(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012648
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】地形平面図表示システム、及び地形平面図表示方法
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20230119BHJP
G06T 11/60 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G09B29/00 A
G06T11/60 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116204
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】向山 栄
【テーマコード(参考)】
2C032
5B050
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC22
2C032HC27
5B050BA04
5B050BA17
5B050CA07
5B050DA07
5B050DA10
5B050EA07
5B050EA18
5B050EA19
5B050FA02
5B050FA05
5B050FA09
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来技術に比して傾斜の程度を直感的に把握することができる地形平面図表示システムと、これを用いた地形平面図表示方法を提供することにある。
【解決手段】本願発明の地形平面図表示システムは、地形の傾斜の程度に応じた表示色が付された地形平面図を表示するシステムであって、凡例表示制御手段と地形平面図表示制御手段を備えたものである。凡例表示制御手段は、複数の個別領域からなる凡例を表示させる手段である。個別領域は、それぞれ傾斜角度範囲に対応する領域であって、それぞれ傾斜角度範囲の上限角度で傾斜する傾斜部を含んで形成される。凡例表示制御手段は、個別領域をそれぞれ異なる個別表示色と同じ表示色で表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地形の傾斜の程度に応じた表示色が付された地形平面図を表示するシステムであって、
複数の個別領域からなる凡例を表示させる凡例表示制御手段と、
前記地形平面図を表示させる地形平面図表示制御手段と、を備え、
前記個別領域は、それぞれ傾斜角度範囲に対応する領域であって、それぞれ該傾斜角度範囲の上限角度で傾斜する傾斜部を含んで形成され、
前記凡例表示制御手段は、前記個別領域をそれぞれ異なる個別表示色で表示する、
ことを特徴とする地形平面図表示システム。
【請求項2】
前記地形平面図を構成する複数の小領域ごとにそれぞれ地形傾斜角度が付与され、
前記地形平面図表示制御手段は、前記小領域の前記地形傾斜角度を含む前記傾斜角度範囲に係る前記個別領域の前記個別表示色と同じ前記表示色で、該小領域を表示する、
ことを特徴とする請求項1記載の地形平面図表示システム。
【請求項3】
それぞれ三角形の前記個別領域によって凡例全体領域が構成され、
前記凡例全体領域は、全体底辺と、全体対辺と、全体斜辺と、からなる三角形の領域であって、該全体底辺と該全体斜辺からなる頂点が起点とされ、
前記凡例表示制御手段は、前記全体対辺を分割するように、且つ相互が重ならないように、しかもいずれかの頂点が前記全体領域の前記起点と一致するように、それぞれ前記個別領域を配置して表示する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地形平面図表示システム。
【請求項4】
前記個別領域は、それぞれ個別底辺と、個別対辺と、前記傾斜部を構成する個別斜辺と、によって形成され、
前記凡例表示制御手段は、前記個別底辺が前記傾斜角度範囲の下限角度で傾斜するように、それぞれ前記個別領域を表示する、
ことを特徴とする請求項3記載の地形平面図表示システム。
【請求項5】
それぞれ三角形の前記個別領域によって凡例全体領域が構成され、
前記凡例全体領域は、全体底辺と、全体対辺と、全体斜辺と、からなる三角形の領域であって、該全体対辺と該全体斜辺からなる頂点が起点とされ、
前記凡例表示制御手段は、前記全体底辺を分割するように、且つ相互が重ならないように、しかもいずれかの頂点が前記全体領域の前記起点と一致するように、それぞれ前記個別領域を配置して表示する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地形平面図表示システム。
【請求項6】
前記凡例表示制御手段は、それぞれ前記個別領域を柱状体の鳥瞰図として表示し、
各々の前記柱状体は、側面視の形状が連続する柱形状であって、水平な個別底面と、鉛直な個別対面と、前記傾斜部を構成する個別斜面と、からなり、
前記柱状体の前記個別斜面は、側面視で前記上限角度に応じた直線又は曲線とされ、
前記柱状体の前記個別対面は、側面視ですべて同一の寸法とされる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地形平面図表示システム。
【請求項7】
前記凡例表示制御手段は、それぞれ前記個別領域を柱状体の鳥瞰図として表示し、
各々の前記柱状体は、側面視の形状が連続する柱形状であって、水平な個別底面と、鉛直な個別対面と、前記傾斜部を構成する個別斜面と、からなり、
前記柱状体の前記個別斜面は、側面視で前記上限角度に応じた直線又は曲線とされ、
前記柱状体の前記個別底面は、側面視ですべて同一の寸法とされる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地形平面図表示システム。
【請求項8】
前記凡例表示制御手段が、前記個別領域をそれぞれ個別に選択して表示するとともに非表示にする機能を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の地形平面図表示システム。
【請求項9】
地形の傾斜の程度に応じた表示色が付された地形平面図を、凡例とともに表示する方法であって、
前記凡例は、複数の個別領域によって構成され、
前記個別領域は、それぞれ傾斜角度範囲に対応する領域であって、それぞれ該傾斜角度範囲の上限角度で傾斜する傾斜線を含んで形成され、
前記地形平面図は、複数の小領域によって構成されるとともに、それぞれ該小領域に地形傾斜角度が付与され、
前記個別領域をそれぞれ異なる個別表示色で表示し、
前記小領域の前記地形傾斜角度を前記傾斜角度範囲に照らし合わせることによって前記個別領域を選定するとともに、選定された該個別領域の前記個別表示色で該小領域を表示する、
ことを特徴とする地形平面図表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地形平面図を表示する技術に関するものであり、より具体的には、直感的で把握しやすい凡例とともに地形平面図を表示することができる地形平面図表示システムと、これを用いた地形平面図表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地形平面図の作製など広範囲に渡って地形測量を行う場合、従来では航空機から撮影した空中写真を利用するのが一般的であったが、昨今では、航空レーザー計測や、衛星写真を利用した計測、あるいは合成開口レーダを利用した計測といった様々な計測手法が実用化され、状況に応じて好適な手法を選択できるようになった。
【0003】
このうち航空写真測量(空中写真測量ともいう)は、原則として2枚一組(いわゆるステレオペア)の写真を利用するもので、それぞれの写真を撮影した状態を再現することによって実空間である被写体の三次元座標(X,Y,Z)を求める。具体的には、投影中心(カメラレンズの中心)の座標、カメラの傾き、焦点距離、写真上の座標(x,y)などの値を2枚の写真それぞれについて求め、これらの値に基づいて実空間の座標を求める。なお、三次元座標(X,Y,Z)で表される投影中心座標と、三軸からの傾斜角(ω,φ,κ)で表されるカメラの傾きは、外部標定要素と呼ばれ、航空写真測量を行うに当たっては必須の要素であり、近年ではGNSS(Global Navigation Satellite System)といった測位手段やIMU(Inertial Measurement Unit)といった慣性計測手段によって外部標定要素を得ることが主流となっている。
【0004】
一方、航空レーザー計測は、計測したい地形の上空を航空機で飛行し、地形に対して照射したレーザーパルスの反射信号を受けて計測するものである。より詳しくは、照射時刻と受信時刻の時間差を計測することで照射位置から計測点(レーザーパルスが反射した地点)までの距離を求め、さらにGNSSといった測位手段によってレーザーパルスの照射位置(x,y,z)を取得するとともに、IMUといった慣性計測手段によって照射姿勢(ω,φ,κ)を取得することで、計測点の3次元座標を得ることができる。
【0005】
いずれにしろ地形測量によって得られる結果は、地形の任意点を示す多数の計測点(いわゆる点群)であり、当然ながらこれらの計測点は3次元座標を備えている。ここで3次元座標とは、例えばX軸、Y軸、Z軸の直交3軸からなる直交座標系や、緯度、経度、標高で表現される測地座標系に配置された点の座標であって、換言すれば水平面に配置される平面座標系(X-Yや、緯度と経度)と鉛直座標軸の組み合わせからなる3次元座標系に配置された点の座標である。
【0006】
点群の3次元座標は単なる数値に過ぎないことから、通常は、点群に基づいて地形モデルが作成される。この地形モデルとして代表的なのものが、DEM(Digital Elevation Model)やDSM(Digital Surface Model)である。地形モデルは、点群の3次元座標を基礎としていることから立体的な形状として表現することができるが、通常はディスプレイや紙面に表示することが多く、すなわち2次元(平面上で)で地形モデルを表示することが主流となっている。
【0007】
3次元の地形モデルを2次元で表示すると、水平面に投影した場合は高さ方向の値(標高)が分かりにくく、鉛直面に投影した場合は奥行方向の位置が分かりにくい。従来、平明面上で高さを表現する手法として等高線(コンタ―)を用いて表示するのが一般的であったが、やや専門的な知識を要するうえに直感的に把握し難く、特に地形の傾斜(等高線の間隔)を読み取るには相応の経験が必要とされていた。
【0008】
そこで、2次元で表示された地形モデルであっても、標高と傾斜を直感的に把握することができる種々の技術がこれまで提案されてきた。例えば特許文献1では、地形平面図を標高に応じた表示色で表すとともに、傾斜に応じた濃淡(グレースケール)で表す発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示される発明のように、地形平面図の標高を表示色で示し、傾斜を濃淡で示す場合、一般的には標高レンジと表示色の対応を示す凡例や、傾斜レンジと濃淡の対応を示す凡例が地形平面図とともに示される。この場合、傾斜の凡例を表現するには例えば
図11(a)に示すようなスライドバーが利用されることがあった。あるいは地形平面図の傾斜を表示色で示すこともあり、この場合は
図11(b)に示すような傾斜レンジと表示色の対応を示す凡例が利用されることもあった。しかしながら、
図11(a)に示す凡例や
図11(b)に示す凡例では、実際にどの程度傾斜しているのか直感的には把握しづらい。例えば、傾斜の凡例によって傾斜角度の数値が示されたとしても、その角度の程度を直感的に把握するには別途、分度器などを利用する必要があり、速やかに把握することができないうえに分度器を用意するなど不便が生じることとなる。
【0011】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来技術に比して傾斜の程度を直感的に把握することができる地形平面図表示システムと、これを用いた地形平面図表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、実際の角度に応じた傾斜を含む凡例を地形平面図とともに表示する、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0013】
本願発明の地形平面図表示システムは、地形の傾斜の程度に応じた表示色が付された地形平面図を表示するシステムであって、凡例表示制御手段と地形平面図表示制御手段を備えたものである。このうち凡例表示制御手段は、複数の個別領域からなる凡例を表示させる手段であり、地形平面図表示制御手段は、地形平面図を表示させる手段である。なお個別領域は、それぞれ傾斜角度範囲に対応する領域であって、それぞれ傾斜角度範囲の上限角度で傾斜する傾斜部を含んで形成される。そして凡例表示制御手段は、個別領域をそれぞれ異なる個別表示色と同じ表示色で表示する。
【0014】
本願発明の地形平面図表示システムは、地形平面図を構成する複数の小領域ごとに表示色を表示することもできる。この場合、地形平面図の小領域にはそれぞれ地形傾斜角度が付与され、地形平面図表示制御手段は、小領域の地形傾斜角度を含む傾斜角度範囲に係る個別領域の個別表示色と同じ前記表示色で小領域を表示する。
【0015】
本願発明の地形平面図表示システムは、それぞれ三角形の個別領域によって凡例全体領域が構成されるものとすることもできる。なお凡例全体領域は、全体底辺と全体対辺、全体斜辺からなる三角形の領域であり、そして全体底辺と全体斜辺からなる頂点が起点とされる。この場合、凡例表示制御手段は、全体対辺を分割するように、且つ相互が重ならないように、しかもいずれかの頂点が全体領域の起点と一致するように、それぞれ個別領域を配置したうえで表示する。あるいは、全体底辺を分割するように、且つ相互が重ならないように、しかもいずれかの頂点が全体領域の起点と一致するように、それぞれ個別領域を配置したうえで表示することもできる。
【0016】
本願発明の地形平面図表示システムは、個別領域が個別底辺と個別対辺、個別斜辺によって形成されたものとすることもできる。ただし個別領域の個別斜辺は、傾斜部を構成する。この場合、凡例表示制御手段は、個別底辺が傾斜角度範囲の下限角度で傾斜するように、それぞれ個別領域を表示する。
【0017】
本願発明の地形平面図表示システムは、それぞれ個別領域を柱状体の鳥瞰図として表示することもできる。この柱状体は、側面視の形状が連続する柱形状(例えば、三角柱)であって、水平な個別底面と鉛直な個別対面、傾斜部を構成する個別斜面からなる。また柱状体の個別斜面は、側面視で上限角度に応じた直線(あるいは曲線)とされ、側面視における柱状体の個別対面の寸法(高さ)はすべて同一とされる。あるいは、側面視における柱状体の個別底面の寸法(長さ)をすべて同一とすることもできる。
【0018】
本願発明の地形平面図表示システムは、凡例表示制御手段によって個別領域をそれぞれ個別に選択して表示するとともに非表示にすることもできる。
【0019】
本願発明の地形平面図表示方法は、地形の傾斜の程度に応じた表示色が付された地形平面図を凡例とともに表示する方法である。より詳しくは、個別領域をそれぞれ異なる個別表示色で表示し、小領域の地形傾斜角度を傾斜角度範囲に照らし合わせることによって個別領域を選定するとともに選定された個別領域の個別表示色で小領域を表示する。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の地形平面図表示システム、及び地形平面図表示方法には、次のような効果がある。
(1)従来技術に比して、地形平面図の傾斜の程度を直感的に把握することができる。
(2)その結果、相応の知識や経験がない者でも、容易に地形図を読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】地形平面図表示システムによって表示手段に表示された地形平面図と凡例を示すモデル図。
【
図2】(a)は凡例全体の一例を模式的に示すモデル図、(b)は凡例を構成する個別領域を模式的に示すモデル図。
【
図3】凡例全体領域が四角形とされた凡例を模式的に示すモデル図。
【
図4】個別領域の個別底辺が全体底辺を分割する凡例を模式的に示すモデル図。
【
図5】(a)は鳥観図として表された凡例を模式的に示すモデル図、(b)は側面視したときの個別斜面が直線である個別領域の斜視図、(c)は側面視したときの個別斜面が曲線である個別領域の斜視図。
【
図6】(a)は個別斜面がいわば直線的な平面となる個別領域からなる凡例を示す斜視図、(b)は個別斜面が曲面となる個別領域からなる凡例を示す斜視図。
【
図7】本願発明の地形平面図表示システム100の主な構成を示すブロック図。
【
図8】複数の小領域によって構成される地形平面図を模式的に示すモデル図。
【
図9】地形平面図表示制御手段が地形平面図を出力手段に表示させる主な処理の流れを示すフロー図。
【
図10】本願発明の地形平面図表示方法の主な工程の流れを示すフロー図。
【
図11】(a)はスライドバーを利用した傾斜凡例を示すモデル図、(b)は道傾斜レンジと表示色の対応を示す傾斜凡例を示すモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
地形平面図表示システム、及び地形平面図表示方法の実施の一例を図に基づいて説明する。
【0023】
1.全体概要
図1は、本願発明の地形平面図表示システムによって表示手段(例えば、ディスプレイなど)に表示された地形平面図と凡例200を示すモデル図である。この図に示すように本願発明は、地形平面図とともに表示される凡例200が特徴のひとつであり、具体的には凡例200に「傾斜部」が示されるという技術的特徴を備えている。これにより、凡例の傾斜の程度を直感的に把握することができるわけである。以下、本願発明に用いられる凡例200について詳しく説明する。
【0024】
図2は、本願発明に用いられる凡例200の一例を模式的に示すモデル図であり、(a)は凡例200全体を示しており、(b)は凡例200を構成する個別領域210を示している。この図に示すように凡例200は、複数の個別領域によって構成される。例えば
図2(a)では、個別領域210a~個別領域210gの7つの個別領域210によって凡例200が構成されている。
図2(b)に示す個別領域210(この図では、別領域210d)は、下方に位置する辺(以下、「個別底辺211」という。)と、上下に伸びる辺(以下、「個別対辺212」という。)、上方に位置する辺(以下、「個別斜辺213」という。)からなる三角形とされている。また、
図2(a)に示す凡例200全体も、下方に位置する辺(以下、「全体底辺201」という。)と、上下に伸びる辺(以下、「全体対辺202」という。)、上方に位置する辺(以下、「全体斜辺203」という。)からなる概ね直角三角形とされている。
【0025】
複数の個別領域210は、凡例200の領域(以下、「凡例全体領域」という。)を分割するように配置される。例えば
図2(a)では、個別領域210a~個別領域210gの順で7つの個別領域210を下から積み上げるように配置している。なお、上下に隣接する相互の個別領域210は重複しないように配置される。またすべての個別領域210は、個別底辺211と個別斜辺213からなる頂点(図では右側の頂点)が、全体底辺201と全体斜辺203からなる頂点(図に示す「起点」)と重なるように、しかもそれぞれの個別領域210の個別対辺212が全体対辺202を分割するように配置される。換言すれば、起点から全体対辺202に向かって複数(図では6本)の線分を設定することによって凡例全体領域を複数の領域に分割し、これにより複数(図では7つ)の個別領域210が形成される。
【0026】
本願発明に用いられる地形平面図は、場所ごとの「地形の傾斜角度(以下、単に「地形傾斜角度」という。)」に応じた表示色で表現したものである。これに対して本願発明に用いられる凡例200は、地形平面図に含まれる様々な地形傾斜角度の範囲(最小角度から最大角度)を、複数の範囲(以下、「傾斜レンジ」という。)に分けたうえで、それぞれの傾斜レンジに表示色が示されたものであって、それぞれの傾斜レンジを個別領域210で表現したものである。より詳しくは、例えば0度~90度の範囲に対して複数組の下限角度と上限角度(以下、「傾斜角度範囲」という。)を設定することによって複数の傾斜レンジに分け、それぞれの傾斜レンジに対して個別領域210を設定するとともに、それぞれ異なる表示色で個別領域210内を着色する。なお、地形平面図に表示される表示色と区別するため、個別領域210内に表示される色のことを便宜上ここでは「個別表示色」ということとする。また、ここでいう表示色や個別表示色とは、赤や青、緑といったいわゆるカラー色に限らず、
図2に示すようなグレースケールも含み、さらにカラー色とグレースケールの組み合わせも含む概念である。
【0027】
また個別領域210は、それぞれ傾斜角度範囲の上限角度で傾斜する「傾斜部」を含んで形成される。例えば
図2に示す個別領域210は、個別斜辺213によって傾斜部が形成されており、さらに個別底辺211によって傾斜角度範囲の下限角度が示されている。より詳しくは、個別斜辺213と水平線がなす角度が傾斜角度範囲の上限角度を表しており、個別底辺211と水平線がなす角度が傾斜角度範囲の下限角度を表している。これにより、地形平面図の表示色と凡例200(個別領域210)の個別表示色を照らし合わせることで地形傾斜角度を理解することができ、しかも個別底辺211や個別斜辺213の傾きによって実際の地形傾斜角度をより直感的に把握することができるわけである。
【0028】
本願発明に用いられる凡例200は、
図3に示すように凡例全体領域を四角形とすることもできる。なお、
図3に示す凡例200のうち個別領域210(個別領域210a~個別領域210g)に関しては、
図2で説明した要領で配置されている。
【0029】
また、
図2に示す凡例200は個別対辺212が全体対辺202を分割するようにそれぞれの個別領域210が配置されているが、これに限らず個別底辺211が全体底辺201を分割するようにそれぞれの個別領域210を配置した凡例200とすることもできる。例えば
図4では、個別領域210a~個別領域210gの順で7つの個別領域210を右から並べるように配置している。なお、左右に隣接する相互の個別領域210は重複しないように配置される。またすべての個別領域210は、個別対辺212と個別斜辺213からなる頂点(図では左上の頂点)が、全体対辺202と全体斜辺203からなる頂点(図に示す「起点」)と重なるように、しかもそれぞれの個別領域210の個別底辺211が全体底辺201を分割するように配置される。換言すれば、起点から全体底辺201に向かって複数(図では6本)の線分を設定することによって凡例全体領域を複数の領域に分割し、これにより複数(図では7つ)の個別領域210が形成される。なお
図4に示す個別領域210は、個別対辺212によって傾斜部が形成されており、さらに個別斜辺213によって傾斜角度範囲の下限角度が示されている。
図2や
図3に示す凡例200は、個別対辺212の寸法(高さ)を変化させることで傾斜角度範囲を表現しているのに対し、
図4に示す凡例200は、個別底辺211の寸法(長さ)を変化させることで傾斜角度範囲を表現しているわけである。
【0030】
さらに凡例200は、
図5に示すように立体的な個別領域210を鳥観図として表したものとすることもできる。この場合の個別領域210は、同一の断面が連続する柱状の外形を有する立体(以下、「柱状体」という。)とされる。例えば
図5(b)に示す柱状体は、水平な面(以下、「個別底面214」という。)と、鉛直な面(以下、「個別対面215」という。)、傾斜する面(以下、「個別斜面216」という。)、側方の面(以下、「個別側面217」という。)からなる六面体であって、個別側面217が連続する柱状の個別領域210である。なお
図5(b)のケースでは、側面視した個別側面217が三角形であるため、この柱状体(個別領域210)の外形は三角柱である。また
図5(b)に示す柱状体の個別斜面216は、その個別側面217の斜辺に当たる部分が直線となるいわば直線的な平面とされているが、これに限らず
図5(c)に示すように個別斜面216が曲面(個別側面217の斜辺に当たる部分が曲線)となる柱状体(個別領域210)とすることもできる。
【0031】
個別領域210を鳥観図として表す場合、複数の個別領域210(柱状体)が横に並ぶように配置されるとともに、複数の個別領域210はそれぞれ異なる「個別表示色」が表示され、さらにそれぞれ個別領域210(柱状体)の個別斜面216の傾斜角度(水平面となす角度)は異なるものとされる。すなわちこの場合は、個別斜面216によって「傾斜部」が形成され、その傾斜角度によって傾斜角度範囲の上限角度を示している。ただし、これら複数の個別領域210(柱状体)の個別対面215の高さ(個別領域210を側面視したときの個別対面215の長さ)はすべて同一とされる。例えば
図5(a)に示す凡例200は、すべて個別対面215の高さが同一とされた個別領域210a~個別領域210gが横に並ぶように、しかも個別対面215が揃うように(7つの個別対面215によって1の平面が形成されるように)配置され、それぞれ異なる個別表示色が表示されている。
【0032】
図5に示す凡例200は個別対面215の寸法(高さ)が同一となる個別領域210(柱状体)を鳥観図として表しているが、これに限らず個別底面214の寸法(長さ)が同一となる個別領域210(柱状体)を鳥観図として表した凡例200とすることもできる。例えば
図6では、すべて個別底面214の長さが同一とされた個別領域210a~個別領域210gが横に並ぶように配置され、それぞれ異なる個別表示色が表示されている。
図6(a)は、個別斜面216がいわば直線的な平面(個別側面217の斜辺に当たる部分が直線)となる個別領域210からなる凡例200を示す斜視図、
図6(b)は、個別斜面216が曲面(個別側面217の斜辺に当たる部分が曲線)となる個別領域210からなる凡例200を示す斜視図である。この場合も、個別対面215が揃うように(7つの個別対面215によって1の平面が形成されるように)配置され、もちろん個別底面214が揃うように(7つの個別底面214によって1の平面が形成されるように)配置される。
図5に示す凡例200は、個別底面214の寸法(長さ)を変化させることで傾斜角度範囲を表現しているのに対し、
図6に示す凡例200は、個別対面215の寸法(高さ)を変化させることで傾斜角度範囲を表現しているわけである。
【0033】
2.地形平面図表示システム
次に、本願発明の地形平面図表示システムについて詳しく説明する。なお、本願発明の地形平面図表示方法は、本願発明の地形平面図表示システムを用いて地形平面図を表示する方法であり、したがってまずは本願発明の地形平面図表示システムについて説明し、その後に本願発明の地形平面図表示方法について説明することとする。
【0034】
図7は、本願発明の地形平面図表示システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の地形平面図表示システム100は、凡例表示制御手段101と地形平面図表示制御手段102を含んで構成され、さらに個別表示色判定手段103や出力手段104、地形モデル記憶手段105、個別表示色記憶手段106、個別領域記憶手段107、表示色記憶手段108などを含んで構成することもできる。
【0035】
地形平面図表示システム100を構成する凡例表示制御手段101と地形平面図表示制御手段102、個別表示色判定手段103は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータは、CPU等のプロセッサと、ROMやRAMといったストレージやメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、タブレット型コンピュータ(iPad(登録商標)など)やスマートフォンといった携帯型端末機器、あるいはパーソナルコンピュータ(PC)やサーバーなどを例示することができる。ディスプレイを具備するコンピュータを利用する場合、出力手段104としてこのディスプレイを利用するとよい。
【0036】
また、地形モデル記憶手段105と個別表示色記憶手段106、個別領域記憶手段107、表示色記憶手段108は、コンピュータ装置の記憶装置を利用することもできるし、そのほかデータベースサーバーに構築することもできる。データベースサーバーに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(例えば、無線通信)で保存するクラウドサーバーとすることもできる。
【0037】
以下、地形平面図表示システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0038】
(凡例表示制御手段)
凡例表示制御手段101は、ここまで説明した凡例200を出力手段104に表示させる手段である。より詳しくは、個別領域記憶手段107に記憶された個別領域210に関する情報(以下、「個別領域情報」という。)を読み出す(
図7)とともに、個別表示色記憶手段106に記憶された「個別表示色」の情報を読み出し(
図7)、これらの情報に基づいて凡例200を出力手段104に描画する。ここで個別領域情報とは、凡例200を構成する個別領域210の個数や、それぞれ個別領域210の形状(特に傾斜部)、配置などに関する情報である。すなわち凡例表示制御手段101は、個別領域情報にしたがって複数の個別領域210を配置するとともに、個別領域210内にそれぞれ対応する個別表示色を表示することで、凡例200を表示する。
【0039】
また凡例表示制御手段101は、凡例200を出力手段104に表示させるとともに、非表示にすることもできる。このとき、凡例200内に配置された複数の個別領域210を選択的に表示するとともに非表示にすることができる。より詳しくは、オペレータがポインティングデバイス(マウスなど)やキーボードを操作することによって、所望の個別領域210を指定するとともにon/offを選択することで、指定された個別領域210が表示(on)あるいは非表示(off)とされる。もちろん、すべての個別領域210を指定することで凡例200全体を表示/非表示とすることもできる。凡例200は地形平面図とともに表示されるため、場合によっては地形確認にとって凡例200が妨げになることもあり、凡例200の一部(あるいは全部)を非表示にすることによって地形の確認を容易にすることができる。また、特に注目したい地形傾斜角度があるケースでは、該当する個別領域210のみを表示したうえで地形平面図を確認することができ、注目の地形傾斜角度となる箇所をより容易に抽出することはできて好適となる。
【0040】
(地形平面図表示制御手段)
地形平面図表示制御手段102は、地形平面図を出力手段104に表示させる手段である。この地形平面図は、地形傾斜角度を段階的に、つまり傾斜レンジごとに表示色で表示したものであり、ラスター形式の画像やベクター形式の画像など様々な形式の画像や図面を地形平面図として用いることができる。また地形平面図は、既述したDEMやDSM地形といったモデルを2次元的(平面的)に表示したものを用いることもできる。この場合の地形平面図は、
図8に示すように多数のグリッドとそのグリッドで区切られるメッシュ(以下、「小領域MS」という。)によって形成されるとともに、それぞれの小領域MSには3次元座標が付与され、さらにそれぞれの小領域MSに対して地形傾斜角度が付与されたものとすることもできる。この地形傾斜角度は、「傾斜量」ともいわれる物理量であり、注目する小領域MSの3次元座標と周囲の小領域MS(例えば、周囲8個の小領域MS)の3次元座標によって求めることができる。なお、地形平面図は地形モデル記憶手段105に記憶され、また小領域MSに係る地形傾斜角度と3次元座標なども地形モデル記憶手段105に記憶される。
【0041】
以下、小領域MSに地形傾斜角度が付与された地形平面図を用いる場合に、地形平面図表示制御手段102が地形平面図を出力手段104に表示させる主な処理の流れについて
図9を参照しながら説明する。なお
図9のフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0042】
はじめに個別表示色判定手段103(
図7)が、注目する小領域MSを地形モデル記憶手段105に照会することによって、その小領域MSに係る地形傾斜角度を取得するとともに、その小領域MSに対応する傾斜レンジを判定する(
図9のStep301)。ここで傾斜レンジとは、既述したとおり0度~90度の範囲に対して設定された傾斜角度範囲であり、1の個別領域210に対して1の傾斜レンジ(つまり、傾斜角度範囲)が対応付けられる。すなわち個別表示色判定手段103は、取得した地形傾斜角度に対応する(つまり、地形傾斜角度が傾斜角度範囲の上限角度と下限角度の間にある)傾斜レンジを、当該小領域MSに対応する傾斜レンジとして判定する。
【0043】
傾斜レンジを判定すると、個別表示色判定手段103がその傾斜レンジを表示色記憶手段108(
図7)に照会することによって、その傾斜レンジ(つまり、傾斜角度範囲)に係る個別表示色と同じ表示色の情報を取得する(
図9のStep302)。なお個別表示色記憶手段106が表示色記憶手段108を兼用することとし、個別表示色判定手段103が個別表示色記憶手段106から地形傾斜角度に対応する個別表示色の情報を取得する仕様とすることもできる。そして、傾斜レンジの判定(
図9のStep301)~表示色の取得(
図9のStep302)からなる一連の処理をすべての小領域MSに対して繰り返し実行すると、これを受け取った地形平面図表示制御手段102が該当する小領域MSに対して適切な表示色を表示(着色)することで地形平面図が出力手段104に表示される(
図9のStep303)。
【0044】
3.地形平面図表示方法
続いて、本願発明の地形平面図表示方法ついて
図10を参照しながら説明する。なお、本願発明の地形平面図表示方法は、ここまで説明した地形平面図表示システム100を用いて地形平面図を表示する方法であり、したがって地形平面図表示システム100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の地形平面図表示方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.地形平面図表示システム」で説明したものと同様である。
【0045】
図10は、本願発明の地形平面図表示方法の主な工程の流れを示すフロー図である。まず、地形平面図表示システム100を起動し、地形平面図を出力手段104に表示する(
図10のStep10)とともに、凡例200も出力手段104に表示する(
図10のStep20)。そして、オペレータ操作により所望の個別領域210を非表示にしたり、あるいは再度表示したり、選択的に個別領域210を表示/非表示とする(
図10のStep30)。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明の地形平面図表示システム、及び地形平面図表示方法は、山地部をはじめ平野部、都市部など様々な地域での地形平面図に利用することができる。特に都市部の地形平面図に利用すると、高齢者や車いす利用者にとって有益である傾斜情報や段差情報を直感的な情報として提供することができ、さらに防災計画にも有効活用することができるなど、本願発明は産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0047】
100 本願発明の地形平面図表示システム
101 (地形平面図表示システムの)凡例表示制御手段
102 (地形平面図表示システムの)地形平面図表示制御手段
103 (地形平面図表示システムの)個別表示色判定手段
104 (地形平面図表示システムの)出力手段
105 (地形平面図表示システムの)地形モデル記憶手段
106 (地形平面図表示システムの)個別表示色記憶手段
107 (地形平面図表示システムの)個別領域記憶手段
108 (地形平面図表示システムの)表示色記憶手段
200 (地形平面図表示システムの)凡例
201 (凡例の)全体底辺
202 (凡例の)全体対辺
203 (凡例の)全体斜辺
210 (凡例の)個別領域
211 (個別領域の)個別底辺
212 (個別領域の)個別対辺
213 (個別領域の)個別斜辺
214 (個別領域の)個別底面
215 (個別領域の)個別対面
216 (個別領域の)個別斜面
217 (個別領域の)個別側面
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