(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012689
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230119BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20230119BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/1391
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116279
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大工原 秀吾
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050GA06
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】電極中の金属異物を低減する。
【解決手段】電極の製造方法は(a)~(d)を含む。(a)異物粒子と活物質粒子とを含む活物質粉末を準備する。(b)活物質粉末を含む第1電極材料を調製する。(c)第1電極材料に乾式分級処理を施すことにより、第1電極材料に含まれる異物粒子を低減する。(d)分級後の第1電極材料を含む活物質層を形成する。第1電極材料は粉末状である。異物粒子は金属異物を含み、かつ粗大粒子である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)異物粒子と活物質粒子とを含む活物質粉末を準備すること、
(b)前記活物質粉末を含む第1電極材料を調製すること、
(c)前記第1電極材料に乾式分級処理を施すことにより、前記第1電極材料に含まれる前記異物粒子を低減すること、および、
(d)分級後の前記第1電極材料を含む活物質層を形成すること、
を含み、
前記第1電極材料は粉末状であり、
前記異物粒子は金属異物を含み、かつ粗大粒子である、
電極の製造方法。
【請求項2】
前記(d)は、
(d2)分級後の前記第1電極材料に、第2電極材料を混合することにより、粉粒体組成物を調製すること、および、
(d3)前記粉粒体組成物を基材の表面に塗装すること、
を含み、
前記第2電極材料は、導電材、固体電解質、結着材および溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記粉粒体組成物は、質量分率で70~100%の固形分率を有する、
請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記(d)は、
前記(d2)の前に、
(d1)前記第2電極材料の少なくとも一部に磁選処理を施すことにより、前記第2電極材料に含まれる磁性金属粒子を低減すること、
をさらに含む、
請求項2または請求項3に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
前記活物質粒子は磁性を有する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項6】
前記粗大粒子は、短径と長径とを有し、
前記短径は、前記活物質粉末のD99の2倍以上であり、
前記D99は、体積基準の粒度分布において、粒径が小さい方からの頻度の累積が全体の99%に達する粒径を示す、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-102967号公報(特許文献1)は、活物質層形成用スラリーをろ過するためのフィルタを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、電池の電極はスラリー(粒子分散液)の塗布により製造されている。すなわち、活物質粉末、結着材および溶剤が混合されることにより、スラリーが調製され得る。スラリーが基材の表面に塗工されることにより、活物質層が形成され得る。
【0005】
溶剤は、結着材を溶解し得る。溶剤は、固体粒子の分散媒でもある。溶剤は、例えば有機溶媒等を含み得る。例えば製造コスト、環境負荷等の観点から、電極製造に伴う溶剤の使用量を低減することが求められている。そこで、スラリーを経由しないプロセスも提案されている。例えば、活物質粉末および結着材が混合されることにより、粉粒体組成物が調製される。粉粒体組成物が基材の表面に塗装されることにより、活物質層が形成され得る。
【0006】
活物質粉末は活物質粒子を含む。活物質粒子は電極反応を生起する。活物質粉末は、理想的には、活物質粒子からなる。しかし活物質粉末は、微量の金属異物も含み得る。金属異物は、意図しない不純物である。金属異物は、例えば活物質粉末の製造設備の摩耗等により生じると考えられる。金属異物は粒子状である。電極に混入した金属異物は、電池性能に悪影響を及ぼす可能性がある。とりわけ、金属異物が粗大粒子である場合、影響が現れやすい。例えば、電池の自己放電量が多くなる可能性がある。
【0007】
金属異物は、磁性体(例えば鉄等)を含み得る。従来、活物質粉末の合成後、活物質粉末に対して磁力選別処理(以下「磁選処理」と記される。)が施されることにより、金属異物が低減されている。しかし磁選処理による分離効率は十分ではない。例えば、コバルト酸リチウム等の活物質粒子は、磁性体であり得る。活物質粒子が磁性を有する場合、金属異物の分離効率が低下し得る。活物質粒子も磁石に付着するためである。さらに、金属異物が非磁性体(例えば銅等)であることもある。
【0008】
活物質粉末を溶剤に分散させることにより、スラリーを調製し、該スラリーをフィルタでろ過することにより、金属異物を低減することも考えられる。しかしスラリーを経由することにより、溶剤の使用量が増加することになる。
【0009】
本開示の目的は、電極中の金属異物を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本開示の技術的範囲を限定しない。
【0011】
1.電極の製造方法は、下記(a)~(d)を含む。
(a)異物粒子と活物質粒子とを含む活物質粉末を準備する。
(b)活物質粉末を含む第1電極材料を調製する。
(c)第1電極材料に乾式分級処理を施すことにより、第1電極材料に含まれる異物粒子を低減する。
(d)分級後の第1電極材料を含む活物質層を形成する。
第1電極材料は粉末状である。異物粒子は金属異物を含み、かつ粗大粒子である。
【0012】
電池性能に悪影響を及ぼし得る金属異物は、粗大粒子である。粗大粒子は、活物質粉末の粒度分布から外れている。粗大粒子は、分級処理により、活物質粉末から分離され得る。したがって、活物質粉末に分級処理が施されることにより、電池性能に悪影響を及ぼし得る金属異物が低減され得る。分級処理は、その原理上、磁性の影響を受けない。活物質粒子および異物粒子が磁性体であるか否かにかかわらず、分離が可能である。さらに、分級処理が乾式であることにより、溶剤の使用量が低減され得る。
【0013】
なお、金属異物は、例えば、その表面が酸化している可能性もある。すなわち、異物粒子は金属異物に加えて、金属酸化物等をさらに含み得る。
【0014】
また、第1電極材料は、活物質粉末からなっていてもよい。すなわち、活物質粉末が単独で分級されてもよい。第1電極材料は、活物質粉末に加えて、導電材、固体電解質および結着材からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。すなわち、活物質粉末を含む混合粉末が分級されてもよい。
【0015】
。
2.上記(d)は、例えば、下記(d2)および(d3)を含んでいてもよい。
(d2)分級後の第1電極材料に、第2電極材料を混合することにより、粉粒体組成物を調製する。
(d3)粉粒体組成物を基材の表面に塗装する。
第2電極材料は、例えば、導電材、固体電解質、結着材および溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0016】
例えば、電極製造に使用される材料が、第1電極材料と第2電極材料とに分類されてもよい。第2電極材料は、例えば、磁選処理に適する材料群を含んでいてもよい。磁選処理に適する材料は、例えば、実質的に非磁性体からなっていてもよい。磁選処理に適する材料に対しては、磁選処理が施されてもよい。
【0017】
粉粒体組成物は、粉末状、顆粒状の外観を有する。粉粒体組成物が基材の表面に塗装されることにより、活物質層が形成され得る。粉粒体組成物は、少量の溶剤を含み得る。しかし粉粒体組成物は、スラリー(粒子分散液)と異なる。粉粒体組成物においては、溶剤が液滴となって、固体材料(粉末、顆粒)中に分散している。他方、スラリーにおいては、溶剤(分散媒)中に、固体材料が分散している。
【0018】
3.粉粒体組成物は、例えば、質量分率で70~100%の固形分率を有していてもよい。
【0019】
「固形分率」は、混合物全体の質量に対する、混合物に含まれる溶剤以外の成分の質量分率を示す。例えば、溶剤に結着材が溶解している場合、結着材(溶質)は、溶剤以外の成分とみなされる。例えば、100%の固形分率を有する粉粒体組成物は、実質的に溶剤を含まない。100%の固形分率を有する粉粒体組成物は、乾燥粉末または乾燥顆粒であり得る。例えば、70%以上100%未満の固形分率を有する粉粒体組成物は、湿潤粉末または湿潤顆粒であり得る。なお、スラリーは、例えば質量分率で60%以下の固形分率を有し得る。顆粒は「造粒体」とも称され得る。
【0020】
4.上記(d)は、上記(d2)の前に、下記(d1)をさらに含んでいてもよい。
(d1)第2電極材料の少なくとも一部に磁選処理を施すことにより、第2電極材料に含まれる磁性金属粒子を低減する。
【0021】
例えば、第2電極材料全体(混合粉末)に磁選処理が施されてもよい。例えば、第2電極材料の一部(例えば導電材のみ)に磁選処理が施されてもよい。第2電極材料に磁選処理が施されることにより、電極中の金属異物がいっそう低減され得る。
【0022】
5.活物質粒子は磁性を有していてもよい。
【0023】
活物質粒子が磁性を有する場合、磁選処理における分離効率が低下する。活物質粒子が磁性を有する場合、乾式分級処理が特に有効であると考えられる。
【0024】
6.粗大粒子は、短径と長径とを有する。短径は、例えば、活物質粉末のD99の2倍以上であってもよい。D99は、体積基準の粒度分布において、粒径が小さい方からの頻度の累積が全体の99%に達する粒径を示す。
【0025】
粗大粒子は微量である。粗大粒子は、D99までの粒度分布に現れないと考えられる。D99は「Dmax」とも称され得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本実施形態における電極の製造方法を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<用語の定義等>
以下、本開示の実施形態(「本実施形態」と略記され得る。)、および本開示の実施例(「本実施例」と略記され得る。)が説明される。ただし、本実施形態および本実施例は、本開示の技術的範囲を限定しない。
【0028】
本明細書において、「備える」、「含む」、「有する」、および、これらの変形(例えば「から構成される」等)の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる」との記載はクローズド形式である。ただしクローズド形式であっても、通常において付随する不純物であったり、本開示技術に無関係であったりする付加的な要素は排除されない。「実質的に…からなる」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式においては、本開示技術の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与えない要素の付加が許容される。
【0029】
本明細書に記載される方法において、複数のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その実行順序が記載順序に限定されない。例えば、複数のステップが同時進行してもよい。例えば複数のステップが相前後してもよい。
【0030】
本明細書において、「してもよい」、「し得る」等の表現は、義務的な意味「しなければならない」という意味ではなく、許容的な意味「する可能性を有する」という意味で使用されている。
【0031】
本明細書において、単数形で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子群」も意味し得る。
【0032】
本明細書において、例えば「70~100%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「70~100%」は、「70%以上100%以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0033】
本明細書において、全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本開示技術の利用形態によって変化し得る近似値である。全ての数値は有効数字で表示される。全ての測定値等は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により処理され得る。全ての数値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差を含み得る。
【0034】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は代表例に過ぎない。組成比は非化学量論的であってもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0035】
本明細書において、粒子は短径と長径とを有する。「長径」は、粒子画像の輪郭線上において最も離れた2点間の距離を示す。「短径」は、長径をなす線分の中点において、該線分と直交する径を示す。短径が長径と等しいこともある。
【0036】
本明細書において、体積基準の粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒径が小さい方からの頻度の累積が全体の50%に達する粒径を示す。「D99」は、体積基準の粒度分布において、粒径が小さい方からの頻度の累積が全体の99%に達する粒径を示す。
【0037】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「平行」、「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本開示技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0038】
<電極の製造方法>
図1は、本実施形態における電極の製造方法を示す概略フローチャートである。以下、本実施形態における電極の製造方法が、「本製造方法」と略記され得る。本製造方法は、「(a)活物質粉末の準備」、「(b)第1電極材料の調製」、「(c)分級」、および「(d)活物質層の形成」を含む。
【0039】
本製造方法においては、例えばリチウムイオン電池用の電極が製造され得る。ただしリチウムイオン電池は一例に過ぎない。本製造方法は、任意の電池系に適用され得る。本製造方法においては、正極および負極の少なくとも一方が製造され得る。
【0040】
《(a)活物質粉末の準備》
本製造方法は、活物質粉末を準備することを含む。活物質粉末は任意の方法で準備され得る。例えば、既製品の活物質粉末が市場から入手されてもよい。例えば、活物質粉末が製造されることにより、活物質粉末が準備されてもよい。例えば、原料混合、共沈、焼成、粉砕、整粒、磁選、梱包等のプロセスを経て、活物質粉末が製造されてもよい。
【0041】
活物質粉末は、異物粒子と活物質粒子とを含む。活物質粉末は、例えば、1~30μmのD50を有していてもよい。活物質粉末は、例えば、5~20μmのD50を有していてもよい。活物質粉末は、例えば、50μm未満のD99を有していてもよい。活物質粉末は、例えば、30~40μmのD99を有していてもよい。異物粒子は粗大であり、かつ微量である。そのため、異物粒子はD99までの粒度分布に含まれないと考えられる。したがって、分級前後でD50、D99は、実質的に変化しないと考えられる。
【0042】
〈異物粒子〉
活物質粉末は、不可避的に異物粒子を含み得る。異物粒子は粗大粒子である。異物粒子は、例えば、50μm以上の短径を有していてもよい。異物粒子は、例えば、1mm以下の短径を有していてもよい。異物粒子の短径は、例えば、活物質粉末のD99の2倍以上であってもよい。異物粒子の短径は、例えば、活物質粉末のD99の2~10倍であってもよいし、2~5倍であってもよいし、2~3倍であってもよい。
【0043】
活物質粉末に含まれる異物粒子の個数は、次の手順で測定され得る。所定量の活物質粉末が分散媒に分散されることにより、粒子分散液が調製される。例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が分散媒に好適である。フィルタが準備される。フィルタは38μmの目開きを有する。粒子分散液がフィルタでろ過される。フィルタ上の残渣がSEM-EDX(Scanning Electron Microscope - Energy Dispersive X-ray spectroscopy)により分析される。分析視野の画像解析により、50μm以上の短径を有する粒子が計数される。同時に該粒子の組成が定性される。これにより、50μm以上の短径を有する異物粒子の個数が測定される。異物粒子の個数は、10gの活物質粉末当たりの個数として表示される。
【0044】
活物質粉末は、例えば、10g当たり1~100個の異物粒子と、残部の活物質粒子とを含んでいてもよい。活物質粉末は、例えば、10g当たり5~50個の異物粒子と、残部の活物質粒子とを含んでいてもよい。活物質粉末は、例えば、10g当たり10~30個の異物粒子と、残部の活物質粒子とを含んでいてもよい。なお、活物質粉末は、例えば、10g当たり106~107個の活物質粒子を含んでいてもよい。
【0045】
活物質粉末は、例えば、質量分率で、0.1~100ppm(parts per million)の異物粒子と、残部の活物質粒子とを含んでいてもよい。異物粒子の質量分率は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectroscopy)等により測定され得る。
【0046】
異物粒子は金属異物を含む。金属異物は電極反応に寄与しないと考えられる。例えばリチウムイオン電池において、電極反応は、リチウムイオンの吸蔵反応および放出反応を示す。異物粒子は、実質的に金属異物からなっていてもよい。異物粒子は、例えば、ステンレス(SUS)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、珪素(Si)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)および銅(Cu)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。金属異物の一部または全部が、例えば酸化物、炭化物、窒化物等を形成している可能性もある。例えば、金属異物の表面に酸化物層が形成されていてもよい。異物粒子は、金属に加えて、例えば、酸素、炭素、窒素、リン、および硫黄からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0047】
活物質粉末は、例えば、質量分率で0.1~10ppmのFeを含んでいてもよい。活物質粉末は、例えば、質量分率で10~100ppb(parts per billion)のCuを含んでいてもよい。
【0048】
〈活物質粒子〉
活物質粒子は活物質を含む。活物質は電極反応を生起し得る。活物質粒子は、実質的に活物質からなっていてもよい。活物質粒子は、任意の成分を含み得る。活物質粒子は正極活物質を含んでいてもよい。活物質粒子は負極活物質を含んでいてもよい。活物質粒子は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、LiFePO4、Si、SiO、Sn、SnO、およびLi4Ti5O12からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」における「(NiCoMn)」は、括弧内の組成比の合計が1であることを示す。合計が1である限り、個々の成分量は任意である。Li(NiCoMn)O2は、例えばLi(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O2、Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.1)O2等を含んでいてもよい。
【0049】
活物質粒子は磁性を有していてもよい。例えば、Fe、Co、Ni等の遷移金属元素を含む活物質粒子は、磁性を有し得る。例えば、Li(NiCoMn)O2、LiFePO4は、磁性を有し得る。
【0050】
《(b)第1電極材料の調製》
本製造方法は、第1電極材料を調製することを含む。第1電極材料は粉末状である。第1電極材料は、活物質粉末を含む。例えば、第1電極材料は、活物質粉末からなっていてもよい。例えば、第1電極材料は、活物質粉末に加えて、その他の粉末材料をさらに含んでいてもよい。その他の粉末材料は、例えば、導電材、固体電解質および結着材からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0051】
例えば、活物質粉末と、その他の粉末材料とが、単純に混合されることにより、第1電極材料が調製されてもよい。例えば、複合粒子が形成されるように、第1電極材料が調製されてもよい。例えば、活物質粒子の表面に、導電材、固体電解質、結着材等が固着されることにより、複合粒子が形成されてもよい。複合粒子は、例えば、メカノケミカル法により形成されてもよい。
【0052】
〈導電材〉
導電材は粉末状であり得る。導電材は、電極中に電子伝導パスを形成し得る。導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、導電性炭素粒子、導電性炭素繊維等を含んでいてもよい。導電材は、例えば、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンフレークおよび黒鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。カーボンブラックは、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、およびサーマルブラックからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0053】
導電材も異物粒子(金属異物)を含み得る。異物粒子の詳細は前述のとおりである。異物粒子は、導電材の製造過程で混入し得ると考えられる。
【0054】
導電材に含まれる異物粒子の個数は、次の手順で測定され得る。導電材がポリタングステン酸ナトリウム(SPT)溶液に分散されることにより、試料液が調製される。試料液が遠心分離機によって処理されることにより、沈殿物が回収される。沈殿物がSEM-EDXにより分析される。分析視野の画像解析により、50μm以上の短径を有する粒子が計数される。同時に該粒子の組成が定性される。これにより、50μm以上の短径を有する異物粒子の個数が測定される。異物粒子の個数は、10gの導電材当たりの個数として表示される。
【0055】
導電材は、例えば、10g当たり1~100個の異物粒子と、残部の炭素粒子(または炭素繊維)とを含んでいてもよい。導電材は、例えば、10g当たり5~50個の異物粒子と、残部の炭素粒子とを含んでいてもよい。導電材は、例えば、10g当たり10~30個の異物粒子と、残部の炭素粒子とを含んでいてもよい。
【0056】
導電材は、例えば、質量分率で0.1~100ppmの異物粒子と、残部の炭素粒子とを含んでいてもよい。異物粒子の質量分率は、ICP-AES等により測定され得る。
【0057】
〈固体電解質〉
固体電解質は粉末状であり得る。例えば、電極が全固体電池用である場合、電極は固体電解質を含み得る。固体電解質は、電極中にイオン伝導パスを形成し得る。固体電解質は、例えば、Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2S5、LiBr-Li2S-P2S5、およびLiI-LiBr-Li2S-P2S5からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0058】
〈結着材〉
結着材は粉末状であり得る。結着材は、電極中の固体材料同士を結合する。結着材は、任意の成分を含み得る。結着材は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0059】
固体電解質、結着材にも、異物粒子が混入する可能性もある。例えば、結着材に含まれる異物粒子の個数は、導電材と同様の手順により測定され得る。異物粒子の定性結果から、各材料に含まれる異物粒子が磁性体か否かが判断され得る。異物粒子の定性結果に基づいて、磁選処理(後述)の対象材料が決定されてもよい。
【0060】
《(c)分級》
本製造方法は、第1電極材料に乾式分級処理を施すことにより、第1電極材料に含まれる異物粒子を低減することを含む。
【0061】
乾式分級処理においては、液体が実質的に使用されず、空気中(またはガス中)で分級が行われる。例えば、窒素ガス雰囲気中で分級が行われてもよい。なお、湿式分級処理においては、液体中で分級が行われる。
【0062】
本製造方法は、分級処理の前に、第1電極材料を乾燥することを含んでいてもよい。第1電極材料が乾燥されることにより、分離効率の向上が期待される。水分の低減により、粒子凝集が生じ難くなるためと考えられる。例えば、気流乾燥機等により、第1電極材料が乾燥されてもよい。例えば、質量分率で500ppm以下の水分量となるように、第1電極材料が乾燥されてもよい。第1電極材料の水分量は、カールフィッシャー法により測定され得る。
【0063】
本製造方法においては、任意の乾式分級機が使用され得る。例えば、気流分級機、乾式ふるい分級機等が使用されてもよい。例えば、乾式ふるい分級機は、気流分級機に比して小型であり得る。また、乾式ふるい分級機は、気流分級機に比して、消費エネルギが少ない傾向がある。乾式ふるい分級機の採用により、例えば、製造コストの低減が期待される。
【0064】
乾式分級機により、第1電極材料が分級される。狙いの粗大粒子が分離されるように、分級点が設定される。分級点は、例えば、活物質粉末のD99を超えるサイズに設定されてもよい。分級点は、例えば、活物質粉末のD99の2倍以上のサイズに設定されてもよい。1回の分級処理が実施されてもよい。2回以上の分級処理が実施されてもよい。
【0065】
乾式分級処理により、異物粒子(粗大粒子)が低減され得る。例えば、10gの活物質層(後述)において、異物粒子の個数が6個未満となるように、乾式分級処理が実施されてもよい。例えば、10gの活物質層において、異物粒子の個数が1個以下となるように、乾式分級処理が実施されてもよい。
【0066】
《(d)活物質層の形成》
本製造方法は、分級後の第1電極材料を含む活物質層を形成することを含む。第1電極材料が結着材を含む場合、第1電極材料が基材の表面に塗装されてもよい。
【0067】
例えば、分級後の第1電極材料に、第2電極材料が追加されてもよい。第2電極材料は、例えば、導電材、固体電解質、結着材および溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材、固体電解質、および結着材の詳細は前述のとおりである。
【0068】
〈溶剤〉
溶剤は液体である。溶剤は、粉粒体組成物(後述)において、粒子凝集を促進し得る。本実施形態における溶剤は、いわば「造粒促進剤」である。溶剤は、例えば、水、有機溶媒等を含んでいてもよい。溶剤は、結着材を溶解し得る成分を含んでいてもよい。溶剤は、例えば、水、酪酸ブチルおよびNMPからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0069】
〈(d1)第2電極材料の磁選〉
例えば、「(d)活物質層の形成」は、「(d1)第2電極材料の磁選」、「(d2)粉粒体組成物の調製」、および「(d3)塗装」等を含んでいてもよい。
【0070】
第2電極材料は、例えば、実質的に非磁性体からなっていてもよい。例えば、第2電極材料の少なくとも一部に、磁選処理が施されてもよい。これにより、第2電極材料に含まれる磁性金属粒子(金属異物)が低減され得る。例えば、第2電極材料の少なくとも一部が、マグネットフィルタに通されることにより、磁選処理が実施されてもよい。個々の材料に対して、磁選処理が個別に施されてもよい。例えば、導電材および結着材の各々に対して、個別に磁選処理が施されてもよい。例えば、導電材および結着材の混合物に対して、磁選処理が施されてもよい。
【0071】
〈(d2)粉粒体組成物の調製〉
例えば、分級後の第1電極材料に、第2電極材料が混合されることにより、粉粒体組成物が調製されてもよい。第2電極材料は磁選後であってもよい。
【0072】
例えば、任意の混合機、攪拌機、造粒機等により、粉粒体組成物が調製され得る。粉粒体組成物は、粉末状であってもよいし、顆粒状であってもよい。粉粒体組成物は、活物質粉末および結着材を含む。粉粒体組成物は、導電材、固体電解質をさらに含んでいてもよい。粉粒体組成物は、例えば、質量分率で、1~10%の結着材と、0~10%の導電材と、0~50%の固体電解質と、残部の活物質粉末とを含んでいてもよい。粉粒体組成物は、例えば、質量分率で、1~10%の結着材と、1~10%の導電材と、残部の活物質粉末とを含んでいてもよい。
【0073】
粉粒体組成物は、溶剤をさらに含んでいてもよい。すなわち、粉粒体組成物は、乾燥粉末、乾燥顆粒、湿潤粉末、および湿潤顆粒からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。粉粒体組成物は、例えば、質量分率で70~100%の固形分率を有していてもよい。粉粒体組成物は、例えば、質量分率で75~100%の固形分率を有していてもよい。粉粒体組成物は、例えば、質量分率で80~100%の固形分率を有していてもよい。
【0074】
〈(d3)塗装〉
粉粒体組成物が基材の表面に塗装されてもよい。これにより基材の表面に活物質層が形成され得る。活物質層は、分級後の第1電極材料を含む。
【0075】
本製造方法においては、任意の方法により粉粒体組成物が塗装され得る。後述の第1塗装方法、および第2塗装方法は例示に過ぎない。例えば、ロールtoロール方式により、連続的に塗装が行われてもよい。これにより生産性の向上が期待される。
【0076】
〈基材〉
基材は、例えばシート状であってもよい。基材は、例えば電極集電体であってもよい。基材は、例えば金属箔を含んでいてもよい。基材は、例えば、アルミニウム(Al)箔、Al合金箔、Cu箔、Cu合金箔、Ni箔、Ni合金箔、チタン(Ti)箔、およびTi合金箔からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。基材は、例えば、5~50μmの厚さを有していてもよいし、10~30μmの厚さを有していてもよい。
【0077】
〈第1塗装方法〉
図2は、第1塗装方法を示す概念図である。第1塗装方法は、液膜転写法と類似する。第1塗装方法においては、3本のロールが使用される。第1ロール101、第2ロール102、および第3ロール103は、例えば、水平方向に並んでいてもよい。各ロールの回転軸は平行である。各ロールに描かれた矢印は、各ロールの回転方向を示している。
【0078】
第1ロールギャップ111は、第1ロール101と、第2ロール102との間に形成されている。第2ロールギャップ112は、第2ロール102と第3ロール103との間に形成されている。
【0079】
第1ロールギャップ111に、粉粒体組成物11が供給される。第1ロールギャップ111において粉粒体組成物11が均されることにより、活物質層12が形成される。第2ロール102は活物質層12を第2ロールギャップ112へ搬送する。第3ロール103は、基材13を搬送する。第2ロールギャップ112において、活物質層12が基材13に転写される。すなわち、活物質層12と基材13とを含む電極10が形成される。
【0080】
第1塗装方法において、粉粒体組成物は、例えば、湿潤粉末および湿潤顆粒の少なくとも一方を含んでいてもよい。粉粒体組成物は、例えば、質量分率で70~90%の固形分率を有していてもよい。
【0081】
〈第2塗装方法〉
図3は、第2塗装方法を示す概念図である。第2塗装方法においては、静電塗装が行われる。第1ロール201、第2ロール202、および第3ロール203は、回転軸が平行である。第3ロール203は、第1ロール201の鉛直上方に配置されていてもよい。電源204は、第1ロール201と第3ロール203との間に電界を形成している。第1ロール201は磁石を備える。
【0082】
粉粒体組成物11は容器205に供給される。容器205内において、粉粒体組成物11は攪拌されていてもよい。例えば、容器205内において、粉粒体組成物11に強磁性体が混合されてもよい。粉粒体組成物11は、第1ロール201からの磁力F1により、第1ロール201に吸着される。第1ロール201は粉粒体組成物11を搬送する。スキージ206が粉粒体組成物11の一部を掻き落とすことにより、一定範囲の粉粒体組成物11が、第1ロール201と第3ロール203とのロールギャップに供給される。
【0083】
第2ロール202は基材13を搬送する。基材13は、第1ロール201と第3ロール203とのロールギャップに供給される。
【0084】
第1ロール201と第3ロール203との間においては、粉粒体組成物11に作用する磁力F1よりも、粉粒体組成物11に作用する静電気力F2が大きくなるように電界が形成されている。粉粒体組成物11は、静電気力F2により、第1ロール201から引き離される。さらに粉粒体組成物11は、静電気力F2により、第3ロール203に向かって飛行する。第3ロール203の表面には、基材13が支持されている。粉粒体組成物11が基材13の表面に付着することにより、活物質層12が形成され得る。すなわち、活物質層12と基材13とを含む電極10が形成される。
【0085】
第2塗装方法において、粉粒体組成物は、例えば、乾燥粉末および乾燥顆粒の少なくとも一方を含んでいてもよい。粉粒体組成物は、例えば、質量分率で90~100%の固形分率を有していてもよい。粉粒体組成物は、例えば、質量分率で100%の固形分率を有していてもよい。
【0086】
以上より、電極(原反シート)が製造され得る。粉粒体組成物(活物質層)が溶剤を含む場合、電極が乾燥されてもよい。例えば、活物質層に圧力および熱の少なくとも一方が付与されることにより、活物質層が基材に定着されてもよい。
【0087】
さらに、電池設計に合わせて、電極が所定の厚さに圧縮されてもよい。電池設計に合わせて、電極が所定の平面形状に切断されてもよい。
【0088】
活物質層は、基材の片面のみに形成されてもよい。活物質層は、基材の表裏両面に形成されてもよい。活物質層は、例えば、10~1000μmの厚さを有していてもよい。活物質層12は、例えば、50~200μmの厚さを有していてもよい。
【0089】
本製造方法においては、活物質層中の金属異物が低減されている。10gの活物質層において、異物粒子の個数は6個未満であってもよい。10gの活物質層において、異物粒子の個数は1個以下であってもよい。
【0090】
活物質層に含まれる異物粒子の個数は次の手順で測定される。活物質層が基材から剥離されることにより、活物質層が回収される。活物質層(粉粒体組成物)が分散媒に分散されることにより、粒子分散液が調製される。例えばNMPが分散媒に好適である。フィルタが準備される。フィルタは38μmの目開きを有する。粒子分散液がフィルタでろ過される。フィルタ上の残渣がSEM-EDXにより分析される。分析視野の画像解析により、50μm以上の短径を有する粒子が計数される。同時に該粒子の組成が定性される。これにより、50μm以上の短径を有する異物粒子の個数が測定される。異物粒子の個数は、10gの活物質層当たりの個数として表示される。
【実施例0091】
以下、本実施例が説明される。
【0092】
<材料の準備>
下記表1の電極材料が準備された。前述の手順により、各材料に含まれる異物粒子の個数が測定された。測定結果は下記表1に示される。異物粒子の個数は、10gの各材料当たりの個数を示す。
【0093】
【0094】
<電極の製造>
《製造例1》
活物質粉末、導電材、結着材、および溶剤(NMP)が混合されることにより、粉粒体組成物が調製された。粉粒体組成物は湿潤顆粒を含んでいた。固形分の配合は、「活物質粉末/導電材/結着材=97.5/1/1.5(質量比)」であった。第1塗装方法(
図2参照)により活物質層が形成された。すなわち電極が製造された。前述の手順により、活物質層に含まれる異物粒子の個数が測定された。測定結果は下記表2に示される。
【0095】
《製造例2》
製造例2においては、粉粒体組成物の調製に先立って、活物質粉末および導電材に対して磁選処理が施された。これを除いては、製造例1と同様に、電極が製造された。
【0096】
《製造例3》
製造例3においては、粉粒体組成物の調製に先立って、活物質粉末に乾式分級処理が施された。本実施例においては、乾式ふるい分級機が使用された。さらに、粉粒体組成物の調製に先立って、導電材に対して磁選処理が施された。これらを除いては、製造例1と同様に、電極が製造された。
【0097】
【0098】
<結果>
活物質粉末および導電材は、原料段階において、異物粒子(Fe粒子、Cu粒子)を含んでいた(上記表1)。
【0099】
製造例1、2の結果から、活物質粉末および導電材に磁選処理が施されることにより、活物質層(電極)において、異物粒子が低減する傾向がみられる(上記表2)。ただし、磁選処理で分離されずに、活物質層に混入する異物粒子もみられる。
【0100】
製造例3の結果から、活物質粉末に乾式分級処理が施されることにより、活物質層において、異物粒子が顕著に低減する傾向がみられる(上記表2)。乾式分級処理によれば、磁選処理で分離できない異物粒子も分離できると考えられる。
【0101】
<付記>
本開示は、電池の製造方法にも関する。
電池の製造方法は、下記(a)~(f)を含む。
(a)異物粒子と活物質粒子とを含む活物質粉末を準備する。
(b)活物質粉末を含む第1電極材料を調製する。
(c)第1電極材料に乾式分級処理を施すことにより、第1電極材料に含まれる異物粒子を低減する。
(d)分級後の第1電極材料を含む活物質層を形成する。
(e)活物質層を含む電極を製造する。
(f)電極を含む電池を製造する。
第1電極材料は粉末状である。異物粒子は金属異物を含み、かつ粗大粒子である。
【0102】
電池の製造方法は、例えばリチウムイオン電池の製造方法を含んでいてもよい。電池は、電極に加えて、例えば、電池ケース(筐体)、セパレータ、電解液等をさらに含んでいてもよい。
【0103】
本開示は、活物質粉末の製造方法にも関する。
活物質粉末の製造方法は、下記(a)および(c)を含む。
(a)異物粒子と活物質粒子とを含む活物質粉末を合成する。
(c)活物質粉末に乾式分級処理を施すことにより、活物質粉末に含まれる異物粒子を低減する。
異物粒子は金属異物を含み、かつ粗大粒子である。
【0104】
活物質粉末の製造方法は、例えば、活物質粉末に磁選処理を施すことをさらに含んでいてもよい。活物質粉末の製造方法は、例えば、分級後の活物質粉末を包装材で包装することをさらに含んでいてもよい。包装材は、例えば、容器、袋等を含んでいてもよい。
【0105】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本開示の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
10 電極、11 粉粒体組成物、12 活物質層、13 基材、101,201 第1ロール、102,202 第2ロール、103,203 第3ロール、111 第1ロールギャップ、112 第2ロールギャップ、204 電源、205 容器、206 スキージ、F1 磁力、F2 静電気力。