(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126536
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲートのための検出アッセイ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6816 20180101AFI20230831BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20230831BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20230831BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230831BHJP
C07K 14/36 20060101ALN20230831BHJP
C07K 14/31 20060101ALN20230831BHJP
C07K 14/315 20060101ALN20230831BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230831BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z
G01N33/53 M
G01N33/536 D
C12N15/113 Z ZNA
C07K14/36
C07K14/31
C07K14/315
C07K16/28
C07K14/705
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023116789
(22)【出願日】2023-07-18
(62)【分割の表示】P 2020567949の分割
【原出願日】2019-06-06
(31)【優先権主張番号】62/681,931
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マイ セイヤー
(72)【発明者】
【氏名】サラ ハンフリーズ
(57)【要約】
【課題】様々な試料マトリックス中の無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出及び定量化するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、様々な試料マトリックス中の無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出及び定量化するための方法に関する。具体的には、方法は、三重鎖形成オリゴヌクレオチドをタンパク質特異的結合パートナーと組み合わせて用いて、コンジュゲート分子のポリヌクレオチド及びタンパク質成分をそれぞれ検出する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年6月7日出願の米国仮特許出願第62/681,931号明細書の利益を主張する。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を包含し、その配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2019年5月23日に作成されたコンピュータ読み取り可能フォーマットの配列表のコピーは、名称がA-2248-WO-PCT_SeqList_ST25であり、サイズが1.7キロバイトである。
【0003】
本発明は、薬物コンジュゲート分子の検出及び定量化に関する。具体的には、本発明は、サンドイッチベースのアッセイ中で標識三重鎖形成オリゴヌクレオチド及びタンパク質特異的結合パートナーを用いて、試料中の無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出及び定量化するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
核酸分子は、治療学の有望な部類を代表し続けている。しかしながら、治療的核酸分子を標的組織に送達することが難題であることが分かっており、様々なアプローチが試みられてきた。1つのこうした送達のアプローチは、対象の細胞型上で発現する細胞表面タンパク質に特異的に結合する標的化タンパク質に治療的核酸分子をコンジュゲートさせることを伴う。したがって、抗体-siRNAコンジュゲートなどのこれらのタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子が新しい治療法として台頭しつつある。そのため、無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子の検出及び定量化を可能にするロバストなアッセイ法を有することが重要である。
【0005】
無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出することに適応可能ないくつかの既存の方法が存在するが、これらは、いくつかの欠点に直面する。例えば、サイズ排除クロマトグラフィは、溶液中で他の種から無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を分離するために用いられ得る。しかしながら、この方法は、主に定性的であり、高レベルの試料純度を必要とするため、血清及び組織ホモジネートなどの複雑な試料マトリックス中での使用に適合性がない。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)及び核磁気共鳴(NMR)などの他の方法は、コンジュゲート分子の完全性に影響を及ぼし得る条件又は試料の処理若しくはアッセイ後データ解釈のための様々な時間のかかる工程のいずれかを必要とする。また、高純度の試料が典型的に求められるため、これらの方法のいずれも、複雑な試料マトリックス中でのコンジュゲート分子の検出又は定量化に適合性がない。
【0006】
抗原ベースの捕捉工程、それに続いて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)を用いた抗体-siRNAコンジュゲート分子のための検出法が報告されている(Tan et al.,Analytical Biochemistry,Vol.430:171-178,2012)。しかしながら、この方法は、siRNA分子中に存在する化学修飾ヌクレオチドの数及びタイプの影響を受ける可能性のあるPCRプライマー及びプローブのハイブリダイゼーションの効率に大きく依存する。更に、PCR工程は、高温(例えば、85℃以上)の使用を必要とし、これは、タンパク質の分解をもたらし、そのため、場合により、組織ホモジネートなどのより複雑な試料マトリックスにおいてアッセイの使用を制限し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、当技術分野において、複雑な生体試料を含む様々な試料タイプにわたって無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子の検出及び定量化を可能にするシンプルなアッセイを開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血清及び組織ホモジネートなどの複雑な生体試料を含む様々な試料マトリックスにおいてタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出及び定量化するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、試料を、標識に共有結合されている三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)と、TFOがコンジュゲート分子中のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする条件下において接触させ、それによりハイブリダイゼーション混合物を形成することと、ハイブリダイゼーション混合物を、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する捕捉試薬を含む表面と接触させることと、表面を検出試薬と接触させることであって、検出試薬は、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する結合パートナーに結合された検出可能なラベルを含む、接触させることと、検出可能なラベルからのシグナルを検出することとを含む。
【0009】
別の実施形態では、方法は、試料を、標識に共有結合されているTFOと、TFOがコンジュゲート分子中のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする条件下において接触させ、それによりハイブリダイゼーション混合物を形成することと、ハイブリダイゼーション混合物を、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する捕捉試薬を含む表面と接触させることと、表面を検出試薬と接触させることであって、検出試薬は、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する結合パートナーに結合された検出可能なラベルを含む、接触させることと、検出可能なラベルからのシグナルを検出することとを含む。
【0010】
本発明の方法に採用されるTFOは、コンジュゲート分子のポリヌクレオチド成分の配列に相補的な配列を有し得る。ポリヌクレオチド成分が二本鎖ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)である実施形態では、TFOは、コンジュゲート分子中のタンパク質に結合されるポリヌクレオチドの鎖の配列に相補的な配列を有し得る。いくつかの実施形態では、TFOは、長さが少なくとも15ヌクレオチドであり、二環式糖修飾を含む少なくとも1つの修飾ヌクレオチド(例えば、ロック核酸)を含む。特定の実施形態では、TFOは、ロック核酸モノマーとデオキシリボヌクレオチドとの混合物を含む。こうした実施形態では、TFO中のヌクレオチドの約30%~約40%は、ロック核酸モノマーである。本発明の方法の特定の実施形態では、TFOは、標識に共有結合される。標識は、ビオチン、ジゴキシゲニン又は2,4-ジニトロフェノールなどのハプテンであり得る。
【0011】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、捕捉試薬は、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する。こうした実施形態では、捕捉試薬は、標識に特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントであり得る。例えば、標識は、ジゴキシゲニンであり得、及び捕捉試薬は、ジゴキシゲニンに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントであり得る。他の実施形態では、捕捉試薬は、標識に特異的に結合するタンパク質又はペプチドである。これらの実施形態では、標識は、ビオチンであり得、及び捕捉試薬は、ストレプトアビジンであり得る。
【0012】
本発明の方法の他の実施形態では、捕捉試薬は、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する。こうした実施形態では、捕捉試薬は、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントであり得る。例えば、一実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体であり、及び捕捉試薬は、抗Fc領域抗体又は抗イディオタイプ抗体である。別の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、ペプチドリガンドであり、及び捕捉試薬は、ペプチドリガンドに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントである。他の実施形態では、捕捉試薬は、コンジュゲート分子のタンパク質成分に特異的に結合するタンパク質又はそのフラグメントであり得る。これらの実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体であり得、及び捕捉試薬は、抗体の標的抗原、タンパク質A又はタンパク質Gであり得る。他のこうした実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、細胞表面受容体のリガンドであり、及び捕捉試薬は、受容体又はそのリガンド結合フラグメントである。
【0013】
本発明の方法で採用される検出試薬は、結合パートナーに結合された検出可能なラベルを含み、結合パートナーは、コンジュゲート分子中のタンパク質又はTFOに共有結合された標識のいずれかに特異的に結合する。結合パートナーに結合された検出可能なラベルは、蛍光体、金属ナノ粒子、金属ナノシェル、酵素又は電気化学発光(ECL)発光団などの任意のタイプのシグナル生成実体であり得る。本発明の方法のいくつかの実施形態では、結合パートナーは、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する。これらの実施形態では、結合パートナーは、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントであり得る。1つのこうした実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体であり、及び結合パートナーは、抗Fc領域抗体又は抗イディオタイプ抗体である。別の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、ペプチドリガンドであり、及び結合パートナーは、ペプチドリガンドに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントである。他の実施形態では、結合パートナーは、コンジュゲート分子のタンパク質成分に特異的に結合するタンパク質又はそのフラグメントであり得る。例えば、一実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体又は抗原結合フラグメントであり、及び結合パートナーは、抗体又は抗原結合フラグメントの標的抗原である。別の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、細胞表面受容体のリガンドであり、及び結合パートナーは、受容体又はそのリガンド結合フラグメントである。
【0014】
本発明の方法の他の実施形態では、検出試薬中の結合パートナーは、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する。こうした実施形態では、結合パートナーは、標識に特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントであり得る。例えば、一実施形態では、標識は、ジゴキシゲニンであり、及び結合パートナーは、ジゴキシゲニンに特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントである。他の実施形態では、結合パートナーは、標識に特異的に結合するタンパク質又はペプチドである。これらの実施形態では、標識は、ビオチンであり得、及び結合パートナーは、ストレプトアビジンであり得る。
【0015】
本発明の方法は、様々なタイプのタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出又は測定するために用いることができる。コンジュゲート分子のポリヌクレオチド成分は、siRNA、shRNA、miRNA、プレmiRNA、miRNA模倣薬、抗miRNAオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。コンジュゲート分子のタンパク質成分は、抗体、抗原結合フラグメント(例えば、scFv、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント若しくはFvフラグメント)又はリガンドであり得る。いくつかの実施形態では、抗体、抗原結合フラグメント又はリガンドは、特定の細胞型又は組織によって発現する受容体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本発明の方法で検出又は測定されるタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子は、抗体-siRNAコンジュゲート分子である。他の実施形態では、本発明の方法で検出又は測定されるタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子は、リガンド-siRNAコンジュゲート分子である。
【0016】
本発明の方法は、様々な試料タイプにおいてタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出又は測定するために用いることができる。いくつかの実施形態では、試料は、血清、血漿、細胞溶解物又は組織(例えば、組織ホモジネート)などの生体試料である。こうした試料は、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を投与された動物又はヒト対象から得ることができる。いくつかの実施形態では、試料は、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子に曝露された細胞培養液(例えば、上清又は溶解物)から得られる。他の実施形態では、試料は、コンジュゲート分子の合成プロセス中の工程からの反応混合物又は生成物など、コンジュゲート分子の製造プロセス中の工程から得られる。更に他の実施形態では、本発明の方法は、品質管理又はロットリリースプロセスの一部として用いられ、試料は、製剤原料又は製剤である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のアッセイ法の1つのフォーマットを示す概略図である。この実施形態では、標識三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)、例えばビオチン化TFOは、標識TFOが抗体-siRNAコンジュゲートのsiRNA成分と三重鎖を形成することを可能にするハイブリダイゼーション条件下において、抗体-siRNAコンジュゲート分子を含有する試料と接触される。ハイブリダイゼーション混合物は、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する捕捉試薬(例えば、ストレプトアビジン)でコーティングされた表面と接触される。それにより、標識TFO-siRNAハイブリッドを含む抗体-siRNAコンジュゲート分子は、捕捉試薬-標識相互作用(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用)を介して表面に固定化される。続いて、ルテニウムラベル化抗Fc抗体などの抗体に特異的に結合するラベル化結合パートナーを用いて、固定化されたコンジュゲートの検出及び定量化が達成される。
【
図2A-2B】低濃度範囲のビオチン化TFOを用いたアッセイ(
図2A;6.25nM~50nM)及び高濃度範囲のビオチン化TFOを用いたアッセイ(
図2B;50nM~250nM)に対する、任意の単位における電気化学発光シグナル(MSD応答)に対してプロットされた、試料緩衝液中の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子の様々な濃度の線グラフである(0.04ng/mL~2500ng/mL)。
図1に示すアッセイのフォーマットを採用した。データを4パラメータ非線形回帰モデル(重み係数1/Y^2を有するマルカート法)にフィットさせた。R
2値を曲線のそれぞれの丸括弧内に示す。
【
図2C】マウス血清又はマウス肝臓ホモジェネート中の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子(0.04ng/mL~2500ng/mL)の濃度と、任意の単位における電気化学発光シグナル(MSD応答)との間の関係を示す線グラフである。
図1に示すアッセイのフォーマットを採用した。データを4パラメータ非線形回帰モデル(重み係数1/Y^2を有するマルカート法)にフィットさせた。R
2値を2曲線のそれぞれの丸括弧内に示す。コンジュゲート分子を捕捉するために100nMのビオチン化TFOをアッセイで用いた。
【
図3A】試料緩衝液中のモノクローナル抗体-siRNAコンジュゲート分子の濃度(ARC;0.04ng/mL~2500ng/mL)と、任意の単位における電気化学発光シグナル(MSD応答)との間の関係を示すグラフである。
図1に示すアッセイのフォーマットを採用した。siRNA分子T2を抗ASGR1モノクローナル抗体25B3にコンジュゲートするか(T2-25B3)、又は非特異性のキャリアモノクローナル抗体655にコンジュゲートした(T2-655)。siRNA分子を1又は2のRNA-抗体比(それぞれRAR1又はRAR2)でコンジュゲートした。コンジュゲート分子を捕捉するために100nMのビオチン化TFOをアッセイで用いた。
【
図3B】
図3Aに示すデータの線形スケール上のプロットである。データを線形回帰モデルにフィットさせ、フィットさせた線の勾配を計算した。計算された勾配をグラフの下の表に示す。RAR1コンジュゲートの回帰線の勾配は、RAR2コンジュゲートの回帰線の勾配と比べて低減していた。具体的には、T2-25B3 RAR1コンジュゲートの勾配は、T2-25B3 RAR2コンジュゲートのそれの72%であり、T2-655 RAR1コンジュゲートの勾配は、T2-655 RAR2コンジュゲートのそれの78%であった。
【
図4A】試料緩衝液中のモノクローナル抗体-siRNAコンジュゲート分子の濃度(ARC;0.04ng/mL~2500ng/mL)と、任意の単位における電気化学発光シグナル(MSD応答)との間の関係を示すグラフである。
図1に示すアッセイのフォーマットを採用した。siRNA分子HPRT又はsiRNA分子C911を抗ASGR1モノクローナル抗体25B3にコンジュゲートした(それぞれHPRT-25B3又はC911-25B3)。siRNA分子を1又は2のRNA-抗体比(それぞれRAR1又はRAR2)でコンジュゲートした。コンジュゲート分子を捕捉するために100nMのビオチン化TFOをアッセイで用いた。
【
図4B】
図4Aに示すデータの線形スケール上のプロットである。データを線形回帰モデルにフィットさせ、フィットさせた線の勾配を計算した。計算された勾配をグラフの下の表に示す。RAR1コンジュゲートの回帰線の勾配は、RAR2コンジュゲートの回帰線の勾配と比べて低減していた。具体的には、HPRT-25B3 RAR1コンジュゲートの勾配は、HPRT-25B3 RAR2コンジュゲートのそれの75%であり、C911-25B3 RAR1コンジュゲートの勾配は、C911-25B3 RAR2コンジュゲートのそれの62%であった。
【
図5】本発明のアッセイ法の第2のフォーマットを示す概略図である。この実施形態では、標識三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)、例えばジゴキシゲニンラベル化TFOは、標識TFOが抗体-siRNAコンジュゲートのsiRNA成分と三重鎖を形成することを可能にするハイブリダイゼーション条件下において、抗体-siRNAコンジュゲート分子を含有する試料と接触される。ハイブリダイゼーション混合物は、抗体-siRNAコンジュゲートの抗体成分に特異的に結合する捕捉試薬(例えば、抗Fc抗体又は抗体の標的抗原)でコーティングした表面と接触される。捕捉試薬は、表面と直接連結し得るか、又は図示されるビオチン及びストレプトアビジンなどの他の結合パートナーを介して間接的に連結し得る。続いて、ルテニウムラベル化抗ジゴキシゲニン抗体などのTFOに共有結合された標識に特異的に結合するラベル化結合パートナーを用いて、固定化されたコンジュゲートの検出及び定量化が達成される。
【
図6】試料緩衝液中のモノクローナル抗体-siRNAコンジュゲート分子の濃度(ARC;0.38ng/mL~25000ng/mL)と、任意の単位における電気化学発光シグナル(MSD応答)との間の関係を示すグラフである。
図5に示すアッセイのフォーマットを採用した。siRNA分子T2を抗ASGR1モノクローナル抗体25B3にコンジュゲートするか(T2-25B3)、又は非特異性のキャリアモノクローナル抗体655にコンジュゲートした(T2-655)。siRNA分子を1又は2のRNA-抗体比(それぞれRAR1又はRAR2)でコンジュゲートした。コンジュゲート分子のsiRNA成分にハイブリダイズし、ルテニウムラベル化抗ジゴキシゲニン抗体を介した検出を可能にするために、100nMのジゴキシゲニンラベル化TFOをアッセイで用いた。
【
図7】試料緩衝液中のモノクローナル抗体-siRNAコンジュゲート分子の濃度(ARC;0.04ng/mL~2500ng/mL)と、任意の単位における電気化学発光シグナル(MSDシグナル)との間の関係示すグラフである。siRNA分子T2を1又は2のRNA-抗体比(それぞれRAR1又はRAR2)で抗ASGR1モノクローナル抗体25B3にコンジュゲートした。コンジュゲート分子を2つの異なるアッセイフォーマット:捕捉のために標識TFOが用いられるアッセイフォーマット1(
図1に示すフォーマットを参照されたい)及び検出のために標識TFOが用いられるアッセイフォーマット2(
図5に示すフォーマットを参照されたい)で評価した。アッセイフォーマット1では、コンジュゲート分子を捕捉するためにアッセイでビオチン化TFOを用い、検出には、ルテニウムラベル化抗ヒトFc抗体を用いた。アッセイフォーマット2では、コンジュゲート分子を捕捉するためにビオチン化抗ヒトFc抗体を用い、検出には、ルテニウムラベル化抗ジゴキシゲニン抗体と組み合わせたジゴキシゲニンラベル化TFOを用いた。
【
図8】試料緩衝液中の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子(ARC)の濃度と、任意の単位における電気化学発光シグナル(MSD応答)との間の関係示すグラフである。ビオチン化ヒトASGR1タンパク質を用いてARCを捕捉し、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートに固定化した。コンジュゲート分子のsiRNA成分にハイブリダイズし、ルテニウムラベル化抗ジゴキシゲニン抗体を介した検出を可能にするために、ジゴキシゲニンラベル化TFOをアッセイで用いた。
【
図9A】示された時点(2、4、8及び15日目)で測定された、皮下(SC)又は静脈内(IV)で全ての用量群の抗ASGR1mAb-siRNAコンジュゲート分子を受ける野生型マウス由来の肝臓における標的タンパク質発現を示す線グラフである。GalNAc部分にコンジュゲートされた同じsiRNA(GalNAc-siRNA)を陽性対照として使用した。5mpkのGalNAc-siRNAにおけるsiRNA量は、2つのsiRNA/mAbを有する30mpkの抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲートにおけるsiRNA量と均等である。
【
図9B】皮下(SC)又は静脈内(IV)で指定用量の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子を受けるマウスにおける合計薬物(「合計」)又は無傷の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子(「無傷」)の経時的な血清濃度間の関係の線グラフである。血清試料は、コンジュゲート分子の投与後2、4、8及び15日目に取られた。
【
図9C】皮下(SC)又は静脈内(IV)で指定用量の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子を受けるマウスにおける、経時的な合計薬物の肝臓中濃度間の関係の線グラフである。肝臓試料は、コンジュゲート分子の投与後2、4、8及び15日目に取られた。コンジュゲートの抗ASGR1 mAb成分を検出する抗ヒトFc/抗ヒトFc ELISAを用いて合計薬物を評価した。非コンジュゲートの抗ASGR1 mAb(25B3抗体)の用量調節肝臓濃度を比較のために示す。
【
図9D】皮下(SC)又は静脈内(IV)で指定用量の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子を受けるマウスにおける、経時的な無傷薬物の肝臓中濃度間の関係の線グラフである。
図1に示すアッセイフォーマットを用いて無傷薬物を評価した。肝臓試料は、コンジュゲート分子の投与後2、4、8及び15日目に取られた。GalNAc部分にコンジュゲートされた同じsiRNA(GalNAc-siRNA)の肝臓濃度を比較のために示す。
【
図10-1】[
図10A]モノクローナル抗体-siRNAコンジュゲート分子とビオチン化TFOとのハイブリダイゼーション混合物の天然の質量スペクトルである。siRNA分子を1のRNA-抗体比(RAR1)で抗体にコンジュゲートした。mAb-siRNA RAR1コンジュゲート分子を52℃で1時間、ビオチン化TFOとハイブリダイズさせた。ピークは、165kDaで観察され、これは、ビオチン化TFOがコンジュゲート分子のsiRNA成分にハイブリダイズされて三重鎖(mAb-siRNA三重鎖)を形成するコンジュゲート分子に対応する。 [
図10B]ビオチン化TFOの不在下での、
図10AのmAb-siRNA RAR1コンジュゲート分子の天然の質量スペクトルである。158kDaにおいてのみピークが観察され、これは、1つのsiRNA分子が共有結合されたモノクローナル抗体の予測分子量に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、血清及び組織ホモジネートなどの複雑な生体試料を含む様々な試料マトリックスにおいて無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出及び定量化するための方法の開発に関する。方法は、サンドイッチベースのフォーマットにおいてタンパク質特異的結合パートナーとの組み合わせで標識三重鎖形成オリゴヌクレオチドを使用して、同じ分子内のコンジュゲートのポリヌクレオチド及びタンパク質成分の存在(すなわちコンジュゲートが無傷であること)を判定する。本発明の方法は、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子の合成、安定性及びスクリーニングを含む様々な用途に有用である。方法は、無傷のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子のクリアランスプロファイル及びその生体内代謝低下を理解するための薬物動態及び薬物代謝研究に用いることもできる。方法は、治療的タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を含む製剤原料及び製剤の品質管理及びロットリリースにおける用途も見出す。
【0019】
本発明の方法は、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲートを含む試料を三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)と接触させることを伴う。TFOは、フーグスティーン又は逆フーグスティーン型水素結合を介して二本鎖RNA又はDNA分子の主溝中で配列特異的な方法で結合するオリゴヌクレオチドである。ピリミジンに富む鎖は、フーグスティーン型塩基対によって二重鎖中のプリンに富む鎖と平行配向で結合され、TFO中のチミン(T)及びシトシン(C)は、アデニン(A)-T及びグアニン(G)-C塩基対を認識して、それぞれT-AT及びC+-GC塩基三重鎖を生成する。プリンに富む鎖は、逆フーグスティーン型塩基対によって二重鎖中のプリンに富む鎖と逆平行配向で結合され、TFO中のA及びGはAT及びGC塩基対を認識して、それぞれA-AT及びG-GC基三重鎖を生成する。塩基修飾又はヌクレオシドアナログを含有するTFOは、プリン及びピリミジンヌクレオチドの混合物を含有する二重鎖と三重鎖を形成し得る(例えば、Rusling et al.,Nucleic Acids Res.,Vol.33:3025-3032,2005を参照されたい)。
【0020】
本発明の方法で用いられるTFOは、一般的には、長さが少なくとも約15ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、TFOは、長さが約15~約30ヌクレオチドである。特定の実施形態では、TFOは、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート中のポリヌクレオチドと同じ長さを有し得る。例えば、TFOは、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート中の一本鎖ポリヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)と同じ長さを有し得る。別の実施形態では、TFOは、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート中の二本鎖ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)中の鎖の1つと同じ長さを有し得る。これら及び他の実施形態では、TFOは、長さが約17、18、19、20、21、22、23、24、25又は26ヌクレオチドであり得る。一実施形態では、TFOは、長さが約19ヌクレオチドである。別の実施形態では、TFOは、長さが約21ヌクレオチドである。
【0021】
特定の実施形態では、TFOは、コンジュゲート分子中のポリヌクレオチドの配列と相補的な配列を有する。特定の条件下において、第1の配列を含むポリヌクレオチドが、第2の配列を含むポリヌクレオチドにハイブリダイズして二重鎖又は三重鎖領域を形成することができる場合、第1の配列は、第2の配列に「相補的」である。「ハイブリダイズする」又は「ハイブリダイゼーション」は、典型的には、2つのポリヌクレオチドにおける相補的塩基間の水素結合(例えば、ワトソン-クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合)を介した相補的ポリヌクレオチドの対合を指す。第1の配列を含むポリヌクレオチドが、第2の配列を含むポリヌクレオチドとミスマッチすることなく、1つ又は両方のヌクレオチド配列の全長にわたって塩基対形成する場合、第1の配列は、第2の配列と完全に相補的(100%相補的)であるとみなされる。
【0022】
いくつかの実施形態では、TFOは、コンジュゲート分子中のポリヌクレオチドの配列と完全に相補的な配列を有し、例えば、TFOの配列は、TFOの全長にわたってポリヌクレオチドの配列と相補的である。コンジュゲート分子中のポリヌクレオチドが二本鎖ポリヌクレオチドである実施形態では、TFOは、二本鎖ポリヌクレオチドの鎖の1つと相補的(例えば、完全に相補的)であり得る。例えば、特定のこうした実施形態では、TFOは、タンパク質に共有結合されている二本鎖ポリヌクレオチドの鎖と相補的(例えば、完全に相補的)である。コンジュゲート分子中のポリヌクレオチドが、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNAである実施形態では、TFOは、センス鎖の配列と相補的(例えば、完全に相補的)な配列を有する。コンジュゲート分子中のポリヌクレオチドがsiRNAである他の実施形態では、TFOは、アンチセンス鎖の配列と相補的(例えば、完全に相補的)な配列を有する。標的配列(例えば、標的mRNA)と相補的な配列を有する領域を含むsiRNAの鎖は、「アンチセンス鎖」と称される。「センス鎖」は、アンチセンス鎖の領域と相補的な領域を含む鎖を指す。いくつかの実施形態では、センス鎖は、標的配列と同一の配列を有する領域を含み得る。
【0023】
特定の実施形態では、本発明の方法に用いられるTFOは、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオシド、核酸塩基、ペントース環又はホスフェート基に対する1つ以上の化学修飾を有するヌクレオチドを指す。本明細書で使用する場合、修飾ヌクレオチドは、アデノシンモノホスフェート、グアノシンモノホスフェート、ウリジンモノホスフェート及びシチジンモノホスフェートを含有するリボヌクレオチド又はデオキシアデノシンモノホスフェート、デオキシグアノシンモノホスフェート、デオキシチミジンモノホスフェート及びデオキシシチジンモノホスフェートを含有するデオキシリボヌクレオチドを包含しない。しかしながら、TFOは、修飾ヌクレオチド、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドの組み合わせを含み得る。三重鎖形成を促進すると報告されている修飾ヌクレオチドとしては、2’-アミノエトキシ-5-(3-アミノプロプ-1-イニル)ウリジン(BAU)、3-メチル-2アミノピリジン(MeP)、6-(3-アミノプロピル)-7-メチル-3H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2(7H)-オン(APP)、N-(4-(3-アセトアミドフェニル)チアゾール-2-イル-アセトアミド)、ロック核酸(LNA;2’-O,4’-C-メチレン-β-D-リボフラノシルヌクレオチド)、エチレン架橋核酸(ENA;2’-O,4’-C-エチレン-β-D-リボフラノシルヌクレオチド)、2’-O,4’-C-アミノメチレン架橋核酸(2’,4’-BNANC)、5-メチルシトシン、2-チオウリジン、5-プロピニル-デオキシウリジン、8-アミノプリン、2’-デオキシ-6-チオグアノシン、ユニバーサル塩基、2’-アミノエチルリボヌクレオチド、2’-O-アルキ(alky)ヌクレオチド(例えば、2’-O-メチルヌクレオチド)及び修飾インターヌクレオシド結合を有するヌクレオチド(例えば、ホスホルアミデートインターヌクレオシド結合、ホスホロチオエートインターヌクレオシド結合及びペプチド核酸(PNA))が挙げられる。例えば、Rusling et al.,Nucleic Acids Res.,Vol.33:3025-3032,2005;Duca et al.,Nucleic Acids Res.,Vol.36:5123-5138,2008;及びZhou et al.,Nucleic Acids Res.,Vol.41:6664-6673,2013を参照されたい。本発明の方法に用いられるTFOは、これらの修飾ヌクレオチドの1つ以上又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、TFOは、二環式糖修飾を有する1つ以上のヌクレオチドを含む。「二環式糖修飾」は、ペントース環の修飾を指し、この場合、架橋が環の2つの原子を接続して、二環性糖構造をもたらす第2の環を形成する。いくつかの実施形態では、二環式糖修飾は、ペントース環の4’及び2’炭素間の架橋を含む。二環式糖修飾を有する糖部分を含むヌクレオチドは、本明細書では二環式核酸又はBNAと称される。例示的な二環式糖修飾としては、α-L-メチレンオキシ(4’-CH2-O-2’)二環式核酸(BNA);β-D-メチレンオキシ(4’-CH2-O-2’)BNA(ロック核酸又はLNAとも称される);エチレンオキシ(4’-(CH2)2-O-2’)BNA(エチレン架橋核酸又はENAとも称される);アミノオキシ(4’-CH2-O-N(R)-2’)BNA;オキシアミノ(4’-CH2-N(R)-O-2’)BNA;メチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2’)BNA(拘束エチル(constrained ethyl)又はcEtとも称される);メチレン-チオ(4’-CH2-S-2’)BNA;メチレン-アミノ(4’-CH2-N(R)-2’)BNA;メチル炭素環式(4’-CH2-CH(CH3)-2’)BNA;プロピレン炭素環式(4’-(CH2)3-2’)BNA;及びメトキシ(エチレンオキシ)(4’-CH(CH2OMe)-O-2’)BNA(拘束MOE(constrained MOE)又はcMOEとも称される)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、TFOは、1つ以上のLNAモノマーを含む。別の実施形態では、TFOは、1つ以上のENAモノマーを含む。
【0025】
特定の実施形態では、本発明の方法で用いられるTFOは、LNAモノマーとデオキシリボヌクレオチドとの混合物を含む。一般に、TFO中のLNAモノマーの数及び配置は、TFOと相補的RNA鎖との複合体の融解温度(Tm)が約75℃~約85℃、約77℃~約82℃又は約80℃であるようなものである。Tmは、実験によって測定することができるか、又は最近隣モデル(例えば、Owczarzy et al.,Biopolymers,Vol.44(3):217-239,1997;SantaLucia,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.95(4):1460-1465,1998)を参照されたい)などの様々な熱力学モデルを用いて予測することができる。ExiqonからのRNA Tm予測アルゴリズムなど、LNAモノマー含有オリゴヌクレオチドのTmを予測するための予測ツールも公的に入手可能である(exiqon.com/ls/Pages/ExiqonTMPredictionToolで入手可能な予測ツールを参照されたい)。
【0026】
いくつかの実施形態では、TFO中のヌクレオチドの約30%~約40%がLNAモノマーである。例えば、例として、長さ21ヌクレオチドのTFOは、6~8個のLNAモノマーを有し得る。特定の実施形態では、長さ約15ヌクレオチド~約30ヌクレオチドのTFOは、4~12個のLNAモノマー、5~10個のLNAモノマー又は6~8個のLNAモノマーを有し得る。非LNAモノマーは、修飾ヌクレオチド(例えば、本明細書に記載される修飾ヌクレオチドのいずれか)、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドであり得る。特定の実施形態では、非LNAモノマーは、デオキシリボヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、LNAモノマーは、標的Tm範囲(約75℃~約85℃)を維持しながら、TFO全体にわたって可能な限り均一に配置される。関連する実施形態では、TFOは、4個以下の連続するLNAモノマーを有する。
【0027】
TFOは、当技術分野で既知の技法、例えば従来の核酸固相合成を使用して容易に作製することができる。TFOは、標準ヌクレオチド又はヌクレオシド前駆体(例えば、ホスホラミダイト)を利用する好適な核酸合成装置上で構築することができる。自動核酸合成装置は、いくつかのベンダーによって市販されており、これとしては、Applied Biosystems(Foster City、CA)のDNA/RNA合成装置、BioAutomation(Irving、TX)のMerMade合成装置及びGE Healthcare Life Sciences(Pittsburgh、PA)のOligoPilot合成装置が挙げられる。カスタムオリゴヌクレオチド合成は、Exiqon/Qiagen(Venlo、Netherlands)、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)及びDharmacon(Lafayette,CO)などのいくつかのベンダーから利用可能であるため、所望の配列及び化学修飾を備えるTFOも商業的に購入することができる。
【0028】
好ましくは、本発明の方法で用いられるTFOは、標識に共有結合される。標識は、TFOに共有結合されることが可能であり、且つそれに対する特異的結合パートナーが入手可能であるか又は生成可能である任意の分子的実体であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、標識は、タンパク質、ペプチド、グリコペプチド、炭水化物又はハプテンである。いくつかの実施形態では、標識は、標識に対して標識特異性抗体が産生され得るように、動物種において十分に免疫原性である。特定の実施形態では、標識は、ハプテンである。ハプテンは、ビオチン、ジゴキシゲニン又は2,4-ジニトロフェノールであり得るが、これらに限定されない。一実施形態では、標識は、ビオチンである。別の実施形態では、標識は、ジゴキシゲニンである。
【0029】
標識は、TFOの5’若しくは3’末端に共有結合され得るか、又はTFOに組み込まれるヌクレオチドに結合され得る(例えば、ヌクレオチドの糖又は骨格構成要素の修飾を介して)。一実施形態では、標識は、TFOの3’末端に共有結合される。別の実施形態では、標識は、TFOの5’末端に共有結合される。標識は、スクシンイミドエステルカップリング、チオールカップリング、クリック化学及びZearfoss and Ryder,Methods Mol.Biol.,Vol.941:181-193,2012に記載される方法など、当技術分野で既知の方法を用いてTFOに結合され得る。所望の標識に共有結合されたTFOは、上記のベンダーなど、カスタムオリゴヌクレオチド合成サービスを提供する商業的ベンダーによって調製することもできる。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、TFOがコンジュゲート分子中のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする条件下において、標的タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を含む試料を標識TFOと接触させることにより、ハイブリダイゼーション混合物を形成することを含む。ハイブリダイゼーション条件は、標的ポリヌクレオチドのタイプ(例えば、一本鎖又は二本鎖)並びにTFOの配列及び化学修飾の程度に基づいて調節され得る。しかしながら、一般的に、試料中に存在し得るコンジュゲート分子のポリヌクレオチド成分へのTFOのハイブリダイゼーションは、約25℃~約60℃、約45℃~約55℃、約50℃~約55℃又は約52℃の温度で約30分~約90分又は約60分間実施される。特定の実施形態では、コンジュゲート分子のポリヌクレオチド成分へのTFOのハイブリダイゼーションは、65℃を超える温度では実施されない。好適なハイブリダイゼーション緩衝液としては、pHを7~8の範囲に維持する緩衝液、塩及び界面活性剤が挙げられ得る。例示的なハイブリダイゼーション緩衝液は、30mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0、500mMのNaCl、5mMのEDTA及び0.2%(v/v)のTween(登録商標)20を含む。追加の好適なハイブリダイゼーション緩衝液は、当業者に既知である。
【0031】
ポリヌクレオチド成分にハイブリダイズされた標識TFOを含むコンジュゲート分子は、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する捕捉試薬を用いて試料から単離することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、試料を、標識に共有結合されているTFOと、TFOがコンジュゲート分子中のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする条件下において接触させ、それによりハイブリダイゼーション混合物を形成することと、ハイブリダイゼーション混合物を、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する捕捉試薬を含む表面と接触させることとを含む。こうした実施形態では、捕捉試薬は、標識に特異的に結合するか又はそれを認識することができる任意の分子であり得る。分子は、標的分子に対して、他の無関係な分子に対する親和性と比較して、同様の結合アッセイ条件下でより高い結合親和性を有し、その結果、その標的分子を区別することができる場合、その標的分子に「特異的に結合」している。いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、≦1×10-6Mの平衡解離定数(KD)で標識に結合し得る。他の実施形態では、捕捉試薬は、≦1×10-8Mの平衡解離定数(KD)で標識に結合し得る。
【0032】
標識に特異的に結合する捕捉試薬としては、ポリペプチド、アプタマー、グリコペプチド、レクチン及び抗体又はその抗原結合フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標識に特異的に結合する捕捉試薬は、抗体又はその抗原結合フラグメントである。抗体の抗原結合フラグメントは、完全長の重鎖及び/又は軽鎖に存在するアミノ酸の少なくともいくつかを欠くが、それでもなお抗原に特異的に結合することができる抗体の一部である。抗原結合フラグメントとしては、単鎖可変フラグメント(scFv)、ナノボディ(例えば、ラクダ重鎖抗体のVHドメイン)、VHH断片、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片及び相補性決定領域(CDR)断片が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、捕捉試薬は、標識に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0033】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、TFOに共有結合する標識は、ビオチンであり、及び捕捉試薬は、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン又は抗ビオチン抗体若しくはその抗原結合フラグメントである。一実施形態では、標識は、ビオチンであり、及び捕捉試薬は、ストレプトアビジンである。本発明の方法の他の実施形態では、TFOに共有結合する標識は、ジゴキシゲニンであり、及び捕捉試薬は、抗ジゴキシゲニン抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0034】
代わりに、ポリヌクレオチド成分にハイブリダイズされた標識TFOを含むコンジュゲート分子は、コンジュゲート分子のタンパク質成分に特異的に結合する捕捉試薬を用いて試料から単離することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、試料を、標識に共有結合されているTFOと、TFOがコンジュゲート分子中のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする条件下において接触させ、それによりハイブリダイゼーション混合物を形成することと、ハイブリダイゼーション混合物を、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する捕捉試薬を含む表面と接触させることとを含む。こうした実施形態では、捕捉試薬は、タンパク質又はタンパク質に組み込まれたマーカー実体に特異的に結合することができる任意の分子であり得る。いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、≦1×10-6Mの平衡解離定数(KD)でタンパク質又はマーカー実体に結合し得る。他の実施形態では、捕捉試薬は、≦1×10-8Mの平衡解離定数(KD)でタンパク質又はマーカー実体に結合し得る。
【0035】
タンパク質に特異的に結合する捕捉試薬としては、ポリペプチド、アプタマー、グリコペプチド、リガンド、受容体、多糖、抗原及び抗体又はその抗原結合フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する捕捉試薬は、抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、リガンド(例えば、細胞表面受容体のリガンド)であり、及び捕捉試薬は、リガンド結合ドメインを含有するリガンドの受容体又は受容体のフラグメント(例えば、受容体のリガンド結合フラグメント)である。他の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体又はその抗原結合フラグメントであり、及び捕捉試薬は、抗体又は抗原結合フラグメントの標的抗原(又はエピトープを含有する抗原のフラグメント)である。更に他の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体であり、及び捕捉試薬は、抗Fc領域抗体、タンパク質A又はタンパク質Gなど、抗体のFc領域に特異的に結合するタンパク質である。更なる他の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体又はその抗原結合フラグメントであり、及び捕捉試薬は、抗イディオタイプ抗体である。抗イディオタイプ抗体は、別の抗体のイディオタイプと結合する抗体である。抗体のイディオタイプは、抗体の可変領域内に存在するイディオトープの特定の組み合わせである。
【0036】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、捕捉試薬は、コンジュゲート分子中のタンパク質に組み込まれたマーカー実体に特異的に結合する。マーカー実体は、コンジュゲート分子中のタンパク質の例えばN末端又はC末端に融合可能なペプチド配列である。マーカー実体の例としては、ポリヒスチジン(例えば、6~8ヒスチジン残基)、カルモジュリン結合タンパク質、myc配列(EQKLISEEDL;配列番号:4)、赤血球凝集素(HA)配列(YPYDVPDYA;配列番号:5)及びFLAG配列(DYKDDDDK;配列番号:6)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、捕捉試薬は、コンジュゲート分子中のタンパク質と融合したマーカー実体に結合する抗体又は抗原結合フラグメントである(例えば、捕捉試薬は、抗myc、抗HA又は抗FLAG抗体である)。他の実施形態では、捕捉試薬は、マーカー実体を特異的に認識するか又はそれと結合するタンパク質又は他の分子である。例えば、カルモジュリン結合タンパク質と融合したタンパク質分子は、カルモジュリンによって捕捉され得る。更に他の実施形態では、マーカー実体は、ポリヒスチジンであり、及び捕捉試薬は、ニッケル、コバルト又は亜鉛イオンである。
【0037】
本発明の方法に用いられる捕捉試薬は、好ましくは、表面に結合するか又は表面上で固定化される。表面は、ビーズ若しくは粒子(例えば、シリカ、ラテックス、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む電磁ビーズ又は粒子)、膜(例えば、PVDF、ニトロセルロース、ポリエチレン又はナイロン膜)、チューブ、樹脂、カラム、電極又はアッセイプレート中のウェル(例えば、マイクロタイタープレート中のウェル)であり得る。こうした表面は、ガラス、セルロースベース材料、ポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエステルなどの熱可塑性ポリマー、粒子状材料(例えば、ガラス又は様々な熱可塑性ポリマー)からなる焼結構造体又はニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなどからなるキャスト膜フィルムを含み得る。これらの表面材料の全ては、フィルム、シート又はプレートなどの好適な形状で用いられ得るか、又はこれらは、紙、硝子、プラスチックフィルム又は布地などの適切な不活性の支持体にコーティング又は接着若しくは積層され得る。
【0038】
捕捉試薬は、当業者に既知の様々な処置により、表面上に固定化され得るか又は表面に結合され得る。捕捉試薬を表面上にストライプ塗布、堆積又は印刷し、続いて表面を乾燥させて固定化を促進することができる。捕捉試薬の固定化は、吸着又は共有結合を介して起こり得る。表面の性質に応じて、表面と捕捉試薬との間で共有結合の形成を促進するための誘導体形成法を使用し得る。誘導体形成法は、表面をグルタルアルデヒド又はカルボジイミドなどの化合物で処理すること及び捕捉試薬を塗布することを含み得る。捕捉試薬は、表面に結合された成分に対して高い親和性を有する部分など、共有又は非共有結合を可能にする捕捉試薬に結合された部分を介して間接的に表面に結合することもできる。例えば、捕捉試薬は、ビオチンに結合され得、表面に結合された成分は、アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンであり得る(例えば、
図5を参照されたい)。巨大分子又は他の物質を表面に直接又は間接的に固定化する他の物理的、化学的又は生物学的方法は、当技術分野において既知であり、捕捉試薬を表面に固定化又は結合させるのに用いることができる。
【0039】
ポリヌクレオチド成分にハイブリダイズされた標識TFOを含むコンジュゲート分子が捕捉試薬を介して表面に結合されると、本発明の方法は、表面を検出試薬と接触させることと、検出試薬中の検出可能なラベルからのシグナルを検出することとを含む。検出試薬は、結合パートナーに結合された検出可能なラベルを含み、結合パートナーは、コンジュゲート分子中のタンパク質又はTFOに共有結合された標識のいずれかに特異的に結合する。コンジュゲート分子が、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する捕捉試薬を介して表面と結合する方法の実施形態では、検出試薬中の結合パートナーは、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する。例えば、
図1を参照されたい。こうした実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する結合パートナーは、タンパク質又はタンパク質に組み込まれたマーカー実体に特異的に結合することができる任意の分子であり得る。こうした結合パートナーとしては、ポリペプチド、アプタマー、グリコペプチド、金属イオン、リガンド、受容体、多糖、抗原及び抗体又はその抗原結合フラグメントが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する検出試薬中の結合パートナーは、抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、リガンド(例えば、細胞表面受容体のリガンド)であり、及び検出試薬中の結合パートナーは、リガンド結合ドメインを含有するリガンドの受容体又は受容体のフラグメント(例えば、受容体のリガンド結合フラグメント)である。他の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体又はその抗原結合フラグメントであり、及び検出試薬中の結合パートナーは、抗体又は抗原結合フラグメントの標的抗原(又はエピトープを含有する抗原のフラグメント)である。更に他の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体であり、及び検出試薬中の結合パートナーは、抗Fc領域抗体、タンパク質A又はタンパク質Gなど、抗体のFc領域に特異的に結合するタンパク質である。更なる他の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体又はその抗原結合フラグメントであり、及び検出試薬中の結合パートナーは、抗イディオタイプ抗体である。本発明の方法のいくつかの実施形態では、検出試薬中の結合パートナーは、上記のマーカー実体のいずれかなど、コンジュゲート分子中のタンパク質に組み込まれるマーカー実体に特異的に結合する。特定の実施形態では、検出試薬中の結合パートナーは、コンジュゲート分子中のタンパク質と融合したマーカー実体に結合する抗体又は抗原結合フラグメントである(例えば、結合パートナーは、抗myc、抗HA又は抗FLAG抗体である)。
【0040】
コンジュゲート分子が、コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する捕捉試薬を介して表面と結合する方法の実施形態では、検出試薬中の結合パートナーは、TFOに共有結合された標識に特異的に結合する。例えば、
図5を参照されたい。こうした実施形態では、結合パートナーは、標識に特異的に結合するか又はそれを認識することができる任意の分子であり得る。こうした結合パートナーとしては、ポリペプチド、アプタマー、グリコペプチド、レクチン及び抗体又はその抗原結合フラグメントが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、標識に特異的に結合する検出試薬中の結合パートナーは、抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態では、TFOに共有結合する標識は、ビオチンであり、及び検出試薬中の結合パートナーは、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン又は抗ビオチン抗体若しくはその抗原結合フラグメントである。一実施形態では、標識は、ビオチンであり、及び検出試薬中の結合パートナーは、ストレプトアビジンである。他の実施形態では、TFOに共有結合する標識は、TFOであり、及び検出試薬中の結合パートナーは、抗ジゴキシゲニン抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0041】
検出試薬中の検出可能なラベルは、特定の条件のセット下で検出可能なシグナルを生成することが可能な任意の分子的実体であり得る。単独で又は他の組成物若しくは化合物と協同して検出可能なシグナルを提供することが可能な従来のラベルを用い得る。検出可能なラベルは、放射線ラベル、酵素、蛍光体、発色団、化学発光ラベル、電気化学発光(ECL)発光団、金属ナノ粒子又は金属ナノシェルであり得る。
【0042】
一実施形態では、結合パートナーに連結した検出可能なラベルは、金属ナノ粒子又は金属ナノシェルである。検出可能なラベルとして用いるのに好適な金属ナノ粒子又はナノシェルとしては、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、白金ナノ粒子、カドミウムナノ粒子、複合ナノ粒子(例えば、銀及び金又は銅及び銀)、金中空球、金コーティングシリカナノシェル及びシリカコーティング金シェルが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、結合パートナーに連結した検出可能なラベルは、基質を、検出可能なシグナル、例えば着色、蛍光又は化学発光生成物に変換することができる酵素である。結合パートナーに結合して検出試薬を生成するのに好適な酵素の非限定的な例としては、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-ラクタマーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、ミエロペルオキシダーゼ及びアミラーゼが挙げられる。更に別の実施形態では、結合パートナーに結合された検出可能なラベルは、蛍光体である。検出可能なラベルとしての使用に好適な例示的蛍光性分子としては、フルオレセイン、Texas Red、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、Alexa色素分子、ローダミン色素分子などが挙げられる。
【0043】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、結合パートナーに結合された検出可能なラベルは、ECL発光団である。結合パートナーに結合されて検出試薬を生成することができるECL発光団としては、ルテニウム錯体(例えば、Richter,Chem.104:3003-3036,2004、Liu et al.,Chem.Soc.Rev.,Vol.44,3117-3142,2015及びZhou et al.,Dalton Trans.,Vol.46,355-363,2017に記載されるものなど、tri-2,2’-ビピリジルルテニウム(II)[Ru(bpy)3
2+])、イリジウム錯体、アルミニウム錯体、クロム錯体、銅錯体、ユーロピウム錯体、オスミウム錯体、白金錯体及びレニウム錯体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、検出試薬中で結合パートナーに結合されるECL発光団は、ルテニウム錯体である。
【0044】
検出可能なラベルを結合パートナーに結合する方法は、当技術分野で既知であり、これとしては、受動的吸着(例えば、金属ナノ粒子又はナノシェルが検出可能なラベルである場合)並びにスクシンイミドエステルが一級アミンに結合すること及びマレイミドがスルフヒドリル基に結合することなどのコンジュゲート化学が挙げられ得る。巨大分子を、検出可能なラベルに結合する他の方法は、当業者に既知であり、当業者は、使用される望ましい検出可能なラベルのタイプ及びラベリングされる結合パートナーのタイプ(例えば、巨大分子)に基づいて適切な方法を選択することができる。
【0045】
捕捉されたコンジュゲート分子を含む表面が検出試薬と接触した後、本発明の方法は、検出試薬中の検出可能なラベルからのシグナルを検出又は測定することを含む。検出可能なラベルからのシグナルは、標的タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子が無傷であること、すなわちポリヌクレオチド成分がタンパク質成分に共有結合されたままであることを示す。検出されるシグナルは、使用される検出ラベルのタイプに依存する。例えば、金属ナノ粒子又はナノシェルラベルからのシグナルは、光散乱又は光吸収の量を測定することによって検出され得る。蛍光体又はECL発光団からのシグナルは、特定の放射波長における光強度として検出又は測定され得る。検出可能なラベルが酵素である場合、シグナルは、色素生成、蛍光発生又は化学発光基質など、検出可能なシグナルを生成する酵素の基質を添加することによって生成される。分光光度計、蛍光/発光プレートリーダー並びにスペクトル変化及び電気化学的変化を検出可能な他の計器などの計器は、市販されており、且つ当業者に既知である。特定の実施形態では、検出可能なラベルからのシグナルを検出することで、定性的評価が得られる(すなわち無傷のコンジュゲート分子が試料中に存在する)。他の実施形態では、検出可能なラベルからのシグナルを検出することで、試料中の無傷のコンジュゲート分子の量の定量的測定値が得られる。例えば、特定の実施形態では、例えば光散乱、光吸収又は蛍光/発光放射の測定により、試料中の無傷のコンジュゲート分子の量を定量的に判定することが可能となる。こうした定量化は、無傷のコンジュゲート分子の既知の量を含有する試料中の検出可能なラベルからのシグナルを測定することと、データから較正曲線を構築することと、較正曲線から試験試料中の無傷のコンジュゲート分子の量を判定することとによって達成され得る。
【0046】
任意のタイプのタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子が本発明の方法を用いて試料中で検出又は測定可能である。コンジュゲート分子のポリヌクレオチド成分は、一本鎖ポリヌクレオチド、二本鎖ポリヌクレオチド又は一本鎖及び二本鎖領域の両方を含むポリヌクレオチドであり得る(例えば、単一のポリヌクレオチドがそれ自体の上に折り重なって二本鎖領域にハイブリダイズして生成するように、少なくとも1つの自己相補的領域を含有するポリヌクレオチド)。タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート中のポリヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又はこれらの組み合わせからなり得る。コンジュゲート分子のポリヌクレオチド成分は、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、前駆体miRNA(プレmiRNA)、miRNA模倣薬、抗miRNAオリゴヌクレオチド(例えば、antagomir及びantimiR)又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、疾患又は障害に関連する遺伝子又はRNA分子を標的とするように設計された治療的ポリヌクレオチドである。これら及び他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの安定性又は効力を強化するための1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。こうした修飾ヌクレオチドとしては、2’糖修飾を含むヌクレオチド(2’-O-メチル、2’-メトキシエチル、2’-フルオロなど)、脱塩基ヌクレオチド、反転ヌクレオチド(3’-3’結合ヌクレオチド)、ホスホロチオエート結合ヌクレオチド、二環式糖修飾を含むヌクレオチド(例えば、LNA、ENA)及び塩基アナログを含むヌクレオチド(例えば、ユニバーサル塩基、5-メチルシトシン、偽ウラシルなど)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0047】
タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲートのポリヌクレオチド成分の長さは、ポリヌクレオチドのタイプ(例えば、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドなど)に応じて変化するが、一般的には長さ約15ヌクレオチド~長さ約150ヌクレオチドとなる。例えば、二本鎖siRNA分子、miRNA分子又はmiRNA模倣分子の各鎖は、典型的には長さ約15ヌクレオチド~長さ約30ヌクレオチドである一方、それ自体の上に折り重なってステムループ又はヘアピン構造を形成する一本鎖shRNA分子及びプレmiRNA分子は、長さ約35ヌクレオチド~約120ヌクレオチドであり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチド及び抗miRNAオリゴヌクレオチドは、典型的には長さ約15ヌクレオチド~約25ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、本発明の方法で検出又は測定されるコンジュゲート分子中のポリヌクレオチド成分は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。他の実施形態では、本発明の方法で検出又は測定されるコンジュゲート分子中のポリヌクレオチド成分は、siRNA分子である。こうした実施形態では、siRNA分子のセンス鎖及びアンチセンス鎖は、独立して、長さ約15~約30ヌクレオチド、長さ約18~約26ヌクレオチド又は長さ約19~約21ヌクレオチドであり得る。
【0048】
コンジュゲート分子のタンパク質成分は、ポリヌクレオチドが共有結合され得る任意のタンパク質又はそのフラグメントであり得る。いくつかの実施形態では、タンパク質成分は、連結したポリヌクレオチドに対して、より長い循環血清半減期又は特定の組織若しくは細胞型に対する標的化などの特性又は特徴を付与する。特定の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、抗体又はその抗原結合フラグメントである。これら及び他の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、例えば、細胞特異性又は組織特異性タンパク質に特異的に結合することにより、コンジュゲート分子を特定の細胞型又は組織に対して標的化する。こうした実施形態では、ポリヌクレオチド成分は、治療的ポリヌクレオチドであり得る。例えば、一実施形態では、タンパク質は、標的細胞又は組織によって発現した受容体に特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである。一例として、コンジュゲート分子を肝臓に標的化するために、タンパク質は、抗体又はアシアロ糖タンパク質受容体又はLDL受容体など、肝細胞によって発現する受容体に特異的に結合する抗原結合フラグメントであり得る。他の標的細胞型(例えば、B細胞、腫瘍細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、膵臓細胞、神経細胞など)上の他の細胞表面受容体と結合する抗体は、コンジュゲート分子中のタンパク質成分であり得る。他の実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、リガンドである。リガンドは、コンジュゲート分子が送達される標的細胞又は組織の表面上に発現する受容体のリガンドであり得る。こうした実施形態では、コンジュゲート分子中のタンパク質は、受容体結合機能を保持するリガンド自体又はリガンドのペプチドフラグメント若しくはアナログであり得る。
【0049】
特定の実施形態では、本発明の方法を用いて試料中で検出又は測定されるタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子は、抗体-siRNAコンジュゲート分子である。他の実施形態では、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子は、ペプチドリガンド-siRNAコンジュゲート分子である。更に他の実施形態では、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子は、抗体-アンチセンスオリゴヌクレオチドコンジュゲート分子である。なお他の実施形態では、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子は、ペプチドリガンド-アンチセンスオリゴヌクレオチドコンジュゲート分子である。これらの実施形態では、コンジュゲート分子のsiRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチド成分は、治療性であり得(すなわち疾患又は障害に関連する遺伝子又はRNA分子に標的化される)、コンジュゲート分子の抗体又はペプチドリガンド成分は、細胞特異性又は組織特異性受容体に特異的に結合し得る。
【0050】
本発明の方法は、様々な試料のタイプにおいてタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出又は測定するために用いることができる。いくつかの実施形態では、試料は、血液、血清、血漿、脳脊髄液又は尿などの体液である。他の実施形態では、試料は、組織(例えば、組織ホモジネート)又は細胞溶解物である。これら及び他の実施形態では、試料は、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を投与された動物又はヒト対象から得られる。いくつかの実施形態では、試料は、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子に曝露された細胞培養液から得られる。こうした実施形態では、試料は、細胞培養液の上清又は培養液中の細胞の溶解物であり得る。一実施形態では、試料は、タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子の合成プロセス中の工程からの反応混合物又は生成物である。別の実施形態では、試料は、製剤原料(例えば、有効薬剤成分又はAPI)のロットである。更に別の実施形態では、試料は、製剤のロットである(例えば、ヒトのための1つ以上の賦形剤を配合したAPI)。
【0051】
実施された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のみのために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例0052】
実施例1.捕捉剤として三重鎖形成オリゴヌクレオチドを用いる検出アッセイ
この実施例は、試料溶液中の抗体-siRNAコンジュゲートを捕捉し、コンジュゲートを固体表面に固定化するために標識三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)が使用される、本発明のアッセイ法の1フォーマットを説明する。続いて、抗体を特異的に認識するラベル化結合パートナーを用いてコンジュゲートが検出及び定量化される。このアッセイフォーマットは、
図1に概略的に示される。
【0053】
参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/039647号パンフレットの実施例10に記載される方法を用いて、肝臓遺伝子を標的化するsiRNA分子を、アシアロ糖タンパク質受容体1(ASGR1)タンパク質を目標にするモノクローナル抗体(mAb)に共有結合することにより、抗体-siRNAコンジュゲートを調製した。要約すると、EU番号付けスキームに従ってその重鎖中でE272C変異を有する抗ASGR1 mAb(抗ASGR1 cys mAb)を、pH7.5~8.5の、40mMのHEPES緩衝液中の2.5mMのシスタミン及び2.5mMのシステアミンの溶液を用いて室温で15~20時間インキュベートし、続いて精製して、ビス-システアミンキャップされた抗ASGR1 cys mAbを得た。siRNA分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖からなり、それぞれ長さが21ヌクレオチドであった。siRNA分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端に2ヌクレオチドのオーバーハングを有する19塩基対の二重鎖領域を有した。siRNA二重鎖のセンス鎖は、その3’末端にホモセリン-アミノヘキサン酸修飾を有し、これを、ブロモ酢酸スクシンイミジルを用いてブロモアセチル基で更に官能化した。トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)又はトリフェニルホスフィン-3,3’,3’’-トリスルホン酸三ナトリウム塩(TPPTS)を用いて、ビス-システアミンキャップされた抗ASGR1 cys mAb中間体を部分的に還元した。続いて、デヒドロアスコルビン酸(DHAA)で、部分的に還元されたcys mAbの酸化を実施し、酸化は、微量の還元mAb種のみが観察されるようになるまで室温で実施した。続いて、反応混合物にブロモアセチル-siRNA二重鎖を添加し、アルキル化を室温で15~48時間実施した。1及び2のRNA-抗体比(RAR)を有する抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲートを、アニオン交換クロマトグラフィを用いて分離した。
【0054】
TFOを、抗体に直接連結した鎖であったセンス鎖と完全に相補的な配列を有するように設計した。TFOのヌクレオチドの約30~40%がLNAモノマーとなり、TFOと相補的RNA鎖との複合体の融解温度(Tm)がExiqonからのRNA Tm予測アルゴリズムに基づいて約80℃となるように、ロック核酸(LNA)モノマーをTFOに組み込んだ(エクソンのウェブサイト:exiqon.com/ls/Pages/ExiqonTMPredictionToolで入手可能な予測ツールを参照されたい)。LNAモノマーを、標的Tm範囲を維持しながら、TFO全体にわたって可能な限り均一に配置した。TFOは、Exiqon(Vedbaek,Denmark)によってカスタム合成され、3’末端にビオチンでラベル付けされている。TFOの配列は、
【化1】
であり、ここで、LNAモノマーは、下線及び太字フォントで示されている。
【0055】
抗ASGR1抗体-siRNAコンジュゲート(0.04ng/mL~2500ng/mL)の11ポイントの検量線を、試料緩衝液(10mMのTris-HCl、1mMのEDTA、pH8.0)、マウス血清又は肝臓ホモジェネート中に抗ASGR1抗体-siRNAコンジュゲートの原液2500ng/mLを3倍に連続希釈することによって調製した。別個に、様々な濃度のビオチン化TFO(6.25nM~250nM)をハイブリダイゼーション緩衝液(60mMの二塩基性リン酸ナトリウム、1MのNaCl、5mMのEDTA、0.2%(v/v)のTween(登録商標)20、pH7.0)中で調製した。ハイブリダイゼーション緩衝液中のビオチン化TFOを試料のそれぞれと1:1で混合し、ハイブリダイゼーションを52℃で1時間進めた。
【0056】
ハイブリダイゼーション後、試料を、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートに移し、30分間振盪した。その後、プレートを洗浄緩衝液で洗浄した(イミダゾール緩衝生理食塩水及びTween(登録商標)20;KPL Inc.から20X Wash Solution Concentrateとして供給)。ブロッキング緩衝液(トリス緩衝食塩水中の5%無脂肪粉乳(Blocker(商標)BLOTTO(ThermoFisher Scientific))を試料に添加し、プレートを30分間振盪した。プレートを洗浄緩衝液で再び洗浄した。続いて、ヒト免疫グロブリンのFc領域を目標にするルテニウムラベル化マウスモノクローナル抗体(抗ヒトFc抗体;1μg/mL)をブロッキング緩衝液中の各試料に添加して、プレートを1時間振盪した。プレートを洗浄緩衝液で洗浄した後、Meso Scale Diagnostics(MSD)QuickPlex SQ120電気化学発光リーダー及び界面活性剤を含むMSD Read Buffer Tを用いてルテニウムラベルからのシグナルを読み取った。
【0057】
異なるビオチン化TFOの濃度範囲における試料緩衝液中の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲートの検出のアッセイ結果を
図2A及び2Bに示す。データを4パラメータ非線形回帰モデル(重み係数1/Y^2を有するマルカート法)にフィットさせて、1に近いR
2値を得た。緩衝液中のアッセイの線形範囲は、3.4ng/mL~2500ng/mLであった。抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲートの検出もマウス血清及びマウス肝臓ホモジェネート中で達成され得る。
図2Cを参照されたい。100nMのビオチン化TFO濃度を用いると、血清及び肝臓ホモジェネート中のアッセイの線形範囲は、緩衝液のそれと同じであった。しかしながら、血清及び肝臓ホモジェネート中では、緩衝液と比較してシグナル応答が低下し、曲線の勾配における差異によって測定して、血清中の応答は、緩衝液中の応答の約46%であり、肝臓ホモジェネート中の応答は、緩衝液中の応答の約25%であった。
【0058】
検出アッセイの有効性に対するコンジュゲートの抗体成分の効果を調査するため、上記の同じsiRNA分子(T2 siRNA)を異なるモノクローナル抗体(655mAb)にコンジュゲートした。655mAbを変異させて、その標的結合特異性を除去した。試料緩衝液中で様々な濃度(0.04ng/mL~2500ng/mL)の以下のコンジュゲート分子を調製した:(1)1つの結合siRNA分子を有する655mAb-siRNAコンジュゲート分子(T2-655RAR1)、(2)2つの結合siRNA分子を有する655mAb-siRNAコンジュゲート分子(T2-655RAR2)、(3)1つの結合siRNA分子を有する抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子(T2-25B3RAR1)、及び(4)2つの結合siRNA分子を有する抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子(T2-25B3RAR2)。52℃のハイブリダイゼーション緩衝液中の100nMのビオチン化TFO(配列番号1)で試料を1時間ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後、試料を、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートに移し、上記のとおり洗浄及びブロックした。捕捉されたコンジュゲート分子の検出を、ルテニウムラベル化抗ヒトFc mAbを用いて達成し、電気化学発光シグナルをMSD QuickPlex SQ120電気化学発光リーダーによって読み取った。
【0059】
アッセイの結果は、コンジュゲートの抗体成分における差異にもかかわらず、アッセイの性能及び感度が様々なコンジュゲート分子に対して同様であることを示す。
図3Aを参照されたい。このアッセイランにおける<420pg/mLの定量化下限値(LLOQ)は、4つ全てのコンジュゲート分子で同じであった。アッセイが、1つ又は2つの結合siRNA分子を有するコンジュゲートを区別できるかどうかを判定するために、データを線形回帰モデルにフィットさせ、RAR1コンジュゲートとRAR2コンジュゲートとの間で勾配の差異を比較した。
図3Bに示すように、RAR1のフィットされた線形回帰線の勾配は、RAR2コンジュゲートのそれの約75%であった(T2-25B3 RAR1勾配は、T2-25B3 RAR2勾配の72%、T2-655 RAR1勾配は、T2-655 RAR2勾配の78%)。したがって、アッセイは、これらの条件下において、1つ又は2つの結合siRNA分子を有するコンジュゲート間の差異を検出することができる。
【0060】
次に、検出アッセイの有効性に対するコンジュゲートのsiRNA成分の効果を判定するために、それぞれ固有のsiRNA分子を有する2つの異なる抗体-siRNAコンジュゲートを評価した。HPRT及びC911 siRNA分子は、上記のT2siRNA分子と同じフォーマット(すなわち21merの鎖、19bpの二重鎖領域、3’末端に2つのヌクレオチドオーバーハング)を有していたが、異なる配列を有していた。上記の方法を用いて、HPRT及びC911 siRNA分子を抗ASGR1 mAbにコンジュゲートした。HPRT siRNA抗体コンジュゲートのアッセイで用いられたTFOの配列は、
【化2】
である一方、C911 siRNA抗体コンジュゲートのアッセイで用いられたTFOの配列は、
【化3】
であった。LNAモノマーは、下線及び太字フォントによって示される。両方のTFOをその3’末端でビオチン化した。
【0061】
試料緩衝液中で様々な濃度(0.04ng/mL~2500ng/mL)の以下のコンジュゲート分子を調製した:(1)1つの結合HPRT siRNA分子を有する抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子(HPRT-25B3RAR1)、(2)2つの結合HPRT siRNA分子を有する抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子(HPRT-25B3RAR2)、(3)1つの結合C911 siRNA分子を有する抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート分子(C911-25B3RAR1)、及び(4)2つの結合C911 siRNA分子を有する抗ASGR1
mAb-siRNAコンジュゲート分子(C911-25B3RAR2)。52℃のハイブリダイゼーション緩衝液中において、試料を100nMのビオチン化TFO(HPRT siRNA-mAbコンジュゲートに対して配列番号2又はC911 siRNA-mAbコンジュゲートに対して配列番号3)で1時間ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後、試料を、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートに移し、上記のとおり洗浄及びブロックした。捕捉されたコンジュゲート分子の検出を、ルテニウムラベル化抗ヒトFc mAbを用いて達成し、電気化学発光シグナルをMSD QuickPlex SQ120電気化学発光リーダーによって読み取った。
【0062】
アッセイの結果を
図4Aに示す。C911 siRNA-mAbコンジュゲート分子のLLOQがHPRT siRNA-mAbコンジュゲートのLLOQよりも約100倍低かったため、アッセイの感度は、特定のTFO-siRNA対の影響を受けるように思われる(C911-25B3 RAR2コンジュゲートで11pg/mLに対してHPRT-25B3 RAR2コンジュゲートで926pg/mL)。しかしながら、各TFO-siRNA対のハイブリダイゼーション条件を最適化することにより、アッセイの感度は、おそらく改善される。データの線形回帰及びフィットされた回帰線の勾配の比較は、ここでも、アッセイが、1つ又は2つの結合siRNA分子を含むコンジュゲートを区別できることを実証した(
図4B)。HPRT siRNA-mAbコンジュゲートの場合、RAR1コンジュゲートは、RAR2コンジュゲートの勾配の75%の勾配を有した。C911 siRNA-mAbコンジュゲートの場合、RAR1コンジュゲートは、RAR2コンジュゲートの勾配の62%の勾配を有した。
【0063】
実施例に記載される一連の実験の結果は、標識TFOが捕捉剤として用いられる本発明のアッセイ法の一実施形態が、血清及び組織ホモジネートなどの複合マトリックスを含む様々なマトリックス中で無傷の抗体-siRNAコンジュゲートを選択的に検出及び定量化できることを実証する。アッセイは、1つ又は2つの結合siRNA分子を有する抗体-siRNAコンジュゲートを区別するためにも用いられ得る。
【0064】
実施例2検出剤として三重鎖形成オリゴヌクレオチドを用いる検出アッセイ
この実施例は、標識TFOが試料溶液中で抗体-siRNAコンジュゲートの検出を可能にする、本発明のアッセイ法の第2のフォーマットを説明する。このフォーマットでは、標識TFOは、抗体-siRNAコンジュゲートのsiRNA成分にハイブリダイズされ、続いて、コンジュゲートは、抗体-siRNAコンジュゲートの抗体成分を特異的に認識する捕捉試薬(例えば、抗体又は抗Fc抗体の標的抗原)によって固体表面に捕捉及び固定化される。捕捉されたコンジュゲートは、TFOに共有結合された標識を特異的に認識するラベル化結合パートナーを用いて検出及び定量化される。このアッセイフォーマットは、
図5に概略的に示される。
【0065】
実施例1に記載される655mAb-T2 siRNAコンジュゲート及び抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲート分子をこのアッセイフォーマットで評価した。TFOの配列は、
【化4】
(配列番号1;LNAモノマーは、下線及び太字フォントによって示される)であり、3’末端においてジゴキシゲニンでラベル化されていた。抗体-siRNAコンジュゲート(0.38ng/mL~25000ng/mL)のそれぞれの11ポイントの検量線を、試料緩衝液(10mMのTris-HCl、1mMのEDTA、pH8.0)中に抗体-siRNAコンジュゲートの原液25000ng/mLを3倍に連続希釈することによって調製した。ジゴキシゲニン-TFOをハイブリダイゼーション緩衝液(60mMの二塩基性リン酸ナトリウム、1MのNaCl、5mMのEDTA、0.2%(v/v)のTween(登録商標)20、pH7.0)中で調製し、試料のそれぞれと1:1で混合した。ハイブリダイゼーションを52℃で1時間進めた。別個に、ブロッキング緩衝液(トリス緩衝食塩水中の5%無脂肪粉乳(Blocker(商標)BLOTTO(ThermoFisher Scientific))中のビオチンラベル化マウス抗ヒトFc抗体を、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートのウェルに堆積させ、30分間振盪した。続いて、使用前にプレートを洗浄緩衝液で洗浄した(イミダゾール緩衝生理食塩水及びTween(登録商標)20;KPL Inc.から20X Wash Solution Concentrateとして供給)。
【0066】
ハイブリダイゼーション後、試料を、予め調製した結合抗ヒトFc抗体を含むマイクロタイタープレートに移して1時間振盪した。プレートを洗浄緩衝液で洗浄した後、ルテニウムラベル化ヒツジ抗ジゴキシゲニン抗体(2μg/mL)をブロッキング緩衝液中の各試料に添加し、プレートを30分間振盪した。プレートを洗浄緩衝液で再び洗浄し、MSD QuickPlex SQ120電気化学発光リーダー及び界面活性剤を含むMSD
Read Buffer Tを用いてルテニウムラベルからのシグナルを読み取った。
【0067】
アッセイの結果を
図6に示す。4つ全てのコンジュゲート分子のLLOQは、<420pg/mLであり、これは、実施例1に記載されるアッセイフォーマットにおける分子のLLOQと同様である。いずれのタイプのコンジュゲートのLLOQも同じであったため、コンジュゲートの抗体成分も、このフォーマットにおけるアッセイの感度に影響を与えるように思われない。このアッセイフォーマット(検出のために使用される標識TFO)の性能を実施例1に記載されるフォーマット(捕捉のために使用される標識TFO)と比較するために、RAR1又はRAR2における様々な濃度の抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲート分子を両方のアッセイフォーマットで試験した。
図7に示すように、第1のフォーマット(捕捉のために使用される標識TFO)のアッセイのダイナミックレンジは、第2のフォーマット(検出のために使用される標識TFO)のそれよりも大きい。いずれのアッセイフォーマットのLLOQも同様であった。
【0068】
別の一連の実験では、コンジュゲートの抗体成分の抗原を捕捉試薬として用いる能力を調査した。最初に、siRNA分子のコンジュゲートが抗体-抗原相互作用に影響を与えなかったことを検証するために、抗体-siRNAコンジュゲートの抗原結合能力を試験した。ヒトASGR1の抗ASGR1 mAb-T2 siRNA RAR2コンジュゲート分子の結合親和性及びキネティクスを、細胞外ドメインを含有するヒトASGR1タンパク質のビオチン化フラグメントを搭載したストレプトアビジンバイオセンサを用いるバイオレイヤー干渉法によってOctet(登録商標)HTX器具(Pall ForteBio)上で判定した。コンジュゲート分子は、非コンジュゲート抗ASGR1抗体(データは示さない)と比較して、ヒトASGR1と同様の結合親和性及びキネティクスを示しており、これは、siRNAのコンジュゲートが抗体のその標的に対する結合に影響を及ぼさなかったことを示す。ハイブリダイズされたビオチン化TFOを含有する抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲートを搭載するストレプトアビジンセンサがヒトASGR1の炭水化物結合ドメインに結合することができたため(データは示さない)、TFOの存在も抗原結合に影響を及ぼさなかった。
【0069】
次に、ビオチン化抗ヒトFc抗体の代わりにビオチン化ヒトASGR1を捕捉試薬とした用いたことを除いて、上記の検出アッセイを繰り返した。具体的には、様々な濃度の抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲートを試料緩衝液中で調製した。ASGR1抗原に対する抗ASGR1抗体の相互作用は、カルシウム依存性であるため、アッセイの全ての緩衝溶液に1mMのCaCl2を添加した。52℃のハイブリダイゼーション緩衝液中において、試料をジゴキシゲニン-TFO(配列番号1)で1時間ハイブリダイズした。別個に、ブロッキング緩衝液中のビオチンラベル化ヒトASGR1タンパク質を、ストレプトアビジンでコーティングされたマイクロタイタープレートのウェルに堆積させ、30分間振盪した。続いて、使用前にプレートを洗浄緩衝液で洗浄した。
【0070】
ハイブリダイゼーション後、試料を、予め調製した結合ヒトASGR1タンパク質を含むマイクロタイタープレートに移して1時間振盪した。プレートを洗浄緩衝液で洗浄した後、ルテニウムラベル化ヒツジ抗ジゴキシゲニン抗体をブロッキング緩衝液中の各試料に添加し、プレートを30分間振盪した。プレートを洗浄緩衝液で再び洗浄し、MSD QuickPlex SQ120電気化学発光リーダー及び界面活性剤を含むMSD Read Buffer Tを用いてルテニウムラベルからのシグナルを読み取った。アッセイの結果を
図8に示す。アッセイのLLOQは、103ng/mLであった。結果は、ASGR1抗原が、続いてルテニウムラベル化抗ジゴキシゲニン抗体と組み合わせたジゴキシゲニン-TFOを用いて検出され得るコンジュゲートのための捕捉試薬として効果的に作用し得ることを実証する。
【0071】
実施例に記載される実験の結果は、標識TFOが、コンジュゲートの抗体成分を特異的に認識する捕捉試薬(例えば、標的抗原又は抗Fc抗体)と組み合わせて、試料溶液中で無傷の抗体-siRNAコンジュゲートの検出及び定量化を可能とするために用いられ得ることを実証する。
【0072】
実施例3マウス中の薬物動態解析におけるアッセイの応用
本発明のアッセイ法の潜在的応用の1つを実証するために、実施例1に記載され、且つ
図1に描かれるアッセイ(捕捉に使用される標識TFO)を用いて抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲートで処理された動物由来の血清及び肝臓試料を解析した。
【0073】
9週齢のC57Bl/6野生型マウスに、実施例1に記載される抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲート分子(30mg/kg又は60mg/kg)又はGalNAcコンジュゲートT2 siRNA対照を皮下又は静脈内注射した。GalNAcコンジュゲートT2 siRNA対照は、センス鎖の3’末端において三本鎖GalNAc部分にコンジュゲートしたが、それ以外には抗体にコンジュゲートされたT2 siRNA分子と同じフォーマット並びにセンス及びアンチセンス鎖配列を有していた。T2 siRNAは、肝臓遺伝子を標的とする。化合物の投与後2、4、8及び15日目に動物から血清及び肝臓を採取した。動物の肝臓から単離された全RNAをqPCR分析のために処理してmRNAレベルを評価した。肝臓中のT2 siRNAの標的のタンパク質発現をELISAによって測定した。
【0074】
抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲートは、肝臓中の標的タンパク質発現の効果的な低減によって示されるように(
図9A)、生体内でsiRNAを効果的にその肝臓標的に送達した。標的タンパク質の>80%の低減は、30mpkの静脈内(i.v.)群中で達成された。タンパク質ノックダウンの最下点は、静脈内又は皮下(s.c.)のいずれかで投与された抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲートでは8日目であり、GalNAc-T2 siRNAコンジュゲートでは4日目であった。
【0075】
実施例1に記載されるアッセイ法は、コンジュゲートで処理された動物から採取された血清及び肝臓試料中の無傷の抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲート分子の量を測定するために用いられた。52℃のハイブリダイゼーション緩衝液中の100nMのビオチン化TFO(配列番号1)で試料を1時間ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後、試料を、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートに移し、実施例1に記載されるとおり洗浄及びブロックした。捕捉されたコンジュゲート分子の検出を、ルテニウムラベル化抗ヒトFc mAbを用いて達成し、電気化学発光シグナルをMSD QuickPlex SQ120電気化学発光リーダーによって読み取った。血清及び肝臓試料中の合計薬物の測定として、抗Fc/抗FcサンドイッチELISAアッセイが用いられた。合計薬物ELISAアッセイでは、第1のビオチン化抗ヒトFc抗体を、試料中の任意の抗ASGR1 mAbを捕捉するために用い、第1の抗ヒトFc抗体と異なるエピトープに結合する第2のルテニウムラベル化抗ヒトFc抗体を、捕捉された抗ASGR1 mAbを検出するために用いた。合計薬物アッセイは、裸の抗ASGR1 mAb(すなわちsiRNA分子を失ったmAb)並びに1つ又は2つの結合siRNA分子を有する抗ASGR1 mAbを検出する。
【0076】
血清試料の解析からの結果を
図9Bに示し、肝臓試料の解析からの結果を
図9C及び9Dに示す。血清試料の解析は、最初の72時間にわたる抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲート分子の急速な血清クリアランスを示し、これは、標的媒介性のASGR1のクリアランス経路を表すものと思われる。合計薬物及び無傷のコンジュゲートのクリアランスプロファイルの比較は、抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲート分子が最初の72時間にわたって血清中で無傷な(少なくとも1つのsiRNA分子がmAbに連結した)状態を維持することを示す。合計薬物ELISAアッセイによって評価される肝臓試料中に存在する抗ASGR1 mAbの合計量は、抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲート及び非コンジュゲート抗ASGR1 mAbを受けるマウスにおいて抗体量が同様であるため(
図9C)、抗体に対するsiRNA分子のコンジュゲートは、抗体のインターナリゼーションに影響を与えるとも思われないことを示す。本発明のアッセイ法は、全身投与されたコンジュゲートであった、マウスの肝臓組織中の無傷の抗ASGR1 mAb-siRNAコンジュゲートを検出することが可能であった(
図9D)。無傷のコンジュゲート分子の肝臓濃度は、合計薬物に対して測定されたもの(すなわち抗ASGR1 mAb濃度によって評価される)よりも低く、これは、肝臓組織中におけるsiRNA分子の特異的な除去を示す。
【0077】
この実施例の実験結果は、本発明のアッセイ法が、生体内の抗体-siRNAコンジュゲート分子のクリアランスプロファイル及び代謝低下を評価するための薬物動態及び薬物代謝研究に用いられ得ることを示す。
【0078】
実施例4三重鎖形成の検出
アッセイ法のハイブリダイゼーション条件下において、標識TFOが、モノクローナル抗体にコンジュゲートした二本鎖siRNA分子と三重鎖を形成し得たことを確認するために、抗体-siRNAコンジュゲート分子を有する標識TFOのハイブリダイゼーション後にネイティブ質量分光(ネイティブMS)解析を実施した。具体的には、試料緩衝液(10mMのTris-HCl、1mMのEDTA、pH8.0)と、ハイブリダイゼーション緩衝液(60mMの二塩基性リン酸ナトリウム、1MのNaCl、5mMのEDTA、0.2%(v/v)のTween(登録商標)20、pH7.0)との1:1混合物であった反応緩衝液中の凍結乾燥粉末から168μMのTFO原液を調製した。TFOの配列は、
【化5】
(配列番号1;LNAモノマーは、下線及び太字フォントによって示される)であり、3’末端においてビオチンでラベル化されていた。ビオチン化TFOの概算分子量は、6856.6ダルトンであった。ビオチン化TFOを、実施例1に記載した抗ASGR1 mAb-T2 siRNAコンジュゲート分子の2.4mg/mL原液と1:1v/vで混合した。1のRNA-抗体比(RAR)を有するコンジュゲート分子をこの実験で用いた。ビオチン化TFO及び抗ASGR1 mAb-T2 siRNA RAR1コンジュゲート分子の最終濃度は、それぞれ84μM~7.5μMであった。混合物を52℃で1時間インキュベートし、更なる解析まで12℃に冷却した。
【0079】
ネイティブMS解析前に、試料を、P6スピンカラム(BioRad,732-6221)を用いて200mMの酢酸アンモニウムに緩衝液交換し、nESI金コーティングガラス針(長薄壁、M956232AD1-S;Waters Corporation)を用いて質量分析計内に導入した。Synapt G1 Q-ToF機器(Waters
Corporation)を用いて、正イオン化モードでネイティブMS実験を実施した。弱い衝突活性化をインソースで実施し(試料コーン、50V)、衝突セル(cC4F8で加圧)を20~30Vの電圧に設定した)。質量分析計を100~20,000のm/z範囲にわたりヨウ化セシウムで外部較正した。
【0080】
ネイティブMS解析の結果を
図10に示す。mAb-siRNA三重鎖と一致する分子量を有する種(すなわちコンジュゲート分子のsiRNA成分にハイブリダイズされたビオチン化TFO)をビオチン化TFOによるインキュベーション後に観察した。
図10Aを参照されたい。抗ASGR1 mAb-T2 siRNA RAR1コンジュゲート分子がビオチン化TFOに曝露されていないとき、mAb-siRNA三重鎖のピークは、観察されない。
図10Bを参照されたい。この実験の結果は、ビオチン化TFOが、本明細書に記載されるアッセイ法のハイブリダイゼーション条件下において、抗体-siRNAコンジュゲート分子のsiRNA成分と三重鎖を形成できることを実証する。
【0081】
本明細書において議論及び引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。開示した本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び材料に限定されず、これらは、変化し得ることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではないことも理解される。
【0082】
当業者は、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を、単なる日常的な実験を使用して認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
試料中のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出するための方法であって、
(a)前記試料を、標識に共有結合されている三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)と、前記TFOが前記コンジュゲート分子中のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする条件下において接触させ、それによりハイブリダイゼーション混合物を形成することと、
(b)前記ハイブリダイゼーション混合物を、前記TFOに共有結合された前記標識に特異的に結合する捕捉試薬を含む表面と接触させることと、
(c)前記表面を検出試薬と接触させることであって、前記検出試薬は、前記コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する結合パートナーに結合された検出可能なラベルを含む、接触させることと、
(d)前記検出可能なラベルからのシグナルを検出することと
を含む方法。
(項目2)
前記標識は、ハプテンである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ハプテンは、ビオチン、ジゴキシゲニン又は2,4-ジニトロフェノールである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記捕捉試薬は、前記標識に特異的に結合する抗体である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記標識は、ビオチンであり、及び前記捕捉試薬は、ストレプトアビジンである、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記標識は、ジゴキシゲニンであり、及び前記捕捉試薬は、ジゴキシゲニンに特異的に結合する抗体である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記結合パートナーは、前記コンジュゲート分子中の前記タンパク質に特異的に結合する抗体である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記検出可能なラベルは、蛍光体、金属ナノ粒子、酵素又は電気化学発光(ECL)発光団である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記ECL発光団は、ルテニウム錯体である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記TFOは、ロック核酸(LNA)モノマーとデオキシリボヌクレオチドとの混合物を含む、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記TFO中の前記ヌクレオチドの約30%~約40%は、LNAモノマーである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記TFOは、長さが少なくとも15ヌクレオチドである、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記TFOは、その全長にわたって前記コンジュゲート分子中の前記ポリヌクレオチドの配列と相補的な配列を有する、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記コンジュゲート分子中の前記ポリヌクレオチドは、siRNA、shRNA、miRNA、プレmiRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記コンジュゲート分子中の前記ポリヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNAであり、前記TFOは、前記センス鎖の配列と相補的な配列を有する、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記コンジュゲート分子中の前記タンパク質は、抗体又はその抗原結合フラグメントである、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記コンジュゲート分子中の前記タンパク質は、抗体であり、及び前記結合パートナーは、前記抗体の標的抗原、抗Fc領域抗体又は抗イディオタイプ抗体である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記コンジュゲート分子中の前記タンパク質は、細胞表面受容体のリガンドである、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記結合パートナーは、前記受容体又はそのリガンド結合フラグメントである、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子は、抗体-siRNAコンジュゲート分子である、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記試料は、約25℃~約60℃の温度で前記TFOと接触されて、前記ハイブリダイゼーション混合物を形成する、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記試料は、約45℃~約55℃の温度で前記TFOと接触されて、前記ハイブリダイゼーション混合物を形成する、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記試料は、約50℃~約55℃の温度で前記TFOと接触されて、前記ハイブリダイゼーション混合物を形成する、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記試料は、血清、血漿、組織ホモジネート、製剤原料又は製剤である、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
試料中のタンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子を検出するための方法であって、
(a)前記試料を、標識に共有結合されているTFOと、前記TFOが前記コンジュゲート分子中のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを可能にする条件下において接触させ、それによりハイブリダイゼーション混合物を形成することと、
(b)前記ハイブリダイゼーション混合物を、前記コンジュゲート分子中のタンパク質に特異的に結合する捕捉試薬を含む表面と接触させることと、
(c)前記表面を検出試薬と接触させることであって、前記検出試薬は、前記TFOに共有結合された前記標識に特異的に結合する結合パートナーに結合された検出可能なラベルを含む、接触させることと、
(d)前記検出可能なラベルからのシグナルを検出することと
を含む方法。
(項目26)
前記標識は、ハプテンである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記ハプテンは、ビオチン、ジゴキシゲニン又は2,4-ジニトロフェノールである、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記結合パートナーは、前記標識に特異的に結合する抗体である、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記標識は、ビオチンであり、及び前記結合パートナーは、ストレプトアビジンである、項目25に記載の方法。
(項目30)
前記標識は、ジゴキシゲニンであり、及び前記結合パートナーは、ジゴキシゲニンに特異的に結合する抗体である、項目25に記載の方法。
(項目31)
前記検出可能なラベルは、蛍光体、金属ナノ粒子、酵素又はECL発光団である、項目25~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記ECL発光団は、ルテニウム錯体である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記捕捉試薬は、前記コンジュゲート分子中の前記タンパク質に特異的に結合する抗体である、項目25~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記TFOは、ロック核酸(LNA)モノマーとデオキシリボヌクレオチドとの混合物を含む、項目25~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記TFO中の前記ヌクレオチドの約30%~約40%は、LNAモノマーである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記TFOは、長さが少なくとも15ヌクレオチドである、項目25~35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記TFOは、その全長にわたって前記コンジュゲート分子中の前記ポリヌクレオチドの配列と相補的な配列を有する、項目25~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記試料は、約25℃~約60℃の温度で前記TFOと接触されて、前記ハイブリダイゼーション混合物を形成する、項目25~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記試料は、約45℃~約55℃の温度で前記TFOと接触されて、前記ハイブリダイゼーション混合物を形成する、項目25~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記試料は、約50℃~約55℃の温度で前記TFOと接触されて、前記ハイブリダイゼーション混合物を形成する、項目25~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記コンジュゲート分子中の前記ポリヌクレオチドは、siRNA、shRNA、miRNA、プレmiRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである、項目25~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記コンジュゲート分子中の前記ポリヌクレオチドは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNAであり、前記TFOは、前記センス鎖の配列と相補的な配列を有する、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記コンジュゲート分子中の前記タンパク質は、抗体又はその抗原結合フラグメントである、項目25~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記コンジュゲート分子中の前記タンパク質は、抗体であり、及び前記捕捉試薬は、前記抗体の標的抗原、抗Fc領域抗体、抗イディオタイプ抗体、タンパク質A又はタンパク質Gである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記コンジュゲート分子中の前記タンパク質は、細胞表面受容体のリガンドである、項目25~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記捕捉試薬は、前記受容体又はそのリガンド結合フラグメントである、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記タンパク質-ポリヌクレオチドコンジュゲート分子は、抗体-siRNAコンジュゲート分子である、項目25~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記試料は、血清、血漿、組織ホモジネート、製剤原料又は製剤である、項目25~47のいずれか一項に記載の方法。