(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012655
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】ケーブル多条布設治具及びケーブル多条布設方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116221
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】株式会社ブレスト工業研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000163419
【氏名又は名称】株式会社きんでん
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(72)【発明者】
【氏名】小森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】日高 一幸
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352CB01
5G352CB11
5G352CE02
(57)【要約】
【課題】複数本のケーブルをケーブルラックに効率よく布設することができるケーブル多条布設治具を提供する。
【解決手段】親桁P1相互間の長さを有する管体状の布設本体10を設ける。布設本体10に複数のケーブルC端部を連結する連結具40を設ける。布設本体10を牽引するロープ状の牽引具50を設ける。親桁P1の上面に当接して移動自在に係合する移動係合体20を設ける。布設本体10を親桁P1の上面に沿って移動して複数本のケーブルを布設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルラックに複数本のケーブルを同時に布設するケーブル多条布設治具であって、親桁相互間の長さを有する管体状の布設本体と、布設本体に複数のケーブル端部を連結する連結具と、布設本体を牽引するロープ状の牽引具と、布設本体の両端部に設けられ親桁の上面に当接して移動自在に係合する移動係合体と、を備えたことを特徴とするケーブル多条布設治具。
【請求項2】
前記布設本体に、前記親桁の内側面に当接して前記布設本体が前記親桁から脱落するのを防止する脱落防止具を備えた請求項1記載のケーブル多条布設治具。
【請求項3】
前記移動係合体は、前記親桁上面に沿って回転する回転ローラーを備えた請求項1記載のケーブル多条布設治具。
【請求項4】
前記移動係合体は、前記布設本体の端部を連結して前記親桁の内側に配置する連結部と、連結部から前記親桁の上面側に屈曲形成された係止部とを備え、係止部に前記回転ローラーを設けた請求項1、3記載のケーブル多条布設治具。
【請求項5】
前記脱落防止具は、前記親桁の内側上部に形成された断面略コ字状の凹部の内側に係合するように構成された請求項2記載のケーブル多条布設治具。
【請求項6】
前記脱落防止具は、前記親桁の内側面に当接する当接ローラーを備えた請求項2又は5記載のケーブル多条布設治具。
【請求項7】
前記脱落防止具は、前記親桁の内側に沿って設けられ前記移動係合体に連結された基板と、基板に設けられ前記親桁の内側面に当接する当接ローラーと、を備え、前記移動係合体に連結する基板の位置を位置調整自在に設け、当接ローラーの当接位置を調整するように構成した請求項2、5、6いずれか記載のケーブル多条布設治具。
【請求項8】
前記布設本体は、径が異なる一対の筒体を重合して長さ調整自在に設けられた請求項1乃至7いずれか記載のケーブル多条布設治具。
【請求項9】
ケーブルラックに複数本のケーブルを同時に布設するケーブル多条布設方法であって、親桁相互の上面に沿って移動するように設けた布設本体を設け、布設本体に複数本のケーブル端部を連結し、布設本体を親桁の上面に沿って牽引することで子桁上に複数本のケーブルを同時に布設することを特徴とするケーブル多条布設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば天井付近に支持されているケーブルラックに、ケーブルを効率よく布設することができるケーブル多条布設治具及びケーブル多条布設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、親桁と子桁とからなるケーブルラックやケーブルラダーと称する配線機材にケーブルを布設する装置や方法は種々提案されている。
【0003】
特許文献1に記載のケーブル布設装置は、ケーブルラダーの親桁に沿って形成した中空状のシュータを利用する布設装置である。このシュータの内部にシャトルを移動させながらケーブルを牽引する構成で、ケーブルに連結する予備ロープをシャトルに連結し、シャトルと共にケーブルを移動するものである。
【0004】
特許文献2に記載のケーブル敷設方法は、まず、ケーブルラックの長手方向に沿ってリング状を成した支持体を複数掛け回して配置する。そして、この支持体を通した長尺体の牽引具を子桁上に載せておく。更に、ケーブルの端部を長尺体の牽引具に連結し、牽引具を牽引することでケーブルをケーブルラックの子桁上に布設する方法である。
【0005】
特許文献3に記載の複数ケーブルの一括延線治具は、ケーブルラックの子桁上に載置可能なそり本体を使用する構成である。すなわち、そり本体に撚り戻し治具を接続し、この撚り戻し治具に複数のケーブル又はパイロットロープを連結する構成を成している。そして、複数のケーブルを連結したそり本体をケーブルラックの子桁上で移動させることで複数のケーブルを同時に布設するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7-34614号公報
【特許文献2】特許第4523534号公報
【特許文献3】特許第6132607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のケーブル布設装置は、ケーブルラダーの親桁に沿って形成する中空状のシュータを利用する装置であるから、ケーブルを配線するケーブルラダーの親桁全てに沿ってシュータを設ける必要がある。したがって、シュータの設置コストや製造コストなどが極めて膨大になる不都合があった。
【0008】
また、特許文献2に記載のケーブル敷設方法は、ケーブルラックの長手方向に沿って配設した複数の支持体に予め長尺体の牽引具を通して布設する方法なので、ケーブルの配線距離が長くなるほど多くの支持体を配置し、更に、これらの支持体に予め長尺体を通しておく必要がある。そのため、支持体の配置作業や長尺体を予め通しておく作業など、極めて多くの作業を要するものであった。
【0009】
一方、特許文献3に記載の複数ケーブルの一括延線治具は、複数のケーブルを連結したそり本体をケーブルラックの子桁上で移動させる構成なので、ケーブルラックの子桁上に予めケーブルが布設されていると、このそり本体の移動時にこのケーブルが破損するおそれがある。
【0010】
しかも、連結したケーブルの本数が多くなり、あるいは沿線距離が長くなると、そり本体に多くの荷重がかかることになる。そのため、ケーブルの布設本数が多い場合や沿線距離が長くなると、そり本体の移動が困難になる不都合もある。
【0011】
そこで、本発明は従来の課題を解消すべく創出されたもので、複数本のケーブルをケーブルラックに効率よく布設することができるケーブル多条布設治具及びケーブル多条布設方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、ケーブルラックPに複数本のケーブルCを同時に布設するケーブル多条布設治具であって、親桁P1相互間の長さを有する管体状の布設本体10と、布設本体10に複数のケーブルC端部を連結する連結具40と、布設本体10を牽引するロープ状の牽引具50と、布設本体10の両端部に設けられ親桁P1の上面に当接して移動自在に係合する移動係合体20と、を備えたことにある。
【0013】
第2の手段は、前記布設本体10に、前記親桁P1の内側面に当接して前記布設本体10が前記親桁P1から脱落するのを防止する脱落防止具30を備えている。
【0014】
第3の手段の前記移動係合体20は、前記親桁P1上面に沿って回転する回転ローラー23を備えたものである。
【0015】
第4の手段の前記移動係合体20は、前記布設本体10の端部を連結して前記親桁P1の内側に配置する連結部21と、連結部21から前記親桁P1の上面側に屈曲形成された係止部22とを備え、係止部22に前記回転ローラー23を設けている。
【0016】
第5の手段の前記脱落防止具30は、前記親桁P1の内側上部に形成された断面略コ字状の凹部P1aの内側に係合するように構成されたものである。
【0017】
第6の手段の前記脱落防止具30は、前記親桁P1の内側面に当接する当接ローラー32を備えている。
【0018】
第7の手段の前記脱落防止具30は、前記親桁P1の内側に沿って設けられ前記移動係合体20に連結された基板31と、基板31に設けられ前記親桁P1の内側面に当接する当接ローラー32と、を備え、前記移動係合体20に連結する基板31の位置を位置調整自在に設け、当接ローラー32の当接位置を調整するように構成したものである。
【0019】
第8の手段の前記布設本体10は、径が異なる一対の筒体を重合して長さ調整自在に設けたものである。
【0020】
第9の手段は、ケーブルラックPに複数本のケーブルCを同時に布設するケーブル多条布設方法であって、親桁P1相互の上面に沿って移動する布設本体10を設け、布設本体10に複数本のケーブルC端部を連結し、布設本体10を親桁P1の上面に沿って牽引することで子桁P2上に複数本のケーブルCを同時に布設するケーブル多条布設方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、複数本のケーブルをケーブルラックに効率よく布設することができ、既にケーブルが子桁上に布設されていてもケーブルに損傷与えるおそれがなく、しかも、ケーブルの布設本数が多い場合や沿線距離が長くなっても容易に布設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図5】本発明の移動係合体と脱落防止具を示す要部拡大図である。
【
図6】本発明の移動係合体と脱落防止具を示す要部斜視図である。
【
図8】本発明の布設本体と移動係合体とを示す正面図である。
【
図9】本発明の布設本体と移動係合体を示す平面図である。
【
図10】(イ)、(ロ)は、調整孔による位置調整を示す要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明布設具は、例えば天井等に支持されているケーブルラックPに、複数本のケーブルCを同時に布設する際に使用するものであり、布設本体10、移動係合体20、脱落防止具30、連結具40、牽引具50を備えている(
図1参照)。
【0024】
布設本体10は、親桁P1相互間の長さを有する管体状を成し、この布設本体10に後述する移動係合体20や連結具40を連結する(
図7参照)。図示の布設本体10は、径が異なる一対の角筒体をスライド自在に重合して長さ調整自在に設けている。すなわち、大管11内に小管12をスライド自在に収納し、それぞれの側面に開穿した調整孔11aと調整孔12aと合わせて長さ調整ピン13で布設本体10の長さを調整する。
【0025】
移動係合体20は、布設本体10の両端部に設けられた部材で、親桁P1の上面に当接して移動自在に係合する(
図6参照)。このとき、移動係合体20に備えた複数の回転ローラー23により、移動係合体20の移動を容易にしている。
【0026】
図示の移動係合体20は、金属板材にて連結部21と係止部22とを形成し、係止部22に回転ローラー23を設けている(
図8参照)。すなわち、連結部21は、布設本体10の端部を連結して親桁P1の内側に配置する側面略L字状を成している。この連結部21には、後述する脱落防止具30を連結する調整孔21aが形成されている(
図9参照)。また、係止部22は、この連結部21から前記親桁P1の上面側に屈曲形成されたもので、この係止部22に回転ローラー23を設けている(
図8参照)。この回転ローラー23は樹脂やゴムなどを使用してケーブルラックPを傷つけない方が好ましい。
【0027】
脱落防止具30は、親桁P1の内側面に当接することで布設本体10が親桁P1から脱落するのを防止する部材である(
図5参照)。図示の脱落防止具30は、移動係合体20の連結部21に位置調整自在に連結された構成で、基板31と当接ローラー32とを備えている。すなわち、基板31は、親桁P1の内側に沿って設けられ連結部21に連結される板状部材である(
図6参照)。当接ローラー32は、この基板31に設けられ、親桁P1の内側面に当接することで布設本体10の脱落を防止する。
【0028】
更に、図示の当接ローラー32は、親桁P1の内側上部に形成された断面略コ字状の凹部P1aの内側に当接するように位置調整されている(
図5参照)。
【0029】
この脱落防止具30を親桁P1から解除するには、親桁P1に当接している当接ローラー32の位置を変更し、当接ローラー32が親桁P1から離れるようにする必要がある。そのため、移動係合体20の連結部21に連結した基板31ごと当接ローラー32の位置を調整するように構成している(
図6参照)。したがって、移動係合体20はノブボルト24により親桁P1の途中からでも取付け可能になる。
【0030】
図示例では、移動係合体20の連結部21に平面L字形状を成した調整孔21aを形成し、この調整孔21aを通すノブボルト24にて脱落防止具30の基板31を連結したものである(
図9参照)。そして、このノブボルト24を調整孔21aに沿って移動することで、ノブボルト24に連結された基板31ごと当接ローラー32の位置が移動する。また、ケーブルラックPの親桁P1の形状は複数ある。親桁P1の形状が異なる場合でも調整可能なように、複数の調整孔21aを形成している。
【0031】
この調整孔21aに沿った位置調整は、例えば、
図10(イ)の右側の状態にあるノブボルト24の位置を調整孔21aに沿って左側の状態に移動すると、このノブボルト24に伴って基板31が移動し、基板31に設けている当接ローラー32が親桁P1から離れた状態になる。一方、同図(ロ)の左側の状態にあるノブボルト24の位置を調整孔21aに沿って右側の状態に移動すると、このノブボルト24に伴って基板31が移動し、基板31に設けている当接ローラー32が親桁P1に当接する状態になるものである。
【0032】
連結具40は、ケーブルCや牽引具50を布設本体10に連結する部材である(
図1参照)。図示の連結具40は、側面コ字状を成した固定体41に連結体42を連結したものである(
図2参照)。そして、布設本体10の外周に固定体41を装着し、固定体41に固定した連結体42を介してケーブルCや牽引具50を連結する(
図1参照)。索引具50は一般的にワイヤーロープなどが使用される。このとき連結体42として、アイボルトとアイナットを使用することで、これら両者をねじ止めすることで、固定体41に連結体42が固定される構成となる(
図11参照)。また、連結体42に撚り戻し治具を取り付けてもよい。
【0033】
次に、本発明布設治具を使用するには、まず、ケーブルラックPの親桁P1上に移動係合体20を載置する(
図2参照)。そして、移動係合体20のノブボルト24を操作して脱落防止具30の当接ローラー32が親桁P1の内側面に当接するように調整する(
図10(ロ)参照)。そうすると、親桁P1の上面に移動係合体20の回転ローラー23が当接すると共に、親桁P1の内側に脱落防止具30の当接ローラー32が当接した状態になる(
図3参照)。
【0034】
この状態で連結具40に複数本のケーブルC端部を連結すると共に、連結具40に牽引具50を連結する(
図1参照)。そして、牽引具50を牽引して移動係合体20が親桁P1上を移動すると、複数のケーブルCが同時に子桁P2上に布設されるものである。この際、布設本体10やケーブルC、連結具40はケーブルラックPの内側を移動するので、ケーブルラックPを側面から見ると移動係合体20のみが移動してするように見える(
図4参照)。したがって、ケーブルラックPが天井の懐の狭い位置に設置されている場合でも、ケーブルCをケーブルラックPに布設する作業が容易になる。
【0035】
本発明布設方法は、親桁P1相互の上面に沿って移動する布設本体10を使用する方法である。すなわち、布設本体10に複数本のケーブルC端部を連結する。次に、この布設本体10を親桁P1の上面に沿って牽引する。そうすると、子桁P2上に複数本のケーブルCが同時に布設されることになる。この結果、仮に子桁P2上に既にケーブルCが布設されていても、このケーブルCに損傷を与えずに新たなケーブルCを子桁P2上に布設することができる。
【0036】
尚、本発明の実施例は図示例に限定されるものではない。たとえば、ケーブルラックPは図示例のような直線だけでなくカーブや傾斜のあるケーブルラックPにも適応可能であり、各構成部位の変更や布設するケーブルの種類など本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由である。
【符号の説明】
【0037】
C ケーブル
P ケーブルラック
P1 親桁
P1a 凹部
P2 子桁
10 布設本体
11 大管
11a 調整孔
12 小管
12a 調整孔
13 長さ調整ピン
20 移動係合体
21 連結部
21a 調整孔
22 係止部
23 回転ローラー
24 ノブボルト
30 脱落防止具
31 基板
32 当接ローラー
40 連結具
41 固定体
42 連結体
50 牽引具