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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126760
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】抗炎症剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230905BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 1/13 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 1/107 20060101ALI20230905BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20230905BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230905BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230905BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230905BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C07K7/06
C07K14/00
C07K7/08
C07K19/00
C07K1/13
C07K1/107
C07K16/24
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61P29/00
A61P43/00 121
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/00
A61P37/08
A61P17/06
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/16
A61K45/00
A61K47/64
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023093379
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2021571995の分割
【原出願日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】2019901968
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】500026418
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ペイン,リチャード ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バーン,スコット エヌ
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,デイビッド エム
(72)【発明者】
【氏名】アッシュハースト,アンネリーゼ エス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】免疫系の異常な活性化に関連するかまたは免疫系の異常な活性化によって引き起こされる炎症反応の予防または治療のための抗炎症性ペプチド、該抗炎症性ペプチドを含む医薬組成物、およ炎症の治療のためのその使用を提供する。
【解決手段】アミノ酸配列TVLTVV、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVVまたはその機能的変異体もしくはフラグメントを含む抗炎症性ペプチドであって、21個未満のアミノ酸残基からなる抗炎症性ペプチドを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント
を含む抗炎症性ペプチドであって、21個未満のアミノ酸残基からなる抗炎症性ペプチド。
【請求項2】
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント;
- 1個以上のさらなるアミノ酸(ただし、該1個以上のさらなるアミノ酸は、配列番号1もしくは2の配列に対してN末端位置で配列MTPGTQSPFFを定義しない;または配列番号1もしくは2の配列に対してC末端位置で配列TGSGHASSTPを定義しない)
を含む抗炎症性ペプチドであって、少なくとも15個のアミノ酸残基、好ましくは15~1000個の残基を含む抗炎症性ペプチド。
【請求項3】
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント;
- 1個以上のさらなるアミノ酸、
- 場合により、生体液、組織または製剤中でペプチドの可溶化を促進するため、該ペプチドの細胞への侵入を促進するため、または該ペプチドの検出を可能にするための1つ以上の修飾
を含む抗炎症性ペプチドであって、少なくとも15個のアミノ酸残基、好ましくは15~1000個の残基を含む抗炎症性ペプチド。
【請求項4】
該ペプチドが、配列番号1、2、3、30または50~63のうちのいずれか1つの配列番号のアミノ酸配列、またはその機能的変異体もしくはフラグメントを含むかまたはそれからなる、請求項3記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項5】
該ペプチドが、配列番号1、2、3、30または50~63の配列からなる、請求項4記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項6】
該ペプチドが、配列番号3の配列からなる、請求項4記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項7】
該ペプチドが、配列番号30の配列からなる、請求項4記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項8】
該ペプチドが、さらに、
- 生体液、組織または製剤中でペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分、
- 該ペプチドの細胞への侵入を促進するための部分、および
- 該ペプチドの検出を可能にするための修飾または部分
のうちの1つ以上を含む、請求項1~7いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項9】
該ペプチドが、生体液、組織または製剤中で該ペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分を含む、請求項8記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項10】
該修飾または部分が、1つ以上の荷電アミノ酸残基、該ペプチドの溶解度を高めるためのポリマーまたはポリマーフラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項11】
該修飾または部分が、1つ以上の荷電アミノ酸残基を含み、好ましくは該アミノ酸がカチオン性アミノ酸残基である、請求項10記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項12】
該部分が、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項10または11記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項13】
該ペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分がペプチドのN末端にある、請求項8~12いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項14】
該ペプチドが、該ペプチドの細胞内への侵入を促進するための部分を含む、請求項8~13いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項15】
該部分が、細胞透過性ペプチド(CPP)配列である、請求項14記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項16】
該ペプチドが、ペプチドの検出を可能にするための部分を含む、請求項8~15いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項17】
ペプチドの検出を可能するための部分が、蛍光標識、合成アミノ酸、ビオチンまたは金属コンジュゲートである、請求項16記載の 抗炎症性ペプチド。
【請求項18】
さらにリンカーを含む、請求項1~17いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項19】
該ペプチドにコンジュゲートされたさらなる抗炎症性ペプチドを含む、請求項1~18いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項20】
該機能的変異体またはそのフラグメントが、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を有し、炎症を予防または治療する機能を保持している、請求項1~19いずれか1項記載のペプチド。
【請求項21】
該機能的変異体が、アミノ酸誘導体の合成異性体1つ以上を含む、請求項20記載のペプチド。
【請求項22】
該ペプチドが、配列番号1~66のいずれか1つで定義されているとおりである、請求項8記載のペプチド。
【請求項23】
請求項1~22いずれか1項記載の抗炎症性ペプチドと、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項24】
該ペプチドが、配列番号3または30の配列を含むかまたは該配列からなるか、または配列番号12、32または35で定義されているとおりである、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
該組成物が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含んでいない、請求項23または24記載の医薬組成物。
【請求項26】
さらなる抗炎症剤を含む、請求項23~25いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項27】
さらなる抗炎症剤が、コルチコステロイド、炎症誘発性サイトカインを阻害するための抗原結合タンパク質、DMARD、または炎症過程を阻害するための他の薬剤からなる群から選択される、請求項26記載の医薬組成物。
【請求項28】
該さらなる薬剤が、抗原結合タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体であり、該モノクローナル抗体が、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される炎症性分子の活性を阻害することができる、請求項27記載の医薬組成物。
【請求項29】
該組成物が、経口投与、静脈内投与、局所投与、皮内投与、皮下投与、関節内投与、鼻腔内投与、または吸入による投与に適している、請求項23~28いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項30】
請求項1~14いずれか1項記載のペプチドをコードする核酸またはそのフラグメント。
【請求項31】
請求項30記載の核酸またはそのフラグメントを含むベクターまたはプラスミド。
【請求項32】
個体における炎症の予防方法または治療方法であって、該個体に、請求項1~22いずれか1項記載のペプチド、または請求項23~29いずれか1項記載の医薬組成物を投与して、該個体における炎症を治療または予防することを含む方法。
【請求項33】
さらに、コルチコステロイド、炎症性分子の活性を阻害するための抗原結合タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体、DMARD、光線療法、または個体における炎症を阻害するための他の薬剤からなる群から選択される追加の抗炎症療法または薬剤を投与することを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
さらなる抗炎症剤または療法が、請求項1~22いずれか1項記載のペプチドまたは請求項23~29いずれか1項記載の医薬組成物と同時に投与される、請求項32または33記載の方法。
【請求項35】
さらなる抗炎症剤または療法が、請求項1~22いずれか1項記載のペプチドまたは請求項23~29いずれか1項記載の医薬組成物と連続して投与される、請求項32または33記載の方法。
【請求項36】
個体における炎症の予防または治療のための医薬の製造における請求項1~22いずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項37】
該医薬が、炎症の治療のためのさらなる抗炎症剤を含む、請求項36記載の使用。
【請求項38】
該さらなる抗炎症剤が、コルチコステロイド、炎症性分子の活性を阻害するための抗原結合タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体、DMARD、または個体における炎症を阻害するための他の薬剤からなる群から選択される、請求項37記載の使用。
【請求項39】
該炎症が、免疫応答に関連している、請求項32~38いずれか1項記載の方法または使用。
【請求項40】
該炎症が、TNF、IL-6またはIL-12/23産生に関連している、請求項32~39いずれか1項記載の方法または使用。
【請求項41】
該炎症が、粘膜組織または皮膚組織、好ましくは真皮組織、筋骨格組織、肺組織または腸管組織から選択される組織内または該組織上に存在する、請求項32~40いずれか1項記載の方法または使用。
【請求項42】
該炎症が、炎症性皮膚疾患または障害、筋骨格疾患または障害、肺疾患または障害、または腸管疾患または障害からなる群から選択される疾患または状態の症状である、請求項32~41いずれか1項記載の方法または使用。
【請求項43】
該炎症性疾患または障害が、関節リウマチ、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、または乾癬である、請求項32~42いずれか1項記載の方法または使用。
【請求項44】
該炎症性疾患が炎症性皮膚疾患または障害であり、該方法または医薬が、紅斑、皮膚厚さ、鱗屑、そう痒症および炎症性浮腫からなる群から選択される1つ以上の症状を最小化する、請求項32~43いずれか1項記載の方法または使用。
【請求項45】
個体における免疫応答を調節する方法であって、該調節を必要とする個体に請求項1~21いずれか1項記載のペプチド、または請求項23~29いずれか1項記載の医薬組成物を投与して、固体における免疫応答を調節することを含む、方法。
【請求項46】
個体における免疫応答を調節するための医薬の製造における請求項1~21いずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項47】
該方法または医薬が、炎症性サイトカイン、好ましくはTNF、IL-6およびIL-12/23およびIL-17の放出を最小化する、請求項32~46いずれか1項記載の方法または使用
【請求項48】
該疫応答が、主に適応免疫応答である、請求項39記載の方法または使用。
【請求項49】
免疫応答が、主に自然免疫応答である、請求項39記載の方法または使用。
【請求項50】
該自然免疫応答が、炎症部位での抗原提示細胞、好ましくはマクロファージまたは樹状細胞の活性に関連する、請求項49記載の方法または使用。
【請求項51】
ペプチドまたは組成物の投与が、炎症部位での抗原提示細胞、好ましくはマクロファージまたは樹状細胞の活性を最小化する、請求項50記載の方法または使用。
【請求項52】
炎症、好ましくは異常な免疫活性化に関連する炎症、より好ましくは関節リウマチ、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎または乾癬の予防または治療に用いるための請求項1~21いずれか1項記載のペプチドまたは請求項23~29いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項53】
請求項23~29いずれか1項記載の組成物を含むキット。
【請求項54】
さらなる抗炎症剤を含む、請求項53記載のキット。
【請求項55】
該さらなる抗炎症剤が、コルチコステロイド、抗原結合タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体からなる群から選択され、該モノクローナル抗体が、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される炎症性分子の活性を阻害することができる、請求項53記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、オーストラリア仮出願AU2019901968からの優先権を主張する(その全内容は出典明示により本明細書の一部とする)。
【0002】
発明の分野
本発明は、抗炎症性ペプチド、それを含む医薬組成物、および免疫応答に関連する炎症を含むがこれに限定されない炎症の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書における先行技術への言及は、この先行技術がいずれかの管轄における一般的な知識の一部を形成すること、または、この先行技術が、当業者によって、理解され、関連性があるとみなされ、および/もしくは他の先行技術と組み合わされることが合理的に期待されることを認めるものでも示唆するものでもない。
【0004】
炎症過程は、免疫系の異常な活性化に関連し得るか、または免疫系の異常な活性化によって引き起こされ得、結果として、炎症と免疫活性化の自己永続サイクル、および非常に衰弱させる可能性があるその後の免疫応答を引き起こし得る。
【0005】
これらの過程は、皮膚、筋骨格、腸管または肺の障害または疾患において観察される炎症を含む、急性および慢性の炎症の原因となり得る。
【0006】
マクロファージまたは樹状細胞の異常な活性化を含む異常な免疫細胞応答に関連するか、または該異常な免疫細胞応答によって引き起こされる過程が特に懸念されている。1つの特定の例は、表皮過形成および皮膚への過剰な炎症性浸潤を特徴とする欧米の人口の1~4%が罹患していると推定される特に問題のある不治の状態である乾癬である。
【0007】
他の炎症性疾患や障害は、免疫の関与が疑われる特発性のものであり得、皮膚疾患の例としては、接触皮膚炎およびアトピー性皮膚炎、多形日光疹、ならびに白斑が挙げられる。
【0008】
現在の治療法のいくつかは、重大な免疫抑制的な副作用または他の有害事象を有する。
【0009】
炎症反応の予防または治療を提供する治療法が必要とされている。
【0010】
免疫系の異常な活性化に関連するかまたは免疫系の異常な活性化によって引き起こされる炎症反応の予防または治療を提供する治療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、上記の制限またはニーズの1つ以上に対処しようとするものである。したがって、第1の態様では、本発明は、炎症の予防または治療を必要とする個体における炎症を予防または治療するための抗炎症性ペプチドであって、
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体
を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなるペプチド(ここで、該ペプチドは、21個未満のアミノ酸残基、好ましくは6~20個のアミノ酸残基からなる)を提供する。
【0012】
好ましい実施態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0013】
さらなる好ましい実施態様では、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0014】
本発明の別の実施態様では、抗炎症性ペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列またはその機能的変異体もしくはフラグメントを含むか、またはそれからなるか、または本質的にそれからなる。より好ましくは、該ペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列からなる。
【0015】
本発明のさらなる態様では、
- 配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含むかまたは該アミノ酸配列からなる、ペプチド;および
- 該配列番号1および2の配列に隣接する1個以上のさらなるアミノ酸(ただし、該1個以上のさらなるアミノ酸は、該配列番号1もしくは2の配列に隣接するN末端位置で配列MTPGTQSPFFを定義しないか、または該配列番号1もしくは2の配列に隣接するC末端位置で配列TGSGHASSTPを定義しない)
を含むポリペプチドであって、少なくとも20個のアミノ酸残基、好ましくは20~1000個の残基を含む、ポリペプチドが提供される。
【0016】
本発明の別の態様では、
- 本明細書で定義されるペプチド、好ましくは、配列番号1、2(好ましくは、配列番号3または30)のいずれか1つの配列、またはその機能的変異体もしくはフラグメントを含むペプチド;
- 場合によっては、
〇 生体液、組織または製剤中でのペプチドの可溶化を促進するための修飾、
〇 該ペプチドの細胞への侵入を促進するための部分、および
〇 該ペプチドの検出を可能にするための修飾または部分
から選択される1つ以上の修飾
を含む、抗炎症性ペプチドが提供される。
【0017】
本発明のこの態様の実施態様では、ペプチドは、好ましくは、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号30の配列と少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明は、配列番号1~65のいずれか1つの配列またはその機能的変異体もしくはフラグメントからなるペプチドを提供する。機能的変異体またはフラグメントは、一般的に少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、70%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を示し、実施例に含んでいる本明細書に記載の炎症反応の治療または予防におけるそれらの機能を保持する。
【0019】
いずれかの実施態様では、ペプチドの可溶化を促進するための修飾は、ペプチドの可溶化を促進する、アミノ酸残基(またはそのシリーズ)、ポリマーまたは他の機能的部分の形態である。特定の実施態様では、ペプチドの可溶化を促進するための修飾は、様々な長さのポリエチレングリコール(PEG)を含む。例えば、PEGは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはそれ以上のエチレングリコール単位を含み得る。別法として、PEGは、エチレングリコール単位を含まないものであってもよい。
【0020】
さらなる実施態様では、ペプチドの可溶化を促進するための修飾は、1個以上の荷電アミノ酸残基、好ましくは、1個以上のカチオン性アミノ酸残基、より好ましくは1個以上のリジン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)を含む。
【0021】
ペプチドの可溶化を促進するための修飾がペプチドのN末端領域またはC末端領域に位置し得ることが理解される。好ましくは、該修飾は、ペプチドのN末端領域に位置する。
【0022】
ペプチドの可溶化を改善するための1つ以上の修飾、例えばポリマーとカチオン性アミノ酸残基の組み合わせを使用することができる。
【0023】
いずれかの実施態様では、ペプチドを検出するための部分は、インビボまたはインビトロでのペプチドの検出を促進するための当該技術分野で知られている標識である。該標識は、GFP、YFP、BFP、CFP、Y-FAST、AF594、mCherryまたはdsRedなどの蛍光標識であり得る。該標識は、ビオチンであり得る。別法としては、該標識は、(Gd)Dotaのような金属標識であり得る。
【0024】
さらに別の実施態様では、本明細書に記載のペプチドは、アミノ酸残基の合成異性体を含有し得る。特定の実施態様では、合成アミノ酸異性体はフォトロイシンである。
【0025】
いずれかの実施態様では、本明細書に記載のペプチドは、本明細書におけるペプチドの細胞への侵入を促進または補助するために、N末端領域またはC末端領域にコンジュゲートした細胞透過性ペプチド(CPP)を含み得る。細胞透過性ペプチドの非限定的な例は当該技術分野において周知であり、本明細書において記載される。非限定的な例としては、TatおよびTatをベースとするペプチドが挙げられる。
【0026】
本発明の特に好ましい実施態様では、抗炎症性ペプチドは、配列番号12:KKKK-PEG-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVVで定義されるペプチドを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。より好ましくは、ペプチドは、配列番号12で定義されるとおりである。
【0027】
特定の実施態様では、本発明のペプチドは、さらに、当該技術分野で知られている抗炎症性ペプチドにコンジュゲートされ得る。
【0028】
本発明のいずれかの実施態様では、本明細書に記載のペプチドは、様々な長さのグリシンリピートまたはセリンリピートを含むリンカーを含む。本発明のペプチドおよびリンカーは、直接または間接的に連結され得る。好ましくは、リンカーは、ペプチドのN末端に位置するが、リンカーは、ペプチドのC末端にも位置し得ることが理解される。実施態様では、リンカーは、配列GGGを含み、本発明のペプチドは、KKKK-GGG-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号22)またはその機能的変異体(KKKK-GGG-TPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号23)が挙げられる)を含むかまたはそれからなる。
【0029】
抗炎症性ペプチドは、本明細書の表A~Eのいずれかに記載のペプチドを含み得るか、それからなり得るか、または本質的にそれからなり得る。
【0030】
いずれかの実施態様では、本明細書に記載のペプチドのいずれか1つ(配列番号1~66のペプチドのうちいずれか1つを含む)またはその機能的変異体と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物が提供される。
【0031】
特定の実施態様では、医薬組成物は、配列番号1、2、3、12または30の配列を含むかまたは該配列からなるペプチドと、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0032】
さらに別の実施態様では、ペプチド、または本明細書に記載のペプチドのいずれか1つまたはその機能的変異体、またはその薬学的に許容される塩の薬学的有効量を含む組成物は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含んでいない。
【0033】
本発明は、また、本明細書に記載のペプチドおよびさらなる活性薬剤を含む組成物を提供する。該さらなる活性薬剤は、抗炎症剤、抗ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、または治療を必要とする炎症性障害の治療に有用な他の活性薬剤(例えば、場合によっては、乾癬、皮膚炎、関節リウマチを治療するための薬剤)であり得る。
【0034】
特定の実施態様では、抗炎症剤は、コルチコステロイドである。本発明における使用に好適なコルチコステロイドの非限定的例としては、アリストコート、デカドロン、モメタゾン、コトロン(cotolone)、トリアムシノロン、コルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンおよびジプロピオン酸ベタメタゾンが挙げられる。
【0035】
別法として、さらなる抗炎症剤は、さらなる抗炎症剤は、炎症誘発性分子の活性を阻害するための抗原結合タンパク質である。好ましくは、抗原結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。典型的には、抗原結合タンパク質は抗体であり、例えば、モノクローナル抗体である。
【0036】
特定の実施態様では、炎症性分子の活性を阻害するための抗原結合タンパク質(例えば、モノクローナル抗体)は、抗炎症性分子に結合し、それにより、炎症反応を促進する際の該分子の活性を阻害する。抗原結合タンパク質は、炎症性分子の受容体に結合し得、それにより炎症性分子の活性を阻害する。本発明に従って使用するのに好適な抗原結合タンパク質またはモノクローナル抗体の非限定的な例としては、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン22(IL-22)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子α(TNFα)を含む炎症性分子の活性を阻害する能力を有するものが挙げられる。このような抗原結合タンパク質またはモノクローナル抗体の例としては、ブロダルマブ、イキセキズマブまたはセクキヌマブ(IL-17を阻害するため)、トシリズマブまたはシルツキシマブ(IL-6を阻害するため)、グセルクマブまたはチルドラキズマブまたはミリキズマブまたはブラジクマブまたはリサンキズマブまたはウステキヌマブ(IL-23を阻害するため)、フェザキヌマブ(IL-22を阻害するため)、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、セルトリズマブペゴルまたはゴリムマブ(TNFαの活性を阻害するため)が挙げられる。
【0037】
さらなる活性薬剤がDMARDである実施態様では、DMARDは、サリドマイド、レナリドミド、メトトレキサートであり得る。
【0038】
さらにさらなる実施態様では、さらなる活性薬剤は、炎症性障害の治療に有用であることが知られている薬剤であり得、その非限定的な例としては、カルシポトリオール、アナキンラ、インフラマソーム阻害剤、バリシチニブ、アブロシチニブ、ウパダシチニブ(JAK阻害剤)、トファシチニブ、ルキソリチニブ、抗ヒスタミン剤、局所用タクロリムス(カルシニューリン阻害剤)およびクリサボロール(ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤)が挙げられる。
【0039】
本明細書に記載のペプチドおよびさらなる抗炎症剤を含む組成物は、該ペプチド単独の効果よりも大きい抗炎症効果を提供し得る。例えば、本明細書に記載のペプチドおよびコルチコステロイドの効果は、個々の成分単独の効果と比べて、相乗的である。したがって、本発明はまた、本明細書に記載のペプチド、およびさらなる抗炎症剤を含む相乗的組成物であって、さらなる抗炎症剤が、好ましくはコルチコステロイド、DMARD、または炎症性分子の活性を阻害するために結合するための抗原結合タンパク質である、相乗的組成物を包含する。
【0040】
いずれかの実施態様では、本明細書に記載のペプチドおよびさらなる抗炎症剤を含む組成物は、錠剤、シロップ剤または液剤、吸入剤または鼻腔用スプレー剤、注射剤(皮内または皮下注射、メソセラピー/マイクロニードリングのための製剤を含む)、パッチ剤の剤形で、またはクリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、ローション剤またはゲル剤として、投与のために製剤化され得る。
【0041】
別の実施態様では、治療用ポリペプチドをコードし、かつ、適切な条件下で本発明の治療用ペプチドの1つとして発現する能力を有する、オープンリーディングフレームを有するものを含む、DNAまたはRNAの配列を含む本明細書で定義されるペプチドをコードする核酸またはそのフラグメントが提供される。別法として、本発明は、上記核酸またはそのフラグメントを含むベクターまたはプラスミドを提供する。
【0042】
本発明のさらなる態様では、個体における炎症または炎症性障害を予防または治療する方法であって、該予防または治療を必要とする個体に本明細書に記載のペプチドまたは組成物の薬学的有効量を投与し、それにより該個体における炎症を予防または治療することを含む、方法が提供される。
【0043】
炎症は、皮膚組織または粘膜組織、筋骨格系組織、肺組織または腸管組織から選択される組織内または該組織上に存在し得る。特定の好ましい実施態様では、本発明の該方法は、真皮組織における炎症を治療するためのものである。
【0044】
炎症は、炎症性皮膚疾患または障害、筋骨格疾患または障害、肺疾患または障害、または腸管疾患または障害からなる群から選択される疾患または状態の症状であり得る。
【0045】
本明細書に記載のペプチドまたは組成物の使用によって治療または予防され得る炎症性障害および関連する状態としては、関節リウマチ、気管支炎、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、脂漏性皮膚炎、湿疹、アレルギー性皮膚炎、多形日光疹、炎症性皮膚疾患、毛包炎、脱毛症、白斑、ツタウルシ(poison ivy)、刺虫症、炎症性ざ瘡(acne inflammation)、外因子(化学物質、外傷、汚染物質(例えば、たばこ煙)および日光曝露が挙げられるがこれらに限定されない)によって誘発される刺激、炎症に起因する二次的状態(乾皮症、過角化症、そう痒症、炎症後色素沈着、瘢痕、肺炎症性状態(インフルエンザを含む)、ループス、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシスおよび強皮症が挙げられるがこれらに限定されない)、過敏性肺炎、創傷治癒、および炎症性腸疾患(大腸炎およびクローン病を含む)、または移植に起因する炎症(移植片対宿主病、GVHD)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
炎症性障害および関連する状態が炎症性皮膚障害である場合の好ましい実施態様では、該障害は、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎または乾癬であり得る。このような実施態様では、本明細書に記載のペプチドまたは組成物の投与は、紅斑、皮膚厚さ、鱗屑および炎症性浮腫からなる群から選択される1つ以上の症状を最小化する。
【0047】
別の実施態様では、治療しようとする炎症は、TNF、IL-6またはIL-17またはIL-12/23産生に関連している。したがって、本明細書に記載のペプチドまたは組成物の投与は、炎症性サイトカイン、好ましくはTNF、IL-6、IL-17およびIL-12/23の放出を最小化し得る。
【0048】
別の実施態様では、本明細書に記載のペプチドまたは組成物の投与は、炎症部位でのリンパ球、好中球またはマスト細胞または抗原提示細胞、好ましくはマクロファージまたは樹状細胞の活性化を最小化する。
【0049】
別の実施態様では、個体における免疫応答を調節する方法であって、該調節を必要とする個体に本明細書に記載のペプチドまたは組成物の薬学的有効量を投与し、それにより該個体における免疫応答を調節することを含む、方法が提供される。免疫応答の調節は、本発明のペプチドまたは組成物に応答して本明細書に示される例のいずれかにおいて観察される効果または当業者によって理解されるような効果であると理解される。
【0050】
実施態様では、免疫応答は、適応免疫応答または自然免疫応答である。免疫応答が自然免疫応答である場合、自然免疫応答は、抗原提示細胞、好ましくはマクロファージまたは樹状細胞の活性化に関連する。
【0051】
いずれかの実施態様では、本発明の該方法は、さらに、抗炎症剤、抗ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、または治療を必要とする炎症性障害の治療に有用な他の活性薬剤(例えば、乾癬、皮膚炎、場合によっては関節リウマチを治療するための薬剤)が挙げられるさらなる活性薬剤の投与、またはさらなる治療の実施(例えば、光線療法の使用)を含み得る。
【0052】
特定の実施態様では、該方法は、コルチコステロイドの形態のさらなる抗炎症剤の投与を含む。本発明の該方法における使用に好適なコルチコステロイドの非限定的な例としては、アリストコート、デカドロン、モメタゾン、コトロン(cotolone)、トリアムシノロン、コルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンおよびジプロピオン酸ベタメタゾンが挙げられる。
【0053】
別法として、該方法は、炎症性分子の活性を阻害するための抗原結合タンパク質である抗炎症剤の投与を含み得る。好ましくは、抗原結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。典型的には、抗原結合タンパク質は、抗体、例えばモノクローナル抗体である。抗原結合タンパク質(例えば、モノクローナル抗体)は、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン22(IL-22)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子α(TNFα)を包含する炎症性分子の活性を阻害する能力を有する抗原結合タンパク質またはモノクローナル抗体であり得る。このような抗原結合タンパク質またはモノクローナル抗体の例としては、ブロダルマブ、イキセキズマブまたはセクキヌマブ(IL-17を阻害するため)、トシリズマブまたはシルツキシマブ(IL-6を阻害するため)、グセルクマブまたはチルドラキズマブまたはミリキズマブまたはブラジクマブまたはリサンキズマブまたはウステキヌマブ(IL-23を阻害するため)、フェザキヌマブ(IL-22を阻害するため)、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、セルトリズマブペゴルまたはゴリムマブ(TNFαの活性を阻害するため)が挙げられる。
【0054】
さらなる活性薬剤がDMARDである実施態様では、DMARDは、サリドマイド、レナリドミド、メトトレキサートであり得る。
【0055】
さらにさらなる実施態様では、さらなる活性薬剤は、炎症性障害の治療に有用であることが知られている薬剤であり得、その非限定的な例としては、カルシポトリオール、アナキンラ、インフラマソーム阻害剤、バリシチニブ、アブロシチニブ、ウパダシチニブ(JAK阻害剤)、トファシチニブ、ルキソリチニブ、抗ヒスタミン剤、局所用タクロリムス(カルシニューリン阻害剤)およびクリサボロール(ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤)が挙げられる。
【0056】
別の実施態様では、
- 炎症、好ましくは異常な免疫活性化に関連する炎症、場合によっては接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎または乾癬の予防または治療;
- 免疫応答、好ましくは自然免疫応答の調節;
- TCRαβ+ T細胞のレベルの低下;
- TCRγδ+ T細胞のレベルの低下;
- 制御性細胞、好ましくは制御性CD4+ T細胞の増加;または
- 炎症部位での好中球、マスト細胞または抗原提示細胞、好ましくはマクロファージまたは樹状細胞の活性化の阻害
のための医薬の製造における本明細書に記載のペプチドの使用が提供される。
【0057】
さらなる実施態様では、該医薬は、さらに、抗炎症薬、好ましくは炎症反応を予防または治療するためのコルチコステロイドを含み得る。さらに別の実施態様では、該医薬は、さらに、好ましくはインターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される、炎症性分子に結合するための抗原結合タンパク質を含み得る。
【0058】
さらに別の実施態様では、
- 炎症、好ましくは異常な免疫活性化に関連する炎症、より好ましくは接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎または乾癬の予防または治療;
- 免疫応答、好ましくは自然免疫応答の調節;
- TCRαβ+ T細胞のレベルの低下;
- TCRγδ+ T細胞のレベルの低下;
- 制御性細胞、好ましくは制御性CD4+ T細胞の増加;または
- 炎症部位での好中球、マスト細胞または抗原提示細胞、好ましくはマクロファージまたは樹状細胞の活性化の阻害
のための、
- 第一の医薬の製造における本明細書に記載のペプチドの使用;および
- 第二の医薬の製造における炎症反応の予防または治療のためのコルチコステロイドの使用;または
- 第二の医薬の製造における、好ましくはインターロイキン6(IL-6)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される、炎症性分子の活性を阻害するための抗原結合部位の使用
が提供される。
【0059】
別の実施態様では、炎症、好ましくは異常な免疫活性化に関連する炎症の予防または治療に用いるための本明細書に記載のペプチドまたは組成物の薬学的有効量が提供される。
【0060】
いずれかの実施態様では、本明細書に記載のペプチドまたは組成物は、皮内、関節内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、脳内、リンパ節内、気管内、膣内もしくは経皮を介した投与、直腸投与、吸入による投与、または、特に耳、鼻、目もしくは皮膚への、局所投与に適している。好ましい実施態様では、本明細書に記載のペプチドまたは組成物は、局所的に、鼻腔内に、または吸入によって投与される。
【0061】
本明細書で使用される場合、文脈上別のことが要求される場合を除いて、用語「含む(comprise)」、ならびに該用語の変形「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」および「含まれている(comprised)」などは、さらなる添加剤、成分、整数または工程を除外することを意図しない。
【0062】
本発明のさらなる態様およびこれよりも前の項に記載の態様のさらなる実施態様は、例として添付の図面を参照して与えられた以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】ペプチド投与は皮膚腫瘍成長の促進を引き起こす。UV13-1腫瘍細胞の移植の21日前および7日前に5nmolペプチドRP23(配列番号12)(実線)、PBSまたはリポソーム対照(点線)を含有する混合物をマウスに皮下注射した。ワクチン製剤にペプチドRP23が含まれていた場合、腫瘍はより速く成長し(A)、マウスはより早く腫瘍に屈した(B)。ログランク検定を使用して生存率の差を統計学的に分析した。
【0064】
図2】ペプチド投与は接触皮膚炎マウスモデルにおいて炎症を軽減し、骨髄の炎症性浸潤を軽減する。(A)DNFB誘発性接触皮膚炎の実験概要。(B)ペプチドRP23(配列番号12)処理マウスの耳の厚さ、3回繰り返した。(C)耳における炎症性浸潤は、DNFBによるチャレンジ(D15)の72時間後にフローサイトメトリーにより特徴づけられ、単球/マクロファージ集団(CD11b+)の変化を示した。データは、平均値±S.E.Mとして表される。統計学的有意性は、(B)多重t検定によって、(C)ダネット多重比較検定を用いたANOVAによって、決定された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0065】
図3】ペプチド効果は、ペプチド配列および用量に依存する。(A)PBS、スクランブルペプチド(scrambled peptide)またはペプチドMUC1SP(MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV;配列番号3)を、C57BL/6マウス(n=5)を腹部でDNFBによって感作する7日前に皮下注射した。耳へのDNFBチャレンジ後の耳の炎症が決定され、これは該効果が配列番号3の配列に特異的であったことを示している。(B)ペプチドRP23(配列番号12)およびMUC1SP(配列番号3)の免疫抑制効果の比較。(C)配列番号12は用量依存的に免疫を抑制した。(D)配列番号12注射へのGM-CSFの添加は免疫抑制を無効にした。データは平均値±S.E.Mである。
【0066】
図4】ペプチド投与は、乾癬マウスモデルにおける局所的な疾患の重症度を軽減する。(A)実験概要(B)背中と耳へのグルココルチコイドの毎日(0~4日目)の局所適用と比較した、PBSまたはペプチドRP23(配列番号12)注射を受けたマウスの臨床スコア。(C)ペプチドRP23注射部位に局所的な疾患の測定。発赤は不偏紅斑計(unbiased erythema meter)を用いて測定し、皮膚厚さは手動ノギスによって測定した。(D)全身性免疫抑制の尺度としての5日目の脾臓重量。耳の厚さの測定は、ペプチドRP23が遠位部位で疾患を抑制しなかったことを示した。データは平均値±S.E.Mとして表される。統計学的有意性は、ダネット多重比較検定を用いたANOVAによって決定された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
【0067】
図5】ペプチド投与は、炎症誘発性DCおよびマクロファージの活性化を軽減する。(A)C57BL/6マウスの脾細胞をLPS±ペプチドRP23(配列番号12)で刺激し、DC上の活性化マーカーの発現をフローサイトメトリーによって評価した。(B)マウスの骨髄由来マクロファージをペプチドRP23と一緒にインキュベートし(30分間)、LPSで刺激した(一夜)。陽性対照はLPSのみで刺激した。陰性対照は刺激しなかった。炎症性サイトカイン産生をELISAによって評価した。(C)CD14+ 細胞をヒト血液から単離し、ヒト血清と一緒に培養することによりマクロファージに分化させた。細胞をペプチドRP23と一緒にインキュベートし(30分間)、次いで、LPS(左パネル)またはイミキモド(右パネル)で一夜刺激した。炎症性サイトカイン(IL-6またはIL-12/23)産生をELISAによって評価した。6つのドナーの代表。データは平均値±S.E.Mとして表される。統計学的有意性は、ダネット多重比較検定を用いたANOVAによって決定された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。
【0068】
図6】ペプチド投与は、マウスまたはヒトのマクロファージ/単球に対して細胞分裂抑制性または細胞毒性ではない。一夜インキュベートした後、(A)RAWおよびTHP-1細胞株におけるWST-1アッセイ(データは2反復の平均値である)により(B)一次マウスBMDMまたはヒトMDMにおけるLDHアッセイ(データは平均値±S.E.Mである)により、ペプチドRP23(配列番号12)の細胞分裂抑制性/細胞毒性効果を評価した。
【0069】
図7】ペプチド投与は、ヒトの皮膚における自発的なミエロイド細胞活性化を減少させる。(A)ペプチドRP23(配列番号12)を健康なヒトの植皮片に内皮注射した。一夜培養した後、ミエロイド細胞活性化を評価した。(B)皮膚におけるミエロイド細胞サブセット上の活性化マーカーの自発的なアップレギュレーションに対するペプチドRP23の効果。データは6つのドナーの代表である。
【0070】
図8】炎症反応に対するペプチド変異体の効果。マウスは、PBSまたは以下のペプチドのうち1つの注射(10nmol)を腹部の皮下に受けた(A)ペプチドRP23(配列番号12)、ペプチドAF594-RP23(配列番号21)、ペプチドK4-G3-MUC1SP(配列番号22)またはMUC1SP Cフラグメント(配列番号2)。5日後、マウスを耳の遠位部位にてDNFBでチャレンジした。耳の厚さを72時間にわたって測定した。
【0071】
図9】接触皮膚炎モデルにおける炎症反応に対する、N末端メチオニンを含まないさらなるペプチド変異体の効果。マウスは、PBS、RP23(配列番号12)(10nmol)、または本明細書に記載の配列番号32および35を含む表に示されているペプチド変異体のうち1つ(RP23の等モル量)の注射1回を腹部の皮下に受けた。示されている場合、フォトロイシンはロイシンに取って代わり、これらの分子は光架橋研究に使用された。7日後、腹部の皮膚を接触刺激物(DNFB)で感作し、5日後、マウスを耳において遠位部位にてDNFBでチャレンジした。(A)72時間にわたる耳の厚さの特異的増加、データは平均値+/-SEM(n=6)である。統計学的有意性は、ダネット多重比較検定を用いたANOVAによって、PBSのみの対照に対して決定された、**p<0.01。(B)チャレンジの24時間後の耳の厚さの特異的増加。データは、平均値+/-SEM(n=6)である。統計学的有意性は、示されたように、t検定によって、関連する対照に対して決定された(*p<0.05、**p<0.01、ns=有意ではない)。
【0072】
図10】イミキモド誘発乾癬マウスモデルにおけるRP23と局所ステロイドの治療相乗効果。C57BL/6雌性マウスの背中にアルダラ(Aldara)クリーム(イミキモド5%、57.5mg)を毎日(0~4日目)適用して乾癬を誘発した。(A)-1日目にPBSまたはRP23注射を受け、0日目に背中にグルココルチコイド(0.05%ジプロピオン酸ベタメタゾン、「BD」30mg)の局所適用を受けたかまたは受けないマウス、(B)-1日目にPBS注射を受けただけのマウスと比較して、1日目にPBSまたはRP23注射を受け、かつ1日目にグルココルチコイドの局所適用を受けたマウスの臨床スコア(PASI;修正乾癬面積重症度指数(modified psoriasis area and severity index))。データは、平均値+/-SEM(n=5)である。統計学的有意性は、ダネット多重比較検定を用いたANOVAによって、PBSのみの対照に対して決定された(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
【0073】
図11】RP23処置は、イミキモド誘発乾癬モデルにおいて、背中の皮膚におけるTCRαβ+ T細胞を減少させ、マウスのリンパ節における制御性CD4+ T細胞を増加させる。C57BL/6雌性マウスは、-1日目にPBSまたはRP23注射を受け、次いで、アルダラクリーム(イミキモド5%、57.5mg)を背中に毎日(0~4日目)適用して乾癬を誘発させた。15日目に、皮膚および鼠径リンパ節をフローサイトメトリーによって分析し、(A)背中の乾癬皮膚における総白血球(CD45+)の割合としてT細胞サブセット、(B)転写因子染色を用いて皮膚流入領域リンパ節(鼠径部)におけるCD3+CD4+ TCRαβ T細胞の数を定量し、制御性表現型を持つ細胞(FoxP3+)を同定した。データは平均値+/-SEM(n=4~5)である。統計学的有意性は、多重t検定によって決定された(*p<0.05)。
【0074】
図12】局所適用用に製剤化されたRP23は、ヒトの皮膚に浸透し得る。全層ヒト皮膚外植片にストックエマルション中のRP23AF594を局所的に適用し、24時間培養した。凍結切片を蛍光顕微鏡によって分析した。RP23AF594(矢印で示されたDAPI+ 細胞との関連)は、表皮内(E)および真皮内の基底膜(線)下(D)の両方で検出できた。
【0075】
図13】RP23処置は、アトピー性皮膚炎マウスモデルにおける炎症を軽減する。C57BL/6雌性マウスの耳と剃毛した背中を、刺激性オキサゾロンまたはビヒクルのみの局所適用で、感作し(0日目)、チャレンジした(7日目、10日目、14日目、17日目、19日目、21日目、23日目、25日目および27日目)。-1日目、または-7日目と-1日目の両日にRP23をマウスに注射することを、PBSのみを注射すること(-7日目および-1日目)、または毎回のオキサゾロン適用時に背中へステロイド(ジプロピオン酸ベタメタゾン0.01%、30mg)を局所適用することと比較する。耳の厚さを手動ノギスで測定した。データは平均値+/-SEM(n=5)である。
【0076】
図14】RP23は、皮膚および肺における自然免疫細胞と相互作用する。C57BL/6マウスへの投与の24時間後に、AF594-RP23+ 細胞をフローサイトメトリーによって同定した。(A)RP23を腰背部(lower back)に皮下注射した。背中の皮膚におけるRP23+ 白血球(CD45+)は、主に好中球(CD11b+ Ly6G+)またはCD11b+ ミエロイド細胞サブセットであった。(B)RP23を鼻腔内注入によって肺に送達した。肺における免疫細胞サブセット間の総RP23+ 白血球のパーセンテージ分布を示す。データは、平均値+/-SEM(n=4)である。
【0077】
図15】肺へのRP23の粘膜送達は、肺および気管支肺胞腔における抗原提示細胞の活性化を減少させる。(A)C57BL/6マウス(n=5)にPBSもしくはRP23のいずれかを鼻腔内注入によって投与、または(B)C57BL/6マウス(n=4)にPBS、スクランブルRP23ペプチド(scramble RP23 peptide)もしくはRP23のいずれかを鼻腔内注入によって投与し、次いで、24時間後にPam2Cys-SK4-PEG(OH)を鼻腔内投与して炎症状態を誘発させた。24時間後、気管支肺胞洗浄および灌流肺からの細胞を収集した。CD11c+ 樹状細胞上のMHCIIの蛍光強度中央値をフローサイトメトリーによって決定した。データは平均値+/-SEMである。統計学的有意性は、(A)t検定(***p<0.001)および(B)ダネット多重比較検定によるANOVA(*p<0.05)によって、PBS対照に対して決定された。
【発明を実施するための形態】
【0078】
実施態様の詳細な説明
本発明者らは、本明細書において、炎症の抑制、予防または治療に有用なペプチド群を同定した。特に、本発明者らは、本明細書で特徴付けられるペプチドが、不適切な炎症反応を抑制、予防または治療する能力を有することを確立した。実施態様では、該ペプチドは、免疫系活性化に関連する炎症反応を抑制するために使用することができる。別の実施態様では、本明細書に記載のペプチドは、付随する免疫系活性化がない場合に炎症反応を抑制するために使用することができる。
【0079】
本明細書に記載のペプチドは、皮膚炎および乾癬を含む炎症反応の活性化を評価するために一般的に使用される多くのモデルにおいて有用性を有することが示されている。これらのモデルは、急性炎症および/または慢性炎症のエピソードを含むことが当技術分野で十分に特徴付けられている。したがって、本発明者らは、炎症を伴う広範囲の疾患または状態に対する定義されたペプチドの適用を認識しており、それらのうち開示されたものはほんの一例である。
【0080】
本明細書に記載のペプチドは、炎症過程の重要な特徴である紅斑の抑制において特別な有用性を有する。一態様では、これは、影響を受けた領域への単球/マクロファージまたは他の貪食細胞浸潤の抑制によって達成される。特に、該ペプチドは、炎症性ケモカインまたは炎症性サイトカインの分泌および炎症誘発性免疫細胞の表面活性化マーカーの発現を減少させる能力を有している。非限定的な例としては、CD86、MHCII、ならびにIL-6、IL-12/IL-23、TNF-αおよびMCP-1のレベルが挙げられる。本発明者らはまた、炎症反応の抑制の効果が、細胞に対するいかなる細胞分裂抑制性効果または細胞毒性効果もない場合であるという驚くべき発見を確立している。本明細書に記載のペプチドは、驚くべきことに、抗原提示細胞の活性化を低下させることができ、真皮樹状細胞の自発的活性化を低下させることができ、TCRαβ+ T細胞のレベルを低下させることができ、制御性CD4+ T細胞を増加させることができる。これらのデータは、TNF-αおよび他の炎症誘発性サイトカインによって媒介される炎症状態または制御性CD4+ T細胞のような制御性細胞の誘導によって抑制される炎症状態を含む広範囲の炎症状態における炎症の阻害におけるペプチドの潜在的役割を指摘している。
【0081】
本発明者らが得たデータは、本発明のペプチドが、自己炎症、組織損傷、癌または感染症を包含する様々な刺激下での炎症刺激に関与する自然免疫細胞による炎症誘発性反応を抑制することを示唆している。特徴的にTh1型炎症またはIL-17/Th17駆動されるモデルを用いて、本発明者らは、本発明のペプチドがTh1/Th17型応答の刺激を緩和(低減)し得、および/または調節応答(FoxP3+ CD4+ T細胞)を促進し得ることを示している。したがって、これらのデータは、本発明のペプチドが、乾癬、皮膚炎、関節リウマチ、IBD、移植片拒絶/寛容(移植片対宿主病、GVHD)などの適応症を含む炎症性障害の治療に適している可能性があることを示している。
【0082】
したがって、本明細書で特徴付けられるペプチドは、
1.紅斑;
2.単球/マクロファージ浸潤;
3.サイトカインおよび/またはケモカインのレベルの増加。
4.炎症細胞上の細胞受容体/マーカーの活性化。
5.樹状細胞の活性化、ならびに/または
6.リンパ球の活性化
の1つ以上によって特徴付けられる炎症反応の抑制、治療または予防において有用性を有する。
【0083】
また、本発明者らは、記載されたペプチドが、不必要な免疫系抑制を回避する方法で局所炎症を軽減するのに有用性を有することを確立している。ほとんどの臨床的に処方される免疫抑制剤が全身性免疫抑制を引き起こすので、これは重要である。したがって、本明細書に記載のペプチドは、これまでに認識されていなかった利点を提供する。
【0084】
炎症反応
本明細書に記載のペプチドは、付随する免疫応答の有無にかかわらず、急性または慢性炎症反応の治療または抑制において有用性を有する。別法として、本明細書に記載のペプチドは、自然応答、適応免疫応答またはその両方であり得る免疫応答に関連する不適切な急性炎症反応を抑制することができる。
【0085】
不適切な炎症反応の抑制または不適切な免疫応答の治療という用語は、炎症状態の特徴である紅斑(発赤)、浮腫(腫脹)、疼痛およびそう痒を含む炎症の症状の1つ以上の軽減を意味する。これはまた、TNF-α、IL-6、CXCL1、CXCL2、IL-1β、プロスタグランジンE2およびIL-23/IL-17、ならびに当該技術分野で既知の他のケモカイン/サイトカインなどの1以上の炎症誘発性サイトカインおよび/またはケモカインの減少であると理解することもできる。
【0086】
実施態様では、本明細書に記載のペプチドは、付随する免疫応答の有無にかかわらず、急性炎症反応の治療または抑制において有用性を有する。実施態様では、該ペプチドは、自然免疫応答に関連する急性炎症反応を抑制することができる。
【0087】
急性炎症は、組織損傷に反応して起こる短期的なプロセスと理解されており、通常、数分または数時間以内に現れる。それは、疼痛、発赤、不動(機能喪失)、腫脹および熱という5つの主徴によって特徴付けられる。急性炎症反応は、血中白血球の動員、組織常在細胞(マスト細胞、樹状細胞、線維芽細胞、マクロファージ)の活性化、ならびにIL-1およびTNFαを含む一連のメディエーターの産生を伴う。この結果は、炎症過程の最終的な消散、細胞再生もしくは創傷治癒につながる事象の誘発、または慢性炎症として特徴付けられ得る炎症反応の進行を含み得る。
【0088】
実施態様では、本明細書に記載のペプチドは、付随する免疫応答の有無にかかわらず、慢性炎症反応の治療または抑制において有用性を有する。実施態様では、該ペプチドは、適応免疫応答に関連する慢性炎症反応を抑制することができる。
【0089】
慢性炎症は、数か月から数年の長期間続くゆっくりとした長期炎症であると理解されている。慢性炎症は、(1)マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、原虫、真菌、および宿主防御に抵抗して長期間組織内に留まることができる他の寄生虫を含む感染性生物などの急性炎症を引き起こす媒介物の排除失敗;(2)体内で酵素分解または貪食作用によって排除できない低レベルの特定の刺激物または異物への暴露;(3)免疫系が身体の正常な構成要素に感作される自己免疫障害;(4)急性炎症の再発エピソード;または(5)酸化ストレスおよびミトコンドリア機能障害を引き起こす炎症性および生化学的誘発物質を含む多数の様々な要因によって引き起こされ得る。
【0090】
慢性炎症過程は、当該技術分野で知られている多くの試験のうちの1つによって診断することができると理解される。これらとしては、(1)低アルブミン血症と全てのガンマグロブリンのポリクローナル増加(ポリクローナルガンマグロブリン血症)の併発を示す血清タンパク質電気泳動(SPE);(2)血清高感度C反応性タンパク質(hsCRP)およびフィブリノゲンの測定(hsCRPの正常な血清レベルは、男性で0.55mg/L未満、女性で1.0mg/L未満であり、フィブリノゲンの正常なレベルは、200~300mg/dlである);ならびに腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン1β(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン17(IL-17)およびインターロイキン12/23(IL-12/23)などの炎症誘発性サイトカインを検出することが挙げられる。
【0091】
適応および自然免疫応答
本明細書に記載のペプチドは、適応免疫応答または自然免疫応答に関連する炎症過程の抑制において有用性を有する。
【0092】
適応免疫または獲得免疫には、体液性(Bリンパ球)および細胞媒介性(Tリンパ球)免疫反応が含まれる。体液性免疫には、B細胞およびその産物(抗体を含む)が関与している。細胞媒介性免疫には、貪食細胞、抗原特異的CD4+ およびCD8+ Tリンパ球の活性化、ならびに抗原に応答した種々のサイトカインの放出が関与している。細胞媒介免疫によって、ウイルス感染細胞または細胞内細菌を持つ細胞など外来抗原のエピトープを表面に呈する細胞においてアポトーシスを誘導することができる抗原特異的細胞傷害性T細胞が活性化される。細胞媒介免疫応答、特にCD4+ ヘルパー応答には、B細胞の活性化も関与している。細胞媒介免疫応答にはまた、細胞毒性顆粒の認識および分泌(ナチュラルキラー細胞の場合)および貪食作用(マクロファージの場合)による病原体の破壊、ならびにサイトカインを分泌するための細胞の刺激のために、マクロファージおよび自然リンパ球(例えば、ナチュラルキラー細胞)も関与している。細胞媒介免疫は、主にT細胞駆動であり、ヘルパー(CD4+)および細胞傷害性(CD8+)サブタイプを利用し、ウイルス感染、移植片拒絶、慢性炎症および腫瘍免疫に対する応答に関与している。活性化T細胞は、新規抗原への曝露の後、細胞媒介攻撃を開始するのに数日かかることがあるが、メモリーT細胞は、以前の曝露によってプライミングされた場合、迅速に応答する。本明細書に記載のペプチドは、当該技術分野で知られているように、そして本明細書に記載されるように、適応免疫応答に関連する慢性炎症過程の治療において有用性を有する。
【0093】
対照的に、自然免疫系は、感染に対するバリア(皮膚、胃腸管、気道、泌尿生殖器の上皮)、抗菌ペプチドおよびタンパク質、体液性成分(すなわち、補体およびオプソニン)、細胞成分(すなわち、マスト細胞、好中球、単球/マクロファージ、樹状細胞、および自然リンパ球系細胞)で構成されている。自然免疫は、宿主防御の最前線として機能し、正常な宿主細菌叢を許容しながら感染を予防するのに欠くことのできない役割を果たす。自然免疫系は、その後の適応免疫応答の発達を方向付ける。
【0094】
本明細書に記載のペプチドは、皮膚、胃腸管、関節および気道を含む身体のそのようなバリア層内の自然免疫応答に関連する不適切な炎症反応を抑制するのに有用性を有することが理解される。
【0095】
当業者はまた、不適切な炎症反応が適応免疫応答と自然免疫反応の両方の活性化に関連し得ることを理解するであろう。
【0096】
GM-CSF
実施態様では、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩の薬学的有効量を含むペプチド医薬組成物は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含まない。
【0097】
GM-CSFは、サイトカインとして機能する、マクロファージ、T細胞、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞、内皮細胞および線維芽細胞によって分泌される単量体糖タンパク質である。主に顆粒球、マクロファージおよび単球ならびに樹状細胞集団の成長および分化因子としての役割に起因して、炎症誘発性の役割を有することが知られている。したがって、GM-CSFまたはその受容体を遮断できる薬剤は消炎療法として用いられてきた。
【0098】
したがって、不適切な炎症反応の抑制、治療または予防において有用性を有する本明細書に記載のペプチドが、炎症過程を促進する成長因子、サイトカイン、ケモカイン等と組み合わせて使用されないことを想定している。これは、本明細書に記載のペプチドのいずれかの治療効果を打ち消し得るからである。これは、本明細書の実施例に例示されており、それによると、GM-CSFは本発明のペプチドの抑制効果を抑止にする(図3)。
【0099】
炎症を促進し得るこのような成長因子、サイトカイン、ケモカイン等の決定は十分に当業者の知識の範囲内であり、GM-CSF、TNF-α、IL-6、IL-12、IL-17、IL-1β、MCP-1、MIP-1、IFN-γ、IL-18、IL-23、CCL-2、CCL-3、CCL-4およびCCL-5を挙げることができる。
【0100】
定義されたペプチドによる治療に適した状態
本発明は、不適切な免疫反応の治療または予防を必要とする個体における不適切な免疫反応を治療または予防する方法であって、治療を必要とする個体に、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩の治療有効量を含む医薬組成物を投与し、それによって該個体における不適切な免疫反応を治療することを含む、方法を提供する。したがって、本発明のペプチドは、広範囲の炎症性障害の治療において有用性を見出す。
【0101】
用語「個体」または「患者」または「対象体」とは、本明細書では、炎症状態、および/または目に見える症状を伴う炎症状態の治療を受けている哺乳動物またはヒトを指す。好ましくは、個体はヒトである。
【0102】
「治療有効量」は、本明細書では、組織の患部または罹患領域に適用したときに抗炎症効果を示す、ペプチドを含む組成物の製剤の量を示すために使用される。本発明の製剤の1回の適用で十分であり得るか、該製剤は、数日間または数週間の期間にわたって1日数回のように、ある期間にわたって繰り返し適用され得る。有効成分の量は、処置される状態、状態の進行段階、宿主の年齢およびタイプ、ならびに適用される製剤のタイプおよび濃度によって異なる。所与の場合における適切な量は、当業者には容易に明らかであるか、または通例の実験によって決定することができるであろう。
【0103】
対象体の「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」という用語は、疾患もしくは状態、疾患もしくは状態の症状、または疾患もしくは状態のリスク(またはそれに対する感受性)を遅延させること(delaying)、緩徐化すること(slowing)、安定化させること、治癒すること(curing)、治癒すること(healing)、軽減すること(alleviating)、緩和すること(relieving)、変化させること(altering)、治療すること(remedying)、より悪化させないこと(less worsening)、寛解させること(ameliorating)、または改善させること、または、疾患もしくは状態、疾患もしくは状態の症状、または疾患もしくは状態のリスク(またはそれに対する感受性)に影響を及ぼすこと(affecting)を目的として、対象体への本発明の化合物の適用または投与(または対象体由来の細胞または組織への本発明の化合物の適用または投与)を含む。「治療すること」という用語は、寛解(abatement);寛解(remission);悪化の速度の低減;疾患の重症度の低減;安定化、症状の軽減(diminishing of symptoms)、または損傷、病理もしくは状態を対象体にとってより耐えられるものにすること;変性または減退(decline)の速度を緩徐化すること;変性の最終ポイントをより衰弱させないこと(making the final point of degeneration less debilitating);または対象体の身体的または精神的な健康を改善することなど、客観または主観パラメータを含む、損傷、病理または状態の治療または寛解における成功の指標を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、用語「予防すること」、「予防する」または「予防」は、本発明のペプチドまたは組成物を投与することによって炎症状態の少なくとも1つの症状の発生を止めるかまたは妨げることを含む。この用語はまた、再発を防止または妨げるための寛解中の対象体の治療を包含する。
【0105】
本明細書に記載のペプチドの使用によって治療または予防され得る炎症性障害および関連する状態としては、関節リウマチ、気管支炎、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、脂漏性皮膚炎、湿疹、アレルギー性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、多形日光疹、炎症性皮膚疾患、毛包炎、脱毛症、白斑、ツタウルシ(poison ivy)、刺虫症、炎症性ざ瘡(acne inflammation)、移植片拒絶/寛容(移植片対宿主病、GVHD)、外因子(化学物質、外傷、汚染物質(例えば、たばこ煙)および日光曝露が挙げられるがこれらに限定されない)によって誘発される刺激、炎症に起因する二次的状態(乾皮症、過角化症、そう痒症、炎症後色素沈着、瘢痕などが挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書に記載のペプチドの使用によって治療または予防され得る炎症性障害および関連する状態としてはまた、過度の肺炎(ウイルスまたは微生物感染症によって引き起こされる場合を含む)、ループス、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシスおよび強皮症、過敏性肺炎をもたらすものが挙げられる。
【0107】
本明細書に記載のペプチドの使用によって治療または予防され得る炎症性障害および関連する状態としてはまた、創傷治癒および炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)の間に存在し得るものも挙げられる。
【0108】
好ましくは、本発明の該方法を使用して治療または予防し得る炎症性障害および関連する状態としては、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、ウイルスおよび微生物感染症、創傷および炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、筋骨格炎症状態(例えば関節リウマチを含む)および移植片拒絶/寛容(移植片対宿主病、GVHD)が挙げられる。
【0109】
乾癬、皮膚炎および他の炎症性皮膚障害
当業者は、乾癬および皮膚炎を含む炎症性皮膚疾患の予防または治療を必要とする個体を特定する方法、およびそのような状態に対する治療の有効性を決定する方法に精通しているであろう。
【0110】
本明細書で使用される場合、皮膚炎とは、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎または疱疹状皮膚炎を指し得る。
【0111】
アトピー性皮膚炎は、内因性湿疹、屈曲性湿疹(flexural eczema,)、乳児湿疹からなる群から選択される一種の湿疹であり得、「ベニエ痒疹」、「神経皮膚炎」または「ジアセジク痒疹(prurigo diathesique)」としても知られ得る。
【0112】
該状態がアトピー性皮膚炎であり、投与されるペプチドが局所的に投与される場合、本発明のペプチドと接触する皮膚の領域は、破裂した皮膚および破裂していない皮膚を含み得る。
【0113】
乾癬は、皮膚肥厚、赤い斑、および乾燥した鱗屑を特徴とする、免疫媒介炎症性皮膚疾患である。乾癬は、損傷、外傷、感染症およびメディケーションを含む多くの要因によって引き起こされ得る。該疾患は、紅斑(発赤)、硬結(厚み)、落屑(鱗屑)の重症度をランク付けする乾癬活性重症度指数(Psoriasis Activity and Severity Index)(PASI)スケールを用いて臨床的に評価さる。試験パラメータとしては、皮膚の生体内臨床評価、皮膚切片の病理組織学的評価、ならびに皮膚および/または内部免疫器官におけるオプショナルサイトカイン解析が挙げられる。該疾患には、慢性斑状病変、皮疹および膿疱性病変を含む、特定の明確であるが重複する臨床表現型がある。膿疱性乾癬、滴状乾癬、逆乾癬および乾癬性紅皮症を含むいくつかのタイプの乾癬がある。当業者は、本明細書に記載のペプチドが、すべてのタイプの乾癬の治療または予防に適していることを理解するであろう。
【0114】
組織学的には、該疾患は、過角化症による表皮肥厚、真皮および表皮における免疫細胞の浸潤、錯角化症および血管新生によって特徴付けられる。IMQはまた、ケラチノサイトの過剰増殖と分化変化、IL-23の増加、免疫細胞浸潤(T細胞、DCおよび好中球)および血管新生の変化による表皮の変化を包含するヒト疾患に関連する病理組織学的変化を引き起こす。
【0115】
イミキモド誘発乾癬モデルは、病変の病理組織学および免疫系の強い活性化を含む、ヒト疾患の重要なマーカーを多く持っているため、特に臨床への応用が期待されている。イミキモド(IMQ)は、免疫細胞(マクロファージ、単球、形質細胞様樹状細胞を含む)のTLR、例えばTLR-7(Toll様受容体)のリガンドであり、したがって免疫系の強い活性化に寄与する。ヒトにおける該疾患の特徴は、IL-23/IL17サイトカイン軸の関与である。このイミキモド誘発乾癬は、IL-23/IL-17サイトカイン軸が極めて重要な役割を果たすヒトの斑状型乾癬をモデル化している。
【0116】
乾癬の現在の治療選択肢としては、コールタール製剤、コルチコステロイド、トリアムシノロン(アセトニド、トリアネックス)、クロベタゾール(テモベート)、カルシポトリエンおよびカルシトリオール(ベクティカル)などの合成形態のビタミンD、タザロテン(タゾラック、アバジ)のようなレチノイド、タクロリムス(プロトピック)およびピメクロリムス(エリデル)などのカルシニューリン阻害剤、メトトレキサート、アシトレチン、シクロスポリンおよびカルシポトリオールなどの薬剤、ならびに紫外線療法が挙げられる。
【0117】
したがって、本明細書に記載のペプチドは、上記の治療法または乾癬の治療のために当技術分野で知られている治療法と組み合わせて、必要としている患者に投与され得ることが想定される。
【0118】
治療に対する成功した応答は、上記で概説した、紅斑(発赤)、硬結(厚み)および落屑(鱗屑)の重症度をランク付けする乾癬活性重症度指数(PASI)スケールを使用するか、または当技術分野で知られている他の方法による、乾癬の一つ以上の症状の寛解の評価によって決定することができる。例えば、ポジティブ反応を示す対象体は、紅斑、硬結または落屑のうちの1つ以上の症状が軽減されている場合がある。治療に対するこのようなポジティブ反応は、皮膚の臨床評価、皮膚切片の病理組織学的評価、ならびに皮膚および/または内部免疫器官におけるオプショナルサイトカイン解析によって決定することができる。ポジティブ反応を評価するための他の手段は、当業者の知識の範囲内である。
【0119】
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の慢性炎症性障害群である。大腸および直腸の粘膜において持続性炎症および潰瘍を引き起こす潰瘍性大腸炎として、または口腔、食道、胃および肛門などの罹患組織に広がっている消化管(特に、小腸および大腸)の粘膜の炎症を特徴とするクローン病として発症し得る。
【0120】
クローン病は、消化器系の粘膜における慢性炎症を特徴とする状態である。炎症の小さな斑点があり得るか、またはそれは腸に沿ってかなり広がり得るか、または異なる場所にいくつかの斑点があり得る。典型的な症状としては、しばしばトイレに行くことへの切迫感があり、しばしばトイレに行きたい気持ちはあるが何も出ない、再発性下痢、腹部痛および腹部疝痛(通常、食後に悪化する)、極度の疲労(倦怠感)、および/または体重減少が挙げられる。大腸内視鏡検査は、顕微鏡下で検査するための小さな組織サンプル(生検)のサンプリングを介して診断に使用される。
【0121】
潰瘍性大腸炎は、通常、直腸(肛門のすぐ内側にある大腸の部分)および結腸下部に生じる慢性炎症疾患であるが、大腸(結腸)全体に影響を及ぼし得る。結腸が炎症を起こし、この炎症がひどくなると、結腸の粘膜が破れ、潰瘍が形成され得る。潰瘍性大腸炎の診断は、炎症、貧血およびタンパク質レベルをチェックするための血液検査、感染をチェックする便サンプル、該状態の程度を評価するのに役立つX線、直腸および結腸下部の炎症の程度を調べるためのS状結腸鏡検査、ならびに/または、結腸全体の内部を検査する大腸内視鏡検査によって行われ得る。
【0122】
ウイルス感染症
本明細書に記載のペプチドおよび組成物は、気道のものを含む炎症を引き起こすウイルス感染症の治療または予防において有用性を有する。炎症反応と関連するそのようなウイルス感染症としては、感冒、インフルエンザ、咳嗽および気管支炎、水痘、HIV/AIDS、髄膜炎、肺炎、ヘルペス、ロタウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)および中東呼吸器症候群(MERS)が挙げられる。
【0123】
当業者は、ウイルス感染症の治療を必要とする個体を特定する方法、および所定のウイルス感染症に対する治療の有効性を決定する方法に精通しているであろう。例えば、ウイルス感染症を有する個体は、発熱、筋肉痛、咳、咽喉痛および頭痛のうち1つ以上の症状を有し得る。したがって、本明細書に記載のペプチドまたは組成物による治療に対するポジティブ反応は、これらの症状のうちの1つ以上の寛解を含む。例えば、本明細書に記載のペプチドまたは組成物による治療に対するポジティブ反応を有する個体は、熱の低下、筋肉痛の軽減、咳の減少、咽喉痛の軽減または頭痛の軽減を有し得るか、または、症状が完全に消失し得る。
【0124】
インフルエンザ(一般に「インフル」と称される)は、鳥類および哺乳動物が罹患するオルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のRNAウイルス(インフルエンザウイルス)によって引き起こされる感染性疾患である。該疾患の最も一般的な症状は、悪寒、発熱、咽喉痛、筋肉痛、激しい頭痛、咳嗽、脱力感/倦怠感、および全身違和感である。
【0125】
インフルエンザ感染には、重層的な一連のイベントがある。第一は、気道および肺胞上皮のウイルス感染ならびにこれらの細胞におけるその複製であり、その間に、ウイルスの侵入または複製を制限する戦略により感染の重症度を予防または減弱することができる。第二は、自然免疫応答とそれに続くウイルスに対する適応免疫応答であり、これはウイルス排除に重要であるが、肺胞の上皮と内皮に重大な損傷を引き起こす可能性もある。第三は、浸潤の解消と損傷した肺組織の再生を伴う感染ウイルス株に対する長期的な免疫の発達であり、その間に、二次的な細菌感染に対する感受性が上昇する。
【0126】
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)の5属のうち3属を構成している。A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスは、季節的流行の間に共循環し(co-circulate)、重症インフルエンザ感染症を引き起こし得る。C型インフルエンザウイルス感染はあまり一般的ではないが、重症になり得、局所的な流行を引き起こし得る。
【0127】
A型インフルエンザウイルスは、これらのウイルスに対する抗体反応に基づいて、異なる血清型またはサブタイプに細分される。A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面にあるヘマグルチニン(H)およびノイラミニダーゼ(N)という2つのタンパク質に基づいてサブタイプに分けられる。18種類の異なるヘマグルチニンサブタイプ、および11種類の異なるノイラミニダーゼサブタイプ(それぞれ、H1からH18、およびN1からN11)がある。ヒトで確認されているサブタイプは、H1N1、H1N2、H2N2、H3N2、H5N1、H7N2、H7N3、H7N7、H9N2およびH10N7である。
【0128】
いずれかの実施態様では、炎症反応の治療、予防または抑制が必要とされるインフルエンザ感染症は、A型、B型またはC型インフルエンザからなる群から選択されるウイルスによる感染症である。
【0129】
皮膚炎
湿疹としても知られている皮膚炎は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎およびうっ滞性皮膚炎を含む皮膚の炎症を引き起こす一群の疾患である。皮膚炎の種類ごとに症状は異なるが、皮膚の発赤、腫脹、そう痒、ならびに時には滲出および瘢痕を伴う皮膚病変を含む、すべての皮膚炎に共通する特定の兆候がある。
【0130】
アトピー性皮膚炎は、最も一般的には肘の内側、膝の裏および首の前など皮膚が曲がる部分に、赤くてかゆみを伴う発疹を呈する慢性の炎症状態である。引っ掻くと、発疹から体液が漏出し、かさぶたになり得る。アトピー性皮膚炎の人は、改善してから再燃することがある。
【0131】
接触皮膚炎は、刺激性タイプとアレルギー性タイプに分類され得る急性または慢性の炎症性皮膚状態である。それは、ツタウルシ、石鹸およびエッセンシャルオイルなどの皮膚を刺激するかまたはアレルギー反応を引き起こす物質と接触した体の部位に発症する。赤い発疹は、ヒリヒリしたり、チクチク痛んだり、痒かったりし得る。水疱になることがある。
【0132】
ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)は、接触皮膚炎過敏症を引き起こす既知の刺激物である。ハプテンとして作用し、細胞媒介性反応を誘導し、ケラチノサイトの活性化を引き起こして、TNF-α、IL-1βおよびプロスタグランジンE2などのケミカルメディエーターを産生させ、皮膚樹状細胞の遊走および成熟を引き起こす。次いで、これらのサイトカインは、血管内皮細胞を活性化して、T細胞が血液から組織へ遊走するように誘導する接着分子(すなわち、ICAM-1およびP/Eセレクチン)を発現する。
【0133】
DNFBのようなハプテンはまた、マスト細胞およびケラチノサイトを活性化して、CXCL1およびCXCL2などの好中球動員ケモカインを産生し、好中球動員および自然免疫応答を引き起こす。次に、そのような樹状細胞(すなわち、抗原提示細胞)の活性化により、細胞媒介性免疫の誘導およびT細胞の浸潤がもたらされ、IFN-γおよびIL-17の産生がもたらされる。Treg細胞は、白血球流入を弱め、ATPを分解することにより、接触皮膚炎を制御する。B細胞とその産物(特にIgM抗体)も、特に誘発期に関与している。
【0134】
皮膚炎の治療としては、ヒドロコルチゾンクリーム、ゲルまたは軟膏、カルシニューリン阻害剤、重度の痒みを緩和する抗ヒスタミン剤、ならびにIL4/IL-13、IL-33およびTSLPの活性を阻害する抗体によるものを含むモノクローナル抗体療法が挙げられる。本明細書に記載のペプチドは、上記の治療法または皮膚炎の治療のために当技術分野で知られている治療法と組み合わせて、必要としている患者に投与され得ることが想定される。
【0135】
関節リウマチ
関節リウマチは、人の免疫系が自身の組織を攻撃した結果として関節痛および関節腫脹を引き起こす自己免疫疾患である。関節リウマチは、関節の炎症および疼痛の症状を特徴とする慢性疾患である。これらの症状および兆候は、再燃または増悪として知られている期間に発生する。他の時期は、症状が完全に消失する寛解期として知られている。関節リウマチの症状は体内のいくつかの器官に影響を及ぼし得るが、関節リウマチの主な症状としては、関節痛、関節腫脹、関節硬直および関節機能の低下および変形が挙げられる。
【0136】
関節リウマチの治療に用いられる薬は、2つの主要なグループに分類される。第1のグループは、健康な関節を攻撃して損傷している免疫系の活性を低下させる。これらの薬は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と称されており、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、プレドニゾンおよびヒドロキシクロロキンが含まれる。第2のグループは、疼痛および/または炎症を治療し、パラセタモールのような薬剤およびイブプロフェンまたはセレコキシブのような抗炎症薬が含まれる。
【0137】
本発明のペプチドは、単独でまたはRAの治療のための既知の薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0138】
ペプチドと適切な修飾
本発明は、免疫応答を伴っていても伴っていなくてもよい不適切な炎症反応の抑制、治療または予防における、幅広いクラスのペプチドの有用性を確立する。第1の実施態様では、該ペプチドは、
- TVLTVV(配列番号1)のアミノ酸配列、またはLLLLLTVLTVV(配列番号2)のアミノ酸配列またはその機能的変異体
を含むものであり、ここで、該ペプチドは、21個未満のアミノ酸残基、好ましくは6~20個のアミノ酸残基、好ましくは7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19個の残基からなる。
【0139】
本明細書に記載されるように、本発明者らは、TVLTVVのアミノ酸配列またはLLLLLTVLTVVのアミノ酸配列を有するペプチドが、炎症の症状に対する抗炎症効果、ならびにマクロファージおよび樹状細胞の活性化、細胞表面マーカーの発現、および炎症誘発性サイトカインプロファイルの変化を修飾することにより示される免疫抑制応答を有すると考える。いくつかの実施態様では、TVLTVVおよびLLLLLTVLTVVはそれぞれ、「抗炎症ドメイン」または「AID」と称され得る。本発明のこの実施態様によれば、該ペプチドは、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVの配列からなり得るか、または該ペプチドは、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVを含み得、さらに、アミノ酸の数に換算したペプチドの長さが21アミノ酸未満であるという条件で、追加のアミノ酸残基を含み得る。
【0140】
本明細書でさらに説明するように、追加のアミノ酸(すなわち、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVへの追加)は、リジン、アルギニンまたはヒスチジンなどの残基であり得る。これらは、ポリリジン、ポリアルギニンまたはポリヒスチジンの形態で提供され得る。これらの残基は、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVのN末端に位置し得る(または、別法として、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVのC末端に位置し得る)。これらの残基は、生体液または組織または生物学的に適合する製剤中でのペプチドの可溶化を促進することを補助するように機能し得る。このようなペプチドの例を表Aに示す。
【0141】
【表1】
【0142】
第2の実施形態では、該ペプチドは、
- 配列番号1または配列番号2の配列を含むペプチド;
- 配列番号1または配列番号2の配列に隣接する1個以上のさらなるアミノ酸(ただし、該1個以上のさらなるアミノ酸は、配列番号1もしくは配列番号2の配列に隣接するN末端位置で配列MTPGTQSPFFを定義しないか、または配列番号1もしくは配列番号2の配列に隣接するC末端位置で配列TGSGHASSTPを定義しない)
を含むものであり、ここで、該ペプチドは少なくとも12個のアミノ酸残基、好ましくは20~100個の残基を含む。
【0143】
この実施態様によれば、該ペプチドは、一般に、配列TVLTVVおよびLLLLLTVLTVVからなるものではない。むしろ、該ペプチドは、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVを含み、さらに、配列番号1もしくは2に隣接するN末端位置でMTPGTQSPFFの配列を定義するものまたは配列番号1もしくは2に隣接するC末端位置で配列TGSGHASSTPを定義するもの以外の、追加のアミノ酸残基を含む。
【0144】
したがって、このようなペプチドの該ペプチドの最小長さは12アミノ酸残基であり得るが、該ペプチドはより長くてもよく、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15アミノ酸残基、または少なくとも20、30、40、50、または最大1000残基の長さを有し得る。追加のアミノ酸(すなわち、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVへの追加)は、上記のように配置されたリジン、アルギニンまたはヒスチジンのようなカチオン性アミノ酸残基であり得る
【0145】
場合により、該ペプチドはまた、「可溶化ドメイン」、または生体液、組織などにおけるペプチドの可溶化を促進する修飾も含み得る。このような可溶化の向上は、生体液、組織または細胞におけるペプチドのより高い負荷をもたらし、それによってペプチドの抗炎症および/または免疫抑制効果を向上させることができる。本発明者らは、ポリカチオン性アミノ酸配列を利用することにより、このような効果を確立した。本明細書でさらに説明するように、可溶化はまた、様々な長さのポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。
【0146】
さらに、該ペプチドはまた、本明細書に記載のような標識(例えば、ビオチン)、またはその検出を助けるためにペプチドに結合される標識の形態の分子も含み得る。
【0147】
溶解性を改善するための修飾またはペプチドの検出を可能にするための部分を含むペプチドの例を表Bに示す。
【0148】
【表2】
【0149】
さらなる実施態様では、該ペプチドは、
- 配列番号1、2、好ましくは配列番号3もしくは30のいずれか1つの配列、またはその機能的変異体もしくはフラグメントを含むか、またはそれからなる抗炎症ペプチド;
- 場合により、生体液、組織または製剤中でのペプチドの可溶化を促進するための修飾;および/または蛍光標識
を含むものである。
【0150】
この実施態様によれば、該ペプチドは、一般に、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVからなるものではない。むしろ、該ペプチドは、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVを含み、さらに、一般に20アミノ酸より大きい長さを該ペプチドに提供するための追加のアミノ酸残基を含む。該さらなる追加のアミノ酸は、配列MTPGTQSPFFおよび/またはTGSGHASSTPを含んでもよい(または、別法として、配列TPGTQSPFFを含んでもよい)。
【0151】
したがって、一例では、該ペプチドは、配列番号3(MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV)の配列を含むかもしくは該配列からなるか、または配列番号30(TPGTQSPFFLLLLLTVLTVV)の配列を含むかもしくは該配列からなり、その機能変異体およびフラグメントを包含する。
【0152】
ペプチドは、最大で1000残基またはそれ以上の長さを有し得る。この実施態様では、追加のアミノ酸(すなわち、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVへの追加)は、リジン、アルギニンまたはヒスチジンなどのカチオン性アミノ酸残基であり得る。これらのアミノ酸は、生体液、組織または製剤中でのペプチドの可溶化を促進するために、上記のような可溶化ドメインを形成するかまたはその中に含まれ得る。本明細書でさらに説明するように、可溶化は、様々な長さのポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。該ペプチドはまた、その検出を助けるためにペプチドに結合される蛍光標識の形態の分子を含み得る。このようなペプチドの例を表Cに示す。
【0153】
【表3】
【0154】
実施態様では、本発明によるペプチドは、様々な長さのグリシンリピートまたはセリンリピートを含むリンカーを含み得る。本発明のペプチドおよびリンカーは、ペプチドのNまたはC末端領域のいずれかに直接または間接的に連結され得る。好ましくは、リンカーは、ペプチドのN末端に位置する。実施態様では、リンカーは配列GGGを含み、本発明によるペプチドは、KKKKGGGMTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号22)またはKKKKGGGTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号23)機能変異体を含むかまたはそれからなる。
【0155】
本明細書で使用する「ペプチド」という用語は、D-またはL-アミノ酸の一本鎖、またはペプチド結合によって結合されたD-およびL-アミノ酸の混合物から構成される化合物を指す。一般に、ペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸残基を含み、長さが約50アミノ酸未満である。
【0156】
本明細書で使用する「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって連結された線形に配置されたアミノ酸から構成される化合物を指すが、ペプチドとは対照的に、明確に定義された3次構造を有する。タンパク質は、ペプチドとは対照的に、一般に50個以上のアミノ酸の鎖からなる。
【0157】
本明細書で使用する「ポリペプチド」とは、少なくとも2つのアミノ酸残基のポリマーであって、1つ以上のペプチド結合を含むものを指す。「ポリペプチド」は、ポリペプチドが明確に定義されたコンフォメーションを有するかどうかに関係なく、ペプチドおよびタンパク質を包含する。
【0158】
実施態様では、本発明の抗炎症性ペプチドは、TVLTVVまたはLLLLLTVLTVVの配列の「機能的変異体」、「生物学的活性フラグメント」または「アナログ」の形態で提供され得ることが理解される。変異体、フラグメントまたはアナログは、本明細書の実施例に示すように、ペプチドTVLTVVまたはLLLLLTVLTVVについて例示される抗炎症および/または免疫抑制効果の一部または全部を再現することができる化合物である。本発明のペプチドの機能的変異体またはアナログは、一般に、ペプチドのアミノ酸配列の全部または一部と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、70%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を示すだろう。DNFBおよびイミキモドモデルにおいて本明細書に記載の炎症状態を治療することができる生物学的に活性なフラグメントおよびアナログの能力をアッセイする方法は、当業者によって知られており、本明細書に記載されるものを含む。
【0159】
一実施態様では、抗炎症性ペプチドを形成する配列番号1の機能的変異体は、表Dに記載されているとおりであり得る。
【0160】
【表4】
【0161】
一実施態様では、抗炎症性ペプチドを形成する配列番号2の機能的変異体は、表Eに記載されているとおりであり得る。
【0162】
【表5】
【0163】
別の実施態様では、本発明によるペプチドは、本明細書に記載のペプチドのレトロインベルソペプチド(retro-inverso peptide)を含み得る。このような配列において、D-アミノ酸は、天然L-アミノ酸の立体構造的鏡像を表す。
【0164】
本発明のペプチドは、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を含み、これは、天然に存在するアミノ酸、コード化および非コード化アミノ酸、化学的または生化学的修飾、誘導体化またはデザイナーアミノ酸、アミノ酸アナログ、ペプチドミメティク、およびデプシペプチド、ならびに修飾、環状、二環状、デプシ環状(depsicyclic)またはデプシ二環状(depsibicyclic)ペプチドバックボーンを有するポリペプチドが挙げられ得る。それらは一本鎖タンパク質および多量体を含む。それらはまた、複合タンパク質、融合タンパク質(グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、異種および同種リーダー配列を有する融合タンパク質を包含するがこれらに限定されない)、N末端メチオニン残基を有するかまたは有しない融合タンパク質、ペグ化タンパク質、および免疫学的タグ付けまたはヒスタグ付けタンパク質を含む。また、本発明のポリペプチドには、天然に存在するタンパク質の変異体(このような変異体は、天然に存在するタンパク質と相同であるかまたは実質的に類似している)、および異なる種からの対応する相同体も含まれる。ポリペプチド配列の変異体は、対象ポリペプチドと比較して、挿入、付加、欠失または置換を含む。本発明のポリペプチドはまた、ペプチドアプタマーを含む。
【0165】
本発明の治療用ペプチドの特性を改善または変更するために、タンパク質工学を使用し得る。当業者に知られている組換えDNA技術を使用して、単一または複数のアミノ酸置換、欠失、付加、または融合タンパク質を含む新規の変異タンパク質または「ムテイン」を作成することができる。このような修飾ポリペプチドは、活性の増強や安定性の向上などの望ましい特性を示すことができる。
【0166】
例えば、本明細書のペプチドは、1つ以上の正荷電アミノ酸を含み得る。正荷電基は、アルギニン(R)、リジン(K)またはヒスチジン(H)などの少なくとも1つの正荷電アミノ酸を含む。そのような例としては、KKKK-TVLTVV(配列番号4)、KKKK-LLLLLTVLTVV(配列番号5)、またはKKKK-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号6)、またはその機能的変異体が挙げられる。
【0167】
実施態様では、本発明によるペプチドは、可溶化剤を含み得る。本発明のペプチドと可溶化剤とは、直接的または間接的に連結され得る。可溶化剤の例は、ポリエチレン(PEG)であり、その実施態様では、本発明のペプチドは、PEG化され得る。そのようなペプチドの例としては、PEG-TVLTVV(配列番号7)、PEG-LLLLLTVLTVV(配列番号8)、PEG-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号9)、KKKK-PEG-TVLTVV(配列番号10)、KKKK-PEG-LLLLLTVLTVV(配列番号11)、KKKK-PEG-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号12)、またはその機能的変異体が挙げられる。
【0168】
実施態様では、PEGは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはそれ以上のエチレングリコール単位を含み得る。別法として、PEGは、エチレングリコール単位を含んでいなくてもよい。
【0169】
実施態様では、本発明によるペプチドは、蛍光タグまたは標識を含み得る。本発明のペプチドと蛍光タグまたは標識は、直接的または間接的に連結され得、ペプチドのN末端にあり得る。実施態様では、蛍光タグまたは標識は、GFP、YFP、BFP、CFP、Y-FAST、AF594、mCherryおよびdsRedである。そのようなペプチドの例としては、AF594-TVLTVV(配列番号13)またはAF594-LLLLLTVLTVV(配列番号14)、AF594-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号15)、AF594-PEG-TVLTVV(配列番号16)、AF594-PEG-LLLLLTVLTVV(配列番号17)、AF594-PEG-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号18)、AF594-KKKK-PEG-TVLTVV(配列番号19)、AF594-KKKK-PEG-LLLLLTVLTVV(配列番号20)、AF594-KKKK-PEG-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号21)、またはその機能的変異体が挙げられる。
【0170】
実施態様では、本発明によるペプチドは、様々な長さのグリシンリピートまたはセリンリピートを含むリンカーを含み得る。本発明のペプチドとリンカーは、直接的または間接的に連結され得る。好ましくは、リンカーは、ペプチドのN末端に位置する。実施態様では、リンカーは配列GGGを含み、本発明によるペプチドは、KKKKGGGMTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV(配列番号22)またはその機能的変異体(例えば、同じ修飾およびリンカーを有するTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV、すなわち、配列番号23:KKKKGGGPGTQSPFFLLLLLTVLTVV)を含むかまたはそれからなる。
【0171】
さらに、該タンパク質は、少なくとも特定の精製および保存条件下において、対応する天然ポリペプチドよりも高い収率で精製され、より優れた溶解性を示し得る。膜結合タンパク質の細胞外ドメインまたは分泌タンパク質の成熟型を含む多くのタンパク質について、生物学的機能の実質的な喪失なしに1つ以上のアミノ酸をN末端またはC末端から削除し得ることは当技術分野で知られている。
【0172】
しかしながら、タンパク質のN末端からの1つ以上のアミノ酸の欠失がタンパク質の1つ以上の生物学的機能の改変または喪失をもたらしても、他の生物学的活性は依然として保持され得る。したがって、タンパク質の完全型または成熟型を認識する抗体を誘導および/または結合する短縮タンパク質の能力は、完全または成熟タンパク質の過半数に満たない残基がN末端から除去された場合、一般に保持される。完全タンパク質のN末端残基を欠く特定のポリペプチドがその必要な活性を保持するかどうかは、当技術分野で知られている通例の方法によって決定することができる。
【0173】
したがって、本発明はさらに、分子のアミノ酸配列のアミノ末端から1つ以上の残基が欠失したポリペプチドを提供する。同様に、生物学的に機能的なC末端欠失変異体の多くの例が知られている。
【0174】
しかしながら、タンパク質のC末端からの1つ以上のアミノ酸の欠失がタンパク質の1つ以上の生物学的機能の改変または喪失をもたらしても、他の生物学的活性は依然として保持され得る。したがって、タンパク質の完全型または成熟型を認識する抗体を誘導および/または結合する短縮タンパク質の能力は、完全または成熟タンパク質の過半数に満たない残基がC末端から除去された場合、一般に保持される。完全タンパク質のC末端残基を欠く特定のポリペプチドがそのような生物学的活性を保持するかどうかは、当技術分野で知られている通例の方法によって決定することができる。
【0175】
上記のタンパク質の末端欠失形態に加えて、本発明の治療用ポリペプチドのいくつかのアミノ酸配列は、タンパク質の構造または機能に有意な影響を与えることなく変化され得ることも、当業者には認識される。配列におけるそのような差異が企図される場合、当業者は、どのドメインがタンパク質の機能を保持するために重要な領域であるかをどのようにして決定するかを理解する。
【0176】
そのような変異体は、活性にほとんど影響を与えないように、当該技術分野で知られている一般的な規則に従って選択される、欠失、挿入、逆位、反復、および型置換を含む。例えば、表現型的サイレントアミノ酸置換の作り方に関する指針は、Bowie et al., (1990) Science 247:1306-1310に提供されており、著者らは、アミノ酸配列の変化に対する寛容を研究するための2つの主要なアプローチがあることを指摘している。第一の方法は、変異が自然選択によって受け入れられるかまたは拒否されるかのいずれかである進化の過程に依存するものである。
【0177】
第二のアプローチは、クローン化遺伝子の特定の位置にアミノ酸変化を導入するために遺伝子工学を使用し、機能を維持する配列を同定するために選択またはスクリーニングを使用する。これらの研究は、タンパク質がアミノ酸置換に対して驚くほど寛容であることを報告している。タンパク質の特定の位置で特定のアミノ酸変化が許容される可能性が高いことが知られている。例えば、ほとんどの埋め込まれたアミノ酸残基(most buried amino acid residues)は非極性側鎖を必要とするが、表面側鎖の特徴は一般にほとんど保存されていない。
【0178】
典型的に保存的置換として見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala(A)、Val(V)、Leu(L)およびIle(I)の間での互いの置き換え;ヒドロキシル残基Ser(S)およびThr(T)の交換、酸性残基Asp(D)およびGlu(E)の交換、アミド残基Asn(N)およびGln(Q)間の交換、塩基残基Lys(K)およびArg(R)の交換、ならびに芳香族残基Phe(F)およびTyr(Y)間の交換である。したがって、ポリペプチドのフラグメント、誘導体またはアナログは、(i)1つ以上のアミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸残基で置換されているもの;そのような置換アミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされているものであってもなくてもよい;(ii)1つ以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの;(iii)成熟ポリペプチドが、ポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレングリコール)のような別の化合物と融合しているもの;または(iv)追加のアミノ酸が、IgG Fc融合領域ペプチド、リーダーもしくは分泌配列、上記形態のポリペプチドを精製するのに用いられる配列、またはプロタンパク質配列などの上記形態のポリペプチドと融合しているものであり得る。このようなフラグメント、誘導体およびアナログは、本明細書の教示から当業者の範囲内にあるとみなされる。
【0179】
したがって、本発明の治療用ポリペプチドは、自然変異または人為的操作(human manipulation)のいずれかによる1つ以上のアミノ酸置換、欠失または付加を含み得る。示されているように、これらの変化は、保存的アミノ酸置換のような、タンパク質の折り畳みまたは活性に有意に影響しない軽微な性質のものであり得る。例えば、1つ以上のアミノ酸置換、欠失または付加は、不適切な炎症反応を抑制、治療または予防する本明細書に記載のペプチドの能力に影響を与えない。
【0180】
保存的アミノ酸置換としては、芳香族置換Phe、TrpおよびTyr;疎水性置換Leu、IsoおよびVal;極性置換GluおよびAsp;塩基性置換Arg、LysおよびHis;酸性置換AspおよびGlu;小アミノ酸置換Ala、Ser、Thr、MetおよびGlyが挙げられる。
【0181】
本発明の治療用ポリペプチドの機能に必須なアミノ酸は、部位特異的変異誘発またはアラニンスキャニング変異誘発などの当該技術分野で既知の方法によって同定することができる。後者の手順では、単一のアラニン変異が導入される。次いで、得られた変異体分子を、受容体結合のような生物学的活性、またはインビトロもしくはインビトロ増殖活性について試験する。
【0182】
さらに、荷電アミノ酸を他の荷電または中性アミノ酸に置換することで、凝集が少ないなどの非常に望ましい改善された特性を有するタンパク質を製造することができる。凝集は、活性を低下させるだけでなく、例えば凝集体は免疫原性であり得るので、医薬製剤を調製する際に問題となり得る。
【0183】
また、アミノ酸を置き換えることで、細胞表面受容体へのリガンドの結合の選択性を変えることもできる。リガンド-受容体結合に重要な部位は、結晶化、核磁気共鳴または光親和性標識化などの構造解析によって決定することもできる。
【0184】
本発明はまた、治療用ポリペプチドをコードしており、適切な条件下で本発明の治療用ポリペプチドの1つとして発現することができるオープンリーディングフレームを有するものを含むDNAまたはRNAの配列を含む本明細書で定義するタンパク質をコードする核酸またはそのフラグメントを提供する。「核酸」という用語はまた、DNA、cDNA、mRNA、スプライス変異体、アンチセンスRNA、RNAi、1つ以上の一塩基多型(SNP)を含むDNA、および対象核酸配列を含むベクターも包含する。また、治療用タンパク質をコードする核酸と相同または実質的に類似または同一である核酸もこの用語に包含される。したがって、対象発明は、対象タンパク質をコードする遺伝子、およびそのホモログを提供する。
【0185】
本発明のポリヌクレオチドまたは核酸は、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそれらのアナログもしくは誘導体を含み得る。例えば、核酸は、天然に存在するDNAまたはRNAであり得るか、または当該技術分野で知られているように合成アナログであり得る。本発明のポリヌクレオチドはまた、ゲノムDNA、遺伝子、遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、制御配列、または調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、開始および停止領域、他の制御領域、発現調節因子、および発現制御;1つ以上の一塩基多型(SNP)、対立遺伝子変異体、任意の配列の単離DNA、およびcDNAを含むDNA;mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、スプライス変異体、アンチセンスRNA、アンチセンスコンジュゲート、RNAi、および任意の配列の単離RNA;組換えポリヌクレオチド、異種ポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、標識ポリヌクレオチド、ハイブリッドDNA/RNA、ポリヌクレオチド構築物、対象核酸を含むベクター、核酸プローブ、プライマー、およびプライマー対も包含する。
【0186】
本発明のポリヌクレオチドは、メチル化核酸分子、ペプチド核酸、および核酸分子アナログなど、骨格、糖、または複素環塩基に変化を加えた修飾核酸分子を包含し、これらはアッセイ条件下で優れた安定性および/または結合親和性を示す場合、例えばプローブとして好適であり得る。それらはまた、DNA、RNA、またはハイブリッドDNA/RNAのいずれかであり、全長遺伝子またはその生物学的に活性なフラグメントをコードし得る一本鎖、二本鎖および三重らせん分子も包含する。
【0187】
本発明のポリヌクレオチドには、一塩基多型が含まれる。一塩基多型(SNP)は、真核生物のゲノムに頻繁に発生する。種の1つの個体から決定されたヌクレオチド配列は、集団内に存在する他の対立遺伝子形態と異なる場合がある。本発明は、そのようなSNPを包含する。対象ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるポリペプチドの変異体をコードするものを含む。したがって、いくつかの実施態様では、対象ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリペプチドと比較して、挿入、欠失または置換を含む変異体ポリペプチドをコードする。保存的アミノ酸置換には、セリン/スレオニン、バリン/ロイシン/イソロイシン、アスパラギン/グルタミン、グルタミン酸/アスパラギン酸等が含まれる。
【0188】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のタンパク質またはその機能的誘導体は、投与への適合性を高めるために、すなわち、共有結合が組成物の活性を妨げないように、組成物への任意のタイプの分子の共有結合によって修飾され得る。例えば、限定するものではないが、誘導体には、特に、グリコシル化、脂質化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合等によって修飾された組成物を含む。多数の化学修飾のいずれかは、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシン(turicamycin)の代謝合成等を含むがこれらに限定されない既知の技術によって実施することができる。さらに、誘導体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含むことができる。
【0189】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載のタンパク質または機能的誘導体は、化学リンカーのようなエフェクター部分、例えば蛍光色素、酵素、基質、生物発光材料、放射性材料および化学発光部分などの検出可能部分、または例えばストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、細胞毒素、細胞毒性剤および放射性材料などの機能的部分を付加するように修飾されてもよい。
【0190】
別の実施態様では、本明細書に記載のペプチドまたは機能性誘導体は、キレート剤としての有機酸DOTA、およびガドリニウム(Gd3+)を含む大環状構造のガドリニウムベースMRI造影剤(GBCA)であり、メグルミン塩(ガドテル酸メグルミン)の形態で使用されるガドテル酸のような金属イオン標識を付加するように修飾され得る。このような標識は、本明細書では、(Gd)Dotaとも記載される。
【0191】
さらに別の実施態様では、本明細書に記載のペプチドは、タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)の観察および特徴付けのための光反応性を有するアミノ酸残基の合成異性体を含み得る。非限定的な例は、フォトロイシンであり、これは、天然アナログとして使用され、光反応性を有すること特徴とするロイシンアミノ酸の合成誘導体である。当業者は、このアミノ酸を含むタンパク質が別のタンパク質と相互作用しながら紫外線を照射されると、これら2つのタンパク質から形成される複合体が付着したままであり、単離できることを理解できる。
【0192】
特定の実施態様では、本明細書に記載のいずれのペプチドも、細胞へのペプチドの侵入を促進または補助するために、NまたはC末端領域に結合した細胞透過性ペプチド(CPP)を含み得る。CPPは、典型的には、長さ約7~30アミノ酸残基の両親媒性およびカチオン性ペプチドであり、細胞膜を介した分子の迅速な移動を促進する。細胞透過性ペプチドの非限定的な例としては、TatおよびTatに基づくペプチドが挙げられるが、本発明に従って使用され得る多数のCPPが存在することは、当業者によって理解される。そのようなCPPの例は、文献、例えばHabault and Poyet, (2019) Molecules, 24: 927;Borerlli et al., (2018) Molecules, 23: 295に記載されている(出典明示により本明細書の一部とする)。
【0193】
特定の実施態様では、本明細書に記載のいずれのペプチドも、例えば細胞への本発明のペプチドの侵入を促進または補助するために、NまたはC末端領域で脂質化され得る。
【0194】
対象発明のタンパク質をコードする核酸は、cDNAまたはゲノムDNAまたはそのフラグメントであり得る。「遺伝子」という用語は、対象発明の特定のタンパク質およびポリペプチドとイントロンをコードするオープンリーディングフレーム、ならびに翻訳領域の外側にあるがさらにどちらの方向にも可能である約20kbまでの発現の調節に関与する隣接する5'および3'非翻訳ヌクレオチド配列を意味することを意図するものとする。この遺伝子は、染色体外維持のためまたは宿主ゲノムへの組み込みのために適切なベクターに導入さ得る。対象ポリヌクレオチドは、一般に無傷の染色体以外として、実質的な純度で単離および取得される。通常、DNAは、対象遺伝子の配列またはそのフラグメントを含まない他の核酸配列を実質的に含まずに得られ、一般に少なくとも約50%、通常は少なくとも約90%の純度であり、典型的には「組換え体」であり、すなわち天然に存在する染色体上では通常は関連しない1つ以上のヌクレオチドが隣接している。
【0195】
本発明は、本発明の治療用ポリヌクレオチドを含む、プラスミド、すなわち、ある生物から別の生物に導入され得る染色体外細胞質DNAの独立して複製する小さな断片を提供するものである。プラスミドは、宿主のゲノムに組み込まれ得るか、または独立したままであり得る。人工的に構築されたプラスミドは、一般的にクローニングベクターとして使用される。本発明はまた、ある生物から別の生物へDNA配列を導入するために使用できるベクター、すなわちプラスミドを提供する。
【0196】
発現ベクターは、本発明の治療用遺伝子産物を発現するために使用することができ、典型的には、異種タンパク質またはRNA分子をコードする核酸配列の挿入を提供するための制限部位を含む。
【0197】
発現ベクターは、遺伝子を細胞に導入するために使用され得る。このようなベクターは、一般に、核酸配列の挿入を提供するためにプロモーター配列の近くに位置する便利な制限部位を有する。転写開始領域、対象遺伝子またはそのフラグメント、および転写終結領域を含む転写カセットを調製することができる。転写カセットは、種々のベクター、例えば、プラスミド;レトロウイルス、例えばレンチウイルス;アデノウイルス;アデノ随伴ウイルス;および同類のものに導入することができ、ベクターは、一過性にまたは安定的に、通常少なくとも約1日の期間、より通常には少なくとも約数日から数週間の期間、細胞内に維持され得る。
【0198】
抗炎症剤
本発明の態様では、本明細書に記載のペプチドおよびさらなる抗炎症剤を含む、炎症反応の予防または治療のための組成物が提供される。当業者は、本明細書に記載のペプチドと組み合わせて使用することができる異なるタイプの抗炎症剤を容易に特定することができる。そのような抗炎症剤の非限定的な例としては、非選択的非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、選択的NSAID、コルチコステロイド、抗炎症特性を示す(例えば、炎症性分子の活性を阻害することによる)抗体、および当業者に知られている他の抗炎症剤が挙げられる。
【0199】
非選択的NSAIDの例としては、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メフェナム酸、ナプロキセン、ピロキシカムおよびスリンダクが挙げられる。選択的NSAIDの例としては、セレコキシブ、エトリコキシブ、メロキシカムおよびパラコキシブが挙げられる。
【0200】
好ましい実施態様では、本明細書に記載のペプチドおよびコルチコステロイドを含む、炎症反応の予防または治療のための組成物が提供される。
【0201】
コルチコステロイドは、コルチゾールによく似た合成薬であり、炎症を軽減し、免疫系の活動を低下させることで機能する。乾癬、喘息、炎症状態、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、花粉症、じんま疹、湿疹、血管炎(血管の炎症)および筋炎(筋肉の炎症)、関節炎、クローン病を含む炎症性腸疾患、関節リウマチ、ループス、シェーグレン症候群、ならびに痛風を含む様々な炎症性疾患および状態を治療するために使用される。コルチコステロイド薬の例としては、本明細書で使用される、アリストコート、デカドロン、モメタゾン、コトロン(cotolone)、トリアムシノロン、コルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンおよびジプロピオン酸ベタメタゾンが挙げられる。
【0202】
当業者は、本発明で用いられるコルチコステロイドは、以下の剤形のうち1つであり得ることを理解する:
錠剤、シロップ剤および液剤 - 例えば、プレドニゾロン;
吸入剤および鼻用スプレー剤 - 例えば、ベクロメタゾンおよびフルチカゾン;
注射剤(筋肉内、静脈内、関節内) - 例えば、メチルプレドニゾロン;
眼科 - 例えば、点眼薬;ならびに
クリーム剤、ローション剤およびゲル剤 - 例えば、ヒドロコルチゾンスキンクリーム。
【0203】
本明細書に記載されているかまたは当該技術分野で知られているコルチコステロイドは、その投与に適した投与量である。
【0204】
実施態様では、本発明におけるコルチコステロイドの使用は、炎症反応を治療または予防する役割を果たす。したがって、この実施態様では、本明細書に記載のペプチドをコルチコステロイドと組み合わせて使用することで、炎症反応を効果的に治療または予防することができる。実施態様では、この効果は、ペプチド単独の効果よりも大きくあり得、いくつかの実施態様では、相乗的であり得る。
【0205】
コルチコステロイドは、同じまたは異なる製剤で提供される場合を含めて、本発明のペプチドと同時に投与することができる。別法として、コルチコステロイドとペプチドは、異なる時に、異なる剤形(製剤)で投与され得る。異なる製剤で提供される場合、ペプチドとコルチコステロイドは、同じまたは異なる投与経路で投与され得る。
【0206】
モノクローナル抗体
本発明はまた、本明細書に記載のペプチドおよび抗原結合タンパク質を含む、炎症反応の予防または治療のための組成物を提供する。好ましくは、抗原結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合フラグメントである。典型的には、抗原結合タンパク質は抗体、例えばモノクローナル抗体である。
【0207】
特定の実施態様では、炎症性分子の活性を阻害するための抗原結合タンパク質(例えば、モノクローナル抗体)は、抗炎症性分子と結合し、それにより、炎症反応を促進する際に分子の活性を阻害する。抗原結合タンパク質は、炎症性分子の受容体に結合し、それにより、炎症性分子の活性を阻害し得る。本発明に従って使用するのに適した抗原結合タンパク質またはモノクローナル抗体の非限定的な例としては、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン22(IL-22)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子α(TNFα)を含む炎症性分子の活性を阻害することができるものが挙げられる。このような抗原結合タンパク質またはモノクローナル抗体の例としては、ブロダルマブ、イキセキズマブまたはセクキヌマブ(IL-17を阻害するため)、トシリズマブまたはシルツキシマブ(IL-6を阻害するため)、グセルクマブまたはチルドラキズマブまたはミリキズマブまたはブラジクマブまたはリサンキズマブまたはウステキヌマブ(IL-23を阻害するため)、フェザキヌマブ(IL-22を阻害するため)、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、セルトリズマブペゴルまたはゴリムマブ(TNFαの活性を阻害するため)が挙げられる。
【0208】
抗体を生成するための方法は、当該技術分野において知られており、かつ/またはHarlow and Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)に記載されている。一般に、そのような方法では、適切なまたは所望の担体、アジュバント、または薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化されていてもよい、免疫原性フラグメントまたはそのエピトープ、またはそれを発現し呈する細胞(すなわち、免疫原)が、非ヒト動物、例えばマウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギまたはブタに投与される。免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、または他の既知の経路で投与され得る。
【0209】
ポリクローナル抗体の産生は、免疫化された動物の血液を免疫化後の様々な時点でサンプリングすることによってモニターすることができる。所望の抗体価を達成するために必要であれば、1回以上のさらなる免疫化を行うことができる。適切な力価が達成されるまでブースティングおよびタイタリングのプロセスが繰り返される。所望のレベルの免疫原性が得られたら、該免疫化動物は採血され、血清が単離され保存され、および/または、該動物は、モノクローナル抗体(mAb)を生成するために使用される。
【0210】
モノクローナル抗体は、本発明によって企図される抗体の一例示形態である。「モノクローナル抗体」または「mAb」という用語は、同じ抗原、例えば、抗原内の同じエピトープに結合することができる均一な抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源またはその製造方法に関して限定されることを意図するものではない。
【0211】
本発明に従って使用するのに好適な抗原結合タンパク質は、合成抗体であってもよい。例えば、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体シンヒューマナイズド抗体(human antibody synhumanized antibody)、霊長類化抗体(primatized antibody)、または脱免疫化抗体(de-immunized antibody)であってもよい。
【0212】
抗原結合タンパク質または抗体、例えばモノクローナル抗体は、
(i) 一本鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii) 二量体scFv(di-scFv);
(iii) 抗体の定常領域Fc、または重鎖定常ドメイン(CH)2および/もしくはCH3と結合した(i)または(ii)のうち1つ;または
(iv) 免疫エフェクター細胞と結合するタンパク質と結合した(i)または(ii)のうち1つ
の形態であってもよい。
【0213】
さらに、本明細書に記載されるように、抗原結合部位または抗体は、
(i) 二重特異性抗体;
(ii) 三重特異性抗体;
(iii) 四重特異性抗体;
(iv) Fab;
(v) F(ab')2;
(vi) Fv;
(vii) 抗体の定常領域Fc、または重鎖定常ドメイン(CH)2および/もしくはCH3と結合した(i)~(iv)のうち1つ;または
(viii)免疫エフェクター細胞と結合するタンパク質と結合した(i)~(iv)のうち1つ
の形態であってもよい。
【0214】
mAbの製造のために、例えば米国特許第4196265号または上記のHarlow and Lane (1988)に例示されている手順など、多くの既知の技術のうちのいずれか1つを使用することができる。
【0215】
例えば、適当な動物を、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件下で、免疫原で免疫化する。ウサギ、マウスおよびラットなどのげっ歯類が例示的な動物である。例えばマウス抗体を発現しないヒト抗体を発現するように遺伝子操作されたマウスも、本発明の抗体を生成するために用いることができる(例えば、国際公開第2002/066630号に記載されているように)。
【0216】
免疫化後、抗体を産生する可能性のある体細胞、特にBリンパ球(B細胞)が、mAb生成プロトコルで使用するために選択される。これらの細胞は、脾臓、扁桃もしくはリンパ節の生検、または末梢血サンプルから得ることができる。次に、免疫化された動物からのB細胞は、一般に免疫原で免疫化された動物と同じ種に由来する、不死の骨髄腫細胞の細胞と融合される。
【0217】
ハイブリッドは、組織培養培地中でのヌクレオチドのデノボ合成をブロックする薬剤を含む選択培地で培養することにより増幅される。例示的な薬剤は、アミノプテリン、メトトレキサートおよびアザセリンである。
【0218】
増幅されたハイブリドーマは、例えばフローサイトメトリーおよび/または免疫組織化学および/またはイムノアッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、細胞毒性試験、プラークアッセイ、ドットイムノアッセイ、および同類のもの)によって、抗体特異性および/または力価の機能的選択に供される。
【0219】
別法として、ABL-MYC技術(NeoClone, Madison WI 53713, USA)を使用して、MAbを分泌する細胞株を生成する(例えば、Largaespada et al, J. Immunol. Methods. 197: 85-95, 1996に記載されているように)。
【0220】
抗体はまた、ディスプレイライブラリー、例えば米国特許第6300064号および/または米国特許第5885793号に記載されているようなファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることによって生成または単離することができる。例えば、本発明者らは、ファージディスプレイライブラリーから完全ヒト抗体を単離した。
【0221】
本明細書に記載の抗原結合タンパク質または抗体の好適な投与量は、特定の抗原結合部位、治療される状態および/または治療を受ける対象体に応じて変化する。例えば準最適な投与量から始めて投与量を徐々に変更して最適なまたは有用な投与量を決定することによって、適切な投与量を決定することは、熟練医師の能力の範囲内である。別法として、治療/予防のための適切な投与量を決定するために、細胞培養アッセイまたは動物試験からのデータが用いられ、ここで、適切な用量は、毒性がほとんどまたは全くない活性化合物のED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。治療的/予防的に有効な用量は、まず細胞培養アッセイから推定することができる。細胞培養で決定されたIC50(すなわち、症状の最大半量阻害を達成する化合物の濃度または量)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルで用量を処方することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中の濃度は、例えば高速液体クロマトグラフィーによって、測定することができる。
【0222】
医薬組成物および投与経路
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のペプチドの薬学的有効量を含む薬学的組成物である。追加の実施態様では、薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物が提供される。
【0223】
また、「薬学的に許容される塩」という用語は、カルボン酸官能基のような酸性官能基および塩基を有する本発明の組成物の塩をいう。薬学的に許容される塩としては、非限定的な例として、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチート、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸、オレイン酸塩、タンニン酸、パントテン酸、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、パモ酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩(triftuoroacetate)、アクリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、a-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1,4-ジカルボン酸塩、ヘキシン-1,4-ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、桂皮酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩(teraphthalate)、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、セバシン酸塩、スベリン酸塩、p-ブロモベンゼンスルホン酸塩(p-brornobenzenesulfonate)、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフチエン-1-スルホン酸塩(naphthiene-1-sulfonate)、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ナフチエン-1,5-スルホン酸塩(naphthiene-1,5-sulfonate)、キシレンスルホン酸塩および酒石酸塩が挙げられ得る。
【0224】
さらに、本明細書に記載のペプチドまたは機能的変異体は、薬学的に許容される担体またはビヒクルを含む組成物の成分として対象体に投与することができる。そのような組成物は、適切な投与のための剤形を提供するように、適切な量の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。
【0225】
医薬賦形剤は、水および油などの液体であり得、石油系、動物系、植物系、または合成系のものを含み、例えば、落花生油、大豆油、鉱油およびごま油などを挙げることができる。医薬賦形剤は、例えば、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、および尿素などであり得る。さらに、助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、および着色剤を使用することができる。
【0226】
一実施態様では、対象体に投与される場合、薬学的に許容される賦形剤は無菌である。本明細書に記載の薬剤が静脈内投与される場合、水は有用な賦形剤である。生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロールの水溶液も、特に注射液剤のために、液体賦形剤として使用することができる。適切な医薬賦形剤としてはまた、デンプン、グルコース、ラクトース、シュークロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、石灰粉(chalk)、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなども挙げられる。本明細書に記載の薬剤は、所望により、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。
【0227】
一実施態様では、本明細書に記載のペプチドまたは機能的変異体は、液剤、懸濁剤、乳剤、滴剤、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液剤含有カプセル剤、散剤、徐放性製剤、坐剤、乳剤、エアゾール剤、スプレー剤、懸濁液剤、ナノ粒子もしくはマイクロニードル、または使用に適した他の任意の剤形の形態を取ることができる。一実施態様では、組成物は、カプセルの剤形である。適切な医薬賦形剤の他の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences 1447-1676 (Alfonso R. Gennaro eds., 19th ed. 1995)に記載されている(出典明示により本明細書の一部とする)。
【0228】
必要に応じて、本明細書に記載のペプチドまたは機能的変異体はまた、可溶化剤を含む。また、該薬剤は、当該技術分野で知られているような適切なビヒクルまたは送達デバイスを用いて送達することができる。
【0229】
本明細書で概説したペプチドは、単一の送達ビヒクルまたは送達デバイスで共送達することができる。投与のための組成物は、例えば注射部位での痛みを軽減するためのリグノカインなどの局所麻酔薬を含んでもよい。
【0230】
本明細書に記載のペプチドもしくは機能的変異体、または本明細書に記載のコルチコステロイドもしくはモノクローナル抗体を含む製剤は、好都合には、単位剤形で提示され得、当技術分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。このような方法は、一般に、治療薬を、1つ以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。典型的には、製剤は、治療剤を液体担体、微粉固体担体、またはその両方と均一に密接に関連させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤の剤形に成形する(例えば、湿式または乾式造粒、粉末ブレンドなど、次いで、当該技術分野で既知の慣用方法を用いて打錠する)ことにより、調製される。
【0231】
一実施態様では、本明細書に記載のペプチドもしくは機能的変異体、または本明細書に記載のコルチコステロイドもしくはモノクローナル抗体は、本明細書に記載の投与様式に適している組成物として、通例の手順に従い製剤化される。一態様では、医薬組成物は、気道、皮膚、または胃腸管への投与のために製剤化される。したがって、本明細書に記載のペプチドを含む、気道への投与のための医薬組成物は、当技術分野で一般的であり本明細書に記載されるような吸入可能な物質として製剤化され得る。別の実施態様では、本明細書に記載のペプチドを含む、消化管への投与のための医薬組成物は、当技術分野で一般的であり本明細書に記載されるような腸溶コーティングを用いて製剤化され得る。さらに別の実施態様では、本明細書に記載のペプチドを含む、皮膚への投与のための医薬組成物は、それを必要とする個体の真皮層への組成物の吸収を可能にする基剤を含む。
【0232】
実施態様では、医薬組成物は、単回投与でまたは複数回投与として投与することができる。医薬組成物は、24時間に1~3回、または7日間以上の期間にわたって毎日投与し得る。投与の頻度およびタイミングは、実施例に記載のとおりであり得る。
【0233】
投与経路としては、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、脳内、リンパ節内、気管内、関節内、膣内、経皮、直腸、吸入による、または、特に耳、鼻、目もしくは皮膚への、局所が挙げられる。いくつかの実施態様では、投与は、経口的にまたは非経口注射によって行われる。投与の様式は、開業医の裁量に委ねることができ、病状の部位に部分的に依存する。ほとんどの場合、投与は、本明細書に記載の薬剤の血流中への放出をもたらす。
【0234】
本明細書に開示されているペプチドは、1日あたり総量約0.2~約2400mgで投与され得る。投与量は、1日にわたって2回または3回に分割することができるか、または1日1回投与することができる。開示された方法に企図される治療薬の1日当たりの総量の具体的な量としては、約0.2mg、約0.5mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約200mg、約250mg、約267mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約534mg、約550mg、約600mg、約650mg、約700mg、約750mg、約800mg、約850mg、約900mg、約950mg、約1000mgまたはそれ以上が挙げられる。
【0235】
いくつかの実施態様では、患者または個体は、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、またはサル、チンパンジーもしくはヒヒなどの非ヒト霊長類である。他の実施態様では、対象体および/または動物は、例えばゼブラフィッシュのような非哺乳動物である。いくつかの実施態様では、対象体および/または動物は、(例えばGFPによる)蛍光タグ付けされた細胞を含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、対象体および/または動物は、蛍光細胞を含むトランスジェニック動物である。
【0236】
いくつかの実施態様では、患者または個体は、ヒトである。いくつかの実施態様では、ヒトは小児のヒトである。他の実施態様では、ヒトは成人のヒトである。他の実施態様では、ヒトは高齢のヒトである。他の実施態様では、ヒトは、患者と称されることがある。
【0237】
特定の実施態様では、ヒトは、約0か月~約6か月齢、約6~約12月齢、約6~約18月齢、約18~約36月齢、約1~約5歳、約5~約10歳、約10~約15歳、約15~約20歳、約20~約25歳、約25~約30歳、約30~約35歳、約35~約40歳、約40~約45歳、約45~約50歳、約50~約55歳、約55~約60歳、約60~約65歳、約65~約70歳、約70~約75歳、約75~約80歳、約80~約85歳、約85~約90歳、約90~約95歳、または約95~約100歳の範囲の年齢である。
【0238】
他の実施態様では、対象体は非ヒト動物であり、したがって、本発明は獣医学的使用に関する。具体的な実施態様では、非ヒト動物は家庭用ペットである。別の具体的な実施態様では、非ヒト動物は、家畜動物である。
【0239】
腸への適用
実施態様では、個体の胃腸管における不適切な炎症反応を治療または予防する方法であって、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩の薬学的有効量を含む医薬組成物を、治療を必要とする個体に投与し、それによって個体の胃腸管における不適切な炎症反応を治療または予防することを含む、方法が提供される。
【0240】
治療に対するポジティブ反応は、炎症性腸症状悪化の予防または減弱、例えば炎症性紅斑またはサイトカイン/ケモカイン発現のレベルの低下、潰瘍形成、腸の不快感および痛みの軽減であり得る。
【0241】
本明細書で提供される組成物は、医薬製剤の技術分野の当業者に明らかな様々な方法によって製剤化することができる。上記の様々な放出特性は、様々な異なる方法で達成され得る。好適な製剤としては、例えば、錠剤、カプセル剤、プレスコート製剤、および他の投与しやすい製剤が挙げられる。
【0242】
適切な医薬製剤は、例えば、約0.1%~約99.9%、好ましくは約1%~約60%の有効成分を含有し得る。経腸または非経口投与のための併用療法のための医薬製剤は、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセル剤もしくは坐剤などの単位剤形のもの、またはアンプル剤である。特に明記しない場合、これらは、例えば、従来の混合、造粒、糖衣、溶解または凍結乾燥工程により、自体公知の方法で調製される。必要な有効量は、複数の投与単位の投与によって達することができるので、各剤形の個々の用量に含まれる組み合わせパートナーの単位含有量は、それ自体が有効量を構成する必要がないことが理解されよう。
【0243】
呼吸器への適用
実施態様では、個体の気道における不適切な炎症反応を治療または予防する方法であって、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩の薬学的有効量を含む医薬組成物を、治療を必要とする個体に投与し、それによって、個体の気道における不適切な炎症反応を治療または予防することを含む、方法が提供される
【0244】
「呼吸」という用語は、鼻、咽喉、喉頭、気管、気管支および肺を包含する身体系を介して、酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を排出する過程をいう。
【0245】
「呼吸器疾患」または「呼吸器状態」という用語は、炎症を伴い、上気道(鼻腔、咽頭および喉頭を含む)および下気道(気管、気管支、肺を含む)を含む呼吸器系の構成要素を冒すいくつかの病気のうちのいずれか1つを指す。
【0246】
呼吸器疾患の症状としては、咳、過剰な痰分泌、息切れ感、または可聴喘鳴を伴う胸部絞扼感を挙げることができる。運動能力はかなり限られ得る。これらの状態のそれぞれの影響は、仕事/学校を休んだ日数、睡眠障害、気管支拡張薬の必要性、経口グルココルチコイドを含むグルココルチコイドの必要性によって測定することもできる。
【0247】
呼吸器疾患の存在、改善、治療または予防は、対象体またはそれからの生検の臨床的または生化学的に関連する方法によって決定することができる。例えば、測定されるパラメータは、肺機能の存在または程度、閉塞の兆候および症状;運動耐容能;夜間覚醒;学校または仕事を休んだ日数;気管支拡張剤使用量、吸入コルチコステロイド(ICS)用量;経口(グルココルチコイド)GC使用量;他の薬物の必要性;医学的処置の必要性;入院であり得る。
【0248】
治療に対するポジティブ反応は、炎症性紅斑またはサイトカイン/ケモカイン発現のレベルの減少、咳または痰分泌の減少、または胸部絞扼感の減少など、呼吸器症状の悪化の予防または軽減でもあり得る。
【0249】
本明細書に記載のペプチドは、上気道(URT)、下気道(LRT)、またはURTとLRTの両方への投与用に製剤化された組成物におけるものであり得る。本明細書に記載のペプチドは、乾燥散剤、スプレー剤、ミスト剤またはエアゾール剤を含む、鼻腔内投与用に製剤化され得る。これは、呼吸器感染症の治療のために特に好ましいものであり得る。例えば鼻用スプレー剤または点鼻薬としての、担体が液体である、投与に好適な製剤には、有効成分の水溶液または油性溶液が含まれる。別法として、組成物は、例えばマンニトール、トレハロース、ラクトースなどの賦形剤を含む、上気道に投与される乾燥散剤であってもよい。液体製剤または乾燥散剤は、上気道および下気道送達用に設計することができる。
【0250】
他の成分、例えば、技術的に既知の保存剤、着色剤、滑沢剤または粘性のある鉱油または植物油、香料、芳香油のような天然または合成植物エキス、および保湿剤および増粘剤、例えばグリセロールもまた、製剤に追加の粘度、保湿性、心地よいテクスチャおよび匂いを与えるために含めることができる。本発明による液剤または懸濁剤の鼻腔投与のために、液滴、小滴およびスプレーの生成のための様々な装置が当技術分野で利用可能である。例えば、本明細書に記載の化合物または組成物は、一端に取り付けられた手動式ポンプ(例えば、軟質ゴム球)によって提供される空気圧によって内容物が一滴ずつ排出されるガラス、プラスチックまたは金属の分注管を含む単純なスポイト(又はピペット)により鼻腔内に投与することができる。
【0251】
眼の涙液分泌物は眼窩から鼻腔に排出されるため、望ましい場合、適切な薬学的に許容される眼科用溶液を、送達すべき本明細書に記載のペプチドまたは組成物の担体として当業者によって容易に提供することができ、眼窩に点眼剤の形で眼の眼窩に投与して眼科および鼻腔内投与の両方を提供することが可能である
【0252】
一実施態様では、液滴またはスプレーとして送達するための溶液または懸濁液を含有しているドロッパーまたはスプレー装置を含む事前測定した単位用量ディスペンサーが、投与されるべき薬物の1つ以上の用量を含むように調製される。また、本発明は、適切な量の水の添加によって溶液または懸濁液を調製する準備ができている1回以上の単位脱水用量の化合物を、必要な塩および/または緩衝剤、保存剤および着色剤などとともに含むキットも含む。水は滅菌水でも非滅菌水でもよいが、一般に滅菌水が好ましい。
【0253】
皮膚への適用
実施態様では、個体の真皮層または皮膚(表皮、皮下組織(hypodermis)/皮下組織(subcutaneous tissue)を含む)における不適切な炎症反応を治療または予防する方法であって、ペプチド、本明細書に記載のペプチドまたはその薬学的に許容される塩の薬学的有効量を含む医薬組成物を、治療を必要とする個体に投与し、それにより、個体の真皮層または皮膚における不適切な炎症反応を治療または予防することを含む方法が提供される。
【0254】
治療に対するポジティブ反応は、皮膚症状の悪化の予防または減弱、例えば炎症性紅斑またはサイトカイン/ケモカイン発現のレベルの低下、腫脹、発疹、鱗屑、および/または、患部からの体液漏出の減少であり得る。
【0255】
皮膚における不適切な炎症反応の治療に適している医薬組成物は、1つ以上の賦形剤を用いて製剤化し得る。さらに、医薬組成物はまた、ステロイドクリーム剤、モイスチャライザー、コールタール、クリーム剤または軟膏剤またはレチノイドクリーム剤と一緒に投与することもできる。
【0256】
生物学的活性薬剤、医薬賦形剤および化粧品用薬剤などの他の物質は、本発明の局所用組成物に含まれ得る。
【0257】
生物学的活性薬剤としては、タネチン、3,7,3'-トリメトキシケルセタゲチン、アピゲニンおよびその誘導体が挙げられるがこれらに限定されないフラバノイド/フラボン化合物を挙げられることができるがこれらに限定されるものではない。フラバノイド/フラボン化合物が存在する場合、それらは局所用組成物の重量に基づいて、約0.001%~約0.5%の間、好ましくは約0.005%~0.2%の間の濃度で存在する。
【0258】
追加の生物学的活性剤としては、サンスクリーン、抗シワ剤/老化防止剤、抗真菌剤、抗生物質、抗ざ瘡剤および抗乾癬剤、脱色素剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、このような薬剤は、局所用組成物の他の成分と物理的および化学的に適合する限り利用することができる。
【0259】
本発明の組成物は、追加の皮膚活性剤(skin actives)を含み得る。活性剤は、ビタミン化合物であり得るが、これらに限定されない。美白剤(コウジ酸、アスコルビン酸、およびパルミチン酸アスコルビル(ascorbyl pamiltate)のような誘導体など);トコフェロールおよびエステルなどの抗酸化剤;ニコチンアミド、金属キレーター、レチノイドおよび誘導体、保湿剤、サリチル酸のようなヒドロキシ酸、メトキシ桂皮酸オクチル、オキシベンゾンおよびアボンゾンなどのサンスクリーン、酸化チタンおよび酸化亜鉛などのサンブロック、ならびに皮膚保護剤。上記の皮膚活性剤の混合物を使用することができる。
【0260】
本発明の組成物に使用することができるサンスクリーンとしては、メトキシ桂皮酸オクチルおよび他の桂皮酸化合物、二酸化チタンならびに酸化亜鉛などの有機または無機サンスクリーンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0261】
抗真菌剤としては、ミコナゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ビホコナゾール、テルコナゾール、ブトコナゾール、チオコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、サペルコナゾール、クロトリマゾール、ウンデシレン酸、ハロプロギン、ブテナフィン、トルナフテート、ナイスタチン、シクロピロクスオラミン、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフティフィン、エルビオール、グリセオフルビンおよびそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるがこれらに限定されない。
【0262】
抗生物質(または防腐剤)としては、ムピロシン、硫酸ネオマイシン、バシトラシン、ポリミキシンB、l-オフロキサシン、テトラサイクリン(クロルテトラサイクリン塩酸塩、オキシテトラサイクリン塩酸塩およびテトラサイクリン塩酸塩)、クリンダマイシンリン酸塩、ゲンタマイシン硫酸塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヘキシルレゾルシノール、塩化メチルベンゼトニウム、フェノール、第4級アンモニウム化合物、トリクロカーボン、トリクロサン、ティーツリーオイル、過酸化ベンゾイルおよびそれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0263】
ざ瘡成分としては、表皮分化を正常化する薬剤(例えば、レチノイド)、角質溶解剤(例えば、サリチル酸およびα-ヒドロキシ酸)、過酸化ベンゾイル、抗生物質、および皮脂を調節する化合物または植物エキスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0264】
抗乾癬剤としては、コルチコステロイド(例えば、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、二酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸ハロベタゾール、アムシノニド、デスオキシメタゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、酢酸トリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、吉草酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、二プロピオン酸アルクロメタゾン(aclometasone dipropionte)、フルランドレノリド、フロ酸モメタゾン、酢酸メチルプレドニゾロン)、ビタミンDおよびその類似体(例えば、カルシポトリエン、レチノイド(例えば、タザロテン)およびアントラリン(anthraline)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0265】
本発明の組成物に使用することができる化粧品用薬剤としては、皮膚軟化剤、ビタミン類および抗酸化剤(例えば、ビタミンE)、ならびにハーブエキス(例えば、アロエベラ)などの潜在的な皮膚刺激を防止するものを挙げることができるが、これらに限定されない。また、化粧品用薬剤としては、保湿剤、酸化防止剤/保存剤、植物エキス、香料、芳香剤および界面活性剤などを挙げることができる。保湿剤の例としては、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、燕麦タンパク質、アラントイン、アセタミドMEA(acetamine MEA)およびヒアルロン酸などを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0266】
また、化粧品用薬剤としては、炎症性障害および関連状態の症状を隠す物質を挙げることもできる;そのような物質としては、顔料、染料およびその他の添加剤(例えば、シリカ、トーク(talk)、酸化亜鉛、酸化チタン、粘土粉末)が挙げられるが、これらに限定されない。医薬賦形剤としては、pH改変剤(pH-modifying agent)のようなpH改変剤(pH modifying agent)、有機溶剤(例えば、プロピレングリコール、グリセロールなど)、セチルアルコール、カオリン、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、コーンスターチ、グルコン酸ナトリウム、油(例えば、鉱油)、セテアレス-20、セテス-2、界面活性剤および乳化剤、増粘剤(または結合剤)、香料、抗酸化剤、保存剤および水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0267】
結合剤または増粘剤は、本発明の組成物において、該組成物に持続性および物理的安定性を付与するために使用することができる。本発明の組成物における使用に適した結合剤または増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムのアルカリ金属塩などのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールなどのアルギン酸アルカリ金属、カラギーナン、キサンタンガム、トラガカントガム、カラヤガムおよびアラビアガムなどのガム類、ならびにポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムおよびポリビニルピロリドンなどの合成結合剤が挙げられる。天然ガムおよび合成ポリマーなどの増粘剤、ならびに着色剤および芳香剤もまた、このような組成物に一般的に含まれる
【0268】
本発明の組成物に使用することができる保存剤の例としては、サリチル酸、クロルヘキシジン塩酸塩、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウム、パラヒドロキシ安息香酸メチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸プロピルおよびパラヒドロキシ安息香酸ブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0269】
本発明の組成物に使用することができる香料および芳香剤の例としては、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、a-テルピネオール、サリチル酸メチル、酢酸メチル、酢酸シトロネリル、シネオール、リナロール、エチルリナロール、バニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シナモン油、ピメント油、シナモン葉油、エゴマ油、冬緑油、チョウジ油およびユーカリ油などが挙げられる。
【0270】
本発明の組成物は、患者への局所適用のために多くの形態で調製することができる。例えば、該組成物は、ゲル、クリーム、軟膏、シャンプー、頭皮コンディショナー、液体、スプレー液体、ペイント/ブラシオン製剤(paint-/brush-on preparation)、エアゾール、粉末または粘着包帯で適用され得る。さらに、該組成物は、包帯、ハイドロコロイドまたは他の創傷被覆材、治療パッチ、またはベビーワイプもしくは顔用ワイプなどの布ワイプ製品に含浸していてもよい。
【0271】
本発明の組成物は、クリーム剤およびローション剤などの乳剤の形態であってもよい。このような組成物は、2つ以上の相を有していてもよく、多相エマルションの製造を可能にする表面活性剤を含んでいてもよい。
【0272】
本発明の組成物に使用することができる表面活性剤の例としては、アルキル硫酸ナトリウム、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびミリスチル硫酸ナトリウム、N-アシルサルコシン酸ナトリウム、例えばN-ラウロイルサルコシン酸ナトリウムおよびN-ミリストイルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、硬化ヤシ脂肪酸モノグリセリド硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、およびN-アシルグルタミン酸塩、例えば、N-パルミトイルグルタミン酸塩、N-メチルアシルタウリンナトリウム塩、N-メチルアシルアラニンナトリウム塩、a-オレフィンスルホン酸ナトリウムおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム;N-アルキルアミノグリセロール、例えばN-ラウリルジアミノエチルグリセロールおよびN-ミリスチルジアミノエチルグリセロール、N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタインおよび2-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族酸エステル、高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニック型界面活性剤、ならびにポリオキシエチレンソルビタンモノオレートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。当業者に知られている乳化剤型界面活性剤が本発明の組成物に使用されるべきである。
【0273】
本発明の別の態様は、皮膚科学的に許容される担体である。このような好適な担体は、局所使用に適している。それは、本明細書に記載の有効成分と適合するだけでなく、いかなる毒性および安全性の問題を引き起こさない。有効で安全な担体は、本発明の組成物の約50重量%から約99重量%まで、より好ましくは組成物の約75%から約99%まで、最も好ましくは組成物の約85重量%から約95重量%までさまざまである。
【0274】
どの医薬賦形剤、生物学的製剤、または化粧品用薬剤を使用するかの選択は、しばしば、治療される炎症性疾患または関連状態の種類によって制御または影響される。例えば、本発明の組成物が足白癬(athlete's foot)、股部白癬(jock itch)またはおむつ皮膚炎(diaper rash)に関連する皮膚炎を治療するために使用される場合、タルクが好ましい医薬賦形剤であり、抗真菌剤が好ましい生物学的製剤である。本発明の組成物が頭皮の湿疹を治療するために使用される場合、乳化剤および油が好ましい医薬賦形剤である。
【0275】
キット
本発明は、本明細書に記載の薬剤の投与を簡便化することができるキットを提供する。本発明の例示的なキットは、本明細書に記載の組成物を単位剤形で含む。一実施態様では、単位剤形は、本明細書に記載の薬剤と、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはビヒクルとを含んでおり、無菌であり得る、プレフィルドシリンジのような容器である。キットは、本明細書に記載の薬剤の使用を指示するラベルまたは印刷された説明書をさらに含むことができる。キットはまた、開瞼器(lid speculum)、局所麻酔薬、および投与部位洗浄剤を含むこともできる。キットはまた、本明細書に記載される1つ以上の追加の薬剤をさらに含むことができる。一実施態様では、キットは、本発明の組成物の有効量と、別の組成物の有効量、例えば本明細書に記載のものとを含む容器を含む。
【0276】
本発明は、さらに、以下のうち1つ以上を含むキットを含む:
(i) 本明細書に記載のペプチド;
(ii) 本発明の抗原結合部位;
(iii) 本明細書に記載の抗炎症剤;
(iii) 本発明の医薬組成物。
【0277】
実施態様では、キットは、さらに、例えば本発明のペプチドに連結された、検出手段を含むことができる。
【0278】
治療的/予防的使用のためのキットの場合、キットは、さらに、薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0279】
本発明のキットは、例に従って本明細書に記載の方法で使用するための説明書とともに包装されていてもよい。
【0280】
本明細書に開示され定義された発明は、本文または図面に言及されているかまたは本文または図面から明らかな個々の特徴の2つ以上のすべての代替的な組み合わせに及ぶことが理解される。これらの異なる組み合わせのすべては、本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【実施例0281】
実施例1: 本発明の使用に適しているペプチドの生成
RP23(配列番号12)の合成。
H-KKKK-CH2CH2OCH2CH2OCH2CO-MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVV-OH
RP23(ペプチド12)は、12.5μmolスケールで、Chemmatrix(登録商標)CTC樹脂上で自動SPPSにより、カップリング反応を50℃で実施して、合成した。Leu-Thrの両結合部にシュードプロリンジペプチドFmoc-L-Leu-L-Thr[ψMe,MePro]-OHを取り込ませた。TFA:iPr3SiH:チオアニソール:H2O(90:2.5:2.5:5 v/v/v/v)で該ペプチドを樹脂から切断した。分取HPLC精製後、凍結乾燥して、RP23(ペプチド12)を白色固体として得た(9.6mg、収率26%)。LRMS計算値: [M+2H]2+ = 1475.38, [M+3H]3+ = 983.92, [M+4H]4+ = 738.19; 測定値 (ESI+) 1145.90, 764.10。C140H239N31O35SについてのHRMS計算値: [M+H]+ = 2946.760; 測定値 (MALDI-TOF): 2946.758。
【0282】
実施例2: 免疫系の局所抑制に対するペプチド投与の効果
接触過敏症モデル - 方法
8週齢雌性C57BL/6マウス(Australian BioResources)の腹部を粗く剃毛した。少なくとも24時間後、RP23(配列番号12)をリン酸緩衝生理食塩水50μl中で腹部での皮下注射により送達した。7日後、剃毛した腹部への適用を介して、オリーブ油/アセトン(1:4、v/v、30μl)中の1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン(DNFB、0.5vol%)にマウスを局所的に感作させた。感作の5日後、マウスを耳にてオリーブ油/アセトン(1:4、v/v、片耳あたり15μl)中の局所DNFB(0.25vol%)でチャレンジした。耳の厚さは、チャレンジの直前からチャレンジの96時間後まで毎日、手動ノギスを用いて測定した。耳腫脹の陽性対照は、RP23の代わりにPBSを注射したマウスで構成された。陰性または刺激性対照は、感作ではなくてDNFBチャレンジを受けたマウス群から構成された。DNFB、オリーブオイルおよびアセトンの適用による非特異的刺激を説明するために、この対照群からの耳の厚さの変化の平均値を他のサンプルの耳の厚さの変化から差し引いた。
【0283】
イミキモド誘発乾癬モデル - 方法
8週齢雌性C57BL/6マウス(Australian BioResources)の背中を粗く剃毛した。少なくとも24時間後、10nmolのRP23をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)200μl中で腰背部での皮下注射により送達した。疾患発症の陽性対照の役割を果たすマウス群はPBSのみの注射を受けた。1日後または7日後、5%イミキモドクリーム(アルダラ、Inova Pharmaceuticals)を剃毛した背中(57.5mg)と片耳(5mg、背側と腹側に分けて)に局所投与して乾癬様炎症を誘発させた。反対側の耳は、イミキモド誘発炎症の陰性対照としての役割を果たした。イミキモドの適用は連続4日間毎日繰り返された。C57BL/6マウスは、イミキモドクリームの適用により、急速な体重減少(最大20%)を経験する。イミキモド適用の2日前に開始された栄養素補充の形態、およびイミキモド適用の2日目と3日目に滅菌PBS300μlの腹腔内注射の形態で支持療法が提供された。体重減少を記録し、疾患の重症度のみを評価する修正乾癬面積重症度指数(PASI)臨床スコアリングシステムを用いて背中の皮膚の疾患を等級付けすることにより、疾患の進行を5日間モニタリングした。さらに、背中の皮膚の4つの象限で紅斑計(DSM II ColorMeter、Cortex Technology, Denmark)の読み取り値を取得し、皮膚バックフォールド厚さ測定値(skin backfold thickness measurement)を、手動ノギスを用いて記録した。耳の皮膚の疾患進行は、手動ノギスによって測定した耳の厚さを記録することにより決定した。免疫抑制療法の陽性対照として、マウス群にジプロピオン酸ベタメタゾン0.05%クリーム(MSD)(背中に30mg、耳に10mg)を毎日局所適用した。ステロイド療法を受けたマウスは、より大きな程度の体重減少、および脾臓重量の大幅な減少を経験しており、全身性免疫抑制が示されている。
【0284】
本発明者らは、まず、皮膚腫瘍マウスモデルにおいてワクチン抗原としてRP23(配列番号12)を試験した。驚いたことに、RP23で処置したマウスでは皮膚腫瘍成長の低下を観察せず、むしろ腫瘍成長のわずかな増加を観察しており(図1)、免疫抑制効果が示唆されている。次に、接触過敏症アッセイを用いて、RP23が接触皮膚炎マウスモデルで炎症を軽減できるかどうかを評価した(図2a)。感作前のRP23の単一ナノモル注射は、耳の厚さの減少(図2b)および炎症性ミエロイド細胞の皮膚浸潤(図2c)によって測定されるように、炎症の誘発を有意に抑制することができた。同じアミノ酸をスクランブルされた順序で持つペプチドは耳腫脹を有意に減少させなかった(図3a)ので、この免疫抑制はRP23配列に特異的である。RP23は、配列番号3(MUC1SP)の効果と比較すると、免疫抑制を大きく変えることなく、合成収量をかなり増加させた(図3b)。RP23を使用して、本発明者らは免疫抑制を滴定するための用量反応アッセイを実施した。低ナノモル範囲の3つの用量(2、5または10nmol、約0.3、0.8、1.6mg/kg)を用いて、対照と比較して最大100%の耳腫脹の用量依存的な減少が観察された(図3c)。アッセイにGM-CSFを含めると、RP23によってもたらされる抑制の多くが無効になった(図3d)。また、イミキモド誘発乾癬マウスモデル(図4a)において、RP23の単回注射により、局所紅斑、皮膚厚さおよび鱗屑が減少した(図4b、c)。この免疫調節効果は、望ましくない全身性免疫抑制を引き起こしたグルココルチコイドの局所適用とは異なり、RP23が送達された領域に限定された(図4d)。RP23注射を受けたマウスでは、10nmolの用量を6日間毎日皮下注射した場合でも、いかなる種類の副作用も観察されておらず(データは示されていない)、このペプチドが無毒性で非刺激性であることが支持されている。
【0285】
インビトロ培養システムを用いて、RP23が特定の炎症誘発性免疫細胞の活性を抑制することができるかどうかを調べた。一次マウス脾臓樹状細胞において、RP23は炎症性ケモカインの分泌を減少させ(データは示されていない)、表面活性化マーカーの発現を減少させた(図5a)。RP23で用いたマウス骨髄由来マクロファージの培養は、LPS刺激後のIL-6、MCP-1およびTNFの放出の減少をもたらした(図5b)。同様に、一次ヒト血液由来マクロファージは、LPSまたはイミキモドのいずれかで刺激した後、IL-6およびIL-12/23の放出を減少させた(図5c)。RP23は、細胞に細胞分裂抑制性または細胞毒性効果を引き起こすことなく、マクロファージにこれらの変化を誘導することができ(図6)、該ペプチドが無毒であることが示されている。RP23を健康なヒトの皮膚外移植片に皮内注射すると、真皮樹状細胞の自発的活性化が減少した(図7)。
【0286】
結論として、本明細書に記載のペプチドは、炎症性皮膚疾患の改善された管理を求めている患者のための新規の局所作用性ペプチドベース療法としての可能性を提供する。
【0287】
さらに、修飾された免疫経路、特にIL-12/23、IL-6およびTNFの減少(図5)、ならびにマクロファージおよびDCなどの炎症誘発性免疫細胞の活性化状態の減少(図5図7図15)は、炎症性皮膚適応症以外のRP23の幅広い適用性を示唆している。乾癬マウスの皮膚におけるTCRαβ+ T細胞のRP23による減少(図11A)、および皮膚流入領域リンパ節におけるFoxP3+ CD4+ T細胞の増加(図11B)はまた、T細胞によって媒介される炎症状態における使用への適合性を示唆している。これは、炎症誘発性自然免疫細胞によって開始され得るかまたは炎症誘発性自然免疫細胞を介してさらに悪化し得る、RAおよびIBDなどのTヘルパー1または17型炎症によってさらに特徴付けられる炎症状態を含み得る。
【0288】
実施例3: 炎症反応に対するRP23(配列番号12)の変異体の効果
次に、本発明者らは、接触過敏症モデルを用いて、RP23の免疫調節活性に関与する部分を決定するために、さらなるインビボ研究を行った。接触刺激物(DNFB)による皮膚の感作の7日前に、マウスの腹部にペプチド(10nmol)を1回皮下注射した。5日後、マウスを耳の遠位部位にてDNFBでチャレンジした。耳の厚さを72時間にわたって測定した。該厚さは、炎症反応の程度に比例する。
【0289】
生理食塩水(PBS)を注射したマウスと比較して、配列番号12(RP23)、配列番号12の蛍光標識バージョン(配列番号21=AF594-RP23)、配列番号12の組換えにより生産可能なバージョン(配列番号22=K4G3MUC1SP)、およびペプチドのC末端フラグメント(配列番号2=MUC1SP C-フラグメント)はすべて、炎症反応の低下をもたらした(図8)。
【0290】
【表6】
【0291】
実施例4: 炎症反応に対するさらなるペプチド変異体の効果
上記RP23(配列番号12)の効果は、接触皮膚炎マウスモデルにおいて、本明細書に記載の配列番号32および配列番号35として標識された多くのさらなるペプチド変異体を用いて確認された。これらのペプチドの効果を、配列番号35のスクランブルバージョンと比較した。
【0292】
マウスの腹部に、PBS、RP23(10nmol)または下記の表に示されているペプチド変異体の1つ(RP23の等モル量)を1回皮下注射した。
【0293】
【表7】
【0294】
示されている場合、フォトロイシンはロイシンにとって代わり、これらの分子は光架橋研究に使用された。7日後、腹部皮膚を接触刺激物(DNFB)で感作し、5日後、マウスを耳の遠位部位にてDNFBでチャレンジした。
【0295】
図9Aに示されるように、ペプチド配列が保持されているRP23変異体を投与されたマウスでは、耳の厚さの特異的増加が減少した。対照的に、対照PBS注射、または配列番号35のスクランブル変異体を投与されたマウスは、耳の炎症の減少がなかった。これは、免疫抑制効果に対する配列番号30アミノ酸配列の重要性を繰り返しており、特定の化学修飾がRP23の効力に影響を与えないことを示している。したがって、修飾されたRP23配列番号32および35は、RP23誘発免疫調節の評価のためにRP23の代わりに使用することができる。
【0296】
実施例5: 炎症反応に対するコルチコステロイド投与と組み合わせた本明細書に記載のペプチドの効果
C57BL/6雌性マウスの背中にアルダラクリーム(5%イミキモド、57.5mg)を毎日(0~4日目)適用して、乾癬を誘発した。0日目にグルココルチコイド(0.05%ジプロピオン酸ベタメタゾン、30mg)を背中へ局所適用をした場合またはしない場合の、予防的PBSまたはRP23(-1日目)を投与されたマウスの臨床スコア(PASI;修正乾癬面積重症度指数)を決定した(図10A)。初期の時点、つまり1日目と2日目には、RP23単独またはBD単独と比較して、RP23+BDの両方を投与したマウスの臨床スコアにわずかな減少が見られた。注目すべきことに、病気が進行するにつれて、BD単独による保護効果は失われていくのに対し、RP23+BDの両方を使用すると、保護は維持された。しかしながら、後の時点では、RP23単独と比較して、併用による利点はなかった。
【0297】
RP23およびBD療法はまた、治療時点(1日目)で相乗的に投与した場合にも試験された。乾癬は上記のように誘発されたが、臨床スコアは、乾癬疾患消散の速度および程度を記録するために、5日目にイミキモドの適用を停止してから10日間毎日測定された(図10B)。この場合もやはり、RP23+BDは、疾患の軽減に早期の利点をもたらし(2日目)、疾患消散の速度および程度の点で、BDのみの治療と比較して改善をもたらした。これは、BDまたはRP23の単回投与のみが使用される場合を含めて、治療用BDの有効性を高めるためにRP23を使用することができることを示唆している。
【0298】
実施例6: RP23治療は、患部皮膚におけるTCRαβ+ T細胞を減少させ、皮膚流入領域リンパ節における制御性CD4+ T細胞を増加させる
C57BL/6雌性マウスは、-1日目にPBSまたはRP23注射を受け、次いで、マウスの背中にアルダラクリーム(5%イミキモド、57.5mg)を毎日(0~4日目)塗って乾癬を誘発させた。15日目に、皮膚および鼠径リンパ節をフローサイトメトリーで分析して、背中の乾癬皮膚における総白血球(CD45+)の割合としてT細胞サブセットを定量化した(図11A)。RP23治療は、背中の皮膚における総CD4+およびCD8+ T細胞の割合を減少させており、乾癬の状況での皮膚への炎症誘発性T細胞の増殖または動員の減少を示唆している。
【0299】
皮膚流入領域リンパ節(鼠径部)のCD3+CD4+ TCRαβ T細胞を転写因子染色およびフローサイトメトリーで表現型決定して、制御性表現型を持つ細胞(すなわち、FoxP3+)を同定した。RP23処置マウスでは、それぞれTh1またはTh17を規定する転写因子であるT-betまたはRorγtの同時発現の有無にかかわらず、FoxP3発現細胞数が有意に増加した(図11B)。これは、RP23治療がTh1またはTh17タイプの炎症を含むT細胞応答を調節する応答を促進することを示唆しており、乾癬、接触皮膚炎、IBD(例えば、潰瘍性大腸炎またはクローン病)および関節リウマチを包含するこのタイプの炎症が病原性である炎症適応症におけるRP23の有用性を支持している。
【0300】
実施例7: 局所適用のためのペプチド製剤
RP23AF594を、ジメチコン、流動パラフィン、4-クロロ-3-メチルフェノール、セトリミドおよびオクタデカン-1-オールからなる適合ストックエマルションにて局所適用のために製剤化した。これを全層ヒト皮膚外植片に局所的に適用し(7mg/cm2、10nmol RP23)、24時間培養した。凍結切片を作製し、蛍光顕微鏡で分析した。RP23AF594は、表皮(E)において、および真皮(D)の基底膜(線)の下において、検出可能であった。これは、RP23が、ヒトの皮膚に局所的に適用された場合、角質層と基底膜を透過することができて、皮膚の表皮層と真皮層の両方における細胞と密接に関連して見られるかまたは該細胞によって捕捉されることを示している(図12)。
【0301】
実施例8: 免疫系の局所抑制に対するペプチド投与の効果: RP23治療はアトピー性皮膚炎マウスモデルにおいて炎症を軽減する
C57BL/6雌性マウスの耳と剃毛した背中を、刺激性オキサゾロンまたはビヒクルのみの局所適用で感作し(0日目)、チャレンジした(7日目、10日目、14日目、17日目、19日目、21日目、23日目、25日目、27日目)。-1日目、または-7日目と-1日目の両日でのマウスへのRP23の注射を、PBSのみの注射(-7日目および-1日目)、またはオキサゾロン適用のたびに背中に適用されたステロイド(0.01%ジプロピオン酸ベタメタゾン、30mg)の局所適用と比較した。耳の厚さを手動ノギスで測定した。RP23を投与した群は、PBS注射対照マウスと比較して耳の炎症が減少しており、RP23が局所刺激物に対する炎症反応のプライミングを減少させたことが示唆されている。
【0302】
実施例9: RP23は皮膚および肺における自然免疫細胞と相互作用する
C57BL/6マウスへの投与の24時間後にフローサイトメトリーによりAF594-RP23+細胞を同定した。RP23を腰背部に皮下注射した場合、ペプチドは主に好中球(CD11b+ Ly6G+)、またはマクロファージおよびDCを含むCD11b+ ミエロイド細胞サブセットによって皮膚に捕捉された(図14A)。同様に、RP23を鼻腔内注入によって肺粘膜に送達した場合、ペプチドは主に好中球、肺胞マクロファージおよびDCによって捕捉された(図14B)。
【0303】
RP23の粘膜送達はまた、肺の抗原提示細胞における活性化マーカーの発現を減少させた。ナイーブC57BL/6マウス(n=5)にPBSまたはRP23を鼻腔内注入により投与し、次いで、24時間後、気管支肺胞洗浄および灌流肺から細胞を収集した。CD11c+ 樹状細胞上のMHCIIの蛍光強度中央値をフローサイトメトリーで決定した。MHCII発現は、肺組織のDC上で実質的に減少した(図15A)。一度強力な肺の炎症が誘発されるとこの効果が維持されるかどうかを決定するために、C57BL/6マウス(n=4)にPBS、スクランブルRP23ペプチド、またはRP23を鼻腔内注入によって投与し、次いで、24時間後、Pam2Cys-SK4-PEG(OH)を鼻腔内投与して炎症状態を誘発した。RP23処置マウスは、再び肺DC上のMHCII発現が減少し、気管支肺胞腔内のDC上でもMHCII発現が減少した(図15B)。これは、RP23がAPCに取り込まれ、次いで、炎症誘発性が低くなるようにその機能を調節していることを示唆している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
2023126760000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント
を含む抗炎症性ペプチドであって、21個未満のアミノ酸残基からなる抗炎症性ペプチド。
【請求項2】
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント;
- 1個以上のさらなるアミノ酸(ただし、該1個以上のさらなるアミノ酸は、配列番号1もしくは2の配列に対してN末端位置で配列MTPGTQSPFFを定義しない;または配列番号1もしくは2の配列に対してC末端位置で配列TGSGHASSTPを定義しない)
を含む抗炎症性ペプチドであって、少なくとも15個のアミノ酸残基、好ましくは15~1000個の残基を含む抗炎症性ペプチド。
【請求項3】
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント;
- 1個以上のさらなるアミノ酸、
- 場合により、生体液、組織または製剤中でペプチドの可溶化を促進するため、該ペプチドの細胞への侵入を促進するため、または該ペプチドの検出を可能にするための1つ以上の修飾
を含む抗炎症性ペプチドであって、少なくとも15個のアミノ酸残基、好ましくは15~1000個の残基を含む抗炎症性ペプチド。
【請求項4】
該ペプチドが、配列番号1、2、3、30または50~63のうちのいずれか1つの配列番号のアミノ酸配列、またはその機能的変異体もしくはフラグメントを含むかまたはそれからなる、請求項3記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項5】
該ペプチドが、配列番号1、2、3、30または50~63の配列からなる、請求項4記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項6】
該ペプチドが、配列番号3の配列からなる、請求項4記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項7】
該ペプチドが、配列番号30の配列からなる、請求項4記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項8】
該ペプチドが、さらに、
- 生体液、組織または製剤中でペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分、
- 該ペプチドの細胞への侵入を促進するための部分、および
- 該ペプチドの検出を可能にするための修飾または部分
のうちの1つ以上を含む、請求項1~7いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項9】
該ペプチドが、生体液、組織または製剤中で該ペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分を含み、好ましくは該修飾または部分が、1つ以上の荷電アミノ酸残基、該ペプチドの溶解度を高めるためのポリマーまたはポリマーフラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項10】
該ペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分がペプチドのN末端にある、請求項8または9記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項11】
該ペプチドが、該ペプチドの細胞内への侵入を促進するための部分、好ましくは細胞透過性ペプチド(CPP)配列を含む、請求項8~10いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項12】
さらにリンカーを含む、請求項1~11いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項13】
該ペプチドにコンジュゲートされたさらなる抗炎症性ペプチドを含む、請求項1~12いずれか1項記載の抗炎症性ペプチド。
【請求項14】
該ペプチドが、配列番号1~66のいずれか1つで定義されているとおりである、請求項8記載のペプチド。
【請求項15】
請求項1~14いずれか1項記載の抗炎症性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~14いずれか1項記載のペプチドをコードする核酸またはそのフラグメント。
【請求項17】
個体における炎症の予防または治療のための医薬の製造における請求項1~14いずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項18】
該医薬が、炎症の治療のためのさらなる抗炎症剤を含む、請求項17記載の使用。
【請求項19】
該炎症が、免疫応答に関連しており、該炎症が、TNF、IL-6またはIL-12/23産生に関連しているものであってもよい、請求項17または18記載の使用。
【請求項20】
該炎症が、粘膜組織または皮膚組織、好ましくは真皮組織、筋骨格組織、肺組織または腸管組織から選択される組織内または該組織上に存在する、請求項17~19いずれか1項記載の使用。
【請求項21】
該炎症性疾患または障害が、関節リウマチ、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、または乾癬である、請求項17~20いずれか1項記載の使用。
【請求項22】
個体における免疫応答を調節するための医薬の製造における請求項1~14いずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項23】
炎症、好ましくは異常な免疫活性化に関連する炎症、より好ましくは関節リウマチ、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎または乾癬の予防または治療に用いるための請求項1~14いずれか1項記載のペプチドまたは請求項15記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項15記載の組成物を含んでおり、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される炎症性分子の活性を阻害することができるさらなる抗炎症剤を含んでいてもよい、キット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0303
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0303】
RP23の粘膜送達はまた、肺の抗原提示細胞における活性化マーカーの発現を減少させた。ナイーブC57BL/6マウス(n=5)にPBSまたはRP23を鼻腔内注入により投与し、次いで、24時間後、気管支肺胞洗浄および灌流肺から細胞を収集した。CD11c+ 樹状細胞上のMHCIIの蛍光強度中央値をフローサイトメトリーで決定した。MHCII発現は、肺組織のDC上で実質的に減少した(図15A)。一度強力な肺の炎症が誘発されるとこの効果が維持されるかどうかを決定するために、C57BL/6マウス(n=4)にPBS、スクランブルRP23ペプチド、またはRP23を鼻腔内注入によって投与し、次いで、24時間後、Pam2Cys-SK4-PEG(OH)を鼻腔内投与して炎症状態を誘発した。RP23処置マウスは、再び肺DC上のMHCII発現が減少し、気管支肺胞腔内のDC上でもMHCII発現が減少した(図15B)。これは、RP23がAPCに取り込まれ、次いで、炎症誘発性が低くなるようにその機能を調節していることを示唆している。
本願は、下記の態様も包含する。
[態様1]
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント
を含む抗炎症性ペプチドであって、21個未満のアミノ酸残基からなる抗炎症性ペプチド。
[態様2]
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント;
- 1個以上のさらなるアミノ酸(ただし、該1個以上のさらなるアミノ酸は、配列番号1もしくは2の配列に対してN末端位置で配列MTPGTQSPFFを定義しない;または配列番号1もしくは2の配列に対してC末端位置で配列TGSGHASSTPを定義しない)
を含む抗炎症性ペプチドであって、少なくとも15個のアミノ酸残基、好ましくは15~1000個の残基を含む抗炎症性ペプチド。
[態様3]
- アミノ酸配列TVLTVV(配列番号1)、またはアミノ酸配列LLLLLTVLTVV(配列番号2)またはその機能的変異体もしくはフラグメント;
- 1個以上のさらなるアミノ酸、
- 場合により、生体液、組織または製剤中でペプチドの可溶化を促進するため、該ペプチドの細胞への侵入を促進するため、または該ペプチドの検出を可能にするための1つ以上の修飾
を含む抗炎症性ペプチドであって、少なくとも15個のアミノ酸残基、好ましくは15~1000個の残基を含む抗炎症性ペプチド。
[態様4]
該ペプチドが、配列番号1、2、3、30または50~63のうちのいずれか1つの配列番号のアミノ酸配列、またはその機能的変異体もしくはフラグメントを含むかまたはそれからなる、態様3記載の抗炎症性ペプチド。
[態様5]
該ペプチドが、配列番号1、2、3、30または50~63の配列からなる、態様4記載の抗炎症性ペプチド。
[態様6]
該ペプチドが、配列番号3の配列からなる、態様4記載の抗炎症性ペプチド。
[態様7]
該ペプチドが、配列番号30の配列からなる、態様4記載の抗炎症性ペプチド。
[態様8]
該ペプチドが、さらに、
- 生体液、組織または製剤中でペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分、
- 該ペプチドの細胞への侵入を促進するための部分、および
- 該ペプチドの検出を可能にするための修飾または部分
のうちの1つ以上を含む、態様1~7のいずれか1つに記載の抗炎症性ペプチド。
[態様9]
該ペプチドが、生体液、組織または製剤中で該ペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分を含む、態様8記載の抗炎症性ペプチド。
[態様10]
該修飾または部分が、1つ以上の荷電アミノ酸残基、該ペプチドの溶解度を高めるためのポリマーまたはポリマーフラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、態様9記載の抗炎症性ペプチド。
[態様11]
該修飾または部分が、1つ以上の荷電アミノ酸残基を含み、好ましくは該アミノ酸がカチオン性アミノ酸残基である、態様10記載の抗炎症性ペプチド。
[態様12]
該部分が、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、態様10または11記載の抗炎症性ペプチド。
[態様13]
該ペプチドの可溶化を促進するための修飾または部分がペプチドのN末端にある、態様8~12のいずれか1つに記載の抗炎症性ペプチド。
[態様14]
該ペプチドが、該ペプチドの細胞内への侵入を促進するための部分を含む、態様8~13のいずれか1つに記載の抗炎症性ペプチド。
[態様15]
該部分が、細胞透過性ペプチド(CPP)配列である、態様14記載の抗炎症性ペプチド。
[態様16]
該ペプチドが、ペプチドの検出を可能にするための部分を含む、態様8~15のいずれか1つに記載の抗炎症性ペプチド。
[態様17]
ペプチドの検出を可能するための部分が、蛍光標識、合成アミノ酸、ビオチンまたは金属コンジュゲートである、態様16記載の 抗炎症性ペプチド。
[態様18]
さらにリンカーを含む、態様1~17のいずれか1つに記載の抗炎症性ペプチド。
[態様19]
該ペプチドにコンジュゲートされたさらなる抗炎症性ペプチドを含む、態様1~18のいずれか1つに記載の抗炎症性ペプチド。
[態様20]
該機能的変異体またはそのフラグメントが、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%のアミノ酸同一性を有し、炎症を予防または治療する機能を保持している、態様1~19のいずれか1つに記載のペプチド。
[態様21]
該機能的変異体が、アミノ酸誘導体の合成異性体1つ以上を含む、態様20記載のペプチド。
[態様22]
該ペプチドが、配列番号1~66のいずれか1つで定義されているとおりである、態様8記載のペプチド。
[態様23]
態様1~22のいずれか1つに記載の抗炎症性ペプチドと、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
[態様24]
該ペプチドが、配列番号3または30の配列を含むかまたは該配列からなるか、または配列番号12、32または35で定義されているとおりである、態様23記載の医薬組成物。
[態様25]
該組成物が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を含んでいない、態様23または24記載の医薬組成物。
[態様26]
さらなる抗炎症剤を含む、態様23~25のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[態様27]
さらなる抗炎症剤が、コルチコステロイド、炎症誘発性サイトカインを阻害するための抗原結合タンパク質、DMARD、または炎症過程を阻害するための他の薬剤からなる群から選択される、態様26記載の医薬組成物。
[態様28]
該さらなる薬剤が、抗原結合タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体であり、該モノクローナル抗体が、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される炎症性分子の活性を阻害することができる、態様27記載の医薬組成物。
[態様29]
該組成物が、経口投与、静脈内投与、局所投与、皮内投与、皮下投与、関節内投与、鼻腔内投与、または吸入による投与に適している、態様23~28のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[態様30]
態様1~14のいずれか1つに記載のペプチドをコードする核酸またはそのフラグメント。
[態様31]
態様30記載の核酸またはそのフラグメントを含むベクターまたはプラスミド。
[態様32]
個体における炎症の予防方法または治療方法であって、該個体に、態様1~22のいずれか1つに記載のペプチド、または態様23~29のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与して、該個体における炎症を治療または予防することを含む方法。
[態様33]
さらに、コルチコステロイド、炎症性分子の活性を阻害するための抗原結合タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体、DMARD、光線療法、または個体における炎症を阻害するための他の薬剤からなる群から選択される追加の抗炎症療法または薬剤を投与することを含む、態様32記載の方法。
[態様34]
さらなる抗炎症剤または療法が、態様1~22のいずれか1つに記載のペプチドまたは態様23~29のいずれか1つに記載の医薬組成物と同時に投与される、態様32または33記載の方法。
[態様35]
さらなる抗炎症剤または療法が、態様1~22のいずれか1つに記載のペプチドまたは態様23~29のいずれか1つに記載の医薬組成物と連続して投与される、態様32または33記載の方法。
[態様36]
個体における炎症の予防または治療のための医薬の製造における態様1~22のいずれか1つに記載のペプチドの使用。
[態様37]
該医薬が、炎症の治療のためのさらなる抗炎症剤を含む、態様36記載の使用。
[態様38]
該さらなる抗炎症剤が、コルチコステロイド、炎症性分子の活性を阻害するための抗原結合タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体、DMARD、または個体における炎症を阻害するための他の薬剤からなる群から選択される、態様37記載の使用。
[態様39]
該炎症が、免疫応答に関連している、態様32~38のいずれか1つに記載の方法または使用。
[態様40]
該炎症が、TNF、IL-6またはIL-12/23産生に関連している、態様32~39のいずれか1つに記載の方法または使用。
[態様41]
該炎症が、粘膜組織または皮膚組織、好ましくは真皮組織、筋骨格組織、肺組織または腸管組織から選択される組織内または該組織上に存在する、態様32~40のいずれか1つに記載の方法または使用。
[態様42]
該炎症が、炎症性皮膚疾患または障害、筋骨格疾患または障害、肺疾患または障害、または腸管疾患または障害からなる群から選択される疾患または状態の症状である、態様32~41のいずれか1つに記載の方法または使用。
[態様43]
該炎症性疾患または障害が、関節リウマチ、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、または乾癬である、態様32~42のいずれか1つに記載の方法または使用。
[態様44]
該炎症性疾患が炎症性皮膚疾患または障害であり、該方法または医薬が、紅斑、皮膚厚さ、鱗屑、そう痒症および炎症性浮腫からなる群から選択される1つ以上の症状を最小化する、態様32~43のいずれか1つに記載の方法または使用。
[態様45]
個体における免疫応答を調節する方法であって、該調節を必要とする個体に態様1~21のいずれか1つに記載のペプチド、または態様23~29のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与して、固体における免疫応答を調節することを含む、方法。
[態様46]
個体における免疫応答を調節するための医薬の製造における態様1~21のいずれか1つに記載のペプチドの使用。
[態様47]
該方法または医薬が、炎症性サイトカイン、好ましくはTNF、IL-6およびIL-12/23およびIL-17の放出を最小化する、態様32~46のいずれか1つに記載の方法または使用
[態様48]
該疫応答が、主に適応免疫応答である、態様39記載の方法または使用。
[態様49]
免疫応答が、主に自然免疫応答である、態様39記載の方法または使用。
[態様50]
該自然免疫応答が、炎症部位での抗原提示細胞、好ましくはマクロファージまたは樹状細胞の活性に関連する、態様49記載の方法または使用。
[態様51]
ペプチドまたは組成物の投与が、炎症部位での抗原提示細胞、好ましくはマクロファージまたは樹状細胞の活性を最小化する、態様50記載の方法または使用。
[態様52]
炎症、好ましくは異常な免疫活性化に関連する炎症、より好ましくは関節リウマチ、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎または乾癬の予防または治療に用いるための態様1~21のいずれか1つに記載のペプチドまたは態様23~29のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[態様53]
態様23~29のいずれか1つに記載の組成物を含むキット。
[態様54]
さらなる抗炎症剤を含む、態様53記載のキット。
[態様55]
該さらなる抗炎症剤が、コルチコステロイド、抗原結合タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体からなる群から選択され、該モノクローナル抗体が、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン23(IL-23)、インターロイキン36(IL-36)および腫瘍壊死因子(TNF)からなる群から選択される炎症性分子の活性を阻害することができる、態様53記載のキット。
【外国語明細書】