(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126658
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】導入遺伝子発現のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20230831BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230831BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230831BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230831BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230831BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230831BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K38/17
A61K31/704
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
C12N7/01 ZNA
C12N15/864 100Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119196
(22)【出願日】2023-07-21
(62)【分割の表示】P 2021561893の分割
【原出願日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】62/833,979
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/926,317
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/967,219
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515346639
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ アイオワ リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】University of Iowa Research Foundation
(71)【出願人】
【識別番号】521452843
【氏名又は名称】スピロバント サイエンシズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPIROVANT SCIENCES,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルハート、ジョン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジーイン
(72)【発明者】
【氏名】タン、インファ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】リン、シェン
(57)【要約】
【課題】本開示は、細胞内で導入遺伝子を発現させる方法、それを必要とする対象における障害を治療する方法、及び医薬組成物を提供する。
【解決手段】細胞内で導入遺伝子を発現させる方法は、細胞を(i)AV.TL65カプシドタンパク質、又はそのバリアント、ならびに導入遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV);及び(ii)AAV形質導入の増強剤と接触させることにより、細胞内で導入遺伝子を発現させることを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内で導入遺伝子を発現させる方法であって、細胞を(i)AV.TL65カプシドタンパク質、又はそのバリアント、ならびに導入遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV);及び(ii)AAV形質導入の増強剤と接触させることにより、細胞内で導入遺伝子を発現させることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
政府の権利に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたR43HL137583の下での政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
背景技術
アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用した遺伝子治療は、単一遺伝子欠損の治療を含む、新たな治療法である。嚢胞性線維症(CF)は、米国だけで少なくとも30,000人、世界中で少なくとも70,000人が罹患している致命的な常染色体劣性疾患である。CF患者の平均生存年齢は約40歳である。CFは、上皮細胞膜を通して塩化物及び重炭酸イオンを伝導するチャネルである嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)をコードする遺伝子の突然変異によって引き起こされる。CFTR機能の障害は、気道の炎症と進行性の気管支拡張症を引き起こす。CFは単一遺伝子病因であり、患者集団において様々なCFTR突然変異があるため、遺伝子治療は潜在的にCFの普遍的な治療法を提供する。
【0003】
ヒトパルボウイルスファミリーのメンバーであるアデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製をヘルパーウイルスに依存する非病原性ウイルスである。このため、組換えAAV(rAAV)ベクターは、遺伝子治療の前臨床試験及び臨床試験で最も頻繁に使用されている。実際、rAAV2を用いたCF肺疾患の臨床試験では、他の遺伝子導入剤(組換えアデノウイルスなど)と比較して、気道組織におけるウイルスゲノムの良好な安全性プロファイルと長期持続性の両方が実証された(生検で評価)。それにもかかわらず、rAAVベクター由来のCFTRmRNAの転写が検出されなかったため、遺伝子導入はCF患者の肺機能を改善することができなかった。
【0004】
したがって、当技術分野では、AAVベースの遺伝子治療アプローチにおける導入遺伝子発現のための改善された方法に対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、とりわけ、細胞内で導入遺伝子を発現させる方法、それを必要とする対象における障害を治療する方法、及び医薬組成物を提供する。一態様において、対象はヒト新生児である。一態様において、対象は若年のヒトである。
【0006】
一態様において、本開示は、細胞内で導入遺伝子を発現させる方法であって、細胞を(i)AV.TL65カプシドタンパク質又はそのバリアント、ならびに導入遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV);及び(ii)AAV形質導入の増強剤と接触させることにより、細胞内で導入遺伝子を発現させることを含む方法を特徴とする。一実施形態において、バリアントカプシドタンパク質は、配列番号13に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0007】
いくつかの実施形態において、増強剤はプロテアソーム調節剤である。
いくつかの実施形態において、プロテアソーム調節剤は、アントラサイクリン、プロテアソーム阻害剤、トリペプチジルアルデヒド、又はそれらの組み合わせである。
【0008】
いくつかの実施形態において、アントラサイクリンは、ドキソルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、又はそれらの組み合わせである。
【0009】
いくつかの実施形態において、アントラサイクリンは、ドキソルビシン、イダルビシン、又はそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びイキサゾミブである。
【0010】
いくつかの実施形態において、トリペプチジルアルデヒドはN-アセチル-l-ロイシル-l-ロイシル-l-ノルロイシン(LLnL)である。
いくつかの実施形態において、細胞は、rAAV及び増強剤と順番に接触する。
【0011】
他の実施形態において、細胞は、rAAV及び増強剤と同時に接触する。
いくつかの実施形態において、細胞をrAAV及び増強剤と接触させることは、細胞をrAAVのみと接触させることと比較して、導入遺伝子の発現の増加をもたらす。いくつかの実施形態において、発現の増加は、約100%、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%、又はそれ以上である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記接触は、rAAV及び増強剤を対象に投与することを含む。
別の態様において、本開示は、それを必要とする対象の障害を治療する方法を特徴とし、この方法は、対象に(i)AV.TL65カプシドタンパク質及び治療用導入遺伝子を含むポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV);及び(ii)AAV形質導入の増強剤を投与することを含み、前記投与が対象の細胞における導入遺伝子の発現をもたらす。
【0013】
いくつかの実施形態において、投与は、吸入、噴霧化、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、静脈内、皮下、及び/又は筋肉内によるものである。
いくつかの実施形態において、投与は、吸入、噴霧化、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、及び/又は気管支内によるものである。いくつかの実施形態において、細胞は気道細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は気道上皮細胞である。いくつかの実施形態において、気道上皮細胞は肺上皮細胞である。
【0014】
いくつかの実施形態において、障害は嚢胞性線維症である。
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、F5エンハンサー及び/又はtg83プロモーターを含む。いくつかの実施形態において、F5エンハンサーは、配列番号1又は配列番号14のポリヌクレオチド配列、あるいは配列番号1又は配列番号14に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態において、F5は配列番号1のポリヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、F5エンハンサーは、配列番号14のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、tg83プロモーターは配列番号2のポリヌクレオチド配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、CFTR又はその誘導体である。
いくつかの実施形態において、CFTRの誘導体は、CFTRΔR導入遺伝子(例えば、ヒトCFTRΔR導入遺伝子)である。いくつかの実施形態において、ヒトCFTRΔR導入遺伝子は、配列番号4の配列、又は配列番号4に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0016】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’から3’方向に、F5エンハンサー、tg83プロモーター、及びCFTRΔR導入遺伝子を含む。
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号7の配列、又は配列番号7に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、3’方向に、配列番号5の配列、又は配列番号5に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む3’非翻訳領域(3’-UTR)をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、3’方向に、配列番号6の配列、又は配列番号6に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む合成ポリアデニル化部位をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの5’末端に5’アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復配列(ITR)及びポリヌクレオチドの3’末端に3’AAV ITRをさらに含む。いくつかの実施形態において、5’AAV
ITRは、配列番号15の配列又は配列番号15に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態において、3’AAV ITRは、配列番号16の配列又は配列番号16に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号15の配列を含む5’AAV ITR、配列番号14の配列を含むF5エンハンサー(配列番号1のように、5’EcoRI部位及び3’XhoI部位を含み得る)、配列番号2の配列を含むtg83プロモーター、配列番号3の配列を含む5’UTR、配列番号4の配列を含むhCFTRΔR導入遺伝子、配列番号5の配列を含む3’UTR、配列番号6の配列を含むポリアデニル化部位(s-pA)、及び配列番号16の配列を含む3’AAV ITRを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号17の配列、又は配列番号17と少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
いくつかの実施形態において、AV.TL65カプシドタンパク質は、
MAADGYLPDWLEDTLSEGIRQWWKLKPGPPPPKPAERHKDDSRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNEADAAALEHDKAYDRQLDSGDNPYLKYNHADAEFQERLKEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPFGLVEEGAKTAPTGKRIDDHFPKRKKARTEEDSKPSTSSDAEAGPSGSQQLQIPAQPASSLGADTMSAGGGGPLGDNNQGADGVGNASGDWHCDSTWMGDRVVTKSTRTWVLPSYNNHQYREIKSGSVDGSNANAYFGYSTPWGYFDFNRFHSHWSPRDWQRLINNYWGFRPRSLRVKIFNIQVKEVTVQDSTTTIANNLTSTVQVFTDDDYQLPYVVGNGTEGCLPAFPPQVFTLPQYGYATLNRDNTENPTERSSFFCLEYFPSKMLRTGNNFEFTYNFEEVPFHSSFAPSQNLFKLANPLVDQYLYRFVSTNNTGGVQFNKNLAGRYANTYKNWFPGPMGRTQGWNLGSGVNRASVSAFATTNRMELEGASYQVPPQPNGMTNNLQGSNTYALENTMIFNSQPANPGTTATYLEGNMLITSESETQPVNRVAYNVGGQMATNNQSSTTAPTTGTYNLQEIVPGSVWMERDVYLQGPIWAKIPETGAHFHPSPAMGGFGLKHPPPMMLIKNTPVPGNITSFSDVPVSSFITQYSTGQVTVEMEWELKKENSKRWNPEIQYTNNYNDPQFVDFAPDSTGEYRTTRPIGTRYLTRPL(配列番号13)
のアミノ酸配列を含む。
【0022】
バリアントポリヌクレオチド又はポリペプチド配列は、天然配列又は参照配列、例えば、配列番号1~12及び14~17のいずれか1つのバリアントポリヌクレオチド、又は配列番号13のバリアントポリペプチドと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上同一であり得る。
【0023】
別の態様において、本開示は、(i)AV.TL65カプシドタンパク質及び導入遺伝子を含むポリヌクレオチドを含むrAAV;及び(ii)AAV形質導入の増強剤を含む医薬組成物を特徴とする。
【0024】
いくつかの実施形態において、増強剤は、プロテアソーム調節剤である。
いくつかの実施形態において、プロテアソーム調節剤は、アントラサイクリン、プロテアソーム阻害剤、トリペプチジルアルデヒド、又はそれらの組み合わせである。
【0025】
いくつかの実施形態において、アントラサイクリンは、ドキソルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、又はそれらの組み合わせである。
【0026】
いくつかの実施形態において、アントラサイクリンは、ドキソルビシン、イダルビシン、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、増強剤はドキソルビシンである。他の実施形態において、増強剤はイダルビシンである。
【0027】
いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びイキサゾミブである。
いくつかの実施形態において、トリペプチジルアルデヒドはN-アセチル-l-ロイシル-l-ロイシル-l-ノルロイシン(LLnL)である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1A及び1Bは、AV.TL65+プロテアソーム阻害剤(PI)で処理された細胞対AAVのみで処理された細胞におけるルシフェラーゼ活性の比(
図1A)、及び、AV.TL65+PIで処理された細胞対AAVのみで処理された細胞におけるLDH活性の比(
図1B)を示す一連のグラフである。これらの結果は、感染(AV.TL65、10K MOI)後4日目のCF(HBE及びHTE、dF508/dF508、継代0)細胞からのものである。PIありのAV.TL65で処理されたCF HBEの相対発光単位は、PIなしのAV.TL65の200倍を超えた。LDH活性によって測定されたPIありのAV.TL65の毒性は、大部分においてPIなしのAV.TL65の150%未満であった。
【
図2】示された処理条件下での個々のドナーの細胞の形質導入及び相対的LDH活性を示す一連のグラフであり、平均すると、
図1A及び1Bに示されるデータが得られた。
【
図3】
図3A~3D。rAAVベクターの性能のin vitro及びin vivo比較。(A)CF(F508del/F508del)ヒト極性化ALI気道培養物を、増強剤の存在下でAV1-SP183-hCFTRΔR又はAV.TL65-SP183-hCFTRΔR(MOI=100,000DRP/細胞)に頂端で感染させた。次に、感染後12日目にウッシングチャンバーで短絡電流(Isc)測定を行った。フォルスコリン/IBMX及びGlyH101(CFTR阻害剤)に対するΔIsc応答も示されている。データは、2個体のドナーからのn=4トランスウェルの平均±SDを示している。感染していないALI培養物は、ベースラインコントロールとして機能した(2個体のドナーからのn=4)。(B)Isc測定後、各群の2つのトランスウェルインサートをプールして溶解し、逆転写酵素定量PCR(RT-qPCR)によってベクター由来のhCFTRΔRmRNAコピーを定量し、ヒトGAPDHmRNAコピーに対して正規化した。次に、値をhCFTRΔR/GAPDHの比率として表した。データは、n=2の平均±範囲を示している。(C)ALIにおけるヒト及びフェレットの極性化気管気管支上皮は、増強剤の存在下、DNase耐性粒子(DRP)/細胞の感染多重度(MOI)100,000でAV.TL65-SP183gLucに頂端で感染した。ガウシアルシフェラーゼ活性を、感染後5日目に相対発光単位(RLU)として測定した。データは、各種の2個体のドナーからのn=6トランスウェルの平均±SDを示している。(D)生後3日目のフェレット又は生後1か月のフェレットに、増強剤を混合したAV.TL65-SP183-hCFTRΔR(体重1グラムあたり4×10
10DRP)を気管内感染させた。模擬感染群には、増強剤を含むPBSを接種した。次に、気管と肺を感染後11日目に採取し、RT-qPCRによってベクター由来のhCFTRΔRと内因性fCFTRmRNAコピーを、GAPDHmRNAコピー数で正規化して定量化した。データは、hCFTRΔRとfCFTRΔRのmRNAコピーの比率(hCFTRΔR/fCFTR)を表す。データは各群のn=3の動物の平均+/-SDを示しており、nsは有意差のないことを示す。
【
図4】
図4A~4C。新生仔フェレットへのAV.TL65の反復投与。(A)気管内投与により1×10
13DRP/kgで0回分、1回分、又は2回分のウイルスを投与される新生仔フェレットの3つの群を含む研究デザイン。1回投与するフェレットには4週齢でレポーターベクターAV.TL65-SP183-gLucを投与し、2回投与するフェレットには1週齢でAV.TL65-SP183-fCFTRΔRと、4週齢でAV.TL65-SP183-gLucを投与した。血漿及びBALFサンプルを、示された年齢で収集した。(B)AV.TL65-SP183-gLucの送達後の示された時点での血漿中のガウシアルシフェラーゼ活性。(C)AV.TL65-SP183-gLucの送達後14日でのBALFにおけるガウシアルシフェラーゼ活性。結果は、1群あたりn=6の動物の平均±SDを示している。統計的有意性を、一元配置分散分析とそれに続くテューキーの事後検定で分析した。ns、有意差なし。RLU、相対発光単位。
【
図5】
図5A~5C。幼若フェレットへのAV.TL65の反復投与。(A)気管内投与により1×10
13DRP/kgで0回分、1回分、又は2回分のウイルスを投与される幼若フェレットの3つの群を含む研究デザイン。1回投与するフェレットには8週齢でレポーターベクターAV.TL65-SP183-gLucを投与し、2回投与するフェレットには4週齢でAV.TL65-SP183-fCFTRΔRと、8週齢でAV.TL65-SP183-gLucを投与した。血漿及びBALFサンプルを、示された年齢で収集した。(B)AV.TL65-SP183-gLucの送達後の示された時点での血漿中のガウシアルシフェラーゼ活性。(C)AV.TL65-SP183-gLucの送達後14日でのBALFにおけるガウシアルシフェラーゼ活性。結果は、1群あたりn=9~10の動物の平均±SDを示している。統計的有意性を、一元配置分散分析とそれに続くテューキーの事後検定で分析した:**P<0.01、****P<0.0001。RLU、相対発光単位。
【
図6】
図6A~6D。感染したフェレットのBALF及び血漿中のAV.TL65中和抗体の力価。(A、B)
図4Aで収集された新生仔フェレットのサンプルを、形質導入阻害アッセイを使用して、(A)BALF及び(B)血漿中のNAbについて評価した。A549細胞の感染前に、BALF又は血漿の段階希釈液をAV.TL65-fLucとともにインキュベートした。NAbの力価を、ホタルルシフェラーゼ活性によって評価されるように、形質導入の50%阻害(IC50)をもたらしたBALF又は血漿の濃度(希釈比)として計算した。AV.TL65-fLucのみで感染させた細胞はベースラインコントロールとして機能し、模擬感染細胞はブランクとして機能した。(C、D)
図5Aで収集された幼若フェレットサンプルを、上記の形質導入阻害アッセイを使用して、(C)BALF及び(D)血漿中のNAbについて評価した。結果は、1群あたりn=6の新生仔動物及び1群あたりn=9~10の幼若動物の平均±SDを示している。統計的有意性を、一元配置分散分析とそれに続くテューキーの事後検定で分析した:**P<0.01、****P<0.0001。ns、有意差なし。
【
図7】
図7A~7B。抗カプシド抗体アイソタイプを定量化するためのELISAベースアッセイの開発。免疫血漿は、AV-TL65に感染したフェレットから、生後1か月から1~2か月間隔で4回肺に生成された。ナイーブな血漿は、同程度の年齢のフェレットに由来していた。ELISAプレートを(A)AAV5又は(B)AAV2でコーティングし、免疫及びナイーブフェレット血漿の結合について評価した。二次検出抗体はIgGに対するものであった。結果は、各サンプルの2つの技術的複製の平均±範囲を示している。
【
図8】
図8A~8F。AV.TL65に感染したフェレットの血漿中のIgG、IgM、及びIgAカプシド結合抗体の定量化。(A~F)(A、D)IgG、(B、E)IgM、及び(C、F)IgAについての、(A~C)新生仔及び(D~F)幼若フェレットの血漿中のカプシド結合抗体の定量化。結果は、1群あたりn=6の新生仔動物及び1群あたりn=9~10の幼若動物の平均+/-SDを示している。統計的有意性を、一元配置分散分析とそれに続くテューキーの事後検定で分析した:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。単回投与群と反復投与群の間のラベルなしの比較は、有意差がなかった。
【
図9】
図9A~9F。AV.TL65に感染したフェレットのBALF中のIgG、IgM、及びIgAカプシド結合抗体の定量化。(A~F)(A、D)IgG、(B、E)IgM、及び(C、F)IgAについての、(A~C)新生仔及び(D~F)幼若フェレットのBALF中のカプシド結合抗体の定量化。結果は、1群あたりn=6の新生仔動物及び1群あたりn=9~10の幼若動物の平均+/-SDを示している。統計的有意性を、一元配置分散分析とそれに続くテューキーの事後検定で分析した:*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。単回投与群と反復投与群の間のラベルなしの比較は、有意差がなかった。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の実施形態の詳細な説明
AV.TL65カプシドタンパク質は、他のAAV血清型と比較して、気道上皮細胞の頂端形質導入に大幅な増強をもたらす。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるExcoffon et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106(10):3865-3870,2009に記載されているように、このカプシドタンパク質は、AAV2、AAV5、又はAAV9カプシドタンパク質で型決定されたrAAVと比較して、レポーター導入遺伝子ルシフェラーゼの発現において少なくとも10~100倍の改善を与える。本開示は、少なくとも部分的に、AV.TL65カプシドタンパク質で血清型決定されたrAAVベクターによって運ばれる導入遺伝子の形質導入及び/又は発現が、本明細書に記載されるような1つ又は複数の増強剤と組み合わせて使用することにより、最小限の毒性でさらに大幅に改善できるという予期せぬ発見に基づいている。例えば、実施例1に記載するように、AV.TL65ルシフェラーゼ-mCherryをドキソルビシンやイダルビシンなどの増強剤と組み合わせると、増強剤なしのAV.TL65ルシフェラーゼ-mCherryと比較して、600倍を超える気液界面(ALI)ヒト気管支上皮(HBE)培養物のルシフェラーゼ発現の非毒性の増強がもたらされた。したがって、本明細書に記載の方法は、AV.TL65カプシドタンパク質を含むrAAVからの導入遺伝子の高効率の形質導入及び発現を可能にし、例えば、嚢胞性線維症などの障害を治療する改善された方法での使用を見出す。一態様において、嚢胞性線維症を有する対象は、ヒト新生児である。一態様において、嚢胞性線維症を有する対象は、若年のヒトである。本開示はまた、(i)AV.TL65カプシドタンパク質及び導入遺伝子(例えば、CFTRΔR)を含むポリヌクレオチドを含むrAAV;及び(ii)AAV形質導入の増強剤を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
定義
「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスを指し、天然に存在する野生型ウイルス自体又はその誘導体を指すために使用され得る。この用語は、他の意味に解すべき場合を除いて、すべての亜型、血清型、偽型、及び天然型と組換え型の両方を包含する。AAVゲノムは一本鎖DNAで構成されており、DNA鎖の両端の逆方向末端反復配列(ITR)と、複製タンパク質及びカプシドタンパク質をそれぞれコードするrep及びcapの2つのオープンリーディングフレームとを含む。外来ポリヌクレオチドは、天然のrep及びcap遺伝子を置換することができる。AAVは、様々な形質導入プロファイル、又は本明細書で使用されるように、異なる組織タイプに対する「向性」を有する様々な異なる血清型カプシドで作製することができる。本明細書で使用される場合、「血清型」という用語は、定義された抗血清、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、及びAAVrh10とのカプシドタンパク質反応性に基づいて識別され、他のAAVから区別されるAAVを指す。例えば、血清型AAV2は、AAV2のcap遺伝子からコードされたカプシドタンパク質を含むAAV、及び同じAAV2血清型の5’及び3’ITR配列を含むゲノムを指すために使用される。偽型AAVとは、1つの血清型のカプシドタンパク質及び第2の血清型の5’-3’ITRを含むウイルスゲノムを含むAAVを指す。偽型rAAVは、カプシド血清型の細胞表面結合特性、及びITR血清型と一致する遺伝的特性を有すると予想される。偽型rAAVは、当技術分野で説明されている標準的な技術を使用して生成される。
【0031】
「約」という用語は、本明細書では、記載された値の±10%の値を意味するために使用される。
本明細書で使用される場合、「投与する」とは、本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、増強剤、及び/又はその医薬組成物)の投薬量を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載の方法で利用される組成物は、任意の適切な経路で投与することができ、これには例えば、吸入、噴霧、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内)、経口、鼻、直腸、局所、又は頬腔が含まれる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、アトマイザー噴霧器を使用して(例えば、MADgic(商標)喉頭気管粘膜噴霧装置を使用して)気管内及び/又は気管支内にエアロゾル化された粒子で投与される。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、局所投与又は全身投与することができる。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される組成物の成分及び治療される状態の重症度)に応じて変化し得る。
【0032】
「アントラサイクリン」という用語は、例えば化学療法で使用される薬物のクラスを指す。例示的なアントラサイクリンには、ドキソルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、バルルビシン、及びミトキサントロンが含まれる。
【0033】
「AV.TL65」という用語は、ヒトの気道に対して非常に影響を持つ、進化したキメラAAVカプシドタンパク質を指す。AV.TL65は、Excoffonら(上記)に記載されており、当技術分野ではAAV2.5Tとしても知られている。AV.TL65は、AAV2(a.a.1~128)とAAV5(a.a.129~725)の間のキメラであり、1つの点突然変異(A581T)に基づく置換がある。AV.TL65カプシドのアミノ酸配列を以下に示す:
MAADGYLPDWLEDTLSEGIRQWWKLKPGPPPPKPAERHKDDSRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNEADAAALEHDKAYDRQLDSGDNPYLKYNHADAEFQERLKEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPFGLVEEGAKTAPTGKRIDDHFPKRKKARTEEDSKPSTSSDAEAGPSGSQQLQIPAQPASSLGADTMSAGGGGPLGDNNQGADGVGNASGDWHCDSTWMGDRVVTKSTRTWVLPSYNNHQYREIKSGSVDGSNANAYFGYSTPWGYFDFNRFHSHWSPRDWQRLINNYWGFRPRSLRVKIFNIQVKEVTVQDSTTTIANNLTSTVQVFTDDDYQLPYVVGNGTEGCLPAFPPQVFTLPQYGYATLNRDNTENPTERSSFFCLEYFPSKMLRTGNNFEFTYNFEEVPFHSSFAPSQNLFKLANPLVDQYLYRFVSTNNTGGVQFNKNLAGRYANTYKNWFPGPMGRTQGWNLGSGVNRASVSAFATTNRMELEGASYQVPPQPNGMTNNLQGSNTYALENTMIFNSQPANPGTTATYLEGNMLITSESETQPVNRVAYNVGGQMATNNQSSTTAPTTGTYNLQEIVPGSVWMERDVYLQGPIWAKIPETGAHFHPSPAMGGFGLKHPPPMMLIKNTPVPGNITSFSDVPVSSFITQYSTGQVTVEMEWELKKENSKRWNPEIQYTNNYNDPQFVDFAPDSTGEYRTTRPIGTRYLTRPL(配列番号13)。
【0034】
「制御要素」又は「制御配列」は、ポリヌクレオチドの複製、複製、転写、スプライシング、翻訳、又は分解を含む、ポリヌクレオチドの機能的調節に寄与する分子の相互作用に関与するヌクレオチド配列である。上記調節は、プロセスの頻度、速度、又は特異性に影響を与えることができ、本質的に促進的又は抑制的であり得る。当技術分野で知られている制御要素には、例えば、プロモーター及びエンハンサーなどの転写調節配列が含まれる。プロモーターは、特定の条件下でRNAポリメラーゼを結合させ、通常はプロモーターの下流(3’方向)に位置するコード領域の転写を開始することが可能なDNA領域である。プロモーターには、AAVプロモーター、例えば、P5、P19、P40及びAAV ITRプロモーター、ならびに異種プロモーターが含まれる。
【0035】
「発現ベクター」は、目的のポリペプチドをコードする領域を含むベクターであり、意図された標的細胞においてタンパク質の発現をもたらすために使用される。発現ベクターはまた、標的におけるタンパク質の発現を促進するために、コード領域に作動可能に連結された制御要素を含む。制御要素と、それらが発現のために作動可能に連結されている1つ以上の遺伝子との組み合わせは、「発現カセット」と呼ばれることがあり、その多くが当技術分野で知られており、入手可能であるか、又は当技術分野で利用可能な構成要素から容易に構築することができる。
【0036】
「遺伝子」は、転写及び翻訳された後に特定のタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドを指す。
「遺伝子送達」という用語は、遺伝子導入のために外因性ポリヌクレオチドを細胞に導入することを指し、標的化、結合、取り込み、輸送、局在化、レプリコンの組み込み及び発現を含み得る。
【0037】
「遺伝子導入」という用語は、外因性ポリヌクレオチドを細胞に導入することを指し、標的化、結合、取り込み、輸送、局在化、及びレプリコンの組み込みを含み得るが、遺伝子のその後の発現とは区別され、それを意味しない。
【0038】
「遺伝子発現」又は「発現」という用語は、遺伝子の転写、翻訳、及び翻訳後修飾のプロセスを指す。
AAVの「ヘルパーウイルス」は、AAV(例えば、野生型AAV)が哺乳類細胞によって複製及びパッケージングされることを可能にするウイルスを指す。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、及びワクシニアなどのポックスウイルスを含む、AAVのための様々なそのようなヘルパーウイルスが当技術分野で知られている。アデノウイルスにはいくつかの異なるサブグループが含まれるが、サブグループCのアデノウイルス5型が最も一般的に使用されている。ヒト、非ヒト哺乳類及び鳥類起源の多数のアデノウイルスが知られており、ATCCなどの寄託機関から入手可能である。ヘルペスファミリーのウイルスには、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)及び仮性狂犬病ウイルス(PRV)が含まれ、これらもATCCなどの寄託機関からも入手できる。
【0039】
「検出可能なマーカー遺伝子」は、その遺伝子を保有する細胞を特異的に検出することを可能にする遺伝子である(例えば、マーカー遺伝子を保有しない細胞と区別される)。多種多様なそのようなマーカー遺伝子が当技術分野で知られている。
【0040】
「選択マーカー遺伝子」は、対応する選択剤の存在下で、その遺伝子を保有する細胞又は保有しない細胞を特異的に選択することを可能にする遺伝子である。例示として、抗生物質耐性遺伝子を、対応する抗生物質の存在下で陽性の宿主細胞を選択することを可能にする陽性選択マーカー遺伝子として使用することができる。様々な陽性及び陰性選択マーカーが当技術分野で知られており、そのいくつかを以下に説明する。
【0041】
「異種」とは、それが比較される他の実体のものとは遺伝子型が異なる実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子工学技術によって異なる細胞型に導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドである(そして、発現される場合、異種ポリペプチドをコードすることができる)。
【0042】
「宿主細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」、「パッケージング細胞株」及び他のそのような用語は、本開示において有用な真核細胞、例えば、ヒト細胞などの哺乳類細胞を示す。これらの細胞は、組換えベクター、ウイルス、又は他のトランスファーポリヌクレオチドのレシピエントとして使用することができ、形質導入された元の細胞の子孫細胞を含む。単一細胞の子孫細胞は、必ずしも元の親細胞と(形態又はゲノムの補足物において)完全に同一であるとは限らないことが理解される。
【0043】
「形質導入又は形質導入頻度の増加」、「形質導入又は形質導入頻度の変更」、又は「形質導入又は形質導入頻度の増強」は、未処理細胞と比較した、処理細胞における上記の活性の1つ以上の増加を指す。形質導入効率を増加させる本明細書に記載の薬剤は、1つ以上の形質導入活性に対する効果を測定することによって決定することができ、上記測定は、導入遺伝子の発現の測定、導入遺伝子の機能の測定、又は、薬剤で処理されていない宿主細胞と比較して同じ導入遺伝子効果を得るのに必要なrAAVベクター粒子の数の決定を含み得る。本明細書に記載の増強剤は、参照レベル(例えば、増強剤がない場合のrAAVの形質導入又は形質導入頻度)と比較して、AV.TL65カプシドタンパク質を含むrAAVの形質導入又は形質導入頻度の増加をもたらし得る。
【0044】
「単離された」プラスミド、ウイルス、又は他の物質は、ある物質又は類似の物質が自然に発生するか、又はその物質が最初に調製される際に共に存在し得る他の成分の少なくともいくつかを欠いた、物質の調製物を指す。したがって、例えば、単離された物質は、精製技術を使用して、それを供給源混合物から濃縮することにより調製することができる。濃縮度は、溶液の体積あたりの重量などの絶対基準で測定することも、供給源混合物に存在する第2の潜在的に干渉する物質との関係で測定することもできる。本開示の実施形態の濃縮度には様々な候補がある。したがって、例えば、2倍の濃縮が一候補であり、10倍の濃縮がさらなる候補であり、100倍の濃縮がさらなる候補であり、1000倍の濃縮がさらなる候補である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「作動可能な連結」又は「作動可能に連結された」という用語は、意図された方法で機能することを可能にするように記載された構成要素の物理的又は機能的並置を指す。より具体的には、例えば、作動可能に連結された2つのDNA配列は、少なくとも一方のDNA配列が他方の配列に生理学的効果を及ぼすことができるような関係で(シス又はトランスで)その2つのDNAが配置されていることを意味する。例えば、エンハンサー及び/又はプロモーターは、導入遺伝子(例えば、CFTRΔRミニ遺伝子などの治療用導入遺伝子)と作動可能に連結されることができる。
【0046】
本明細書で使用される「パッケージング」は、ウイルスベクター、特にAAVベクターのアセンブリ及びカプシド形成をもたらす一連の細胞内事象を指す。したがって、適切なベクターが適切な条件下でパッケージング細胞株に導入されると、ウイルス粒子にアセンブリされることができる。ウイルスベクター、特にAAVベクターのパッケージングに関連する機能は、本明細書及び当技術分野で説明されている。
【0047】
「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、又はそれらの類似体を含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、メチル化又はキャップされたヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチド及びヌクレオチドアナログを含んでもよく、非ヌクレオチド成分によって中断(interrupt)され得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリの前又は後に付与され得る。本明細書で使用されるポリヌクレオチドという用語は、二本鎖分子及び一本鎖分子を互換的に指す。別段の指定又は要求がない限り、ポリヌクレオチドである本明細書に記載の本開示の任意の実施形態は、二本鎖形態、及び、二本鎖形態を構成することが知られている又は予測される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれを包含する。
【0048】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。この用語には、修飾されたアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、脂質化、又は標識成分とコンジュゲーションされたものも含まれる。「CFTR」などのポリペプチドは、遺伝子治療及びそのための組成物の文脈で論じられる場合、それぞれのインタクトなポリペプチド、又はインタクトなタンパク質の所望の生化学的機能を保持するその任意のフラグメント又は遺伝子操作された誘導体を指す。同様に、CFTR、及び遺伝子治療で使用するための他のそのような遺伝子(通常、レシピエント細胞に送達される「導入遺伝子」と呼ばれる)への言及は、インタクトなポリペプチドあるいは所望の生化学的機能を有する任意のフラグメント又は遺伝子操作された誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0049】
「医薬組成物」とは、対象への投与に適した、ウイルスベクター(例えば、rAAVベクター)に組み込まれるか、又はウイルスベクターから独立した(例えば、リポソーム、マイクロ粒子、又はナノ粒子に組み込まれる)治療的又は生物学的に活性な薬剤(例えば、導入遺伝子を含むポリヌクレオチド(例えば、CFTRΔRミニ遺伝子;例えば、Ostedgaard et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108(7):2921-6,2011参照))を含む任意の組成物を意味する。これらの製剤のいずれも、周知の受け入れられている当技術分野の方法によって調製することができる。例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、レミントン薬科学(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)(第21版)、A.R.Gennaro編、Lippincott Williams&Wlkins、2005、及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology、J.Swarbrick編、Informa
Healthcare、2006を参照されたい。
【0050】
「薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、又はアジュバント」とは、それが投与される医薬組成物の治療特性を保持しながら、対象に生理学的に受け入れられる希釈剤、賦形剤、担体、又はアジュバントを意味する。
【0051】
「プロテアソーム調節剤」及び「プロテアソームモジュレーター」という用語は、プロテアソームの機能、及び/又は輸送又は位置と相互作用するか、結合するか、又は変更することによって、rAAV形質導入又はrAAV形質導入頻度を変更又は増強する薬剤又は薬剤のクラスを指す。プロテアソームモジュレーターは、当技術分野で説明されている他の細胞機能、例えば、化学療法薬ドキソルビシン等を有し得る。本開示のプロテアソームモジュレーターには、プロテアソーム阻害剤、例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、トリペプチジルアルデヒド(Z-LLL又はLLnL)、プロテアソームのカルパイン、カテプシン、システインプロテアーゼ、及び/又はキモトリプシン様プロテアーゼ活性を阻害する薬剤(例えば、Wagner et al.,Hum.Gene Ther.,13:1349(2002);Young et al.,J.Virol.,74:3953(2000);及びSeisenberger et al.,Science,294:1029(2001)を参照)が含まれる。
【0052】
ポリヌクレオチドに適用される「組換え」は、ポリヌクレオチドが、クローニング、制限及び/又はライゲーションステップ、及び天然に見られるポリヌクレオチドとは異なる構築物をもたらす他の手順の様々な組み合わせの産物であることを意味する。組換えウイルスは、組換えポリヌクレオチドを含むウイルス粒子である。これらの用語はそれぞれ、元のポリヌクレオチド構築物の複製及び元のウイルス構築物の子孫構築物を含む。
【0053】
「組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)」又は「rAAVベクター」とは、in vivo、ex vivo、又はin vitroのいずれかで細胞に送達される、AAV起源ではないポリヌクレオチド配列(例えば、1つ以上のエンハンサー及び/又はプロモーターに作動可能に連結され得る導入遺伝子を含むポリヌクレオチド)を含む組換え的に産生されたAAV又はAAV粒子を意味する。天然に存在しない(例えば、キメラ)カプシドが、本明細書に記載されるrAAV、例えば、AV.TL65において使用され得る。
【0054】
「参照」とは、比較の目的で使用される任意のサンプル、標準、又はレベルを意味する。「正常な参照サンプル」又は「野生型参照サンプル」は、例えば、障害(例えば、嚢胞性線維症)のない対象からのサンプルであり得る。「陽性参照」サンプル、標準、又は値は、障害(例えば、嚢胞性線維症)を有することが分かっている対象に由来するサンプル、標準、値、又は数であり、以下の基準の少なくとも1つによって対象のサンプルとマッチングされ得る:年齢、体重、病期、及び全体的な健康状態。
【0055】
「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の哺乳類(例えば、ヒト、霊長類、ネコ、イヌ、フェレット、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ラット、又はマウス)を指す。一実施形態において、対象はヒトである。
【0056】
「ターミネーター」は、リードスルー転写を減少させ又は防止する(すなわち、ターミネーターの一方の側で生じる転写がターミネーターの他方の側まで継続することを減少させ又は防止する)傾向があるポリヌクレオチド配列を指す。転写が妨害される程度は、典型的には、ターミネーター配列の塩基配列及び/又は長さに依存する。特に、多くの分子生物学的システムでよく知られているように、一般に「転写終結配列」と呼ばれる特定のDNA配列は、おそらくRNAポリメラーゼ分子を停止させ及び/又は転写されているDNAから離脱させることによって、RNAポリメラーゼによるリードスルー転写を妨害する傾向がある特定の配列である。そのような配列特異的ターミネーターの典型的な例には、ポリアデニル化(「ポリA」)配列、例えば、SV40ポリAが含まれる。そのような配列特異的ターミネーターに加えて、又はそれに代えて、プロモーターとコード領域との間に比較的長いDNA配列を挿入すると、概ね介在配列の長さに比例して、コード領域の転写を妨害する傾向もある。この効果はおそらく、RNAポリメラーゼ分子が転写中のDNAから切り離されるいくらかの傾向が常にあり、コード領域に到達する前にトラバースされる配列の長さが長いほど、コード領域の転写が完了する前に、場合によっては転写の開始前に切り離される可能性が高くなるためと考えられる。したがって、ターミネーターは、一方向のみ(「一方向」ターミネーター)又は両方向(「双方向」ターミネーター)からの転写を防止することができ、配列特異的終結配列又は配列非特異的ターミネーター、あるいはそれらの両方から構成され得る。様々なそのようなターミネーター配列が当技術分野で知られている。本開示の文脈内でのそのような配列の例示的な使用が、以下に提供される。
【0057】
「治療遺伝子」、「予防遺伝子」、「標的ポリヌクレオチド」、「導入遺伝子」、「目的の遺伝子」などは、総じて、ベクターを使用して導入される1つ以上の遺伝子を指す。典型的には、本開示の文脈において、そのような遺伝子は、rAAVベクター内に位置する(このベクターは、逆方向末端反復配列(ITR)領域に隣接し、したがって、複製され、rAAV粒子にカプシド形成され得る)。標的ポリヌクレオチドを本開示で使用して、多くの異なる用途のためのrAAVベクターを生成することができる。そのようなポリヌクレオチドには、限定するものではないが:(i)構造タンパク質又は酵素の欠落、欠陥、又は最適以下のレベルによって引き起こされる欠陥を軽減するために、他の形態の遺伝子治療に有用なタンパク質をコードするポリヌクレオチド;(ii)アンチセンス分子に転写されるポリヌクレオチド;(iii)転写因子又は翻訳因子に結合するデコイに転写されるポリヌクレオチド;(iv)サイトカインなどの細胞モジュレーターをコードするポリヌクレオチド;(v)レシピエント細胞をヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子などの特定の薬剤に対し感受性にすることができるポリヌクレオチド;(vi)様々ながんの治療のためのE1A腫瘍抑制遺伝子又はp53腫瘍抑制遺伝子などの、がん治療のためのポリヌクレオチド;(vii)遺伝子編集用のポリヌクレオチド(例えば、CRISPR)が含まれる。レシピエント宿主細胞において導入遺伝子の発現をもたらすために、導入遺伝子は、一実施形態において、それ自体の又は異種プロモーターのいずれかであるプロモーターに作動可能に連結されている。多数の適切なプロモーターが当技術分野で知られており、それらの選択は、標的ポリヌクレオチドの所望の発現レベル;構成的発現、誘導性発現、細胞特異的又は組織特異的発現を希望するか否かなどに依存する。rAAVベクターはまた、選択マーカーを含み得る。例示的な導入遺伝子には、限定されないが、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)又はその誘導体(例えば、CFTRΔRミニ遺伝子;例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるOstedgaard et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108(7):2921-6,2011参照)、α-アンチトリプシン、β-グロビン、γ-グロビン、チロシンヒドロキシラーゼ、グルコセレブロシダーゼ、アリールスルファターゼA、第VIII因子、ジストロフィン、エリスロポエチン、アルファ1-アンチトリプシン、サーファクタントプロテインSP-D、SP-A又はSP-C、エリスロポエチン、又はサイトカイン、例えば、IFN-アルファ、IFNγ、TNF、IL-1、IL-17、又はIL-6、又はウイルス、細菌、腫瘍又は真菌抗原などの抗原である予防タンパク質、又はヒト呼吸器ウイルス、例えばインフルエンザウイルス又は、RSVからのものなどの、HBoVタンパク質、インフルエンザウイルスタンパク質、RSVタンパク質、又はSARSタンパク質を含むがこれらに限定されない抗原のエピトープを標的とする中和抗体又はそのフラグメントが含まれる。
【0058】
「治療有効量」とは、臨床的に適切な方法で、対象の状態、又は障害又は疾患の症状、例えば嚢胞性線維症を改善し、阻害し、又は向上させるために投与される組成物の量を意味する。対象における任意の改善は、治療を達成するのに十分であると見なされる。一実施形態では、治療するのに十分な量は、嚢胞性線維症の発生又は1つ以上の症状を軽減、阻害、又は予防する量であるか、又は、嚢胞性線維症の1つ以上の症状の重症度又は対象がそれを患う期間の長さを軽減する(例えば、本明細書に記載の組成物で治療されていない対照対象と比較して少なくとも約10%、約20%、又は約30%、又は少なくとも約50%、約60%、又は約70%、又は少なくとも約80%、約90%、約95%、約99%、又はそれ以上軽減する)量である)。本明細書に記載の方法(例えば、嚢胞性線維症の治療)を実施するために使用される医薬組成物の有効量は、投与方法ならびに治療される対象の年齢、体重、及び全体的な健康状態に応じて変化する。医師又は研究者は、適切な量と投与計画を決定することができる。
【0059】
本明細書で使用される「形質導入」は、外因性ポリヌクレオチド、例えば、rAAV内の導入遺伝子を宿主細胞に導入して、そのポリヌクレオチド、例えば、細胞内の導入遺伝子の発現をもたらすプロセスを指す用語である。このプロセスは一般に、1)細胞表面受容体に結合した後のAAVのエンドサイトーシス、2)細胞のサイトゾル内のエンドソーム又は他の細胞内コンパートメントからのエスケープ、3)ウイルス粒子又はウイルスゲノムの核への輸送、4)ウイルス粒子のコーティング解除、及び環状中間体を含む発現可能な二本鎖AAVゲノム形態の生成を含む。rAAVの発現可能な二本鎖形態は、核エピソームとして存続するか、又は任意で宿主ゲノムに組み込まれ得る。細胞表面受容体に結合した後のAAVのエンドサイトーシス、エンドソーム又は他の細胞内コンパートメントから細胞のサイトゾルへのエスケープ、ウイルス粒子又はウイルスゲノムの核への輸送、又はウイルス粒子のコーティング解除変化及び環状中間体を含む発現性二本鎖AAVゲノム形態の生成のいずれか又は組み合わせの変化は、発現レベル又は発現の持続性の変化、又は核への輸送の変化、あるいは宿主細胞又は導入されたポリヌクレオチドを発現する細胞集団のタイプ又は相対数の変化をもたらし得る。rAAVを介して導入されたポリヌクレオチドの変化した発現又は持続性は、タンパク質発現、例えば、ELISA、フローサイトメトリー及びウエスタンブロット、ハイブリダイゼーションアッセイによるDNA及びRNA産生の測定、例えば、ノーザンブロット、サザンブロット及びゲルシフト移動度アッセイ、又は定量的又は非定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、又はデジタル液滴PCRアッセイを含むがこれらに限定されない、当技術分野で周知の方法によって決定することができる。
【0060】
個体又は細胞の「治療」は、治療が開始された時点での個体又は細胞の自然な経過を変えようとする試みにおける任意のタイプの介入であり、例えば、個体において予防的、治癒的又は他の有益な効果を引き出す。例えば、個人の治療は、遺伝性又は誘発性の遺伝的欠損症(例えば、嚢胞性線維症)、ウイルス、細菌、又は寄生生物による感染、腫瘍性又は非形成性の状態、又は自己免疫又は免疫抑制などの免疫系の機能不全を含む(ただしこれらに限定されない)任意の病的状態によって引き起こされる病状を軽減又は制限するために行われる場合がある。治療には、医薬組成物などの組成物の投与、及び組成物で治療された適合性細胞の投与が含まれる(ただしこれらに限定されない)。治療は、予防的又は治療的に、すなわち、病的事象の開始又は病因物質との接触の前又は後のいずれかに実施することができる。治療は、病的状態の1つ以上の症状を軽減し得る。例えば、嚢胞性線維症の症状は当技術分野で知られており、例えば、持続性の咳、喘鳴、息切れ、運動不耐性、繰り返される肺感染症、炎症を起こした鼻腔又は鼻づまり、悪臭の又は脂っぽい便、不十分な体重増加及び成長、腸の閉塞、便秘、汗の塩分濃度の上昇、膵炎、及び肺炎を含む。障害(嚢胞性線維症など)の1つ以上の症状の改善又は欠如を検出することは、治療の成功を示す。
【0061】
本明細書で使用される「ベクター」は、ポリヌクレオチドを含むか又はポリヌクレオチドと会合し、in vitro又はin vivoのいずれかで細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介するために使用できる高分子又は高分子の会合を指す。例示的なベクターには、例えば、プラスミド、ウイルスベクター、リポソーム及び他の遺伝子送達ビヒクルが含まれる。送達されるポリヌクレオチドは、時には導入遺伝子と呼ばれ、遺伝子治療において関心のあるコード配列(治療用又は目的のタンパク質をコードする遺伝子など)、ワクチン開発において関心のあるコード配列(哺乳類において免疫応答を誘発するのに適したタンパク質、ポリヌクレオチド又はペプチドを発現するポリヌクレオチドなど)、及び/又は選択マーカー又は検出マーカーを含み得る。
【0062】
組換えAAVベクター及びポリヌクレオチド
組換えAAVベクターは、特に嚢胞性線維症や鎌状赤血球貧血などの疾患に対する、ヒト遺伝子治療のための潜在的に強力なツールである。遺伝子治療への他のアプローチに対するrAAVベクターの主な利点は、エピソームに存在するために、又は宿主細胞に安定して組み込まれるために、標的細胞が継続的に複製される必要が大抵の場合ないことである。本明細書で提供されるのは、AV.TL65カプシドタンパク質及び導入遺伝子を含むポリヌクレオチドを含むrAAVであり、これは、本明細書に記載されるように、AAV形質導入の増強剤と組み合わせることができる。
【0063】
rAAVベクター及び/又はウイルスは、感染、進行、及び/又は疾患の重症度を予防するための治療ワクチン又は予防ワクチンの開発にも潜在的に強力である。ワクチン開発のためのrAAVベクターの主な利点は、核エピソームとして細胞の寿命の間本質的に持続することができ、したがって免疫学的に関心のあるペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質の長期発現を提供することである。目的の導入遺伝子には、ウイルス遺伝子、例えば、HIVのエンベロープ(env)又はgag遺伝子;細菌の遺伝子、例えば連鎖球菌の細胞壁タンパク質;真菌、例えば、cocidomycosis;寄生虫、例えば、ライシュマニア症、又はがん遺伝子、例えば、p53が含まれる。
【0064】
rAAVベクター及び/又はウイルスはまた、1つ以上の検出マーカーを含み得る。そのようなマーカーとして種々のものが知られており、例示として、細菌のベータ-ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子、ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(AP)遺伝子、及びin vitro及びin vivoの両方でレポーター分子として使用されている様々な細胞表面マーカーをコードする遺伝子が挙げられる。rAAVベクター及び/又はウイルスはまた、1つ以上の選択マーカーを含み得る。
【0065】
組換えAAVベクター及び/又はウイルスはまた、タンパク質をコードしないポリヌクレオチドを含み得、例えば、正常なmRNAと二重鎖を形成することによってその翻訳をブロックするために使用され得るアンチセンスmRNA(mRNAの相補体)をコードするポリヌクレオチド、及びリボザイム(RNA触媒)をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0066】
AAVベクターは、典型的には、AAVと異種であるポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、特定の表現型の発現のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションなどの遺伝子治療の状況において標的細胞に機能を提供する能力のために、典型的には興味対象となる。そのような異種ポリヌクレオチド又は「導入遺伝子」は、概して、所望の機能又はコーディング配列を提供するのに十分な長さのものである。
【0067】
異種ポリヌクレオチドの転写が目的の標的細胞において望まれる場合、それは、当技術分野で知られているように、例えば、標的細胞内の転写の所望のレベル及び/又は特異性に応じて、それ自体の又は異種プロモーターに作動可能に連結され得る。様々なタイプのプロモーター及びエンハンサーが、この状況での使用に適している。構成的プロモーターは、継続的なレベルの遺伝子転写を提供し、治療的又は予防的ポリヌクレオチドが継続的に発現されることが望まれる場合の候補である。誘導性プロモーターは、一般に、インデューサーの非存在下では低い活性を示し、インデューサーの存在下ではアップレギュレートされる。それらは、特定の時間又は特定の場所でのみ発現が望まれる場合、又は誘導剤を使用して発現のレベルを滴定することが望ましい場合に候補となり得る。プロモーターとエンハンサーも組織特異的である可能性がある。つまり、おそらく特定の細胞型の細胞に独自に見られる遺伝子調節要素のために、その特定の細胞型でのみそれらの活性を示す。
【0068】
プロモーターの例は、シミアンウイルス40のSV40後期プロモーター、バキュロウイルス多面体(polyhedron)エンハンサー/プロモーターエレメント、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVtk)、サイトメガロウイルス(CMV)の前初期プロモーター、及びLTRエレメントを含む様々なレトロウイルスプロモーターである。誘導性プロモーターには、重金属イオン誘導性プロモーター(マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター又は様々な成長ホルモンプロモーターなど)、及びT7RNAポリメラーゼの存在下で活性であるT7ファージ由来のプロモーターが含まれる。例示として、組織特異的プロモーターの例には、様々なサーファクチンプロモーター(肺での発現のため)、ミオシンプロモーター(筋肉での発現のため)、及びアルブミンプロモーター(肝臓での発現のため)が含まれる。多種多様な他のプロモーターが知られており、当技術分野で一般に入手可能であり、多くのそのようなプロモーターの配列は、GenBankデータベースなどの配列データベースで入手可能である。
【0069】
意図された標的細胞において翻訳も望まれる場合、異種ポリヌクレオチドは、翻訳を促進する制御エレメント(リボソーム結合部位又は「RBS」及びポリアデニル化シグナルなど)も含む可能性が高い。したがって、異種ポリヌクレオチドは、総じて、適切なプロモーターに作動可能に連結された少なくとも1つのコード領域を含み、また、例えば、作動可能に連結されたエンハンサー、リボソーム結合部位、及びポリAシグナルを含み得る。異種ポリヌクレオチドは、1つのコード領域、又は同じ又は異なるプロモーターの制御下にある2つ以上のコード領域を含み得る。制御エレメントとコード領域の組み合わせを含むユニット全体は、しばしば発現カセットと呼ばれる。
【0070】
異種ポリヌクレオチドは、組換え技術により、AAVゲノムのコード領域内に又はそれの代わりに(すなわち、AAVrep遺伝子及びcap遺伝子の代わりに)組み込まれるが、大抵は、AAV逆方向末端反復配列(ITR)領域が両側に隣接している。これは、ITRがコーディング配列の上流と下流の両方に直接並置された状態で現れ、例えば(必須ではないが)複製能力のあるAAVゲノムを再生成し得る組換えの可能性を減らすために、AAV起源の配列が介在しないことを意味する。しかしながら、2つのITRを含む構成に通常関連する機能を実行するために単一のITRで十分な場合があり(例えば、国際公開第94/13788号を参照)、したがって、1つのITRのみを有するベクター構築物を本開示のパッケージング方法及び製造方法と組み合わせて使用することができる。
【0071】
repの天然のプロモーターは自己調節性であり、生成されるAAV粒子の量を制限することができる。rep遺伝子はまた、repがベクター構築物の一部として提供されるか、又は別個に提供されるかにかかわらず、異種プロモーターに作動可能に連結され得る。rep遺伝子発現によって強くダウンレギュレーションされない異種プロモーターが適しているが、rep遺伝子の構成的発現は宿主細胞に悪影響を与える可能性があるため、誘導性プロモーターが候補である。多種多様な誘導性プロモーターが当技術分野で知られており、例示として、重金属イオン誘導性プロモーター(メタロチオネインプロモーターなど);ステロイドホルモン誘導性プロモーター(MMTVプロモーター又は成長ホルモンプロモーターなど);及びT7RNAポリメラーゼの存在下で活性であるT7ファージ由来のものなどのプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターの1つのサブクラスは、rAAVベクターの複製及びパッケージングを補完するために使用されるヘルパーウイルスによって誘導されるものである。アデノウイルスE1Aタンパク質によって誘導されるアデノウイルス初期遺伝子プロモーター;アデノウイルスの主要な後期プロモーター;VP16又は1CP4などのヘルペスウイルスタンパク質によって誘導されるヘルペスウイルスプロモーター;ならびにワクシニア又はポックスウイルス誘導性プロモーターを含む、多くのヘルパーウイルス誘導性プロモーターも記載されている。
【0072】
ヘルパーウイルス誘導性プロモーターを同定及び試験するための方法は既に説明されている(例えば、国際公開第96/17947号を参照)。したがって、候補プロモーターがヘルパーウイルス誘導性であるかどうか、及びそれらが高効率パッケージング細胞の生成に有用であるかどうかを決定するための方法が当技術分野で知られている。簡単に述べると、そのような方法の1つは、AAVrep遺伝子のp5プロモーターを推定ヘルパーウイルス誘導性プロモーター(当技術分野で知られているか、又はプロモーターのない「レポーター」遺伝子への連結などの周知の技術を使用して同定されたもの)で置き換えることを含む。次に、AAVrep-cap遺伝子(p5が置換されたもの)は、任意選択で抗生物質耐性遺伝子などの陽性選択マーカーに連結されて、適切な宿主細胞(以下に例示するHeLa又はA549細胞など)に安定して組み込まれる。次に、選択条件下(例えば、抗生物質の存在下)で比較的よく増殖することができる細胞を、ヘルパーウイルスの添加時にrep及びcap遺伝子を発現するそれらの能力について試験する。rep及び/又はcap発現の初期試験として、細胞を免疫蛍光抗体法を使用して容易にスクリーニングし、Rep及び/又はCapタンパク質を検出することができる。続いて、パッケージング能力と効率の確認は、入ってくるrAAVベクターの複製及びパッケージングの機能試験によって決定できる。この方法を使用して、マウスメタロチオネイン遺伝子に由来するヘルパーウイルス誘導性プロモーターは、p5プロモーターの適切な代替物として同定され、高力価のrAAV粒子を生成するために使用されている(国際公開第96/17947号に記載)。
【0073】
様々なAAVゲノムの相対的なカプシド形成サイズの制限を考えると、ゲノムに大きな異種ポリヌクレオチドを挿入するには、AAV配列の一部を除去することが必要となる。複製能力のある(replication-competent)AAV(「RCA」)を生成する可能性を減らすために、1つ以上のAAV遺伝子の除去がどのような場合にも望ましい。したがって、一実施形態では、rep、cap、又はそれらの両方のコーディング配列又はプロモーター配列が削除される。その理由は、これらの遺伝子によって提供される機能をトランスで提供することができるためである。
【0074】
結果として得られるベクターは、これらの機能において「欠陥がある」と呼ばれる。ベクターを複製及びパッケージングするために、欠落している機能は、1つ又は複数のパッケージング遺伝子で補完され、これらが一緒になって、様々な欠落しているrep及び/又はcap遺伝子産物に必要な機能をコードする。パッケージング遺伝子又は遺伝子カセットは、一実施形態では、AAV ITRに隣接しておらず、一実施形態では、rAAVゲノムと実質的な相同性を共有していない。したがって、ベクター配列と別々に提供されたパッケージング遺伝子との間の複製中の相同組換えを最小限にするために、2つのポリヌクレオチド配列の重複を避けることが望ましい。相同性のレベル及び対応する組換えの頻度は、相同配列の長さの増加及びそれらが共有する同一性のレベルとともに増加する。当技術分野で知られているように、所与のシステムにおいて懸念をもたらす相同性のレベルは、理論的に決定され、実験的に確認され得る。しかしながら、典型的には、重複配列が約25ヌクレオチド配列未満で、その全長にわたって少なくとも80%同一である場合、又は約50ヌクレオチド配列未満で、その全長にわたって少なくとも70%同一である場合、組換えを実質的に低減又は排除することができる。もちろん、相同性のレベルがさらに低いと、組換えの可能性がさらに低下する。重複する相同性がなくても、RCAを生成する頻度はいくらか残っているように思われる。Allenらの国際公開第98/27204号に記載されているように、AAVの複製及びカプシド形成機能を「分割(splitting)」することにより、(例えば、非相同組換えにより)RCAを生成する頻度をさらに減らすことができる。
【0075】
rAAVベクター構築物、及び補完的パッケージング遺伝子構築物は、本開示において、いくつかの異なる形態で実施することができる。ウイルス粒子、プラスミド、及び安定して形質転換された宿主細胞はすべて、そのような構築物を一時的又は安定的にパッケージング細胞に導入するために使用することができる。
【0076】
本開示の特定の実施形態において、AAVベクター及び存在する場合は補完的パッケージング遺伝子は、細菌プラスミド、AAV粒子、又はそれらの任意の組み合わせの形態で提供される。他の実施形態では、AAVベクター配列、パッケージング遺伝子のいずれか、又はそれらの両方が、遺伝的に改変された真核細胞の形態で提供される。AAVベクター配列、AAVパッケージング遺伝子、又はその両方を発現するように遺伝的に改変された宿主細胞の開発は、信頼できるレベルで発現される物質の確立された供給源を提供する。
【0077】
したがって、様々な異なる遺伝的に改変された細胞を、本開示に照らして使用することができる。例示として、哺乳類宿主細胞は、安定して組み込まれたrAAVベクターの少なくとも1つのインタクトコピーと共に使用され得る。プロモーターに作動可能に連結された少なくともAAVrep遺伝子を含むAAVパッケージングプラスミドを使用して、複製機能を提供することができる(米国特許第5,658,776号に記載されているように)。あるいは、プロモーターに作動可能に連結されたAAVrep遺伝子を有する安定な哺乳類細胞株を使用して、複製機能を提供することができる(例えば、Trempeら、(国際公開第95/13392号);Bursteinら(国際公開第98/23018号);及びJohnsonら(米国特許第5,656,785号))。上記のようにカプシド形成タンパク質を提供するAAVcap遺伝子は、AAVrep遺伝子と一緒に、又は別々に提供することができる(例えば、上記の特許出願及び特許文献ならびにAllenら(国際公開第98/27204号)を参照されたい。他の組み合わせが可能であり、本開示の範囲内に含まれる。
【0078】
AV.TL65カプシドタンパク質を含むrAAVを生成するためのアプローチは、当技術分野で知られている。例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Excoffon et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106(10):3865-3870,2009及び米国特許第10,046,016号を参照されたい。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第16/082,767号に記載されているエンハンサー又はプロモーターのいずれかを含み得る。
【0079】
rAAVは、本明細書に記載されているか、又は当技術分野で知られているエンハンサー及び/又はプロモーターのいずれかを含むポリヌクレオチドを含み得る。例えば、rAAVは、F5エンハンサー及び/又はtg83プロモーターを含むポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、F5エンハンサーは、配列番号1又は配列番号14のポリヌクレオチド配列、又は配列番号1又は配列番号14に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態において、F5は、配列番号1のポリヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、F5エンハンサーは、配列番号14のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、tg83プロモーターは、配列番号2のポリヌクレオチド配列又は配列番号2に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0080】
rAAVは、任意の適切な導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、CFTR又はその誘導体である。いくつかの実施形態において、CFTRの誘導体は、CFTRΔR導入遺伝子(例えば、ヒトCFTRΔR導入遺伝子)である。いくつかの実施形態において、ヒトCFTRΔR導入遺伝子は、配列番号4の配列、又は配列番号4に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0081】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’から3’方向に、F5エンハンサー、tg83プロモーター、及びCFTRΔR導入遺伝子を含む。例えば、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号7の配列、又は配列番号7に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0082】
ポリヌクレオチドは、3’方向に、配列番号5の配列、又は配列番号5と少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む3’非翻訳領域(3’-UTR)をさらに含み得る。
【0083】
ポリヌクレオチドは、3’方向に、配列番号6の配列、又は配列番号6と少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む合成ポリアデニル化部位をさらに含み得る。
【0084】
ポリヌクレオチドは、1つ又は複数のITR、例えば、ポリヌクレオチドの5’末端にある5’アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復配列(ITR)及びポリヌクレオチドの3’末端にある3’AAV ITRをさらに含み得る。任意の適切な5’ITR及び/又は3’ITRを使用できる。いくつかの実施形態において、5’AAV ITRは、配列番号15の配列、又は配列番号15に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。いくつかの実施形態において、3’AAV ITRは、配列番号16の配列、又は配列番号16に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。ITR配列は、例えば、配列番号15及び配列番号16のようにパリンドロームであり得、ここで、5’末端のITR配列はリバース鎖に位置し、3’末端のITR配列はフォワード鎖に位置する。
【0085】
いくつかの例において、ポリヌクレオチドは、配列番号15の配列を含む5’AAV ITR、配列番号14の配列を含むF5エンハンサー(配列番号1のように、5’EcoRI部位及び3’XhoI部位を含み得る)、配列番号2の配列を含むtg83プロモーター、配列番号3の配列を含む5’UTR、配列番号4の配列を含むhCFTRΔR導入遺伝子、配列番号5の配列を含む3’UTR、配列番号6の配列を含むs-pA、及び配列番号16の配列を含む3’AAV ITRを含む。
【0086】
特定の例において、ポリヌクレオチドは、配列番号17の配列、又は配列番号17に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
遺伝子治療のためのrAAV及びその医薬組成物の使用
AAVベクターは、遺伝子治療又はワクチン接種の目的で個体に投与するために使用することができる。rAAV療法に適した疾患には、ウイルス、細菌、又は寄生虫感染によって誘発される疾患、様々な悪性腫瘍及び過剰増殖状態、自己免疫状態、及び先天性欠損症(嚢胞性線維症など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0087】
遺伝子治療は、細胞内の又は細胞から分泌される特定のタンパク質の発現レベルを高めるために実施することができる。本明細書に記載のベクターは、遺伝子マーキング、欠損又は欠陥のある遺伝子の置換、又は治療遺伝子の挿入のいずれかのために細胞を遺伝的に改変するために使用され得る。あるいは、発現レベルを低下させるポリヌクレオチドを細胞に提供することができる。これは、悪性腫瘍の過程で増幅又は過剰発現された遺伝子の産物、又は微生物感染の過程で導入又は過剰発現された遺伝子などの望ましくない表現型の抑制に使用することができる。発現レベルは、例えば、標的遺伝子又はRNA転写物(アンチセンス療法)のいずれかと安定したハイブリッドを形成することが可能な、関連するmRNAを切断するためのリボザイムとしてが作用することが可能な、又は標的遺伝子の産物のデコイとして作用することが可能な配列を含む治療的又は予防的ポリヌクレオチドを供給することによって減少させることができる。
【0088】
特に興味深いのは、適切に機能する嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)を気道上皮に供給することによる、嚢胞性線維症の遺伝的欠陥の修正である。したがって、天然CFTRタンパク質をコードするrAAVベクター、ならびにその変異体及び断片、例えば、CFTRΔR、及びその医薬組成物は、すべて、本開示のいくつかの実施形態である。
【0089】
本開示は、(i)AV.TL65カプシドタンパク質及び導入遺伝子(例えば、CFTRΔR)を含むポリヌクレオチドを含むrAAV;及び(ii)AAV形質導入の増強剤を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、増強剤は、プロテアソーム調節剤である。いくつかの実施形態において、プロテアソーム調節剤は、アントラサイクリン、プロテアソーム阻害剤、トリペプチジルアルデヒド、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、アントラサイクリンは、ドキソルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、アントラサイクリンは、ドキソルビシン、イダルビシン、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びイキサゾミブである。いくつかの実施形態において、トリペプチジルアルデヒドは、N-アセチル-l-ロイシル-l-ロイシル-l-ノルロイシン(LLnL)である。
【0090】
医薬組成物のrAAVは、本明細書に記載されているか又は当技術分野で知られているエンハンサー及び/又はプロモーターのいずれかを含むポリヌクレオチドを含み得る。例えば、rAAVは、F5エンハンサー及び/又はtg83プロモーターを含むポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、F5エンハンサーは、配列番号1又は配列番号14のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、F5は、配列番号1のポリヌクレオチド配列を含む。他の実施形態において、F5エンハンサーは、配列番号14のポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、tg83プロモーターは、配列番号2のポリヌクレオチド配列、又は配列番号2に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0091】
rAAVは、任意の適切な導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、CFTR又はその誘導体である。いくつかの実施形態において、CFTRの誘導体は、CFTRΔR導入遺伝子(例えば、ヒトCFTRΔR導入遺伝子)である。いくつかの実施形態において、ヒトCFTRΔR導入遺伝子は、配列番号4の配列、又は配列番号4に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含むポリヌクレオチドによってコードされる。
【0092】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、5’から3’方向に、F5エンハンサー、tg83プロモーター、及びCFTRΔR導入遺伝子を含む。例えば、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号7の配列、又は配列番号7に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0093】
ポリヌクレオチドは、3’方向に、配列番号5の配列、又は配列番号5に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む3’-UTRをさらに含み得る。
【0094】
ポリヌクレオチドは、3’方向に、配列番号6の配列、又は配列番号6と少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む合成ポリアデニル化部位をさらに含み得る。
【0095】
ポリヌクレオチドは、1つ以上のITR、例えば、ポリヌクレオチドの5’末端にある5’アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復配列(ITR)及びポリヌクレオチドの3’末端にある3’AAV ITRをさらに含み得る。任意の適切な5’ITR及び/又は3’ITRを使用できる。いくつかの実施形態において、5’AAV ITRは、配列番号15の配列を含む。いくつかの実施形態において、3’AAV ITRは、配列番号16の配列、又は配列番号16に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
【0096】
いくつかの例において、ポリヌクレオチドは、配列番号15の配列を含む5’AAV ITR、配列番号14の配列を含むF5エンハンサー(配列番号1のように5’EcoRI部位及び3’XhoI部位を含み得る)、配列番号2の配列を含むtg83プロモーター、配列番号3の配列を含む5’UTR、配列番号4の配列を含むhCFTRΔR導入遺伝子、配列番号5の配列を含む3’UTR、配列番号6の配列を含むs-pA、及び配列番号16の配列を含む3’AAV ITRを含む。
【0097】
特定の例において、ポリヌクレオチドは、配列番号17の配列、又は配列番号17に対して少なくとも80%の核酸配列同一性を有するそのバリアントを含む。
本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、医薬組成物、及び/又は増強剤)は、in vivo及びex vivoで使用することができる。in vivo遺伝子治療は、本開示のベクターを対象に直接投与することを含む。医薬組成物は、液体溶液又は懸濁液として、乳濁液として、又は使用前に液体に溶解又は懸濁させるのに適した固体形態として供給することができる。気道への投与の場合、投与の1つの例示的な形態は、適切なエアロゾル化装置と共に使用されるときに固体又は液体エアロゾルのいずれかを提供する組成物を使用するエアロゾルによるものである。気道への別の投与方法は、柔軟な光ファイバー気管支鏡を使用してベクターを注入することである。典型的には、ウイルスベクターは、リンゲルの平衡塩類溶液(pH7.4)などの薬学的に適切なパイロジェンフリーの緩衝液中にある。必須ではないが、医薬組成物は、任意選択で、正確な量の投与に適した単位剤形で供給され得る。
【0098】
本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、医薬組成物、及び/又は増強剤)は、任意の適切な経路で、例えば、吸入、噴霧、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内)、経口、鼻、直腸、局所、又は頬腔により投与することができる。これらはまた、局所的又は全身的に投与することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、アトマイザー噴霧器を使用して(例えば、MADgic(商標)喉頭気管粘膜噴霧装置を使用して)気管内及び/又は気管支内にエアロゾル化された粒子で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は非経口で投与される。他のいくつかの実施形態では、医薬組成物は全身投与される。ベクターはまた、例示として、血管移植片(PTFE及びダクロン)、心臓弁、血管内ステント、血管内ペービング(intravascular paving)、ならびに他の非血管プロテーゼを含む、バイオプロテーゼによって導入することができる。ベクター溶液の送達、頻度、組成及び用量の範囲に関する一般的な技術は、当業者の範囲内である。
【0099】
吸入による上気道(鼻)又は下気道への投与のために、本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、医薬組成物、及び/又は増強剤)は、吹送器、ネブライザー又は加圧パック、又はエアロゾルスプレーを送達する他の便利な手段から好都合に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合、投与量の単位は、計量された量を供給するためのバルブを提供することによって決定することができる。
【0100】
あるいは、吸入又は吹送による投与の場合、組成物は、乾燥粉末、例えば、薬剤とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末ベースとの粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、例えば、カプセル又はカートリッジ、又は例えば、吸入器、吹送器又は定量吸入器の助けを借りて粉末を投与することができるゼラチン又はブリスターパックでの単位剤形で提供することができる。
【0101】
鼻腔内投与の場合、薬剤は、点鼻薬、プラスチックボトルアトマイザー又は定量吸入器などの液体スプレーを介して投与することができる。アトマイザーの典型的なものは、ミストメーター(Wintrop)及びメジヘラー(Riker)である。
【0102】
本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、医薬組成物、及び/又は増強剤)の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療か予防か、及び当業者に知られている他の要因に応じて、連続的又は断続的であり得る。本明細書に記載のrAAV又は医薬組成物は、同じ部位又は異なる部位に、1回又は複数回投与することができる。本開示の薬剤の投与は、事前に選択された期間にわたって本質的に連続的であり得るか、又は一連の間隔を置いた投与であり得る。
【0103】
本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、医薬組成物、及び/又は増強剤)は、1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて投与することができる。CFの標準治療を含む、任意の適切な追加の治療薬を使用することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、抗生物質(例えば、アジスロマイシン(ZITHROMAX(商標))、アモキシシリン及びクラブラン酸(AUGMENTIN(商標))、クロキサシリン及びジクロカシリン、チカルシリン及びクラブラン酸(TIMENTIN(商標))、セファレキシン、セフジニル、セフプロジル、セファクロル;スルファメトキサゾール及びトリメトプリム(BACTRIM(商標))、エリスロマイシン/スルフィソキサゾール、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、チゲサイクリン、バンコマイシン、イミペネム、メリペネム(meripenem)、コリスチメタート/COLISTIN(商標)、リネゾリド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、又はそれらの組み合わせ)、粘液希釈剤(例えば、高張食塩水又はドルナーゼアルファ(PULMOZYME(商標)))、CFTRモジュレーター(例えば、イバカフトール(KALYDECO(商標))、ルマカフトール、ルマカフトール/イヴァカフトール(ORKAMBI(商標))、テザカフトール/イバカフトール(SYMDEKO(商標))、又はTRIKAFTA(商標)(エレキサカフトール/イバカフトール/テザカフトール))、粘液溶解薬(例えば、アセチルシステイン、アンブロキソール、ブロムヘキシン、カルボシステイン、エルドステイン、メシステイン、及びドルナーゼアルファ)、免疫抑制剤、生理食塩水、高張食塩水、又はそれらの組み合わせを含む。
【0104】
例えば、本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、医薬組成物、及び/又は増強剤)のいずれか1つは、1つ以上の免疫抑制剤と組み合わせて投与することができる。任意の適切な免疫抑制剤を使用することができる。例えば、免疫抑制剤の非限定的な例には、コルチコステロイド(例えば、吸入コルチコステロイド(例えば、ベクロメタゾン(QVAR(商標))、ブデソニド(PULMICORT(商標))、ブデソニド/フォルモテロール(SYMBICORT(商標))、シクレソニド(ALVESCO(商標))、フルチカゾン(FLOVENT HFA(商標))、プロピオン酸フルチカゾン(FLOVENT DISKUS(商標))、フロ酸フルチカゾン(ARNUITY ELLIPTA(商標))、プロピオン酸フルチカゾン/サルメテロール(ADVAIR(商標))、フロ酸フルチカゾン/ウメクリジニウム/ビランテロール(TRELEGY ELLIPTA(商標))、フロ酸モメタゾン(ASMANEX(商標))、又はモメタゾン/フォルモテロール(DULERA(商標))、プレジソン、又はメチルプレドニソン)、ポリクローナル抗リンパ球抗体(例えば、抗リンパ球グロブリン(ALG)及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG))抗体、例えば、ウマ由来又はウサギ由来)、モノクローナル抗リンパ球抗体(例えば、抗CD3抗体(例えば、ムルモマブ及びアレムツズマブ)又は抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ))、インターロイキン-2(IL-2)受容体拮抗薬(例えば、ダクリズマブ及びバシリキシマブ)、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリンA及びタクロリムス)、細胞周期阻害剤(例えば、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、及びミコフェノール酸(MPA))、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤(例えば、シロリムス(ラパマイシン)及びエベロリムス)、メトトレキサート、シクロホスファミド、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、バルビシン、ミトキサントロン、又はそれらの組み合わせ)、タキサン(例えば、TAXOL(商標)(パクリタキセル))、及びそれらの組み合わせ(例えば、カルシニューリン阻害剤、細胞周期阻害剤、及びコルチコステロイドの組み合わせ)が挙げられる。
【0105】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、医薬組成物、及び/又は増強剤)のいずれか1つを、1つ以上のコルチコステロイド(例えば、吸入コルチコステロイド(例えば、ベクロメタゾン(QVAR(商標))、ブデソニド(PULMICORT(商標))、ブデソニド/フォルモテロール(SYMBICORT(商標))、シクレソニド(ALVESCO(商標))、フルチカゾン(FLOVENT HFA(商標))、プロピオン酸フルチカゾン(FLOVENT DISKUS(商標))、フロ酸フルチカゾン(ARNUTY ELLIPTA(商標))、プロピオン酸フルチカゾン/サルメテロール(ADVAIR(商標))、フロ酸フルチカゾン/ウメクリジニウム/ビランテロール(TRELEGY ELLIPTA(商標))、フロ酸モメタゾン(ASMANEX(商標))、又はモメタゾン/ホルモテロール(DULERA(商標))、プレジソン、又はメチルプレドニソン)と組み合わせて投与することができる。
【0106】
免疫抑制剤(例えば、本明細書に記載の任意の免疫抑制剤)は、吸入によって投与されるか、又は全身的に(例えば、静脈内又は皮下に)投与され得る。
本明細書に記載の組成物(例えば、rAAV、医薬組成物、及び/又は増強剤)は、哺乳類に単独で、又は薬学的に許容される担体と組み合わせて投与することができる。上記のように、有効成分と担体の相対的な比率は、化合物の溶解性及び化学的性質、選択された投与経路、及び標準的な製薬慣行によって決定される。
【0107】
本組成物の用量は、投与形態、選択された特定の化合物、及び治療中の特定の患者の生理学的特性によって変化する。毒性などの望ましくない影響のリスクを低減するために、ウイルスの最低有効濃度を利用することが望ましい。
【0108】
増強剤
本明細書に記載されるように、AV.TL65カプシドタンパク質を含むrAAVを、AAV形質導入の増強剤と組み合わせて使用して、導入遺伝子の形質導入及び/又は発現の大幅な増加を達成することができる。任意の適切な増強剤を使用できる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,749,491号は、適切な増強剤を記載している。増強剤は、プロテアソーム調節剤であり得る。プロテアソーム調節剤は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、イダルビシン、アクラルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、バルルビシン、又はミトキサントロン)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びイキサゾミブ)、トリペプチジルアルデヒド(例えば、N-アセチル-l-ロイシル-l-ロイシル-l-ノルロイシン(LLnL))、又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、増強剤はドキソルビシンである。他の実施形態では、増強剤はイダルビシンである。
【0109】
rAAV及び増強剤は、同じ組成物又は異なる組成物(例えば、医薬組成物)に含めて、細胞と接触させるか、又は対象に投与することができる。rAAV及び増強剤の接触又は投与は、連続的(例えば、rAAVの後に増強剤、又はその逆)又は同時であり得る。
【0110】
実施例
本開示は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示のみを目的としており、それらに照らして様々な修正又は変更が当業者に示唆され、本願及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲に含まれることが理解される。
【0111】
実施例1:嚢胞性線維症患者からの気管支上皮細胞へのAAV-CFTRの送達は、塩化物コンダクタンスの機能的回復を増強する
嚢胞性線維症(CF)は、上皮細胞膜を通して塩化物及び重炭酸イオンを伝導するチャネルである嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)をコードする遺伝子の突然変異によって引き起こされる、生命を脅かす常染色体劣性疾患である。CFTR機能の障害は、気道の炎症と進行性の気管支拡張症を引き起こす。CFは単一遺伝子病因であり、患者集団において様々なCFTR突然変異があるため、遺伝子治療は潜在的にCFの普遍的な治療法を提供する。現在のCFの標準治療は、例えばlumacaftor/VX-809(チャネル修復剤)、ivacaftor/VX-770(チャネル増強剤)、ORKAMBI(商標)(これらの薬物の組み合わせ)、又はTRIKAFTA(商標)(elexacaftor/ivacaftor/tezacaftor)などのモジュレーターを使用して欠陥のあるCFTRの活性を調節しようとするものである。これらのアプローチは有望であるが、既知のCFTR変異のサブセットのみに対する特異性によって制限される。
【0112】
我々は、ヒト気道上皮を頂端膜において形質導入するのに非常に効率的なカプシドを特徴とする新規AAVベクターを生成した。具体的には、AV.TL65-SP183-CFTRΔRを使用してRドメインを部分的に欠失させたCFTRミニ遺伝子を送達し、デュアルレポーターベクターであるAV.TL65ルシフェラーゼ-mCherryを使用してルシフェラーゼと蛍光mCherryタンパク質を発現させた。AV.TL65-SP183-CFTRΔRrAAVベクターは、配列番号15の配列を含む5’AAV ITR、配列番号14の配列を含むF5エンハンサー(配列番号1のように、5’EcoRI部位及び3’XhoI部位を含み得る)、配列番号2の配列を含むtg83プロモーター、配列番号3の配列を含む5’UTR、配列番号4の配列を含むhCFTRΔRミニ遺伝子、配列番号5の配列を含む3’UTR、配列番号6の配列を含むs-pA、及び配列番号16の配列を含む3’AAV ITRのを含むポリヌクレオチドを含んでいた。例えば、パッケージングされたポリヌクレオチドは、配列番号17の配列を含み得る。また、小分子増強剤(プロテアソーム阻害剤)を使用して、ウイルス導入遺伝子のエンドソームプロセシングと核輸送を刺激することにより、組換えAAV形質導入を大幅に強化した。我々は、AV.TL65ルシフェラーゼ-mCherryをドキソルビシン又はイダルビシンと組み合わせると、5つの別々のCF(ホモ接合性dF508/dF508 CFTR)及び非CFドナーからの気液界面(ALI)ヒト気管支上皮(HBE)培養によって、プロテアソーム阻害剤を伴わないAV.TL65ルシフェラーゼ-mCherryと比較して、600倍以上のルシフェラーゼ発現の非毒性増強が得られることを示した。別の実験では、ドキソルビシン及びイダルビシン+AV.TL65-gLuc-mCherryは、プロテアソーム阻害剤を使用しない場合のAAVよりも形質導入を200倍以上改善した(
図1A、破線)。AV.TL65-gLuc-mCherryに添加されたドキソルビシンは、プロテアソーム阻害剤を伴わないAAVと比較して150%未満のLDH(毒性)活性を示したが、イダルビシンはそうならなかった(
図1B;破線)。継代0(P0)細胞での形質導入効率の向上は、ドキソルビシン及びイダルビシンで200倍をはるかに上回り、ドキソルビシンではLDHはベースラインの1.5倍未満、イダルビシンではベースラインの1.5倍超であった。
【0113】
我々はまた、AV.TL65-SP183-CFTRΔRをドキソルビシン又はイダルビシンと組み合わせると、6個体の別々の非CFドナーの少なくとも104%の、6個体の別々のCFドナーからのALI HBE培養物におけるフォルスコリンで刺激されるCFTR媒介塩化物輸送の平均補正が得られることも示した。さらに、フォルスコリンで刺激される電流のこの補完は、2つの別々のHBE CF細胞ドナー株からのALI HBE培養において、標準治療薬であるルマカフトール及びイバカフトールよりも最大4倍大きいことを示した。要約すると、我々はCF患者のHBE細胞の塩素チャネル欠陥を修正するために、AAVウイルスベクターを使用してCFTR発現を増強する方法を開発した。
【0114】
配列一覧
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
実施例2:フェレットの肺にAV.TL65を繰り返し投与すると、年齢依存的に形質導入を減少させる抗体反応が誘発される
遺伝子治療を使用して嚢胞性線維症(CF)肺疾患を治療するには、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の反復投与が必要な場合がある。しかし、肺のrAAVを介した免疫応答についてはほとんど知られていない。ここでは、フェレットが、AV.TL65の肺へのCFTR送達及び中和抗体(NAb)応答の特性評価の前臨床試験のための適した種であることを実証した。AV.TL65-hCFTRΔRは、ヒトとフェレットの両方の気道上皮培養物を効率的に形質導入し、CF気道培養物のCFTR Cl-電流を補完した。AV.TL65-hCFTRΔRを新生仔及び若年フェレットの肺に送達すると、内因性fCFTRよりも200~300%高いレベルでhCFTRmRNAが生成された。AV.TL65の単回投与(AV.TL65-gLuc)又は反復投与(AV.TL65-fCFTRΔRに続いてAV.TL65-gLuc)を、新生仔及び幼若フェレットで行った。反復投与は、幼若フェレットで導入遺伝子発現を有意に減少させ(11分の1)、気管支肺胞洗浄液(BALF)NAbを増加させたが、どちらの年齢層でもほぼ同等の血漿NAb応答があったにもかかわらず、新生仔フェレットではそうならなかった。特に、両方の年齢層は、反復投与後のBALF抗カプシド結合IgG、IgM、及びIgA抗体の減少を示した。幼若フェレットに特有なのは、2回目のベクター投与後の血漿抗カプシド結合IgMの抑制であった。したがって、年齢依存性の免疫系の成熟とアイソタイプスイッチングは、AV.TL65の反復投与後の高親和性肺NAbの発生に影響を与える可能性があり、肺のAAV中和反応を鈍らせる経路を提供する可能性がある。
【0133】
上記の結果は、以下のように詳細に実行された。
結果
フェレットは、肺へのAV.TL65遺伝子治療の評価に適した前臨床種である。
【0134】
AV.TL65(AV2.5T)カプシドバリアントが気道のCFTR機能を補完できるか否かを評価するために、AV.TL65-SP183-hCFTRΔRウイルスが頂端感染後のヒトCF ALI培養物でCFTR媒介Cl
-電流を修正する能力を試験した。rAAV1は、ヒトALI培養物の頂端形質導入に最も優れた血清型の1つであることが以前に示されたため、同じAV2-F5tg83-hCFTRΔRウイルスゲノムをAAV1カプシドに疑似パッケージングし、AV.TL65との比較分析を行った。この比較は、AV.TL65-SP183-hCFTRΔRウイルスによる頂端感染が、同じゲノムを含むrAAV1ウイルス(AV1.SP183-hCFTRΔR)に感染した後のものよりも高いレベルのCFTR媒介Cl
-電流(
図3A)及びCFTRmRNA(
図3B)を生じさせることを示した。
【0135】
AV.TL65がフェレット気道上皮を形質導入することもできるか否かを評価するために、分泌型ガウシアルシフェラーゼ(gLuc)レポーターベクターAV.TL65-SP183gLucを使用して、ヒト及びフェレット由来の高分化気管気管支ALI培養物で最初にin vitro形質導入アッセイを実施した。(
図3C)。AV.TL65-SP183gLucによるこれらの培養物の頂端感染は、2つの種の間でgLuc導入遺伝子発現のレベルに有意差を示さなかった。in vivoでのフェレット肺に対するAV.TL65の向性を確認するために、気管内送達後の新生仔及び若年フェレットにおけるAV.TL65-SP183-hCFTRΔRの形質導入効率を評価した。これらの研究では、導入遺伝子由来のhCFTRΔRmRNAの発現は、形質導入の効率の指標(すなわち、hCFTRΔR/fCFTRmRNAコピーの比率)として内因性fCFTRmRNAを参照した。この測定基準を使用すると、肺でのhCFTRΔRmRNAの発現は、新生仔及び幼若フェレットの両方で内因性のfCFTRmRNAよりも2~3倍大きかった(
図3D)。対照的に、hCFTRΔRmRNAの気管発現は、新生仔では内因性fCFTRmRNAよりも低く、幼若動物ではほぼ同等であった。AV.TL65による気管の形質導入が新生仔で低く、幼若動物で非常に変動するのは、気管の中央にウイルスを注入するために手術を使用した送達方法が原因である可能性がある。全体として、これらのin vitro及びin vivo研究は、フェレットがAV.TL65感染に対する肺の免疫学的反応の研究に適した種であることを示している。
【0136】
新生仔ではなく幼若フェレットの肺へのAV.TL65の以前の曝露は、2回目の投与により形質導入を損なわせる
2つのrAAVベクター(AV.TL65-SP183-fCFTRΔR及びAV.TL65-SP183-gLuc)を使用して、フェレット肺へのAV.TL65の反復投与の実現可能性を評価した。AV.TL65-SP183-fCFTRΔRを、最初のウイルス感染用に選択した。これは、このベクターが導入遺伝子(つまり、フェレットCFTRすなわちfCFTR)に対する免疫応答を開始するべきではないためである。2回目のウイルス感染については、導入遺伝子発現の時間的及び定量的分析を可能にするしっかりしたレポーターが必要であったため、分泌型gLucレポーターベクターAV.TL65-SP183-gLucを選択した。単回投与群のフェレットはAV.TL65-SP183-gLucベクターのみで感染させ、反復投与群のフェレットは最初にAV.TL65-SP183-fCFTRΔRで、次にAV.TL65-SP183-gLucで感染させた。最初に、若い動物での反復投与を評価した(
図4)。新生仔フェレットでこれらの研究を開始し、1週齢の反復投与群をAV.TL65-SP183-fCFTRΔRで感染させ、3週間後に反復投与群と単回投与(ナイーブ)群の両方をAV.TL65-SP183-gLucウイルスで感染させた(
図4A)。ルシフェラーゼ活性を、AV.TL65-SP183-gLucによる感染後14日間の血液サンプルと、実験終了時のBALFでモニタリングした。この研究からの発見は、血漿中のgLuc活性が感染後5日までにピークに達し、両方の投与群で14日まで安定したままであることを示した(
図4B)。また、2つの投与群間で血漿gLuc活性のレベルに有意差はなかった。同様に、感染後14日でのBALFのgLuc活性も、2つの投与群間で有意差はなかった(
図4C)。血漿及びBALFの両方で、gLuc活性は、ナイーブ(非感染)対照のバックグラウンドレベルをはるかに上回っていた(
図4B及び4C)。
【0137】
新生仔フェレットでのこの研究は、肺への形質導入を大幅に低下させることなく、AV.TL65を再投与することが可能であることを示した。しかし、新生仔フェレットの未発達の免疫系が、AAVカプシドに対して寛容な免疫状態を生み出している可能性は残っていた。これらの理由から、我々は、おおよそ1~2歳の幼児に匹敵する生後1か月の反復投与群について、AV.TL65-SP183-fCFTRΔRでの最初の感染を開始し、続いて4週間後に単回投与群と反復投与群の両方にgLucレポーターベクター(AV.TL65-SP183-gLuc)を送達することにより、幼若フェレットで実験を繰り返した(
図5A)。この第2の研究の結果は、両方の群において感染後5日で最大の血漿gLuc活性を示したが、反復投与群では、試験したすべての時点で血漿gLuc活性が低かった(15~34分の1)。単回投与及び反復投与の新生仔群における安定した血漿gLuc発現とは対照的に(
図4B)、両方の幼若群で血漿gLuc活性の漸減が見られ、反復投与動物でより急な傾向を示した(
図5B)。同様に、BALFgLuc活性も、反復投与の幼若群で有意に低かった(11分の1)(
図5C)。累積的に、これらの研究は、新生仔フェレットではなく、幼若フェレットにおけるAAVカプシドに対するNAb応答の可能性を示唆した。
【0138】
AV.TL65の反復投与は、BALF及び血漿でより高いNAb応答を誘発する
以前にこのウイルスに曝露された幼若フェレットの肺におけるAV.TL65形質導入の効率の低下を考慮して、我々は、試験動物のBALF及び血漿中のNAbを評価することを試みた。抗AV.TL65NAbの力価を、ヒト気道細胞株であるA594細胞におけるAV.TL65-SP183-fLuc形質導入の阻害のIC
50として決定した。単回投与及び反復投与の新生仔フェレットにおける同様のレベルの導入遺伝子発現と一致して、BALFのNAb力価は2つの投与条件間で有意差はなかった(
図6A)。対照的に、幼若フェレットのBALFのNAb力価は、単回投与群と比較して、反復投与で有意に高かった(
図6B)。さらに、単回投与群と反復投与群の両方のより高齢の動物を用いた実験におけるNAbの絶対力価は、新生仔試験群よりも高く(3~5倍)、より高齢のフェレットでより完全に発達した免疫応答を示唆している。
【0139】
血漿サンプルに関する同様の分析は、対照のナイーブ群(
図6C及びD)及びAV.TL65感染前の試験群に既存のNAbがないことを示した。両方の年齢群で、単回投与及び反復投与の動物は、感染後の血漿NAb力価の漸進的な時間依存性の増加を示し、反復投与の幼若フェレットは、新生仔フェレットよりもわずかに高い血漿NAb力価(2~2.8倍)を生成した。幼若フェレットはまた、新生仔フェレットの10日と比較して、感染後5日で現れるように、単回投与感染後の血漿中でより迅速にNAbを産生した。反復投与群の血漿NAbのレベルも、幼若フェレットの感染後14日の時点を除いて、両方の年齢で単回投与群のレベルよりも有意に高かった。
【0140】
抗AV.TL65カプシド抗体アイソタイプを定量化するためのELISAベースのアッセイの開発
AAV2/AAV5カプシドシャッフリングライブラリから進化した、AV.TL65のVP2及び最も豊富なVP3カプシドタンパク質は、VP1に単一のA581T変異を持つAAV5に由来する。AV.TL65のVP1は、AAV2 VP1の1~131aaからのN末端固有配列(VP1u)とそれに続くA581T変異を含むAAV5カプシドの128~724aaとを有するAAV2及びAAV5カプシドのハイブリッドである。AAVのVP1uには、エンドソームからのビリオンの脱出に重要であると考えられているホスホリパーゼA2(PLA2)触媒ドメインが含まれている。AV.TL65に感染したフェレットの血漿及びBALF中のAV.TL65カプシド特異的免疫グロブリン(IgG、IgM、及びIgA)を評価するために、コーティング抗原としてAAVウイルス粒子を使用するELISAアッセイを開発した。この方法を検証するために、AV.TL65ウイルスが1~2か月間隔で4回肺に送達された、生後1か月のフェレットから収集した血漿を使用した。コーティング抗原としてAAV5粒子を使用すると、ナイーブ血漿とAV.TL65免疫血漿との間のIgG結合の差異が、1:50希釈から見られ、1:1250希釈までにナイーブ血漿の結合は見られなくなったが、AV.TL65免疫血漿では抗体結合は高いままであった(
図7A)。対照的に、コーティング抗原としてAAV2を使用した場合、すべての希釈率で免疫血漿とナイーブ血漿の間で血漿IgG結合に差はなく、IgGの検出感度はAAV5よりもはるかに低かった(
図7B)。これらの発見は、AV.TL65の表面抗原エピトープがAAV5カプシドと同様の免疫原性を提示することを示唆しており、これらの理由から、我々は試験動物のBALF及び血漿中の抗カプシド抗体アイソタイプの分類のためのコーティング抗原としてAAV5を使用することにした。
【0141】
次に、このELISA法を使用して、試験動物のBALF及び血漿中の抗カプシド抗体アイソタイプ(IgG、IgM、及びIgA)を分類した(
図7及び8)。全般的に、新生仔及び幼若フェレットは、単回投与群と反復投与群の両方の血漿で同様のAAV5反応性IgG応答を誘発したが、力価は反復感染後により高くなった(
図8A及び8D)。対照的に、血漿AAV5反応性IgM(
図8B及び8E)及びIgA(
図8C及び8F)応答は、動物の年齢及び投薬計画に関して、IgGの応答との違いを示した。例えば、カプシド結合血漿IgMレベルは、反復投与群の幼若動物でのみ抑制された(
図8B及び8E)のに対し、カプシド結合血漿IgAレベルは、反復投与後の両方の年齢群で抑制された。さらに、新生仔動物は、最初は2回目のウイルス曝露に続いて、最初は大きな抗カプシドIgA応答を開始し、時間と共に低下したが、幼若動物はこの応答を欠いていた(
図8C及び8F)。これらの発見は、抗体アイソタイプスイッチングの年齢依存性の違いが、AV.TL65への以前の曝露によって影響を受ける可能性があることを示唆している。予想に反して、BALFにおけるAAV5反応性IgG、IgM及びIgAは、新生仔及び幼若動物の両方で、反復投与群と比較して、単回投与群で有意に高かった(
図9)。さらに、カプシド結合IgG、IgM、及びIgAの絶対レベルは、ウイルスに2回曝露された幼若動物のBALFでのNAbのレベルが高いにもかかわらず、両方の年齢群と投与条件の間でほぼ同じであった(
図6A及び6B)。
【0142】
材料及び方法
組換えAV.TL65ウイルスベクターの作製
pAV.TL65repcap(Excoffonら、2009年、上記)は、AV1-SP183-hCFTRΔR、及びAV.TL65-SP183-hCFTRΔR、AV.TL65-SP183-fCFTRΔR、AV.TL65-SP183-fLuc、AV.TL65-SP183-gLucの産生のためのAV.TL65カプシドを生成するために使用されるAAVヘルパープラスミドである。パッケージングに使用されたrAAVプロウイルスプラスミドは、pAV2.F5tg83-hCFTRΔR及びpAV2.F5tg83-fCFTRΔR、ならびにpAV2-F5tg83fLuc(ホタルルシフェラーゼレポーター)及びpAV2-F5tg83gLuc(ガウシアルシフェラーゼレポーター)であった。AV.TL65ベクターは、トリプルプラスミドトランスフェクション法を使用して、フィラデルフィア小児病院(CHOP)のベクターコアで作製された。簡単に説明すると、AAVヘルパーpAV.TL65repcapとアデノウイルスヘルパーpAdを、AAVプロウイルスベクターの1つと一緒にHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされたHEK293細胞から生成されたrAAVベクターは、CsCl密度勾配で精製された。導入遺伝子に特異的なプライマーとプローブを使用した定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって力価を決定し、銀染色後のSDS-PAGEによってベクターストックの純度を評価した。
【0143】
ヒト及びフェレット気道上皮におけるAV.TL65ベクターのin vitro評価
フェレットがAV.TL65の分析に適した種であるかどうかを評価するために、最初に、ヒトとフェレットに由来する高分化気管気管支ALI培養物でin vitro形質導入実験を行った。レポーターベクターAV.TL65-SP183gLucを、ヒト(2個体のドナーからのn=6トランスウェル)及びフェレット(2個体のドナーからのn=6トランスウェル)の気道上皮ALI培養物の頂端に、10,000DRP(DNase耐性粒子)/細胞のMOI(感染多重度)で接種した。感染期間中、培養培地に最終濃度4μMのドキソルビシンを添加し、ガウシアルシフェラーゼとレニラルシフェラーゼの測定用に設計されたレニラルシフェラーゼ活性アッセイキット(Promega)の製造元の指示に従って、5日間の感染後にガウシアルシフェラーゼ活性の相対発光単位(RLU)を測定した。感染していない2つのトランスウェルを対照として設定した。
【0144】
AV1-SP183-hCFTRΔR及びAV.TL65-SP183-hCFTRΔRウイルスによるヒトCF気道上皮の感染後のCFTR媒介電流のin vitro比較
hCFTRΔRの発現及びCFTR機能の補完に対するAV.TL65-SP183-hCFTRΔR及びAV1-SP183-hCFTRΔRの有効性を、CF患者の近位気道に由来する極性化したヒトALI培養物(F508del/F508del)で評価した。各ベクターを、ALI培養物(2個体のドナーからのn=4トランスウェル)の頂端に、ドキソルビシン(2.5μM)及びLLnL(20μM)の存在下で、100,000DRP/細胞のMOIで適用した。これらの2つのプロテアソーム調節剤は、いくつかのAAV血清型により形質導入を増強することが示されている。感染後12日目に、CFTR媒介Cl-電流を前述のようにUssingチャンバーで測定し、cAMP刺激(IBMX/フォルスコリン)及びCFTR阻害(GlyH101)後の短絡電流(ΔIsc)の変化を測定した。非感染ALI培養物(2個体のドナーからのn=4トランスウェル)をベースライン対照として使用した。ΔIscの測定後、各ウイルス感染群からの2つのインサートをプールし、RNeasy(商標)Plus Miniキット(Qiagene)を使用して全RNAを溶解した。mRNAをcDNAに変換した後、ベクター由来のhCFTRΔRmRNAをTaqMan(商標)PCRで定量し、ヒトGAPDHmRNAに対して正規化した。
【0145】
新生仔及び幼若フェレットの肺におけるAV.TL65形質導入の分析
3日齢の新生仔フェレット(n=3)又は1か月齢の幼若フェレット(n=3)に、ドキソルビシン(最終濃度250μM)と混合した体重1グラムあたり4×1010DRPのAV.TL65-SP183-hCFTRΔRウイルスを気管内投与した。模擬感染群(n=3)のフェレットには、PBS中のDox(250μM)のみを接種した。感染後11日目に動物を安楽死させ、気管及び肺組織を別々に採取し、急速凍結し、そして全RNA抽出のために粉砕した。導入遺伝子hCFTRΔRのベクター由来mRNA及び内因性fCFTRをTaqMan(商標)で定量し、hCFTRΔR及びfCFTRΔRのコピー数をGAPDHに対して正規化し、hCFTRΔR/fCFTRの比率として表した。
【0146】
体液性応答研究のための、AV.TL65-SP183-fCFTRΔR及び/又はAV.TL65-SP183-gLucのフェレットへの投与
以下の実験計画法を使用して、新生仔及び幼若フェレットへのAV.TL65ベクターの反復投与を評価した。新生仔フェレット:AV.TL65-SP183-gLucレポーターベクターを、AV.TL65カプシドにナイーブであるか、1週齢でAV.TL65-SP183-fCFTARに以前に感染した4週齢のフェレットに気管内投与した。幼若フェレット:AV.TL65-SP183-gLucレポーターベクターを、AV.TL65カプシドにナイーブであるか、4週齢でAV.TL65-SP183-fCFTRΔRに以前に感染した8週齢のフェレットに気管内投与した。各用量について、動物は、AV.TL65-SP183gLuc又はAV.TL65-SP183-fCFTRΔRベクター(1×1013DRP/kg)及びドキソルビシン(200μM最終濃度)を含む接種物を受けた。1週齢の新生仔フェレットに、イソフルランと酸素の混合物による麻酔下でキットに投与された150μlの接種物の外科的気管内注入を行った。他の年齢では、ケタミンとキシラジンの混合物の皮下注射による麻酔下で、MicroSprayer(商標)エアロゾライザーを使用して気管内にウイルスを投与した。エアロゾル化のためのベクター/ドキソルビシン接種物の量は、フェレットの体重に対して正規化された(5ml/kg)。
【0147】
ガウシアルシフェラーゼ活性の測定のための採血及び気管支肺胞洗浄液の収集
AV.TL65-SP183-gLucレポートベクターの送達後0、5、10、及び14日目に、麻酔されたフェレットからヘパリン処理されたチューブに血漿を収集した。動物をEUTHASOL(商標)(Virbac AH Inc)で安楽死させ、300グラム体重あたり5mlのPBSの注入により、気管/肺カセットから気管支肺胞洗浄液(BALF)を収集した。血漿及びBALF中のgLuc活性を、サンプル収集後すぐに測定した。
【0148】
血漿及びBALFを使用した抗体中和アッセイ
マイクロ中和アッセイを、以前に報告された方法(Wu et al.Front Immunol.8:1649,2017)を変更したものを使用して行った。血漿及びBALF中のNAbの力価を、感染前の段階希釈血漿又はBALFとインキュベートしたAV.TL65-SP183-fLucウイルスによるA549細胞の感染後のレポーター遺伝子発現の減少として定量化した。簡単に説明すると、フェレットからのすべての血漿サンプルを熱で不活化した(56℃、30分)。血漿の5倍段階希釈(1:50から開始し、1:156,250で終了)をAV.TL65-SP183-fLucと総量100μlでインキュベートした。BALFの場合、同じ条件を適用したが、段階希釈は1:5から開始し、1:3125で終了した。これらの混合物を37℃で1時間インキュベートして抗体の結合と中和を促進し、48ウェルプレート(1×105/ウェル、MOI=5000DRP/細胞)のA549細胞の単層に、各希釈率につきデュプリケートで適用した。細胞を37℃/5%CO2でウイルス混合物とともに1時間インキュベートした後、2%ウシ胎仔血清を含むDMEMをウェルに添加し、さらに24時間インキュベートした。次に、細胞溶解物中のホタルルシフェラーゼ活性を、ホタルルシフェラーゼアッセイキット(Promega)で製造元の指示に従って測定した。このアッセイを実施するたびに、AV.TL65-SP183-fLucのみで感染させたA549細胞が100%形質導入の参照対照として機能した。各血漿又はBALFサンプルの中和力価を、最大阻害濃度の半分(IC50)として計算した。
【0149】
血漿及びBALF中のカプシド結合IgG、IgM、及びIgAのELISA測定
ELISA手順を使用して、血漿及びBALF中の総カプシド結合IgG、IgM、及びIgAを捕捉及び定量化した。簡単に説明すると、炭酸緩衝液中のrAAV5を96ウェルELISAプレートに4℃で一晩結合させた(1×109DRP/ウェル)。試験した血漿サンプル(IgG及びIgMの場合は1:2000、IgAの場合は1:20に希釈)及び未希釈のBALFサンプルを各ウェルにアプライし、室温で1時間インキュベートした。PBS-T(0.05%Tween(商標)-20)で3回洗浄した後、希釈したHRP標識二次抗体を添加し、室温で1時間インキュベートした。HRP標識二次抗体は、ニワトリ抗フェレットIgG(Gallus Immunotech又はAbeam)及びヤギ抗フェレットIgM又はIgA(Life-Bio Inc)を含んでいた。次に、HRP反応生成物をプレートリーダーでの吸光度によって定量化した。
【0150】
統計分析
実験データは平均±SDとして表され、Prism7(GraphPad Software,Inc.米国カリフォルニア州サンディエゴ)がデータ分析に使用された。統計的有意性は、一元配置分散分析(ANOVA)とそれに続くテューキー検定(*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001、****P<0.0001)で分析された。
【0151】
動物の世話における倫理声明
すべての動物実験は、アイオワ大学の施設内動物管理使用委員会によって承認されたプロトコルに従って実施された。
【0152】
すべての刊行物、特許及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。上記の詳細な説明では、本発明はその特定のいくつかの実施形態に関連して説明されており、例示の目的で多くの詳細が示されているが、本発明には追加の実施形態が可能であり、本明細書における特定の詳細は、本発明の基本原理から逸脱することなく大幅に変更され得ることが当業者には明らかである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】