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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012629
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】水分解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20230119BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230119BHJP
   C25B 5/00 20060101ALI20230119BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230119BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20230119BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230119BHJP
   C25B 11/049 20210101ALI20230119BHJP
   C25B 11/04 20210101ALI20230119BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B5/00
C25B9/00 H
H01M10/44 A
H02J15/00 G
H02J7/35 J
C25B11/049
C25B11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116163
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】510215709
【氏名又は名称】Amaz技術コンサルティング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】雨堤 徹
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
4K011AA22
4K011AA51
4K011AA66
4K011BA08
4K011BA09
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021CA05
4K021CA15
4K021DA02
4K021DA13
4K021DA17
4K021DC01
4K021DC03
4K021EA06
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA07
5H030AA09
5H030BB07
(57)【要約】
【課題】発生した水素の捕集が容易で、かつ全体を簡易かつコンパクトに構成することが可能な水分解装置を提供する。
【解決手段】水分解装置(1)は、電解水溶液(3)が収容された電解槽(5)と、前記電解槽(5)内で前記電解水溶液(3)に浸漬されたn型半導体層(7)を含む光電極である酸素発生電極(9)と、前記電解槽(5)内で前記電解水溶液(3)に浸漬された水素吸蔵合金層(11)を含む水素発生電極(13)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水溶液が収容された電解槽と、
前記電解槽内で前記電解水溶液に浸漬されたn型半導体層を含む光電極である酸素発生電極と、
前記電解槽内で前記電解水溶液に浸漬された水素吸蔵合金層を含む水素発生電極と、
を備える、水分解装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水分解装置において、
前記酸素発生電極が平板状またはシート状であり、当該酸素発生電極が、前記電解槽内において、ほぼ水平方向に、かつ他の構成部材に対して最上部に配置されている、
水分解装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水分解装置において、
前記水素発生電極が平板状またはシート状であり、当該水素発生電極が、前記電解槽内において、前記酸素発生電極の下方に、前記酸素発生電極にほぼ平行に配置されている、
水分解装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水分解装置において、前記酸素発生電極と前記水素発生電極との間に介装された平板状またはシート状の絶縁部材を備え、
前記酸素発生電極、前記絶縁部材および前記水素発生電極が積層されている、
水分解装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の水分解装置において、
前記水素発生電極が交換可能に設けられている、
水分解装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の水分解装置において、
前記電解槽の上部が開放されている、
水分解装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の水分解装置において、
前記酸素発生電極に接続された正極と、前記水素発生電極に接続された負極とを有する蓄電素子を備える、
水分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光などの光を利用して水を電気分解する水分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する解決策の一つとして、クリーンなエネルギー源である水素を活用する取り組みが推進されている。水素の生成方法としては、水を電気分解することが一般的である。しかし、火力発電といった化石燃料由来の電力で水を電気分解しても環境への負荷が減るわけではないことは言うまでもないが、再生可能エネルギーである太陽光発電で生成された電力を用いて水の電気分解を行うことも、エネルギー効率を考えれば全体として必ずしもメリットにならない。
【0003】
そこで、太陽光を照射することにより直接水を電気分解することが可能な半導体からなる光電極を用いて水素を製造することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-070850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の水分解装置では、陽極(光電極)から発生した酸素ガスと陰極から発生した水素ガスを各々そのまま水中に放出するので、水素を酸素と分離して捕集するためには、陽極と陰極とを、水平方向に一定間隔離して配置する必要があった。そのため、水分解装置の全体サイズを小型にすることや、電極同士を積層するといった構造の簡素化が困難であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するために、発生した水素の捕集が容易で、かつ全体を簡易かつコンパクトに構成することが可能な水分解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明に係る水分解装置は、
電解水溶液が収容された電解槽と、
前記電解槽内で前記電解水溶液に浸漬されたn型半導体層を含む光電極である酸素発生電極と、
前記電解槽内で前記電解水溶液に浸漬された水素吸蔵合金層を含む水素発生電極と、
を備える。
【0008】
この構成によれば、水素発生電極で発生した水素を水素吸蔵合金に一時的に貯蔵させておくことができるので、例えば日照のない時間帯に水素の捕集を行うことができるなど、水素を酸素と分離して捕集することが容易となる。また、水素発生電極に水素吸蔵合金層を設けたことにより、水素を酸素と分離することが容易となるので、電極間距離を従来よりも短くすることや、電極を積層するといった構成の簡素化が容易となる。したがって、水分解装置全体を簡易かつコンパクトな構成とすることができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記酸素発生電極が平板状またはシート状であり、当該酸素発生電極が、前記電解槽内において、ほぼ水平方向に、かつ他の構成部材に対して最上部に配置されていてもよい。この構成によれば、光電極である酸素発生電極を電解槽内で最上部に、かつ水平方向に配置することにより、容易に酸素発生電極の受光面積を広くとることができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記水素発生電極が平板状またはシート状であり、当該水素発生電極が、前記電解槽内において、前記酸素発生電極の下方に、前記酸素発生電極にほぼ平行に配置されていてもよい。さらに、前記酸素発生電極と前記水素発生電極との間に平板状またはシート状の絶縁部材が介装されており、前記酸素発生電極、前記絶縁部材および前記水素発生電極が積層されていてもよい。この構成によれば、電極群の全体をコンパクトに構成することができ、その結果、簡易かつコンパクトな構成とすることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記水素発生電極が交換可能に設けられていてもよい。この構成によれば、水素を吸蔵した状態の水素発生電極を、水分解装置から取り外して、水素貯蔵用の施設に運搬することが可能となる。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記電解槽の上部が開放されていてもよい。この構成によれば、酸素発生電極に届く光の光量および強度を十分に確保することができると共に、酸素発生電極で発生した酸素ガスが大気に放出されるので、酸素発生電極に気泡が付着することによる受光量の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記酸素発生電極に接続された正極と、前記水素発生電極に接続された負極とを有する蓄電素子21を備えていてもよい。この構成によれば、水分解時に発生した電力を蓄電素子21に蓄電しておき、その後この電力を利用して水素を放出させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る水分解装置によれば、発生した水素の捕集が容易となり、かつ全体を簡易かつコンパクトに構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る水分解装置の概略構成を示す模式図である。
図2図1の水分解装置の電極配置構成例を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施例に係る試験用水分解装置の構成を示す模式図である。
図4図3の水分解装置の試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る水分解装置1を示す。本実施形態に係る水分解装置1は、太陽光などの光Lを利用して水を電気分解する装置である。水分解装置1は、電解水溶液3が収容された電解槽5と、n型半導体層7を含む光電極である酸素発生電極(陽極)9と、水素吸蔵合金層11を含む水素発生電極(陰極)13とを備える。酸素発生電極9および水素発生電極13は、いずれも電解槽5内で電解水溶液3に浸漬されている。
【0018】
図2に示すように、本実施形態では、酸素発生電極9および水素発生電極13のいずれもがシート状に形成されている。酸素発生電極9と水素発生電極13とは、これらの間にシート状の絶縁部材15が介装された状態で積層され、全体が水平方向にほぼ平行となるように配置されている。なお、酸素発生電極9,水素発生電極13,絶縁部材15は、平板状であってもよい。このように酸素発生電極9,水素発生電極13,絶縁部材15をシート状または平板状とすることにより、同図に示すように積層構造として構造を簡素化することができる。もっとも、酸素発生電極9,水素発生電極13および絶縁部材15の形状はこの例に限定されない。
【0019】
具体的には、この例では、酸素発生電極9は、シート状の陽極集電体17と、陽極集電体17上に付着したn型半導体層7からなる。水素発生電極13は、シート状の陰極集電体19と、陰極集電体19上に付着した水素吸蔵合金層11からなる。電解槽5内において、酸素発生電極9は、これらの部材の最上部に、かつn型半導体層7が上側となるように配置されている。水素発生電極13は、絶縁部材15を介して酸素発生電極9の下側に、かつ水素吸蔵合金層11が上側(絶縁部材15側)となるように配置されている。この例では、絶縁部材15はシート状の部材であり、その上面および下面に、それぞれ、酸素発生電極9(酸素発生電極9の陽極集電体17)および水素発生電極13(水素発生電極13の水素吸蔵合金層11)が接触した状態で、これらの部材が積層されている。
【0020】
なお、酸素発生電極9のn型半導体層7の上面の水面からの深さは、受光量をできるだけ多くする観点から、電解水溶液3に確実に浸漬する範囲で浅い方が好ましい。具体的には、酸素発生電極9のn型半導体層7の上面の水面からの深さは、1mm以上で、かつ100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。もっとも、酸素発生電極9のn型半導体層7の上面の水面からの深さは上記範囲に限定されない。
【0021】
n型半導体層7のn型半導体は、光電極としての性質を有するもの、すなわち光エネルギーを吸収してキャリア(電子と正孔)を生じさせるものであれば特に限定されない。本実施形態では、n型半導体としてTiOを用いている。n型半導体の他の具体的な例としては、酸化タングステン(WO)、酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
水素吸蔵合金層11の水素吸蔵合金は、水素を可逆的に吸蔵および放出することができるものであれば特に限定されず、例えばニッケル水素二次電池の負極活物質材料として一般に知られている材料を使用することができる。本実施形態では、LaNiを用いている。水素吸蔵合金の他の具体的な例として、MmNi(Mmはミッシュメタル)等のAB型系、希土類-マグネシウム-ニッケル系等のAB型系、超格子構造をなす希土類-マグネシウム-ニッケル系等のA型系、(Zr,Ti)Ni等のAB2型系のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本実施形態では、電解槽5は、その上部5aが開放されている。より具体的には、本実施形態に係る電解槽5は、ほぼ直方体形状に形成されており、底壁5bおよび側壁5cのみを有し、天壁が設けられていない。このように、電解槽5の上部が開放されていることにより、酸素発生電極9に届く光Lの光量および強度を十分に確保することができる。さらには、酸素発生電極9で発生した酸素ガスが大気に放出されるので、酸素発生電極9に気泡が付着することによる受光量の低下を抑制することができる。
【0024】
本実施形態では、絶縁部材15として絶縁性の素材からなるシート状部材、例えばポリプロピレン製の不織布を用いている。もっとも、絶縁部材15は、この例に限定されず、酸素発生電極9と水素発生電極13との間で電気的な絶縁を確保できる素材、構造のものを使用することができる。例えば、多孔質セラミック製の平板状部材を絶縁部材15として用いてもよい。また、酸素発生電極9と水素発生電極13との間の電気的な絶縁を確保できるように両電極を保持する構造を採用する場合、絶縁部材15を介在させることは必須ではない。
【0025】
電解水溶液3としては、淡水に、例えばNaClのような電解質を溶解させた水溶液を用いる。電解水溶液3としては、このように人工的に作製したものではなく、例えば海水を用いてもよい。上記のように電解水溶液3として海水を用いる場合、例えば、水分解装置1を利用して、製塩の前工程としての海水濃縮を行ってもよい。
【0026】
水素発生電極13は、交換可能に、つまり容易に着脱できるように設けられていてもよい。この構成によれば、水素を吸蔵した状態の水素発生電極13を、水分解装置1から取り外して、水素貯蔵用の施設に運搬することが可能となる。このように、水素発生電極13を交換可能に設ける場合、図1に示した例とは異なり、水素発生電極13において、陰極集電体19が上側(絶縁部材15側)に、水素吸蔵合金層11が下側に配置されることが好ましい。この構成によれば、水素を吸蔵した状態の水素発生電極13を、水分解装置1から取り外して、水素貯蔵用の施設に運搬することが可能となる。
【0027】
もっとも、水素発生電極13の水素吸蔵合金層11に貯蔵した水素の捕集は、水素発生電極13を水分解装置1に設置した状態で行ってもよい。その場合、水素発生電極13は電解槽5に対して容易に着脱できないような態様で固定されていてもよい。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る水分解装置1は、酸素発生電極9に接続された正極と、水素発生電極13に接続された負極とを有する蓄電素子21を備えている。蓄電素子21は、例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池等の二次電池や、キャパシタであってよい。蓄電素子21を設けることは必須ではないが、水分解装置1が蓄電素子21を備えていることにより、光Lのエネルギーを受けて水分解時に発生した電力を蓄電素子21に蓄電しておき、その後水分解が停止している時間帯(例えば日照のない夜間)に、この電力を利用して、水素吸蔵合金層11から水素を放出させることが可能になる。なお、蓄電素子21に蓄えた電力は、当該水分解装置1の外部の装置の電源として使用してもよい。
【0029】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0030】
試験用に図3に示す水分解装置1を作製した。その作製方法を以下に説明する。
【0031】
(1)n型半導体層および酸素発生電極の作製
二酸化チタン(80%以上ルチル結晶)粉末と、この二酸化チタン粉末99.7重量部に対して0.3重量部のアセチレンブラックを十分に混合し、薄灰色の混合粉末を作製した。混合粉末を窒素雰囲気中で1000℃に昇温し、昇温後2時間熱処理を実施した。熱処理後の混合粉末96.0重量部に対して、さらにアセチレンブラック2重量部を加えて混合し、その後混練装置でバインダとしてポリフッ化ビニリデン2重量部を加え、さらにNMP溶媒を加え、十分に混練してスラリー液を得た。
【0032】
得られたスラリー液を目付が50~60mg/cm2となるように、集電体17である50μm厚のステンレス(SUS304)箔上に塗工し、120℃で乾燥させた。この際に部分的に未塗工部を設けた。その後、n型半導体層7の厚みが100±10μmとなるように電極をプレスした。塗工部が20×20mm、未塗工部が20×10mm以上得られるように打ち抜いたものを陽極となる酸素発生電極9とした。
【0033】
(2)水素吸蔵合金層11および水素発生電極13の作製
水素吸蔵合金であるLaNi5の97重量部に対して0.5重量部のCMC、1.5重量部のアセチレンブラックおよび1.0重量部のSBRを加え、さらに水を添加して混練し、合剤スラリーを得た。合剤スラリーをステンレス箔(SUS304:厚み50μm)の集電体19の表面に塗工した。これを乾燥後、ローラで圧縮して、水素吸蔵合金層11の厚みを0.4mmとした。塗工部分部が20×20mm、未塗工部が20×10mm以上得られるように打ち抜いたものを陰極となる水素発生電極13とした。
【0034】
(3)電極群の構成
絶縁部材15として、0.5mm厚、空隙率60%以上のポリプロピレン製の不織布を使用した。絶縁部材15を介してn型半導体層7が外側に向くように設置し、水素吸蔵合金層11が絶縁部材の表面に接するように積層した。集電体17,19は互いに逆方向に突出するように設置した。厚み0.1mm、幅3mm、長さ20mmのステンレス製タブを集電体に溶接し、タブの集電体と反対側にリード線を溶接した。
【0035】
(4)セルの作製
電解槽5として150mm深さ50mmのアクリル製容器を用意した。この電解槽5に電解水溶液3として3wt%のNaCl水溶液を200ml入れ、n型半導体層7が上向きになるように水平に液中に沈め、n型半導体層7の表面が水面から1mmの深さになるように調整した。リード線は電解水溶液3に浸らないように配置した。
【0036】
(5)測定
測定系の概要を図3に示す。光源23にはソーラーシミュレータを利用し、100mW/cm2の強度で照射した。5分暗電圧、電流を測定した後30分間光を照射し、その後光を遮断した。この間の電圧及び電圧をモニターした結果を図4に示す。30分で0.62mAhの電気が流れた計算になる。
【0037】
測定が終了した水素吸蔵合金層11を取り出し、50℃の純水の中に投入し、ガスを捕集した。10分間で捕集されたガス量は0.54mlで、ガス分析の結果、88%が水素ガスであることが確認された。
【0038】
なお、両電極の具体的な仕様は上記の実施例で説明した例に限定されない。例えば、酸素発生電極9のn型半導体層7は、電荷を蓄積させる必要がないため、光励起機能が発現できる厚みがあれば十分であり、塗工法以外の金属板の陽極酸化や蒸着等の薄膜形成法によって作製することもできる。また、水素発生電極13の水素吸蔵合金層11における水素吸蔵合金の充填量は、想定される1日の最大日照量から算出される水素の発生量を吸蔵できる量があれば十分であるが、水素ガスの取り出し頻度等を考慮して数日分に相当する量を充填してもよい。
【0039】
以上説明したとおり、本実施形態に係る水分解装置1によれば、水素発生電極13に水素吸蔵合金層11を設けたことにより、水素発生電極13で発生した水素を一時的に水素吸蔵合金層11に貯蔵して、酸素と分離して捕集することが容易となる。例えば、日照のない時間帯に水素の捕集を行うことが容易となる。これにより、電極間距離を従来よりも短くすることや、電極を積層するといった構成の簡素化が容易となる。したがって、水分解装置1全体を簡易かつコンパクトな構成とすることができる。
【0040】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 水分解装置
3 電解水溶液
5 電解槽
7 n型半導体層
9 酸素発生電極
11 水素吸蔵合金層
13 水素発生電極
21 蓄電素子
図1
図2
図3
図4