IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トランスレイト バイオ, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126977
(43)【公開日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ポンペ病のmRNA治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20230905BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230905BHJP
   A61K 31/7115 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230905BHJP
   C12N 15/56 20060101ALI20230905BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20230905BHJP
【FI】
A61K38/47
A61K48/00 ZNA
A61K31/7088
A61K9/127
A61K47/28
A61P21/00
A61P9/00
A61K47/22
A61K47/24
A61K47/34
A61K31/7115
A61P1/16
A61P39/02
C12N15/56
C12N15/88 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113052
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2021095880の分割
【原出願日】2016-03-17
(31)【優先権主張番号】62/135,338
(32)【優先日】2015-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517316797
【氏名又は名称】トランスレイト バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フランク デローサ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ハートレイン
(57)【要約】
【課題】ポンペ病のmRNA治療の提供。
【解決手段】本発明は、とりわけ、治療を必要とする被験体に、酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコードするmRNAを含む組成物を、有効な用量及び投与間隔で投与し、それによってポンペ病の少なくとも1つの症状または特徴の強度、重症度、または頻度を低減するか、または発症を遅らせることを含む、ポンペ病の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、mRNAを、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上の非カチオン性脂質、1つ以上のコレステロール系脂質及び1つ以上のPEG修飾脂質を含むリポソームに封入する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2015年3月19日に出願された米国仮出願第62/135,338号の優
先権を主張し、その開示内容を参照として本明細書に援用する。
【0002】
配列表
本明細書は、配列表(2016年3月17日に「SHR_1185WO_SL」という
名称の.txtファイルとして電子提出した)を参照する。.txtファイルは2016
年3月17日に生成したものであって、そのサイズは28,284バイトである。配列表
の内容全体を、参照として本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
ポンペ病(糖原病II型;酸性αグルコシダーゼ欠乏症;酸マルターゼ欠乏症;GAA
欠乏症;GSD II;全身性グリコーゲン症II型の心型;びまん性糖原性心肥大;酸
マルターゼ欠損症;AMD;またはα‐1,4‐グルコシダーゼ欠損症)は、リソムソー
マル(lysomsomal)酵素である酸性αグルコシダーゼ(GAA)(酸性マルタ
ーゼとしても知られる)の遺伝子の突然変異を特徴とする常染色体劣性代謝遺伝子障害で
ある。GAA遺伝子の突然変異は、GAA酵素がグリコーゲン、マルトース及びイソマル
トースのα‐1,4及びα‐1,6結合を加水分解する能力を排除または低下させる。結
果として、グリコーゲンは体内の細胞中のリソソーム及び細胞質に蓄積し、細胞及び組織
の破壊をもたらす。特に影響を受ける組織として、骨格筋及び心筋が挙げられる。蓄積し
たグリコーゲンは、進行性筋力低下を引き起こし、心肥大、歩行困難及び呼吸不全をもた
らす。
【0004】
古典的な乳児発症型疾患、非古典的な乳児発症型疾患及び遅発型疾患を含む、3つの形
態のポンペ病が同定されている。古典的な乳児発症型は、筋力の低下、筋緊張の低下、肝
腫大、及び心臓欠陥を特徴とする。この疾患の発生率は、およそ14万人に1人である。
この種の疾患を有する患者は、生後1年以内に心不全で死亡することが多い。この疾患の
非古典的な乳児発症型は、運動習熟の遅延、進行性筋力低下、及び場合によっては心肥大
を特徴とする。この種の疾患を有する患者は、呼吸不全のため、その生存が早期幼児期の
みに限られることが多い。遅発型の疾患は、若年期、青年期または成人期に発症する場合
があり、脚及び胴体の進行性筋力低下が特徴である。
【0005】
現在のところ、ポンペ病の治療法はなく、標準治療は、心筋症に対する支持療法を伴う
酵素補充療法(ERT)ならびに筋力低下及び呼吸器症状に対する理学療法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、とりわけ、mRNA療法に基づく改良型のポンペ病治療方法及び組成物を提
供する。本発明は、ヒトGAAタンパク質をコードするmRNAをリポソーム内に封入し
て投与すると、in vivoでの高効率かつ持続的なタンパク質産生が得られ、例えば
、臨床上、関連性の高い疾患マーカーである肝臓及び筋肉におけるグリコーゲンレベルが
効果的に低減するという観察を含む。
【0007】
一態様では、本発明は、治療を必要とする被験体に、酸性αグルコシダーゼ(GAA)
をコードするmRNAを含む組成物を、有効な用量及び投与間隔で投与し、それによって
、ポンペ病の少なくとも1つの症状または特徴の、強度、重症度、または頻度を低減する
か、または発症を遅らせることを含む、ポンペ病の治療方法を提供する。いくつかの実施
形態では、mRNAをリポソーム内に封入する。
【0008】
別の態様では、本発明は、治療を必要とする被験体に、酸性αグルコシダーゼ(GAA
)をコードするmRNAを含む治療有効量の組成物を投与し、それによって被験体の肥大
性心筋症を治療することを含む、ポンペ病の治療方法を提供する。いくつかの実施形態で
は、mRNAをリポソーム内に封入する。
【0009】
別の態様では、本発明は、GAAをコードする有効量のmRNAをリポソーム内に封入
して含むポンペ病の治療用組成物を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、適切なリポソームは、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上
の非カチオン性脂質、1つ以上のコレステロール系脂質及び1つ以上のPEG修飾脂質を
含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、C12‐200、MC3、D
LinDMA、DLinkC2DMA、cKK‐E12、ICE(イミダゾール系)、H
GT5000、HGT5001、DODAC、DDAB、DMRIE、DOSPA、DO
GS、DODAP、DODMA及びDMDMA、DODAC、DLenDMA、DMRI
E、CLinDMA、CpLinDMA、DMOBA、DOcarbDAP、DLinD
AP、DLincarbDAP、DLinCDAP、KLin‐K‐DMA、DLin‐
K‐XTC2‐DMA、HGT4003、ならびにその組合せからなる群から選択される
【0012】
いくつかの実施形態において、1つ以上のカチオン性脂質は、式I‐c1‐aの化合物

【化1】

、またはその薬学的に許容可能な塩を含み、式中:
各Rは、独立して水素またはC1‐3アルキルであり;
各qは、独立して2~6であり;
各R’は、独立して水素またはC1‐3アルキルであり;
各Rは、独立してC8‐12アルキルである。
【0013】
いくつかの実施形態において、1つ以上のカチオン性脂質は、cKK‐E12:
【化2】

を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明に適した1つ以上の非カチオン性脂質は、DSPC(
1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホコリン)、DPPC(1,2‐ジ
パルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホコリン)、DOPE(1,2‐ジオレイル‐
sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン)、DOPC(1,2‐ジオレイル‐sn
‐グリセロ‐3‐ホスフォチジルコリン(phosphotidylcholine))
、DPPE(1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン)
、DMPE(1,2‐ジミリストイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン)
、DOPG(,2‐ジオレオイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホ‐(1’‐rac‐グリ
セロール))、及びそれらの組合せから選択される。
【0015】
いくつかの実施形態において、1つ以上のコレステロール系脂質は、コレステロール、
PEG化コレステロール及びDC‐Chol(N,N‐ジメチル‐N‐エチルカルボキサ
ミドコレステロール)、1,4‐ビス(3‐N‐オレイルアミノ‐プロピル)ピペラジン
ならびにそれらの組合せから選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、リポソームは、1つ以上のPEG修飾脂質をさらに含む。い
くつかの実施形態では、1つ以上のPEG修飾脂質は、鎖長C~C20のアルキル鎖(
複数可)を有する脂質に共有結合した最大鎖長5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖
を含む。いくつかの実施形態では、PEG修飾脂質は、N‐オクタノイル‐スフィンゴシ
ン‐1‐[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)‐2000]のような誘導体
化セラミドである。いくつかの実施形態では、PEG修飾またはPEG化脂質は、PEG
化コレステロールまたはジミリストイルグリセロール(DMG)‐PEG‐2Kである。
【0017】
いくつかの実施形態では、適切なリポソームは、cKK‐E12、DOPE、コレステ
ロール及びDMG‐PEG2K;C12‐200、DOPE、コレステロール及びDMG
‐PEG2K;HGT4003、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2K;ま
たはICE、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kから選択される組合せを
含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(例えば、cKK‐E12、C12‐200
、ICE及び/またはHGT4003)は、リポソームの約30~60%(例えば、約3
0~55%、約30~50%、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約3
5~45%、または約35~40%)のモル比を占める。いくつかの実施形態では、カチ
オン性脂質(例えば、cKK‐E12、C12‐200、ICE及び/またはHGT40
03)は、リポソームの約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%
、または約60%のモル比を占める。
【0019】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(複数可)(例えば、cKK‐E12、C1
2‐200、ICE及び/またはHGT4003)と、非カチオン性脂質(複数可)(例
えば、DOPE)と、コレステロール系脂質(複数可)(例えば、コレステロール)と、
PEG化脂質(複数可)(例えば、DMG‐PEG2K)との比は、それぞれ約30~6
0:25~35:20~30:1~15の間であってもよい。いくつかの実施形態では、
カチオン性脂質(複数可)(例えば、cKK‐E12、C12‐200、ICE及び/ま
たはHGT4003)と、非カチオン性脂質(複数可)(例えば、DOPE)と、コレス
テロール系脂質(複数可)(例えば、コレステロール)と、PEG化脂質(複数可)(例
えば、DMG‐PEG2K)との比は、それぞれおよそ40:30:20:10である。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(複数可)(例えば、cKK‐E12、C12
‐200、ICE及び/またはHGT4003)と、非カチオン性脂質(複数可)(例え
ば、DOPE)と、コレステロール系脂質(複数可)(例えば、コレステロール)と、P
EG化脂質(複数可)(例えば、DMG‐PEG2K)との比は、それぞれおよそ40:
30:25:5である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(複数可)(例えば、
cKK‐E12、C12‐200、ICE及び/またはHGT4003)と、非カチオン
性脂質(複数可)(例えば、DOPE)と、コレステロール系脂質(複数可)(例えば、
コレステロール)と、PEG化脂質(複数可)(例えば、DMG‐PEG2K)との比は
、それぞれおよそ40:32:25:3である。いくつかの実施形態では、カチオン性脂
質(複数可)(例えば、cKK‐E12、C12‐200、ICE及び/またはHGT4
003)と、非カチオン性脂質(複数可)(例えば、DOPE)と、コレステロール系脂
質(複数可)(例えば、コレステロール)と、PEG化脂質(複数可)(例えば、DMG
‐PEG2K)との比は、およそ50:25:20:5である。
【0020】
いくつかの実施形態では、リポソームのサイズは、リポソーム粒子の最大直径の長さに
よって決定される。いくつかの実施形態では、適切なリポソームは、約500nm、40
0nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、75nm、ま
たは50nm未満のサイズを有する。いくつかの実施形態では、適切なリポソームは、約
100nm、90nm、80nm、70nm、または60nm未満のサイズを有する。特
定の実施形態では、リポソームは、約100nm未満のサイズを有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、mRNAを、約0.1~5.0mg/kg体重、例えば約0
.1~4.5、0.1~4.0、0.1~3.5、0.1~3.0、0.1~2.5、0
.1~2.0、0.1~1.5、0.1~1.0、0.1~0.5、0.1~0.3、0
.3~5.0、0.3~4.5、0.3~4.0、0.3~3.5、0.3~3.0、0
.3~2.5、0.3~2.0、0.3~1.5、0.3~1.0、0.3~0.5、0
.5~5.0、0.5~4.5、0.5~4.0、0.5~3.5、0.5~3.0、0
.5~2.5、0.5~2.0、0.5~1.5、または0.5~1.0mg/kg体重
の範囲の用量で投与する。いくつかの実施形態では、mRNAを、約5.0、4.5、4
.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.5、1.0、0.8、0.6、0.5、0
.4、0.3、0.2、または0.1mg/kg体重以下の用量で投与する。特定の実施
形態では、mRNAを、約1.0mg/kgの用量で投与する。
【0022】
いくつかの実施形態では、提供組成物を静脈内投与する。いくつかの実施形態では、提
供組成物を筋肉内投与する。特定の実施形態では、筋肉内投与は、骨格筋、平滑筋及び心
筋からなる群から選択される筋肉に対して行う。いくつかの実施形態では、提供組成物を
、肺送達を介して投与する。特定の実施形態では、肺送達を、エアロゾル化、吸入、噴霧
または点滴注入によって実施する。いくつかの実施形態では、提供組成物を、呼吸可能な
粒子、噴霧可能な脂質、または吸入可能な乾燥粉末として製剤化する。
【0023】
いくつかの実施形態では、提供組成物を、1日1回、週1回、週2回、月2回、月1回
、投与する。いくつかの実施形態では、提供組成物を、7日に1回、10日に1回、14
日に1回、28日に1回、または30日に1回投与する。
【0024】
いくつかの実施形態では、治療有効量の定期的な投与の結果、肝臓内にGAAタンパク
質が発現する。いくつかの実施形態では、治療有効量の定期的な投与の結果、筋肉組織ま
たは筋肉細胞内にGAAタンパク質が発現する。筋肉組織は、例えば、骨格筋、平滑筋、
心筋及びそれらの組合せであり得る。筋肉細胞は、例えば、筋細胞、筋管、筋芽細胞、心
筋細胞、心筋芽細胞及びそれらの組合せであり得る。いくつかの実施形態では、治療有効
量の定期的な投与の結果、血清中にGAAタンパク質が見出されるようになる。
【0025】
いくつかの実施形態では、提供組成物の治療有効量の定期的な投与の結果、被験体の肝
GAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインの肝GAAタンパク質レベルに比べて
上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の治療有効量の定期的な投与の結果、被
験体の筋GAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインの筋GAAタンパク質レベル
に比べて上昇する。いくつかの実施形態では、筋肉は、骨格筋(例えば、横紋筋、随意筋
)、平滑筋(例えば、内臓筋、不随意筋)または心筋である。いくつかの実施形態では、
提供組成物の治療有効量の定期的な投与の結果、被験体の筋グリコーゲンレベルが、治療
前のベースラインの筋グリコーゲンレベルに比べて低下する。いくつかの実施形態では、
提供組成物の治療有効量の定期的な投与の結果、被験体の肝グリコーゲンレベルが、治療
前のベースラインの肝グリコーゲンレベルに比べて低下する。いくつかの実施形態では、
提供組成物の治療有効量の定期的な投与の結果、被験体の血清クレアチンキナーゼレベル
が、治療前のベースラインの血清クレアチンキナーゼレベルに比べて低下する。いくつか
の実施形態では、提供組成物の治療有効量の定期的な投与の結果、被験体の尿グルコース
四糖(Glcα1‐6Glcα1‐4Glcα1‐4Glc(Glc)レベルが、治療
前のベースラインのGlcレベルに比べて低下する。いくつかの実施形態では、提供組
成物の治療有効量の定期的な投与の結果、被験体の血清アスパラギン酸トランスアミナー
ゼ(例えば、AST、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、血清、グルタミン酸オ
キザロ酢酸トランスアミナーゼ)レベルが、治療前のベースラインのASTレベルに比べ
て低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の治療有効量の定期的な投与の結果、
被験体の血清アラニントランスアミナーゼ(例えば、ALT、アラニンアミノトランスフ
ェラーゼ、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)レベルが、治療前のベース
ラインのALTレベルに比べて低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の治療有
効量の定期的な投与の結果、被験体の血清乳酸デヒドロゲナーゼ(例えば、LDH、乳酸
デヒドロゲナーゼ)レベルが、治療前のベースラインのLDHレベルに比べて低下する。
いくつかの実施形態では、提供組成物の治療有効量の定期的な投与の結果、生物学的試料
中のGAA酵素活性レベルが、治療前のベースラインのGAA酵素活性レベルに比べて上
昇する。
【0026】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の肝GAAタンパク質レベ
ルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベルは治療
の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、肝GAAタンパ
ク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10%、20%、30
%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇する。いくつ
かの実施形態では、提供組成物の投与の結果、肝GAAタンパク質レベルが、未治療の被
験体の肝GAAタンパク質レベルに比べて上昇する。
【0027】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の骨格筋のGAAタンパク
質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベル
は治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、骨格筋の
GAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10%、
20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇
する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、骨格筋のGAAタンパク質レ
ベルが、未治療の被験体の骨格筋のGAAタンパク質レベルに比べて上昇する。
【0028】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の心筋のGAAタンパク質
レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベルは
治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、心筋のGA
Aタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10%、20
%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇する
。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、心筋のGAAタンパク質レベルが
、未治療の被験体の心筋のGAAタンパク質レベルに比べて上昇する。
【0029】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の平滑筋のGAAタンパク
質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベル
は治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、平滑筋の
GAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10%、
20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇
する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、平滑筋のGAAタンパク質レ
ベルが、未治療の被験体の平滑筋のGAAタンパク質レベルに比べて上昇する。
【0030】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の筋肉細胞のGAAタンパ
ク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベ
ルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、筋肉細胞は、筋細胞、筋管、筋芽
細胞、心筋細胞または心筋芽細胞である。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の
結果、筋肉細胞のGAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて少な
くとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、
または95%上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、筋肉細胞の
GAAタンパク質レベルが、未治療の被験体の筋肉細胞のGAAタンパク質レベルに比べ
て上昇する。
【0031】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の肝臓細胞(例えば、肝細
胞、類洞壁細胞)のGAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上
昇する。通常、ベースラインレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、
提供組成物の投与の結果、肝臓細胞のGAAタンパク質レベルが、治療前のベースライン
レベルに比べて少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%
、80%、90%、または95%上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与
の結果、肝臓細胞のGAAタンパク質レベルが、未治療の被験体の肝臓細胞のGAAタン
パク質レベルに比べて上昇する。
【0032】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血漿または血清中のGA
Aタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラ
インレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果
、血漿または血清中のGAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて
少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90
%、または95%上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血漿ま
たは血清中のGAAタンパク質レベルが、未治療の被験体の血漿または血清中のGAAタ
ンパク質レベルに比べて上昇する。
【0033】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血清クレアチンキナーゼ
レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラインレベルは
治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清クレア
チンキナーゼレベルが、治療直前のベースラインの血清クレアチンキナーゼレベルに比べ
て少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、9
0%、または95%低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清
クレアチンキナーゼレベルが、約2000IU/L、1500IU/L、1000IU/
L、750IU/L、500IU/L、250IU/L、100IU/L、90IU/L
、80IU/L、70IU/Lまたは60IU/L未満にまで低下する。いくつかの実施
形態では、提供組成物の投与の結果、血清クレアチンキナーゼレベルが、未治療の被験体
の血清クレアチンキナーゼレベルに比べて低下する。
【0034】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の尿中Glcレベルが、
治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラインレベルは治療の直前
に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、尿中Glcレベルが
、治療直前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10%、20%、30%、40%
、50%、60%、70%、80%、90%、または95%低下する。いくつかの実施形
態では、提供組成物の投与の結果、尿中Glcレベルが、約100mmol Glc
/molクレアチニン、90mmol Glc/molクレアチニン、80mmol
Glc/molクレアチニン、70mmol Glc/molクレアチニン、60m
mol Glc/molクレアチニン、50mmol Glc/molクレアチニン
、40mmol Glc/molクレアチニン、30mmol Glc/molクレ
アチニンまたは20mmol Glc/molクレアチニン未満にまで低下する。いく
つかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、尿中Glcレベルが、未治療の被験体
の尿中Glcレベルに比べて低下する。
【0035】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の筋グリコーゲンレベルが
、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラインレベルは治療の直
前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、筋グリコーゲンレベ
ルが、治療直前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10%、20%、30%、4
0%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%低下する。いくつかの実
施形態では、提供組成物の投与の結果、筋グリコーゲンレベルが、未治療の被験体の筋グ
リコーゲンレベルに比べて低下する。特定の実施形態では、筋肉は、骨格筋、平滑筋また
は心筋である。
【0036】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の肝グリコーゲンレベルが
、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラインレベルは治療の直
前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、肝グリコーゲンレベ
ルが、治療直前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10%、20%、30%、4
0%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%低下する。いくつかの実
施形態では、提供組成物の投与の結果、肝グリコーゲンレベルが、未治療の被験体の肝グ
リコーゲンレベルに比べて低下する。
【0037】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血清アスパラギン酸トラ
ンスアミナーゼ(AST)レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通
常、ベースラインレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物
の投与の結果、血清ASTレベルが、治療直前のベースラインレベルに比べて少なくとも
約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または
95%低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清ASTレベル
が、約600IU/L、500IU/L、400IU/L、300IU/L、200IU
/L、100IU/L、50IU/L、25IU/L、20IU/Lまたは10IU/L
未満にまで低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清ASTレ
ベルが、未治療の被験体の血清ASTレベルに比べて低下する。
【0038】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血清アラニントランスア
ミナーゼ(ALT)レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベ
ースラインレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与
の結果、血清ALTレベルが、治療直前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10
%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%
低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清ALTレベルが、約
1000IU/L、900IU/L、800IU/L、700IU/L、600IU/L
、500IU/L、400IU/L、300IU/L、200IU/L、100IU/L
、50IU/L、25IU/L、20IU/Lまたは10IU/L未満にまで低下する。
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清ALTレベルが、未治療の被験
体の血清ALTレベルに比べて低下する。
【0039】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血清乳酸デヒドロゲナー
ゼ(LDH)レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラ
インレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果
、血清乳酸デヒドロゲナーゼLDHレベルが、治療直前のベースラインレベルに比べて少
なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%
、または95%低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清LD
Hレベルが、約2000IU/L、1500IU/L、1000IU/L、900IU/
L、800IU/L、700IU/L、600IU/L、500IU/L、400IU/
L、300IU/L、200IU/Lまたは100IU/L未満にまで低下する。いくつ
かの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清LDHレベルが、未治療の被験体の血
清LDHレベルに比べて低下する。
【0040】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体由来の生物学的試料中のG
AA酵素活性が、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレ
ベルは治療の直前に測定する。生物学的試料として、例えば、全血、血清、血漿、尿及び
組織試料(例えば、筋肉、肝臓、皮膚線維芽細胞)が挙げられる。いくつかの実施形態で
は、提供組成物の投与の結果、GAA酵素活性が、治療直前のベースラインレベルに比べ
て少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、9
0%、または95%上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、GA
A酵素活性が、未治療の被験体のGAA酵素活性に比べて上昇する。
【0041】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体由来の生物学的試料中のG
AA mRNA発現レベルが、治療前のベースライン発現レベルに比べて上昇する。通常
、ベースラインレベルは治療の直前に測定する。生物学的試料として、例えば、全血、血
清、血漿、尿及び組織試料(例えば、筋肉、肝臓、皮膚線維芽細胞)が挙げられる。いく
つかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、GAA mRNA発現レベルが、治療直
前のベースラインレベルに比べて少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%
、60%、70%、80%、90%、または95%上昇する。いくつかの実施形態では、
提供組成物の投与の結果、GAA mRNA発現レベルが、未治療の被験体のGAA m
RNA発現レベルに比べて上昇する。
【0042】
いくつかの実施形態では、mRNAはコドン最適化されている。いくつかの実施形態で
は、コドン最適化mRNAは、配列番号3(コドン最適化ヒトGAA mRNA配列に相
当)を有する。いくつかの実施形態では、mRNAは、配列番号8の5’UTR配列(5
’UTR配列Xに相当)を有する。いくつかの実施形態では、mRNAは、配列番号9の
3’UTR配列(3’UTR配列Yに相当)を有する。いくつかの実施形態では、mRN
Aは、配列番号10の3’UTR配列(3’UTR配列Yに相当)を有する。いくつかの
実施形態では、コドン最適化mRNAは、配列番号11または配列番号12(5’UTR
及び3’UTR配列を有するコドン最適化ヒトGAA mRNA配列に相当)を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、mRNAは1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの
実施形態では、1つ以上の修飾ヌクレオチドは、プソイドウリジン、N‐1‐メチル‐プ
ソイドウリジン、2‐アミノアデノシン、2‐チオチミジン、イノシン、ピロロ‐ピリミ
ジン、3‐メチルアデノシン、5‐メチルシチジン、C‐5プロピニルシチジン、C5‐
プロピニルウリジン、2‐アミノアデノシン、C5‐ブロモウリジン、C5‐フルオロウ
リジン、C5‐ヨードウリジン、C5‐プロピニル‐ウリジン、C5‐プロピニル‐シチ
ジン、C5‐メチルシチジン、2‐アミノアデノシン、7‐デアザアデノシン、7‐デア
ザグアノシン、8‐オキソアデノシン、8‐オキソグアノシン、O(6)‐メチルグアニ
ン、及び/または2‐チオシチジンを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは未修飾
である。
【0044】
一態様では、本発明は、酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコードする有効量のmRN
Aをリポソーム内に封入して含む、ポンペ病の治療用組成物を提供し、ここでリポソーム
は、カチオン性脂質cKK‐E12:
【化3】

を含む。
【0045】
一実施形態では、リポソームは、1つ以上の非カチオン性脂質、1つ以上のコレステロ
ール系脂質、及び1つ以上のPEG修飾脂質をさらに含む。いくつかの実施形態では、1
つ以上の非カチオン性脂質は、DSPC(1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3
‐ホスホコリン)、DPPC(1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホコ
リン)、DOPE(1,2‐ジオレイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン
)、DOPC(1,2‐ジオレイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォチジルコリン(ph
osphotidylcholine)) DPPE(1,2‐ジパルミトイル‐sn‐
グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2‐ジミリストイル‐sn‐
グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン)、DOPG(,2‐ジオレオイル‐sn‐グリ
セロ‐3‐ホスホ‐(1’‐rac‐グリセロール))からなる群から選択される。
【0046】
別の実施形態では、1つ以上のコレステロール系脂質は、コレステロール及び/または
PEG化コレステロールから選択される。さらなる実施形態では、1つ以上のPEG修飾
脂質は、鎖長C~C20のアルキル鎖(複数可)を有する脂質に共有結合した最大鎖長
5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖を含む。
【0047】
別の実施形態では、リポソームは、cKK‐E12、DOPE、コレステロール及びD
MG‐PEG2Kを含む。特定の実施形態では、カチオン性脂質は、リポソームに対して
約30~50%のモル比を占める。別の実施形態では、カチオン性脂質は、リポソームに
対して約40%のモル比を占める。
【0048】
別の実施形態では、cKK‐E12:DOPE:コレステロール:DMG‐PEG2K
のモル比は、およそ40:30:20:10である。特定の実施形態では、cKK‐E1
2:DOPE:コレステロール:DMG‐PEG2Kのモル比は、およそ40:30:2
5:5である。さらに別の実施形態では、cKK‐E12:DOPE:コレステロール:
DMG‐PEG2Kのモル比は、およそ40:32:25:3である。一実施形態では、
リポソームは、およそ100nm未満のサイズを有する。
【0049】
一実施形態では、組成物を静脈内投与用に製剤化する。別の実施形態では、組成物を筋
肉内投与用に製剤化する。別の実施形態では、mRNAは配列番号3を有する。さらなる
実施形態では、mRNAはさらに配列番号8の5’UTR配列を含む。さらに別の実施形
態では、mRNAはさらに配列番号9または配列番号10の3’UTR配列を含む。特定
の実施形態では、mRNAは、配列番号11または配列番号12を有する。
【0050】
一態様では、本発明は、酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコードする有効量のmRN
Aをリポソーム内に封入して含む、ポンペ病の治療用組成物を提供し、ここでmRNAは
配列番号3を有し、さらに、リポソームは、カチオン性または非カチオン性脂質、コレス
テロール系脂質及びPEG修飾脂質を含む。
【0051】
一態様では、本発明は、酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコードする有効量のmRN
Aをリポソーム内に封入して含む、ポンペ病の治療用組成物を提供し、ここでmRNAは
配列番号11または配列番号12を有し、さらに、リポソームは、カチオン性または非カ
チオン性脂質、コレステロール系脂質及びPEG修飾脂質を含む。
【0052】
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下に記載する発明を実施するための形態、添
付の図面及び特許請求の範囲において明らかである。しかしながら、発明を実施するため
の形態、図面、及び特許請求の範囲は、本発明の実施形態を示してはいるが、これらは単
なる例示に過ぎず、限定するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内の様
々な変更及び修正は、当業者にとって明らかなものとなるであろう。
特定の実施形態において、例えば、以下が提供される:
(項目1)
ポンペ病の治療方法であって、治療を必要とする被験体に、酸性αグルコシダーゼ(G
AA)をコードするmRNAを含む組成物を、有効な用量及び投与間隔で投与し、ポンペ
病の少なくとも1つの症状または特徴の強度、重症度、または頻度を低減するか、または
発症を遅らせることを含む、前記治療方法。
(項目2)
ポンペ病の治療方法であって、治療を必要とする被験体に、酸性αグルコシダーゼ(G
AA)をコードするmRNAを含む組成物の治療有効量を投与し、被験体の肥大性心筋症
を治療することを含む、前記治療方法。
(項目3)
前記mRNAをリポソーム内に封入する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記リポソームが、1つ以上のカチオン性脂質、1つ以上の非カチオン性脂質、1つ以
上のコレステロール系脂質及び1つ以上のPEG修飾脂質を含む、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、C12‐200、MC3、DLinDMA、DLi
nkC2DMA、cKK‐E12、ICE(イミダゾール系)、HGT5000、HGT
5001、DODAC、DDAB、DMRIE、DOSPA、DOGS、DODAP、D
ODMA及びDMDMA、DODAC、DLenDMA、DMRIE、CLinDMA、
CpLinDMA、DMOBA、DOcarbDAP、DLinDAP、DLincar
bDAP、DLinCDAP、KLin‐K‐DMA、DLin‐K‐XTC2‐DMA
、HGT4003、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるカチオン性脂質を
含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記1つ以上のカチオン性脂質が、cKK‐E12:
【化7】


を含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記1つ以上の非カチオン性脂質が、DSPC(1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリ
セロ‐3‐ホスホコリン)、DPPC(1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐
ホスホコリン)、DOPE(1,2‐ジオレイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノー
ルアミン)、DOPC(1,2‐ジオレイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォチジルコリ
ン) DPPE(1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミ
ン)、DMPE(1,2‐ジミリストイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミ
ン)、DOPG(,2‐ジオレオイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホ‐(1’‐rac‐
グリセロール))及びそれらの組合せからなる群から選択される、項目4~6のいずれか
一項に記載の方法。
(項目8)
前記1つ以上のコレステロール系脂質が、コレステロール及び/またはPEG化コレス
テロールである、項目4~7に記載の方法。
(項目9)
前記1つ以上のPEG修飾脂質が、鎖長C~C20のアルキル鎖(複数可)を有する
脂質に共有結合した最大鎖長5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖を含む、項目4~
8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記カチオン性脂質が、前記リポソームの約30~50重量%を占める、先行項目のい
ずれか一項に記載の方法。
(項目11)
カチオン性脂質が、リポソームの約40重量%を占める、項目10に記載の方法。
(項目12)
カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロール:PEG化脂質の比が、モル比で
およそ40:30:20:10である、項目4~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロール:PEG化脂質の比が、重量比で
およそ40:30:25:5である、項目4~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
カチオン性脂質:非カチオン性脂質:コレステロール:PEG化脂質の比が、重量比で
およそ40:32:25:3である、項目4~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記リポソームが:
cKK‐E12、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2K;
C12‐200、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2K;
HGT4003、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2K;または、
ICE、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kから選択される組み合わせ
を含む、項目3~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記リポソームが約100nm未満のサイズを有する、項目3~15のいずれか一項に
記載の方法。
(項目17)
前記mRNAを、約0.1~5.0mg/kg体重の範囲の有効用量で投与する、先行
項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記mRNAを、約0.1~3.0mg/kg体重の範囲の有効用量で投与する、先行
項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記mRNAを、約0.1~1.0mg/kg体重の範囲の有効用量で投与する、先行
項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記mRNAを、約1.0mg/kg体重の有効用量で投与する、先行項目のいずれか
一項に記載の方法。
(項目21)
前記組成物を静脈内に投与する、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記組成物を筋肉内に投与する、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記筋肉内投与を、骨格筋、平滑筋、心筋及びそれらの組合せからなる群から選択され
る筋肉に対して行う、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記組成物を週1回投与する、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記組成物を週2回投与する、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記組成物を月2回投与する、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記組成物を月1回投与する、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記組成物を14日に1回投与する、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記組成物の前記投与が、肝臓内でのGAAタンパク質の発現をもたらす、先行項目の
いずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記組成物の前記投与が、筋肉組織または筋肉細胞内でのGAAタンパク質の発現をも
たらす、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記筋肉組織が、骨格筋、平滑筋、心筋及びそれらの組合せから選択される、項目30
に記載の方法。
(項目32)
前記筋肉細胞が、筋細胞、筋管、筋芽細胞、心筋細胞、心筋芽細胞及びそれらの組合せ
からなる群より選択される、項目30に記載の方法。
(項目33)
前記組成物の投与が、血清中でのGAAタンパク質発現をもたらす、先行項目のいずれ
か一項に記載の方法。
(項目34)
前記組成物の前記投与の結果、前記被験体の尿中Glc4レベルが、治療前のベースラ
インの尿中Glc4レベルに比べて低下する、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記組成物の前記投与の結果、前記被験体の筋グリコーゲンレベルが、治療前のベース
ラインの筋グリコーゲンレベルに比べて低下する、先行項目のいずれか一項に記載の方法

(項目36)
前記組成物の前記投与の結果、前記被験体の肝グリコーゲンレベルが、治療前のベース
ラインの肝グリコーゲンレベルに比べて低下する、先行項目のいずれか一項に記載の方法

(項目37)
前記組成物の前記投与の結果、前記被験体の血清アスパラギン酸トランスアミナーゼレ
ベルが、治療前のベースラインの血清アスパラギン酸トランスアミナーゼレベルに比べて
低下する、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記組成物の前記投与の結果、前記被験体の血清アラニントランスアミナーゼレベルが
、治療前のベースラインの血清アラニントランスアミナーゼレベルに比べて低下する、先
行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記組成物の前記投与の結果、前記被験体の血清クレアチンキナーゼレベルが、治療前
のベースラインの血清クレアチンキナーゼレベルに比べて低下する、先行項目のいずれか
一項に記載の方法。
(項目40)
前記組成物の前記投与の結果、前記被験体の血清乳酸デヒドロゲナーゼレベルが、治療
前のベースラインの血清乳酸デヒドロゲナーゼレベルに比べて低下する、先行項目のいず
れか一項に記載の方法。
(項目41)
前記組成物の前記投与の結果、前記被験体由来の生物学的試料中のGAA酵素活性レベ
ルが、治療前の生物学的試料中のベースラインのGAA酵素活性レベルに比べて上昇する
、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記mRNAがコドン最適化されている、先行項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記コドン最適化mRNAが配列番号3を有する、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記mRNAが、配列番号8の5’UTR配列をさらに含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記mRNAが、配列番号9または配列番号10の3’UTR配列をさらに含む、項目
43に記載の方法。
(項目46)
前記mRNAが、配列番号11または配列番号12を有する、先行項目のいずれか一項
に記載の方法。
(項目47)
前記mRNAが、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含む、先行項目のいずれか一項に記載
の方法。
(項目48)
前記1つ以上の修飾ヌクレオチドが、プソイドウリジン、N‐1‐メチル‐プソイドウ
リジン、2‐アミノアデノシン、2‐チオチミジン、イノシン、ピロロ‐ピリミジン、3
‐メチルアデノシン、5‐メチルシチジン、C‐5プロピニル‐シチジン、C‐5プロピ
ニル‐ウリジン、2‐アミノアデノシン、C5‐ブロモウリジン、C5‐フルオロウリジ
ン、C5‐ヨードウリジン、C5‐プロピニル‐ウリジン、C5‐プロピニル‐シチジン
、C5‐メチルシチジン、2‐アミノアデノシン、7‐デアザアデノシン、7‐デアザグ
アノシン、8‐オキソアデノシン、8‐オキソグアノシン、O(6)‐メチルグアニン及
び/または2‐チオシチジンを含む、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記mRNAが未修飾である、項目1~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコードする有効量のmRNAをリポソーム内に封入
して含むポンペ病の治療用組成物であって、前記リポソームが、カチオン性脂質cKK‐
E12:
【化8】


を含む、前記治療用組成物。
(項目51)
前記リポソームが、1つ以上の非カチオン性脂質、1つ以上のコレステロール系脂質、
及び1つ以上のPEG修飾脂質をさらに含む、項目50に記載の組成物。
(項目52)
前記1つ以上の非カチオン性脂質が、DSPC(1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリ
セロ‐3‐ホスホコリン)、DPPC(1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐
ホスホコリン)、DOPE(1,2‐ジオレイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノー
ルアミン)、DOPC(1,2‐ジオレイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォチジルコリ
ン(phosphotidylcholine)) DPPE(1,2‐ジパルミトイル
‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン)、DMPE(1,2‐ジミリストイル
‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン)、DOPG(,2‐ジオレオイル‐s
n‐グリセロ‐3‐ホスホ‐(1’‐rac‐グリセロール))及びそれらの組合せから
なる群から選択される、項目51に記載の組成物。
(項目53)
前記1つ以上のコレステロール系脂質が、コレステロール及び/またはPEG化コレス
テロールから選択される、項目51または52に記載の組成物。
(項目54)
前記1つ以上のPEG修飾脂質が、鎖長C~C20のアルキル鎖(複数可)を有する
脂質に共有結合している最大鎖長5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖を含む、項目
51~53のいずれか一項に記載の組成物。
(項目55)
前記リポソームが、cKK‐E12、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2
Kを含む、項目50~54のいずれか一項に記載の組成物。
(項目56)
前記カチオン性脂質が、リポソームの約30~50mol%を占める、項目50~55
のいずれか一項に記載の組成物。
(項目57)
前記カチオン性脂質が、リポソームの約40mol%を占める、項目56に記載の組成
物。
(項目58)
cKK‐E12:DOPE:コレステロール:DMG‐PEG2Kの比が、モル比でお
よそ40:30:20:10である、項目55~57のいずれか一項に記載の組成物。
(項目59)
cKK‐E12:DOPE:コレステロール:DMG‐PEG2Kの比が、モル比でお
よそ40:30:25:5である、項目55~57のいずれか一項に記載の組成物。
(項目60)
cKK‐E12:DOPE:コレステロール:DMG‐PEG2Kの比が、モル比でお
よそ40:32:25:3である、項目55~57のいずれか一項に記載の組成物。
(項目61)
前記リポソームが約100nm未満のサイズを有する、項目50~60のいずれか一項
に記載の組成物。
(項目62)
前記組成物を静脈内投与用に製剤化する、項目50~61のいずれか一項に記載の組成
物。
(項目63)
前記組成物を筋肉内投与用に製剤化する、項目50~61のいずれか一項に記載の組成
物。
(項目64)
前記mRNAが配列番号3を有する、項目50~63のいずれか一項に記載の組成物。
(項目65)
前記mRNAが、配列番号8の5’UTR配列をさらに含む、項目64に記載の組成物。
(項目66)
前記mRNAが、配列番号9または配列番号10の3’UTR配列をさらに含む、項目
64に記載の組成物。
(項目67)
前記mRNAが、配列番号11または配列番号12を有する、項目50~66のいずれか一項に記載の組成物。
(項目68)
ポンペ病の治療用組成物であって、酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコードする有効量のmRNAをリポソーム内に封入して含み、前記mRNAが配列番号3を有し、及び、
前記リポソームが、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、コレステロール系脂質及びP
EG修飾脂質をさらに含む、前記治療用組成物。
(項目69)
ポンペ病の治療用組成物であって、酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコードする有効量のmRNAをリポソーム内に封入して含み、前記mRNAが配列番号11または配列番号12を有し、及び、
前記リポソームが、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、コレステロール系脂質及びP
EG修飾脂質をさらに含む、前記治療用組成物。
【0053】
図面は説明を目的としたものに過ぎず、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1A】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子の1.0mg/kg静脈内単回投与による治療の6時間後に、マウス由来筋組織に対して実施したin situハイブリダイゼーションによるGAA mRNA検出の一例を示す。
図1B】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子の1.0mg/kg静脈内単回投与による治療の12時間後に、マウス由来筋組織に対して実施したin situハイブリダイゼーションによるGAA mRNA検出の一例を示す。
図2A】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子の1.0mg/kg静脈内単回投与による治療の24時間後における、GAAノックアウトマウスの肝臓内でのグリコーゲン低下の一例を示す。
図2B】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子による治療を実施しなかったGAAノックアウトマウスの肝臓内でのグリコーゲン蓄積の一例を示す。
図3】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子の1.0mg/kg筋肉内単回投与による治療の24時間後に、マウス由来筋組織に対して実施したin situハイブリダイゼーションによるGAA mRNA検出の一例を示す。
図4A】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子の1.0mg/kg筋肉内単回投与による治療の24時間後における、GAAノックアウトマウスの四頭筋内でのグリコーゲン低下の一例を示す。
図4B】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子の1.0mg/kg筋肉内単回投与による治療の24時間後における、GAAノックアウトマウスの四頭筋内でのグリコーゲン低下の一例を示す。
図4C】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子による治療を実施しなかったGAAノックアウトマウスの四頭筋内でのグリコーゲンレベルの一例を示す。
図4D】GAA mRNAカプセル化脂質ナノ粒子による治療を実施しなかったGAAノックアウトマウスの四頭筋内でのグリコーゲンレベルの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
本発明がより容易に理解されるように、初めにいくつかの用語を以下に定義する。以下
の用語及び他の用語の追加の定義を、本明細書全体の随所において記載する。本明細書中
で参照し、本発明の背景を説明するとともに、その実施に関するさらなる詳細を提供する
刊行物及び他の参考資料を、参照として本明細書に援用する。
【0056】
アルキル:本明細書中で使用する場合、「アルキル」とは、1~15個の炭素原子を有
する直鎖または分枝鎖飽和炭化水素基(「C1‐15アルキル」)のラジカルを指す。い
くつかの実施形態では、アルキル基は1~3個の炭素原子を有する(「C1‐3アルキル
」)。C1‐3アルキル基の例として、メチル(C)、エチル(C)、n‐プロピル
(C)、及びイソプロピル(C)が挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル
基は8~12個の炭素原子(「C8‐12アルキル」)を有する。C8‐12アルキルの
例として、n‐オクチル(C)、n‐ノニル(C)、n‐デシル(C10)、n‐ウ
ンデシル(C11)、n‐ドデシル(C12)などが挙げられるが、必ずしもこれらに限
定するものではない。接頭語「n‐」(normal)は、非分枝アルキル基を指す。例
えば、n‐Cアルキルは‐(CHCHを指し、n‐C10アルキルは‐(CH
CHを指す、などである。
【0057】
アミノ酸:本明細書中で使用する場合、用語「アミノ酸」とは、その最も広い意味で、
ポリペプチド鎖に取り込み可能な任意の化合物及び/または物質を指す。いくつかの実施
形態では、アミノ酸は一般構造HN―C(H)(R)―COOHを有する。いくつかの
実施形態では、アミノ酸は天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、ア
ミノ酸は合成アミノ酸であり;いくつかの実施形態では、アミノ酸は、d‐アミノ酸であ
り;いくつかの実施形態では、アミノ酸はl‐アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、
天然に存在するペプチドに共通して見出される20種類の標準的なl‐アミノ酸のいずれ
かを指す。「非標準アミノ酸」とは、合成的に調製したものか、または天然源から得たも
のかどうかに関わらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を意味する。本明細書中で使
用する場合、「合成アミノ酸」は、化学的に修飾したアミノ酸を包含し、これには塩類、
アミノ酸誘導体(アミド類など)、及び/または置換が含まれるが、必ずしもこれらに限
定するものではない。ペプチド内のカルボキシ末端及び/またはアミノ末端のアミノ酸を
含むアミノ酸はそれらの活性に悪影響を及ぼすことなくペプチドの循環半減期を変化させ
ることが可能な、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基及び/または他の化学基との
置換によって修飾することができる。アミノ酸はジスルフィド結合に関与していてもよい
。アミノ酸は、1つ以上の化学的実体(例えば、メチル基、アセテート基、アセチル基、
リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂
質部分、炭水化物部分、ビオチン部分など)との会合のような1つまたは翻訳後修飾を含
んでいてもよい。用語「アミノ酸」は、「アミノ酸残基」と同じ意味で用いており、さら
には遊離アミノ酸及び/またはペプチドのアミノ酸残基を指すことがある。用語が遊離ア
ミノ酸を指すのか、またはペプチドの残基を指すのかは、その用語を用いている文脈から
明らかであろう。
【0058】
動物:本明細書中で使用する場合、用語「動物」とは、動物界の任意のメンバーを指す
。いくつかの実施形態では、「動物」は、任意の発達段階のヒトを指す。いくつかの実施
形態では、「動物」は、任意の発達段階の非ヒト動物を指す。特定の実施形態では、非ヒ
ト動物は哺乳類(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツ
ジ、ウシ、霊長類、及び/またはブタ)である。いくつかの実施形態において、動物には
、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、及び/または虫類が含まれるが、必ず
しもこれらに限定するものではない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニ
ック動物、遺伝子改変動物、及び/またはクローンであってもよい。
【0059】
およそ(Approximately)または約(about):本明細書中で使用す
る場合、用語「およそ」または「約」は、それを関心のある1つ以上の値に適用する場合
、記載する基準値に類似する値を指す。特定の実施形態において、用語「およそ(app
roximately)」または「約(about)」は、特段の記載がない限り、また
は文脈から明らかな場合を除き、記載する値のいずれかの方向(より大きいまたはより小
さい)に対して、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、
13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、
1%、またはそれ未満に収まる数値範囲を指す(そのような数値が可能値の100%を超
える場合を除く)。
【0060】
生物学的に活性:本明細書中で使用する場合、語句「生物学的に活性」とは、生物学的
系内で、特に生物内で活性を有する任意の薬剤の特性を指す。例えば、生物に投与した場
合に、その生物に対して生物学的効果を有する薬剤は、生物学的に活性であると考えられ
る。
【0061】
送達:本明細書中で使用する場合、用語「送達」は、局所送達及び全身送達の両方を包
含する。例えば、mRNAの送達は、mRNAを標的組織に送達し、コードするタンパク
質が標的組織内で発現し、及び保持される状況(「局所分配」または「局所送達」とも呼
ぶ)、ならびにmRNAを標的組織に送達し、コードするタンパク質が発現し、及び患者
の循環系(例えば血清)に分泌されて全身に分配され、他の組織によって取り込まれる(
「全身分配」または「全身送達」とも呼ぶ)状況を包含する。
【0062】
発現:本明細書中で使用する場合、核酸配列の「発現」とは、mRNAのポリペプチド
への翻訳、複数のポリペプチドからのインタクトなタンパク質(例えば、酵素)への組立
て、及び/またはポリペプチドもしくは完全に組み立てられたタンパク質(例えば、酵素
)の翻訳後修飾を指す。本願では、用語「発現」及び「産生」、ならびに文法上の同等表
現を、同じ意味で用いる。
【0063】
機能性:本明細書中で使用する場合、「機能性」生体分子とは、それを特徴付ける特性
及び/または活性を示す形態の生体分子である。
【0064】
半減期:本明細書中で使用する場合、用語「半減期」とは、核酸またはタンパク質の濃
度または活性などの量が、ある期間の開始時に測定したその値の半分に低下するのに要す
る時間のことである。
【0065】
向上する、上昇する、または低下する:本明細書中で使用する場合、用語「向上する」
、「上昇する」もしくは「低下する」、または文法上の同等表現は、本明細書に記載の治
療の開始前の同じ個体における測定値などのベースライン測定値、または本明細書に記載
の治療の非存在下での対照被験体(または複数の対照被験体)における測定値と比較した
値を示す。「対照被験体」とは、治療対象の被験体と同じ型の疾患に罹患する、治療対象
とほぼ同じ年齢の被験体である。
【0066】
in vitro:本明細書中で使用する場合、用語「in vitro」とは、多細
胞生物内ではなく、人工環境、例えば、試験管または反応容器内、細胞培養物中などで生
じる事象を指す。
【0067】
in vivo:本明細書中で使用する場合、用語「in vivo」とは、ヒト及び
非ヒト動物のような多細胞生物内で起こる事象を指す。細胞ベースのシステムの文脈にお
いて、本用語は、(例えば、in vitro系とは対照的に)生細胞内で起こる事象を
指すために使用してもよい。
【0068】
単離した:本明細書中で使用する場合、用語「単離した」とは、(1)最初に産生した
際に(自然状態で及び/または実験上の設定の下で)、関連する成分の少なくともいくつ
かから分離した物質及び/または実体、及び/または(2)人の手によって生産、調製、
及び/または製造したものを指す。単離した物質及び/または実体は、最初の時点でそれ
らと関連していた他の成分の、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約
60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約
95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離され得る
。いくつかの実施形態において、単離した薬剤は、約80%、約85%、約90%、約9
1%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約9
9%、または約99%超の水準において純粋である。本明細書中で使用する場合、物質が
実質的に他の成分を含まない場合、それは「純粋」である。本明細書中で使用する場合、
単離した物質及び/または実体のパーセント純度の計算には、賦形剤(例えば、緩衝剤、
溶媒、水など)を含めるべきではない。
【0069】
局所分配または送達:本明細書で使用する場合、用語「局所分配」、「局所送達」また
は文法上の同等表現は、組織特異的送達または分配を指す。一般的には、局所的な分配ま
たは送達には、mRNAがコードするタンパク質(例えば、酵素)を、細胞内において翻
訳及び発現させるか、または分泌を限定的にとどめて患者の循環器系に入ることを避ける
ことが必要である。
【0070】
メッセンジャーRNA(mRNA):本明細書中で使用する場合、用語「メッセンジャ
ーRNA(mRNA)」とは、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオ
チドを指す。本明細書中で用いるmRNAは、修飾RNA及び非修飾RNAの両方を包含
する。mRNAは、1つ以上のコード領域及び非コード領域を含み得る。mRNAは、天
然資源から精製したり、組換え発現系を用いて産生し、さらに必要に応じて精製したり、
化学的に合成したりすることができる。適切には、例えば、化学合成した分子の場合、m
RNAに、例えば化学修飾した塩基または糖、骨格修飾などを備えたアナログなどのヌク
レオシドアナログを含ませることができる。他に特段の指定がない限り、mRNA配列は
5’から3’の方向に提示する。いくつかの実施形態では、mRNAは、天然ヌクレオシ
ド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン);ヌクレオシドアナログ(
例えば、2‐アミノアデノシン、2‐チオチミジン、イノシン、ピロロピリミジン、3‐
メチルアデノシン、5‐メチルシチジン、C‐5プロピニル‐シチジン、C‐5プロピニ
ル‐ウリジン、2‐アミノアデノシン、C5‐ブロモウリジン、C5‐フルオロウリジン
、C5‐ヨードウリジン、C5‐プロピニル‐ウリジン、C5‐プロピニル‐シチジン、
C5‐メチルシチジン、2‐アミノアデノシン、7‐デアザアデノシン、7‐デアザグア
ノシン、8‐オキソアデノシン、8‐オキソグアノシン、O(6)‐メチルグアニン、及
び2‐チオシチジン);化学的修飾塩基;生物学的修飾塩基(例えば、メチル化塩基);
インターカレート塩基;修飾糖類(例えば、2’‐フルオロリボース、リボース、2’‐
デオキシリボース、アラビノース、及び六炭糖);及び/または修飾リン酸基(例えば、
ホスホロチオエート及び5’‐N‐ホスホラミダイト結合)であるか、またはそれらを含
む。
【0071】
筋肉細胞または筋肉組織:本明細書中で使用する場合、用語「筋肉細胞」または「筋肉
組織」とは、その最も広い意味で、筋肉に由来する細胞または細胞群を指し、必ずしも限
定するものではないが、骨格筋(例えば、横紋筋、随意筋)に由来する細胞及び組織;消
化管、膀胱及び血管由来の平滑筋(例えば、内臓筋、不随意筋);及び心筋を含む。本用
語は、in vivo及びin vitroでの筋肉細胞を指す。本用語には、筋細胞、
筋管、筋芽細胞、心筋細胞及び心筋芽細胞などの、分化及び未分化の、または非分化の筋
細胞も含まれる。
【0072】
核酸:本明細書中で使用する場合、用語「核酸」とは、その最も広い意味において、ポ
リヌクレオチド鎖に組み込まれているか、または組み込まれ得る任意の化合物及び/また
は物質を指す。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合を介してポリヌ
クレオチド鎖に組み込まれているか、または組み込まれ得る化合物及び/または物質であ
る。いくつかの実施形態では、「核酸」とは、個々の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及
び/またはヌクレオシド)を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」は、個々の核酸残
基を含むポリヌクレオチド鎖を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」は、RNAなら
びに一本鎖及び/または二本鎖DNA及び/またはcDNAを包含する。
【0073】
患者:本明細書中で使用する場合、用語「患者」または「被験体」は、例えば実験、診
断、予防、美容、及び/または治療を目的として、提供組成物を投与し得る任意の生物を
指す。一般的な患者として、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及
び/またはヒトなどの哺乳類)が挙げられる。いくつかの実施形態では、患者はヒトであ
る。ヒトは、出生前及び出生後の形態を含む。
【0074】
薬学的に許容可能な:本明細書中で使用する用語「薬学的に許容可能な」とは、正常な
医学的判断の範囲内で、ヒト及び動物の組織に接触させて使用するのに適した物質であっ
て、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を呈することが
なく、合理的なリスク対効果比に見合った物質を指す。
【0075】
薬学的に許容可能な塩:薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野で周知である。例えば
、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences(1
977)66:1‐19において、薬学的に許容可能な塩を詳細に記載している。本発明
の化合物の薬学的に許容可能な塩は、適切な無機及び有機の酸及び塩基に由来するものを
含む。薬学的に許容可能な非毒性の酸付加塩の例として、以下のような無機酸、例えば塩
酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸、または以下のような有機酸、例えば酢酸、
シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはルナロニック酸(rnal
onic acid)を用いて、またはイオン交換のような当該技術分野で用いられる他
の方法を用いて形成したアミノ基の塩が挙げられる。他の薬学的に許容可能な塩の例とし
て、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスル
ホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、
クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタン
スルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン
酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2‐ヒドロキシ‐エ
タンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ
酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2‐ナフタレンスルホン酸塩、
ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチ
ン酸塩、過硫酸塩、3‐フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸
塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩
、p‐トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基
から誘導される塩として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びN(C
1‐4アルキル)塩が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩として
、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。適切
な場合には、さらなる薬学的に許容可能な塩として、無毒性のアンモニウム、第四級アン
モニウム、ならびにハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩
、スルホン酸塩、及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成したアミンカチ
オンが挙げられる。さらなる薬学的に許容可能な塩として、例えばハロゲン化アルキルな
どの適切な求電子剤を用いてアミンを四級化して第四級アルキル化アミノ塩を形成する塩
が挙げられる。
【0076】
全身分配または送達:本明細書中で使用する場合、用語「全身分配」、「全身送達」ま
たは文法上の同等表現は、身体全体または生物全体に影響を及ぼす送達または分配の機構
またはアプローチを指す。通常、全身分配または送達は、体の循環系、例えば血流を介し
て達成される。「局所分配または送達」の定義と比較されたい。
【0077】
被験体:本明細書中で使用する場合、用語「被験体」とは、ヒトまたは任意の非ヒト動
物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマまたは霊
長類)を指す。ヒトには、出生前と出生後の両方の形態が含まれる。多くの実施形態では
、被験体はヒトである。被験体は、患者であることができ、すなわち、疾患の診断または
治療のために医療提供者を訪れるヒトを指す。用語「被験体」は、本明細書では「個体」
または「患者」と同じ意味で用いる。被験体は、疾患または障害に罹患しているかまたは
罹患しやすい状況にある可能性が高いが、疾患または障害の症状を示していても、示して
いなくてもよい。
【0078】
実質的に:本明細書中で使用する場合、用語「実質的に」とは、関心対象の特徴または
特性が、全体またはほぼ全体の範囲または程度にわたっていることを示す定性的状態を指
す。生物学的技術分野の当業者であれば、生物学的及び化学的現象が完了すること、及び
/または完全性を達成すること、または絶対的結果を達成もしくは回避することは、ある
にしても極めて稀であることを理解するだろう。したがって、本明細書中では、用語「実
質的に」を、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捕捉するた
めに用いる。
【0079】
標的組織:本明細書中で使用する場合、用語「標的組織」とは、治療しようとする疾患
が影響を及ぼしている任意の組織を指す。いくつかの実施形態では、標的組織には、疾患
に関連する病徴、症状または特徴を示す組織が含まれる。
【0080】
治療有効量:本明細書中で使用する場合、治療薬の「治療有効量」という用語は、疾患
、障害、及び/または病態に罹患しているかまたは罹患しやすい状態にある被験体に投与
した場合に、疾患、障害、及び/または病態の症状(複数可)を治療、診断、予防及び/
またはその発症を遅延させるのに十分な量を意味する。通常、治療有効量を、少なくとも
1つの単位用量を含む投与レジメンを介して投与することは、当業者であれば理解するで
あろう。
【0081】
治療:本明細書中で使用する場合、用語「治療する(treat)」、「治療(tre
atment)」または「治療すること(treating)」とは、被験体の特定の疾
患、障害及び/または病態の1つ以上の症状または特徴を、部分的または完全に、緩和し
、寛解し、軽減し、阻害し、防止し、発症を遅延させ、重症度を低減し、及び/または発
症率を低下させるために用いる任意の方法を指す。疾患に関連する病徴の発症リスクを低
減するために、治療は、疾患の症状を示していない及び/または疾患の早期症状のみを示
す被験体に対して投与してもよい。
【0082】
詳細な説明
本発明は、とりわけ、mRNA療法に基づくポンペ病の治療方法及び組成物を提供する
。特に、本発明は、治療を必要とする被験体に、酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコー
ドするmRNAを含有する組成物を、有効な用量及び投与間隔で投与し、それによってポ
ンペ病の少なくとも1つの症状または特徴の、強度、重症度、もしくは頻度を低下させる
か、または発症を遅らせることによってポンペ病を治療する方法を提供する。本発明はさ
らに、治療を必要とする被験体に、酸性αグルコシダーゼ(GAA)をコードするmRN
Aを含有する組成物の治療有効量を投与し、それによって被験体の肥大性心筋症を治療す
ることを含む、ポンペ病の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、mRNAを1
つ以上のリポソーム内に封入する。本明細書中で使用する場合、用語「リポソーム」とは
、任意の層状、多層状、または固体のナノ粒子小胞を指す。一般的には、本明細書中で使
用するリポソームは、1種以上の脂質を混合することによって、または1種以上の脂質と
1種以上のポリマー(複数可)とを混合することによって形成することができる。したが
って、本明細書で使用する用語「リポソーム」は、脂質系及びポリマー系ナノ粒子の両方
を包含する。いくつかの実施形態では、本発明に適したリポソームは、カチオン性または
非カチオン性脂質(複数可)、コレステロール系脂質(複数可)及びPEG修飾脂質(複
数可)を含有する。
【0083】
ポンペ病
本発明を、ポンペ病に罹患しているか、または罹患しやすい被験体を治療するために使
用してもよい。ポンペ病は、酸性αグルコシダーゼ(GAA)酵素の遺伝子中の変異を特
徴とする常染色体劣性代謝遺伝性障害である。GAA酵素は:酸性マルターゼ、マルター
ゼ、マルターゼ‐グルコアミラーゼ、グルオインベルターゼ(gluoinvertas
e)、グルコシドスクラーゼ、アグルコシダーゼα、α‐1,4‐グルコシダーゼ、アミ
ログルコシダーゼ、グルコアミラーゼ、LYAG、LYAG_HUMAN、リソソームα
グルコシダーゼ及びαグルコシダーゼ、酸としても知られている。GAA遺伝子(グルコ
シダーゼα;酸)は:酸性マルターゼ、α‐1,4‐グルコシダーゼ及びαグルコシダー
ゼ、酸としても知られている。ポンペ病を引き起こす200種以上の突然変異がGAA遺
伝子において同定されている。これらの突然変異のほとんどは、単一のアミノ酸置換及び
小さな挿入または欠失を含んでいる。GAA遺伝子の突然変異の多くは、得られるタンパ
ク質の構造に影響を与え、その活性を低下させている可能性がある。GAA遺伝子の突然
変異のうちのいくつかは、異常に短くなった酵素の産生をもたらし、そのような酵素はグ
リコーゲンの加水分解においてその役割を効果的に果たすことができない。
【0084】
酸性αグルコシダーゼ酵素の欠損は、グリコーゲンを加水分解する細胞の能力を低下さ
せ、その結果、細胞及び組織、特に肝臓及び筋肉にグリコーゲンが蓄積する。グリコーゲ
ンの蓄積は細胞死をもたらし、それは進行性筋力低下、心筋症及び呼吸不全として現れる
【0085】
本明細書に記載の組成物及び方法は、ポンペ病の少なくとも1つの症状または特徴を治
療するために使用し得る。特に、本明細書に記載の組成物及び方法は、肥大性心筋症を治
療するために使用し得る。
【0086】
酸性αグルコシダーゼ(GAA)
いくつかの実施形態において、本発明は、ポンペ病の治療のための、GAAをコードす
るmRNAの被験体への送達方法及び組成物を提供する。適切なGAA mRNAは、天
然のGAAタンパク質の活性を置き換えることができ、及び/またはポンペ病に関連する
1つ以上の症状の強度、重症度、及び/または頻度を低下させることができるGAAタン
パク質の全長、断片または部分のいずれかをコードしている。
【0087】
いくつかの実施形態では、適切なmRNA配列は、ヒトGAAタンパク質をコードする
mRNA配列である。天然に存在するヒトGAA mRNAコード配列及び対応するアミ
ノ酸配列を表1に示す:
【表1-1】

【表1-2】
【0088】
いくつかの実施形態では、適切なmRNAは、配列の野生型ヒトGAA mRNA(配
列番号1)である。いくつかの実施形態では、適切なmRNAは、以下に示す配列のよう
なコドン最適化hGAA配列であってもよい:
【0089】
コドン最適化ヒトGAAコード配列(配列番号3):
AUGGGAGUCAGACACCCGCCGUGCUCGCACAGGCUUCUG
GCCGUGUGCGCACUCGUGAGUCUGGCGACUGCUGCGUUGC
UGGGGCACAUUCUUCUCCACGACUUUCUCUUGGUGCCCCG
AGAAUUGUCGGGCUCGUCGCCGGUACUGGAAGAAACCCAC
CCCGCACAUCAGCAGGGCGCGUCGCGGCCUGGUCCGAGGG
AUGCCCAGGCACAUCCCGGAAGGCCACGAGCCGUCCCGAC
UCAAUGUGACGUACCUCCCAAUUCCCGGUUCGACUGUGCG
CCAGACAAGGCAAUCACGCAAGAGCAGUGCGAAGCCCGUG
GAUGCUGCUAUAUUCCGGCGAAGCAGGGACUUCAGGGAGC
CCAGAUGGGGCAGCCCUGGUGUUUCUUCCCGCCUUCCUAU
CCCUCAUAUAAGCUGGAGAAUUUGUCGUCCUCGGAAAUGG
GGUAUACCGCUACUCUUACGAGAACCACCCCCACAUUCUU
UCCGAAGGACAUCCUUACUCUGCGGCUCGACGUGAUGAUG
GAGACAGAAAAUAGGCUGCAUUUCACGAUCAAAGACCCGG
CGAACCGGAGAUAUGAGGUUCCGCUUGAGACUCCCCACGU
UCACUCUCGUGCGCCUUCACCCUUGUACUCCGUGGAGUUC
UCGGAAGAACCGUUCGGGGUGAUCGUCAGACGUCAACUUG
AUGGUAGGGUAUUGCUGAACACAACGGUCGCCCCCUUGUU
UUUCGCCGACCAGUUUCUGCAGCUUUCGACAUCGCUGCCG
UCCCAGUAUAUCACAGGGCUCGCGGAGCAUCUUUCACCCC
UCAUGCUGAGCACGAGCUGGACACGGAUUACGCUCUGGAA
CAGGGAUCUCGCGCCGACGCCCGGAGCGAAUUUGUAUGGG
UCGCAUCCCUUCUACCUCGCAUUGGAAGACGGGGGUUCCG
CGCACGGAGUAUUCCUGCUUAAUUCUAAUGCGAUGGACGU
UGUCUUGCAGCCCUCCCCUGCUUUGUCGUGGCGUUCCACG
GGGGGCAUUUUGGACGUUUACAUCUUUUUGGGACCCGAGC
CAAAGAGCGUAGUGCAGCAGUAUUUGGAUGUAGUGGGCUA
CCCCUUCAUGCCGCCUUAUUGGGGACUGGGGUUCCAUCUC
UGCCGCUGGGGGUACUCUUCGACCGCGAUCACCCGCCAGG
UGGUCGAGAACAUGACCAGAGCACAUUUCCCUUUGGACGU
GCAGUGGAAUGAUUUGGAUUACAUGGAUAGCCGAAGAGAC
UUCACGUUCAAUAAGGACGGGUUUAGAGAUUUUCCCGCGA
UGGUGCAAGAAUUGCACCAGGGUGGGCGCAGAUACAUGAU
GAUCGUCGAUCCCGCCAUCAGCAGCUCGGGACCAGCGGGG
AGUUACCGGCCUUACGAUGAGGGACUUAGGAGAGGCGUCU
UUAUCACGAACGAAACAGGUCAGCCGCUCAUUGGUAAAGU
GUGGCCUGGAUCAACGGCCUUUCCCGACUUCACGAAUCCC
ACAGCCCUCGCCUGGUGGGAAGACAUGGUGGCGGAGUUUC
ACGACCAAGUACCGUUUGAUGGGAUGUGGAUUGAUAUGAA
CGAACCCUCAAACUUUAUUCGCGGCUCGGAAGAUGGAUGC
CCGAAUAAUGAGCUUGAGAAUCCCCCGUAUGUGCCAGGGG
UGGUAGGUGGGACGCUCCAGGCCGCUACGAUCUGUGCGUC
AUCACAUCAGUUCUUGUCAACGCACUACAACUUGCACAAU
CUUUACGGUUUGACUGAAGCCAUCGCUUCGCAUCGCGCGC
UGGUCAAAGCGCGUGGUACGCGACCCUUCGUUAUUUCUCG
GUCCACAUUUGCCGGGCACGGUCGGUAUGCCGGACACUGG
ACGGGAGAUGUCUGGUCUAGCUGGGAGCAGCUCGCGUCGA
GCGUACCGGAGAUCCUCCAGUUCAAUCUUUUGGGAGUUCC
GCUCGUCGGCGCUGACGUGUGCGGUUUUCUCGGAAACACA
UCAGAAGAGCUUUGCGUACGCUGGACACAGCUCGGUGCGU
UUUACCCCUUUAUGAGAAACCAUAACUCGUUGCUCUCACU
CCCUCAAGAGCCGUACAGUUUUUCGGAGCCUGCGCAACAG
GCGAUGCGGAAGGCAUUGACACUUCGCUAUGCACUGCUCC
CGCAUCUCUAUACUCUGUUCCAUCAGGCCCAUGUGGCUGG
AGAAACGGUGGCGAGGCCCCUGUUCUUGGAGUUCCCCAAA
GAUAGUUCCACAUGGACCGUGGAUCACCAGUUGCUGUGGG
GAGAGGCGCUUCUGAUCACUCCGGUACUUCAGGCGGGUAA
AGCGGAAGUCACUGGGUAUUUCCCGCUUGGGACCUGGUAC
GACCUUCAGACUGUCCCAGUAGAAGCCCUCGGAAGCCUGC
CACCUCCCCCUGCUGCACCCCGCGAGCCUGCAAUCCAUAG
CGAGGGCCAGUGGGUAACGUUGCCAGCCCCACUGGAUACC
AUCAAUGUCCACCUCAGGGCGGGUUACAUUAUCCCUCUCC
AAGGCCCUGGGUUGACCACCACAGAGUCGCGCCAGCAGCC
AAUGGCACUUGCGGUCGCAUUGACGAAAGGGGGUGAAGCC
CGAGGGGAACUGUUUUGGGAUGACGGGGAAAGCCUUGAGG
UGCUGGAACGGGGAGCGUACACACAAGUCAUUUUCUUGGC
CAGGAACAACACUAUUGUCAACGAGUUGGUGCGCGUGACC
UCUGAGGGUGCCGGACUGCAACUGCAGAAGGUCACGGUCC
UCGGAGUGGCGACAGCACCCCAACAGGUCCUUAGUAACGG
AGUACCUGUCUCGAACUUUACAUACUCCCCGGACACGAAG
GUGCUCGACAUCUGUGUGUCGCUGCUUAUGGGGGAACAGU
UUCUCGUGAGCUGGUGCUAG
【0090】
さらなるmRNA配列の例を、以下の実施例のセクションに記載し、例えば、配列番号
11及び配列番号12は、コドン最適化GAAコードmRNAを囲む5’及び3’非翻訳
領域を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、適切なmRNA配列は、ヒトGAAタンパク質のホモロ
グまたはアナログのmRNA配列であってもよい。例えば、ヒトGAAタンパク質のホモ
ログまたはアナログは、野生型すなわち天然に存在するヒトGAAタンパク質に比べて、
1つ以上のアミノ酸置換、欠失及び/または挿入を含むが、その一方でGAAタンパク質
活性を実質的に保持している改変ヒトGAAタンパク質であってもよい。いくつかの実施
形態では、本発明に適したmRNAは、少なくとも50%、55%、60%、65%、7
0%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、9
6%、97%、98%、99%またはそれ以上の割合で配列番号2に相同であるアミノ酸
配列をコードする。いくつかの実施形態では、本発明に適したmRNAは、ヒトGAAタ
ンパク質に実質的に同一のタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、本発明に
適したmRNAは、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80
%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%またはそれ以上の割合で配列番号2と同一であるアミノ酸配列をコードする。
いくつかの実施形態では、本発明に適したmRNAは、ヒトGAAタンパク質の断片また
は部分をコードする。いくつかの実施形態では、本発明に適したmRNAは、ヒトGAA
タンパク質の断片または部分をコードし、ここで、タンパク質の断片または部分は、野生
型タンパク質と同様のGAA活性をなお維持している。いくつかの実施形態では、本発明
に適したmRNAは、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、8
0%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%またはそれ以上の割合で、配列番号1、配列番号3、配列番号11または配
列番号12と同一のヌクレオチド配列を有する。
【0092】
いくつかの実施形態では、適切なmRNAは、別のタンパク質に融合させた(例えば、
NまたはC末端融合体)GAAタンパク質の全長、断片または部分を含む融合タンパク質
をコードする。いくつかの実施形態では、GAAタンパク質の全長、断片または一部をコ
ードするmRNAに融合させたタンパク質は、シグナル配列または細胞標的化配列をコー
ドする。
【0093】
送達媒体
本発明によれば、本明細書に記載のGAAタンパク質(例えば、GAAタンパク質の全
長、断片または一部)をコードするmRNAは、裸のRNA(パッケージされていない)
として、または送達媒体を介して送達してもよい。本明細書中で使用する用語「送達媒体
」、「輸送媒体」、「ナノ粒子」または文法上の同等表現は、同じ意味で用いる。
【0094】
いくつかの実施形態において、GAAタンパク質をコードするmRNAを、単一の送達
媒体を介して送達してもよい。いくつかの実施形態では、GAAタンパク質をコードする
mRNAを、それぞれ異なる組成の1つ以上の送達媒体を介して送達してもよい。様々な
実施形態によれば、適切な送達媒体として、ポリエチレンイミン(PEI)などのポリマ
ー系担体、脂質ナノ粒子及びリポソーム、ナノリポソーム、セラミド含有ナノリポソーム
、プロテオリポソーム、天然及び合成の両方に由来するエキソソーム、天然、合成及び半
合成ラメラ体、ナノ微粒子、リン酸カルシウム‐ケイ酸ナノ粒子、リン酸カルシウムナノ
粒子、二酸化ケイ素ナノ粒子、ナノ結晶微粒子、半導体ナノ微粒子、ポリ(D‐アルギニ
ン)、ゾル‐ゲル、ナノデンドリマー、デンプンベースの送達システム、ミセル、乳剤、
ニオソーム、マルチドメインブロックポリマー(ビニルポリマー、ポリプロピルアクリル
酸ポリマー、dynamic polyconjugate)、乾燥粉末製剤、プラスミ
ド、ウイルス、リン酸カルシウムヌクレオチド、アプタマー、ペプチド及び他のベクター
タグが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
【0095】
リポソーム送達媒体
いくつかの実施形態において、適切な送達媒体は、リポソーム送達媒体、例えば脂質ナ
ノ粒子である。本明細書中で使用する場合、脂質ナノ粒子などのリポソーム送達媒体は、
通常、1つ以上の二重層の膜によって外部媒質から隔離された内部水性空間を備えた極小
の小胞として特徴付けられる。リポソームの二重層膜は、通常、空間的に分離した親水性
及び疎水性ドメインを有する合成または天然起源の脂質などの両親媒性分子によって形成
される(Lasic,Trends Biotechnol.,16:307‐321,
1998)。リポソームの二重層膜は、両親媒性ポリマー及び界面活性剤(例えば、ポリ
メロソーム(polymerosome)、ニオソームなど)によって形成することもで
きる。本発明の文脈において、リポソーム送達媒体は、一般的には、所望のmRNAを標
的細胞または組織に輸送するのに役立つ。
【0096】
カチオン性脂質
いくつかの実施形態において、リポソームは、1つ以上のカチオン性脂質を含み得る。
本明細書中で使用する語句「カチオン性脂質」とは、選択したpH、例えば生理学的pH
などにおいて、正味の正電荷を有する多くの脂質種のいずれかを指す。いくつかのカチオ
ン性脂質が文献に記載されており、その多くは市販されている。本発明の組成物及び方法
における使用に特に適したカチオン性脂質として、国際特許公開WO2010/0535
72(特に、段落[00225]に記載されているCI2‐200)及びWO2012/
170930に記載されているものが挙げられ、これらの文献は、参照として本明細書に
援用する。特定の実施形態では、本発明の組成物及び方法は、2012年3月29日に出
願された米国仮特許出願第61/617,468号(本明細書中に参照として援用する)
に記載のイオン化可能なカチオン性脂質、例えば(15Z,18Z)‐N,N‐ジメチル
‐6‐(9Z,12Z)‐オクタデカ‐9,12‐ジエン‐1‐イル)テトラコサ‐15
,18‐ジエン‐1‐アミン(HGT5000)、(15Z,18Z)‐N,N‐ジメチ
ル‐6‐((9Z,12Z)‐オクタデカ‐9,12‐ジエン‐1‐イル)テトラコサ‐
4,15,18‐トリエン‐1‐アミン(HGT5001)、及び(15Z,18Z)‐
N,N‐ジメチル‐6‐((9Z,12Z)‐オクタデカ‐9,12‐ジエン‐1‐イル
)テトラコサ‐5,15,18‐トリエン‐1‐アミン(HGT5002)などを含む脂
質ナノ粒子を利用する。
【0097】
いくつかの実施形態では、提供するリポソームは、WO2013/063468、及び
本出願と同時に出願された「メッセンジャーRNAの送達のための脂質製剤」と題する米
国仮出願に記載されているカチオン性脂質を含み、これら両方の文献は、参照として本明
細書に援用する。
【0098】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、式I‐c1‐a:
【化4】

、の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含み、式中:
各Rは独立して水素またはC1‐3アルキルであり;
各qは独立して2~6であり;
各R’は独立して水素またはC1‐3アルキルであり;
及び、各Rは独立してC8‐12アルキルである。
【0099】
いくつかの実施形態では、各Rは独立して水素、メチルまたはエチルである。いくつ
かの実施形態では、各Rは独立して水素またはメチルである。いくつかの実施形態では
、各Rは水素である。
【0100】
いくつかの実施形態では、各qは独立して3~6である。いくつかの実施形態では、各
qは独立して3~5である。いくつかの実施形態では、各qは4である。
【0101】
いくつかの実施形態では、各R’は独立して水素、メチルまたはエチルである。いくつ
かの実施形態では、各R’は独立して水素またはメチルである。いくつかの実施形態では
、各R’は独立して水素である。
【0102】
いくつかの実施形態では、各Rは独立してC8‐12アルキルである。いくつかの実
施形態では、各Rは独立してn‐C8‐12アルキルである。いくつかの実施形態では
、各Rは独立してC9‐11アルキルである。いくつかの実施形態では、各Rは独立
してn‐C9‐11アルキルである。いくつかの実施形態では、各Rは独立してC10
アルキルである。いくつかの実施形態では、各Rは独立してn‐C10アルキルである
【0103】
いくつかの実施形態では、各Rは、独立して水素またはメチルであり;各qは、独立
して3~5であり;各R’は、独立して水素またはメチルであり;各Rは、独立してC
8‐12アルキルである。
【0104】
いくつかの実施形態では、各Rは水素であり;各qは独立して3~5であり;各R’
は水素であり;及び各Rは独立してC8‐12アルキルである。
【0105】
いくつかの実施形態では、各Rは水素であり;各qは4であり;各R’は水素であり
;各Rは独立してC8‐12アルキルである。
【0106】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、式I‐g:
【化5】

、の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含み、式中、各Rは独立してC8‐12
アルキルである。いくつかの実施形態では、各Rは独立してn‐C8‐12アルキルで
ある。いくつかの実施形態では、各Rは独立してC9‐11アルキルである。いくつか
の実施形態では、各Rは独立してn‐C9‐11アルキルである。いくつかの実施形態
では、各Rは独立してC10アルキルである。いくつかの実施形態では、各Rはn‐
10アルキルである。
【0107】
特定の実施形態において、提供するリポソームは、カチオン性脂質cKK‐E12、す
なわち(3,6‐ビス(4‐(ビス(2‐ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)ピペラ
ジン‐2,5‐ジオン)を含む。cKK‐E12の構造を以下に示す:
【化6】
【0108】
いくつかの実施形態において、1つ以上のカチオン性脂質は、N‐[1‐(2,3‐ジ
オレイルオキシ)プロピル]‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロライドすなわち
「DOTMA」であり得る(Feigner et al.(Proc.Nat’l A
cad.Sci.84,7413(1987);U.S.Pat.No.4,897,3
55)。DOTMAは、単独で製剤化することができるか、または中性脂質、ジオレオイ
ルホスファチジルエタノールアミンすなわち「DOPE」もしくは他のカチオン性もしく
は非カチオン性脂質と組み合わせて、リポソーム輸送小胞または脂質ナノ粒子内に入れる
ことができ、そのようなリポソームを用いて標的細胞への核酸の送達を増強することがで
きる。他の適切なカチオン性脂質として、例えば5‐カルボキシスペルミルグリシンジオ
クタデシルアミドすなわち「DOGS」、2,3‐ジオレイルオキシ‐N‐[2(スペル
ミン‐カルボキサミド)エチル]‐N,N‐ジメチル‐1‐プロパンアミニウムすなわち
「DOSPA」(Behr et al. Proc.Nat.’l Acad.Sci
.86,6982(1989);U.S.Pat.No.5,171,678;U.S.
Pat.No.5,334,761)、1,2‐ジオレオイル‐3‐ジメチルアンモニウ
ム‐プロパンすなわち「DODAP」、1,2‐ジオレオイル‐3‐トリメチルアンモニ
ウム‐プロパンすなわち「DOTAP」が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するもの
ではない。
【0109】
さらなるカチオン性脂質の例として、1,2‐ジステアリルオキシ‐N,N‐ジメチル
‐3‐アミノプロパンすなわち「DSDMA」、1,2‐ジオレイルオキシ‐N,N‐ジ
メチル‐3‐アミノプロパンすなわち「DODMA」、1,2‐ジリノレイオキシ‐N,
N‐ジメチル‐3‐アミノプロパンすなわち「DLinDMA」、1,2‐ジリノレニル
オキシ‐N,N‐ジメチル‐3‐アミノプロパンすなわち「DLenDMA」、N‐ジオ
レイル‐N,N‐ジメチルアンモニウムクロライドすなわち「DODAC」、N,N‐ジ
ステアリル‐N,N‐ジメチルアンモニウムブロマイドすなわち「DDAB」、N‐(1
,2‐ジミリスチルオキシプロパ‐3‐イル)‐N,N‐ジメチル‐N‐ヒドロキシエチ
ルアンモニウムブロマイドすなわち「DMRIE」、3‐ジメチルアミノ‐2‐(コレス
タ‐5‐エン‐3‐β‐オキシブタン‐4‐オキシ)‐1‐(cis,cis‐9,12
‐オクタデカジエンオキシ)プロパンすなわち「CLinDMA」、2‐[5’‐(コレ
スタ‐5‐エン‐3‐β‐オキシ)‐3’‐オキサペントキシ)‐3‐ジメチル‐1‐1
‐(cis,cis‐9’,1‐2’‐オクタデカジエンオキシ)プロパンまたは「Cp
LinDMA」、N,N‐ジメチル‐3,4‐ジオレイルオキシベンジルアミンすなわち
「DMOBA」、1,2‐N,N’‐ジオレイルカルバミル‐3‐ジメチルアミノプロパ
ンすなわち「DOcarbDAP」、2,3‐ジリノレオイルオキシ‐N,N‐ジメチル
プロピルアミンすなわち「DLinDAP」、1,2‐N,N’‐ジリノレイルカルバミ
ル‐3‐ジメチルアミノプロパンすなわち「DLincarbDAP」、1,2‐ジリノ
レオイルカルバミル‐3‐ジメチルアミノプロパンすなわち「DLinCDAP」、2,
2‐ジリノレイル‐4‐ジメチルアミノメチル‐[1,3]‐ジオキソランすなわち「D
Lin‐‐DMA」、2,2‐ジリノレイル‐4‐ジメチルアミノエチル‐[1,3]‐
ジオキソランすなわち「DLin‐K‐XTC2‐DMA」、及び2‐(2,2‐ジ((
9Z,12Z)‐オクタデカ‐9,11‐ジエン‐1‐イル)‐1,3‐ジオキソラン‐
4‐イル)‐N,N‐ジメチルエタンアミン(DLin‐KC2‐DMA))(WO20
10/042877;Semple et al.,Nature Biotech.2
8:172‐176(2010)参照)、またはそれらの混合物が挙げられる。(Hey
es,J.,et al.,J Controlled Release 107:27
6‐287(2005);Morrissey,DV.,et al.,Nat.Bio
technol.23(8):1003‐1007(2005);PCT Public
ation WO2005/121348A1)。いくつかの実施形態において、カチオ
ン性脂質の1つ以上は、イミダゾール、ジアルキルアミノ、またはグアニジニウム部分の
うちの少なくとも1つを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、1つ以上のカチオン性脂質は、XTC(2,2‐ジリノレイ
(Dilinoley)1‐4‐ジメチルアミノエチル‐1‐[1,3]‐ジオキソラン
)、MC3(((6Z,9Z,28Z,31Z)‐ヘプタトリアコンタ‐6,9,28,
31‐テトラエン‐19‐イル 4‐(ジメチルアミノ)ブタノエート)、ALNY‐1
00((3aR,5s,6aS)‐N,N‐ジメチル‐2,2‐ジ((9Z,12Z)‐
オクタデカ‐9,12‐ジエニル)テトラヒドロ‐3aH‐シクロペンタ[d][1,3
]ジオキソール‐5‐アミン))、NC98‐5(4,7,13‐トリス(3‐オキソ‐
3‐(ウンデシルアミノ)プロピル)‐N1,N16‐ジウンデシル‐4,7,10,1
3‐テトラアザヘキサデカン‐1,16‐ジアミド)、DODAP(1,2‐ジオイル‐
3‐ジメチルアンモニウムプロパン)、HGT4003(WO2012/170889、
この文献の内容は、その全体を参照として本明細書に援用する)、ICE(WO2011
/068810、この文献の内容は、その全体を参照として本明細書に援用する)、HG
T5000(米国仮特許出願第61/617,468号、この文献の内容は、その全体を
参照として本明細書に援用する)またはHGT5001(cisまたはtrans)(仮
特許出願第61/617,468号)、WO2010/053572に開示されているよ
うなアミノアルコールリピドイド、DOTAP(1,2‐ジオレイル‐3‐トリメチルア
ンモニウムプロパン)、DOTMA(1,2‐ジ‐O‐オクタデセニル‐3‐トリメチル
アンモニウムプロパン)、DLinDMA(Heyes,J.;Palmer,L.;B
remner,K.;MacLachlan,I.“Cationic lipid s
aturation influences intracellular deliv
ery of encapsulated nucleic acids”J.Cont
r.Rel.2005,107,276‐287)、DLin‐KC2‐DMA(Sem
ple,S.C.et al.“Rational Design of Cation
ic Lipids for siRNA Delivery”Nature Biot
ech.2010,28,172‐176)、C12‐200(Love,K.T.et
al.“Lipid‐like materials for low‐dose i
n vivo gene silencing”PNAS 2010,107,1864
‐1869)から選択してもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、リポソーム中のカチオン性脂質の割合は、10%超、20%
超、30%超、40%超、50%超、60%超、または70%超であってもよい。いくつ
かの実施形態では、カチオン性脂質(複数可)は、重量比でリポソームの約30~50%
(例えば、約30~45%、約30~40%、約35~50%、約35~45%、または
約35~40%)を占める。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(例えば、cKK
‐E12)は、モル比でリポソームの約30%、約35%、約40%、約45%、または
約50%を占める。
【0112】
非カチオン性/ヘルパー脂質
いくつかの実施形態において、提供するリポソームは、1つ以上の非カチオン性(「ヘ
ルパー」)脂質を含有する。本明細書中で使用する場合、語句「非カチオン性脂質」とは
、任意の中性、双性イオン性または陰イオン性の脂質を指す。本明細書中で使用する場合
、語句「アニオン性脂質」とは、選択したH、例えば生理学的pHなどにおいて正味の負
電荷を有する多数の脂質種のいずれかを指す。非カチオン性脂質として、ジステアロイル
ホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセ
ロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレ
オイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファ
チジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル‐ホスファチジルエタノールアミン
(POPE)、ジオレオイル‐ホスファチジルエタノールアミン4‐(N‐マレイミドメ
チル)‐シクロヘキサン‐1‐カルボキシレート(DOPE‐mal)、ジパルミトイル
ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン
(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16‐O
‐モノメチルPE、16‐O‐ジメチルPE、18‐1‐trans‐PE、1‐ステア
ロイル‐2‐オレオイル‐ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、またはそれら
の混合物が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
【0113】
いくつかの実施形態では、このような非カチオン性脂質は単独で使用し得るが、好まし
くは他の賦形剤、例えばカチオン性脂質と組み合わせて使用する。いくつかの実施形態で
は、非カチオン性脂質は、リポソーム中に存在する総脂質の約5%~約90%、または約
10%~約70%のモル比を含み得る。いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質は、
中性脂質、すなわち、組成物を製剤化及び/または投与する条件下で正味の電荷を有さな
い脂質である。いくつかの実施形態では、リポソーム中の非カチオン性脂質の割合は、5
%超、10%超、20%超、30%超、または40%超であってもよい。
【0114】
コレステロール系脂質
いくつかの実施形態では、提供するリポソームは、1つ以上のコレステロール系脂質を
含む。例えば、適切なコレステロール系カチオン性脂質として、例えばDC‐Choi(
N,N‐ジメチル‐N‐エチルカルボキシアミドコレステロール)、1,4‐ビス(3‐
N‐オレイルアミノ‐プロピル)ピペラジン(Gao,et al. Biochem.
Biophys.Res.Comm.179,280(1991);Wolf et a
l. BioTechniques 23,139(1997);U.S.Pat.No
.5,744,335)、またはICEが挙げられる。いくつかの実施形態では、コレス
テロール系脂質は、リポソーム中に存在する全脂質の約2%~約30%、または約5%~
約20%のモル比を含み得る。いくつかの実施形態において、脂質ナノ粒子中のコレステ
ロール系脂質の割合は、5,%超、10%、20%超、30%超、または40%超であっ
てもよい。
【0115】
PEG化脂質
いくつかの実施形態において、提供するリポソームは、1種以上のPEG化脂質を含む
。例えば、N‐オクタノイル‐スフィンゴシン‐1‐[スクシニル(メトキシポリエチレ
ングリコール)‐2000](C8 PEG‐2000セラミド)をはじめとするポリエ
チレングリコール(PEG)修飾リン脂質、及び誘導体化セラミド(PEG‐CER)な
どの誘導体化脂質を、1種以上のカチオン性の脂質、及びいくつかの実施形態においては
他の脂質と組み合わせて用いて、共にリポソームを構成することも本発明は想定している
。想定されるPEG修飾脂質として、鎖長C~C20のアルキル鎖(複数可)を有し、
脂質に共有結合した最大鎖長5kDaのポリエチレングリコール鎖が挙げられるが、必ず
しもこれに限定するものではない。いくつかの実施形態では、PEG修飾またはPEG化
脂質は、PEG化コレステロールまたはPEG‐2Kである。このような成分の添加は、
複雑な凝集を防止する可能性があり、循環寿命を引き延ばし、標的細胞への脂質‐核酸組
成物の送達を高める手段を提供し得るが(Klibanov et al.(1990)
FEBS Letters,268(1):235‐237)、またはin vivoで
製剤から速やかに交換されるように成分を選択してもよい(米国特許第5,885,61
3号参照)。
【0116】
いくつかの実施形態では、特に有用な交換可能な脂質は、より短いアシル鎖(例えば、
14またはC18)を有するPEG‐セラミドである。本発明のPEG修飾リン脂質及
び誘導体化脂質は、リポソーム中に存在する全脂質の約0%~約15%、約0.5%~約
15%、約1%~約15%、約4%~約10%または約2%のモル比を有してもよい。
【0117】
様々な実施形態によれば、脂質ナノ粒子を含むカチオン性脂質、非カチオン性脂質及び
/またはPEG修飾脂質の選択ならびにこれらの脂質同士の相対モル比は、選択した脂質
(複数可)の特徴、目的の標的細胞の性質、送達しようとするmRNAの特徴に応じたも
のとなる。さらなる考慮事項として、例えば、アルキル鎖の飽和度、ならびに選択した脂
質(複数可)のサイズ、電荷、pH、pKa、膜融合性及び毒性が挙げられる。したがっ
て、これらに応じてモル比を調整してもよい。
【0118】
ポリマー
いくつかの実施形態において、ポリマーを担体として単独で、または本明細書に記載の
様々な脂質を含む他の担体と組み合わせて用いて、適切な送達媒体を製剤化する。したが
って、いくつかの実施形態では、本明細書中で用いるリポソーム送達媒体は、ポリマーを
含有するナノ粒子も包含する。適切なポリマーとして、例えば、ポリアクリレート、ポリ
アルキルシアノアクリレート、ポリラクチド、ポリラクチド‐ポリグリコリドコポリマー
、ポリカプロラクトン、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸、コラーゲン
、キトサン、シクロデキストリン、プロタミン、PEG化プロタミン、PLL、PEG化
PLL及びポリエチレンイミン(PEI)を挙げてもよい。PEIが存在する場合、それ
は10~40kDaの範囲の分子量の分枝PEI、例えば25kDa分枝PEI(シグマ
#408727)などであってもよい。
【0119】
本発明に好適なリポソームには、本明細書に記載のカチオン性脂質、非カチオン性脂質
、コレステロール脂質、PEG化脂質及び/またはポリマーのいずれか1つ以上を様々な
比率で含めてもよい。非限定的な例として、好適なリポソーム製剤には、cKK‐E12
、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2K;C12‐200、DOPE、コレ
ステロール及びDMG‐PEG2K;HGT4003、DOPE、コレステロール及びD
MG‐PEG2K;またはICE、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kか
ら選択される組合せを含めてもよい。
【0120】
様々な実施形態において、カチオン性脂質(例えば、cKK‐E12、C12‐200
、ICE、及び/またはHGT4003)は、リポソームの約30~60%(例えば、約
30~55%、約30~50%、約30~約45%、約30~40%、約35~50%、
約35~45%、または約35~40%)のモル比を占める。いくつかの実施形態では、
カチオン性脂質(例えば、cKK‐E12、C12‐200、ICE、及び/またはHG
T4003)の割合は、リポソームの約30%、約35%、約40%、約45%、約50
%、約55%、または約60%以上のモル比を占める。
【0121】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(複数可)と、非カチオン性脂質(複数可)
と、コレステロール系脂質(複数可)と、PEG化脂質(複数可)との比は、それぞれ約
30~60:25~35:20~30:1~15であってもよい。いくつかの実施形態で
は、カチオン性脂質(複数可)と、非カチオン性脂質(複数可)と、コレステロール系脂
質(複数可)と、PEG化脂質(複数可)との比は、それぞれおよそ40:30:20:
10であってもよい。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(複数可)と、非カチオ
ン性脂質(複数可)と、コレステロール系脂質(複数可)と、PEG化脂質(複数可)と
の比は、それぞれおよそ40:30:25:5であってもよい。いくつかの実施形態では
、カチオン性脂質(複数可)と、非カチオン性脂質(複数可)と、コレステロール系脂質
(複数可)と、PEG化脂質(複数可)との比は、それぞれおよそ40:32:25:3
であってもよい。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質(複数可)と、非カチオン性
脂質(複数可)と、コレステロール系脂質(複数可)と、PEG化脂質(複数可)との比
は、それぞれおよそ50:25:20:5であってもよい。
【0122】
mRNAの合成
本発明によるmRNAは、様々な公知の方法のいずれかに従って合成してもよい。例え
ば、本発明によるmRNAを、in vitro転写法(IVT)によって合成してもよ
い。簡単に説明すると、IVTは通常、プロモーターを含む直鎖または環状DNA鋳型、
リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTT及びマグネシウムイオンを含んでもよい緩衝
系、ならびに、適切な、RNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7またはSP6 RNA
ポリメラーゼ)、DNAseI、ピロホスファターゼ、及び/またはRNAse阻害剤を
用いて実施する。その正確な条件は、具体的用途に応じて異なる。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明によるmRNAの調製のために、DNA鋳型をin
vitroで転写する。適切なDNA鋳型は通常、in vitro転写用のプロモータ
ー、例えばT3、T7またはSP6プロモーターを備え、その下流に所望のmRNAの所
望のヌクレオチド配列、及び終止シグナルを有する。
【0124】
本発明による所望のmRNA配列(複数可)は、標準的な方法を用いて決定し、DNA
鋳型に組み込んでもよい。例えば、所望のアミノ酸配列(例えば、酵素配列)から開始し
、縮重遺伝暗号に基づいて仮想逆翻訳を実施する。次いで、最適化アルゴリズムを用いて
適切なコドンを選択してもよい。一般的には、G/C含量を最適化して、一方では可能な
限り高いG/C含量を達成し、他方ではコドン使用頻度に応じてtRNAの頻度を可能な
限り考慮することができる。最適化RNA配列は、例えば、適切なディスプレイ装置を利
用して確立及び表示し、元の(野生型)配列と比較することができる。二次構造を解析し
て、RNAの安定化特性及び不安定化特性、またはそれぞれに該当する領域を計算するこ
ともできる。
【0125】
修飾mRNA
いくつかの実施形態では、本発明によるmRNAは、未修飾mRNAまたは修飾mRN
Aとして合成してもよい。一般的には、mRNAを修飾して安定性を高める。mRNAの
修飾は、例えば、RNAのヌクレオチドの修飾を含み得る。したがって、本発明による修
飾mRNAは、例えば、骨格修飾、糖修飾または塩基修飾を含み得る。いくつかの実施形
態では、mRNAは、天然のヌクレオチド及び/またはヌクレオチドアナログ(修飾ヌク
レオチド)から合成してもよく、これらの一例として、プリン(アデニン(A)、グアニ
ン(G))またはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))、なら
びにプリン及びピリミジンの修飾ヌクレオチドアナログまたは誘導体として、例えば、1
‐メチルアデニン、2‐メチルアデニン、2‐メチルチオ‐N‐6‐イソペンテニルアデ
ニン、N6‐メチル‐アデニン、N6‐イソペンテニル‐アデニン、2‐チオ‐シトシン
、3‐メチル‐シトシン、4‐アセチル‐シトシン、5‐メチル‐シトシン、2,6‐ジ
アミノプリン、1‐メチル‐グアニン、2‐メチル‐グアニン、2,2‐ジメチル‐グア
ニン、7‐メチル‐グアニン、イノシン、1‐メチル‐イノシン、プソイドウラシル(5
‐ウラシル)、ジヒドロ‐ウラシル、2‐チオ‐ウラシル、4‐チオ‐ウラシル、5‐カ
ルボキシメチルアミノメチル‐2‐チオ‐ウラシル、5‐(カルボキシヒドロキシメチル
)‐ウラシル、5‐フルオロ‐ウラシル、5‐ブロモ‐ウラシル、5‐カルボキシメチル
アミノメチル‐ウラシル、5‐メチル‐2‐チオ‐ウラシル、5‐メチル‐ウラシル、N
‐ウラシル‐5‐オキシ酢酸メチルエステル、5‐メチルアミノメチル‐ウラシル、5‐
メトキシアミノメチル‐2‐チオ‐ウラシル、5’‐メトキシカルボニルメチル‐ウラシ
ル、5‐メトキシ‐ウラシル、ウラシル‐5‐オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル‐5
‐オキシ酢酸(v)、1‐メチル‐プソイドウラシル、キューオシン(queosine
)、.β.‐D‐マンノシルキューオシン(mannosyl‐queosine)、ワ
イブトキソシン、及びホスホルアミド酸、チオリン酸エステル、ペプチド・ヌクレオチド
、メチルホスホン酸、7‐デアザグアノシン、5‐メチルシトシン並びにイノシンが挙げ
られるが、必ずしもこれらに限定するものではない。そのようなアナログの調製は、例え
ば、米国特許第4,373,071号、米国特許第4,401,796号、米国特許第4
,415,732号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,500,707
号、米国特許第4,668,777号、米国特許第4,973,679号、米国特許第5
,047,524号、米国特許第5,132,418号、米国特許第5,153,319
号、米国特許第5,262,530号及び同第5,700,642号の記載から、当業者
には公知であり、これらの開示内容は、参照としてその全体を本明細書に援用する。
【0126】
いくつかの実施形態において、mRNA(例えば、GAAをコードするmRNA)には
、RNA骨格修飾を含めてもよい。一般的には、骨格修飾は、RNAに含まれるヌクレオ
チドの骨格のリン酸を化学的に修飾する改変である。一般的な骨格修飾として、以下に限
定するものではないが、メチルホスホン酸基、メチルホスホルアミド酸基、ホスホルアミ
ド酸基、ホスホロチオエート基(例えば、シチジン5’‐O‐(1‐チオホスフェート)
)、ボラノホスフェート、正に帯電したグアニジニウム基などからなる群からの修飾が挙
げられ、これはホスホジエステル結合を他のアニオン性基、カチオン性基または中性基で
置換することを意味する。
【0127】
いくつかの実施形態において、mRNA(例えば、GAAをコードするmRNA)には
、糖修飾を含めてもよい。一般的な糖修飾は、ヌクレオチドの糖の化学修飾であり、以下
に限定するものではないが、2’‐デオキシ‐2’‐フルオロ‐オリゴリボヌクレオチド
(2’‐フルオロ‐2’‐デオキシシチジン5’‐三リン酸、2’‐フルオロ‐2’‐デ
オキシウリジン5’‐三リン酸)、2’‐デオキシ‐2’‐デアミン(deamine)
‐オリゴリボヌクレオチド(2’‐アミノ‐2’‐デオキシシチジン5’‐三リン酸、2
’‐アミノ‐2’‐デオキシウリジン5’‐三リン酸)、2’‐O‐アルキルオリゴリボ
ヌクレオチド、2’‐デオキシ‐2’‐C‐アルキルオリゴリボヌクレオチド(2’‐O
‐メチルシチジン5’‐三リン酸、2’‐メチルウリジン5’‐三リン酸)、2’‐C‐
アルキルオリゴリボヌクレオチド、及びそれらの異性体(2’‐アラシチジン5’‐三リ
ン酸、2’‐アラウリジン5’‐三リン酸)、または三リン酸アジド(2’‐アジド‐2
’‐デオキシシチジン5’‐三リン酸、2’‐アジド‐2’‐デオキシウリジン5’‐三
リン酸)からなる群から選ばれる糖修飾を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、mRNA(例えば、GAAをコードするmRNA)には、ヌ
クレオチドの塩基の修飾(塩基修飾)を含めてもよい。塩基修飾を含む修飾ヌクレオチド
は、塩基修飾ヌクレオチドとも呼ばれる。そのような塩基修飾ヌクレオチドの例として、
2‐アミノ‐6‐クロロプリンリボシド5’‐三リン酸、2‐アミノアデノシン5’‐三
リン酸、2‐チオシチジン5’‐三リン酸、2‐チオウリジン5’‐三リン酸、4‐チオ
ウリジン5’‐三リン酸、5‐アミノアリルシチジン5’‐三リン酸、5‐アミノアリル
ウリジン5’‐三リン酸、5‐ブロモシチジン5’‐三リン酸、5‐ブロモウリジン5’
‐三リン酸、5‐ヨードシチジン5’‐三リン酸、5‐ヨードウリジン5’‐三リン酸、
5‐メチルシチジン5’‐三リン酸、5‐メチルウリジン5’‐三リン酸、6‐アザシチ
ジン5’‐三リン酸、6‐アザウリジン5’‐三リン酸、6‐クロロプリンリボシド5’
‐三リン酸、7‐デアザアデノシン5’‐三リン酸、7‐デアザグアノシン5’‐三リン
酸、8‐アザアデノシン5’‐三リン酸、8‐アジドアデノシン5’‐三リン酸、ベンゾ
イミダゾールリボシド5’‐三リン酸、N1‐メチルアデノシン5’‐三リン酸、N1‐
メチルグアノシン5’‐三リン酸、N6‐メチルアデノシン5’‐三リン酸、O6‐メチ
ルグアノシン5’‐三リン酸、プソイドウリジン5’‐三リン酸、ピューロマイシン5’
‐三リン酸またはキサントシン5’‐三リン酸が挙げられるが、必ずしもこれらに限定す
るものではない。
【0129】
一般的に、mRNA合成には、N末端(5’)への「キャップ」付加、及びC末端(3
’)への「テール」付加が含まれる。キャップの存在は、多くの真核細胞に認められるヌ
クレアーゼに対する耐性を与える上で重要である。「テール」の存在は、mRNAをエキ
ソヌクレアーゼによる分解から保護するのに役立つ。
【0130】
したがって、いくつかの実施形態では、mRNA(例えば、GAAをコードするmRN
A)は5’末端キャップ構造を含む。5’末端キャップは一般的に、以下のように付加さ
れる:まず、RNA末端ホスファターゼが、5’ヌクレオチドから末端リン酸基のうちの
1つを除去し、2つの末端リン酸基を残し;次いで、グアニリルトランスフェラーゼが、
グアノシン三リン酸(GTP)を末端リン酸基に付加し、5’5’5三リン酸エステル結
合を生成し;そして、グアニンの7位の窒素を、メチルトランスフェラーゼがメチル化す
る。キャップ構造の例として、m7G(5’)ppp(5’(A,G(5’)ppp(5
’)A及びG(5’)ppp(5’)Gが挙げられるが、必ずしもこれらに限定するもの
ではない。
【0131】
いくつかの実施形態では、mRNA(例えば、GAAをコードするmRNA)は、3’
ポリ(A)テール構造を含む。mRNAの3’末端にあるポリAテールは、一般的に、約
10~300アデノシンヌクレオチド(配列番号4)(例えば、約10~200アデノシ
ンヌクレオチド、約10~150アデノシンヌクレオチド、約10~100アデノシンヌ
クレオチド、約20~70アデノシンヌクレオチド、または約20~60アデノシンヌク
レオチド)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、3’ポリ(C)テール構造を
含む。mRNAの3’末端の好適なポリCテールは、一般的に、約10~200シトシン
ヌクレオチド(配列番号5)(例えば、約10~150シトシンヌクレオチド、約10~
100シトシンヌクレオチド、約20~70シトシンヌクレオチド、約20~60シトシ
ンヌクレオチド、または約10~40シトシンヌクレオチド)を含む。ポリCテールを、
ポリAテールに付加してもよく、または、ポリAテールと置き換えてもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、mRNAは、5’及び/または3’非翻訳領域を含む。いく
つかの実施形態では、5’非翻訳領域は、mRNAの安定性または翻訳に影響を与える1
種以上のエレメント、例えば、鉄応答性エレメントを含む。いくつかの実施形態では、5
’非翻訳領域は、約50~500ヌクレオチドの鎖長であってもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、1つ以上のポリアデニル化シグナル、m
RNAの細胞内位置安定性に影響を与えるタンパク質の結合部位、または1つ以上のmi
RNA結合部位を含む。いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、50~500ヌク
レオチド以上の鎖長であってもよい。
【0134】
キャップ構造
いくつかの実施形態では、mRNAは、5’末端キャップ構造を含む。5’末端キャッ
プは、一般的に、以下のように付加される:まず、RNA末端ホスファターゼが、5’ヌ
クレオチドから末端リン酸基の1つを除去し、2つの末端リン酸基を残す;次いで、グア
ニリルトランスフェラーゼが、グアノシン三リン酸(GTP)を末端リン酸基に付加し、
5’5’5三リン酸エステル結合を生成する;そして、グアニンの7位の窒素を、メチル
トランスフェラーゼがメチル化する。キャップ構造の例として、m7G(5’)ppp(
5’(A、G(5’)ppp(5’)A及びG(5’)ppp(5’)Gが挙げられるが
、必ずしもこれらに限定するものではない。
【0135】
天然のキャップ構造は、一次転写ヌクレオチドの5’末端に三リン酸架橋により結合し
ている7‐メチルグアノシンを含み、これが、mG(5’)ppp(5’)N(Nは任
意のヌクレオシド)のジヌクレオチドキャップとなる。in vivoでは、酵素がキャ
ップ付加を行う。キャップは、細胞核内で付加され、酵素グアニリルトランスフェラーゼ
が、これを触媒する。RNAの5’末端へのキャップ付加は、転写開始直後に起こる。末
端のヌクレオシドは通常、グアノシンであり、他の全ヌクレオチドに対し逆方向、すなわ
ち、G(5’)ppp(5’)GpNpNpとなっている。
【0136】
in vitro転写で生成する一般的なmRNAのキャップはmG(5’)ppp
(5’)Gであり、これは、in vitroでのT7またはSP6 RNAポリメラー
ゼによる転写において、5’末端にキャップ構造を有するRNAを得るためにジヌクレオ
チドキャップとして用いられてきた。キャップ付加したmRNAをin vitroで合
成する最も一般的な方法では、予め形成したmG(5’)ppp(5’)G(「m
pppG」)型のジヌクレオチドを転写開始因子として使用する。
【0137】
これまで、in vitro翻訳実験で用いる合成ジヌクレオチドキャップの通常型は
、アンチリバースキャップアナログ(「ARCA」)または修飾ARCAであり、一般的
に、2’位または3’位のOH基が‐OCHで置換されている修飾キャップアナログで
ある。
【0138】
さらなるキャップアナログとして、mGpppG、mGpppA、mGpppC
からなる群から選択される化学構造;非メチル化キャップアナログ(例えば、GpppG
);ジメチル化キャップアナログ(例えば、m2,7GpppG)、トリメチル化キャッ
プアナログ(例えば、m2,2,7GpppG)、左右対称ジメチル化キャップアナログ
(例えば、mGpppmG)、またはアンチリバースキャップアナログ(例えば、A
RCA;m7,2’OmeGpppG、m72’dGpppG、m7,3’OmeGpp
pG、m7,3’dGpppG及びそれらの四リン酸誘導体)(例えば、Jemieli
ty,J.et al.,“Novel ‘anti‐reverse’ cap an
alogs with superior translational proper
ties”,RNA,9:1108‐1122(2003)参照)が挙げられるが、必ず
しもこれらに限定するものではない。
【0139】
いくつかの実施形態では、好適なキャップは、一次転写ヌクレオチドの5’末端に三リ
ン酸架橋により結合している7‐メチルグアニル酸(「mG」)であり、これが、m
G(5’)ppp(5’)N(Nは任意のヌクレオシド)となる。本発明の実施形態にお
いて用いるmGキャップの好ましい実施形態はmG(5’)ppp(5’)Gである
【0140】
いくつかの実施形態では、キャップはCap0構造である。Cap0構造には、塩基1
及び2に結合しているリボースの2’‐O‐メチル残基がない。いくつかの実施形態では
、キャップはCap1構造である。Cap1構造は、塩基2に2’‐O‐メチル残基を有
する。いくつかの実施形態では、キャップはCap2構造である。Cap2構造は、塩基
2と3の両方に結合した2’‐O‐メチル残基を有する。
【0141】
多種多様なmGキャップアナログが当該技術分野で公知であり、その多くが市販され
ている。これらには、上記のmGpppG、ならびに、ARCA3’‐OCH及び2
’‐OCHキャップアナログが含まれる(Jemielity,J.et al.,R
NA,9:1108‐1122(2003))。本発明の実施形態に用いるさらなるキャ
ップアナログとして、N7‐ベンジル化ジヌクレオシド四リン酸アナログ(Grudzi
en,E.et al.,RNA,10:1479‐1487(2004)に記載)、チ
オリン酸エステルキャップアナログ(Grudzien‐Nogalska,E.,et
al.,RNA,13:1745‐1755(2007)に記載)、ならびに米国特許
第8,093,367号及び第8,304,529号に記載のキャップアナログ(ビオチ
ン化キャップアナログを含む)が挙げられ、これらの文献は参照として本明細書に援用す
る。
【0142】
テール構造
一般的に、「テール」の存在はmRNAをエキソヌクレアーゼによる分解から保護する
のに役立つ。ポリAテールは、天然のメッセンジャー及び合成のセンスRNAを安定化さ
せると考えられている。したがって、ある実施形態では、長いポリAテールをmRNA分
子に付加し、それによりRNAをより安定化することができる。ポリAテールは、当該技
術分野で認められている多種多様な技術を用いて付加することができる。例えば、合成R
NAまたはin vitro転写したRNAに、ポリAポリメラーゼを用いて長いポリA
テールを付加することができる(Yokoe,et al.Nature Biotec
hnology.1996;14:1252‐1256)。転写ベクターに長いポリAテ
ールをコードすることもできる。さらに、ポリAテールは、PCR産物から直接転写する
ことによって付加することができる。RNAリガーゼを用いて、ポリAをセンスRNAの
3’末端に連結してもよい(例えば、Molecular Cloning A Lab
oratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fr
itsch and Maniatis(Cold Spring Harbor La
boratory Press:1991 edition)参照)。
【0143】
いくつかの実施形態では、mRNAは、3’ポリ(A)テール構造を含む。一般的に、
ポリAテールの鎖長は、少なくとも約10、50、100、200、300、400、少
なくとも500ヌクレオチドであり得る(配列番号6)。いくつかの実施形態では、mR
NAの3’末端にあるポリAテールは、一般的に、約10~300アデノシンヌクレオチ
ド(配列番号4)(例えば、約10~200アデノシンヌクレオチド、約10~150ア
デノシンヌクレオチド、約10~100アデノシンヌクレオチド、約20~70アデノシ
ンヌクレオチド、または約20~60アデノシンヌクレオチド)を含む。いくつかの実施
形態では、mRNAは、3’ポリ(C)テール構造を含む。mRNAの3’末端にある好
適なポリCテールは、一般的に、約10~200シトシンヌクレオチド(配列番号5)(
例えば、約10~150シトシンヌクレオチド、約10~100シトシンヌクレオチド、
約20~70シトシンヌクレオチド、約20~60シトシンヌクレオチド、または約10
~40シトシンヌクレオチド)を含む。ポリCテールは、ポリAテールに付加してもよく
、または、ポリAテールと置き換えてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、ポリAテールまたはポリCテールの長さを調整して、本発明
の修飾センスmRNA分子の安定性を制御し、これにより、タンパク質の転写を制御する
。例えば、ポリAテールの鎖長はセンスmRNA分子の半減期に影響を与えるため、ポリ
Aテールの長さを調整してmRNAのヌクレアーゼ耐性を改変し、それによって、標的細
胞におけるポリヌクレオチド発現及び/またはポリペプチド産生の経時変化を制御するこ
とができる。
【0145】
5’及び3’非翻訳領域
いくつかの実施形態では、mRNAは、5’及び/または3’の非翻訳領域を含む。い
くつかの実施形態では、5’非翻訳領域は、mRNAの安定性または翻訳に影響を与える
1種以上のエレメント、例えば、鉄応答性エレメントを含む。いくつかの実施形態では、
5’非翻訳領域は、約50~500ヌクレオチドの鎖長であってもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、1つ以上のポリアデニル化シグナル、m
RNAの細胞内位置安定性に影響を与えるタンパク質の結合部位、または1つ以上のmi
RNA結合部位を含む。いくつかの実施形態では、3’非翻訳領域は、50~500ヌク
レオチド以上の鎖長であってもよい。
【0147】
例示的な3’及び/または5’UTR配列は、安定なmRNA分子(例えば、グロビン
、アクチン、GAPDH、チューブリン、ヒストン、またはクエン酸回路の酵素)に由来
し、センスmRNA分子の安定性を高めることができる。例えば、ヌクレアーゼ耐性の向
上及び/またはポリヌクレオチドの半減期の改善のために、5’UTR配列にCMV最初
期1(IE1)遺伝子の部分配列、またはその断片を含めてもよい。さらに意図するのは
、ポリヌクレオチドのさらなる安定化のために、ヒト成長ホルモン(hGH)をコードす
る配列、またはその断片を、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の3’末端または非
翻訳領域に含めることである。一般的に、これらの修飾により、ポリヌクレオチドの安定
性及び/または薬物動態特性(例えば、半減期)は、非修飾ポリヌクレオチドに比べて向
上し、これらの修飾はまた、例えば、そのようなポリヌクレオチドのin vivoヌク
レアーゼによる消化に対する耐性向上のためになされる修飾を含む。
【0148】
リポソームの形成
本発明の組成物に使用するためのリポソーム輸送媒体は、現在、当該技術分野で公知の
様々な技術により調製することができる。提供組成物に使用するためのリポソームは、現
在、当該技術分野で公知の様々な技術により調製することができる。例えば、適切な溶媒
に選択脂質を溶解させてその脂質を好適な容器または器の内壁に付着させ、その後、溶媒
を蒸発乾涸させて容器内側に薄膜を残すか、または噴霧乾燥させるなどの従来技術に従っ
て多重層リポソーム(MLV)を調製してもよい。次いで、容器に、ボルテックス撹拌と
ともに水相を加えてもよく、これによってMLVが形成する。その後、多重層リポソーム
を均質化、超音波処理または押出することによって、単層リポソーム(ULV)を形成す
ることができる。さらに、界面活性剤除去法によって単層リポソームを形成することがで
きる。
【0149】
ある実施形態では、提供組成物はリポソームを含み、ここで、mRNAはそのリポソー
ムの両面で会合するとともに、その同一リポソーム内に封入されている。例えば、本発明
の組成物の調製中に、カチオン性リポソームを静電相互作用によってmRNAと会合させ
てもよい。例えば、本発明の組成物の調製中に、カチオン性リポソームを静電相互作用に
よってmRNAと会合させてもよい。
【0150】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法は、mRNAをリポソーム内に封入
して含む。いくつかの実施形態では、同一のリポソーム内に1種以上のmRNA種を封入
してもよい。いくつかの実施形態では、異なる複数のリポソーム内に1種以上のmRNA
種を封入してもよい。いくつかの実施形態では、脂質組成、脂質成分のモル比、サイズ、
電荷(ゼータ電位)、標的リガンド及び/またはこれらの組合せが異なる1個以上のリポ
ソーム内にmRNAを封入する。いくつかの実施形態では、1個以上のリポソームは、カ
チオン性脂質、中性脂質、PEG修飾脂質及び/またはその組合せからなる組成が異なっ
ていてもよい。いくつかの実施形態では、1種以上のリポソームは、リポソーム作製に用
いるカチオン性脂質、中性脂質、コレステロール及びPEG修飾脂質のモル比が異なって
いてもよい。
【0151】
所望のmRNAをリポソームに組み込む方法はしばしば「充填」と呼ばれる。方法の一
例は、Lasic,et al.,FEBS Lett.,312:255‐258,1
992に記載されており、この文献は参照として本明細書に援用する。リポソームに組み
込んだ核酸は、完全または部分的に、リポソームの内部空間に位置するか、リポソーム二
重膜内に位置するか、またはリポソーム膜の外面に会合してもよい。核酸をリポソーム内
に組み込むことを本明細書中では「封入」とも呼び、ここで、核酸はその全体がリポソー
ムの内部空間内に含有されている。リポソームのような輸送媒体にmRNAを組み込む目
的は、核酸を分解する酵素もしくは化学薬品、及び/または核酸を短時間で排泄させる系
もしくは受容体を含有し得る環境から、しばしば核酸を保護するためである。したがって
、いくつかの実施形態では、好適な送達媒体は、自身が保有するmRNAの安定性を高め
、及び/または標的細胞または組織へのmRNAの送達を促進することができる。
【0152】
リポソームのサイズ
本発明の好適なリポソームは、様々なサイズで生成してもよい。いくつかの実施形態で
は、提供リポソームは、これまでに公知のmRNA封入リポソームより小さい場合がある
。いくつかの実施形態では、リポソームのサイズ縮小は、mRNA送達の高効率性に関連
している。リポソームの適切なサイズの選択には、標的とする細胞または組織の部位、及
び、ある程度、リポソーム作製の用途を考慮に入れてもよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、適切なサイズのリポソームを選択して、mRNAがコードす
る抗体の全身分配を促進する。いくつかの実施形態では、特定の細胞または組織へのmR
NAの形質移入を制限することが望ましい場合がある。例えば、肝細胞を標的にするには
、リポソームを、その大きさが肝臓の肝類洞内膜の内皮細胞層の小孔より小さくなるよう
なサイズにすることがあるが、そのような場合には、リポソームは、このような内皮細胞
の小孔を容易に通り抜け、標的とする肝細胞に到達することができると考えられる。
【0154】
別法または追加として、リポソームを、特定の細胞または組織への分配を制限するかま
たは明白に回避するのに十分な直径を有する大きさのリポソームとなるようにサイズ調整
してもよい。例えば、リポソームの大きさを肝類洞内膜の内皮細胞層の小孔より大きくし
て、肝細胞へのリポソーム分配を制限するようなサイズにしてもよい。
【0155】
いくつかの実施形態では、リポソームのサイズはリポソーム粒子の最長直径によって決
定する。いくつかの実施形態では、好適なリポソームは、サイズが約250nm以下(例
えば、約225nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、
75nm、または50nm以下)である。いくつかの実施形態では、好適なリポソームの
サイズは、約10~250nmの範囲(例えば、約10~225nm、10~200nm
、10~175nm、10~150nm、10~125nm、10~100nm、10~
75nm、または10~50nmの範囲)である。いくつかの実施形態では、好適なリポ
ソームのサイズは、約100~250nmの範囲(例えば、約100~225nm、10
0~200nm、100~175nm、100~150nmの範囲)である。いくつかの
実施形態では、好適なリポソームのサイズは、約10~100nmの範囲(例えば、約1
0~90nm、10~80nm、10~70nm、10~60nm、または10~50n
mの範囲)である。特定の実施形態では、好適なリポソームは、約100nm未満のサイ
ズを有する。
【0156】
リポソーム集団のサイズ制御には当該技術分野で公知の様々な別法が利用可能である。
そのようなサイズの制御方法は、米国特許第4,737,323号に記載されており、前
記文献を参照として本明細書に援用する。リポソーム懸濁液をバス型またはプローブ型超
音波処理で超音波処理すると、段階的にサイズが縮小し、直径約0.05μm未満の小さ
なULVを生成する。均一化法は、せん断エネルギーを利用して大きなリポソームを小さ
くするもう一つの方法である。一般的な均一化の手順では、MLVを標準的なエマルジョ
ン・ホモジナイザーに通し、選択したサイズ、一般的には、約0.1~0.5μmのリポ
ソームが得られるまで再循環させる。リポソームのサイズは、Bloomfield,A
nn.Rev.Biophys.Bioeng.,10:421‐150(1981)に
記載のような準弾性光散乱法(QELS)によって測定してもよく、前記文献を参照とし
て本明細書に援用する。形成したリポソームを超音波処理することによって平均リポソー
ム径は小さくなり得る。間欠的な超音波処理サイクルとQELS評価とを交互に行い、効
率的にリポソームを合成してもよい。
【0157】
医薬組成物
in vivoでのmRNAの発現を促進するために、リポソームなどの送達媒体を、
1種以上の追加の核酸、担体、標的リガンドもしくは安定化剤と組み合わせて、または適
切な賦形剤とともに混合した医薬組成物中に製剤化することができる。薬物の製剤化及び
投与法についての手法は、“Remington’s Pharmaceutical
Sciences,” Mack Publishing Co.,Easton,Pa
.,latest editionに記載されている。
【0158】
提供するリポソームに封入または会合させたmRNA、及びそれを含有する組成物は、
被験体の臨床状態、投与部位と投与方法、投与計画、被験体の年齢、性別、体重などの当
業臨床医に関連する要因を考慮に入れ、現在の医療に従って投与及び服用させてもよい。
本明細書の目的に対する「有効量」は、試験的臨床研究、薬理学、臨床及び医療分野の当
業者に周知の関連要因を考慮して決定してもよい。いくつかの実施形態では、投与量は、
疾患の進行、退縮または改善の適切な測定値として当業者が選択する症状及び他の指標に
対して、少なくとも何らかの安定化、改善または消失を達成するのに有効である。例えば
、好適な量及び投与レジメンは、少なくとも一過性にタンパク質(例えば、酵素)を産生
させるレジメンである。
【0159】
適切な投与経路として、例えば、経口、経腸、経膣、経粘膜、気管内もしくは吸入を含
む経肺、または経腸による投与;皮内、経皮(局所)、筋肉内、皮下、髄内注射による非
経口送達、ならびに、くも膜下腔内、脳室内直接、静脈内、腹腔内、または経鼻の非経口
送達が挙げられる。特定の実施形態では、筋肉内投与は、骨格筋、平滑筋及び心筋からな
る群から選択される筋肉に対して行われる。いくつかの実施形態では、投与は、筋肉細胞
へのmRNAの送達をもたらす。いくつかの実施形態では、投与は、肝細胞(すなわち、
肝臓細胞)へのmRNAの送達をもたらす。特定の実施形態では、筋肉内投与は、筋肉細
胞へのmRNAの送達をもたらす。
【0160】
別法または追加として、リポソームに封入したmRNA及び本発明の組成物を、全身で
はなく局所的に、例えば、標的組織内へ医薬組成物を直接注入して、好ましくは徐放性製
剤として投与してもよい。局所送達は、その標的とする組織に応じて異なる様々な様式で
影響を受ける。例えば、本発明の組成物を含有するエアロゾルは、吸入可能であり(経鼻
、経気管、または気管支送達);本発明の組成物は、例えば、損傷部位、疾患症状発現部
位、または疼痛部位に注入可能であり;組成物は、経口、気管、または食道への塗布に対
しては薬用ドロップで提供可能であり;組成物は、胃または腸への投与に対しては、液体
、錠剤またはカプセルの形態で供給可能であり、直腸または膣への塗布に対しては坐剤形
態で供給可能であり;または、組成物は、眼への送達さえも可能であり、この場合、クリ
ーム、点眼薬、もしくは注射の使用によっても送達できる。治療用分子またはリガンドと
複合体化させた提供組成物含有製剤は、外科的処置によっても投与可能であり、例えば、
組成物が移植部位から周辺細胞へ拡散することができるようにするポリマーまたは他の構
造体もしくは物質に会合させて投与することができる。あるいは、それらを、ポリマーま
たは支持体を使用せずに外科的処置で塗布することができる。
【0161】
本発明が提供する方法は、本明細書に記載する治療薬(例えば、GAAタンパク質をコ
ードするmRNA)の治療有効量を単回ならびに複数回投与することを想定している。治
療薬は、被験体の病態(例えば、ポンペ病)の性質、重症度及び程度に応じて、一定の間
隔で投与可能である。いくつかの実施形態では、本発明の治療薬(例えば、GAAタンパ
ク質をコードするmRNA)の治療有効量を、くも膜下腔内に一定の間隔で定期的に投与
してもよい(例えば、年1回、6か月に1回、5か月に1回、3か月に1回、隔月(2か
月に1回)、毎月(月1回)、隔週(2週間に1回)、月2回、30日に1回、28日に
1回、14日に1回、10日に1回、7日に1回、毎週、週2回、連日または継続的に)
【0162】
いくつかの実施形態では、提供するリポソーム及び/または組成物を、それが含有する
mRNAの徐放性が好適となるように製剤化する。そのような徐放性組成物は、投与間隔
を引き延ばして、被験体への投与の利便性を高め得る。例えば、一実施形態では、本発明
の組成物を1日2回、連日または隔日で被験体に投与する。好ましい実施形態では、本発
明の組成物を、週2回、週1回、7日に1回、10日に1回、14日に1回、28日に1
回、30日に1回、2週間に1回、3週間に1回、または、さらに好ましくは、4週間に
1回、月1回、月2回、6週間に1回、8週間に1回、2か月に1回、3か月に1回、4
か月に1回、6か月に1回、8か月に1回、9か月に1回、もしくは毎年、被験体に投与
する。長期間にわたってmRNAを送達または放出させるためにデポー投与(例えば、筋
肉内、皮下、硝子体内)用に製剤化した組成物及びリポソームも意図される。好ましくは
、使用する徐放性手段を、mRNAの安定性を高めるために行う修飾と組み合わせる。
【0163】
本明細書中で使用する場合、用語「治療有効量」は、主として、本発明の医薬組成物が
含有する治療薬の総量に基づいて決定する。一般的に、治療有効量は、被験体にとって意
義のある利益(例えば、ポンペ病の治療、調節、治癒、予防及び/または寛解)を達成す
るのに十分である。例えば、治療有効量は、所望の治療的及び/または予防的効果を達成
するのに十分な量であってもよい。一般的に、治療を必要とする被験体へ投与する治療薬
(例えば、GAAタンパク質をコードするmRNA)の量は、その被験体の特徴に応じて
異なる。このような特徴として、被験体の病態、疾患の重症度、全体的健康状態、年齢、
性別及び体重が挙げられる。当業者であれば、これら及び他の関連要因に応じて適切な用
量を容易に決定できるであろう。さらに、客観的評価法及び主観的評価法を任意選択で用
いて至適用量範囲を同定してもよい。
【0164】
治療有効量は、一般的に、複数の単位用量を含み得る投与レジメンにおいて投与する。
任意の特定の治療タンパク質の場合、治療有効量(及び/または効果的投与レジメンの範
囲内の適切な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬製剤との組合せに応じて様々に
異なる場合がある。また、任意の特定の患者に対する具体的な治療有効量(及び/または
単位用量)は、治療する障害及びその障害の重症度;使用する特定の製剤の活性;使用す
る特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的健康状態、性別及び食事;使用する特定のタ
ンパク質の投与時間、投与経路、及び/または排泄速度もしくは代謝速度;治療期間;な
らびに、医療分野において周知の同様の要因を含む、様々な要因に応じたものとなる。
【0165】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、約0.005mg/kg体重~500mg/
kg体重の範囲、例えば、約0.005mg/kg体重~400mg/kg体重、約0.
005mg/kg体重~300mg/kg体重、約0.005mg/kg体重~200m
g/kg体重、約0.005mg/kg体重~100mg/kg体重、約0.005mg
/kg体重~90mg/kg体重、約0.005mg/kg体重~80mg/kg体重、
約0.005mg/kg体重~70mg/kg体重、約0.005mg/kg体重~60
mg/kg体重、約0.005mg/kg体重~50mg/kg体重、約0.005mg
/kg体重~40mg/kg体重、約0.005mg/kg体重~30mg/kg体重、
約0.005mg/kg体重~25mg/kg体重、約0.005mg/kg体重~20
mg/kg体重、約0.005mg/kg体重~15mg/kg体重、約0.005mg
/kg体重~10mg/kg体重の範囲にある。
【0166】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、約0.1mg/kg体重超、約0.5mg/
kg体重超、約1.0mg/kg体重超、約3mg/kg体重超、約5mg/kg体重超
、約10mg/kg体重超、約15mg/kg体重超、約20mg/kg体重超、約30
mg/kg体重超、約40mg/kg体重超、約50mg/kg体重超、約60mg/k
g体重超、約70mg/kg体重超、約80mg/kg体重超、約90mg/kg体重超
、約100mg/kg体重超、約150mg/kg体重超、約200mg/kg体重超、
約250mg/kg体重超、約300mg/kg体重超、約350mg/kg体重超、約
400mg/kg体重超、約450mg/kg体重超、約500mg/kg体重超である
。特定の実施形態では、治療有効量は1.0mg/kgである。いくつかの実施形態では
、治療有効量1.0mg/kgを、筋肉内または静脈内に投与する。
【0167】
本明細書では、本明細書に開示する1種以上のリポソームを含む凍結乾燥医薬組成物、
及び、そのような組成物の使用に関連する、例えば、2011年6月8日出願の米国仮出
願第61/494,882号に開示されているような方法も意図しており、前記文献の記
載は、その全体を参照として本明細書に援用する。例えば、本発明の凍結乾燥医薬組成物
は、投与前に再構成してもよく、またはin vivoで再構成することができる。例え
ば、凍結乾燥医薬組成物を適切な剤形(例えば、ディスク、ロッドまたは膜のような皮内
投与剤形)に製剤化して投与し、個人の体液によってその剤形をin vivoで経時的
に再水和させることができる。
【0168】
提供するリポソーム及び組成物は、任意の所望の組織に投与してもよい。いくつかの実
施形態では、提供するリポソームまたは組成物で送達したGAA mRNAは、そのリポ
ソーム及び/または組成物を投与した組織において発現する。いくつかの実施形態では、
送達したmRNAは、リポソーム及び/または組成物を投与した組織とは異なる組織にお
いて発現する。送達対象のmRNAが送達及び/または発現し得る例示的な組織には、肝
臓、腎臓、心臓、脾臓、血清、脳、骨格筋、リンパ節、皮膚、及び/または脳脊髄液が挙
げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。
【0169】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体由来の生物学的試料中のG
AA mRNA発現レベルは、治療前のベースラインの発現レベルに比べて上昇する。通
常、ベースラインレベルは治療の直前に測定する。生物学的試料の例として、全血、血清
、血漿、尿及び組織試料(例えば、筋肉、肝臓、皮膚線維芽細胞)が挙げられる。いくつ
かの実施形態では、提供組成物の投与の結果、GAA mRNAの発現レベルは、治療直
前のベースラインの発現レベルに比べて、少なくとも約10%、20%、30%、40%
、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇する。いくつかの実施形
態では、提供組成物の投与の結果、GAA mRNAの発現レベルは、未治療の被験体の
GAA mRNA発現レベルに比べて上昇する。
【0170】
本発明によれば、提供組成物の治療有効量を定期的に投与した場合、被験体の肝GAA
タンパク質レベルは、治療前のベースラインの肝GAAタンパク質レベルに比べて上昇す
る。いくつかの実施形態では、提供組成物の治療有効量を定期的に投与した場合、被験体
の筋GAAタンパク質レベルは、治療前のベースラインの筋GAAタンパク質レベルに比
べて上昇する。いくつかの実施形態では、筋肉は、骨格筋(例えば、横紋筋、随意筋)、
平滑筋(例えば、内臓筋、不随意筋)または心筋である。いくつかの実施形態では、提供
組成物の治療有効量を定期的に投与した場合、被験体の血清クレアチンキナーゼレベルは
、治療前のベースラインのクレアチンキナーゼレベルに比べて低下する。いくつかの実施
形態では、提供組成物の治療有効量を定期的に投与した場合、被験体の尿中グルコース四
糖(Glcα1‐6Glcα1‐4Glcα1‐4GlcまたはGlc)レベルは、治
療前のベースラインのGlcレベルに比べて低下する。いくつかの実施形態では、提供
組成物の治療有効量を定期的に投与した場合、被験体の血清アスパラギン酸トランスアミ
ナーゼ(例えば、AST、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、血清、グルタミン
酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)レベルは、治療前のベースラインのASTレベルに
比べて低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の治療有効量を定期的に投与した
場合、被験体の血清アラニントランスアミナーゼ(例えば、ALT、アラニンアミノトラ
ンスフェラーゼ、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)レベルは、治療前の
ベースラインのALTレベルに比べて低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の
治療有効量を定期的に投与した場合、被験体の血清乳酸デヒドロゲナーゼ(例えば、LD
H、乳酸デヒドロゲナーゼ)レベルは、治療前のベースラインのLDHレベルに比べて低
下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の治療有効量を定期的に投与した場合、被
験体由来の生物学的試料中のGAA酵素活性レベルは、治療前のベースラインのGAA酵
素活性レベルに比べて上昇する。
【0171】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の肝GAAタンパク質レベ
ルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベルは治療
の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、肝GAAタンパ
ク質レベルは、治療前のベースラインレベルに比べて、少なくとも約10%、20%、3
0%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇する。いく
つかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、肝GAAタンパク質レベルが、未治療の
被験体の肝GAAタンパク質レベルに比べて上昇する。
【0172】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の骨格筋GAAタンパク質
レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベルは
治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、骨格筋GA
Aタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて、少なくとも約10%、2
0%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇す
る。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、骨格筋GAAタンパク質レベル
が、未治療の被験体の骨格筋GAAタンパク質レベルに比べて上昇する。
【0173】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の心筋GAAタンパク質レ
ベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベルは治
療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、心筋GAAタ
ンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて、少なくとも約10%、20%
、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇する。
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、心筋GAAタンパク質レベルが、未
治療の被験体の心筋GAAタンパク質レベルに比べて上昇する。
【0174】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の平滑筋GAAタンパク質
のレベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベル
は治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、平滑筋G
AAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて、少なくとも約10%、
20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%上昇
する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、平滑筋GAAタンパク質レベ
ルが、未治療の被験体の平滑筋GAAタンパク質レベルに比べて上昇する。
【0175】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の筋肉細胞内GAAタンパ
ク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレベ
ルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、筋肉細胞は、筋細胞、筋管、筋芽
細胞、心筋細胞または心筋芽細胞である。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の
結果、筋肉細胞内GAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて、少
なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%
、または95%上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、筋肉細胞
内GAAタンパク質レベルが、未治療の被験体の筋肉細胞内GAAタンパク質レベルに比
べて上昇する。
【0176】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の肝臓細胞(例えば、肝細
胞)内GAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常
、ベースラインレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の
投与の結果、肝細胞内GAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて
、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、9
0%、または95%上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、肝臓
細胞内GAAタンパク質レベルが、未治療の被験体の肝臓細胞内GAAタンパク質レベル
に比べて上昇する。
【0177】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血漿または血清中のGA
Aタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラ
インレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果
、血漿または血清中のGAAタンパク質レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて
、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、9
0%、または95%上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血漿
または血清中のGAAタンパク質レベルが、未治療の被験体の血漿または血清中のGAA
タンパク質レベルに比べて上昇する。
【0178】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血清クレアチンキナーゼ
レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラインレベルは
治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清クレア
チンキナーゼレベルが、治療直前のベースラインの血清クレアチンキナーゼレベルに比べ
て、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、
90%、または95%低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血
清クレアチンキナーゼレベルが、約2000IU/L、1500IU/L、1000IU
/L、750IU/L、500IU/L、250IU/L、100IU/L、90IU/
L、80IU/L、70IU/L、または60IU/L未満にまで低下する。いくつかの
実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清クレアチンキナーゼレベルが、未治療の被
験体の血清クレアチンキナーゼレベルに比べて低下する。
【0179】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の尿中Glcレベルが、
治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラインレベルは治療の直前
に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、尿中Glcレベルが
、治療直前のベースラインレベルに比べて、少なくとも約10%、20%、30%、40
%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%低下する。いくつかの実施
形態では、提供組成物の投与の結果、尿中Glcレベルが、約100mmol Glc
/molクレアチニン、90mmol Glc/molクレアチニン、80mmol
Glc/molクレアチニン、70mmol Glc/molクレアチニン、60
mmol Glc/molクレアチニン、50mmol Glc/molクレアチニ
ン、40mmol Glc/molクレアチニン、30mmol Glc/molク
レアチニンまたは20mmol Glc/molクレアチニン未満にまで低下する。い
くつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、尿中Glcレベルが、未治療の被験
体の尿中Glcレベルに比べて低下する。
【0180】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の筋グリコーゲンレベルが
、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、治療の直前にベースラインレベ
ルを測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、筋グリコーゲンレベ
ルが、治療直前のベースラインレベルに比べて、少なくとも約10%、20%、30%、
40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%低下する。いくつかの
実施形態では、提供組成物の投与の結果、筋グリコーゲンレベルが、未治療の被験体の筋
グリコーゲンレベルに比べて低下する。特定の実施形態では、筋肉は、骨格筋、平滑筋ま
たは心筋である。
【0181】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の肝グリコーゲンレベルが
、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラインレベルは治療の直
前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、肝グリコーゲンレベ
ルが、治療直前のベースラインレベルに比べて、少なくとも約10%、20%、30%、
40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%低下する。いくつかの
実施形態では、提供組成物の投与の結果、肝グリコーゲンレベルが、未治療の被験体の肝
グリコーゲンレベルに比べて低下する。
【0182】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血清アスパラギン酸トラ
ンスアミナーゼ(AST)レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通
常、ベースラインレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物
の投与の結果、血清ASTレベルが、治療直前のベースラインレベルに比べて、少なくと
も約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、また
は95%低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清ASTレベ
ルが、約600IU/L、500IU/L、400IU/L、300IU/L、200I
U/L、100IU/L、50IU/L、25IU/L、20IU/Lまたは10IU/
L未満にまで低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清AST
レベルが、未治療の被験体の血清ASTレベルに比べて低下する。
【0183】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血清アラニントランスア
ミナーゼ(ALT)レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベ
ースラインレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与
の結果、血清ALTレベルが、治療直前のベースラインレベルに比べて、少なくとも約1
0%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95
%低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清ALTレベルが、
約1000IU/L、900IU/L、800IU/L、700IU/L、600IU/
L、500IU/L、400IU/L、300IU/L、200IU/L、100IU/
L、50IU/L、25IU/L、20IU/Lまたは10IU/L未満にまで低下する
。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清ALTレベルが、未治療の被
験体の血清ALTレベルに比べて低下する。
【0184】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体の血清乳酸デヒドロゲナー
ゼ(LDH)レベルが、治療前のベースラインレベルに比べて低下する。通常、ベースラ
インレベルは治療の直前に測定する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果
、血清乳酸デヒドロゲナーゼLDHレベルが、治療直前のベースラインレベルに比べて、
少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90
%、または95%低下する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清L
DHレベルが、約2000IU/L、1500IU/L、1000IU/L、900IU
/L、800IU/L、700IU/L、600IU/L、500IU/L、400IU
/L、300IU/L、200IU/Lまたは100IU/L未満にまで低下する。いく
つかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、血清LDHレベルが、未治療の被験体の
血清LDHレベルに比べて低下する。
【0185】
いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果、被験体由来の生物学的試料中のG
AA酵素活性が、治療前のベースラインレベルに比べて上昇する。通常、ベースラインレ
ベルは治療の直前に測定する。生物学的試料の例として、例えば、全血、血清、血漿、尿
及び組織試料(例えば、筋肉、肝臓、皮膚線維芽細胞)が挙げられる。いくつかの実施形
態では、提供組成物の投与の結果、GAA酵素活性が、治療直前のベースラインレベルに
比べて、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80
%、90%、または95%上昇する。いくつかの実施形態では、提供組成物の投与の結果
、GAA酵素活性が、未治療の被験体のGAA酵素活性に比べて上昇する。
【0186】
様々な実施形態によれば、送達するmRNAの発現のタイミングは、特定の医学的必要
性に適合するように調整することができる。いくつかの実施形態において、提供するmR
NAがコードするタンパク質の発現は、提供するリポソーム及び/または組成物の投与の
1、2、3、6、12、24、48、72及び/または96時間後に検出可能である。い
くつかの実施形態では、送達するmRNAがコードするタンパク質の発現は、投与の1週
間後、2週間後、及び/または1か月後に検出可能である。
【実施例0187】
本発明の特定の化合物、組成物及び方法を、特定の実施形態に従って具体的に記載して
きたが、以下の実施例は、本発明の化合物を例示するためにのみ機能し、それらを限定す
ることを意図するものではない。
【0188】
実施例1.GAA mRNAの送達及び発現のための例示的なリポソーム製剤
本実施例は、in vivoでのGAA mRNAの効果的な送達及び発現のための例
示的なリポソーム製剤を提示する。
脂質材料
本明細書に記載の製剤は、GAAタンパク質をコードするmRNAをカプセル化するよ
うに設計され、1つ以上のカチオン性脂質、ヘルパー脂質(例えば、非カチオン性脂質及
び/またはコレステロール系脂質)及びPEG化脂質を様々な割合で用いる多成分脂質混
合物を含有する。カチオン性脂質として、DOTAP(1,2‐ジオレイル‐3‐トリメ
チルアンモニウムプロパン)、DODAP(1,2‐ジオレイル‐3‐ジメチルアンモニ
ウムプロパン)、DOTMA(1,2‐ジ‐O‐オクタデセニル‐3‐トリメチルアンモ
ニウムプロパン)、DLinDMA(Heyes,J.;Palmer,L.;Brem
ner,K.;MacLachlan,I.“Cationic lipid satu
ration influences intracellular delivery
of encapsulated nucleic acids”J.Contr.R
el.2005,107,276‐287)、DLin‐KC2‐DMA(Semple
,S.C.et al.“Rational Design of Cationic
Lipids for siRNA Delivery”Nature Biotech
.2010,28,172‐176)、C12‐200(Love,K.T.et al
.“Lipid‐like materials for low‐dose in v
ivo gene silencing”PNAS 2010,107,1864‐18
69)、cKK‐E12(3,6‐ビス(4‐(ビス(2‐ヒドロキシドデシル)アミノ
)ブチル)ピペラジン‐2,5‐ジオン)、HGT5000、HGT5001、HGT4
003、ICE、ジアルキルアミノ系、イミダゾール系、グアニジニウム系などを挙げる
ことができる(しかし、これらだけに限るものではない)。ヘルパー脂質として、DSP
C(1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホコリン)、DPPC(1,2
‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホコリン)、DOPE(1,2‐ジオレイ
ル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン)、DOPC(1,2‐ジオレイル‐
sn‐グリセロ‐3‐ホスフォチジルコリン(phosphotidylcholine
)) DPPE(1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミ
ン)、DMPE(1,2‐ジミリストイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミ
ン)、DOPG(,2‐ジオレオイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホ‐(1’‐rac‐
グリセロール))、コレステロールなどを挙げることができる(しかし、これらだけに限
るものではない)。ペグ化脂質として、鎖長C~C20のアルキル鎖(複数可)を有す
る脂質に共有結合した最大鎖長5kDaのポリ(エチレン)グリコール鎖を挙げることが
できる(しかし、これらだけに限るものではない)。
【0189】
遺伝子をコードするプラスミドDNA鋳型からin vitro転写によってコドン最
適化ヒト酸性αグルコシダーゼ(GAA)メッセンジャーRNAを合成し、続いて5’キ
ャップ構造(Cap1)(Fechter,P.;Brownlee,G.G.“Rec
ognition of mRNA cap structures by viral
and cellular proteins”J.Gen.Virology 20
05,86,1239‐1249)、及びゲル電気泳動で測定した鎖長がおよそ250ヌ
クレオチドの3’ポリ(A)テール(配列番号7)を付加した。各mRNA産物中に存在
する5’及び3’非翻訳領域を、それぞれX及びYとして表すとともに、記載のように定
義する(下記参照)。
例示的なコドン最適化ヒト酸性αグルコシダーゼ(GAA)mRNA
構築物の設計:
X‐配列番号3‐Y
5’及び3’UTR配列
X(5’UTR配列)=
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGAC
CUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCC
GGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAG
UGACUCACCGUCCUUGACACG [配列番号8]
Y(3’UTR配列)=
CGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCU
GGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUC
CUAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAGCU [配列番号9]
または
GGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUG
GCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCC
UAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAAGCU [配列番号10]
【0190】
例示的なコドン最適化ヒトGAA mRNA配列は、詳細な説明の節に記載した配列番
号3を有する。
【0191】
例示的な完全長コドン最適化ヒト酸性αグルコシダーゼ(GAA)メッセンジャーRN
A配列を以下に示す:
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGAC
CUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCC
GGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAG
UGACUCACCGUCCUUGACACGAUGGGAGUCAGACACCCGC
CGUGCUCGCACAGGCUUCUGGCCGUGUGCGCACUCGUGAG
UCUGGCGACUGCUGCGUUGCUGGGGCACAUUCUUCUCCAC
GACUUUCUCUUGGUGCCCCGAGAAUUGUCGGGCUCGUCGC
CGGUACUGGAAGAAACCCACCCCGCACAUCAGCAGGGCGC
GUCGCGGCCUGGUCCGAGGGAUGCCCAGGCACAUCCCGGA
AGGCCACGAGCCGUCCCGACUCAAUGUGACGUACCUCCCA
AUUCCCGGUUCGACUGUGCGCCAGACAAGGCAAUCACGCA
AGAGCAGUGCGAAGCCCGUGGAUGCUGCUAUAUUCCGGCG
AAGCAGGGACUUCAGGGAGCCCAGAUGGGGCAGCCCUGGU
GUUUCUUCCCGCCUUCCUAUCCCUCAUAUAAGCUGGAGAA
UUUGUCGUCCUCGGAAAUGGGGUAUACCGCUACUCUUACG
AGAACCACCCCCACAUUCUUUCCGAAGGACAUCCUUACUC
UGCGGCUCGACGUGAUGAUGGAGACAGAAAAUAGGCUGCA
UUUCACGAUCAAAGACCCGGCGAACCGGAGAUAUGAGGUU
CCGCUUGAGACUCCCCACGUUCACUCUCGUGCGCCUUCAC
CCUUGUACUCCGUGGAGUUCUCGGAAGAACCGUUCGGGGU
GAUCGUCAGACGUCAACUUGAUGGUAGGGUAUUGCUGAAC
ACAACGGUCGCCCCCUUGUUUUUCGCCGACCAGUUUCUGC
AGCUUUCGACAUCGCUGCCGUCCCAGUAUAUCACAGGGCU
CGCGGAGCAUCUUUCACCCCUCAUGCUGAGCACGAGCUGG
ACACGGAUUACGCUCUGGAACAGGGAUCUCGCGCCGACGC
CCGGAGCGAAUUUGUAUGGGUCGCAUCCCUUCUACCUCGC
AUUGGAAGACGGGGGUUCCGCGCACGGAGUAUUCCUGCUU
AAUUCUAAUGCGAUGGACGUUGUCUUGCAGCCCUCCCCUG
CUUUGUCGUGGCGUUCCACGGGGGGCAUUUUGGACGUUUA
CAUCUUUUUGGGACCCGAGCCAAAGAGCGUAGUGCAGCAG
UAUUUGGAUGUAGUGGGCUACCCCUUCAUGCCGCCUUAUU
GGGGACUGGGGUUCCAUCUCUGCCGCUGGGGGUACUCUUC
GACCGCGAUCACCCGCCAGGUGGUCGAGAACAUGACCAGA
GCACAUUUCCCUUUGGACGUGCAGUGGAAUGAUUUGGAUU
ACAUGGAUAGCCGAAGAGACUUCACGUUCAAUAAGGACGG
GUUUAGAGAUUUUCCCGCGAUGGUGCAAGAAUUGCACCAG
GGUGGGCGCAGAUACAUGAUGAUCGUCGAUCCCGCCAUCA
GCAGCUCGGGACCAGCGGGGAGUUACCGGCCUUACGAUGA
GGGACUUAGGAGAGGCGUCUUUAUCACGAACGAAACAGGU
CAGCCGCUCAUUGGUAAAGUGUGGCCUGGAUCAACGGCCU
UUCCCGACUUCACGAAUCCCACAGCCCUCGCCUGGUGGGA
AGACAUGGUGGCGGAGUUUCACGACCAAGUACCGUUUGAU
GGGAUGUGGAUUGAUAUGAACGAACCCUCAAACUUUAUUC
GCGGCUCGGAAGAUGGAUGCCCGAAUAAUGAGCUUGAGAA
UCCCCCGUAUGUGCCAGGGGUGGUAGGUGGGACGCUCCAG
GCCGCUACGAUCUGUGCGUCAUCACAUCAGUUCUUGUCAA
CGCACUACAACUUGCACAAUCUUUACGGUUUGACUGAAGC
CAUCGCUUCGCAUCGCGCGCUGGUCAAAGCGCGUGGUACG
CGACCCUUCGUUAUUUCUCGGUCCACAUUUGCCGGGCACG
GUCGGUAUGCCGGACACUGGACGGGAGAUGUCUGGUCUAG
CUGGGAGCAGCUCGCGUCGAGCGUACCGGAGAUCCUCCAG
UUCAAUCUUUUGGGAGUUCCGCUCGUCGGCGCUGACGUGU
GCGGUUUUCUCGGAAACACAUCAGAAGAGCUUUGCGUACG
CUGGACACAGCUCGGUGCGUUUUACCCCUUUAUGAGAAAC
CAUAACUCGUUGCUCUCACUCCCUCAAGAGCCGUACAGUU
UUUCGGAGCCUGCGCAACAGGCGAUGCGGAAGGCAUUGAC
ACUUCGCUAUGCACUGCUCCCGCAUCUCUAUACUCUGUUC
CAUCAGGCCCAUGUGGCUGGAGAAACGGUGGCGAGGCCCC
UGUUCUUGGAGUUCCCCAAAGAUAGUUCCACAUGGACCGU
GGAUCACCAGUUGCUGUGGGGAGAGGCGCUUCUGAUCACU
CCGGUACUUCAGGCGGGUAAAGCGGAAGUCACUGGGUAUU
UCCCGCUUGGGACCUGGUACGACCUUCAGACUGUCCCAGU
AGAAGCCCUCGGAAGCCUGCCACCUCCCCCUGCUGCACCC
CGCGAGCCUGCAAUCCAUAGCGAGGGCCAGUGGGUAACGU
UGCCAGCCCCACUGGAUACCAUCAAUGUCCACCUCAGGGC
GGGUUACAUUAUCCCUCUCCAAGGCCCUGGGUUGACCACC
ACAGAGUCGCGCCAGCAGCCAAUGGCACUUGCGGUCGCAU
UGACGAAAGGGGGUGAAGCCCGAGGGGAACUGUUUUGGGA
UGACGGGGAAAGCCUUGAGGUGCUGGAACGGGGAGCGUAC
ACACAAGUCAUUUUCUUGGCCAGGAACAACACUAUUGUCA
ACGAGUUGGUGCGCGUGACCUCUGAGGGUGCCGGACUGCA
ACUGCAGAAGGUCACGGUCCUCGGAGUGGCGACAGCACCC
CAACAGGUCCUUAGUAACGGAGUACCUGUCUCGAACUUUA
CAUACUCCCCGGACACGAAGGUGCUCGACAUCUGUGUGUC
GCUGCUUAUGGGGGAACAGUUUCUCGUGAGCUGGUGCUAG
CGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUG
GCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCC
UAAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAGCU [配列番号11]
【0192】
別の実施例における、完全長コドン最適化ヒト酸性αグルコシダーゼ(GAA)メッセ
ンジャーRNA配列を以下に示す:
GGACAGAUCGCCUGGAGACGCCAUCCACGCUGUUUUGAC
CUCCAUAGAAGACACCGGGACCGAUCCAGCCUCCGCGGCC
GGGAACGGUGCAUUGGAACGCGGAUUCCCCGUGCCAAGAG
UGACUCACCGUCCUUGACACGAUGGGAGUCAGACACCCGC
CGUGCUCGCACAGGCUUCUGGCCGUGUGCGCACUCGUGAG
UCUGGCGACUGCUGCGUUGCUGGGGCACAUUCUUCUCCAC
GACUUUCUCUUGGUGCCCCGAGAAUUGUCGGGCUCGUCGC
CGGUACUGGAAGAAACCCACCCCGCACAUCAGCAGGGCGC
GUCGCGGCCUGGUCCGAGGGAUGCCCAGGCACAUCCCGGA
AGGCCACGAGCCGUCCCGACUCAAUGUGACGUACCUCCCA
AUUCCCGGUUCGACUGUGCGCCAGACAAGGCAAUCACGCA
AGAGCAGUGCGAAGCCCGUGGAUGCUGCUAUAUUCCGGCG
AAGCAGGGACUUCAGGGAGCCCAGAUGGGGCAGCCCUGGU
GUUUCUUCCCGCCUUCCUAUCCCUCAUAUAAGCUGGAGAA
UUUGUCGUCCUCGGAAAUGGGGUAUACCGCUACUCUUACG
AGAACCACCCCCACAUUCUUUCCGAAGGACAUCCUUACUC
UGCGGCUCGACGUGAUGAUGGAGACAGAAAAUAGGCUGCA
UUUCACGAUCAAAGACCCGGCGAACCGGAGAUAUGAGGUU
CCGCUUGAGACUCCCCACGUUCACUCUCGUGCGCCUUCAC
CCUUGUACUCCGUGGAGUUCUCGGAAGAACCGUUCGGGGU
GAUCGUCAGACGUCAACUUGAUGGUAGGGUAUUGCUGAAC
ACAACGGUCGCCCCCUUGUUUUUCGCCGACCAGUUUCUGC
AGCUUUCGACAUCGCUGCCGUCCCAGUAUAUCACAGGGCU
CGCGGAGCAUCUUUCACCCCUCAUGCUGAGCACGAGCUGG
ACACGGAUUACGCUCUGGAACAGGGAUCUCGCGCCGACGC
CCGGAGCGAAUUUGUAUGGGUCGCAUCCCUUCUACCUCGC
AUUGGAAGACGGGGGUUCCGCGCACGGAGUAUUCCUGCUU
AAUUCUAAUGCGAUGGACGUUGUCUUGCAGCCCUCCCCUG
CUUUGUCGUGGCGUUCCACGGGGGGCAUUUUGGACGUUUA
CAUCUUUUUGGGACCCGAGCCAAAGAGCGUAGUGCAGCAG
UAUUUGGAUGUAGUGGGCUACCCCUUCAUGCCGCCUUAUU
GGGGACUGGGGUUCCAUCUCUGCCGCUGGGGGUACUCUUC
GACCGCGAUCACCCGCCAGGUGGUCGAGAACAUGACCAGA
GCACAUUUCCCUUUGGACGUGCAGUGGAAUGAUUUGGAUU
ACAUGGAUAGCCGAAGAGACUUCACGUUCAAUAAGGACGG
GUUUAGAGAUUUUCCCGCGAUGGUGCAAGAAUUGCACCAG
GGUGGGCGCAGAUACAUGAUGAUCGUCGAUCCCGCCAUCA
GCAGCUCGGGACCAGCGGGGAGUUACCGGCCUUACGAUGA
GGGACUUAGGAGAGGCGUCUUUAUCACGAACGAAACAGGU
CAGCCGCUCAUUGGUAAAGUGUGGCCUGGAUCAACGGCCU
UUCCCGACUUCACGAAUCCCACAGCCCUCGCCUGGUGGGA
AGACAUGGUGGCGGAGUUUCACGACCAAGUACCGUUUGAU
GGGAUGUGGAUUGAUAUGAACGAACCCUCAAACUUUAUUC
GCGGCUCGGAAGAUGGAUGCCCGAAUAAUGAGCUUGAGAA
UCCCCCGUAUGUGCCAGGGGUGGUAGGUGGGACGCUCCAG
GCCGCUACGAUCUGUGCGUCAUCACAUCAGUUCUUGUCAA
CGCACUACAACUUGCACAAUCUUUACGGUUUGACUGAAGC
CAUCGCUUCGCAUCGCGCGCUGGUCAAAGCGCGUGGUACG
CGACCCUUCGUUAUUUCUCGGUCCACAUUUGCCGGGCACG
GUCGGUAUGCCGGACACUGGACGGGAGAUGUCUGGUCUAG
CUGGGAGCAGCUCGCGUCGAGCGUACCGGAGAUCCUCCAG
UUCAAUCUUUUGGGAGUUCCGCUCGUCGGCGCUGACGUGU
GCGGUUUUCUCGGAAACACAUCAGAAGAGCUUUGCGUACG
CUGGACACAGCUCGGUGCGUUUUACCCCUUUAUGAGAAAC
CAUAACUCGUUGCUCUCACUCCCUCAAGAGCCGUACAGUU
UUUCGGAGCCUGCGCAACAGGCGAUGCGGAAGGCAUUGAC
ACUUCGCUAUGCACUGCUCCCGCAUCUCUAUACUCUGUUC
CAUCAGGCCCAUGUGGCUGGAGAAACGGUGGCGAGGCCCC
UGUUCUUGGAGUUCCCCAAAGAUAGUUCCACAUGGACCGU
GGAUCACCAGUUGCUGUGGGGAGAGGCGCUUCUGAUCACU
CCGGUACUUCAGGCGGGUAAAGCGGAAGUCACUGGGUAUU
UCCCGCUUGGGACCUGGUACGACCUUCAGACUGUCCCAGU
AGAAGCCCUCGGAAGCCUGCCACCUCCCCCUGCUGCACCC
CGCGAGCCUGCAAUCCAUAGCGAGGGCCAGUGGGUAACGU
UGCCAGCCCCACUGGAUACCAUCAAUGUCCACCUCAGGGC
GGGUUACAUUAUCCCUCUCCAAGGCCCUGGGUUGACCACC
ACAGAGUCGCGCCAGCAGCCAAUGGCACUUGCGGUCGCAU
UGACGAAAGGGGGUGAAGCCCGAGGGGAACUGUUUUGGGA
UGACGGGGAAAGCCUUGAGGUGCUGGAACGGGGAGCGUAC
ACACAAGUCAUUUUCUUGGCCAGGAACAACACUAUUGUCA
ACGAGUUGGUGCGCGUGACCUCUGAGGGUGCCGGACUGCA
ACUGCAGAAGGUCACGGUCCUCGGAGUGGCGACAGCACCC
CAACAGGUCCUUAGUAACGGAGUACCUGUCUCGAACUUUA
CAUACUCCCCGGACACGAAGGUGCUCGACAUCUGUGUGUC
GCUGCUUAUGGGGGAACAGUUUCUCGUGAGCUGGUGCUAG
GGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGG
CCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCU
AAUAAAAUUAAGUUGCAUCAAAGCU [配列番号12]
【0193】
例示的な製剤プロトコール
A. cKK‐E12
cKK‐E12、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg/mL
エタノール溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈した。これ
とは別に、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM NaCl、
pH4.5)を1mg/mLのストックから調製した。脂質溶液をmRNA水溶液に急速
に注入し、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得た。得られたナノ粒子懸濁液を
濾過し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~8℃で
保存した。最終濃度=0.64mg/mL GAA mRNA(カプセル化)であった。
ave=80nm;PDI=0.17であった。封入率=85%;収率=89%であっ
た。
【0194】
B. C12‐200
C12‐200、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg/mL
エタノール溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈する。これ
とは別に、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM NaCl、
pH4.5)を1mg/mLのストックから調製する。脂質溶液をmRNA水溶液に急速
に注入し、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得る。得られるナノ粒子懸濁液を
濾過し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~8℃で
保存する。GAAカプセル化mRNAの最終濃度、Zave、Dv(50)及びDv(9
0)を測定する。
【0195】
C. HGT4003
HGT4003、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg/mL
エタノール溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈する。これ
とは別に、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM NaCl、
pH4.5)を1mg/mLのストックから調製する。脂質溶液をmRNA水溶液に急速
に注入し、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得る。得られるナノ粒子懸濁液を
濾過し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~8℃で
保存する。GAAカプセル化mRNAの最終濃度、Zave、Dv(50)及びDv(9
0)を測定する。
【0196】
D.ICE
ICE、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg/mLエタノー
ル溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈する。これとは別に
、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM NaCl、pH4.
5)を1mg/mLのストックから調製する。脂質溶液をmRNA水溶液に急速に注入し
、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得る。得られるナノ粒子懸濁液を濾過し、
1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~8℃で保存する
。GAAカプセル化mRNAの最終濃度、Zave、Dv(50)及びDv(90)を測
定する。
【0197】
E. HGT5001
HGT5001、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg/mL
エタノール溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈する。これ
とは別に、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM NaCl、
pH4.5)を1mg/mLのストックから調製する。脂質溶液をmRNA水溶液に急速
に注入し、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得る。得られるナノ粒子懸濁液を
濾過し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~8℃で
保存する。GAAカプセル化mRNAの最終濃度、Zave、Dv(50)及びDv(9
0)を測定する。
【0198】
F. HGT5000
HGT5000、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg/mL
エタノール溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈する。これ
とは別に、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM NaCl、
pH4.5)を1mg/mLのストックから調製する。脂質溶液をmRNA水溶液に急速
に注入し、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得る。得られるナノ粒子懸濁液を
濾過し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~8℃で
保存する。GAAカプセル化mRNAの最終濃度、Zave、Dv(50)及びDv(9
0)を測定する。
【0199】
G. DLinKC2DMA
DLinKC2DMA、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg
/mLエタノール溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈する
。これとは別に、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM Na
Cl、pH4.5)を1mg/mLのストックから調製する。脂質溶液をmRNA水溶液
に急速に注入し、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得る。得られるナノ粒子懸
濁液を濾過し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~
8℃で保存する。GAAカプセル化mRNAの最終濃度、Zave、Dv(50)及びD
(90)を測定する。
【0200】
H. DODAP
DODAP、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg/mLエタ
ノール溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈する。これとは
別に、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM NaCl、pH
4.5)を1mg/mLのストックから調製する。脂質溶液をmRNA水溶液に急速に注
入し、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得る。得られるナノ粒子懸濁液を濾過
し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~8℃で保存
する。GAAカプセル化mRNAの最終濃度、Zave、Dv(50)及びDv(90)
を測定する。
【0201】
I. DODMA
DODMA、DOPE、コレステロール及びDMG‐PEG2Kの50mg/mLエタ
ノール溶液のアリコートを混合し、最終体積3mLまでエタノールで希釈する。これとは
別に、GAA mRNAの緩衝水溶液(10mMクエン酸/150mM NaCl、pH
4.5)を1mg/mLのストックから調製する。脂質溶液をmRNA水溶液に急速に注
入し、振盪して20%エタノール中の最終懸濁液を得る。得られるナノ粒子懸濁液を濾過
し、1×PBS(pH7.4)でダイアフィルトレーションし、濃縮し、2~8℃で保存
する。GAAカプセル化mRNAの最終濃度、Zave、Dv(50)及びDv(90)
を測定する。
【0202】
実施例2. GAA mRNAを充填したリポソームナノ粒子の静脈内投与
本実施例は、GAA mRNAを充填したリポソームナノ粒子を投与する例示的な方法
、及びin vivoで様々な標的組織中のGAA mRNA及びグリコーゲンを分析す
る方法を説明する。
【0203】
全ての研究は、GAAノックアウトマウスを用いて行った。マウスを、1.0mg/k
g用量の単回ボーラス尾静脈注射により、ヒトGAA mRNAを充填したcKK‐E1
2に基づく脂質ナノ粒子で処置した。マウスを殺処分し、30分、3時間、6時間、12
時間、24時間、48時間、72時間及び7日目に生理食塩水で灌流した。
【0204】
各マウスの肝臓及び筋肉などの組織を採取し、別々の部分に配分し、10%中性緩衝ホ
ルマリンまたは急速凍結保存し、分析のために-80℃で保存した。
【0205】
処理したマウスの筋肉内での活性医薬成分(GAA mRNA)の直接検出を、in
situハイブリダイゼーション(ISH)に基づく方法を用いて達成した。図1A及び
1Bに示すように、6時間及び12時間目に、外来性ヒトGAAメッセンジャーRNAを
検出した。
【0206】
GAA mRNA脂質ナノ粒子の投与後、肝グリコーゲンレベル(図2A)は、未処理
GAAノックアウトマウスの肝グリコーゲンレベル(図2B)に比べて低下した。
【0207】
実施例3.GAA mRNAを充填したリポソームナノ粒子の筋肉内投与
本実施例は、GAA mRNAを充填したリポソームナノ粒子を投与する例示的な方法
、及びin vivoでの様々な標的組織におけるGAA mRNA及びグリコーゲンの
分析方法を例示する。
【0208】
全ての研究は、GAAノックアウトマウスを用いて行った。マウスを、1.0mg/k
g用量の単回筋肉内注射によって、ヒトGAA mRNAを充填したcKK‐E12に基
づく脂質ナノ粒子で処置した。マウスを殺処分し、24時間目に生理食塩水で灌流した。
【0209】
各マウスの肝臓及び筋肉などの組織を採取し、別々の部分に配分し、10%中性緩衝ホ
ルマリンまたは急速凍結保存して、分析のために-80℃で保存した。
【0210】
処理したマウスの筋肉内での活性医薬成分(GAA mRNA)の直接検出を、in
situハイブリダイゼーション(ISH)に基づく方法を用いて達成した。図3に示す
ように、24時間目に、外来性ヒトGAAメッセンジャーRNAを高レベルで検出した。
【0211】
GAA mRNA脂質ナノ粒子の投与後に、四頭筋グリコーゲンレベル(図4A及び4
B)は、未処理のGAAノックアウトマウスの四頭筋グリコーゲンレベル(図4C及び4
D)に比べて低下していた。
【0212】
均等物
当業者であれば、本明細書に記載する本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を
認識し、または日常的な実験を用いて確認するであろう。本発明の範囲は、上記の説明に
限定することを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲にこれを記載する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
【配列表】
2023126977000001.app