(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126835
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ポータブルな量子メモリデバイス、量子通信記憶方法、記憶された量子情報の取り出しの方法、および量子通信の方法
(51)【国際特許分類】
G02F 3/00 20060101AFI20230905BHJP
H04B 10/70 20130101ALI20230905BHJP
【FI】
G02F3/00
H04B10/70
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103953
(22)【出願日】2023-06-26
(62)【分割の表示】P 2020551823の分割
【原出願日】2019-03-28
(31)【優先権主張番号】62/649,275
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/696,219
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/729,788
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508095256
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファウンデーション フォー ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フィゲロア、エデン
(72)【発明者】
【氏名】ナマジ、メディ
(72)【発明者】
【氏名】フラメント、マエル
(57)【要約】
【課題】ポータブルな量子メモリデバイス、量子通信記憶方法、記憶された量子情報の取り出しの方法、および量子通信の方法を提供する。
【解決手段】量子通信(例えば、量子情報を保持する光子、例えば、キュービット)を受信することと、キュービットを室温のスケーラブルな量子メモリデバイスに記憶することと、キュービットを選択的に取り出すことと、フィルタリングを実行することと、制御可能な遅延で量子通信を抽出することと、を可能とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子情報を含むプローブフィールド光子ビームを受信するように構成されたプローブ入力部であって、前記量子情報は、前記プローブフィールド光子ビームの1つ以上の光子の偏光状態で符号化されている、前記プローブ入力部と、
制御フィールド光子ビームを受信するように構成された制御入力部と、
量子メモリモジュールであって、前記量子メモリモジュールは、前記プローブ入力部に光学的に接続されるとともに、前記制御入力部に光学的に接続され、前記量子情報を2つの独立した光子ビームの光子として記憶するように構成された少なくとも1つの蒸気セルを含み、前記独立した光子ビームの各々は、前記量子情報の一部と前記制御フィールド光子ビームの一部とを含むマージされた光子ビームを含む、前記量子メモリモジュールと、
前記量子メモリモジュールに光学的に接続され、前記量子メモリモジュールから前記量子情報を取り出すように構成された、フィルタリングモジュールと、
前記フィルタリングモジュールから前記量子情報を出力するように構成された出力部と、
を備える、ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、
前記プローブフィールド光子ビームを2つの直交偏光されたプローブフィールド光子ビームに分割するように構成された第1ビームディスプレーサ、および、前記制御フィールド光子ビームを2つの直交偏光された制御フィールド光子ビームに分割するように構成された第2ビームディスプレーサと、
前記2つの独立した光子ビームを形成するべく、前記2つの直交偏光されたプローブフィールド光子ビームを、前記2つの直交偏光された制御フィールド光子ビームとそれぞれマージするように構成された、グラントムソン偏光ビームスプリッタと、
をさらに備える、ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、前記少なくとも1つの蒸気セルは、87Rb原子またはCs原子と、バッファガスとを含む、
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、前記量子メモリモジュールは、前記少なくとも1つの蒸気セルを加熱するように構成された少なくとも1つのヒーターと、前記少なくとも1つのヒーターの出力を制御し、前記少なくとも1つの蒸気セルの温度を制御するように構成された少なくとも1つのコントローラと、をさらに含む、
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、前記量子メモリモジュールは、デュアルレール量子メモリであり、前記デュアルレール量子メモリの各レール用の電磁誘起透明化式のストレージを含む、
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、前記フィルタリングモジュールは、前記量子情報を前記2つの独立した光子ビームの光子として或いは前記2つの独立した光子ビームを含む結合された光子ビームの光子として取り出すように構成されている、
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、前記フィルタリングモジュールは、前記2つの独立した光子ビームを結合して第1光子ビームとし、前記第1光子ビームを別々の2つの光子ビームに分割し、前記出力部を介して出力するために前記別々の2つの光子ビームを再結合して前記量子情報を含む第2光子ビームとするように構成されている、
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項8】
請求項6に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、前記フィルタリングモジュールは、前記プローブフィールド光子ビームに記憶された前記量子情報を取り出すべく、前記制御フィールド光子ビームと前記プローブフィールド光子ビームとを分離するように構成された一連の光学要素を含む
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項9】
請求項1に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、外側シェルと、前記外側シェル内の内側構造フレームと、前記外側シェル内に配置され、前記内側構造フレームによって支持されているボードとをさらに備える、
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、前記ボードは、前記量子メモリモジュールを支持する、
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項11】
請求項1に記載のポータブルな量子メモリデバイスであって、90%を超えた忠実度で動作するように構成されている、
ポータブルな量子メモリデバイス。
【請求項12】
量子情報を含むプローブフィールド光子ビームを受信することであって、前記量子情報は、前記プローブフィールド光子ビームの1つ以上の光子の偏光状態で符号化されていることと、
前記プローブフィールド光子ビームを第1および第2の独立したプローブビームに分割することと、
制御フィールド光子ビームを受信することと、
前記制御フィールド光子ビームを第1および第2の独立した制御ビームに分割することと、
前記第1および第2の独立した制御ビームを前記第1および第2の独立したプローブビームとそれぞれマージして、2つの独立した光子ビームを提供することと、
少なくとも1つの蒸気セルを含む量子メモリ蒸気セルアセンブリに前記2つの独立した光子ビームを記憶することと、
を備える、量子通信記憶方法。
【請求項13】
請求項12に記載の量子通信記憶方法であって、前記制御フィールド光子ビームを受信した後に前記制御フィールド光子ビームを調整することをさらに備える、
量子通信記憶方法。
【請求項14】
請求項13に記載の量子通信記憶方法であって、前記制御フィールド光子ビームを調整することは、前記制御フィールド光子ビームを整形すること、および、前記制御フィールド光子ビームを前記プローブフィールド光子ビームに対して時間最適化することのうちの少なくとも1つを含む、
量子通信記憶方法。
【請求項15】
請求項12に記載の量子通信記憶方法であって、前記プローブフィールド光子ビームは、パルスビームを含み、前記パルスビームの各パルスが平均して1つの光子を含む、
量子通信記憶方法。
【請求項16】
請求項12に記載の量子通信記憶方法であって、前記プローブフィールド光子ビームは、780nmから850nmの間の波長を有する、
量子通信記憶方法。
【請求項17】
請求項12に記載の量子通信記憶方法であって、
前記2つの独立した光子ビームを記憶することは、90%を超えた忠実度で前記量子情報を記憶することを含む、
量子通信記憶方法。
【請求項18】
量子メモリから2つの独立した光子ビームの形態の量子情報を受信することであって、前記2つの独立した光子ビームの各々は、前記量子情報の一部と制御フィールド光子ビームの一部とを含むことと、
前記2つの独立した光子ビームを結合して第1光子ビームとすることと、
前記第1光子ビームを別々の2つの光子ビームに分割することと、
前記別々の2つの光子ビームを再結合して第2光子ビームとすることと、
前記別々の2つの光子ビームを再結合した後において、前記量子情報を保持しつつ前記制御フィールド光子ビームの光子を除去するようにフィルタリングを実行することと、
を備える、記憶された量子情報の取り出しの方法。
【請求項19】
請求項18に記載の記憶された量子情報の取り出しの方法であって、フィルタリングを実行することは、ファブリペロエタロンを使用すること、或いは、ファラデーアイソレータと組み合わせてファブリペロエタロンを使用することを含む、
記憶された量子情報の取り出しの方法。
【請求項20】
請求項18に記載の記憶された量子情報の取り出しの方法であって、
フィルタリングを実行した後、前記量子情報を含む第3光子ビームを取得することと、
前記第3光子ビームを出力することと、
をさらに備える、記憶された量子情報の取り出しの方法。
【請求項21】
請求項18に記載の記憶された量子情報の取り出しの方法であって、フィルタリングを実行することは、90%を超えた忠実度で前記量子情報を取り出すことを含む、
記憶された量子情報の取り出しの方法。
【請求項22】
量子情報を記憶することであって、
プローブフィールド光子ビームを受信することであって、前記プローブフィールド光子ビームは、前記プローブフィールド光子ビームの1つ以上の光子の偏光状態で符号化されている量子情報を含むことと、
前記プローブフィールド光子ビームを第1および第2の独立したプローブフィールド光子ビームに分割することであって、前記第1および第2の独立したプローブフィールド光子ビームの各々は、前記量子情報の一部を含むことと、
制御フィールド光子ビームを受信することと、
前記制御フィールド光子ビームを第1および第2の独立した制御フィールド光子ビームに分割することと、
前記第1および第2の独立した制御フィールド光子ビームを前記第1および第2の独立したプローブフィールドビームとそれぞれマージして、2つの独立したマージされた光子ビームを提供することであって、前記2つの独立したマージされた光子ビームの各々は、前記量子情報の一部を含むことと、
量子メモリ蒸気セルに前記2つの独立したマージされた光子ビームを記憶することと、
を含む前記量子情報を記憶することと、
前記量子情報を記憶した後で前記量子情報を取り出すことであって、
前記量子メモリ蒸気セルから前記2つの独立したマージされた光子ビームの形態の前記量子情報を受信することと、
前記2つの独立したマージされた光子ビームを結合して第1光子ビームとすることと、
前記第1光子ビームを別々の2つの光子ビームに分割することと、
前記別々の2つの光子ビームを再結合して第2光子ビームとすることと、
前記別々の2つの光子ビームを再結合した後、前記量子情報を保持しつつ前記制御フィールド光子ビームの光子を除去することによって第3光子ビームを取得するべく、フィルタリングを実行することと、
前記量子情報を含む前記第3光子ビームを出力することと、
を含む前記量子情報を取り出すことと、
を備える、量子通信の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子通信、より具体的には、周囲温度の量子情報のバッファリング、記憶、および通信を容易にするデバイス、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子通信技術は、特に完全に安全な通信を可能とするので、情報の記憶、送信、および処理など、通信産業に革命をもたらす可能性がある。
現在のところ堅牢な暗号化技術が存在するが、これらの技術はハッキングの影響を受けやすく、十分に強力なコンピューターや高度なハッカーが、今日の最も堅牢な暗号化技術を最終的に破る高い可能性がある。これらの技術を破る手段が見つかった場合、記憶された過去の通信を含む、これらの技術を使用する多くの通信が脆弱になる可能性がある。
【0003】
主に高度な数学に基づいている現在の暗号化技術とは対照的に、量子通信は、量子物理学などの自然の物理法則に基づいている。量子物理学の原理は、たとえば、量子鍵配送(QKD)などの根本的に安全な量子通信技術の創出を可能にする。QKDは根本的に安全な通信技術であり、盗聴者が通信を傍受しようとすると、通信当事者が検出できる異常が発生する。これは、量子力学の本質的な側面、つまり量子システムを測定するプロセスが必然的にシステムを撹乱することに起因する。
【0004】
完全に安全な通信を提供できるという大きな利点にもかかわらず、量子通信技術は普及していない。これは、一部には、ファイバの送信損失を回復すること、および、量子情報を記憶(またはバッファリング)することが難しいことによる。
【0005】
長距離の送信が必要な場合は、送信信号の不可避な損失を回復するための対策を講じる必要がある。従来の通信に関しては、信号リピーターは信号を受信、増幅(または再生)、および転送する。しかしながら、量子通信の場合、量子リピーターによる解決策はそれほど単純ではない。ここで、盗聴者から保護するのと同じ根本的な物理原理により、量子情報(キュービット)の直接増幅も妨げられる。
【0006】
したがって、量子情報のバッファリング、記憶、および通信を容易にするデバイス、システム、および方法の必要性がある。このようなデバイスが普及し、電気通信産業に採用されるためには、そのコストと運用を合理化する必要がある。特に、真にスケーラブルであるためには、そのようなデバイスは、極低温、レーザー、および/または真空などの環境制御システムを使用するべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、周囲温度の量子情報のバッファリング、記憶、および通信を容易にするデバイス、システム、および方法を提供する。これらのデバイス、システム、および方法は、量子鍵配送(QKD)リンク、量子リピーター、および/または量子メモリを伴う他の量子通信ネットワークにおける使用などに関し、周囲温度での量子通信の長距離送信を可能とする。このようなデバイス、システム、および方法は、幅広く採用すること、フィールドオペレーション、およびスケーラビリティの基準に適合する。
【0008】
本開示のデバイス、システム、および方法は、たとえば以下の点で有利な動作性能および技術的特徴を有する。(1)技術仕様(記憶時間や忠実度など)の点で、極低温および冷却原子の代替品に匹敵する。(2)光の任意の偏光に対して無条件に(異なる偏光を記憶するために制御の変更を必要とせずに)動作する(偏光として光子での復号された量子情報および光の基本粒子(光子)の記憶と、90%を超える忠実度で光子の偏光を正常に取り出すことを可能とする)。(3)あらゆる光子式の量子アプリケーションに適しており、MHzの繰り返し率までのショットごとの実験でランダム化された光子を記憶可能である(長距離量子暗号、量子セキュアネットワーク、および量子リピーターに必要な重要な特徴)。(4)変更された時間的および空間的態様を有する(例えば、大気ノイズのために)光子にメモリが適していることを可能にする蒸気媒体を使用することによって、光ファイバおよび自由空間の両方の通信方式(衛星から地球への通信など)と互換性がある。(5)リピーターによってバックアップされた量子ネットワークの確立を可能にする、ポータブルな周囲温度のプラグアンドプレイ量子メモリを提供する。(6)極低温冷却、レーザー冷却、および/または真空システムを必要とせずに、スケーラブルでコストとメンテナンスに適した量子メモリを提供し、それによってサイズ、コスト、およびメンテナンスの考慮事項を削減する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の上記および他の態様および特徴は、以下に詳述される。矛盾しない範囲で、本開示の任意の態様および特徴は、本開示の他の任意の態様および特徴と組み合わせて(またはそれなしで)利用することができる。
【0010】
本開示の態様に従って提供されるポータブルな周囲温度動作量子メモリデバイスは、内側構造フレームと、前記内側構造フレームを囲む外側シェルと、偏光キュービットの形態で量子情報を含むプローブフィールド光子ビーム(連続光レベルから単一光子量子光パルスのいずれでもよい)を受信するように構成されたプローブ入力部と、記憶および減速制御のための制御フィールド光子ビームを受信するように構成された制御入力部と、外側シェル(磁気シールド構造を含む)内に配置され、内側構造フレームによって支持されているデュアルレール量子メモリモジュールと、外側シェル内に配置され、内側構造フレームによって支持されるフィルタリングモジュール(たとえば、複数のフィルタリングコンポーネントを含む)と、を含む。デュアルレール量子メモリモジュールは、プローブフィールド光子ビームを受信するためのプローブ入力部に接続され、制御フィールド光子ビームを受信するための制御入力部に接続され、これにより、デュアルレール量子メモリモジュールの蒸気セルアセンブリの一対の原子蒸気セル内に量子情報を記憶可能となる。フィルタリングモジュールは、前記デュアルレール量子メモリモジュールに接続され(たとえば、取り付けられ)、前記デュアルレール量子メモリモジュールから前記量子情報を取り出すように構成されている。量子メモリデバイスの出力部は、前記フィルタリングモジュールから前記量子情報をプロセッシングデバイスなどに出力するように構成されている。
【0011】
本開示の一態様では、前記デュアルレール量子メモリモジュールは、偏光で符号化された(キュービット)量子情報を2つの独立した光子ビームの光子として記憶するように構成され、前記独立した光子ビームの各々は、プローブフィールド光子ビームの偏光スプリットビームと前記制御フィールド光子ビームの偏光スプリットビームとから形成された結合されたビームからなる。
【0012】
本開示の別の態様では、原子蒸気セルは、ルビジウム87原子と、Krおよび/またはネオンなどのバッファガスとを含む。ルビジウム87に代えてCsなどの他の原子が用いられてもよい。複数の蒸気セルは互いに平行で、機械的に取り付けられ、温度が全長にわたって均一になるように制御される。
【0013】
本開示の別の態様では、前記デュアルレール量子メモリモジュールは、前記蒸気セルを加熱するように構成された少なくとも2つのヒーターと、前記蒸気セルの温度を制御するべく、上述のヒーターを制御および監視するように構成された少なくとも1つのコントローラと、をさらに含む、ヒーターは、セルの近くの領域に磁場を生成しないか、最小限に抑えるように構成されている。
【0014】
本開示のさらに別の態様では、ヒーターおよび蒸気セルは、ミューメタルの複数の層によってシールドされて、セル領域内の磁場を大幅に低減する。このシールドは、幾何学的構成と厚さの両方の点で最適化されている。シールドの複数の層は互いに同心であり、蒸気セルの交換または取り外しを容易にするよう組み立てられる。
【0015】
本開示のさらに別の態様では、デュアルレール量子メモリモジュールは、両レールでの記憶に電磁誘起透明化(EIT)の現象を利用し、500μsまでの記憶時間を可能にする。
【0016】
本開示のさらに別の態様では、前記フィルタリングモジュールは、前記量子情報を2つの独立した光子ビームの光子として取り出すように構成される。前記独立した光子ビームの各々は、プローブフィールド光子ビームのスプリットビームと前記制御フィールド光子ビーム部分のスプリットビームとによって形成されたマージされたビームである。
【0017】
本開示のまたさらに別の態様では、前記フィルタリングモジュールは、前記2つの独立した光子ビームを結合して第1ビームとし、前記第1ビームを別々のビームに分割し、前記出力部を介して出力するために前記別々のビームを再結合して第2ビームとするように構成されている、この構成は、デュアルレール動作と呼ばれる。
【0018】
本開示のさらに別の態様では、前記フィルタリングモジュールは、前記第1ビームを分割する前、前記第1ビームを分割してから前記別々のビームを再結合するまでの間、および/または前記別々のビームを再結合した後において、フィルタリングを実行するように構成されている。全体で、これにより、プローブ光子に対して制御ビームを少なくとも50dB減衰させることができる。
【0019】
前記外側シェルまたはケーシング内に配置され、前記内側構造フレームによって支持されている機械的取り付け層またはボードは、前記量子メモリモジュールを支持し、第1段を区画する、この層、例えば、量子メモリモジュールは、光子パケット(古典的な光パルス)または単一光子(キュービット)のいずれかに関し光の記憶を可能にする。追加の取り付け層またはボードは、単一光子の取り出しのためのフィルタリングを可能とし、前記外側シェルまたはケーシング内に配置され、前記内側構造フレームによって支持され、前記フィルタリングモジュールを支持し、第2段を区画する。
【0020】
本開示の複数態様にしたがって提供される周囲温度量子通信記憶方法は、プローブフィールド光子ビームを受信することと、前記プローブフィールド光子ビームを第1および第2の独立したプローブビームに分割することと、制御フィールド光子ビームを受信することと、前記制御フィールド光子ビームを第1および第2の独立した制御ビームに分割することと、前記第1および第2の独立した制御フィールドビームを前記第1および第2の独立したプローブビームとそれぞれマージして、2つの独立したマージされたビームを提供することと、量子メモリの蒸気セルに前記2つの独立したマージされたビームを記憶することと、備える。
【0021】
本開示の一態様では、方法は、たとえば、前記制御フィールド光子ビームの波長を前記プローブフィールド光子ビームの波長に適合させること(たとえば、位相ロック)、および/または、前記制御フィールド光子ビームを前記プローブフィールド光子ビームに対して時間最適化することによって前記制御フィールド光子ビームを調整することをさらに含む。
【0022】
本開示の別の態様では、前記プローブフィールド光子ビームは、パルスビームであり、各パルスが平均して1つの光子(キュービット)を含む。
本開示のさらに別の態様では、使用される蒸気セルがRb87原子である場合、プローブフィールド光子ビームは、795nmの波長を有する。780nmから850nmの間の波長などの他の波長も考えられる。
【0023】
本開示にしたがって提供される記憶されたキュービット(量子情報)の周囲温度の出力の方法は、量子メモリに記憶された、(2つの独立した光子ビームの形態の)量子情報を取り出すことと、前記2つの独立した光子ビームを結合して第1ビームとし、前記第1ビームを別々のビームに分割し、前記別々のビームを再結合して第2ビームとすることと、前記第1ビームを分割する前、前記第1ビームを分割してから前記別々のビームを再結合するまでの間、および/または前記別々のビームを再結合した後において、フィルタリングを実行することと、を含む。
【0024】
本開示のさらに別の態様では、フィルタリングを実行することは、偏光ビームスプリッタを使用し、続いて2つのファブリペロエタロンキャビティおよび1つのファラデーアイソレータを使用して、少なくとも40dBのアイソレーションを達成することを含む。
【0025】
本開示の別の態様では、ファブリペローキャビティは、自動チューニングスキームを使用して光学要素の温度を正確にチューニングすることによってそれらの長さを変更することによってチューニングされる。周波数フィルタリングのチューニングは、追加的または代替的に、精密な位置合わせによって実現される。
【0026】
本開示の複数態様にしたがって提供される周囲温度量子通信の方法は、プローブフィールド光子ビームからキュービット(量子情報)を受信することと、前記プローブフィールド光子ビームを第1および第2の独立したプローブビームに分割することと、制御フィールド光子ビームを受信することと、前記制御フィールド光子ビームを第1および第2の独立した制御フィールドビームに分割することと、前記第1および第2の独立した制御フィールドビームを前記第1および第2の独立したプローブフィールドビームとそれぞれマージして、2つの独立したマージされたビームを提供することと、量子メモリ蒸気セルに前記2つの独立したマージされたビームを記憶することと、前記量子メモリ蒸気セルから前記2つの独立したマージされたビームを取り出すことと、前記2つの独立したマージされたビームを結合して第1ビームとすることと、前記第1ビームを別々のビームに分割することと、前記別々のビームを再結合して第2ビームとすることと、前記第1ビームを分割する前、前記第1ビームを分割してから前記別々のビームを再結合するまでの間、および前記別々のビームを再結合した後において、フィルタリングを実行することと、を備える。
【0027】
本開示の様々な態様および特徴は、同様の数字がいくつかの図のそれぞれにおいて同様の要素を示す図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示にしたがって提供される量子メモリデバイスの斜視図であり、ラック取り付け可能として示され、3つのファイバ入力部/出力部(プローブ入力部、制御入力部、および出力部)を備える。
【
図2】外側シェルの中の内部構成要素および特徴を説明するために外側シェルを省いた、
図1の量子メモリデバイスの斜視図。
【
図3A】
図1の量子メモリデバイスのストレージおよびフィルタリングモジュールを示す、量子メモリデバイスのブロック図。
【
図3B】
図1の量子メモリデバイスのストレージおよびフィルタリングモジュールを示す、量子メモリデバイスの概略図。
【
図3C】
図1の量子メモリデバイスのストレージおよびフィルタリングモジュールの側面図。
【
図3D】ルビジウム87の遷移に関する4準位の概略図。
【
図4】
図1の量子メモリデバイスの内部を示すために外側シェルの一部を省いた、角の部分断面図。
【
図5】外側シェルの一部を省いた、
図1の量子メモリデバイスの側断面図。
【
図6】本開示の方法の第1の(調整および記憶)部分を示すフロー図。
【
図7】本開示の方法の第2の(フィルタリングおよび取り出し)部分を示すフロー図。
【
図8】
図1の量子メモリデバイスの背面および底面からの斜視図。
【
図9】
図1の量子メモリデバイスの内部構成要素の分解斜視図。
【
図10】
図1の量子メモリデバイスの蒸気セルアセンブリの様々な図。
【
図11】
図1の量子メモリデバイスの蒸気セルアセンブリの様々な図。
【
図12】
図1の量子メモリデバイスの蒸気セルアセンブリの様々な図。
【
図13】
図1の量子メモリデバイスの蒸気セルアセンブリの様々な図。
【
図14】
図1の量子メモリデバイスの蒸気セルアセンブリの様々な図。
【
図15】
図1の量子メモリデバイスの第1段の上面からの斜視図。
【
図16】
図1の量子メモリデバイスの第1段の上面図。
【
図17】
図1の量子メモリデバイスの第1段の底面図。
【
図18】
図1の量子メモリデバイスの第1段の底面からの斜視図。
【
図19】
図1の量子メモリデバイスの第2段の上面からの斜視図。
【
図20】
図1の量子メモリデバイスの第2段の上面図。
【
図21】外側シェルを省いて特定の支持構造を仮想的に示す
図1の量子メモリデバイスの背面からの斜視図。
【
図22】
図1の量子メモリデバイス用のプローブフィールド光子および制御フィールド光子ビームを生成するためのデバイスの概略図。
【
図23】本開示に従って提供される例示的な量子ネットワークの簡略化された概略図。
【
図24】本開示の量子ネットワークの方法を示すフロー図。
【
図25】
図1の量子メモリデバイスとともに使用するように構成された制御システムを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の詳細な説明は、添付の図面を参照して行われ、当技術分野で知られている構成要素、機能、または構造に関しては、不必要な詳細により本開示の態様および特徴を曖昧にしないように、概略的に説明しているかまたは完全に説明を省略している。さらに、本明細書に詳述される特定の値または範囲は、当技術分野で一般的に受け入れられている範囲内の変動を包含すると理解され、ここで、そのような変動は、例えば、測定および/またはフィードバック式の制御システムにおける許容誤差、材料およびシステムの許容誤差および公差、環境条件、製造公差などに起因する。
【0030】
量子メモリ
図1~
図3Cを参照すると、本開示による周囲温度量子メモリデバイスが示され、一般に参照番号10によって識別される。本明細書の目的に関して、「周囲温度」は、量子記憶/通信の目的のために制御されていない温度を指す。例えば、実験室で管理をするような温度ではない温度、極低温冷却システム、レーザー冷却システム、真空システムなどの1つまたは複数による温度ではない温度である。「周囲温度」は、室温、環境温度(例えば、0℃から100℃)などを含み得る。そのような周囲温度量子メモリデバイス10を開発する際の主な課題は、高度な冷却または真空システムを必要とせずに、内在する激しい原子運動、デコヒーレンス、およびノイズ(例えば、バックグラウンド光子)を克服することである。以下で詳細に説明する量子メモリデバイス10は、これらの課題を克服する。
【0031】
量子メモリデバイス10は、1)入力「I」(
図3A)において、例えば、量子情報(例えば、偏光キュービット)を記憶する光子などの量子通信を受信し、2)その量子メモリモジュール100内に光子を記憶し、3)光子を選択的に取り出し、フィルタリングモジュール200を介してフィルタリングを実行し、4)出力「O」から量子通信として光子を送信するように構成されている。量子メモリデバイス10は、より具体的には、BB84プロトコルおよび偏光キュービットを使用して量子鍵配送(QKD)を実行する独立したチャネルを可能にし、90%を超えた取り出し忠実度で任意の偏光キュービットを用いて動作し、以下に詳述する補助フィールドフィルタリングスキームを使用すると98%を超えた忠実度で任意の偏光キュービットを用いて動作し、ショットごとの態様でランダムな光子の記憶を可能とし、周囲温度であって、制御された実験室設備の外で、そのような量子メモリデバイス10の1つまたは複数を利用する長距離量子セキュアネットワークを実現する。
【0032】
図1、
図2、および
図4に示されるように、量子メモリデバイス10は、外側シェル12と、外側シェル12内に配置された内側構造フレーム14とを含む。外側シェル12は、外側シェル12を通過する電磁干渉を妨げるために、磁気シールド材料から少なくとも部分的に形成されるか、または磁気シールド材料でコーティングされる。内側構造フレーム14は、量子メモリデバイス10の動作可能な内部モジュール、すなわち量子メモリモジュール100およびフィルタリングモジュール200を支持する。内側構造フレーム14は、外部振動が量子メモリデバイス10の内部動作構成要素および光学要素に到達するのを抑制するか、または少なくとも減衰させるように構成された、複数の振動減衰器15、例えば、ショックマウントコイルおよびグロメットを含む。
【0033】
図3A~
図3Cを参照して、量子メモリモジュール100およびフィルタリングモジュール200を詳細に説明する。簡潔にするために、当技術分野で知られており、量子メモリモジュール100およびフィルタリングモジュール200の理解に密接に関係しない特徴および構成要素(例えば、レンズ、ミラーなど)は、本明細書では説明されていない。これは、当業者は、量子メモリモジュール100およびフィルタリングモジュール200を製造および使用する際に、必要に応じて、そのような構成要素を実装および利用する方法を容易に理解するであろうことが理解されるためである。さらに、本明細書に示され、および/または詳述されるように、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な異なる構成および構成要素の順序付けが提供され得る。
【0034】
図3Bに最もよく示されているように、また
図15~
図17および
図21をさらに参照すると、量子メモリモジュール100は、電磁誘起透明化(EIT)式の量子メモリとして構成され、入力「I」から、光子ビームの形態で量子通信を受信するように構成されたプローブ入力部110を備える。プローブフィールド光子ビームと呼ばれる光子ビームは、パルス状とすることができ、各パルスは平均して1キュービットを含み、795nmの波長を有する。なお、他の適切な波長または波長範囲、例えば、780nmから850nmの間の波長もまた企図される。プローブフィールド光子ビームは、例えば、レーザービームの激しい減衰によって、またはパラメトリック下方変換または単一光子源(例えば、量子ドット)などの様々な光学プロセスによって生成することができる。例示的なプローブフィールド光子ビーム調整構成は、
図22に関して以下に詳述される。
【0035】
第1ビームディスプレーサ120は、プローブフィールド光子ビームを、2つの直交偏光されたプローブフィールド光子ビームに分割し、これらは、互いに平行であり、互いに独立している。第1ビームディスプレーサ120は、水平成分を変位させるとともに、偏光の垂直成分が真っ直ぐ通過させる複屈折結晶であり得る。入力部110と第1ビームディスプレーサ120との間に、入力光子ビームをプローブ入力部110に提供する光ファイバの一様な偏光回転を補償するために、複数の回転波長板を設けることができる。第1ビームディスプレーサ120の後に配置された半波長板124は、ビームの一方の偏光を回転させて、両ビームすなわち両レールが第1グラントムソン偏光ビームスプリッタ145を通過して原子蒸気セルアセンブリ160に入ることを可能にし、これについては以下に詳述する。
【0036】
量子メモリモジュール100は、数mWのオーダーで、プローブフィールド光子ビームと同じまたはほぼ(許容範囲内で)同じ波長でパルス状とされ、プローブフィールド光子ビームに対して時間最適化されている制御フィールド光子ビームを受信するように構成された制御入力部130をさらに備える。制御フィールド光子ビームの調整の1つの構成と、プローブフィールド光子ビームと制御フィールド光子ビームとの間の時間最適化、同じ波長、および共鳴を達成するための入力調整の構成は、
図22を参照して以下に詳述される。
【0037】
制御フィールド光子ビームは、受信時にテレスコープ(
図3Bには示さず)を通過して、制御フィールドレールがプローブレールを完全に覆うことを確実にしてもよい。その後、制御フィールド光子ビームは、複数の波長板134を通って、制御フィールド光子ビームを2つの制御フィールド光子ビームに分割する第2ビームディスプレーサ140に向けられる。2つの制御フィールド光子ビームは互いに平行で独立しており、各制御フィールド光子ビームは、プローブフィールド光子ビームの1つに対応する。制御フィールド光子ビームは、制御フィールド光子ビームを対応するプローブフィールド光子ビームとマージする、第1グラントムソン(または他の適切なタイプ)偏光ビームスプリッタ145に向けられる。半波長板144は、ビームの一方の偏光を回転させて、その後、両ビームすなわち両レールが第1グラントムソン偏光ビームスプリッタ145を通過して原子蒸気セルアセンブリ160に入ることを可能にし、これについては以下に詳述する。
【0038】
平行で独立した一対の光子ビーム(それぞれが制御フィールド光子ビームとプローブフィールド光子ビームとのマージによって形成される)は、ビームサイズを蒸気セル161のビームサイズに適合させるように第1テレスコープ150を通じるように向けられ、次いで原子蒸気セルアセンブリ160に向けられる。蒸気セルアセンブリ160は、ルビジウム(Rb)などの放射性同位体、特に同位体
87Rbの原子と、クリプトン(Kr)および/またはネオン(Ne)などのバッファガスとを含む2つの原子蒸気セル161(
図14を参照)を含む。制御フィールド光子ビームは、蒸気セルアセンブリ160に入り、2つの蒸気セル161(2つの独立した容積)を調整し、これらは、それぞれプローブフィールド光子ビームの光子を記憶し、これらの光子を記憶および取り出すことを可能にするための記憶媒体として機能する(記憶時間を可変で制御可能とする)。
図10~
図14を一時的に追加参照すると、蒸気セルアセンブリ160は、その周りに、同心磁気シールド材料の3つの層、例えば、蒸気セルアセンブリ160の周りの磁気的に中性の媒体を取り囲み、維持するためのMuシールド162(層163a、163b、163c)と、1つまたは複数(例えば2つ)のヒーター164(加熱パッドとして示される
図12および
図14を参照)と、蒸気セルアセンブリ160の蒸気セル161の適切な温度(例えば55℃から70℃、ある実施形態では、60℃から約70℃)を維持するためにヒーター164を制御するべくPID制御ループを実行する比例積分微分(PID)コントローラ166(
図3B)と、を含む。安全回路(図示せず)も過熱を防ぐために使用される。蒸気セルアセンブリ160は、第3ボード20に吊るされるように、複数のブラケット168および複数の振動減衰器169(
図10)を介して取り付けられる。ブラケット168は、周囲の光学要素から過剰な熱を放散するためのヒートシンクとして機能する複数のフィンを規定する。蒸気セルアセンブリ160を中央に配置することは、その一定の温度を維持するのに役立ち、衝撃、不整合、および損傷に対する保護を向上させる(これは、振動減衰器169によってさらに促進される)。
【0039】
上記で詳述した平行で独立した一対の光子ビームは、デュアルレールEIT量子メモリを提供し、光子の任意の偏光を2つの空間的に分離された独立した「レール」の量子重ね合わせにマッピングされることを可能とする。これにより、個々の光子を記憶するとともに、偏光を保持できる。
【0040】
蒸気セルアセンブリ160の取り出し側では、記憶された光子の取り出しが望まれる場合(オンデマンドの場合があり、最大500μsの記憶時間を含む)のために、量子メモリモジュール100は、取り出された光子ビームを複数の波長板164を通して第2のグラントムソン(または他の適切な)偏光ビームスプリッタ180に向ける第2テレスコープ170を含み、これによって、偏光に基づいて制御フィールド光子をフィルタリングする、例えば、垂直偏光制御フィールド光子を水平偏光プローブパルスから分離する。ビームダンプ185は、第2のグラントムソン偏光ビームスプリッタ180から取り出された光子ビームの望まれない部分を収集し、一方、第2のグラントムソン偏光ビームスプリッタ180から取り出された光子ビームの所望の部分は、半波長板184を通って第3ビームディスプレーサ190に向けられ、第1および第2ビームディスプレーサ120、140とは反対方向に作用し、これによって、第3ビームディスプレーサ190が、一対の取り出された光子ビームを結合して単一の取り出された光子ビームとする。単一の取り出された光子ビームは、古典的な光ストレージのために抽出されてもよいし、またはフィルタリングモジュール200に向けられてもよい。いくつかの実施形態では、第2テレスコープ170、第2のグラントムソン偏光ビームスプリッタ180、ビームダンプ185、および第3ビームディスプレーサ190は、フィルタリングモジュール200の一部として特徴付けられることに留意されたい。
【0041】
図3Bを参照し続け、
図19~
図21をさらに参照して、フィルタリングモジュール200は、取り出された光子ビーム(プローブ光子と残りの減衰された制御部分の両方を含む)を受信し、制御フィールド光子ビームの残り(たとえば、制御フィールドの10
12個の不要な光子)と、周囲温度において存在するノイズとを、情報を伝達するプローブフィールド光子ビームに損傷を全く与えることなく除去するように構成されている。量子メモリモジュール100から受信された単一の取り出された光子ビームは、第1周波数フィルタ(例えば、PID温度制御された50dB以上のファブリペローキャビティ、フィルタ、またはエタロン)210に向けられ、次にビームを分割するために第4ビームディスプレーサ220に向けられる。次に、分割されたビームは、偏光維持磁気ファラデーアイソレータフィルタ230に提供され(任意の偏光キュービットについて、フィルタリングモジュール200全体にわたって光子に符号化された情報の保持を確実にする)、そこから、第4ビームディスプレーサ220とは反対方向の第5ビームディスプレーサ240に提供され、分割されたビームを再結合して単一の光子ビームとする。次に、光子ビームは、第2周波数フィルタ(たとえば、PID温度制御された50dB以上のファブリペローキャビティ、フィルタ、またはエタロン)250に向けられ、最終的に、複数の波長板254を通じて、量子メモリデバイス10の出力部260に向けられる。ファブリペローキャビティ210、250(および量子メモリデバイス10の他の温度上制約のある構成要素)は、複数の熱バリア290(
図5)を介して、発熱構成要素から熱的に隔離されている。それらはまた、様々な振動減衰器、例えば、振動減衰器15(
図4)、および内側構造フレーム14の構成を介して振動減衰される。さらに、ファン26(
図8を参照)は、量子メモリデバイス10の内部から熱を追い出すために利用され、より具体的には、ファブリペローキャビティ210、250(および/または量子メモリデバイス10の他の温度上制約のある構成要素)の温度安定化を確実にするのに役立つように配置される。ファン26は、以下に記載されるように、その正確な温度制御を確実にするために、ファブリペローキャビティ210、250のPIDコントローラによって制御され得る。
【0042】
フィルタリングモジュール200は、制御フィールド光子ビームを抑制し、すべての偏光入力に対して5%の総プローブフィールド透過を提供する能力を実証し、130dBの効果的な制御対プローブ抑制比を示し、このため効果的に制御フィールド光子ビームが除去される。さらに、~50dBの制御フィールドの消滅が達成される。送信周波数の細かなチューニングは、0.1K以下の精度で独立したPIDコントローラを使用して、パッシブ周波数フィルタ210、250の温度を制御することによって達成される(プローブフィールドから6.834GHzのオフセットで位相ロックされている制御フィールドの送信を最小限に抑えるために、210~220GHzの自由スペクトル範囲(FSR)を持つ場合がある)。
【0043】
フィルタリングモジュール200および量子メモリモジュール100はまた、ノイズを変化させ、ノイズに関して、EIT式の量子メモリデバイスの主要なソースは、自然発生的な4光波混合に由来し、これは、プローブ波長に不要なゲインを誘発する。フィルタリングモジュール200および量子メモリモジュール100は、より具体的には、蒸気セルアセンブリ160の87RB蒸気セル内の4光波混合によって生成されるストークスフィールドに破壊的に干渉する補助光フィールドを導入することによってノイズを低減するよう協働し、これにより、周波数フィルタリング後に実質的な信号対バックグラウンド比が実現される。このノイズ低減により、98%を超える忠実度が可能となる。しかしながら、他の適切なノイズフィルタリングスキームもまた企図される。エタロン210、250の過冷却を防止して露点に到達することを回避し、それらの表面での結露を防止するために、安全回路(明示的に示されていない)も提供される。
【0044】
次に、
図3C~
図5および
図8~
図21を参照して、量子メモリデバイス10は、複数の量子ネットワークに係るデバイスおよび/または他の適切な量子ネットワーク構成要素を含む量子ネットワークの一部として、実験室の外で使用するように構成された堅牢な周囲温度動作デバイスとして具体化される。本明細書の目的に関し、「ポータブル」とは、光学テーブル上にある実験室で動作する量子メモリとは対照的に、重要な補助機器やインフラストラクチャなしで、現場で持ち上げ、輸送、および配備できるデバイス(ラックマウントなど)を指す。ポータブル態様は、周囲温度での動作と組み合わされて、極低温冷却、レーザー冷却、および/または真空システムを必要とする代替手段とは異なり、スケーラビリティを高める。
【0045】
量子メモリデバイス10は、量子メモリモジュール100、フィルタリングモジュール200、およびモジュール100、200に関連する他の機能的構成要素(例えば、コントローラ、電源、センサ、ストレージ装置など)の様々な構成要素を支持する様々なサブアセンブリを含む。これらのサブアセンブリは、堅牢性、光学的安定性、長期動作を可能とし、モジュール化を促進する方法で、シェル12内に配置され、内側構造フレーム14によって支持される。より具体的には、量子メモリデバイス10は、量子メモリモジュール100の様々な構成要素を有する第1の上段16と、フィルタリングモジュール200の様々な構成要素を有する第2の下段18とを含む。第1段16を形成する第1の機械的取り付け層またはボード17は、蒸気セルアセンブリ160が第1ボード17(
図2)を通じるように画定された中央開口部内に着座した状態で、ボード17上に取り付けられ、ボード17から吊るされる量子メモリモジュール100の構成要素を含む。第2段18を形成する第2の機械的取り付け層またはボード19は、ボード19上に取り付けられたフィルタリングモジュール200の構成要素を含む。第3の機械的取り付け層またはボード20は、内側構造フレーム14の上部として機能し、原子蒸気セルアセンブリ160がボード20から吊るされた状態で、原子蒸気セルアセンブリ160がボード20上に取り付けられる。このように第3ボード20が配置されて、量子メモリモジュール100およびフィルタリングモジュール200の構成要素は、第1ボード17が第2および第3ボード19、20に対してほぼ中央に配置された状態で、それぞれ第2および第3ボード19、20の間に配置されている。コーナーピラー22は、構造的支持を提供し、ボード17、19、20間の適切な間隔を維持し、ひいては、量子メモリモジュール100およびフィルタリングモジュール200の構成要素間の適切な間隔を維持するために提供される。
【0046】
特に
図4および
図8を参照して、シェル12は、量子メモリデバイス10をラックに取り付けることを可能にするために、シェル12の両側に配置されたスライドブラケット24を含み得る。例えば、量子メモリデバイス10は、標準の19インチ(48.26センチメートル)ラックで使用するためのサイズにすることができる。なお、他の構成も企図される。
図8、
図19、および
図21に示すように、ファン26は、シェル12に吊るされるように取り付けることができる。ファン26は、量子メモリデバイス10の電子構成要素の冷却、および、シェル12の内部の外部への排気を促すことが認められる。実施形態では、ファン26は、上記のように、ファブリペローキャビティ210、250の安定した温度を維持するために、ファブリペローキャビティ210、250の下に吊るされるなどして、ファブリペローキャビティ210、250に隣接して配置される(
図8および9を参照)。
図8の参照を続けて、量子メモリデバイス10の後部(または1つまたは複数の他の部分)はさらに、AC電源レセプタクル29a、オン/オフ電源ボタン29b、量子メモリデバイス10を監視、チューニング、および/または制御するための1つまたは複数のUSBまたは他の適切なポート29c、例えば電源からの熱の放散に役立つように構成された複数のヒートシンクフィン29d、および蒸気セルアセンブリ160の蒸気セル161の温度の外部監視および/または制御を可能にするように構成された温度制御パネル29eを含む(
図10~
図14を参照)。
【0047】
図6を参照して、例えば、量子メモリデバイス10(
図1)または任意の他の適切な量子メモリデバイスを使用するなどして周囲温度の量子通信を容易にする方法600が詳述される。方法600は、610で、プローブフィールド光子ビーム(キュービット)を受信し、620で、プローブフィールド光子ビームを第1および第2の独立した(および直交偏光および平行)プローブビームに分割することを含む。同時に、または時間的に近い態様で、制御フィールド光子ビームは630で受信され、例えば時間的態様、波長、および偏光に関して640で調整され、プローブフィールド光子ビームと同様に650で分割される。660で、第1および第2の制御ビームは、第1および第2のプローブビームとそれぞれマージされて、2つの独立したマージされたビーム(それぞれが制御ビーム成分およびプローブビーム成分を有する)を提供する。次に、独立したマージされたビームは、670で示されるように、量子メモリ蒸気セルの中に記憶するために量子メモリ蒸気セルに向けられる。上記の方法では、以下に説明するように、独立したマージされたビームの選択的に取り出しが可能とされる。
【0048】
図7を参照して、方法700は、記憶された量子通信の取り出しおよび出力のために提供される。方法700では、量子メモリの蒸気セルに記憶されている独立したビームが710で取り出される(これらの2つのビームはマージされており、両ビームは、制御フィールド成分とプローブフィールド成分を有する)。2つの独立したビームは、720で結合され、730でフィルタリングされ、740で分割され、750で再度フィルタリングされ、760で再結合される。最後に、770で、記憶された量子通信(キュービット)が量子メモリから取り出される。このプロセスは、プローブフィールド光子ビームとそれが伝達する量子情報に損傷を与えることなく、制御フィールドビームからのノイズを除去する。最終的に、上記のようにフィルタリングされると、結果として生じる光子ビームは、別のデバイス、構成要素、またはシステムに送信するために出力される。
【0049】
キュービットの調整
図22を参照すると、メモリ10(
図1)に入力するためのプローブフィールド光子ビームおよび制御フィールド光子ビームを生成するための例示的なデバイスが示されている。これは、レーザー調整モジュール910および入力調整モジュール960を含み、概略的に参照番号900によって識別される。レーザー調整モジュール910は、コンパクト飽和分光法(ドップラーフリー分光法)システム916(例えば、米国ニューヨーク州ファーミントンのトプティカフォトニクス社(Toptica Photonics Inc)から入手可能なトプティカ(Toptica)CoSyシステム)およびPIDロック914を使用して制御されるプローブフィールド光子ビームを生成するために使用される第1のダイオードレーザー912を含む。音響光学変調器(AOM)918は、ロッキングビームがシステム916に入る前に配置される。
【0050】
第2のダイオードレーザー920によって生成された制御フィールド光子ビームは、PID位相ロック922を使用してプローブフィールド光子ビームから離れた特定の周波数、例えば6.8348GHで光を送信するようにロックされる(周波数ジェネレータ924およびファンクションジェネレータ926からの信号と混合して)。
【0051】
上で詳述したように生成された後、プローブフィールド光子ビームおよび制御フィールド光子ビームは、メモリ10(
図1)に入る前に整形されるよう、レーザー調整モジュール910から入力調整モジュール960に送信される。マスタートリガー(QC)964によって制御されるFPGA制御DAC(または任意波形ジェネレータ)962は、プローブフィールド光子ビームの繰り返し率を設定し、トリガーごとに1つのFWHMガウスエンベロープを生成する。次に、このパルスは、AOM968への振幅変調(AM)入力としてAOMドライバ966に送られ、これとともに、信号ジェネレータ(SG)970によって提供される周波数変調(FM)入力も、プローブフィールド光子ビームを整形するためにAOM968に提供される。制御フィールド光子ビームは、同様に、QC964からのAM入力およびSG970にクローズされたSG976からのFM入力を受信するAOMドライブ974によって駆動されるAOM972を介して整形される。次に、これらのビームはメモリ10に送信される(
図1)。プローブ光子は、平均してn=1になるように、大幅に減衰される。あるいは、本物の単一光子源を使用し得る。
【0052】
量子ネットワーク
図23および
図24を参照して、量子ネットワークには、各ノードの出力が当該ノードに提供される入力と区別できない程度に、完全に近い忠実度で量子情報をコヒーレントに操作できるいくつかの量子ノードが必要である。これらのノードは、例えば、1つまたは複数の量子メモリ、量子シミュレータ、乱数ジェネレータ、エンタングルメントソース、および/または光子ゲートを含み得る。
【0053】
そのような量子ネットワークおよび方法の一例は、室温量子メモリ、例えば、複数のメモリ10を利用して、偏光キュービットを使用するマルチノードメモリ支援量子ネットワークを提供する。一般にネットワーク1000と呼ばれるそのようなネットワークの基本構成は、2つの偏光キュービットソース1100、接続部1200、例えば、光ファイバケーブルまたは他の適切な接続部(自由空間接続を含む)を介して、偏光キュービットソース1100の対応する1つに各々接続された2つの室温量子メモリ10(上記に詳述)、および4つの単一光子検出器1310を使用する1つのベル状態測定ステーション1300を含む。ホン-オウ-マンデル(Hong-Ou-Mandel)(HOM)干渉実験により、このネットワーク1000の2つの室温量子メモリ10からの同一の記憶と取り出しが検証されている。たとえば、取り出された光子の偏光および時間エンベロープ、光周波数の両方が、記憶の後も同じ状態に維持される。
【0054】
偏光キュービットソース1100は、より具体的には、独立したレーザーダイオード1102を含み、音響光学および電気光学変調器1110、1120をそれぞれ利用して、方法2700のステップ2710、2712で偏光キュービットのランダムストリームを生成する。より具体的には、ダイオード1102は、ビームを生成する(独立した音響光学変調器(AOM)1110がプローブフィールドを時間的に整形する)。ジェネレータAOM1100は、2つの位相ロック信号ジェネレータによって駆動される。2つのDAC(または任意の波ジェネレータ)がAOM1110の振幅を変調する。これらのDAC(または任意の波ジェネレータ)は、マスタートリガーFPGAによってトリガーされ、プローブパルスのFWHMガウスエンベロープを生成する。独立した電気光学変調ユニット(EOM)1120は、プローブパルス上の所望の偏光状態を符号化するために配置されている。出力偏光は、EOM1120への入力印加電圧に基づいて変調される。FPGA式の回路は、高速動作とトリガー同期制御のために高電圧アンプを制御する。FPGAは、完全な(量子)ランダムシーケンスを含む任意の偏光シーケンスを生成するようにプログラム可能である。プローブフィールドビームおよび制御フィールドビームの両方は、方法2700のステップ2720、2722に示されるように、接続部1200、例えば、シングルモード光ファイバを介して、偏光キュービットソース1100からそれぞれのメモリ10に送達される。
【0055】
ビームは、接続部1200を通じてメモリ10に進み、ここで、上で詳述したように、方法2700のステップ2730、2732に示されるように、キュービットは、各メモリ10の一対の独立したデュアルレールに記憶される。より具体的には、キュービットは、方法600(
図6)に従って記憶される。記憶後、方法2700のステップ2740、274に示されるように、キュービットが取り出され、例えば、方法700(
図7)に従って、時間的波動関数マッチングが実行され、取り出されたキュービットは、方法2700のステップ2750、2752に示されるように、ベル状態測定ステーション1300に送られる。ベル状態測定ステーション1300は、方法2700のステップ2760に示されるように、入ってくる取り出されたキュービットをベル状態に射影する。より具体的には、一連の波長板を使用して、光ファイバ内の伝搬によって引き起こされる偏光回転を補償する。メモリ10から取り出されたパルスは、50:50のビームスプリッタで干渉され、ビームスプリッタの出力アームに配置された2つの単一光子検出器(SPCM)は、それらがヒットを記録するたびに信号を生成する。SPCMからのデータを分析して、NPBSの互いに対向する出力アーム間の一致率を計算する。
【0056】
本開示の量子ネットワークは、高効率、制御、および寿命を保証するために、量子ネットワークのデバイスを監視および制御するためのソフトウェア定義のインフラストラクチャをさらに含み得る。特に、光フィルタリング、Rbセルの温度監視、電力監視、および他のパラメータのためのフィードバックシステムを含むメモリ10(
図1)は、ネットワークを介して制御することができる。さらに、自己ターニングの目的とネットワークパフォーマンス分析のために、機械学習またはその他の人工知能プロトコルを実装して、動作パラメータを最適化し得る。
【0057】
より具体的には、
図25を参照して、量子メモリデバイス10の最適化および動作を遠隔制御するように構成された制御システム3000の実施形態が示されている。1つの量子メモリデバイス10に関して示されているが、制御システム3000は、1つまたは複数の量子ネットワークにわたる複数の量子メモリデバイス10(および/または他の量子デバイス)の遠隔制御の最適化および動作を可能にし得ることが企図される。制御システム3000は、複数のサブシステム、すなわち、オンデマンドフィードバックサブシステム3010、機械学習サブシステム3020、および量子/古典的フィードバックサブシステム3030を含む。制御システム3000の一部は、自動化(例えば、単一光子レベルでのノイズ除去)およびシステム安定化(例えば、送信ファイバの偏光)のためのハイブリッド量子/古典制御および高速フィードバック制御のためのFPGAデバイスを使用して実装され得る。
【0058】
制御システム3000のオンデマンドフィードバックサブシステム3010は、キャビティ210、250の温度を安定させるためのフィルターキャビティ210、250(
図3Bを参照)に関連するPIDコントローラおよびファン26(
図8および
図9)と、蒸気セルアセンブリ160(
図3Bを参照)の温度を制御するためのPIDコントローラ166およびヒーター164と、モードマッチングフィードバックと、光学構成要素の自動アライメント最適化と、システム全体のステータス監視(たとえば、侵入検知、サイドチャネル攻撃の保護シャッター、デコイ状態の実装などを含む)との制御を含む。
【0059】
機械学習サブシステム3020は、パルス整形と時間調節(パルスパラメータの空間的および時間的チューニング)、およびノイズキャンセリング(超低ノイズ単一光子ストレージレジームの実装)を最適化する。機械学習サブシステム3020は、教師あり学習、半教師あり学習、教師なし学習、強化学習、相関ルール学習、決定木学習、異常検出、特徴学習などのうちの1つまたは複数を実装することができ、ニューラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシン、遺伝的アルゴリズムなどのうちの1つ以上としてモデル化できる。
【0060】
量子/古典的フィードバックサブシステム3030は、自動化されたほぼリアルタイムの偏光および電力測定および安定化と、ノイズキャンセリング(超低ノイズの単一光子ストレージレジームの実装)と、量子乱数ジェネレータと情報符号化のフィードバック式制御とを提供する。パルス整形および時間調節は、追加的または代替的に、量子/古典的フィードバックサブシステム3030に実装される場合があり、そのような実施形態では、量子メモリデバイス10に入力され、また、量子メモリデバイス10から出力される光の制御および監視、ならびに光が量子メモリデバイス10に長期間記憶されることを可能にする。これには、FPGA SoC(シングルボードコンピューター)が含まれる場合がある。
【0061】
当業者は、上記で具体的に説明され、関連する図に示される特徴は、非限定的な例示的な実施形態であり、説明、開示、および図は、単に特定の実施形態の例示として解釈されるべきであることを理解する。したがって、本開示は、記載された実施形態に厳密に限定されず、開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、当業者によって様々な他の変更および修正を行うことができることを理解されたい。