(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127052
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】杭支持力根入れ長測定システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/18 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
E02D7/18
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030596
(22)【出願日】2022-03-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】595101665
【氏名又は名称】株式会社オーク
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】樫本 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】樫本 孝彦
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050CB31
2D050FF04
2D050FF05
2D050FF07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】短時間で精度よく、しかも安全に杭の支持力及び地盤の支持層への根入れ長を測定することができる杭支持力圧入長測定システムを提供する。
【解決手段】振幅速度演算装置7にて演算された振幅数及び杭の打設速度と、油圧差演算装置4にて演算された油圧差に基づいて、杭の支持力を演算する支持力演算部5dと、支持力演算部5dにて演算された杭の支持力が、予め設定されている杭の設計支持力を上回っているか否かを判定する支持力判定部5fと、距離計測装置6にて計測された距離に基づいて、杭の圧入長を演算する圧入長演算部5eと、支持力判定部5fにて判定された判定結果及び圧入長演算部5eにて演算された杭の圧入長に基づいて、地盤の支持層への根入れ長を演算する根入れ長演算部5gと、を有してなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイブロハンマの起振部側に設けられ、該バイブロハンマによる杭の打設中の加速度を計測する加速度計測手段と、
前記バイブロハンマの緩衝部側に設けられ、該バイブロハンマから地表までの距離を計測する距離計測手段と、
前記バイブロハンマの緩衝部側に設けられると共に、内蔵タイマーを設け、前記加速度計測手段にて計測された加速度を高速フーリエ変換することにより振幅数を演算すると共に、前記距離計測手段にて計測された距離と前記内蔵タイマーの時間を用いて前記杭の打設速度を演算する振幅速度演算手段と、
前記バイブロハンマの油圧モータへ供給される作動油の油圧、及び、前記バイブロハンマの油圧モータから排出される作動油の油圧を計測する油圧計測手段と、
前記油圧計測手段にて計測された油圧の油圧差を演算する油圧差演算手段と、
前記振幅速度演算手段にて演算された振幅数及び前記杭の打設速度と、前記油圧差演算手段にて演算された油圧差に基づいて、前記杭の支持力を演算する支持力演算手段と、
前記支持力演算手段にて演算された前記杭の支持力が、予め設定されている前記杭の設計支持力を上回っているか否かを判定する判定手段と、
前記距離計測手段にて計測された距離に基づいて、前記杭の圧入長を演算する圧入長演算手段と、
前記判定手段にて判定された判定結果及び前記圧入長演算手段にて演算された前記杭の圧入長に基づいて、地盤の支持層への根入れ長を演算する根入れ長演算手段と、を有してなる杭支持力根入れ長測定システム。
【請求項2】
バイブロハンマの起振部側に設けられた加速度計測手段により、該バイブロハンマによる杭の打設中の加速度を計測し、
前記バイブロハンマの緩衝部側に設けられた距離計測手段により、該バイブロハンマから地表までの距離を計測し、
前記バイブロハンマの緩衝部側に設けられると共に、内蔵タイマーが設けられている振幅速度演算手段により、前記計測された加速度を高速フーリエ変換することにより振幅数を演算すると共に、前記計測された距離と前記内蔵タイマーの時間を用いて前記杭の打設速度を演算し、
前記バイブロハンマの油圧モータへ供給される作動油の油圧、及び、前記バイブロハンマの油圧モータから排出される油圧を油圧計測手段にて計測し、その計測された油圧の油圧差を油圧差演算手段により演算し、
前記演算された振幅数及び前記杭の打設速度と、前記演算された油圧差に基づいて、前記杭の支持力を支持力演算手段にて演算し、
前記演算された前記杭の支持力が、予め設定されている前記杭の設計支持力を上回っているか否かを判定手段にて判定し、
前記距離計測手段にて計測された距離に基づいて、前記杭の圧入長を圧入長演算手段にて演算し、
前記判定手段にて判定された判定結果及び前記圧入長演算手段にて演算された前記杭の圧入長に基づいて、地盤の支持層への根入れ長を根入れ長演算手段にて演算してなる杭支持力圧入長測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭支持力根入れ長測定システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、バイブロハンマは、杭の上部に取り付けられて杭を打ち込むハンマ本体と、該ハンマ本体の動力源を生じるエンジンユニットとを備え、ハンマ本体は杭を振動させて打ち込む起振部を有している。そして、この起振部をカバーで覆った構造のハンマ本体を備えたバイブロハンマが知られている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
ところで、杭のデータ改ざん問題以降、仮設杭にも支持力測定が義務付けられている。仮設杭の主要工法である上記のようなバイブロハンマによる打設杭の支持力を測定するには、使用機械の基本スペックの他に、バイブロハンマの振幅数と油圧、杭の打設速度を施工中に計測する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-169618号公報
【特許文献2】特開2011-32852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現状は、作業員の手動測定に頼っていることから、測定に時間を要するばかりか、作業員毎の測定誤差が発生することから精度が低いという問題があった。そしてさらには、測定にあたって、施工中のバイブロハンマに近づかなければならないことから、測定に危険を伴うという問題があった。
【0006】
さらには、仮設工事にあたっては、打設杭を地盤に圧入させるにあたって、根入れ長を2m以上とするという規定があるものの、現状は、経験則で行っているという問題があった。なお、根入れ長とは、地盤の支持層への挿入長を指すものである。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、短時間で精度よく、しかも安全に杭の支持力及び地盤の支持層への根入れ長を測定することができる杭支持力根入れ長測定システム及びその方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
請求項1の発明によれば、バイブロハンマ(1)の起振部(10)側に設けられ、該バイブロハンマ(1)による杭(K)の打設中の加速度を計測する加速度計測手段(加速度計測装置8)と、
前記バイブロハンマ(1)の緩衝部(12)側に設けられ、該バイブロハンマ(1)から地表までの距離を計測する距離計測手段(距離計測装置6)と、
前記バイブロハンマ(1)の緩衝部(12)側に設けられると共に、内蔵タイマー(7b)を設け、前記加速度計測手段(加速度計測装置8)にて計測された加速度を高速フーリエ変換することにより振幅数を演算すると共に、前記距離計測手段(距離計測装置6)にて計測された距離と前記内蔵タイマー(7b)の時間を用いて前記杭(K)の打設速度を演算する振幅速度演算手段(振幅速度演算装置7)と、
前記バイブロハンマ(1)の油圧モータへ供給される作動油の油圧、及び、前記バイブロハンマ(1)の油圧モータから排出される作動油の油圧を計測する油圧計測手段(油圧計測装置3)と、
前記油圧計測手段(油圧計測装置3)にて計測された油圧の油圧差を演算する油圧差演算手段(油圧差演算装置4)と、
前記振幅速度演算手段(振幅速度演算装置7)にて演算された振幅数及び前記杭(K)の打設速度と、前記油圧差演算手段(油圧差演算装置4)にて演算された油圧差に基づいて、前記杭(K)の支持力を演算する支持力演算手段(支持力演算部5d)と、
前記支持力演算手段(支持力演算部5d)にて演算された前記杭(K)の支持力が、予め設定されている前記杭(K)の設計支持力を上回っているか否かを判定する判定手段(支持力判定部5f)と、
前記距離計測手段(距離計測装置6)にて計測された距離に基づいて、前記杭(K)の圧入長を演算する圧入長演算手段(圧入長演算部5e)と、
前記判定手段(支持力判定部5f)にて判定された判定結果及び前記圧入長演算手段(圧入長演算部5e)にて演算された前記杭(K)の圧入長に基づいて、地盤(G)の支持層への根入れ長を演算する根入れ長演算手段(根入れ長演算部5g)と、を有してなることを特徴としている。
【0010】
一方、請求項2の発明によれば、バイブロハンマ(1)の起振部(10)側に設けられた加速度計測手段(加速度計測装置8)により、該バイブロハンマ(1)による杭(K)の打設中の加速度を計測し、
前記バイブロハンマ(1)の緩衝部(12)側に設けられた距離計測手段(距離計測装置6)により、該バイブロハンマ(1)から地表までの距離を計測し、
前記バイブロハンマ(1)の緩衝部(12)側に設けられると共に、内蔵タイマー(7b)が設けられている振幅速度演算手段(振幅速度演算装置7)により、前記計測された加速度を高速フーリエ変換することにより振幅数を演算すると共に、前記計測された距離と前記内蔵タイマー(7b)の時間を用いて前記杭(K)の打設速度を演算し、
前記バイブロハンマ(1)の油圧モータへ供給される作動油の油圧、及び、前記バイブロハンマ(1)の油圧モータから排出される油圧を油圧計測手段(油圧計測装置3)にて計測し、その計測された油圧の油圧差を油圧差演算手段(油圧差演算装置4)により演算し、
前記演算された振幅数及び前記杭の打設速度と、前記演算された油圧差に基づいて、前記杭(K)の支持力を支持力演算手段(支持力演算部5d)にて演算し、
前記演算された前記杭(K)の支持力が、予め設定されている前記杭(K)の設計支持力を上回っているか否かを判定手段(支持力判定部5f)にて判定し、
前記距離計測手段(距離計測装置6)にて計測された距離に基づいて、前記杭(K)の圧入長を圧入長演算手段(圧入長演算部5e)にて演算し、
前記判定手段(支持力判定部5f)にて判定された判定結果及び前記圧入長演算手段(圧入長演算部5e)にて演算された前記杭(K)の圧入長に基づいて、地盤(G)の支持層への根入れ長を根入れ長演算手段(根入れ長演算部5g)にて演算してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項1,2に係る発明によれば、振幅速度演算手段(振幅速度演算装置7)により、振幅数及び杭(K)の打設速度を演算し、さらに、油圧差演算手段(油圧差演算装置4)により、油圧差を演算し、その演算した振幅数及び杭(K)の打設速度、並びに、油圧差に基づいて、支持力演算手段(支持力演算部5d)にて、杭(K)の支持力を演算するようにしているから、短時間で精度よく、しかも安全に杭(K)の支持力を測定することができる。さらに、支持力演算手段(支持力演算部5d)にて演算された杭(K)の支持力が、予め設定されている杭(K)の設計支持力を上回っているか否かを判定手段(支持力判定部5f)にて判定し、距離計測手段(距離計測装置6)にて計測された距離に基づいて、圧入長演算手段(圧入長演算部5e)にて杭(K)の圧入長を演算し、判定手段(支持力判定部5f)にて判定した判定結果及び演算された圧入長に基づいて、地盤(G)の支持層への根入れ長を根入れ長演算手段(根入れ長演算部5g)にて演算するようにしている。これにより、短時間で精度よく、しかも安全に、杭(K)における地盤(G)の支持層への根入れ長を測定することができる。
【0013】
したがって、本発明によれば、短時間で精度よく、しかも安全に杭の支持力及び地盤の支持層への根入れ長を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る杭支持力根入れ長測定システムの全体概念図を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る杭支持力根入れ長測定システムの各種装置の接続関係を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る杭支持力根入れ長測定システムを使用する際、杭演算装置の表示部に表示される画面例を示す図である。
【
図4】計測時刻毎の計測データを表示している例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る杭支持力根入れ長測定システムの一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0016】
杭支持力根入れ長測定システムは、
図1に示すように、バイブロハンマ1を備えている。このバイブロハンマ1は、
図1に示すように、複数の偏心重錘(振り子)と、これらを回転させるための油圧モータが内蔵されている起振部10と、起振部10の下部に設けられ、杭Kを把持するチャック機構11と、起振部10の上部に設けられ、起振部10の上下動の振動を緩衝する緩衝部12と、で構成されている。
【0017】
かくして、このように構成されるバイブロハンマ1は、起振部10に内蔵されている油圧モータが回転して偏心重錘(振り子)を駆動することにより、起振部10は上下に振動することとなる。そして、その振動力がチャック機構11を介して杭Kに伝達されることにより、
図1に示すように、杭Kが地盤Gに圧入されることとなる。なお、このようなバイブロハンマ1は、
図1に示すように、緩衝部12の上面12aに設けられている吊り掛け部13に、クレーンCのワイヤーロープYが吊り掛けられることにより、クレーンCに吊支されるようになっている。
【0018】
ところで、起振部10に内蔵されている油圧モータは、
図1に示す油圧ユニット2より供給される作動油にて回転することとなる。より詳しく説明すると、油圧ユニット2は、
図1に示すように、バイブロハンマ1に油圧ユニット2内の作動油を送る油圧供給ホース2aが接続され、バイブロハンマ1から排出される作動油を油圧ユニット2内に戻す排油供給ホース2bが接続されている。これにより、バイブロハンマ1に油圧供給ホース2aを通って作動油が供給されると、この供給された作動油により、起振部10に内蔵されている油圧モータは回転することとなる。そして、その油圧モータを回転させた作動油は、排油供給ホース2bを通って、油圧ユニット2内に戻されることとなる。
【0019】
ところで、このような油圧供給ホース2a及び排油供給ホース2bには、圧力計からなる油圧計測装置3(
図2参照)が接続されている。すなわち、油圧供給ホース2aに接続されている油圧計測装置3(
図2参照)は、供給される作動油の油圧を計測し、排油供給ホース2bに接続されている油圧計測装置3(
図2参照)は、バイブロハンマ1から排出される作動油の油圧を計測するようになっている。
【0020】
しかして、油圧計測装置3(
図2参照)にて計測された油圧値は、
図2に示すように、油圧差演算装置4に図示しない配線ケーブル等を介して、油圧計測装置3より出力されることとなる。この油圧差演算装置4は、
図1に示す油圧ユニット2の外周面に磁石やボルトなどを用いて取り付けられており、
図2に示すように、油圧差演算部4aと、送信部4bとを備えている。この油圧差演算部4aは、油圧計測装置3(
図2参照)にて計測されたバイブロハンマ1に供給される作動油の油圧と、バイブロハンマ1から排出される作動油の油圧との差分(油圧差)を演算するものである。そして、この油圧差演算部4aにて演算された油圧差、及び、油圧計測装置3(
図2参照)にて計測された油圧値は、Buletooth等の無線通信である送信部4bによって、
図2に示す杭演算装置5に送信されることとなる。
【0021】
一方、
図1に示す緩衝部12には、
図2に示す距離計測装置6が設けられている。より詳しく説明すると、距離計測装置6は、赤外線TOF(Time of Flight)方式を用いた距離計測装置であって、
図1に示す緩衝部12の右側面12bに取り付けられている凸状の取付金具6a内に取り付けられている。しかして、取付金具6a内に取り付けられた距離計測装置6は、
図1に示すように、赤外線Sを、地盤Gの地表に照射する。これにより、距離計測装置6は、照射した赤外線Sが地盤Gの地表に反射して再び距離計測装置6に戻ってくるまでの時間から、バイブロハンマ1から地盤Gの地表までの距離を計測することとなる。なお、距離計測装置6にて計測された距離の値は、
図2に示すように、振幅速度演算装置7に図示しない配線ケーブル等を介して、距離計測装置6より出力されることとなる。
【0022】
ところで、緩衝部12に距離計測装置6が設けられているのは、起振部10の振動の影響を受けずに、バイブロハンマ1から地盤Gの地表までの距離を計測するようにするためである。
【0023】
他方、
図1に示す起振部10には、
図2に示す加速度計測装置8が設けられている。より詳しく説明すると、加速度計測装置8は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製された小型化、軽量化されたデバイスであって、起振部10の外周面に磁石やボルトなどを用いて取り付けられている。しかして、このような加速度計測装置8は、例えば、10msec毎に、起振部10の加速度を計測するようになっている。これにより、加速度計測装置8は、バイブロハンマ1による杭Kの打設中の加速度を計測することができることとなる。なお、加速度計測装置8にて計測された加速度の値は、
図2に示すように、振幅速度演算装置7に図示しない配線ケーブル等を介して、加速度計測装置8より出力されることとなる。
【0024】
ところで、本実施形態において加速度計測装置8を、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製し小型化、軽量化しているのは、起振部10の上下動の激しい振動で、加速度計測装置8が破損しないようにするためである。すなわち、小型化、軽量化することにより、加速度計測装置8に対する起振部10の上下動の激しい振動の伝達が最小化することとなり、もって、加速度計測装置8を破損しないようにすることができる。なお、加速度計測装置8は、水が浸入して、加速度計測装置8が破損しないように、樹脂包埋を行っている。
【0025】
ところで、距離計測装置6より出力された距離の値、及び、加速度計測装置8より出力された加速度の値を受け付ける振幅速度演算装置7は、
図1に示す緩衝部12に磁石やボルトなどを用いて取り付けられており、
図2に示すように、振幅数演算部7aと、内蔵タイマー7bと、打設速度演算部7cと、送信部7dと、で構成されている。この振幅数演算部7aは、加速度計測装置8より出力された加速度の値を、高速フーリエ変換することにより、ピークの周波数を抽出し、もって、振幅数を演算するようになっている。そして、内蔵タイマー7bは、振幅速度演算装置7に内蔵されているもので、RTC(Real Time Clock)からなる時を刻む時計ICチップである。さらに、打設速度演算部7cは、距離計測装置6より出力された距離の値を、内蔵タイマー7bにて刻まれている時刻で除算することにより、杭Kの打設速度を演算するものである。そしてさらに、送信部7dは、Buletooth等の無線通信であって、振幅数演算部7aにて演算された振幅数、及び、打設速度演算部7cにて演算された杭Kの打設速度、並びに、距離計測装置6より出力された距離の値を、
図2に示す杭演算装置5に送信するものである。
【0026】
かくして、
図2に示す油圧差演算装置4より送信された油圧差、及び、油圧値、さらに、
図2に示す振幅速度演算装置7より送信された振幅数、及び、杭Kの打設速度、並びに、距離の値を受信する杭演算装置5は、
図1に示すように、汎用的なノートPC(Personal Computer)等からなるものである。しかして、このような杭演算装置5は、
図1に示すように、作業員に危険が及ばないよう、バイブロハンマ1より離れた地盤Gの地表側に設けられている。より詳しく説明すると、杭演算装置5は、
図2に示すように、受信部5aと、入力部5bと、プログラムや各種パラメータ及び各種情報を記憶する記憶部5cと、支持力演算部5dと、圧入長演算部5eと、支持力判定部5fと、根入れ長演算部5gと、
図3に示すような画面が表示される表示部5hと、で構成されている。この受信部5aは、Buletooth等の無線通信であって、油圧差演算装置4より送信された油圧差、及び、油圧値、さらに、
図2に示す振幅速度演算装置7より送信された振幅数、及び、杭Kの打設速度、並びに、距離の値を受信することができるものである。これにより、
図3に示す画像P5に示す計測データに値が表示されることとなる。すなわち、計測を開始する際に、計測した距離の値が、「開始時距離」として表示され、現在の計測した距離の値が、「測定距離」として、リアルタイムに表示されることとなる。また、振幅数が「振動周波数」として、リアルタイムに表示され、油圧値のうち油圧供給ホース2aの油圧値が、「出口圧力」として、リアルタイムに表示され、油圧値のうち排油供給ホース2bの油圧値が、「入口圧力」として、リアルタイムに表示される。なお、杭Kの打設速度は、
図3に示す画像P6に示す「打設速度」として、
図4に示すように、計測時刻に応じた値が順次、表示部5hに表示されていくこととなる。また、振幅数は、
図3に示す画像P6に示す「振動周波数」として、
図4に示すように、計測時刻に応じた値が順次、表示部5hに表示されていくこととなる。さらに、油圧値のうち油圧供給ホース2aの油圧値は、
図3に示す画像P6に示す「出口圧力」として、
図4に示すように、計測時刻に応じた値が順次、表示部5hに表示されていくこととなる。そしてさらに、油圧値のうち排油供給ホース2bの油圧値は、
図3に示す画像P6に示す「入力圧力」として、
図4に示すように、計測時刻に応じた値が順次、表示部5hに表示されていくこととなる。なお、計測時刻は、杭演算装置5に内蔵されている図示しないRTC(Real Time Clock)を参照するようにすれば良い。
【0027】
一方、入力部5bは、
図1に示すように、キーボード、マウスなどからなり、所定の値を杭演算装置5に入力することができるものである。これにより、作業員は、入力部5bを用いて、
図3に示す画像P1に示す「施工工事名」と「杭番号」を設定し、画像P2に示す「測定周期」、「オフセット」、「使用するハンマ」を設定し、画像P3に示す「設計支持力」を設定することとなる。なお、「使用するハンマ」が設定されると、記憶部5cに記憶されているバイブロハンマ1のパラメータが画像P4に表示されることとなる。
【0028】
一方、支持力演算部5dは、杭Kの支持力を演算するものである。より詳しく説明すると、杭Kの支持力は以下の式によって演算される。
【0029】
【0030】
【0031】
しかるに、数式1に示すΔPは、油圧差演算装置4より送信された油圧差であり、数式1に示すfは、振幅速度演算装置7より送信された振幅数である。そして、数式1に示すqo及びηtは、起振部10に内蔵されている油圧モータの機械特性であるため、作業員によって予め、入力部5bを用いて入力され、記憶部5cに記憶されているものである。
【0032】
それゆえ、支持力演算部5dは、受信部5aにて受信した油圧差演算装置4より送信された油圧差、受信部5aにて受信した振幅速度演算装置7より送信された振幅数、記憶部5cに記憶されているqo及びηtを用いて、数式1に示すPwを演算することができる。
【0033】
そしてさらに、数式2に示すVは、振幅速度演算装置7より送信された杭Kの打設速度、数式2に示すα及びMは、バイブロハンマ1の機械特性であるため、作業員によって予め、入力部5bを用いて入力され、記憶部5cに記憶されているものである。
【0034】
それゆえ、支持力演算部5dは、数式1に示すPwを演算した後、受信部5aにて受信した振幅速度演算装置7より送信された杭Kの打設速度、記憶部5cに記憶されているα及びMを用いて、数式2に示すRuを演算することができ、もって、支持力演算部5dにて、杭Kの動的極限支持力を演算することができる。これにより、
図3に示す画像P6に示す「動的極限支持力」に値が表示され、
図4に示すように、計測時刻に応じた値が順次、表示部5hに表示されていくこととなる。なお、
図3に示す画像P6に示す「許容支持力」は、動的極限支持力の値を1/3した値が表示されている。
【0035】
圧入長演算部5eは、計測を開始する際に、計測した距離の値から現在の計測した距離の値を減算し、
図3に示す設定された「オフセット」の値(画像P2参照)を加算することで、圧入長を演算するものである。これにより、
図3に示す画像P6に示す「圧入長」に値が表示され、
図4に示すように、計測時刻に応じた値が順次、表示部5hに表示されていくこととなる。
【0036】
一方、支持力判定部5fは、支持力演算部5dにて演算された杭Kの動的極限支持力が、
図3に示す設定された「設計支持力」の値(画像P3参照)を上回っているか、下回っているかを判定する。その結果が、
図3に示す画像P6に示す「判定結果」に表示される。具体的には、
図4に示すように、支持力演算部5dにて演算された杭Kの動的極限支持力が、「設計支持力」の値(画像P3参照)を上回っていれば、「〇」が表示され、支持力演算部5dにて演算された杭Kの動的極限支持力が、「設計支持力」の値(画像P3参照)を下回っていれば、「×」が表示される。そして、この表示が、
図4に示すように、計測時刻に応じて順次、表示部5hに表示されていくこととなる。これにより、「〇」が表示されていれば、杭Kが地盤Gの支持層にしっかりと根入れされていることが分かり、「×」が表示されていれば、杭Kが地盤Gの支持層にしっかりと根入れされていないことが分かる。
【0037】
かくして、上記のような処理を行い、
図4に示すような表示を表示部5hに表示させた後、すなわち、杭Kの地盤Gへの圧入作業を終えた後、判定結果が「×」以降の判定結果が「〇」の部分(図示では、時刻9:31:30以降)の圧入長を参酌し、根入れ長演算部5gにて、判定結果が「×」以降の判定結果が「〇」の最後の圧入長(図示では、4.227)から、判定結果が「×」から「〇」へ変化した最初の圧入長(図示では、4.049)を減算するようにする。そして、その結果、根入れ長が規定値以上(例えば、2m以上)であれば、杭Kが地盤Gの支持層にしっかりと根入れされていることから、圧入作業を終え、規定値以上でなければ、継続して圧入作業をするようにすれば良い。
【0038】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、振幅速度演算装置7により、振幅数及び杭Kの打設速度を演算し、さらに、油圧差演算装置4により、油圧差を演算し、その演算した振幅数及び杭Kの打設速度、並びに、油圧差に基づいて、バイブロハンマ1より離れた地盤Gの地表側に設けられている杭演算装置5(支持力演算部5d)にて、杭Kの支持力を演算するようにしているから、短時間で精度よく、しかも安全に杭Kの支持力を測定することができる。さらに、杭演算装置5(支持力演算部5d)にて演算された杭Kの支持力が、予め設定されている杭Kの設計支持力を上回っているか否かを杭演算装置5(支持力判定部5f)にて判定し、距離計測装置6にて計測された距離に基づいて、杭演算装置5(圧入長演算部5e)にて杭Kの圧入長を演算し、杭演算装置5(支持力判定部5f)にて判定した判定結果及び演算された圧入長に基づいて、地盤Gの支持層への根入れ長を杭演算装置5(根入れ長演算部5g)にて演算するようにしている。これにより、短時間で精度よく、しかも安全に、杭(K)における地盤(G)の支持層への根入れ長を測定することができる。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、短時間で精度よく、しかも安全に杭の支持力及び地盤の支持層への根入れ長を測定することができる。
【0040】
ところで、本実施形態において、振幅数及び杭Kの打設速度を杭演算装置5ではなく、振幅速度演算装置7にて演算させた上で、杭演算装置5に送信しているのは、以下の理由によるものである。すなわち、杭演算装置5に振幅数及び杭Kの打設速度まで演算させてしまうと、演算の負荷が大きくなり、汎用的なノートPC(Personal Computer)等で処理することができなくなるためである。仮に、汎用的なノートPC(Personal Computer)等で処理することができなくなると、作業員が、杭Kの支持力を現場でリアルタイムに視認することができなくなり、もって、演算した支持力に何らかの問題があったとしても、作業員が、即座に対応することができなくなる可能性がある。それゆえ、本実施形態においては、振幅数及び杭Kの打設速度を杭演算装置5ではなく、振幅速度演算装置7にて演算させた上で、杭演算装置5に送信している。
【0041】
なお、本実施形態において示した杭支持力根入れ長測定システムはあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 バイブロハンマ
2 油圧ユニット
3 油圧計測装置(油圧計測手段)
4 油圧差演算装置(油圧計測手段)
5 杭演算装置
5d 支持力演算部(支持力演算手段)
5e 圧入長演算部(圧入長演算手段)
5f 支持力判定部(判定手段)
5g 根入れ長演算部(根入れ長演算手段)
6 距離計測装置(距離計測手段)
7 振幅速度演算装置(振幅速度演算手段)
7b 内蔵タイマー
8 加速度計測装置(加速度計測手段)
10 起振部
12 緩衝部
K 杭