脂)の合計に対して90質量%超100質量%以下であることが好ましく、95質量%~100質量%であることがより好ましい。
【0081】
伸長性スパンボンド不織布は、その他の重合体を含まないか、伸長性スパンボンド不織布におけるその他の重合体(熱可塑性エラストマー及びオレフィン系重合体以外の熱可塑性樹脂)の含有量は、オレフィン系重合体及びその他の重合体の合計に対して0%超10質量%未満であることが好ましく、0%超5質量%以下であることがより好ましい。
【0082】
オレフィン系重合体組成物がプロピレン系重合体とエチレン系重合体とを含む場合、プロピレン系重合体の含有量は、オレフィン系重合体組成物の全量に対して80質量%~99質量%であることが好ましく、84質量%~96質量%であることがより好ましい。一方、前記エチレン系重合体の含有量は、オレフィン系重合体組成物の全量に対して20質量%~1質量%であることが好ましく、16質量%~4質量%であることがより好ましい(但し、プロピレン系重合体+エチレン系重合体=100質量%とする)。
【0083】
(伸長性スパンボンド不織布の具体例)
伸長性スパンボンド不織布としては、下記(1)~(3)の要件を満たす伸長性スパンボンド不織布を含むことが好ましい。
【0084】
(1)流動誘起相分離における結晶化の誘導時間の差が100秒以上である二種以上のオレフィン系重合体からなる、芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維(サイド・バイ・サイド型複合繊維)又は捲縮複合繊維を用いたスパンボンド不織布。
【0085】
前記二種以上のオレフィン系重合体としては、例えば、高融点のプロピレン系重合体と低融点のプロピレン系重合体であってもよい。
【0086】
(2)プロピレン系重合体とエチレン系重合体とを含むオレフィン系重合体組成物からなる、海島型複合繊維、芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維又は捲縮複合繊維を用いたスパンボンド不織布。特に、前記オレフィン系重合体組成物としては、下記に示すものが好ましい。
(2-1)プロピレン単独重合体80質量%~99質量%と、高密度ポリエチレン20質量%~1質量%とからなるオレフィン系重合体組成物。
(2-2)MFRが同一又は異なり、且つ、融点が157℃~165℃の範囲にある高融点のプロピレン系重合体を含むオレフィン系重合体組成物。
【0087】
前記プロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体と、融点が130℃~150℃の範囲にある低融点のプロピレン及びα-オレフィンのランダム共重合体と、を共重合したプロピレン系重合体であってもよい。
【0088】
(3)芯部をMFRが1g/10分~200g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体とし、鞘部をMFRが16g/10分~215g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体とし、且つ、前記芯部のMFRと前記鞘部のMFRとの差が15g/10分以上である、同芯の芯鞘複合繊維を用いたスパンボンド不織布。
【0089】
前記(1)~(3)の要件を満たす伸長性スパンボンド不織布としては、例えば、下記(A)及び(B)の伸長性スパンボンド不織布が挙げられる。
(A)芯部をMFRが10g/10分~200g/10分の範囲にあり、融点が157℃~165℃の範囲にある低MFRで高融点のプロピレン系重合体(好ましくはプロピレン単独重合体)とし、鞘部をMFRが10g/10分~200g/10分の範囲にあり、融点が130℃~150℃の範囲にある高MFRで低融点のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体とし、且つ、前記芯部のMFRと前記鞘部のMFRとの差が1g/10分以上である同芯の芯鞘型複合繊維からなる芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維若しくは捲縮複合繊維を用いたスパンボンド不織布。
(B)芯部をMFRが1g/10分~200g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体(好ましくはプロピレン単独重合体)とし、鞘部をMFRが31g/10分~230g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体(好ましくはプロピレン単独重合体)とし、且つ、前記芯部のMFRと前記鞘部のMFRとの差が30g/10分以上である同芯の芯鞘型複合繊維からなるスパンボンド不織布。
前述の(B)にて、芯部をMFRが10g/10分~50g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体とし、鞘部をMFRが50g/10分~100g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体としてもよい。前記芯部のMFRと前記鞘部のMFRとの差は、30g/10分~100g/10分であってもよく、40g/10分~80g/10分以下であってもよい。
【0090】
〔他の層〕
本開示の不織布積層体には種々用途により、他の層を積層してもよい。本開示の不織布積層体に積層する他の層は、特に限定はされず、用途により種々の層を積層し得る。
【0091】
他の層として具体的には、編布、織布、弾性不織布及び伸長性スパンボンド不織布以外の不織布、フィルム等が挙げられる。本開示の不織布積層体に他の層をさらに積層する(貼り合せる)方法は特に制限されず、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤を用いる方法、押出しラミネート等の種々の方法を採り得る。
【0092】
本開示の不織布積層体が弾性不織布及び伸長性スパンボンド不織布以外の不織布を有する場合の不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等の、種々公知の不織布が挙げられる。これらの不織布は伸縮性不織布であっても、非伸縮性不織布であってもよい。ここで非伸縮性不織布とは、MD(不織布の流れ方向、縦方向)又はCD(不織布の流れ方向に直角の方向、横方向)に伸長後、戻り応力を発生させないものをいう。
【0093】
本開示の不織布積層体がフィルムを有する場合のフィルムとしては、本開示の不織布積層体の特徴である通気性及び親水性を保持する観点から、通気性(透湿性)フィルムが好ましい。通気性フィルムとしては、透湿性を有するポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーからなるフィルム、無機微粒子又は有機微粒子を含む熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸して多孔化してなる多孔フィルム等の、種々の公知の通気性フィルムが挙げられる。多孔フィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、これらの組み合わせ等のポリオレフィンが好ましい。ただし、不織布積層体の通気性及び親水性を保持する必要がない場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの組み合わせ等の熱可塑性樹脂のフィルムを用いてもよい。
【0094】
〔不織布積層体の製造方法〕
本開示の不織布積層体は、α-オレフィン共重合体を含む弾性不織布、伸長性スパンボンド不織布、及び、必要に応じて用いられる添加剤を用いて、公知の不織布の製造方法により製造し得る。
【0095】
不織布積層体の製造方法の一例として、少なくとも二列の紡糸装置を備えた不織布製造装置を用いる方法について以下に説明する。下記例は、伸長性スパンボンド不織布としてオレフィン系重合体、弾性不織布としてα-オレフィン共重合体を用いた不織布積層体の製造方法の一例である。
本開示の不織布積層体は、製造上の観点から、不織布製造装置に付随する回転機器に接触する側の面に、伸長性スパンボンド不織布が配置されている態様が好ましい。
まず、一列目の紡糸装置に備えられた押出機、必要に応じて二個以上の押出機でオレフィン系重合体、必要に応じて二種以上のオレフィン系重合体を溶融し、多数の紡糸孔(ノズル)を備えた口金(ダイ)、必要に応じて芯鞘構造を有する紡糸孔に導入し、吐出する。その後、溶融紡糸されたオレフィン系重合体を含む長繊維を冷却室に導入し、冷却風により冷却した後、延伸エアーにより長繊維を延伸(牽引)し、伸長性スパンボンド不織布を移動捕集面上に堆積させる。
他方、二列目の紡糸装置に備えられた押出機で本開示のα-オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を溶融し、多数の紡糸孔(ノズル)を備えた口金(ダイ)を有する紡糸孔に導入し、樹脂組成物を吐出する。その後、溶融紡糸された樹脂組成物を含む長繊維を冷却室に導入し、冷却風により冷却した後、延伸エアーにより長繊維を延伸(牽引)し、伸長性スパンボンド不織布上に堆積させて、弾性不織布を形成する。
必要に応じて、三列目の紡糸装置を用いて、伸長性スパンボンド不織布を弾性不織布上に堆積させてもよい。
【0096】
弾性不織布及び伸長性スパンボンド不織布における各重合体の溶融温度は、それぞれの重合体の軟化温度あるいは融解温度以上であり、且つ、熱分解温度未満であれば特に限定されない。口金の温度は、用いる重合体の種類にもよるが、例えば、α-オレフィン共重合体としてエチレン及びプロピレンの共重合体を用いる場合は、口金の温度は、180℃~240℃であることが好ましく、190℃~230℃であることがより好ましく、200℃~225℃であることがさらに好ましい。
【0097】
冷却風の温度は重合体が固化する温度であれば特に限定はされず、5℃~50℃であることが好ましく、10℃~40℃であることがより好ましく、15℃~30℃であることがさらに好ましい。延伸エアーの風速は、100m/分~10,000m/分であることが好ましく、500m/分~10,000m/分であることがより好ましい。
【0098】
本開示の不織布積層体は、弾性不織布の少なくとも一部と、伸長性スパンボンド不織布の少なくとも一部とが熱融着した構造を有することが好ましい。この際、弾性不織布の少なくとも一部と伸長性スパンボンド不織布の少なくとも一部とを熱融着する前に、ニップロールを用いて、押し固めておいてもよい。
【0099】
熱融着の方法は特に制限されず、種々の公知の方法から選択できる。例えば、超音波等の手段を用いる方法、エンボスロールを用いる熱エンボス加工、ホットエアースルーを用いる方法等がプレボンディングとして挙げられる。中でも、延伸する際に長繊維が効率よく延伸される観点からは熱エンボス加工が好ましく、その温度範囲は、40℃~115℃であることが好ましい。
【0100】
熱エンボス加工により積層体の一部を熱融着する場合、エンボス面積率は5%~30%であることが好ましく、5%~20%であることがより好ましい。非エンボス単位面積は、0.5mm以上であることが好ましく、4mm~40mmであることがより好ましい。非エンボス単位面積とは、四方をエンボス部で囲まれた最小単位の非エンボス部において、エンボスに内接する四角形の最大面積を表す。刻印の形状としては、円、楕円、長円、正方、菱、長方、四角、これらの形状を基本とする連続した形状等が挙げられる。
【0101】
<伸縮性不織布積層体>
本開示の伸縮性不織布積層体は、前記不織布積層体を延伸することによって得られる、伸縮性を有する不織布積層体である。
【0102】
本開示の伸縮性不織布積層体は、前記不織布積層体を、延伸加工することによって得られる不織布積層体の延伸加工物である。延伸加工の方法は特に制限されず、従来公知の方法を適用できる。延伸加工の方法は、部分的に延伸する方法であっても、全体的に延伸する方法であってもよい。また、一軸延伸する方法であっても、二軸延伸する方法であってもよい。機械の流れ方向(MD)に延伸する方法としては、たとえば、2つ以上のニップロールに部分的に融着した混合繊維を通過させる方法が挙げられる。このとき、ニップロールの回転速度を、機械の流れ方向の順に速くすることによって部分的に融着した不織布積層体を延伸できる。また、図1に示すギア延伸装置を用いてギア延伸加工することもできる。
【0103】
延伸倍率の下限値は、50%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましく、200%以上であることがさらに好ましい。一方、延伸倍率の上限値は、1000%以下であることが好ましく、500%以下であることがより好ましい。
【0104】
一軸延伸の場合、機械の流れ方向(MD)の延伸倍率、又はこれに垂直な方向(CD)のいずれかが上記延伸倍率を満たすことが好ましい。二軸延伸の場合には機械の流れ方向(MD)とこれに垂直な方向(CD)のうち、少なくとも一方が上記延伸倍率を満たすことが好ましい。
【0105】
上述の様に延伸倍率で延伸加工することにより、弾性不織布と伸長性スパンボンド不織布を形成する(長)繊維はいずれも延伸される。伸長性スパンボンド不織布層を形成する長繊維は、塑性変形して、上記延伸倍率に応じて伸長される(つまり、長くなる)。
不織布積層体を延伸した後、応力が解放されると、弾性不織布を形成する(長)繊維は弾性回復し、伸長性スパンボンド不織布を形成する長繊維は、弾性回復せずに褶曲し、不織布積層体に嵩高感が発現する。さらに、伸長性スパンボンド不織布を形成する長繊維は細くなる傾向にある。そのため、柔軟性及び触感が良くなるとともに、伸び止り機能を付与することができると考えられる。
【0106】
<繊維製品>
本開示の繊維製品は、本開示の不織布積層体又は伸縮性不織布積層体を含む。繊維製品は特に制限されず、使い捨ておむつ、生理用品等の吸収性物品、衛生マスク等の衛生物品、包帯等の医療物品、衣料素材、包装材などが挙げられる。本開示の繊維製品は、本開示の不織布積層体又は伸縮性不織布積層体を伸縮部材として含むことが好ましい。
【実施例0107】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されない。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
【0108】
-材料の準備-
弾性不織布の原料として、以下の材料を準備した。
・α-オレフィン共重合体1A(プロピレン/エチレン共重合体)
ExxonMobil社製、製品名「VistamaxxTM6202」、MFR(230℃、荷重2.16kg):20g/10分、エチレン含量:15質量%、引張弾性率:9.8MPa。
・α-オレフィン共重合体1B(プロピレン/エチレン共重合体)
ExxonMobil社製、製品名「VistamaxxTM7050FL」、MFR(230℃、荷重2.16kg):48g/10分、エチレン含量:13質量%、引張弾性率:14.4MPa。
【0109】
・α-オレフィン単独重合体1C(低結晶性ポリプロピレン)の合成
攪拌機付き、内容積0.2mのステンレス製反応器に、n-ヘプタンを20L/hで、トリイソブチルアルミニウムを15mmol/hで、さらに、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートと(1,2’-ジメチルシリレン)(2,1’-ジメチルシリレン)-ビス(3-トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドとトリイソブチルアルミニウムとプロピレンとを事前に接触させて得られた触媒成分をジルコニウムあたり6μmol/hで連続供給した。重合温度70℃で気相部水素濃度を8mol%、反応器内の全圧を0.7MPa・Gに保つようにして、プロピレンと水素を連続供給した。得られた重合溶液に、SUMILIZER GP(住友化学社製)を1000ppmになるように添加し、溶媒を除去することにより、プロピレン重合体を得た。
得られたプロピレン重合体の重量平均分子量(Mw)は1.2×10、Mw/Mn=2であった。また、NMR測定から求めた[mmmm]が46モル%、[rrrr]/(1-[mmmm])が0.038、[rmrm]が2.7モル%、[mm]×[rr]/[mr]が1.5、引張弾性率が32.9MPaであった。
なお、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。これらの値は、例えば、国際公開第2016/143834号に記載の方法により求めることができる。
【0110】
[実施例1]
MFR(ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)8.5g/10分、密度0.91g/cm3、融点160℃のプロピレン単独重合体(以下「重合体2A」;表1及び表2中では「PP」)を50mmφの押出機を用い溶融し、それとは独立してMFR(ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm3、融点160℃のプロピレン単独重合体(以下「重合体2B」;表1及び表2中では「PP」)を75mmφの押出機を用いて溶融した後、「重合体2A」が芯、「重合体2B」が鞘となるような同芯の芯鞘複合繊維の成形が可能な紡糸口金(ダイ、孔数2887ホール)を有するスパンボンド不織布成形機(捕集面上の機械の流れ方向に垂直な方向の長さ:800mm)を用いて、樹脂温度とダイ温度がともに250℃、冷却風温度20℃、延伸エアー風速3750m/分の条件でスパンボンド法により複合溶融紡糸を行い、芯部と鞘部の質量比が10/90の同芯の芯鞘型複合繊維からなる伸長性スパンボンド不織布を捕集面上に第1層目として堆積させた。
次いで、その堆積面上に、前記α-オレフィン共重合体1Aを、スクリュー径75mmφの単軸押出機を用いて溶融した後、紡糸口金(ダイ、孔数808ホール)を有するスパンボンド不織布成形機(捕集面上の機械の流れ方向に垂直な方向の長さ:800mm)を用いて、樹脂温度とダイ温度がともに215℃、冷却風温度20℃、延伸エアー風速3750m/分の条件でスパンボンド法により溶融紡糸し、第2層目として弾性不織布(弾性スパンボンド不織布)を堆積させた。この工程における、前記α-オレフィン共重合体1Aの紡糸性は非常に良好であった。
次いで、第3層目として、第1層目と同様の芯鞘型複合繊維を、同様の方法により堆積させ、3層堆積物とした。この堆積物をエンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率18%、エンボス温度70℃)して総目付量が30.0g/m、第1層目及び第3層目の目付量が10.0g/m、2層目である弾性不織布層の目付量が10.0g/mである不織布積層体を作製した(弾性不織布層が全体に対して占める質量分率が33.3%)。
上記のようにして得た不織布積層体は、エンボス工程における金属ロール表面への付着は殆どなく、成形性は良好であった。また、不織布積層体をロール状態に巻き取った際、ロールブロッキング(重なり合った不織布が相互に付着し合い、ロールが固まってしまう現象)も起こらず、容易に引き出すことができた。
【0111】
[実施例2]
弾性不織布の原料を、α-オレフィン共重合体1Aからα-オレフィン共重合体1Bへと変更する仕様とした以外は、実施例1と同様の操作により不織布積層体を得た。
【0112】
[比較例1]
弾性不織布の原料を、α-オレフィン共重合体1Aからα-オレフィン単独重合体1Cへと変更する仕様とした以外は、実施例1と同様の操作により不織布積層体を得た。
【0113】
[実施例3]
第1層目及び第3層目における伸長性スパンボンド不織布の目付並びに第2層目における弾性不織布の目付を10.0g/mから16.7g/mに変更した以外は、実施例1と同様の操作により不織布積層体を得た。
【0114】
[実施例4]
第1層目及び第3層目における伸長性スパンボンド不織布の目付を10.0g/mから15.6g/mに変更し、第2層目における弾性不織布の目付を10.0g/mから18.8g/mに変更した以外は、実施例1と同様の操作により不織布積層体を得た。
【0115】
[実施例5]
第1層目及び第3層目における伸長性スパンボンド不織布の目付並びに第2層目における弾性不織布の目付を10.0g/mから20.0g/mに変更した以外は、実施例1と同様の操作により不織布積層体を得た。
【0116】
[実施例6]
第1層目及び第3層目における伸長性スパンボンド不織布の目付並びに第2層目における弾性不織布の目付を10.0g/mから20.0g/mに変更した以外は、実施例2と同様の操作により不織布積層体を得た。
【0117】
[比較例2]
第1層目及び第3層目における伸長性スパンボンド不織布の目付並びに第2層目における弾性不織布の目付を10.0g/mから20.0g/mに変更した以外は、比較例1と同様の操作により不織布積層体を得た。
【0118】
[比較例3]
2層目における弾性不織布の目付を20.0g/mから25.0g/mに変更した以外は、比較例2と同様の操作により不織布積層体を得た。
【0119】
-評価-
(紡糸性)
各例の不織布について、製造の際に、スパンボンド不織布製造装置のノズル面近傍の紡糸状況を目視で観察し、5分あたりの糸切れ回数(単位:回/5分)を数えた。糸切れ回数が0回/5分であれば「A」、糸切れが発生し不織布採取に至らない場合は「B」と評価した(表1及び表2)。
【0120】
-伸縮特性(50%伸長時応力、50%回復時応力)の評価-
万能引張試験機(インテスコ社製、IM-201型)を用い、各例の不織布積層体から、50mm(CD)×200mm(MD)の試験片を5枚採取した。次いで、採取した各試験片をサンプル幅50mm、チャック間距離100mm、引張速度100mm/分の条件で試験片を100%伸長後、直ちに同じ速度で原長まで回復させた。この操作をもう1サイクル実施して、2サイクル目の伸長時に延伸倍率が50%となったときの応力を50%伸長時応力とし、2サイクル目の回復時に延伸倍率が50%となったときの応力を50%回復時応力とした。次いで、伸縮特性の尺度として〔50%回復時応力÷50%伸長時応力〕の値を測定し、5枚の試験片の算術平均値を伸縮特性として評価した。なお〔50%回復時応力÷50%伸長時応力〕の値が大きいほど伸縮特性が優れていることを意味する(表1及び表2)。
【0121】
その他、各例における各温度の貯蔵弾性率、貯蔵弾性率の比、最大荷重伸度及び各不織布の目付について、先述の測定方法により測定した結果を、表1及び表2に示す。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
表1及び表2に示すように、実施例の不織布積層体は、比較例の不織布積層体に比べ、伸縮特性に優れ、かつ、応力維持に優れることがわかった。
【0125】
2018年10月25日に出願された日本国特許出願2018-201247号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1