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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126802
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 59/131 20230101AFI20230905BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230905BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20230905BHJP
   H10K 50/88 20230101ALI20230905BHJP
   H10K 59/82 20230101ALI20230905BHJP
   B41J 2/447 20060101ALI20230905BHJP
   B41J 2/45 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H10K59/131
H10K50/10
H10K77/10
H10K50/88
H10K59/82
B41J2/447 101A
B41J2/45
B41J2/447 101P
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099689
(22)【出願日】2023-06-16
(62)【分割の表示】P 2022508189の分割
【原出願日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2020046664
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 雅也
(72)【発明者】
【氏名】西出 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】有沢 崇志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆信
(57)【要約】      (修正有)
【課題】寄生容量および抵抗の傾斜分布をなくし、発光輝度のムラを抑制することができる発光装置を提供すること。
【解決手段】長尺状の基板2の長手方向に沿って配置されるK(Kは2以上の自然数)本の信号配線3と、基板2上に、長手方向に沿って列状に配置されるK個の発光素子部4と、基板2上に、長手方向と交差する方向に沿って信号配線3と絶縁層を介して配置され、K本の信号配線とK個の発光素子部4とをそれぞれ接続するK本の引出配線5と、を備え、各々が長手方向に沿って連続して配置されたL(LはKよりも小さい自然数)本の引出配線5から成る複数の配線群に分割し、各配線群におけるL本の引出配線5とK本の信号配線3との交差箇所の数の、引出配線5の1本当たりの平均値をM1とし、K本の引出配線5とK本の信号配線3との交差箇所の数の、引出配線5の1本当たりの平均値をM2としたとき、比率M1/M2の標準偏差が所定値以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の基板と、
前記基板上に、前記基板の長手方向に沿って配置されるK(Kは2以上の自然数)本の信号配線と、
前記基板上に、前記長手方向に沿って列状に配置されるK個の発光素子部と、
前記基板上に、前記長手方向と交差する方向に沿って前記信号配線と絶縁層を介して配置され、前記K本の信号配線と前記K個の発光素子部とをそれぞれ接続するK本の引出配線と、を備え、
前記K本の引出配線を、各々が前記長手方向に沿って連続して配置されたL(LはKよりも小さい自然数)本の引出配線から成る複数の配線群に分割し、各配線群における前記L本の引出配線と前記K本の信号配線との交差箇所の数の、前記引出配線1本当たりの平均値をM1とし、前記K本の引出配線と前記K本の信号配線との交差箇所の数の、前記引出配線1本当たりの平均値をM2としたとき、比率M1/M2の標準偏差が所定値以下である、発光装置。
【請求項2】
前記複数の配線群のそれぞれは5本以上の引出配線から成り、前記所定値は0.4である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記K本の引出配線は、長さが前記長手方向に沿って不規則に変化する不規則領域を含む、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記複数の配線群は、半分以上が前記不規則領域である、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記基板上において、前記長手方向に沿って列状に配置されるK個の発光素子部を有する発光ブロックが、前記長手方向に沿って複数配列されており、
前記不規則領域は、複数の前記発光ブロックで共通する所定パターンとされている、請求項3または4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記基板上において、前記長手方向に沿って列状に配置されるK個の発光素子部を有する発光ブロックが、前記長手方向に沿って複数配列されており、
前記不規則領域は、複数の前記発光ブロックで互いに相違する所定パターンとされている、請求項3または4に記載の発光装置。
【請求項7】
前記基板上の、前記K本の信号配線と前記K個の発光部との間の第1領域に、前記長手方向に沿って配置される第1電源配線と、
前記基板上の、前記K本の信号配線に関して前記第1領域とは反対側の第2領域に、前記長手方向に沿って配置される第2電源配線と、
前記基板上に配置され、前記第1電源配線と前記第2電源配線とを接続する少なくとも1本の接続配線と、をさらに備え、
前記K個の発光素子部は、前記第1電源配線に接続されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記少なくとも1本の接続配線は、前記K本の引出配線のうちの隣り合う引出配線同士の間に延びている、請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記少なくとも1本の接続配線は、平面視で屈曲した形状を有している、請求項7または8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記K本の引出配線のそれぞれは、前記信号配線に接続される端部に接続パッドを有しており、
前記接続パッドは、前記長手方向に沿って延びる形状を有している、請求項1~9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記K個の発光素子部は、有機発光ダイオード素子または有機エレクトロルミネッセンス素子を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機発光ダイオード素子、有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子を備える発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された発光装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-216150号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の発光装置は、長尺状の基板と、
前記基板上に、前記基板の長手方向に沿って配置されるK(Kは2以上の自然数)本の信号配線と、
前記基板上に、前記長手方向に沿って列状に配置されるK個の発光素子部と、
前記基板上に、前記長手方向と交差する方向に沿って前記信号配線と絶縁層を介して配置され、前記K本の信号配線と前記K個の発光素子部とをそれぞれ接続するK本の引出配線と、を備え、
前記K本の引出配線を、各々が前記長手方向に沿って連続して配置されたL(LはKよりも小さい自然数)本の引出配線から成る複数の配線群に分割し、各配線群における前記L本の引出配線と前記K本の信号配線との交差箇所の数の、前記引出配線1本当たりの平均値をM1とし、前記K本の引出配線と前記K本の信号配線との交差箇所の数の、前記引出配線1本当たりの平均値をM2としたとき、比率M1/M2の標準偏差が所定値以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
図1】本開示の一実施形態の発光装置の構成を模式的に示す平面図である。
図2】発光装置の全体を模式的に示す平面図である。
図3図2のIII部および駆動素子の回路図である。
図4】発光素子部と発光素子部に接続される配線を拡大して示す部分拡大平面図である。
図5図4の切断面線V1-V2から見た断面図である。
図6図1の切断面線V3-V4から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の実施形態に係る発光装置が基礎とする構成について説明する。従来の発光装置では、長尺状の基板の主面上に、基板の長手方向に沿って整列して配置された複数の発光素子と、複数の発光素子をそれぞれ駆動する複数の駆動回路ブロックと、駆動回路ブロックと発光素子とを接続する複数の配線と、が形成されている。各駆動回路ブロックは、複数の発光素子の列に沿って並んで配置されており、1つの駆動回路ブロックが複数の発光素子を駆動する。基板の長手方向の一端部または両端部には、各駆動回路ブロックおよび各発光素子を駆動し、各発光素子の発光を制御する駆動装置が、チップオングラス方式等の実装方法によって実装されている。基板の主面における、駆動装置近傍の縁部には、駆動装置との間で駆動信号、制御信号等を入出力するためのフレキシブル回路基板が設置されている。各駆動回路は、シフトレジスタ、論理和否定(NOR)回路、インバータ、トランスファゲート素子、および駆動用薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を有している。駆動用TFTのドレイン電極には、有機発光ダイオード素子等から成る発光素子が接続されている。発光装置は、各駆動用TFTのゲート電極にゲート電位がデータ信号として与えられると、データ信号に応じた電源電圧による電源電流が各発光素子に供給され、各発光素子がデータ信号に応じた輝度で発光するように構成されている。
【0007】
従来の発光装置では、基板上に複数の絶縁層の層間に各種配線が配置された多層積層型配線構造体が形成されている。該多層積層型配線構造体において、各駆動用TFTのゲート電極に電気的に接続される下層側ゲート電位供給配線は、各発光素子が配置されている発光点の近傍まで基板の長手方向に沿って延び、発光点の近傍からコンタクトホール等の層間接続導体によって上層側ゲート電位供給配線に持ち上げられている。上層側ゲート電位供給配線は、基板の短手方向に延びるとともに、基板の長手方向に延びる複数の下層側ゲート電位供給配線を跨いで、各駆動用TFTのゲート電極に接続されている。
【0008】
従来の発光装置では、1本の上層側ゲート電位供給配線は、複数の下層側ゲート電位供給配線のそれぞれとの間に寄生容量が発生するため、この寄生容量によって各駆動用TFTのゲート電極に印加されるゲート電位に電位差が生じてしまう。また、従来の発光装置では、上層側ゲート電位供給配線と層間接続導体との接続部は、基板の長手方向の端部にある電源に近い近位の発光点から電源から遠い遠位の発光点に向かって、発光点から見て順次離れていく(または順次近づく)ように配置されている。このため、接続部が発光点に最も近い上層側ゲート電位供給配線から接続部が発光点から最も遠い上層側ゲート電位供給配線になるに従って、寄生容量および抵抗が順次増加し、各発光点に対して寄生容量と抵抗の傾斜分布が生じる。その結果、複数の発光点の発光輝度に長手方向に傾斜した分布が生じる。このような寄生容量および抵抗の傾斜分布をなくし、発光輝度のムラを抑制することができる発光装置が求められている。
【0009】
以下、添付図面を参照して、本開示の発光装置の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態の発光装置の構成を模式的に示す平面図である。本実施形態では、一例として、発光装置が有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)プリンタヘッドに適用される場合について説明する。OLEDプリンタヘッドは、画像形成装置が備える感光ドラムの表面に画像情報を静電潜像として形成するものである。OLEDプリンタヘッドは、例えば、長尺状の基板に、数百から数千の発光素子部を有する発光ブロックの複数が所定の回路パターンで配列された構成を有する。図1では、本開示の発光装置の基本的な回路パターンを説明する。
【0011】
本開示の発光装置は、基板2と、複数本の信号配線3と、複数個の発光素子部4と、複数本の引出配線5とを備える。複数本の信号配線3は、基板2上に所定方向(例えば、長手方向)に沿って配置される。複数個の発光素子部4は、基板2上に所定方向に沿って列状に配置される。複数本の引出配線5は、基板2上に所定方向と交差する方向(例えば、短手方向)に沿って信号配線3と絶縁層を介して配置され、複数本の信号配線3と複数個の発光素子部4とをそれぞれ接続する。複数本の引出配線5は、長さが所定方向に沿って不規則に変化する不規則領域を、半分以上の割合で含んでいる。
【0012】
本開示の発光装置は、上記の構成により以下の効果を奏する。引出配線5の長さの不規則領域において、信号配線3と引出配線5との平面視における交差箇所の数も、所定方向に沿って不規則になる。その結果、引出配線5の抵抗および交差箇所で生ずる寄生容量が、所定方向に沿って不規則になる。従って、引出配線5の抵抗および交差箇所で生ずる寄生容量が順次増加し、各発光素子部4に対して抵抗と寄生容量の傾斜分布が生じることを抑えて、複数の発光素子部4に同じ駆動電流を入力したときに、複数の発光素子部4から発せられる光の輝度に長手方向に傾斜した分布が生じることを抑制することができる。
【0013】
複数の配線群は、その60%以上が不規則領域であってもよく、また80%以上が不規則領域であってもよく、また100%が不規則領域であってもよい。これらの場合、複数の発光素子部4に同じ駆動電流を入力したときに、複数の発光素子部4から発せられる光の輝度に長手方向に傾斜した分布が生じることをより抑制することができる。
【0014】
不規則領域は、連続していてもよく、断続していてもよい。連続する場合、電源電圧入力部に近い側に不規則領域が位置していてもよい。電圧降下が大きい電源電圧出力部に近い側は、輝度が小さくなりやすいことから、輝度の長手方向に傾斜した分布が分かりにくい傾向があるからである。断続する場合、不規則領域と規則領域を交互に配置してもよい。この場合、輝度の長手方向に傾斜した分布が生じやすい規則領域の存在を分かりにくくすることができる。またこの場合、1つの不規則領域の大きさが、それに隣接する1つの規則領域の大きさよりも大きい構成であってもよい。これにより、輝度の長手方向に傾斜した分布が生じやすい規則領域の存在をより分かりにくくすることができる。また、1つの不規則領域の大きさが、それに隣接する1つの規則領域の大きさよりも大きいパターンを、繰り返す構成であってもよい。これにより、輝度の長手方向に傾斜した分布が生じやすい規則領域の存在をさらに分かりにくくすることができる。
【0015】
不規則領域は、例えば、コンピュータ・ソフトウェア・プログラムを用いて生成した疑似乱数を利用して構成することができる。
【0016】
基板2は、ガラス、樹脂(プラスチック)等の透光性材料、セラミックス、金属等の非透光性材料から成っていてもよい。基板2が透光性材料から成る場合、発光素子部4が配置された基板2の面(例えば、表面)と反対側の面(例えば、裏面)から光を出射させることもできる。また基板2は、異なる材料から成る複数の基板を積層させた複合型基板であってもよく、例えばガラス基板と樹脂基板を積層させた複合型基板であってもよい。また基板2は、樹脂等から成る可撓性基板、所謂フレキシブル基板であってもよい。
【0017】
基板2上における所定方向は、例えば基板2が長方形状、帯状等の長尺状の基板2である場合、長手方向であってもよい。この場合、所定方向と交差する方向は短手方向であってもよい。また、基板2が正方形等の対称的な形状であって長手方向を有していない形状である場合、所定方向は一辺に沿った方向(例えば、行方向)であってもよく、所定方向と交差する方向は一辺に隣接する辺に沿った方向(例えば、列方向)であってもよい。
【0018】
複数本の引出配線5は、信号配線3と絶縁層を介して配置されるが、信号配線3は下層側ゲート電位供給配線であってもよく、引出配線5は上層側ゲート電位供給配線であってもよい。この場合、例えば、引出配線5における発光素子部4と反対側の端部が、スルーホール等の層間接続導体を介して信号配線3に接続される。また、引出配線5における発光素子部4側の端部は、駆動用TFTのゲート電極に接続される。駆動用TFTのソース電極は電源配線6(図1に記載)に接続され、駆動用TFTのドレイン電極は発光素子部4に接続さる。
【0019】
本開示の発光装置は、複数本の引出配線5は、各々が所定方向に沿って連続して配置された引出配線5から成る複数の配線群(例えば、図1のG1,G2,G3)に分割されており、複数本の信号配線3の本数をK(Kは2以上の自然数)本とし、複数の配線群の各配線群を構成する引出配線5の本数をL(LはKよりも小さい自然数)本とし、各配線群における引出配線5とK本の信号配線3との交差箇所の数の、引出配線5の1本当たりの平均値をM1とし、K本の引出配線5とK本の信号配線3との交差箇所の数の、引出配線5の1本当たりの平均値をM2としたとき、1≦M1/M2<2である構成であってよい。この場合、複数個(K個)の発光素子部4の全体における、引出配線5の1本当たりの交差箇所数の平均値M2に対して、各配線群における、引出配線5の1本当たりの交差箇所数の平均値M1を、異ならせるとともに1に近づけることができる。その結果、発光素子部4の全体における交差箇所の配置パターンと、各配線群における交差箇所の配置パターンと、が異なるとともに、発光素子部4の全体における交差箇所数の平均値M2と、各配線群における交差箇所数の平均値M1と、が近似することになる。従って、複数の配線群において、複数の発光素子部4に同じ駆動電流を入力したときに、複数の発光素子部4から発せられる光の輝度に長手方向に傾斜した分布が生じることを抑制することができ、さらに、複数の発光素子部4に同じ駆動電流を入力したときに、複数の発光素子部4の全体における輝度の平均値と、複数の配線群に接続された発光素子部4の輝度の平均値と、が異なることを抑えることができる。M1/M2が2以上になると、複数の発光素子部4に同じ駆動電流を入力したときに、複数の発光素子部4の全体における輝度の平均値と、複数の配線群に接続された発光素子部4の輝度の平均値と、の相違が大きくなり、輝度差が異なる領域の存在が目立ちやすくなる場合がある。
【0020】
比率M1/M2は、より1に近似してもよく、1≦M1/M2≦1.5であってもよく、1≦M1/M2≦1.3であってもよいが、これらの値に限らない。
【0021】
Kは100以上であり、Lは5以上であってもよい。Kが100未満である場合、複数本の引出配線5を複数の配線群に分割せずとも、全体的に不規則領域を形成すればよくなる傾向がある。Lが5未満である場合、同様に、複数本の引出配線5を複数の配線群に分割せずとも、全体的に不規則領域を形成すればよくなる傾向がある。Kは100~10000程度、Lは5~100程度であってもよいが、これらの範囲に限らない。なお、「~」は「乃至」を意味し、以下同様とする。
【0022】
基板2上において、所定方向に沿って列状に配置されるK個の発光素子部4を有する発光ブロックが、所定方向に沿って複数配列されており、不規則領域は、複数の発光ブロックで共通する所定パターンとされている構成であってもよい。この構成の場合、例えば、コンピュータ・ソフトウェア・プログラムを用いて生成した疑似乱数を利用して1つの所定パターンを生成し、その所定パターンを複数の発光ブロックで共通するように、複数の発光ブロックに適用してもよい。またこの構成の場合、不規則領域は、複数の発光ブロックで共通する所定パターンとされていることから、所定パターンの生成が容易になるという効果を奏する。
【0023】
基板2上において、所定方向に沿って列状に配置されるK個の発光素子部4を有する発光ブロックが、所定方向に沿って複数配列されており、不規則領域は、複数の発光ブロックで互いに相違する所定パターンとされている構成であってもよい。この構成の場合、例えば、コンピュータ・ソフトウェア・プログラムを用いて生成した疑似乱数を利用して所定パターンを生成する際に、複数の発光ブロックで互いに相違するように生成してもよい。またこの構成の場合、不規則領域は、複数の発光ブロックで互いに相違する所定パターンであることから、複数の発光ブロックに同じ駆動電流を入力したときに、発光ブロック毎に輝度分布が異なる、というより有利な効果を奏する。
【0024】
本実施形態の発光装置1は、基板2と、K本の信号配線3と、K個の発光素子部4と、K本の引出配線5とを備える。ここで、Kは、2以上の自然数であり、例えば、数百から数千に達することがある。図1では、図解および説明を容易にするために、Kが9である場合を示している。なお、発光装置1は、K個の発光素子を備えていてもよく、さらにはK×ブロック数の個数の発光素子を備えていてもよい。
【0025】
発光装置1は、基板2の主面上(以下、単に、基板上ともいう)に形成された多層積層型配線構造体を有する。多層積層型配線構造体は、複数の絶縁層の層間に信号配線3、引出配線5等の各種配線が配置されたものである。
【0026】
基板2は、長尺状の形状を有しており、例えば図1に示すように、長手方向Xおよび長手方向Xに垂直な短手方向Yを有している。基板2は、例えば、ガラス、樹脂等から成り、透光性を有している。
【0027】
K本の信号配線3は、基板2上に、長手方向Xに沿って配置されている。K本の信号配線3は、短手方向Yにおいて、隣り合う信号配線3同士の間に間隔を空けて配置されている。
【0028】
K個の発光素子部4は、基板2上に、長手方向Xに沿って列状に配置されている。K個の発光素子部4は、長手方向Xに沿って一列に配列されていてもよく、長手方向Xに沿って複数列に配列されていてもよい。各発光素子部4は、発光素子41と、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)42とを有している。
【0029】
発光素子41は、OLED素子、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence:OEL)素子等であり、アノード電極41aおよびカソード電極を有している。アノード電極41aは、TFT42のドレイン電極に接続され、カソード電極は、接地配線に接続されている。
【0030】
TFT42は、pチャネル型TFTであってもよく、nチャネル型TFTであってもよい。TFT42は、ゲート電極42a、ソース電極42bおよびドレイン電極42cを有している。ゲート電極42aは、K本の信号配線3のうちの1本に接続されている。また、ソース電極42bは、電源配線(図1では第1電源配線6)に接続されており、ドレイン電極42cは、発光素子41のアノード電極41aに接続されている。
【0031】
K本の引出配線5は、基板2上に、長手方向Xと交差する短手方向Yに沿って信号配線3と絶縁層を介して配置され、K本の信号配線3とK個の発光素子部4とをそれぞれ接続している。長手方向Xと短手方向Yは交差する方向であるが、図1に示すように直交する方向であってもよい。交差する方向は直交する方向に限らず、交差角度を60°~120°程度の範囲内で選択することもできる。K本の引出配線5は、長手方向Xにおいて、隣り合う引出配線5同士の間に間隔を空けて配置されている。各引出配線5は、一方端部(以下、第1端部ともいう)51がK本の信号配線3のうちの1本に接続され、他方端部がK個の発光素子部4のうちの1個に接続されている。各引出配線5は、例えば図1に示すように、K本の信号配線3のうちの少なくとも1本と平面視で交差するか、または重なっている。
【0032】
信号配線3と引出配線5とは、基板2の厚み方向(図1における紙面に垂直な方向)における信号配線3と引出配線5との間に配置された絶縁層によって、互いに電気的に絶縁されている。このため、信号配線3と該信号配線3と平面視で交差する引出配線5との間に寄生容量が発生する。このため、信号配線3と引出配線5との交差箇所の数(以下、単に、交差数ともいう)が、長手方向Xにおいて、単調増加または単調減少する配線構造では、寄生容量および抵抗の分布に長手方向Xにおける傾斜が生じてしまい、その結果、複数の発光素子41から発せられる光の輝度に傾斜分布(グラデーション)が生じるという問題点があった。特に複数の発光素子41から発せられる光の輝度が同じとなるようにデータ信号を送信した場合に、グラデーションが目立ちやすい。
【0033】
発光装置1は、K本(図1では9本)の引出配線5を、例えば図1に示すように、各々が長手方向Xに連続して配置されたL本(図1では3本)の引出配線5から成る複数の配線群G1,G2,G3に仮想的に分割し、各配線群G1,G2,G3におけるL本の引出配線5とK本の信号配線3との交差箇所の数(交差数)の、引出配線5の1本当たりの平均値をM1とし、K本の引出配線5とK本の信号配線3との交差箇所の数(交差数)の、引出配線5の1本当たりの平均値をM2(=(K+1)/2)としたときに、複数の配線群G1,G2,G3は、比率M1/M2の標準偏差が所定値以下とされている。ここで、Lは、Kよりも小さい自然数であり、所定値は、例えば、0.6以下の値である。発光装置1では、複数の配線群G1,G2,G3における比率M1/M2が、比率M1/M2の平均値である「1」に近い値となっている。換言すると、発光装置1では、信号配線3と引出配線5との交差数、すなわち、信号配線3と引出配線5との間に発生する寄生容量が、長手方向Xにおいて、略均一に分布している。発光装置1によれば、発光輝度の、信号配線3と引出配線5との間に発生する寄生容量の傾斜分布に起因するグラデーションの発生を抑制することができる。
【0034】
K本の引出配線5は、その長さが長手方向Xに沿って不規則に変化する不規則領域を含んでいてもよい。例えば、複数の配線群のうち少なくとも1つの配線群が不規則領域となっていてもよい。換言すると、K本の引出配線5は、その全ての長さが長手方向Xに沿って漸次長くなっていたり、漸次短くなっていたりする構成ではない。この場合、比率M1/M2の標準偏差を所定値以下とすること、即ち比率M1/M2を1に近づけること、が容易になる。また、複数の配線群は、半分以上が不規則領域であってもよい。この場合、比率M1/M2の標準偏差を所定値以下とすること、即ち比率M1/M2を1に近づけること、がより容易になる。さらに、複数の配線群は、すべてが不規則領域であってもよい。この場合、比率M1/M2の標準偏差を所定値以下とすること、即ち比率M1/M2を1に近づけること、がさらに容易になる。
【0035】
本実施形態の発光装置1は、基板2上において、長手方向Xに沿って列状に配置されるK個の発光素子部4を有する発光ブロックが、長手方向Xに沿って複数配列されており、不規則領域は、複数の発光ブロックで共通する所定パターンとされていてもよい。この場合、例えば、コンピュータ・ソフトウェア・プログラムを用いて生成した疑似乱数を利用して1つの所定パターンを生成し、その所定パターンを複数の発光ブロックで共通するように、複数の発光ブロックに適用してもよい。またこの構成の場合、不規則領域は、複数の発光ブロックで共通する所定パターンとされていることから、所定パターンの生成が容易になるという効果を奏する。
【0036】
また本実施形態の発光装置1は、基板2上において、長手方向Xに沿って列状に配置されるK個の発光素子部4を有する発光ブロックが、長手方向に沿って複数配列されており、不規則領域は、複数の発光ブロックで互いに相違する所定パターンとされていてもよい。この場合、例えば、コンピュータ・ソフトウェア・プログラムを用いて生成した疑似乱数を利用して所定パターンを生成する際に、複数の発光ブロックで互いに相違するように生成してもよい。またこの構成の場合、不規則領域は、複数の発光ブロックで互いに相違する所定パターンであることから、複数の発光ブロックに同じ駆動電流を入力したときに、発光ブロック毎に輝度分布が異なる、というより有利な効果を奏する。
【0037】
なお、図1では、9本の引出配線5を3つの配線群G1,G2,G3に仮想的に分割する例を示したが、引出配線5の総数(すなわち、Kの値)および配線群の数は、適宜設定することができる。例えば、120本の引出配線5を10個の配線群に分割してもよく、400本の引出配線5を16個の配線群に分割してもよい。
【0038】
比率M1/M2の標準偏差を所定値以下とするには、K本の信号配線3とK本の引出配線5とをそれぞれ接続する際に、例えば、各配線群G1,G2,G3の比率M1/M2が目標値である「1」に略等しくなるように、L本の引出配線5とK本の信号配線3のうちのL本の信号配線とをそれぞれ接続すればよい。なお、各配線群G1,G2,G3の比率M1/M2は、目標値に等しくなっている必要はなく、比率M1/M2の標準偏差が所定値以下となる程度であれば、目標値の近傍でばらついていてもよい。
【0039】
あるいは、比率M1/M2の標準偏差を所定値以下とするには、K本の信号配線3とK本の引出配線5とをそれぞれ接続する際に、コンピュータ・ソフトウェア・プログラムを用いて生成した疑似乱数を利用して、比率M1/M2の標準偏差が所定値以下となるような、K本の信号配線3とK本の引出配線5との接続の組み合わせ、即ちK本の引出配線5の長さの長手方向Xに沿った不規則な変化、を決定してもよい。
【0040】
発光装置1は、各配線群G1,G2,G3が5本以上の引出配線5から成り、比率M1/M2の標準偏差が0.4以下であってもよい。比率M1/M2の標準偏差が0.4以下である場合、複数の配線群G1,G2,G3における寄生容量の傾斜分布を効果的に抑制できる。また、各配線群G1,G2,G3が5本以上の引出配線5から成る場合、K本の信号配線3とK本の引出配線5とをそれぞれ接続する際に、各配線群G1,G2,G3の比率M1/M2を目標値である1に近づけることが容易になる。
【0041】
発光装置1は、第1電源配線6と、第2電源配線7と、接続配線8とをさらに備える。
【0042】
第1電源配線6は、基板2上の、K本の信号配線3とK個の発光素子部4との間の第1領域S1に、長手方向Xに沿って配置されている。第1電源配線6には、外部から供給される電源電圧(例えば14V程度)が印加される。発光素子部4は、第1電源配線6に接続されている。本実施形態では、例えば図1に示すように、TFT42のソース電極42bが第1電源配線6に接続されており、これにより、ゲート電極42aに供給されるゲート電位に応じた電界が発光素子41に印加される。
【0043】
第2電源配線7は、基板2上の、K本の信号配線3に関して第1領域S1とは反対側の第2領域S2に、長手方向Xに沿って配置されている。第2電源配線7には、第1電源配線6と同様に、外部から供給される電源電圧(例えば14V程度)が印加される。
【0044】
接続配線8は、基板2上に少なくとも1本配置され、第1電源配線6と第2電源配線7とを接続している。これにより、電源配線のトータルでの断面積が増加して抵抗が小さくなることから、基板2の長手方向Xにおける電源電圧の変動を抑制し、電源電圧を安定化させることができる。その結果、複数の発光素子41の発光輝度にグラデーションが生じることをより抑制できる。
【0045】
接続配線8は、K本の引出配線5のうちの隣り合う引出配線5同士の間に延びていてもよい。換言すると、接続配線8は、第1電源配線6の、長手方向Xにおける中間部位と、第2電源配線7の、長手方向Xにおける中間部位とを接続している。これにより、基板2の長手方向Xにおける電源電圧の変動を効果的に抑制できる。その結果、複数の発光素子41の発光輝度にグラデーションが生じることを効果的に抑制できる。
【0046】
接続配線8は、例えば図1に示すように、平面視において、屈曲した形状を有していてもよい。この場合、大きな線幅の接続配線8を隣り合う引出配線5同士の間に配置することが可能になる。これにより、基板2の長手方向Xにおける電源電圧の変動を効果的に抑制できる。その結果、複数の発光素子41の発光輝度にグラデーションが生じることを効果的に抑制できる。
【0047】
引出配線5は、例えば図1に示すように、信号配線3に接続される第1端部51に、長手方向Xに延びる形状の接続パッド52を有していてもよい。これにより、引出配線5と信号配線3との接続部における接続抵抗を小さくして、引出配線5の寄生容量による信号電圧の鈍りおよび低下を抑えることができる。その結果、複数の発光素子41の発光輝度にグラデーションが生じることを効果的に抑制できる。
【0048】
図2は、発光装置の全体を模式的に示す平面図であり、図3は、図2のIII部および駆動素子の回路図である。発光装置1は、複数の駆動回路ブロック9と、駆動素子10と、フレキシブル回路基板11とをさらに備えている。以下、図2,3を参照して、複数の駆動回路ブロック9、駆動素子10およびフレキシブル回路基板11の構成について説明する。
【0049】
複数の駆動回路ブロック9は、基板2上に配置されており、複数の発光素子部4をそれぞれ駆動する。複数の発光素子部4は、例えば図2に示すように、長手方向Xに沿って2列に整列して配置されている。基板2上には、駆動回路ブロック9の配線、および駆動回路ブロック9と発光素子部4とを接続する配線が、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等の薄膜形成法によって形成されている。
【0050】
複数の駆動回路ブロック9は、長手方向Xに沿ってアレイ状に並べられており、例えば、発光装置1が、8000個の発光素子部4を有し、1つの駆動回路ブロック9が400個の発光素子部4を駆動する構成である場合、駆動回路ブロック9は、長手方向Xに沿って、20個並べられている。また、基板2の主面の一端部には、駆動回路ブロック9および発光素子部4を駆動し、それによって、発光素子41の発光を制御する駆動素子10が、チップオングラス(Chip On Glass:COG)方式等の実装方法によって設置されている。また、基板2の主面における、駆動素子10の近傍に位置する縁部には、フレキシブル回路基板11が接続されている。フレキシブル回路基板11は、駆動素子10との間で駆動信号、制御信号等を入出力する。なお、図2および図3において、駆動素子10と駆動回路ブロック9を接続するデータ配線等の配線は、参照符号25によって総称的に示している。
【0051】
駆動回路ブロック9は、複数の駆動回路91を有している。例えば図2,3に示すように、2列を成す各2個の発光素子411,412(総称する場合には、発光素子41ともいう)に対して1つの駆動回路91が形成されている。1つの駆動回路91は、シフトレジスタ91a、論理和否定(NOR)回路91b、インバータ91c、トランスファゲート素子91d1,91d2、および駆動用のTFT421,422(総称する場合には、TFT42ともいう)を有している。トランスファゲート素子91d1,91d2は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランスファゲート素子であり、n型MOSトランジスタとp型MOSトランジスタとで構成されている。TFT42のドレイン電極42cには、OLED素子またはOEL素子である発光素子41のアノード電極41aがそれぞれ接続されている。
【0052】
駆動回路91は、以下のように順次動作する。シフトレジスタ91aは、クロック端子(CLK)にハイレベル「1」のクロック信号(CLK)が入力されるとともに、入力端子(in)にハイレベルの同期信号(Vsync)が入力されたときに、出力端子(Q)からハイレベルの信号が出力され、かつ反転出力端子(XQ)からローレベル「0」の信号が出力される。次に、NOR回路91bは、反転出力端子(XQ)からローレベルの信号が入力されるとともに、反転イネーブル信号(XENB)であるローレベルの信号が入力されたときに、ハイレベルの信号を出力する。
【0053】
次に、インバータ91cは、ハイレベルの信号が入力されたときに、ローレベルの信号を出力する。次に、トランスファゲート素子91d1は、n型MOSトランジスタのゲート電極にNOR回路91bからのハイレベルの信号が入力されるとともに、p型MOSトランジスタのゲート電極にインバータ91cからローレベルの信号が入力されてオン状態となり、データ信号(DATA200)を出力する。次に、データ信号(DATA200)がTFT421のゲート電極42aに入力されてTFT421がオン状態となり、データ信号(DATA200)に応じた電源電圧による電源電流が発光素子411に供給される。
【0054】
トランスファゲート素子91d2は、n型MOSトランジスタのゲート電極にNOR回路91bからのハイレベルの信号が入力されるとともに、p型MOSトランジスタのゲート電極にインバータ91cからローレベルの信号が入力されてオン状態となり、データ信号(DATA100)を出力する。次に、データ信号(DATA100)がTFT422のゲート電極42aに入力されてTFT422がオン状態となり、データ信号(DATA100)に応じた電源電圧による電源電流が発光素子412に供給される。
【0055】
以上の一連の動作が、次段の駆動回路によって順次実行されていき、すべての発光素子41が順次発光していく。
【0056】
発光装置1は、例えば図2に示すように、基板2上に配置される封止基板12をさらに備え、基板2の主面の周縁部と、封止基板12の基板2の主面に対向する面の周縁部とが、シール部材13によって接着され、封止されている。シール部材13の内側の空間には、アクリル樹脂等から成る絶縁層(図5の絶縁層46に相当する)が、駆動回路ブロック9、配線25等のほとんどを覆うように配置されている。
【0057】
図4は、発光素子部と発光素子部に接続される配線を拡大して示す部分拡大平面図であり、図5は、図4の切断面線V1-V2から見た断面図であり、図6は、図1の切断面線V3-V4から見た断面図である。以下、図4~6を参照して、発光素子部4の構成について説明する。
【0058】
発光素子部4は、例えば図4,5に示すように、基板2上に形成されたTFT421,422(総称する場合には、TFT42ともいう)と、TFT421,422上にアクリル樹脂、窒化シリコン(SiNx)等から成る絶縁層43を挟んで積層された有機発光体部44、および有機発光体部44とTFT42のドレイン電極42cとを導電接続するコンタクトホール45を含んでいてもよい。有機発光体部44は、TFT42の側からコンタクトホール45に電気的に接続された第1電極層44a、有機発光層44b、第2電極層44cが積層されており、絶縁層43および第1電極層44a上に有機発光層44bを囲むようにアクリル樹脂等から成る他の絶縁層46が形成されている。
【0059】
図4,5において、符号41Lで示す部位は、第1電極層44aおよび第2電極層44cによって有機発光層44bに直接的に電界が印加されて発光する発光部41Lである。発光素子41は、平面視において、発光部41L、その周囲の第1電極層44aおよび有機発光層44bを含む部位である。
【0060】
第1電極層44aが、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)等の透明電極から成る陽極であり、第2電極層44cが、Al、Al-Li合金、Mg-Ag合金(Agを5~10重量%程度含む)、Mg-Cu合金(Cuを5~10重量%程度含む)等の、仕事関数が4.0eV程度以下と低く、遮光性、光反射性を有する金属または合金から成る陰極である場合、有機発光層44bで発光した光は基板2側から出射される。すなわち、発光方向が下方(図5におけるZ方向の負方向)であるボトムエミッション型の発光装置となる。
【0061】
一方、第1電極層44aが、上記の遮光性、光反射性を有する金属またはそれらの合金から成る陰極であり、第2電極層44cが、透明電極から成る陽極である場合、発光方向が上方(図5におけるZ方向の正方向)であるトップエミッション型の発光装置となる。
【0062】
TFT42は、基板2側から、ゲート電極42aと、ゲート絶縁膜42dと、チャネル部としてのポリシリコン膜42eおよびポリシリコンに不純物をチャネル部よりも高濃度に含有させた高濃度不純物領域42fから成る半導体膜と、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiO2)等から成る絶縁膜42gと、ソース電極42bと、ドレイン電極42cとが、順次積層された構成を有している。
【0063】
また、図4において、第1電源配線6は、TFT42のソース電極42bにソース信号(電源電流)を伝達するソース信号線(電源配線)であり、信号配線3は、ゲート電極42aにゲート信号を伝達するゲート信号線である。各信号配線3に入力するゲート信号の電圧を制御することによって、各有機発光層の発光強度を制御することができる。すなわち、第1電源配線6は、電源配線(ソース信号線)として機能する。
【0064】
例えば図6に示すように、基板2の主面には、TFT42のドレイン電極42cと発光部41Lの第1電極層(図6の例ではアノード電極)44aとを電気的に接続するアノード接続配線14、および窒化シリコン(SiNx),酸化シリコン(SiO2)等から成る第1の層間絶縁膜15が、この順に形成されている。
【0065】
第1の層間絶縁膜15上には、有機発光層44bに駆動電流を供給するデータ配線等の配線25、接地配線16が形成されており、さらに、配線25および接地配線16を覆う、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiO2)等から成る第2の層間絶縁膜17が形成されている。第2の層間絶縁膜17の上には、接地配線16、配線25、TFT42の部位を覆うように絶縁層18(図5の絶縁層43に相当する)が形成されている。
【0066】
絶縁層18の上には、アノード電源配線としての第1電源配線6が形成され、TFT42に平面視で重なる部位に、TFT42のソース電極42bにアノード電流を流すアノード配線19が形成されている。第1電源配線6、アノード配線19を覆うように、窒化シリコン(SiNx)、酸化シリコン(SiO2)等から成る保護絶縁層20が形成されている。なお、図6において、符号9で示される部位は駆動回路ブロック9であり、符号91aで示される部位はシフトレジスタ91aである。
【0067】
シール部材13は、保護絶縁層20上の所定の部位、例えば保護絶縁層20上の周縁の部位に形成され、基板2と封止基板12との間の空間を気密に封止している。またシール部材13は、保護絶縁層20上の周縁の部位であって第2電源配線7に平面視で重なる部位に形成されていてもよい。
【0068】
アノード接続配線14に重なる第2の層間絶縁膜17上の部位に、カソード電源配線21が形成されており、発光素子41側にはアノード接続配線14と第1電極層44aとを接続するための層間導体層22が形成されている。アノード接続配線14のTFT42側の端部には、TFT42のドレイン電極42cに接続される第1のコンタクトホール23が配置されており、発光素子41側の端部には、層間導体層22に接続される第2のコンタクトホール24が配置されている。
【0069】
保護絶縁層20上の発光部41L側の端部を覆って、第1電極層44aが形成されており、第1電極層44aの上に有機発光層44bが形成され、有機発光層44bを覆って第2電極層(図6ではカソード電極)44cが形成されている。第2電極層44cの一端部は、カソード電源配線21に接している。
【0070】
第2電源配線7の上には、補助電源配線(電源強化配線ともいう)7aが第2電源配線7と平行に配置されているとともに、第2電源配線7と補助電源配線7aはコンタクトホール7bによって接続されている。これにより、第2電源配線7の断面積が実質的に増大することとなり、第2電源配線7の電気抵抗が小さくなる。その結果、長板状の基板2の長手方向Xに平行に帯状、または線状に形成されている第2電源配線7の電圧降下が小さくなるように構成されている。
【0071】
なお、発光装置1は、複数の発光素子部4を直線状に配列してなる発光素子アレイを2列に配列した構成を有していてもよく、複数の発光素子部4を直線状に配列してなる発光素子アレイを4列または6列に配列した構成を有していてもよい。
【0072】
上記の発光装置1によれば、複数の配線群G1,G2,G3の比率M1/M2の標準偏差が所定値以下であることによって、複数の発光素子部4からの発光輝度の、信号配線3と引出配線5との間に発生する寄生容量および抵抗の傾斜分布に起因するグラデーションが生じることを抑制できる。
【0073】
発光装置1は、K個の発光素子部4は、有機発光ダイオード素子または有機エレクトロルミネッセンス素子を含む構成であってもよい。有機発光ダイオード素子または有機エレクトロルミネッセンス素子は、CVD法等の薄膜形成法、インクジェット法等の膜形成法によって、基板2上に薄型の発光素子部4として直接形成することができる、という利点がある。また、K個の発光素子部4は、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)素子等のチップ型の発光素子を含んでいてもよい。
【0074】
以上、本開示の各実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の発光装置は、例えば、長板状の基板2の長手方向に複数の発光素子を列状に並ぶように形成することによって、有機LEDプリンタ(OLEDP)ヘッドとして構成し得る。また、基板が正方形状、長尺板状等の形状であり、複数の発光素子を2次元的(平面的に)並ぶように形成することによって有機EL表示装置として構成し得る。さらに本開示の発光装置および有機EL表示装置は、各種の電子機器に適用できる。その電子機器としては、照明装置、自動車経路誘導システム(カーナビゲーションシステム)、船舶経路誘導システム、航空機経路誘導システム、自動車等の乗り物の計器用インジケータ、インスツルメントパネル、スマートフォン端末、携帯電話、タブレット端末、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子手帳、電子書籍、電子辞書、パーソナルコンピュータ、複写機、ゲーム機器の端末装置、テレビジョン、商品表示タグ、価格表示タグ、産業用のプログラマブル表示装置、カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー、ファクシミリ、プリンタ、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、医療用表示装置、デジタル表示式腕時計、スマートウォッチ、駅または空港等に設置される案内表示装置等がある。
【符号の説明】
【0076】
1 発光装置
2 基板
3 信号配線
4 発光素子部
41,411,412 発光素子
41L 発光部
41a アノード電極
41b カソード電極
42,421,422 薄膜トランジスタ(TFT)
42a ゲート電極
42b ソース電極
42c ドレイン電極
42d ゲート絶縁膜
42e ポリシリコン膜
42f 高濃度不純物領域
42g 絶縁膜
43 絶縁層
44 有機発光体部
44a 第1電極層
44b 有機発光層
44c 第2電極層
45 コンタクトホール
46 絶縁層
5 引出配線
51 一方端部(第1端部)
52 接続パッド
6 第1電源配線
7 第2電源配線
7a 補助電源配線
7b コンタクトホール
8 接続配線
9 駆動回路ブロック
91 駆動回路
91a シフトレジスタ
91b 論理和否定回路(NOR回路)
91c インバータ
91d1,91d2 トランスファゲート素子
10 駆動素子
11 フレキシブル回路基板
12 封止基板
13 シール部材
14 アノード接続配線
15 第1の層間絶縁膜
16 接地配線
17 第2の層間絶縁膜
18 絶縁層
19 アノード配線
20 保護絶縁層
21 カソード電源配線
22 層間導体層
23 第1のコンタクトホール
24 第2のコンタクトホール
25 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6