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特開2023-126804エレクトロスプレーインターフェースデバイスおよび関連付けられた方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126804
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】エレクトロスプレーインターフェースデバイスおよび関連付けられた方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/04 20060101AFI20230905BHJP
   H01J 49/14 20060101ALI20230905BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20230905BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H01J49/04 040
H01J49/14 700
G01N30/72 G
G01N27/447 331E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023099915
(22)【出願日】2023-06-19
(62)【分割の表示】P 2020500595の分割
【原出願日】2018-06-29
(31)【優先権主張番号】62/530,018
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ドン ダブリュー. アーノルド
(57)【要約】
【課題】好適なエレクトロスプレーインターフェースデバイスおよび関連付けられた方法を提供すること。
【解決手段】出願人の教示のさまざまな側面に従った装置、システム、および、方法は、サンプル導管(例えば、分析導管またはキャピラリ)からサンプル流を提供するための改良されたインターフェースを提供するものであり、それによるイオン化のためにサンプル分離技法(例えば、CEおよびHPLC)において使用されるものを含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2017年7月7日に出願された米国仮出願第62/530,018号からの優先権の利益を主張し、その内容全体が、参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
(分野)
本教示は、質量分光分析のために、注入または指向性注液および低流率サンプル分離技法(例えば、キャピラリ電気泳動法(CE)ならびに高性能液体クロマトグラフィ(HPLC))を含むサンプル源からのサンプル流をエレクトロスプレーイオン化(ESI)源にインターフェースするための方法、システム、および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(導入)
質量分光法(MS)は、定性用途および定量用途の両方で、被検物質の元素組成を判定するための分析技法である。MSは、未知の化合物を同定するため、分子中の元素の同位体組成を判定するため、その断片化を観察することによって特定の化合物の構造を判定するため、および、サンプル中の特定の化合物の量を定量化するために有用であることができる。質量分析計は、サンプリングプロセスの間に荷電イオンへの検体の変換が生じなければならないように、化学的エンティティをイオンとして検出する。大部分のMS用途のための正確度および感度要件に起因して、複雑なサンプルは、概して、イオン化に先立って分離技法を受ける。例えば、ESIを使用して高分解能および高感度を達成するために、狭小カラム/キャピラリを使用して低流率を示す分離技法(例えば、ナノ液体クロマトグラフィ(ナノLC)ならびにキャピラリ電気泳動法(CE))が、普及しつつある。HPLC-MS技法では、低流率(例えば、1μL/分未満~1mL/分を上回る値の範囲内)を示す小内径逆相カラム(例えば、約75μm~数ミリメートルの内径)が、一般的には、プロテオミクス研究において利用され、分離が、移動相および固定相との検体の相互作用の差異に起因して生じる。同様に、CE-MSでは、狭小キャピラリ(例えば、約250nL/分の流率を示す約50~75μmの内径)が、一般的には、利用され、印加された電場下における検体の電気泳動移動性の差異に起因して、伝導性流体中のサンプル検体の分離に影響を及ぼす。
【0004】
種々のサンプル源から(低サンプル流分離技法(例えば、HPLCまたはCE)において小径キャピラリまたは流体導管を利用するそれらのサンプル源を含む)ESI源へのサンプル流体の送達を改善する一方で、分析導管およびイオン源エミッタの製造性を改善する必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
出願人の教示の種々の側面に従った装置、システム、および方法は、サンプル源(例えば、注入、直接注液)からサンプル流を提供するための改良されたインターフェースを提供する。いくつかの例示的な側面では、サンプル流は、それによるイオン化のために、サンプル分離技法(例えば、CEおよびHPLC)において使用される分析導管(例えば、分析キャピラリ)を通してESI源に提供されることができる。
【0006】
出願人の教示の種々の側面によると、エレクトロスプレーイオン化源とインターフェースをとるためのデバイスが提供され、デバイスは、流体流のための第1のマイクロチャネルを画定する第1の導管(例えば、分析導管)(第1のマイクロチャネルは、1つまたは複数の着目検体を含有する流体サンプルを受容するための入口端部と、そこから前記流体サンプルを伝送するための出口端部とを有する)と、流体流のための第2のマイクロチャネルを画定する第2の導管(例えば、ESIエミッタ)(第2のマイクロチャネルは、第1のマイクロチャネルの出口端部から伝送される流体サンプルを受容するための入口端部と、質量分析計システムのイオン化チャンバの中に前記流体サンプルを放出するための放出端部とを有する)とを備える。第2の導管の少なくとも一部は、多孔性表面を備えることができ、第2の導管は、第1のマイクロチャネルの出口端部から第2のマイクロチャネルの入口端部の中への継続的な流体流を可能にするように、第1のマイクロチャネルの出口端部が第2の導管のマイクロチャネルと整列されるように、第1の導管に結合されることができる。インターフェースはまた、第1の導管および第2の導管を少なくとも部分的に囲繞する筐体を備え、筐体は、筐体の内側表面と第2の導管の多孔性表面との間に流体チャンバを画定し、筐体は、少なくとも1つの開口部を有し、第2の導管は、少なくとも1つの開口部を通して筐体内からイオン化チャンバの中に延在する。流体チャンバ内に含有される伝導性流体と流体接触するように配置されるように構成される電極は、多孔性表面を介して伝導性流体と第2のマイクロチャネル内の流体サンプルとの間に電流を提供するように、電力供給源に結合されることができる。
【0007】
第1の導管および第2の導管は、種々の様式で結合されることができる。実施例として、結合機構が、第1の導管および第2の導管のマイクロチャネル間に液密シールを提供するように、第1の導管および第2の導管の接合部を囲繞するように提供されることができる。いくつかの側面では、例えば、結合機構は、圧縮フィットによって第1の導管および第2の導管の整列を維持するように構成されることができる。そのような側面における例示的な材料は、第1の導管の出口端部および第2の導管の入口端部の周囲で伸展され得る可撓性および/またはエラストマ材料を含む。いくつかの側面では、結合機構は、収縮材料が第1の導管および第2の導管を相互と固着および整列させる役割を果たすように、例えば熱の印加に応じて収縮し得る材料を備えることができる。加えて、または、代替的には、結合機構は、それを通して延在するボアを有する結合体を備えることができ、ボアの中に第1の導管および第2の導管が部分的に挿入され得る。関連する側面では、結合体は、整列に応じて第1の導管および/または第2の導管に(例えば、UV硬化性接着剤を介して)接着されることができる。いくつかの側面では、結合機構は、機械的固定具(例えば、クランプ)を備えることができる。種々の側面では、例えば、筐体は、2つの本体を備えることができ、2つの本体のそれぞれは、第1の導管および第2の導管の外径にフィットするように構成される溝を備え、その結果、第1の導管および第2の導管は、溝の中に配置されると、流体的に結合され、2つの本体は、ともに継合(例えば、クランプ)される。いくつかの側面では、溝は、筐体本体が導管をしっかりと保持するように継合されると材料が導管の外径に合うように、圧縮性材料(例えば、シリコン)を備えることができる。上述されたように筐体内の伝導性流体と電気接触するように構成される電極は、種々の側面において、筐体および/または結合機構の一部であり得る。
【0008】
第1の導管および第2の導管は、種々の構成、形状、およびサイズを有することができ、種々の(相互に同一または異なる)材料から成ることができる。実施例として、いくつかの側面では、第1の導管は、キャピラリ電気泳動デバイスを備えることができ、第2の導管は、エレクトロスプレーエミッタを備えることができる。種々の側面では、第1の導管は、石英を備えることができ、第2の導管は、珪土を備えることができる。いくつかの側面では、第1の導管および第2の導管の内径は、実質的に等しい。第2の導管の多孔性表面はまた、種々の構成(例えば、多孔性表面の表面積および/または多孔性表面を構成する細孔の数またはサイズ)を有することができる。いくつかの側面では、多孔性表面は、約1nm~約40nmの範囲内または約40nm~約100nmの範囲内の平均サイズを有する複数の細孔を備えることができる。
【0009】
出願人の教示の種々の側面によると、上記に説明される例示的なインターフェースデバイスを利用するエレクトロスプレーイオン化を実行するための方法が提供される。いくつかの側面では、1つまたは複数の着目検体を含有する流体サンプルを第1の導管から第2の導管に伝送することを含む方法が提供され、第1の導管は、流体サンプルを受容するための入口端部と、そこから前記流体サンプルを伝送するための出口端部との間に延在する第1のマイクロチャネルを画定し、第2の導管は、第1のマイクロチャネルの出口端部から伝送される流体サンプルを受容するための入口端部と、放出端部との間に延在する第2のマイクロチャネルを画定する。第2の導管の少なくとも一部は、多孔性表面を備えることができ、筐体は、第1の導管および第2の導管を少なくとも部分的に囲繞することができ、筐体は、筐体の内側表面と第2の導管の多孔性表面との間に流体チャンバを画定することができ、筐体は、少なくとも1つの開口部を有し、第2の導管は、少なくとも1つの開口部を通して筐体内からイオン化チャンバの中に延在する。方法はまた、多孔性表面を介して第1の導管および/または第2の導管内の伝導性流体と流体サンプルとの間に電流を提供するように、筐体の流体チャンバ内に含有される伝導性流体と接触する電極に、電気信号を印加することを含むことができる。流体サンプルは、次いで、質量分析計システムのイオン化チャンバ内で1つまたは複数の検体をイオン化するために、第2の導管の放出端部から放出されることができ、前記1つまたは複数のイオン化された検体に対する質量分光分析が、実行されることができる。種々の側面では、第1の導管は、キャピラリ電気泳動デバイスを備えることができる、または代替的には、方法は、第1の導管を液体クロマトグラフィカラムに結合することを含むことができる。
【0010】
種々の側面では、方法は、第1の導管の出口端部が第2の導管の入口端部に流体を伝送するように、第1の導管および第2の導管を結合することをさらに含むことができる。実施例として、第1の導管および第2の導管は、接着剤を適用することによって、機械的取付具(例えば、クランプ)によって、または、液密シールを提供するように第1の導管および第2の導管の接合部を囲繞する結合機構によって、結合されることができる。例えば、結合機構は、第1の導管および第2の導管を相互に固着させ、圧縮フィットによってそれらの整列を維持することができる。いくつかの例示的な側面では、方法は、収縮する結合体が、第1の導管および第2の導管を相互と固着ならびに整列させる役割を果たすように、熱の印加に応じて収縮するように構成される材料から作製される結合体に熱を印加することを含むことができる。種々の側面では、筐体は、2つの本体を備えることができ、2つの本体のそれぞれが、第1の導管および第2の導管の外径にフィットするように構成される溝を備え、方法は、溝の中に配置され、2つの本体を(例えば、クランプを用いて)ともに継合すると、流体的に結合される第1の導管および第2の導管の少なくとも一部を配置することを含むことができる。種々の側面では、方法は、第2の導管の周囲の開口部をシールすることをさらに含むことができる。いくつかの側面では、方法は、前記伝導性流体で流体チャンバを充填することをさらに含むことができる。
【0011】
出願人の教示の種々の側面によると、エレクトロスプレーイオン化源のためのインターフェースを製造するための方法が提供され、方法は、流体流のための第1のマイクロチャネルを画定する第1の導管を提供することであって、第1のマイクロチャネルは、1つまたは複数の着目検体を含有する流体サンプルを受容するための入口端部と、そこから前記流体サンプルを伝送するための出口端部とを有する、ことと、流体流のための第2のマイクロチャネルを画定する第2の導管を提供することであって、第2のマイクロチャネルは、第1のマイクロチャネルの出口端部から伝送される流体サンプルを受容するための入口端部と、質量分析計システムのイオン化チャンバの中に前記流体サンプルを放出するための放出端部とを有する、こととを含む。方法はまた、第2の導管の少なくとも一部に複数の細孔を形成することと、第1のマイクロチャネルの出口端部から第2のマイクロチャネルの入口端部の中への継続的な流体流を可能にするように第1のマイクロチャネルの出口端部が第2の導管のマイクロチャネルと整列されるように、第1の導管を第2の導管に結合することとを含むことができる。第1の導管および第2の導管の少なくとも一部は、筐体内に配置されることができ、筐体は、筐体の内側表面と第2の導管の多孔性表面との間に流体チャンバを画定し、筐体は、少なくとも1つの開口部を有し、第2の導管は、少なくとも1つの開口部を通して筐体内からイオン化チャンバの中に延在するように構成される。いくつかの側面では、方法は、電極をインターフェースと関連付けることをさらに含むことができ、電極は、流体チャンバ内に包含される伝導性流体と流体接触するように配置されるように構成され、電極は、多孔性表面を介して、伝導性流体と第2のマイクロチャネル内の流体サンプルとの間に電流を提供するように、電力供給源に結合されるように構成される。種々の側面では、方法は、酸エッチング、塩基エッチング、機械的ドリル加工のうちの1つを使用して多孔性表面を形成することを含むことができ、多孔性表面は、約1nm~約40nmの範囲内の平均サイズを有する複数の細孔を備える。いくつかの側面では、方法は、(例えば、研磨、エッチングなどを介して)第2の導管の放出端部の形状を修正することを含むことができる。例示的な側面では、多孔性表面が、形成されることができ、かつ/または、放出端部の形状が、第1の導管および第2の導管を結合することに先立って、修正されることができる。
【0012】
出願人の教示のこれらおよび他の特徴は、本明細書において説明される。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
エレクトロスプレーイオン化源とインターフェースをとるためのデバイスであって、
流体流のための第1のマイクロチャネルを画定する第1の導管であって、前記第1のマイクロチャネルは、1つまたは複数の着目検体を含有する流体サンプルを受容するための入口端部と、そこから前記流体サンプルを伝送するための出口端部とを有する、第1の導管と、
流体流のための第2のマイクロチャネルを画定する、第2の導管であって、前記第2のマイクロチャネルは、前記第1のマイクロチャネルの出口端部から伝送される前記流体サンプルを受容するための入口端部と、質量分析計システムのイオン化チャンバの中に前記流体サンプルを放出するための放出端部とを有し、前記第2の導管の少なくとも一部は、多孔性表面を備え、前記第2の導管は、前記第1のマイクロチャネルの出口端部から前記第2のマイクロチャネルの入口端部の中への継続的な流体流を可能にするように前記第1のマイクロチャネルの出口端部が前記第2の導管のマイクロチャネルと整列されるように、前記第1の導管に結合される、第2の導管と、
前記第1の導管および前記第2の導管を少なくとも部分的に囲繞する筐体であって、前記筐体は、前記筐体の内側表面と前記第2の導管の前記多孔性表面との間に流体チャンバを画定し、前記筐体は、少なくとも1つの開口部を有し、前記第2の導管は、前記少なくとも1つの開口部を通して前記筐体内から前記イオン化チャンバの中に延在する、筐体と、
前記流体チャンバ内に包含される伝導性流体と流体接触するように配置されるように構成される電極であって、前記電極は、前記多孔性表面を介して前記伝導性流体と前記第2のマイクロチャネル内の前記流体サンプルとの間に電流を提供するように、電力供給源に結合されるように構成される、電極と
を備える、デバイス。
(項目2)
前記第1の導管および前記第2の導管の接合部を囲繞するように構成される結合機構をさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記結合機構は、圧縮フィットによって前記第1の導管および前記第2の導管の整列を維持するように構成される、項目2に記載のデバイス。
(項目4)
前記結合機構は、接着剤を備える、項目2に記載のデバイス。
(項目5)
前記結合機構は、前記電極を備える、項目2に記載のデバイス。
(項目6)
前記筐体は、前記電極を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目7)
前記第1の導管は、石英を備え、前記第2の導管は、珪土を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目8)
前記多孔性表面は、約1nm~約40nmの範囲内の平均サイズを有する複数の細孔を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目9)
前記多孔性表面は、約40nm~約100nmの範囲内の平均サイズを有する複数の細孔を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目10)
前記第1の導管および前記第2の導管の内径は、実質的に等しい、項目1に記載のデバイス。
(項目11)
前記第1の導管は、キャピラリ電気泳動デバイスを備え、前記第2の導管は、エレクトロスプレーエミッタを備える、項目1に記載のデバイス。
(項目12)
エレクトロスプレーイオン化を実行するための方法であって、
1つまたは複数の着目検体を含有する流体サンプルを第1の導管から第2の導管に伝送することであって、前記第1の導管は、前記流体サンプルを受容するための入口端部と、そこから前記流体サンプルを伝送するための出口端部との間に延在する第1のマイクロチャネルを画定し、前記第2の導管は、前記第1のマイクロチャネルの出口端部から伝送される前記流体サンプルを受容するための入口端部と放出端部との間に延在する第2のマイクロチャネルを画定し、前記第2の導管の少なくとも一部は、多孔性表面を備え、筐体が、前記第1の導管および前記第2の導管を少なくとも部分的に囲繞し、前記筐体の内側表面と前記第2の導管の前記多孔性表面との間に流体チャンバを画定し、前記筐体は、少なくとも1つの開口部を有し、前記第2の導管は、前記少なくとも1つの開口部を通して前記筐体内からイオン化チャンバの中に延在する、ことと、
前記多孔性表面を介して前記第1の導管および前記第2の導管内の前記伝導性流体と前記流体サンプルとの間に電流を提供するように、前記筐体の前記流体チャンバ内に包含される伝導性流体と接触する電極に、電気信号を印加することと、
質量分析計システムのイオン化チャンバ内で前記1つまたは複数の検体をイオン化するように、前記第2の導管の放出端部から前記流体サンプルを放出することと、
前記イオン化された1つまたは複数の検体に対して質量分光分析を実行することと
を含む、方法。
(項目13)
前記第1の導管の出口端部が前記第2の導管の入口端部に流体を伝送するように、前記第1の導管および前記第2の導管を結合することをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記第2の導管の周囲の前記開口部をシールすることをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記伝導性流体で前記流体チャンバを充填することをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記第1の導管を液体クロマトグラフィカラムに結合することをさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目17)
前記第1の導管は、キャピラリ電気泳動デバイスを備える、項目11に記載の方法。
(項目18)
エレクトロスプレーイオン化源のためのインターフェースを製造する方法であって、
流体流のための第1のマイクロチャネルを画定する第1の導管を提供することであって、前記第1のマイクロチャネルは、1つまたは複数の着目検体を含有する流体サンプルを受容するための入口端部と、そこから前記流体サンプルを伝送するための出口端部とを有する、ことと、
流体流のための第2のマイクロチャネルを画定する第2の導管を提供することであって、前記第2のマイクロチャネルは、前記第1のマイクロチャネルの出口端部から伝送される前記流体サンプルを受容するための入口端部と、質量分析計システムのイオン化チャンバの中に前記流体サンプルを放出するための放出端部とを有する、ことと、
前記第2の導管の少なくとも一部に、複数の細孔を形成することと、
前記第1のマイクロチャネルの出口端部から前記第2のマイクロチャネルの入口端部の中への継続的な流体流を可能にするように前記第1のマイクロチャネルの出口端部が前記第2の導管のマイクロチャネルと整列されるように、前記第1の導管を前記第2の導管に結合することと、
筐体内に前記第1および第2の導管の少なくとも一部を配置することであって、前記筐体は、前記筐体の内側表面と前記第2の導管の前記多孔性表面との間に流体チャンバを画定し、前記筐体は、少なくとも1つの開口部を有し、前記第2の導管は、前記少なくとも1つの開口部を通して前記筐体内から前記イオン化チャンバの中に延在するように構成される、ことと、
電極を前記インターフェースと関連付けることであって、前記電極は、前記流体チャンバ内に包含される伝導性流体と流体接触するように配置されるように構成され、前記電極は、前記多孔性表面を介して、前記伝導性流体と前記第2のマイクロチャネル内の前記流体サンプルとの間に電流を提供するように、電力供給源に結合されるように構成される、ことと
を含む、方法。
(項目19)
酸エッチング、塩基エッチング、機械的ドリル加工のうちの1つを使用して前記多孔性表面を形成することをさらに含み、前記多孔性表面は、約1nm~約40nmの範囲内の平均サイズを有する複数の細孔を備える、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記第1の導管および前記第2の導管を結合することに先立って、前記第2の導管の放出端部の形状を修正することをさらに含む、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
当業者は、以下に説明される図面が例示目的のみのためであることを理解する。図面は、本出願人の教示の範囲をいかようにも限定することを意図されるものではない。
【0014】
図1図1は、概略図において、本出願人の教示の種々の側面に従った、質量分析計システムのエレクトロスプレーイオン源のためのインターフェースを備える例示的なシステムを図示する。
【0015】
図2図2は、概略図において、出願人の教示の種々の側面に従った、図1のシステム内での使用のための例示的なインターフェースを図示する。
【0016】
図3図3は、概略図において、出願人の教示の種々の側面に従った、図1のシステム内での使用のための別の例示的なインターフェースを図示する。
【0017】
図4図4は、概略図において、出願人の教示の種々の側面に従った、図1のシステム内での使用のための別の例示的なインターフェースを図示する。
【0018】
図5図5は、概略図において、出願人の教示の種々の側面に従った、図1のシステム内での使用のための別の例示的なインターフェースを図示する。
【0019】
図6図6A~Bは、教示の種々の側面に従った、エミッタ導管に分析導管を結合するための例示的な結合機構を描写する。
【0020】
図7図7A~Cは、出願人の教示の種々の側面に従った、エミッタ導管の放出端部の例示的な形状を図式的に描写する。
【0021】
図8図8は、出願人の教示の種々の側面に従った、エミッタ導管の放出端部の例示的な形状を図式的に描写する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
明確化のために、以下の議論は、省略することが簡便または適当である場合には、特定の具体的な詳細を省略する一方で、出願人の教示の実施形態の種々の側面を詳細に説明することを理解されたい。例えば、代替的な実施形態における同等または類似する特徴に関する議論が、幾分、短縮され得る。周知のアイデアまたは概念もまた、簡潔化のために、詳細には議論されない場合がある。当業者は、本明細書に説明される方法、システム、および装置が、非限定的な例示的な実施形態であり、出願人の開示の範囲が、請求項によってのみ定義されることを理解する。出願人の教示は、種々の実施形態と併せて説明されているが、出願人の教示が、そのような実施形態に限定されることは意図されない。むしろ、本出願人の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。1つの例示的な実施形態に関連して図示または説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。そのような修正および変形例は、出願人の開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0023】
本教示は、概して、エレクトロスプレーイオン化のために、サンプル源から導管を通してサンプル流を提供するための装置、システム、および方法に関する。種々の側面では、導管は、その中でのエレクトロスプレーイオン化のための、イオン化チャンバへのサンプル分離技法(例えば、CEおよびHPLC)において使用される分析導管(例えば、分析キャピラリ)であり得る。本教示の種々の側面によると、装置、システム、および方法は、エミッタ導管の中に低死容積かつ低インピーダンスの継続的流動を提供するように分析導管に結合され得るエミッタ導管の多孔性部分を介して、分析導管の出口端部においてサンプル流体に電気接続を提供することができる。分析導管および多孔性エミッタを別個に製造することによって、多種多様な分析およびエミッタキャピラリデバイスが、相互に利用されることができ、各導管が、特定の用途のために物理的および/または化学的に最適化される。種々の側面では、エミッタ導管は、例えば、放出端部に研磨を施して先端形状を最適化することによって、ESIエミッタとしての使用のために最適化され得る化学的物性を示す材料(例えば、高純度珪土)の厳密に制御されかつ調整可能な細孔構造を備えることができる一方で、分析導管は、(例えば、多孔性構造の形成および/またはエミッタ材料に適合し得ないコーティングプロセスを使用して)別個に最適化されることができる。加えて、下記に詳細に議論されるように、種々の側面では、電流がそこに提供され得るように、多孔性部分を囲繞する伝導性流体と接触する電極を提供することによって、電気信号が、多孔性エミッタ内のサンプル流体に印加される一方で、サンプル流体内の検体が電気化学的反応を受ける可能性、および/または、電解生成されたガスが分析流路を通して伝送される可能性を低減させることができる。
【0024】
図1は、出願人の教示の種々の側面に従った、サンプル源20から受容される検体をイオン化および質量分析するための例示的なシステム10のある実施形態を図式的に描写し、システムは、エミッタ導管の出口端部34bからイオン化チャンバ12の中に液体サンプルを放出するために、サンプル源20から第1の導管32(例えば、分析キャピラリ)を通してエミッタ導管34(例えば、エレクトロスプレーキャピラリ)の中にサンプル流を提供するインターフェース30を含む。図1に示されるように、例示的なシステム10は、エレクトロスプレーイオン化によって生成されるイオンの下流処理および/または検出のためのイオン化チャンバ12と流体連通する質量分析器70を含む。下記にさらに詳細に議論されるように、インターフェース30は、概して、(例えば、結合要素64を介して結合される)第1の導管32とエミッタ導管34との間の流体接合部の周囲に配置される筐体40を含み、筐体は、伝導性流体を包含する流体チャンバ42を画定し、伝導性流体を通して電流が通過されることができる。加えて、下記に議論されるように、エミッタ導管34は、電流がエミッタ導管34および/または第1の導管32内の液体サンプルの中に通過することができるように、流体チャンバ42内の電解流体と接触する多孔性区分を備えることができる。
【0025】
サンプル源20は、第1の導管32がエレクトロスプレーイオン化のためのサンプル流を受容するような種々の構成を有することができ、サンプル源に送達される(例えば、圧送される)流体サンプルを包含するリザーバ、注入部、液体クロマトグラフィ(LC)カラム、キャピラリ電気泳動(CE)デバイスを含み、キャリア液の中へのサンプルの注液部を介する。導管32、34は、種々の形状およびサイズを有することができ、同一または異なる材料から形成されることができる。いくつかの側面では、第1の導管32は、サンプル分離技法(例えば、CEおよびHPLC)のための分析導管としてのその機能を最適化するような材料および形状で作製されることができる一方、エミッタ導管34は、エレクトロスプレーエミッタとしてのその使用を最適化するような異なる材料および/または異なるように処理された材料で作製されることができる。したがって、本教示の種々の側面に従って、異なる導管32、34は、(例えば、図7A~Cおよび8A~Dを参照して以下に議論されるように)例えば、放出端部34bに研磨を施し、先端形状を最適化することによって、結合することに先立って異なるプロセスを受けることができる一方、分析導管は、(例えば、多孔性構造の形成および/またはエミッタ材料に適合し得ないコーティングプロセスを使用して)別個に最適化されることができる。実施例として、エミッタ導管34は、多孔性区分を通して流動する液体サンプルに電流が印加されることを可能にするように形成される多孔性区分を伴う、ESIエミッタとしての使用に適切な化学的物性を示す材料(例えば、高純度珪土)を備えることができる。多孔性区分の細孔は、例えば、機械的形成(例えば、機械的道具を用いたドリル加工)およびエッチングを含む種々の加工によって作製されることができる。いくつかの好ましい側面では、多孔性区分は、酸溶液または塩基溶液(例えば、HF溶液)でエッチングされることができ、エッチング時間は、酸溶液または塩基溶液の濃度に依存する。いくつかの側面では、例えば、エミッタ導管34は、非常に狭小な細孔サイズ分布を有する多孔性区分を生産するように酸で処理されることができる相分離ガラス材料から調製されることができる。細孔サイズは、相分離前のガラスの組成、および、酸処理の濃度ならびに持続時間を変動させることによって、調整されることができる。ある側面では、平均細孔サイズは、約1~約40nm、より好ましくは、2~20nm(例えば、約4nm)の範囲にあることができ、その結果、第2の導管34の多孔性区分は、エレクトロスプレーを支持するために要求される電流をイオンの通過が支持することを可能にするが、細孔は、細孔内にイオン二重層重複を生じさせ、流体チャンバ42から細孔を通して導管42の内側へ流体を駆動し得る電気浸透性流動を抑制させるために十分に小さくある。
【0026】
いくつかの側面では、実施例として、(例えば、約40nm~約100nmの範囲内の)より大きい平均細孔サイズが、代替として、流体チャンバ42からエミッタ導管34の中に伝導性流体を「補給流動」として意図的に押進させるために利用されることができ、その中で、添加剤もまた、液体サンプルに導入され得、エレクトロスプレーイオン化を向上させ、および/または、分離キャピラリから溶出するある検体と反応する。本教示に照らして当業者によって理解されるように、Debye二重層厚さの約10倍の平均細孔サイズを有する溶液含有誘電材料(例えば、珪土)にわたって電圧が印加されると、流体が、エミッタ導管の多孔性区分を通して移動することができる。
【0027】
第1の導管32およびエミッタ導管34はまた、種々の形状に形成されることができる。例示的な導管の横断面は、円筒形であるものとして描写されているが、それによって画定される導管および/またはマイクロチャネルが、他の断面形状(例えば、正方形、楕円形)を表し得ることを理解されたい。いくつかの側面では、種々の導管の外径および内径は、装置/用途の必要性を満たすように別個に選択されることができる。実施例として、エミッタ導管34は、細孔を通した電流の送達を最適化する一方で、なお、合致する内径を有する第1の導管32にエミッタ導管34が結合されることを可能にするように選択される外径および内径を有するように製造されることができる。非限定的な実施例として、エミッタ導管34は、低流率ナノLC用途において従来使用されるキャピラリの直径と合致するように、約100μm未満(例えば、約75μm、マイクロチャネルは、約15μm~約30μmの範囲内の直径を有する)の内径と、約300μm~約400μmほどの外径とを表すことができる。同様に、エミッタ導管34のサイズは、特定の用途に応じて、CE-MSにおいて利用されるキャピラリの直径と合致するように選択されることができる。
【0028】
図1に示されるように、エミッタ導管34は、筐体40から外に延在し、その中に液体サンプルを放出するためにイオン化チャンバ12内に配置される放出端部34bにおいて終端することができる。実施例として、エミッタ導管34の出口端部34bは、イオン化チャンバ12の中に脱着溶媒をアトマイズ、エアロゾル化、霧化、または他の態様で放出(例えば、噴霧)し、カーテンプレート開口14bおよび真空チャンバサンプリングオリフィス16bに向かって(例えば、これらの近傍に)概して指向される液体サンプルの複数の微小液滴を含むサンプルプルームを形成することができる。微小液滴中に含有される検体は、例えば、サンプルプルームが生成されるにつれて、イオン化(すなわち、荷電)されることができる。非限定的な実施例として、かつ、本明細書に他の態様で議論されるように、筐体40は、筐体内の伝導性流体と電気接触する電極と関連付けられることができ、エミッタ導管34の多孔性区分の細孔を介してエミッタ導管34内の液体サンプルに電気信号(例えば、電圧)を印加するように電気的に結合することに効果的である。したがって、微小液滴中の液体がイオン化チャンバ12内での脱溶媒和の間に蒸発するにつれて、裸の荷電検体イオンが放出され、開口14b、16bに向かってかつ開口14b、16bを通して引き寄せられ、(例えば、1つまたは複数のイオンレンズを介して)質量分析器70内に集束されるように、サンプルプルーム中に含有される微小液滴は、電極に印加される電圧によって荷電されることができる。図4を参照して下記に詳細に議論されるように、本教示のいくつかの側面では、加圧ガス(例えば、窒素、空気、または希ガス)の源は、エミッタ導管34の放出端部34bを囲繞しかつそこから放出される流体と相互作用する高速霧化ガス流動を供給し、例えば液体サンプルの高速霧化流動と噴射との相互作用を介して、14bおよび16bによってサンプリングするために、サンプルプルームの形成およびプルーム内でのイオン放出を向上させることができる。霧化ガスは、例えば、約0.1L/分~約20L/分の範囲内の種々の流率で供給されることができる。
【0029】
描写された実施形態では、イオン化チャンバ12は、大気圧に維持されることができるが、いくつかの実施形態では、イオン化チャンバ12は、大気圧より低い圧力に排気されることができる。イオン化チャンバ12内において、基質20から脱着された検体が、脱着溶媒がエレクトロスプレー電極64から放出されるにつれてイオン化され得、イオン化チャンバ12は、カーテンプレート開口14bを有するプレート14aによってガスカーテンチャンバ14から分離される。示されるように、質量分析器70を収容する真空チャンバ16が、真空チャンバサンプリングオリフィス16bを有するプレート16aによってカーテンチャンバ14から分離される。カーテンチャンバ14および真空チャンバ16は、1つまたは複数の真空ポンプポート18を通した排気によって、選択された圧力(例えば、同一または異なる亜大気圧、イオン化チャンバより低い圧力)に維持されることができる。
【0030】
本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法は、質量分析計システムの多くの異なる構成と併用されることができるが、質量分析器70が種々の構成を有し得ることもまた、本明細書の教示に照らして当業者によって理解される。概して、質量分析器70は、イオン源によって生成されたサンプルイオンを処理(例えば、フィルタリング、ソート、解離、検出など)するように構成される。非限定的な実施例として、質量分析器70は、三連四重極質量分析器、または、当技術分野において公知でありかつ本明細書の教示に従って修正される任意の他の質量分析器であり得る。本明細書に開示されるシステム、デバイス、および方法の種々の側面に従って修正され得る他の非限定的かつ例示的な質量分光計システムが、例えば、Rapid Communications in Mass Spectrometry(2003; 17: 1056-1064)に公開され、James W. HagerおよびJ. C. Yves Le Blancによって著された「Product ion scanning using a Q-q-Qlinear ion trap (Q TRAP(R)) mass spectrometer」と題された記事、および、「Collision Cell for Mass Spectrometer」と題された米国特許第7,923,681号に見出されることができ、これらは、その全体が参照により本明細書に援用される)。本明細書に説明されるものに限定されず、当業者に公知である他のものも含む他の構成もまた、本明細書に開示されるシステム、デバイス、ならびに方法と併せて利用されることができる。例えば、他の適切な質量分析器は、単一四重極、三連四重極、ToF型、トラップ型、およびハイブリッド型分析器を含む。例えば、イオン化チャンバ12と質量分析器70との間に配置されかつそれらの質量と電荷の比率ではなく高いおよび低い場における漂流ガスを通したそれらの移動性に基づいてイオンを分離するように構成されるイオン移動度分光計(例えば、微分移動度分光計)を含む任意の数の付加的な要素が、システム10内に含まれ得ることをさらに理解されたい。加えて、分析器70を通過するイオンを検出し得、かつ、例えば、検出された1秒あたりのイオンの数を示す信号を供給し得る検出器を質量分析器70が備え得ることを理解されたい。
【0031】
ここで、図2を参照すると、本出願人の教示の種々の側面に従った例示的なインターフェース230が、図式的に描写される。示されるように、インターフェース230は、筐体240を備え、その中で(例えば、液体サンプル源(例えば、CEデバイスまたはHPLCカラム)に流体的に結合される)第1の導管232と、第2の導管234とが流体的に結合される。すなわち、第1の導管232は、入口端部232aから出口端部232bに延在するチャネル(例えば、マイクロチャネル)を画定し、第2の導管は、入口端部234aから、開口部244において筐体240を通して延在する放出端部234bに延在するチャネル(例えば、マイクロチャネル)を画定する。第1の導管232および第2の導管234は、液体サンプルがマイクロチャネル間の流体接合部において第1の導管232から第2の導管234の中に流動するように、結合される。種々の側面では、例えば、第1の導管232および第2の導管234の内径を実質的に均等にさせる(例えば、非分散性流動を可能にする)ことによって、第1の導管232および第2の導管234のマイクロチャネル間のデッドスペースを最小限にさせることが、好ましくあり得る。いくつかの側面において、導管の外径もまた、例えば、結合要素264を介してそれらの整合および/または結合を容易にするために実質的に同等であり得ることを、本教示に照らして加えて理解されたい。種々の側面では、相互に結合するように構成される第1の導管232および第2の導管234の端部は、切断、切裂、かつ/または研磨され、液密な結合を維持するために役立ち得る。いくつかの側面では、例えば、個別の端部は、流体流の軸(すなわち、マイクロチャネルの中心長手方向軸)に略直交するように調製されることができる。
【0032】
結合要素264は、種々の構成を有することができるが、概して、第1および第2の導管232、234を相互に固着させるために有効である一方で、それらのマイクロチャネルの整合および流体結合を確実にする。図2に示されるように、例えば、接続要素264は、第1の導管232および第2の導管234の外径よりわずかにより大きい内径を有するスリーブを備えることができる。種々の側面では、接続要素264(例えば、スリーブ)は、適当な寸法に機械加工、押出、引張などされた非伝導性材料(例えば、プラスチック、セラミックなど)から作製される剛性な構成要素を備えることができる。部品を組み立てるために、導管232、234は、非限定的な実施例として、接続要素264内で整列されることができ、接着剤、クランプ機構、および/または、当技術分野において公知でありかつ本教示に従って修正される任意の他の機械的固定具を使用して、それに固定されることができる。図2の実施例に関して示されるように、結合要素264の上流(左)端部および下流(右)端部は、接着剤を利用して、導管232、234の外部表面に円周方向に固着(例えば、シール)されることができる。
【0033】
図1に関して上記に記載されたように、例示的な筐体240は、加えて、第2の導管234の多孔性領域を介して導管232、234内の液体サンプルに電流を伝送することが可能である伝導性流体を包含するように構成され得る流体チャンバ242を画定する。図2に描写される例示的導管234全体は、細孔を備えるが、細孔が、代替として、導管234の一部のみ(例えば、筐体240内に配置され、流体チャンバ242内に包含される伝導性流体と流体接触する導管234の一部)の中に形成され得ることを、本教示に照らして理解されたい。示されるように、筐体240の内側表面上の電極243は、電力源(例えば、DC電圧源)に結合され、電極243と接触する伝導性流体に電気信号を印加することができる。電極243と流体チャンバ242内の伝導性流体との間の接触が、導管234の外側で生じるため、サンプル流体中の検体は、電極243において電気化学的反応を受けないことを、本教示に照らして理解されたい。さらに、電極243における伝導性流体の酸化還元反応から生じる泡が、分析分離および/またはMS性能に(例えば、泡の放出に起因するイオン源における噴出によって生じる)影響を及ぼす可能性が低い。
【0034】
伝導性流体の固定された体積が、筐体240の流体チャンバ242内に包含されることができるが、種々の例示的実施形態では、伝導性流体送達導管242aは、伝導性流体のリザーバに、流体チャンバ242を流体的に結合させるために提供されることができ、それを通して伝導性流体が流体チャンバ242に送達され、流体チャンバ242内に伝導性流体を補充し得る。流体チャンバ242に提供され得る適切な伝導性流体は、全て非限定的な実施例として、水、酸性溶液または塩基性溶液(例えば、0.1%酢酸またはギ酸または酢酸アンモニウム溶液)を含む。
【0035】
ここで、図3を参照すると、本教示の種々の側面に従った別の例示的なインターフェース330が、描写される。インターフェース330は、図2に描写されるインターフェース230に類似するが、流体チャンバ342が(例えば、入口ポート342aを介して)伝導性流体のリザーバに、かつ、(例えば、出口ポート342bを介して)廃棄リザーバに流体的に結合されることを可能にし得る複数の伝導性流体ポート342a、bを筐体が備える点で異なる。このように、伝導性流体は、流体チャンバ342内で継続的に循環/補充されることができる。
【0036】
例示的インターフェース330はまた、第1の導管332および第2の導管334を継合する接続要素364(例えば、スリーブ)の少なくとも一部が、伝導性材料(例えば、金属)から作製され得る点で、図2のものと異なる。示されるように、接続要素364は、電力源に結合されることができ、したがって、流体チャンバ342内に包含される伝導性流体中およびエミッタ導管334内のサンプル流体中に電流を生成するための電極としての役割を果たすことができる。図2を参照して上記で議論されたように、導管234全体は、多孔性表面を備えるが、図3の導管334においては、筐体340内に配置され、流体チャンバ342内に包含される伝導性流体と流体接触する部分334aのみが、(例えば、珪土キャピラリのその領域を選択的にエッチングすることによって)多孔性領域として形成される。
【0037】
ここで、図4を参照すると、本教示の種々の側面に従った別の例示的なインターフェース430が、描写される。インターフェース430は、図3に描写されるインターフェース330に類似し、(例えば、入口ポート442aを介して)伝導性流体のリザーバに流体的に結合される流体チャンバ442を有するが、筐体440a、bが、2つの流体チャンバを画定し、それらの一方が伝導性流体を包含するためのものであり、かつ、他方がエミッタ導管434の放出端部に霧化ガスを提供するためのものである点で異なる。すなわち、図4に示されるように、筐体は、エミッタ導管434の多孔性区分434aと接触するように設置されるべき伝導性流体を包含する内側筐体440aと、内側筐体440aを少なくとも部分的に囲繞する外側筐体440bとを含む。接続要素464が、第1の導管432および第2の/エミッタ導管434を継合する。
【0038】
したがって、加圧ガスの源(図示せず)は、内側筐体440aと外側筐体440bとの間に形成されるガスチャンバ444に(例えば、入力ガスポート444aを介して)ガスを供給することができる。内側筐体440aが、(例えば、伝導性流体の漏出を防止するために)エミッタ434にシールされることができるのに対し、外側筐体440bは、ボア444bを備えることができ、ボア444bは、チャンバ444に供給されるガスが、ボア444bを通して流動し、エミッタ導管434の放出端部を囲繞することを可能にする。当業者によって理解されるように、霧化ガスは、エミッタ導管434からイオン化チャンバの中に放出されるサンプル液体と相互作用し、例えば、液体サンプルの高速霧化流動と噴射との相互作用を介して、サンプルプルームの形成およびプルーム内でのイオン放出を向上させることができる。霧化ガスは、(例えば、約0.1L/分~約20L/分の範囲内の)種々の流率で供給されることができる。
【0039】
ここで、図5を参照すると、本教示の種々の側面に従った別の例示的なインターフェースが、描写される。示されるように、インターフェース630は、筐体640a、bの2つの半体を備えることができ、筐体640a、bの2つの半体は、分析およびエミッタ導管(図示せず)の周囲に組み立てられ、導管を相互に整列ならびに固着させ得る。筐体640a、bは、成型されたプラスチックから作製されることができ、例えば、その各半体が、導管の外部表面形状に合致するように構成される半円筒形のチャネル664を画定する。種々の側面では、チャネル664は、導管の外部表面に対して圧縮し得る圧縮性材料(例えば、シリコーンまたは他の軟質ポリマー)で裏打ちされ、外部表面に対する確実な結合および/またはシールを提供することができる。本明細書において他の態様で議論されると、筐体640a、bは、その中に固着されると、エミッタ導管の多孔性区分の少なくとも周囲に、例えば、電極およびエミッタ導管の多孔性区分と接触する伝導性流体を包含するように構成される流体チャンバ642を画定することができる。そのような側面では、インターフェースは、一方の半体上の溝内に導管を設置することによって組み立てられることができ、他方の半体は、上に設置され、下半体に対して圧縮されることができる。したがって、シールが、導管の周囲に形成されることができ、2つの半体は、例えば、クリップまたはクランプを介して、相互に固着されることができる。いくつかの側面では、種々の要素(例えば、分析およびエミッタ導管、ガスチャンバ、電気接続など)が、微細加工された多岐管として組み立てられることができ、これは、構成要素ならびに統合された流体の数の低減を提供する。種々の側面では、電気接続が、微小流体デバイス上にパターン化され、デバイスへの(例えば、ポゴピンを介した)単純なドロップイン電気接続を可能にすることができる。
【0040】
上述されたように、第1の導管および第2の導管は、種々の様式(例えば、接着剤、機械的結合具、クランプ)で筐体内において相互に結合されることができる。ここで、図6A~Bを参照すると、本教示の種々の側面に従った別の例示的結合要素664が、描写される。図6Aに示されるように、初期状態において分析およびエミッタ導管632、634の外径より大きい内径を有する、熱収縮可能材料を含む円筒形スリーブが、提供されることができる。導管632、634を相互に結合するために、導管は、接続要素664内において整列させられ得、熱が、接続要素664の直径を低減させて導管の円周に対して圧縮させるために、印加され得る。そのような側面では、収縮プロセスは、導管632、634の整列を確実にするために役立ち得る。いくつかの側面において、接続要素664が、導管632、634の外径に対してわずかにより小さい内径を有する可撓性材料(例えば、ポリマー、エラストマなど)を含み得ることを本教示に照らして理解されたい。そのような側面では、接続要素664は、結合されるべき導管の端部の周囲に半径方向に拡張(例えば、伸展)されることができ、圧縮フィットを介してそれらの整列を保持することができる。付加的なシーラント(例えば、接着剤)もまた、接続要素を導管632、634に固着させるために提供されることができる。
【0041】
上述されたように、本教示の種々の側面に従った方法およびシステムが、サンプル導管(例えば、分析導管)および多孔性エミッタの別個の製造および最適化を可能にする。実施例として、エミッタ導管は、付随する悪影響を分析導管に及ぼすことなく、物理的および/または化学的に最適化されることができる。例えば、図7A~7Cに示されるように、例示的なエミッタ導管734の放出端部734bは、本明細書に他の態様で議論されるように、電圧が筐体内の伝導性流体に印加されると、噴霧器先端とMSオリフィスとの間に形成される電場ラインを調整するように、最適な先端形状に研削または研磨されることができる。すなわち、上記の図に示されるようなイオン化チャンバに面する平坦な表面に加えて、放出端部734bは、全て非限定的な実施例として、尖頭面(図7A)、丸みを帯びた面(図7B)、および、傾斜を付けられた面(図7C)の形状に形成されることができる。
【0042】
ここで、図8を参照すると、エミッタ導管734は、加えて、当技術分野において公知であるまたは今後開発される任意のコーティングプロセスを使用して、例えば、噴霧器表面の湿潤を低減させ、したがって、より効率的かつより非分散性であり得る狭小な円錐部内に放出を制限するように(図6)、放出端部734bにおいて修正されることができる。図8に示されるように、コーティング735が、放出端部734bの面735aならびにそこから軸方向に上流部分(例えば、部分735b)に適用されることができる。そのような例示的な処理は、Teflonのような表面を生成するために適用され得るTeflon AF等の液体および/またはガス相試薬を用いた処理を含む。エミッタ導管734全体が多孔性である例示的な側面では、反応物質(例えば、Teflon AF)は、化学的および機械的破壊に対してよりロバストである表面を生産するように、固体材料へのその遷移に先立って、細孔の中に浸透することができる。代替的には、表面は、例えば、選択された部分を分子レベルで珪土表面に付着させるためのクロロシラン化学的性質を採用し得る反応性化学アプローチを用いて処理され得る。これらは、液体またはガス試薬を用いて適用されることができる。これらの部分は、噴霧幾何学形状が最適化されるように、炭化水素、ハロゲン化炭素、または、分析流体との表面相互作用を制御するために所望されるような他の官能基を含み得る。上記のように、エミッタ導管734の多孔性性質は、追加されたロバスト性を提供することができる。同様に、本教示の種々の側面に従った方法およびシステムは、種々の処理プロセス(特に、エミッタ導管材料自体に従来適合していないもの、または、エミッタ導管内に多孔性領域を形成するための、その放出端部を成形するための、または、エミッタ導管の少なくとも一部を処理するための本明細書に説明されるプロセス)のうちのいずれかを利用する分析導管の別個の製造ならびに最適化を可能にする。
【0043】
上記に開示される種々のものおよび他の特徴ならびに機能、またはそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステムまたは用途に組み合わせられ得ることを理解されたい。また、それにおける種々の現在予測不可能または予期されていない代替、修正、変形例、または改良が、続いて、当業者によって成され得、その代替、変形例、および改良もまた、以下の請求項によって包含されることが意図されることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】