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特開2023-126564人工腱索のための装置、システム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126564
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】人工腱索のための装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117416
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2021571336の分割
【原出願日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】62/870,343
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/873,352
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/873,357
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シューイ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】エッゲルト、ジョエル ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ロール、ジェームズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アボット、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】コウデラ、クリストファー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ペニントン、ダグラス
(57)【要約】
【課題】患者内に人工腱索を送達すること。
【解決手段】システムは、スプレッダベースとスプレッダベースに揺動可能に結合されるレバーとを有するスプレッダを備える。システムは、閉鎖形態でスプレッダ内に少なくとも部分的に収容される第1クランプを備える。第1クランプは、スプレッダベースに結合される第1クランプアームとスプレッダのレバーに結合される第2クランプアームとを有する。第1クランプアームと第2クランプアームとは、スプレッダによって、閉鎖形態と開放形態との間で移動可能である。第1フィラメントは、開放形態に第1クランプアームを動かすためにレバーと第2クランプアームとを動かすように構成される。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓内に人工腱索を送達するためのシステムであって、
該システムは、スプレッダを備え、該スプレッダは、スプレッダベースと前記スプレッダベースに揺動可能に結合されるレバーとを有し、
該システムは、閉鎖形態で前記スプレッダ内に少なくとも部分的に収容される第1クランプを備え、該第1クランプは前記人工腱索の第1端部に取り付けられており、且つ、該第1クランプは、前記スプレッダベースに結合される第1クランプアームと前記スプレッダの前記レバーに結合される第2クランプアームとを有し、前記第1クランプアームと前記第2クランプアームとは、前記スプレッダによって、前記第1クランプアームと前記第2クランプアームが互いに向き合い、且つ、心臓弁の弁尖と固定係合するように構成される前記閉鎖形態と、前記第1クランプアームと前記第2クランプアームが互いに離れる方に向く開放形態との間で移動可能であり、
該システムは、第1フィラメントを備え、該第1フィラメントは、前記スプレッダの前記レバーから延び、且つ、前記開放形態に前記第1クランプアームを動かすために前記レバーと前記第2クランプアームとを動かすように構成される、
システム。
【請求項2】
前記第1クランプは、前記スプレッダに可逆的にロックされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
クランプフィラメントによって前記第1クランプに取り付けられた第2クランプをさらに備え、前記クランプフィラメントは、前記人工腱索の前記第1端部に摺動可能に結合される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1クランプは、
第1端部における複数のクランプアームであって、前記複数のクランプアームが互いに向き合う閉鎖形態と、前記複数のクランプアームが互いに離れる方に向く開放形態とを有する複数のクランプアームと、
第2端部において前記複数のクランプアームに結合され、前記複数のクランプアームを前記閉鎖形態に付勢するように構成されたばね部分と
をさらに備え、前記第1クランプの前記複数のクランプアームは、心臓弁の弁尖と固定係合するように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
ピンが前記スプレッダベースから延び、
前記スプレッダの前記レバーが前記ピンを中心に回転可能に配置される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
第1チャネルが前記スプレッダベースを通して延び、且つ、前記第1クランプアームを受け入れるように構成され、
第2チャネルが前記スプレッダの前記レバーを通して延び、且つ、前記第2クランプアームを受け入れるように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
第1アパーチャが、前記スプレッダベースを通して、前記第1チャネルと概ね平行に前記第1クランプアームを通して延びる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1アパーチャ及び前記第1チャネル内に配置された第1ロックピンをさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
第2フィラメントをさらに備え、該第2フィラメントは、前記第1ロックピンの端部に結合され、前記第1アパーチャ及び第1チャネルから前記第1ロックピンを外して、前記第1クランプアームを前記スプレッダから解放する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
第2アパーチャが、前記スプレッダの前記レバーを通して、前記第2チャネルと概ね平行に前記第2クランプアームを通って延びる、請求項6~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2アパーチャ及び前記第2チャネル内に配置された第2ロックピンをさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
第2フィラメントをさらに備え、該第2フィラメントは、前記第2ロックピンの端部に結合され、前記第2アパーチャ及び第2チャネルから前記第2ロックピンを外して、前記第2クランプアームを前記スプレッダから解放する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記クランプの前記アームの少なくとも一方はアパーチャを含み、該アパーチャは前記クランプの当該アームの少なくとも一方に画定されるとともに、前記スプレッダに対して前記クランプの前記アームの少なくとも一方を固定するべくロックピンを受け入れるように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記クランプの両アームはアパーチャを含み、該アパーチャは、前記クランプの両アームに画定されるとともに、前記スプレッダに対して前記クランプのアームの少なくとも一方を固定するべくロックピンを受け入れるように構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
第2フィラメントをさらに備え、該第2フィラメントは前記ロックピンの端部に結合され、前記クランプアーム及び前記スプレッダから前記ロックピンを外して、前記クランプアームを前記スプレッダから解放する、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、心疾患を治療するための医療装置の分野に関する。特に、本発明は、患者内に人工腱索を送達するための医療装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康な心臓において、腱索は、心収縮期及び心拡張期中に心臓弁の開閉を制御するために心臓弁尖に乳頭筋を連結している。心疾患が進行すると、腱索は、非弾性的に伸長し、且つ断裂する場合がある。伸長及び/又は断裂した腱索により、正常な心機能のために弁シールを形成する能力がなくなる場合がある動揺弁尖がもたらされ得る。異常な血流逆流が発生して、心血管系を通る適切な血液供給を阻止する場合がある。
【発明の概要】
【0003】
僧帽弁疾患は、通常、侵襲的外科的介入を介して若しくは弁尖を合わせて挟んで2つの小さい開口部を形成することにより、又は自己弁の僧帽弁置換術により修復される。これら及び他の手法は、危険なバイパス手術を伴う場合があり、バイパス手術は、僧帽弁を直接目視及び修復のために露出させる、患者の胸部及び心腔の切開を含み得る。従って、僧帽弁疾患に対する経管的解決法が必要とされている。
【0004】
患者内に人工腱索を送達することを含む、本発明の医療装置、システム及び方法により、種々の有利な医学的転帰を実現することができる。
本発明の実施形態は、概して、患者内に人工腱索を送達するのに役立ち得る。1つの態様では、患者の心臓内に腱索を送達するためのシステムは、送達カテーテルを含むことができる。クランプカテーテルは、送達カテーテルを通して動くように構成され得る。スプレッダは、クランプカテーテル上に配置され得る。第1クランプは、閉鎖形態でスプレッダ内に少なくとも部分的に収容され得る。第1クランプは、腱索の第1端部に取り付けられ得る。アンカカテーテルは、送達カテーテルを通して動くように構成され得る。アンカカテーテルは、腱索の第2端部に取り付けられたアンカを有し得る。シースは、アンカカテーテル、及びアンカに被さって延び得る。シースは、アンカのアームを拘束するように構成され得る。
【0005】
本明細書又は他に記載される他の様々な実施形態において、腱索の第2端部は、アンカのラチェットを通して延びることができる。腱索の第2端部は、アンカカテーテルを通して延びるテザーに結合され得る。テザーは、テザーの動きによって腱索における張力を増大させるように構成され得る。解放フィラメントは、ラチェットの解放ローラを通して延びることができる。解放フィラメントは、解放フィラメントの動きによってラチェットから腱索をロック解除するように構成され得る。第1クランプは、スプレッダに可逆的にロックされ得る。第2クランプは、クランプフィラメントによって第1クランプに取り付けられ得る。クランプフィラメントは、腱索の第1端部に摺動可能に結合され得る。アンカカテーテル、及びシースは、クランプカテーテルを通して延びることができる。クランプは、第1端部における複数のクランプアームを含むことができる。複数のクランプアームは、クランプアームが互いに向き合う閉鎖形態と、クランプアームが互いに離れる方に向く開放形態とを有することができる。ばね部分は、第2端部において複数のクランプアームに結合され得る。ばね部分は、クランプアームを閉鎖形態に付勢するように構成され得る。クランプのクランプアームは、心臓弁の弁尖と固定係合するように構成され得る。第1スプレッダは、クランプカテーテル上に配置されたベースを含むことができる。ピンは、ベースから延びることができる。レバーは、ピンを中心に回転可能に配置され得る。第1チャネルは、複数のクランプアームの1つの第1アパーチャと概ね平行にベースを通して延び得、且つ複数のクランプアームの1つを受け入れるように構成され得る。第2チャネルは、複数のアームの1つの第2アパーチャと概ね平行にレバーを通して延び得、且つ複数のアームの1つを受け入れるように構成され得る。第1フィラメントは、レバーから延びることができる。フィラメントは、レバー及びクランプを閉鎖形態と開放形態との間で移動させるように構成され得る。第1ピンは、第1アパーチャ及び第1チャネル内に配置され得る。第2ピンは、第2アパーチャ及び第2チャネル内に配置され得る。アンカカテーテルのアンカのアームの形状記憶は、アームが拘束形態から中立形態に向かって移行するとき、アームを、筋肉を穿刺するように付勢するように構成され得、且つ近位側に延び得る。アンカカテーテルは、シース内に配置され得る。シースは、クランプカテーテル内に配置され得る。クランプカテーテルは、送達カテーテル内に配置され得る。ハンドルは、送達カテーテル、クランプカテーテル、アンカカテーテル、及びシースに結合され得、且つ医療従事者が送達カテーテル、クランプカテーテル、アンカカテーテル、及びシースを選択的に且つ独立して動かすことを可能にするように構成され得る。第2スプレッダは、クランプカテーテル上において、第1スプレッダとは概ね反対側に配置され得る。アンカは、ねじ山を螺合させることによってアンカカテーテルに取り付けられ得る。シースは、アームが遠位側に延びるようにアームを拘束するように構成され得る。
【0006】
様々な実施形態において、患者の心臓内に腱索を送達する方法は、心臓内に送達カテーテルを経管的に挿入することを含み得る。クランプカテーテルは、送達カテーテルを通して延び得る。クランプカテーテルは、閉鎖形態におけるクランプを収容するスプレッダを有することができる。クランプは、腱索の第1端部に取り付けられ得る。スプレッダは、クランプを閉鎖形態から開放形態に移行させるために操作され得る。クランプは、心臓の弁の弁尖に隣接して位置決めされ得る。スプレッダは、クランプを弁尖上で開放形態から閉鎖形態に移行させるために操作され得る。シースは、送達カテーテルを通して心臓の組織に向かって延び得る。アンカを有するアンカカテーテルが延び得、アンカは、シースを通してアンカカテーテルの遠位端において腱索の第2端部に取り付けられる。アンカは、組織内に押し込まれ得る。
【0007】
本明細書又は他に記載される様々な実施形態において、経食道心エコー法又は蛍光透視法を介して、腱索における張力を調整しながら、弁の逆流が観察され得る。腱索における張力は、アンカのラチェットを通して腱索を選択的に動かし、且つラチェットから腱索を選択的に解放することによって調整され得る。クランプは、クランプ及びスプレッダから複数のピンを取り外すことにより、スプレッダから留置され得る。スプレッダの操作は、クランプカテーテルを通して近位側にスプレッダフィラメントを動かすことによって実施され得る。クランプは、クランプを閉鎖形態から開放形態に移行させ、クランプを弁尖の第1部分から弁尖の第2部分まで移動させ、クランプを弁尖上で開放形態から閉鎖形態に移行させることによって再配置され得る。送達カテーテルを通して延びるシースは、クランプカテーテルを通して延び得る。アンカの駆動は、アームがシースの遠位端から少なくとも部分的に延出するようにアンカカテーテルを延ばすことにより、アンカからアームを留置することを含み得る。アンカは、組織の第1部分からシースを通して近位側にアンカカテーテルを延ばし、組織の第2部分までアンカカテーテルを延ばすことによって再配置され得る。クランプカテーテル、シース、アンカカテーテル、及び送達カテーテルは、患者内から取り除かれ得る。
【0008】
一態様では、患者の心臓内に腱索を送達する方法は、心臓弁の弁尖上にクランプを送達することを含み得る。クランプは、腱索の第1端部に取り付けられ得る。アンカは、心臓の筋肉内に送達され得る。アンカは、腱索の第2端部に取り付けられ得る。腱索において張力が調整され得る。クランプの送達は、閉鎖形態におけるクランプを収容するスプレッダを操作して、クランプを閉鎖形態から開放形態に移行させることと、クランプを弁尖に隣接して位置決めすることと、スプレッダを操作して、クランプを弁尖上で開放形態から閉鎖形態に移行させることとをさらに含み得る。
【0009】
様々な実施形態において、アンカの送達は、アームがシースの遠位端から少なくとも部分的に延出するようにアンカを延ばすことにより、アンカから筋肉内に複数のアームを留置することを含み得る。経食道心エコー法又は蛍光透視法を介して、心臓弁の逆流が観察され得る。
【0010】
本発明の非限定的な実施形態は、概略的であり、且つ正確な縮尺で描かれるように意図されていない添付の図を参照して例として記載される。図において、図示されているそれぞれの同一又は略同一の構成要素は、概して単一の数字で表される。明確にする目的のため、当業者が本発明を理解することを可能にするために例示が必要でない場合、すべての図においてすべての構成要素に符号が付されているわけでなく、各実施形態のすべての構成要素が示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】血流逆流中の僧帽弁の動揺弁尖を示す断面図。
図2A】本発明の一実施形態による、クランプカテーテルを心臓内に延ばすことを示す心臓の断面図。
図2B】クランプカテーテルのクランプを開放形態に移行させることを示す図2Aの心臓の断面図。
図2C】クランプを閉鎖形態に移行させることを示す図2A及び図2Bの心臓の断面図。
図2D】アンカのアームを心臓の組織内に部分的に留置することを示す図2A図2Cの心臓の断面図。
図2E】アンカのアームが留置されていることを示す、図2A図2Dの心臓の断面図。
図2F】シースがアンカから後退していることを示す、図2A図2Eの心臓の断面図。
図2G】クランプが心臓の弁の弁尖上に解放されていることを示す、図2A図2Fの心臓の断面図。
図2H】人工腱索における張力を調整することを示す図2A図2Gの心臓の断面図。
図2I】アンカカテーテルからアンカが解放されていることを示す、図2A図2Hの心臓の断面図。
図2J】アンカから解放フィラメントが引き抜かれていることを示す、図2A図2Iの心臓の断面図。
図2K図2A図2Jの心臓及び引き抜かれている人工腱索の紐を示す断面図。
図2L】送達された人工腱索を含む、図2A図2Kの心臓の断面図。
図2M】追加の人工腱索も送達されていることを示す、図2A図2Lの心臓の断面図。
図2N】追加の人工腱索が送達されていることを示す、図2A図2Mの心臓の断面図。
図3】クランプカテーテルが弁の2つの弁尖と係合していることを示す、心臓の断面図。
図4A】2つのクランプを有する人工腱索を送達することを示す心臓の断面図。
図4B】人工腱索が送達されていることを示す、図4Aの心臓の断面図。
図4C】2つのクランプを有する追加の人工腱索を含むことを示す、図4A及び図4Bの心臓の断面図。
図5A】2つの索を有する人工腱索を送達することを示す心臓の断面図。
図5B】2つの索を有する人工腱索が送達されていることを示す、図5Aの心臓の断面図。
図6】本発明の一実施形態による、開放形態における、カテーテル上に配置されたスプレッダを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、記載する特定の実施形態に限定されない。本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、添付の請求項の範囲を越えて限定的であることを意図されない。本明細書で用いるすべての技術用語は、別段の定義がない限り、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
【0013】
本発明の実施形態は、心臓弁に選択的にアクセスするための医療装置及びシステム(例えば、大腿静脈等を通して挿入される経管装置)に関して具体的に説明される場合があるが、こうした医療装置及びシステムは、弁の弁尖をクランプするか又は組織壁をクランプすることを含む種々の医療処置で使用され得ることが理解されるべきである。開示する医療装置及びシステムは、異なるアクセス点及び手法を介して、例えば経皮的、内視鏡的、腹腔鏡下又はそれらの組合せでも挿入され得る。
【0014】
本明細書で用いる場合の単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、複数形を同様に含むように意図されている。本明細書で用いる場合の「備える/からなる」及び/若しくは「備えている/からなる」又は「含む」及び/若しくは「含んでいる」という用語は、述べられている特徴、領域、ステップ、要素及び/又は構成要素の存在を明記するが、1つ以上の他の特徴、領域、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【0015】
本明細書で用いる場合の「近位端」は、患者内に装置を導入するときに装置に沿って医療従事者の最も近くに位置する装置の端部を指し、「遠位端」は、植込み、位置決め又は送達中に装置に沿って医療従事者から最も遠くに位置する装置又は物体の端部を指す。
【0016】
本明細書で用いる場合の接続詞「及び/並びに」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、そのように結合されている構造体、構成要素、特徴等の各々を含み、接続詞「又は/若しくは」は、文脈上明確な別段の指示がない限り、そのように結合されている構造体、構成要素、特徴等の1つ又は他のものを単独で且つ任意の組合せ及び数で含む。
【0017】
本明細書では、すべての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾されていると想定される。数値に関連して、「約」という用語は、概して、記載されている値と均等である(すなわち同じ機能又は結果を有する)と当業者がみなす数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められる数を含むことができる。「約」という用語の他の使用(すなわち数値以外に関連する使用)は、別段の指示がない限り、本明細書に関連して理解され、且つ文脈と一貫するように、それらの通常の且つ慣例的な定義を有するものと想定することができる。端点による数値範囲の記載は、その端点を含む、その範囲内のすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0018】
本明細書における「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」等への言及は、記載する実施形態が特定の特徴、構造又は特性を含み得るが、すべての実施形態が特定の特徴、構造又は特性を必ずしも含まなくてよいことを示すことに留意されたい。さらに、こうした語句は、必ずしも同じ実施形態を指していない。さらに、一実施形態に関連して特定の特徴、構造又は特性が記載されている場合、明らかに反対の意味で述べられていない限り、明示的に記載されているか否かに関わらず、他の実施形態に関連してこうした特徴、構造又は特性に関わることは、当業者の知識の範囲内にある。すなわち、以下に記載する様々な個々の要素は、特定の組合せで明示的に示されていない場合でも、それにも関わらず、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成するか、又は記載した実施形態を補完し且つ/若しくはその重要性を高めるように互いに組合せ可能又は配置可能であるものとして想定される。
【0019】
房室心臓弁機能不全を含む心疾患は、患者心拍出量を低減させ、それにより患者の生活の質が低下し、及び寿命が縮まる。図1に示す心臓154を参照すると、心疾患が進行するに従い、乳頭筋152を弁尖151に連結する腱索155は、非弾性的に延び、且つ断裂する場合がある。延びた及び/又は断裂した腱索156により、動揺弁尖150がもたらされ得る。動揺弁尖150は、正常な心機能のために弁シールを形成する能力がなくなり得る。例えば、ベクトル158の方向における異常な血流逆流が発生する場合がある。逆流により、心血管系を通して適切な供給量の血液が送達されることが阻止される。
【0020】
心疾患を治療するために、弁の1つ以上の弁尖及び/又は腱索の再配置、修復及び/又は置換が望ましい場合がある。本発明の装置、システム及び方法は、心疾患を治療するために、単独で又は他の装置、システム及び方法とともに使用することができる。本発明の実施形態をともに実装することができる装置、システム及び方法の例としては、限定されないが、弁尖と、乳頭筋又は心臓壁との間の人工腱索に調整可能に張力をかけるための装置、システム及び方法(Devices,Systems,and Methods for Adjustably Tensioning an Artificial Chordae Tendineae Between a Leaflet and a
Papillary Muscle or Heart Wall)という名称の米国特許出願第_号明細書(代理人整理番号8150.0591)、装置、システム(Devices,Systems)という名称の米国特許出願第_号明細書(代理人整理番号8150.0592)、乳頭筋又は心臓壁に人工腱索を固定するための装置、システム及び方法(Devices,Systems,and Methods for Anchoring an Artificial Chordae Tendineae to a Papillary Muscle or Heart Wall)という名称の米国特許出願第_号明細書(代理人整理番号8150.0593)に記載されているものが挙げられ、これらの出願の各々は、本出願と同じ日に出願され、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。そこに記載されている装置の例を変更して、本発明の実施形態又は1つ若しくは複数の特徴を組み込むことができる。
【0021】
図2Aを参照すると、本発明の一実施形態による人工腱索206を送達する方法の一実施形態が示されており、同実施形態は、下大静脈を通して、中隔を通して心臓254の左心房内に延びた送達カテーテル240を含む。クランプカテーテル200は、送達カテーテル240を通して弁尖250を通過して遠位側に延びる。クランプカテーテル200は、クランプカテーテル200の遠位端に配置されたスプレッダ204を有する。スプレッダ204は、閉鎖形態におけるクランプ202を収容する。人工腱索206は、クランプ202に取り付けられた第1端部を有し、人工腱索206の別の端部は、クランプカテーテル200内に近位側に延びる。クランプカテーテル200は、弁尖250を通過して送達カテーテル240内に延びる。スプレッダ204及びクランプ202は、クランプカテーテル200が送達カテーテル240を通して且つ身体を通して動く際、送達カテーテル240及び周囲の解剖学的構造との望ましくない摩擦を防止するために、開放形態よりも低い輪郭を維持するような閉鎖形態にある。
【0022】
図2Bを参照すると、例えば本明細書において図6に関して例示及び記載するようなフィラメントを、スプレッダ204のレバーに取り付けられているクランプカテーテル200を通して近位側に動かしてスプレッダ204を開放することにより、クランプ202を閉鎖形態から開放形態に移行させるようにスプレッダ204を操作することができる。一方、フィラメントを解放することにより、クランプ202のばね部分がスプレッダ204のレバーを閉鎖することができる。開放したクランプ202がクランプ202の2つのアーム203、205間に弁尖250を受け入れるように弁尖250に隣接して位置決めされるように、クランプカテーテル200を向けることができる。クランプカテーテル200を回動して及び/又は近位側又は遠位側に動かして、弁尖250の周囲にクランプ202を位置決めすることができる。例えば、後尖の中央が動揺している場合があり、弁尖の動揺部分上に、弁尖の動揺部分に隣接して且つ/又は動揺部分のいずれかの側部にクランプを送達することができる。
【0023】
図2Cを参照すると、クランプ202を弁尖250上で開放形態から閉鎖形態に移行させるように、スプレッダ204を(例えば、本明細書で考察するようなハンドルを介して)操作することができる。クランプ202がスプレッダ204に固定されているため、弁尖250上でクランプ202を再配置するために、クランプ202を弁尖250上で閉鎖形態から開放形態に移行させるようにスプレッダ204をさらに操作することができる。
【0024】
図2D図2Fを参照すると、シース216は、心臓254の筋肉252に向かって延びるように示されている。アンカカテーテル210は、当該アンカカテーテル210の遠位端に取り付けられたアンカ212を有し、シース216を通して心臓254の筋肉252に向かって延び得る。1つの実施形態では、シース216は、送達のためにアンカ212の1つ以上のアーム214(例えば、鋭尖部材)を拘束形態で拘束する。いくつかの実施形態では、アンカ212のアーム214は、遠位側に延びるように配置され、心臓の筋肉252と係合するように構成されている。アーム214がシース216の遠位端から少なくとも部分的に延出するようにアンカカテーテル210を延ばすことにより、筋肉252にアーム214を留置することができる。アーム214がシース216から延出する際、図2Dに示すように、アーム214の形状記憶により、アーム214は、拘束形態から中立形態に向かって移行する際、筋肉252を穿刺するとともに、近位側に延びるように付勢される。図2Eに示すように、アーム214が留置形態から中立形態に移行するように、(例えば、シース216を近位側に引き出してアンカカテーテル210を露出させ、且つ/又はアンカカテーテル210及びアンカ212をシース216内で遠位側に前進させて)アンカ212とシース216とを互いにさらに離れるように移動させることができる。アーム214を別の位置への再配置及び再留置のためにシース216内で再度拘束形態に移行させるように、アンカ212及びシース216を互いに向かって移動させることができる(例えば、シース216を遠位側に動かすことができ、且つ/又はアンカカテーテル210及びアンカ212を近位側に動かすことができる)。アーム214が筋肉252内に留置された状態で、シース216をアンカ212から離れるように近位側にさらに動かすことができる。筋肉252に固定された留置済みアンカ212は、筋肉252に対して、アンカ212内に延び、且つ近位側にアンカカテーテル210内に延びる人工腱索206の第2端部をさらに固定する。人工腱索206は、第1、すなわち近位端においてクランプ202に固定され、且つ第2、すなわち遠位端においてアンカ212に固定されている。
【0025】
図2Gを参照すると、弁尖250上の閉鎖形態にあるクランプ202をスプレッダ204からロック解除することにより、スプレッダ204からクランプ202を解放することができる。ロック機構(例えば、フィラメントであって、該フィラメントは、カテーテルのハンドルからカテーテルのルーメンを通り、クランプのアームに対応するアパーチャを通り、アパーチャに隣接したスプレッダを通して延び、クランプ及びスプレッダの対向するアームに対応するアパーチャを通して同様にループ状になり、カテーテルのルーメンを通してハンドルまで近位側に延び、端部を引き寄せてシステムから除去することができるようなフィラメント、又は、本明細書において図6に関して例示及び記載するようなロックピン)を取り除き、且つ/又は非動作状態にすることにより、スプレッダからクランプ202をロック解除することができる。スプレッダ204がクランプ202から離れて弁尖250から外れるように移動するように、クランプカテーテル200を遠位側に動かすことができる。スプレッダ204は、クランプ202なしに開放形態で心臓から出るように近位側に動かされ得る。またスプレッダは、引き抜かれる前にクランプ202のばね部分なしにスプレッダを概ね閉鎖形態に向かって動かすために十分に強力なばね力を有し得る。クランプ202は、弁尖250に固定されて、弁尖250に人工腱索206を固定する一方、アンカ212は、筋肉252に人工腱索を固定する。
【0026】
一般に、心臓の筋肉252と弁尖250との間の腱索の張力は、弁の機能に影響を与える。筋変位(例えば、乳頭筋)は、弁機能を誘導する索のいくつかに対する張力を増大させ得る。いくつかの索は、筋肉から弁尖に動きを伝達するための筋運動に概ね影響を受けないことがあり得、代替的に又は追加的に、弁尖位置決めに対して構造的支持を提供することができる。過度に緩い腱索は、取り付けられた弁尖を適切に支持しないか、又は取り付けられた弁尖に筋変位を適切に伝達しない場合がある。過度に張り詰めた腱索は、取り付けられた弁尖を適切に支持しないか、歪むか、断裂するか、又は取り付けられた弁尖に不適切及び/若しくは不十分な量の筋変位を伝達することがあり得る。過度に引き締められた腱索により、別の弁尖の脱出がもたらされるか、又は弁尖を望ましくなく概ね開放して保持する場合がある。別の弁治療において弁尖を過度に引き締めることにより、修復のために緊急開心術が必要となり得る。しかしながら、本明細書に記載する装置における腱索の張力は、可逆的であるため、医療従事者は、腱索における張力を調整することにより、過度に引き締められた弁尖を修復することができる。
【0027】
1つの態様によれば、開示するシステムは、これらの問題を克服するために腱索の置換及び/又はその張力の調整を可能にする。弁尖と筋肉との間(例えば、弁尖上のクランプと筋肉内のアンカとの間)の腱索における張力及び/又は長さは、弁尖を筋肉に近づけるか又は筋肉から遠ざけるように調整することができる。医療従事者は、心機能に対して天然の腱索を再現するように、本明細書における装置の張力及び/又は位置を調整することができる。
【0028】
様々な実施形態において、医療従事者は、心臓内の装置の位置の視覚化及び/又は心臓の機能(例えば、血流)の視覚化に応じて調整を行うことができる。医療従事者は、心臓内の装置及び/又は心臓の機能を、経食道心エコー法、超音波、蛍光透視法、それらの組合せ等の1つ以上を介して視覚化することができる。視覚化技法は、処置中のいくつかの時点において、処置の次のステップに進む前に1つ以上の装置及び/又は解剖学的構造の望ましい位置を確認するために使用することができる。医療従事者によって使用される特定の調整は、患者の特徴、罹患心臓状態等に基づいて変更されることが理解され得る。
【0029】
図2H及び図2Iを参照すると、機能する弁尖250を提供するために、人工腱索206における張力を調整され得る。人工腱索206は、アンカ212のロック機構218(例えば、一方向ラチェット)を介して人工腱索206を動かすことにより、選択的に引き締めることができる。人工腱索206は、人工腱索206の端部においてループ206dに結合されているアンカカテーテル210内のテザー220により、アンカ212のロック機構218を通して動かすことができる。テザー220の近位側への動きによりループ206dが引き寄せられ、人工腱索206は、アンカ212内のロック機構218によって引き締められる。アンカ212内のロック機構218から人工腱索206の少なくとも一部を解放することにより、人工腱索206の張力を選択的に緩めることができる。例えば、一方向ラチェットのローラ219を解放することにより、一方向ラチェットの挟み付けから人工腱索206を解放することによってロック機構218をロック解除することにより、ロック機構218から人工腱索206を解放することができる。ロック機構218は、解放フィラメント222の近位側への動きを介してロック解除することができ、解放フィラメント222は、送達カテーテル240から(且つ図2A図2Gのクランプカテーテル200及びシース216を通して)延び、アンカ212内のロック機構218の解放部分(例えば、一方向ラチェットのローラ219)を通してループ状になっている。図2Hは、解放フィラメント222の近位側への動きによって緩められようとしている、クランプ202とアンカ212との間に延びる第1長さを有する引き締められた人工腱索206を示す。図2Iは、第1長さよりも長い(すなわち緩い)、クランプ202とアンカ212との間に延びる第2長さを有する緩められた人工腱索206を示す。
【0030】
図2I図2Kを参照すると、アンカ212からアンカカテーテル210の係合部分210dをねじって外すことにより、アンカ212からアンカカテーテル210を取り外すことができる。アンカ212は、筋肉252に固定されているため、係合部分210dのねじ山がアンカ212内の対応するねじ山から螺脱することができるように、アンカ212に対して係合部分210dを回転させることができる。アンカ212を送達した後、送達カテーテル240内に近位側にアンカカテーテル210を動かして、テザー220が人工腱索206のループ206dに結合されたままにすることができる。クランプ202とアンカとの間の人工腱索206の長さの所望の張力が達成されると、アンカ212のロック機構の解放部分から、解放部分を妨害することなく(例えば、人工腱索206をそれ以上緩めることなく)解放フィラメント222が引き抜かれるように、解放フィラメント222の端部を近位側に引き抜くことができる。人工腱索206の長さの所望の張力が達成されると、人工腱索206を妨害することなく(例えば、人工腱索206をそれ以上引き締めることなく)ループ206dからテザー220が引き抜かれるように、テザー220の端部を近位側に引き抜くことができる。
【0031】
図2Lを参照すると、カテーテル及び他の送達装置は、心臓254から取り除かれている。図2Lの実施形態において、人工腱索206の構成は、限定はされないが、配置及び/又は張力を含み、人工腱索206は、弁尖250、251が心機能中に適切に接合するような動作可能形態にするように調整される。人工腱索206は、クランプ202によって弁尖250に固定されて示されており、人工腱索206は、アンカ212によって筋肉252に固定されて示されている。人工腱索206は、正常な心機能において弁尖250及び筋肉252に関連して動作することができるように所望の量の張力を有する。
【0032】
多くの場合、心臓の罹患状態に応じて、1つ以上の腱索を配置することが望ましい場合がある。本明細書に開示するシステムにより、心臓から送達カテーテルを取り除く必要なしに複数の腱索を配置することができる。
【0033】
図2M及び図2Nを参照すると、心臓254内に第2人工腱索236を送達することができる。第2人工腱索236は、第1端部に第2クランプ230に、第2端部に第2アンカ232を取り付けることができる。第2クランプ230及び第2アンカ232は、図2A図2Lを参照して記載したものと同じ方法を使用することにより、それぞれクランプカテーテル200の別個の又は再装填されたスプレッダ204及びアンカカテーテル210によって心臓254に送達することができる。第2人工腱索236は、第2クランプ230により、弁の同じ弁尖250、弁の別の弁尖251又は別の弁の別の弁尖に固定することができる。第2人工腱索236は、第2アンカ232により、心臓254の同じ筋肉252又は異なる筋肉に固定することができる。
【0034】
図3を参照すると、クランプカテーテル310は、それぞれ第1クランプ302及び第2クランプ330を収容する、クランプカテーテルの遠位端に配置された第1スプレッダ304及び第2スプレッダ334を有することができる。第1クランプ302は、第1人工腱索306に結合することができ、第2クランプ330は、第2人工腱索336に結合することができる。代替的に、クランプ302、330の一方又は両方は、人工腱索306、336を含まない場合があり、処置中、クランプカテーテル310を一時的に固定させ、且つ/又は弁尖350、351の一方又は両方を方向付けるために使用することができる。例えば、クランプカテーテル310は、人工腱索306、336を送達するためにクランプカテーテル310及び/又は弁尖350、351を方向付けるように1つ以上の弁尖350、351に一時的に固定することができる。
【0035】
図4A図4Cを参照すると、互いに結合されている第1フィラメント408及び第2フィラメント409から構成されている第1人工腱索406を心臓454内に送達することができる。第2フィラメントは、第1クランプ402及び第2クランプ430の各端部に結合されている。第1フィラメント408は、1つの端部においてアンカ412に結合され、第1フィラメントは、第2端部において第2フィラメント409に結合され、そのような第2端部は、第2フィラメント409の長さに沿って自由に摺動することができる。第1フィラメント408及び第2フィラメント409が互いに結合された状態で、送達カテーテル440内に人工腱索406を事前装填することができる。スプレッダ404がクランプ402、430を送達することができ、アンカカテーテル410がアンカ412を送達することができる。第1フィラメント408は、第2フィラメント409に沿って第2フィラメント409の途中部分まで自由に摺動することができるため、クランプ402、430の各々を概ね等しい力で引き寄せて、クランプ402、430に概ね等しく第1フィラメント408からの力を伝達することができる。医療従事者は、適切な心機能のために、第1フィラメント408及び第2フィラメント409の長さ及び張力を選択的に調整することができる。医療従事者は、適切な心機能のために、弁尖450に沿ってクランプ402、430間の距離をさらに調整することができる。同じ弁尖450、異なる弁尖、同じ筋肉452又は異なる筋肉に第2人工腱索407も同様に送達することができる。
【0036】
図5A及び図5Bを参照すると、第1人工腱索506及び第2人工腱索507にクランプ502及び関連するアンカ512を結合することができる。こうしたシステムは、人工腱索506、507の両方がクランプ502及びアンカ512に事前結合された状態で送達することができる。アンカ512のロック機構を操作する従事者により、各人工腱索506、507の張力を独立して且つ選択的に調整することができる。第2人工腱索507は、筋肉552から弁尖550への力の伝達を補完及び強化し、且つ/又は送達された装置が故障した場合にさらなる支持を追加することができる。
【0037】
図6を参照すると、カテーテル634上に配置されているスプレッダ620と一緒のクランプ600は、本明細書に記載するシステム実施形態で使用され得る。アーム602及びばね部分604を備えるクランプ600は、開放形態で示されている。ばね部分604は、アーム602を閉鎖形態に付勢する。スプレッダ620は、クランプ600に解放可能に結合することができる。スプレッダ620は、クランプ600を閉鎖形態と開放形態との間で移行させることができる。スプレッダ620は、ベース622を含み、ベース622から第1ピン624が延びる。レバー626は、第1ピン624を中心に回転可能に配置することができる。ベース622は、第1チャネル641を含み、レバー626は、第2チャネル642を含み、第1チャネル641及び第2チャネル642は、それぞれクランプ600のアーム602を受け入れるように構成されている。各アーム602の端部は、アパーチャ608を含む。各アパーチャ608は、概ねアーム602の各々に沿って延びる中心軸を有し、2つのロックピン610の一方を受け入れるように構成されている。一方のロックピン610は、第1チャネル641を通してアーム602のアパーチャ608内に延び、他方のロックピン610は、第2チャネル642を通して、対向するアーム602のアパーチャ608内に延びる。ロックピン610は、アーム602をベース622及びレバー626に固定して、クランプ600がスプレッダ620から解放できなくなるように、スプレッダ620がアーム602を開放形態と閉鎖形態との間で操作することを可能にする。アーム602は、チャネル641、642内で固定されるため、レバー626の移動により閉鎖形態と開放形態との間で移行することができる。レバー626は、レバー626のスロット632に結合することができる第1フィラメント630の動きによって、第1ピン624を中心に移動することができる。レバー626は、第1ピン624を中心に回動する際、第2チャネル642内にあるアーム602も移動させる一方、対向するアーム602は、ベース622の第1チャネル641内に固定されている。いくつかの実施形態では、ピン610は、アパーチャ608内に延びつつ、第1チャネル641及び第2チャネル642ではなくベース622及びレバー626の各々の第3アパーチャ及び第4アパーチャを通して延びることができる。ロックピン610の各端部に第2フィラメント612を結合して、第2フィラメント612を把持することができるようにすることができ、ロックピン610がアパーチャ608及びチャネル641、642から取り除かれるように第2フィラメント612を引っ張り、それによりベース622及びレバー626からアーム602を解放することができる。図6は、カテーテル634の遠位端に接着されたスプレッダ620のベース622を示す。第1フィラメント630は、医療従事者によって操作されるようにカテーテル634内に近位側に延びる。ベース622は、カテーテル634に結合されているため、クランプ600を送達するために患者内の標的位置までカテーテル634を挿入することができる。また、ベース622は、カテーテル634に固定されているため、第1フィラメント630が、アーム602を収容しているレバー626を操作する際、レバー626は、ばね部分604の付勢に抗して作用し、レバー626内のアーム602をベース622内の固定アーム602から離れるように移動させることにより、クランプ600を閉鎖形態から開放形態に移動させる。
【0038】
さらに図6を参照すると、本発明による方法の一実施形態は、カテーテル634を弁に向かって(例えば、弁を通して)挿入することを含み得る。いくつかの実施形態では、カテーテル634は、カテーテル634の遠位端に配置されたスプレッダ620を含むことができ、スプレッダ620は、患者及び/又は作業チャネルを通して進むために、閉鎖形態におけるクランプ600に可逆的に結合することができる。カテーテル634が弁の標的側の近くになると、レバー626に結合された第1フィラメント630を近位側に引っ張り、第1フィラメント630に対する張力を保持することにより、クランプ600を開放形態に移行させることができる。レバー626は、第1ピン624を中心に回転し、ベース622内の対向するアーム602から離れるようにレバー626内のアーム602を移動させる。クランプ600が開放形態にある状態で、カテーテル634は、クランプを弁の弁尖に近接する(例えば、動揺弁尖の周囲の)位置まで移動させて、アーム602が弁尖のいずれかの側にあるようにすることができる(例えば、図2C及び上記考察を参照されたい)。クランプ600が弁尖の周囲の適所にある状態で、第1フィラメント630に対する張力を解放して、付勢された、クランプ600のばね部分604を、クランプ600を弁尖の周囲で閉鎖形態に移行させることができる。医療従事者は、任意選択的に、必要に応じてクランプ600を再配置するように第1フィラメント630を再度近位側に引き寄せることにより、スプレッダ620及びクランプ600を再度開放することができる。例えば、偶発的に解放された場合、クランプ600を留置した後により適切な位置が分かった場合、又はクランプ600に取り付けられた人工腱索における張力を構成するために、クランプ600を再配置することが望ましいことがあり得る。クランプ600が適所になると、ロックピン610に取り付けられた第2フィラメント612を(例えば、把持具、第3フィラメント等により)引っ張って、アーム602のアパーチャ608からピン610が取り除かれるようにすることができる。ピン610が取り除かれると、クランプは、スプレッダ620に固定されなくなり、スプレッダ620は、クランプ600を解放する。クランプ600を弁尖上に送達されたままにすることができ、患者内からカテーテル634及びスプレッダ620を引き抜くことができる。さらに又は代替的に、第4フィラメント(例えば、人工腱索)とともにクランプを送達することができ、第4フィラメントは、クランプ600(例えば、ばね部分604)から、(例えば、人工腱索を弁尖及び心室又は乳頭筋に固定する)医療処置において使用される別の装置(例えば、アンカ)まで延びることができる。後続する弁修復処置は、経カテーテル弁置換を含むことができる一方、代替的な弁修復処置は、例えば、開心弁置換を介してのみさらに修復することができる。
【0039】
様々な実施形態において、1つ以上のカテーテル、シース及び/又はフィラメントを、患者の身体を通して且つ/又は互いを通して動かすことができる。本システムのこれらの部分の1つ以上をハンドルに接続することができる。医療従事者は、これらの部分の1つ以上をハンドルに対して近位側及び/又は遠位側に動かすことができる。ハンドルは、これらの部分の1つ以上に、これらの部分を動かす1つ以上のプーリによって接続され得る。医療専門家は、1つ以上の部分を、他の部分の1つ以上が近位側又は遠位側に動く一方、他の部分に対して固定されるように保持及び/又はロックすることができる。本明細書における装置は、外側送達シースを使用して、大腿静脈及び中隔壁を通して操縦及び送達することができ、外側送達シースは、例えば、約7.9~約9.9mm(約24~約30フレンチ)であり得、且つ例えば僧帽弁の弁輪を縮小させる複数の治療中に適所にあり続け、その後、腱索を送達することができる。
【0040】
本発明の様々な実施形態において、クランプの1つ以上のアームは、閉鎖形態と開放形態との間でクランプを移行させることができる装置とともに使用されるロック機構を有することができる。ロック機構は、アパーチャ、溝のための縁部、タブ等を含むことができる。これらのロック機構にロックピン、溝、クランプ等の追加の装置が係合することができる。追加の装置は、ロック機構と係合して、クランプを閉鎖形態と開放形態との間で移行させることができ、追加の装置は、ロック機構を係合解除して、クランプを1つ以上の装置から患者内に送達することができる。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下記載する。
[項目1]
患者の心臓内に腱索を送達するためのシステムであって、
該システムは、送達カテーテルを備え、
該システムは、前記送達カテーテルを通して動くように構成されたクランプカテーテルを備え、
該システムは、前記クランプカテーテル上に配置された第1スプレッダを備え、該第1スプレッダは、第1スプレッダベースと前記第1スプレッダベースに揺動可能に結合されるレバーとを有し、
該システムは、閉鎖形態で前記第1スプレッダ内に少なくとも部分的に収容される第1クランプを備え、該第1クランプは前記腱索の第1端部に取り付けられており、且つ、該第1クランプは、前記第1スプレッダベースに結合される第1クランプアームと前記第1スプレッダの前記レバーに結合される第2クランプアームとを有し、前記第1クランプアームと前記第2クランプアームとは、前記第1スプレッダによって、前記第1クランプアームと前記第2クランプアームが互いに向き合い、且つ、心臓弁の弁尖と固定係合するように構成される前記閉鎖形態と、前記第1クランプアームと前記第2クランプアームが互いに離れる方に向く開放形態との間で移動可能であり、
該システムは、アンカカテーテルを備え、該アンカカテーテルは、前記送達カテーテルを通して動くように構成され、
該システムは、前記アンカカテーテルによって送達可能であり、且つ、前記腱索の第2端部に取り付けられたアンカを備え、
該システムは、前記アンカカテーテル及び前記アンカに被さり、前記アンカを拘束するように構成されたシースを備え、
該システムは、フィラメントを備え、該フィラメントは、前記第1スプレッダの前記レバーから延び、且つ、前記開放形態に前記第1クランプアームを動かすために前記レバーと前記第2クランプアームとを動かすように構成される、
システム。
[項目2]
前記腱索の前記第2端部は、前記アンカのロック機構を通して延びるとともに、前記腱索の前記第2端部は、前記アンカカテーテルを通して延びるテザーに結合され、前記テザーは、前記テザーの動きによって前記腱索における張力を増大させるように構成される、項目1に記載のシステム。
[項目3]
前記ロック機構の解放ローラを通して延びる解放フィラメントをさらに備え、前記解放フィラメントは、前記解放フィラメントの動きによって前記ロック機構から前記腱索をロック解除するように構成される、項目2に記載のシステム。
[項目4]
前記第1クランプは、前記第1スプレッダに可逆的にロックされる、項目1~3のいずれか一項に記載のシステム。
[項目5]
クランプフィラメントによって前記第1クランプに取り付けられた第2クランプをさらに備え、前記クランプフィラメントは、前記腱索の前記第1端部に摺動可能に結合される、項目1~4のいずれか一項に記載のシステム。
[項目6]
前記アンカカテーテル、及びシースは、前記クランプカテーテルを通して延びる、項目1~5のいずれか一項に記載のシステム。
[項目7]
前記第1クランプは、
第1端部における複数のクランプアームであって、前記複数のクランプアームが互いに向き合う閉鎖形態と、前記複数のクランプアームが互いに離れる方に向く開放形態とを有する複数のクランプアームと、
第2端部において前記複数のクランプアームに結合され、前記複数のクランプアームを前記閉鎖形態に付勢するように構成されたばね部分と
をさらに備え、前記第1クランプの前記複数のクランプアームは、心臓弁の弁尖と固定係合するように構成される、項目1~6のいずれか一項に記載のシステム。
[項目8]
前記第1スプレッダベースは、前記クランプカテーテル上に配置され、
ピンが前記第1スプレッダベースから延び、
前記第1スプレッダの前記レバーが前記ピンを中心に回転可能に配置され、
第1チャネルが前記第1クランプアームの第1アパーチャと概ね平行に前記第1スプレッダベースを通して延び、且つ、前記第1クランプアームを受け入れるように構成され、
第2チャネルが前記第2クランプアームの第2アパーチャと概ね平行に前記第1スプレッダの前記レバーを通して延び、且つ、前記第2クランプアームを受け入れるように構成される、項目1から7のいずれか一項に記載のシステム。
[項目9]
前記第1アパーチャ及び前記第1チャネル内に配置された第1ピンと、前記第2アパーチャ及び前記第2チャネル内に配置された第2ピンとをさらに備える、項目8に記載のシステム。
[項目10]
前記アンカは、形状記憶アームを有し、該形状記憶アームは、拘束形態から中立形態に向かって移行するとき、筋肉を穿刺するとともに、近位側に延びるように付勢するように構成される、項目1~9のいずれか一項に記載のシステム。
[項目11]
前記アンカカテーテルは前記シース内に配置され、前記シースは前記クランプカテーテル内に配置され、及び前記クランプカテーテルは前記送達カテーテル内に配置される、項目1~10のいずれか一項に記載のシステム。
[項目12]
前記送達カテーテル、前記クランプカテーテル、前記アンカカテーテル、及び前記シースに結合され、且つ医療従事者が前記送達カテーテル、前記クランプカテーテル、前記アンカカテーテル、及び前記シースを選択的に且つ独立して動かすことを可能にするように構成されたハンドルをさらに備える、項目1~11のいずれか一項に記載のシステム。
[項目13]
前記クランプカテーテルに配置された第2スプレッダをさらに備える、項目1~12のいずれか一項に記載のシステム。
[項目14]
前記アンカは、ねじ山を螺合させることによって前記アンカカテーテルに取り付けられる、項目1~13のいずれか一項に記載のシステム。
[項目15]
前記アンカはアンカアームを有し、且つ、前記シースは、前記アンカアームが遠位側に延びるように前記アンカアームを拘束するように構成される、項目1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【0041】
本明細書に開示され、且つ請求項に記載される装置及び/又は方法のすべては、本発明を考慮して過度の実験なしに作成及び実行することができる。本発明の装置及び方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、当業者であれば、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、装置及び/又は方法に対して且つ本明細書に記載する方法のステップ又は一続きのステップにおいて変形形態を適用できることが明らかであり得る。当業者に対して明らかなこうした同様の置換形態及び変更形態のすべては、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲及び概念内にあると考えられる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図2L
図2M
図2N
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6