(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126324
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置、ヘッドアップディスプレイ、制御方法、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20230831BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G01C21/36
B60K35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111890
(22)【出願日】2023-07-07
(62)【分割の表示】P 2022014119の分割
【原出願日】2013-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】北 祐樹
(57)【要約】
【課題】ルート案内画像を好適に視認させることが可能なナビゲーション装置及びヘッド
アップディスプレイを提供する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ2は、光源ユニット4と、コンバイナ9とを備える。光源ユニット4の制御部55は、通信部56によりナビゲーション装置1から車両Veの位置情報を取得する。そして、制御部55は、ルート案内画像をコンバイナ9に表示させ、かつ、通常モードと、広域モードとの切り替えを行う。このとき、制御部55は、通常モードでの表示対象エリアAtag内のルート距離Dtagが第1閾値Dth1以下となる場合に、広域モードに切り替える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の前方風景と、目的地までのルート案内画像とが対応するように、前記ルート案内画像を前記前方風景に重畳して表示手段に表示させる通常モードと、前記通常モードで表示させる前記ルート案内画像よりも広範囲のルートを示すルート案内画像を前記表示手段に表示させる広域モードとを切り替える制御手段を備え、
前記制御手段は、前記通常モードによる前記ルート案内画像に対応する路面の距離が所定値以下となる場合に、前記広域モードに切り替えることを特徴とするナビゲーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルート案内を行う際の表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示すルート案内画像を表示する車載表示システムが知られている。例えば、特許文献1には、現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示すルート案内画像を、車両前方の風景に含まれる路面と対応させて表示させるヘッドアップディスプレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘッドアップディスプレイでは、曲率が大きいカーブや右左折地点に近付いた場合に、案内ルートが大きく曲がるため、ルート案内画像も同様に曲がり、ルート案内画像が示すルートの距離が短くなる。この場合、利用者は、直近のルートしかルート案内画像から把握することができないため、その先のルートがわからずに不安を感じることがあった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ルート案内画像をユーザに好適に視認させることが可能なナビゲーション装置及びヘッドアップディスプレイを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、移動体の位置を取得する取得手段と、前記移動体の前方の風景又は当該風景を撮影した前方画像に重畳させて、前記移動体の現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示すルート案内画像を表示手段に表示させ、かつ、前記ルート案内画像を、前記風景又は前記前方画像に含まれる前記ルートに相当する路面と対応させて前記表示手段に表示させる通常モードと、前記通常モードで表示させる前記ルート案内画像よりも広範囲のルートを示すルート案内画像を前記表示手段に表示させる広域モードとの切り替えを行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記通常モードによりルート案内画像を表示させると当該ルート案内画像に対応する路面の距離が所定値以下となる場合に、前記広域モードに切り替えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、ナビゲーション装置が実行する制御方法であって、移動体の位置を取得する取得工程と、前記移動体の前方の風景又は当該風景を撮影した前方画像に重畳させて、前記移動体の現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示すルート案内画像を表示手段に表示させ、かつ、前記ルート案内画像を、前記風景又は前記前方画像に含まれる前記ルートに相当する路面と対応させて前記表示手段に表示させる通常モードと、前記通常モードで表示させる前記ルート案内画像よりも広範囲のルートを示すルート案内画像を前記表示手段に表示させる広域モードとの切り替えを行う制御工程とを有し、前記制御工程では、前記通常モードによりルート案内画像を表示させると当該ルート案内画像に対応する路面の距離が所定値以下となる場合に、前記広域モードに切り替えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体の位置を取得する取得手段と、前記移動体の前方の風景又は当該風景を撮影した前方画像に重畳させて、前記移動体の現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示すルート案内画像を表示手段に表示させ、かつ、前記ルート案内画像を、前記風景又は前記前方画像に含まれる前記ルートに相当する路面と対応させて前記表示手段に表示させる通常モードと、前記通常モードで表示させる前記ルート案内画像よりも広範囲のルートを示すルート案内画像を前記表示手段に表示させる広域モードとの切り替えを行う制御手段として前記コンピュータを機能させ、前記制御手段は、前記通常モードによりルート案内画像を表示させると当該ルート案内画像に対応する路面の距離が所定値以下となる場合に、前記広域モードに切り替えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】ヘッドアップディスプレイの概略構成を示す。
【
図5】(A)は、現在位置周辺を表すマップ内における表示対象エリアの設定範囲を示す。(B)は、(A)の例において、運転席から視認される前方風景の一例である。
【
図6】
図5の例から車両が所定距離だけ進行した後の状態を示す。
【
図7】
図6の例から広域モードに切り替わった後の状態を示す。
【
図8】ルート距離の算出方法を説明するための図である。
【
図9】ルート距離の算出方法を説明するための図である。
【
図10】通常モードでの処理を示すフローチャートを示す。
【
図11】広域モードでの処理を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、ナビゲーション装置は、移動体の位置を取得する取得手段と、前記移動体の前方の風景又は当該風景を撮影した前方画像に重畳させて、前記移動体の現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示すルート案内画像を表示手段に表示させ、かつ、前記ルート案内画像を、前記風景又は前記前方画像に含まれる前記ルートに相当する路面と対応させて前記表示手段に表示させる通常モードと、前記通常モードで表示させる前記ルート案内画像よりも広範囲のルートを示すルート案内画像を前記表示手段に表示させる広域モードとの切り替えを行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記通常モードによりルート案内画像を表示させると当該ルート案内画像に対応する路面の距離が所定値以下となる場合に、前記広域モードに切り替える。
【0011】
上記ナビゲーション装置は、取得手段と、制御手段とを備える。取得手段は、移動体の位置を取得する。制御手段は、ルート案内画像を表示手段に表示させ、かつ、通常モードと、広域モードとの切り替えを行う。ここで、ルート案内画像は、移動体の前方の風景又は当該風景を撮影した前方画像に重畳させて、移動体の現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示す。また、通常モードは、ルート案内画像を、風景又は前方画像に含まれるルートに相当する路面と対応させて表示手段に表示させるモードであり、広域モードは、通常モードで表示させるルート案内画像よりも広範囲のルートを示すルート案内画像を表示手段に表示させるモードである。そして、制御手段は、通常モードによりルート案内画像を表示させると当該ルート案内画像に対応する路面の距離が所定値以下となる場合に、広域モードに切り替える。この態様では、ナビゲーション装置は、ルート案内画像に対応する路面の距離が短い場合に、広範囲のルートを示すルート案内画像に切り替える。これにより、ナビゲーション装置は、曲率が大きいカーブや右左折地点に近付いた場合であっても、適切な範囲のルートをユーザに認識させ、ユーザに安心感を与えることができる。
【0012】
上記ナビゲーション装置の一態様では、前記取得手段は、移動体の位置と進行方向を取得し、制御手段は、前記通常モードでは前記進行方向を含む第1角度範囲内に存在するルート案内画像を表示手段に表示させ、前記広域モードでは前記第1角度範囲よりも広い第2角度範囲内に存在するルート案内画像を表示させる。このように、ナビゲーション装置は、広域モードでは第1角度範囲よりも広い第2角度範囲内に存在するルート案内画像を表示させることで、曲率が大きいカーブや右左折地点に近付いた場合であっても、好適に、ルート案内画像により広範囲のルートを表示することができる。
【0013】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記通常モードとした場合に表示される前記ルート案内画像に対応する路面の距離が前記所定値よりも長い第2の所定値より大きい場合に、前記広域モードから前記通常モードに切り替える。このように、ナビゲーション装置は、通常モードから広域モードへの切り替えに用いる閾値よりも、広域モードから通常モードへの切り替えに用いる閾値を厳しくすることで、広域モードと通常モードとの切り替えが頻繁に発生するのを好適に抑制することができる。
【0014】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記通常モードでは、前記ルート案内画像と共に前記風景に含まれる施設を示すマーク画像を当該施設に対応する位置に表示させ、前記広域モードでは、前記マーク画像を表示させない。広域モードでは、ルート案内画像に表示するルートを広域にすることにより、マーク画像が実際の風景の施設に対応しない位置に表示される可能性がある。従って、この態様により、マーク画像の位置ずれに起因したユーザの違和感を好適に抑制することができる。
【0015】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記移動体の移動速度が速いほど、前記所定値を大きくする。一般に、高速移動時では、単位時間内に進む距離が長いため、ユーザはより先のルートを確認したいと思うことが推測される。従って、ナビゲーション装置は、この態様により、高速移動時には広域モードへ切り替えるタイミングを早くし、先のルートを把握できないことによる不安を好適に低減することができる。
【0016】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記通常モードとした場合に表示される前記ルート案内画像が示す路面が連続していない場合、当該路面のうち、途切れた後の路面を除外した路面の距離が、前記所定値以下となる場合に、前記広域モードに切り替える。この態様により、ナビゲーション装置は、例えばルートがくの字型に大きくカーブする場合であっても、ルート案内画像による手前側のルートの表示が短い場合に、好適に広域モードに切り替えることができる。
【0017】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記移動体の前方の風景を撮影するカメラから取得した前方画像に前記ルート案内画像を重畳させて前記表示手段に表示させる。この態様であっても、好適に、本発明を実施することができる。
【0018】
上記ナビゲーション装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記通常モードでは前記進行方向を含む第1角度範囲内に存在するルート案内画像を表示手段に表示させ、前記広域モードでは前記第1角度範囲よりも広い第2角度範囲内に存在するルート案内画像を表示させる場合、前記広域モードで表示させる前記前方画像の画角を、前記通常モードで表示させる前記前方画像の画角よりも広くする。このようにすることで、ナビゲーション装置は、広域モードに切り替えた場合であっても、好適に、ルート案内画像と、前方画像に表示された路面とを対応付けて表示することができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態では、ヘッドアップディスプレイは、上記いずれかに記載のナビゲーション装置と、車両の運転者に向けて画像を構成する光を反射することで、前記運転者に虚像を視認させる表示手段と、を備える。上記態様のヘッドアップディスプレイは、曲率が大きいカーブや右左折地点に近付いた場合であっても、適切な範囲のルートをユーザに認識させることができる。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態では、ナビゲーション装置が実行する制御方法であって、移動体の位置を取得する取得工程と、前記移動体の前方の風景又は当該風景を撮影した前方画像に重畳させて、前記移動体の現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示すルート案内画像を表示手段に表示させ、かつ、前記ルート案内画像を、前記風景又は前記前方画像に含まれる前記ルートに相当する路面と対応させて前記表示手段に表示させる通常モードと、前記通常モードで表示させる前記ルート案内画像よりも広範囲のルートを示すルート案内画像を前記表示手段に表示させる広域モードとの切り替えを行う制御工程とを有し、前記制御工程では、前記通常モードによりルート案内画像を表示させると当該ルート案内画像に対応する路面の距離が所定値以下となる場合に、前記広域モードに切り替える。ナビゲーション装置は、この制御方法を実行することで、曲率が大きいカーブや右左折地点に近付いた場合であっても、適切な範囲のルートをユーザに認識させ、ユーザに安心感を与えることができる。
【0021】
本発明のさらに別の実施形態では、コンピュータが実行するプログラムであって、移動体の位置を取得する取得手段と、前記移動体の前方の風景又は当該風景を撮影した前方画像に重畳させて、前記移動体の現在位置から目的地又は立寄地へのルートを示すルート案内画像を表示手段に表示させ、かつ、前記ルート案内画像を、前記風景又は前記前方画像に含まれる前記ルートに相当する路面と対応させて前記表示手段に表示させる通常モードと、前記通常モードで表示させる前記ルート案内画像よりも広範囲のルートを示すルート案内画像を前記表示手段に表示させる広域モードとの切り替えを行う制御手段として前記コンピュータを機能させ、前記制御手段は、前記通常モードによりルート案内画像を表示させると当該ルート案内画像に対応する路面の距離が所定値以下となる場合に、前記広域モードに切り替える。コンピュータは、このプログラムを実行することで、曲率が大きいカーブや右左折地点に近付いた場合であっても、適切な範囲のルートをユーザに認識させ、ユーザに安心感を与えることができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0023】
[概略構成]
(1)システム構成
図1は、実施例に係る表示システム100の構成例を示す。
図1に示すように、表示システム100は、車両Veに搭載され、ナビゲーション装置1と、ヘッドアップディスプレイ2とを備える。なお、
図1に示す構成に代えて、ヘッドアップディスプレイ2には、ナビゲーション装置1に相当する機能が組み込まれていてもよい。
【0024】
ナビゲーション装置1は、出発地から目的地までのルート案内を行う機能などを有する。ナビゲーション装置1は、例えば、車両Veに設置される据え置き型のナビゲーション装置、PND(Portable Navigation Device)、又はスマートフォンなどの携帯端末とすることができる。
【0025】
ヘッドアップディスプレイ2は、現在位置を含む地図情報やルート案内情報、走行速度、その他運転を補助する情報を表示する画像(「案内画像」とも呼ぶ。)を生成し、当該案内画像を運転者の目の位置(アイポイント)から虚像として視認させる装置である。ヘッドアップディスプレイ2には、車両の位置情報、案内ルートに関する情報、施設情報を含む地図情報などのナビゲーション処理に用いられる各種情報がナビゲーション装置1から供給される。なお、ヘッドアップディスプレイ2は、案内画像を生成する代わりに、ナビゲーション装置1が生成した案内画像を受信し、当該案内画像を虚像として運転者に視認させてもよい。
【0026】
なお、ナビゲーション装置1がスマートフォンなどの携帯端末である場合、ナビゲーション装置1は、クレードルなどによって保持されても良い。この場合、ナビゲーション装置1は、クレードルなどを介して、ヘッドアップディスプレイ2と情報の授受を行うこととしても良い。
【0027】
(2)ナビゲーション装置の構成
図2は、ナビゲーション装置1の構成を示す。
図2に示すように、ナビゲーション装置1は、自立測位装置10、GPS受信機18、システムコントローラ20、ディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、通信装置38、インタフェース39、表示ユニット40、音声出力ユニット50、及び入力装置60を備える。
【0028】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両Veの加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、車両Veの方向変換時における車両Veの角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、車両Veの車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0029】
GPS受信機18は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両Veの絶対的な位置(「現在位置」とも呼ぶ。)を検出するために用いられる。
【0030】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置1全体の制御を行う。
【0031】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13並びにGPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0032】
システムコントローラ20、CD-ROMドライブ又はDVD-ROMドライブなどのディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0033】
ディスクドライブ31は、システムコントローラ20の制御の下、CD又はDVDといったディスク33から、音楽データ、映像データなどのコンテンツデータを読み出し、出力する。なお、ディスクドライブ31は、CD-ROMドライブ又はDVD-ROMドライブのうち、いずれか一方としてもよいし、CD及びDVDコンパチブルのドライブとしてもよい。
【0034】
データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図データなどのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶するユニットである。地図データは、道路に相当するリンクと、道路の接続部分(交差点)に相当するノードとにより表された道路データや、各施設に関する施設情報などを含む。施設情報には、例えば、登録された施設ごとに表示すべき施設マーク(マーク画像)の情報や当該施設の位置情報が含まれている。
【0035】
通信装置38は、例えば、FMチューナやビーコンレシーバ、携帯電話や専用の通信モジュールなどにより構成され、通信用インタフェース37を介して、VICS(登録商標、Vehicle Information Communication System)センタから配信される渋滞や交通情報などの道路交通情報、その他の情報を受信する。また、通信装置38は、GPS受信機18から取得した現在位置の情報、自立測位装置10から取得した車速パルス等の情報及び地図データなど、ナビゲーション処理に用いられる各種情報をヘッドアップディスプレイ2に送信する。
【0036】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図データを読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図データなどを表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM)等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、画像表示部として機能し、例えば対角5~10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0037】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、CD-ROMドライブ31又はDVD-ROM32、若しくはRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0038】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式の場合、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。
【0039】
(3)ヘッドアップディスプレイの構成
図3は、ヘッドアップディスプレイ2の概略構成図である。
図3に示すように、本実施例に係るヘッドアップディスプレイ2は、光源ユニット4と、コンバイナ9とを備え、フロントウィンドウ25、天井部27、ボンネット28、及びダッシュボード29などを備える車両Veに取り付けられる。
【0040】
光源ユニット4は、支持部材5a、5bを介して車室内の天井部27に設置され、運転を補助する情報を示す案内画像を構成する光を、コンバイナ9に向けて出射することで、コンバイナ9を介して運転者に虚像「Iv」を視認させる。
【0041】
コンバイナ9は、光源ユニット4から出射される表示像が投影されると共に、表示像を運転者のアイポイント「Pe」へ反射することで当該表示像を虚像Ivとして表示させる。そして、コンバイナ9は、天井部27に設置された支持軸部8を有し、支持軸部8を支軸として回動する。支持軸部8は、例えば、フロントウィンドウ25の上端近傍の天井部27、言い換えると運転者用の図示しないサンバイザが設置される位置の近傍に設置される。なお、支持軸部8は、上述のサンバイザに代えて設置されてもよい。コンバイナ9は、本発明における「表示手段」の一例である。
【0042】
(4)光源ユニットの構成
図4は、光源ユニット4の構成を概略的に示した図である。
図4に示すように、光源ユニット3は、光源54と、制御部55と、通信部56とを有する。
【0043】
光源54は、例えば赤色、青色及び緑色の各色のレーザ光源を有し、制御部55の制御に基づき、コンバイナ9に照射させる表示像を構成する光(「表示光」とも呼ぶ。)を出射する。
【0044】
通信部56は、制御部55の制御に基づき、ナビゲーション処理に用いられる各種情報をナビゲーション装置1から受信する。例えば、通信部56は、目的地が設定されたときに、ナビゲーション装置1から案内ルートの情報を受信する。また、通信部56は、ナビゲーション装置1から、GPS受信機18が測定した現在位置の情報を、所定の間隔ごとに受信する。また、通信部56は、ルート案内の目印(ランドマーク)となる施設の情報や、案内ルート上や現在位置周辺での交通規制の情報などを、POI(Point of Interest)情報としてナビゲーション装置1から受信する。
【0045】
制御部55は、CPU、CPUが実行する制御プログラムやデータなどを記憶するROM、CPUが動作する際のワークメモリとして各種データが逐次読み書きされるRAMなどを有し、ヘッドアップディスプレイ2の全般的な制御を行う。
【0046】
本実施例では、制御部55は、ナビゲーション装置1から受信したGPS受信機18の測定情報及び自立測位装置10の測定情報に基づき、車両Veの位置及び進行方向を認識する。そして、制御部55は、車両Veの進行方向から所定角度(「角度θ」とも呼ぶ。)以内にあり、かつ、車両Veから所定距離(「距離r」とも呼ぶ。)以内にあるエリア(「表示対象エリアAtag」とも呼ぶ。)を認識する。そして、制御部55は、表示対象エリアAtag内の案内ルートを示すルート案内画像と、表示対象エリアAtag内の施設を示すマーク画像とを案内画像として生成し、これらの案内画像を構成する光を光源54に出射させることで、運転者の前方風景に重なるように案内画像をコンバイナ9に表示させる。そして、制御部55は、「取得手段」、「制御手段」及びプログラムを実行するコンピュータとして機能する。
【0047】
[案内画像の表示]
次に、制御部55が実行する案内画像の表示方法について説明する。概略的には、制御部55は、表示対象エリアAtag内の案内ルートとなる路面の長さ(「ルート距離Dtag」とも呼ぶ。)が所定距離以内になった場合には、角度θを大きくすることで表示対象エリアAtagを拡大する。これにより、制御部55は、右左折地点や急カーブに差し掛かった場合であっても、通過すべきルートを好適に運転者に認識させる。
【0048】
以後では、角度θを大きくして表示対象エリアAtagを拡大する前の案内画像の表示モードを「通常モード」と呼び、角度θを大きくして表示対象エリアAtagを拡大した際の案内画像の表示モードを「広域モード」とも呼ぶ。また、通常モードで用いる角度θ及び距離rをそれぞれ「第1角度θ1」及び「第1距離r1」とも呼び、広域モードで用いる角度θ及び距離rをそれぞれ「第2角度θ2」及び「第2距離r2」とも呼ぶ。
【0049】
(1)通常モードでの表示処理
まず、通常モードでの案内画像の表示処理について、
図5及び
図6を参照して具体的に説明する。
【0050】
図5(A)は、車両Veの現在位置周辺を表すマップ内における表示対象エリアAtagの設定範囲を示す。なお、
図5(A)では、表示対象エリアAtag内の案内ルートが実線84Aにより示され、表示対象エリアAtag外の案内ルートが破線84Bにより示されている。
【0051】
まず、制御部55は、第1角度θ1(例えば20度)及び第1距離r1(例えば200m)に基づき、表示対象エリアAtagを認識する。
図5(A)の例では、制御部55は、車両Veの進行方向から第1角度θ1以内にあり、車両Veの現在位置から第1距離r1以内にある破線で囲まれた扇形の領域を、表示対象エリアAtagとして認識する。なお、第1角度θ1及び第1距離r1は、例えば、コンバイナ9を介して運転者が視認可能な風景の範囲と表示対象エリアAtagとがおよそ一致するような値に設定される。
【0052】
そして、制御部55は、表示対象エリアAtag内にある道路85Aに対応するルート案内画像及びルート案内上のランドマークとなる施設に対するマーク画像(ここでは「A」)を生成し、これらの画像を前方風景に重ねてコンバイナ9上に表示する。これについて、
図5(B)を参照して説明する。
【0053】
図5(B)は、
図5(A)の例において、運転席から視認される前方風景の一例である。
図5(B)では、制御部55は、表示対象エリアAtag内に存在する案内ルートである道路85Aを示すルート案内画像80を表示すると共に、表示対象エリアAtag内に存在する施設90のマーク画像81を表示する。ここでは、制御部55は、表示対象エリアAtag内の案内ルートである道路85Aを上下反転させた上空位置にルート案内画像80を表示している。また、制御部55は、マーク画像81を、施設90に対応する位置であって、現在位置からの距離に応じた大きさにより表示している。
【0054】
また、制御部55は、案内画像の表示処理に加えて、表示対象エリアAtag内のルート距離Dtagを算出し、ルート距離Dtagが通常モードから広域モードへ切り替えるべきか判定するための閾値(「第1閾値Dth1」とも呼ぶ。)よりも長いか否か判定する。
図5(A)、(B)の例では、制御部55は、ルート距離Dtagが第1閾値Dth1(例えば100m)よりも長いと判断し、通常モードを継続する。
【0055】
図6(A)は、
図5(A)の例から車両Veが所定距離だけ進行した後の状態を示す。この場合、制御部55は、再び、第1角度θ1及び第1距離r1に基づき、表示対象エリアAtagを認識する。さらに、制御部55は、表示対象エリアAtag内のルート距離Dtagを算出し、ルート距離Dtagが第1閾値Dth1よりも長いと判断し、通常モードを継続する。そして、制御部55は、表示対象エリアAtag内に存在する案内ルートである道路85A及び道路85Bと、表示対象エリアAtag内に存在する施設90とを対象に案内画像を生成する。
【0056】
図6(B)は、
図6(A)の例における風景に重畳されたコンバイナ9の表示例である。なお、
図6(B)では、コンバイナ9に重なる部分の表示のみを表している。この場合、制御部55は、
図6(B)に示すように、表示対象エリアAtag内に存在する案内ルートである道路85A及び道路85Bを示すルート案内画像80を、各道路に対応付けて表示すると共に、表示対象エリアAtag内に存在する施設90のマーク画像81を施設90に対応する位置に表示する。
【0057】
なお、
図6の例では、道路85Aを左折後のルートである道路85Bがコンバイナ9の左端位置を突き抜けるように延びており、道路85Bに対応するルート案内画像80がコンバイナ9の左端で途切れている。従って、この場合、運転者は道路85Aから道路85Bに左折後のルートをまだ把握することができない。これに対応するため、制御部55は、この直後に後述する広域モードに切り替える。
【0058】
(2)広域モードでの表示処理
次に、広域モードでの表示処理について、
図7を参照して説明する。
【0059】
図7(A)は、
図6(A)に示す状態から車両Veが所定距離だけ進行した後の表示対象エリアAtagの範囲を示す。この例では、制御部55は、第1角度θ1及び第1距離r1に基づき認識した表示対象エリアAtag内のルート距離Dtagを算出した結果、ルート距離Dtagが第1閾値Dth1以下になったと判断し、通常モードから広域モードに切り替えている。
【0060】
図7(A)に示すように、広域モードでは、制御部55は、第1角度θ1より大きい値(ここでは第1角度θ1の2倍)に設定された第2角度θ2と、第1距離r1以上の値に設定された第2距離r2とに基づき、表示対象エリアAtagを設定する。その結果、設定された表示対象エリアAtagは、通常モードでの表示対象エリアAtagよりも広域に設定される。そして、設定された表示対象エリアAtagには、道路85Bの次に通行予定の道路85Cと、道路85Bと道路85Cとの交差点付近に存在する施設マーク「B」に対応する施設とが新たに含まれることになる。そして、制御部55は、第2角度θ2及び第2距離r2に基づく表示対象エリアAtag内に存在する道路85A~85C、及び、表示対象エリアAtag内に存在する施設90及び施設マーク「B」に対応する施設を対象として、案内画像を生成する。
【0061】
図7(B)は、
図7(A)の例における風景に重畳されたコンバイナ9の表示例である。なお、
図7(B)では、
図6(B)と同様、コンバイナ9に重なる部分の表示のみを表している。
【0062】
図7(B)に示すように、制御部55は、この場合、道路85A、85Bに加え、コンバイナ9を介して視認できない風景中の道路85Cに対応するルート案内画像80を、コンバイナ9上に表示させている。同様に、制御部55は、コンバイナ9を介して視認できない風景中の施設に対応する施設マーク88を、ルート案内画像80を基準とした位置に表示させている。また、制御部55は、施設90に対応する施設マーク81を、ルート案内画像80を基準とした位置に表示させている。
【0063】
このように、
図7(B)の例では、制御部55は、コンバイナ9を介して視認されるエリアよりも広域に表示対象エリアAtagを設定することで、ルート案内画像80が示す案内ルートの範囲を拡大している。これにより、制御部55は、道路85Aから道路85Bに左折後のルートを運転者に好適に視認させることができる。
【0064】
また、制御部55は、広域モードの場合であっても、第1角度θ1及び第1距離r1に基づく表示対象エリアAtag内のルート距離Dtagを算出し、当該ルート距離Dtagが広域モードから通常モードへ切り替えるべきか判定するための閾値(「第2閾値Dth2」とも呼ぶ。)よりも長い場合、広域モードから通常モードに戻す。第2閾値Dth2は、第1閾値Dth1と同一値であってもよく、異なる値であってもよい。好適には、制御部55は、第2閾値Dth2を、第1閾値Dth1よりも長い距離に設定する。例えば、制御部55は、第1閾値Dth1を100mに設定した場合、第2閾値Dth2を150mに設定する。これにより、制御部55は、通常モードと広域モードとが頻繁に切り替わるのを好適に抑制することができる。
【0065】
(3)案内距離の算出方法
次に、ルート距離Dtagの算出方法の具体例について、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0066】
図8は、地図データ上の点(ノード)N1~N6と線(リンク)L1~L6により表した案内ルートを表示対象エリアAtagと共に示した図である。
図8の例でルート距離Dtagを算出する場合、まず、制御部55は、車両Veの進行方向及び現在位置と、第1角度θ1及び第1距離r1とに基づき、表示対象エリアAtagの境界を認識する。次に、制御部55は、案内ルートを示す線L1~L6と、表示対象エリアAtagの境界との交点「α」を認識し、かつ、交点αに最も近い点が点N4であると認識する。そして、制御部55は、線L2上の現在地点又は現在地点に最も近い点N2から交点αに最も近い点N4までを結ぶ各線の長さの総和を計算し、当該総和に対して地図の縮尺に応じた係数を乗じた値を、ルート距離Dtagとして認識する。このようにすることで、制御部55は、好適にルート距離Dtagを算出することができる。
【0067】
なお、制御部55は、現在位置が案内ルートから外れていると判断した場合、ルート距離Dtagの算出処理を行わなくてもよい。この場合、制御部55は、現在位置が案内ルートから外れる前の案内画像の表示モード(通常モード又は広域モード)に固定して案内画像の表示処理を行う。
【0068】
また、好適には、制御部55は、案内ルートが表示対象エリアAtagの外に出た後再び表示対象エリアAtag内に入る場合、再び表示対象エリアAtag内に入った部分については、ルート距離Dtagの算出対象としない。これについて、
図9を参照して説明する。
【0069】
図9は、案内ルートが表示対象エリアAtagの外に出た後再び表示対象エリアAtag内に入る場合の具体例を示す。
図9に示す道路89では、区画89Aから先の区画89Bが表示対象エリアAtagから外れており、区画89Bから先の区画89Cが再び表示対象エリアAtag内に存在する。
【0070】
この場合、制御部55は、現在位置から表示対象エリアAtagを出るまでの区画89Aを対象としてルート距離Dtagを算出し、表示対象エリアAtag外から再び表示対象エリアAtagに進入した区画89Cをルート距離Dtagの算出対象としない。即ち、制御部55は、通常モードとした場合に表示されるルート案内画像が示す案内ルートが連続していない場合、当該案内ルートのうち、途切れた後の部分を除外してルート距離Dtagを算出する。これにより、制御部55は、
図9に示す道路89のようにくの字型に曲がる道路を走行中の場合であっても、カーブに差し掛かる前に好適に通常モードから広域モードに切り替えることができる。
【0071】
(4)処理フロー
図10は、通常モードでの処理手順を示すフローチャートの一例である。制御部55は、
図10に示すフローチャートの処理を、案内画像の表示モードが通常モードの場合に繰り返し実行する。
【0072】
まず、制御部55は、第1角度θ1及び第1距離r1に基づき表示対象エリアAtagを認識する(ステップS101)。次に、制御部55は、ステップS101で認識した表示対象エリアAtag内のルート距離Dtagを算出し、ルート距離Dtagが第1閾値Dth1以下であるか否か判定する(ステップS102)。そして、ルート距離Dtagが第1閾値Dth1以下である場合(ステップS102;Yes)、制御部55は、通常モードのままではルート案内画像が示すルートが短いと判断し、広域モードに切り替えて案内画像の表示処理を行う(ステップS103)。広域モードでの処理については、
図11を参照して後述する。
【0073】
一方、制御部55は、ルート距離Dtagが第1閾値Dth1より長いと判断した場合(ステップS102;No)、第1角度θ1及び第1距離r1に基づく表示対象エリアAtagに基づき、案内画像を生成し、コンバイナ9上に表示させる(ステップS104)。即ち、この場合、制御部55は、コンバイナ9を介して視認される案内ルート及び施設等を対象として、これらに対応するルート案内画像やマーク画像等を生成し、これらの画像を実際の道路や施設に対応付けてコンバイナ9上に表示させる。
【0074】
図11は、広域モードでの処理手順を示すフローチャートの一例である。制御部55は、
図11に示すフローチャートの処理を、案内画像の表示モードが広域モードの場合に繰り返し実行する。
【0075】
まず、制御部55は、第1角度θ1より大きい第2角度θ2及び第1距離r1以上に設定された第2距離r2に基づき表示対象エリアAtagを認識する。そして、制御部55は、認識した表示対象エリアAtagを対象に案内画像を生成し、コンバイナ9により表示させる(ステップS201)。この場合、角度θが第1角度θ1から第2角度θ2に拡大していることにより、ルート案内画像として表示する案内ルートの範囲が拡大している。従って、制御部55は、右左折地点や曲率が大きいカーブの地点に近づいた場合に、ルート案内画像として表示する案内ルートが短いことに起因した運転者の不安を好適に抑制することができる。
【0076】
次に、制御部55は、第1角度θ1及び第1距離r1に基づく表示対象エリアAtag内のルート距離Dtagを算出する(ステップS202)。そして、制御部55は、ルート距離Dtagが第2閾値Dth2より長いか否か判定する(ステップS203)。そして、制御部55は、ルート距離Dtagが第2閾値Dth2より長いと判断した場合(ステップS203;Yes)、案内画像の表示モードを通常モードに切り替える(ステップS204)。ここで、好適には、制御部55は、第2閾値Dth2を第1閾値Dth1よりも大きい値に設定する。これにより、案内画像の表示モードの切り替えが頻繁に発生するのを抑制することができる。一方、制御部55は、ルート距離Dtagが第2閾値Dth2以下であると判断した場合(ステップS203;No)、再びステップS202へ処理を戻す。
【0077】
以上説明したように、本実施例に係るヘッドアップディスプレイ2は、光源ユニット4と、コンバイナ9とを備える。光源ユニット4の制御部55は、通信部56によりナビゲーション装置1から車両Veの位置情報を取得する。そして、制御部55は、ルート案内画像をコンバイナ9に表示させ、かつ、通常モードと、広域モードとの切り替えを行う。このとき、制御部55は、通常モードでの表示対象エリアAtag内のルート距離Dtagが第1閾値Dth1以下となる場合に、広域モードに切り替える。これにより、ヘッドアップディスプレイ2は、曲率が大きいカーブや右左折地点に近付いた場合であっても、適切な範囲のルートをユーザに認識させ、ユーザに安心感を与えることができる。
【0078】
[変形例]
以下、上述の実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の実施例に適用してもよい。
【0079】
(変形例1)
表示システム100は、風景に重ねて案内画像をヘッドアップディスプレイ2により表示させるのに代えて、車両Veの前方を撮影したカメラの画像に重ねて案内画像をナビゲーション装置1のディスプレイ44上に表示させてもよい。
【0080】
図12は、本変形例に係る表示システム100Aの構成例を示す。
図12に示すように、表示システム100Aは、携帯端末などのナビゲーション装置1に加え、車両Veの前方を撮影するカメラ6を備える。カメラ6は、撮影した画像(「カメラ画像」とも呼ぶ。)をナビゲーション装置1へ供給する。そして、ナビゲーション装置1のシステムコントローラ20は、ルート案内画像やマーク画像などの案内画像を、カメラ画像に重ねてディスプレイ44上に表示する。
【0081】
そして、システムコントローラ20は、実施例の制御部55と同様、
図10及び
図11に示すフローチャートを実行し、通常モードと広域モードとを、ルート距離Dtagに応じて切り替える。この態様によっても、制御部55は、曲率が大きいカーブや右左折地点に近付いた場合でも、適切な範囲のルートをユーザに認識させることができる。
【0082】
また、好適には、システムコントローラ20は、
図10及び
図11の処理に加えて、カメラ6の画角を、案内画像の表示モードの切り替えに連動させて切り替えるとよい。これにより、広域モードでのルート案内画像及びマーク画像の実際の風景との位置ずれを低減することができる。これについて、
図13を参照して説明する。
【0083】
図13(A)は、道路85Aを車両Veが走行中の場合に、広域モードに切り替える直前の通常モードでのディスプレイ44の表示例であり、
図13(B)は、
図13(A)の状態から広域モードに切り替わった直後のディスプレイ44の表示例である。
【0084】
図13(A)、(B)に示すように、システムコントローラ20は、通常モードに比べて、広域モードではカメラ6の画角を広げている。言い換えると、システムコントローラ20は、通常モードから広域モードへの切り替えにより角度θが第1角度θ1から第2角度θ2に拡大した分だけ、カメラ6の画角を拡大させている。この場合、例えば、システムコントローラ20は、カメラ6に画角の設定に関する制御信号を送信することで、通常モード時と広域モード時とでそれぞれカメラ画像の画角を変更する。他の例では、カメラ6の画角を広域モードで使用する画角に固定しておき、システムコントローラ20は、通常モード時では、カメラ画像の左右の両端を切り出した上で、ディスプレイ44上に全画面表示する。
【0085】
そして、広域モードでカメラ6の画角を広げた結果、
図13(B)の例では、カメラ画像内の道路85A~85C及び施設90~91に対して、これらを指し示すルート案内画像80及びマーク画像81,88が適切な位置に対応付けられている。このように、システムコントローラ20は、広域モードでカメラ6の画角を広げることで、ルート案内画像やマーク画像を、カメラ画像上の案内ルートの位置や施設の位置に適切に対応付けて表示することができる。
【0086】
なお、本変形例では、表示ユニット40のディスプレイ44は、本発明における「表示手段」の一例である。また、システムコントローラ20は、本発明における「取得手段」、「制御手段」、及び「コンピュータ」の一例である。
【0087】
(変形例2)
制御部55は、第1閾値Dth1及び第2閾値Dth2をそれぞれ固定値にする代わりに、車両Veの走行速度に応じて変化させてもよい。具体的には、制御部55は、車両Veの走行速度が高いほど、第1閾値Dth1及び第2閾値Dth2を高くするとよい。
【0088】
一般に、高速走行時では、単位時間内に車両Veが進む距離が長いため、運転者は、低速走行時と比較して、より先のルートを確認する必要がある。従って、制御部55は、車両Veの走行速度が高いほど、第1閾値Dth1及び第2閾値Dth2を高くすることで、高速走行時には広域モードに切り替えやすくし、案内ルートを好適に運転者に把握させることができる。
【0089】
また、制御部55は、車両Veの走行速度が高いほど、第1閾値Dth1及び第2閾値Dth2を高くするのに加えて、又はこれに代えて、車両Veの走行速度が高いほど、第2角度θ2又は/及び第2距離r2を大きくしてもよい。これにより、制御部55は、高速走行時に広域モードに切り替わった場合に、より先の案内ルートを好適に運転者に視認させることができる。
【0090】
(変形例3)
図7(B)の広域モードでの表示例に代えて、制御部55は、広域モードでは、マーク画像を非表示にしてもよい。
【0091】
図7(B)に示すように、広域モードの場合、角度θを通常モードよりも大きくした結果、マーク画像81の表示位置と施設90の位置とのずれが大きくなる。以上を勘案し、本変形例では、制御部55は、広域モードでマーク画像を非表示にすることで、マーク画像81の表示位置と施設90の位置とのずれによる違和感の発生を防ぐことができる。
【0092】
(変形例4)
制御部55は、通常モードから広域モードに表示モードを切り替える場合、段階的又は連続的に角度θを第1角度θ1から第2角度θ2へ移行させてもよい。例えば、制御部55は、第2角度θ2が第1角度θ1の2倍の場合、角度θを、第1角度θ1から、1.2×θ1、1.4×θ1、1.6×θ1、1.8×θ1、2×θ1のように徐々に変化させる。
【0093】
(変形例5)
図3では、ヘッドアップディスプレイ2は、コンバイナ9を有し、コンバイナ9で反射させた光源ユニット4の出射光に基づき運転者に虚像Ivを視認させていた。しかし、本発明が適用可能な構成はこれに限定されない。これに代えて、ヘッドアップディスプレイ2は、コンバイナ9を有さず、フロントガラス25で反射させた光源ユニット4の出射光に基づき運転者に虚像Ivを視認させてもよい。この場合、フロントガラス25は、本発明における「表示手段」の一例である。
【0094】
また、光源ユニット4の位置は、天井部27に設置される場合に限定されない。これに代えて、光源ユニット4は、ダッシュボード29上に設置されたり、ダッシュボード29の内部に設置されたりしてもよい。ダッシュボード29上に設置される場合、ダッシュボード29には、コンバイナ9を設けるか、又はフロントガラス25に光源ユニット4から直接光を反射させ運転者に虚像Ivを認識させる。ダッシュボード内に設置される場合、ダッシュボード29には、コンバイナ9又はフロントガラス25に光を通過させるための開口部が設けられる。
【0095】
(変形例6)
制御部55の処理の一部を、システムコントローラ20が実行してもよい。例えば、ヘッドアップディスプレイ2が表示するための案内画像をシステムコントローラ20が生成し、ヘッドアップディスプレイ2の光源ユニット4が当該案内画像を受信する態様であってもよい。この場合、システムコントローラ20は、制御部55に代えて、
図10及び
図11のフローチャートの処理を実行する。この場合、システムコントローラ20は、
図10のステップS104及びステップS201では、生成した案内画像を光源ユニット4に送信することで、案内画像をヘッドアップディスプレイ2に表示させる。
【0096】
なお、この変形例では、システムコントローラ20は、本発明における「取得手段」、「制御手段」、及び「コンピュータ」の一例である。