(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126815
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】筆記具セット
(51)【国際特許分類】
B43K 23/00 20060101AFI20230905BHJP
A45C 11/34 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B43K23/00 200E
A45C11/34 101A
A45C11/34 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101597
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2019104438の分割
【原出願日】2019-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2018168714
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊佑
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛史
(57)【要約】
【課題】繰り返しの着脱にもかかわらず係合力が低下しない筆記具セットを提供する。
【解決手段】筆記具セット1が、複数の筆記具40と、複数の筆記具40を整列させた状態で収容可能なケース2とを具備し、筆記具40の筆記部42側に第1係合部45が設けられ、ケース2の内部に第2係合部34が設けられ、第1係合部45及び第2係合部34が係合又は係合解除することによって、ケース2に対して筆記具40の各々が着脱可能である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の筆記具と、複数の筆記具を収容可能なケースとを有する筆記具セットが公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の筆記具セットは、3つの筆記具を有している。ケースは、一端が細長に開口している。ケースは、整列した3つの筆記具の後端部が開口端から突出するように、3つの筆記具を収容する。ケースの開口端の両端の各々には、軸線方向に延びるスリットが形成されている。ケースにおいて、2つのスリット間で対向して配置された2つの壁部は、スリットが広がるように、すなわちケースの開口が大きくなるように、弾性変形可能である。
【0003】
筆記具の各々の後端部近傍の側面には、突起が形成されている。筆記具が収容された状態で、筆記具の突起の各々に対応するケースの壁部には、小孔が形成されている。筆記具をケースに収容する際には、筆記具をケースに挿入するにしたがって、筆記具の突起が壁部を押圧し、それによって壁部が弾性変形する。突起が、ケースの小孔に到達して嵌合することによって、壁部の弾性変形が復元する。筆記具をケースから取り出す場合にも同様に壁部が弾性変形し、筆記具の突起が開口端を超えると、壁部の弾性変形が復元する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
筆記具の使用に際し、ケースに対して筆記具の収納及び取り出し、すなわち着脱が行われる。繰り返しの着脱によって、筆記具の突起が壁部の表面との摩擦により摩耗してしまう。特に、繰り返しの着脱によって、突起が開口の縁部によって削られる可能性もある。また、繰り返しの着脱によって、ケースのスリット、すなわち壁部が塑性変形し、開口が大きくなったままになってしまう。これらの結果、筆記具とケースとの嵌合力又は係合力が低下し、筆記具がケースから意図せず外れてしまう虞がある。また、筆記具の側面、特に後端部近傍の側面という目立つ位置に突起が設けられていることから、筆記具の軸筒の形状上の制約、及び、模様等の意匠上の制約がある。
【0006】
本発明は、繰り返しの着脱にもかかわらず係合力が低下しない筆記具セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の筆記具と、前記複数の筆記具を整列させた状態で収容可能なケースとを具備する筆記具セットであって、前記筆記具の筆記部側に第1係合部が設けられ、前記ケースの内部に第2係合部が設けられ、前記第1係合部及び前記第2係合部が係合又は係合解除することによって、前記ケースに対して前記筆記具の各々が着脱可能であることを特徴とする筆記具セットが提供される。
【0008】
スライド部材をさらに具備し、前記第2係合部が前記スライド部材に設けられ、前記ケースが操作部を有し、前記操作部の操作によって、前記スライド部材が後方に移動し、前記筆記具の取出状態となるようにしてもよい。
【0009】
前記複数の筆記具が、熱変色性の筆記具と熱変色性ではない筆記具とを含むようにしてもよい。その際は、前記熱変色性の筆記具の筆記具本体の曲げ弾性率と、前記熱変色性ではない筆記具の筆記具本体の曲げ弾性率とが、300MPa以上異なる、好ましくは2倍以上異なるようにしてもよい。それによって、筆記の際に筆記具本体に掛かる筆記感が異なるため、熱変色性の筆記具と熱変色性でない筆記具との違いを認識することができる。なお、曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠した測定によって求めることができる。
【0010】
また、前記複数の筆記具が、異なる無彩色のインクを収容した少なくとも2つの筆記具を含み、前記無彩色のインクの描線濃度が濃い方の前記筆記具の筆記具本体を黒色とし、前記インクの描線濃度が薄い方の前記筆記具の筆記具本体を黒色以外の色としてもよい。筆記具本体の各々の色を黒色と黒色以外の色(例えば黒色より明度の高い無彩色である灰色や白色)とすることで、色盲の人にとっても、収容されたインク色の認識が容易となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、繰り返しの着脱にもかかわらず係合力が低下しない筆記具セットを提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による筆記具セットの筆記具の収容状態の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の筆記具セットの筆記具の取出状態の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1の筆記具セットの前端部の拡大縦断面図である。
【
図9】
図9は、
図8とは別の角度から見た筆記具セットの拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による筆記具セット1の筆記具40の収容状態の斜視図であり、
図2は、
図1の筆記具セット1の別の斜視図であり、
図3は、
図1の筆記具セット1の筆記具40の取出状態の斜視図である。また、
図4は、筆記具40の斜視図である。
【0015】
筆記具セット1は、ケース本体10と、カバー部材20と、後述するスライド部材30と、3つの筆記具40と、クリップ部材50とを有している。クリップ部材50は、ケース本体10の開口端側の側面に接着等によって取り付けられている。
【0016】
カバー部材20は、ケース本体10に対して着脱可能に取り付けられ、ケース本体10の閉鎖端側の側面に形成された略矩形の開口を覆っている。それによって、ケース本体10とカバー部材20とスライド部材30とは、ケース2を構成する。ケース2は、一端が開口し且つ他端が閉鎖されている。ケース2は、3つの筆記具40を整列させた状態で収容可能に構成されている。ケース2は、2つ又は4つ以上の筆記具40を収容可能となるように構成されていてもよい。
【0017】
カバー部材20には、操作部21が設けられている。後述するように、筆記具セット1は、
図1に示された筆記具40の収容状態において、操作部21を操作することによって、
図3に示された筆記具40の取出状態となる。この状態で、使用者は、筆記具40の突出した端部を把持することによって、筆記具40をケース2から取り出すことができる。
【0018】
なお、
図13に示されるように、ケース2においてクリップ部材50を省略してもよい。この場合、クリップ部材50を配置すべき場所であるケース本体10に設けられた浅い凹部内の平坦面13が露出する。平坦面13に対し、模様や文字等の意匠を施すことができる。この場合、文字の記載された透明なフィルムを平坦面13に対して転写印刷することによって、平坦面13に文字を付与しても容易に剥がれないようにすることができる。例えば、平坦面13に、ノベルティとして配布するため、会社名等の名入れを施してもよい。また、平坦面13は、凹部内ではなく、ケース本体10の側面と面一に形成としてもよい。
【0019】
筆記具40は、筒状に形成された筒状部材である筆記具本体41と、筆記具本体41の一端に設けられた筆記部42と、軸線方向において筆記具本体41の筆記部42側の外周面に設けられた把持部43と、筆記具本体41の他端に設けられた識別部44とを有している。軸線方向において筆記具40の筆記部42側、詳細には筆記部42の近傍には、環状の突起である第1係合部45が形成されている。複数の筆記具40は、筆記部42の各々がケース2の内部に収容されるように、揃えてケース2内に収容される。
【0020】
本明細書中では、筆記具40の軸線方向において、筆記部42側を「前」側と規定し、筆記部42とは反対側を「後」側と規定する。また、ケース2の軸線方向において、筆記具40が収容された状態で、筆記具40の筆記部42が配置される側、すなわち閉鎖端側を「前」側と規定し、筆記部42とは反対側、すなわち開口端側を「後」側と規定する。
【0021】
筆記具40は、ケース2に収容可能な略同一外形、特に整列させた状態で収容可能な外形を有する限りにおいて、任意の筆記具及び筆記具の組み合わせを採用し得る。特に、筆記具40は、相対的に同一箇所に第1係合部45が形成されている限りにおいて、任意の形状を採用し得る。また、筆記具40は、熱変色性インクを収容し且つ一端に筆記部42を備えた筆記体であるリフィルを、筆記具本体41内に収容した熱変色性のボールペン等の熱変色性の筆記具であってもよい。また、筆記具40は、ボールペン、サインペン、マーカーペン、シャープペンシル、筆ペン及び万年筆等の熱変色性ではない筆記具であってもよい。例えば、筆記具セット1に収容される複数の筆記具40が、少なくとも1つの熱変色性の筆記具と少なくとも1つの熱変色性ではない筆記具とを含んでもよい。
【0022】
筆記具セット1に収容される複数の筆記具40を識別するため、筆記具40の各々の後部が、互いに異なる形状又は模様等を備えた識別部44を有している。例えば、識別部44として、
図4に示されるような環状の溝の数や溝内の色が異なるようにすることで、筆記具40の各々を識別させてもよい。例えば、環状の溝が1つの筆記具40を熱変色性ボールペンとし、環状の溝が2つの筆記具40を熱変色性マーキングペンとし、環状の溝が3つの筆記具40を非熱変色性ボールペンとして、組み合わせてもよい。同様に、筆記具セット1に収容される複数の筆記具40を識別するため、筆記具40の各々が、互いに異なる形状又は模様等の把持部43を有するようにしてもよい。
【0023】
筆記具セット1に収容される複数の筆記具40が、異なる無彩色のインクを収容した少なくとも2つの筆記具40を含んでもよい。インクの描線濃度が濃い方の筆記具40の筆記具本体41を黒色とし、インクの描線濃度が薄い方の筆記具40の筆記具本体41を黒色以外の色、例えば灰色又は白色としてもよい。筆記具本体41の黒色は目視にて判定する。筆記具本体41の各々の色を黒色と黒色以外の色とすることで、色盲の人にとっても、収容されたインク色の認識が容易となる。
【0024】
ここで、無彩色のインクとは、黒色、灰色、白色であり、具体的にはL*a*b*表色系に準拠した色空間のうちの、a*及びb*が本発明では-5~5の範囲内である色のことを意味する。無彩色のインクの測定方法として、筆記具40内のインクをバーコータ(RDS06、株式会社安田精機製作所)を用いて、クラークケント紙(連量160kg)に展色し、展色した試料をJIS Z 8781-4:2013に準拠した測定によりL*、a*、b*が求められる。測定には、分光測色計(SC-T(P)、スガ試験機社製)を用い、光学条件:拡散照明8°受光d8方式(正反射を除く)、光源:12V50Wハロゲンランプ、測色条件:D65光、2°視野、測定温度:-30℃、測定領域:5φ(3か所測定の平均)によって求めることができる。
【0025】
インクの描線濃度は、明度値で評価し、汎用型色差計(TC-8600A、東京電色株式会社製)等の測定装置を用いてマンセル表色系を使用し、-30℃下での紙面(旧JIS P3201:化学パルプ100%を原料に抄造された上質紙、坪量範囲40~157g/m2、白色度75.0%以上)上に筆記速度4.5m/min、ピッチ間隔0.1mmで筆記した描線上を測定する。明度値の高い方を描線濃度が濃い方のインクであると評価する。
【0026】
筆記具セット1に収容される複数の筆記具40が、熱変色性の筆記具40と熱変色性ではない筆記具40とを含む場合、熱変色性の筆記具40の筆記具本体41の曲げ弾性率と、熱変色性ではない筆記具40の筆記具本体41の曲げ弾性率とが、300MPa以上異なる、好ましくは2倍以上異なるようにしてもよい。それによって、筆記の際に筆記具本体41に掛かる筆記感が異なるため、熱変色性の筆記具40と熱変色性でない筆記具40との違いを認識することができる。なお、曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠した測定によって求めることができる。
【0027】
図5は、
図1の筆記具セット1の縦断面図である。また、
図6は、スライド部材30の斜視図である。ケース本体10は、内部の前端面に形成された2つの保持突起11と、対向する壁部に形成された2つのガイド突起12とを有している。保持突起11の各々は、スプリング51の一端を保持するように構成されている。ガイド突起12は、軸線方向に沿って延び、ケース2に挿入される筆記具40の前後方向の移動をガイドするように構成されている。
【0028】
ケース本体10の内部には、スライド部材30が、前後方向に移動可能に配置されている。スライド部材30の前後方向の移動は、後述するように、ケース本体10に取り付けられたカバー部材20によって、所定の範囲内に規制されている。
【0029】
スライド部材30には、後方に面して軸線方向に延びる、整列した3つの挿入孔31が形成されている。挿入孔31の各々は、ケース2に挿入された対応する筆記具40の前端部を受容可能に構成されている。また、スライド部材30には、両端の挿入孔31に対応する位置に、前方に面して軸線方向に延びる2つの保持孔32が形成されている。保持孔32の各々は、スプリング51を受容可能に構成されている。保持孔32に受容されたスプリング51の一端は、保持孔32の環状の底面である支持面33によって支持される。したがって、スプリング51の前端は保持突起11によって保持され、スプリング51の他端は支持面33によって支持される。それによって、スライド部材30は、2つのスプリング51によって常に後方に付勢されている。
【0030】
図6を参照しながらスライド部材30についてさらに説明する。挿入孔31の各々の開口端近傍の内周面には、周方向に沿って均等に配置された4つの突起からなる第2係合部34が形成されている。ケース2内において、カバー部材20の操作部21に対応するスライド部材30の側面には、係止片35が設けられている。係止片35は、貫通するU字状溝36によって画成されており、後方に向かって延びる梁状の部材である。係止片35の後端面には、第1係止面37が形成されている。また、係止片35の表面には、後方に向かって傾斜する傾斜面38が形成されている。さらに、スライド部材30の後端面には、2つの凹部又は2つの突起によって画成された2つの第2係止面39が形成されている。
【0031】
図7は、カバー部材20の斜視図である。
図7の斜視図では、カバー部材20を内側から見ている。カバー部材20には、上述したように、操作部21が設けられている。具体的には、操作部21は、貫通する円弧状溝22によって画成されており、後方に向かって延びる梁状の部材である。操作部21の後端部の内面には、円弧状の突起23が形成されている。突起23の後方のカバー部材20の内面には、軸線方向に沿って後方に延び且つ平行な2つのリブ突起24が形成されている。リブ突起24の各々の前端面には、第1被係止面25が形成されている。リブ突起24の中間部には、凹部26が形成されている。スライド部材30の第2係止面39に対応するカバー部材20の後端部の内面には、2つの突起によって画成され且つ前方に面した2つの第2被係止面27が形成されている。
【0032】
図8は、
図1の筆記具セット1の前端部の拡大縦断面図であり、
図9は、
図8とは別の角度から見た筆記具セット1の拡大縦断面図である。
図10は、
図3の筆記具セット1の前端部の拡大縦断面図であり、
図11は、
図10とは別の角度から見た筆記具セット1の拡大縦断面図であり、
図12は、
図11とは別の位置における筆記具セット1の拡大縦断面図である。
【0033】
図1、
図8及び
図9は、三本のボールペンである筆記具40の収容状態での筆記具セット1を示している。収容状態では、スライド部材30は、ケース2内において前進した位置にある。したがって、筆記具40の後端部は、使用者が筆記具40を把持して取り出すことはできない程度に、僅かばかりケース2の開口端から突出している。このとき、筆記具40の後端部は、突出していなくてもよい。
【0034】
特に
図9を参照すると、筆記具40の収容状態においては、スライド部材30は、スプリング51の付勢力に抗して、ケース2に対して係止している。すなわち、後方に付勢されたスライド部材30は、係止片35の第1係止面37が、カバー部材20の第1被係止面25に対して係止している。それによって、スライド部材30の後方への移動が規制されている。
【0035】
筆記具40の収容状態で、操作部21を操作することによって、スライド部材30が後方に移動し、筆記具40の取出状態となる。本実施形態において、操作部21の操作とは、操作部21の押圧である。操作部21を押圧すると、操作部21によって押圧された係止片35が内方に撓み、係止片35の第1係止面37とカバー部材20の第1被係止面25との係止が解除される。その結果、スプリング51の付勢力によって、スライド部材30は後方に移動し、筆記具40の取出状態となる。
【0036】
図3、
図10乃至
図12は、筆記具40の取出状態の筆記具セット1を示している。取出状態では、スライド部材30は、ケース2内において後退した位置にある。したがって、筆記具40の後端部は、ケース2の開口端から突出しており、使用者は、任意の筆記具40を把持して取り出すことができる。
【0037】
特に
図11を参照すると、筆記具40の取出状態においては、スライド部材30は、スプリング51のさらなる付勢力に抗して、ケース2に対して係止している。すなわち、後方に付勢されたスライド部材30は、第2係止面39が、カバー部材20の第2被係止面27に対して係止している。それによって、スライド部材30の後方へのさらなる移動が規制されている。言い換えると、収容状態から取出状態への遷移におけるスライド部材30の後方への移動は、スライド部材30の第2係止面39がカバー部材20の第2被係止面27に衝突することによって、停止する。
【0038】
収容状態から取出状態への遷移におけるスライド部材30の後方への移動は、傾斜面38とカバー部材20の突起23との摩擦抵抗によって制動される。すなわち、スライド部材30の後方への移動中は、スライド部材30の傾斜面38とカバー部材20の突起23とは、常に当接している。さらに、スライド部材30が後方に向かって傾斜する傾斜面38を有していることから、スライド部材30が後方に移動すれば移動するほど、カバー部材20の突起23は、より傾斜面38に対して押し当てられる。その結果、スライド部材30は後方に行くにしたがって減速し、取出状態への遷移が完了する。こうした減速作用によって、スライド部材30の衝突による急停止が防止されることから、衝撃による部品の損傷や、筆記具40が慣性力によって意図せずケース2から飛び出すことが防止される。
【0039】
図12を参照すると、筆記具40の取出状態では、スライド部材30の係止片35は、カバー部材20の凹部26内に収容されている。すなわち、操作部21の押圧による係止片35の内方への撓みは、復元している。すなわち、収容状態及び取出状態では、係止片35に対して、不要な力は加わっていない。したがって、係止片35が、長時間に亘り変形した状態となることが防止され、係止片35の塑性変形が防止される。
【0040】
なお、操作部の操作として、押圧ではなく、他の操作を行うことによって、収容状態及び取出状態を変更できるようにしてもよい。例えば、操作部の操作として、操作部を前後方向へスライドさせることによって、スライド部材30を前後に移動させるように構成してもよい。
【0041】
筆記具40の各々は、筆記具40の第1係合部45、及び、ケース2、すなわちスライド部材30の第2係合部34が係合又は係合解除することによって、ケース2に対して着脱可能である。すなわち、筆記具40の第1係合部45は、筆記具40がスライド部材30の挿入孔31に挿入されるとき、筆記具40が強く押し込まれることによって、第2係合部34を乗り越える。その結果、第1係合部45及び第2係合部34は、軽い力では抜けないように、互いに係合する。他方、筆記具40の第1係合部45は、筆記具40がケース2から取り出されるとき、筆記具40が強く引っ張られることによって、再び第2係合部34を乗り越える。その結果、第1係合部45及び第2係合部34は、係合解除する。
【0042】
筆記具セット1では、軸線方向において筆記具40の筆記部42側、特に筆記部42の近傍に第1係合部45が設けられ、対応する第2係合部34がケース2の内部に設けられていることによって、筆記具40の繰り返しの着脱にもかかわらず、係合力が低下しないという効果を奏する。また、第1係合部45及び第2係合部34は、筆記具40の繰り返しの着脱において、他の部品等と当接することがなく、したがって摩耗が生じ難いという効果も奏する。さらに、軸線方向において筆記具40の筆記部42側、特に筆記部42の近傍に第1係合部45が設けられていることによって、筆記具40の筆記具本体41の形状上の制約、及び、模様等の意匠上の制約がないという効果も奏する。
【0043】
第1係合部及び第2係合部は、上述した効果を奏し且つ互いに係合及び係合解除できる限りにおいて、任意の構成を採用し得る。例えば、第1係合部45を、周方向に沿って均等に配置された複数の突起とし、第2係合部34を環状の突起としてもよい。また、第1係合部及び第2係合部の一方を突起とし、第1係合部及び第2係合部の他方を突起と対応する凹部としてもよい。
【0044】
【0045】
クリップ部材50は、一枚の金属製の板材を略U字状に変形させることによって形成される。クリップ部材50は、ケース本体10の側面に取り付けられる取付板51と、取付板51との間で物品を把持する把持板52とを有している。把持板52の後端部は、取付板51に対して離間する方向に屈曲した屈曲部52aが形成されている。クリップ部材50が屈曲部52aを有することによって、取付板51と把持板52との間への紙等の物品の挿入が容易になる。
【0046】
把持板52の前側には、クリップ部材50の中心線に沿って延びる角丸長方形状の開口部53が形成されている。取付板51には、開口部53から露出し且つ開口部53の前端部に対応する位置から開口部53の後端部を超えて中心線に沿って後方へ延びる、凸部54が形成されている。凸部54は、
図17に示されるように、取付板51の反対側の面に微小凹部51aを形成することによって、形成される。凸部54が、取付板51に形成されていることによって、取付板51の反り等の変形に対する強度を増すことができる。したがって、クリップ部材50をケース本体10に取り付ける際に、例えば接着する際に、接着面に加わる応力等によって取付板51が変形してしまうのを防止することができる。
【0047】
図18に示されるように、開口部53の後端部近傍において、取付板51の凸部54と把持板52とは離間している。そのため、凸部54の長さ方向に亘り、凸部54と把持板52とは、当接しておらず離間している。言い換えると、開口部53は、凸部54と把持板52とが当接しないように、すなわち当接を防止するように、形成されている。したがって、開口部53及び凸部54以外の場所、例えば凸部54の左右の端縁(
図14において凸部54の上下に位置する端縁)において、物品をしっかりと把持できるよう、取付板51及び把持板52を密着して構成することができる。さらに、
図17に示された断面図を参照すると、凸部54が、僅かばかり開口部53内に突出していることから、厚みの薄い紙等を把持した場合、紙等が凸部54の形状に倣って変形し、紙等をよりしっかりと把持することができる。
【0048】
凸部54は、取付板51の変形を防止できる限りにおいて、複数であってもよく、取付板51における配置及び形状を任意に採用し得る。また、対応する開口部53は、把持板52と凸部54とが当接しないように形成され、且つ、取付板51及び把持板52との間の密着性を確保できる限りにおいて、任意の形状で形成し得る。
【0049】
ケース2、すなわちケース本体10及びカバー部材20の材料は、ABS、ポリカーボネート等の硬質プラスチックとすることが好ましい。
【0050】
筆記具本体41の材料は、ケース2の材料と異なり且つケース2の材料よりも軟質なプラスチック材料である。具体的に説明するとポリプロピレン系樹脂を50質量%以上使用するものであり、引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上であることが必要である。この特性により、熱変色性インクにより形成された筆跡を、擦過して変色又は消色させる際の抵抗感が少なく、また、軽い力でも十分な摩擦熱が得られ、さらに、細かい部分の消去等も可能となるものである。
【0051】
用いることができるポリプロピレン系樹脂は、軸の基材となるものであり、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと他の少量のα-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテン等)との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む。);などを挙げることができる。上記ポリプロピレン系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記ポリプロピレン系樹脂を軸全量中、50質量%以上使用することにより、効果を発揮できるものであり、該ポリプロピレン系樹脂が50質量%未満であると、効果を発揮できない。
【0052】
上記ポリプロピレン系樹脂以外に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリエチレン、アイオノマーなどが挙げられる。これらの樹脂は、効果をさらに発揮せしめる点から、軸全量中、0.5~30質量%とすることが好ましい。
【0053】
さらに、好ましくは、粘着性を調整し、軽い力でも十分な摩擦熱を発揮せしめる点から、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有させることができる。これらの樹脂の中で、分子量が数百から数千のものが選ばれ、主成分となるポリプロピレン系樹脂の配合系に配合することによって軸に粘着性を付与せしめ、効果をさらに発揮せしめることができる。具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂などの分子量が好ましくは、500~5000、より好ましくは700~4000の上記各種樹脂が使用できる。
【0054】
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジンのグリセリン、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられ、テルペン系樹脂としては、α-ピネン系、β-ピネン系、ジペンテン系等のテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、更なる安定性の観点から、重合ロジン、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
【0055】
石油系樹脂は、例えば、石油化学工業のナフサの熱分解により、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎原料とともに副生するオレフィンやジオレフィン等の不飽和炭化水素を含む分解油留分を混合物のままフリーデルクラフツ型触媒により重合して得られる。該石油系樹脂としては、ナフサの熱分解によって得られるC5留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂、ナフサの熱分解によって得られるC9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、前記C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、水素添加系,ジシクロペンタジエン系等の脂環式化合物系石油樹脂、スチレン,置換スチレン,スチレンと他のモノマーとの共重合体等のスチレン系樹脂等の石油系樹脂が挙げられる。ナフサの熱分解によって得られるC5留分には、通常1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエンなどのジオレフィン系炭化水素等が含まれる。また、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂とは、ビニルトルエン、インデンを主要なモノマーとする炭素数9の芳香族を重合した樹脂であり、ナフサの熱分解によって得られるC9留分の具体例としては、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、γ-メチルスチレン等のスチレン同族体やインデン、クマロン等のインデン同族体等が挙げられる。商品名としては、三井化学製ペトロジン、ミクニ化学製ペトライト、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー、東ソー製ペトコール、ペトロタック等がある。
【0056】
さらに、前記C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂が、粘着性、粘着持続性を高度に両立する樹脂として、好適に使用される。変性石油樹脂としては、不飽和脂環式化合物で変性したC9系石油樹脂、水酸基を有する化合物で変性したC9系石油樹脂、不飽和カルボン酸化合物で変性したC9系石油樹脂等が挙げられる。好ましい不飽和脂環式化合物としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなど、また、アルキルシクロペンタジエンのディールスアルダー反応生成物として、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン/メチルシクロペンタジエン共二量化物、トリシクロペンタジエン等が挙げられ、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。ジシクロペンタジエン変性C9系石油樹脂は、ジシクロペンタジエンおよびC9留分両者の存在下、熱重合等で得ることができる。ジシクロペンタジエン変性C9系石油樹脂としては、例えばJX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー130Sが挙げられる。
【0057】
また、水酸基を有する化合物としては、アルコール化合物やフェノール化合物が挙げられる。アルコール化合物の具体例としては、例えば、アリルアルコール、2-ブテン-1,4ジオール等の二重結合を有するアルコール化合物が挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、p-t-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール等のアルキルフェノール類を使用できる。これらの水酸基含有化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0058】
水酸基含有C9系石油樹脂は、石油留分とともに(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を熱重合して石油樹脂中にエステル基を導入した後、該エステル基を還元する方法、石油樹脂中に二重結合を残存又は導入した後、当該二重結合を水和する方法、等によっても製造できる。
【0059】
また、水酸基含有C9系石油樹脂として、前記のように各種の方法により得られるものを使用できるが、性能面、製造面から見て、フェノール変性石油樹脂等を使用するのが好ましく、フェノール変性石油樹脂は、C9留分をフェノールの存在下でカチオン重合して得られ、変性が容易であり、低価格である。フェノール変性C9系石油樹脂としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー-E-130が挙げられる。
【0060】
さらに、不飽和カルボン酸化合物で変性したC9系石油樹脂としては、C9系石油樹脂をエチレン性不飽和カルボン酸で変性したものを使用することができる。かかるエチレン性不飽和カルボン酸の代表的なものとして、(無水)マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、テトラヒドロ(無水)フタール酸、(メタ)アクリル酸またはシトラコン酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸変性C9系石油樹脂は、C9系石油樹脂及びエチレン系不飽和カルボン酸を熱重合することで得ることができる。ここでは、マレイン酸変性C9系石油樹脂が好ましい。
【0061】
不飽和カルボン酸変性C9系石油樹脂としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー160が挙げられる。また、ナフサの熱分解によって得られるC5留分とC9留分の共重合樹脂を好適に使用することができる。ここでC9留分としては、特に制限はないが、ナフサの熱分解によって得られたC9留分であることが好ましい。具体的には、SCHILL&SEILACHER社製StruktolシリーズのTS30、TS30-DL、TS35、TS35-DL等が挙げられる。
【0062】
前記フェノール系樹脂としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、具体的にはノボラック型アルキルフェノール樹脂である商品名ヒタノール1502(日立化成工業社製)、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂である商品名コレシン(BASF社製)等が挙げられる。また、石炭系樹脂としては、クマロンインデン樹脂等が挙げられ、キシレン系樹脂としては、キシレンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。その他ポリブテンも粘着付与性を有する樹脂として使用することができる。これらの樹脂の中で、粘着性、粘着持続性の観点から、C5留分とC9留分の共重合樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂及びクマロンインデン樹脂が好ましい。
【0063】
これらの樹脂は、軟化点が200℃(測定法:ASTM E28-58-T)以下であることが好ましく、さらには80~150℃の範囲であることが好ましい。軟化点が200℃を超えると、加工性を悪化させる場合があり、また、80℃未満では粘着性能が劣る場合がある。これらの観点から軟化点は90~120℃の範囲がより好ましい。上記樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0064】
これらの粘着性を調整する目的で用いる上記ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂の配合量は、効果をさらに発揮せしめる点から、軸全量中、好ましくは、0.05~20質量%、さらに好ましくは、0.05~10質量%とすることが好ましい。
【0065】
さらには、上記ポリプロピレン系樹脂などの他、粘着性を調整する目的で用いる上記樹脂以外に、効果を損なわない範囲で、所望により、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤(例えば、ステアリン酸、及びシリコンオイルなど)、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(例えば、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウァラステナイト、及びクレーなど)、発泡剤(有機系、無機系)、抗菌剤(例えば、イミダゾール系、フェノール系、銀など)及び難燃剤(例えば、水和金属化合物、赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、アンチモン化合物、及びシリコーンなど)などの任意成分を適宜量含ませることができる。また、軸の材料に対して、さらに、アルキルスルホン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを含有させもよい。軸に、アルキルスルホン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを含むことによって、さらに、紙面を傷めず且つ印刷文字等を掠れさせることなく、筆跡の消去等が可能となる。製造は、上記ポリプロピレン系樹脂などを用いて、例えば、押出成形、射出成形などの方法により製造することができる。
【0066】
耐久性を付与する場合は、効果を発揮せしめる点から、引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上とすることが必要であり、好ましくは、80~5000MPaとすることが好ましい。この引張弾性率が70MPa未満であると、効果を発揮できなくなり、好ましくない。この軸の引張弾性率が70MPa以上とするには、用いるポリプロピレン系樹脂の種類、配合量、その他の樹脂種、その含有量等を好適に組み合わせることにより調整することができる。
【0067】
さらに好ましくは、効果をさらに発揮せしめ、抵抗感を小さくする点から、軸の永久伸び(JIS K6273:2006)を50%以上、特に好ましくは、50~100%とすることが好ましい。ここで規定する「永久伸び」とは、試験片を2倍に伸長した状態で23℃、6時間保持した後、応力を取り除く。伸びた長さを伸長前の長さで除した値(%)をいう。
【0068】
上述したように、リフィル2は、熱変色性色材を含有する熱変色性インクを収容したリフィルとしてもよい。この場合、筆記具40は熱変色性の筆記具であり、筆記具本体41を消去部材としての摩擦体としてもよい。筆記具40による筆跡は、筆記具本体41、例えば筆記具本体41の後端部や筆記部42近傍のテーパ部によって擦過した際に生じる摩擦熱等によって、熱変色可能である。
【0069】
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた両頭式筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【0070】
熱変色性色材となる熱変色性マイクロカプセル顔料としては、摩擦熱等の熱により変色するもの、例えば、有色から無色、有色から有色、無色から有色などとなる機能を有するものであれば、特に限定されず、種々のものを用いることができ、少なくともロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、マイクロカプセル化したものが挙げられる。
【0071】
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等を、単独(1種)で又は2種以上で混合して(以下、単に「少なくとも1種」という。)用いることができる。
【0072】
具体的には、6-(ジメチルアミノ)-3,3-ビス[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1(3H)-イソベンゾフラノン、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジメチルアミノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジブチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-エチルイソアミルアミノフルオラン、2-メチル-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(N-フェニル-N--メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(3’-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、3-ジ(n-ブチル)アミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、メチル-3’,6’-ビスジフェニルアミノフルオラン、クロロ-3’,6’-ビスジフェニルアミノフルオラン、3-メトキシ-4-ドデコキシスチリノキノリン、などが挙げられる。
【0073】
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
【0074】
用いることができる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものであり、例えば、フェノール樹脂系化合物、サリチル酸系金属塩化物、サリチル酸樹脂系金属塩化合物、固体酸系化合物等が挙げられる。
【0075】
具体的には、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1-フェニル-1,1-ビス( 4’-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ノナンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0076】
用いる顕色剤の使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、上述したロイコ色素1質量部に対して、0.1~100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
【0077】
用いることができる変色温度調整剤は、上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。用いることができる変色温度調整剤は、具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
【0078】
より具体的には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジカプリレート(C7H15)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジラウレート(C11H23)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジミリステート(C13H27)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタンジミリステート(C13H27)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジパルミテート(C15H30)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタンジベヘネート(C21H43)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエチルヘキシリデンジミリステート(C13H27)等の少なくとも1種が挙げられる。
【0079】
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1~100質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
【0080】
熱変色性マイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を含む熱変色性組成物を、平均粒子径が0.2~5μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
【0081】
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、イソシアネート系樹脂溶液などを徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
【0082】
これらのロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、当該色素1に対して、質量比で顕色剤0.1~100、変色温度調整剤1~100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1~1である。
【0083】
熱変色性マイクロカプセル顔料は、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度(例えば、0℃以上で発色)、消色温度(例えば、50℃以上で消色)を好適な温度に設定することができ、摩擦熱等の熱により有色から無色となることが好ましい。
【0084】
熱変色性マイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がウレタン樹脂、ウレア/ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、あるいはアミノ樹脂で形成されることが好ましい。ウレタン樹脂としては、例えば、イソシアネートとポリオールとの化合物が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂とアミンの化合物が挙げられる。アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。マイクロカプセル色材の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
【0085】
熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性、インク中での流動性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制、後述する光変色性マイクロカプセル顔料との相用性などの点から、好ましくは、0.2~5μm、さらに好ましくは、0.3~3μmである。なお、ここで規定する「平均粒子径」は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社製)〕にて、平均粒子径(50%径)を測定(屈折率1.8)した値である。
【0086】
この平均粒子径が0.2μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、5μmを越えると、筆記性の劣化、熱変色性マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、振動によるインクバックが発生しやすくなり好ましくない。さらには90%径が8μm以下、好ましくは6μm以下である。径が大きい粒子が一定割合以上存在すると、上述した影響がより顕著になる傾向がみられる。なお、上述した平均粒子径の範囲(0.2~5μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
【0087】
熱変色性マイクロカプセル顔料の比重は、0.9~1.3、好ましくは1.0~1.2の範囲である。比重がこの範囲外であると、マイクロカプセル顔料の分散安定性が低下しやすい。また、比重が1.3を超えるマイクロカプセル顔料は、振動によってインクバックが発生しやすい。
【0088】
筆記具用水性インク組成物において、上記熱変色性マイクロカプセル顔料の他、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、その効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤、増粘剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤などを適宜含有することができる。
【0089】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
【0090】
これらのうち、インクバックによる筆記部でのインク固化を抑制する目的として、グリセリンを用いることが好ましく、その添加量はインク全量に対して1~10質量%であることが好ましく、乾燥状態における顔料及びインク成分との凝集力を低下させる効果があるものと推察される。
【0091】
用いることができる増粘剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が好ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレンアクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
【0092】
これらのうち、多糖類を使用することが好ましい。多糖類はそのレオロジー特性から、振動による流動性への影響を受けにくい傾向があり、インクバックに起因する筆記不良等の不具合が生じにくい。特にキサンタンガムは、筆記具インクに要求されるその他の特性とのバランスに優れており好ましい。
【0093】
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類などが挙げられる。防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
【0094】
この筆記具用水性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記熱変色性、光変色性マイクロカプセル顔料の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。さらに必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
【0095】
筆記具用水性インク組成物の粘度値は、25℃、剪断速度3.83/sにおいて、500~2000mPa・s、剪断速度383/sにおいて20~100mPa・sであることが好ましい。上記粘度範囲に設定することによって、筆記性と経時安定性に優れたインクとすることができる。さらに、S=αDn(但し、1>n>0)(Sは剪断応力(dyn/cm2)、Dは剪断速度(s-1)、αは非ニュートン粘性係数)で示される粘性式で求められる非ニュートン粘性指数nが、0.2~0.6であることが好ましい。上記粘度範囲に加えて非ニュートン粘性指数nを上記範囲とすることで、振動に対するインクの流動性を適切に設定することが可能となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
【0096】
筆記具用水性インク組成物の表面張力は、25~45mN/m、さらには30~40mN/mであることが好ましい。この範囲内であれば、ペン先内部とインクの濡れ性のバランスが適切となり、インクバックの発生を防止することが可能となる。
【0097】
リフィル内においては、インクのすぐ後方にインク追従体を配置してもよい。追従体を構成する材料としては、少なくとも、不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤と、増粘剤とにより構成することができる。インク追従体に使用する不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、インク追従体の基油として用いるものであり、例えば、流動パラフィンが用いられる。流動パラフィンには、鉱物油、化学合成油が用いられ、化学合成油としては、ポリブテン、ポリα-オレフィン、エチレンα-オレフィンオリゴマーなどを用いることができる。
【0098】
用いることができる具体的な鉱物油としては、例えば、市販品のダイアナプロセスオイルNS-100、PW-32、PW-90、NR-68、AH-58(出光興産社製)などが挙げられる。
【0099】
用いることができる具体的なポリブテンとしては、例えば、市販品のニッサンポリブテン200N、ポリブテン30N、ポリブテン10N、ポリブテン5N、ポリブテン3N、ポリブテン015N、ポリブテン06N、ポリブテン0N(以上、日本油脂社製)、ポリブテンHV-15(日本石油化学社製)、35R(出光興産社製)などが挙げられる。
【0100】
用いることができる具体的なポリα-オレフィンとしては、例えば、市販品のバーレルプロセス油P-26、P-46,P-56、P-150,P-350,P-1500、P-2200、(P-10000、P-37500)(松村石油社製)などが挙げられる。
【0101】
用いることができる具体的なエチレンα-オレフィンオリゴマーとしては、例えば、市販品のルーカント HC-10、HC-20、HC-100、HC-150、(HC-600、HC-2000)(以上、三井化学社製)などが挙げられる。
【0102】
これらの不揮発性若しくは難揮発性有機溶剤は、1種または2種以上を合わせて使用することができる。
【0103】
インク追従体に使用する増粘剤としては、例えば、リン酸エステルのカルシウム塩、微粒子シリカ、ポリスチレン-ポリエチレン/ブチレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマー、ポリスチレン-ポリエチレン/プロピレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマー、水添スチレン-ブタジエンラバー、スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー及びアセトアルコキシアルミニウムジアルキレートなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上用いることができる。
【0104】
用いることができるリン酸エステルのカルシウム塩の好ましい市販品としては、CrodaxDP-301LA(クローダジャパン社製)等が挙げられる。用いることができる微粒子シリカは、親水性微粒子シリカと疎水性微粒子シリカがあり、親水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL-300、AEROSIL-380(日本アエロジル社製)等が挙げられ、また、疎水性シリカの好ましい市販品としては、AEROSIL-974D、AEROSIL-972(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0105】
また、ポリスチレン-ポリエチレン/ブチレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGFG-1901X、クレイトンGG-1650(以上、シェルジャパン社製)、セプトン8007、セプトン8004(以上、クラレ社製)などが挙げられる。さらに、ポリスチレン-ポリエチレン/プロピレンゴム-ポリスチレンのブロックコポリマーの好ましい市販品としては、クレイトンGG-1730(シェルジャパン社製)、セプトン2006、セプトン2063(以上、クラレ社製)などが挙げられる。
【0106】
水添スチレン-ブタジエンラバーの好ましい市販品としては、DYNARON1320P、DYNARON1321P(以上、JSR社製)、タフテックHl041、タフテックHl141(以上、旭化成工業社製)などが挙げられる。
【0107】
スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON4600P(JSR社製)等が挙げられ、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーの好ましい市販品としては、DYNARON6200P、DYNARON6201B(JSR社製)等が挙げられる。
【0108】
アセトアルコキシアルミニウムジアルキレートの好ましい市販品としては、プレンアクトAL-M(味の素ファインテクノ社製)などが挙げられる。
【0109】
これらの増粘剤の中で、効果をさらに発揮させる点から、スチレン-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマー、オレフィン結晶-エチレンブチレン-オレフィン結晶のブロックコポリマーなどの熱可塑性オレフィン系エラストマーの使用が好ましい。
【0110】
さらに、インクバックの発生を防止するインク追従体を得る点から、周波数領域1~63rad/sで指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることが好ましく、1.7~3.4とすることがさらに好ましい。
【0111】
ここで、tanδは、損失弾性率/貯蔵弾性率を意味する値であり、従来では、周波数領域「1~63rad/s」で指数関数的に増加させながら周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以下のものが好ましいことが知られていた。ここでは、上記1~63rad/sで各周波数毎に測定したtanδ値の平均値が1.0以上とすることにより、振動を吸収してインクバックの発生を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
1 筆記具セット
2 ケース2
10 ケース本体
11 保持突起
20 カバー部材
30 スライド部材
34 第2係合部
40 筆記具
42 筆記部
45 第1係合部
50 クリップ部材
51 スプリング