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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126438
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】組織を引き込む為の装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A61B17/29
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023115193
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2021177476の分割
【原出願日】2018-10-01
(31)【優先権主張番号】62/566,596
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウェールズ、ライアン ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】エステベス、ラモン
(72)【発明者】
【氏名】マッツォーラ、ニコラス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベネッシュ、ベス
(72)【発明者】
【氏名】ガンガ、ネリー
(57)【要約】
【課題】組織引き込みシステムを提供する。
【解決手段】組織引き込み装置はキャップを備える。該キャップは、内視鏡に取り付けられるように構成された近位端と、遠位端と、内部を貫通するルーメンとを有する。組織引き込み装置は延長部材を備える。該延長部材は、キャップの壁に取り付けられて、キャップの遠位端から遠位に延びる。延長部材は、第1の組織係合部材が、キャップのルーメンの長手軸に対して一定の角度で延長部材に取り付けられ、且つ、長手軸と交差して延びるように、延長部材に対する取り付け位置で第1の組織係合部材と係合するように構成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織引き込み装置であって、
該組織引き込み装置はキャップを備え、該キャップは、内視鏡に取り付けられるように構成された近位端と、遠位端と、内部を貫通するルーメンとを有し、
該組織引き込み装置は延長部材を備え、該延長部材は、前記キャップの壁に取り付けられて、前記キャップの前記遠位端から遠位に延びており、
前記延長部材は、第1の組織係合部材が、前記キャップの前記ルーメンの長手軸に対して一定の角度で前記延長部材に取り付けられ、且つ、前記長手軸と交差して延びるように、前記延長部材に対する取り付け位置で前記第1の組織係合部材と係合するように構成される、
組織引き込み装置。
【請求項2】
前記角度は約90度である、請求項1に記載の組織引き込み装置。
【請求項3】
前記延長部材は、前記第1の組織係合部材のバネが前記延長部材の外周に配置可能となるように、前記第1の組織係合部材の前記バネと係合するように構成される、請求項1または2に記載の組織引き込み装置。
【請求項4】
前記キャップに設けられるクリップをさらに備え、前記クリップは第2の組織係合部材と係合するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組織引き込み装置。
【請求項5】
前記クリップは前記第2の組織係合部材のバネを把持するように構成される、請求項4に記載の組織引き込み装置。
【請求項6】
弾性部材をさらに備え、前記弾性部材は、遠位端と、近位端と、前記遠位端および前記近位端の間を延びる長さとを有し、前記弾性部材は、前記遠位端および前記近位端において前記第1の組織係合部材および前記第2の組織係合部材のそれぞれと接続されるように構成される、請求項4に記載の組織引き込み装置。
【請求項7】
前記延長部材は、前記第1の組織係合部材のバネが前記延長部材の周りに設けられるように、当該バネと係合する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組織引き込み装置。
【請求項8】
前記第1の組織係合部材は、第1の端部と第2の端部を有し、
前記第1の組織係合部材の前記第2の端部はバネであり、
前記バネは組織係合形態において前記第1の端部を保持する、請求項7に記載の組織引き込み装置。
【請求項9】
前記第1の組織係合部材をさらに備え、
前記第1の組織係合部材は一対のグリップ部材をさらに含み、該一対のグリップ部材は前記第1の組織係合部材の前記第1の端部と前記第2の端部との間に配置されており、
その構成は、前記一対のグリップ部材を圧縮すると、前記バネに対抗して作用することにより、前記第1の組織係合部材の前記第1の端部を駆動して開くようになっている、請求項8に記載の組織引き込み装置。
【請求項10】
前記クリップは、取り付け位置において前記キャップの前記ルーメンと概ね平行に前記第2の組織係合部材に向くように構成される、請求項4に記載の組織引き込み装置。
【請求項11】
前記クリップは、前記キャップの前記ルーメンの内面に配置される、請求項4に記載の組織引き込み装置。
【請求項12】
前記延長部材は、前記第1の組織係合部材が前記延長部材に対して摺動可能であるように構成される、請求項4に記載の組織引き込み装置。
【請求項13】
前記延長部材と係合した前記第1の組織係合部材を把持するために、前記キャップの前記ルーメン内に並進可能な把持部材をさらに備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の組織引き込み装置。
【請求項14】
前記把持部材は一対のアームを有し、該一対のアームは、前記第1の組織係合部材の1つ以上の把持部材とインターフェースを形成するように構成される、請求項13に記載の組織引き込み装置。
【請求項15】
前記把持部材は概ね凸面をそれぞれが有する一対のグリップ部材と係合するように構成されており、前記一対のグリップ部材の一方の前記凸面は、当該一対のグリップ部材の他方から見て外方に向いている、請求項14に記載の組織引き込み装置。
【請求項16】
前記第1の組織係合部材をさらに備え、該第1の組織係合部材は、
一対のグリップ部材と、
前記一対のグリップ部材の間に接続される破壊可能部材と、
前記破壊可能部材に接続されるループを遠位端に有するテザーと
を備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の組織引き込み装置。
【請求項17】
前記破壊可能部材は、前記グリップ部材が互いに向き合って圧縮された場合に分離する、請求項16に記載の組織引き込み装置。
【請求項18】
前記延長部材は柱である、請求項1から17のいずれか一項に記載の組織引き込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療装置に関する。より詳細には、本発明は、組織を引き込む装置、関連する搬送システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腔内手術において、内視鏡を使用した粘膜下層剥離術は、施術頻度が増加している形態の1つである。医師は、組織を引き込む手段を設ける為に各種機器を使用する。しかしながら、内視鏡キャップなどの機器では、病変部の中に大量の生理食塩水を連続して注入する必要がある。このような作業では、複数の機器を交換したり手術に要する時間が延長されることがある。内視鏡キャップにより標的組織を引き込むとき、医師が標的組織の縁への方向付けに失敗することが多々ある。これに代わる組織引き込み装置は、標的組織に搬送された後、標的組織に係合する前に装置を回収するために把持具などの器具を必要とする。この工程は、時間を要し且つ複雑である。さらなる別例では、医師が切除しようとする組織自体が、医師が施術中に使用している器具の通路を妨害する可能性がある。したがって、いくつかの例では、医師が使用する解剖器具が妨害されることを抑制しつつ標的組織の可視化を高める医療装置を用いることが望ましい。医師が切除した標的組織の部分に効率的に係合し、それを持ち上げ、且つ、引き込むように配置および制御可能な組織引き込み装置を使用することはさらに望ましい。
【0003】
以上の考慮事項を念頭において、本発明の改善点は有利である可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、様々な態様において一般に医療装置に関し、より具体的には、組織引き込み装置、方法、および関連する搬送システムに関する。本明細書で説明するものを含む本開示に係る組織引き込み装置、方法、および関連する搬送システムによれば、可視化、施術時間、施術の複雑さなどの組織引き込み術における困難な問題を改善し得る。
【0005】
本開示の多様な実施形態は、近位端と、遠位端と、内部を貫通するルーメンとを有するキャップを備えた組織引き込み装置を含む。延長部材は、キャップの遠位端から遠位方向に延びる。延長部材は、第1の係合部材がキャップのルーメンの長手軸線に対して一定の角度で配置されるように第1の係合部材に係合するように構成される。キャップの近位端は、内視鏡の遠位端に取り付けられるように構成される。キャップのルーメンの長手軸線に対する角度は、約90度であってよい。延長部材は、第1の係合部材のバネ部が延長部材の外周に配置されるように第1の係合部材のバネ部に係合する。クリップは、キャップに配置される。クリップは、第2の係合部材に係合するように構成される。クリップは、第2の係合部材のバネ部を把持するように構成される。クリップは、第2の係合部材をキャップのルーメンの長手軸線に対してほぼ平行に向けるように構成される。クリップは、キャップのルーメンの内面に配置される。第1の係合部材は、キャップに係合した際、第2の係合部材に対して直交して配置され得る。遠位端と、近位端と、その間に一定の長さとを備える弾性部材は、その遠位端と近位端とでそれぞれ第1,第2の係合部材に連結される。弾性部材は、第1の係合部材のバネ部に連結され得る。弾性部材は、第2の係合部材のバネ部に連結され得る。
【0006】
本発明の様々な実施形態は、近位端と、遠位端と、内部を貫通するルーメンとを有するキャップを備える組織引き込みシステムを含む。延長部材は、キャップの遠位端から遠位方向に延びる。システムは、第1の係合部材を備える。延長部材は、第1の係合部材がキャップのルーメンの長手軸線に対して一定の角度で配置されるように第1の係合部材に係合するように構成される。システムは、第2の係合部材を備え得る。キャップのルーメンの長手軸線に対する角度は、約90度である。クリップは、第2の係合部材は、キャップのルーメンの長手軸線に対してほぼ平行に向くように配置される。第2の係合部材に係合するように構成されたキャップに配置され得る。
【0007】
本発明の様々な実施形態は、装置の作業チャンネルの中を貫通して遠位方向に挿入される把持部材と、装置の遠位端に配置されるキャップとを備える組織を引き込む方法も含む。第1の係合部材は、把持部材を備えたキャップ内の取り付け位置から離脱され得る。第1の係合部材は、テザーによってキャップ内の取り付け位置にある第2の係合部材に連結され得る。第1の係合部材は、取り付け位置から取り外すことが可能である。把持部材は、遠位方向に移動可能され得る。第2の係合部材は、第2の係合部材を引っ張るテザーによって取り付け位置から取り外すことが可能である。
【0008】
本開示の様々な実施形態は、組織に係合するように構成された第1の端部を有する第1の係合部材を備える組織引き込みシステムを含む。一対のグリップ部材は、第1の端部の近位にある。一対のアームを備えた把持部材は、第1の係合部材を把持するように構成される。一対のアームはそれぞれ、一対のグリップ部材の各グリップ部材と合わさるように構成され得る。一対のグリップ部材はそれぞれ、実質的な凸面を有する。一対のグリップ部材の一方のグリップの凸面は、一対のグリップ部材の他方のグリップの凸面から見て外方に向いている。一対のアームはそれぞれ、実質的に凹面を有し得る。一対のアームの一方のアームの凹面は、一対のアームの他方のアームの方に向いていてもよい。一対のアームの各アームは、一対のグリップ部材の対応するグリップ部材を実質的に取り囲み得る。一対のアームはそれぞれ、対応するグリップ部材を越えて遠位方向に延びて、対向するアームに向かって湾曲する遠位部を有してもよい。一対のアームはそれぞれ、各アームの長手軸線に対して直交する方向に伸びるフィンガーを有してもよい。一対のグリップ部材は、フィンガーの近位にあってもよい。把持部材のアームとフィンガーは、一対のグリップ部材の周囲にポケットを画定してもよい。把持部材は、一対のグリップ部材を互いに接近する方に向かって作動して圧縮するように構成される。第1の係合部材の長手軸線は、アームの長手軸線に実質的に平行であってもよい。破壊可能な部材は、一対のグリップ部材の間に連結され得る。遠位端にループを有するテザーは、破壊可能な部材に連結され得る。グリップ部材が互いに接近する方向に圧縮されると、破壊可能な部材は分離され得る。システムは、一対のバネ部をさらに備え得る。バネ部はそれぞれ把持部材に接続され、実質的にグリップ部材の方に向いている。一方のグリップ部材の表面は、他方のグリップ部材から見て実質的に外方に向いていてもよい。システムは、カテーテルをさらに備え得る。カテーテルは、カテーテルの遠位端以外の部分の直径よりも小さな直径を有する遠位端を含みうる。システムは、ルーメンを有する装置の第1の作業チャンネルをさらに備え得る。把持部材は、一対のグリップ部材と係合して作業チャンネル内に収容され得る。第1の作業チャンネルは内視鏡内にあり得る。システムは、装置の第2の作業チャンネルをさらに備え得る。第2の作業チャンネルは、内視鏡に対して独立して、および/または外部に、および/または内部にあり得る。内視鏡に対して独立している場合または外部にある場合、第2の作業チャンネルは、第1の作業チャンネルの遠位端面に対して実質的に直交する遠位端面を有し得る。第2の係合部材は、第2の作業チャンネルに装填され得る。第2の係合部材は、第1の係合部材に繋止され得る。システムは、第1の開放端、第2の閉鎖端、およびそれらの間であって第1の係合部材の第1の端の外周に配置された本体を有するケーシングをさらに備え得る。ケーシングは、第1の端部から少なくとも実質的に第2の端部まで直線状に穿孔され得る。本体は、第1の開放端から第2の閉鎖端まで延びる第1の部分を含むことができる。第2の部分は、第1の開放端から第2の閉鎖端まで延び得る。第1の係合部材は、回転可能な把持クリップに繋止され得る。
【0009】
本開示の様々な実施形態は、内視鏡の第1の作業チャンネルを内視鏡の遠位端を超えて延びる第1の把持部材で後方に装填することを含む、組織を引き込む方法を含み得る。内視鏡の第2の作業チャンネルは、内視鏡の遠位端を超えて延びる第2の把持部材で後方に装填され得る。組織に係合するように構成された第1の端と第2の端とを有する第1の係合部材が装填されると、第1の把持部材が第1の係合部材の第1の端部の周囲に配置され得る。組織に係合するように構成された第1の端部と第2の端部とを有する第2の係合部材が装填されると、第2の把持部材が第2の係合部材の第1の端部の外周に配置され得る。第1および第2の把持部材ならびに第1および第2の係合部材は、内視鏡の遠位端から延びる円筒形キャップ内に封入されてもよい。第1および第2の係合部材の第1の端部は、内視鏡の長手軸線に実質的に平行な遠位方向に向けられ得る。
【0010】
本開示の種々の実施形態において、医師は、標的組織に向かって係合部材の遠位端(例えば、第1の端)を操作し得る。把持部材は、係合部材の1つ以上のグリップ部材の周りで把持部材のアームを操作することにより係合部材を捕捉し得る。例えば、把持部材は、係合部材のグリップ部材の周りでアームを開いた後に閉じることにより、組織を係合するために係合部材の第1の端部を開くことができる。把持するジョーは、係合部材の第1の端部が標的組織に隣接するように、係合部材の位置を操作し得る。把持部材を作動させてそのアームを開くことにより、係合部材を解放して、係合部材の第1の端部を標的組織に係合可能にし得る。第2の係合部材は、把持部材によって同様に操作され得る。第2の係合部材は、(例えば、弾性部材によって)第1の係合部材に取り付けられ得る。第2の係合部材は、医師が標的組織を切除する間、装置や標的組織を固定するために、標的組織の別の部分または健康な組織に係合させ得る。第1および第2の係合部材の両方が、切除される標的組織に取り付けられる場合、弾性部材は、標的組織に張力をかけ得る。標的組織が切除されると、弾性部材は、係合部材を互いに接近する方に向かって引っ張るため、体管腔の壁から標的組織を引き込むことができる。
【0011】
本開示の限定的でない例は、添付の図面を参照して、例示することを目的として説明されている。図面は、概略図であって、縮尺通りに描画することは意図されていない。図面では、図に示されている同一またはほぼ同一の構成要素はそれぞれ、単一の参照数字で一般に表示されている。明確にすることを目的として、当業者が本開示を理解するのに必要でない場合には、必ずしも全ての構成要素が全ての図面においてラベルされていないし、本開示の各実施形態の全ての構成要素が示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態にかかる体管腔内の組織引き込みシステムを示す図。
図2】本発明の実施形態にかかる組織引き込みシステムを示す側面図。
図3】本発明の実施形態にかかるキャップと係合部材を備える組織引き込み装置を示す等角図。
図4】本発明の実施形態にかかる組織引き込みシステムを示す図。
図5A】本発明の実施形態にかかる組織引き込みシステムを示す図。
図5B】本発明の実施形態にかかる組織引き込みシステムを示す図。
図6A】本発明の実施形態にかかる組織引き込みシステムを示す図。
図6B】本発明の実施形態にかかる組織引き込みシステムを示す図。
図7】本発明の実施形態にかかる組織引き込みシステムを示す図。
図8A】本発明の実施形態にかかる組織引き込み装置の右側を示す図。
図8B】本発明の実施形態にかかる組織引き込み装置の右側を示す図。
図9】本発明の実施形態にかかる組織引き込みシステムを示す図。
図10A】本発明の実施形態にかかるケーシングを示す図。
図10B】本発明の実施形態にかかるケーシングを示す図。
図10C】本発明の実施形態にかかるケーシングを示す図。
図10D】本発明の実施形態にかかるケーシングを示す図。
図10E】本発明の実施形態にかかるケーシングを示す図。
図10F】本発明の実施形態にかかるケーシングを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は、本発明の単なる典型的または例示的な実施形態を示すことを意図している。したがって、図面は、本開示の範囲を限定すると考えてはならない。添付の図面を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。
【0014】
本開示にかかる様々な実施形態を以下に説明する。本明細書で使用するように、「近位端」とは、医師に最も近い装置の端部を指し、「遠位端」とは、医師から最も遠い位置にある、埋め込まれたまたは配置された装置または物体の端部を指す。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形「ひとつ(a)」、「ひとつ(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、「または」という用語は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、「および/または」を含む意味で一般的に使用される。
【0016】
本明細書における「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、記載されている実施形態が1つ以上の特定の特徴、構造および/または特性1つを含み得ることを示すことに留意されたい。しかし、そのような記述は、すべての実施形態が特定の要素、構造および/または特性を備えることを必ずしも意味しない。さらに、特定の要素、構造および/または特性が一実施形態に関連して説明される場合、そのような要素、構造および特性は、明記されているか否かにかかわらず明らかに反することが記載されていない場合には、他の実施形態に関連して使用されてもよいことを理解されたい。
【0017】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれたい。図面では、複数の異なる図面の同様の要素には同じ番号が付けられている。必ずしも縮尺通りではない図面は、例示の実施形態を示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0018】
血管内処置、消化管や胆道に沿った処置、胸部処置などを含む多くの医療処置では、体内で除去したい組織(たとえば「標的組織」)にアクセスするために、医療装置が使用される。例えば、一部の現在の医療処置(例えば、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、経口内視鏡筋切開術(POEM)、胆嚢摘出術、ビデオ補助胸腔鏡下手術(VATS))では、医師は、がん性病変にアクセスして除去するために内視鏡または同様の医療機器を使用する。また、手術の一環として、医師は、標的組織部位にアクセス可能であるとともに、標的組織を引き込むために中に切除装置を配置可能な内視鏡を利用する場合がある。加えて、いくつかの場合には、内視鏡は、医師が可視化したり組織切除術を実施したりすることを支援する特徴を組み込み得る。例えば、いくつかの内視鏡は、内視鏡が標的組織に隣接する部位まで進められて配置された際に体管腔を照明するように設計された照明やカメラを備え得る。加えて、いくつかの内視鏡は、切断部材、把持部材、またはその他の付属装置が配置されて使用されるルーメン(例えば、作業チャンネル)も備え得る。
【0019】
医師は体内(たとえば、消化管、腹腔、胸腔内など)から癌性病変を引き込む技術の熟達に努めているが、引き込み術は依然として非効率的であり時間を要している。例えば、いくつかの場合には、組織切除処置の可視化が不十分であると、組織切除術が長時間化する可能性がある。別の例では、医師が切除しようとする組織が、術中に、医師が使用している器具の進路を妨げる可能性がある。したがって、いくつかの例では、標的組織の可視化を向上するとともに医師が用いる切除器具が妨害されることを抑制する医療装置を使用することが望ましい。医師によって切除される標的組織の部位を持ち上げて引き込む組織引き込み装置を用いることはさらに望ましい可能性がある。
【0020】
本明細書では、標的組織を効率的に係合したり、持ち上げたり、引き込んだりするように設計された組織引き込み装置および搬送システムなどの医療装置を開示する。本開示の装置および方法を補完する他のいくつかの例示的な装置は、米国仮出願第62/473,957号明細書に開示されており、その全体は、全ての目的で援用される。
【0021】
図1を参照する。組織引き込みシステムの様々な実施形態は、内視鏡104の作業チャンネル内において搬送カテーテル102の中に装填された組織引き込み装置100を含む。作業チャンネルは、医療装置のルーメンである。作業チャンネルは、様々な医療装置がその中を貫通可能にする。医師は、所与の医療処置の過程において、作業チャンネル内に様々な医療装置を通過させたり、交換したりすることができる。例えば、図1に示すように、カテーテル102は、作業チャンネルの中を貫通して延び、カテーテル102の遠位端は、最終的に、作業チャンネルの外に出て標的組織150に隣接する部位まで延び得る。作業チャンネルは、内視鏡104、腹腔鏡などの内視鏡の作業チャンネル、または針やカテーテルやガイドチューブなどのルーメンである。システムは、カテーテル102内の係合部材108に近位にある把持部材106、および/または係合部材108を把持する把持部材106を含みうる。弾性部材110は、1つ以上の係合部材108に連結する。システムは、体管腔152内の標的組織150を引き込むために、標的組織150の方向に指向される。組織引き込みシステムの近位部160は、体管腔152の外に延びる。いくつかの実施形態では、把持部材106は、カテーテル102の遠位端の外に組織引き込み装置100を進める(例えば、押す、配置する)。把持部材106は、カテーテル102内に配置されると、閉鎖時形態になる(例えば把持部材106のアームまたはジョーは閉じられて互いに接触したり、装置100を把持したりする)。
【0022】
把持部材106は、カテーテル102の外に組織引き込み装置100を配置する。組織引き込みシステムが標的組織150の近位に配置された状態で、医師は、把持部材106が組織引き込み装置100の近位端に接して組織引き込み装置100をカテーテル102の外に押すように、カテーテル102内で把持部材106を遠位方向に進める。ハンドル166は、把持部材106の開閉を制御する。把持部材106をカテーテル102の外部に遠位方向に進めた際、医師は把持部材106を開閉する為にハンドル106を操作する。把持部材106がカテーテル102の外部に組織引き込み装置100を押し出したら、把持部材106を用いて体管腔152内で組織引き込み装置100の位置決めや操作がなされる。
【0023】
いくつかの実施形態では、把持部材106と組織引き込み装置100は、カテーテル102を内視鏡104の作業チャンネルの中を貫通して進める前に、図1に示すようにカテーテル102内に配置される。いくつかの実施形態では、把持部材106および組織引き込み装置100の双方は、内視鏡104の作業チャンネルの中に挿入されて進められる前にカテーテル102内に予め装填される。しかしながら、別例では、組織引き込み装置100のみが予めカテーテル102に装填されて内視鏡104の作業チャンネル内を進められて、把持部材106は、別個にカテーテル102に挿入されて、組織引き込み装置100の近位端に隣接、接触および/または把持する部位まで遠位方向に進められる。更に別の例では、組織引き込み装置は、カテーテル102なしで内視鏡または別のルーメンの作業チャンネルに沿って前進される。
【0024】
本開示の範囲内において、上記またはその他の組織引き込みシステムの多様な実施形態は、カテーテル102および把持部材106が相対移動(例えば、並進や回転など)されるように設計される。例えば、カテーテル102の遠位端が標的組織150に隣接して配置されると(把持部材106は組織引き込み装置100に隣接して配置された状態で)、医師は、制御部材162とハンドル部材166の双方を把持する(例えば、ハンドル166の中に親指を通してその他の指を制御部材162の遠位面にかける)。これにより、医師は、カテーテル102の位置を保持しつつ把持部材106がカテーテル102に対して遠位方向に移動するように把持部材106を遠位方向に前進させることができる。この相対移動により、組織引き込み装置100をカテーテル102の遠位端の外に押し出すことができることが理解できる。別例では、医師は、組織引き込み装置100を配置する為に遠位方向に把持部材106を前進させる代わりに、追加的にまたは代替的に、把持部材106を固定位置に保持しつつ搬送カテーテル102を近位方向に後退し得ることが理解できる。カテーテル102を近位方向に後退することによって組織引き込み装置100を配備して組織引き込み装置をカテーテル102から離脱し得る。
【0025】
図2を参照する。組織引き込みシステムの様々な実施形態は、作業チャンネル202を有する内視鏡204を含む。組織引き込み装置200は、作業チャンネル202内に装填される。代替的には、カテーテル(図示略)が作業チャンネル202内に含まれ、すなわちカテーテルは内視鏡204と置き換え得る。装置200は、組織に係合するように構成された第1の端部208f(例えば、アームやジョー)と、バネ部であり得る第2の端部208sとを備える第1の係合部材208を備える。一対のグリップ部材209は、第1の端部208fと第2の端部208s(例えば、第1の端部208fの近位側の)との間で係合部材208に配置される。弾性部材210は、第1の係合部材208の第2の端部208sを第2の係合部材208の第2の端部208sに連結する。弾性部材210の周囲の位置合わせ部材214は、弾性部材210の剛性を高める。弾性部材は、1つ以上のスイベル212を含み、スイベル212は、スイベル212の一方の側の弾性部材210の各部分が、スイベル212の他方の側の弾性部材の各部分から独立して回転可能にする。ケーシング216は、第2の(近位側)係合部材208の第1の端部208fを覆い得る。ケーシング216は、第1の開放端と、第2の閉鎖端と、その間に本体とを有する。ケーシング216は、組織に係合するように構成された係合部材208の第1の端部208fが作業チャンネル202に接触しないように離間して保護する。一対のアームを有する把持部材206は、係合部材208とケーシング216の近位にあってそれらを押す。
【0026】
いくつかの実施形態では、組織引き込み装置200が、例えば内視鏡204またはカテーテル102の作業チャンネル202の遠位端の外に配備された後、把持部材206は、体管腔152内の標的組織150に組織引き込み装置200を位置決めしたり取り付けたりする為に使用される。グリップ部材209は、把持部材206により係合されるように設計されることが理解できる。グリップ部材209は、把持部材206が係合、取り付け、グリップ、把持、捕捉などするためのインターフェースを設ける。さらに、グリップ部材209は、把持部材206が、係合部材208の一対のグリップ部材209を接近する方向に圧縮することにより、係合部材208の第1の端部208f(例えば、ジョーまたはアーム)を捕捉、位置決め、(および/または再配置)、および/または開閉できるように設計される。グリップ部材209は、把持部材206のアームに適合する表面を有する。例えば、グリップ部材209は、把持部材206のアームとの適切なインターフェースを確保するために、曲面および/またはテクスチャー加工された表面を有する。図2は、係合部材208の第1の端部208fと第2の端部208sとの間に配置されたグリップ部材209を示すが、グリップ部材は、係合部材の別の部分に沿って配置されてもよいと考えられる。例えば、バネ部の構成と位置に応じて、グリップ部材は、係合部材の第1の端部や第2の端部に配置されてもよい。
【0027】
本開示の係合部材は、組織に係合するように構成された第1の端部を含み得る。第1の端部は、組織をつまむ/把持する/保持するために互いに接近する方向に付勢される一対のジョーであってよい。係合部材の第2の端部は、組織係合形態(例えば、第1の端部のジョーが閉じられた状態)で組織に係合するように構成された第1の端部を保持するバネである。一対のグリップ部材は、係合部材の第1の端部と第2の端部との間に配置される。これらのグリップ部材を圧縮すると、第2の端部のバネコイルに対抗して作用することにより、第1の端部を駆動して開くことができる。本開示の係合部材の実施形態は、組織を係合するための第1の端部のジョーと、第2の端部のバネ部と、両端部の間のグリップ部材を示すが、別の構成要素も考えられる。例えば、第1の端部において圧縮されたジョーであり、第2の端部において一対のグリップパッドであり、両端部の間においてバネである「衣服ピン」構成が好適である。
【0028】
組織引き込み装置の弾性部材210は、第1の係合部材208を第2の係合部材208に繋止する。弾性部材210は、バンド、ロープ、綱、ひも、ストラップ、より糸などであってよい。弾性部材210は、例えば、円形、長方形、三角形などの様々な断面形状を含む。弾性部材210は生体吸収性であってもよい。弾性部材210は、第1の係合部材208と第2の係合部材208の双方の第2の端部208sに連結され得る。一実施形態では、弾性部材210は、係合部材の第2の端部208sのバネ部のコイルの間の圧縮力によって係合部材208それぞれに取り付けられてもよい。別の実施形態では、弾性部材210の一方または両方の端部は、1つ以上の係合部材208の周囲でループ状にされてもよい。弾性部材210は、結び目、接着剤、ピン、および/またはスナップで係合部材208に連結されてもよい。弾性部材210の弾性特性は、係合部材208を互いに接近する方向に張力を付与できる。この張力により、係合部材208が弾性部材210に連結されること、および、係合部材208が標的組織150に係合して標的組織150を体管腔152からおよび/または対向する係合部材208に向かって引っ張ることまたは引き込むことができる。弾性部材210の1つ以上の部分は、医師が弾性部材210をより容易に見ることができるように、明るい色にされてもよい。弾性部材210の対向する端部は、特定の係合部材208に対応する具体的な端部を識別するために色が異なっていてもよい。着色された弾性部材208はまた、色素がより長い長さにわたって引き伸ばされると色が薄くなり、医師が処置中に延びの程度や係合部材によって組織に付与される相対的な張力の量を識別可能にする。弾性部材210は、1つ以上のスイベル212を含んでもよいし含まなくてもよい。スイベル212は、弾性部材210の2つのセグメント化された部分の間に配置され、それらに結合されてもよい。スイベル212は、第1の係合部材208および弾性部材210の第1のセグメントが、第2の係合部材208および弾性部材210の第2のセグメントに対して回転できるように設計され得る(例えば、組織引き込み装置200の中心軸を中心として個別に回転する)。スイベル212は、完全な回転(例えば、360度の回転)、または部分的な回転(例えば、360度未満の回転)を設けるように設計され得る。スイベル212は、代替の設計構成、要素、形状などを備え得ると考えられる。
【0029】
様々な実施形態では、組織引き込み装置は、1つ以上の位置合わせ部材214を含み得る。位置合わせ部材214は、サボ(sabot)、フェアリング(fairing)、足場、セパレータ、ハウジング、カバー、シェル、分割チューブなどを含み得る。装置は、弾性部材210(例えば、図2)に沿って複数の位置合わせ部材214を備え得るが、図2に示すものよりも広く弾性部材をカバーする1つの位置合わせ部材備えてもよいし、位置合わせ部材を備えなくともよい。位置合わせ部材は、第1端と、第2端と、内部に延びるルーメンとを備える管状部材であり得る。ルーメンは、第1端から第2端まで延び得る。図2は、位置合わせ部材214を管状部材として示しているが、位置合わせ部材214の断面の形状は、他の形状であってもよいと考えられる。例えば、位置合わせ部材214の断面形状は、長方形、三角形、卵形、正方形などであってよい。1つ以上の位置合わせ部材214が弾性部材210に沿って配置され得る。例えば、弾性部材210は、1つ以上の位置合わせ部材214の中を貫通して延び得る。いくつかの例では、1つ以上の位置合わせ部材214は、弾性部材210および/または係合部材208が自身の上または装置200や内視鏡204の別の構成要素の上でカールしたり、絡まったりすることを防止するのに十分な長さであり得る。
【0030】
図3を参照する。本発明の開示範囲内で、本明細書またはその他で説明する別の組織引き込みシステムの複数の実施形態は、近位端304pと、遠位端304dと、内部を貫通するルーメン302とを備えるキャップ304を備える。近位端304pは、内視鏡の遠位端に取り付けられるように構成される。キャップ304は、遠位方向に延びるキャップ304の遠位端304dに配置された延長部材320を有する。延長部材320は、取り付け位置で第1の係合部材308に係合するように構成される。延長部材320は、第2端308sのバネ部が延長部材320を取り囲むように第2端308sに係合する。延長部材320は、図3の柱として示されており、係合部材308のバネ部を受承するが、別の構成も考えられる。第1の係合部材308は、ルーメン302の長手軸線に対して一定の角度で配置される。図3に記載の角度は約90度であるが、別の方向の角度、例えば0~270度やその間の任意の角度なども考えられる。約90度の角度は、グリップ部材309をルーメン302の長手軸線に対して直交する方向に向ける。把持部材は、内視鏡の外であってルーメン302の中に遠位方向に移動され得る。把持部材は、第1の係合部材308のグリップ部材309を直交して保持する。第1の係合部材308が把持部材に把持された状態で、把持部材がルーメン302の中をさらに遠位方向に並進移動されると、第1係合部材308の第2端308sは延長部材320から滑り落ちる。把持部材は、次に、第1の係合部材308を体腔内の標的組織に向かって配置する。キャップ304は、第2の係合部材308を受承するように構成されたクリップ322、または取り付け装置の別の構成を含み得る。クリップ322は、第2の係合部材308の第2の端部308sのバネ部に係合する。クリップ322は、取り付け位置においてルーメン302の長手軸線に実質的に平行に第2の係合部材308を配置するように構成され得る。この向きは、第1の係合部材に対して実質的に垂直または直交であり得る。クリップ302は、ルーメン302の内面に配置されてもよい。弾性部材310は、第1および第2の係合部材308を連結する。弾性部材310は、バネ部であり得る第1および第2の係合部材308それぞれの第2の端部308sに取り付けられ得る。第1の係合部材308が延長部材320から取り外されると、弾性部材310は第2の係合部材308をクリップ322の外に引き抜き得る。把持部材は、弾性部材310を介して取り付けられた第2の係合部材308とともに、第1の係合部材308を標的組織に配置する。
【0031】
図4を参照する。本開示の範囲内で、本明細書またはその他で説明する組織引き込みシステムの様々な実施形態は、把持部材406(例えば、ボストンサイエンティフィックコーポレーションにより販売されている、Resolution(登録商標)クリップ装置などの一対のジョーまたはアームなどを備える回転可能な把持クリップ)を含みうる。把持部材406は、カテーテル402内および/または内視鏡404の第1の作業チャンネル内に配置され得る。把持部材406のアームまたはジョーは、弾性部材410の端部に取り付けられ得る。弾性部材の別の端部は、係合部材408の第2の端部408sに取り付けられ得る。把持部材406、弾性部材410、および係合部材408は、内視鏡404またはカテーテル402の近位端または遠位端からカテーテル402および/または内視鏡404の作業チャンネルの中に装填され、または、把持部材は近位方向に装填され、係合部材408は遠位端から装填され得る。係合部材408は、把持部材406の近位に、または隣接して、または遠位に装填されてもよい。係合部材408は、弾性部材410および/または把持部材406によってカテーテル402の外に押し出されおよび/または引き出され得る。追加の器具(例えば、把持部材)を標的組織の近くに導入して、グリップ部材409を掴んで、係合部材408の第1の端部408fで組織を係合する。システムは、内視鏡404と独立していてもよいし、または内視鏡402の外部にあってもよいし、または内視鏡404に含まれていてもよい第2の作業チャンネルを含み得る。ルーメンを有する装置の独立した第2の作業チャンネルは、第1の作業チャンネルの遠位端面に対して実質的に直交する遠位端面を有する。装置の独立した第2の作業チャンネルは、独立した内視鏡、第1の作業チャンネルと同一の内視鏡404、追加のカテーテル、または他の管状装置であってもよい。係合部材408(および/または係合部材408につながれた追加の係合部材)は、第2の作業チャンネルに装填され得る。把持部材406が第1の作業チャンネルから遠位方向に搬送されると、1つ以上の係合部材408が第2の作業チャンネルの外に引き出され得る。係合部材408が第2の作業チャンネルから引き出されると、90度の角度になり(すなわち、作業チャンネル、把持部材406、または追加の把持部材に対して直交する)、把持部材406のアーム(または追加の把持部材)は、グリップ部材409と簡単にインターフェースを形成することが可能になる。
【0032】
図5A~5B,図6A~6Bを参照する。本開示の範囲内で、本明細書またはその他で説明する組織引き込みシステムの様々な実施形態は、一対のアーム520または620を有する把持部材506または606を含み得る。把持部材506または606は、カテーテル502または602に装填されて、係合部材508または608を把持する。代替的には、把持部材506または606は、係合部材508または608の近位のカテーテル502または602に装填され得る。係合部材508または608の長手軸線(すなわち、第1の端部508fまたは608fから第2の端部508sまたは608sまで)は、1つ以上のアーム520または620の長手軸線に対して実質的に平行であり得る。アーム520または620はそれぞれ、一対のグリップ部材509または609のそれぞれ1つと合わさるように構成され得る。例えば、アーム509または609はそれぞれ、別のアーム520または620に対面するほぼ凹面の表面521または621を有する。一対のアーム520または620はそれぞれ、グリップ部材509または609の少なくとも一方を実質的に取り囲むことができる。一対のグリップ部材509または609はそれぞれ、一対のグリップ部材509または609のうちの他方のグリップ部材から見て外方に向いている凸面を有してもよい。グリップ部材の凸面は、アームの凹面に適合してその中に収まるように構成され得る。把持部材506または606は、一対のグリップ部材509または609を互いに接近する方向に作動して圧縮するように構成され得る。
【0033】
図6A,6Bを参照する。一対のアーム620はそれぞれ、グリップ部材609の少なくとも1つを越えて遠位方向に延びて対向するアーム620の方に向かって湾曲する遠位部623を有する。一対のアーム620はそれぞれ、各アーム620の長手軸線に対して直交して延びるフィンガー624を有する。一対のグリップ部材609は、搬送中はフィンガー624の近位にあってもよい。アーム620およびフィンガー624はともに、一対のグリップ部材609の周囲にポケットを形成し、ポケット内において、係合部材は、配備される前の望ましくない動きに対して固定される。
【0034】
図7を参照する。本開示の範囲内で、本明細書またはその他で説明する組織引き込みシステムおよび方法の様々な実施形態は、2つの把持部材706を内視鏡704に装填する工程を備える。2つの把持部材706は、単独および/またはカテーテル702内に収容された状態で、内視鏡704の1つまたは2つの作業チャンネルの中に装填される。把持部材706は、作業チャンネルの中に前方に向かって(すなわち遠位方向に)装填されてもよいし、または作業チャンネルに後方に向かって(すなわち近位方向に)装填されてもよい。図7の把持部材706は、内視鏡704の遠位端の外に延びる。係合部材708は、把持部材706が係合部材708の周囲に配置されるように、把持部材706の中に装填され得る。係合部材708の一方または双方は、内視鏡704の長手軸線に実質的に平行に遠位方向に向いて配置され得る。一方または双方の係合部材708は、内視鏡704の長手軸線に対して一定の角度で、例えば実質的に横方向に配置され得る。円筒状のキャップ730は、内視鏡704の遠位端に取り付けられて、内視鏡704の長手軸線に実質的に平行に遠位方向に延び得る。キャップ730は、把持部材706および係合部材708を包囲する。図7に示すシステムは、患者の体外で組み立ててから、患者の体管腔内に搬送され得る。キャップ730は、システムの挿入/搬送中にキャップ730内のアセンブリが体管腔に接触することから患者の体管腔を保護する。キャップ730は、身体組織をこすったり引っ掻いたりすることがないように丸みを帯びた縁部を有する。
【0035】
図8A,8Bを参照する。本開示の範囲内で、本明細書またはその他で説明する組織引き込みシステムの様々な実施形態は、組織に係合するように構成された第1の端部808f(例えば、アームまたはジョー)と、バネ部であり得る第2の端部808sとを有する係合部材808を含み得る。一対のグリップ部材809は、第1の端部808fと第2の端部808sの間で係合部材808に配置され得る(例えば、第1の端部808fの近位)。破壊可能部材812は、一対のグリップ部材809の間に連結される。遠位端にループを有するテザー810が破壊可能部材812に連結される。係合部材808は、テザー810が作業チャンネルの中を通って作業専門家の方に近位方向に延びるように、破壊可能部材812に取り付けられたテザー810とともに体管腔内に搬送される。医師は、テザー810を操作することにより、係合部材808を追跡して操作できる。テザー810により、医師は、係合部材808を引っ張って把持部材に近づけることができる。任意の時点で、医師は、グリップ部材809を互いに接近する方向に圧縮する(例えば、把持部材を用いて)。グリップ部材809が互いに接近する方向に圧縮されると、破壊可能な部材812が破損する(例えば、図8Bに示すように)。破壊された破壊可能部材812は、テザー810を係合部材808から解放する。そして、係合部材808は、組織の中に配備され得る。弾性部材811は、係合部材に(例えば、第2の端部808sで)取り付けられてもよい。弾性部材811は、別の係合部材または医療器具に取り付けられてもよい。テザー810は、弾性部材110、210、310、410、710、811、910などに関して説明したものを含む、紐、柔軟な押出材料、弾性部材、柔軟な編組材料、柔軟な打ち抜き材料などであってもよい。
【0036】
図9を参照する。本開示の範囲内で、本明細書またはその他で説明する組織引き込みシステムの様々な実施形態は、組織に係合するように構成された第1の端部908fを有する係合部材908と、バネ部であってもよい第2の端部908sと、一対のグリップ部材909とを含み得る。弾性部材910は、係合部材908の第2の端部908sを別の係合部材908に連結する。一対のバネ930はそれぞれ、各バネ930の一端で把持部材906の各アーム920に連結され、バネ930の他端で他方のグリップ部材909から見て外方に向いた表面であるグリップ部材909の一の表面に接する。把持部材906は、グリップ部材に対してバネ930を圧縮することにより、係合部材908を把持する。把持部材906および係合部材908は、係合部材908が同じ方向を向いている状態で(すなわち、各係合部材908の第1の端部908fが第2の端部908sの遠位にあるように)、カテーテル902に装填され得る。カテーテル902は、カテーテル902の遠位端以外の部分の直径よりも狭い直径を有する遠位端903を有することができる。把持部材906は、係合部材908とともにカテーテル902の中を通って遠位に前進される。把持部材906がカテーテル902のより狭い遠位端903に到達すると、遠位端903は、アーム920を接近する方向に圧縮する。この圧縮は、組織を係合するために係合部材908fの第1の端部が開くように、バネ部930と係合部材908とを作動させ得る。第1の係合部材908が体管腔内の所定位置にある状態で、第2の係合部材908をカテーテル902の遠位端903の一定の位置まで前進させることができる。第1の係合部材908が配備された後、第2の係合部材908が第1の係合部材908と同様の方法で体腔内の位置に配置され得る。第1の係合部材が第1の端部908fで標的組織に取り付けられ、弾性部材910が第2の端部908sに取り付けられた状態で、把持部材906とアーム920とを近位に引くと、把持アーム920がカテーテル902の遠位端903の近位にくるため、バネを有するアームはカテーテルの縮小外径によって圧縮されなくなる。そして、カテーテル902および/または把持部材906を近位に引くと、第2の係合部材908は弾性部材910に取り付けられている為、遠位に前進してバネ930の間に着座させられる。次に、第2の係合部材908と、把持部材906と、第2の係合部材がバネ930の間に着座した状態のアーム920は、カテーテル902の遠位端903まで遠位方向に図9に示す第1の係合部材908が配置された標的組織に配置するために同一部位に前進される。代替的または追加的に、第2の係合部材908は、把持部材906の機構907によってバネ930の間の配備位置まで前進されてもよい。機構907は、第2の把持部材908をカテーテル902の遠位端903に付勢し得る。
【0037】
図10A~10Fを参照する。本開示の範囲内で、本明細書またはその他で説明する組織引き込みシステムの様々な実施形態は、第1の開放端1001、閉鎖または開放可能な第2の端1002と、その間の本体部とを有するケーシング1000を含み得る。ケーシング1000は、生分解性材料であってもよいし、および/または患者が自然にケーシング1000を無害に通過するのに十分小さいものであってもよい。ケーシングは、係合部材の第1の端部の周囲に配置されてもよい(例えば、図2のケーシング216のセットアップ)。ケーシング1000は、第1の端部1001から第2の端部1002まで延びる分離線を有してもよく、分離線は少なくとも部分的または全体的に穿孔されていてもよいし、されていなくてもよい。図10A,10Bでは、ケーシング1000は、ケーシング1000が第1の部分1004aと第2の部分1004bとに分離可能にする分離線1003を有する。この分離は(すなわち、図10Aから10B)、ケーシング1000がカテーテルおよび/または作業チャンネル内でもはや拘束されなくなって、体管腔内に配置されると起こり得る。図10C,10Dでは、ケーシング1000は、第1の端部1001から少なくとも実質的に第2の端部1002までの穿孔線1005を有する。ケーシング1000は、穿孔線1005に沿って接続部分を分離する力によって、図10Dに示すように複数の断片に分離し得る。この力は、例えば、係合部材の第1の端部の作動、把持部材の圧縮力、または把持部材およびケーシングの周囲からのカテーテルまたは作業チャンネルでの拘束の解放であり得る。図10E,10Fでは、ケーシング1000は、ケーシング1000の対向側を完全に貫通しない分離線1007を有する。ケーシング1000は、分離線1007に沿って分離し、破断部1008で少なくとも部分的に破断できる。
【0038】
上記および他の様々な実施形態において、医師は、内視鏡の遠位端から外に延びる第1の把持部材を内視鏡の第1の作業チャンネルに後方に向かって装填することにより組織引き込みシステムをセットアップする。内視鏡の第2の作業チャンネルは、内視鏡の遠位端から外に延びる第2の把持部材で後方に装填されてもよい。組織に係合するように構成された第1の端部と第2の端部とを有する第1の係合部材は、第1の把持部材が第1の係合部材の第1の端部の周囲に配置されるように、後方に装填され得る。組織に係合するように構成された第1の端部と第2の端部とを有する第2の係合部材は、第2の把持部材が第2の係合部材の第1の端部の周囲に配置されるように、後方に装填され得る。第1および第2の把持部材ならびに第1および第2の係合部材は、内視鏡の遠位端から延びる円筒形キャップ内に配置され得る。第1および第2の係合部材の第1の端部は、内視鏡の長手軸線に実質的に平行して遠位方向に向いて配置され得る。
【0039】
上記および他の様々な実施形態において、医師は、医療処置中に、作業チャンネル、カテーテル、および/またはキャップの中を貫通して、および/またはその外部に本開示の組織引き込み装置またはシステムを前進させることができる。これは、把持部材または他の医療器具を前進させて、係合部材を押すことおよび/または操作することにより(例えば、近位から遠位の方向に)実行され得る。把持部材は、組織引き込み装置を前方であって作業チャンネルおよび/または搬送カテーテルの外に、患者の体腔内に押し出すことができる。装置は、標的組織に隣接して配置され得る。
【0040】
上記および他の様々な実施形態において、医師は、標的組織に向かって係合部材の遠位端(例えば、第1の端)を操作する。把持部材は、係合部材の1つ以上のグリップ部材の周囲で把持部材のアームを操作することにより、係合部材を捕捉する。例えば、把持部材は、係合部材のグリップ部材の周囲でアームを開いた後に閉じることにより、組織を係合するために係合部材の第1の端部を開く。把持するジョーは、係合部材の第1の端部が標的組織に隣接するように、係合部材の位置を操作する。把持部材を作動させてそのアームを開くことにより、係合部材を解放して、係合部材の第1の端部を標的組織に係合可能にする。第2の係合部材は、把持部材によって同様に操作され得る。第2の係合部材は、(例えば、弾性部材によって)第1の係合部材に取り付けられ得る。第2の係合部材は、医師が標的組織を切除する間、装置および標的組織を固定するために標的組織の別の部位または健康な組織に係合され得る。第1および第2の係合部材の両方が、切除される標的組織に取り付けられた場合には、弾性部材は標的組織を張力をかけ得る。標的組織が切除されると、弾性部材は係合部材を互いに接近する方向に引っ張るため、身体組織の内腔の壁から標的組織を引き込むことができる。
【0041】
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下記載する。
[項目1]
組織を受け入れるための開放姿勢と組織に係合するための閉鎖姿勢との間で移動する第1の端部と前記第1の端部の近位側に配置される一対のグリップ部材とを備える第1の係合部材と、
前記第1の係合部材を把持するように構成された把持部材と
を備え、
前記把持部材は前記一対のグリップ部材に対応する一対のアームを備え、各アームは対応するグリップ部材に接して、前記一対のグリップ部材に対して互いに接近する方向に力を付与することにより、前記第1の係合部材を閉鎖姿勢から開放姿勢へと移動させ、前記一対のグリップ部材が互いに離間することにより、前記第1の係合部材を開放姿勢から閉鎖姿勢へと移動させて、組織を引くために前記第1の係合部材を組織に係合させるように構成されている、組織引き込みシステム。
[項目2]
前記一対のグリップ部材はそれぞれ凸面を有し、前記一対のグリップ部材の一方のグリップ部材の凸面は、前記一対のグリップ部材の他方のグリップ部材の凸面とは逆方向に向いている、項目1に記載のシステム。
[項目3]
前記一対のアームは各遠位端にフィンガーを備え、各フィンガーは、各アームの長手軸線に対して直交して延び、両フィンガーは互いに向かって指向する、項目1または2に記載のシステム。
[項目4]
前記一対のグリップ部材の間に連結された破壊可能部材と、前記破壊可能部材に連結される遠位端においてループを有するテザーとをさらに備える、項目1~3のいずれか一項に記載のシステム。
[項目5]
前記破壊可能部材は、前記一対のグリップ部材に対して前記一対のグリップ部材が互いに接近する方向に力が付与されたとき、分離するように構成されている、項目4に記載のシステム。
[項目6]
前記把持部材は一対のバネ部をさらに備え、各バネ部は、前記一対のアームの各アームの遠位端に連結されて、前記一対のグリップ部材の対応するグリップ部材に接して前記一対のグリップ部材に対して互いに接近する方向に力を付与するように構成されている、項目1~5のいずれか一項に記載のシステム。
[項目7]
前記第1の係合部材および前記把持部材は、内部を貫通して延びるルーメンを有するカテーテル内を通って体管腔内に送達されるように構成されており、前記カテーテルの遠位端は、前記カテーテルの前記遠位端以外の部分における内径よりも小さな内径を有し、前記把持部材が前記カテーテルの前記遠位端を通過するとき、前記把持部材の一対のアームが互いに接近する方向に付勢されるように構成されている、項目1~6のいずれか一項に記載のシステム。
[項目8]
第1の開放端と、第2の閉鎖端と、前記第1の開放端および前記第2の閉鎖端の間における本体部とを有するケーシングをさらに備え、前記ケーシングは、前記第1の係合部材の前記第1の端部を中心として配置されている、項目1~7のいずれか一項に記載のシステム。
[項目9]
前記本体部は、前記第1の開放端から前記第2の閉鎖端まで延びる第1の部分と、前記第1の開放端から前記第2の閉鎖端まで延びる第2の部分とからなる、項目8に記載のシステム。
本明細書に記載された実施形態、および本開示の他の実施形態に係る装置は、単独で、または他の付属品を含むシステムまたはキットでまたは方法または手順の一部として、腹膜腔、腹腔、気管支または胸腔、血管、胃腸または尿路、子宮、膀胱、肺および肝臓器官などにアクセスしたり、治療したり、症状を診断するためなどに、体腔、管腔、管、血管、体の器官で使用され得る。
【0042】
本明細書に記載された様々な実施形態に加えて、当業者であれば、本開示の変形形態、変更形態、および他の実施態様が思い浮かぶであろう。したがって、本開示は、上記の例示的な説明ではなく、以下の特許請求の範囲の記載によって定義されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F