(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127019
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】色覚特性測定装置、眼鏡レンズの製造方法、眼鏡レンズ
(51)【国際特許分類】
A61B 3/06 20060101AFI20230906BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20230906BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20230906BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20230906BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61B3/06
G02C13/00
G02C7/02
A61B3/113
A61B3/10
A61B3/10 800
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030530
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】394019543
【氏名又は名称】株式会社ホプニック研究所
(71)【出願人】
【識別番号】503164487
【氏名又は名称】池田 順治
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】松田 隼己
(72)【発明者】
【氏名】冨山 晃義
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 則彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 順治
【テーマコード(参考)】
2H006
4C316
【Fターム(参考)】
2H006BA06
2H006DA01
2H006DA05
4C316AA19
4C316AA21
4C316AA30
4C316AB06
4C316AB13
4C316FB11
4C316FB12
4C316FC21
4C316FC28
4C316FY02
4C316FY10
4C316FZ02
(57)【要約】
【課題】被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置を提供すること。
【解決手段】被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置は、被検者に所定の指標を提示する表示部と、指標に照明光を照射する照明部と、被検者の眼の動き、脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定する測定部と、表示部および照明部を制御する制御部と、を備え、制御部は、照明光の波長を所定の波長幅で変化させながら、指標を動かし、照明光の波長ごとに測定部の測定結果を受け取り、測定結果に基づいて色覚特性を測定する、ことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置であって、
前記被検者に所定の指標を提示する表示部と、
前記指標に照明光を照射する照明部と、
前記被検者の眼の動き、脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定する測定部と、
前記表示部および前記照明部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記照明光の波長を所定の波長幅で変化させながら、前記指標を動かし、
前記照明光の波長ごとに前記測定部の測定結果を受け取り、
前記測定結果に基づいて、前記色覚特性を測定する、
ことを特徴とする色覚特性測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記照明光の波長を400nm~900nmまで、20~50nmの波長幅で変化させることを特徴とする請求項1に記載の色覚特性測定装置。
【請求項3】
被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置であって、
前記被検者に所定の指標を提示する表示部と、
前記被検者の脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定する測定部と、
前記表示部および前記照明部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記指標の色座標を変化させ、
前記指標の色座標ごとに前記測定部の測定結果を受け取り、前記測定結果に基づいて、前記色覚特性を測定する、
ことを特徴とする色覚特性測定装置。
【請求項4】
前記指標の色座標を測定する色彩計をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の色覚特性測定装置。
【請求項5】
照明光の色温度を変更可能な照明部をさらに備え、
前記制御部は、前記被検者の求めに応じて前記照明光の色温度を変更し、所定の測定環境を生成する、
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の色覚特性測定装置。
【請求項6】
レンズ基材と、前記レンズ基材の表面に形成された付着膜と、を有する眼鏡レンズの製造方法であって、
前記眼鏡レンズを使用する使用者に、所定の指標を提示するステップと、
前記指標を照明する照明光の波長を変化させる、または前記指標の色を変化させて、前記使用者の色覚特性を測定するステップと、
前記色覚特性の測定結果に基づいて、前記色覚特性が略フラットとなるように補正量を算出するステップと、
前記補正量に基づいて、前記付着膜に使用する吸収色素を選択し、前記吸収色素の濃度を決定するステップと、
前記選択された吸収色素と前記決定された濃度に基づいて、前記付着膜を前記レンズ基材上に形成するステップと、
を含む、眼鏡レンズの製造方法。
【請求項7】
前記補正量を算出するステップは、前記色覚特性が低下している部分の補色の光を吸収するように前記補正量を算出する、請求項6に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項8】
前記色覚特性を測定するステップは、
前記照明光の波長を所定の波長幅で変化させながら、前記指標を動かし、
前記照明光の波長ごとに前記使用者の眼の動き、脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定することによって、前記色覚特性を測定する、
請求項6または請求項7に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項9】
前記色覚特性を測定するステップは、
前記指標の色座標を変化させ、
前記指標の色座標ごとに前記使用者の脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定することによって、前記色覚特性を測定する、
請求項6または請求項7に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項10】
前記指標を提示するステップおよび前記色覚特性を測定するステップが、薬局又は眼鏡販売店において実行され、
前記色覚特性を測定するステップは、測定結果を前記眼鏡レンズの製造会社に送信し、
前記補正量を算出するステップ、前記吸収色素を選択し前記吸収色素の濃度を決定するステップ、および前記付着膜を前記レンズ基材上に形成するステップが、前記眼鏡レンズの前記製造会社において実行される、
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項11】
前記色覚特性を測定するステップの測定結果が、前記薬局、前記眼鏡販売店および前記製造会社の少なくともいずれかにおいて、経時的に記録されることを特徴とする請求項10に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項12】
前記指標を提示するステップおよび前記色覚特性を測定するステップが、インターネットを介して、前記使用者の自宅において実行され、
前記色覚特性を測定するステップは、測定結果を前記眼鏡レンズの製造会社に送信し、
前記補正量を算出するステップ、前記吸収色素を選択し前記吸収色素の濃度を決定するステップ、および前記付着膜を前記レンズ基材上に形成するステップが、前記眼鏡レンズの前記製造会社において実行される、
請求項6から請求項9のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項13】
前記色覚特性を測定するステップの測定結果が、前記製造会社において、経時的に記録されることを特徴とする請求項12に記載の眼鏡レンズの製造方法。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の眼鏡レンズの製造方法によって製造されたことを特徴とする眼鏡レンズ。
【請求項15】
前記付着膜が、前記レンズ基材に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項14に記載の眼鏡レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置と、色覚特性を補正する眼鏡レンズを製造するための眼鏡レンズの製造方法と、該製造方法によって製造された眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡を所望する患者や顧客(使用者)に対して、病院や眼鏡店において、他覚屈折測定および自覚屈折測定が行われている。
例えば、他覚屈折測定においては、眼屈折力を測定するオートレフラクトメータや、角膜形状を測定するオートケラトメータ等が使用されており(例えば、特許文献1)、自覚屈折測定においては、各種視標を提示する視標提示装置や、被検眼にレンズを切換適用して屈折力を矯正するフォロプタを備えた検眼装置等が使用される(例えば、特許文献2)。
【0003】
そして、これらの眼屈折力の測定結果に基づいて処方度数を決定したり、処方度数の眼鏡と以前から使用している眼鏡との装用感の相違を確認させるなど、いわゆる仮枠検査が行われ、使用者の眼屈折力にマッチした眼鏡(眼鏡レンズ)が作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-280623号公報
【特許文献2】特開2001-346762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の検査方法と眼鏡レンズの製造方法によれば、使用者の眼屈折力に応じた眼鏡レンズが得られるものの(つまり、所定の矯正視力は得られるものの)、使用者の眼の他の視覚特性(例えば、色覚特性、波長覚特性)は補正(矯正)されず、色覚特性等に起因する不快感や見難さを解消することはできなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置を提供すること、色覚特性を補正する眼鏡レンズを製造するための眼鏡レンズの製造方法を提供すること、およびこのような製造方法によって色覚特性を補正する眼鏡レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の色覚特性測定装置は、被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置であって、被検者に所定の指標を提示する表示部と、指標に照明光を照射する照明部と、被検者の眼の動き、脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定する測定部と、表示部および照明部を制御する制御部と、を備え、制御部は、照明光の波長を所定の波長幅で変化させながら、指標を動かし、照明光の波長ごとに測定部の測定結果を受け取り、測定結果に基づいて色覚特性を測定する、ことを特徴とする。
【0008】
また、制御部は、照明光の波長を400nm~900nmまで、20~50nmの波長幅で変化させることが望ましい。
【0009】
また、別の観点からは、本発明の色覚特性測定装置は、被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置であって、被検者に所定の指標を提示する表示部と、被検者の脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定する測定部と、表示部および照明部を制御する制御部と、を備え、制御部は、指標の色座標を変化させ、指標の色座標ごとに測定部の測定結果を受け取り、測定結果に基づいて色覚特性を測定する、ことを特徴とする。
【0010】
また、指標の色座標を測定する色彩計をさらに備えることが望ましい。
【0011】
また、照明光の色温度を変更可能な照明部をさらに備え、制御部は、被検者の求めに応じて照明光の色温度を変更し、所定の測定環境を生成することが望ましい。
【0012】
また、別の観点からは、本発明の眼鏡レンズの製造方法は、レンズ基材と、レンズ基材の表面に形成された付着膜と、を有する眼鏡レンズの製造方法であって、眼鏡レンズを使用する使用者に、所定の指標を提示するステップと、指標を照明する照明光の波長を変化させる、または指標の色を変化させて、使用者の色覚特性を測定するステップと、色覚特性の測定結果に基づいて、色覚特性が略フラットとなるように補正量を算出するステップと、補正量に基づいて、付着膜に使用する吸収色素を選択し、吸収色素の濃度を決定するステップと、選択された吸収色素と決定された濃度に基づいて、付着膜をレンズ基材上に形成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、補正量を算出するステップは、色覚特性が低下している部分の補色の光を吸収するように補正量を算出することが望ましい。
【0014】
また、色覚特性を測定するステップは、照明光の波長を所定の波長幅で変化させながら、指標を動かし、照明光の波長ごとに使用者の眼の動き、脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定することによって、色覚特性を測定することが望ましい。
【0015】
また、色覚特性を測定するステップは、指標の色座標を変化させ、指標の色座標ごとに使用者の脳波または脳血流の少なくともいずれか1つを測定することによって、色覚特性を測定することが望ましい。
【0016】
また、指標を提示するステップおよび色覚特性を測定するステップが、薬局又は眼鏡販売店において実行され、色覚特性を測定するステップは、測定結果を眼鏡レンズの製造会社に送信し、補正量を算出するステップ、吸収色素を選択し吸収色素の濃度を決定するステップ、および付着膜を前記レンズ基材上に形成するステップが、眼鏡レンズの製造会社において実行されることが望ましい。また、この場合、色覚特性を測定するステップの測定結果が、薬局、眼鏡販売店および製造会社の少なくともいずれかにおいて、経時的に記録されることが望ましい。
【0017】
また、指標を提示するステップおよび色覚特性を測定するステップが、インターネットを介して、使用者の自宅において実行され、色覚特性を測定するステップは、測定結果を眼鏡レンズの製造会社に送信し、補正量を算出するステップ、吸収色素を選択し吸収色素の濃度を決定するステップ、および付着膜を前記レンズ基材上に形成するステップが、眼鏡レンズの製造会社において実行されることが望ましい。また、この場合、色覚特性を測定するステップの測定結果が、製造会社において、経時的に記録されることが望ましい。
【0018】
また、別の観点からは、本発明の眼鏡レンズは、上述のいずれかの眼鏡レンズの製造方法によって製造されたことを特徴とする。また、この場合、付着膜が、レンズ基材に対して着脱可能に構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、被検者の眼の色覚特性を測定する色覚特性測定装置が実現される。また、色覚特性を補正する眼鏡レンズを製造するための眼鏡レンズの製造方法が実現される。また、このような製造方法によって、色覚特性を補正する眼鏡レンズが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る眼鏡レンズの構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る眼鏡レンズを製造するために使用される、色覚特性測定装置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2の色覚特性測定装置の測定画像と、被検者の眼の動きを説明する図である。
【
図4】
図4は、
図2の色覚特性測定装置によって得られる測定結果の一例を示す図 である。
【
図5】
図5は、
図4の色覚特性に対応した補正量(吸収率)を示す図である。
【
図6】
図6は、
図2の色覚特性測定装置の測定画像の指標の変形例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図2の色覚特性測定装置の測定画像の変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る眼鏡レンズの付着膜の変形例を説明する図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る眼鏡レンズの効果を確認するための眼鏡55を示す図である。
【
図10】
図10は、
図2の色覚特性測定装置の色覚特性の測定の他の態様を説明する図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る眼鏡レンズが製造されるまでのシステムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る眼鏡レンズ100の構成を説明する図であり、
図1(a)は平面図であり、
図1(b)は縦断面図であり、
図1(c)は
図1(b)のA部拡大図である。本実施形態の眼鏡レンズ100は、使用者の眼屈折力に応じたパワー(度数)を有し、かつ使用者の眼の色覚特性を補正する光学素子である。
なお、一般に、「色覚」とは、色に関わる感覚(主として光のスペクトルの違いによって生じる視覚的感覚)を指すが、本明細書においては、特に照明光の波長に関わる感覚を「波長覚」ともいう。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の眼鏡レンズ100は、透光性を有し、例えば、直径70mm、厚さ3mmの円板状の形状を呈する光学素子であり、使用者の眼屈折力に応じたパワー(度数)が付与されたプラスチック基材101(透明基材)と、プラスチック基材101の一方の主面上(
図1(b)において上側の面)に形成された付着膜102とから構成されている。
【0024】
[プラスチック基材]
本実施形態のプラスチック基材101は、一般的なレンズブランクスであり、具体的には、例えば、ウレタン系熱硬化性樹脂、(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種から形成されている。
なお、本実施形態においては、プラスチック基材101として、一般的なレンズブランクスを使用するものとして説明するが、例えば、眼鏡使用者が現在使用している眼鏡レンズをプラスチック基材101として使用してもよい。
【0025】
[付着膜]
本実施形態の付着膜102は、特定の波長の光を吸収する色素と樹脂とによって構成された層である。付着膜102は、例えば、1種以上の吸収色素と、透明樹脂とを含むものであり、透明樹脂中に吸収色素が均一に溶解または分散してなるものが好ましい。
付着膜102を構成する吸収色素としては、従来公知のものを採用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系色素(例えば、三井化学株式会社製:UV+420用UV吸収剤)、メロシアニン系色素(例えば、山田化学工業株式会社製:FDB-006)、アントラキノン系色素(例えば、紀和化学工業株式会社製:KP PLAST Green G、KP PLAST Red HB)、テトラアザポルフィリン系色素(例えば、山本化成株式会社製:PD-311S)等を使用することができる。
【0026】
付着膜102は、上記可視光吸収色素および透明樹脂以外に、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等の任意成分を含有してもよい。
【0027】
このように、本実施形態の付着膜102は、プラスチック基材101上に形成され、特定の波長の光を吸収するように構成された層であり、後述するように、眼鏡レンズ100の使用者の眼の色覚特性に応じて(つまり、色覚特性の測定結果に応じて)、それを補正するような最適な色素が選択されて使用される。
従って、プラスチック基材101上に付着膜102が形成されることにより、使用者の眼の色覚特性が補正され、色覚特性等に起因する不快感や見難さが解消される。
なお、本実施形態の付着膜102は、プラスチック基材101の一方の主面上(
図1(b)において上側の面)に形成されているが、このような構成に限定されるものではない。付着膜102は、プラスチック基材101の他方の主面上(
図1(b)において下側の面)に形成されてもよく、また、プラスチック基材101の両面に形成されてもよい。また、付着膜102は必ずしも一層である必要はなく、複数層で構成することもできる。
【0028】
[眼鏡レンズ100の製造方法]
本実施形態の眼鏡レンズ100を製造するにあたっては、先ず、使用者の眼屈折力および眼の色覚特性(波長覚特性)を測定し、それらの測定結果に基づいて眼鏡レンズ100を製造する。以下、眼鏡レンズ100の具体的な製造方法について説明する。
【0029】
(1.眼屈折力の測定)
眼屈折力の測定においては、従来のオートレフラクトメータやフォロプタを使用して、使用者の眼屈折力(他覚屈折測定、自覚屈折測定)を測定し、処方度数を決定する。
【0030】
(2.色覚特性の測定)
次いで、色覚特性測定装置40を使用して、使用者の眼の色覚特性(波長覚特性)を測定する。
図2は、本実施形態の眼鏡レンズ100を製造するために使用される、色覚特性測定装置40の一例を示す図である。
図2に示すように、色覚特性測定装置40は、測定室26内に、被検者22(使用者)に測定画像15A、15Bを提示するためのディスプレイ24と、被検者22の眼の動きを検出するカメラ21と、ディスプレイ24に向けて特定波長の光を照射する照明23と、を備え、測定室26外に、ディスプレイ24、カメラ21、照明23を制御すると共に各種演算を行う制御部25を備えており、照明23の照明光の波長を順次切り替えながら、測定画像15A、15Bを順次切り替えることによって、各波長における色覚特性(波長覚特性)を測定する。
なお、本実施形態の色覚特性(波長覚特性)の測定は、被検者22が「1.眼屈折力の測定」で得られた処方度数のトライアルレンズ(トライアルフレーム)を装着した状態、または現在使用している眼鏡(眼鏡レンズ)を装着した状態で、色覚特性測定装置40の覗き窓(不図示)から色覚特性測定装置40内のディスプレイ24に提示される測定画像を見ることによって行われる。
なお、照明23としては、特定の波長の光を照射可能なLED電球であり、例えば、Isteq社製の波長可変照明XWS-M(190nm~2500nm)を使用できる。
【0031】
図3は、ディスプレイ24に表示される測定画像15A、15B(
図3(a)、(b))と、カメラ21によって検出される被検者22の眼11の動き(
図3(c)、(d))を説明する図である。なお、
図3(c)、(d)においては、説明の便宜のため、一方の眼11のみを示すが、本実施形態においては2台のカメラ21によって両眼の動きが検出される。
色覚特性(波長覚特性)の測定においては、照明23の照明光の波長を、例えば400nm~900nmまで、20~50nm波長幅で順次切り替えながら、星形の指標10Aが左側に配置された測定画像15Aと、星形の指標10Bが右側に配置された測定画像15Bを順に表示し(
図3(a)、(b))、照明光の各波長における眼11の動きをカメラ21で検出する(
図3(c)、(d))。そして、カメラ21で検出された眼11の動きから、指標10Aから指標10Bの動き(つまり、測定画像15Aから測定画像15Bへの切り替え)に対する眼11の反応速度を求める。眼11の反応速度が、指標10Aから指標10Bの動きに対して遅くなる場合、その照明光において指標10A、10Bが見え難いことを意味するから、反応速度は眼11の感度を示すパラメータである。従って、本実施形態においては、眼11の反応速度に基づいて照明光の各波長における眼11の感度を算出する。
【0032】
図4は、色覚特性測定装置40によって得られる測定結果の一例であり、縦軸は眼11の感度(%)を示し、横軸は照明23の波長を示している。
図4に示す例では、眼11の感度が、515nm付近で40%に低下し、565nm付近で80%に低下していることから、緑色の光と黄色の光に対応する波長の感度が鈍いと判断される。
【0033】
(3.色覚特性の補正量の算出)
次いで、「2.色覚特性の測定」の測定結果に基づいて、色覚特性(波長覚特性)の補正量を算出する。具体的には、
図4の場合、眼11の感度が緑色の光と黄色の光に対応する波長において低下していることから、これを略フラットとなるように補正するための光の吸収率を補正量として算出する。
図5は、
図4の色覚特性(波長覚特性)に対応した補正量(吸収率)を示す図であり、縦軸は眼11の感度(%)を示し、横軸は照明23の波長を示している。
図4の場合、眼11の感度が緑色の光に対して40%低下し、黄色の光に対して80%低下していることから、これを補正するために緑色の補色(つまり、赤色(波長675nm))の光を60%吸収し、黄色の補色(つまり、青色(波長450nm))の光を20%吸収する。
【0034】
(4.付着膜102の色素の選択と各色素の濃度の決定)
次いで、「3.色覚特性の補正量の算出」で得られた補正量(吸収率)に基づいて、付着膜102で使用する色素の選択と、各色素の濃度を決定する。
具体的には、
図5の場合、赤色(波長675nm)の光を60%吸収し、青色(波長450nm)の光を20%吸収する必要があるため、波長675nm付近に強い吸収ピークを有する色素と、波長450nm付近に強い吸収ピークを有する色素を選択し、赤色(波長675nm)の光を60%吸収するために必要な濃度(添加量)と、青色(波長450nm)の光を20%吸収するために必要な濃度(添加量)を決定する。
【0035】
(5.プラスチック基材101の準備)
次いで、「1.眼屈折力の測定」で得られた処方度数のプラスチック基材101を準備する。なお、プラスチック基材101としては、一般的なレンズブランクスを使用できるが、これに代えて、眼鏡使用者が現在使用している眼鏡レンズを使用してもよい。
【0036】
(6.付着膜102の形成)
次いで、「5.プラスチック基材101の準備」で準備したプラスチック基材101の一方の主面上(
図1(b)において上側の面)に、付着膜102を形成する。
具体的には、「4.付着膜102の色素の選択と各色素の濃度の決定」で選択された各色素と、透明樹脂と、任意配合成分とを、溶媒に溶解または分散させて樹脂膜形成液を調製し、これを塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させることにより形成する。
また、樹脂膜形成液の塗工には、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、インクジェット法等から選ばれる一種以上のコーティング法を採用することができる。
【0037】
このように、付着膜102は、プラスチック基材101上に形成され、特定の波長の光を吸収するように構成された層であり、使用者の眼の色覚特性に応じて(つまり、色覚特性(波長覚特性)の測定結果に応じて)、それを補正するような最適な色素が選択され、その添加量(濃度)が計算されて使用される。
従って、付着膜102が形成されることにより、使用者の眼の色覚特性(波長覚特性)が補正され、色覚特性等に起因する不快感や見難さが解消される。
なお、本実施形態の付着膜102は、プラスチック基材101の一方の主面上(
図1(b)において上側の面)に形成されているが、このような構成に限定されるものではない。付着膜102は、プラスチック基材101の他方の主面上(
図1(b)において下側の面)に形成されてもよく、また、プラスチック基材101の両面に形成されてもよい。また、付着膜102は必ずしも一層である必要はなく、複数層で構成することもできる。
また、付着膜102は、必ずしもプラスチック基材101に固着されている必要はなく、プラスチック基材101に対して着脱可能(取り外し可能)に構成されてもよい。
【0038】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0039】
(指標10A、10Bの変形例)
例えば、本実施形態の色覚特性測定装置40においては、星形の指標10A、10Bを使用者に提示する構成としたが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
図6は、指標10A、10Bの変形例を示す図である。
図6(a)は、ライン間隔が徐々に変化する指標であり、どこまでのラインを認識できるかを評価することにより、コントラスト感度を評価することができる。
図6(b)は、19個の丸形の指標を稠密に配置したものであり、各指標をランダムに点灯、又は、表示、又は、色、模様を変化させて、使用者の眼の動きを測定してもよい。
【0040】
(測定画像15A、15Bの変形例)
また、本実施形態の色覚特性測定装置40においては、照明23の照明光の波長を順次切り替えながら、測定画像15A、15Bを順次切り替えることによって、各波長における色覚特性(波長覚特性)を測定したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
図7は、測定画像15A、15Bの変形例を示す図である。
図7では、ディスプレイ24に、2つの指標10が左右に配置された測定画像15が提示され、照明23の光源23a、23bから異なる波長の光が、各指標10に向けて照射されるようになっている。例えば、光源23aから左側の指標10に向けて、波長300nmの光を照射し、光源23bから右側の指標10に向けて375nmの光を照射し、両者を比較して見えやすさを評価する。次いで、光源23aの光の波長を固定し、光源23bの光の波長を+75nmずつ変化させ、両指標10を対比評価することで色覚特性(波長覚特性)が得られる。なお、この場合の対比評価は、被検者22の主観評価でもよいし、後述する脳波測定による評価でもよい。
なお、本変形例においては、被検者22の眼11の動きを検出しないため、色覚特性測定装置40のカメラ21が不要となる。また、被検者22の心理的な本質的な意思が反映されるため、より正確に色覚特性(波長覚特性)を測定できる。
【0041】
(付着膜102の変形例)
また、本実施形態の付着膜102は、プラスチック基材101上に形成、固着されるものとして説明したが、そのような構成に限定されるものではない。
図8は、付着膜102の変形例を説明する図である。
本変形例の付着膜102は、透明樹脂としてシリコン等を含み、着脱可能な部材として構成され、眼鏡53に対して繰り返し取付け可能なものとなっている。
【0042】
図8は、付着膜102が眼鏡53に取り付けられた状態を示す斜視図である。眼鏡53は、フレーム63と、フレーム63に保持された2つのレンズ31と、を備え、レンズ31の表面には、使用者の色覚特性に応じた付着膜102が貼り付けられている。
このような構成によれば、色覚特性(波長覚特性)の補正が必要な場合(例えば、屋外で太陽光がまぶしい時など、不快に感じる場合)に、必要に応じて付着膜102を眼鏡53に張り付けることができる。
なお、付着膜102は、着脱し易いように、レンズ31の外形よりも若干小さくなっていることが好ましい。また、付着膜102は、使い捨てにしてもよい。
【0043】
また、このような着脱可能な付着膜102は、他の用途の眼鏡にも適用可能である。
図9は、上記「4.付着膜102の色素の選択と各色素の濃度の決定」の後に、その効果を確認するための眼鏡55を示している。眼鏡55は、フレーム63と、フレーム63に保持された2つのレンズ64と、を備え、レンズ64は、スリット65を介して2重構造となっており、スリット65に付着膜102を収容できるようになっている。付着膜102は、吸収波長の異なる(つまり、色素およびその濃度の異なる)複数種類(例えば、15種類)が予め用意されており、「4.付着膜102の色素の選択と各色素の濃度の決定」の後、その結果が正しいか否かを確認するため、「4.付着膜102の色素の選択と各色素の濃度の決定」で決定された色素および濃度で作成された付着膜102を選び、スリット65に収容する。そして、被検者22は、スリット65に付着膜102が収容された状態の眼鏡55を装着し、色覚測定(波長覚特性)の結果が正しいか否か(つまり、その補正の効果が得られているか否か)を事前に確認することができる。
【0044】
(「2.色覚特性の測定」の他の態様)
本実施形態の「2.色覚特性の測定」においては、色覚特性測定装置40によって被検者22の眼11の反応速度を求め、この反応速度に基づいて照明光の各波長における眼11の感度を算出したが、必ずしもこのような方法(態様)に限定されるものではない。
図10は、「2.色覚特性の測定」の他の態様を説明する図であり、
図2の色覚特性測定装置40の被検者22の部分の拡大図である。
本態様においては、カメラ21による被検者22の眼11の動きの検出に代えて、測定具71によって被検者22の脳波、脳血流または眼電位を測定し、これらの測定結果(情報)から照明光の各波長における眼11の感度を算出する。
【0045】
具体的には、脳波を測定する場合、被検者22がストレスを感じている場合(つまり、指標10A、10Bが見え難いと感じている場合)には、β波(14~23Hz)が観測され、被検者22が比較的リラックスしている場合(つまり、指標10A、10Bがよく見えている場合)には、α波(α1:7~8Hz、α2:9~11Hz、α3:12~13Hz)が観測されるため、これらの測定値に基づいて(例えば、α波とβ波の比率など)、照明光の各波長における眼11の感度を算出する。
【0046】
また、脳血流を測定する場合、被検者22がストレスを感じている場合(つまり、指標10A、10Bが見え難いと感じている場合)には、脳血流量が増加し、被検者22が比較的リラックスしている場合(つまり、指標10A、10Bがよく見えている場合)には、脳血流量が減少する傾向にあるから、脳血流量の測定値に基づいて、照明光の各波長における眼11の感度を算出する。
【0047】
また、眼電位を測定する場合、被検者22がストレスを感じている場合(つまり、指標10A、10Bが見え難いと感じている場合)には、眼電位の変化が遅くなり、被検者22が比較的リラックスしている場合(つまり、指標10A、10Bがよく見えている場合)には、眼電位の変化が速くなる傾向にあるから、眼電位の変化に基づいて、照明光の各波長における眼11の感度を算出する。
なお、測定具71としては、例えば、株式会社プロアシスト製の脳波センサやPGV株式会社の脳波センサを利用できる。また、株式会社リトルソフトウェア製の生体情報(脳の情報)を測定するしくみも利用できる。
本態様では、被検者22の眼の動きを検出する必要がないため、カメラ21(
図2)が不要となる。
【0048】
(色覚特性測定装置40の変形例)
本実施形態の「2.色覚特性の測定」においては、色覚特性測定装置40を使用して、照明23の照明光の波長を順次切り替えながら、測定画像15A、15Bを順次切り替えることにより、各波長における眼11の感度を算出したが、色覚特性測定装置40は、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
図11は、色覚特性測定装置40の変形例を説明する図であり、
図11(a)は、色覚特性測定装置40の断面図を示し、
図11(b)、(c)は、色覚特性測定装置40のディスプレイ24に表示される測定画像15の一例を示している。
【0049】
図11に示すように、本変形例の色覚特性測定装置40は、測定室26内に、被検者22(使用者)に測定画像15を提示するためのディスプレイ24と、測定室26内を所定の色温度で照明する照明23と、色彩計72と、を備え、測定室26外に、被検者22の脳波を検出する測定具71と、ディスプレイ24、照明23、測定具71を制御すると共に各種演算を行う制御部25を備えており、照明23による所定の照明下で、測定画像15の指標10や背景90の色を変更しながら、被検者22(使用者)の眼の色覚特性を測定する。
【0050】
なお、本変形例の色覚特性測定装置40による色覚特性の測定は、被検者22が上記「1.眼屈折力の測定」で得られた処方度数のトライアルレンズ(トライアルフレーム)を装着した状態、または現在使用している眼鏡(眼鏡レンズ)を装着した状態で、色覚特性測定装置40の覗き窓(不図示)から色覚特性測定装置40内のディスプレイ24に提示される測定画像を見ることによって行われる。
なお、照明23としては、色温度を変更可能なLED電球を使用し、具体的には、被検者22が所望する環境条件(例えば、生活空間や作業場所の照明)に応じて、電球色(2800K)、温白色(3500K)、白色(4200K)、昼白色(5000K)、昼光色(6500K)のいずれかに設定される。
具体的は環境条件としては、例えば、「1.アウトドアモード(晴天時、屋外での作業やスポーツ時を想定):昼光色(6500K)」、「2.オフィスモード(一般的なオフィスでのデスクワーク時を想定):昼白色(5000K)」、「3.リビングモード(一般的なリビングルームでの読書やテレビ鑑賞時を想定):白色(4200K)」、「4.サンセットモード(夕方の屋外および曇天時を想定):温白色(3500K)」、「5.ナイトモード(夜間の屋外、ナイトドライブでの使用を想定):電球色(2800K)」である。
【0051】
色彩計72は、ディスプレイ24の表示(つまり、測定画像15)を、Lab色空間で数値化する装置である。色彩計72としては、例えば、株式会社パパラボ製の色彩計PPLB-500Bを使用することができる。
【0052】
色覚特性の測定においては、色覚特性測定装置40のディスプレイ24に、
図11(b)または
図11(c)に示されるような測定画像15が表示される。
図11(b)の測定画像15には、指標10と背景90が含まれている。色覚特性の測定においては、指標10の色座標と背景90の色座標を相対的に少しずつ変化させ(例えば、b値またはa値の値を変化させ)、色彩計72で測定画像15の指標10と背景90の色座標をそれぞれ測定しながら、測定具71によって被検者22の脳波を測定する。そして、脳波の測定結果(情報)から、各色座標における眼11の感度を算出する。
図11(c)の測定画像15には、色座標がそれぞれ異なる指標10a~10gが含まれている。この測定画像15を使用した色覚特性の測定においては、隣接する指標間で色の違いを認識できるか否かを、被検者22の脳波によって測定する。そして、脳波の測定結果(情報)から、各色座標における眼11の感度を算出する。
【0053】
各色座標における眼11の感度が算出されると、被検者22が認識し難い、明度および色度がわかる。従って、かかる色度のデータに基づいて、付着膜102で使用する色素を選択し、明度のデータに基づいて、各色素の濃度を決定することができる。
【0054】
なお、上記の実施の形態では、種々の方法で色覚又は波長覚を測定したが、上記測定結果を記録する記録工程があることが好ましい。測定結果のデータを記録しておくことによって、次に眼鏡を作製するときに参考にできる。
【0055】
(眼鏡レンズ100を製造するまでのシステム)
図12は、眼鏡レンズ100が製造されるまでのシステムを説明する図である。
眼鏡レンズ100を所望するユーザとしては、眼に疾患を有する患者41と、それ以外の一般人が考えられる。ユーザが患者41の場合、患者41は、医院43に相談することになる。この場合、医院43は、薬局44、又は、眼鏡販売店45を紹介する。
【0056】
眼鏡レンズ100を所望するユーザが、一般人42の場合、一般人42は、薬局44、眼鏡販売店45、インターネット46のいずれかへ相談することになる。
薬局44、眼鏡販売店45では、色覚特性測定装置40を利用して、上述の「2.色覚特性の測定」が行われる。そして、その結果を、製造会社52へ送り、製造会社52において、「3.色覚特性の補正量の算出」、「4.付着膜102の色素の選択と各色素の濃度の決定」、「5.プラスチック基材101の準備」、「6.付着膜102の形成」が行われ、眼鏡レンズ100が作成される。
【0057】
インターネット46は、インターネットを介して製造会社52とやり取りする例である。以下、この場合を説明する。
【0058】
(1)色覚特性の測定
一般人42は、自宅などからインターネットを介して製造会社52とやり取りする。そして、例えば、インターネットのサイト上で、オンラインで色覚特性の測定を行う。
【0059】
<測定(1)>
例えば、
図2に示す色覚特性の測定を行う場合、一般人42のパソコンのディスプレイに対し、測定画像15A、15Bが提供される。
測定画像15A、15Bを見ているときの、眼の動きは、一般人42のパソコンに接続されたWebカメラによって撮影され、製造会社52側に送信され、眼11の反応速度が測定される。測定画像15A、15Bに照射される照明光の波長は、製造会社52側で順次変更される。このように、インターネットを利用することで、
図2に示す色覚特性の測定と同様の測定を行うことができる。
【0060】
<測定(2)>
例えば、
図10に示す、脳波等を用いて色覚特性の測定を行う場合、測定(1)と同様、各波長に対して、測定画像15A、15Bを提供し、脳血流測定(NIRS)、脳波などを測定する。なお、測定具71は、予め一般人42へ郵送される。測定が終了したら、測定データを測定具71に保存し、測定具71を製造会社52に返送する。製造会社52は、返送された測定具71からデータを取り出す。なお、測定データは、インターネットを介して、製造会社52に送信されても良い。
【0061】
(2)付着膜102の形成
製造会社52において、測定データに応じた付着膜102が決定され、プラスチック基材101上に付着膜102が形成される、または、事前に製造会社52へ郵送された眼鏡53に付着膜102が形成され、完成品(眼鏡レンズ100、眼鏡53または付着膜102)が一般人42へ送られる。
【0062】
このように、本システムによれば、インターネットを介して、簡単に眼鏡レンズ100(眼鏡53または付着膜102)を製造することができ、ユーザに対してよりスムーズに提供することができる。
【0063】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
10 :指標
10A :指標
10B :指標
10a :指標
10b :指標
10c :指標
10d :指標
10e :指標
10f :指標
10g :指標
11 :眼
15 :測定画像
15A :測定画像
15B :測定画像
21 :カメラ
22 :被検者
23 :照明
23a :光源
23b :光源
24 :ディスプレイ
25 :制御部
26 :測定室
31 :レンズ
40 :色覚特性測定装置
41 :患者
42 :一般人
43 :医院
44 :薬局
45 :眼鏡販売店
46 :インターネット
52 :製造会社
53 :眼鏡
55 :眼鏡
63 :フレーム
64 :レンズ
65 :スリット
71 :測定具
72 :色彩計
90 :背景
100 :眼鏡レンズ
101 :プラスチック基材
102 :付着膜