IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロベンション インコーポレイテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126798
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61L 33/06 20060101AFI20230905BHJP
   A61L 31/08 20060101ALI20230905BHJP
   A61L 31/10 20060101ALI20230905BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20230905BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20230905BHJP
【FI】
A61L33/06 200
A61L31/08
A61L31/10
A61L31/14
A61L33/06
A61F2/82
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098518
(22)【出願日】2023-06-15
(62)【分割の表示】P 2019562331の分割
【原出願日】2018-05-11
(31)【優先権主張番号】62/505,726
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ウ、シンピン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ジョディ
(72)【発明者】
【氏名】クルーズ、グレゴリー エム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機器の周辺での血栓の形成を防ぐ又は低減することができる、管腔に埋め込み可能に構成された拡張可能な管状体を含むコーティングされた医療機器を提供する。
【解決手段】アルコキシアルキルアクリレートと、アミン、カルボン酸又はヒドロキシル基を含むモノマーとがフリーラジカル重合されたポリマーが結合している外表面を備える医療機器とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシアルキルアクリレートと、アミン、カルボン酸又はヒドロキシル基を含むモノマーとがフリーラジカル重合されたポリマーが結合している外表面を備える医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年5月17日に出願された米国仮特許出願番号第62/505,726号の利益を請求し、引用によってその全体の開示を本明細書に取り込む。
【0002】
(技術分野)
本明細書は医療機器を説明し、該医療機器は、共有結合され、血栓形成を低減可能なポリマーコーティングを備えるステント及び分流器を含む。医療機器を作成する及び使用する方法も説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
医療機器のコーティングを本明細書で説明する。機器のコーティングは、組織及び/又は血液と接触することがある任意の医療機器のために使用することができる。いくつかの実施形態において、コーティングは、コーティングされていない機器と比較した場合に、機器の周辺での血栓の形成を防ぐ又は低減することができる。
【0004】
ステント及び分流器を含む拡張可能である管状体は、狭窄及び拡張、又は動脈壁の弱体化(つまり、動脈瘤)を含む様々な血管症状を治療するために医療分野において広く使用されている。狭窄の治療のため、ステントが血管の閉塞内に挿入され、配置される。ステントは、血管の管腔内からの閉塞を補強し、血流を回復させる。頭蓋内動脈瘤の治療のため、動脈瘤のネックを横切るようにステントを展開し、後の動脈瘤のコイル形成をサポートすることができる。代わりに、動脈瘤のネックを横切るように分流器を配置し、動脈瘤の壁が血流にさらされることを低減又は除去することができる。
【0005】
ステント及び分流器は、様々な血管症状をうまく治療するために広く使用されているが、それらに制限がないものではない。そのような制限の1つは、ステントの血栓形成を防ぐために抗血小板療法が求められることである。現在、抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy)が標準治療である。低用量のアスピリンが無期限に推奨される。P2Y12阻害剤(つまり、クロピドグレル(Plavix)、プラスグレル(Efient、Effient)、チカグレロル(Brilinta)、及びカングレロール(Kengreal))が、術後12ヶ月まで推奨される。抗血小板薬2剤併用療法は、ステントが配置された血管の管腔を維持するために効果的であるが、出血(つまり、胃腸又は頭蓋内)の合併症が生ずることがある。頻繁ではないが、このような合併症は、罹患率と死亡率とに関連する。結果として、抗血小板薬2剤併用療法を減少させる又は排除する努力がなされている。
【0006】
ステントの血栓形成を削減するためのそのようなコーティングの1つは、ホスホリルコリンである。そのような実施形態において、コバルト-クロム編組分流器は、血栓形成を減少させるために、ホスホリルコリンが共有結合している。トロンボグラム試験において、コーティングされた分流器では、コーティングされていない分流器と比較して血栓形成の減少が見られ得る。
【0007】
ステントの血栓形成を削減する可能性のある他のコーティングは、ヘパリンである。そのような実施形態において、ヘパリンコーティングは、血栓形成を減少させるために、ステント上にディップコーティング又はスプレーコーティングにより形成される。しかしながら、血栓形成の減少におけるヘパリンコーティングの効果は、知られていない。
【0008】
抗血栓コーティングは、チューブ、カテーテル、心肺バイパス及び血液人工肺を含む広範な血液が接触する医療機器だけでなく、管状であり拡張可能な機器上に施すことができる。例えば、ポリ(メトキシエチルアクリレート)を含むポリマーコーティングは、血液ガス人工肺のコーティングのために開発された。このポリマーは、灌流回路の全ての表面にコーティングされ、血栓形成を減少させる。しかしながら、このポリマーは表面に単に吸着されているため、単時間使用される機器のみに適する。
【0009】
他の多くの分子が、ステント、分流器及び他の血液と接触する医療機器のコーティングのために評価されてきた。しかしながら、満足であり、耐久性のあるコーティングは発見されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、管状の拡張可能な機器について説明する。これらの機器は、血管又は他の管腔内に埋め込まれるように構成されることができる。医療機器表面は、管状であり、拡張可能な機器の血栓形成を削減することができるポリマーが結合されている。いくつかの実施形態において、結合は、共有結合による。
【0011】
1つの実施形態において、管状の拡張可能な機器は、血管に埋め込まれるような構成に織り込まれた複数の編組フィラメントを含む。編組フィラメントは、金属であることができる。金属組成は、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの組み合わせ、以下に限るものではないが、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、白金-タングステンのような、それらの合金、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0012】
別の実施形態において、管状の拡張可能な機器は、血管に埋め込まれるような構成にレーザー切断された金属チューブを含むことができる。金属チューブは、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの組み合わせ、以下に限るものではないが、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、白金-タングステンのような、それらの合金、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0013】
1つの実施形態において、ポリマーは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート又はその誘導体と、アミン、カルボン酸、又はヒドロキシル基を含む第2のモノマーと、を重合することによって調製することができる。1つの実施形態において、第2のモノマーはアミノエチルメタクリレート、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、それらの組み合わせ、又はそれらの誘導体である。別の実施形態では、第2のモノマーはアクリル酸、メタクリル酸、それらの組み合わせ、又はそれらの誘導体である。別の実施形態において、第2のモノマーはヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、それらの組み合わせ、又はそれらの誘導体である。
【0014】
他の実施形態において、ポリマーは、テトラヒドロフルフリルアクリレート又はその誘導体と、アミン、カルボン酸又はヒドロキシル基を含む第2のモノマーと、を重合することによって調製される。1つの実施形態において、第2のモノマーは、アミノエチルメタクリレート、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、それらの組み合わせ、又はそれらの誘導体である。別の実施形態において、第2のモノマーはアクリル酸、メタクリル酸、それらの組み合わせ及びそれらの誘導体である。別の実施形態において、第2のモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、それらの組み合わせ、又はそれらの誘導体である。
【0015】
埋め込み可能な医療機器をコーティングする方法も説明する。本方法は、シラン化によって埋め込み可能な医療機器の表面を活性化することと、第1のアクリレートモノマーと、アミン、カルボン酸又はヒドロキシル基を含む第2のモノマーとから形成されたポリマーを活性化された表面に結合させることとを含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、本方法は、酸素プラズマを使用した表面のヒドロキシル化を更に含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、
【化1】
【化2】
の構造を有する化合物、クロロフェニルトリエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、
【化3】
【化4】
の構造を有する化合物、又はそれらの組み合わせ(nが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15)との反応を通じてシアリル化が起きる。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は、シラン化後のアルゴンプラズマ処理を更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、第1のモノマーは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート又はテトラヒドロフルフリルアクリレートである。他の実施形態において、第2のモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、それらの組み合わせ、である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で説明する医療機器は、人工肺、人工血管、人工心肺機、カテーテル、ガイドワイヤ、ステント、分流器、静脈フィルタ、抹消血管保護装置、チューブ、ステントグラフト等を含む、血流と接触する任意の材料又は機器であってもよい。いくつかの実施形態において、医療機器はステント又は分流器である。他の実施形態において、医療機器は編組ステント又は分流器である。
【0021】
医療機器の表面の少なくとも一部は、コーティングされることができる。いくつかの実施形態において、医療機器の一部が、本明細書で説明するコーティングを使用してマスクされてもよい。いくつかの実施形態において、医療機器の表面の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約95%がコーティングされることができる。
【0022】
医療機器の表面を、血栓形成を減少させるために処理する/コーティングすることができる。医療機器は、医療機器へコーティングを適用するための方法だけでなく、血栓形成を減少させるための表面処理を含み得る。
【0023】
コーティングのための基材は、金属、ガラス、ポリマー、セラミック、それらの組み合わせ等を含む任意の好適な材料であり得る。いくつかの実施形態において、基材は金属である。任意の金属表面を使用することができるが、好適な金属は、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの合金、及びそれらの組み合わせを含むことができる。好適な合金は、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、及び白金-タングステンを含むことができる。1つの実施形態において、基材は、ニチノールと白金-タングステンの組み合わせである。
【0024】
血栓形成を減少させるコーティングのポリマーは、2つ以上のモノマーを重合することによって調製することができる。第1のモノマーは、以下の化学式
【化5】
により表すことができ、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1~4のアルキレン基であり、Rは炭素数1~4のアルキル基である。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1のモノマーはメトキシエチルアクリレートであり、Rが水素原子、Rがエチル基及びRがメチル基である。
【0026】
第2の及びそれに続くモノマーは、アミン、カルボン酸又はヒドロキシル基だけでなく、重合可能なアクリレート又はメタクリレートを含むことができる。アミンを含むモノマーは、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、2-アミノエチルメタクリレート、N-(3-メチルピリジン)アクリルアミド、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、メタクリロイル-L-リジン、N-(2-(4-アミノフェニル)エチル)アクリルアミド、N-(4-アミノフェニル)アクリルアミド、及びN-(2-(4-イミダゾリル)エチル)アクリルアミド、それらの誘導体及びそれらの組み合わせを含むことができる。カルボン酸を含むモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、それらの誘導体及びそれらの組み合わせを含むことができる。ヒドロキシル基を含むモノマーは、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、それらの誘導体及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0027】
1つの実施形態において、ポリマーを調製するため、2つ以上のモノマー及び開始剤を溶媒に溶解する。一般に、2つ以上のモノマーと開始剤とを溶解する任意の溶媒を使用することができる。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートと、アミン塩を含むモノマーと、の溶解度が異なるため、慎重に溶媒を選択することが必要になることがある。適切な溶媒は、メタノール/水、エタノール/水、イソプロパノール/水、ジオキサン/水、テトラヒドロフラン/水、ジメチルホルムアミド/水、ジメチルスルホキシド及び/又は水、及びそれらの組み合わせを含むことができる。カルボン酸及びヒドロキシルを含むモノマーの場合、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、THF、メタノール、エタノール及びジメチルホルムアミドを含む、より広範な溶媒を用いることができる。
【0028】
溶液中のモノマーの重合を開始するために、重合開始剤を使用することができる。酸化還元、放射線、熱又は当技術分野で知られている任意の他の方法によって、重合を開始することができる。モノマー溶液の放射線架橋は、適切な開始剤を用いた紫外線又は可視光により、又は開始剤を用いない電離放射線(例えば、電子線又はガンマ線)により達成できる。重合は、加熱ウェルのような熱源を使用して溶液を従来の方法で加熱すること、又はモノマー溶液に赤外線を当てることのいずれかにより、熱を加えることにより達成することもできる。
【0029】
いくつかの実施形態において、開始剤は使用しなくともよい。
【0030】
1つの実施形態において、重合開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、又は水溶性AIBN誘導体(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)、又は4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)である。他の適切な開始剤は、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル及びそれらの組み合わせを含み、アゾビスイソブチロニトリルを含む。開始剤濃度は、溶液中のモノマーの質量の約0.25%~約2%w/wの範囲であることができる。重合反応は、約65~約85℃の範囲のような、高温で実施することができる。重合が完了した後、ポリマーを非溶媒内における沈殿によって回収し、真空下で乾燥させることができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明するポリマーは、約10,000g/モルを超える、約10,000g/molと約200,000g/molとの間、約8,000g/molと約200,000g/molとの間、約100,000g/molと約200,000g/molとの間、約50,000g/molと約200,000g/molとの間、約25,000g/molと約200,000g/molとの間、約8,000g/molと約100,000g/molとの間、約10,000g/molと約100,000g/molとの間、約50,000g/molと約100,000g/molとの間、約75,000g/molと約100,000g/molとの間、約75,000g/molと約200,000g/molとの間、約10,000g/mol、約50,000g/mol、約100,000g/mol、約150,000g/mol、又は約200,000g/molの分子量を有し得る。
【0032】
1つの実施形態において、ポリマーは、複数のステップで基材に適用され、各ステップは任意であってもなくてもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーは、4つのステップで基材に適用される。各ステップの必要性は、基材の選択によって決まる。
【0033】
ステップ1は、洗浄ステップを含む。基材をきれいにするため、超音波処理下で、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、又はそれらの組み合わせの中でインキュベートされ得る。各洗浄ステップの継続時間は、約1分~約20分の範囲である。超音波処理の温度は、約18~55℃の範囲とすることができる。ステップ1の終了に続き、基材をステップ2へと移す。いくつかの実施形態において、ステップ2はステップ1の直後に続く。
【0034】
いくつかの実施形態において、洗浄ステップは、石鹸/洗剤及び水での洗浄を任意に含むことができる。
【0035】
ステップ2は、基材の表面上のヒドロキシル基の数を増加させる処理であるヒドロキシル化を含む。処理される表面は、酸、塩基、過酸化物、プラズマ処理、及びそれらの組み合わせを含む多くの異なる酸化剤を使用してヒドロキシル化されてもよい。
【0036】
処理のための酸は、塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、過塩素酸、及びそれらの組み合わせを含む。処理のための塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、及びそれらの組み合わせを含む。処理のための過酸化物は、過酸化水素、過酸化t-ブチル、及びそれらの組み合わせを含む。1つの実施形態において、酸化剤は過酸化水素である。ヒドロキシル化に使用される酸化剤は、約1%~約100%の濃度であってもよい。ヒドロキシル化する継続時間は、約18℃~約100℃の範囲の温度で、約0.25時間~約4時間の範囲とすることができる。ヒドロキシル化の後、基材を、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、またはそれらの組み合わせの中で、超音波を用い又は用いずに洗浄してもよい。各洗浄の継続時間は、約1分~約15分の範囲とすることができる。洗浄に続いて、任意に真空下で乾燥してもよい。1つの実施形態において、ヒドロキシル化は、約45分間、約100℃で約10%の過酸化水素を利用し、続いて約5分間連続して、水、エタノール及びアセトンで洗浄し、続いて真空下で乾燥する。
【0037】
別の実施形態では、処理のために酸素プラズマを使用する。プラズマ処理機において、基材を酸素プラズマに曝すことができる。プラズマ処理のパラメータは、酸素流量、ワット、圧力及び時間を含み得る。酸素流量は、約1~500sccm、約1~250sccm、約1~120sccm、約100~500sccm、約100~200sccm、約100~140sccm、少なくとも約100sccm、少なくとも約50sccm、又は約500sccm未満とすることができる。電力は、約1~600ワット、約1~500ワット、約1~400ワット、約100~600ワット、約200~600ワット、約400~600ワット、少なくとも約400ワット、少なくとも約500ワット、又は約600ワット未満とすることができる。圧力は、約120~2000mTorr、約200~2000mTorr、約200~1000mTorr、約300~500mTorr、約300~2000mTorr、少なくとも約200mTorr、少なくとも約300mTorr、又は約2000mTorr未満とすることができる。時間は、約1~15分、約5~15分、約5~10分、少なくとも約5分、少なくとも約4分、少なくとも約3分、少なくとも約2分、又は少なくとも約1分とすることができる。1つの実施形態において、酸素流量は約120sccmであり、電力は約500ワットであり、圧力は約400mTorrであり、及び時間は約5分である。
【0038】
ステップ3は、基材に反応基を結合する及び導入するための処理である、シラン化を含む。シランの反応基は、アクリレート、メタクリレート、アルデヒド、アミン、エポキシ、エステル、ハロゲン、それらの組み合わせ及びそれらの誘導体を含み得る。シランの反応基は、ポリマーの第2のモノマーのアミン、カルボン酸、又はヒドロキシル基と反応する。アミン又はヒドロキシル基を含むポリマーの場合、シランは、
【化6】
【化7】
クロロフェニルトリエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0039】
カルボン酸を含むポリマーの場合、シランは、
【化8】
【化9】
又は、それらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15である。1つの実施形態において、nは8~12である。
【0040】
シラン化を実施するため、選択されたシランを溶媒に溶解させる。適切な溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、酢酸、水、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、及びそれらの組み合わせを含む。一般に、シランを溶解する任意の溶媒又は溶媒の混合物を使用することができる。溶媒は、約0.1重量%~約99.9重量%の量で存在してもよい。溶媒の割合は、約90%~約99%の範囲である、又は約97%である。シランは、約0.1重量%~約99.9重量%の量で存在してもよい。シランの割合は、約1%~約10%の範囲である、又は約3%である。1つの実施形態において、シラン:溶媒系は、94%エタノール、2%水、1%酢酸、及び3%シランである。
【0041】
ヒドロキシル化に続いて、表面を洗浄するため、アルゴンプラズマを用いて基板を任意にプラズマ処理してもよい。
【0042】
プラズマ処理のパラメータは、アルゴン流量、ワット、圧力及び時間を含むことができる。アルゴン流量は、約1~500sccm、約1~250sccm、約1~120sccm、約100~500sccm、約100~200sccm、約100~140sccm、少なくとも約100sccm、少なくとも約50sccm、又は約500sccm未満とすることができる。電力は、約1~500ワット、約1~400ワット、約1~300ワット、約100~500ワット、約200~500ワット、約200~400ワット、少なくとも約100ワット、少なくとも約200ワット、又は約500ワット未満とすることができる。圧力は、約120~2000mTorr、約200~2000mTorr、約200~1000mTorr、約300~500mTorr、約300~2000mTorr、少なくとも約200mTorr、少なくとも約300mTorr、又は約2000mTorr未満とすることができる。時間は、約1~15分、約5~15分、約5~10分、少なくとも約5分、少なくとも約4分、少なくとも約3分、少なくとも約2分、又は少なくとも約1分とすることができる。1つの実施形態において、アルゴン流量は約365sccmであり、電力は約300ワットであり、圧力は約500mTorrであり、及び時間は約10分である。
【0043】
プラズマ処理に続いて、基材をシラン:溶媒系に配置することができる。インキュベーションの継続期間は、約18℃~約55℃の範囲の温度で、約6時間~24時間の範囲である。約100rpm~約250rpmの速度で振とうによりシラン化を任意に実施することができる。1つの実施形態において、シラン化条件は、約150rpmで振とうしながらの、室温で約18時間のインキュベーションである。
【0044】
シラン化の後、基材をエタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、水、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、及びそれらの組み合わせですすいでもよい。1つの実施形態において、すすぎはエタノールである。シラン層は、その後、約30~約150℃の範囲の温度で、約5分~60分の持続時間で硬化される。硬化条件は、約110℃で約30分間であることができる。
【0045】
ステップ4は、基材にポリマーを共有結合させるための処理であるポリマー結合ステップを含む。このステップの間、第2の又はそれ以上のモノマーからポリマーに付与された官能基は、シランを介して基材に付与された官能基と反応することができる。このステップでは、ポリマーを水、緩衝液、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、又はそれらの組み合わせ中に溶解させることができる。このステップのための溶媒は、50%v/vエタノール:50%v/vクエン酸緩衝液(水溶液、pH7)であることができる。溶媒中のポリマーの濃度は、溶媒中の約0.5%~約95%の範囲であることができる。1つの実施形態において、溶媒中のポリマーの濃度は、約1%である。
【0046】
ポリマー溶液は、ディップコート、スプレー、ブラッシング、又はそれらの組み合わせにより基材に適用することができる。1つの実施形態において、ポリマー溶液に約1時間~約48時間、基材を浸漬してもよく、又は別の実施形態において、継続時間は18時間である。約18~約100℃の範囲の温度で、インキュベーションを実施してもよい。1つの実施形態において、温度は室温である。約100rpm~約250rpmの速さで振とうさせながら結合反応を任意に実施してもよい。1つの実施形態において、振とう条件は、約150rpmである。
【0047】
インキュベーションの後、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、水、ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン及びそれらの組み合わせで、任意に基材をすすいでもよい。1つの実施形態において、50%v/vエタノール:50%v/v水の中ですすぐ。すすぎの後、基材を熱又は真空を使用して乾燥させてもよい。基材は、真空下で又は非真空下で、約40℃~約100℃の範囲の温度で加熱されてもよい。いくつかの実施形態において、乾燥条件は、真空下で40℃である。乾燥後、基材を滅菌及び包装することができる。
【0048】
コーティングを実質的に劣化させることなく、コーティングされた機器を滅菌することができる。滅菌後、コーティングの少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%又は約100%を、元の状態のままとすることができる。1つの実施形態において、滅菌方法は、オートクレーブ、ガンマ線照射、圧力滅菌及び/又は蒸気滅菌であり得る。
【0049】
本明細書で説明するコーティングは、トロンビンの成長を防ぐことができる。いくつかの実施形態において、コーティングは、約50%~約90%、約70%~約90%、約70%~約100%、少なくとも約60%、又は少なくとも約70%まで、湿った状態のトロンビンの形成量を減少することができる。いくつかの実施形態において、コーティングは、乾燥状態で測定した場合に、約60%~約95%、約70%~約95%、約70%~約100%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%まで、トロンビンの形成量を減少することができる。
【0050】
(実施例1)
シラン化のための編組医療機器の準備
第1に、編組医療機器を、超音波処理をしながらそれぞれ5分間、アセトン、エタノール及び水で、連続のインキュベーションを使用して事前に洗浄する。洗浄された編組医療機器を、100℃で約45分間、10%過酸化水素水の水溶液中でインキュベートし、その後、水で3回すすぐ。編組医療機器を、超音波処理をしながらそれぞれ5分間、水、エタノール及びアセトンで、連続のインキュベーションを使用して洗浄する。最後に、編組医療機器を真空下で18時間乾燥させる。
【0051】
(実施例2)
酸素プラズマを介したシラン化のための編組医療機器の準備
第1に、編組医療機器を、超音波処理をしながらそれぞれ5分間、アセトン、エタノール及び水で、連続のインキュベーションを使用して事前に洗浄する。その後、編組医療機器を真空オーブンに搬送し、40℃の減圧下で30分間乾燥させる。乾燥された編組医療機器は、IoN40プラズマ処理システム機器で、以下のパラメータで活性化される。
【表1】
【0052】
活性化された編組医療機器は、その後、バイアル内で保管される。
【0053】
(実施例3)
編組医療機器のシラン化
94%のエタノール、3%の7-ブロモヘプチルトリメトキシシラン、2%の水、及び1%の酢酸からなるシラン溶液を調製し、60分間、予備反応させる。予備反応の間、実施例1又は実施例2の編組医療機器を、アルゴンプラズマ(365sccmのアルゴン、300ワット、500mTorr)で10分間プラズマ処理する。続いて、編組医療機器を、シラン溶液中に浸漬し、光から保護しながら、1分あたり150回転で旋回振とうさせて室温で18時間インキュベートする。インキュベーションの終了時に、編組医療機器をエタノールですすぎ、110℃で30分間硬化させる。
【0054】
(実施例4)
編組医療機器のシラン化
7-ブロモヘプチルトリメトキシシランと、1,2-ビス(トリメトキシシラン)エタンとを、9:1(v/v)の比率で使用し、シラン混合物を作成する。シラン混合物をトルエンで5体積%に希釈する。約60分間、シランを予備反応させながら、実施例1又は実施例2の機器を、実施例3と同じ条件で、アルゴンプラズマで処理する。続いて、編組医療機器をシラン溶液に浸漬させ、70℃で18時間インキュベートする。インキュベーションの終了時に、編組医療機器をトルエンですすぎ、110℃で30分間、硬化させる。
【0055】
(実施例5)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)-co-ポリ[(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩]のコポリマーの調製
40mLの水及び40mLのメタノールの混合物に、40gの2-メトキシエチルアクリレート、4gの3-アミノプロピルメタクリレート塩酸塩、及び440mgの4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を溶解させる。重合は、80℃で4時間かけて起こる。コポリマーをイソプロパノール/ヘキサン(500mL:500mL)の混合物中で沈殿させて回収する。コポリマーを、80mLのテトラヒドロフラン及び20mLのエタノールの混合物中に再溶解させ、イソプロパノール:ヘキサン(400mL:600mL)混合物中で再沈殿させる。コポリマーを、80mLのテトラヒドロフラン及び20mLのエタノールの混合物に再溶解させ、イソプロパノール:ヘキサン(300mL:700mL)の混合物中で再沈殿させ、真空下で乾燥させる。コポリマーは、白色の泡状固体である。
【0056】
(実施例6)
ポリ(テトラヒドロフリルアクリレート)-co-ポリ[(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩]のコポリマーの調製
40mLの水及び40mLのメタノールの混合物に、40gのテトラヒドロフルフリルアクリレート、4gの3-アミノプロピルメタクリレート塩酸塩、及び440mgの4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を溶解させる。重合は、65℃で20時間にわたって起きる。コポリマーを、イソプロパノール:ヘキサン(500mL:500mL)の混合物中で沈殿させることによって回収する。コポリマーを、100mLのテトラヒドロフラン中に再溶解させ、イソプロパノール:ヘキサン(400mL:600mL)の混合物中で再沈殿させる。コポリマーを、100mLのテトラヒドロフラン中に再溶解させ、イソプロパノール:ヘキサン(300mL:700mL)の混合物中で再沈殿させる。コポリマーを100mLのテトラヒドロフラン中に再溶解させ、イソプロパノール:ヘキサン(200mL:800mL)の混合物中に再沈殿させる。最後に、コポリマーを、1Lのヘキサン中で1時間撹拌し、真空下で乾燥させる。コポリマーは、わずかにオレンジ色の泡状固体である。
【0057】
(実施例7)
ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)-co-ポリ[(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩]のコポリマーを使用した、コーティングされた編組医療機器の調製
実施例5のコポリマーを、50%/50%のエタノール/pH7.0のクエン酸緩衝液(v/v)に、最終濃度が10mg/mLとなるように溶解させる。実施例3の編組医療機器を、コポリマー溶液を含むバイアル内に入れ、150rpmのオービタルシェイカーで、室温で18時間インキュベートする。インキュベーションの後、機器を50%/50%のエタノール/水ですすぎ、40℃で30分間、真空下で硬化させる。
【0058】
(実施例8)
チャンドラーループモデルを使用したコーティングされた編組医療機器の評価
PVCチューブ(内径4mm、外径6mm、長さ54.86cm)を測定し、チャンドラーループ装置(Industriedesign、ノイフェン、ドイツ)のクレードルに収まるようにカットする。事前に重さを量った単一のコーティングがされた編組医療機器(4.5mm×2cm)を、チューブ内に配置する。ウシの血液を地元の食肉処理場から新鮮な状態で採取し、1U/mLでヘパリン化する。活性化凝固時間(ACT)を、必要に応じてプロタミンを使用して150~250秒の間となるように調整する。チューブは血液で満たされており、チューブはコネクタで密閉される。ループは、ポリカーボネート安定化ディスクに嵌められ、その後、該ディスクはチャンドラーループ装置に固定される。ループを、37℃、300s-1のせん断速度で2時間回転させる。
【0059】
次に、アセンブリをチャンドラーループ装置から取り外し、血液をPTFEビーカに排出させる。排出された血液のACTを決定する。チューブをPBSで3回まんべんなくすすぎ、残留した血液を除去する。チューブを長手方向にカミソリでカットし、編組医療機器を回収し、写真を撮る。ステントの重量(湿重量)を測定し、その後、重量が一定になる(乾燥重量)まで37℃で乾燥させる。以下の表は、チャンドラーループ試験の結果をまとめたものである。
【表2】
【0060】
実施例7のコーティングは、血栓の湿重量と血栓の乾燥重量とを劇的に減少させた。
【0061】
(実施例9)
X線光電子分光法を用いたコーティングされた編組医療機器の評価
編組医療機器の支柱を、X線光電子分光法を使用して分析し、原子の組成を決定した。結果を以下の表にまとめる。
【表3】
【0062】
XPSでは、非コーティングの編組医療機器の表面にケイ素又は臭素は検出されなかった。実施例3の編組医療機器は、有意なケイ素及び臭素を有し、シラン化が成功していることを示す。実施例7の編組医療機器は、1:1に近いSi対Brの比をもはや示さず、大部分の臭素が置換され、カップリング反応が成功したことを示す。
【0063】
(実施例10)
トロンボグラムを使用したコーティングされた医療機器の評価
トロンボグラムは、マニュアルに従って、トロンビノスコープ(Thrombinoscope)装置(Thrombinoscope B.V.社製、マーストリヒト、オランダ)で実施する。96ウェルのプレート上に、陰性対照、試験品、及びトロンビンキャリブレータが、グループごとに9回繰り返して配列される。血小板欠乏血漿(PPP、240μL)を全てのウェルに加え、PPP試薬(60μL)を陰性対照と試験品とに加える。FluCa溶液を装置に追加した後、スタートボタンを押し、96ウェルのプレートを装置に挿入し、10分のインキュベーションを開始する。インキュベーションの終了時に、結果を処理して報告する。結果は以下にまとめる。
【表4】
【0064】
実施例7のトロンボグラムは、陰性対照と同等の結果を示し、コーティングがトロンビン形成に耐えたことを示す。
【0065】
(実施例11)
ブラッドループ(Blood Loop)を使用したコーティングされた編組医療機器の評価
実施例7の編組医療機器は、デリバリーシステム内に包装され、電子ビームで滅菌される。Xコーティングが内側にライニングされたPVCチューブ(OD=5/16”、ID=3/16”、テルモ、日本)を140cm長にカットする。チューブを生理食塩水で満たし、3つの同じ機器をチューブ内に展開する。生理食塩水をヒツジの血液で置き換え(1U/mLでヘパリン化)、血液のACTは150~250秒の間である。検査を開始するため、チューブコネクタを使用し、チューブを閉じてループ状にし、ペリスタルティックポンプに搭載する。加熱チャンバ内でループをインキュベートしながら、ループ内で、273s-1で2時間±30分、血液を循環させる。インキュベーションの最後に、血液を各ループから排出させ、ACTを測定する。チューブの全長を生理食塩水ですすぐ。ステントをチューブから切り抜き、重量を測定し(湿重量)、その後、重量が一定になるまで(乾燥重量)37℃で乾燥させる。次の表は、チャンドラーループの実験結果をまとめたものである。
【表5】
【0066】
実施例7のコーティングは、血栓の湿重量と血栓の乾燥重量とを劇的に減少させた。
【0067】
特に明記しない限り、本明細書及び請求項で用いられる成分の量、分子量、反応条件等のような特性の量を表す全ての数字は、「約」という用語によって全ての例において変更されると理解されるべきである。従って、反対が示されていない限り、本明細書及び添付の請求項に記載の数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。非常に少なくとも、そして請求項の範囲に対する均等論の適用を限定する意図ではなく、各数値パラメータは、報告されている有効数字の数を考慮し、及び通常の概数の手法を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにも関わらず、特定の実施例に記載の数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、数値は、それぞれの試験測定で発見される標準偏差から必然的に生ずる特定のエラーを本質的に含む。
【0068】
「a」、「an」、「the」の用語、及び本発明を説明する文脈で使用される同様の指示対象(特に、以下の請求項の文脈において)は、本明細書で示されているのでない限り、又は文脈から明らかに矛盾するのでない限り、単数及び複数を包含するものと解釈されるべきである。本明細書での数値範囲の列挙は、単に、その範囲に入る各別の値を個別に参照する簡潔な方法として機能させることを意図する。本明細書で他が示されているのでない限り、個々の値は、あたかも本明細書で個別に引用されているかのように、本明細書に取り込まれる。本明細書で説明される全ての方法は、本明細書で他が示されているのではない限り、又は文脈から他が明確に矛盾するのでない限り、任意の適切な順番で実施することができる。本明細書において提供される、いずれか及び全ての実施例又は、例示する言語(例えば「のような」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、請求項に記載されている発明の範囲を限定するものではない。明細書中のいずれの言語も、本発明の実施に不可欠な、請求項に記載されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0069】
本明細書で開示される発明の代替要素又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループの構成要素は、個別に、又は本明細書で見られるグループの他の構成要素もしくは他の要素との任意の組み合わせで、参照及び請求され得る。1つ以上の構成要素が、利便性及び/又は特許性の理由から、グループに含まれ得る、又はグループから削除され得ることが予想される。任意のそのような包含又は削除が起きる場合、明細書は修正されたグループを含むとみなされ、添付の請求項で使用される全てのマーカッシュグループの記載要件を満たす。
【0070】
本発明の特定の実施形態が本明細書で説明されており、本発明を実施するために発明者に知られている最良の形態を含む。当然ながら、説明されている実施形態の変形は、上記の説明を読めば、当業者には明確となるであろう。発明者は、当業者がそのような変形を適切に採用することを期待し、発明者は、本明細書に具体的に説明されている以外の方法で本発明が実施されることを意図する。従って、この発明は、適用可能な法が許可する限り、全ての変形と添付の請求項に記載の主題の全ての変形と同等物を含む。更に、全ての可能な変形における上述した要素の任意の組み合わせが、本明細書で他が示されていない限り、又は文脈から明確に矛盾しない限り、本発明に含まれる。
【0071】
更には、本明細書を通じて、特許及び印刷された出版物に対して多くの参照がなされている。上述した参照文献及び印刷された出版物のそれぞれは、個別に、引用によってその全体を本明細書に取り込む。
【0072】
最後に、本明細書に開示の発明の実施形態は本発明の原理を説明するものと理解されるべきである。採用され得る他の変形例は、本発明の範囲に含まれる。従って、限定ではなく例として、本発明の代替的な構成を本明細書の教示に従って採用することができる。従って、本発明は、示され及び説明されているような正確なものに限定されない。
【0073】
[付記]
[付記1]
アルコキシアルキルアクリレートと、アミン、カルボン酸又はヒドロキシル基を含むモノマーとがフリーラジカル重合されたポリマーが結合している外表面を備える医療機器。
【0074】
[付記2]
血管内に埋め込まれるように構成された拡張可能な管状体を含む、
ことを特徴とする付記1に記載の医療機器。
【0075】
[付記3]
前記拡張可能な管状体は、金属を含む、
ことを特徴とする付記2に記載の医療機器。
【0076】
[付記4]
前記金属は、金、銀、銅、鋼、アルミニウム、チタン、コバルト、クロム、白金、ニッケル、それらの組み合わせ、以下に限るものではないが、ニチノール(ニッケル-チタン)、コバルト-ニッケル、コバルト-クロム、白金-タングステンのようなそれらの合金、又はそれらの組み合わせ、を含む、
ことを特徴とする付記2に記載の医療機器。
【0077】
[付記5]
前記金属は、ニチノールと白金-タングステンとの組み合わせである、
ことを特徴とする付記4に記載の医療機器。
【0078】
[付記6]
前記ポリマーは、前記外表面に共有結合している、
ことを特徴とする付記1に記載の医療機器。
【0079】
[付記7]
血管内に埋め込み可能に構成された拡張可能な管状体を含み、
前記拡張可能な管状体の外表面には、テトラヒドロフルフリルアクリレートと、アミン、カルボン酸又はヒドロキシル基を含むモノマーとがフリーラジカル重合されたポリマーが結合される、
ことを特徴とする医療機器。
【0080】
[付記8]
前記拡張可能な管状体は、金属を含む、
ことを特徴とする付記7に記載の医療機器。
【0081】
[付記9]
前記金属は、ニチノール、ニッケル、チタン、白金、クロム、コバルト、それらの合金、又はそれらの組み合わせを含む、
ことを特徴とする付記8に記載の医療機器。
【0082】
[付記10]
前記ポリマーは、前記管状体に共有結合している、
ことを特徴とする付記7に記載の医療機器。
【0083】
[付記11]
埋め込み可能な医療機器の表面をシラン化によって活性化させる工程と、
第1のアクリレートモノマーと、アミン、カルボン酸又はヒドロキシル基を含む第2のモノマーとから形成されたポリマーを活性化された前記表面に結合させる工程と、
を備える、
埋め込み可能な医療機器をコーティングする方法。
【0084】
[付記12]
酸素プラズマを使用して、前記表面をヒドロキシル化する工程を、更に備える、
ことを特徴とする付記11に記載の方法。
【0085】
[付記13]
前記酸素プラズマは、約120sccmの酸素流量、約500ワットの電力、約400mTorrの圧力、約5分の時間、又はそれらの組み合わせによって適用される、
ことを特徴とする付記12に記載の方法。
【0086】
[付記14]
シラン化は、
【化10】
【化11】
の構造を有する化合物、クロロフェニルトリエトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、
【化12】
【化13】
の構造を有する化合物、又はこれらの組み合わせとの反応を通じて起こり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15である、
ことを特徴とする付記11に記載の方法。
【0087】
[付記15]
nは8~12である、
ことを特徴とする付記14に記載の方法。
【0088】
[付記16]
シラン化の後のアルゴンプラズマ処理を更に備える、
ことを特徴とする付記11に記載の方法。
【0089】
[付記17]
前記アルゴンプラズマは、約365sccmのアルゴン流量、約300ワットの電力、約500mTorrの圧力、約10分の時間、又はそれらの組み合わせによって適用される、
ことを特徴とする付記16に記載の方法。
【0090】
[付記18]
前記結合させる工程は、ディップコーティング、スプレー、ブラッシング、又はそれらの組み合わせによる、
ことを特徴とする付記11に記載の方法。
【0091】
[付記19]
前記第1のモノマーは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、又はテトラヒドロフルフリルアクリレートである、
ことを特徴とする付記11に記載の方法。
【0092】
[付記20]
前記第2のモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルメタクリルアミド、それらの組み合わせ、である、
ことを特徴とする付記11に記載の方法。