(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012683
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】地盤調査用計測装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/40 20060101AFI20230119BHJP
E02D 1/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01N3/40 B
E02D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116269
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591223404
【氏名又は名称】株式会社トラバース
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二川 和貴
(72)【発明者】
【氏名】仁科 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】相沢 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 佳勝
(72)【発明者】
【氏名】大野 真幸
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043AB03
2D043AB04
2D043BA10
2D043BB01
(57)【要約】
【課題】地盤調査に使用する部品や簡便な治具を利用することで、容易に校正を行うことができる地盤調査用計測装置の校正方法を提供する。
【解決手段】対象地盤を調査する際に地盤にロッドを貫入させる貫入試験機に装着される地盤調査用計測装置の校正方法である。
そして、ロッドが通過する経路を塞ぐように台座部に第1校正用プレートを設置する工程(ステップS2)と、第1校正用プレートに対してロッドの先端を接触させる工程(ステップS4)と、ロッドに錘部及び起振機に基づく既知の荷重を載荷させて、地盤調査用計測装置の荷重計測部によって計測を行う工程(ステップS5,S6)と、荷重計測部の計測結果と既知の荷重とに基づいて校正を行う工程(ステップS7)とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地盤を調査する際に地盤にロッドを貫入させる貫入試験機に装着される地盤調査用計測装置の校正方法であって、
前記貫入試験機は、前記ロッドを前記対象地盤に貫入させるための開放部を有する台座部と、前記ロッドの上端に荷重を作用させる錘部及び起振機とを備えており、
前記開放部の少なくとも前記ロッドが通過する経路を塞ぐように前記台座部に第1校正用プレートを設置する工程と、
前記第1校正用プレートに対して前記ロッドの先端を接触させる工程と、
前記ロッドに前記錘部及び起振機に基づく既知の荷重を載荷させて、前記地盤調査用計測装置の荷重計測部によって計測を行う工程と、
前記荷重計測部の計測結果と前記既知の荷重とに基づいて校正を行う工程とを備えたことを特徴とする地盤調査用計測装置の校正方法。
【請求項2】
対象地盤を調査する際に地盤にロッドを貫入させる貫入試験機に装着される地盤調査用計測装置の校正方法であって、
前記貫入試験機は、前記ロッドを前記対象地盤に貫入させるための開放部を有する台座部を備えており、
前記開放部の少なくとも前記ロッドが通過する経路を塞ぐように前記台座部に第1校正用プレートを設置する工程と、
前記第1校正用プレートに対して前記ロッドの先端を接触させる工程と、
前記地盤調査用計測装置の変位計測部によって前記第1校正用プレートの上面を基準とする計測を行う工程と、
前記第1校正用プレートの上に厚さが既知の第2校正用プレートを設置する工程と、
前記変位計測部によって前記第2校正用プレートの上面を基準とする計測を行う工程と、
前記変位計測部の計測結果と前記第2校正用プレートの厚さとに基づいて校正を行う工程とを備えたことを特徴とする地盤調査用計測装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象地盤を調査する際に地盤にロッドを貫入させる貫入試験機に装着される地盤調査用計測装置の校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な地盤調査では、小規模建築物の場合であればスウェーデン式サウンディング(SWS)試験などの原位置試験によって、地盤の強度に関する地盤定数を得ている。そして、長期の荷重に対する地盤の支持性能の検討は、この地盤定数に基づいて行われる。
【0003】
SWS試験は、錘をつけたロッドの貫入抵抗で地盤の硬軟を評価する調査法で、それに使用される地盤調査装置は近年自動化されており、錘の載荷や除荷、回転制御や計測までもが自動化された機器も普及している。
【0004】
他方において、SWS試験で判るのは貫入抵抗であって、その精度には課題も多く、特許文献1では、貫入試験機を利用してそれに振動を与えることによって精度の高い情報を得る方法を提案している。
【0005】
ここで、特許文献1に開示されている手法のように、SWS試験の貫入試験機をそのまま利用して起振機により振動を付与し、動的な貫入量と荷重を確認しようとした場合に、装置本体に直接的に変位計や荷重計を取り付けると、振動が大きく精度や耐久性にも影響を与えかねない課題がある。
【0006】
そこで、特許文献2では、ロッドの中間に簡易なアタッチメントとして変位計等を付けることで、多種多様な調査装置に対応するとともに、簡便かつ高精度で計測を行うことができる地盤調査用計測装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-17112号公報
【特許文献2】特開2019-178490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、地盤調査用計測装置の荷重計測部としては、たとえば打撃部分にロードセルやひずみゲージを取り付けた治具を設けて計測する荷重計を用いることがある。また、地盤調査用計測装置の変位計測部としては、精密機械であるポテンショメータ式やレーザ式の変位計を用いることがある。
【0009】
このような地盤調査方法で使用される地盤調査用計測装置は、いずれも振動による負荷が大きくなるため、繰り返し使用する場合には、その精度を確保するために、定期的な校正が必要となる。しかしながらその作業は、一般的には煩雑である。
【0010】
そこで、本発明は、地盤調査に使用する部品や簡便な治具を利用することで、容易に校正を行うことができる地盤調査用計測装置の校正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の地盤調査用計測装置の校正方法は、対象地盤を調査する際に地盤にロッドを貫入させる貫入試験機に装着される地盤調査用計測装置の校正方法であって、前記貫入試験機は、前記ロッドを前記対象地盤に貫入させるための開放部を有する台座部と、前記ロッドの上端に荷重を作用させる錘部及び起振機とを備えており、前記開放部の少なくとも前記ロッドが通過する経路を塞ぐように前記台座部に第1校正用プレートを設置する工程と、前記第1校正用プレートに対して前記ロッドの先端を接触させる工程と、前記ロッドに前記錘部及び起振機に基づく既知の荷重を載荷させて、前記地盤調査用計測装置の荷重計測部によって計測を行う工程と、前記荷重計測部の計測結果と前記既知の荷重とに基づいて校正を行う工程とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、別の地盤調査用計測装置の校正方法の発明は、対象地盤を調査する際に地盤にロッドを貫入させる貫入試験機に装着される地盤調査用計測装置の校正方法であって、前記貫入試験機は、前記ロッドを前記対象地盤に貫入させるための開放部を有する台座部を備えており、前記開放部の少なくとも前記ロッドが通過する経路を塞ぐように前記台座部に第1校正用プレートを設置する工程と、前記第1校正用プレートに対して前記ロッドの先端を接触させる工程と、前記地盤調査用計測装置の変位計測部によって前記第1校正用プレートの上面を基準とする計測を行う工程と、前記第1校正用プレートの上に厚さが既知の第2校正用プレートを設置する工程と、前記変位計測部によって前記第2校正用プレートの上面を基準とする計測を行う工程と、前記変位計測部の計測結果と前記第2校正用プレートの厚さとに基づいて校正を行う工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明の地盤調査用計測装置の校正方法では、ロッドに貫入試験機の錘部及び起振機に基づく既知の荷重を載荷させ、そのときの荷重計測部の計測結果に基づいて、荷重計測部の校正を行う。
【0014】
このように、地盤調査に使用する貫入試験機の錘部や起振機などの部品や、貫入試験機の台座部に設置するだけの板状の簡便な治具を利用するだけで、容易に校正を行うことができる。
【0015】
また、別の本発明の地盤調査用計測装置の校正方法では、貫入試験機の台座部に第1校正用プレートを設置して、最初の変位計測部による計測を行った後に、厚さが既知の第2校正用プレートを第1校正用プレートに重ねて、再度、変位計測部による計測を行う。そして、2回の変位計測部の計測結果に基づいて、変位計測部の校正を行う。
【0016】
このように、貫入試験機の台座部に、板状の簡便な第1校正用プレート及び第2校正用プレートを設置して変位計測部による計測を実施するだけで、容易に校正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施の形態の地盤調査用計測装置の校正方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図2】地盤調査用計測装置の荷重計測部の校正方法を説明するための概要図である。
【
図3】地盤調査用計測装置の構成の一例を説明する斜視図である。
【
図4】実施例1の地盤調査用計測装置の校正方法の処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】地盤調査用計測装置の変位計測部の校正方法における第1校正用プレートを計測する工程を示した説明図である。
【
図6】地盤調査用計測装置の変位計測部の校正方法における第2校正用プレートを計測する工程を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の地盤調査用計測装置の校正方法の処理の流れを説明するフローチャートである。また、
図2は、地盤調査用計測装置の荷重計測部の校正方法を説明するための図である。
【0019】
本実施の形態で説明する地盤調査装置1を使用した地盤調査は、住宅などの建物を建設する調査の対象地盤Gに対して実施される。調査の対象地盤Gに対しては、通常は、1地点又は複数地点において、直接、貫入試験などの地盤調査が行われる。
【0020】
例えば小規模建築物の場合、一般的に調査の対象地盤Gの1地点又は複数地点において、スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)が行われる。スウェーデン式サウンディング試験とは、JIS A 1221にも規定される静的貫入試験の一種であり、地盤にスクリューポイントをねじ込む際のロッドの貫入抵抗から地盤の硬軟を推定する地盤調査法である。
【0021】
貫入試験機2は、
図2に示すように、ベースマシン21と、ロッド22と、ロッド22の先端(下端)に取り付けられるスクリューポイント(図示省略)と、台座部24と、錘部25とによって主に構成される。ベースマシン21は、小規模建築物の地盤調査で実績があるスウェーデン式サウンディング試験機である。
【0022】
一方、錘部25は、スウェーデン式サウンディング(SWS)試験の際に使用されるスクリューポイントに段階的に荷重を載荷させるために使用される。規格に従った合計重量100kgの錘部25を備えている。
【0023】
SWS試験は、基本的に25cm単位で調査結果を評価することになる。ロッド22は、1mや50cmの単位ロッド221を連結して構成される。すなわち測定は、単位ロッド221を継ぎ足しながら進められる。
【0024】
貫入試験機2に起振機3を取り付けて振動や打撃を加えることで、スウェーデン式サウンディング試験よりも精度良く地盤の支持性能や剛性を評価することができるようになる。そして、地盤の支持性能等を評価するためには、作用荷重と貫入量との正確な計測データが必要になる。
【0025】
すなわち、起振機3による打撃が行われる状況の中で、動的な貫入量と荷重を正確に計測する必要がある。この計測は、もともと貫入試験機2に備わっている変位計や荷重計などの地盤調査用計測装置を利用して行うことができる。
【0026】
また、以下で説明するように、ロッド22に介在させる短尺ロッドや治具に、ひずみ量検出器や変位計を取り付けることで、荷重計測部や変位計測部を備えた地盤調査用計測装置とすることもできる。
【0027】
例えば地盤調査装置1には、
図2に示すように、ロッド22を構成する単位ロッド221,221間に、地盤調査用計測装置となる計測装置4が組み込まれる。計測装置4の一例を
図3に示した。
【0028】
この計測装置4は、ロッド22に介在させる短尺ロッド41と、短尺ロッド41に取り付けられる荷重計測部のひずみ量検出器となるひずみゲージ42と、変位計測部となる非接触変位計43とによって主に構成される。
【0029】
短尺ロッド41は、ロッド22と同程度の直径の円筒管によって形成されており、上端に上接続ネジ411を備えるとともに、下端に下接続ネジ412を備えている。すなわち、単位ロッド221,221間に介在させる短尺ロッド41には、上方の単位ロッド221の下端に接続させるための上接続ネジ411と、下方の単位ロッド221の上端に接続させるための下接続ネジ412とが設けられる。
【0030】
ひずみゲージ42は、短尺ロッド41の外周面413に貼り付けられる。このひずみゲージ42の伸縮方向(計測方向)は、短尺ロッド41の軸方向と一致する。短尺ロッド41の外周面413には、複数のひずみゲージ42が貼り付けられる。例えば周方向に180°ごとに一対のひずみゲージ42を貼り付けることができる。また、周方向に90°ごとに4つのひずみゲージ42を貼り付けることもできる。
【0031】
ひずみゲージ42は、計器として汎用的に使用され、非常に安価に入手することができる。また、短尺ロッド41の外周面413に貼り付けるだけで設置できるので、非常にコンパクトな構成にすることができる。
【0032】
そして、短尺ロッド41の材質(ヤング係数E)及び断面積Aは規定されているので、ひずみεとの関係式(ε=σ/E)から、短尺ロッド41に生じている軸方向の荷重Nは容易に求めることができる。ここで、σは軸方向の応力度(σ=N/A)である。ひずみεは、ひずみゲージ42によって計測される値で、全長Lに占める荷重Nの作用時の変位量ΔLの割合(ε=ΔL/L)に相当する。
【0033】
一方、非接触変位計43は、短尺ロッド41の所定の位置とそれに対応する鉛直方向に存在する基準点との間の変位が計測できるように設けられる。具体的には、短尺ロッド41の外周面413から張り出された張出部44と、貫入試験機2の台座部24の上面241(基準点)などとの間の相対的な変位を計測する。
【0034】
短尺ロッド41の外周面413に直交するように張り出された張出部44の下面に取り付けられる非接触変位計43は、レーザSの照射部と受光部とを備えたレーザ式の変位計である。そして、鉛直下方を向けた非接触変位計43の照射部から照射されたレーザSは、貫入試験機2の台座部24の上面241を反射点として反射されて受光部で検出される。
【0035】
計測装置4は、ひずみゲージ42から検出されるひずみ量(ε)から荷重Nを算出する演算処理部を備えている。また、非接触変位計43から検出された検出信号から、荷重Nの作用時の変位(貫入量)を算出することができる。そして、このようにして計測された荷重と貫入量から許容支持力度や推定沈下量が算出できるようになるので、地盤の支持性能を評価することが可能になる。
【0036】
そして、このように構成される計測装置4は、起振機3によって振動が加えられる状況が続く中で使用されるため、振動による負荷が大きく、繰り返し使用する場合には、その精度を確保するために、定期的な校正が必要となる。
【0037】
そこで、本実施の形態の地盤調査用計測装置の校正方法の処理の流れについて、
図1に示したフローチャートを参照しながら説明する。
まずステップS1では、
図2に示すように、貫入試験機2を設置する。この設置場所については、必ずしも対象地盤G上でなくてもよい。
【0038】
続いてステップS2では、貫入試験機2の台座部24の上面241に、第1校正用プレート5を設置する。貫入試験機2の台座部24には、ロッド22を通過させて対象地盤Gに貫入させるための穴や隙間などの開放部が設けられている。
【0039】
このため、試験時と同様にロッド22を降下させると、この開放部をロッド22の先端が通過してしまうので、開放部の少なくともロッド22が通過する経路を塞ぐように、第1校正用プレート5を台座部24の上面241に設置する。
【0040】
第1校正用プレート5は、起振機3及び錘部25の合計重量による載荷に耐えうる素材及び厚さに形成される。SWS試験を行う貫入試験機2は、規格に従った合計重量100kgの錘部25を備えている。また、起振機3の重量も既知である。そして、これらの錘部25や起振機3の重量を校正用の荷重として利用するため、第1校正用プレート5には、その荷重に耐えうる板状の部材が使用される。
【0041】
ステップS3では、単位ロッド221,221間に計測装置4が介在されたロッド22を、貫入試験機2にセットする。これによって、荷重計測部となるひずみゲージ42が、ロッド22に接続されたことになる。
【0042】
そしてステップS4では、ロッド22の先端を降下させて、第1校正用プレート5の上面51に接触させる。
図2は、この状態を示している。要するに、第1校正用プレート5によってロッド22を支持できる状態にする。なお、貫入試験機2のチャックによってロッド22を固定している間は、ロッド22に荷重は作用せず、荷重計測部でも荷重は計測されない。
【0043】
この状態でステップS5では、ロッド22の上端に錘部25及び起振機3の重量を、貫入試験機2のチャックを解放することで荷重として載荷させる。ここで、錘部25と起振機3の重量は予め分かっているので、既知の荷重と言える。
【0044】
錘部25の重量(合計100kg)と起振機3の重量は、すべてをロッド22に作用させることもできるし、任意の既知の重量分だけを作用させることもできる。要するに、貫入試験機2にもともと備わっている部品の重量の中で、載荷する大きさが判明している部品を荷重として利用する。
【0045】
ステップS6では、無負荷の状態から、錘部25及び起振機3の重量によって設定された既知の荷重を載荷させたときまでの荷重値を、ひずみゲージ42の検出値(ひずみε)によって計測する。このようにして検出されるひずみ量が、錘部25及び起振機3に基づく荷重の荷重計測部による計測結果となる。
【0046】
そこで、ステップS7では、ひずみゲージ42によって検出されたひずみ量から演算処理部によって算出される荷重Nが、錘部25及び起振機3に基づく既知の荷重と同じ大きさになるように、荷重計測部の校正を行う。
【0047】
次に、本実施の形態の地盤調査用計測装置の校正方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の地盤調査用計測装置の校正方法では、ロッド22に貫入試験機2の錘部25及び起振機3に基づく既知の荷重を載荷させ、そのときの荷重計測部のひずみ量検出器となるひずみゲージ42の計測結果に基づいて、荷重計測部の校正を行う。
【0048】
このように、地盤調査に使用する貫入試験機2の錘部25や起振機3などの部品や、貫入試験機2の台座部24に設置するだけの板状の簡便な第1校正用プレート5を利用するだけで、容易に校正を行うことができる。このため、試験前や試験中など、任意のタイミングで繰り返し校正を行うこともできるので、効率的に高い精度の計測が行えるようになる。
【実施例0049】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例1について、
図4-
図6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0050】
前記実施の形態では、地盤調査用計測装置の荷重計測部の校正方法について説明した。本実施例1では、地盤調査用計測装置の変位計測部の校正方法について説明する。具体的には、前記実施の形態で説明した計測装置4の非接触変位計43を使って説明を行う。
【0051】
本実施例1の非接触変位計43の校正方法では、2枚の板状部材を使用する。1枚目は、前記実施の形態で説明した第1校正用プレート5を利用することができる。ただし、非接触変位計43の校正方法では、板状部材に荷重をかけないので、別の板状部材を使用することもできる。
【0052】
2枚目の板状部材を、第2校正用プレート6とする。第2校正用プレート6は、厚さが既知の板状部材である。第1校正用プレート5及び第2校正用プレート6は、いずれも台座部24の開放部の少なくともロッド22が通過する経路を塞ぐように設置される。
【0053】
また、第1校正用プレート5及び第2校正用プレート6は、少なくともロッド22が通過する箇所から非接触変位計43のレーザSの反射点までをカバーすることができる広さに形成される。さらに、第1校正用プレート5及び第2校正用プレート6は、全域において一定の厚さに形成される。
【0054】
そして、第2校正用プレート6には、ロッド22が通過する経路に該当する位置に、
図6に示すように、穴62が穿孔される。この穴62は、例えばロッド22の直径より一回り大きく形成されて、容易に降下させたロッド22の先端が通過できるようにする。
【0055】
続いて、実施例1の地盤調査用計測装置の校正方法の処理の流れについて、
図4に示したフローチャートを参照しながら説明する。
まずステップS11では、
図5に示すように、貫入試験機2を設置する。この設置場所については、必ずしも対象地盤G上でなくてもよい。
【0056】
続いてステップS12では、貫入試験機2の台座部24の上面241に、第1校正用プレート5を設置する。そして、試験時と同様にロッド22を降下させて、ロッド22の先端を第1校正用プレート5の上面51に接触させる(ステップS13)。
【0057】
続いてステップS14では、非接触変位計43によって、第1校正用プレート5の上面51に向けてレーザSを照射させる。
図5は、この状態を示している。要するに、非接触変位計43の検出信号によって、第1校正用プレート5の上面51と非接触変位計43との距離を計測する。
【0058】
このようにして第1校正用プレート5の上面51の位置を表す距離を非接触変位計43によって計測した後に、一旦、ロッド22の先端を、第2校正用プレート6の厚さ以上の高さまで持ち上げる。
【0059】
続いてステップS15では、第1校正用プレート5の上面51の上に、第2校正用プレート6を設置する。そして、ロッド22の先端を降下させて、第2校正用プレート6の穴62に通して、ロッド22の先端を第1校正用プレート5の上面51に接触させる。
【0060】
ステップS16では、非接触変位計43によって、第2校正用プレート6の上面61に向けてレーザSを照射させる。
図6は、この状態を示している。要するに、非接触変位計43の検出信号によって、第2校正用プレート6の上面61と非接触変位計43との距離を計測する。
【0061】
このようにして第2校正用プレート6の上面61の位置を表す距離を非接触変位計43によって計測すると、ステップS14で計測した第1校正用プレート5の上面51の位置との差から、変位が算出される。この変位が、変位計測部による計測結果となる。
【0062】
そこで、ステップS17では、非接触変位計43の計測結果から算出された変位が、第2校正用プレート6の既知の厚さと同じ大きさになるように、変位計測部の校正を行う。
【0063】
このように構成された実施例1の地盤調査用計測装置の校正方法では、貫入試験機2の台座部24に第1校正用プレート5を設置して、最初の変位計測部(非接触変位計43)による計測を行った後に、厚さが既知の第2校正用プレート6を第1校正用プレート5に重ねて、再度、非接触変位計43による計測を行う。そして、2回の非接触変位計43の計測結果に基づいて、変位計測部の校正を行う。
【0064】
このように、貫入試験機2の台座部24に、板状の簡便な第1校正用プレート5と第2校正用プレート6を順番に設置して、それぞれ非接触変位計43による計測を実施するだけで、容易に校正を行うことができる。
【0065】
このため、試験前や試験中など、任意のタイミングで繰り返し校正を行うこともできるので、効率的に高い精度の計測が行えるようになる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【0066】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0067】
例えば、前記実施の形態及び実施例1では、ひずみゲージ42で構成される荷重計測部と非接触変位計43で構成される変位計測部とを備えた計測装置4を例に地盤調査用計測装置について説明したが、これに限定されるものではない。荷重計測部はロードセルによって構成されるものであってもよいし、変位計測部はポテンショメータ式変位計で構成されるものであってもよい。
【0068】
また、前記実施例1では、ロッド22を通過させる穴62が穿孔された第2校正用プレート6を例に説明したが、これに限定されるものではなく、第2校正用プレートは、非接触変位計43のレーザSの反射点にだけ設置される広さのものであってもよい。この場合は、第1校正用プレート5の上面51を計測した後に、ロッド22を一旦、上昇させる工程を省くことができる。
【0069】
また、前記実施例1では、ロッド22に取り付けられたレーザ式の変位計測部の校正方法について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ロッド22の降下量を直接、計測するポテンショメータ式変位計を変位計測部とする場合は、第1校正用プレート5の上面51にロッド22の先端を接触させて計測を行った後に、第1校正用プレート5の上に重ねた第2校正用プレート6の上面61にロッド22の先端を接触させて計測を行うことで、第2校正用プレート6の厚さに相当する変位を計測したことになる。