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特開2023-126637相溶性熱可塑性フィルム上の材料押出3-Dプリント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126637
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】相溶性熱可塑性フィルム上の材料押出3-Dプリント
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20230831BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230831BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230831BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230831BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20230831BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20230831BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20230831BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/00
B29C64/245
B29C64/336
B29C64/314
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023118596
(22)【出願日】2023-07-20
(62)【分割の表示】P 2020517498の分割
【原出願日】2018-09-28
(31)【優先権主張番号】62/565,500
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・シン-レン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】カミーユ・カドラウィ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイ・オーバート
(57)【要約】
【課題】本発明の相溶性、混和性のあるフィルムは、プリントされた部品への優れた接着性を提供する。
【解決手段】以下を含むポリマー複合物品:a)3Dプリントプロセスによって作製された、結晶性又は半結晶性ポリマーを含むポリマー物品、b)前記物品と3-Dプリンターのベースプレートとの間で、前記ポリマー物品に接着されたポリマーフィルムであって、前記フィルムは、前記物品と混和性、相溶性、又は半相溶性であり、前記フィルムは、プリント温度より50℃低い温度未満、好ましくは80℃低い温度未満、より好ましくは100℃低い温度未満のTgを有するポリマーフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むポリマー複合物品:
a)3Dプリントプロセスによって作製された、結晶性又は半結晶性ポリマーを含むポリマー物品、
b)前記物品と3-Dプリンターのベースプレートとの間で、前記ポリマー物品に接着されたポリマーフィルムであって、前記フィルムは、前記物品と混和性、相溶性、又は半相溶性であり、前記フィルムは、プリント温度より50℃低い温度未満、好ましくは80℃低い温度未満、より好ましくは100℃低い温度未満のTgを有するポリマーフィルム。
【請求項2】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーが、ポリフッ化ビニリデンホモポリマー及びコポリマー、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー複合物品。
【請求項3】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーを含む前記物品が、最大で50パーセント、好ましくは最大で40パーセント、より好ましくは最大で30パーセント、最も好ましくは最大で25パーセント未満の重量の混和性、相溶性又は半相溶性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のポリマー物品。
【請求項4】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーを含む前記物品が、最大で50パーセント、好ましくは最大で40パーセント、より好ましくは最大で30パーセント、最も好ましくは最大で25パーセント未満の重量の一つ以上のフィラーをさらに含む、請求項1に記載のポリマー物品。
【請求項5】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーがポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーであり、前記フィルムが、ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー又はコポリマー、ポリカプロラクトン、及びポリ乳酸フィルムからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー物品。
【請求項6】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーがポリアミドであり、前記フィルムが、アモルファスポリアミド又はコポリアミド、低融点ブロックポリエーテルアミド、及びポリアミドグラフト化ポリオレフィンからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー物品。
【請求項7】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーがポリプロピレンであり、前記フィルムが、ポリエチレン、及び無水物グラフト化ポリオレフィンからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー物品。
【請求項8】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーが半結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であり、前記フィルムが、アモルファスPEEK、アモルファスPEKK、及びポリエーテルイミドからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー物品。
【請求項9】
前記フィルムが、前記3Dプリントされたポリマー物品と混和性、相溶性又は半相溶性でないポリマー相を最大40重量パーセント、好ましくは最大30重量パーセント、より好ましくは最大20重量パーセント含む、請求項1に記載のポリマー物品。
【請求項10】
3Dプリントにより作製された物品であって、前記物品は、
a)結晶性又は半結晶性の物品、
b)前記物品と3Dプリンターのガラスのベースプレートとの間で、前記物品に接着されたポリマーフィルムであって、前記フィルムは、前記物品の熱可塑性物質のTg又はTmよりも少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、好ましくは少なくとも30℃、さらには50℃より大きい差の低いTg又はTmを有する、
物品。
【請求項11】
3Dプリントされた物品を成形するためのプロセスであって、
a)ガラスのビルドプレートとプリントされる物品との間にポリマーフィルム又はシートを配置する工程であって、前記ポリマーフィルムは溶融状態で前記物品と相溶性、混和性又は半混和性であり、前記フィルム又はシートは、プリント温度より50℃低い温度未満、好ましくは80℃低い温度未満、より好ましくは100℃低い温度未満のTgを有する、工程、
b)前記フィルムを貼り付けてから、必要に応じて前記ビルドプレートの温度を上げ、又は下げる工程、
c)前記ポリマーフィルム又はシート上に物品を3Dプリントする工程、
を含むプロセス。
【請求項12】
前記ポリマーフィルム及び前記物品が溶着され、界面に絡み合ったポリマー鎖を有する、請求項11に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を3-Dプリントするためのベースシート、フィルム又は層としての相溶性熱可塑性材料(フィルム、シート、又は3Dプリントされた材料)の使用に関する。ベースフィルムの使用は、より大きな物品をプリントし、フィルムに直接プリントすることにより反りを低減する手段を提供する。プリントされた物品は、従来のプリンター表面(ガラス、金属、糊、又は再利用可能なフィルム)よりもフィルムによく接着する。プリントされた物品とフィルムは、溶融物中での相溶性、混和性、又は半混和性により、鎖の絡み合いを形成することで互いに溶着するためである。
【背景技術】
【0002】
3Dプリントされた部品(材料押出付加製造)とプリントすべき部品のためのプリンターのビルドプレートの間の接着力が強いことが必要である。材料を押し出すときのノズルの位置はプリント前にソフトウェアによって決定されるため、プリント中にプリントされた部品が移動したり反ったりすると、後続の層が正しくプリントされず、成形不良が発生する。
【0003】
通常、3-Dプリントでは、物品はガラス又は金属上に直接プリントされる。テープとスティック糊を使用して接着力を高めることができるが、これでは接着力の改善はわずかである。ガラス又は金属への接着が不十分な状況では、ビルドプレート上にポリエーテルイミド(PEI)などの接着促進フィルムを配置し、それらのフィルムの上にプリントすることで、表面をさらに変更できる。これらのフィルムは、ビルドプレートへのプリント材料の接着性を高め、プリント後に物品を離すことができる。フィルムは再利用されることになる。プリント材料と接着促進フィルムの間に永久的な結合は形成されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3Dプリントの1つの問題は、優れた機械的、化学的、又は温度安定性を備えた特定の材料が収縮したり又は反ったりする傾向があり、ガラスや金属のベース材料、又はPEIやその他の典型的なフィルムへの接着性が低いことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、本発明の相溶性、混和性のあるフィルムは、プリントされた部品への優れた接着性を提供する。フィルムは破棄されるか、物品の永久的な部分になる。特定の理論に拘束されないが、フィルムと物品のポリマーは、溶融物中で混和性、相溶性、又は半混和性であり、鎖の絡み合いを形成し、2つのポリマーの溶着につながり、物品がベースから引き離されるのを防ぎ、優れた接着性と反りの低減につながると考えられる。これは、アモルファスポリマー製品よりも3Dプリントされた場合に反りが大きくなる傾向のある、結晶性及び半結晶性ポリマーにとって特に重要である。
【0006】
本発明は、ポリマーフィルムに溶接された3Dプリントされた結晶性又は半結晶性の物品に関し、前記ポリマーフィルムは、プリント温度より50℃低い温度未満、好ましくは80℃低い温度未満、より好ましくは100℃低い温度未満のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0007】
あるいは、前記物品に接着された前記ポリマーフィルムは、前記物品の熱可塑性物質のTg又は融解温度(Tm)よりも少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、好ましくは少なくとも30℃、さらには50℃より大きい差の低いTg又はTmを有する。
【0008】
本発明はさらに、ガラスビルドプレートとプリントされる物品との間にポリマーシートを配置する工程を含む、3Dプリントされた物品を成形するプロセスに関し、前記ポリマーフィルムは、溶融状態で前記物品と相溶性、混和性又は半混和性である。
【0009】
この明細書内では、実施形態は、明快かつ簡潔な明細書を書くことができるように記載されているが、実施形態は、本発明から離れることなく様々に組み合わせたり、分離したりできることが意図され、理解される。例えば、本明細書に記載されているすべての好ましい特徴は、本明細書に記載されている本発明のすべての態様に適用可能であることが理解される。
【0010】
本発明の各側面は以下を含む:
(1)
以下を含む、3Dプリントにより作製された物品:
a)結晶性又は半結晶性ポリマー物品、
b)前記物品と3-Dプリンターのベースプレートとの間で、前記物品に接着されたポリマーフィルムであって、前記フィルムは、プリント温度より50℃低い温度未満、好ましくは80℃低い温度未満、より好ましくは100℃低い温度未満のTgを有するポリマーフィルム。
(2)
前記結晶性又は半結晶性ポリマーが、ポリフッ化ビニリデンホモポリマー及びコポリマー、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンからなる群から選択される、側面(1)の物品。
(3)
前記結晶性又は半結晶性物品がポリフッ化ビニリデンのホモポリマー又はコポリマーであり、前記フィルムが、ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー又はコポリマー、ポリカプロラクトン、及びポリ乳酸フィルムからなる群から選択される、側面(1)又は(2)の物品。
(4)
前記結晶性又は半結晶性ポリマー物品がポリアミドであり、前記フィルムが、アモルファスポリアミド又はコポリアミド、低融点ブロックポリエーテルアミド、及びポリアミドグラフト化ポリオレフィンからなる群から選択される、側面(1)~(3)のいずれかの物品。
(5)
前記結晶性又は半結晶性ポリマー物品がポリプロピレンであり、前記フィルムが、ポリエチレン、及び無水物グラフト化ポリオレフィンからなる群から選択される、側面(1)~(4)のいずれかの物品。
(6)
前記結晶性又は半結晶性ポリマー物品が半結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であり、前記フィルムが、アモルファスPEEK、アモルファスPEKK、及びポリエーテルイミドからなる群から選択される、側面(1)~(5)のいずれかの物品。
(7)
3Dプリントにより作製された物品であって、前記物品は、以下を含む:
a)結晶性又は半結晶性のポリマー物品、
b)前記物品と3-Dプリンターのガラスのベースプレートとの間で、前記物品に接着されたポリマーフィルムであって、前記フィルムは、前記物品の熱可塑性物質のTg又はTmよりも少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、好ましくは少なくとも30℃、さらには50℃より大きい差の低いTg又はTmを有する、
物品。
(8)
3Dプリントされた物品を成形するためのプロセスであって、
a)ガラスのビルドプレートとプリントされる物品との間にポリマーフィルム又はシートを配置する工程であって、前記ポリマーフィルムは溶融状態で前記物品と相溶性、混和性又は半混和性であり、前記フィルム又はシートは、プリント温度より50℃低い温度未満、好ましくは80℃低い温度未満、より好ましくは100℃低い温度未満のTgを有する、工程、
b)前記フィルムを貼り付けてから、必要に応じて前記ビルドプレートの温度を上げ、又は下げる工程、
c)前記ポリマーフィルム又はシート上に物品を3Dプリントする工程、
を含むプロセス。
(9)
前記ポリマーフィルム及び前記3Dプリントされたポリマー物品が溶着され、界面に絡み合ったポリマー鎖を有する側面(8)のプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0011】
フィルム
本発明のフィルムは、プリント物品を成形するために使用されるポリマーフィラメントと相溶性、混和性又は半混和性のいずれかを有する。混和性、半混和性、及び相溶性とは、ポリマーが、個別のバルク相に分離することなく単一の均質混合物が生成されるような比率でブレンドできることを意味する。
【0012】
3Dプリントされた物品は、フィルムのポリマーと鎖の絡み合いを形成し、可能な限り最高の接着力を提供するため、従来のプリンターの表面やベースプレート(ガラス、金属、糊、及びその他のフィルム)よりもフィルムによく接着する。フィルムは、物品のポリマーとの相溶性/混和性、Tg、及びモジュラスで選択され、各プリント後に簡単に貼付け及び廃棄できる。本フィルムは物品に非常によく接着するため、再利用されない。フィルムの特性により、いずれの場合にも接着力と、反りの減少が決定される。
【0013】
フィルムの選択は、3D素材の押出付加製造プロセスで使用されるポリマーの選択に依存する。フィルムは、溶融状態で相溶性、混和性、又は半混和性のために選択される。好ましくは、フィルムは、アモルファス又は低結晶性材料から製造され、プリント温度より50℃、好ましくは80℃、より好ましくは100℃低い温度未満のTgを有する。たとえば、プリント温度が260℃の場合、フィルムのTgは210℃未満、好ましくは180℃未満、最も好ましくは130℃未満である。あるいは、フィルムが半結晶性材料から選択される場合、フィルムは、プリント温度より50℃、好ましくは80℃低い温度未満のTmを有する。
【0014】
別の実施形態では、3Dプリントされた物品のポリマーとポリマーフィルムとの比較において、フィルムのTg又はTmは、前記物品の熱可塑性物質のTg又はTmよりも少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、好ましくは少なくとも30℃、さらには50℃より大きい差で低い。「Tg」はアモルファスポリマーに使用され、「Tm」は結晶性又は半結晶性ポリマーに使用される。
【0015】
「フィルム」という用語は、30μm~10cm、好ましくは1~5cmの厚さを含む、シート、ラフト及びフィルムを含む。厚いフィルムは反りに対する保護を強化する。
【0016】
本発明において有用なフィルムの例には、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、(メタ)アクリレート、ポリアミド、ポリイミド、アモルファスポリアミド、ポリアミドセグメントでグラフトされた官能性ポリオレフィン、及び無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンでドープされたポリオレフィンが含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
一実施形態では、アクリルフィルムは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)物品と組み合わせて使用される。アクリルフィルムは、アクリルフィルムのTg付近で、加熱されたガラスプレートによく接着する。ポリメチルメタクリレートのTgよりも高い又は低いTgを有するアクリルコポリマーを使用することができる。より低いTgのフィルムはより早く溶け、より早い溶着とより良い接着を提供するが、より低いTgのアクリレートは反り低減の利点を失う。PVDFホモポリマー及びコポリマーは、アクリルと溶融混和性であることが知られている。PVDF層を260℃で加熱されたアクリルフィルムにプリントすると、高温の界面がPVDFをアクリルフィルムに効果的に溶着させ、PVDFとアクリルポリマーチェーンの絡み合いを可能にし、フィルムと物品の間の高い接着力をもたらす。アクリルフィルムの使用は、内部の応力、収縮及び反りを防止しないが、ビルドプレートからの分離を制限する。アクリルフィルムは実質的に、形成する3D部品の下で大きなラフトとして機能する。ラフトとブリムベース材料は、ガラスベースに直接3Dプリントされ、実質的に、製品をプリントできる現場の厚いフィルム層を提供する。これらは一般に、プリントされる製品と同じ材料で作られる。ラフト及びブリムのプロセスは、プリントされたベースが物品とは異なる材料である場合、又は物品と同じ材料のラフト又はブリムのプロセスが本発明のフィルム上で使用される場合、本発明を実施する手段として予想される。ラフト又はブリムのプロセスに対する単純なフィルムの利点は、プロセスに追加の時間をほとんど必要としないことである。
【0018】
一実施形態では、本発明のフィルムは、3Dプリントされたポリマー物品のポリマーと混和性、相溶性又は半相溶性ではない領域又は相を含む。このような混合フィルムは、3Dプリントされた物品への必要な接着を提供する一方、非混和性、非相溶性又は非半相溶性領域がプリントされた物品からフィルムを除去するための手段を提供する。相溶性のある領域と相溶性のない領域の両方を備えたこのようなフィルムは、たとえば、多くのダイを使用した共押出しによって、混和性、相溶性、又は半相溶性のあるポリマーと、混和性、相溶性、又は半相溶性のないポリマーと交互で製造することができ、結果として一つのフィルム内に各ポリマーのストリップができる。相溶性及び非相溶性領域の両方を有するフィルムを製造する別の例の手段は、非相溶性成分のブレンドの溶融プロセスと、それに続く相の熱力学的分離を可能にする徐冷であり得る。
【0019】
物品(ポリマーフィラメント)
ガラスのビルドプレートへの接着不良による反りを含む、接着不良の問題は、結晶性及び半結晶性のポリマーフィラメントから成形された製品の特有の問題である。結晶性及び半結晶性のポリマーフィラメントは、たとえば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレンを含むが、これらに限定されない。他の高反り材料には、ABS及び他のスチレンブロックコポリマーが含まれる。これらの材料の顕著な反りと貧弱なベースプレートの接着により、3Dプリント法によってこれらの材料から成形された物品のサイズが制限されてきた。
【0020】
本発明のフィルムとの半結晶性又は結晶性物品の特定の組み合わせには、以下が含まれるが、これらに限定されない。
・ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー又はコポリマーフィルム上のポリフッ化ビニリデン物品。
・ポリカプロラクトンフィルム上のポリフッ化ビニリデン物品。
・ポリ乳酸フィルムのポリフッ化ビニリデン物品。
・アモルファスポリアミド又はコポリアミド(例えばArkema Inc.社のRILSAN(登録商標)クリアー樹脂)上のPA11やPA12などのポリアミド物品。
・低融点ブロックポリエーテルアミド(例えばArkema Inc.社のPEBAX(登録商標)樹脂など)上のポリアミド物品。
・ポリアミドグラフト化ポリオレフィン(例えばArkema Inc.社のAPOLHYA(登録商標))上のポリアミド物品。
・ポリエチレン上のポリプロピレン。
・無水物グラフト化ポリオレフィン上のポリプロピレン。
・アモルファスポリエーテルケトンケトン又はポリエーテルエーテルケトン上の半結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)物品。例えばArkema Inc.社のアモルファス挙動のPEKK600シリーズ樹脂上の物品として、Arkema Inc.社のPEKK7000シリーズ樹脂である。PEKK6000樹脂のTgは約160℃で、PEKK7000のプリント温度は約350℃である。
・PEIフィルム(Tgが約210℃のポリエーテルイミド)付きのPEKK又はPEEK物品。
【0021】
結晶性又は半結晶性ポリマー組成物は、さらに任意的に、他の混和性、相溶性又は半相溶性ポリマーを、50重量パーセント未満、好ましくは40重量パーセント未満、より好ましくは30重量パーセント未満、さらには20重量パーセント未満又は10重量パーセント未満で含むことができ、及び/又は、50重量パーセント未満、好ましくは40重量パーセント未満、より好ましくは30重量パーセント未満、さらには20重量パーセント未満又は10重量パーセント未満のフィラー材料を含むことができる。重量パーセントは、結晶性又は半結晶性ポリマーの総重量に基づく。
【0022】
一実施形態では、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ホモポリマー又はコポリマーを有する、少なくとも50重量パーセント、より好ましくは少なくとも60重量パーセント、より好ましくは少なくとも70重量パーセントのPVDFホモポリマー又はコポリマーである。このアロイのPMMAコポリマーは、少なくとも50重量パーセント、より好ましくは少なくとも75重量パーセントのメチルメタクリレートモノマー単位を含む。PVDFとPMMAの溶融混和性ブレンドは、反りの低減と制御、所望の場合の光透過性の改善、収縮の低減、ベースの接着性の改善、層間の接着性の改善、z方向の機械的特性の改善など、驚くべき多くの利点を提供する。さらに、全体的なプリント品質が驚くほど向上する。低粘度及び超低粘度の相溶性又は混和性の非フルオロポリマーを使用して、プリント適性を向上させることもできる。
【0023】
有用な相溶性非フルオロポリマーは、少なくとも1つの混和性ブロックを含むブロックコポリマーであり得る。非混和性のブロックは、強化された耐衝撃性、延性、光学特性、接着特性などの他の特性を付与することが可能である。どちらのブロックにも官能基を含めることができる。一実施形態では、ポリ(メタ)アクリレートホモ及びコポリマーブロックを、ブロックコポリマー中の相溶性ブロックとして使用することができる。
【0024】
フルオロポリマーと他のフルオロポリマー又は非フルオロポリマーとのブレンドは、異なるポリマーを乾燥成分として、又はラテックスの形で、又は溶融状態で物理的にブレンドすることを含む任意の実際的な手段によって達成できる。1つの実施形態において、2つ以上のポリマーのフィラメントは、コア-シース、海島、又は他の物理的構造において共押出される。
【0025】
一実施形態では、フィラーは、炭素繊維、粉砕炭素繊維、炭素粉末、カーボンナノチューブ、ガラスビーズ、ガラス繊維、ナノシリカ、アラミド繊維、ポリアリールエーテルケトン粒子又は繊維、BaSO4、タルク、CaCO3、グラフェン、ナノファイバー、耐衝撃性改良剤、中空球、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
プロセス
所望の組成、Tg、モジュラス、厚さ及び他の要素を含む本発明のフィルムは、所望のサイズにカットされ、加熱されたビルドプレート上に(接着剤あり又はなしで)配置され、ビルドプレートに対して均一に軽い圧力で押し付けされ、選択されフィラメントがフィルム上にプリントされる。いったん冷却されると、フィルムは物品から取り除くことができ、通常は破棄される。
【0027】
アクリルフィルムを使用する一般的なプロセスは次のとおりである。
・ガラスのビルドプレートを85C~95C(フィルムのTg)の範囲に加熱する。
・保護手袋を着用する。
・加熱されたガラスのビルドプレートにアクリルフィルムを置く。
・布又はペーパータオルを使用して、フィルムをガラスに対して縦横方向に均一に押す。
・気泡を取り除くためにこする。
ビルドプレートの温度は、アクリルフィルムのTgに近い値に調整できるが、いずれの場合も、それは近いか、わずかに高い必要がある。
・フィルムを貼り付けた後、必要に応じて、加熱されたガラスのビルドプレートの温度を上げ、又は下げることができる。範囲→60℃~120℃;
・アクリルフィルムに物品を3Dプリントする。
・プリントが完了したら、ビルドプレートから取り外す。3Dプリントされた部品から余分なフィルムを切り取る。部品と接触しているアクリルフィルムは剥離できない。
【0028】
あるいは、アクリルフィルム(通常は50~350マイクロメートル)を350μmを超えるシート厚に増やし、プリントされたPVDF物品をビルドプレートから外し得る冷却中の内部応力に対抗することができる。この場合、アクリルシートとガラスビルドプレートの間に両面感圧接着テープを使用できる。この点では、ビルドプレートはシートの温度に影響しないため(シートが厚いため)、ビルドプレートを加熱しても何も変わらない。そのため、プリントは本質的に室温のプリントベッドに行われる。
【0029】
上記の代わりに、前述のように、2つ以上のノズルを備えたプリンターを使用して、相溶性のあるフィルムをプリントできる。相溶性があり、反りの少ない材料を第1層又はラフト層として最初にプリントしてから、所望の材料を上にプリントできる。
【実施例0030】
例1
上記のプロセスを使用して、表1に示す次の材料上に3Dプリントされた物品を成形した。表には、さまざまなビルドプレート/ベースの接着条件で可能な、3DプリントされたPVDFホモポリマー部品のおおよその最大サイズが含まれる。
【0031】
【表1】
【0032】
例2
上記のプロセスを使用して、次の材料フィルムが使用された。
3Dプリントされた物品はポリアミド11である。
ベース材料:
・ブリム:非常に小さな部品を除いて部品が外れた。
・ラフト:部品が外れた。
・糊コーティング:大量の糊を使用した場合に保持可能、小さな部品(<5cm)のみ。
・アクリルフィルム:化学的相互作用なし、フィルムなしよりも悪い。
・PEIフィルム:小さな部品(<5cm)の接着はOK。
・Arkema アモルファスポリアミドフィルム(70μm):PEIと接着剤よりも強い接着力。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むポリマー複合物品:
a)3Dプリントプロセスによって作製された、結晶性又は半結晶性ポリマーを含むポリマー物品、
b)前記物品と3-Dプリンターのベースプレートとの間で、前記ポリマー物品に接着されたポリマーフィルムであって、前記フィルムは、前記物品と混和性、相溶性、又は半相溶性であり、前記フィルムは、プリント温度より50℃低い温度未満、好ましくは80℃低い温度未満、より好ましくは100℃低い温度未満のTgを有するポリマーフィルム。
【請求項2】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーが、ポリフッ化ビニリデンホモポリマー及びコポリマー、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー複合物品。
【請求項3】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーを含む前記物品が、最大で50パーセント、好ましくは最大で40パーセント、より好ましくは最大で30パーセント、最も好ましくは最大で25パーセント未満の重量の混和性、相溶性又は半相溶性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載のポリマー物品。
【請求項4】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーを含む前記物品が、最大で50パーセント、好ましくは最大で40パーセント、より好ましくは最大で30パーセント、最も好ましくは最大で25パーセント未満の重量の一つ以上のフィラーをさらに含む、請求項1に記載のポリマー物品。
【請求項5】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーがポリアミドであり、前記フィルムが、アモルファスポリアミド又はコポリアミド、低融点ブロックポリエーテルアミド、及びポリアミドグラフト化ポリオレフィンからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー物品。
【請求項6】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーがポリプロピレンであり、前記フィルムが、ポリエチレン、及び無水物グラフト化ポリオレフィンからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー物品。
【請求項7】
前記結晶性又は半結晶性ポリマーが半結晶性ポリエーテルケトンケトン(PEKK)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であり、前記フィルムが、アモルファスPEEK、アモルファスPEKK、及びポリエーテルイミドからなる群から選択される、請求項2に記載のポリマー物品。
【請求項8】
前記フィルムが、前記3Dプリントされたポリマー物品と混和性、相溶性又は半相溶性でないポリマー相を最大40重量パーセント、好ましくは最大30重量パーセント、より好ましくは最大20重量パーセント含む、請求項1に記載のポリマー物品。
【請求項9】
3Dプリントにより作製された物品であって、前記物品は、
a)結晶性又は半結晶性の物品、
b)前記物品と3Dプリンターのガラスのベースプレートとの間で、前記物品に接着されたポリマーフィルムであって、前記フィルムは、前記物品の熱可塑性物質のTg又はTmよりも少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃、好ましくは少なくとも30℃、さらには50℃より大きい差の低いTg又はTmを有する、
物品。
【請求項10】
3Dプリントされた物品を成形するためのプロセスであって、
a)ガラスのビルドプレートとプリントされる物品との間にポリマーフィルム又はシートを配置する工程であって、前記ポリマーフィルムは溶融状態で前記物品と相溶性、混和性又は半混和性であり、前記フィルム又はシートは、プリント温度より50℃低い温度未満、好ましくは80℃低い温度未満、より好ましくは100℃低い温度未満のTgを有する、工程、
b)前記フィルムを貼り付けてから、必要に応じて前記ビルドプレートの温度を上げ、又は下げる工程、
c)前記ポリマーフィルム又はシート上に物品を3Dプリントする工程、
を含むプロセス。
【請求項11】
前記ポリマーフィルム及び前記物品が溶着され、界面に絡み合ったポリマー鎖を有する、請求項10に記載のプロセス。
【外国語明細書】