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特開2023-126930治療用タンパク質の凍結乾燥医薬配合物のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126930
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】治療用タンパク質の凍結乾燥医薬配合物のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/19 20060101AFI20230905BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230905BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A61K9/19
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/40
A61K38/16
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P7/06
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111202
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2020508006の分割
【原出願日】2018-09-10
(31)【優先権主張番号】62/559,420
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレア・タリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】必要な量の生成物を、配合することと、充填することと、使用のために固定容量の希釈剤を用いて凍結乾燥生成物を再構成した後でその濃度を保証する、製造プロセスを提供する。
【解決手段】治療用タンパク質の凍結乾燥医薬配合物を製造するプロセスであって、(a)バルク量の治療用タンパク質の配合物を提供することと、(b)上記のバルク配合物中における治療用タンパク質の濃度を測定することと、(c)上記のバルク配合物中のタンパク質の充填重量を調整してタンパク質の固定用量を得ることと、(d)タンパク質の充填重量が調整された配合物を凍結乾燥して容器内に最終配合物を得ることと、を含み、固定容量を用いて再構成した後の生成物の濃度が所定の許容可能な範囲内にある、プロセスである。プロセスは、低タンパク質濃度の配合物(例えば、0.05mg/mL~20mg/mL)に特に好適である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用タンパク質の凍結乾燥医薬配合物を製造するプロセスであって、
a.バルク量の前記治療用タンパク質の配合物を提供することと、
b.バルク配合物中における前記治療用タンパク質の濃度を測定することと、
c.前記バルク配合物中の前記タンパク質の充填重量を調整して、前記タンパク質の固定用量を得ることと、
d.前記タンパク質の充填重量が調整された配合物を凍結乾燥して、容器内に最終配合物を得ることと
を含み、
固定容量を用いて再構成した後の生成物の濃度が、所定の許容可能な範囲内にある、プロセス。
【請求項2】
前記タンパク質の調整された充填重量が、式:
【数1】
に従って計算される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記最終配合物中の前記タンパク質の濃度は、約20mg/mL以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記治療用タンパク質は、ロミプロスチム、ブリナツモマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、AMG701、及びAMG330から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記治療用タンパク質はロミプロスチムであり、前記最終配合物中の前記治療用タンパク質の濃度は約0.5mg/mLである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記最終配合物は、約pH5.0で、約10mMのヒスチジン、約4%w/vのマンニトール、約2%w/vのスクロース、及び約0.004%のポリソルベート20中において、約0.5mg/mLのロミプロスチムを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記治療用タンパク質はブリナツモマブであり、前記最終配合物中の前記治療用タンパク質の濃度は、約55μg/mLである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記配合物は、約pH7.0で、約25mMのクエン酸一水和物、約15%(w/v)のトレハロース、約200mMのL-リジン塩酸塩、及び約0.1%(w/v)のポリソルベート80中において、約55μg/mLのブリナツモマブを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記治療用タンパク質はインフリキシマブであり、前記最終配合物中の前記治療用タンパク質の濃度は、約20±1.5mg/mLである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記最終配合物は、約pH7.2で、約20±1.5mg/mLのインフリキシマブ、約10mMのリン酸ナトリウム、約10%(w/v)のスクロース、及び約0.01%(w/v)のポリソルベート80を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記治療用タンパク質はトラスツズマブであり、前記最終配合物中の前記治療用タンパク質の濃度は、約21mg/mLである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記最終配合物は、約pH6.1で、約21mg/mLのトラスツズマブ、約0.303mg/mLのL-ヒスチジン、約0.470mg/mLのL-ヒスチジン塩酸塩一水和物、約19.1mg/mLのα,α-トレハロース二水和物、及び0.0840mg/mLポリソルベート20を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記治療用タンパク質はAMG701であり、前記最終配合物中の前記治療用タンパク質の濃度は、約1mg/mLである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記最終配合物は、約pH4.2で、約1mg/mLのAMG701、約10mMのL-グルタミン酸、約9.0%(w/v)のスクロース、及び約0.010%(w/v)のポリソルベート80を含む、請求項1に記載のプロセス。;
【請求項15】
前記治療用タンパク質はAMG330であり、前記最終配合物中の前記治療用タンパク質の濃度は、約0.5mg/mLである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記最終配合物は、約pH6.1で、約0.5mg/mLのAMG330、約10mMのリン酸カリウム、約8.0%(w/v)のスクロース、約1.0%(w/v)のスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBE-CD)、及び約0.010%(w/v)のポリソルベート80を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記最終配合物中の前記タンパク質の濃度は、約25mg/mL以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記治療用タンパク質は二重特異性一本鎖抗体コンストラクトである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記治療用タンパク質は、AMG701及びAMG330から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物薬剤に関し、具体的には、治療用タンパク質、その使用方法、その医薬配合物、及び医薬配合物を製造するプロセスに関する。具体的には、本発明は、凍結乾燥医薬配合物を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間で、技術の進歩により、薬学的用途の多種多様な活性分子を生成することが可能となった。生物学的な作用機序の理解の本質が進歩したことにより、これらの分子を、少量の生成物が効果を有する特定の属性のために設計することが可能となった。
【0003】
これらの分子は、従来の有機及び無機薬品と比較してより大きく、且つ/又はより複雑となり得るため(すなわち、複雑な三次元構造に加えて複数の官能基を有する)、こうした生成物の配合物は特別な課題を呈する。生成物の生物学的活性を維持するために、配合物は、タンパク質のアミノ酸の少なくともコア配列の立体配座完全性を無傷で保存し、同時にタンパク質の複数の官能基を分解から守る必要がある。タンパク質の分解経路は、化学的不安定性(すなわち、結合形成又は切断して新しい化学物質をもたらすことによるタンパク質の修飾を伴う任意のプロセス)又は物理的不安定性(すなわち、タンパク質の高次構造における変化)を伴い得る。化学的不安定性は、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離、又はジスルフィド交換によってもたらされ得る。物理的不安定性は、例えば変性、凝集、沈殿、又は吸着によってもたらされ得る。3つの最も一般的なタンパク質分解経路は、タンパク質の凝集、脱アミド化、及び酸化である。Cleland et al.(1993),Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4):307-377。
【0004】
これらの設計された分子は、その合成的性質に起因して、一般的に凍結乾燥(フリーズドライ)されており、改善された貯蔵安定性を提供し得ることを示す。フリーズドライは、タンパク質を保存するために一般的に用いられる技法であり、対象となるタンパク質調製物から水を除去する役割を果たす。フリーズドライ、又は凍結乾燥は、乾燥される対象の材料が最初に凍結され、続いて氷又は凍結溶媒が真空環境下で昇華されることにより除去されるプロセスである。フリーズドライプロセス中の安定性を強化するため、且つ/又は貯蔵時の凍結乾燥生成物の安定性を向上させるために、凍結乾燥前の配合物に賦形剤が含まれてもよい。Pikal,M.(1990),Biopharm.3(9)26-30及びArakawa et al.(1991),Pharm.Res.8(3):285-291。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特異的な生物学的標的を有する設計分子、及び結果として生じる生成物の必要用量は、製造プロセスに新たな課題をもたらす。現行技術は、生成物を目標の濃度に配合し、続いて定められた容量で容器に充填する単純なプロセスを伴う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、凍結乾燥製剤を生成するプロセスに関する。具体的に、本発明は、必要な量の生成物を、配合することと、充填することと、使用のために固定容量の希釈剤を用いて凍結乾燥生成物を再構成した後でその存在を保証することと、に関する。
【0007】
本発明によれば、治療用タンパク質の凍結乾燥医薬配合物を製造するプロセスであって、
(a)バルク量の治療用タンパク質の配合物を提供することと、
(b)上記バルク配合物中における治療用タンパク質の濃度を測定することと、
(c)上記バルク配合物中のタンパク質の充填重量を調整してタンパク質の固定用量を得ることと、
(d)タンパク質の充填重量が調整された配合物を凍結乾燥して容器内に最終配合物を得ることと、を含み、
固定容量を用いて再構成した後の生成物の濃度が所定の許容可能な範囲内にある、プロセスが提供される。
【0008】
上記のプロセスでは、最終配合物中のタンパク質濃度は、約20又は25mg/mL以下であることが好ましく、約0.5mg/mL、約0.05mg/mL、約18mg/mL、約20mg/mL、及び約21mg/mLが最も好ましい。本発明のプロセスに好ましい治療用タンパク質は、ロミプロスチム、ブリナツモマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、AMG701、及びAMG330である。AMG701及びAMG330は、二重特異性一本鎖抗体コンストラクトであり、その他の二重特異性一本鎖抗体コンストラクト(例えば二重特異性T細胞エンゲージャ)も、本発明のプロセスにおける好ましい治療用タンパク質である。配合物中に存在する好ましい医薬品賦形剤は糖類を含み、トレハロース、スクロース、及びいずれかの水和物が最も好ましい。好ましい医薬品賦形剤は緩衝剤を更に含み、ヒスチジン、クエン酸一水和物、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、及びグルタミン酸が好ましい。好ましい賦形剤は界面活性剤を更に含み、ポリソルベート20及びポリソルベート80が最も好ましい。本発明のプロセスに従って用いられる好ましい賦形剤及び治療用タンパク質を表1に示し、それぞれのおおよその好ましい濃度を各タンパク質及び賦形剤の下に列挙する。
【0009】
【表1】
【0010】
更に、本発明に従い、配合物は本明細書の以下に記載されるその他の賦形剤を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】配合物及び充填重量が、典型的な制御戦略に従っている、低用量生成物向けの例示的な設計空間を示す応答表面マップである。灰色の空間は、方法/再構成のばらつきが、不適合のタンパク質濃度の結果を有する可能性を50%超で有する場所を表す。大きな四角形は、配合物開発のための現在の作動範囲を示す。小さな長方形は、有効作動範囲を示す。
図2】バルク濃度及び充填容量に加えてオスモル濃度が考慮される、低用量生成物向けの例示的な設計空間を示す応答表面マップである。薄灰色の領域は、方法/再構成のばらつきによって不適合のタンパク質濃度の結果が生じる可能性を50%超で有する、段階付けされた(stepped-in)製剤濃度規格値を示す。濃灰色の領域は、オスモル濃度の規格値を示す。長方形は、充填重量(x軸)及び配合バルク濃度(y軸)の設計空間範囲である、工程内制御(IPC)/アラートリミット作動範囲(ALOR)を示す。
図3】実行可能であるがフォールトトレラントではない充填重量及び配合物制御戦略の例を示す応答表面マップである。曲線及び両方向矢印は、起こり得る充填目標の誤差を示す。薄灰色の領域は、段階付けされた製剤濃度の規格値を表し、薄灰色の領域は、方法/再構成のばらつきによって不適合のタンパク質濃度の結果が生じる可能性を50%超で有する場所を示す。濃灰色の領域は、オスモル濃度の規格値を定める。長方形はIPC/ALORを示す。
図4】期待される低い配合バルク及び低い充填重量を伴う、範囲端部の制御に困難を有する充填重量及び配合物制御戦略の例を示す応答表面マップである。左側の曲線及び両方向矢印は、低い充填容量で起こり得る充填目標の誤差を示す。右側の曲線及び両方向矢印は、高い充填容量で起こり得る充填目標の誤差を示す。薄灰色の領域は、段階付けされた製剤濃度の規格値を表し、薄灰色の領域は、方法/再構成のばらつきによって不適合のタンパク質濃度の結果が生じる可能性を50%超で有する場所を示す。濃灰色の領域は、オスモル濃度の規格値を定める。長方形はIPC/ALORを示す。
図5】バルク配合の結果を用い、続いてバイアル中の総生成物用量目標(total product dose in the vial target)に基づいて充填重量の設定点を調整して、実行可能且つフォールトトレラントな凍結乾燥薬剤プロセスをもたらす組み合わせ戦略の例を示す応答表面マップである。曲線及び両方向矢印は、起こり得る充填目標の誤差を示す。薄灰色の領域は、図1~4にある段階付けされた製剤濃度の規格値を定める。濃灰色の領域は、オスモル濃度の規格値を定める。菱形はIPC/ALORを示し、IPC/ALOR内の最大充填容量でのオスモル濃度規格値によって切り取られている。
図6】下記の実施例1に従って決定される、規格化された充填重量対再構成後の生成物タンパク質濃度を示す。
図7】下記の実施例1に従って決定される、規格化された充填重量対オスモル濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
用語の定義
以下の記述では、多くの用語が広く用いられている。本発明の理解を容易にするために、以下の定義を提供する。
【0013】
特に明記しない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」及び「少なくとも1つ」は、互換的に使用され、1つ又は2つ以上を意味する。更に、文脈上異なる解釈を要する場合を除き、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0014】
本明細書で使用する時、「医薬配合物」又は「配合物」とは、(i)それを必要とする患者への非経口投与(静脈内、筋肉内、皮下、噴霧、肺内、鼻腔内、又は髄腔内投与を含むがこれらに限定されない)に好適な、生物学的に活性なタンパク質などの薬学的に活性な薬物と、(ii)連邦医薬局(Federal Drug Administration)又は他の外国内当局によって安全とみなされる1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、及びその他の添加剤と、の無菌組成物である。医薬配合物としては、直接投与可能な液体(例えば水性)溶液、及び投与前に希釈剤を添加することによって溶液中に再構成することが可能な凍結乾燥粉末が挙げられる。しかしながら、用語「医薬配合物」は、患者への局所投与用組成物、経口摂取用組成物、及び非経口栄養補給用組成物を明確に除外する。
【0015】
本明細書で使用する時、「貯蔵寿命」とは、医薬配合物が特定の保存条件(例えば2~8℃)で保存される場合に、医薬配合物中の活性成分(例えば抗体)の分解が最小限(例えば約5%~10%以下の分解)である保存期間を意味する。分解を評価するための技法は、医薬配合物中のタンパク質の正体に応じて変わる。例示的な手法としては、例えば凝集を検出するサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)-HPLC、例えば、タンパク質断片化を検出する逆相(RP)-HPLC、例えばタンパク質の電荷の変化を検出するイオン交換-HPLC、並びに質量分析法、蛍光分光法、円偏光二色性(CD)分光法、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)、及びタンパク質の立体配座変化を検出するラマン分光法が挙げられる。これらの手法は全て、医薬配合物中のタンパク質の分解を評価し、その配合物の貯蔵寿命を決定するために、単独で又は組み合わせで使用することができる。本発明の医薬配合物は、2~8℃で保存した場合、2年間にわたって分解(例えば、断片化、凝集又はアンフォールディング)の増加が約5~10%を超えないことが好ましい。
【0016】
本明細書で使用する場合、生物学的に活性なタンパク質の「安定な」配合物とは、(i)対照配合サンプルと比較して、2~8℃で少なくとも2年間保存した際に、少なくとも20%の凝集の減少及び/若しくは生物学的活性の損失の減少、又は(ii)熱ストレス条件下(例えば25℃で1~12週間、40℃で1~12週間、52℃で7~8日など)で、凝集の減少及び/若しくは生物学的活性の損失の減少のいずれかを示す配合物である。一実施形態では、配合物中のタンパク質がその物理的安定性、化学的安定性、及び/又は生物学的活性を保持していれば、配合物は安定であると見なされる。
【0017】
タンパク質は、色彩及び/若しくは透明度を目視検査して、又は濁度若しくは凝集体形成などに関する紫外線散乱若しくはサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)若しくは電気泳動法により測定して、例えば凝集、沈殿、及び/又は変性の様子を示していない場合は、配合物中で「その物理的安定性を保持している」と言うことができる。
【0018】
タンパク質は、例えば、所与の時点における化学的安定性の結果、結合形成又は切断によるタンパク質の修飾から新たな化学物質が生じない場合は、配合物中で「その化学的安定性を保持している」と言うことができる。更なる実施形態では、化学的安定性は、タンパク質の化学変化形態を検出及び定量化することによって評価することができる。化学変化は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィを用いて評価可能なサイズ変更(例えばクリッピング)、SDS-PAGE、及び/又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を伴い得る。その他の種類の化学変化としては、例えば、イオン交換クロマトグラフィによって評価可能な荷電変化(例えば脱アミド化の結果生じる)が挙げられる。酸化は、別の一般的に見られる化学修飾である。
【0019】
タンパク質は、非修飾タンパク質と比較して、例えば、配合タンパク質(例えば抗体)の生物学的活性の割合が、対照溶液と比較したアッセイ(例えば抗原結合アッセイ)で測定して、約50%~約200%、約60%~約170%、約70%~約150%、約80%~約125%、又は約90%~約110%のいずれかである場合は、医薬配合物中で「その生物学的活性を保持している」と言うことができる。更なる実施形態では、タンパク質は、例えば、限定するものではないが、所与の時点におけるタンパク質の生物学的活性が少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%である場合は、医薬配合物中で「その生物学的活性を保持している」と言うことができる。
【0020】
本明細書で使用する時、用語「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」は、配合物及び方法が列挙された要素を含むが、その他の列挙されていない要素を除外しないことを意味することが意図される。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」は、配合物及び方法が列挙される要素を含むと定義するように用いられる場合、配合物及び/又は方法の基本的性質を変更させる列挙されていない要素は除外するが、その他の列挙されていない要素は除外しない。そのため、本明細書で定義される要素から本質的になる配合物は、任意の分離及び精製方法からの混入物質、又は薬学的に許容される担体(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、防腐剤などといった微量のその他の要素を排除しないが、例えば、追加の不特定のアミノ酸などは除外する。用語「からなる(consisting of)」及び「からなる(consists of)」は、配合物及び方法を定義するために用いられる場合、微量を超えるその他の成分、及び本明細書に記載される組成物を投与するための実質的な方法工程を除外する。これらの接続句の各々によって定義される実施形態は、本開示及び本明細書で具現化される本発明の範囲内である。
【0021】
本明細書中で使用する時、用語「単離された」は、その天然環境の成分から識別され、分離及び/又は回収されたタンパク質(例えば抗体)を指す。その天然環境の混入成分は、タンパク質の診断的又は治療的使用を妨害する物質であり、これとしては、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質が含まれ得る。好ましい実施形態では、タンパク質は、(1)ローリー法により測定して抗体の95重量%を超えるまで、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によってN末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を十分に得られる程度まで、或いは(3)クマシーブルー、又は好ましくは銀染色を用いて、還元条件下又は非還元条件下でSDS-PAGEによって均質になるまで、精製される。単離されたタンパク質は、組換え細胞内にインサイチュのタンパク質を含むが、これは、そのタンパク質の天然環境の少なくとも1つの成分は存在しないためである。しかし、通常は、単離されたタンパク質は少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0022】
本発明は、抗体などの治療用タンパク質の医薬配合物のためのプロセスに関する。「抗体」(Ab)及び同義語「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造特性を有する糖タンパク質である。抗体は特異的抗原に対し結合特異性を示すが、免疫グロブリンは抗体及び抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によっては低いレベルで、また骨髄腫によっては高いレベルで産生される。したがって、本明細書で使用する時、用語「抗体」又は「抗体ペプチド」は無傷な抗体、抗体誘導体、抗体類似体、遺伝子組み換え抗体、検出可能な標識を有する抗体、本明細書中に開示される抗体と特異的結合を競合する抗体、又は無傷な抗体と特異的結合を競合するその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体)を指し、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、及び二重特異性抗体を含む。特定の実施形態では、抗原結合フラグメントは、例えば、組換えDNA技術によって作製される。さらなる実施形態では、抗原結合フラグメントは、無傷の抗体の酵素的又は化学的切断によって作製される。抗原結合フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’)、Fv、及び一本鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用する時、用語「無傷な抗体」は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む抗体を指す。したがって、この用語は、限定するものではないが、完全ヒト抗体、遺伝子組み換え抗体、二重特異性抗体、及び抗体誘導体を含むが、但しこうした抗体が2つの重鎖及び2つの軽鎖を含んだことを条件とする。
【0024】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用する時、ハイブリドーマ技術によって生成された抗体に限らない。用語「モノクローナル抗体」は、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指し、それを生成する方法を指すものではない。
【0025】
本発明に従って配合されたモノクローナル抗体及び抗体コンストラクトは、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、又は特定の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、一方で、鎖の残部が、所望の生物学的活性を示す限りではあるが、別の種に由来するか、又は別の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体、並びにそのような抗体のフラグメント中の対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を明確に含む(米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al.(1984),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855)。本明細書において興味の対象となるキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「プリミタイズド(primitized)」抗体が挙げられる。キメラ抗体を作製するための様々な方法が記載されている。例えば、Morrison et al.(1985),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851、Takeda et al.(1985),Nature 314:452、Cabilly et al.の米国特許第4,816,567号明細書、Boss et al.の米国特許第4,816,397号明細書、Tanaguchi et al.の欧州特許第0171496号明細書、欧州特許第0173494号明細書、及び英国特許第2177096号明細書を参照されたい。
【0026】
本発明に従って配合されたモノクローナル抗体及び抗体コンストラクトは、「ヒト」又は「完全ヒト」と称される抗体を明確に含む。「ヒト抗体」及び「完全ヒト抗体」という用語はそれぞれ、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、又は1つ以上のヒト免疫グロブリン遺伝子を導入した動物から単離された抗体を含む、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有し、内因性免疫グロブリンを発現しない抗体、例えば、Xenomouse(登録商標)抗体、及びKucherlapati et al.によって米国特許第5,939,598号明細書で説明される抗体を指す。
【0027】
用語「遺伝子組み換え抗体」は、アミノ酸配列が天然抗体の配列から変更された抗体を意味する。抗体の生成における組換えDNA技術の関連性のために、天然の抗体に見出されるアミノ酸の配列に限定される必要はなく、抗体は、所望の特性を得るために再設計することができる。多くの可能なバリエーションがあり、その範囲は、たった1個又は数個のアミノ酸への変化から、例えば可変領域及び/又は定常領域の完全な再設計にまで及ぶ。定常領域の変化は、一般に、補体の結合、膜との相互作用、及び他のエフェクター機能、並びに製造性及び粘度などの特性を改善又は変更するために行われる。可変領域における変更は、抗原結合特性を改善するために行われる。
【0028】
「Fabフラグメント」は、1本の軽鎖と、1本の重鎖のCH1及び可変領域とからなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0029】
「Fab’フラグメント」は、1本の軽鎖と、2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合が形成されてF(ab’)分子を形成し得るように、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域のより多くを含む1本の重鎖とを含む。
【0030】
「F(ab’)フラグメント」は、2本の軽鎖と、2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合が形成されるように、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の一部を含む2本の重鎖とを含む。
【0031】
用語「Fvフラグメント」及び「一本鎖抗体」は、重鎖及び軽鎖の両方の抗体可変領域を含むが、定常領域は欠くポリペプチドを指す。抗体全体と同様に、これは特異的抗原に選択的に結合することができる。わずか約25kDaの分子量のFvフラグメントは、2本の重タンパク質鎖及び2本の軽鎖から構成される通常の抗体(150~160kD)よりもはるかに小さく、Fabフラグメント(約50kDa、1本の軽鎖及び半分の重鎖)よりもさらに小さい。
【0032】
「単一ドメイン抗体」は、単一ドメインFv単位、例えば、V又はVからなる抗体フラグメントである。抗体全体と同様に、それは特異的抗原に選択的に結合することができる。わずか12~15kDaの分子量の単一ドメイン抗体は、2本の重タンパク質鎖及び2本の軽鎖から構成される通常の抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さく、Fabフラグメント(約50kDa、1本の軽鎖及び半分の重鎖)及び一本鎖可変フラグメント(約25kDa、2つの可変ドメイン、軽鎖由来の1つ及び重鎖由来の1つ)よりもさらに小さい。第1の単一ドメイン抗体を、ラクダ科の動物に見出される重鎖抗体から遺伝子工学により操作した。単一ドメイン抗体に関する研究のほとんどは、現在、重鎖可変ドメインに基づいているが、軽鎖可変ドメイン及び軽鎖に由来するナノボディもまた、標的エピトープに特異的に結合することが示されている。
【0033】
本明細書で使用する時、用語「二重特異性」は、「少なくとも二重特異性」である抗体コンストラクトを指し、すなわち、それは、少なくとも第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインを含み、ここで、第1の結合ドメインは、1つの抗原又は標的(例えばCD3)に結合し、第2の結合ドメインは、別の抗原又は標的(例えばBCMA;例えばCD33)に結合する。したがって、本発明による抗体コンストラクトは、少なくとも2つの異なる抗原又は標的に対する特異性を備える。本発明の用語「二重特異性抗体コンストラクト」は、多重特異性抗体コンストラクト、例えば3つの結合ドメインを含む三重特異性抗体コンストラクト又は4つ以上(例えば、4つ、5つ...)の特異性を有するコンストラクトも包含する。
【0034】
本発明による抗体コンストラクトが(少なくとも)二重特異性である場合、それらは、天然に存在せず、且つそれらは、天然に存在する産物と顕著に異なる。したがって、「二重特異性」抗体コンストラクト又は免疫グロブリンは、異なる特異性を有する少なくとも2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体又は免疫グロブリンである。二重特異性抗体コンストラクトは、ハイブリドーマの融合又はFab’フラグメントの連結を含む様々な方法によって生成することができる。例えば、Songsivilai&Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315-321(1990)を参照されたい。
【0035】
本発明の抗体コンストラクトの少なくとも2つの結合ドメイン及び可変ドメインは、ペプチドリンカー(スペーサーペプチド)を含んでも含まなくてもよい。用語「ペプチドリンカー」は、本発明によれば、本発明の抗体コンストラクトの一方の(可変及び/又は結合)ドメイン及びもう一方の(可変及び/又は結合)ドメインのアミノ酸配列を相互に連結するアミノ酸配列を含む。そのようなペプチドリンカーの必須の技術的特徴は、それがいかなる重合活性も含まないことである。好適なペプチドリンカーには、米国特許第4,751,180号明細書及び同第4,935,233号明細書又は国際公開第88/09344号パンフレットに記載されるものがある。ペプチドリンカーは、他のドメイン又はモジュール又は領域(半減期延長ドメインなど)を本発明の抗体コンストラクトに結合するためにも使用され得る。
【0036】
リンカーが使用される場合、このリンカーは、第1及び第2のドメインのそれぞれが互いに独立してその異なる結合特異性を確実に保持できる十分な長さ及び配列からなることが好ましい。本発明の抗体コンストラクト内の少なくとも2つの結合ドメイン(又は2つの可変ドメイン)を接続するペプチドリンカーの場合、それらのペプチドリンカーは、数個のアミノ酸残基のみを含むもの、例えば12アミノ酸残基以下を含むものが好ましい。したがって、12、11、10、9、8、7、6又は5アミノ酸残基のペプチドリンカーが好ましい。5アミノ酸未満を有する想定されるペプチドリンカーは、4、3、2又は1アミノ酸を含み、Glyに富んだリンカーが好ましい。上記の「ペプチドリンカー」に関して特に好ましい「単一」のアミノ酸はGlyである。したがって、上記のペプチドリンカーは、単一のアミノ酸Glyからなり得る。ペプチドリンカーの別の好ましい実施形態は、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、すなわちGly4Ser(配列番号1)又はそのポリマー、すなわち(Gly4Ser)xを特徴とし、ここで、xは、1又はより大きい整数(例えば、2又は3)である。二次構造の促進の欠如を含む上記のペプチドリンカーの特徴は当技術分野で既知であり、例えばDall’Acqua et al.(Biochem.(1998)37,9266-9273)、Cheadle et al.(Mol.Immunol.(1992)29,21-30)、及びRaag and Whitlow(FASEB(1995)9(1),73-80)に記載されている。さらにいかなる二次構造も促進しないペプチドリンカーが好ましい。上記のドメインの相互の連結は、例えば、実施例に記載される遺伝子操作によって提供することができる。融合され作動可能に連結された二重特異性一本鎖コンストラクトを調製し、それらを哺乳動物細胞又は細菌において発現させる方法は、当技術分野でよく知られている(例えば、国際公開第99/54440号パンフレット又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2001)。
【0037】
特に好ましい実施形態によれば、且つ付属の実施例に記載されるように、本発明のAMG701及びAMG330抗体コンストラクトはそれぞれ、「二重特異性一本鎖抗体コンストラクト」であり、より好ましくは、二重特異性「一本鎖Fv」(scFv)である。Fvフラグメントの2つのドメインであるVL及びVHは別々の遺伝子によってコードされるが、これらは、組換え法を用いて、VL及びVH領域が一価分子を形成するように対をなす単一のタンパク質鎖としてこれらが作製されることを可能にする、本明細書で上述した合成リンカーによって結合することができる(例えば、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879-5883を参照されたい)。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られる従来技術を用いて得られ、且つそのフラグメントは、完全又は全長抗体と同じ様式で機能について評価される。したがって、一本鎖可変フラグメント(scFv)は、通常、約10~約25アミノ酸、好ましくは約15~20アミノ酸の短いリンカーペプチドによって接続される、免疫グロブリンの重鎖の可変領域(VH)及び軽鎖の可変領域(VL)の融合タンパク質である。リンカーは、通常、可動性のためにグリシン及び溶解性のためにセリン又はスレオニンを豊富に含み、VHのN末端をVLのC末端に連結するか又はその逆のいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0038】
二重特異性一本鎖分子は、当技術分野で知られており、国際公開第99/54440号パンフレット、Mack,J.Immunol.(1997),158,3965-3970、Mack,PNAS,(1995),92,7021-7025、Kufer,Cancer Immunol.Immunother.,(1997),45,193-197、Loeffler,Blood,(2000),95,6,2098-2103、Bruehl,Immunol.,(2001),166,2420-2426、Kipriyanov,J.Mol.Biol.,(1999),293,41-56に記載されている。一本鎖抗体の作製に関して説明される技術(とりわけ米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい)は、選出された標的を特異的に認識する一本鎖抗体コンストラクトを作製するように適合させることができる。
【0039】
二価(bivalent)(二価(divalent)とも呼ばれる)又は二重特異性一本鎖可変フラグメント(形式(scFv)を有するbi-scFv又はdi-scFv)は、2つのscFv分子を(例えば、本明細書の上記に記載されるリンカーを用いて)連結することにより作り出すことができる。これらの2つのscFv分子が同じ結合特異性を有する場合、得られる(scFv)分子を二価と呼ぶことが好ましい(すなわち、それは、同じ標的エピトープに対して2の価数を有する)。これらの2つのscFv分子が異なる結合特異性を有する場合、得られる(scFv)分子を二重特異性と呼ぶことが好ましい。連結は、2つのVH領域及び2つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を作製して、タンデムscFvを生成することによってなされ得る(例えば、Kufer P.et al.,(2004)Trends in Biotechnology 22(5):238-244を参照されたい)。別の可能性は、2つの可変領域を一体に折り畳むには短すぎる(例えば、約5アミノ酸の)リンカーペプチドを用いてscFv分子を作製し、scFvを二量体化させることである。この型は、ダイアボディとして知られている(例えば、Hollinger,Philipp et al.,(July 1993)Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 90(14):6444-8を参照されたい)。
【0040】
本明細書で上述したように、本発明は、抗体コンストラクトが、(scFv)、scFv-単一ドメインmAb、これらのフォーマットのうちのいずれかのダイアボディ及びオリゴマーからなる群から選択されるフォーマットである好ましい実施形態を提供する。
【0041】
本発明の抗体コンストラクトの別の好ましい実施形態によれば、標的抗原CD3及びCD33又はBCMAのいずれかに結合する結合ドメインの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)は、上述のペプチドリンカーを介して直接結合するのではなく、結合ドメインはダイアボディに関して説明した二重特異性分子の形成に起因して形成される。したがって、CD3結合ドメインのVH鎖はこうしたペプチドリンカーを介してCD33又はBCMA結合ドメインのVLに融合されてもよく、同時にCD3結合ドメインのVH鎖はこうしたペプチドリンカーを介してCD33又はBCMA結合ドメインのVLに融合される。
【0042】
本明細書では、用語「アミノ末端」並びに「カルボキシル末端」並びにこれらの短縮形である「N末端」及び「C末端」は、ポリペプチド内の位置を表すように用いられる。その状況が可能である場合、これらの用語は、近接していること又は相対位置を示すために、ポリペプチドの特定の配列又は部分に関して用いられる。例えば、ポリペプチド内の参照配列に対してカルボキシル末端側に位置する特定の配列は、参照配列のカルボキシル末端に近接して位置するが、必ずしも完全なポリペプチドのカルボキシル末端に位置するとは限らない。
【0043】
本明細書で使用する時、用語「アミノ酸」は、D又はL光学異性体のN-アセチル類縁体(例えばN-アセチルアルギニン)を含むがこれに限定されないグリシン及びD又はL光学異性体の両方、並びにアミノ酸類縁体及びペプチド模倣薬を含む、天然及び/又は非天然若しくは合成のアミノ酸のいずれかを指す。一部の態様では、用語「アミノ酸」は単量体アミノ酸を指す。
【0044】
一般に、本明細書に記載される細胞及び組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸化学、並びにハイブリダイゼーションと関連して使用される命名法及びそれらの手法は、当該技術分野で周知されており、且つ一般的に使用されるものである。別段の記載がない限り、本発明の方法及び技法は、一般に、当該技術分野で周知される従来法に従って実施され、また、本明細書全体を通して引用され論じられる一般的な参考文献及びより特定性の高い参考文献に記載されるとおりである。例えばSambrook et al.(2001),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.、及びAusubel et al.(1992),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates、及びHarlow and Lane(1990),Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい。いずれの酵素反応及び精製手法も、製造者の説明に従って実施されるか、当該技術分野において一般に達成されるように実施されるか、又は本明細書で説明されるとおりに実施される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、並びに医薬品化学及び製薬化学と関連して使用される専門用語、並びにそれらの実験室的な手順及び手法は、当該技術分野で周知され、且つ一般的に使用されるものである。化学合成、化学分析、医薬調製、配合、及び送達、並びに患者の治療に標準的な手法が使用され得る。
【0045】
中間配合濃度の使用
タンパク質配合物の目標は、高純度の組み換えタンパク質溶液(原薬)を安定した有効な生物薬剤学的剤形に変換することである。Kamerzell et al.(2011),63(13):1118-59(参照により組み込まれる)。配合前特性決定(preformulation characterization)と称される場合もある第1工程は、タンパク質の物理化学的性質及び不安定性経路を決定することを含み、これにより、様々な賦形剤を含有する配合物の設計が、所定の貯蔵条件下でタンパク質の安定性を確保することが可能となる。同時に、配合条件下(例えば賦形剤の存在下)でタンパク質の物理化学的完全性及び生物学的活性を監視するための分析手法を、これらのパラメータにおける任意の変化に対する許容可能な限度を定める規格値と共に開発する必要がある。続いて、様々な医薬品賦形剤の標的レベルを用いた様々なタンパク質濃度における特定の配合物を、貯蔵寿命にわたる安定性、可溶性、及び等張性を保証するために実験的に試験する。更に、タンパク質-賦形剤混合物を貯蔵し、患者又は医療専門家による非経口投与を容易にするための一次容器を選択する(例えばバイアル瓶、カートリッジ、又は予充填シリンジ)。生物薬剤学的薬又はワクチン剤形全体(タンパク質、賦形剤、一次容器、及び送達装置)が、無菌条件下での商業生産を可能にするためのスケーラビリティと、ヒトに使用するための生物薬剤学的剤形の生産及び試験のための規制指導の全てに適合することと、の両方のために設計されなければならない。
【0046】
配合物の開発は、一般には、生物物理学的スクリーニング戦略全体を通して正しいpH及び緩衝系を特定することから開始する。pHを安定化させるために緩衝剤がタンパク質溶液に添加されると、タンパク質の安定性は特有の狭いpH範囲の特性と一般に連関しているため、これにより、続いてタンパク質が安定化される。Quality for Biologics:Critical Quality Attributes,Process and Change Control,Production Variation,Characterisation,Impurities and Concerns,Biopharm Knowledge Publishing,London,UK,pp.94-113中のGaridel and Bassarab(2009),“Impact of formulation design on stability and quality”を参照されたい(これは参照により組み込まれる)。続いて、安定剤(例えば糖類)、充填剤(例えばマンニトール)、及び界面活性剤(例えばポリソルベート20)などのその他の配合物賦形剤を緩衝タンパク質溶液に添加する。凍結乾燥配合物の場合、こうした液状配合混合物を続いて凍結乾燥させる。
【0047】
その他の製剤プロセスにおける凍結乾燥においては、重要な制御は、必要な用量を患者に送達する治療用タンパク質の充填重量である。高濃度生成物の場合、配合段階での生成物濃度の制御、それに続く充填プロセスの一部としての充填重量制御の単純な戦略が適切である。しかしながら、マイクログラム、又は更にはミリグラム単位の非常に低い用量の生成物を送達する場合、用量送達を保証するためのこの単純な戦略は、患者が必要な用量を受け得ることを保証する点で問題を生じ始める。関連する懸念は、製品ラベルが容器内の製品を反映しない場合があること、及び、投薬のために物質を取り出すのが困難となる場合があることである。したがって、凍結乾燥医薬配合物中の治療用タンパク質の充填重量に対するより優れた制御を提供するプロセスに対する必要性が存在する。
【0048】
上述したように、高濃度の治療用タンパク質の場合は、配合段階での生成物濃度の制御、それに続く充填プロセスの一部としての充填重量制御の単純な戦略が適切であるが、低濃度の場合に問題を生じる場合がある。充填重量及び配合標的が制御されている場合の低用量生成物の充填重量制御のための設計空間は、個別に高いばらつきを示し、製品が出荷時規格(release specification)を満たさない大きな可能性を有する。製造のばらつきに起因して、プロセスの規模、及び製造設備に固有のばらつきのために配合バルクの正確な制御を達成することができない。もう1つの問題は、高いばらつきは凍結乾燥生成物に固有であることであり、これは、生成物が再構成される必要があり、これもまた可変のプロセスであるためである。
【0049】
典型的な制御戦略(図1に示す)は、不適合のタンパク質濃度の結果を有する可能性を50%超で有する。図1では、凍結乾燥均質性データの観察される全体的なばらつきは0.01mg/mLである。最低能力を保証するため、平均作動範囲を、3×0.01=0.03mg/mLだけ「段階付けされた」規格値範囲に対応するように制約する必要がある。白色の空間内を標的とするプロセスは、バッチあたりの規格値外(OOS)バイアル瓶が0.1%未満の品質を有する。対照的に、影付き領域内を標的にするプロセスは、より高いOOS率を有する。図1から分かるように、現在の作動範囲(大きな正方形)は所望の配合物の不適合境界(edges of failure)を含む。しかしながら、有効作動範囲(図1のより小さな長方形)は、配合のばらつき及び充填剤重量制御の両方の一部として達成され得るよりも厳しい充填許容範囲を必要とする。
【0050】
したがって、その他の生成物品質属性(例えばオスモル濃度、pH)及びタンパク質濃度を考慮する必要もあるプロセスは、標準的方法では生産又は実行可能でない場合がある。図2は、オスモル濃度規格値が考慮されている例示的な設計空間を示す。灰色の着色は、IPC/アラートリミット作動範囲内にある広範な不適合条件を示す。
【0051】
標準的方法はまた、実行可能であるがフォールトトレラントではない充填重量及び配合物制御戦略をもたらし得る(図3を参照)。図1にあるとおり、IPC/ALORは、製剤濃度規格値を満たさない領域を含む。製剤濃度規格値を満たす領域(IPC/ALOR内の白色領域)内では、充填目標における誤差の余地はほとんど存在しない。したがって、図3に示すように、標準的方法は、実行可能であるが十分なフォールトトレランスのない、範囲端部の制御に困難を伴うプロセスをもたらし得る。
【0052】
充填容量の増加は、適切なフォールトトレランスを備えた実行可能な配合物を生成するのに十分なプロセスのばらつきを有さない場合がある。図4は充填容量が増加した応答表面マップである。充填目標範囲はIPC/ALOR及び生成物規格値内に置かれ得るが、フォールトトレランスは不完全なままであり得る。配合バルク濃度の許容範囲を超えた充填重量範囲は、フォールトトレランスが不十分である。
【0053】
配合バルクの結果を用いて、続いて治療用タンパク質の充填重量を調整する場合、作動範囲は、実行可能且つ十分にフォールトトレラントな配合物を実現できるだけ十分に変更してよい。図5に示すように、修正された作動範囲(IPC/ALOR)によって、期待される充填目標範囲が、十分に濃度及びオスモル濃度規格値内に収まることが可能となる。このようにして、充填目標範囲を、十分なフォールトトレランスを有する濃度及びその他の規格値内に提供することができる。
【0054】
今日までに、この技法は、ロミプロスチム(Nplate(登録商標))低用量SKU、ブリナツモマブ(Blincyto(登録商標))、インフリキシマブ、及びトラスツズマブ向けの低用量在庫管理単位(SKU)に用いられてきた。この技法の使用に関する詳細は、下記の実施例に記載されている。
【0055】
賦形剤一般
配合物の1つの問題は、製造、輸送、及び貯蔵のストレスに耐えて生成物を安定化させることであり、これは特定の配合物賦形剤によって達成され得る。一般には、賦形剤は、様々な化学的及び物理的ストレスに耐えてタンパク質を安定化させるその機序に基づいて分類することができる。一部の賦形剤は、特定のストレスの効果を緩和するか、或いは特定のタンパク質の特定の感受性を調節する。その他の賦形剤は、タンパク質の物理的安定性及び共有結合安定性に対してより一般的な効果を有する。
【0056】
液状及び凍結乾燥タンパク質配合物の一般的な賦形剤を表2に示す(Kamerzell et al.(2011),Advanced Drug Delivery Rev.63(13):1118-59を参照されたい)。
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
その他の賦形剤は当該技術分野で既知であり、参照により本明細書に組み込まれるPowell et al.(1998),“Compendium of Excipients for Parenteral Formulations,”PDA J.Pharm.Sci.Tech.,52:238-311に見出すことができる。
【0061】
本明細書に提供される教示及び指示を鑑みれば、当業者であれば、本発明の生物薬剤学的配合物を得るために、どの量又は範囲の賦形剤を任意の特定の配合物に含めてよいかを理解するであろう。例えば、本発明の生物薬剤学的配合物に含めるべき塩の量及び種類は、最終溶液の所望のオスモル濃度(すなわち等張性、低張性、又は高張性)、並びに配合物に含められるべきその他の成分の量及びオスモル濃度に基づいて選択され得る。同様に、配合物に含められるポリオール又は糖の種類を参照した例証によれば、こうした賦形剤の量はそのオスモル濃度に依存する。
【0062】
当業者は、生物薬剤の安定性の保持を促進する本発明の生物薬剤学的配合物を得るために、どの量又は範囲の賦形剤を任意の特定の配合物に含めてよいか決定することができる。例えば、本発明の生物薬剤学的配合物に含めるべき塩の量及び種類は、最終溶液の所望のオスモル濃度(すなわち等張性、低張性、又は高張性)、並びに配合物に含められるべきその他の成分の量及びオスモル濃度に基づいて選択され得る。同様に、配合物に含められるポリオール又は糖の種類を参照した例証によれば、こうした賦形剤の量はそのオスモル濃度に依存する。
【0063】
例えば、約5%(重量/容量)のソルビトールが等張性を得ることができる一方で、スクロース賦形剤が等張性を得るには約9%(重量/容量)必要である。本発明の生物薬剤学的配合物に含むことのできる1つ以上の賦形剤の量又は濃度の範囲の選択を、塩、ポリオール、及び糖を参照することによって上記で例示した。しかしながら、当業者であれば、本明細書で説明され、特定の賦形剤を参照することによって更に例示された考察は、例えば塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定剤、充填剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤、及び/又は防腐剤などのあらゆる種類及び組み合わせの賦形剤に等しく適用可能であることを理解するであろう。
【0064】
更に、配合物中に特定の賦形剤が、例えばパーセント(%)重量/体積で報告される場合、当業者は、その賦形剤の等価のモル濃度も検討されることを認識するであろう。
【0065】
当業者は、上記の賦形剤の濃度が、特定の配合物内で相互依存性を共有することを認識するであろう。一例として、例えばタンパク質/ペプチド濃度が高い場合、又は、安定化剤の濃度が高い場合、充填剤の濃度は低下され得る。更に、当業者は、充填剤を含まない特定の配合物の等張性を維持するために、安定化剤の濃度が、しかるべく調整されてよい(すなわち、「等張化(tonicifying)」量の安定剤が用いられる)ことを認識するだろう。
【0066】
緩衝剤
溶液のpHは、タンパク質のアミノ酸残基の化学的完全性(例えば、Asnの脱アミド化及びMetの酸化)及びその高次構造の維持に影響を及ぼす。したがって、当業者は緩衝剤を用いて、溶液のpHを制御し、またタンパク質の安定性を最適化する。タンパク質薬物の最大限の安定性は、通常狭いpH範囲内にある。この目的にはいくつかのアプローチ(例えば加速安定性研究及び熱量測定スクリーニング研究)が有用である(Remmele et al.(1999),Biochemistry,38(16):5241-7)。配合物が完成したら、製剤は、その貯蔵寿命を通して、所定の規格内で製造及び維持しなければならない。従って、配合物中のpHを制御するために、緩衝剤はほぼ常に使用される。
【0067】
有機酸、リン酸塩及びトリスは、タンパク質配合物中の緩衝剤として通常使用されてきた(表3を参照されたい)。緩衝種の緩衝能はpHがpKaと等しいときに最大になり、pHがこの値から増加又は低下すると低下する。緩衝能の90パーセントはそのpKaの1pH単位内に存在する。緩衝能はまた、緩衝剤濃度が増加すると比例して増加する。
【0068】
【表5】
【0069】
上記に加えて、一部の治療用タンパク質は、薬学的に適切な濃度で自己緩衝性となり得る。こうしたタンパク質の配合物は、従来の緩衝剤を全く含まなくてもよい。参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2012/0028877号明細書を参照されたい。
【0070】
糖及び炭水化物
糖は、液状配合物及び凍結乾燥配合物の両方でタンパク質を安定化するために頻繁に用いられる。スクロース及びトレハロースなどの二糖は、液体状態での高濃度における選択的水和により、また固体状態でのタンパク質との特異的相互作用及び粘性ガラス状マトリックスの形成により、タンパク質を安定化させると考えられる。糖分子は、モノクローナル抗体溶液の粘度を増加させ得るが、これは選択的水和機構によるものと推定される。ソルビトールなどの糖アルコールは、溶液中及び凍結乾燥状態のタンパク質を安定化させ得る。マンニトールは、凍結乾燥配合物中の充填剤として用いられることが多い。ラクトースは、タンパク質の吸引配合物の担体分子として用いられる。シクロデキストリン誘導体は、抗体、ワクチン抗原、増殖因子としてのかかるより小さなタンパク質、インターロイキン-2、及びインスリンの液状配合物中のタンパク質を安定化させることができる。
【0071】
安定剤及び充填剤
充填剤は、生成物のエレガンスを向上させ、且つブローアウトを防ぐために凍結乾燥配合物中で典型的に用いられる。配合物中の条件は、一般に、充填剤が凍結した非晶相から結晶化して(凍結する間、又はTg’を超えてアニーリングする間のいずれかで)ケーキ構造及びバルクを付与するように設計される。マンニトール及びグリシンは、一般的に用いられる充填剤の例である。
【0072】
安定剤としては、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、及びガラス形成剤としての役割を果たし得る化合物の部類が挙げられる。凍結保護剤は、凍結中の又は低温で凍結状態のタンパク質を安定化させるように作用する(P.Cameron,ed.,Good Pharmaceutical Freeze-Drying Practice,Interpharm Press,Inc.,Buffalo Grove,IL,(1997))。凍結乾燥保護剤は、フリーズドライの脱水段階中にタンパク質の天然様立体配座特性を保存することによって、タンパク質をフリーズドライされた固形剤形で安定化させる。ガラス状態特性は、温度の関数としてのこれらの緩和特性に応じて、「頑丈」又は「脆弱」に分類されている。安定性を与えるためには、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、及びガラス形成剤が、タンパク質と同じ相に留まることが重要である。糖、ポリマー、及びポリオールはこのカテゴリに入り、場合によっては3つの役割の全てを果たすことができる。
【0073】
ポリオールは、糖(例えば、マンニトール、スクロース、ソルビトール)、及び他の多価アルコール(例えば、グリセロール及びプロピレングリコール)を含む賦形剤の一部類を包含する。ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーはこのカテゴリに含まれる。ポリオールは、液状及び凍結乾燥非経口タンパク質配合物の両方において、安定化賦形剤及び/又は等張化剤として一般的に使用される。ホフマイスターシリーズの場合、ポリオールはコスモトロピック(kosmotropic)であり、タンパク質表面から選択的に排除される。ポリオールは、タンパク質を物理的分解経路及び化学的分解経路の両方から保護することができる。選択的に排除された共溶媒はタンパク質の界面における溶媒の有効表面張力を増加させるため、エネルギー的に最も好ましいタンパク質の立体配座は最小の表面積を有するものである。
【0074】
マンニトールは、フリーズドライ中に非晶質タンパク質相から結晶化してケーキに構造的安定性を与えるため、凍結乾燥配合物において一般的な充填剤である(例えばLeukine(登録商標)、Enbrel(登録商標)-Lyo、Betaseron(登録商標))。これは、一般に、スクロースなどの凍結保護剤及び/又は凍結乾燥保護剤と組み合わせて使用される。マンニトールは凍結条件下で結晶化する傾向があるため、ソルビトール及びスクロースが、輸送中に又は製造前にバルクを凍結させる際に遭遇する凍結融解のストレスから生成物を保護するための、液状配合物中の好ましい等張化剤/安定剤である。ソルビトール及びスクロースは、結晶化に対する抵抗性がはるかに大きく、従って、タンパク質から相分離する可能性がより低い。マンニトールは、Actimmune(登録商標)、Forteo(登録商標)、及びRebif(登録商標)などのいくつかの市販液状配合物において等張化量で用いられている一方で、これらの薬物の製品ラベルに「凍結禁止」と警告が記載されていることに注目することは興味深い。グルコース及びラクトースなどの(遊離アルデヒド又はケトン基を含有する)還元糖は、タンパク質の表面リジン及びアルギニン残基と反応し、アルデヒドと第一級アミンとのメイラード反応を介してタンパク質の表面リジン及びアルギニン残基を糖化し得るため、使用を避けるべきである(Chevalier F,et al.,Nahrung,46(2):58-63(2002);Humeny A,et al.,J Agric Food Chem.50(7):2153-60(2002))。スクロースは、酸性条件下で、フルクトース及びグルコースへと加水分解し得(Kautz C.F.and Robinson A.L.,JACS,50(4)1022-30(1928))、その結果、糖化を引き起こし得る。
【0075】
本発明の組成物の特定の実施形態では、凍結乾燥に誘起される又は貯蔵に誘起される凝集及び化学的分解を防止又は低減するために安定剤(又は安定剤の組み合わせ)が凍結乾燥配合物に添加される。再構成時の濁った又は不透明な溶液は、タンパク質が沈殿したことを示す。用語「安定剤」は、水性及び固体状態での、凝集又はその他の物理的分解及び化学的分解(例えば、自己分解、脱アミド化、酸化など)を防ぐことができる賦形剤を意味する。医薬組成物中で従来使用される安定剤としては、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、アルギニンHCL、デキストラン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、シクロデキストリン、N-メチルピロリデン(pyrollidene)、セルロース及びヒアルロン酸などの多糖を含むポリヒドロキシ化合物、塩化ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない(Carpenter et al.(1991),Develop.Biol.Standard74:225)。
【0076】
オスモライト
タンパク質配合物の賦形剤として一般的に用いられるオスモライトを表2に列記する。自然界で一般的に見いだされる、賦形剤として有用となり得るその他のオスモライトとしては、タウリン、ベタイン、トリメチルアミン、N-オキシド(TMAO)、コリン-O-スルフェート、及びサルコシンが挙げられる。
【0077】
タンパク質及びポリマー
タンパク質系の賦形剤は、特に、タンパク質系賦形剤の存在下でタンパク質系薬剤又はワクチンの安定性を監視するための分析方法の開発において、配合物に複雑性を付与する。ポリマーは、凍結乾燥タンパク質配合物における賦形剤(例えば充填剤)として評価されてきた。タンパク質が乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)及びポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーと共に配合される、タンパク質薬物及びワクチンの制御放出配合物が研究されている。多くの更なる水溶性ポリマー(例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC))が、タンパク質薬物の局所配合物のために用いられてきた。
【0078】
PEGは、2つの異なる温度依存性機構によってタンパク質を安定化させることができる。これは、低温ではタンパク質表面から選択的に排除されるが、高温では、その両親媒性のためにタンパク質のアンフォールド形態と相互作用することが示されている(Lee and Lee(1987),Biochemistry,26(24):7813-9)。これは、低温では、選択的排除によってタンパク質を保護することができるが、高温では、恐らくアンフォールドされた分子間の生産的衝突の数を低減することによりタンパク質を保護することができる。PEGは凍結保護剤でもあり、組み換え抗血友病因子の凍結乾燥配合物であるRecombinate(登録商標)において使用されてきた。
【0079】
酸化防止剤
多くの異なる原因がタンパク質残基を酸化させ得る。酸化性タンパク質の損傷は、大気の酸素、温度、光曝露、及び化学的汚染などの要因を含む製造プロセス及び生成物の貯蔵を慎重に管理することによって最小化することができる。こうした管理が不適当である場合は、酸化防止賦形剤を配合物に含めることができる。
【0080】
最も一般的に使用される医薬用酸化防止賦形剤は、還元剤、酸素/フリーラジカルスカベンジャー、又はキレート剤である。治療用タンパク質配合物中の抗酸化剤は水溶性でなければならず、生成物の貯蔵寿命全体を通して活性を維持しなければならない。還元剤及び酸素/フリーラジカルスカベンジャーは、溶液中の活性酸素種を切断することによって機能する。キレート剤(例えばEDTA)は、フリーラジカル形成を促進する微量金属不純物を結合することによって効果を発揮し得る。例えば、酸性線維芽細胞増殖因子の液状配合物中では、EDTAが金属イオンによって触媒されるシステイン残基の酸化を阻害する。EDTAは、Kineret(登録商標)及びOntak(登録商標)などの市販製品に使用されている。
【0081】
金属イオン
一般に、遷移金属イオンはタンパク質中で物理的及び化学的分解反応を触媒し得るため、タンパク質配合物中の遷移金属イオンは望ましくない。しかしながら、特定の金属イオンがタンパク質に対する補因子として機能する場合は、それが配合物中に含められる。金属イオンが配位錯体を形成する場合、これはタンパク質の懸濁液配合物(例えばインスリンの亜鉛懸濁液)中でも用いられ得る。アスパラギン酸がイソアスパラギン酸に異性化することを阻害するためのマグネシウムイオン(10~120mM)の使用が提案されている(国際公開第2004/039337号パンフレット)。
【0082】
金属イオンは、ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase、Pulmozyme(登録商標))の配合物中で安定性及び/又は増加した活性を付与することが見いだされている。Ca+2イオン(最大100mM)は、特異的結合部位を通じて、酵素の安定性を増加させた(Chen et al.(1999),J Pharm Sci.88(4):477-82)。実際に、EGTAによって溶液からカルシウムイオンを除去することで、脱アミド化及び凝集の増加が生じた。しかしながら、この効果は、Ca+2イオンでのみ観察され、その他の二価のカチオン(Mg+2、Mn+2、及びZn+2)は、rhDNaseを不安定化させることが観察された。
【0083】
同様の効果が、第VIII因子の配合において観察された。Ca+2及びSr+2イオンはタンパク質を安定化させた一方で、Mg+2、Mn+2、及びZn+2、Cu+2、及びFe+2などのその他のものはこれを不安定化させた(Fatouros,et al.(1997),Int.J.Pharm.,155,121-131)。第VIII因子を用いた別の研究では、Al+3イオンの存在下で凝集速度の顕著な増加が観察された(Derrick et al.(2004),J.Pharm.Sci.,93(10):2549-57)。著者らは、緩衝剤塩のような他の賦形剤にはAl+3イオンが混入していることが多いことを指摘しており、配合製品中で適切な品質の賦形剤を使用することの必要性を例示している。A型肝炎及びポリオなどの生きている又は死んでいる弱毒化されたピコルナウイルスを含有するワクチンは、マグネシウムによって立体配座的に安定化される。カルシウム、マグネシウム、及び亜鉛などの金属イオンは水溶液中のオキシトシンの安定性を改善する。インスリンは亜鉛に結合して、結晶形態の二量体及び六量体の形成をもたらすことができ、これにより、様々なインビボ放出プロファイルを有する様々な配合物の調製が可能となる。六量体インスリン配合物の化学及び熱安定性は、様々な濃度の亜鉛及びフェノールの存在下で変化する。
【0084】
特異的リガンド
タンパク質治療薬の立体配座安定性を改善するための1つのアプローチは、タンパク質固有のリガンド結合部位を利用することである。例えば、Pulmozyme(登録商標)は、その酵素活性のために二価金属イオンを必要とするだけではなく、これは、カルシウムイオンの存在下で改善された立体配座安定性を有する。酸性及び塩基性の両方の線維芽細胞増殖因子(aFGF及びbFGF)の創傷治癒を促進する能力が臨床的に評価されたが、両方のタンパク質が、細胞表面上の強い負電荷を持つプロテオグリカンと自然に結合する。様々なその他の強い負電荷を持つ化合物もaFGFに結合し、タンパク質のポリアニオン結合部位との相互作用によってaFGFを劇的に安定化させる。
【0085】
界面活性剤
タンパク質分子は、表面と相互作用する高い傾向を有すため、空気-液体、バイアル-液体、及び液体-液体(シリコーン油)界面で吸着及び変性を起こしやすい。この分解経路は、タンパク質濃度に逆依存し、可溶性及び不溶性のタンパク質凝集体、又は表面への吸着による溶液からのタンパク質の喪失をもたらす。容器表面吸着に加えて、表面誘起分解は、搬送及び取り扱い中に経験されるような物理的攪拌によって悪化する。
【0086】
界面活性剤は、表面誘起分解を防ぐために、タンパク質配合物中で一般的に使用される。界面活性剤は、界面位置に関してタンパク質に打ち勝つ能力を有する両親媒性の分子である。界面活性剤分子の疎水性部分は界面位置(例えば、空気/液体)を占めるのに対し、分子の親水性部分はバルク溶媒の方向に配向された状態を保つ。十分な濃度(典型的には、洗剤の臨界ミセル濃度付近)において、界面活性剤分子の表面層は、タンパク質分子が界面において吸着するのを防ぐ役割を果たす。これにより、表面誘起分解は最小化される。
【0087】
最も一般的に用いられる界面活性剤は、ソルビタンポリエトキシレート、すなわちポリソルベート20及びポリソルベート80(例えば、製剤のAvonex(登録商標)、Neupogen(登録商標)、Neulasta(登録商標)中)の非イオン性脂肪酸エステルである。2つは、分子C-12及びC-18にそれぞれ疎水性特性を付与する脂肪族鎖の長さのみが異なる。ポリソルベート80は、ポリソルベート20よりも界面活性が高く、且つより低い臨界ミセル濃度を有する。ポリソルベート20及びポリソルベート80の両方が、攪拌誘起凝集から保護することが示されている。ポリソルベート20及びポリソルベート80はまた、凍結、凍結乾燥、及び再構成によって誘起されるストレスからも保護する。ポリソルベート20及び80の両方が、タンパク質を酸化させ得る過酸化物を含み得、これら自体が酸化又は加水分解のいずれかによって分解して、タンパク質の安定性に様々な影響を及ぼし得る。配合物中のポリソルベート20又は80の濃度を制御することも、膜ろ過中のその複雑な挙動のために困難であり得る(特にポリソルベートが溶液中でミセルを形成する濃度において)。界面活性剤ポロキサマー188も、Gonal-F(登録商標)、Norditropin(登録商標)及びOvidrel(登録商標)などのいくつかの市販液体製品中に使用されてきた。一般的に、非イオン性界面活性剤は、主に疎水性表面(例えば空気-水界面)に関してタンパク質分子に打ち勝ち、それによってタンパク質がこれらの疎水界面においてアンフォールドするのを防ぐことによってタンパク質を安定化させるものと考えられる。非イオン性界面活性剤はまた、処理中に存在するその他の疎水性表面にタンパク質分子が吸着するのを阻止することができる。更に非イオン性界面活性剤は、タンパク質分子中の疎水性領域と直接相互作用することができる。モノクローナル抗体は、緩衝剤のみと比較して、ポリソルベート20の臨界ミセル濃度に影響を与え得る。
【0088】
洗剤はまた、タンパク質の熱力学的配座安定性にも影響を及ぼし得る。ここでも、所定の賦形剤の効果は、タンパク質特異的である。例えば、ポリソルベートは、一部のタンパク質の安定性を低下させ、その他の安定性を向上させることが示されている。洗剤のタンパク質不安定化は、部分的又は全体的にアンフォールドしたタンパク質状態との特異的な結合に関与し得る洗剤分子の疎水性尾部の点で理にかなっている。これらの種類の相互作用は、より拡張したタンパク質状態への配座平衡の移行を引き起こし得る(すなわち、結合するポリソルベートを補完してタンパク質分子の疎水性部分の露出を増加させる)。或いは、タンパク質の天然状態がいくつかの疎水性表面を示す場合、天然状態に結合する洗剤はその立体配座を安定化させ得る。
【0089】
ポリソルベートの別の側面は、これらが本質的に酸化分解を起こしやすい点である。これらは、タンパク質残基側鎖、特にメチオニンの酸化を引き起こすのに十分な量の過酸化物を原材料として含有する場合が多い。安定剤の添加から生じる酸化損傷の可能性のために、最低有効濃度の賦形剤が配合物中に使用されるべきであるという点が強調される。界面活性剤の場合、所定のタンパク質の有効濃度は、安定化機構によって決まる。界面活性剤の安定化機構が表面変性の防止に関連する場合、有効濃度は洗剤の臨界ミセル濃度付近になることが想定されている。反対に、安定化機構が特異的なタンパク質-洗剤相互作用と関連する場合、有効な界面活性剤濃度は、タンパク質濃度及び相互作用の化学量論に関連する(Randolph et al.(2002),Pharm Biotechnol.,13:159-75)。
【0090】
また、凍結及び乾燥中の表面関連凝集現象を防止するために、界面活性剤を適量で添加してもよい(Chang(1996),J.Pharm.Sci.85:1325)。例示的な界面活性剤としては、天然のアミノ酸に由来する界面活性剤を含む、アニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、及び両性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム及びスルホン酸ジオクチルナトリウム、ケノデオキシコール酸、N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ドデシル硫酸リチウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、並びにグリコデオキシコール酸ナトリウム塩が挙げられるがこれらに限定されない。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム一水和物、及び臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられるがこれらに限定されない。双性イオン性界面活性剤としては、CHAPS、CHAPSO、SB3-10、及びSB3-12が挙げられるがこれらに限定されない。非イオン性界面活性剤としては、ジギトニン、Triton X-100、Triton X-114、TWEEN-20、及びTWEEN-80が挙げられるがこれらに限定されない。別の実施形態では、界面活性剤としては、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、40、50、及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65、及び80、大豆レシチン及び他のリン脂質、例えばDOPC、DMPG、DMPC、及びDOPG、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0091】

塩は、配合物のイオン強度を増加させるために添加される場合が多く、これは、タンパク質の溶解度、物理的安定性、及び等張性に重要であり得る。塩は、様々な様式でタンパク質の物理的安定性に影響を与え得る。イオンは、タンパク質表面上の荷電した残基に結合することによって、タンパク質の天然状態を安定化させ得る。或いは、これらはタンパク質骨格に沿ったペプチド基(-CONH-)に結合することによって、変性状態を安定化させることができる。塩はまた、タンパク質分子内の残基間の反発性の静電相互作用を遮蔽することによって、タンパク質の未変性立体配座を安定化させることもできる。タンパク質配合物中の電解質は、タンパク質の凝集及び不溶性をもたらし得るタンパク質分子間の誘引性の静電相互作用を遮蔽することもできる。
【0092】
タンパク質の安定性及び溶解性に対する塩の効果は、イオン種の特性によって大幅に変動する。ホフマイスターシリーズは、電解質がタンパク質を沈殿させる能力に基づいて、電解質を順位付けする方法として、1880年代に考案された(Cacace et al.(1997),Quarterly Reviews of Biophysics,30(3):241-277)。この報告では、ホフマイスターシリーズは、イオン性及び非イオン性共溶質によるタンパク質安定化効果の規模を表すために用いられる。表Cでは、溶液状態のタンパク質に対する共溶質の一般的効果に関連して、共溶質が安定化(コスモトロピック)から不安定化(カオトロピック)まで順番に記載されている。一般的に、アニオン間の効果の差は、カチオンに関して観察されるものよりはるかに大きく、両種とも、非経口配合物中で許容され得るよりも高い濃度で効果が最も明白になる。「塩析」と称されるプロセスによって、タンパク質を溶液から沈殿させるために、高濃度のコスモトロープ(例えば、>1モルの硫酸アンモニウム)が一般に使用され、コスモトロープは、タンパク質表面から選択的に排除され、その天然の(折り畳まれた)立体配座にあるタンパク質の溶解性を低下させる。塩の除去又は希釈は、タンパク質を溶液に復活させる。用語「塩溶」とは、タンパク質骨格のペプチド結合を溶媒和させることによって、タンパク質の溶解性を向上させる不安定化イオン(例えば、グアニジン及び塩化物など)の使用を指す。カオトロープの漸増濃度は、ペプチド鎖の溶解度が増加するにつれて、タンパク質の変性(アンフォールド)状態の立体配座を好む。「塩溶」及び「塩析」に対するイオンの相対的な効果により、ホフマイスターシリーズでのイオンの位置が定義される。
【0093】
【表6】
【0094】
非経口配合物中での等張性を維持するために、塩濃度は、一価イオンの組み合わせに対して一般に150mM未満に限定される。この濃度範囲では、塩安定化の機構は、おそらく、静電的な反発性分子内力又は誘因性の分子間力のスクリーニング(デバイ・ヒュッケルスクリーニング)によるものである。興味深いことに、カオトロピック塩は、この機構によって、タンパク質構造を安定化する上で類似濃度のコスモトロープよりも効果的であることが示されている。カオトロピックアニオンはコスモトロピックイオンよりも強く結合するものと考えられている。共有結合性のタンパク質分解の場合、デバイ・ヒュッケル理論によって、この機構に対するイオン強度の効果が異なることが予想される。したがって、塩化ナトリウムによるタンパク質安定化の公表された報告には、塩化ナトリウムが共有結合性分解を加速したという報告が添付されている。塩がタンパク質の安定性に影響を与える機構はタンパク質特異的であり、溶液pHの関数として著しく変動し得る。タンパク質薬物の送達を可能とする上で有用であり得る賦形剤の例は、いくつかの高濃度抗体配合物の賦形剤である。過去数年にわたり、こうした配合物の粘度を低下させる上で塩が有効であることが示されてきた(Liu et al.(2005,2006),J.Pharm Sci.,94(9):1928-40,erratum in J Pharm Sci.,95(1):234-5)。
【0095】
防腐剤
防腐剤は、同じ容器からの2回以上の取り出しを伴う複数回使用非経口配合物を開発する際に必要となる。その主な機能は、製剤の貯蔵寿命又は使用期間にわたって微生物の増殖を阻害し、製品の無菌性を確保することである。一般に使用される防腐剤としては、ベンジルアルコール、フェノール及びm-クレゾールが挙げられる。防腐剤は長い使用の歴史を有するが、防腐剤を含むタンパク質配合物の開発は困難であり得る。防腐剤は、ほぼ常に、タンパク質に対する不安定化効果(凝集)を有しており、これが複数回用量のタンパク質配合物における使用を制限する主要な要因となっている(Roy et al.(2005),J.Pharm.Sci.,94(2):382-96)。ベンジルアルコールもまた、濃度、温度、及び時間依存的な様式で、タンパク質の構造及び安定性に影響を及ぼすことが示されている。これらの不安定化効果のために、多くの凍結乾燥タンパク質配合物が、投与前にタンパク質と接触する時間を最小化するために、ベンジルアルコールを含む希釈剤で再構成される。
【0096】
ほとんどのタンパク質薬物は、単回使用のためにのみ配合されている。しかしながら、複数回用量配合物が可能である場合、患者の利便性及び高い市場性を実現するという利点が加わる。防腐処理された配合物の開発により、より便利な複数回使用の注射ペンの提案が製品化に至ったヒト成長ホルモン(hGH)は、その良い例である。少なくとも4種の、hGHの防腐処理された配合物を含有するこうしたペンデバイスが現在入手可能である。Norditropin(登録商標)(液体)、Nutropin AQ(登録商標)(液体)、及びGenotropin(凍結乾燥-デュアルチャンバカートリッジ)はフェノールを含有し、一方でSomatrope(登録商標)はm-クレゾールを配合している。
【0097】
防腐処理された剤形の配合物開発中に、いくつかの態様を考慮する必要がある。製剤中の効果的な防腐剤濃度を最適化しなければならない。これには、剤形中の所与の防腐剤を、タンパク質の安定性を損なうことなく抗微生物効果を付与する濃度範囲で試験することが必要となる。例えば、3つの防腐剤が、インターロイキン-1受容体(I型)に対する液体配合物の開発において、示差走査熱量測定(DSC)を用いて成功裏にスクリーニングされた。防腐剤は、市販されている製品中で一般に使用されている濃度での安定性に対する影響に基づいて、順位付けされた(Remmele et al.(1998),Pharm.Res.,15(2):200-8)。
【0098】
予想され得るように、防腐剤を含有する液体配合物の開発は凍結乾燥配合物よりも困難である。フリーズドライ生成物は、防腐剤なしで凍結乾燥され、使用時に希釈剤を含有する防腐剤で再構成することができる。これにより防腐剤がタンパク質と接触する時間が短縮され、付随する安定性リスクが大幅に最小化される。液体配合物の場合、防腐剤の有効性及び安定性は、製品の貯蔵寿命全体(通常は約18~24か月)にわたって維持されなければならない。注意すべき重要な点としては、防腐剤の有効性は、活性薬物及び全ての賦形剤成分を含有する最終配合物において実証される必要がある。
【0099】
一部の防腐剤は、注射部位反応を引き起こす場合があり、これは、防腐剤を選択する場合に検討する必要のあるもう1つの要因である。Norditropin(登録商標)中の防腐剤及び緩衝剤の評価に焦点を当てた臨床試験において、m-クレゾールを含有する配合物と比べて、フェノール及びベンジルアルコールを含有する配合物中では、疼痛の知覚がより低いことが観察された(Kappelgaard(2004),Horm.Res.62 Suppl 3:98-103)。興味深いことに、一般的に使用される防腐剤のうち、ベンジルアルコールは麻酔特性を有する(Minogue and Sun(2005),Anesth.Analg.100(3):683-6)。
【実施例0100】
本明細書において議論及び引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。開示した本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び材料に限定されず、これらは変化し得ることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図されていないことも理解される。
【0101】
当業者であれば、単なる日常的な実験により、本明細に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0102】
実施例1:
この実験は、充填重量目標を調節することにより、それぞれの再構成された製剤用にタンパク質濃度の標的を正確に合わせることができることを実証する。
【0103】
材料
・ pH5でマンニトール、スクロース、L-ヒスチジン、ポリソルベート20を含有する緩衝剤
・ 容器バイアル、3cc、I型ガラス、未処理、ストッパを用いた13mm仕上げ、13mm、4432/50 V-50、
・ ロミプロスチム濾過精製バルク
【0104】
方法
1. 必要な量の希釈緩衝剤を用いて薬物を標的の生成物配合(0.5mg/mL)に希釈する。
2. 0.22μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルタを用いて配合溶液を濾過する。
3. バイアル及びストッパ:3ccバイアルが洗浄され脱パイロジェン処理されていることを確実にする。
4. 十分な数量のバイアルを、それぞれの充填重量目標;0.307、0.322、0.342、0.357、0.373gまで満たす。
5. バイアルを栓で部分的に塞ぎ、凍結乾燥機内に配置する。
6. 適切な凍結、真空を伴い、一次及び二次乾燥、続いてストッパリング、及び封止されたバイアル中の凍結乾燥生成物の取り出しを伴う、必要な凍結乾燥サイクルを実施する。
7. 生成物を、0.32mLの定められた再構成容量の注入用水を用いて再構成する。
8. 紫外線(UV)吸収を用いてバイアル中に得られたタンパク質の濃度を測定する。吸光度は、特定の波長の光が検体を通過する際に吸収される量として定められる。吸光度単位とは、分子、その濃度、及び検体の経路長に固有の吸光度の関数である。タンパク質分子中の芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンは、260~290nmのUV範囲中の光を吸収する。この範囲のUV吸光は、溶液中のタンパク質の存在を測定するために通常用いられる。
9. 氷点降下法を用いて生成物のオスモル濃度を測定する。
10. 分析を実施して、タンパク質及びオスモル濃度の両方に対する調整された充填重量目標の効果を判定する。
【0105】
【表7】
【0106】
図6に示す0.9964のRによって示されるとおり、再構成されたタンパク質濃度と充填容量との間に強い線形関係が観察された。この線形関係は、以下に示すタンパク質のマスバランスに基づき理論的に説明することができる。
再構成 再構成=(C配合-C喪失充填[方程式1]
【数1】
【0107】
再構成が再構成後のタンパク質濃度である場合、V再構成は再構成後の生成物容量であり、C配合は配合バルクタンパク質の濃度であり、C喪失はフィルタ及び容器に結合したことによるタンパク質の喪失であり、V充填は各バイアル中の充填容量である。配合バルク濃度、タンパク質結合喪失、及び再構成容量が所定の実施で一定であるため、再構成後のタンパク質濃度は、方程式2に示されるように充填容量に比例している。
【0108】
パイロット規模の実験では、表6に示すとおり、各充填条件での10個の複製を用いて最終再構成製剤(DP)のタンパク質濃度のばらつきを測定した。したがって、観察されたばらつきは、生成物の再構成に付随するばらつきを含む、プロセス及び分析両方のばらつきを表す。
【0109】
【表8】
【0110】
オスモル濃度に対する充填重量の影響(再構成DP)
再構成後の最終製剤のオスモル濃度を、5種類の充填重量目標で充填されたバイアルのオスモル濃度に関して試験した。充填前及び再構成後のオスモル濃度の結果を表7にまとめる。0.341グラムの目標充填重量での結果に基づくと、オスモル濃度は充填及び再構成後で変化せず、これは、測定可能量の賦形剤が喪失しなかったことを示す。再構成容量が一定に保たれている場合、より高い充填容量ではオスモル濃度はわずかに上昇し、より低い充填容量ではわずかに低下する。
【0111】
【表9】
【0112】
図7に示すように、充填重量/容量(0.341gの目標に基づき正規化された)が、生成物のオスモル濃度(目標充填重量での313mOsm/kgの目標オスモル濃度に基づいて正規化された)に対してプロットされる場合、線形関係が判明した。この線形関係は、オスモル濃度の定義、及びその緩衝剤成分濃度との関係によって説明することができる。
【0113】
オスモル濃度は溶質濃度の尺度であり、溶媒1キログラム当たりのオスモル(Osm)の数として定義される(オスモル/kg又はOsm/kg)。モル濃度(モル/L)とは異なり、オスモル濃度は、溶質のモルではなく溶質粒子(解離イオンなど)のモルを測定する。溶液のオスモル濃度は、以下の式に従って計算することができる。
オスモル濃度(osm/kg)=密度Σφ[方程式3]
式中、φは浸透係数であり、nは分子が解離する粒子(例えばイオン)の数であり、Cは溶質のモル濃度(モル/L)である。
【0114】
充填重量(又は容量)が目標容量よりも10%高い場合、配合物中の各賦形剤種の濃度は、一定容量に再構成した時に10%増加する。方程式3に示されるように、既知の配合物中でφ及びnが一定であるため、各種の濃度における10%の増加は、オスモル濃度の10%の増加をもたらす。同様に、充填容量の10%の減少は、賦形剤濃度の10%の減少、及びその結果としてオスモル濃度の10%の減少をもたらす。
【0115】
実施例2
タンパク質のブリナツモマブは、pH7.0で、200mMのL-リジン-HCl、25mMのクエン酸、15%(w/v)のトレハロース二水和物、0.1%(w/v)のポリソルベート80に配合された55μg/mLを有する。配合タンパク質の許容可能範囲を濾過バルク段階で測定する。48.0μg/mL~65.0μg/mLの範囲のバルク濃度を用いる。測定されたタンパク質濃度に基づいて、3mLの水で再構成した時に12.5mcg/mLの再構成製剤を目標とする目標充填重量を計算する。
再構成 再構成=(C配合-C喪失充填
式中、
再構成 再構成=目標タンパク質含量再構成である。
【0116】
続いて目標タンパク質含量を生成物密度で乗算し、測定された薬剤濃度(必要に応じて結合による喪失で調整される)で除算して、目標充填重量を決定してよい。
【0117】
目標充填重量は、以下の式に従い、対応する充填重量範囲(0.634~0.858gm)を用いて計算し、
【数2】
式中、DSは原薬を指すと当業者には一般に理解される。より一般的に表すと、
【数3】
である。
【0118】
実施例3
インフリキシマブ製剤は20±1.5mg/mLのインフリキシマブを有し、10mMのリン酸ナトリウム、10%(w/v)のスクロース、0.01%(w/v)のポリソルベート80を配合し、10mLの注入用水を用いた再構成後にpH7.2である。
【0119】
目標充填重量は、以下の式に従い、対応する充填重量範囲(4.85~5.63gm)を用いて計算する。
【0120】
目標充填重量の計算
【数4】
【0121】
実施例4
トラスツズマブは21mg/mLを有し、pH6.1で、0.303mg/mLのL-ヒスチジン、0.470mg/mLのL-ヒスチジン塩酸塩一水和物、19.1mg/mLのα,α-トレハロース二水和物、0.0840mg/mLのポリソルベート20を配合する。目標充填重量を、以下の式に従い、製品引渡要件に基づく様々な充填重量範囲を用いて計算する。充填重量目標は3.1~21.2gmの範囲である(それぞれの提示物(presentation)に応じて変化する)。この生成物は複数の組成を有し、プールされた原薬の濃度は21mg/mLである。
【0122】
この実施例4及び後続の実施例の各製剤ロットの目標充填重量を、以下の情報を用いて計算する。
【数5】
【0123】
一例として、
【数6】
である。
【0124】
別の一例として、
【数7】
である。
【0125】
更なる例として、
【数8】
である。
【0126】
実施例5
AMG701は、一本鎖の可変ドメイン二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE(登録商標))抗BCMA/抗CD3抗体コンストラクトである(NCI Drug Dictionary及びその他の参考文献を参照されたい)。1mg/mLのタンパク質濃度を有するAMG701を、pH4.2で、10mMのL-グルタミン酸、9.0%(w/v)のスクロース、0.010%(w/v)のポリソルベート80と配合した。目標充填重量を、以下の式に従い、製品引渡要件に基づく様々な充填重量範囲を用いて計算する。AMG701は3つの提示物を有し、第1の提示物の充填重量目標範囲は0.47~0.57gmであり、第2の提示物では1.60~1.96gmであり、第3の提示物では3.28~4.01gmである。
【0127】
第1の提示物の場合:
【数9】
【0128】
第2の提示物の場合:
【数10】
【0129】
第3の提示物の場合:
【数11】
【0130】
実施例6
AMG330は、抗CD33/抗CD3の一本鎖可変ドメイン二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE(登録商標))である(NCI Drug Dictionary及びその他の参考文献を参照されたい)。0.5mg/mLのタンパク質濃度を有するAMG300を、pH6.1で、10mMのリン酸カリウム、8.0%(w/v)のスクロース、1.0%(w/v)のスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBE-CD)、0.010%(w/v)のポリソルベート80と配合した。目標充填重量を、以下の式に従い、製品引渡要件に基づく様々な充填重量範囲を用いて計算する。充填重量目標は1.2~1.5gmの範囲である。目標充填重量は次のように計算する。
【数12】
【0131】
一般に、本方法論は、再構成後の生成物が確実に所要の濃度であるように、生成物の目標量が容器内で求められる場合に用いることができる。この結果は、再構成生成物の容量の量を測定することによって達成される:例えば、1mg/mLの所望の濃度の治療用タンパク質を含む1mL容量は、1mgの所要のタンパク質含量の合計量をもたらす。
目標タンパク質含量[mg]=(タンパク質濃度[mg/mL]×再構成容量[mL])
【0132】
続いて目標タンパク質含量を用いて、以下の式に基づき目標充填重量を計算する。工程内の、又は測定された薬剤濃度は、典型的には、任意のプロセスのばらつきを補うために、配合プロセスの一部として測定される。場合によっては、目標タンパク質含量の調整を行い、結合による生成物の喪失を補う。充填重量の正確なターゲティングを確実にするためには測定された薬剤濃度の信頼性が必要である。
【数13】
【0133】
工程内濃縮及び再構成生成物の両方のための治療薬は、1ミリリットル(mL)当たりマイクログラム(mcg又はμg)台から1ミリリットル(mL)当たりミリグラム(mg)台の範囲であり得るため、これは特定の実施例である。
【0134】
上述したオスモル濃度の検証が必要である(実験的発見に基づく)。容器に充填される活性薬剤の所要の量を達成して、再構成生成物が、生成物(活性薬剤又はタンパク質)濃度、のみならずオスモル濃度の規格限界の両方を満たすことを保証するために、充填重量目標と組み合わせて、許容される測定された薬剤濃度の制限が定められる。
【0135】
本明細書において議論及び引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。開示した本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び材料に限定されず、これらは変化し得ることが理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図されていないことも理解される。
【0136】
当業者であれば、単なる日常的な実験により、本明細に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023126930000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用タンパク質の凍結乾燥医薬配合物を製造するプロセスであって、
a.バルク量の前記治療用タンパク質の配合物を提供することと、
b.バルク配合物中における前記治療用タンパク質の濃度を測定することと、
c.前記バルク配合物中の前記タンパク質の充填重量を調整して、前記タンパク質の固定用量を得ることと、
d.前記タンパク質の充填重量が調整された配合物を凍結乾燥して、容器内に最終配合物を得ることと
を含み、
固定容量を用いて再構成した後の生成物の濃度が、所定の許容可能な範囲内にある、プロセス。