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特開2023-1264多重特異性抗体混合物の生成およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001264
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】多重特異性抗体混合物の生成およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20221222BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20221222BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221222BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221222BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20221222BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
C07K16/00
C07K1/22 ZNA
C12P21/08
C07K16/46
C12P21/02 C
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178933
(22)【出願日】2022-11-08
(62)【分割の表示】P 2020502618の分割
【原出願日】2018-07-23
(31)【優先権主張番号】62/535,354
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506198562
【氏名又は名称】ノビミューン エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ マジストレッリ
(72)【発明者】
【氏名】クシシュトフ マステルナク
(57)【要約】
【課題】多重特異性抗体混合物の生成およびその使用方法の提供。
【解決手段】本発明は、2つまたはそれを超える単一特異性抗体および1つまたはそれを超える二重特異性抗体の混合物から単離された抗体のサブセットを含む多重特異性抗体混合物の生成であって、前記サブセット中のすべての抗体が同じ共通重鎖を有する生成に関する。本発明はまた、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー工程を使用することにより、抗体のこのようなサブセットを単離し、精製しまたは他の方法で産生する方法に関する。本発明はまた、様々な治療適応において抗体のこのようなサブセットを使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年7月21日に出願された米国仮出願第62/535,354号(この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、2つまたはそれを超える単一特異性抗体および1つまたはそれを超える二重特異性抗体の混合物から単離された抗体のサブセットを含む多重特異性抗体混合物の生成であって、前記サブセット中のすべての抗体が同じ共通重鎖を有する生成に関する。本発明はまた、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー工程を使用することにより、抗体のこのようなサブセットを単離し、精製しまたは他の方法で産生する方法に関する。本発明はまた、様々な治療適応において抗体のこのようなサブセットを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
過去20年間、モノクローナル抗体(mAb)は重要な治療モダリティとなり、様々な適応症において大きな利益を患者にもたらしている。mAbの成功は、部分的には、それらの標的抗原に対する高い特異性および低い固有毒性によるものである。これらの特性は、他のクラスの薬物と比較した場合に、オフターゲット副作用を大きく制限する。承認された治療用mAbの大部分は、IgGアイソタイプの非改変抗体である。
【0004】
しかしながら、標準的なmAbにより可能となる単一タンパク質のターゲティングは、有意な治療効果を達成するために必ずしも十分ではない場合がある(Fischer Expert Opin.Drug Discov.2008 3(8):833-839)。
【0005】
有効性を増加させる明らかな選択肢は、2つのmAbを組み合わせて使用することである。この戦略は、例えば、免疫チェックポイント分子をターゲティングする抗体、例えば抗CTLA4抗体および抗PD-1抗体について臨床的に追求されている(Larkinら、N Engl J Med 2015;373:23-34;Harrisら、Cancer Biol Med.2016 13(2):171-93)。しかしながら、mAb組み合わせの開発には、大きなコストおよび開発の障害が伴う。特に、2つの別個の製造プロセスを導入しなければならず、コストの大きな増加につながる(Rasmussenら、Archives of Biochemistry and Biophysics 2012 526:39-145)。3つまたはそれを超えるタンパク質または抗原のターゲティングを検討する場合、これらの問題はさらに重要になる。
【0006】
これまでに、複数のタンパク質または抗原をターゲティングするためのいくつかのアプローチが使用されている。2つのmAbを組み合わせて使用することが追求されているが、大きなコストおよび開発の障害により妨げられることが多い。二重特異性抗体(BiAb)は、多重特異性ターゲティングを達成するための急速に発展している代替手段であり、これまでに、60個を超えるフォーマットが記載されており(Spiessら、Mol
Immunol.2015 67:95-106;Brinkmann and Kontermann mAbs 2017 9:182-212)、2つまたはさらにそれを超えるタンパク質のターゲティングを達成するための別のアプローチは、抗体混合物または組換えポリクローナル混合物の生成である。しかしながら、これらの多重特異性フォーマットのごく一部しか、治療用途について承認されていない。
したがって、複数のタンパク質、エピトープおよび/または抗原を標的とすることができる多重特異性抗体混合物を生成する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Fischer Expert Opin.Drug Discov.2008 3(8):833-839
【非特許文献2】Larkinら、N Engl J Med 2015;373:23-34
【非特許文献3】Harrisら、Cancer Biol Med.2016 13(2):171-93
【非特許文献4】Rasmussenら、Archives of Biochemistry and Biophysics 2012 526:39-145
【非特許文献5】Spiessら、Mol Immunol.2015 67:95-106
【非特許文献6】Brinkmann and Kontermann mAbs 2017 9:182-212
【発明の概要】
【0008】
本開示は、2つまたはそれを超える単一特異性抗体および1つまたはそれを超える二重特異性抗体の混合物から単離された抗体のサブセットを含む抗体混合物であって、前記サブセット中のすべての抗体が同じ共通重鎖を有する抗体混合物を提供する。これらの混合物は、単一細胞において複数の軽鎖が共通重鎖と共発現されるときに産生される。いくつかの実施形態では、精製サブセットは、少なくともカッパ軽鎖を含有する抗体のみを含む。いくつかの実施形態では、精製サブセットは、少なくともラムダ軽鎖を含有する抗体のみを含む。いくつかの実施形態では、精製サブセットは、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖を含有する抗体のみを含む。
【0009】
本開示はまた、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー工程を使用することにより、2つまたはそれを超える単一特異性抗体および1つまたはそれを超える二重特異性抗体の混合物から単離された抗体のサブセットを単離し、精製しまたは他の方法で産生する方法であって、前記サブセット中のすべての抗体が同じ共通重鎖を有する方法を提供する。いくつかの実施形態では、カッパ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、精製工程を実施する。いくつかの実施形態では、ラムダ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、精製工程を実施する。いくつかの実施形態では、2段階アフィニティークロマトグラフィープロセスを使用して、精製工程を実施する。いくつかの実施形態では、カッパ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、第1の精製工程を実施し、ラムダ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、第2の精製工程を実施する。いくつかの実施形態では、ラムダ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、第1の精製工程を実施し、カッパ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、第2の精製工程を実施する。
【0010】
本明細書で提供される多重特異性抗体混合物および方法は、様々な治療、診断および/または予防適応のいずれにおいても有用である。例えば、多重特異性抗体混合物は、がんまたは他の新生物状態の症状の処置または予防が望まれる被験体への抗体混合物の投与による、がんまたは他の新生物状態の症状の処置、予防および/またはその進行の遅延または緩和において有用である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体混合物は、血液悪性腫瘍および/または固形腫瘍の処置において有用である。例えば、本明細書に記載される多重特異性抗体混合物は、CD47腫瘍、メソセリン腫瘍およびそれらの組み合わせの処置において有用である。非限定的な例として、本明細書に記載される多重特異性抗体混合物は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、乳がん、卵巣がん、頭頸部がん、膀胱がん、黒色腫、中皮腫、結腸直腸がん、胆管癌、膵臓がん(膵臓腺癌を含む)、肺がん(肺腺癌を含む)、平滑筋腫、平滑筋肉腫、腎臓がん、神経膠腫、膠芽腫、子宮内膜がん、食道がん、胆管胃がんおよび前立腺がんの処置において有用である。固形腫瘍としては、例えば、乳腺腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、膀胱腫瘍、食道腫瘍、肝腫瘍および腎臓腫瘍が挙げられる。
【0011】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体混合物は、自己免疫疾患および/または炎症性障害の症状の処置または予防が望まれる被験体への抗体混合物の投与による、自己免疫疾患および/または炎症性障害の症状の処置、予防および/またはその進行の遅延または緩和において有用である。自己免疫疾患としては、例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS、これは自己免疫成分を伴うウイルス性疾患である)、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫アディソン病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫性血小板減少性紫斑病(ATP)、ベーチェット病、心筋症、セリアックスプルー-疱疹状皮膚炎;慢性疲労免疫機能障害症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIPD)、瘢痕性類天疱瘡(cicatricial pemphigold)、寒冷凝集素症、クレスト症候群、クローン病、デゴス病、若年性皮膚筋炎、円盤状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症、インスリン依存性糖尿病、若年性慢性関節炎(スティル病)、若年性関節リウマチ、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血(pernacious anemia)、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症(進行性全身性硬化症(PSS)、全身性硬化症(SS)としても公知)、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑およびウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0012】
炎症性障害としては、例えば、慢性炎症性障害および急性炎症性障害が挙げられる。炎症性障害の例としては、アルツハイマー病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アトピー性アレルギー、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、気管支喘息、湿疹、糸球体腎炎、移植片対宿主病、溶血性貧血、変形性関節症、敗血症、脳卒中、組織および臓器の移植、血管炎、糖尿病性網膜症ならびに人工呼吸器誘発性肺傷害が挙げられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体混合物は、T細胞のリターゲティングにおいて有用である。
【0014】
本発明の医薬組成物は、本発明による多重特異性抗体混合物および担体を含み得る。これらの医薬組成物は、例えば治療キットおよび/または診断キットなどのキットに含められ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1A、1Bおよび1Cは、組換え抗体混合物を生成するための様々なアプローチの一連の概略図である。図1Aは、独立して発現させて精製したモノクローナル抗体(mAb)を混合してmAbの混合物を産生する方法を示す。図1Bは、ポリクローナル細胞バンクとも称される細胞株を混合して、単一の発酵リアクターにおいてmAbのみの混合物を産生する方法を示す。図1Cは、単一細胞株において複数の抗体鎖を共発現させて、mAbおよび二重特異性抗体(BiAb)の混合物を産生する方法を示す。
【0016】
図2図2A、2Bおよび2Cは、複数の軽鎖を単一の共通重鎖と共発現させる方法、および得られる産生された抗体混合物の一連の概略図である。図2Aは、2つの抗体軽鎖と単一の重鎖との共発現が、3つの異なる抗体(各Fabにおいてそれぞれが同じ軽鎖を組み込んだ2つのmAb、および各Fabにおいて異なる軽鎖を組み込んだ単一のBiAb)の分泌をどのようにもたらすかを示す。図2Bは、3つの抗体軽鎖と単一の重鎖との共発現が、6つの異なる抗体(各Fabにおいてそれぞれが同じ軽鎖を組み込んだ3つのmAb、および各Fabにおいて異なる軽鎖を組み込んだ3つのBiAb)の分泌をどのようにもたらすかを示す。図2Cは、4つの抗体軽鎖と単一の重鎖との共発現が、10個の異なる抗体(各Fabにおいてそれぞれが同じ軽鎖を組み込んだ4つのmAb、および各Fabにおいて異なる軽鎖を組み込んだ6つのBiAb)の分泌をどのようにもたらすかを示す。
【0017】
図3図3は、単一細胞において2つのラムダ軽鎖、1つのカッパ軽鎖および単一の共通重鎖を共発現させて、2つのIgGλλ mAb、1つのIgGκκ mAb、2つのIgGκλ BiAbおよび1つのIgGλλ BiAbの混合物(混合物1)の分泌をもたらす方法の概略図である。示されているように、異なるアフィニティークロマトグラフィー工程を使用して、混合物1から異なるサブ混合物(submixture)を単離し得る。
【0018】
図4図4は、単一細胞において2つのラムダ軽鎖、2つのカッパ軽鎖および単一の共通重鎖を共発現させて、2つのIgGλλ mAb、2つのIgGκκ mAb、4つのIgGκλ BiAb、1つのIgGλλ BiAbおよび1つのIgGκκ BiAb(混合物1)の分泌をもたらす方法の概略図である。示されているように、異なるアフィニティークロマトグラフィー工程を使用して、混合物1から異なるサブ混合物を単離し得る。
【0019】
図5図5は、単一細胞において3つのラムダ軽鎖、1つのカッパ軽鎖および単一の共通重鎖を共発現させて、3つのIgGλλ mAb、1つのIgGκκ mAb、3つのIgGκλ BiAb、3つのIgGλλ BiAbおよび1つのIgGκκ BiAbの混合物(混合物1)の分泌をもたらす方法の概略図である。示されているように、異なるアフィニティークロマトグラフィー工程を使用して、混合物1から異なるサブ混合物を単離し得る。
【0020】
図6図6は、本開示の方法の一般的な概略図である。
【0021】
図7A図7Aは、CD47および腫瘍関連抗原(TAA)の2つのエピトープをターゲティングする2つの二重特異性抗体の概略図である。
【0022】
図7B図7Bは、カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、2つのBiAb(CD47xTAAエピトープ1およびCD47xTAAエピトープ2)を含有するサブセットを精製する方法の概略図である。
【0023】
図8A図8Aは、CD47および第1の腫瘍関連抗原(TAA1)をターゲティングする第1の二重特異性抗体、ならびにCD47および第2の腫瘍関連抗原(TAA2)をターゲティングする第2の二重特異性抗体の概略図である。
【0024】
図8B図8Bは、カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、2つのBiAb(CD47xTAA1およびCD47xTAA2)を含有するサブセットを精製する方法の概略図である。
【0025】
図9A図9Aは、複数の腫瘍関連抗原(TAA1、TAA2 以下)および/またはTAA上の複数のエピトープをターゲティングする二重特異性抗体の概略図である。
【0026】
図9B図9Bは、カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、4つの異なるBiAb(CD47xTAA1;CD47xTAA2;PD-L1xTAA1;PD-L1xTAA2)を含有するサブセットを精製する方法の概略図である。
【0027】
図10A図10Aは、T細胞を複数の腫瘍関連抗原(TAA1、TAA2 以下)および/またはTAA上の複数のエピトープにリターゲティングするための二重特異性抗体の概略図である。
【0028】
図10B図10Bは、カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、2つの異なるBiAb(CD3xTAA1;CD3xTAA2)を含有するサブセットを精製する方法の概略図である。
【0029】
図11A図11Aは、二価ターゲティングを回避すべき第1および第2のTAAをターゲティングするBiAbと組み合わせた、第1のTAAをターゲティングするmAbの混合物の概略図である。
【0030】
図11B図11Bは、カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、BiAb(TAA1xTAA2)および抗TAA1 mAbを含有するサブセットを精製する方法の概略図である。
【0031】
図12図12A、12Bおよび12Cは、漸増濃度の様々な二重特異性抗体および/またはモノクローナル抗体ならびに二重特異性抗体の組み合わせの存在下で膵臓腺癌HPAC細胞株において観察された、食作用指数として示されている抗体依存性細胞食作用(ADCP)のレベルを示す一連のグラフを示す。
【0032】
図13図13A、13Bおよび13Cは、漸増濃度の様々な二重特異性抗体および/またはモノクローナル抗体ならびに二重特異性抗体の組み合わせの存在下で卵巣腺癌CaOV細胞株において観察された、食作用指数として示されているADCPのレベルを示す一連のグラフを示す。
【0033】
図14図14A、14Bおよび14Cは、漸増濃度の様々な二重特異性抗体および/またはモノクローナル抗体ならびに二重特異性抗体の組み合わせの存在下で胃癌NCI-N87細胞株において観察された、食作用指数として示されているADCPのレベルを示す一連のグラフを示す。
【0034】
図15図15は、漸増濃度の様々な二重特異性抗体および異なる比の二重特異性抗体を使用した組み合わせの存在下で胃癌NCI-N87細胞株において観察された、食作用指数として示されているADCPのレベルを示すグラフである。
【0035】
図16A図16Aは、1つの重鎖および3つの異なる軽鎖の共発現により得られ、プロテインAクロマトグラフィーにより上清から精製されたIgG混合物(レーン1)のサンプルの等電点電気泳動ゲルの写真である。2つの二重特異性抗体から構成されるK2O25O30サブ混合物をレーン2にロードした。
【0036】
図16B図16Bは、K2O25O30サブ混合物の疎水性相互作用クロマトグラフィー後に得られたクロマトグラムである。溶出時間およびピーク特性は、挿入された表に示されている。
【0037】
図17図17は、漸増濃度のK2O25O30サブ混合物およびK2O25とK2O30との等モル組み合わせの存在下で胃癌NCI-N87細胞株において観察された、食作用指数として示されているADCPのレベルを示すグラフである。
【0038】
図18図18Aは、肝臓がんのMSLNトランスフェクトHepG2マウスモデルにおける2つのCD47xMSLNκλボディ(K2O38およびK2O41)およびそれらの組み合わせ(K2O38+K2O41)の抗腫瘍活性を示す。図18Bは、曲線下面積および統計分析を示す。図18Cは、異なる処置群において観察された腫瘍成長阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
本明細書で提供される多重特異性抗体混合物および方法は、他の抗体フォーマットおよび/または抗体混合物で見られる制限を克服する。現在のところ、承認されているモノクローナル抗体フォーマットのほとんどは、IgG1アイソタイプの非改変抗体である。しかしながら、単一抗原のターゲティングは、所望の治療効果を達成するために必ずしも十分ではない(Fischer Expert Opin.Drug Discov.2008 3(8):833-839)。効率を増加させるために、2つのmAbが組み合わせて使用されている。この戦略は、例えば、免疫チェックポイント分子をターゲティングする抗体、例えば抗CTLA4抗体および抗PD-1抗体について臨床的に追求されている(Larkinら、N Engl J Med 2015;373:23-34;Harrisら、Cancer Biol Med.2016 13(2):171-93)。しかしながら、mAb組み合わせの開発には、大きなコストおよび開発の障害が伴う。特に、2つの別個の製造プロセスを導入しなければならず、コストの大きな増加につながる(Rasmussenら、Archives of Biochemistry and Biophysics 2012 526:39-145)。3つまたはそれを超えるタンパク質または抗原のターゲティングを検討する場合、これらの問題はさらに重要になる。
【0040】
多重特異性ターゲティングを達成するための代替手段として二重特異性抗体(BiAb)が開発されており、これまでに、60個を超えるフォーマットが記載されている(Spiessら、Mol Immunol.2015 67:95-106;Brinkmann and Kontermann mAbs 2017 9:182-212)。2つの結合部位が同じ分子に組み込まれるので、mAbまたはmAb組み合わせによりサポートされないユニークな作用様式が、BiAbにより可能になる(Fischer and Leger Pathobiology.2007 74(1):3-14)。このようなユニークな作用様式の例は、腫瘍細胞へのT細胞またはNK細胞のリターゲティング、血液脳関門を通過する輸送の増加による中枢神経系へのBiAb送達、凝固第VIII因子模倣活性、複数の細胞タイプ上において発現される受容体の選択的ターゲティングである。
【0041】
2つまたはさらにそれを超えるタンパク質のターゲティングを達成するためのさらに別のアプローチは、抗体混合物または組換えポリクローナル混合物の生成である。各mAbが別々に産生される上記2つのmAbの組み合わせとは対照的に、混合物中の抗体は、混合物として一緒に産生される。混合物を生成するための様々なアプローチが記載されている(例えば、Raju and Strohl Expert Opin.Biol.Ther.2013 13(10):1347-1352;Wangら、2013 Current Opinion in Chemical Engineering 2013 2:1-11を参照のこと)。組換えポリクローナル混合物の産生に関する一般的な課題は、混合物の各成分が一定に維持し、それにより、混合物の全体的な組成および生物学的活性が一貫するように、バッチ間の一貫性を達成することである。
【0042】
1つのアプローチでは、それぞれが単一のモノクローナル抗体を発現する異なる安定な細胞株を混合して、産生のための単一のバイオリアクターにおいて使用されるポリクローナル細胞バンクを作製する。この場合、異なる細胞株により異なる抗体が培地に分泌され、すべての抗体を一緒に精製して、最終的な組換え抗体混合物を得る(Rasmussenら、Archives of Biochemistry and Biophysics 2012 526:39-145)。この場合、組換えポリクローナル混合物のバッチ間の一貫性を確保するために、発酵中の個々の細胞株の再現可能な成長および生産性特徴を極めてよく制御しなければならない。1つの細胞株のより速い成長または生産性の増加は、混合物の組成に直接的な影響を有する。このような制御レベルの達成は容易ではなく、このアプローチの大きな障害となる。それにもかかわらず、最大25個の独立した抗体の非常に複雑な混合物が、ポリクローナル細胞株を使用して開発され、臨床試験において評価されている(Hjelmstroemら、Blood 2008 112:1987)。
【0043】
別の戦略は、単一細胞内において複数の抗体の重鎖および/または軽鎖を共発現させることである。この場合、異なる重鎖および軽鎖が対形成して、混合物が生成され得る。得られる混合物の複雑性は、共発現される異なる鎖の数に依存する。このアプローチでは、非機能的分子の産生を回避するために、異なる可能な対形成が機能的抗原結合部位を再構成することを確実にすることが重要である。この対形成の問題は、共通重鎖もしくは共通軽鎖の使用により、または所望の対形成を優先的に形成するようにタンパク質インターフェースを操作することにより解決され得る(例えば、Fischerら、Nat.Comms 20156:6113 doi:10.1038/ncomms7113を参照のこと)。独立した細胞株の混合に依拠する以前のアプローチとは対照的に、このアプローチは、mAbおよびBiAbの両方の生成につながる。大きな利点は、それは標準的なmAbプロセスに類似するので、安定な方法で異なる抗体鎖を発現する細胞株が同定されたら、発酵および産生が簡素化されることである。しかしながら、すべての対形成が可能である場合には、混合物成分(mAbおよびBiAb)の複雑性が非常に大きくなり得るので、共通重鎖または軽鎖に依拠する抗体が好ましい。
【0044】
組換え抗体混合物を生成するための異なるアプローチ、それらの利点および制限は表1に列挙されており、図1A~1Cに示されている。
【表1】
【0045】
上記アプローチのいくつかを使用して、いくつかの混合物が開発され、臨床段階に達しているが、これは、この治療モダリティが興味深い実現可能なものであることを示している。混合物は、単一の抗体で達成され得ないユニークな作用様式を可能にする。
【0046】
例えば、HER/ErbBファミリーの受容体のターゲティングは、抗体混合物を用いて積極的に調査されている。受容体チロシンキナーゼのこのファミリーは、成長因子受容体EGFR/ErbB1、HER-2/ErbB2、HER-3/ErbB3およびHER-4/ErbB4を含む。EGFRおよびHER2をターゲティングするいくつかのモノクローナル抗体は、臨床使用について承認されている。研究では、複数のエピトープをターゲティングする抗体の混合物であって、これらの標的に同時に係合することができる抗体の混合物は、インビトロおよびインビボ実験におけるがん細胞成長の阻害の増加につながることが報告されている。これは、HER/ErbBファミリーのメンバーに対して向けられたいくつかの抗体混合物の開発につながった。一例は、前臨床モデルにおいて、承認された抗EGFR mAbセツキシマブと比較して有意に優れた活性を示した2つの抗EGFR mAbの混合物であるSym004である(Koefoedら、mAbs 2011 3:6,584-595)。MM-151は、EGFR上の異なる非重複エピトープをターゲティングする3つのヒトmAbから構成される別の混合物である(Arenaら、Science Translational Medicine 2016 8(324),324ra14)。この混合物は、単一mAb療法と比較した場合、受容体のより有効な遮断を提供し、耐性の出現を制限する。EGFR、HER2およびHER3をターゲティングする6つのmAb(各標的上の非重複エピトープに対して向けられた2つのmAb)から構成されるより複雑な混合物Sym013もまた、臨床開発段階に達している。この受容体ファミリーに対する混合物で観察される優れた全体的活性は、この部分的に冗長なシグナル伝達経路のより完全な停止、抗体媒介性受容体架橋による内在化および分解の増加、Fc媒介性細胞殺滅の増加などのいくつかの要因により説明され得る。
【0047】
抗体混合物が顕著な優位性を示した別の治療分野は、感染性疾患の処置である(Oleksiewiczら、Archives of Biochemistry and Biophysics 2012 526:124-131;Pohlら、Infection and Immunity 2013 81(6):1880-1888)。例えば、ボツリヌス毒素Aなどの可溶性毒素のマルチエピトープターゲティングは、毒素の中和だけではなく、循環からのそのクリアランスも増加させる。全体として、mAbアプローチは、他の治療分野とは対照的に、感染症の処置に非常に有効であると証明されていない。これは、自然免疫系のものと類似のポリクローナル抗体応答が、病原体などの複雑な生物に対する有効な保護に必要であることを反映している可能性がある。
【0048】
ロズロリムパブは、抗体混合物がどれほど複雑であり得るかの顕著な例である。アカゲザルD抗原に対する25個のmAbのこの混合物は、図1Bに例示されているポリクローナル細胞バンクアプローチを使用して産生され、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置のために開発された。この複雑な混合物の利点は、それが、集団に存在する多数のアカゲザルD変異体の有効なカバレッジを提供することである(Robakら、Blood.2012 120(18):3670-76)。
【0049】
これらの例は、混合物が、単一mAb療法と比較して提供し得る機構的利点を強調している。これらの機構としては、限定されないが、受容体の内在化および分解の増加、可溶性標的の迅速な優れたクリアランス、Fc依存性エフェクター機能の増加、単一の標的または複数の標的および経路上の複数のエピトープをターゲティングする相乗効果、標的変異体のより良いカバレッジならびにエスケープ変異の予防が挙げられる。
【0050】
本発明は、i)二重特異性抗体(BiAb)のみまたはii)モノクローナル抗体(mAb)およびBiAbのいずれかの定義された抗体混合物を生成する手段を提供する。前記方法は、混合物中の抗体のすべてのFv領域に共通する単一の抗体重鎖と、カッパまたはラムダファミリーのいずれかのいくつかの軽鎖との共発現に依拠する。この共発現およびIgG分子へのランダム取り込みにより、すべてが同じ重鎖を含有する単一特異性mAbまたはBiAbの混合物の単一細胞からの分泌をもたらす。次いで、米国特許出願公開第20140179547号に以前に記載されているように、例えば、IgGのFc領域に結合する親和性試薬、例えばプロテインAを使用して、完全な混合物を精製し得る。本発明は、分泌された混合物の異なるサブセットを選択的に精製することを可能にするので、以前の方法を改善する。特に、それは、BiAbの混合物の簡便な費用対効果の高い生成を可能にする。これは、単一のmAbまたはmAb混合物により可能ではない作用様式のために、BiAbの混合物を使用する可能性を開く。本発明は、単一の産生細胞株を使用する利点と、最終精製混合物の組成を制御する可能性とを組み合わせて、所望の生物学的活性を最大化する。
【0051】
共通重鎖と共発現される軽鎖の数に応じて、様々なタイプの抗体混合物が生成され得る。このプロセスは、以下のように一般化され得る:
n=共通重鎖と共に発現される異なる軽鎖の数である場合、
異なるmAbの数=n
異なるBiAbの数=(n-n)/2
異なる抗体の総数=n+(n-n)/2
【0052】
表2は、2~10個の異なる軽鎖の共発現に関するこれらの数を掲載しており、3つの例が以下でさらに詳述される:
1-2つの抗体軽鎖が単一の重鎖と共発現される場合、3つの異なる抗体が分泌される:各Fabにおいてそれぞれが同じ軽鎖を組み込んだ2つのmAb、および各Fabにおいて異なる軽鎖を組み込んだ単一のBiAb(図2Aを参照のこと)。しかしながら、3つの形態の存在量は、2つの軽鎖の相対的な発現およびアセンブリに依存する。発現およびアセンブリが同等であれば、理論分布は、各mAbについては25%であり、BiAbについては50%である。
2-3つの抗体軽鎖が単一の重鎖と共発現される場合、6つの異なる抗体が分泌される:各Fabにおいてそれぞれが同じ軽鎖を組み込んだ3つのmAb、および各Fabにおいて異なる軽鎖を組み込んだ3つのBiAb(図2Bを参照のこと)。発現およびアセンブリが同等であれば、理論分布は、各mAbについては11.1%であり、各BiAbについては22.2%である。
3-4つの抗体軽鎖が単一の重鎖と共発現される場合、10個の異なる抗体が分泌される:各Fabにおいてそれぞれが同じ軽鎖を組み込んだ4つのmAb、および各Fabにおいて異なる軽鎖を組み込んだ6つのBiAb(図2Cを参照のこと)。発現およびアセンブリが同等であれば、理論分布は、各mAbについては6.25%であり、各BiAbについては12.5%である。
【表2】
【0053】
共発現される異なる軽鎖がカッパタイプまたはラムダタイプのものであるかに応じて、カッパまたはラムダ軽鎖を含有するmAbおよびBiAbの分布は変動するので、このアプローチにより生成され得る混合物のタイプがさらに多様化される。例えば、2つのラムダ軽鎖および1つのカッパ軽鎖が共通重鎖と共発現される場合、図3に示されているように、2つのIgGλλ mAb、1つのIgGκκ mAb、2つのIgGκλ BiAbおよび1つのIgGλλ BiAbが産生される。4つの軽鎖が共発現される場合、分子分布は、2つのカッパおよび2つのラムダ軽鎖を使用する場合(図4)、または3つのラムダおよび1つのカッパ軽鎖を使用する場合(図5)で変動する。
【0054】
所定の多重特異性混合物で生成される抗体形態の得られる数は、以下のように一般化され得る:
n=カッパ軽鎖の数
m=ラムダ軽鎖の数
である場合、
IgGκκ mAbの数=n
IgGλλ mAbの数=m
IgGκλ BiAbの数=n×m
IgGκκ BiAbの数=(n-n)/2
IgGλλ BiAbの数=(m-m)/2
【0055】
異なる軽鎖の発現およびアセンブリが同一であれば、得られる各形態の理論分布は、以下のように一般化され得る:
n=カッパ軽鎖の数
m=ラムダ軽鎖の数
である場合、
IgGκκ mAbの割合=n/(n×m)
IgGλλ mAbの割合=m/(n×m)
IgGκλ BiAbの割合=(n×m)×2/(n×m)
IgGκκ BiAbの割合=(n-n)/(n×m)
IgGλλ BiAbの割合=(m-m)/(n×m)
【0056】
本発明は、上記の通り、様々な数のカッパおよび/またはラムダ軽鎖の共発現により生成され得る多種多様な異なる混合物から、i)BiAbのみまたはii)mAbおよびBiAbのいずれかの明確に定義されたサブセットを精製する手段を提供する。本発明は、Fc部分に特異的に結合する樹脂と、カッパ定常領域またはラムダ定常領域に特異的に結合する樹脂とを使用した多段階アフィニティークロマトグラフィーに依拠する。このようにして、これらの複雑な混合物を含む抗体形態のサブセットを容易に単離し、使用される樹脂のタイプおよび所望の作用様式に応じて、それらの組成を調整し得る。
【0057】
例えば、2つのラムダ軽鎖および1つのカッパ軽鎖と共通重鎖との共発現は、2つのIgGλλ mAb、1つのIgGκκ mAb、2つのIgGκλ BiAbおよび1つのIgGλλ BiAbから構成される混合物を生成する(図3)。これらの抗体形態はすべてFc部分を含有し、例えば、プロテインAクロマトグラフィーを使用して容易かつ有効に精製され得る。カッパまたはラムダ鎖のいずれかに特異的に結合し、それにより、それぞれ少なくとも1つのカッパまたはラムダ鎖を含有するすべての抗体形態の捕捉を可能にするアフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、この混合物(図3に示されている混合物1)から、抗体の異なる定義されたサブセットを容易に単離し得る(それぞれ図3のサブ混合物2および3を参照のこと)。サブ混合物2は、1つのIgGκκ mAbおよび2つのIgGκλ BiAbを含有する。サブ混合物3は、2つのIgGλλ
mAb、2つのIgGκλ BiAbおよび1つのIgGλλ BiAbを含有する。カッパおよびラムダ鎖に特異的に結合する媒体を使用した2連続アフィニティークロマトグラフィー工程により、2つのIgGκλ BiAbを含有する(mAbを含まない)サブ混合物を単離し得る(図3のサブ混合物4)。
【0058】
4つの異なる軽鎖が共発現される場合、得られる混合物はより複雑であり、共発現されるカッパおよびラムダ軽鎖の割合に依存する。2つの例が図4および5に記載されており、2つのラムダ軽鎖および2つのカッパ軽鎖または3つのラムダ軽鎖および1つのカッパ軽鎖がそれぞれ共発現されている。
【0059】
2つのラムダ軽鎖および2つのカッパ軽鎖と共通重鎖との共発現は、2つのIgGλλ
mAb、2つのIgGκκ mAb、4つのIgGκλ BiAb、1つのIgGλλ
BiAbおよび1つのIgGκκ BiAbから構成される混合物(混合物1、図4)を生成する。これらの抗体形態はすべてFc部分を含有し、例えば、プロテインAクロマトグラフィーを使用して有効に精製され得る。上記のように、カッパまたはラムダ鎖のいずれかに特異的に結合し、それにより、それぞれ少なくとも1つのカッパまたはラムダ鎖を含有するすべての抗体形態の捕捉を可能にするアフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、この初期混合物1から、抗体の異なる定義されたサブセットを容易に単離し得る(それぞれ図4のサブ混合物2および3)。サブ混合物2は、2つのIgGκκ mAb、4つのIgGκλ BiAbおよび1つのIgGκκ BiAbを含有する。サブ混合物3は、2つのIgGλλ mAb、4つのIgGκλ BiAbおよび1つのIgGλλ BiAbを含有する。最後に、カッパおよびラムダ鎖に特異的に結合する媒体を使用した2連続アフィニティークロマトグラフィー工程により、4つのIgGκλ BiAbを含有する(mAbを含まず、ラムダのみまたはカッパ鎖のみを含有するBiAbも含まない)混合物を単離し得る(図4のサブ混合物4)。
【0060】
3つのラムダ軽鎖および1つのカッパ軽鎖が共通重鎖と共発現される状況では、3つのIgGλλ mAb、1つのIgGκκ mAb、3つのIgGκλ BiAb、3つのIgGλλ BiAbおよび1つのIgGκκ BiAbから構成される混合物(混合物1、図5)が生成される。これらの抗体形態はすべてFc部分を含有し、例えば、プロテインAクロマトグラフィーを使用して有効に精製され得る。上記のように、カッパまたはラムダ軽鎖定常ドメインのいずれかに特異的に結合し、それにより、それぞれ少なくとも1つのカッパ鎖またはラムダ鎖を含有するすべての抗体形態の捕捉を可能にするアフィニティークロマトグラフィー媒体(例えば、CaptureSelect FabカッパおよびCaptureSelect Fabラムダアフィニティーマトリックス(GE Healthcare))を使用して、この初期混合物1(図5)から、抗体の異なる定義されたサブセットを容易に単離し得る(それぞれ図5のサブ混合物2および3)。サブ混合物2は、1つのIgGκκ mAbおよび3つのIgGκλ BiAbを含有する。サブ混合物3は、3つのIgGλλ mAb、3つのIgGκλ BiAbおよび3つのIgGλλ BiAbを含有する。最後に、カッパおよびラムダ鎖に特異的に結合する媒体を使用した2連続アフィニティークロマトグラフィー工程により、3つのIgGκλ BiAbを含有する(mAbを含まず、ラムダ鎖のみまたはカッパ鎖のみを含有するBiAbも含まない)サブ混合物を単離し得る(図5のサブ混合物4)。
【0061】
上記2つの状況は、各場合では4つの軽鎖が共発現されるが、発現される鎖の性質(すなわち、2つのカッパ軽鎖および2つのラムダ軽鎖または3つのラムダ軽鎖および1つのカッパ軽鎖)が、本発明の方法を適用することにより容易かつ有効に単離され得る非常に異なる混合物サブセットの生成および精製につながることを強調している。これらの状況は選択された例のみを表し、本発明の適用を他の状況に限定しない。
【0062】
本発明は、一般に、複雑な混合物からmAbおよび/またはBiAbのサブセットを、それらのカッパおよびラムダ軽鎖のそれぞれの含有量に基づいて、単離するために使用され得ることは明らかである。いずれの状況においても、カッパまたはラムダ抗体軽鎖のいずれかの定常または可変ドメインに特異的に結合するアフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、3つのタイプの混合物サブセットを精製することが可能である。
1.mAbおよびBiAbの両方を含む、少なくとも1つのカッパ軽鎖を含有するすべての抗体分子
2.mAbおよびBiAbの両方を含む、少なくとも1つのラムダ軽鎖を含有するすべての抗体分子
3.1つのカッパ軽鎖および1つのラムダ軽鎖を含有するすべてのBiAb分子
【0063】
本発明はまた、米国特許出願公開第20140179547号に記載されているように、ハイブリッド軽鎖を含有する抗体混合物の抗体サブセットを精製するためにさらに適用され得る。これらのハイブリッド鎖は、
1.定常ラムダドメインに融合された可変カッパドメイン、または
2.定常カッパドメインに融合された可変ラムダドメイン
のいずれかから構成される。
【0064】
全長のラムダまたはカッパ軽鎖と同様に、これらのハイブリッド分子は、
・カッパ定常ドメイン(例えば、CaptureSelect(商標)LC-カッパ(Hu)アフィニティーマトリックス(Life Technologies,Zug,Switzerland)
・いくつかのカッパ可変ドメイン(例えば、プロテインL)
・ラムダ定常ドメイン(例えば、CaptureSelect(商標)LC-ラムダ(Hu)アフィニティーマトリックス(Life Technologies,Zug,Switzerland)
のいずれかに結合するクロマトグラフィー媒体を使用することにより、それらの可変および定常ドメインの組成に応じて選択的に分離され得る。
【0065】
本発明の一般的な用途は、図6に記載されている。
【0066】
本開示の多重特異性抗体混合物は、様々な適応症において有用である。抗体混合物のサブセットは、mAb、mAb混合物またはBiAbにより可能ではない作用様式に依拠する治療モダリティの開発のための複数の用途を有し得る。
【0067】
特に、本発明は、単一細胞株を使用した完全ヒトBiAb混合物の簡単な生成を可能にするが、これは大きな利点を表す。実際、上記のように、2つの個々のmAbの組み合わせは、コストの大きな増加につながる。BiAbの生成は標準的なmAbよりも複雑かつ高コストであるので、2つの個々のBiAbを組み合わせなければならない場合には、この制限は明らかにさらに重要である。BiAbの潜在的に興味深い混合物の例、および本発明を使用してこれらの混合物を生成し得る方法は、以下により詳細に記載される。
【0068】
CD47遮断と組み合わせた腫瘍関連抗原(TAA)のマルチエピトープターゲティング:CD47は、自然免疫系のチェックポイントとして作用する遍在的に発現される受容体であり、SIRPαとの相互作用を介して食作用を抑制する(例えば、Oldenborg,P.A.,CD47:A Cell Surface Glycoprotein
Which Regulates Multiple Functions of Hematopoietic Cells in Health and Disease,ISRN Hematol.2013;2013:614619;Soto-Pantoja DRら、Therapeutic opportunities for targeting the ubiquitous cell surface receptor CD47(2012),Expert Opin Ther Targets.2013 Jan;17(1):89-103;Sick Eら、CD47 Update:a multifaced actor in the tumor microenvironment of potential therapeutic interest,Br J Pharmacol.2012 Dec;167(7):1415-30を参照のこと)。BiAbアプローチによるCD47の遮断は、CD47に対して向けられたmAbで観察される毒性を回避する。CD47xTAA BiAbは、TAA発現細胞上においてのみCD47の限定的な阻害を可能にし、それにより、毒性および不十分な薬物動態特性を回避する。単一の受容体上の2つのエピトープをターゲティングする2つのBiAbであって、それぞれが抗TAAアームおよび抗CD47アームを併せ持つ2つのBiAbの混合物は、優れた抗CD47遮断、Fcカバレッジの増加、および最終的にはより優れた腫瘍細胞殺滅をもたらすはずである(図7A)。実際、このような状況では、各TAA分子について、2つのCD47受容体が遮断され得、2つのFcが標的細胞表面に存在し、Fcガンマ受容体相互作用を介してエフェクター細胞の動員を増強する。
【0069】
以下のものとの共通重鎖の共発現:
・TAA上の第1のエピトープに対する特異性を推進する第1のラムダ軽鎖
・TAA上の第2のエピトープに対する特異性を推進する第2のラムダ軽鎖
・CD47に対する特異性を推進するカッパ軽鎖
【0070】
カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、得られた混合物から、2つのBiAb(CD47xTAAエピトープ1およびCD47xTAAエピトープ2)を含有するサブセットを精製し得る(図7B)。
【0071】
CD47遮断と組み合わせたマルチTAAターゲティング:上記例は、標的がん細胞により発現される2つのTAAに適用され得る。2つのTAAをターゲティングする2つのBiAbであって、それぞれが抗TAAアームおよび抗CD47アームを併せ持つ2つのBiAbの混合物もまた、優れた抗CD47遮断、TAAの遮断に関連する効果とさらに組み合わせたFcカバレッジの増加、および最終的にはより優れた腫瘍細胞殺滅をもたらすはずである(図8A)。
【0072】
以下のものとの共通重鎖の共発現:
・第1のTAAに対する特異性を推進する第1のラムダ軽鎖
・第2のTAAに対する特異性を推進する第2のラムダ軽鎖
・CD47に対する特異性を推進するカッパ軽鎖
【0073】
カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、得られた混合物から、2つのBiAb(CD47xTAA1およびCD47xTAA2)を含有するサブセットを精製し得る(図8B)。
【0074】
いくつかのチェックポイント分子の遮断と組み合わせたマルチTAAまたはエピトープターゲティング:上記例において使用されているアプローチは、2つのチェックポイント受容体、例えばCD47およびPD-L1を遮断するアームと組み合わせて、標的がん細胞により発現される2つのTAA(または同じTAA上の2つのエピトープ)に拡張され得る。このような混合物は、免疫チェックポイントの一般的な単一特異性遮断に関連する毒性を回避しながら、CD47遮断、PD-L1遮断、Fcカバレッジの増加、ならびに最終的にはより優れた腫瘍細胞殺滅および潜在的に非常に長く続く免疫系応答をもたらすはずである(図9A)。
【0075】
以下のものとの共通重鎖の共発現:
・第1のTAAに対する特異性を推進する第1のラムダ軽鎖
・第2のTAAに対する特異性を推進する第2のラムダ軽鎖
・CD47に対する特異性を推進するカッパ軽鎖
・PD-L1に対する特異性を推進するカッパ軽鎖
【0076】
カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、得られた混合物から、4つの異なるBiAb(CD47xTAA1;CD47xTAA2;PD-L1xTAA1;PD-L1xTAA2)を含有するサブセットを精製し得る(図9B)。
【0077】
T細胞のマルチTAAリターゲティング:T細胞リターゲティングは、腫瘍学において臨床的に検証され広く追求されているアプローチである(Chames and Baty MAbs.2009 1(6):539-47)。BiAbの混合物は、2つの異なるTAA(または同じTAA上のエピトープ)へのT細胞のリターゲティングを可能にして、処置有効性を潜在的に改善するはずである(図10A)。
【0078】
以下のものとの共通重鎖の共発現:
・第1のTAAに対する特異性を推進する第1のラムダ軽鎖
・第2のTAAに対する特異性を推進する第2のラムダ軽鎖
・CD3に対する特異性を推進するカッパ軽鎖
【0079】
カッパ特異的アフィニティー媒体、続いてラムダ特異的アフィニティー媒体を使用した2段階アフィニティークロマトグラフィーにより(逆もまた同様)、得られた混合物から、2つの異なるBiAb(CD3xTAA1;CD3xTAA2)を含有するサブセットを精製し得る(図10B)。
【0080】
上記例は例示的なものであり、本発明を適用することにより追求され得る可能な用途を限定しない。さらに、任意の例で提供される任意のカッパ鎖をラムダ鎖で置き換え得ることは明らかである(逆もまた同様)。
【0081】
本発明の別の重要なタイプの用途は、mAbの1つまたは複数の形態を排除するmAbおよびBiAb混合物の生成である。この特徴は、いくつかの標的について重要であり、mAbによる単一特異性二価係合は有害であり、毒性および他の望ましくない効果につながり得る。例えば、抗cMet抗体は、一価抗体の開発につながった望ましくないアゴニスト活性につながることが公知である。抗cMet抗体を含有する混合物を生成するが抗c-Met mAbを回避することは、本発明を使用すれば簡単である。上記のように、mAbによるCD47のターゲティングは、ヒトにおける有意な毒性につながる。抗CD47 mAbは、他の受容体をターゲティングするmAbと、別の受容体と併せてCD47をターゲティングするBiAbとの混合物から除去され得る。同様に、モノクローナル抗CD3もまた、CD3結合成分を含有する抗混合物から排除される必要がある。
【0082】
2つの腫瘍関連抗原の複合的な一価および二価ターゲティング:例えば、二価ターゲティングを回避すべき第1および第2のTAAをターゲティングするBiAbと組み合わせた、第1のTAAをターゲティングするmAbの混合物。この戦略は、cMetおよびEGFRなどのTAAに適用され得る(図11A)。
【0083】
以下のものとの共通重鎖の共発現:
・第1のTAAに対する特異性を推進するラムダ軽鎖
・第2のTAAに対する特異性を推進するカッパ軽鎖
【0084】
ラムダ特異的アフィニティー媒体を使用したアフィニティークロマトグラフィーにより、得られた混合物から、BiAb(TAA1xTAA2)および抗TAA1 mAbを含有するサブセットを精製し得る(図11B)。
【0085】
この場合もやはり、抗体混合物のサブセットの他の用途を合理化することができ、上記例は本発明の範囲を制限しない。
【0086】
抗体の異なるサブ混合物を分離するために、親和性または他のクロマトグラフィー試薬が利用可能である限り、同じ原理が、任意の抗体アイソタイプおよび非ヒト種の抗体形態(antibodies form non-human species)に適用される。
【0087】
さらに、本発明の同じ原理を、単一のVHCH1が2つまたはそれを超えるVκCκまたはVλCλと共発現されるF(ab’)2フォーマットに適用して、単一特異性および二重特異性F(ab’)2分子の混合物の分泌をもたらし得る。次いで、本発明の方法にしたがって、カッパまたはラムダ軽鎖の一部に結合するアフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、これらを、明確に定義されたサブ混合物へと分離し得る。同様に、ハイブリッドVκCλおよびVλCκもまた、本発明の方法を実施する場合に使用され得る。
【実施例0088】
実施例1:二重特異性抗体生成のための抗体候補の選択
hMSLN上の異なるエピトープをターゲティングする4つの抗体、およびすべてがラムダ軽鎖を含有する抗hCD19抗体、ならびにカッパ軽鎖を含有する抗hCD47抗体を、抗体混合物の生成のために選択した。これらの抗体はすべて、PCT公開の国際公開第2014/087248号および2017年5月26日に出願された「Anti-CD47 x Anti-Mesothelin Antibodies and Methods of Use Thereof」という表題の同時係属中の特許出願である米国特許出願第62/511,669号に記載されている同じ重鎖を含有し、米国特許出願公開第20140179547号に記載されているκλボディフォーマットに基づく二重特異性抗体の生成に適切である。選択した抗体は表3に列挙されており、配列は以下に示されている。
【表3】
【0089】
表3の抗hMSLN、抗hCD19および抗hCD47抗体はそれぞれ、配列番号1に示されている核酸配列によりコードされる共通重鎖(配列番号2)を含む。
【化1】
【化2】
【0090】
表3の抗hMSLN、抗hCD19および抗hCD47抗体はそれぞれ、配列番号3に示されている核酸配列によりコードされる共通可変重ドメイン(配列番号4)を含む。
【化3】
【化4】
【0091】
O25抗体は、配列番号1に示されている核酸配列によりコードされる共通重鎖(配列番号2)を含み、配列番号5に示されている核酸配列によりコードされるラムダ軽鎖(配列番号6)を含む。以下のアミノ酸配列において、ラムダ軽鎖の可変領域は太字である。
【化5】
【0092】
O25抗体は、配列番号3に示されている核酸配列によりコードされる共通可変重ドメイン(配列番号4)を含み、配列番号7に示されている核酸配列によりコードされるラムダ可変軽ドメイン(配列番号8)を含む。
【化6】
【化7】
【0093】
O30抗体は、配列番号1に示されている核酸配列によりコードされる共通重鎖(配列番号2)を含み、配列番号9に示されている核酸配列によりコードされるラムダ軽鎖(配列番号10)を含む。以下のアミノ酸配列において、ラムダ軽鎖の可変領域は太字である。
【化8】
【0094】
O30抗体は、配列番号3に示されている核酸配列によりコードされる共通可変重ドメイン(配列番号4)を含み、配列番号11に示されている核酸配列によりコードされるラムダ可変軽ドメイン(配列番号12)を含む。
【化9】
【0095】
O35抗体は、配列番号1に示されている核酸配列によりコードされる共通重鎖(配列番号2)を含み、配列番号13に示されている核酸配列によりコードされるラムダ軽鎖(配列番号14)を含む。以下のアミノ酸配列において、ラムダ軽鎖の可変領域は太字である。
【化10】
【0096】
O35抗体は、配列番号3に示されている核酸配列によりコードされる共通可変重ドメイン(配列番号4)を含み、配列番号15に示されている核酸配列によりコードされるラムダ可変軽ドメイン(配列番号16)を含む。
【化11】
【0097】
O38抗体は、配列番号1に示されている核酸配列によりコードされる共通重鎖(配列番号2)を含み、配列番号30に示されている核酸配列によりコードされるラムダ軽鎖(配列番号29)を含む。
【化12】
【化13】
【0098】
O38抗体は、配列番号3に示されている核酸配列によりコードされる共通可変重ドメイン(配列番号4)を含み、配列番号32に示されている核酸配列によりコードされるラムダ可変軽ドメイン(配列番号31)を含む。
【化14】
【0099】
O41抗体は、配列番号1に示されている核酸配列によりコードされる共通重鎖(配列番号2)を含み、配列番号17に示されている核酸配列によりコードされるラムダ軽鎖(配列番号18)を含む。以下のアミノ酸配列において、ラムダ軽鎖の可変領域は太字である。
【化15】
【化16】
【0100】
O41抗体は、配列番号3に示されている核酸配列によりコードされる共通可変重ドメイン(配列番号4)を含み、配列番号19に示されている核酸配列によりコードされるラムダ可変軽ドメイン(配列番号20)を含む。
【化17】
【0101】
L7-2抗体は、配列番号1に示されている核酸配列によりコードされる共通重鎖(配列番号2)を含み、配列番号21に示されている核酸配列によりコードされるラムダ軽鎖(配列番号22)を含む。
【化18】
【化19】
【0102】
C2抗体は、配列番号113に示されている核酸配列によりコードされる共通可変重ドメイン(配列番号114)を含み、配列番号23に示されている核酸配列によりコードされるラムダ可変軽ドメイン(配列番号24)を含む。
【化20】
【0103】
K2抗体は、配列番号1に示されている核酸配列によりコードされる共通重鎖(配列番号2)を含み、配列番号25に示されている核酸配列によりコードされるカッパ軽鎖(配列番号26)を含む。
【化21】
【化22】
【0104】
K2抗体は、配列番号3に示されている核酸配列によりコードされる共通可変重ドメイン(配列番号4)を含み、配列番号27に示されている核酸配列によりコードされるカッパ可変軽ドメイン(配列番号28)を含む。
【化23】
【0105】
実施例2:ラムダおよびカッパ軽鎖を有する二重特異性抗体の発現および精製。
同じ細胞における1つの重鎖および2つの軽鎖の同時発現は、3つの異なる抗体のアセンブリにつながり得る。共発現させるべき鎖の1つを発現する複数のベクターのトランスフェクションなどの異なる方法で、または複数の遺伝子発現を推進する(drive)ベクタ
ーを使用することにより、同時発現を達成し得る。米国特許出願公開第2012/0184716号および国際公開第2012/023053号(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書によって組み込まれる)に記載されているように、ベクターのpNoviκHλを先に生成して、1つの重鎖、1つのカッパ軽鎖および1つのラムダ軽鎖の共発現を可能にした。ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(hCMV)により3つの遺伝子の発現を推進し、そのベクターはまた、安定な細胞株の選択および確立を可能にするグルタミンシンテターゼ遺伝子(GS)を含有する。哺乳動物細胞における一過性発現のために、抗hMSLN IgGλ、抗hCD19 IgGλまたは抗hCD47 IgGκのVL遺伝子をベクターpNoviκHλにクローニングした。ピーク細胞を増幅し、ウシ胎仔血清を含有する45mLの培養培地中、細胞8×10個/フラスコの濃度でT175フラスコに分割した。製造業者の指示にしたがってLipofectamine 2000トランスフェクション試薬を使用して、30μgのプラスミドDNAを細胞にトランスフェクトした。産生中のいくつかの時点において、バイオレイヤー干渉法(BLI)技術を使用して、トランスフェクトした細胞の血清含有上清中の抗体濃度を測定した。OctetRED96機器およびプロテインAバイオセンサーを定量に使用した(Pall,Basel,Switzerland)。200μLの上清を使用して、IgG濃度を決定した;バイオセンサーを前準備し、10mMグリシンpH1.7を使用して再生し、馴化PEAK細胞培地で希釈したIgGキャリブレーターを標準曲線作成のために調製した。用量反応5PL加重Y標準曲線方程式および初期傾斜結合速度方程式を使用して、濃度を決定した。抗体濃度にしたがって、トランスフェクションの7~10日後に上清を回収し、1300gで10分間の遠心分離により清澄化した。精製プロセスは、3つのアフィニティー工程から構成されていた。最初に、CaptureSelect(商標)IgG-CH1アフィニティーマトリックス(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)をPBSで洗浄し、次いで、清澄化上清に添加した。+4℃における一晩のインキュベーション後、上清を1000gで10分間遠心分離し、フロースルーを保存し、樹脂をPBSで2回洗浄した。次いで、樹脂をスピンカラムに移し、pH3.0の50mMグリシンを含有する溶液を溶出に使用した。いくつかの溶出画分を生成し、プールし、50 kDaAmicon(登録商標)超遠心フィルタユニット(Merck KGaA,Darmstadt,Germany)を使用して25mMヒスチジン/125mM NaCl pH6.0緩衝液に対して脱塩した。Nanodrop分光光度計(NanoDrop Technologies,Wilmington,DE)を使用して、上清由来の全ヒトIgGを含有する最終生産物を定量し、適切な容量のCaptureSelect(商標)LC-カッパ(Hu)アフィニティーマトリックス(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)と共に室温および20rpmで30分間インキュベートした。先に記載した通り、インキュベーション工程、樹脂回収工程、溶出工程および脱塩工程を実施した。CaptureSelect(商標)LC-ラムダ(Hu)アフィニティーマトリックス(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して、2つの前述の精製と同じプロセスを適用して、最後のアフィニティー精製工程を実施した。Nanodropを使用して、最終生産物を定量した。変性および還元条件における電気泳動により、精製二重特異性抗体を分析した。製造業者(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)により記載されているように、Agilent 2100バイオアナライザーをProtein 80キットと共に使用した。4μLの精製サンプルを、ジチオスレイトール(DTT;Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を補充したサンプル緩衝液と混合した。サンプルを95℃で5分間加熱し、次いで、チップにロードした。(二重特異性抗体および両方の単一特異性mAbを含有する)第1の精製工程からのアリコートと最終生産物のアリコートとを等電点電気泳動(IEF)ゲルにロードして、最終精製二重特異性抗体(mAb混入なし)の純度を評価した。SEC-HPLCにより、凝集レベルを決定した。最後に、OctetRED96を使用して、両標的への二重特異性抗体の結合を評価した。簡潔に言えば、ビオチン化標的(hMSLN、hCD19、hCD47および無関係な標的)をストレプトアビジンバイオセンサーにロードした。次いで、このバイオセンサーを、二重特異性抗体を含有する溶液に浸漬し、結合をリアルタイムでモニタリングした。カブトガニ血球抽出成分試験(LAL;Charles River Laboratories,Wilmington,MA)を使用して、エンドトキシン汚染について、すべてのサンプルを試験した。以下の二重特異性抗体を発現させ、精製した:
【表4】
【0106】
実施例3:hMSLNおよびhCD47をターゲティングする個々の二重特異性抗体ならびに二重特異性抗体の組み合わせの食作用アッセイにおける活性 腫瘍細胞の表面において発現されるタンパク質または抗原をターゲティングする二重特異性抗体であって、同じ腫瘍細胞上のCD47を共係合することができる二重特異性抗体は、SIRPαとのCD47の相互作用により媒介される阻害シグナルを妨げることにより、マクロファージの食作用活性の増加を媒介し得る。この原理は、PCT公開の国際公開第2014/087248号および2017年5月26日に出願された「Anti-CD47 x Anti-Mesothelin Antibodies and Methods of Use Thereof」という表題の同時係属中の特許出願である米国特許出願第62/511,669号に記載されている。本明細書では、本発明者らは、図7に示されているように、腫瘍関連抗原(TAA)のマルチエピトープターゲティングの仮説を試験した(この場合、CD47遮断と組み合わせたhMSLN)。MSLN分子当たりより高密度のFcおよびより高いCD47遮断を有することの利益を評価するために、本発明者らは、個々のhCD47/hMSLN二重特異性抗体のいずれかにより、または二重特異性抗体のペアワイズの組み合わせにより媒介される食作用活性を比較した。hCD19はアッセイに存在しないので、一価抗hCD47対照としてhCD47/hCD19二重特異性抗体K2L7-2を使用した。異なるレベルのhCD47およびhMSLNを発現する3つの腫瘍細胞株NCI-N87、HPACおよびCaov-3を試験した。NCI-N87細胞のCD47およびメソセリンの細胞表面発現のレベルは、それぞれ43,000および27,000であった。HPAC細胞のCD47およびメソセリンの細胞表面発現のレベルは、それぞれ105,000および13,000であった。Caov-3細胞のCD47およびメソセリンの細胞表面発現のレベルは、それぞれ220,000および38,000であった。
【0107】
末梢血単球から分化したヒトマクロファージおよびNCI-N87、HPACまたはCaOV3を標的細胞として用いて、アッセイを実施した。マクロファージを、カルセインAM標識標的細胞(エフェクター:標的比1:1)と共に、漸増濃度の二重特異性または一価抗体の存在下、37℃で2.5時間コインキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、上清を完全培養培地で置き換えた。CX5イメージングプラットフォームを用いてプレートをイメージングし、1条件当たり1500個のマクロファージを取得および分析した。二重陽性事象により食作用を証明し、ソフトウェアにより食作用指数を計算した。
【0108】
これらの用量反応実験は、3つの細胞タイプすべてにおいて、K2O30+K2O41の組み合わせにより媒介される食作用活性がK2O30またはK2O41のいずれかの活性よりも優れていたことを示している(図12A、13Aおよび14A)。同様に、3つの細胞タイプすべてにおいて、K2O35+K2O41の組み合わせにより媒介される食作用活性は、K2O35またはK2O41のいずれかの活性よりも優れていた(図12B、13Bおよび14B)。加えて、NCI-N87細胞およびHPAC細胞では、K2O38+K2O41の組み合わせにより媒介される食作用活性は、K2O38またはK2O41のいずれかの活性よりも優れていた(図12Cおよび14C)。NCI-N87細胞では、K2O30+K2O25の組み合わせは、K2O30またはK2O25のいずれかの活性よりも優れていた(図15)。すべての場合において、陰性対照IgG(PCT公開の国際公開第2008/106200号に記載されているNI-0801と称される)または一価抗hCD47対照は、最小の食作用活性しか誘導しなかったか、または食作用活性を全く誘導しなかった。これらの例すべてにおいて、2つの二重特異性抗体を等量(すなわち、50:50の比)で添加した。この等モル比のわずかな変化が活性に影響を与えるかを評価するために、K2O30およびK2O25を40:60および60:40の比で混合し、試験した。すべての比により同様の結果が得られたが、これは、2つの二重特異性抗体間の比のわずかな差異が、組み合わせの食作用活性の増加に有意な影響を与えないことを示している(図15A)。
【0109】
実施例4:単一ベクターからの4つの抗体鎖の発現
さらなる軽鎖の発現を可能にするように、ベクターpNoviκHλを改変した。新たなベクターpNoviH3Lは、1つの重鎖および3つの軽鎖の発現を推進する4つのプロモーターを含有する。K2抗CD47カッパ軽鎖ならびに2つの抗hMSLNラムダ軽鎖O30およびO25をこの単一ベクターにクローニングした。配列決定により、すべてのコード配列およびクローニングジャンクションを検証した。実施例2に記載されているように、一過性トランスフェクションにおいてこのベクターを使用して、その機能性(すなわち、二重特異性抗体が産生され得ること)を検証した。次いで、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へのエレクトロポレーションのために、ベクターを線状化した。
【0110】
実施例5:二重特異性抗体および単一特異性抗体を含有する抗体混合物の発現。
本明細書に提示されている研究では、化学的に定義された動物成分を含まない(CDACF)製造プロセスを使用して、安定なCHO株をトランスフェクトおよび成長させた。エレクトロポレーションによるトランスフェクションおよびMSXによる選択の後、FACSによるスクリーニングを実施した。フェドバッチ条件における産生のために、最も高い産生プールを選択した。Octet技術により、異なるプールについて、総IgG生産性を評価した。実施例2に記載されているように、アフィニティー精製を実施した。プロテインAクロマトグラフィー工程後であるためすべてのIgG形態を含有する材料を、Agilentバイオアナライザーを使用して等電点電気泳動ゲル(IEF)により、ポリペプチド含有量について分析し、SEC-HPLCにより、凝集レベルを決定した。最後に、OctetRED96を使用して、両標的への二重特異性抗体の結合を評価した。簡潔に言えば、ビオチン化標的(hMSLN、hCD47および無関係な標的)をストレプトアビジンバイオセンサーにロードした。次いで、このバイオセンサーを、二重特異性抗体を含有する溶液に浸漬し、結合をリアルタイムでモニタリングした。カブトガニ血球抽出成分試験(LAL;Charles River Laboratories,Wilmington,MA)を使用して、エンドトキシン汚染について、すべてのサンプルを試験した。
【0111】
実施例6:2つの二重特異性を含有するサブ混合物の精製
実施例5において発現させて精製したすべてのIgG形態(二重特異性IgGおよび単一特異性IgG)の混合物を、カッパまたはラムダ軽鎖定常ドメインと特異的に相互作用する媒体、例えばCaptureSelect FabカッパおよびCaptureSelect Fabラムダアフィニティーマトリックス(GE Healthcare)を使用した2段階のクロマトグラフィーにさらに供した。図6および7Bに示されているように、これらの2つの工程により、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖の両方を含有するすべてのIgG形態を回収することが可能になった。次いで、全IgGを、10容量のPBSで平衡化したCaptureSelect Fabカッパアフィニティーマトリックス(GE Healthcare)を含有するカラムに適用した。次いで、カラムを5~10カラム容量のPBSで洗浄した。5カラム容量の0.1MグリシンpH3.0を適用することにより、カッパ軽鎖を有するすべての免疫グロブリン分子をカラムから溶出させ、画分を収集した。PBSで平衡化したAmicon緩衝液交換カラム(Merck)の緩衝液交換前に、抗体を含有する画分をプールした。次いで、抗体を、10容量のPBSで平衡化したCaptureSelect Fabラムダアフィニティーマトリックスを含有する第2のカラムに適用した。次いで、カラムを5~10カラム容量のPBSで洗浄した。カッパ軽鎖のみを有するすべての免疫グロブリン分子はカラムに結合し、フロースルーにおいて見られた。5カラム容量の0.1MグリシンpH3.0を適用することにより、ラムダ軽鎖を有する抗体をカラムから溶出させ、画分を収集した。PBSで平衡化したAmicon緩衝液交換カラム(Merck)の緩衝液交換前に、二重特異性抗体を含有する画分をプールした。SDS-PAGEにより、各精製工程のフロースルーおよび溶出画分を分析したところ、ラムダ軽鎖を有する抗体は、CaptureSelect Fabカッパアフィニティーマトリックスのフロースルーにおいて見られ、逆に、カッパ軽鎖を有する抗体は、CaptureSelect Fabラムダアフィニティーマトリックスのフロースルーにおいて見られたことが示された。
【0112】
プロテインA工程後に得られたすべてのIgG形態の混合物と、上記のように精製した2つの二重特異性抗体形態を含有するK2O25O30サブ混合物とをIEFにより分析した(図16A)。予想どおり、プロテインA後に得られた混合物については、異なる単一および二重特異性抗体形態に対応する6つのバンドを見ることができた。3回のアフィニティー精製工程後、カッパおよびラムダ軽鎖を含有する二重特異性形態に対応する2つのバンドを見ることができた。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により、精製K2O25O30サブ混合物をさらに分析して、2つの二重特異性抗体形態の相対含有量を決定した。2つの異なるピークの積分により、K2O25O30は、69%のK2O25および31%のK2O30を含有することが明らかになった(図16B)。
【0113】
実施例7:hMSLNおよびhCD47をターゲティングする2つの二重特異性抗体を含有するサブ混合物、ならびに同じ2つの二重特異性抗体の組み合わせの食作用アッセイにおける活性
次いで、実施例3に記載されているNCI-N87細胞を使用したインビトロ食作用アッセイにおいて、実施例6において単離したK2O25O30サブ混合物の活性を、K2O25およびK2O30の等モル組み合わせと比較した。K2O25O30ならびにK2O25およびK2O30の等モル組み合わせの活性は同一であったが(図17)、これは、サブ混合物が、実施例3に記載されている個々の二重特異性抗体の活性と比較して、組み合わせの活性の増加を再現することを示している。
【0114】
実施例8:二重特異性抗体組み合わせのインビボ抗腫瘍活性
肝臓がんのMSLNトランスフェクトHepG2モデルにおいて、2つのCD47xMSLN κλボディ(K2O38およびK2O41)およびCD47xMSLN κλボディの1つの組み合わせ(K2O38+K2O41)の抗腫瘍活性を評価した。3×10個のHepG2-MSLN細胞をNOD/SCIDマウスに皮下移植した。(以下の式:(長さ×幅)/2を使用して)腫瘍体積を週2~3回測定した。腫瘍が150~200mmに達したら、処置を開始した。マウスを8つの群に無作為化した(マウス6~7匹/群)。この実験では、CD47xMSLN κλボディの組み合わせの効果を、CD47xMSLN κλボディのみおよびMSLN Mabアマツキシマブの効果と比較した。実験の終了(d28)まで、抗体を週1回静脈内注射した。すべての抗体を60mg/kg/注射で投与した。腫瘍体積測定値を使用して、個々の各マウスの曲線下面積(AUC)を計算した。統計分析では、GraphPad Prismを使用して、一元配置ANOVAを実施し、続いて、多重比較検定(テューキー多重比較)を実施した。p<0.05を統計的に有意であるとみなす。式:%TGI={1-[(Tt-T0)/(Vt-V0)]}×100を使用して、腫瘍体積に基づいて、アイソタイプ対照群と比較した腫瘍成長阻害(TGI)率も決定した;Tt=時間tにおいて処置した腫瘍体積の中央値;T0=時間0において処置した腫瘍体積の中央値;Vt=時間tにおける対照の腫瘍体積の中央値およびV0=時間0における対照の腫瘍体積の中央値。
【0115】
図18に示されているように、2つのCD47xMSLN κλボディによる処置は、hIgG1対照と比較して、腫瘍成長を有意に減少させ、TGIは、K2O41では21%であり、K2O38では46%であった。組み合わせは、単一アプローチと比較して、腫瘍成長に対する優れた効果を示し、TGIは、K2O41+K2O38では80%であった。最後に、単一のCD47xMSLN κλボディおよびそれらの組み合わせは両方とも、現在臨床研究中のアマツキシマブ(MSLNを認識する中和mAb)と比較して優れた抗腫瘍効果を示した。
他の実施形態
【0116】
その詳細な説明と併せて本発明を説明したが、前述の説明は、例示であり、添付の特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものではない。他の態様、利点および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
2つまたはそれを超える単一特異性抗体および1つまたはそれを超える二重特異性抗体から構成される抗体混合物から単離された抗体のサブセットであって、前記サブセット中のすべての抗体が共通重鎖を含む、サブセット。
(項目2)
すべてがカッパ軽鎖の少なくとも一部を含む抗体からなる、項目1に記載のサブセット。
(項目3)
すべてがラムダ軽鎖の少なくとも一部を含む抗体からなる、項目1に記載のサブセット。
(項目4)
すべてがカッパ軽鎖の少なくとも一部およびラムダ軽鎖の少なくとも一部を含む抗体からなる、項目1に記載のサブセット。
(項目5)
項目2に記載のサブセットを単離する方法であって、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー工程を使用して、抗体混合物から前記サブセットを精製することを含む、方法。
(項目6)
カッパ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記精製工程を実施する、項目5に記載の方法。
(項目7)
項目3に記載のサブセットを単離する方法であって、少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー工程を使用して、抗体混合物から前記サブセットを精製することを含む、方法。
(項目8)
ラムダ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記精製工程を実施する、項目7に記載の方法。
(項目9)
項目4に記載のサブセットを単離する方法であって、少なくとも第1のアフィニティークロマトグラフィー工程および第2のアフィニティークロマトグラフィー工程を使用して、抗体混合物から前記サブセットを精製することを含む、方法。
(項目10)
カッパ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記第1の精製工程を実施し、ラムダ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記第2の精製工程を実施する、項目9に記載の方法。
(項目11)
ラムダ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記第1の精製工程を実施し、カッパ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記第2の精製工程を実施する、項目9に記載の方法。
(項目12)
3つまたはそれを超える抗体から構成される抗体混合物から単離された抗体のサブセットを単離するための方法であって、前記混合物中の少なくとも2つの抗体が非同一抗体であり、
前記方法が、
i)単一組換え宿主細胞において、共通免疫グロブリン重鎖ならびに少なくとも第1の免疫グロブリン軽鎖および第2の免疫グロブリン軽鎖をコードする1つまたはそれを超える核酸配列を発現させることにより、抗体混合物を産生することであって、ここで、前記第1および第2の免疫グロブリン軽鎖が非同一であり、前記第1および第2の免疫グロブリン軽鎖のそれぞれが、前記共通免疫グロブリン重鎖と対形成して機能的抗原結合ドメインを形成することができ、それにより、前記共通重鎖を含む3つまたはそれを超える抗体を産生すること;ならびに
ii)少なくとも1つのアフィニティークロマトグラフィー工程を使用して、抗体のサブセットを単離すること
を含む、方法。
(項目13)
前記第1の免疫グロブリン軽鎖がカッパ軽鎖の少なくとも一部を含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第2の免疫グロブリン軽鎖がラムダ軽鎖の少なくとも一部を含む、項目12に記載のサブセット。
(項目15)
前記第1の免疫グロブリン軽鎖がカッパ軽鎖の少なくとも一部を含み、前記第2の免疫グロブリン軽鎖がラムダ軽鎖の少なくとも一部を含む、項目12に記載のサブセット。
(項目16)
カッパ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記単離工程を実施する、項目12または13のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
ラムダ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記単離工程を実施する、項目12または14のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記単離工程が、少なくとも第1のアフィニティークロマトグラフィー工程および第2のアフィニティークロマトグラフィー工程を含む、項目15に記載の方法。
(項目19)
カッパ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記第1の精製工程を実施し、ラムダ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記第2の精製工程を実施する、項目18に記載の方法。
(項目20)
ラムダ定常特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記第1の精製工程を実施し、カッパ定常または可変ドメイン特異的アフィニティークロマトグラフィー媒体を使用して、前記第2の精製工程を実施する、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記組換え宿主細胞から、または前記宿主細胞の培養物から前記3つまたはそれを超える非同一抗体を回収する工程をさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目22)
前記3つまたはそれを超える抗体の少なくとも2つが、同じ標的抗原の異なるエピトープを標的とする、項目12に記載の方法。
(項目22)
前記3つまたはそれを超える抗体の少なくとも2つが、異なる抗原を標的とする、項目12に記載の方法。
(項目23)
前記3つまたはそれを超える抗体が単一特異性抗体および二重特異性抗体を含む、項目12に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
【配列表】
2023001264000001.app
【外国語明細書】