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特開2023-127053光ファイバボビン、光ファイバの検査方法。
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  • 特開-光ファイバボビン、光ファイバの検査方法。 図1
  • 特開-光ファイバボビン、光ファイバの検査方法。 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127053
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】光ファイバボビン、光ファイバの検査方法。
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20230906BHJP
   G02B 6/46 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G01M11/00 R
G02B6/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030597
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】光野 皓紀
(72)【発明者】
【氏名】松葉 聡
(72)【発明者】
【氏名】北田 剛
【テーマコード(参考)】
2G086
2H038
【Fターム(参考)】
2G086CC05
2H038AA02
2H038CA35
(57)【要約】
【課題】全長検査が容易な光ファイバボビンを提供すること。
【解決手段】円筒状の胴部とその両端に鍔部を有するボビンに光ファイバが巻回されてなる光ファイバボビンであって、該ボビンの胴部および鍔部が全光線透過率80%以上の樹脂を含有することを特徴とする光ファイバボビン。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部とその両端に鍔部を有するボビンに光ファイバが巻回されてなる光ファイバボビンであって、該ボビンの胴部および鍔部が全光線透過率80%以上の樹脂を含有することを特徴とする光ファイバボビン。
【請求項2】
前記樹脂の曲げ弾性率が100~4000MPaであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバボビン。
【請求項3】
前記ボビンの胴部および鍔部の厚みが3~10mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバボビン。
【請求項4】
前記ボビンの胴部の周囲長さが50~100cmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の光ファイバボビン。
【請求項5】
前記ボビンの鍔部間の長さが5~50cmであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の光ファイバボビン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の光ファイバボビンに、光ファイバの少なくとも一方の端面からレーザー光を入射してファイバ表面の欠点を観測することを特徴とする光ファイバの検査方法。
【請求項7】
前記レーザー光の波長が500nm以上550nmであることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバの検査方法。
【請求項8】
前記レーザーの出力が10mW以上であることを特徴とする請求項6または7に記載の光ファイバの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全長検査に好適なボビン巻き光ファイバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
線状体巻き付け用ボビンは、通常巻き付け用の胴部と巻き崩れ防止用の鍔部によって構成される。
線状体の中でも光ファイバはその透明性や透光性が特性に影響するため、それらの簡便な検査方法が検討されている。特許文献1では、鍔部およびボビンカバーを透明にすることで、光ファイバを巻き取ったまま外観確認が実施できる。また、透光性の評価としては、紡糸時に連続的に測定する方法(特許文献2)や、端面からレーザーを導光し、その反射光を測定する方法(特許文献3)が検討されている。
しかし、特許文献1のボビンでは、巻き状態の表層しか観察できない。特許文献2~3の方法では、ファイバ表面に欠点が発生した場合発生有無の観測が困難であり、位置の特定もできない。また、装置導入のコストにより簡便に実施することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-220548号公報
【特許文献2】特開2014-2002号公報
【特許文献3】特開平7-83790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの光ファイバボビンでは、ボビンに巻き取られた状態での欠点検査が難しく、特にボビン内層に位置する欠点は、巻きを崩さない限り確認できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を有する。
すなわち、円筒状の胴部とその両端に鍔部を有するボビンに光ファイバが巻回されてなる光ファイバボビンであって、該ボビンの胴部および鍔部が全光線透過率80%以上の樹脂を含有することを特徴とする光ファイバボビンである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、全長検査を簡便に行うことが可能な光ファイバボビンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の形態に係るボビンの斜視図
図2】本発明の形態に係る全長検査の模式図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る光ファイバの好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
なお、本発明において、光ファイバボビンとは、光ファイバがボビンに巻回された状態のボビンのことを言う。
【0009】
本発明の実施の形態に係る光ファイバは、コアと、少なくとも1層のクラッドを有する。光ファイバに入射した光は、コア/クラッド界面で全反射しながらコア内を進行する。
本発明の実施の形態の光ファイバのコアを形成する材料としては、プラスチックやガラスなどが挙げられる。
ガラスとしては、例えば、石英ガラス、フッ化物ガラス、カルコゲナイドガラス、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ゲルマネートガラス、ケイ酸塩ガラス等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
プラスチックとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレートを重合成分に含む重合体(例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、置換スチレン、N-置換マレイミドなどを共重合したもの)、それらを高分子反応したグルタル酸無水物、グルタルイミドなどの変性重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、生産性、透光性、耐環境性などの点から、PMMAが好ましい。ここで、本発明においてPMMAとは、重合体を構成するモノマー中、メチルメタクリレートを50モル%以上含む(共)重合体を言う。重合体を構成するモノマー中、メチルメタクリレートを70モル%以上含むことが好ましく、90モル%以上含むことがより好ましい。
コアには、さらに耐酸化防止剤などの安定剤やその他添加剤を、透光性に影響しない範囲で少量含有してもよい。
【0010】
本発明の実施の形態に係る光ファイバは、少なくとも1層のクラッドを有する。クラッドを2層以上有してもよい。
【0011】
コアがPMMAである場合、クラッドを形成する重合体としては、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体が好ましく、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体がより好ましい。かかる共重合体は、PMMAから形成されるコアとの密着性、透明性および柔軟性に優れ、曲げ状態における光量損失を低減することができるクラッドを2層以上有する場合、コア側に位置する最内層のクラッドが、かかる重合体から形成されることが好ましい。ここで、最内層のクラッドとは、クラッドを1層有する場合は当該クラッドを指し、クラッドが複数層で形成される場合は、その中で最も内側に位置するクラッドを指す。
【0012】
本発明の実施の形態に係る光ファイバの開口数は、0.40以上が好ましい。開口数が0.40以上であると、照射範囲をより広くすることができ、また全長検査の際に光が光ファイバ内を伝搬しやすくなる。開口数は、0.45以上がより好ましい。
【0013】
本発明の実施の形態に係るボビンは、胴部とその両端に鍔部を有し、概ボビンの胴部および鞘部が全光線透過率80%以上の樹脂からなる。全光線透過率が80%未満の場合、ボビンに巻かれたファイバの全体を観測することが困難となり、後述する全長検査に不適となる。そのような樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィン、MBS樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。ここで、全光線透過率はJIS K 7361-1(1997)に従い測定し、試験片の厚みは2mmとする。なお、ボビンから樹脂を採取して直接全光線透過率を測定することが困難な場合、クラッドの組成が既知であれば、同組成のクラッドを作製して曲げ弾性率を測定することができる。
【0014】
本発明の実施の形態に係るボビンの形成に用いる樹脂は、曲げ弾性率が100MPa以上4000MPa以下であることが好ましい。100MPa以上であることで、使用時の不可に耐えうる強度を有することができ、また4000MPa以下であることで曲げ弾性率が低いことで、衝撃や圧力に強いボビンを形成することができる。
【0015】
本発明の実施の形態に係るボビンの胴部および鞘部の厚みは、3mm以上10mm以下であることが好ましい。厚みが3mm以上であることで、ボビンの強度を実用に耐えうる程度に確保することができる。厚みが10mm以下であることで、透過率が高くなりボビンを通して光ファイバを見る際の視認性を上げることができる。
【0016】
本発明の実施の形態に係るボビンの胴部の周囲長さは50cm以上100cm以下であることが好ましい。周囲長さが50cm以上であることで、ファイバの重なりを防ぎ、光ファイバの視認性が高くなる。周囲長さは100cm以下であることで、ボビンのサイズが制限され取り扱いの利便性を確保することができる。
【0017】
本発明の実施の形態に係るボビンの鍔部間の長さは5cm以上50cm以下であることが好ましい。
鍔部間の長さが5cm以上であることで、ファイバの重なりを防ぎ、光ファイバの視認性が高くなる。鍔部間の長さは50cm以下であることで、ボビンのサイズが制限され取り扱いの利便性を確保することができる。
【0018】
本発明の実施の形態に係るボビンは、光ファイバの全長検査に好適に用いることができる。ファイバの端面から光を入射し光ファイバ表面の輝点の有無を観測することで、光ファイバ表面のクラッド破損等の欠点を発見することができる。ボビンの全光線透過率を80%以上とすることで、ボビンの側面及び内側からも観測することができる。また、ファイバの両端から光を入射することで、高い光量を用い更に長い距離を検査することができる。ファイバの両端から光を入射する場合、ファイバの巻取時に最内部のファイバ端部をボビンに巻き付けずに保持することで、簡便に実施可能となる。
【0019】
また、上記検査の光源にはレーザー光源を用いることが好ましい。レーザー光源を用いることで光ファイバ内での全反射が容易となり、光をより長く透光させることができる。また、該レーザーの波長は500nm以上550nm以下であることが好ましい。この範囲内であれば視認性が高く、かつ透光損失が少ない。該レーザーの出力は10mW以上が好ましく、より好ましくは20mW以上60mW以下である。上記範囲内であることで、十分な光量を確保し、かつ安全に使用することができる。
【実施例0020】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明する。なお、各実施例および比較例において用いたコア材料、クラッド材料および各実施例および比較例により作製した光ファイバの評価は、以下の方法により行った。
【0021】
全光線透過率:JIS K 7361-1(1997)により測定した。各実施例及び比較例に用いた樹脂から厚み2mmの試験片を作成し、試験片を透過したCIE標準光源D65からの光を透積分球で測定し、全光線透過率を算出した。
【0022】
曲げ弾性率:ASTM D790(2010年)により測定した。各実施例および比較例に用いたコアとクラッド材からそれぞれ127mm×13mm×3.1mmの試験片を作製し、曲げ荷重-たわみ曲線をプロットした。測定単位はkg/cmとした。曲げ荷重-たわみ曲線の初期のもっとも傾斜の大きい傾きから接線から曲げ弾性率を求めた。
【0023】
[実施例1]
樹脂としてSX100(MBS樹脂、ポリスチレンジャパン製)を使用し、表1の構成となるようボビンを射出成型した。また、光ファイバのクラッド材として弗化ビニリデン(2F)/テトラフルオロエチレン(4F)(屈折率1.41)=82/18共重合体を複合紡糸機に供給した。さらに、連続魂状重合によって製造したPMMA(屈折率1.49)をコア材として複合紡糸機に供給して、240℃にてコア、クラッドを芯鞘複合溶融紡糸し、直径1000μmのベアファイバを得た。プラスチック光ファイバの最も胴部に近い箇所のクラッドに傷を付けた光ファイバを用意し、表1に示す長さをボビンに巻き付けた後、532nm・出力10mWのレーザー光を光ファイバ端面に入射した。傷から漏れる光を観測できた場合、傷視認性有りと評価した。表1に示す通り、透明ボビンを用いることで、200mを超えた長さの光ファイバを巻いても内層部分の傷を確認することができた。
【0024】
[実施例2~5]
表1に示す通りボビンの構成およびレーザー出力を変更したこと以外は実施例1と同様にして光ファイバを得た。これらの光ファイバについて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0025】
[比較例1~3]
表1に示す通り、樹脂としてH870(白色ポリスチレン、トーヨースチロール製)を使用し、ボビンの構成を変更したこと以外は実施例1と同様にして光ファイバを得た。これらの光ファイバについて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0026】
【表1】
【符号の説明】
【0027】
1:ボビン胴部
2:ボビン鞘部
3:鍔間長さ
4:光源
5:光ファイバ
図1
図2