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特開2023-127035流動挙動予測システム、流動挙動予測方法、予測モデル生成方法および学習済予測モデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127035
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】流動挙動予測システム、流動挙動予測方法、予測モデル生成方法および学習済予測モデル
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20230906BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030571
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】賀川 理
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英樹
(72)【発明者】
【氏名】滝脇 賢也
(72)【発明者】
【氏名】前島 啓
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049DD01
5L049DD02
(57)【要約】
【課題】機械学習による予測モデルを用いて空間内の流体の挙動を予測することができる流動挙動予測技術を提供する。
【解決手段】流動挙動予測システム1は、少なくとも空間2の形状と空間2内の流体の挙動とを示す第1状態のデータを取得するデータ取得部11,12と、第1状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を入力、少なくとも第1状態よりも未来の流体の挙動を示す第2状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を出力とする教師データを用いてパラメータが機械学習された予測モデル20に、少なくともデータ取得部11,12で取得された第1状態のデータを入力し、第2状態のデータを出力させる、コンピュータ17と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも空間の形状と前記空間内の流体の挙動とを示す第1状態のデータを取得するデータ取得部と、
前記第1状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を入力、少なくとも前記第1状態よりも未来の前記流体の挙動を示す第2状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を出力とする教師データを用いてパラメータが機械学習された予測モデルに、
少なくとも前記データ取得部で取得された前記第1状態のデータを入力し、前記第2状態のデータを出力させる、
コンピュータと、
を備える、
流動挙動予測システム。
【請求項2】
前記予測モデルは、任意の基礎形状を有する前記空間の複数の状態をシミュレーションして得られたデータを入力および出力とする前記教師データを用いて前記パラメータが機械学習されている、
請求項1に記載の流動挙動予測システム。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記空間内に存在して前記流体の挙動に影響を与える物体の形状を含む前記空間の形状に関するデータを取得する、
請求項1または請求項2に記載の流動挙動予測システム。
【請求項4】
前記データ取得部は、前記空間の任意の位置の前記流体の物理量に関するデータを取得する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の流動挙動予測システム。
【請求項5】
前記流体の挙動は、前記流体の速度と方向の少なくとも一方の物理量を含み、
前記第1状態および前記第2状態のデータは、前記流体の速度と方向以外の物理量をさらに含む、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の流動挙動予測システム。
【請求項6】
前記コンピュータは、前記予測モデルから出力された前記第2状態のデータを前記第1状態のデータとして前記予測モデルに入力し、さらに未来の前記流体の挙動を示す前記第2状態のデータを出力させる、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の流動挙動予測システム。
【請求項7】
前記予測モデルから出力された前記第2状態のデータに基づいて、前記コンピュータにより生成される前記流体の状態を可視化した可視化情報を表示する表示部を備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の流動挙動予測システム。
【請求項8】
前記コンピュータは、前記予測モデルから出力された前記第2状態のデータに基づいて、前記空間のそれぞれの位置の前記流体の物理量を算出し、これらの物理量を、コンター、ベクトル、等値面の少なくともいずれかで示す前記可視化情報を生成する、
請求項7に記載の流動挙動予測システム。
【請求項9】
前記コンピュータは、前記空間の任意の位置の前記流体の物理量であって第1種の物理量と前記第1種の物理量とは異なる第2種の物理量を一定時間毎に切り替えながら表示させる前記可視化情報を生成する、
請求項7または請求項8に記載の流動挙動予測システム。
【請求項10】
前記コンピュータは、前記空間のそれぞれの位置の前記流体の物理量のうち、前記流体に含まれる特定の成分の値が閾値を超えている前記空間の領域を強調して表示する前記可視化情報を生成する、
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の流動挙動予測システム。
【請求項11】
前記コンピュータは、前記空間のそれぞれの位置の前記流体の物理量のうち、前記流体に含まれる特定の成分の値が閾値を超えている場合に、警告を出力する、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の流動挙動予測システム。
【請求項12】
前記コンピュータは、前記空間のそれぞれの位置の前記流体の物理量のうち、前記流体に含まれる特定の成分の値が閾値を超えている場合に、この値を下げるための機器を制御する、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の流動挙動予測システム。
【請求項13】
データ取得部が、少なくとも空間の形状と前記空間内の流体の挙動とを示す第1状態のデータを取得し、
前記第1状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を入力、少なくとも前記第1状態よりも未来の前記流体の挙動を示す第2状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を出力とする教師データを用いてパラメータが機械学習された予測モデルに、
少なくとも前記データ取得部で取得された前記第1状態のデータを入力し、前記第2状態のデータを出力させる、
処理をコンピュータが実行する、
流動挙動予測方法。
【請求項14】
少なくとも空間の形状と前記空間内の流体の挙動とを示す第1状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を入力、少なくとも前記第1状態よりも未来の前記流体の挙動を示す第2状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を出力とする教師データを取得し、
前記教師データを用いてパラメータの機械学習を行い、
少なくともデータ取得部で取得された前記第1状態のデータを入力とし、前記第2状態のデータを出力とする、予測モデルを生成する、
処理をコンピュータが実行する、
予測モデル生成方法。
【請求項15】
少なくとも空間の形状と前記空間内の流体の挙動とを示す第1状態のデータが入力される入力層と、
少なくとも前記第1状態よりも未来の前記流体の挙動を示す第2状態のデータを出力する出力層と、
前記第1状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を入力、前記第2状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を出力とする教師データを用いてパラメータが機械学習された中間層と、
を備え、
少なくともデータ取得部で取得された前記第1状態のデータを前記入力層に入力し、前記中間層で演算し、前記第2状態のデータを前記出力層から出力させる、
ようにコンピュータを機能させる、
学習済予測モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流動挙動予測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有害ガスまたは粉塵の発生を伴う室内の作業場で作業者の安全を守る必要がある。また、感染症の感染源となる飛沫などの微粒子は、周囲の気流の影響を大きく受けるため、室内で感染リスクを下げるには、換気を行う必要がある。そこで、気流環境を考慮した対策の効果予測と検証に数値シミュレーションが有用とされている。従来、汎用熱流体解析ソフトが使用される数値シミュレーションにより換気の評価を行う技術が知られている。しかし、ドア、開放窓、給排気口の位置、これら開口を通過する気流の流量、室内の障害物の配置などの空間内の状態の変化により、気流が大きく変化する。数値シミュレーションは、計算に時間を要し、リアルタイムで結果を得ることが困難である。
【0003】
従来の流体のシミュレーションは、例えば、計算格子を生成し、ナビエストークス方程式を数値的に収束させる必要がある。従って、時々刻々と変化する流体の挙動を評価するためには、一般的に多大な計算時間を要する。そのため、空間内の状態が変化する度に、シミュレーションを行って、その都度、流体の状態を把握することは、煩雑な作業が伴い、計算に時間がかかるので現実的ではない。
【0004】
近年、機械学習を用いた様々な技術が登場してきている。ニューラルネットワークによる計算時間は、シミュレーションによる計算時間に比べて非常に短い。例えば、半導体を液相成長させるための製造装置において、その内部の目視できない材料の流体状態を機械学習による予測モデルで演算し、この材料の流体状態を示す映像を製造装置の外壁面にリアルタイムで投影させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-169818号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“No.65「気流のシミュレーション」”,[令和3年12月16日検索],インターネット<URL:https://www.jfe-tec.co.jp/jfetec-news/65/2p.html>
【非特許文献2】“特集:「正しい換気」シミュレーションから見たウイルスの拡散”,[令和3年12月16日検索],インターネット<URL:http://www.env-simulation.com/jp/merumaga/kanki_tokushuu>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、機械学習による予測モデルを用いて空間内の流体の挙動を予測することができる流動挙動予測技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る流動挙動予測システムは、少なくとも空間の形状と前記空間内の流体の挙動とを示す第1状態のデータを取得するデータ取得部と、前記第1状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を入力、少なくとも前記第1状態よりも未来の前記流体の挙動を示す第2状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を出力とする教師データを用いてパラメータが機械学習された予測モデルに、少なくとも前記データ取得部で取得された前記第1状態のデータを入力し、前記第2状態のデータを出力させる、コンピュータと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態により、機械学習による予測モデルを用いて空間内の流体の挙動を予測することができる流動挙動予測技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の流動挙動予測システムを示す構成図。
図2】流動挙動予測システムを示すブロック図。
図3】予測モデルを示す構成図。
図4】流体の挙動を可視化した表示態様を示す画面図。
図5】流体の物理量を等値面で可視化した表示態様を示す画面図。
図6】空間の特定の領域を強調した表示態様を示す画面図。
図7】予測モデル生成方法を示すフローチャート。
図8】流動挙動予測方法を示すフローチャート。
図9】画面の表示内容を切り替える態様を示すフローチャート。
図10】警告の出力処理を示すフローチャート。
図11】第2実施形態の流動挙動予測方法を示すフローチャート。
図12】第3実施形態の流動挙動予測システムを示す構成図。
図13】流動挙動予測システムを示すブロック図。
図14】換気装置の制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、流動挙動予測システム、流動挙動予測方法、予測モデル生成方法および学習済予測モデルの実施形態について詳細に説明する。まず、第1実施形態について図1から図10を用いて説明する。
【0012】
図1の符号1は、第1実施形態の流動挙動予測システムである。この流動挙動予測システム1は、ニューラルネットワークなどを用いた機械学習により、所定の空間2の内部の流体の挙動を予測し、かつ可視化するものである。空間2としては、所定の建物に設けられる部屋の内部(室内)が例示される。この空間2は、車両、航空機、船などに設けられる部屋でも良い。部屋としては、工場、作業場、病院の診察室、待合室、地下街、電車の客室などが例示される。また、部屋は、原子力プラントの格納容器などでも良い。
【0013】
空間2の内部には、空気などの流体が存在している。また、空間2の内部には、流体の挙動に影響を与える所定の物体3(障害物)が存在している。物体3としては、椅子、机、テーブル、棚などの所定の什器が例示される。なお、物体3は、部屋に居る人間でも良い。部屋の形状は、例えば、床面4、壁面5、天井6により構成される。さらに、部屋の形状には、窓、ドア、吸気口、排気口などの空気が出入りする所定の開口部7の形状を含む。この部屋の形状と部屋に存在する物体3の形状とで、空間2の形状が構成されている。流体の挙動は、この空間2の形状に応じて変化するものである。
【0014】
流動挙動予測システム1は、システム本体10と複数の流体データ取得部11とを備える。システム本体10は、流動挙動予測システム1を使用するユーザが見やすい位置に設けられている。例えば、システム本体10は、部屋の壁面5などに設けられている。また、複数の流体データ取得部11は、部屋の床面4、壁面5、天井6、物体3の近傍などに設けられている。
【0015】
流体データ取得部11は、空間2の任意の位置の流体の物理量に関するデータを取得する。このようにすれば、実際の空間2の位置の流体の物理量から未来の流体の挙動を予測することができる。
【0016】
流体データ取得部11は、所定の流体センサなどで構成される。例えば、流体データ取得部11は、空間2に存在する流体の速度、方向、温度、圧力、成分などのうちの少なくとも1つの物理量を計測する。それぞれの流体データ取得部11は、システム本体10と通信可能となっており、計測した物理量を示すデータがシステム本体10に送信される。例えば、空間2のそれぞれの地点における流体の物理量の時間的変化を示す時系列データが、それぞれの流体データ取得部11で取得され、システム本体10に送られる。
【0017】
これら時系列データには、流体の物理量が取得された時刻とカレンダー(日付と曜日など)の情報が含まれるとともに、それぞれの物理量を取得した流体データ取得部11の位置を示す情報が含まれる。以下の説明において、流体データ取得部11で取得されるデータを流体データと称する(図3)。
【0018】
また、流体の挙動とは、流体の速度と方向の少なくとも一方である。また、流体データは、流体の速度と方向の物理量(例えば、スカラー、ベクトル)を含むとともに、これら以外の物理量(例えば、温度、圧力、成分の含有量)をさらに含む。このようにすれば、流体の速度と方向のみならず、流体の他の物理量を考慮して未来の流体の物理量を予測することができる。
【0019】
次に、流動挙動予測システム1の構成を図2に示すブロック図を参照して説明する。なお、流動挙動予測システム1には、図2に示す構成以外のものが含まれても良いし、図2に示す一部の構成が省略されても良い。
【0020】
流動挙動予測システム1のシステム本体10は、空間データ取得部12と表示部13と記憶部14と警告出力部15と通信部16と制御部17とを備える。
【0021】
制御部17は、流動挙動予測システム1を統括的に制御するコンピュータである。この制御部17は、演算部18と可視化情報生成部19とを含む。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
【0022】
流動挙動予測システム1は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、流動挙動予測方法および予測モデル生成方法は、各種プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
【0023】
流動挙動予測システム1の各構成は、必ずしも1つのコンピュータに設ける必要はない。例えば、1つの流動挙動予測システム1が、ネットワークで互いに接続された複数のコンピュータで実現されても良い。例えば、演算部18と可視化情報生成部19が、それぞれ個別のコンピュータに搭載されていても良い。また、表示部13がネットワークを介して接続される他のコンピュータに搭載されていても良い。なお、流動挙動予測方法と予測モデル生成方法が、それぞれ個別のコンピュータで実行されても良い。
【0024】
空間データ取得部12は、空間2の形状に関するデータを取得する。この空間2の形状に関するデータは、空間2の内部に存在して流体の挙動に影響を与える物体3の形状のデータを含む。このようにすれば、空間2の内部に存在する物体3が流体の挙動に与える影響を考慮して未来の流体の挙動を予測することができる。この空間データ取得部12は、例えば、システム本体10の正面側の上部に設けられている(図1)。このシステム本体10に搭載された空間データ取得部12が、空間2における流体の出入り口(例えば、開口部7)、空間2に存在する物体3などの位置をセンシングし、これらの現在の状態を示すデータを取得する。
【0025】
空間データ取得部12は、所定のカメラまたは形状測定センサなどで構成される。例えば、カメラは、画像の撮影を行う。この画像には、物体3を含む空間2の形状を示す情報が含まれている。このカメラで撮影を行うことで、システム本体10から周辺の物体3を含む空間2の形状のデータが得られる。
【0026】
形状測定センサは、物体3を含む空間2の3次元形状(立体形状)を測定する。形状測定センサとしては、例えば、深度センサが用いられる。なお、形状測定センサとして赤外線センサまたはLiDARなどのレーザセンサが用いられても良い。
【0027】
例えば、形状測定センサは、物体3にレーザを投光してその反射光を受光素子により受光することで、システム本体10から周辺の物体3までの距離を測定することができる。また、形状測定センサは、ToF(Time of Flight)方式を用いて、投光パルスに対する受光パルスの遅れ時間を距離に換算し、システム本体10から周辺の物体3までの距離を測定する。この形状測定センサを用いることで、システム本体10から周辺の物体3を含む空間2の形状を示す3次元点群データを生成することができる。
【0028】
なお、空間2の形状には、空間2を構成する床面4、壁面5、天井6の位置(座標)の情報が含まれる。また、物体3の形状には、空間2における物体3が置かれた位置(座標)の情報が含まれる。また、物体3の形状のデータには、物体3が存在している時刻とカレンダー(日付と曜日など)の情報が含まれる。以下の説明において、空間データ取得部12で取得されるデータには、形状の情報のみならず、位置と時間を示す情報が含まれる。これらを空間データと称する(図3)。
【0029】
表示部13は、所定の情報の表示を行う。表示部13は、例えば、流体の挙動の予測結果の出力を行うディスプレイなどである。この表示部13は、例えば、システム本体10の正面側に設けられている(図1)。なお、表示部13は、システム本体10と別体であっても良いし、一体であっても良い。
【0030】
なお、第1実施形態では、画像の表示を行う表示部13としてディスプレイが例示されるが、その他の態様であっても良い。例えば、ヘッドマウントディスプレイまたはプロジェクタを用いて画像の表示が行われても良い。さらに、紙媒体に情報を印字するプリンタがディスプレイの替りとして用いられても良い。つまり、表示部13には、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクタまたはプリンタが含まれても良い。
【0031】
記憶部14は、流体の挙動の予測に必要な各種情報を記憶する。例えば、記憶部14は、空間データと流体データとを記憶する。さらに、記憶部14は、予測モデル20(図3)を記憶する。
【0032】
警告出力部15は、流体の状態に応じて所定の警告を出力する。警告は、音で出力されも良いし、視覚的に認識可能な態様で出力されても良い。さらに、警告は、所定のネットワークで接続された他のコンピュータ(図示略)に通知を行うものでも良い。
【0033】
第1実施形態の警告出力部15は、警報を発するスピーカまたはブザーで構成される。なお、警告出力部15は、警告時に点滅するランプでも良い。追加的または代替的に、表示部13が画像などにより警告を出力するものでも良い。
【0034】
通信部16は、それぞれの流体データ取得部11と通信を行う。通信部16と流体データ取得部11とは、無線通信で接続されても良いし、有線通信で接続されても良い。なお、通信部16は、所定のネットワークで接続された他のコンピュータ(図示略)との通信を行うものでも良い。
【0035】
演算部18は、機械学習済みの予測モデル20(図3)を含む。演算部18は、この予測モデル20により流体の未来の状態を予測する演算を行う。
【0036】
なお、演算部18には、機械学習を行う人工知能(AI:Artificial Intelligence)が含まれる。また、演算部18には、深層学習に基づいて、複数のパターンから特定のパターンを抽出する深層学習部が含まれている。
【0037】
第1実施形態のコンピュータを用いた予測には、人工知能の学習に基づく予測技術が用いられる。例えば、ニューラルネットワークによる機械学習により生成された学習モデル、その他の機械学習により生成された学習モデル、深層学習アルゴリズム、回帰分析などの数学的アルゴリズムを用いることができる。また、機械学習の形態には、クラスタリング、深層学習などの形態が含まれる。
【0038】
流動挙動予測システム1は、機械学習を行う人工知能を有するコンピュータを含む。例えば、このシステムは、ニューラルネットワークを有する1台のコンピュータで構成されても良いし、ニューラルネットワークを有する複数台のコンピュータで構成されても良い。
【0039】
ここで、ニューラルネットワークとは、脳機能の特性をコンピュータによるシミュレーションによって表現した数学モデルである。例えば、シナプスの結合によりネットワークを形成した人工ニューロン(ノード)が、学習によってシナプスの結合強度を変化させ、問題解決能力を持つようになるモデルを示す。さらに、ニューラルネットワークは、深層学習(Deep Learning)により問題解決能力を取得する。
【0040】
図3に示すように、予測モデル20は、入力層21と1つまたは複数の中間層22と出力層23とを含む。入力層21には、少なくとも空間2の形状と空間2の内部の流体の挙動とを示す第1状態のデータが入力される。出力層23は、少なくとも第1状態よりも未来の流体の挙動を示す第2状態のデータを出力する。
【0041】
第1状態のデータは、空間データ取得部12で取得された空間データと、流体データ取得部11で取得された現在の状態の流体データを含む。空間データには、例えば、部屋の形状、什器の形状、人間の形状などの情報が含まれる。流体データには、例えば、流体の速度、方向、温度、圧力、成分などの情報が含まれる。
【0042】
第2状態のデータは、第1状態よりも未来の状態の流体データを含む。なお、第1実施形態では、空間データは、未来においても変化しないものと仮定して予測を行うため、第2状態のデータに空間データが含まれていない。しかし、第2状態のデータは、未来の空間データを含むものでも良い。例えば、この未来の空間データは、時刻とカレンダーの情報以外が第1状態のデータと同一のものである。ここで、時刻とカレンダーの情報は、未来において変化が確定している情報である。
【0043】
第1状態よりも未来の第2状態とは、第1状態から1秒後でも良いし、1分後でも良いし、10分後でも良いし、1時間後でも良いし、1日後でも良い。なお、第1状態と第2状態の時間差は、ユーザが予め任意に設定することができる。
【0044】
中間層22は、第1状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を入力、第2状態のデータまたはこれを模したデータの少なくとも一方を出力とする教師データを用いてパラメータが機械学習されている。
【0045】
この予測モデル20は、第1状態のデータを入力層21に入力し、中間層22で演算し、第2状態のデータを出力層23から出力させるようにコンピュータを機能させるものである。
【0046】
例えば、予測モデル20を構成するニューラルネットワークには、複数層のレイヤーを有する中間層22が設けられる。この中間層22の各レイヤーは、複数個のユニットで構成されている。また、多層のニューラルネットワークに教師データを用いて予め学ばせておくことで、回路またはシステムの状態の変化のパターンの中にある特徴量を自動で抽出することができる。なお、多層のニューラルネットワークは、ユーザインターフェース上で、任意の中間層数、任意のユニット数、任意の学習率、任意の学習回数、任意の活性化関数を設定することができる。
【0047】
なお、学習対象となる各種情報項目に報酬関数が設定されるとともに、報酬関数に基づいて価値が最も高い情報項目が抽出される深層強化学習をニューラルネットワークに用いても良い。
【0048】
例えば、画像認識で実績のあるCNN(Convolution Neural Network)が用いられる。このCNNでは、中間層22が畳み込み層とプーリング層で構成される。畳み込み層は、前の層で近くにあるノードにフィルタ処理を施すことで特徴マップを取得する。プーリング層は、畳込み層から出力された特徴マップを、さらに縮小して新たな特徴マップとする。この際に特徴マップにおいて着目する領域に含まれる画素の最大値を得ることで、特徴量の位置の多少のずれも吸収することができる。
【0049】
畳み込み層は、画像の局所的な特徴を抽出し、プーリング層は、局所的な特徴をまとめる処理を行う。これらの処理では、入力画像の特徴を維持しながら画像が縮小処理される。つまり、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)では、画像の持つ情報量を大幅に圧縮(抽象化)することができる。そして、ニューラルネットワークに記憶された抽象化された画像イメージを用いて、入力される画像を認識し、画像の分類を行うことができる。
【0050】
なお、機械学習には、オートエンコーダ、LSTM(Long Short-Term Memory)、SDF(Signed Distance Function)、GAN(Generative Adversarial Network)、RNN(Recurrent Neural Network)などの各種手法がある。これらの手法が機械学習に適用されても良い。
【0051】
機械学習には、例えば、CNNとLSTMが用いられる。空間データの予測モデル20への入力には、例えば、SDFが用いられる。予測モデル20は、例えば、空間データを圧縮するCNNと、時系列予測を行うLSTMとを併せ持つものである。
【0052】
教師データとしては、空間データ取得部12および流体データ取得部11で実際に取得されたデータを用いることができる。または、これらを模したデータが教師データとして用いられても良い。なお、所定の時刻のデータが第1状態のデータとして、これよりも未来の時刻のデータが第2状態のデータとして設定される。
【0053】
例えば、予測モデル20の機械学習を行うときには、まず、空間2における流体の出入り口(例えば、開口部7)、空間2に存在する物体3などの基礎的な形状と位置の複数のパターンが設定される。そして、それぞれのパターンにおいて、数値シミュレーションまたは統計データなどにより、流体の物理量を含むデータが取得される。これらを教師データとして機械学習が行われる。
【0054】
つまり、予測モデル20は、任意の基礎形状を有する空間2の複数の状態をシミュレーションして得られたデータを入力および出力とする教師データを用いてパラメータが機械学習されている。このようにすれば、予め基礎形状に基づくシミュレーションにより多数の教師データを得ることができる。
【0055】
次に、流体の挙動の予測が行われるときには、空間データ取得部12および流体データ取得部11で実際に取得された第1状態および第2状態のデータが予測モデル20に入力される。空間2のそれぞれの地点における未来の流体の挙動を示す物理量の時系列データが予測される。その予測結果が表示部13に表示される。例えば、まず、表示部13(図1)には、実時刻に合わせて流体の挙動が表示される。次に、実時刻よりも未来の流体の挙動が表示部13に表示される。このようにすれば、実際の流体の状態に合わせて、リアルタイムで予測結果の表示が可能となる。
【0056】
基礎的な形状を用いた流体の挙動の数値シミュレーションの演算と、その演算結果を用いた機械学習は時間を要する。しかし、事前に機械学習による予測モデル20を完成させておくことで、任意の空間2における流体の挙動の時系列データの予測を瞬時に行うことができ、かつ未来の流体の物理量の時系列データを把握することができる。そのため、流体の状態を示す可視化情報の画像をリアルタイムで表示部13に表示させることができる。
【0057】
可視化情報生成部19(図2)は、予測モデル20から出力された第2状態のデータに基づいて、流体の状態を可視化した可視化情報を生成する。この可視化情報が、表示部13に表示される。このようにすれば、ユーザが、可視化された流体の状態を見ることができ、かつ空間2の換気の状況を把握することができる。
【0058】
次に、図4から図6を用いて、表示部13の画面30に表示される可視化情報の画像の態様を例示する。
【0059】
例えば、図4に示すように、流体の挙動を可視化した画像では、部屋としての所定の空間2の平面図が表示される。この空間2に存在する物体3も表示されている。そして、空間2を移動する流体が矢印の流れで表示される。ユーザは、現在から所定の未来の状態までの流体の挙動を把握することができる。
【0060】
また、可視化情報生成部19(図2)は、空間2のそれぞれの位置の流体の物理量を算出し、これらの物理量を、コンター、ベクトル、等値面の少なくともいずれかで示す可視化情報を生成する。例えば、可視化情報生成部19は、予測モデル20で予測された流体の速度、方向、温度、圧力、成分、空気齢などの物理量を等値面に変換する。
【0061】
図5に示すように、流体の物理量を等値面で可視化した画像では、物理量に応じて色分けされた領域が表示されている。例えば、流体の空気齢が色分けされて表示されている。また、温度分布が色分けされて表示されても良い。さらに、コンターバー31なども表示されている。このようにすれば、ユーザが、流体の状態を等値面で把握することができる。ユーザが、リアルタイムまたは未来の空気齢を把握することができる。
【0062】
なお、流体の物理量の表示は、等値面のみならず、コンターでも良いし、ベクトルでも良い。さらに、これらが組み合わせて表示されても良いし、これらが順次切り替えられても良い。このようにすれば、ユーザが、様々な観点から流体の物理量を把握することができる。
【0063】
さらに、可視化情報生成部19(図2)は、空間2のそれぞれの位置の流体の物理量のうち、流体に含まれる特定の成分の値が閾値を超えている空間2の領域32を強調して表示する可視化情報を生成する。例えば、水素または二酸化炭素などの成分が、強調して表示される対象に予め設定される。
【0064】
そして、図6に示すように、水素または二酸化炭素などの成分の値が閾値を超えている領域32が存在する場合に、この領域32を他とは異な態様で強調して表示する。例えば、強調する領域32が、ヒートアップ(色分け)されたり、線で囲われたり、矢印で示されたりする。このようにすれば、ユーザが、特定の成分の値が閾値を超えている空間2の領域32を把握することができる。
【0065】
次に、予測モデル生成方法について図7のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面が適宜参照される。
【0066】
まず、ステップS1において、ユーザは、教師データの準備を行う。例えば、ユーザは、空間2に存在する物体3などの基礎的な形状と位置の複数のパターンを設定する。例えば、1つの単純構造物を有する流路における流体の挙動を示すデータが作成される。そして、単純構造物と流路の形態を変化させた様々なパターンのデータが複数作成される。なお、空間データ取得部12および流体データ取得部11で実際に取得されたデータが教師データとされても良い。
【0067】
次のステップS2において、ユーザは、機械学習手法の選択を行う。例えば、機械学習手法としてCNNとLSTMが選択される。
【0068】
次のステップS3において、ユーザは、機械学習に必要なデータの選別を行う。機械学習に適さないデータは、教師データから除かれる。
【0069】
次のステップS4において、ユーザは、教師データのデータラングリングを行う。例えば、簡単に教師データにアクセスして分析できるように、複雑なデータが整理されて統合される。
【0070】
次のステップS5において、ユーザは、教師データを学習用のデータと検証用のデータに分割する。
【0071】
次のステップS6において、ユーザは、ハイパーパラメータの設定を行う。例えば、機械学習アルゴリズムの挙動が設定される。
【0072】
次のステップS7において、機械学習を行うコンピュータ、例えば、制御部17(図2)は、取得した教師データを用いてパラメータの機械学習を行う。そして、制御部17は、第1状態のデータを入力とし、第2状態のデータを出力とする、機械学習済みの予測モデル20(図3)を生成する。なお、制御部17以外のコンピュータで機械学習が実行されても良い。
【0073】
次のステップS8において、制御部17は、予測モデル20に検証用の第1状態のデータを入力し、予測結果となる第2状態のデータを出力させる。
【0074】
次のステップS9において、制御部17は、予測モデル20から出力された第2状態のデータを検証データと比較する。
【0075】
次のステップS10において、制御部17は、予測モデル20の予測結果が必要な精度に達しているか否かを判定する。ここで、必要な精度に達している場合(ステップS10でYESの場合)は、ステップS11に進む。一方、必要な精度に達していない場合(ステップS10でNOの場合)は、その旨をユーザに通知し、ステップS2に戻る。
【0076】
ステップS11において、制御部17は、完成した最適な予測モデル20を記憶部14(図2)に記憶する。
【0077】
そして、予測モデル生成方法が終了される。なお、以上のステップは、予測モデル生成方法に含まれる少なくとも一部であり、他のステップが予測モデル生成方法に含まれていても良い。
【0078】
次に、流動挙動予測方法について図8のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面が適宜参照される。
【0079】
まず、ステップS21において、空間データ取得部12(図1)は、空間2における現在の空間データを取得する。
【0080】
次のステップS22において、流体データ取得部11(図1)は、空間2における現在の流体データを取得する。
【0081】
次のステップS23において、制御部17(図2)は、取得された空間データおよび流体データを第1状態のデータとして、機械学習済みの予測モデル20(図3)の入力層21に入力する。
【0082】
次のステップS24において、予測モデル20(演算部18)は、パラメータが機械学習された中間層22で演算を行う。
【0083】
次のステップS25において、予測モデル20(演算部18)は、出力層23から第2状態のデータを出力させる。なお、この出力された第2状態のデータに基づいて教師データを生成し、予測モデル20の機械学習が行われても良い。
【0084】
次のステップS26において、可視化情報生成部19(図2)は、予測モデル20から出力された第2状態のデータ、つまり未来の流体データに基づいて、その流体の状態を可視化した可視化情報を生成する。
【0085】
次のステップS27において、表示部13(図1)は、生成された可視化情報の画像を画面30(図4から図6)に表示する。
【0086】
そして、流動挙動予測方法が終了される。この流動挙動予測方法の処理は、流動挙動予測システム1が動作中であるときに、常時実行され、繰り返される。なお、以上のステップは、流動挙動予測方法に含まれる少なくとも一部であり、他のステップが流動挙動予測方法に含まれていても良い。
【0087】
次に、表示部13の画面30の表示内容を切り替える態様を図9のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面が適宜参照される。
【0088】
制御部17(図2)は、空間2の任意の位置の流体の物理量であって、第1種の物理量と、この第1種の物理量とは異なる第2種の物理量を一定時間毎に切り替えながら表示させる可視化情報を生成する。このようにすれば、ユーザが、流体の様々な物理量の状態を把握することができる。
【0089】
例えば、ステップS31において、制御部17は、表示部13(図1)の画面30に流体の物理量(例えば、第1種の物理量)としての速度と方向を示す可視化情報の画像を表示させる。ここで、予め設定された任意の時間が経過するまで表示を継続する。
【0090】
次のステップS32において、制御部17は、表示部13の画面30に流体の物理量(例えば、第2種の物理量)としての成分である二酸化炭素の濃度を示す可視化情報の画像を表示させる。ここで、任意の時間が経過するまで表示を継続する。
【0091】
次のステップS33において、制御部17は、表示部13の画面30に流体の物理量としての成分である水素の濃度を示す可視化情報の画像を表示させる。ここで、任意の時間が経過するまで表示を継続する。
【0092】
次のステップS34において、制御部17は、表示部13の画面30に流体の物理量としての温度を示す可視化情報の画像を表示させる。ここで、任意の時間が経過するまで表示を継続する。
【0093】
次のステップS35において、制御部17は、表示部13の画面30に流体の物理量としての圧力を示す可視化情報の画像を表示させる。ここで、任意の時間が経過するまで表示を継続する。
【0094】
そして、表示内容を切り替える処理が終了される。この表示内容を切り替える処理は、流動挙動予測システム1が動作中であるときに、常時実行され、繰り返される。なお、以上のステップは、表示内容を切り替える処理に含まれる少なくとも一部であり、他のステップが表示内容を切り替える処理に含まれていても良い。
【0095】
次に、警告の出力処理について図10のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面が適宜参照される。
【0096】
流動挙動予測システム1には、水素、二酸化炭素、有毒ガスなどの特定の成分が警告の対象として予め設定される。また、警告が出力される閾値が予め設定される。
【0097】
まず、ステップS41において、制御部17(図2)は、空間2に存在する流体に含まれる様々な成分のうち、警告の対象となっている特定の成分が、閾値を超えているか否かを判定する。この判定は、予測モデル20(図3)から出力された第2状態のデータに基づいて行われる。なお、この判定は、第1状態のデータに基づいて行われても良い。
【0098】
ここで、特定の成分が閾値を超えていない場合(ステップS41でNOの場合)は、警告の出力処理が終了される。一方、特定の成分が閾値を超えている場合(ステップS41でYESの場合)は、ステップS42に進む。
【0099】
次のステップS42において、警告出力部15は、警告を出力する。例えば、警告出力部15は、報知音を出力する。このようにすれば、空間2に内部の特定の成分の値が閾値を超えている場合に、ユーザに警告が与えられる。
【0100】
なお、表示部13が、画像などにより警告を出力するものでも良い。追加的または代替的に、表示部13は、特定の成分の値が閾値を超えている領域32(図6)を他とは異な態様で強調して表示しても良い。ユーザが、リアルタイムまたは未来において、特定の成分が閾値を超えそうな領域32を把握することができる。
【0101】
そして、警告の出力処理が終了される。この警告の出力処理は、流動挙動予測システム1が動作中であるときに、常時実行され、繰り返される。なお、以上のステップは、警告の出力処理に含まれる少なくとも一部であり、他のステップが警告の出力処理に含まれていても良い。
【0102】
第1実施形態では、流体の数値シミュレーションを行う演算時間を必要とせず、リアルタイムまたは未来の流体の未来の挙動が表示部13に表示される。ユーザは、所定の空間2の内部の流体の状態を把握することができる。
【0103】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図11を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0104】
制御部17(図2)は、予測モデル20(図3)から出力された第2状態のデータを第1状態のデータとして予測モデル20に入力し、さらに未来の流体の挙動を示す第2状態のデータを出力させる。
【0105】
第2実施形態の流動挙動予測方法は、ステップS25Aのみが第1実施形態の流動挙動予測方法と異なり、他のステップは、第1実施形態と同様である。
【0106】
ステップS25の次に進むステップS25Aにおいて、制御部17(図2)は、予測モデル20(図3)から出力された第2状態のデータが、予測の目的とする未来時刻のデータであるか否かを判定する。ここで、予測の目的とする未来時刻のデータである場合(ステップS25AでYESの場合)は、ステップS26に進む。一方、予測の目的とする未来時刻のデータでない場合(ステップS25AでNOの場合)は、ステップS23に戻る。そして、ステップS23において、第2状態のデータが第1状態のデータとして予測モデル20に入力される。なお、この第2状態のデータに、空間データが含められても良い。
【0107】
例えば、ユーザは、予め予測の目的とする未来時刻を10分後に設定する。そして、予測モデル20から1分後の未来の第2状態のデータが出力されるように設定する。第2実施形態では、ステップS23からステップS25Aの処理が10回ほど繰り返されることで、予測の目的とする未来時刻の第2状態のデータが得られるようにする。
【0108】
機械学習で未来の流体の挙動の予測を続けると誤差が生じる。例えば、10分後の未来を予測するよりも、1分後の未来を予測する方が生じる誤差が少なくて済む。そこで、第2実施形態では、或る程度の期間で区切りながら繰り返し予測を行うことで、誤差を縮小させることができる。
【0109】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図12から図14を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0110】
図12および図13に示すように、第3実施形態の制御部17は、空間2のそれぞれの位置の流体の物理量のうち、流体に含まれる特定の成分の値が閾値を超えている場合に、この値を下げるための所定の機器を制御する。第3実施形態の流動挙動予測システム1Aは、第1実施形態の警告出力部15(図2)の替わりに、所定の機器としての換気装置40が接続されている。換気装置40は、例えば、天井6などに設けられており、制御部17により制御される。
【0111】
次に、換気装置40の制御処理について図14のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面が適宜参照される。
【0112】
流動挙動予測システム1には、水素、二酸化炭素、有毒ガスなどの特定の成分が監視の対象として予め設定される。また、換気装置40を作動させる閾値が予め設定される。
【0113】
まず、ステップS51において、制御部17(図13)は、空間2に存在する流体に含まれる様々な成分のうち、監視の対象となっている特定の成分が、閾値を超えているか否かを判定する。この判定は、予測モデル20(図3)から出力された第2状態のデータに基づいて行われる。なお、この判定は、第1状態のデータに基づいて行われても良い。
【0114】
ここで、特定の成分が閾値を超えている場合(ステップS51でYESの場合)は、ステップS52に進む。一方、特定の成分が閾値を超えていない場合(ステップS51でNOの場合)は、ステップS53に進む。
【0115】
ステップS52において、制御部17は、換気装置40(図13)を作動させる。なお、換気装置40が常時作動しているものである場合は、換気装置40のファンの回転数を上げるようにしても良い。また、制御部17は、ユーザに換気を促す旨の通知を行っても良い。そして、換気装置40の制御処理が終了される。
【0116】
ステップS53において、制御部17は、換気装置40(図13)を停止させる。そして、換気装置40の制御処理が終了される。
【0117】
この換気装置40の制御処理は、流動挙動予測システム1が動作中であるときに、常時実行され、繰り返される。なお、以上のステップは、換気装置40の制御処理に含まれる少なくとも一部であり、他のステップが換気装置40の制御処理に含まれていても良い。
【0118】
なお、所定の機器として換気装置40が例示されているが、その他の態様であっても良い。例えば、例えば、水素濃度が閾値を超えている場合に作動させる水素除去装置でも良いし、流体の温度が閾値を超えている場合に作動させる冷却装置などでも良い。
【0119】
第3実施形態によれば、リアルタイムまたは未来において、空間2の内部の特定の成分の値が閾値を超えそうになる場合、またその予測がされる場合に、特定の成分の値を自動的に下げることができる。
【0120】
流動挙動予測システム、流動挙動予測方法、予測モデル生成方法および学習済予測モデルを第1実施形態から第3実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
【0121】
なお、前述の実施形態において、基準値(閾値)を用いた任意の値(特定の成分の値)の判定は、「任意の値が基準値以上か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値を超えているか否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値以下か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値未満か否か」の判定でも良い。また、基準値が固定されるものでなく、変化するものであっても良い。従って、基準値の代わりに所定範囲の値を用い、任意の値が所定範囲に収まるか否かの判定を行っても良い。また、予め装置に生じる誤差が解析され、基準値を中心として誤差範囲を含めた所定範囲が判定に用いられても良い。
【0122】
なお、前述の実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0123】
前述の実施形態のシステムは、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、CPU(Central Processing Unit)および専用のチップなどのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスおよびキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0124】
なお、前述の実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。追加的または代替的に、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
【0125】
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用回線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0126】
なお、前述の実施形態では、空気などの気体が流体として例示されているが、その他の態様であっても良い。例えば、水などの液体の挙動の予測のために、予測モデル20が用いられても良い。
【0127】
なお、前述の実施形態では、部屋の内部が予測対象の空間2として例示されているが、その他の態様であっても良い。例えば、予測対象の空間2は、所定の製造装置の内部でも良く、その内部の流体の未来の状態が予測モデル20で予測されても良い。
【0128】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、予測モデルに、少なくともデータ取得部で取得された第1状態のデータを入力し、第2状態のデータを出力させる、コンピュータを備えることにより、機械学習による予測モデルを用いて空間内の流体の挙動を予測することができる。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態またはその変形は、発明の範囲と要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0130】
1(1A)…流動挙動予測システム、2…空間、3…物体、4…床面、5…壁面、6…天井、7…開口部、10…システム本体、11…流体データ取得部、12…空間データ取得部、13…表示部、14…記憶部、15…警告出力部、16…通信部、17…制御部、18…演算部、19…可視化情報生成部、20…予測モデル、21…入力層、22…中間層、23…出力層、30…画面、31…コンターバー、32…領域、40…換気装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14