(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126405
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20230831BHJP
F21V 7/06 20060101ALI20230831BHJP
F21V 7/09 20060101ALI20230831BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230831BHJP
F21W 131/101 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
F21S2/00 630
F21V7/06
F21V7/09 200
F21V7/09 100
F21Y115:10 300
F21W131:101
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114486
(22)【出願日】2023-07-12
(62)【分割の表示】P 2019160077の分割
【原出願日】2019-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】北原 隆之
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 優作
(57)【要約】
【課題】トンネル断面において、照明器具からみて比較的遠方に位置する範囲の照度を効果的に高めることで、輝度を効率良く高めることができる照明器具を提供すること。
【解決手段】トンネル2を照明する照明器具において、1又は複数の光源ユニット30を備え、前記光源ユニット30は、前記トンネル2の交通方向Jaに延びる線状又は矩形状の発光部44と、前記発光部44の正面視において当該発光部44の下側、及び上側のそれぞれに配置される下側反射面48D、及び上側反射面48Uを有する反射鏡42と、を備え、前記下側反射面48Dは、前記トンネル2の横断方向の遠方側に光を反射し、前記上側反射面48Uは、前記下側反射面48Dの反射光の照射範囲Daよりも近い位置を含む範囲Dbに光を反射し、前記発光部44の光軸Eが、トンネル断面において、前記上側反射面48Uよりも前記下側反射面48Dの側に傾いている構成とした。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを照明する照明器具において、
1又は複数の光源ユニットを備え、
前記光源ユニットは、
前記トンネルの交通方向に延びる線状又は矩形状の発光部と、
前記発光部の正面視において当該発光部の下側、及び上側のそれぞれに配置される下側反射面、及び上側反射面を有する反射鏡と、を備え、
前記下側反射面は、前記トンネルの横断方向の遠方側に光を反射し、
前記上側反射面は、前記下側反射面の反射光の照射範囲よりも近い位置を含む範囲に光を反射し、
前記発光部の光軸が、トンネル断面において、前記上側反射面よりも前記下側反射面の側に傾いている、
ことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記下側反射面は、トンネル断面において、放物面形状であり、
前記上側反射面は、トンネル断面において、前記下側反射面と比較して直線に近い形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記下側反射面には、直下方向に光を通す光通し部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項4】
前記上側反射面の先端部には、直下方向に光を反射する直下照射用反射面が設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルを照明する照明器具において、光源たるLEDと、当該LEDの周りを囲む反射面を有した反射鏡と、を備えた器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トンネルの入口部の道路区間を照明する入口部照明では、トンネルの基本部を照明する基本照明に比べ、より高い路面輝度となるように照明する必要がある。
本発明は、トンネル断面において、照明器具からみて比較的遠方に位置する範囲の照度を効果的に高めることで、トンネル入口照明に必要な輝度を効率良く得ることができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トンネルを照明する照明器具において、1又は複数の光源ユニットを備え、前記光源ユニットは、前記トンネルの交通方向に延びる線状又は矩形状の発光部と、前記発光部の正面視において当該発光部の下側、及び上側のそれぞれに配置される下側反射面、及び上側反射面を有する反射鏡と、を備え、前記下側反射面は、前記トンネルの横断方向の遠方側に光を反射し、前記上側反射面は、前記下側反射面の反射光の照射範囲よりも近い位置を含む範囲に光を反射し、前記発光部の光軸が、トンネル断面において、前記上側反射面よりも前記下側反射面の側に傾いている、ことを特徴とする。
【0006】
本発明は、上記照明器具において、前記下側反射面は、トンネル断面において、放物面形状であり、前記上側反射面は、トンネル断面において、前記下側反射面と比較して直線に近い形状である、ことを特徴とする。
【0007】
本発明は、上記照明器具において、前記下側反射面には、直下方向に光を通す光通し部が設けられている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明は、上記照明器具において、前記上側反射面の先端部には、直下方向に光を反射する直下照射用反射面が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トンネル断面において、照明器具からみて比較的遠方に位置する範囲の照度を効果的に高めることで、トンネル入口照明に必要な輝度を効率良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル照明器具の設置状態を模式的に示す道路横断面図である。
【
図2】
図1におけるトンネル照明器具の拡大図である。
【
図6】反射鏡の構成を示す図であり、(A)は反射鏡の正面図であり、(B)は反射鏡を下側から視た図である。
【
図8】
図1におけるトンネル照明器具を拡大図である。
【
図9】反射鏡における下側反射面による照射範囲を示す図である。
【
図10】反射鏡における上側反射面による照射範囲を示す図である。
【
図11】発光部の直接光による照射範囲を示す図である。
【
図12】道路の路面を平面視した場合のトンネル照明器具の照射範囲を概略的に示す図である。
【
図13】前面カバーでの裏面反射によって生じる迷光の説明図であり、(A)は下側反射面の反射光が迷光になる場合を示し、(B)は上側反射面の反射光が迷光になる場合を示す。
【
図14】トンネル照明器具の正弦等光度曲線を示す図であり、(A)は傾斜角度θ3がゼロ度の場合を示し、(B)は傾斜角度θ3が12度の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係るトンネル照明器具1の設置状態を模式的に示す道路横断面図である。
図2は
図1におけるトンネル照明器具1の拡大図である。なお、
図1では、トンネル2の天井面などの図示を省略している。
トンネル照明器具1は、トンネル2を照明する照明器具であり、本実施形態では、トンネル2の入口部を照明する入口照明に用いられる。
【0012】
トンネル2には、
図1に示すように、車両が走行する道路4が敷設されている。本実施形態の道路4は、いわゆる2車線道路であり、車道外側線8A、8Bで区画された路面6が、中央Cの中央線9によって2分されることで、幅W(本実施形態では、W=3.5メートル)の2つの車線10が設けられている。
【0013】
トンネル照明器具1は、道路4の延在方向(車両が通行する方向:以下、「交通方向Ja」と言う)に沿って所定間隔で、トンネル2の壁面12に設置されている。本実施形態では、それぞれのトンネル照明器具1は、いわゆる片側配列で設置されており、車道外側線8Aの側に近い壁面12に、高さH1(本実施形態ではH1=5.0メートル)の位置に設置されている。
【0014】
トンネル照明器具1は、取付具18(
図2)によって所定の器具取付角度θ1(本実施形態ではθ1=36度)で壁面12に固定されており、トンネル照明器具1の正面方向である器具正面方向Aが鉛直下向き方向(以下、単に「直下方向G」と言う)に対し、路面6の中央線9の側に傾いた姿勢で設置されている。そして、この設置状態において、トンネル照明器具1は、トンネル断面において、直下方向Gから対向側の壁面12の高さH2(本実施形態ではH2=1.0メートル)に亘る所定範囲αを照明する。
【0015】
図3はトンネル照明器具1の正面図である。
図4は
図3におけるIV-IV断面図であり、
図5は
図3におけるV-V断面図である。
これらの図に示すように、トンネル照明器具1は、筐体20と、当該筐体20を取付具18にボルト等で固定するための固定片21と、を備えている。
筐体20は、道路4の交通方向Jaに延びる略直方形状であり、正面に出射口20Aが開口し、その出射口20Aには、透光性を有する板状部材である前面カバー22が嵌め込まれ、また、いずれか一方の側面24には、電力ケーブルを筐体20に引き込むためのケーブルグランド23が設けられている。かかる筐体20は、アルミニウムなどの高熱伝導性を有する材料の押出成形によって成形されている。
【0016】
筐体20の中には、
図3、及び
図4に示すように、トンネル2を照明する照明光を出射する複数(本実施形態では3つ)の光源ユニット30と、これらの光源ユニット30が交通方向Jaに沿って並べて取り付けられる光源ユニット取付板32と、各光源ユニット30に電力を供給する点灯装置34と、が収められている。
【0017】
光源ユニット30のそれぞれは、同一構成、及び同一配光を有したユニットであり、発光素子の一例であるLEDを光源に備え、当該光源の光を、トンネル照明に適した配光に制御して出射する。
より具体的には、光源ユニット30は、
図5に示すように、光源たるCOB(Chip on Board)型のLED「以下、「COB型LED」と言い、符号40を付す」と、光源の光を制御する反射鏡42と、当該反射鏡42を固定する反射鏡固定具43と、を備えている。
COB型LED40は、多数のLEDが密集配置して成る面状の発光部44(
図3)を所定矩形状の基板46の実装面に形成したものであり、本実施形態では、
図4に示すように、正面視において当該発光部44が上記交通方向Jaに延びる矩形状(線状でもよい)に形成されている。なお、例えば多数のLEDを交通方向Jaに並べて矩形状、或いは線状の発光部44を構成してもよい。
【0018】
図6は反射鏡42の構成を示す図であり、
図6(A)は反射鏡42の正面図であり、
図6(B)は反射鏡42を下側から視た図である。
反射鏡42は、前掲
図3に示すように、COB型LED40の正面視において、正面が開口した概略箱型を成し、その内側面が発光部44の上下左右の四方を囲む反射面48となっている。かかる反射面48は、
図6(A)に示すように、COB型LED40の正面視において、発光部44の上側に配置される上側反射面48U、下側に配置される下側反射面48D、左側に配置される左側反射面48L、及び、右側に配置される右側反射面48Rを備え、これらの反射による配光制御よって均斉度良く路面6が照らされる。
【0019】
図7は、反射鏡42の展開図である。
本実施形態の反射鏡42は、
図7に示す展開図の形状を成す板金45を、全て平面で折り曲げ加工して成形された、いわゆる折り曲げ加工品である。板金45には、表面45Aが高い反射率を有したアルミニウム板が用いられており、その表面45Aの全面が樹脂製の薄い保護シートで予め覆われ、かかる表面45Aが反射鏡42の反射面48に用いられる。板金45の折り曲げ加工は、保護シートが貼り付けられた状態で行われており、保護シートは、完成品の反射鏡42をトンネル照明器具1に組み付ける際に、作業者によって反射鏡42の反射面48から剥がされる。これにより、折り曲げ加工時や運搬時に表面45Aが保護シートによって保護されるので、傷や汚れのない高品位な反射面48が得られる。また保護シートで表面45Aを覆ったまま、板金45を折り曲げ加工するので、V字状の折り曲げに部分での線(いわゆるシワ)の発生も抑えられる。
【0020】
板金45は、
図7に示すように、略矩形状の底板部45Bと、上側反射面48Uの基となる上側反射面予定片45Uと、下側反射面48Dの基となる下側反射面予定片45Dと、左側反射面48Lの基となる左側反射面予定片45Lと、右側反射面48Rの基となる右側反射面予定片45Rと、を備えている。
底板部45Bは、COB型LED40を覆う位置に配置され、反射鏡固定具43にねじ止め固定される正面視矩形状の部位であり、その面内には、発光部44よりも大きな略矩形の矩形状開口50、及び、ねじ止め孔51が形成され、矩形状開口50から矩形状の発光部44の全体が露出されるようになっている。
COB型LED40の給電線が通る位置には、
図6および
図7に示すように、逃げ50Aが設けられている。
また、矩形状開口50の
図7における上下方向寸法は全体的に反射鏡42の底板部45Bの上下方向寸法より大きいため、折り曲げ位置の辺Kの長さは比較的短い。そのため、底板部45Bの上下端の折り曲げ加工によって、ねじ止め孔51周囲に生じる板金45の歪みを小さくすることができる。
【0021】
この底板部45Bの上下左右の4つの直線状の辺Kに、上記の上側反射面予定片45U、下側反射面予定片45D、左側反射面予定片45L、及び右側反射面予定片45Rが連接され、それぞれが連接箇所の辺Kに沿ってV字状に折り曲げ加工されることで、発光部44を取り囲む反射面48が形成される。折り曲げ加工時には、上側反射面予定片45U、下側反射面予定片45D、左側反射面予定片45L、及び右側反射面予定片45Rのそれぞれの間に、微小な隙間δ(
図6(B))が設けられることで互いに密着しないようになっている。これにより、板金45の表面45Aに貼られていた保護シートを、上側反射面予定片45U、下側反射面予定片45D、左側反射面予定片45L、及び右側反射面予定片45Rのそれぞれから折り曲げ加工後に簡単に取り除くことができる。
【0022】
次いで、上記反射鏡42による配光制御を説明する。
図8は
図1におけるトンネル照明器具1を拡大図である。
図9は下側反射面48Dによる照射範囲を示す図、
図10は上側反射面48Uによる照射範囲を示す図、
図11は発光部44の直接光による照射範囲を示す図である。
トンネル照明器具1は、上述の通り、トンネル断面において、直下方向Gから対向側の壁面12に亘る所定範囲αを照明しており、かかる所定範囲αは、主に、下側反射面48D、及び上側反射面48Uの反射光と、発光部44の直接光と、によって照明されている。
【0023】
具体的には、器具取付角度θ1でトンネル照明器具1が設置された
図1に示す状態において、下側反射面48Dは、
図9に示すように、トンネル断面において、路面6の中央C付近から対向側の壁面12に亘る範囲Da、換言すれば、トンネル照明器具1から視て遠方側の車線10から対向側の壁面12を含む範囲Daを反射光によって照明する。また、上側反射面48Uは、
図10に示すように、トンネル断面において、道路4の路面6の全範囲を含む範囲Dbを反射光によって照明する。また直接光(発光部44から反射面48に入射せずに直接、出射された光)は、
図11に示すように、上記所定範囲αに概ね相当する範囲Dcを照明している。
【0024】
本実施形態の光源ユニット30において、
図8に示すように、COB型LED40は、発光部44の光軸E(面状の発光部44の正面視中央を通り、当該発光部43に対して垂直に延びる軸)が器具正面方向Aよりも所定角度θ2(本実施形態では12度)だけ直下方向Gの側に傾いた姿勢で設けられている。すなわち、トンネル断面において、光軸Eが上側反射面48Uよりも下側反射面48Dの側に傾いており、光軸Eが上側反射面48Uと下側反射面48Dの略中心を延びる構成に比べ、より多くの発光部44の光が下側反射面48Dに入射するようになっている。これにより、下側反射面48Dの反射光によって照射される範囲Da、すなわち、トンネル断面において、トンネル照明器具1からみて比較的遠方に位置する範囲Daの照度が効果的に高められる。
【0025】
また、この下側反射面48Dには、
図6(B)に示すように、直下方向Gに光を通す光通し部54が設けられており、当該光通し部54を通った直接光によって、前掲
図11に示すように、範囲Dcのうち、直下方向Gに位置する範囲Dc1の照度が補われている。本実施形態では、2つの光通し部54が下側反射面48Dに設けられており、各光通し部54は、下側反射面48Dの先端部48Dhに設けた切欠きによって形成されている。なお、光通し部54の数や形状等は、目標とする配光に応じて適宜に変更してもよい。
【0026】
本実施形態の反射鏡42は、上述の通り、全て平面で折り曲げ加工して成形されているため、配光制御する反射面48には曲面が含まれておらず、反射面48は、多数の平面のみで構成されている。
具体的には、上側反射面予定片45U、下側反射面予定片45D、左側反射面予定片45L、及び右側反射面予定片45Rのそれぞれは、
図7に示すように、底板部45Bとの連接箇所の辺Kに平行な1又は複数の折曲予定線Kaが設定されており、各折曲予定線Kaに沿って折り曲げられることで、複数の平面だけで構成された上側反射面48U、下側反射面48D、左側反射面48L、及び右側反射面48Rが形成される。
【0027】
下側反射面48Dについては、トンネル断面において、その形状が放物面に近付けられており、放物面の軸方向に得られる高い光度によって、トンネル照明器具1から比較的遠い上記範囲Daの照度が効率良く確保されている。
図7に示すように、下側反射面予定片45Dにおいては、放物面において曲率が大きな箇所、すなわち連接箇所の辺Kに近い箇所ほど折曲予定線Ka同士の幅Lbが狭くなっており(折曲予定線Kaが密に設定されており)、下側反射面48Dがより放物面に近付けられるようになっている。ただし、下側反射面48Dの形状と放物面とのズレにより、放物面で予定される方向以外にも光が反射される。本実施形態の下側反射面48Dは、このような予定外の反射光も上記範囲Daに収まるようになっており、効率の低下が抑えられている。
また、下側反射面48Dに属する平面はすべて、前面カバー22の法線方向(面に垂直な方向)より下向きになるような角度で配置されている。この構成により、
図9に示す範囲Daの上側に外れる光を抑制することができる。
【0028】
一方、上側反射面48Uについては、
図5、及び
図8に示すように、トンネル断面において、放物面ではなく概ね直線に近い形状に成されている。詳述すると、上側反射面48Uを下側反射面48Dと同様に放物面にすれば、その放物面の軸方向の高い光度によって、路面6の所望箇所の照度を高めることができる。しかしながら、本実施形態の光源ユニット30では、上述の通り、発光部44の光軸Eを下側反射面48Dの側に傾けることで偏移させているため、上側反射面48Uに放物面を適用すると、光軸Eの方向から発光部44を視た際に、上側反射面48Uの先端部48Uh(
図5)によって発光部44の一部が覆われてしまう。また、発光部44の光軸Eが下側反射面48Dの側に偏移することで、上側反射面48Uよりも多くの光量が下側反射面48Dに入射して配光制御されている。これらを勘案し、上側反射面48Uは、
図5、及び
図8に示すように、下側反射面48Dと比較して直線に近い形状に成されている。
【0029】
また
図5、及び
図8に示すように、上側反射面48Uに属する平面はすべて、発光部44の発光面から離れるほど光軸Eから離れるような角度で配置されている。この構成により、
図11に示す範囲Dc1に光を照射すると共に、トンネル照明器具1の直下方向Gより設置壁面側に照射される光を抑制することができる。
【0030】
上述の通り、トンネル照明器具1の直下方向Gは、下側反射面48Dの光通し部54を通った直接光によって照明されている。しかしながら、発光部44の光束を直接光に多く割り当てると、所定範囲αの照度が低下したり、照度のバランスが崩れたりする。そこで、本実施形態では、上側反射面48Uの先端部48Uhに、
図5、及び
図8に示すように、直下方向Gに向けて光を反射する直下照射用反射面48Uaを設け、直下方向Gに振り分けられる直接光が抑えられても当該直下方向Gの照度が維持されるようになっている。
【0031】
図12は、道路4の路面6を平面視した場合のトンネル照明器具1の照射範囲Rを概略的に示す図である。
道路4の交通方向Jaについては、
図12に示すように、反射面48は、発光部44の光を当該交通方向Jaに延びた照射範囲Rに配光する。具体的には、発光部44から交通方向Jaに出射される光を、反射面48の左側反射面48L、及び右側反射面48Rのそれぞれが交通方向Jaの遠方に向けて反射することで、交通方向Jaに延びた照射範囲Rの配光が得られている。
【0032】
ここで、トンネル2の入口部照明では、トンネル2の基本部を照明する基本照明に比べ、より高い輝度で照明する必要がある。
そこで本実施形態の照明器具では、当該交通方向Jaに延びた線状または矩形状の発光部と、その照射光を効率良く照射範囲Rを照らすように構成した反射鏡とを組み合わせた光源ユニット30を備えることで、発光部44の利用効率を従来より高め、比較的低電力であっても入口照明に適した輝度で照明できるようになっている。
【0033】
すなわち、本実施形態の光源ユニット30は、上述の通り、発光部44が、トンネル2の交通方向Jaに延びる矩形状(線状でもよい)を成すことで、発光部44の発光パターンが交通方向Jaに延び、また横断方向Jbが狭いパターンとなっており、上記照射範囲Rに見合ったパターンとなる。
これに加え、発光部44が正面視円形状である場合に比べ、当該発光部44を挟んで上側、及び下側に配置される上側反射面48U、及び下側反射面48Dの幅N(
図6(A))を狭くできる。幅Nが狭まることで、トンネル断面において、より狭い範囲に反射光を集めることができる。これにより、トンネル断面における照明において、照明率(トンネル照明器具1から出射される光束のうち、所定範囲αを照らす光束の割合)が高められるので、トンネル入口照明に必要な輝度が効率良く得られることとなる。
さらに、本実施形態では、これら上側反射面48Uと下側反射面48Dが折り曲げ加工で形成されているため、一般的な金型成型に比べ、当該金型を抜くための抜きテーパーを、上側反射面48Uと下側反射面48Dの先端部に設ける必要がない。すなわち、反射面48の開口端において、上側反射面48Uと下側反射面48Dの幅Nが、抜きテーパーによって無駄に拡がることがないため、トンネル断面における上記所定範囲αへの集光性が損なわれることがなく高い照明率を実現できる。
【0034】
また、本実施形態の反射鏡42は、ダイカスト成形や射出成形のような成形ではなく、全て折り曲げ加工で成形されているため、その生産のためには安価なプレス金型で十分であり、高価な射出成形用金型が不要となり、多品種少量の反射鏡42を低コストで生産できる。
【0035】
ここで、本実施形態のトンネル照明器具1では、光源ユニット30を次のように取り付けることでも、上記照明率の向上が図られている。
すなわち、光源ユニット30の各々は、前掲
図5に示すように、トンネル断面において、発光部44の光軸Eが、前面カバー22の法線方向に対して直下方向Gの側に所定の傾斜角度θ3だけ傾く姿勢で光源ユニット取付板32に取り付けられている。この傾斜角度θ3は、設計時の照射範囲外に出射される迷光がほとんど無く、かつ器具光束の数値も高くなるように設定される。本実施例ではθ3=12°としている。傾斜角度θ3の値が小さいと迷光が多くなると共に器具光束値も小さくなり、大きすぎても器具光束は減少するため、傾斜角度θ3は9~15°の範囲で組立時のバラツキを考慮して設定されている。
【0036】
詳述すると、トンネル照明器具1では、光源ユニット30から出射された光が前面カバー22の入射面22Aに入射した際の裏面反射によって、
図13(A)、及び
図13(B)に示すように、いわゆる迷光Sが発生する。かかる迷光を考慮して反射鏡42を光学設計すれば、当該迷光が抑えられるものの、通常、そのような光学設計は非常に煩雑なものであり、実現することは困難である。
【0037】
これに対し発明者は、次の知見を得た。すなわち、
図13(A)、及び
図13(B)に示すように、
図5に規定されている傾斜角度θ3をゼロ度とした場合(光軸Eと前面カバー22の法線方向とを一致させた場合)、上側反射面48U、及び下側反射面48Dのそれぞれの反射光の裏面反射成分によって生じた迷光Sは、
図14(A)の正弦等光度曲線に示すように、照射範囲Rを外れた箇所Qを照らす。一方で、発光部44の光軸Eの方向が、前面カバー22の法線方向に対して傾斜角度θ3だけ直下方向Gに傾くように光源ユニット30を取り付けることで、その迷光Sが上記照射範囲Rの中に収まり、
図14(B)の正弦等光度曲線に示すように、照射範囲Rを外れた箇所を照らす迷光Sが見られなくなる、との知見を得た。なお、箇所Qにおける迷光Sの光量は、最大光度の箇所に比べてかなり小さいため、迷光Sが照射範囲Rの中に収まった状態の正弦等光度曲線(
図14(B))において、箇所Q以外については、迷光Sが生じている状態の正弦等光度曲線(
図14(A))と概ね同じようになっている。
【0038】
本実施形態において、傾斜角度θ3は、
図8等に示した所定角度θ2と同じであり、このような角度で光源ユニット30が傾けられることで、前面カバー22の裏面反射に起因した迷光Sが照射範囲R内に収まって当該照射範囲Rを照らすので照明率が高められる。これにより、光源ユニット30の出力を高めなくとも輝度が高められる。
そして、かかるトンネル照明器具1をトンネル2に設置する際には、トンネル照明器具1の器具取付角度θ1を、傾斜角度θ3の傾きを打ち消す角度に調整して壁面12に取り付けられ、これにより、各光源ユニット30がトンネル2内の所定の照射範囲R(トンネル断面においては所定範囲α)を照らすようになる。
【0039】
前掲
図5に示すように、光源ユニット30は、筐体20の中で光源ユニット取付板32に取り付けられており、当該光源ユニット取付板32によって光源ユニット30の上記傾斜角度θ3で保持されている。
具体的には、光源ユニット取付板32は、
図5に示すように、断面視において、筐体20の正面側から背面側に向けて凹み、その底部60Aが平面状を成す光源ユニット取付凹部60を有し、この光源ユニット取付凹部60の底部60Aに光源ユニット30が取付固定されている。そして、この底部60Aは、筐体20の上面側の上端60Auよりも下面側の下端60Adが背面側に近づく方向に上記傾斜角度θ3に応じた角度で予め傾斜している。したがって、トンネル照明器具1の組立時には、作業者は、この光源ユニット取付凹部60に光源ユニット30を固定するだけで、発光部44の光軸Eを傾斜角度θ3だけ傾いた状態に簡単にセットできる。
【0040】
一方、筐体20の中には、前掲
図5に示すように、光源ユニット取付板32からみて筐体20の背面側に、上述した点灯装置34が配置されている。点灯装置34は、箱型の装置ケース70を備え、当該装置ケース70には、各光源ユニット30に点灯電力を供給する電気回路部品や、点灯制御のための電気回路部品が収められている。これらの電気回路部品には、筐体20の背面側から正面側の長さが比較的大きい変圧器72が含まれており、上記装置ケース70には、
図4に示すように、かかる変圧器72を収めるために、筐体20の正面側に突出した凸状部70Aが形成されている。
【0041】
かかる装置ケース70は、筐体20において、光源ユニット取付板32の背面側に配置されるため、装置ケース70の凸状部70Aが光源ユニット取付板32に干渉することがある。そこで本実施形態では、前掲
図3、及び
図4に示すように、底部60Aの面内には、装置ケース70の凸状部70Aを背面側から突出させる開口部74が形成されており、当該開口部74および光源ユニット取付板32と、装置ケース70と、の間には電気的な絶縁を図り、光源ユニット30を保護する絶縁シートが設けられている。
【0042】
これにより、点灯装置34が備える変圧器72のサイズが大きく凸状部70Aが光源ユニット取付板32に干渉する場合でも、筐体20の背面側から正面側までの寸法を変更することなく点灯装置34を筐体20に収めることができる。
したがって、光源ユニット30の数を増やす等して、より大型の変圧器72が必要となっても、筐体20の背面側から正面側までの寸法を変更する必要がないので、トンネル断面内における筐体20内での光源ユニット30のレイアウトや配光を設計し直さずに済む。さらに、この筐体20は押出成形品であるため、交通方向Jaへの寸法の変更は容易であり、交通方向Jaに並ぶ光源ユニット30の数を異ならせた複数種のトンネル照明器具1の製造を容易なものにできる。
【0043】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0044】
本実施形態のトンネル照明器具1では、光源ユニット30が、トンネル2の交通方向Jaに延びる矩形状の発光部44と、発光部44の四方を囲む反射面48を有し、当該反射面48が板金の折り曲げ加工によって形成された反射鏡42と、を備える構成とした。
【0045】
この構成により、発光部44の発光パターンが交通方向Jaに延び、また横断方向Jbが狭いパターンとなり、上記照射範囲Rに見合った発光パターンが得られる。また、発光部44が正面視円形状である場合に比べ、上側反射面48U、及び下側反射面48Dの幅Nを狭め、横断方向Jbにおいて、より狭い範囲に反射光を集めることができる。これにより、トンネル断面における照明において、照明率が高められるので、より高い輝度が得られることとなる。
【0046】
また反射面48(上側反射面48Uと下側反射面48D)が折り曲げ加工で形成されているため、一般的な金型成型に比べ、当該金型を抜くための抜きテーパーを、上側反射面48Uと下側反射面48Dの先端部48Uh、48Dhに設ける必要がない。すなわち、反射面48の開口端において、上側反射面48Uと下側反射面48Dの幅Nが、抜きテーパーによって無駄に拡がることがないため、トンネル断面における上記所定範囲αへの集光性が損なわれることがなく、高い照明率を実現できる。
【0047】
さらに、本実施形態の反射鏡42は、その生産のために金型が不要となり、多品種少量の反射鏡42を低コストで生産できる。
【0048】
本実施形態のトンネル照明器具1では、反射面48が平面のみで構成されているため、折り曲げ加工時の作業が容易となり、生産性を向上させることができる。
【0049】
本実施形態のトンネル照明器具1では、トンネル断面において、発光部44の光軸Eが上側反射面48Uよりも下側反射面48Dの側に傾いているため、光軸Eが上側反射面48Uと下側反射面48Dの略中心を延びる構成に比べ、より多くの発光部44の光が下側反射面48Dに入射するようになる。これにより、この下側反射面48Dの反射光によって照射される範囲Da、すなわち、トンネル断面において、トンネル照明器具1からみて比較的遠方に位置する範囲Daの照度を効果的に高めることができる。
【0050】
本実施形態のトンネル照明器具1では、下側反射面48Dに、直下方向Gに光を通す光通し部54が設けられているため、当該光通し部54を通った直接光によって、直下方向Gの照度を補い、適切な照度に維持できる。
【0051】
本実施形態のトンネル照明器具1では、上側反射面48Uの先端部48Uhに、直下方向Gに光を反射する直下照射用反射面48Uaが設けられているので、上側反射面48Uの反射光によっても直下方向Gの照度を補うことができる。
【0052】
本実施形態のトンネル照明器具1では、上側反射面48U、下側反射面48D、左側反射面48L、及び右側反射面48Rのそれぞれの間に隙間δが設けられている。これにより、折り曲げ加工に用いる板金45の表面45Aを保護シートで覆った状態で折り曲げ加工して反射鏡42を形成し、例えば反射鏡42を組み込む際に、当該保護シートを反射鏡42から簡単に取り除くことができる。また、反射鏡42の組み付け時まで表面45Aを保護シートで保護できるので、折曲加工や運搬中の傷付きや汚れの付着を防ぐことができる。
【0053】
本実施形態のトンネル照明器具1では、光源ユニット30は、トンネル断面において発光部44の光軸Eが前面カバー22に対し、当該前面カバー22の裏面反射に起因した迷光Sを照射範囲R内に向かわせる傾斜角度θ3で傾いた姿勢で設けられている。
これにより、迷光Sが照射範囲の照明に使われることで照明率が高められ、光源ユニット30の出力を高めなくとも輝度が高められる。
【0054】
本実施形態のトンネル照明器具1において、光源ユニット取付板32には、点灯装置34の凸状部70Aを突出させる開口部74が設けられているので、筐体20の背面側から正面側までの寸法を変更せずとも、凸状部70Aを有した点灯装置34を筐体20に収めることができ、また、トンネル断面における筐体20内での光源ユニット30のレイアウトや配光を設計し直す必要もない。
【0055】
本実施形態のトンネル照明器具1では、筐体20はトンネル2の交通方向Jaに延びた押出成形品であり、複数の光源ユニット30は筐体20内で交通方向Jaに並べて配置されており、点灯装置34においては、光源ユニット30のそれぞれに点灯電力を供給するための変圧器72が凸状部70Aに配置された構成となっている。
この構成によれば、光源ユニット30の数を増やす等して、より大型の変圧器72が必要となっても、点灯装置34を筐体20に収めることができる。さらに、筐体20が押出成形品であるため、交通方向Jaへの寸法の変更が容易であり、交通方向Jaに並ぶ光源ユニット30の数を異ならせた複数種のトンネル照明器具1の製造を容易なものにできる。また変圧器72以外にもコンデンサなど、点灯装置34の他の部品より突出している部品が使用される場合も考えられるが、この場合にも光源ユニット取付板32の所定の位置に開口部74を設けることで対応可能となる。
【0056】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0057】
上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0058】
1 トンネル照明器具(照明器具)
2 トンネル
4 道路
6 路面
20 筐体
22 前面カバー
30 光源ユニット
32 光源ユニット取付板
34 点灯装置
40 COB型LED(発光素子)
42 反射鏡
43 反射鏡固定具
44 発光部
45 板金
45B 底板部
46 基板
48 反射面
48D 下側反射面
48L 左側反射面
48R 右側反射面
48U 上側反射面
48Ua 直下照射用反射面
48Uh 先端部
54 光通し部
60 光源ユニット取付凹部
60A 底部
70A 凸状部
72 変圧器
74 開口部
E 光軸
G 直下方向
Ja 交通方向
Jb 横断方向
R 照射範囲
S 迷光
θ1 器具取付角度
θ3 傾斜角度