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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126356
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】一体型螺旋カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023113592
(22)【出願日】2023-07-11
(62)【分割の表示】P 2020523990の分割
【原出願日】2018-10-10
(31)【優先権主張番号】15/798,821
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】ビークラー・クリストファー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】キース・ジョセフ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘレラ・ケビン・ジャスティン
(57)【要約】
【課題】医療用カテーテル留置のための装置を提供すること。
【解決手段】医療用カテーテル留置は、心臓の中にカテーテルを導入し、マルチ電極プローブを取り囲むシースを通してカテーテルを心臓の腔の中へ摺動させることによって実行される。シースを後退させて、プローブを露出させる。シースを後退させると、露出させたプローブが螺旋構成に拡張し、複数の接触点において、電極が腔の心内膜表面と接触する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用カテーテル留置のための装置であって、
心臓の中へ導入されるように適合された外側シースと、
前記心臓の腔の中へと挿入されるように前記外側シースの中を摺動可能なカテーテルであって、
内側シース、
コンパクトな構成において、前記内側シースの中を移動可能なマルチ電極プローブであって、前記マルチ電極プローブが、遠位端を有し、前記内側シースを超えて前記腔の中へ前進させられたときに、拡張された螺旋構成を取るように前記マルチ電極プローブを付勢する形状記憶合金を含む、マルチ電極プローブ、および
前記内側シース内を自由に回転可能であるブッシングであって、前記ブッシングの中を前記マルチ電極プローブが前進したり後退したりするように構成されている、ブッシングを備える、カテーテルと、を備える、装置。
【請求項2】
前記マルチ電極プローブが、
電気的絶縁材料で作製され、外面を有する可撓性のチューブと、
互いに電気的に絶縁された、前記チューブの前記外面に配置された複数のアブレーション電極と、
互いに、かつ前記アブレーション電極から電気的に絶縁された複数の微小電極であって、前記アブレーション電極よりも小さい、微小電極と、を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ガードルであって、前記ガードルの中を前記マルチ電極プローブが摺動するように構成されており、前記ガードルは前記マルチ電極プローブを前記ブッシングの内壁に対して保持し、前記ブッシングは、前記マルチ電極プローブが展開され、広がるときに、前記ガードルの軸を中心に回転するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ブッシングは、前記ガードルと前記内側シースとの間に配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ブッシングは、前記内側シース内に配置された円筒状部材である、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記ブッシングは、前記内側シースと同心である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ガードルは、前記ブッシング内に配置された円筒状部材である、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記ガードルは、前記ブッシングと同心である、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(著作権表示)
本特許文献の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権者は、特許文献又は特許情報開示のうちの任意のものによる複製に対して、それが特許商標庁特許出願又は記録において明らかであるとき、異議を唱えないが、そうでなければ、たとえ何であっても全ての著作権を保有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、非機械的形態のエネルギーを身体に対し移入又は移出することに関する。より具体的には、本発明は、診断及び治療を目的とする心臓の電気信号の送信及び受信に関する。
【背景技術】
【0003】
心房細動などの心不整脈は、罹患及び死亡の重要な原因である。いずれも本明細書において参照により援用されている、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第5,546,951号及び米国特許第6,690,963号(両出願ともBen Haimに対して発行)、並びに国際公開第96/05768号は、心臓組織の電気的特性、例えば、局所活動化時間を、心臓内の正確な場所の関数として検知する方法について開示している。データは、心臓内に前進させられる遠位先端に電気及び場所センサを有する、1つ又は2つ以上のカテーテルを用いて取得される。これらのデータに基づいて心臓の電気活動のマップを生成する方法は、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,226,542号及び米国特許第6,301,496号(両出願ともReisfeldに対して発行)に開示されており、これらの出願は本明細書において参照により援用されている。
【0004】
これらの特許に示唆されているように、場所及び電気活動は、通常、心臓の内側表面上の約10~約20箇所の点で最初に測定される。これらのデータ点は、その後、心臓表面の予備的な再構成又はマップを生成するのに概ね充分である。予備マップは多くの場合、心臓の電気活動の更に包括的なマップを生成するために、付加的な点で取られたデータと結合される。実際、臨床的な状況において、100以上の部位におけるデータを集積して、心腔の電気活動の詳細な包括的マップを生成することも珍しいことではない。その後、生成された詳細なマップは、心臓の電気活動の伝播を改変させ正常な心調律を回復させるための治療上の行動指針、例えば、組織のアブレーションに関する決定を下すための基準となり得る。
【0005】
位置センサを収容するカテーテルを使用して、心臓表面の各点の軌跡を判定してもよい。これらの軌跡を使用して、組織の収縮力などの運動特性を推測することができる。参照により本明細書に援用される米国特許第5,738,096号(Ben Haimに付与)に開示されているように、心臓内の十分な数の点で軌跡の情報が標本化されると、そのような運動特性を示すマップが構築され得る。
【0006】
心臓内のある点における電気活動は通常、遠位先端にあるいはその近くに電気センサを収容したカテーテルを、心臓内のその点へと前進させ、組織をセンサと接触させ、その点におけるデータを収集することによって測定される。単一の遠位先端電極のみを収容したカテーテルを使用して心室をマッピングすることに伴う1つの欠点は、全体としての心腔の詳細なマップに要求される必要な数の点に対して、点ごとにデータを集積するために長時間が要求されることである。したがって、心腔内の複数の標本化点での電気活動(例えば、局所興奮時間(local activation times、LAT))を同時に測定するために、マルチ電極カテーテルが開発されてきた。
【0007】
不整脈を治療するための処置としては、不整脈を発生させている区域をアブレーションによって破壊すること、並びに、そのような信号の伝導路を破壊することが挙げられる。電気エネルギーを用いた体組織のアブレーションが当該技術分野で知られている。このアブレーションは、1つ又は2つ以上のアブレーション電極に対し、高周波エネルギー等の交流を、標的組織を破壊するのに十分な電力で印加することによって実施されるのが一般的である。通常、電極は侵襲プローブ又はカテーテルの遠位先端部又は遠位部分に装着され、この遠位先端部又は遠位部分が被験者に挿入される。遠位先端部は、当該技術分野で知られる種々様々な方式で、例えば被験者の体外にあるコイルによって遠位先端部に発生された磁場を測定することで追跡され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
カテーテルが心腔内の適所に固定された時点で、カテーテルを使用して、心腔の電極電位を分析することができ、次いで、カテーテルを使用して、腔壁の実質的に任意の選択された部分に損傷部を形成することができるシステムがない場合、アブレーション処置は、いくつかの別個のステップにおいて実施することが必要である。ステップの各々は、好適なカテーテルの心臓に対する挿入及び引き出しを必要とする。1つを超えるカテーテルの挿入及び除去を必要とすることは、アブレーション処置を完了するために必要な時間が長くなる。
【0009】
本発明の実施形態は、「一体型」遠位端を有するカテーテルを提供する。遠位端が選択された心腔の中へ挿入されると、遠位端は、心腔全体の電極電位をマッピングし、腔の壁の任意の選択された部分をアブレーションすることが可能である。
【0010】
カテーテルの遠位端は、可撓性絶縁チューブであり、この可撓性絶縁チューブには、生物電気の測定値を取得するために又は電極電位を注入するために使用され得るより小さい微小電極と一緒に、アブレーション電極としての使用に好適な複数の比較的大きい電極が形成される。微小電極はまた、マッピング電極としても使用され得る。アブレーション電極及び微小電極は、個々にアドレス指定可能である。
【0011】
絶縁チューブは、移動可能な回転子によって、及び保持要素によって終端され得る。最初に、チューブは事実上直線であり、そして、選択された心腔の中へ挿入され、よって、保持要素がひっかかり、すなわち、腔の壁に対する接触の効果的な保持を提供し、それによって、チューブの遠位端を適所に固定する。回転子は、直線チューブが長手方向軸を中心に回転することを可能にし、その上にチューブを三次元螺旋状に拡張させて、腔の壁に対して押し付ける。次いで、回転子を取り外し、近位に引き出し、回転子が完全に引き出されると、チューブが完全に展開される。
【0012】
典型的には、螺旋を完全に展開することによって、微小電極からの測定値を使用して、腔の電極電位をマッピングする。次いで、医師は、マップを使用して、腔内のどこをアブレーションするべきかを決定することが可能であり、次いで、アブレーションのために選択した場所に従って、個々のアブレーション電極を選択することが可能である。
【0013】
本発明の実施形態によれば、医療用カテーテル留置の方法が提供され、この方法は、心臓の中へマルチ電極カテーテルを導入することと、シースを通して心臓の腔の中へカテーテルを摺動させることと、シースを後退させてカテーテルを露出させ、一方で、露出させたカテーテルを螺旋構成に拡張することと、拡張して露出させたカテーテルを、複数の接触点において、腔の心内膜表面に接触させることと、によって実行される。
【0014】
本方法の1つの態様によれば、シースを後退させることは、カテーテルを適所に保持しながら実施される。
【0015】
本方法の更なる態様は、シースを後退させながら、カテーテルを前進させることを含む。
【0016】
カテーテルは、可撓性で電気的に絶縁されたチューブと、互いに電気的に絶縁された、チューブの外面に配置された複数のアブレーション電極と、互いに、かつアブレーション電極から電気的に絶縁された複数の微小電極と、を含み得る。本方法の態様は、微小電極によって心臓からの生体電気信号を読み取ることと、選択されたアブレーション電極を通して電気エネルギーを伝導して、心臓の腔の損傷部を生成することと、を含む。
【0017】
カテーテルは、保持要素を含み得る。本方法の態様は、保持要素を心臓の壁に接触させることと、壁上にカテーテルのためのひっかかりを提供することと、シースを後退させながら、シースに対してカテーテルを回転させることと、を含む。
【0018】
本方法の1つの態様によれば、カテーテルは、螺旋ループを形成するようにプローブを付勢する形状記憶を有する。
【0019】
本方法の更なる態様は、微小電極のうちの選択されたものから生物電気の測定値を取得することと、測定値に基づいて、心臓の電気活動のマップを準備することと、を含む。
【0020】
本方法の更に別の態様は、微小電極のうちの選択されたものを通して心臓の中へ電極電位を注入することを含む。
【0021】
本方法の別の態様では、ガイドワイヤの遠位部分の周りにリングが配置される。このリングは、ガイドワイヤ上を自由に摺動可能及び回転可能であり、ガイドワイヤと共に腔の中へ挿入するためのプローブの遠位端に接続されている。本方法の態様は、シースを後退させながら、ガイドワイヤを中心にカテーテルを回転させることを含む。
【0022】
本方法の更に別の態様によれば、ガイドワイヤは、ガイドワイヤ上でのリングの摺動運動を制限するための近位停止部及び遠位停止部を有する。
【0023】
本発明の実施形態によれば、医療用カテーテル留置のための装置が更に提供され、この装置は、心臓の中へ導入するように適合されたアセンブリと、アセンブリを通して心臓の腔の中へ摺動可能なカテーテルと、を含む。カテーテルは、シースを含み、かつコンパクトな構成において、シースを通って移動可能なマルチ電極プローブを備える。プローブは、シースを超えて腔の中へ前進したときに、拡張された螺旋構成を取るようにプローブを付勢する、形状記憶を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明をより深く理解するため、本発明の詳細な説明を実例として参照するが、この説明は以下の図面と併せて読むべきものである。図中、同様の要素には同様の参照数字を付してある。
図1】本発明の開示された実施形態による、心臓においてカテーテル留置を実施するためのシステムの絵画表示である。
図2】本発明の実施形態による、カテーテルの遠位部分のアセンブリの図である。
図3】本発明の実施形態による、カテーテルの遠位部分の概略図である。
図4】本発明の代替の実施形態による、カテーテルの遠位部分の概略図である。
図5】本発明の実施形態による、図2に示されるカテーテルの一部分の詳細図である。
図6】本発明の実施形態による、シースを通した右心房へのカテーテルの展開を例示している心臓の一組の概略図である。
図7】本発明の実施形態による、図2に示されるアセンブリを展開した心臓の概略切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明では、本発明の様々な原理が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらの詳細の全てが本発明を実施する上で必ずしも必要であるとは限らない点は当業者には明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0026】
参照により本明細書に援用される文書は本出願の一体部とみなされるべきであり、いかなる用語も、それらの援用された文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行われる定義と相反するように定義される場合を除き、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0027】
概論
次に図面を参照し、図1を最初に参照すると、この図は、開示される本発明の実施形態に従って構築され、動作する、生存被験体の心臓12に対して診断的又は治療的処置を実施するためのシステム10を絵で表したものである。このシステムは、患者の脈管系を通って心臓12の腔又は脈管構造内に操作者16によって経皮挿入されるマルチ電極カテーテル14を備えている。通常は医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端18を、心臓壁、例えば、アブレーション標的部位と接触させる。その開示が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って、電気的活動マップが準備され得る。
【0028】
システム10は、以下に説明する機能を実行するための好適なソフトウェアでプログラムされた汎用又は組込み型コンピュータプロセッサを備えることができる。したがって、システム10の、本明細書の他の図に示されている部分は、いくつかの別個の機能ブロックを含むものとして示されているが、これらのブロックは必ずしも別個の物体ではなく、むしろ例えば、プロセッサが利用できるメモリに格納されている異なる計算タスク又はデータオブジェクトを表し得る。これらのタスクは、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサで動作するソフトウェアで実行することができる。ソフトウェアは、1つ又は2つ以上のプロセッサに、CD-ROM又は不揮発性メモリのような有形の非一時的媒体で提供され得る。あるいは、又は加えて、システム10は、デジタル信号プロセッサ又は実配線ロジックを備えてもよい。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に説明される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されてもよい。
【0029】
例えば電気的活動マップの評価によって異常と判定された領域は、熱エネルギーの印加によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端18の1つ又は2つ以上の電極に、高周波電流をカテーテル内のワイヤを介して流すことによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、組織をその電気興奮性が永久に失われる点(通常は50℃超)まで加熱する。成功裏に行われた場合、この処置によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、この損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、異なる心腔に適用されて、多数の異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0030】
カテーテル14は、典型的には、ハンドル20を備えており、このハンドル上に好適な制御部を有して、操作者16がアブレーションを行うためにカテーテルの遠位端の操舵、位置決め、及び方向付けを所望のとおりに行うことを可能にする。操作者16を支援するために、カテーテル14の遠位部分は、コンソール24内に配置されたプロセッサ22に信号を提供する1つ又は2つ以上の位置センサ(図示せず)を収容している。プロセッサ22は、後述のようないくつかの処理機能を果たすことができる。以下で説明するように、カテーテル14は、操作者16によって、典型的には下大静脈を介して、シース15を通して心臓12の中へ挿入される。
【0031】
カテーテル14は、以下で説明するように検知及びアブレーションに使用されるマルチ電極32を有する、吹き出し37に示されるような螺旋構成を有する。カテーテルが心臓内に配置されると、現在位置マップを構築することにより、心臓内の電極32の各々の場所が分かるようになる。位置マップを生成するための1つの方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された、Bar-Talらに対する米国特許第8,478,383号に記載されている。
【0032】
電気信号は、カテーテル14の遠位先端18に又は遠位先端18近くに配置された電極32からケーブル34を介して心臓12へと、かつ心臓12からコンソール24へと伝達され得る。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を介して、心臓12へと伝達され得る。
【0033】
ワイヤ接続部35は、コンソール24を、身体表面電極30、並びにカテーテル14の場所座標及び方向座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決めサブシステムの要素であってもよい。参照により本明細書に援用される、Govariらに付与された米国特許第7,536,218号において教示されているように、電極32及び身体表面電極30を使用して、アブレーション部位における組織インピーダンスを測定してもよい。温度センサ(図示せず)、典型的には熱電対又はサーミスタが、アブレーションに使用される電極32近くに搭載されてもよい。
【0034】
コンソール24には、典型的には、1つ又は2つ以上のアブレーション発電機25が収容されている。カテーテル14は、任意の既知のアブレーション技術、例えば、高周波エネルギー、DC電気エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザーにより生成された光エネルギーを使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように適合されてもよい。そのような方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0035】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを判定する磁気位置追跡配置を備える。好適な位置決めサブシステムは、参照により本明細書に援用される米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に記載されている。
【0036】
上述のように、カテーテル14は、コンソール24に連結されており、これにより操作者16は、カテーテル14を観察し、その機能を調節することができる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。信号処理回路は、通常、カテーテル14内の遠位に位置する上述のセンサ及び複数の場所検知電極(図示せず)によって生成される信号を含むカテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び向きを計算し、かつ以下に更に詳細に記載される電極からの電気信号を分析するために使用される。
【0037】
簡略化のために図示されないが、典型的には、システム10は、他の要素を含む。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニタを含み得るが、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に提供するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。上述のように、システム10は、通常、被験者の身体の外側に取り付けられた外側取付参照パッチ上、又は、心臓12内に挿入され、かつ心臓12に対して固定位置に維持された、内側に配置されたカテーテル上のいずれかに、基準位置センサも含む。システム10は、MRIユニットなどのような外部の画像診断モダリティからの画像データを受信することができ、画像を生成及び表示するためにプロセッサ22に組み込まれる又はプロセッサ22によって呼び出されることができる画像プロセッサを含む。
【0038】
第1の実施形態
ここで図2を参照すると、図2は、本発明の実施形態による、カテーテル40の遠位部分のアセンブリの図である。外側シース42の遠位先端は、心臓12(図1)の左心房内にある。肺静脈心門46を視認することができる。螺旋アセンブリ48を、ルーメン50を通して心房の中へ展開している途中である。内側シース52は、シース42を超えて延在し得る。カテーテル40の遠位部分及び内側シース52は、シース42を通して前進され、シース42の長手方向軸を略中心に内側シース52内で回転させることができる。
【0039】
カテーテル40は、前進すると、最終的に心房の壁に遭遇し、保持要素54によって壁に対して適所に保持される。保持要素54は、ひっかかり、すなわち、壁と固定的に結合されるか又はインターロックされることなく、壁に対する有効な保持圧力を提供する。次いで、カテーテル40が回転するのを可能にしながら、内側シース52を後退させることによって、アセンブリ48の展開を完了する。カテーテル40の形状記憶は、図1に示されるように、カテーテル40の複数の点を壁に接触させる。カテーテル40は、内側シース52を通して更に前進させて、より多くのループを壁と接触させることができる。
【0040】
ここで図3を参照すると、図3は、本発明の実施形態による、カテーテル40の展開中の内側シース52の遠位端の詳細な概略図である。カテーテル40は、内側シース52を通って、かつブッシング56を通って前進する。ブッシング56は、両頭矢印58によって示されるように、内側シース52内を自由に回転可能である。カテーテル40は、カテーテル40がガードル60を通って摺動することができるように、ガードル60によってブッシング56の内壁に対して緩く保持される。ブッシング56は、カテーテル40を展開し、広げるときに、ガードル60の軸を中心に回転する。ガードル60は、カテーテル40を内側シース52の中へ後退させているときに、カテーテル40が、内側シース52の端部において捻れること、束になること、又は結節することを防止する。
【0041】
第2の実施形態
ここで図4を参照すると、図4は、本発明の代替の実施形態による、カテーテル62の遠位部分の概略図である。カテーテル62は、ガイドワイヤ66を使用して、シース64の端部を超えて前進する。ガイドワイヤ66の端部分は、リング68によって緩く取り囲まれている。リング68は、ガイドワイヤ66上を自由に摺動可能及び回転可能である。カテーテル62の先端部は、カテーテル62がガイドワイヤ66を中心に回転すること、並びに軸方向に摺動することができるように、リング68に取り付けられている。リング68、したがってガイドワイヤ66に沿ったカテーテル62の遠位端の軸方向運動は、リング68の両側に1つの近位停止部70及び遠位停止部72によって拘束され、よって、リング68は、停止部70と、停止部72との間に配置される。シース64が後退し、かつカテーテル62がシース64の端部を超えて徐々に前進すると、その形状記憶が、図1及び図2によって例示される螺旋構成をカテーテルに取らせる。カテーテル62によって及ぼされるトルクは、カテーテルが拡張するにつれて、ガイドワイヤ66を中心にカテーテル62を回転させる。操作者は、シース64を後退させながら、カテーテル62を回転させることができる。
【0042】
ここで図5を参照すると、図5は、本発明の実施形態によるカテーテル74の一部分の詳細図である。カテーテル74は、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、又は他の好適なポリマーで作製された可撓性で電気的に絶縁されたチューブ76である。アブレーションに使用されるマルチ電極78は、チューブ76の表面に配置される。いくつかの実施形態では、チューブ76は、内部に形状記憶スパイン、例えばニチノールを有することができ、よって、保持要素54によって遠位に固定されたときに、カテーテル74は、例えば図4に示されるように、それ自体を、一連の螺旋ループとして構成する傾向がある。
【0043】
微小電極80は、電極78と関連付けられている。実際、電極78及び微小電極80は、好ましくは寄生静電容量を最小にする特徴を有する、互いに電気的に絶縁された一体型ユニットとして製造され得る。そのような一体型ユニットは、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2016/0100878号、名称「Effective Parasitic Capacitance Minimization for Micro Ablation Electrode」の教示に従って、必要な変更を加えて、構築することができる。
【0044】
図3を再度参照すると、カテーテル40を前進させて、適所で保持し、その後に、内側シース52を引き出した後に、ブッシング56によって補助される、保持要素54と心臓壁との間のカテーテル40の回転に抵抗する摩擦は、シース64(図4)内の摩擦に対して弱い。
【0045】
カテーテル40の形状記憶は、カテーテル40に、内側シース52の軸を中心とする捻り力を及ぼさせ、この力は、ガードル60によってブッシング56に伝達される。ブッシング56は、内側シース52内で回転可能である。結果的に、カテーテル40は、内側シース52の軸を中心に回転することが可能である。
【0046】
電極78及び微小電極80は、導体(図示せず)によってコンソール24(図1)に接続され、かつ個々にアドレス指定可能であり、すなわち、電圧又は電流は、電極78及び微小電極80のうちの選択されたものを介して伝達又は検知することができる。上述のように、微小電極80は、典型的には、心臓を電気的にマッピングするために使用される。代替的に、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第9,370,312号において教示されているように、微小電極80を使用して、電位を注入することができる。
【0047】
展開
ここで図6を参照すると、図6は、本発明の実施形態による、シースを通した右心房82内へのカテーテルの展開を例示している一組の概略図である。フレーム84では、シース86が、下大静脈を介して右心房の上面の位置にナビゲートされている。保持要素88の一部分は、シース86の端部を通って突出する。
【0048】
フレーム90では、カテーテルの近位部分の操作ツール(図示せず)を使用して、カテーテル本体92を適所で保持しながら、シース86が、カテーテル本体92に対して引き出され始めている。カテーテル本体92の形状記憶要素は、カテーテル本体92に螺旋構成を取らせる。シース86の引き出しは、カテーテル本体92の付加的な前進を伴うことができ、これは、カテーテルの完全な展開を容易にする。カテーテルは、心室の寸法よりもかなり長いので、単にシース86を後退させることで、必ずしも全てのループが拡張して、心室の壁に接触することを可能にするとは限らない。
【0049】
フレーム94では、シース86の引き出しが続き、カテーテル本体92は、右心房の約1/3を占める。フレーム96では、カテーテル本体92が右心房の約3/4を占めるようにプロセスが進行している。上述のように、シース86の引き出しは、カテーテル本体92の付加的な前進を伴うことができる。
【0050】
ここで図7を参照すると、図7は、本発明の実施形態による、カテーテル本体92が右心房82内で完全に展開された心臓の概略切断図である。心内膜表面の大部分の領域は、カテーテル本体92の螺旋ループとのいくらかの接触を有する。領域98は、領域98に接触しているアブレーション電極に選択的に給電することによって、損傷部が作成されることを表している。
【0051】
本発明が、本明細書上に具体的に示されて記載されたものに限定されない点が、当業者により理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、先行技術にはない上述の特徴の変形例及び改変例をも含むものである。
【0052】
〔実施の態様〕
(1) 医療用カテーテル留置の方法であって、
心臓の中へマルチ電極カテーテルを導入するステップと、
シースを通して前記カテーテルを前記心臓の腔の中へ摺動させるステップと、
前記シースを後退させて、前記カテーテルを露出させるステップと、
前記シースを後退させながら、露出させた前記カテーテルを螺旋構成に拡張するステップと、
拡張した前記カテーテルを、複数の接触点において、前記腔の心内膜表面に接触させるステップと、を含む、方法。
(2) 前記シースを後退させることが、前記カテーテルを適所に保持しながら実施される、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記シースを後退させながら、前記カテーテルを前進させることを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記カテーテルが、
外面を有する、可撓性で電気的に絶縁されたチューブと、
互いに電気的に絶縁された、前記チューブの前記外面に配置された複数のアブレーション電極と、
互いに、かつ前記アブレーション電極から電気的に絶縁された複数の微小電極と、を備え、前記方法が、
前記微小電極によって前記心臓からの生体電気信号を読み取るステップと、
前記アブレーション電極のうちの選択されたものを通して電気エネルギーを伝導して、前記心臓の前記腔内に損傷部を生成するステップと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記カテーテルが、保持要素を更に備え、前記保持要素を前記心臓の壁に接触させて、前記壁上に前記カテーテルのためのひっかかりを提供することを更に含み、前記方法が、
前記シースを後退させながら、前記シースに対して前記カテーテルを回転させるステップを更に含む、実施態様4に記載の方法。
【0053】
(6) 前記カテーテルが、螺旋ループを形成するように前記カテーテルを付勢する形状記憶を有する、実施態様4に記載の方法。
(7) 前記微小電極のうちの選択されたものから生物電気の測定値を取得することと、前記測定値に基づいて、前記心臓の電気活動のマップを準備することと、を更に含む、実施態様4に記載の方法。
(8) 前記微小電極のうちの選択されたものを通して前記心臓の中へ電極電位を注入することを更に含む、実施態様4に記載の方法。
(9) ガイドワイヤの遠位部分の周りにリングを配置するステップであって、前記リングが、前記ガイドワイヤ上を自由に摺動可能及び回転可能である、配置するステップと、
前記カテーテルと共に前記腔の中へ挿入するために、前記リングを前記カテーテルの遠位端に接続するステップと、
前記シースを後退させながら、前記ガイドワイヤを中心に前記カテーテルを回転させるステップと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記ガイドワイヤが、前記ガイドワイヤ上での前記リングの摺動運動を制限するための近位停止部及び遠位停止部を有する、実施態様9に記載の方法。
【0054】
(11) 医療用カテーテル留置のための装置であって、
心臓の中へ導入するように適合されたアセンブリと、
前記アセンブリを通して前記心臓の腔の中へ摺動可能なカテーテルであって、
シース、並びに
コンパクトな構成において、前記シースを通して移動可能なマルチ電極プローブであって、前記プローブが、遠位端、及び前記シースを超えて前記腔の中へ前進させられたときに、拡張された螺旋構成を取るように前記プローブを付勢する形状記憶を有する、マルチ電極プローブ、を備える、カテーテルと、を備える、装置。
(12) 前記プローブが、
外面を有する、可撓性で電気的に絶縁されたチューブと、
互いに電気的に絶縁された、前記チューブの前記外面に配置された複数のアブレーション電極と、
互いに、かつ前記アブレーション電極から電気的に絶縁された複数の微小電極と、を備える、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記プローブが、前記心臓の壁に接触するように適合された保持要素を更に備える、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記アセンブリが、
ガイドワイヤと、
前記ガイドワイヤの遠位部分の周りに配置されたリングであって、前記リングが、前記ガイドワイヤ上を自由に摺動可能及び回転可能であり、前記リングが、前記カテーテルと共に前記腔の中へ挿入するために、前記プローブの前記遠位端に接続されている、リングと、を更に備える、実施態様11に記載の装置。
(15) 前記ガイドワイヤが、前記ガイドワイヤ上での前記リングの摺動運動を制限するための近位停止部及び遠位停止部を有する、実施態様14に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】