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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126976
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/02 20060101AFI20230905BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20230905BHJP
   A01K 89/0155 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A01K89/02 A
A01K89/015 A
A01K89/0155
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113027
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2020143242の分割
【原出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】安田 悠
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レイアウトの自由度の高い操作手段を有するリール、イベント記録可能なリール、又は一つの操作手段によって複数の機能を実現するリールを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る魚釣用リールは、操作部を有する魚釣用
リールであって、該操作部の操作により、該魚釣用リールが第1の状態にあるときに第1
の機能を実行し、該魚釣用リールが第2の状態にあるときに第2の機能を実行するように
構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、電気的に特性を変更可能な制動装置と、を有する魚釣用リールであって、該
操作部の操作により該制動装置の制動力調整を行うことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記操作部は、トグルスイッチ、メンブレンスイッチ、押しボタンスイッチ、タッチパ
ネル、又は操作レバーのいずれかであり、前記魚釣用リールの側面に設けられる、請求項
1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
操作部と、該操作部が操作される際の時間を記録可能な記録部と、を有することを特徴
とする魚釣用リール。
【請求項4】
前記操作部は、操作ボタンである、請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記操作部が操作される際の前記魚釣用リールの状態を記録可能である、請求項3又は
4に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記魚釣用リールの状態は、釣糸の糸長、スプールの巻き取り速度、釣糸の張力、又は
GPS情報を含む、請求項5に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
前記操作部の操作方法に応じて、それぞれ異なるイベントを記録可能である、請求項3
から6までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項8】
操作部を有する魚釣用リールであって、該操作部の操作により、該魚釣用リールが第1
の状態にあるときに第1の機能を実行し、該魚釣用リールが第2の状態にあるときに第2
の機能を実行することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項9】
操作部を有する魚釣用リールであって、該操作部の第1の操作を行うと第1の機能を実
行し、該操作部の第2の操作を行うと第2の機能を実行することを特徴とする魚釣用リー
ル。
【請求項10】
前記第1の状態は、釣糸が放出可能な状態であり、前記第2の状態は、該釣糸が放出不
能な状態である、請求項8に記載の魚釣用リール。
【請求項11】
前記釣糸が放出不能な状態は、該釣糸が巻き取り可能な状態である、請求項10に記載
の魚釣用リール。
【請求項12】
姿勢センサを備え、前記第1の状態とは、前記魚釣用リールが第1の姿勢である状態で
あり、前記第2の状態とは、該魚釣用リールが第2の姿勢である状態である、請求項8に
記載の魚釣用リール。
【請求項13】
前記第1の状態とは、放出した釣糸の長さが所定値未満の状態であり、前記第2の状態
とは、該放出した釣糸の長さが所定値以上の状態である、請求項8に記載の魚釣用リール
【請求項14】
前記第1の機能とは、ブレーキ力調整、ドラグ力調整、糸種変更、又は糸長リセットを
含む魚釣用リールの特性変更であることを特徴とする請求項8から13までのいずれか1
項に記載の魚釣用リール。
【請求項15】
前記第2の機能とは、イベント記録、ドラグ力調整、又はスプールの巻き取り速度の調
整を含む、請求項8から14までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作手段を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚釣用リールでは、キャスティングブレーキの特性設定、ドラグ力の設定、
巻き取り速度の設定(電動リール)など、各種特性値の調整が可能なように構成されてい
る。
【0003】
このようなリールとして、例えば、特許文献1では、キャスティングに用いられ、リー
ル本体に回転自在に装着され釣り糸が装着されるスプールを制動する両軸受リールのスプ
ール制動装置であって、前記スプールと前記リール本体とに設けられ、電気的に制御可能
に前記スプールを制動するスプール制動手段と、前記リール本体に移動自在に設けられ複
数の第1操作位置に操作可能な第1操作具と、前記リール本体に移動自在に設けられ複数
の第2操作位置に操作可能な第2操作具と、前記第1操作具の前記第1操作位置及び前記
第2操作具の前記第2操作位置に応じて前記スプール制動手段の制動力を電気的に制御す
るスプール制御手段と、備えた両軸受リールのスプール制動装置について開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-135417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の両軸受リールのスプール制動装置では、リールの特性値調
整(ブレーキ力調整)を機械的なダイヤルで行っているため、ダイヤルのレイアウトの自
由度が低いという課題があった。また、操作手段はキャスティングブレーキの調整に用い
られているに過ぎず、魚のヒットや根がかりなどのイベントを記録できないという課題が
あった。また、機構の制約を受けるため、一つの操作で複数の機能を持たせるのが難しい
という問題があった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レイアウ
トの自由度の高い操作手段を有するリール、イベント記録可能なリール、又は一つの操作
手段によって複数の機能を実現するリールを提供することにある。本発明のこれら以外の
目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、操作部と、電気的に特性を変更可能な制動
装置と、を有し、該操作部の操作により該制動装置の制動力調整を行うように構成される
【0008】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、前記操作部は、トグルスイッチ、メ
ンブレンスイッチ、押しボタンスイッチ、タッチパネル、又は操作レバーのいずれかであ
り、前記魚釣用リールの側面に設けられるように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、操作部と、該操作部が操作される際の時間
を記録可能な記録部と、を有するように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、該操作部は、操作ボタンであるよう
に構成される。
【0011】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、該操作部が操作される際の前記魚釣用リー
ルの状態を記録可能であるように構成される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、該魚釣用リールの状態は、釣糸の糸
長、スプールの巻き取り速度、釣糸の張力、又はGPS情報を含むように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、該操作部の操作方法に応じて、それぞれ異
なるイベントを記録可能であるように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、操作部を有し、該操作部の操作により、該
魚釣用リールが第1の状態にあるときに第1の機能を実行し、該魚釣用リールが第2の状
態にあるときに第2の機能を実行するように構成される。
【0015】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、操作部を有し、該操作部の第1の操作を行
うと第1の機能を実行し、該操作部の第2の操作を行うと第2の機能を実行するように構
成される。
【0016】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、該第1の状態は、釣糸が放出可能な
状態であり、該第2の状態は、該釣糸が放出不能な状態である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、該釣糸が放出不能な状態は、該釣糸
が巻き取り可能な状態である。
【0018】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールは、姿勢センサを備え、該第1の状態とは、該
魚釣用リールが第1の姿勢である状態であり、該第2の状態とは、該魚釣用リールが第2
の姿勢である状態である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、該第1の状態とは、放出した釣糸の
長さが所定値未満の状態であり、該第2の状態とは、該放出した釣糸の長さが所定値以上
の状態である。
【0020】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、該第1の機能とは、ブレーキ力調整
、ドラグ力調整、糸種変更、又は糸長リセットを含む魚釣用リールの特性変更である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る魚釣用リールにおいて、該第2の機能とは、イベント記録、
ドラグ力調整、又はスプールの巻き取り速度の調整を含む。
【発明の効果】
【0022】
上記実施形態によれば、レイアウトの自由度の高い操作手段を有するリール、イベント
記録可能なリール、又は一つの操作手段によって複数の機能を実現するリールを提供する
ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10におけるイベント記録の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の
図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0025】
図1から図3を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣り用リール10の構成につい
て説明する。図1は、魚釣用リール10の機械的構成を示す図であり、図1(A)は、魚
釣用リール10として両軸リールと呼ばれるタイプを用いた場合、図1(B)は、スピニ
ングリールと呼ばれるタイプを用いた場合を示す。
【0026】
まず、図1(A)を参照して、両軸リール10Aについて説明する。スプール11Aは
、釣糸31を巻回可能であり、巻き取り操作部14(単に操作部14ともいう)Aによっ
て正回転させることで釣糸31を巻き取ることができる。クラッチ12は、巻き取り操作
部14Aとの動力伝達の接続・解放を選択することができる。接続状態では、巻き取り操
作部14Aによる巻き取りが可能となる。開放状態ではスプール11Aを正逆方向に自由
に回転させることができ、釣糸31は放出可能となる。
【0027】
ドラグ装置13は、釣糸31に設定した張力以上の負荷がかかると、スプール11を空
転させることができる。なお、当該ドラグ装置は、指令信号に応じて、電気的に設定張力
を調整可能としたものを用いてもよい。従来公知の技術であるパウダ式ブレーキを利用し
たドラグ装置などがそれに該当するが、特定の態様に限定されるものではない。
【0028】
巻き取り操作部14Aは、例えば、ハンドルとして構成され、ユーザの回転操作をギヤ
等の伝達機構によってスプール11Aに伝え、該スプール11Aを正回転することができ
る。なお、巻き取り操作部14Aは、レバー等の操作部材と、モータ等の動力源との組み
合わせでもよい。
【0029】
制動部(制動装置)15は、スプールに制動力を働かせることができる。これにより、
キャスティング時のバックラッシュ発生を抑制する。この制動力は、制動力設定部151
で設定できる。
【0030】
なお、本発明における制動装置は、指令信号に応じて、電気的に制動力を調整可能とし
たものを用いてもよい。従来公知の技術である回生ブレーキを利用した制動装置などがそ
れに該当するが、特定の態様に限定されるものではない。
【0031】
次に、図1(b)を参照して、リール10としてスピニングリール10Bを用いた場合
について説明する。スプール11Bは、リール本体に対してドラグ装置13Bを介して固
定されている。ドラグ装置13Bは、釣糸31に設定した張力以上の負荷がかかると、ス
プール11を空転させることができる。
【0032】
釣糸31は、ラインガイド12Bに案内され、ラインガイド12Bがスプール11の周
囲を回転することで、スプール11Bに巻き取られる。ラインガイド12Bは、リール本
体に対して回転可能に支持されるロータの先に保持され、ベールアームの開閉により釣糸
31の案内可否が切り替えられる。ベールアームが開状態では巻き取り不能となり、釣糸
31は放出可能となる。他方で、ベールアームが閉状態では巻き取り可能となり、釣糸3
1は放出不能となる。
【0033】
巻き取り操作部14Bは、例えば、ハンドルとして構成され、ユーザの回転操作をギヤ
等の伝達機構によってロータに伝え、該ラインガイド12Bを正回転することができる。
【0034】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10の電気的な構成に
ついて説明する。図示のように、魚釣用リール10は、ユーザによる各種操作や、リール
の状態を検出するための検出部19を有する。検出結果は演算部16に送られ、必要に応
じて演算処理や、記憶部18で一時保存された後に表示部17へ表示したり、設定部20
への指令値を送ったり、外部機器での二次的利用に用いたりすることができる。
【0035】
当該表示部17は、スマートフォンやウェアラブル端末、ノートPC、魚群探知機など
の外部機器であってもよいし、魚釣用リールや釣竿にLCDなどを設けても実現できる。
該表示部17を外部機器に配置する場合は、魚釣用リール10には無線通信、有線通信な
どによる通信部を設ける。また、操作部(操作手段)21は、ユーザからの操作を受け付
ける。上述の図2に示す構成要素には、必要に応じて図示しない電池などの電源から給電
される。
【0036】
次に、検出部19には、下記のものが挙げられる。コストや大きさなどの制限から、一
部を省略してもよい。張力検出部191は、釣糸31に働く張力を検出する。釣糸31を
案内するプーリーの回転軸に働く力をひずみセンサで検出するなど、従来公知の技術によ
って実現できる。
【0037】
スプール回転検出部192は、スプール11の回転を検出する。フォトインタラプタを
利用したインクリメンタル式の回転センサなど、従来公知の手段で実現できる。スプール
11のスムーズな回転を実現するため、非接触式の回転センサが望ましい。
【0038】
巻き取り操作検出部193は、巻き取り操作部14の回転を検出する。巻き取り操作部
14またはそれに連動して回転するギヤ等に回転センサを取付けることで実現できる。巻
き取り操作検出部193と、スプール回転検出部192との差分をとることにより、ドラ
グ装置13によって空転した回転量を算出することができる。
【0039】
放出可能状態検出部194は、リール10から釣糸31が放出可能であるか否かを検出
する。上述の両軸リール10Aの例では、クラッチ12の接続状態を検出することで実現
できる。クラッチの作動する部材の一部に、リミットセンサ等を取付ければよい。
【0040】
スピニングリール10Bの例では、ベールアームの開閉状態を検出することで実現でき
る。ベールアームの作動する部材の一部に、リミットセンサ等を取付ければよい。
【0041】
また、設定ドラグ力検出部195は、スプール11が空転する閾値となる設定張力を検
出する。ドラグ装置内の摩擦部材に働くチャージ力を、圧力センサによって検出すること
などによって実現できる。
【0042】
また、設定制動力検出部196は、バックラッシュ抑制のための制動力の設定値を検出
する。制動力設定部151にボリューム抵抗などを設けることにより実現できる。コンピ
ュータにより制動力を設定するタイプの制動装置では、制動装置への指令値を取得するこ
とで設定制動力検出部196とすることができる。
【0043】
姿勢検出部197は、リール10の姿勢を検出する。地磁気センサによってリール10
に対する地磁気の方向を検出する方法や、加速度センサによってリール10に対する重力
加速度の方向を検出する方法などによって実現できる。直交する3軸それぞれの方位、加
速度、角速度を検出する9軸モーションセンサと呼ばれるセンサを利用してもよい。
【0044】
位置検出部198は、魚釣用リール10の位置情報を取得する。GPS情報を取得でき
るアンテナなどで実現できる。位置検出部198は、魚釣用リール10の内部に配置する
以外に、スマートフォンなどに配置して、BLE通信などの近距離通信によって位置情報
を取得してもよい。
【0045】
設定部20は、リール10内の各装置へ指令値を送ることで、それらの装置の設定値を
変更する。制動力設定部201は、電気的に制動力を調整可能とした制動部15への指令
値を送信する。制動部15は、指令値に応じて制動力を調整する。ドラグ力設定部201
は、電気的に張力を調整可能としたドラグ装置13への指令値を送信する。ドラグ装置1
3は、指令値に応じて空転を開始する張力を調整する。
【0046】
操作部(操作手段)21は、ユーザの操作を受け付ける。本発明の一実施形態に係る魚
釣用リール10においては電気的な操作手段であり、具体的には、トグルスイッチ、メン
ブレンスイッチ、押しボタンスイッチ、タッチパネル、操作レバー、のいずれかである。
【0047】
ユーザの操作に応じて、電気接点の接触・非接触を切り替える方式や、抵抗膜を利用し
て電圧変化を検出する方式、静電容量の変化を検出する方式など、各種の公知の操作手段
が利用できる。これらは密構造内に封じるなど、適切な防水処理が施される。
【0048】
図3に、操作手段21を設けたリール10の斜視図を示す。この例では、操作手段21
として2つのメンブレンスイッチを利用し、リール10の側板に設けている。メンブレン
スイッチを用いることで、低コスト化、操作手段の薄型化、防水の容易性、良好な操作性
、高いデザイン自由度、高いレイアウト自由度、等が実現できる。以下の説明では、一方
のスイッチ21Aを上ボタン、他方のスイッチ21Bを下ボタンと呼ぶことにする。
【0049】
次に、操作部(操作手段)21を操作したときの動作について説明する。まず、操作手
段21を、制動部15の設定変更に用いる場合を例に説明する。この例では、上ボタンが
押されると制動部15の制動力を強く設定する。下ボタンが押されると制動部15の制動
力を弱く設定する。
【0050】
操作手段21が押された際や、変更後の制動力に応じて、LEDの発光や報知音を鳴ら
すことで、ユーザに設定変更を分かりやすく伝えてもよい。制動部15の設定変更方法を
上記のようにすることで、操作手段21の配置自由度を高めることができるという効果が
ある。また、スマートフォンなどの外部機器等によってソフトウェアを変更することで、
操作手段が押された際の変更の幅を大きくするなど、操作されたときの反応を変更するこ
とができる。
【0051】
次に、操作手段21を、イベント記録に用いる場合を例に説明する。この例では、上ボ
タンが押されると、記憶部18にイベント1の発生を記憶する。下ボタンが押されると、
記憶部18にイベント2の発生を記憶する。また、上ボタンと下ボタンの同時押しを行う
とイベント3を記憶する。上ボタンのダブルクリックでイベント4を記憶したり、長押し
でイベント5を記憶したりするなど、操作手段21の操作方法によって、異なるイベント
を記憶できるようにしてもよい。これにより、操作手段の数を増やさずに、記録できるイ
ベントの種類を増やすことができる。
【0052】
上記イベント1、イベント2、・・・イベントNは、例えば、ユーザが魚を釣り上げた
ときや、魚が釣針に掛かったとき、障害物に釣針がひっかっかった(根がかりした)とき
など、釣りをしている中にユーザが覚えておきたいイベントに対応させる。それらのイベ
ントが発生した際、ユーザはそれに対応する操作を行うことで、記憶部18にそのイベン
トの発生時刻を記憶させることができる。また、イベント発生時に操作手段を押された際
に、外部機器にその情報を送信し、二次的な利用をしてもよい。すなわち、例えば、外部
機器としてビデオカメラなどの撮像装置を用いて、イベント発生時に録画開始や録画停止
などを行うトリガ信号として用いてもよい。
【0053】
図4に、イベントを記録した例を示す。この例では、ユーザが1日の釣りで記録したイ
ベントの一覧を示している。この例のように、イベントの種類とその時刻だけでなく、発
生したときの釣糸の長さやハンドルの回転スピード、リールの位置情報など、リール10
への操作や状態に関する情報を記録してもよい。また、イベント毎の合計値を算出して表
示してもよい。これにより、釣りあげた魚の合計値などを表示することができる。
【0054】
本実施形態のようにイベント記録用のボタンを魚釣用リール10に配置すると、釣りの
際中でも操作しやすい場所に操作手段を配置できる。このようにして、イベントの発生と
同時に操作手段を操作することができる。また、魚釣用リール10内であれば、基板や電
池などを配置しやすい。魚釣用リール10以外の場所にイベント記録用ボタンがあっても
、魚とのファイト中などはそのボタンを操作することが難しくなることが多いと考えられ
るからである。
【0055】
次に、操作手段21を、複数の機能に用いた例について説明する。本実施形態では、魚
釣用リール10の状態によって、操作手段21が操作されたときの動作を変更する。より
具体的には、例えば、放出可能状態検出部194によって、クラッチ12の状態を検出し
、その結果によって動作を変える。クラッチが接続状態であり、スプール11Aが釣糸放
出不能状態(巻き取り操作部14Aによって釣糸を巻き取り操作可能な状態)で、操作手
段21が操作された場合は、上述のイベント記録に関する機能を実行する。他方、クラッ
チが開放状態であり、スプール11Aが釣糸放出可能状態(巻き取り操作部14Aによっ
て釣糸を巻き取る操作が不可能な状態)で、操作手段21が操作された場合は、上述の制
動部15の制動力調整の機能を実行する。
【0056】
このように、リール10の状態によって操作手段による機能を変更することで、一つの
操作手段によって、複数の機能を実行することができる。これにより、機能を増やしても
操作手段の数が増えることを避けることができるため、装置全体の小型化を実現すること
ができる。
【0057】
なお、操作手段が操作されたときに行う機能は、上述の例に限らず、リール10内の各
種設定変更や操作に用いることができる。より具体的には、ドラグ装置13の設定ドラグ
力変更、糸長の基準糸長の設定(ゼロ値リセット)、糸種の変更(スプール回転数から糸
長を算出するときの計算パラメータ変更)、巻き取り操作部14の巻き取り速度変更(巻
き取り操作部14Aとして電動リールを用いた場合)、などが挙げられる。この際に、ク
ラッチが接続状態のときは、釣りを行なっている間に操作したい機能を、クラッチが開放
状態のときは準備中に行いたい機能を割り当てると、操作性が向上する。また、それぞれ
の状態における機能は、スマートフォンの操作などによってソフトウェアの設定を変更す
ることで、ユーザの好みに合わせて割り当てられるようにしても良い。
【0058】
釣りを行っている間に操作したい機能としては、イベント記録に関する機能、ドラグ装
置の設定ドラグ力変更、巻き取り操作部14の巻き取り速度変更、などが挙げられる。準
備中に行いたい機能としては、基準糸長の設定、糸種の変更、ドラグ装置の設定ドラグ力
変更などが挙げられる。魚釣用リール10の状態の判別基準は、放出可能状態検出部19
4に限らず、他の検出部19の値を用いてもよい。例えば、姿勢検出部197の検出結果
を用いて、釣竿の仰角が所定値以上のときは第1の機能を実行し、所定値以下のときは第
2の機能を実行するようにしても、同様の効果を実現できる。また、第2の所定値、第3
の所定値を設定することで、第3の機能、第4の機能を実行するようにしてもよい。この
時、LEDなどによって、現在実行されるのがどの機能になるかをユーザに表示すると、
操作性が向上する。
【0059】
また、スプール回転検出部192および巻き取り操作検出部193によってスプールの
回転回数を検出し、そこから算出した釣糸の放出長さによって、機能を切り替えてもよい
。例えば、釣糸の放出長さが所定値以上(例えば、3m以上)のときは第1の機能を実行
し、所定値以下(例えば、3m以下)のときは第2の機能を実行してもよい。このとき、
釣りを行なっている間に実行したい機能を、所定値以上のときに実行し、準備中に行いた
い機能を所定値以下のときに実行するようにすると、操作性が向上する。
【0060】
また、魚釣用リール10の状態ではなく、操作手段21への操作方法によって、実行す
る機能を切り替えてもよい。本実施形態では、下記のような動作をするように機能を割り
当てている。上ボタンが押されたときは、制動部15の制動力を上げる(機能1)。下ボ
タンが押されたときは、制動部15の制動力を下げる(機能2)。上ボタンと下ボタンが
同時に押されたときは、イベント1の発生を記憶する(機能3)。このような機能割り当
てによって、上述の実施形態と同様、一つの操作手段によって複数の機能を実行すること
を実現できる。
【0061】
このように本発明の一実施形態に係る魚釣用リール10によれば、電気的な操作手段を
有し、レイアウトの自由度の高い操作手段を有するリール、イベント記録可能なリール、
又は一つの操作手段によって複数の機能を実現するリールを提供することが可能となる。
【0062】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説
明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、
材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に
説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態に
おいて説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0063】
10 魚釣用リール
11 スプール
12 クラッチ
13 ドラグ装置
14 操作部
15 制動部(制動装置)
16 演算部
17 表示部
18 記憶部
19 検出部
20 設定部
21 操作部(操作手段)
31 釣糸
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、電気的に特性を変更可能な制動装置と、を有する魚釣用リールであって、該
操作部の操作により該制動装置の制動力調整を行うことを特徴とする魚釣用リール。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部を有する魚釣用リールであって、該操作部の操作により、該魚釣用リールが第1の状態にあるときに第1の機能を実行し、該魚釣用リールが第2の状態にあるときに第2の機能を実行することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
操作部を有する魚釣用リールであって、該操作部の第1の操作を行うと第1の機能を実行し、該操作部の第2の操作を行うと第2の機能を実行することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項3】
前記第1の状態は、釣糸が放出可能な状態であり、前記第2の状態は、該釣糸が放出不能な状態である、請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記釣糸が放出不能な状態は、該釣糸が巻き取り可能な状態である、請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
姿勢センサを備え、前記第1の状態とは、前記魚釣用リールが第1の姿勢である状態であり、前記第2の状態とは、該魚釣用リールが第2の姿勢である状態である、請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記第1の状態とは、放出した釣糸の長さが所定値未満の状態であり、前記第2の状態とは、該放出した釣糸の長さが所定値以上の状態である、請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
前記第1の機能とは、ブレーキ力調整、ドラグ力調整、糸種変更、又は糸長リセットを含む魚釣用リールの特性変更であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項8】
前記第2の機能とは、イベント記録、ドラグ力調整、又はスプールの巻き取り速度の調整を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【請求項9】
操作部と、該操作部が操作される際の時間を記録可能な記録部と、を有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項10】
前記操作部は、操作ボタンである、請求項9に記載の魚釣用リール。
【請求項11】
前記操作部が操作される際の前記魚釣用リールの状態を記録可能である、請求項9又は10に記載の魚釣用リール。
【請求項12】
前記魚釣用リールの状態は、釣糸の糸長、スプールの巻き取り速度、釣糸の張力、又はGPS情報を含む、請求項11に記載の魚釣用リール。
【請求項13】
前記操作部の操作方法に応じて、それぞれ異なるイベントを記録可能である、請求項9から12までのいずれか1項に記載の魚釣用リール。