(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126780
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】付加製造用サポート材
(51)【国際特許分類】
B29C 64/40 20170101AFI20230905BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230905BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20230905BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20230905BHJP
C08L 89/00 20060101ALI20230905BHJP
C08L 5/04 20060101ALI20230905BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20230905BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B29C64/40
B33Y70/00
B29C64/106
B29C64/314
C08L89/00
C08L5/04
C08L1/00
C08L7/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023095613
(22)【出願日】2023-06-09
(62)【分割の表示】P 2020504274の分割
【原出願日】2018-04-05
(31)【優先権主張番号】62/601,949
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/606,578
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】591236068
【氏名又は名称】カーネギー-メロン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CARNEGIE-MELLON UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ハドソン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヒントン
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ファインバーグ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・リー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】FRESH印刷においてより高忠実度を有するプリント構造の生成を可能にするサポート材およびその形成方法を提供する。
【解決手段】エタノールおよび水を含むコロイド溶液;界面活性剤;およびコロイド溶液中のコアセルベート微粒子を含むゼラチン・スラリーを含む、付加製造用サポート材であって、前記コアセルベート微粒子は、溶液中で単分散であり、前記コアセルベート微粒子は、0.5~60マイクロメートルの平均サイズおよび35%未満のサイズの分散を有し、前記スラリーの少なくとも一部分は、降伏応力値未満の剪断応力を受ける場合にリジッド・ボディを形成し;および前記スラリーの少なくとも一部分は、降伏応力値を超える剪断応力を受ける場合に粘性流体を形成することを含む、前記サポート材である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液;および
前記溶液中のコアセルベート粒子、ここに、前記コアセルベート粒子は、実質的に一定の幾何学を有する
を含むスラリーを含む付加製造用サポート材であって、
前記スラリーの少なくとも一部分は、閾値応力未満の応力を受ける場合にリジッド・ボディを形成し;および
前記スラリーの少なくとも一部分は、閾値応力を超える応力を受ける場合に粘性流体を形成する、前記サポート材。
【請求項2】
前記溶液が界面活性剤を含み、前記界面活性剤が、前記溶液中で形成する樹状のコアセルベート粒子数を、前記界面活性剤を含まない溶液中で形成される樹状コアセルベート粒子数に対し、低下するように構成される、請求項1記載のサポート材。
【請求項3】
前記コアセルベート粒子の各々が、ゼラチン、アルギナートおよびセルロースの少なくとも1つを含む、請求項1記載のサポート材。
【請求項4】
前記コアセルベート粒子が2以上の異なるポリマーを含む、請求項1記載のサポート材。
【請求項5】
2以上の異なるポリマーの1種がアラビアゴムを含み、2以上の異なるポリマーの他のものがゼラチンを含む、請求項4記載のサポート材。
【請求項6】
前記溶液が、水およびエタノールの1以上を含む、請求項1記載のサポート材。
【請求項7】
前記コアセルベート粒子の調和平均サイズが約0.5μm~約60μmである、請求項1記載のサポート材。
【請求項8】
前記コアセルベート粒子の調和平均サイズが約35%未満で変動する、請求項1記載のサポート材。
【請求項9】
前記閾値応力が、前記スラリーのコアセルベート粒子の第1と第2との間の粘着力が、スラリーのコアセルベート粒子に適用された外部剪断力とほぼ等しい臨界剪断応力を含む、請求項1記載のサポート材。
【請求項10】
前記臨界剪断応力の値が約20Pa~約140Paである、請求項9記載のサポート材。
【請求項11】
前記臨界剪断応力の値が、スラリー中の付加製造用のインクの粘度に基づいている、請求項9記載のサポート材。
【請求項12】
前記インクがコラーゲンを含む、請求項11記載のサポート材。
【請求項13】
付加製造用サポート材の形成方法であって、
ポリマーからのコアセルベートを生成し、ここに、幾何学において実質的に一定である粒子を含み:
前記コアセルベートの生成は、
溶媒および共溶媒の溶液を形成し;
前記溶液を撹拌し、前記溶液中に前記ポリマーを溶解し;次いで
前記溶液のpHをあるタイプのポリマーに基づいて特定の値に調整する
ことを含み;次いで
前記コアセルベートから、特定の降伏応力値を持つスラリーを形成し、ここに、前記形成は、1以上の遠心分離サイクル中に前記コアセルベートを圧縮することを含む
ことを含む、前記形成方法。
【請求項14】
1以上のパラメーターを選択し、次いで
前記コアセルベートの生成中に1以上のパラメーターを調整し、ここに、前記1以上の各パラメーターは、
ゼラチンブルーム値、ポリマー処理方法、ポリマー析出速度、ポリマー溶解度、ポリマーの分子量、ポリマー濃度、溶媒および共溶媒の体積比、界面活性剤のタイプ、界面活性剤の濃度、冷却速度または撹拌速度を含む、
ことをさらに含む、請求項13記載の形成方法。
【請求項15】
1以上のパラメーターを選択し;次いで
スラリーの形成中に1以上のパラメーターを調整する
ことをさらに含み、
前記1以上のパラメーターは:
洗浄溶液のタイプ、1以上の遠心分離サイクルの遠心分離時間、1以上の遠心分離サイクルの遠心分離力および1以上の遠心分離サイクル数
を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーが、200ブルーム、250ブルームおよび275ブルームのゼラチンブルーム値を含むゼラチンである、請求項13記載の方法。
【請求項17】
ポリマーがゼラチンであって、前記ゼラチンが、酸硬化ゼラチンまたはライム硬化ゼラチンの一方または双方を含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記溶液が、約52.5:47.5の溶媒-対-共溶媒の比を含み、ここに、前記溶媒は水を含み、前記共溶媒はエタノールを含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
さらに、界面活性剤を前記溶液に添加することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項20】
さらに、エタノール中でスラリーを脱水することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項21】
さらに、水中でスラリーを再水和することを含み、ここに、前記スラリーは、脱水および再水和後に特定の降伏応力値を維持する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマーが第1のポリマーであり、前記コアセルベートの生成が、さらに、
第2のポリマーを前記溶液に添加し、
第1のポリマーまたは第2のポリマーのいずれかの等電点を選択し、次いで
前記の選択された等電点に基づいてpHを調整する
ことを含む、請求項13記載の方法。
【請求項23】
前記第1のポリマーがゼラチンを含み、前記第2のポリマーがアラビアゴムを含み、前記pHが約5~6である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
さらに、1以上の遠心分離サイクルを調整して、前記スラリーの特定の降伏応力値を特定値にさせることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項25】
前記特定値が約20Pa~約140Paである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記特定値が、スラリー中の付加製造用のインクの粘度に基づいている、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記インクがコラーゲンを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
さらに、洗浄溶液中での前記コアセルベートを洗浄することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項29】
前記コアセルベート粒子が、溶液中でほぼ単分散である、請求項1記載のサポート材。
【請求項30】
エタノールおよび水を含むコロイド溶液;
界面活性剤;および
コロイド溶液中のコアセルベート微粒子
を含むゼラチン・スラリー
を含む、付加製造用サポート材であって、
前記コアセルベート微粒子は、溶液中で単分散であり、前記コアセルベート微粒子は、0.5~60マイクロメートルの平均サイズおよび35%未満のサイズの分散を有し、
前記スラリーの少なくとも一部分は、降伏応力値未満の剪断応力を受ける場合にリジッド・ボディを形成し;および前記スラリーの少なくとも一部分は、降伏応力値を超える剪断応力を受ける場合に粘性流体を形成する
ことを含む、前記サポート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本願は、2017年4月5日付けで出願された米国特許出願第62/601,949号、および2017年9月28日付けで出願された米国特許出願第62/606,578号に対する、米国特許法第119条(e)下の優先権を主張し、これらの全内容をここに出典明示して本明細書の一部分とみなす。
【0002】
(政府支援の項)
本発明は、国立衛生研究所第HL117750号下の政府支援でなされた。米国政府は本発明においてある種の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本願は、付加製造、特に、付加製造用サポート材に関する。
【背景技術】
【0004】
付加製造を用いて、三次元の物体または構造を創成できる。材料は、組立て中に一時的に構造を支持するサポート骨格に印刷することができる。組立てが完了した場合、サポート骨格が除去される。
【発明の概要】
【0005】
本願は、付加製造用サポート材、およびその製造方法を記載する。自由形状可逆性懸濁性ハイドロゲル埋め込み(FRESH)と呼ばれる、流体の付加製造方法は、一時的なサポート材(例えば、微粒子スラリーを含む)へ流体材料(例えば、アルギナート、コラーゲン、フィブリンなど)を埋め込むことを含む。後記のサポート材、およびサポート材の製造方法は、サポート材の製造のための従来の機械的配合技術によって課された制限を克服する。後記のサポート材は、ほぼ一定のサイズおよび一定の幾何学の微粒子を含む。付加製造方法(例えば、サポート材中での埋め込み印刷)について、サポート材は、先のバージョンのサポート材を用いるプリント構造よりも、プリント構造においてより高忠実度(higher fidelity)(例えば、より少ない欠陥、より少ないボイド、より少ない不整など)を有する、プリント構造の生成を可能にする。
【0006】
後記のサポート材を提供するプロセスは、薬物カプセル化および/または送達用の高分子ミクロおよびナノゲルを創成する先のプロセスより効率的であり、乳化またはコアセルベーションの根本的な化学原理を用いる。先のプロセスは配合および乳剤を含みかねない。これらの先のプロセスはより低い収量を有し、それほど効率的でなく、小さな体積の粒子を創成し、バイオプリントに余り適していない化学薬品およびポリマーに依拠する。
【0007】
微粒子を含むサポート材を創成するプロセスが本明細書に記載され、そのプロセスは、サポート材の粒子の生成のために従来の機械的配合技術の制限を克服する。コアセルベーションとして知られる拡張可能な相分離を用いることにより、大量の単分散の微粒子は、粒子形態学およびバルク流動学的挙動に対する厳しい制御を持つ種々の未処理(raw)の可逆的ゲル化材料から製造できる。相分離を利用して、ゲル粒子の形成を駆動する。次いで、これらの粒子をさらに単離して、サポート材を形成することができる。このサポート材にゲル化流体「インク」を埋め込むことによって、インクが三次元物体へ融合することを可能にする。
【0008】
これらのプロセスは、撹拌下で溶媒(例えば、水)および共溶媒(例えば、エタノール)の混合物にゲルを溶解することに依拠する。混合条件の変更によって、ゲル粒子が溶液から核を形成するまで、ゲルの溶解度は減少する。これらの粒子を洗浄および単離して、サポート材スラリーを形成することができる。
【0009】
このプロセスは、単純で、単一工程、高収率でかつ安価な方法でゲル微粒子を創成する。また、その化学的に駆動される性質により、このプロセスは、機械的配合、乳化または超遠心分離に依拠する他のプロセスに難しい大量まで容易に拡張可能である。このプロセスは、サポート材の大規模製造が3Dプリント用ゲル化流体の迅速な採用を可能にさせる。
【0010】
サポート材は、溶液中での溶液およびコアセルベート粒子を含むスラリーを含み、コアセルベート粒子は、実質的に一定の幾何学のものであり;ここで、閾値応力未満の応力を受ける場合に、スラリーの少なくとも一部分は、リジッド・ボディ(rigid body)を形成し;および閾値応力を超える応力を受ける場合に、少なくともスラリーの一部分は、粘性流体を形成する。
【0011】
いくつかの実施において、溶液は界面活性剤を含み、前記界面活性剤が、前記溶液中で形成する樹状のコアセルベート粒子数を、界面活性剤を含まない溶液中で形成する樹状のコアセルベート粒子数に対し、低下するように構成される。いくつかの実施において、コアセルベート粒子の各々が、ゼラチン、アルギナートおよびセルロースの少なくとも1つを含む。いくつかの実施において、コアセルベート粒子は2以上の異なるポリマーを含む。いくつかの実施において、2種以上の異なるポリマーの1種は、アラビアゴムを含み、2以上の異なるポリマーの他のものは、ゼラチンを含む。いくつかの実施において、溶液は、水およびエタノールの1以上を含む。
【0012】
いくつかの実施において、コアセルベート粒子の調和平均サイズが、約0.5μm~約60μmである。いくつかの実施において、コアセルベート粒子の調和平均サイズは、約35%未満で変動する。
【0013】
いくつかの実施において、閾値応力は臨界剪断応力を含み、ここに、スラリーのコアセルベート粒子の第1および第2の間の粘着力は、スラリーのコアセルベート粒子に適用された外部剪断力とほぼ等しい。いくつかの実施において、臨界剪断応力の値は、約20Pa~約140Paである。臨界剪断応力の値は、スラリー中で付加製造用のインクの粘度に基づいている。いくつかの実施において、インクはコラーゲンを含む。
【0014】
本文書は、サポート材を製造するプロセスを記載し、このプロセスは、ポリマーからのコアセルベートの生成を含み、コアセルベートは、幾何学において実質的に一定である粒子を含み、コアセルベートの生成は、溶媒および共溶媒の溶液を形成し;溶液を撹拌し、ポリマーを溶液に溶解し;次いで、あるタイプのポリマーに基づいて、溶液のpHを特定の値に調整し;次いで、コアセルベートから、特定の降伏応力値を持つスラリーを形成することを含み、その形成が、1以上の遠心分離サイクル中にコアセルベートを圧縮することを含む。
【0015】
いくつかの実施において、プロセスは、1以上のパラメーターを選択し、コアセルベートの生成中に1以上のパラメーターを調整することを含み:1以上の各パラメーターは、ゼラチンブルーム値、ポリマー処理方法、ポリマー析出速度、ポリマー溶解度、ポリマーの分子量、ポリマー濃度、溶媒および共溶媒の体積比、界面活性剤のタイプ、界面活性剤の濃度、冷却速度または撹拌速度を含む。
【0016】
いくつかの実施において、プロセスは、1以上のパラメーターを選択し;次いで、スラリーの成形中に1以上のパラメーターを調整することを含み、1以上のパラメーターは、洗浄溶液のタイプ、1以上の遠心分離サイクルの遠心分離時間、1以上の遠心分離サイクルの遠心分離力および1以上の遠心分離サイクル数を含む。
【0017】
いくつかの実施において、ポリマーは、200ブルーム、250ブルームおよび275ブルームのゼラチンブルーム値を含むゼラチンである。ポリマーはゼラチンであり、ゼラチンは、酸硬化ゼラチンまたはライム硬化(lime-cured)ゼラチンの一方または双方を含む。溶液は、約52.5:47.5の溶媒-対-共溶媒の比を含み、溶媒は水を含み、共溶媒はエタノールを含む。
【0018】
いくつかの実施において、プロセスは界面活性剤を溶液に添加することを含む。この行動は、エタノール中でスラリーを脱水することを含む。いくつかの実施において、プロセスは、水中にスラリーを再水和することを含み、スラリーは、脱水および再水和後に特定の降伏応力値を維持する。
【0019】
いくつかの実施において、ポリマーは第1のポリマーであり、コアセルベートの生成は、さらに、第2のポリマーを溶液に添加し、第1のポリマーまたは第2のポリマーのいずれかの等電点を選択し、次いで、選択された等電点に基づいてpHを調整することを含む。いくつかの実施において、第1のポリマーはゼラチンを含み、第2のポリマーはアラビアゴムを含み、pHは約5~6である。
【0020】
いくつかの実施において、プロセスは、1以上の遠心分離サイクルを調整して、スラリーの特定の降伏応力値を特定値にさせることを含む。いくつかの実施において、特定値は、約20Pa~約140Paである。いくつかの実施において、特定値は、スラリー中での付加製造用のインクの粘度に基づいている。
【0021】
いくつかの実施において、インクはコラーゲンを含む。いくつかの実施において、プロセスは、洗浄溶液中でコアセルベートを洗浄することを含む。いくつかの実施において、コアセルベート粒子は、溶液中でほぼ単分散である。
【0022】
いくつかの実施において、サポート材は、エタノールおよび水を含むコロイド溶液;界面活性剤;およびコロイド溶液中のコアセルベート微粒子を含むゼラチン・スラリーを含み、アセルベート微粒子は、溶液中で単分散であり、アセルベート微粒子は、0.5~60マイクロメートルの平均サイズおよび35%未満のサイズの分散を有し;スラリーの少なくとも一部分は、降伏応力値未満の剪断応力を受ける場合にリジッド・ボディを形成し;スラリーの少なくとも一部分は、降伏応力値を超える剪断応力を受ける場合に粘性流体を形成する。
【0023】
サポート材の1以上の具体例の詳細は、以下の添付図面および明細書に記載されている。他の特徴、目的および有利さは、本明細書および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0024】
種々の図面中の同様の参照シンボルは、同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2-6】
図2~6は各々、サポート材の例についてのゼラチン微粒子の代表を示す。
【
図7】
図7は、サポート材の例についての粒子サイズ分布のヒストグラムを示す。
【
図8】
図8は、サポート材の例についての粒子サイズに対するゼラチン濃度を表わすグラフを示す。
【
図9-10】
図9~10は各々、サポート材の例を示す。
【
図11】
図11は、サポート材についての水和プロセスの例を示す。
【
図12】
図12A~12Bは、サポート材についての粒子サイズおよび収量制御の例を示す。
【
図13-15】
図13~15は、サポート材のレオロジーデータの例を示す。
【
図16】
図16は、サポート材の例についての降伏応力値を示す。
【
図17】
図17は、サポート材の例を用いる付加製造プロセスの段階を示す。
【
図18】
図18は、サポート材の例において生成された印刷例を示す。
【
図19】
図19は、サポート材を形成するためのプロセスの例の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1Aは印刷システム100を示す。印刷システム100は、インジェクター120を介してのごとくサポート材130に埋め込まれた材料110(例えば、コラーゲン、フィブリンなど)を印刷するように構成される。サポート材130は、印刷を行いつつ、かつ材料が硬化しつつ(例えば、ゲル化が生じつつ)、材料110を支持するための骨格を形成する。サポート材130の粘度および降伏応力が印刷物(インクともいう)に類似する場合、印刷システム100は、サポート材の粘度および降伏応力が一致しないか、またはサポート材のものに類似しない場合より高精度で印刷することができる。さらに、より小さな粒子を含むスラリーを形成するサポート材は、印刷システム100によるサポート材中の構造の高忠実度の印刷を促す。
【0027】
サポート材130は、付加製造プロセスの骨格支持を形成する材料を含む。サポート材は、構造の埋め込まれた3D印刷に用いる、埋め込まれた材料(例えば、インク)を支持するスラリーを含む。サポート材は、サポート材に一時的に埋め込まれた、印刷されたインクを支持する。一旦、構造が印刷プロセスによって形成されると、サポート材は除去される。
【0028】
サポート材(支持浴ともいう)は、ビンガム塑性体の特性の少なくともいくつかを示す。例えば、サポート材が降伏応力値を超える応力(例えば、剪断応力)を受けていない場合、サポート材は、固体材料の特性を示す。サポート材の少なくとも一部分は、サポート材の一部分が降伏応力値を超える応力(例えば、剪断応力)を受ける場合、粘稠液のように挙動する。いくつかの実施において、プリンター・インジェクターは、それがサポート材を通って移動すると、サポート材に応力を適用する。これは、プリンターヘッドがサポート材にインクを注入するのを可能にし、構造が形成されるまで、適所にインクを支持する。インクは、コラーゲンのごとき組織、またはサポート材に注入された後にゲル化を受ける材料のごとき、他の材料を含み得る。ゲル化が完了するまで、サポート材はインクを支持する。次いで、サポート材は除去する(例えば、溶解する(melted away))ことができる。
【0029】
サポート材の降伏応力は、正確な形態因子がサポート材中で印刷されることを可能にする重要な因子である。また、サポート材の均質性は、プリント構造の質の因子である。本明細書に記載されたサポート材は、(例えば、適用、インクのタイプなどに基づいて)特定の値となるように設定される降伏応力を有することができる。本明細書に記載されたサポート材は、特定のサイズの粒子を含み、それは、印刷の忠実度を増加させて、かつ構造の正確な3D埋め込み印刷を可能にするように設計されている。
【0030】
図1Bは、配合技術によって製造されたゼラチンサポート材150の例を示す。これは、ゼラチン微粒子サポートの生成が、ゼラチン・ブロックの機械的配合を利用して、より小さなゼラチン粒子を製造することを示す。配合プロセスの性質により、製造されたゼラチン微粒子は、それらのサイズおよび形状の分布の双方においてランダムであった。サポート材150は、不規則なサイズおよび形状分布を有する粒子を示す。これらの粒子は、支持浴スラリー中で均一に分散しない。埋め込み印刷の適用について、ほぼ一定の粒子サイズ、形状および分散が好ましい。後記のサポート材、およびサポート材の製造プロセスは、サポート材の製造のために従来の機械的配合技術によって課された制限を克服または低減する。後記のサポート材は、ほぼ一定のサイズおよび一定の幾何学の微粒子を含む。付加製造プロセス(例えば、サポート材中の埋め込み印刷)について、サポート材は、先のバージョンのサポート材を用いるプリント構造よりも、プリント構造中の高い忠実度(例えば、より少数の欠陥、ボイド(void)、不規則など)である、プリント構造の生成を可能にする。
図1Bに示されるごとく、機械的配合により製造されたゼラチン微粒子150は、ランダムなサイズおよび形状分布を示す。スケールバーは50ミクロンである。
【0031】
図2~6は、コアセルベーション・プロセスによって製造されたサポート材200、300、400、500および600の例の代表を示す。コアセルベーション・プロセスによって製造された粒子は、機械的な配合プロセスによって製造される
図1B中で示されるサポート材150に対し、形態学においてより小さくより一貫している。
【0032】
サポート材の粒子を形成する基材はポリマーを含む。ポリマーは、ゼラチン、アルギナート、セルロースおよび同様のポリマーの1以上を含むことができる。基材は、材料を含むコアセルベートを生成するためにコアセルベーション・プロセスを受ける。コアセルベートは、実質的に一定の幾何学の材料の微粒子を含む。実質的に一定の幾何学を有する粒子は、同じ形状、寸法、構造および配置(特に、粒子間の均一性)を実質的に有する。例えば、粒子は、実質的に一定のサイズを有する。ここで、実質的に一定のサイズとは、粒子(例えば、液滴)が、約35%または約10、15、20、25、もしくは約30%未満の変動係数(すなわち、母平均により除された母集団の標準偏差)を有する粒子サイズ分布を示すことを意味する。約15%未満の変動係数が好ましい。いくつかの実施例において、約70パーセントまたは約90パーセントのビーズは、粒子の平均体積粒子直径の約0.90~約1.1倍の体積粒子直径を所有する。いくつかの実施において、粒子はコアセルベートにおいて単分散である。
【0033】
埋め込み印刷適用のためのサポート材の形成についてのコアセルベート・サポート合成プロトコールは、材料のコアセルベーションおよび材料の圧縮を含む。サポート材のパラメーターは、サポート材の特定用途に基づいて(例えば、埋め込み印刷プロセス中に用いるインクに基づいて)選択することができる。これらのパラメーター(サイズ、収量など)は、サポート材の降伏応力に影響する。サポート材の降伏応力は、コアセルベート・プロセス中に製造された粒子のサイズに基づいており、特定値に合わせることができる。基材(例えば、ポリマー)の特性を選択および/または調整して、コアセルベート粒子のサイズ、かくして、サポート材の降伏応力を調整することができる。それらの特性は、基材のタイプ、材料の処理方法、(例えば、コアセルベーション中の)ポリマーの析出速度、ポリマー溶解度、材料の分子量、ポリマー濃度、溶液(例えば、溶媒-対-共溶媒)の体積比、界面活性剤タイプ、界面活性剤濃度、冷却速度および撹拌速度を含むことができる。
【0034】
サポート材のコアセルベーションは、後記のプロセスの例に続く。エタノール-水溶液が創成される。用いる基材(例えば、ゼラチン、アルギナート、セルロースなど)が評価される。溶液に溶解した材料の量を設定して、サポート材の粒子のサイズおよび収量を変更することができる。加熱速度および冷却速度は、溶液中へのポリマーの析出速度に影響しかねず、これは粒子サイズに影響するであろう。また、混合速度は、さらに詳細に後記されるごとく、粒子サイズに影響する。例えば、より速い混合速度は、析出粒子を平均サイズにおいてより小さくさせる。粒子のサイズは、前記されるごとく調和平均サイズとして測定することができる。基材(例えば、ポリマー)を溶解するが、界面活性剤を溶液に添加し、溶解することができる。一旦、ポリマーが溶解すれば、溶液のpHは、(例えば、酸を添加することによって)ポリマーの等電点に到達しているまで低下させることができ、ポリマーは溶液に析出し始める。溶液がコアセルベートを表わすようにポリマー析出が完了するか、または実質的に完了するまで、その溶液を撹拌する。
【0035】
コアセルベート溶液を圧縮して、サポート材を形成する。コアセルベート溶液を遠心分離機に入れる。遠心分離サイクル数、期間、速度(例えば、RPM設定)および他の遠心分離設定は、サポート材の所望の降伏応力、コアセルベート量、用いるポリマーなどに基づいている。コアセルベートが圧縮された後、それは洗浄溶液中で洗浄される。用いる洗浄溶液のタイプは、サポート材(例えば、コラーゲン、アルギナートなど)中で印刷される材料に依存できる。
【0036】
下記はサポート材を調製するプロセスの例である。溶液は50:50エタノール-水溶液の測定により調製されている。エタノール-対-水の比を調節して、サポート材の粒子サイズを調整することができる。例えば、その比は、47.5:52.5のエタノール-対-水、または同様の比を含むことができる。例えば、500mLに脱イオン化(DI)水を用いることができ、500mL 200プルーフの無水エタノール(EtOH)は、50:50比に用いることができる。ゼラチンベースのサポート材について、20gのタイプBゼラチン(2重量%)および2.5gのF127 プルロニック(0.25重量%)界面活性剤は測定される。500mLのDIは45℃に加熱される。温水をEtOH容器へ混合される。撹拌しつつ、ゼラチンおよびプルロニック粉末がゆっくり添加される。十分な時間(例えば、約10分)は、ゼラチンおよびプルロニック粉末が溶液に十分に溶解するのを可能にできる。撹拌しつつ、溶液のpHは、酸(例えば、1M HCl)で5.6~5.7に調整される。溶液の濁度はコアセルベーションを示す。この段階にて、撹拌速度は少なくとも500RPMに増加される。撹拌速度は溶液に気泡を入れるのを回避するように十分に高いものであろう。
【0037】
後記は、サポート材の調製を完了するための工程例である。「未処理の」コアセルベート溶液は遠心分離機に入れる。例えば、サポート材は、175Gにて約2分間遠心分離管に置くことができる。上清を除去する。容器底部のゼラチンの黄色-白色ペレットは、チューブ中に残され、チューブは未処理のコアセルベート溶液を補充される。緩いペレットは、(例えば、容器の振盪によって)粉砕される。その溶液は、例えば、175Gにて2分間遠心分離される。上清を除去する。2:1の比のDI-対-ゼラチンを添加する。ペレットを分散させて、いずれの塊も粉砕する。その溶液は、例えば、225Gにて2分間遠心分離される。上清は除去され、25mM HEPES溶液を含む1X PBSと交換する。その溶液は、例えば、450Gにて2分間遠心分離される。溶液は、ゼラチン・スラリーを形成し、それは、膨潤し始め、洗浄によってより中性になるであろう。膨潤比は3:1と同じくらいの高さであり得る。
【0038】
いくつかの実施において、アルギナートを印刷するならば、上清はDI水と交換される。溶液は、例えば、450Gにて2分間遠心分離される。上清を除去し、洗浄流体を加える。アルギナート印刷について、洗浄流体は0.16重量%CaCl2を含むことができる。フィブリンおよびコラーゲン印刷は、他の洗浄溶液を用いることができる。いくつかの実施において、スラリーは冷却することができる。いくつかの実施において、さらなる遠心分離を例えば、450Gにて2分間行なうこともできる。いくつかの実施において、真空チャンバーは20~30分間用いることができる。いくつかの実施において、さらなる遠心分離を例えば、750Gにて5分間行うことができる。上清を除去する。
【0039】
図2は、前記されたコアセルベーション・プロセスによって形成された、ゼラチン微粒子200の例を示す。スケールバーは100マイクロメートルである。
図3は、前記されたコアセルベーション・プロセスによって形成された、ゼラチン微粒子300の例を示す。スケールバーは25マイクロメートルである。微粒子は、サイズ、形状などを含めて、実質的に同じ幾何学を有する。
【0040】
ゼラチン・コアセルベーションのプロセスは、さもなければ複雑なコアセルベーションとして知られた、コアセルベート溶液への他の帯電したポリマーの添加によってさらに変更することができる。単一の両性高分子電解質ポリマーでの単純なコアセルベートにおいて、ポリマー自体の電荷は、等電点で完全に中和する。複雑なコアセルベートにおいて、2つの別々のポリマー間の電荷は、一緒に複合体を形成する。
【0041】
例えば、
図4は、複雑なコアセルベーションを介して形成されたゼラチン微粒子400の例を示す。アラビアゴムの添加は、2つのポリマー間の複雑なコアセルベーションを可能にし、非常に一貫したサイズ、形態学および性質を持つ微粒子を生成する。ゼラチンは酸性溶液中でより正に帯電し、一方、アラビアゴムは、pH>2.2~3を持ついずれの溶液においても負に帯電する。その結果、これらの2つのポリマーは複雑なコアセルベーションに最適であり、ゼラチンの等電点の付近でコアセルベートすることができる。
図4において、示されたゼラチン微粒子は、2.0重量%ゼラチンB、0.1重量%アラビアゴムから複雑なコアセルベーションによって創成される。スケールバーは50マイクロメートルである。
【0042】
図2に関して前記されるごとく、撹拌速度は、それらが形成しつつ、より高い剪断力を粒子に適用することにより、ゼラチン粒子形成のサイズに影響する。より高い剪断力は、より大きな粒子を余り安定していないようにすることにより臨界サイズを超えるゼラチン粒子の形成を妨害する。その結果、より高い撹拌速度はより小さな粒子を生成する。標準速度(例えば、100RPMの標準速度)のほぼ4倍の撹拌は、3分の1未満のサイズの粒子を生成した。コアセルベートの急速な撹拌は、平均粒子サイズを42.85±13.89μmから13.66±4.41μmに低下させた。これは、粒子のサイズについて35%未満の分散を示す。
【0043】
図5は、ゼラチン微粒子200、300および400に対してより小さなゼラチン粒子500の形成の例を示す。
【0044】
また、溶媒/非溶媒比のごとき他の化学的パラメーターの変更を用いて、粒子サイズを制御できる。初期のコアセルベーション・プロセスは、50:50比の水-対-エタノールを用いた。52.5:47.5の水-対-エタノールへの比の変更は、6.42±1.68μmの減少した粒子サイズおよびより狭いサイズ分布を生じさせた。
【0045】
例えば、
図6は、52.5:47.5比の水-対-エタノールから作製したゼラチン粒子600を示す。スケールバーは100マイクロメートルである。60:40、55:45、50:50の水-対-エタノールなどのごとき他の水-対-エタノールを用いることができる。
図7は、粒子サイズ分布のヒストグラムを示す。混合されたゼラチン粒子(混合と標識される)は、広く分布した粒子サイズを示す。50:50の水-対-エタノールのコアセルベーションからの粒子(コアセルベートと標識される)は、より小さな粒子のより狭い分布を示す。52.5:47.2の水-対-エタノールのコアセルベーション(改変したコアセルベートと標識される)は、より小さな粒子(例えば、直径約10マイクロメートル未満)のより狭い粒子サイズ分布さえ示す。
【0046】
平均粒子サイズは、同じ製造条件を用いる場合、ゼラチンの重量パーセンテージを変更する間、一致したままである。非常に重要な製造条件が一致している限り、ゼラチンの重量パーセンテージの増加はそれらの形態学ではなくコアセルベーション・プロセスからの粒子の全収量を増加させる。
図8はグラフ800を示す。グラフ800は、コアセルベーション中のゼラチン濃度の増加が粒子サイズ(<10ミクロン)に対して大きな効果を有しないことを示す。粒子サイズに影響するいくつかの製造条件は、ゼラチンのブルームおよび加工方法(例えば、酸硬化、ライム硬化など)、コアセルベーション溶液のpH、水-対-エタノールの体積比、界面活性剤(F127 プルロニック)の使用、コアセルベートの冷却速度およびコアセルベートの撹拌速度を含む。コアセルベーション溶液のこれらの条件の制御によって、ゼラチンの溶解度(および粒子幾何学)は、それにより制御される。コアセルベーション形成は、ゼラチンが溶液に溶解された後の流体とゲル相との間のゼラチンの溶解度を制御することに高度に依存している。ゼラチンの溶解度の低下は、後に、ゼラチンの単一マトリックスの形成を防ぎ、代わりに、溶解度が減少し続けるのでゼラチンの粒子を形成する。
【0047】
ゼラチンブルーム強度はゼラチン分子の平均分子量に依存する。より高分子量のゼラチンはそれのより低い重量の相当物よりも水-エタノール溶液中で余り可溶でなく、かくして、溶液からより容易に析出する。系が冷えて、ゼラチンの溶解度が減少するにつれて、ゼラチン分子は、最高のものから始めてそれらの分子量の順に溶液から析出するであろう。したがって、より高い平均分子量を持つ高ブルームのゼラチンは、より低い分子量ゼラチンとは異なる時点にて溶液から析出し、安定した粒子が形成される時点および温度に影響する。
【0048】
酸または塩基で処理された動物組織は、それぞれ、酸性(A)または塩基性(B)ゼラチンを生成する。これらのゼラチンは、異なる等電点を有し、あるpHでのそれらの溶解度を異なるものとする。溶液のpHの分子の等電点(pI)への調整は、溶解度において最小を表わす。等電点では、ゼラチン分子は、それ自体の帯電した残留物ならびに他のゼラチン分子のもので一連の電荷中和を受け、分子を崩壊させ、溶液からそれらを取り出す。また、その結果、コアセルベーション溶液のpHは、ゼラチンの溶解度および微粒子の形成を規定する。
【0049】
ゼラチンは水に可溶であり、アルコールのごとき有機溶媒にほとんど不溶性である。ゼラチンがその融解温度を超える温度にて水に最初に溶解され、次いで、冷却されたならば、ゼラチンは連続的ゲルを形成する。エタノールおよび水のおよそ50:50の混合物を含むコアセルベーション溶液において、コアセルベーション溶液の温度が落ちると、アルコールは水とより強く会合するため、ゼラチンは余り可溶でなくなる。その結果、ゼラチンは、アルコール中のその不溶性により、より低温にて水-エタノール溶液中で連続的マトリックスを形成することができない。コアセルベーション溶液における水-対-エタノールの比の制御は、セルベートを形成する場合、ゼラチンの溶解度を顕著に規定する。
【0050】
界面活性剤(例えば、F127プルロニック)の使用は、ゼラチン粒子の形成の凝集(clumping)を防止する。界面活性剤を含まないゼラチン粒子は互いに付着する傾向を有し、
図9に示される粒子900のごとき大きく粗い樹状の凝集を形成する。界面活性剤の使用は、これらの樹状粒子の形成を防止または低下させ、その結果、
図2~6の粒子200、300、400、500および600のごとき滑らかな丸粒子を生じる。
図9は、界面活性剤の不存在により大きな樹状粒子の形成を示す。スケールバーは100マイクロメートルである。
【0051】
コアセルベート溶液の急速冷却は、ゼラチンの溶解度を即座に低下させる。溶液の急速な冷却(例えば、1℃/分間より速い)の結果、ゼラチンが溶液からより迅速に析出する。ゼラチンが溶液から余りにも急速に析出するならば、存在するゼラチン粒子にゆっくり付着することができず、その結果、単一粒子上のゼラチンの迅速なビルドアップおよび荒い樹状粒子の形成を生じる。
図10は粒子1000を示す。粒子1000は、
図2~6の粒子と比較して、大きくかつ不規則な樹状粒子1000である。粒子1000は、コアセルベート溶液を氷で急速に冷却することにより形成する。スケールバーは100マイクロメートルである。
【0052】
水和の制御
図11は、粒子水和を制御するのためのプロセス1100の例を示す。粒子水和は、サポート材の溶液の組成によって操作することができる。ゼラチン粒子は、浸透圧およびpHに従い水和する。それらの形成における同じ脱水原理を利用すると、コアセルベート駆動ゼラチン粒子が(粒子1110が示される)水から(粒子1120により示される)エタノールにそれらを移すことにより脱水することができる。親水性ゼラチン粒子1120は、それらの表面エネルギーを低減するために一緒に集合する。ゼラチンがエタノールに不溶性であるので、粒子1120は脱水状態で保存でき、溶液に溶解することができない。また、エタノール中の粒子1120の保存は、サポート材中の氷晶形成のリスクなくして、0℃未満の貯蔵を可能にする。水へのゼラチン・スラリーの戻し移行は、粒子1130を再水和し、粒子1130が相互に引き離すことを可能にする。脱水/水和プロセスは反復可能であり、オリジナルの状態に容易に逆転させることができる脱水状態において、コアセルベート駆動ゼラチン粒子の長期貯蔵を可能にする。
【0053】
図12Aは、pH値の変更およびアラビアゴム濃度の変更を用いて形成されたゼラチンサポート材粒子の例を示す。各実施例について、スケールバーは50マイクロメートルである。粒子1200は、溶液のpH6および0.1%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1210は、溶液のpH6.5および0.1%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1220は、溶液のpH7および0.1%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1230は、溶液のpH6.5および0.1%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1240は、溶液のpH6.5および0.25%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1250は、溶液のpH6.5および0.5%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1260は、溶液のpH6.5および0.75%濃度のアラビアゴムで形成されている。
図12Aに見ることができるように、溶液のpHがゼラチン(pH5~6)についての等電点から離れる場合、粒子サイズは減少する。
図12Aに見ることができるように、アラビアゴム濃度が増加するにつれて、粒子サイズは減少している。これは、濃度における核形成部位の増加が存在し、同量のゼラチンが水/エタノール溶液から析出するためである。
【0054】
図12Bは、サポート材中の粒子のサイズおよび収量を制御する例を示す。粒子1270は、溶液のpH5.5および0.1%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1275は、溶液のpH6.0および0.1%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1280は、溶液のpH6.5および0.1%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1285は、溶液のpH6および1%濃度のアラビアゴムで形成されている。粒子1290は、溶液のpH6.5および1%濃度のアラビアゴムで形成されている。
図12Bに見られるように、pHおよびアラビアゴム濃度を同時に調整して、粒子サイズおよびスラリー収量を調節することができる。pH6および1%のアラビアゴム濃度は、約8~12μmの粒子サイズを維持するが、サポート材について比較的より多くのスラリーを与える。およそ同じサイズについての粒子収量を比較すると、pH6、1%のアラビアゴム濃度は、約5715万粒子/mLを与え、およびpH6.5、0.1%のアラビアゴム濃度は、約1898万粒子/mLを与える。アラビアゴム駆動サポート材がいずれかのデブリを含むならば、簡潔な遠心分離工程を用いて、これらの稠密でかつ一般的に大きな粒子を除去できるが、残りはセル播種(cell seeding)に先立って洗い流される。
【0055】
レオロジー
圧縮後に、サポート材の微粒子は、降伏応力流体として挙動するスラリーを形成する。限界応力がスラリーに適用された後、それは流れ始める。かかる挙動は、レオメーターを用いて分析して、スラリーの試料を正確に変形し、剪断応力および剪断速度のごときパラメーターの点からその変形をモニターして、粘度を計算することができる。降伏応力流体は、応力を余りにも低く受けるので、フローを始めることができない場合、一定の瞬間粘度プロフィールを示す。これは、フローを始めるのに必要な臨界降伏応力未満の応力につき固体として挙動する降伏応力流体による。一旦、臨界降伏応力が達成されれば、材料は、固体のように作用することから流体に急速に移行する。適用された応力のこのレベルにて、材料は、高い瞬間粘度からの偏差の証拠である剪断速度の増加で粘度の迅速な減少を受ける。固体から流体挙動までの移行は、粒子運動を引き起こすために材料に適用される臨界降伏応力によって始められる。臨界剪断応力未満で、粒子間の粘着力は、それらに適用される外部剪断力より大きく、その結果、静止している粒子および固体様の挙動を生じる。粒子に適用された力が総粘着力を克服し、粒子が互に滑り(slip past)始める場合に、粒子運動は臨界降伏応力にて始められる。臨界降伏応力を超える剪断応力が維持されると、粒子は互いに滑り続け、流体様の挙動を示すであろう。剪断力が臨界降伏応力未満に減少する場合、粒子は最初にそれらを一緒に保持するのと同じ力によって互いに再付着する。
【0056】
図13は、前記されるコアセルベートから生成されたサポート材についての降伏応力特性のグラフ1300を示す。より長時間変形しておくならば、それが高剪断応力にてその流体様の状態の粘度に達するので、材料の粘度は結局はるかに低い粘度で水平になり始める。粘度計データは、概説されたコアセルベーション・プロセスによって製造されたゼラチン微粒子スラリーの試料から得ることができる。
図13において、円は、臨界降伏応力が適用される瞬間を示し、その結果、試料粘度の急速な低下を生じ、支持が剪断減粘性(shear thinning)挙動を示すことを確認する。
【0057】
粘度の連続的領域からの偏差は、ビンガム塑性体流体のフローを始めるために必要とされる瞬間剪断応力に関係することができる。振幅掃引および周波数掃引のごときさらなる流動テストは、それぞれ、非ニュートン流体の線形の粘弾性領域(LVR)および降伏応力をより正確に決定することができる。LVRは弾性率(G’)の線形領域から決定される。次いで、LVRからのひずみを選択して、周波数掃引を行い、この試料について、0.035であることが選択された。
【0058】
図14は、ゼラチンサポート材の振幅掃引データのグラフ1400の例を示す。弾性貯蔵弾性率(G’)の線形プラトーは、周波数掃引のためのひずみを選択することができるLVRを示す。
図15は、ゼラチンサポート材の周波数掃引データのグラフ1500の例を示す。貯蔵弾性率(G’)および粘着性損失弾性率(G’’)が測定されている。交差ポイントは、サポート材が与える周波数、および弾性固体として挙動することから粘性流体までの移行を示す。かくして、交差ポイントは、サポート材の降伏応力に対応する。
【0059】
このスラリーの降伏応力は、遠心分離の圧縮工程を介して変更可能であることが示されている。より高い遠心分離力は粒子を一緒にさせ、それによって、それらを圧縮する。スラリーの降伏応力は、これらの遠心分離力の変更による粒子の圧縮度の変更により調整することができる。より高いG力がスラリーをさらに圧縮するので、スラリーの降伏応力は増加する。この挙動は、種々の商標のゼラチン間で見ることができ、それを用いて、前記に概説されたコアセルベーション・プロセスを介して微粒子スラリーを創成できる。
【0060】
図16は、異なる速度、またはRPMにて遠心分離したサポート材についての降伏応力のグラフ1600の例を示す。スラリーは最終の遠心分離速度で遠心分離され、その速度は、「低」(1100RPM=227G)、「中」(2000RPM=751G)、または「高」(4500RPM=3803G)のいずれかであり、レオメーターを用いてそれらの降伏応力を測定した。種々のブランドのゼラチンの降伏応力は
図16に示される。遠心分離のRPMの速度が増加するにつれ、試料降伏応力は、ゼラチンのブルーム値に拘わらずすべてのタイプのゼラチンを横切って増加した。サポートの降伏応力の制御は、スラリーと共に用いることができる材料のスペクトルを広げる。スラリーの降伏応力の調整は、インクの粘度をサポートの粘度および降伏応力とより密接に一致させることにより、広範囲のインク適合性を可能にする。インクの粘度が粘度および支持の降伏応力に類似する場合、異なる粘度および降伏応力を持つサポート材における埋め込み印刷のより低い精度に対し、印刷の精度は増加する。
【0061】
FRESH 3D印刷忠実度の増加
コアセルベート駆動微粒子がビンガム塑性体流体を形成することができるので、それらはFRESH印刷に利用することができる。FRESH印刷における押出し正確度(accuracy)および精度(precision)への制限の1つは、犠牲的(sacrificial)支持浴中の粒子のサイズおよび形状分布である。不規則な粒子サイズおよび形状(例えば、
図1Bの粒子)は、一貫した押出しを妨げ、より低い印刷忠実度に導く。サポート材が除去される場合、粒子はポロゲンとして作用し、印刷におけるボイド欠陥を後に残す(
図17B)。
【0062】
コアセルベート駆動ゼラチン粒子は、先の技術(例えば、配合技術、乳化技術など)から生成したゼラチン粒子に対し、サイズおよび形状においてより小さくかつより一貫するの双方であるので、押し出し正確度および精度は増加し、印刷におけるボイド欠陥はより小さい。その結果は印刷忠実度の著しい増加である。これを実証するために、「ウィンドウ・フレーム」モデルを標準的3Dプリントソフトウェアを用いて切り進む。
【0063】
図17は、先のサポート材のより低い印刷忠実度に対し、本明細書に記載されたサポート材を用いた高印刷忠実度の例を示す。画像1700は、3Dプリント・メッシュのモデルを示す。次いで、コラーゲン・インクを用いるモデルは、画像1710に示される混合された支持浴、および画像1720に示されるコアセルベート駆動ゼラチン粒子浴に印刷されている。標識されたコラーゲン・インクの共焦点画像は、画像1730における混合された支持浴中で印刷されたものに比較して、画像1740におけるコアセルベート支持において印刷されたコラーゲンについて特徴分解の増加を強調する。コアセルベート・サポート材において印刷されたコラーゲン構造は、混合されたサポート材において印刷されたコラーゲン構造と比較して、より少数のボイドおよびより規則的な構造を有する。
【0064】
コアセルベーションが計量可能な化学プロセスであるので、多量のゼラチン支持は、機械的混合よりもより効率的に創成することができる。これは、より大きなFRESH印刷が、より急速でより小労力での製造を可能にする。大きな印刷(例えば、構造)は、
図17に示されるサブミリメートルスケールに対してFRESH印刷忠実度になされた改良から依然として利益を得る。その結果は、以前より高い忠実度を持つマクロスケールの物体を印刷する能力である。
【0065】
図18は、本明細書に記載されたサポート材を用いて印刷された高忠実度の構造の例を示す。患者特異的なMRIデータから得られた成人の心臓モデルは、画像1800に示される3D印刷可能な形式に変換された。次いで、縮小(to-scale)バージョンのこの心臓モデルは、
図1810に示される純粋で未改変の牛コラーゲンにつきFRESH印刷された。
【0066】
図19は、サポート材を製造するプロセス例の流れ
図1900を示す。溶液は、特定の溶媒および共溶媒の比および特定のpHで形成されている(1910)。ポリマー(例えば、ゼラチン、アルギナート、フィブリンなど)の選択後、そのポリマーは指定された割合にて溶液中に溶解される(1920)。pHは、ポリマーからのコアセルベートを析出するためにポリマー・タイプに基づいて調整される(1930)。コアセルベートは1以上の遠心分離サイクル中に圧縮される(1940)。コアセルベートは、コアセルベート中のポリマーのタイプに基づいて選択される洗浄溶液中で洗浄される(1950)。
【0067】
多数の具体例が記載されている。しかしながら、種々の変更が特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく成し得ることが理解されるであろう。したがって、他の具体例は以下の特許請求の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液;および
前記溶液中のコアセルベート粒子、ここに、前記コアセルベート粒子は、実質的に一定の幾何学を有する
を含むスラリーを含む付加製造用サポート材であって、
前記スラリーの少なくとも一部分は、閾値応力未満の応力を受ける場合にリジッド・ボディを形成し;および
前記スラリーの少なくとも一部分は、閾値応力を超える応力を受ける場合に粘性流体を形成する、前記サポート材。
【請求項2】
付加製造用サポート材の形成方法であって、
ポリマーからのコアセルベートを生成し、ここに、幾何学において実質的に一定である粒子を含み:
前記コアセルベートの生成は、
溶媒および共溶媒の溶液を形成し;
前記溶液を撹拌し、前記溶液中に前記ポリマーを溶解し;次いで
前記溶液のpHをあるタイプのポリマーに基づいて特定の値に調整する
ことを含み;次いで
前記コアセルベートから、特定の降伏応力値を持つスラリーを形成し、ここに、前記形成は、1以上の遠心分離サイクル中に前記コアセルベートを圧縮することを含む
ことを含む、前記形成方法。
【請求項3】
エタノールおよび水を含むコロイド溶液;
界面活性剤;および
コロイド溶液中のコアセルベート微粒子
を含むゼラチン・スラリー
を含む、付加製造用サポート材であって、
前記コアセルベート微粒子は、溶液中で単分散であり、前記コアセルベート微粒子は、0.5~60マイクロメートルの平均サイズおよび35%未満のサイズの分散を有し、
前記スラリーの少なくとも一部分は、降伏応力値未満の剪断応力を受ける場合にリジッド・ボディを形成し;および前記スラリーの少なくとも一部分は、降伏応力値を超える剪断応力を受ける場合に粘性流体を形成する
ことを含む、前記サポート材。
【外国語明細書】