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特開2023-126945超並列シークエンシングのためのDNAライブラリー生成のための改良された方法及びキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126945
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】超並列シークエンシングのためのDNAライブラリー生成のための改良された方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230905BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20230905BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230905BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230905BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C40B40/06
C12Q1/686 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023111550
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2020502308の分割
【原出願日】2018-07-20
(31)【優先権主張番号】17182693.6
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】516164519
【氏名又は名称】メナリーニ シリコン バイオシステムズ エッセ.ピー.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デル モナコ ヴァレンティーナ
(72)【発明者】
【氏名】マナレシ ニコロ
(72)【発明者】
【氏名】ブソン ジェニー
(72)【発明者】
【氏名】トノーニ パオラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】超並列シークエンシングライブラリーを生成する方法を提供する。
【解決手段】a)ユニバーサルシークエンスアダプターを含む一次WGA DNAライブラリー(pWGAlib)を準備する工程と、b)1回のPCRサイクルを、pWGAlibにおいて、実施する工程と、c)1回のPCRサイクルを工程b)の産物において、5’から3’の順に、1PR5SAとは異なる第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)、及びユニバーサルシークエンスアダプターの逆相補とハイブリダイズする第2のプライマー3’セクション(2PR3S)を含む、第2のプライマー(2PR)を用いて実施する工程と、d)工程c)の産物を、1PR5SAを含む第3のプライマー、及び2PR5SAを含む第4のプライマーを用いてPCRにより増幅する工程とを含む、方法が開示される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超並列シークエンシングライブラリーを生成する方法であって、
a.既知の5’配列セクション(5SS)、中央配列セクション(MSS)、及び前記既知の5’配列セクションと逆相補性である既知の3’配列セクション(3SS)を含むフラグメントを含む一次WGA DNAライブラリー(pWGAlib)を準備する工程であって、
前記既知の5’配列セクション(5SS)がWGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターを含み、前記中央配列セクション(MSS)が少なくともWGAの前の増幅されていないオリジナルDNAのDNA配列に対応するインサートセクション(IS)を含み、前記中央配列セクション(MSS)が加えて任意に隣接5’中間セクション(F5)及び/又は隣接3’中間セクション(F3)を含む、工程と、
b.1回のPCRサイクルを、一次WGA DNAライブラリーにおいて、少なくとも第1のプライマー5’セクション(1PR5S)及び第1のプライマー3’セクション(1PR3S)を含む、少なくとも1種類の第1のプライマー(1PR)を用いて実施し、第1のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを得る工程であって、
前記第1のプライマー5’セクション(1PR5S)が少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含み、前記第1のプライマー3’セクション(1PR3S)が、既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズする工程と、
c.1回のPCRサイクルを、前記第1のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーにおいて、第2のプライマー5’セクション(2PR5S)及び第2のプライマー3’セクション(2PR3S)を含む少なくとも1種類の第2のプライマー(2PR)を用いて実施し、第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを得る工程であって、
前記第2のプライマー5’セクション(2PR5S)が、前記少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)とは異なる、少なくとも1つの第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含み、前記第2のプライマー3’セクション(2PR3S)が、前記既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズする、工程と、
d.前記第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを、前記第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含む少なくとも1種類の第3のプライマー(3PR)、及び前記第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含む少なくとも1種類の第4のプライマー(4PR)を用いてPCRにより増幅し、増幅された第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1のプライマー(1PR)が、前記第1のプライマー5’セクション(1PR5S)の3’位置、及び前記第1のプライマー3’セクション(1PR3S)の5’位置に、少なくとも1つのリードシークエンシングプライマー配列(1PRSEQ)を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のプライマー5’セクション(1PR5S)が、前記少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)の3’位置、及び前記第1のプライマー3’セクション(1PR3S)の5’位置に、少なくとも1つの第1のシークエンシングバーコード(1PR5BC)を更に含み、及び/又は前記第2のプライマー5’セクション(2PR5S)が、前記少なくとも1つの第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)の3’位置、及び前記第2のプライマー3’セクション(2PR3S)の5’位置に、少なくとも1つの第2のシークエンシングバーコード(2PR5BC)を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを工程bの後に精製する工程、及び/又は前記第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを工程cの後に精製する工程、及び/又は前記増幅された第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを工程dの後に精製する工程を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターが、DRS-WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプター又はMALBACライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターが、DRS-WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記DRS-WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターが配列番号50であり、前記MALBACライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターが配列番号51である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ローパス全ゲノムシークエンシングの方法であって、
請求項3~7のいずれか1項に記載の方法により得られる、バーコードを付した超並列シークエンシングライブラリーを複数準備し、異なるシークエンシングバーコード(BC)を使用して得られたサンプルをプールする工程と、
前記プールされたライブラリーをシークエンシングする工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
異なるシークエンシングバーコード(BC)を使用してサンプルをプールする工程が、バーコードを付した超並列シークエンシングライブラリーそれぞれにおけるDNAを定量化する工程と、
バーコードを付した超並列シークエンシングライブラリーの量を正規化する工程と、
を更に含む、請求項8に記載のローパス全ゲノムシークエンシングの方法。
【請求項10】
少なくとも第1のプライマー5’セクション(1PR5S)及び第1のプライマー3’セクション(1PR3S)を含む少なくとも1種類の第1のプライマー(1PR)であって、前記第1のプライマー5’セクション(1PR5S)が少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含み、前記第1のプライマー3’セクション(1PR3S)が、一次WGA DNAライブラリー(pWGAlib)のフラグメントのWGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダブターを含む既知の5’配列セクション(5SS)と逆相補性である既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズし、前記フラグメントが前記既知の5’配列セクション(5SS)の中央配列セクション(MSS)3’及び前記既知の3’配列セクション(3SS)の5’を更に含む、少なくとも1種類の第1のプライマーと、
少なくとも第2のプライマー5’セクション(2PR5S)及び第2の3’セクション(2PR3S)を含む少なくとも1種類の第2のプライマー(2PR)であって、前記第2のプライマー5’セクション(2PR5S)が、前記少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)とは異なる、少なくとも1つの第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含み、前記第2の3’セクションが、前記フラグメントの前記既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズする、少なくとも1種類の第2のプライマーと、
前記第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含む少なくとも1種類の第3のプライマー(3PR)と、
前記第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含む少なくとも1種類の第4のプライマー(4PR)と、
を含む、超並列シークエンシングライブラリー調製キット。
【請求項11】
a)配列番号1~配列番号12からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマー、又は、
b)配列番号27~配列番号38からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマー、又は、
c)配列番号52~配列番号63からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマー、又は、
d)配列番号64~配列番号75からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマー、
を含む、超並列シークエンシングライブラリー調製キット。
【請求項12】
a)配列番号1~配列番号12からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号23のカスタムシークエンシングプライマー、又は、
b)配列番号27~配列番号38からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号47のプライマー、又は、
c)配列番号52~配列番号63からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、配列番号23のカスタムシークエンシングプライマー、並びに配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群より選択されるカスタムインデックス2プライマー、又は、
d)配列番号64~配列番号75からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号47のプライマー、を含む、ローパス全ゲノムシークエンシングキット。
【請求項13】
選択肢a)が配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群より選択されるプライマーを更に含み、選択肢b)又は選択肢d)が配列番号48を更に含む、請求項12に記載のローパス全ゲノムシークエンシングキット。
【請求項14】
選択肢b)又は選択肢d)が配列番号49のプライマーを更に含む、請求項13に記載のローパス全ゲノムシークエンシングキット。
【請求項15】
ゲノムワイドコピー数プロファイリングの方法であって、
請求項10又は11に記載のシークエンシングライブラリー調製キットを使用して開発されたDNAライブラリーをシークエンシングする工程と、
ゲノムの異なる領域にわたるシークエンシングリード深度を解析する工程と、
ゲノム領域におけるリード数を、参照ゲノムの同じ領域において期待されるリード数と比較することにより、ゲノムの領域のコピー数の値を決定する工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年7月21日に出願された欧州特許出願第17182693.6号の優先権を主張し、その開示は引用することにより本出願の一部をなす。
【0002】
本発明は、全ゲノムシークエンシングのための超並列シークエンシングライブラリーを、全ゲノム増幅産物(WGA)から生成する方法及びキットに関する。特に、上記方法は有利には、確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS-WGA)DNA産物に適用することができる。
【0003】
上記ライブラリーは有利には、ローパス全ゲノムシークエンシング及びゲノムワイドコピー数プロファイリングに使用することができる。
【背景技術】
【0004】
単一細胞に関して、シークエンシング、SNP検出等を含む様々なタイプの遺伝的解析を行うことを簡単にする及び/又は可能にするため、全ゲノム増幅(WGA)を行い、より多くのDNAを得ることが有用である。
【0005】
確定的制限酵素部位に基づくLM-PCRによるWGA(例えば特許文献1に記載されている)は当該技術分野から既知である(以下で単にDRS-WGAと称する)。LM-PCRに基づくDRS-WGAの市販のキット(Ampli1(商標)WGAキット、Menarini Silicon Biosystems)が非特許文献1において使用されている。この研究におい
て、単一細胞WGA材料におけるローパス全ゲノムシークエンシングによるコピー数解析が実施された。しかしながら、この論文で使用された標準ワークフローでは、イルミナライブラリー作製は、i)WGAアダプターの消化と、ii)DNAのフラグメント化と、iii)EndRepair、iv)A-テーリング、v)バーコードを付したアダプターのライゲーション、及びvi)バーコードを付したNGSライブラリーのサンプルプーリングの一般的工程等の標準的イルミナワークフロー工程と、vii)シークエンシングとを含む複数の工程を要する。前述の論文(図5b)に示されるように、一般的なCTCの方がより多くの逸脱を示すものの、WBCは少数の偽陽性と推測されるコピー数コールを示した。
【0006】
Ampli1(商標)WGAは、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)に適合可能であり、実際に幾つかのグループ(非特許文献2、非特許文献3)により、高分解能コピー数解析に適していることが示されている。しかしながら、aCGH技術は高価で労力を要するため、体細胞コピー数変化(CNA)検出にはローパス全ゲノムシークエンシング(LPWGS)等の異なる方法が好ましい場合がある。
【0007】
均質でバランスの良い増幅という観点においてはDRS-WGAは最良の結果をもたらすものの、aCGH又は中期CGHに基づく現行のプロトコルは手間がかかる、及び/又は高価である。ローパス全ゲノムシークエンシングが、複数のサンプルを、aCGHより高い処理能力及びより低い費用で解析するハイスループットの方法として提示されている。しかしながら、WGA産物(DRS-WGA等)のための超並列シークエンシングライブラリーの生成のための既知の方法は、依然として酵素による工程及び反応を幾つか含むプロトコルを要する。
【0008】
DRS-WGAの再現性及び品質と、ゲノムワイドコピー数多形(CNV)を解析する能力とを併せ持つより効率化された方法が望ましい。加えて、僅かな量の細胞、FFPE又は組織生検試料から全ゲノムコピー数プロファイルを決定することが望ましい。
【0009】
本出願人名義の特許文献2は、WGA産物から出発する、NGS(次世代シークエンシング)ライブラリーとも称される超並列シークエンシングライブラリーを効率的に生成する方法を開示する。
【0010】
上記方法は、一次WGA DNAライブラリーを、それぞれが、特定のシークエンシングプラットフォームでのシークエンシングを可能にする異なるシークエンシングアダプターを5’末端に有する2種類のプライマーで増幅することを含む。使用することができるシークエンシングプラットフォームは、例えばイオントレントプラットフォーム又はイルミナプラットフォームである。
【0011】
或る特定のシークエンシングプラットフォーム、例えばイルミナプラットフォームを使用する場合、異なる2つのシークエンシングアダプター(イルミナの場合P5及びP7)をフラグメントの反対側の末端に含むライブラリーフラグメントを選択することが特に有利である。これらのフラグメントは、「ヘテロアダプターフラグメント」と称される。このために、上述の出願に開示される実施の形態のうちの1つは、一次WGA DNAライブラリーを増幅するための2種類のプライマーのうちの1つを、5’末端でビオチン化することを提供する。図1にこの実施の形態を要約する。一次WGA DNAライブラリーが2種類のプライマーで増幅されると、フラグメントはストレプトアビジンビーズで選択される。両端に同一のシークエンシングアダプターを有するフラグメント(以下「ホモアダプターフラグメント」と称する)は、溶出される(ビオチン化していない場合)か、又はストレプトアビジンビーズに結合したままとなる(両端がビオチン化している場合)かのいずれかである一方、ssDNAヘテロアダプターフラグメント(両端に異なるシークエンシングアダプターを有する)は変性され、溶出されることで選択される。
【0012】
ビオチン化プライマーによる選択には幾つかの欠点がある。具体的には、一本鎖DNAライブラリーをより定量しにくく、より保存に好ましくないものにする。加えて、イルミナシークエンシングワークフローには、二本鎖DNAライブラリーの使用が好ましい。この問題は二本鎖の合成又はP5及びP7プライマーを用いた更なる増幅サイクルの実施により対処することができるが、当然ながらこれにより、方法は幾分複雑なものになり、シングルチューブ反応は不可能となる。その結果、例えば上記の目的のために設計される特別なバッファーの使用を要するため、キットの設計はより複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2000/017390号
【特許文献2】国際出願PCT/EP2017/059075号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Hodgkinson C.L. et al., Tumorigenicity and genetic profiling of circulating tumor cells in small-cell lung cancer, Nature Medicine 20, 897-903 (2014)
【非特許文献2】Moehlendick B, et al. (2013) A Robust Method to Analyze Copy Number Alterations of Less than 100 kb in Single Cells Using Oligonucleotide Array CGH. PLoS ONE 8(6): e67031
【非特許文献3】Czyz ZT, et al (2014) Reliable Single Cell Array CGH for Clinical Samples. PLoS ONE 9(1): e85907
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明の目的は、WGA産物から出発する、上述の問題を克服する、超並列シークエンシングライブラリーの生成の方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、WGA産物から出発し、本発明によるライブラリー調製方法を使用する、ローパス全ゲノムシークエンシングの方法及びゲノムワイドコピー数プロファイリングの方法を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、上述の方法を実行するための、超並列シークエンシングライブラリー調製キット及びローパス全ゲノムシークエンシングキットを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本出願人による特許文献2に開示される、ヘテロアダプターフラグメントを選択する方法の工程を要約する図である。
図2A】具体的には一次WGA DNAライブラリーがDRS-WGAにより得られる状況に関する、本発明による方法の工程を要約する図である。しかしながら、本発明の範囲をこの特定の種類のWGAに限定する意図はない。
図2B図2Aに示す本発明による方法に使用される、一次WGA DNAライブラリー及び4種類のプライマーの構造を示す図である。特許請求の範囲及び明細書において、一次WGA DNAライブラリー及び4種類のプライマーの種々のセグメントに使用される頭字語は、括弧内にも示される。
図3A】本発明による1種類のカスタムシークエンシングプライマーによる、MiSeq、HiSeq2000/2500及び1000/1500におけるデュアルインデックスシークエンシングを示す図である。
図3B】本発明による2種類のカスタムシークエンシングプライマーによる、MiniSeq、NextSeq、HiSeq3000/4000イルミナシークエンシングプラットフォームにおけるデュアルインデックスシークエンシングを示す図である。
図4A】本発明による方法により実施される、ローパス全ゲノムシークエンシングのシークエンシング結果を示す図である。DEPArray(商標)(Menarini Silicon Biosystems)により分離された、NCI-H441及びSW-480細胞株に属する2種類の単一細胞のコピー数変化(CNA)プロファイルが示される。
図4B】本発明による方法により実施される、ローパス全ゲノムシークエンシングのシークエンシング結果を示す図である。DEPArray(商標)(Menarini Silicon Biosystems)により分離された、単一の血液細胞(循環腫瘍細胞(CTC)及び白血球(WBC))のコピー数変化(CNA)プロファイルが示される。
図5】本発明による方法により実施される、ローパス全ゲノムシークエンシングのシークエンシング結果を示す図である。脱凝集されたFFPE切片に属し、DEPArray(商標)(Menarini Silicon Biosystems)により計数的に分離され、全ゲノムをAmpli1(商標)WGAキットを用いて増幅した単一の腫瘍細胞及び50個の間質細胞集団のコピー数変化(CNA)プロファイルが示される。
図6A】方法間及びプラットフォーム間(イオントレント及びイルミナ)の比較結果を示す図である。具体的には、イオントレントのためのローパス全ゲノムシークエンシング法(特許文献2に示される)、及びイルミナプラットフォームのための本発明による方法で得られたNCI-H23単一細胞のコピー数変化(CNA)プロファイルを示す。
図6B】方法間及びプラットフォーム間(イオントレント及びイルミナ)の比較結果を示す図である。具体的には、CNAプロファイルに基づく、NCI-H441及びWBC単一細胞の階層的クラスタリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
他の指定が無い限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は同等の多数の方法及び材料を、本発明を実行し、又は試験する際に使用してもよいが、好ましい方法及び材料が以下に記載される。特に言及しない限り、本発明とともに使用される本明細書に記載の技術は、当業者に既知の標準技法である。
【0020】
「オリジナルDNA」という用語は、DRS-WGAによる増幅の前のゲノムDNA(gDNA)を意図する。
【0021】
「アダプター」又は「WGAアダプター」又は「WGA PCRプライマー」又は「WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプター」という用語は、DRS-WGAの場合には、制限酵素の作用により生成される各フラグメントへとライゲーションされる追加のオリゴヌクレオチドを意図し、又はMALBACの場合には、伸長及びPCRプロセスにより生ずる、WGA DNAライブラリーの各分子の5’セクションに存在する既知のポリヌクレオチド配列を意図する。
【0022】
「コピー数変化(CNA)」という用語は、一般的には同一個体のゲノムに対して規定される、ゲノム領域のコピー数の体細胞における変化を意図する。
【0023】
「コピー数多形(CNV)」という用語は、一般的には参照ゲノムに対して規定される、ゲノム領域のコピー数の生殖細胞系列多形を意図する。ほとんどの論拠が両方の状況に当てはまり得るため、明細書中でCNA及びCNVは区別無く使用され得る。反対の指定のない限り、これらの用語それぞれが両方の状況を指すことを意図するものとする。
【0024】
「超並列シークエンシング(MPS)」又は「次世代シークエンシング(NGS)」という用語は、空間的及び/又は時間的に分離して、クローン的にシークエンシングされた(前もってクローン増幅する、又は増幅しない)DNA分子のライブラリーを作製することを含むDNAシークエンシングの方法を意図する。例として、イルミナプラットフォーム(Illumina社)、イオントレントプラットフォーム(ThermoFisher Scientific社)、
パシフィックバイオサイエンスプラットフォーム、MinION(Oxford Nanopore Technologies社)が挙げられる。
【0025】
「標的配列」という用語は、オリジナルDNAの関心の領域を意図する。
【0026】
「一次WGA DNAライブラリー(pWGAlib)」という用語は、WGA反応から得られるDNAライブラリーを意図する。
【0027】
「多重アニーリング及びループ化による増幅サイクル法(MALBAC)」という用語は、準線形全ゲノム増幅法を意図する(Zong et al., Genome-wide detection of single-nucleotide and copy-number variations of a single human cell, Science. 2012 Dec
21;338(6114):1622-6. doi: 10.1126/science.1229164.)。MALBACプライマーは
、テンプレートにハイブリダイズする8ヌクレオチドの3’ランダム配列、及び27ヌクレオチドの5’共通配列(GTG AGT GAT GGT TGA GGT AGT GTG GAG)を有する。最初の伸長の後、セミアンプリコンが再度の伸長のテンプレートとして使用され、相補的な5’及び3’末端を有するフルアンプリコンが得られる。数サイクルの準線形増幅の後、続くPCRサイクルによりフルアンプリコンを指数関数的に増幅することができる。
【0028】
「DNAライブラリー精製」という用語は、DNAライブラリー材料を、酵素、dNTP、塩及び/又は所望のDNAライブラリーの一部ではない他の分子等の不所望な反応成分から分離するプロセスを意図する。DNAライブラリー精製プロセスの例として、常磁性ビーズに基づく技術による精製(科学文献及び以下で簡便のためしばしば「磁性ビーズ」と称される)、例えばAgencourt AMPure XP、若しくはBeckman Coulterによる固相可逆的固定法(SPRI)ビーズ、又はスピンカラム精製、例えばMerck
MilliporeによるAmiconスピンカラムが挙げられる。DNAライブラリー精製プロセスの他の例として、オリゴヌクレオチドベイトと直接に又はタンパク質-タンパク質相互作用を介してコンジュゲートした磁性ビーズ、例えばビオチン化されたオリゴヌクレオチドと相互作用する、ストレプトアビジンコーティングされた磁性ビーズによる精製が挙げられる。
【0029】
「DNAライブラリー選択」という用語は、DNAライブラリー精製又はDNAライブラリーサイズ選択のいずれか又は両方が行われるプロセスを意図する。
【0030】
「シークエンシングアダプター(SA)」という用語は、DNAインサートのシークエンシングの手段となる1種類以上の分子を意図する。各分子は、ポリヌクレオチド配列、官能基のいずれも含まないか、又はそれらの1つ以上を含んでもよい。具体的には、シークエンサーが正確にアウトプット配列を生成するために超並列シークエンシングライブラリーに存在することが必要とされるが、情報を保持しないポリヌクレオチド配列を意図する(非限定的な例として、イルミナシークエンシングの場合ssDNAをフローセルにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列、又はイオントレントシークエンシングの場合にはイオンスフェアにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列、又は合成によるシークエンシング反応を開始するのに必要なポリヌクレオチド配列が挙げられる)。
【0031】
「シークエンシングバーコード」という用語は、或るシークエンサーリード内でシークエンシングされれば、そのリードをそのバーコードに関連付けられる特定のサンプルに割り当てることができるポリヌクレオチド配列を意図する。
【0032】
「ローパス全ゲノムシークエンシング」という用語は、平均シークエンシング深度が1未満である全ゲノムシークエンシングを意図する。
【0033】
「平均シークエンシング深度」という用語は、本明細書において、サンプルごとの、シークエンシングされ、参照ゲノムにマッピングされた塩基の合計数を参照ゲノム全体のサイズで除算したものを意図する。シークエンシングされ、マッピングされた塩基の合計数は、マッピングされたリード数を平均リード長で乗算することで近似することができる。
【0034】
「均等化」は、1つ以上のサンプルの濃度を調整し、均等にする操作を意図する。
【0035】
「正規化」は、1つ以上のサンプルの濃度を調整し、それらの間の望ましい比率にする操作を意図する(均等化は比率が1である特別な場合である)。明細書において、簡便のため、正規化及び均等化という用語は区別無く使用される。これらは明らかに概念的に同一であるためである。
【0036】
発明の詳細な説明
一次WGA DNAライブラリーがDRS-WGAにより得られ、シークエンシングプラットフォームがイルミナプラットフォームである場合の例示である、図2Aを参照すると、本発明による超並列シークエンシングライブラリー生成方法は以下の工程を含む。
【0037】
工程aにおいて、既知の5’配列セクション(5SS)、中央配列セクション(MSS
)、及び上記既知の5’配列セクションと逆相補的である既知の3’配列セクション(3SS)を含むフラグメントを含む一次WGA DNAライブラリー(pWGAlib)が準備される。既知の5’配列セクション(5SS)はWGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターを含む。中央配列セクション(MSS)は少なくとも、WGAの前の増幅されていないオリジナルDNAのDNA配列に対応するインサートセクション(IS)を含む。中央配列セクション(MSS)は任意に、インサートセクション(IS)に加えて、隣接5’中間セクション(F5)及び/又は隣接3’中間セクション(F3)を含む(例えば一次WGA DNAライブラリーがMALBAC又は国際公開第2015/118077号の教示によるDRS-WGAにより生成される場合)。図2A及び図2Bにおいて、既知の5’配列セクション(5SS)は、DRS-WGAに特異的なLIB配列(配列番号50)に相当し、既知の3’配列セクション(3SS)はLIB配列の逆相補である(LIBrc)。
【0038】
工程bにおいて、1回のPCRサイクルが、一次WGA DNAライブラリーにおいて少なくとも1種類の第1のプライマー(1PR)を用いて行われ、第1のプライマーは少なくとも第1のプライマー5’セクション(1PR5S)及び第1のプライマー3’セクション(1PR3S)を含む。第1のプライマー5’セクション(1PR5S)は少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含む。第1のプライマー3’セクション(1PR3S)は、既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズする。工程bの1回のPCRサイクルにより、第1のプライマーで伸長されたWGA
DNAライブラリーがもたらされる。
【0039】
1回のPCRサイクルは、二本鎖DNA変性工程と、プライマーアニーリング工程と、アニーリングされたプライマーの伸長工程とを含む。好ましい実施形態は、95℃で30秒間の変性工程と、62℃で30秒間のアニーリング工程と、72℃で3分間の伸長工程とを含む。
【0040】
第1のプライマー(1PR)は、第1のプライマー5’セクション(1PR5S)の3’位置及び第1のプライマー3’セクション(1PR3S)の5’位置に少なくとも1つのリードシークエンシングプライマー配列(1PRSEQ)を更に含むことが好ましい。
【0041】
第1のプライマー(1PR)は、配列番号1~配列番号12からなる群より選択される配列を有することが好ましい。
【0042】
工程bの後、第1のプライマー(1PR)が他の一次WGA産物すなわち第1のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーフラグメントを重合させるのを防止する必要がある。好ましい実施形態では、第1のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーは工程bの後に精製される。この精製はSPRIselectビーズ(Beckman Coulter)で行われるのが好ましい。
【0043】
工程cにおいて、1回のPCRサイクルが、第1のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーにおいて少なくとも1種類の第2のプライマー(2PR)を用いて実施され、第2のプライマーは第2のプライマー5’セクション(2PR5S)及び第2のプライマー3’セクション(2PR3S)を含む。第2のプライマー5’セクション(2PR5S)は、少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)とは異なる、少なくとも1つの第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含む。第2のプライマー3’セクション(2PR3S)は、既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズする。
【0044】
工程cの1回のPCRサイクルにより、第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長
されたWGA DNAライブラリーがもたらされる。
【0045】
1回のPCRサイクルは、二本鎖DNA変性工程と、プライマーアニーリング工程と、アニーリングされたプライマーの伸長工程とを含む。好ましい実施形態は、95℃で30秒間の変性工程と、60℃で30秒間のアニーリング工程と、72℃で3分間の伸長工程とを含む。
【0046】
第2のプライマー(2PR)は、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される配列を有することが好ましい。
【0047】
工程cの後、第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを、好ましくは2.5M NaCl PEG20%溶液により、精製する。
【0048】
工程dにおいて、第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーは、第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含む少なくとも1種類の第3のプライマー(3PR)、及び第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含む少なくとも1種類の第4のプライマー(4PR)を用いて増幅される。工程dのPCR増幅により、増幅された第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーがもたらされる。DNAライブラリーに関するこの増幅工程の収量は、そのシークエンシングを行うのに十分なものである。
【0049】
工程dの後、増幅された第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを、好ましくは2.5M NaCl PEG20%溶液により、精製する。
【0050】
第3のプライマー(3PR)は配列番号22の配列を有することが好ましく、第4のプライマー(4PR)は配列番号21の配列を有することが好ましい。
【0051】
第1のプライマー(1PR)の第1のプライマー5’セクション(1PR5S)は、少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)の3’位置、及び第1のプライマー3’セクション(1PR3S)の5’位置に、少なくとも1つの第1のシークエンシングバーコード(1PR5BC)を更に含むことが好ましい。第2のプライマー(2PR)の第2のプライマー5’セクション(2PR5S)は、少なくとも1つの第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)の3’位置、及び第2のプライマー3’セクション(2PR3S)の5’位置に、少なくとも1つの第2のシークエンシングバーコード(2PR5BC)を更に含むことが好ましい。これにより、より高い多重化が可能となる。具体的には、配列番号1~配列番号12が第1のプライマー(1PR)として使用され、各プライマーが異なるバーコードを含み、また配列番号13~配列番号20が第2のプライマー(2PR)として使用され、各プライマーが異なるバーコードを含む場合、96個のバーコードの組み合わせが得られ、96個のライブラリーを解析することができる。
【0052】
WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターは、DRS-WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプター又はMALBACライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターであることが好ましく、DRS-WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターであることがより好ましい。
【0053】
DRS-WGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターは配列番号50を有することが好ましく、MALBACライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターは配列番号51を有することが好ましい。
【0054】
本発明によるローパス全ゲノムシークエンシングの方法は以下の工程を含む。
【0055】
最初に、上に開示の超並列シークエンシングライブラリーの生成方法によって得られる、バーコードを付した超並列シークエンシングライブラリーを複数準備し、異なるシークエンシングバーコード(BC)を使用して得られたサンプルをプールする。次にプールされたライブラリーをシークエンシングする。
【0056】
異なるシークエンシングバーコード(BC)を使用してサンプルをプールする工程は、バーコードを付された、超並列シークエンシングライブラリーのそれぞれにおけるDNAを定量化する工程と、バーコードを付された、超並列シークエンシングライブラリーの量を正規化する工程とを更に含む。
【0057】
本発明による超並列シークエンシングライブラリー調製キットは、少なくとも1種類の第1のプライマー(1PR)、1種類の第2のプライマー(2PR)、1種類の第3のプライマー(3PR)、及び1種類の第4のプライマー(4PR)を含む。これらのプライマーの構造は既に上記に開示されている。
【0058】
一次WGA DNAライブラリーがDRS-WGAである好ましい一実施形態において、超並列シークエンシングライブラリー調製キットは、配列番号1~配列番号12からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマーを含む。
【0059】
一次WGA DNAライブラリーがDRS-WGAである代替的な好ましい実施形態において、超並列シークエンシングライブラリー調製キットは、配列番号52~配列番号63からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマーを含む。
【0060】
一次WGA DNAライブラリーがMALBAC WGAである代替的な好ましい実施形態において、超並列シークエンシングライブラリー調製キットは、配列番号27~配列番号38からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマーを含む。
【0061】
一次WGA DNAライブラリーがMALBAC WGAである代替的な好ましい実施形態において、超並列シークエンシングライブラリー調製キットは、配列番号64~配列番号75からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマーを含む。
【0062】
本発明の一実施形態によるローパス全ゲノムシークエンシングキットは、配列番号1~配列番号12からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号23のカスタムシークエンシングプライマーを含む。キットは配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群より選択されるプライマーを更に含むことが好ましい。具体的には配列番号24、配列番号25及び配列番号26のプライマーのうちの1種類が、MiniSeq、NextSeq、HiSeq3000/4000イルミナシークエンシングプラットフォームとともに使用され、
インデックス2を読み取る。更なる説明を以下に示す。3種類のプライマーの中でも、配列番号24が特に好ましい。
【0063】
代替的な実施形態において、ローパス全ゲノムシークエンシングキットは、配列番号52~配列番号63からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、配列番号23のカスタムシークエンシングプライマー、並びに配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群より選択されるカスタムインデックス2プライマーを含む。
【0064】
本発明の別の実施形態によるローパス全ゲノムシークエンシングキットは、配列番号27~配列番号38からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号47のプライマーを含む。キットは配列番号48も含むことが好ましい。更により好ましくは、キットは配列番号49のプライマーを含む。
【0065】
代替的な実施形態において、ローパス全ゲノムシークエンシングキットは、配列番号64~配列番号75からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号47のプライマーを含む。キットは配列番号48も含むことが好ましい。更により好ましくは、キットは配列番号49のプライマーを含む。
【0066】
本発明によるゲノムワイドコピー数プロファイリングの方法は、
上記のシークエンシングライブラリー調製キットの1つを使用して開発されたDNAライブラリーをシークエンシングする工程と、
ゲノムの異なる領域にわたるシークエンシングリード深度を解析する工程と、
ゲノム領域におけるリード数を、参照ゲノムの同じ領域において期待されるリード数と比較することにより、ゲノムの領域のコピー数の値を決定する工程と、
を含む。
【0067】
イルミナプラットフォームにおけるローパス全ゲノムシークエンシングのためのプロトコル1
確定的制限酵素部位全ゲノム増幅(DRS-WGA)
単一細胞DNAを、製造者の説明書に従ってAmpli1(商標)WGAキット(Menarini Silicon Biosystems)を使用して増幅した。5μLのWGA増幅したDNAを、5
μLのヌクレアーゼフリー水を加え希釈し、SPRIselectビーズ(Beckman Coulter)システム(1.8×比)を使用して精製した。DNAを12.5μLで溶出し、Q
ubit(商標)2.0蛍光光度計におけるdsDNA HS Assayにより定量した。
【0068】
P7単独伸長
15μLの容量で、Ampli1(商標)PCRキット(Menarini Silicon Biosystems)及びLIB_IL_index D7xx(配列番号1~配列番号12のプライマー
の1つ)を使用して1工程のPCR伸長を行った。各PCR反応ミックスは、1.5μLのAmpli1(商標)PCR反応バッファー(10×)、3μLの配列番号1~配列番号12の範囲の1種類のプライマーLIB_IL_index D7xx[2.5μM]、0.51μLのAmpli1(商標)PCR dNTP(10mM)、0.37μLのBSA、0.12μLのAmpli1(商標)PCR Taqポリメラーゼ、WGA精製
DNA(10ng~75ng)及び最終容量15μLに達するAmpli1(商標)水を含んでいた。
【0069】
Applied Biosystems(商標)2720サーマルサイクラーを以下のようにセットした:95℃で4分間、1サイクル(95℃で30秒間、62℃で30秒間、72℃で3分間)。
【0070】
SPRIselectビーズ精製及びP5単独伸長
前の工程の15μLのAmpli1(商標)WGA増幅物を、SPRIselectビーズ(Beckman Coulter)システム(1.5×比)を使用して精製した。DNAを以下の
ように調製した15μLのPCR反応ミックスに溶出した:1.5μLのAmpli1(商標)PCR反応バッファー(10×)、3μLの1種類のプライマーLIB_IL_index D5xx(配列番号13~配列番号20のプライマーの1種類)[2.5μM]、0.51μLのAmpli1(商標)PCR dNTP(10mM)、0.37μLのBSA、0.12μLのAmpli1(商標)PCR Taqポリメラーゼ及び9.5μLのAmpli1(商標)水。P5単独伸長PCR反応はビーズの存在下で行われた。
【0071】
Applied Biosystems(商標)2720サーマルサイクラーを以下のようにセットした:95℃で4分間、1サイクル(95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で3分間)。
【0072】
2.5M NaCl PEG20%溶液精製及びライブラリー増幅
前の工程の15μLのAmpli1(商標)WGA増幅物を、2.5M NaCl PEG20%溶液(1.5×比)を使用して精製した。DNAを以下のように調製した15μLのPCR反応ミックスに溶出した:1.5μLのAmpli1(商標)PCR反応バッファー(10×)、1μLの1種類のプライマーアダプターP5(配列番号21)及び1μLの1種類のプライマーアダプターP7(配列番号22)(それぞれ7.5μL)、0.51μLのAmpli1(商標)PCR dNTP(10mM)、0.37μLのBSA、0.12μLのAmpli1(商標)PCR Taqポリメラーゼ及び10.5μLのAmpli1(商標)水。
【0073】
ライブラリー増幅PCR反応はビーズの存在下で行われた。
【0074】
Applied Biosystems(商標)2720サーマルサイクラーを以下のようにセットした:95℃で4分間、1サイクル(95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で2分間)、10サイクル(95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で2分間(サイクルごとに20秒間延長))及び72℃で7分間の最終伸長。
【0075】
好ましい実施形態では、ライブラリー増幅中に追加の2サイクルを加えることでライブラリー濃度を少なくとも2(~4)倍増やすため、95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で2分間のサイクルを12回に延長し、サイクルの合計数を11から13に増やすことができる。
【0076】
最終的ライブラリー精製
増幅したライブラリー(イルミナシークエンシングアダプター配列を含む)を、最終的に2.5M NaCl PEG20%溶液(1.5×比)を使用して精製し、15μLのAmpli1(商標)水に溶出した。等モルプールを得るため、2100 Bioanalyzer(商標)においてAgilent DNA 7500、DNA 1000又はDNA HSキットにより精製したライブラリーの質を評価し(qualified)、及びQu
bit(商標)2.0蛍光光度計においてdsDNA HS Assayにより定量した
。ライブラリーの平均サイズ(一般的に、Ampli1(商標)WGAキット(Menarini
Silicon Biosystems)を使用して得られるDRS-WGA産物において、実験的に平均
長700bpが観察される)に基づき、定量工程で得られるライブラリー濃度を、当業者に既知のようにnMに変換することができる(例えば600bpのライブラリー平均サイズに対し1ng/μL=2.5nM、700bpのライブラリー平均サイズに対し1ng/μL=2nM、800bpのライブラリー平均サイズに対し1ng/μL=1.9nM)。Illumina Technical Note: DNA Sequencing "Nextera(商標)Library Validation and Cluster Density Optimization"Pub No. 770-2013-003を参照されたい。
【0077】
好ましい代替として、精製したライブラリーを、定量的リアルタイムPCR(qPCR)法で定量した。qPCR法は機能的なライブラリー、具体的には各端に正しいアダプターを有するフラグメント(ヘテロアダプターフラグメント)を、コントロールテンプレート希釈物から生成される検量線に基づき正確に定量する。
【0078】
MiSeqシークエンシングシステムにおけるシークエンシング
4nMのプールを0.1N NaOHで5分間変性した。変性したサンプルをHT1バッファー(Illumina)で希釈し、20pMの変性したライブラリーを得た。600μLの変性したライブラリーをMiSeq試薬カートリッジ(Illumina)に充填した。
【0079】
シングルエンドの150塩基のリード又はペアエンドのリード(75PE)を、IlluminaのMiSeqのv3 chemistryを使用して生成した。
【0080】
次にカスタムリード1シークエンシングプライマー(配列番号23)をHT1で希釈し、最終濃度0.5μMを得た。600μLの希釈したカスタムリード1シークエンシングプライマーをMiSeq試薬カートリッジ(Illumina)に充填した。
【0081】
HiSeq 1000/1500及び2000/2500システムにおけるシークエンシング
4nMのプールを0.1N NaOHで5分間変性した。
【0082】
シングルエンドの100塩基のリード又はペアエンドのリード(100PE)を、IlluminaのHiSeqのv2 chemistryをラピッドランモードで使用して、又はIlluminaのHiSeqのv4 chemistryをハイアウトプットランモードで使用して生成した。
【0083】
次に、カスタムリード1シークエンシングプライマー(配列番号23)をHT1で希釈し、最終濃度0.5μMを得た。
【0084】
NextSeq、HiSeq 3000及び4000、NovaSeqシリーズ並びにHiSeq X Tenシステムにおけるシークエンシング
4nMのプールを0.1N NaOHで5分間変性した。
【0085】
シングルエンドの150塩基のリード又はペアエンドのリード(100PE)を、イルミナプラットフォームの特定のchemistryを使用して生成した。
【0086】
次に、カスタムリード1シークエンシングプライマー(配列番号23)及びカスタムプライマーインデックス2A(i5)[LNA-5’](配列番号24)をHT1で希釈し、最終濃度0.5μMを得た。
【0087】
以下の表に、全てのイルミナプラットフォームの、DRS-WGAに適合するプライマ
ーの配列をまとめる(5’から3’方向の配列、5’及び3’を省略)。
【0088】
【表1】
【0089】
以下の表に、全てのイルミナプラットフォームの、MALBAC-WGAに適合するプライマーの配列をまとめる(5’から3’方向の配列、5’及び3’を省略)。
【0090】
【表2】
【0091】
図2A及び図2Bに示すように、DRS-WGAを使用する場合、LIB逆相補が、表1に列挙される配列番号1~配列番号20のプライマーの標的である。さらに、最終的なライブラリーはイルミナリード1シークエンシングプライマーの標的配列を欠くため、カスタムリード1シークエンシングプライマー(配列番号23)を設計した。カスタムリード1シークエンシングプライマー(配列番号23)はLIB配列を含み、LIB逆相補配列と相補的である。
【0092】
注目すべきことに、このシークエンシング設定において、この方法により本発明者らのAmpli1(商標)WGA産物の投入をもとに高い複雑性のライブラリーの構成が可能となるため、PhiX spike-in control(Illumina)の使用を回避することができる。
【0093】
さらに、シークエンシングランはカスタムリード1シークエンシングプライマー(配列
番号23)を使用して実行されることが好ましく、PhiX DNAライブラリーはカスタムリード1シークエンシングプライマーの標的配列を欠くため、PhiX DNAはシークエンシングされない。
【0094】
さらに、本発明の方法により得られる最終ライブラリーは、インデックス2(i5)を読み取るためにMiniSeq、NextSeq、HiSeq 3000及び4000イルミナシステムに使用される正規のイルミナシークエンスアダプターを有しない。
【0095】
このため、これらのプラットフォームでは、インデックスi5の正確な読み取りを可能とするため、カスタムプライマーインデックス2(配列番号24又は配列番号25又は配列番号26)を使用する。カスタムシークエンシングプライマーインデックス2がLIB配列を含むことは注目すべきことである。詳細には、カスタムプライマーインデックス2A(i5)[LNA-5’](配列番号24)及びカスタムプライマーインデックス2A(i5)[LNA-3’](配列番号25)は、表1において横の「+」で示される(例えば「+A」)、3つのLNA(ロックド核酸[LNA(商標)]、Exiqon)修飾されたヌクレオチドを有する。さらに、カスタムプライマーインデックス2(i5)[RNA](配列番号26)は、横の「r」で示される(例えば「rA」)、15個のRNAヌクレオチドで形成される。
【0096】
上述の同様の考慮が、表2に列挙されるMALBACに適合するプライマー(配列番号27~配列番号49)を使用する場合にも、必要な変更を加え当てはまる。
【0097】
全てのイルミナプラットフォームに適するライブラリーを産生することができる(また、一次WGAライブラリーがDRS-WGAライブラリーである)更なる代替的な実施形態として、以下のプライマーの組み合わせを使用することができる:
配列番号52~配列番号63からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、
配列番号23のカスタムシークエンシングプライマー並びに配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群より選択されるカスタムインデックス2プライマー。
【0098】
配列番号52~配列番号63のプライマーは、カスタムシークエンシングプライマーのアニーリング温度を上げるため、RDSP配列の代わりに、第1のプライマー3’セクションの5’に必要な8ヌクレオチドの配列を含む。第2のプライマー(配列番号13~配列番号20)が、第2のプライマー3’セクションの8ヌクレオチドの5’の同じ配列を含むことに注目すべきである。配列番号23のカスタムシークエンシングプライマーを、リード1及び/又はリード2を読み取るためにイルミナシークエンシングプラットフォームに使用し、配列番号24(又は配列番号25若しくは配列番号26)のカスタムシークエンシングプライマーを、インデックス1及びインデックス2を読み取るためにイルミナシークエンシングプラットフォームに使用する。
【0099】
以下の表に、本実施形態によるイルミナプラットフォームのDRS-WGAに適合するプライマーの配列をまとめる(5’から3’方向の配列、5’及び3’を省略)。
【0100】
【表3】
【0101】
全てのイルミナプラットフォームに適するライブラリーを生産することができる(また、一次WGAライブラリーがMALBACライブラリーである)更なる代替的な実施形態として、以下のプライマーの組み合わせを使用することができる:
配列番号64~配列番号75からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、
配列番号47のカスタムリードプライマー。
【0102】
配列番号48のプライマーも使用することが好ましい。配列番号49のプライマーも使用することが更に好ましい。
【0103】
以下の表に、本実施形態によるイルミナプラットフォームのDRS-WGAに適合するプライマーの配列をまとめる(5’から3’方向の配列、5’及び3’を省略)。
【0104】
【表4】
【実施例0105】
実施例1
シークエンシングされたリードを、BWA MEMアルゴリズム(Li H. and Durbin R., 2010)を使用して、hg19ヒト参照ゲノムにアラインメントした。
【0106】
Control-FREEC(Boeva V. et al., 2011)アルゴリズムを使用して、コ
ントロールサンプルを用いずに、コピー数コールを得た。リードカウントをGC含量及びマッピング可能性(mappability)により補正し(uniqMatchオプション)、ウ
ィンドウサイズを変動係数=0.06を使用するソフトウェアにより決定した。主要倍数性パラメーターは試験される遺伝子材料の倍数性に基づき設定し、コンタミネーション修正は使用しなかった。
【0107】
DEPArray(商標)(Menarini Silicon Biosystems)により分離されたNCI
-441及びSW-480細胞株に属する2つの単一細胞、並びにDEPArray(商標)により分離された単一血液細胞である、循環腫瘍細胞(CTC)及び白血球(WBC)のCNAプロファイルのプロットを、カスタムpythonスクリプトを使用して、図4A及び図4Bに示すように得た。
【0108】
図から、22番常染色体において、分離された単一の腫瘍細胞における絶対コピー数として現れる大幅な増減が示されることが特筆される。
【0109】
倍数性値をy軸に表し、分割したデータとのプロファイルのより良好な対応を提供し(黒線)、CNAコーリングを改善する。評定される主要な倍数性より上のドットは増加とみなすことができ、評定される主要な倍数性より下のドットは減少とみなすことができる。
【0110】
一方、WBC正常細胞には、予想されるような増減は存在しない。
【0111】
実施例2
脱凝集されたFFPE切片に属する、単一の腫瘍細胞及び50個の間質細胞集団をDEPArray(商標)(Menarini Silicon Biosystems)により計数的に分離し、Amp
li1(商標)WGAキットを使用して全ゲノムを増幅した。図5に上記に開示の方法で実施したローパス全ゲノムシークエンシングの結果を示す。図から、単一の腫瘍細胞にのみコピー数変化(CNA)プロファイルの増減が示される。これらの高品質CNAプロファイルにより、本方法がDNA分解に高い耐性があることが確認され、FFPE組織における単一細胞レベルまでの腫瘍不均一性の分子特性評価のための信頼性のある有用な方法であると示される。
【0112】
実施例3
図6A及び図6Bに、方法間及びプラットフォーム間(イオントレント及びイルミナ)の比較の結果を示す。
【0113】
具体的には、図6Aは、イオントレントのローパス全ゲノムシークエンシング法(特許文献2に示される)、及びイルミナプラットフォームの本発明による方法により得られたNCI-H23単一細胞のコピー数変化(CNA)プロファイルを示す。2つのプラットフォームで得られた結果は互いによく一致する。
【0114】
さらに、NCI-H441及びWBC単一細胞のCNAプロファイルに基づく階層的クラスタリングにより、サンプルが方法又はプラットフォームによってではなく、サンプルタイプ(腫瘍及び正常)により階層化されることが示される(図6B)。
【0115】
結論として、イオントレント及びイルミナシークエンシングプラットフォームのAmpli1(商標)ローパス法は、いずれもCNAプロファイルの高い一致を示す。
【0116】
Ampli1(商標)WGAの方法についてのみ本発明を説明したが、説明される技術は、当業者には明白であるように、自己相補性5’及び3’領域を有するライブラリーを含む他の任意の種類のWGA(例えばMALBAC)にも、必要な変更を加え明らかに適用される。
【0117】
本発明の代替的な実施形態において、第1のプライマー又は第2のプライマー(1PR及び/又は2PR)を、処理の少なくとも1工程においてその5’末端で固体の基材と結合するように変更してもよい。
【0118】
一例として、第1のプライマー(1PR)はビオチン化5’末端を含んでもよい。最初のPCRサイクル(工程b)の後、ストレプトアビジンコーティングされたビーズを反応チューブに加え、第1のプライマーで伸長されたDNAライブラリーフラグメントを捕捉する一方、第1のプライマーを含まない伸長していないフラグメントは、プライマーdNTP及びポリメラーゼとともに溶出される。工程cにおいて、第2のプライマー(2PR)が(他のPCR試薬とともに)供給され、第1のプライマーで伸長されたDNAライブラリーフラグメントとハイブリダイズし、チューブに残されたビーズと結合したDNAライブラリーフラグメントをテンプレートとして使用して重合が起き、ヘテロアダプターDNAフラグメントを生成する。工程cの反応ミックスを洗浄した後、同じチューブ内で第3のプライマー(3PR)及び第4のプライマー(4PR)を(他のPCR試薬とともに)使用して、ヘテロアダプターを更にPCRにより増幅することができる(工程d)。代替的には、ヘテロアダプターを変性し、チューブから溶出して、別のチューブ内で第3のプライマー(3PR)及び第4のプライマー(4PR)を使用して更にPCR増幅することができる(工程d)。
【0119】
別の例として、第1のプライマー(1PR)は磁性ビーズに共有結合していてもよい。最初のPCRサイクル(工程b)の後、第1のプライマーで伸長されたDNAライブラリーフラグメントをビーズに結合させて保持し、一方既知の3’配列セクション(3SS)を含むが第1のプライマーを含まない、伸長していないフラグメントは溶出される。工程cにおいて、第2のプライマー(2PR)は、第1のプライマーで伸長されたDNAライブラリーフラグメントの既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズし、チューブに残されたビーズと結合したDNAライブラリーフラグメントをテンプレートとして使用する重合が起き、ヘテロアダプターDNAフラグメントを産生する。工程cの反応ミックスを洗浄した後、同じチューブ内で第3のプライマー(3PR)及び第4のプライマー(4PR)を使用して、ヘテロアダプターを更にPCRにより増幅することができる(工程d)。代替的には、ヘテロアダプターを変性し、チューブから溶出して、別のチューブ内で第3のプライマー(3PR)及び第4のプライマー(4PR)を使用して更にPCR増幅することができる(工程d)。
【0120】
これらの実施形態の利点の1つは、SPRIビーズの使用に関連するサイズ選択的効果がプロセスに含まれないことである。これにより、SPRIビーズにより通常保持されるよりも小さい及び/又は大きい長さのフラグメントを、最終的なシークエンシング可能なライブラリーに存在させることができる。不利点の1つは、プライマーのビーズ又はビオチンとの結合に固有である、キット試薬の複雑性の増加である。より幅広い範囲のフラグメントの存在は、ローパスWGSによってより高い深度で全ゲノムシークエンシングを求め、ゲノムワイドコピー数プロファイリングにわたり完全なリシークエンシングを達成するときに特に有益である。
【0121】
実施形態の更に別の例として、最初のPCRサイクル(工程b)で第1のプライマー(1PR)を使用した後、SPRI精製を行って残留する第1のプライマーを除去し、それから磁性ビーズと(共有結合により直接、又は第2のプライマーのビオチン修飾及びストレプトアビジンコーティングされた磁性ビーズとのビオチン-ストレプトアビジン相互作用により間接的に)結合した上記第2のプライマー(2PR)を、工程cの上記1回のPCRサイクルに使用し、それから反応ミックス及びモノアダプターフラグメントの残余を溶出し、得られるヘテロアダプターフラグメントのみを磁力によりチューブに保持し、その後、上記第3のプライマー(3PR)及び第4のプライマー(4PR)によるPCR増幅の工程dに進む。
【0122】
利点
本発明による超並列シークエンシングライブラリー生成方法により、ヘテロアダプターフラグメントのみを含むライブラリーを必要とするシークエンシングプラットフォームのために、そのようなライブラリーを、迅速に、効率的に、信頼性をもって、かつ高い費用対効果で得ることができる。特に、本発明による方法により、二本鎖DNAの直ちにシークエンシング可能なライブラリーを、能率的な、1日の、かつシングルチューブのワークフローで生成することができる。
【0123】
最後に、CNVの調査に対する現行の主要な技術である、アレイCGH(aCGH)に関するローパス全ゲノムシークエンシングの利点を強調すべきである。アレイCGH(aCGH)は、スライドガラス又は他の固体プラットフォーム上に整列されたDNA標的に同時にハイブリダイズされる、示差的に標識された試験DNAサンプル及び参照ゲノムDNAサンプルの使用に基づく。しかしながら、低品質/低量のDNAの使用は難しいことが示されており、或る特定の用途には制限が残る。さらに、ローパス全ゲノムシークエンシング法に基づく染色体コピー数の評価は、aCGHと比較して、DNAシークエンシングの費用の削減、染色体分析の分解能の増大の可能性の結果としての部分又はセグメント異数性検出の向上、コントロールを用いないコピー数変化コーリングを含む幾つかの利点をもたらし得る。加えて、シークエンシングライブラリー調製の自動化の可能性により、ヒューマンエラーの最小化、実操作時間の削減、並びにより高いスループット及び一貫性の実現が可能となる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
【配列表】
2023126945000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超並列シークエンシングライブラリーを生成する方法であって、
a.既知の5’配列セクション(5SS)、中央配列セクション(MSS)、及び前記既知の5’配列セクションと逆相補性である既知の3’配列セクション(3SS)を含むフラグメントを含む一次WGA DNAライブラリー(pWGAlib)を準備する工程であって、
前記既知の5’配列セクション(5SS)がWGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダプターを含み、前記中央配列セクション(MSS)が少なくともWGAの前の増幅されていないオリジナルDNAのDNA配列に対応するインサートセクション(IS)を含み、前記中央配列セクション(MSS)が加えて任意に隣接5’中間セクション(F5)及び/又は隣接3’中間セクション(F3)を含む、工程と、
b.1回のPCRサイクルを、一次WGA DNAライブラリーにおいて、少なくとも第1のプライマー5’セクション(1PR5S)及び第1のプライマー3’セクション(1PR3S)を含む、少なくとも1種類の第1のプライマー(1PR)を用いて実施し、第1のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを得る工程であって、
前記第1のプライマー5’セクション(1PR5S)が少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含み、前記第1のプライマー3’セクション(1PR3S)が、既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズする工程と、
c.1回のPCRサイクルを、前記第1のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーにおいて、第2のプライマー5’セクション(2PR5S)及び第2のプライマー3’セクション(2PR3S)を含む少なくとも1種類の第2のプライマー(2PR)を用いて実施し、第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを得る工程であって、
前記第2のプライマー5’セクション(2PR5S)が、前記少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)とは異なる、少なくとも1つの第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含み、前記第2のプライマー3’セクション(2PR3S)が、前記既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズする、工程と、
d.前記第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを、前記第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含む少なくとも1種類の第3のプライマー(3PR)、及び前記第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含む少なくとも1種類の第4のプライマー(4PR)を用いてPCRにより増幅し、増幅された第1のプライマー及び第2のプライマーで伸長されたWGA DNAライブラリーを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
ローパス全ゲノムシークエンシングの方法であって、
請求項に記載の方法により得られる、バーコードを付した超並列シークエンシングライブラリーを複数準備し、異なるシークエンシングバーコード(BC)を使用して得られたサンプルをプールする工程と、
前記プールされたライブラリーをシークエンシングする工程と、
を含む、方法。
【請求項3】
少なくとも第1のプライマー5’セクション(1PR5S)及び第1のプライマー3’セクション(1PR3S)を含む少なくとも1種類の第1のプライマー(1PR)であって、前記第1のプライマー5’セクション(1PR5S)が少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含み、前記第1のプライマー3’セクション(1PR3S)が、一次WGA DNAライブラリー(pWGAlib)のフラグメントのWGAライブラリーユニバーサルシークエンスアダブターを含む既知の5’配列セクション(5SS)と逆相補性である既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズし、前記フラグメントが前記既知の5’配列セクション(5SS)の中央配列セクション(MSS)3’及び前記既知の3’配列セクション(3SS)の5’を更に含む、少なくとも1種類の第1のプライマーと、
少なくとも第2のプライマー5’セクション(2PR5S)及び第2の3’セクション(2PR3S)を含む少なくとも1種類の第2のプライマー(2PR)であって、前記第2のプライマー5’セクション(2PR5S)が、前記少なくとも1つの第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)とは異なる、少なくとも1つの第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含み、前記第2の3’セクションが、前記フラグメントの前記既知の3’配列セクション(3SS)にハイブリダイズする、少なくとも1種類の第2のプライマーと、
前記第1のシークエンシングアダプター(1PR5SA)を含む少なくとも1種類の第3のプライマー(3PR)と、
前記第2のシークエンシングアダプター(2PR5SA)を含む少なくとも1種類の第4のプライマー(4PR)と、
を含む、超並列シークエンシングライブラリー調製キット。
【請求項4】
a)配列番号1~配列番号12からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマー、又は、
b)配列番号27~配列番号38からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマー、又は、
c)配列番号52~配列番号63からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマー、又は、
d)配列番号64~配列番号75からなる群より選択される1種類以上のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される1種類以上のプライマー、並びに配列番号21及び配列番号22のプライマー、
を含む、超並列シークエンシングライブラリー調製キット。
【請求項5】
a)配列番号1~配列番号12からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号23のカスタムシークエンシングプライマー、又は、
b)配列番号27~配列番号38からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号47のプライマー、又は、
c)配列番号52~配列番号63からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号13~配列番号20からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、配列番号23のカスタムシークエンシングプライマー、並びに配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群より選択されるカスタムインデックス2プライマー、又は、
d)配列番号64~配列番号75からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号39~配列番号46からなる群より選択される少なくとも1種類のプライマー、配列番号21及び配列番号22のプライマー、並びに配列番号47のプライマー、を含む、ローパス全ゲノムシークエンシングキット。
【請求項6】
ゲノムワイドコピー数プロファイリングの方法であって、
請求項又はに記載のシークエンシングライブラリー調製キットを使用して開発されたDNAライブラリーをシークエンシングする工程と、
ゲノムの異なる領域にわたるシークエンシングリード深度を解析する工程と、
ゲノム領域におけるリード数を、参照ゲノムの同じ領域において期待されるリード数と比較することにより、ゲノムの領域のコピー数の値を決定する工程と、
を含む、方法。
【外国語明細書】