(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127056
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230906BHJP
C08L 67/03 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L67/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030601
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】322012860
【氏名又は名称】東レ・セラニーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】中尾 優一
(72)【発明者】
【氏名】長縄 信夫
(72)【発明者】
【氏名】植村 裕司
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF101
4J002CF162
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、自動車、電機、工業用途等に於ける用途において、柔軟で優れた機械特性を有し、低温特性、成形加工性が良好で、流動性にも優れる熱可塑性エラストマー樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、熱可塑性エラストマー樹脂組成物100重量部に対し、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)と脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)とを構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)55~99重量部と全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)1~45重量部を含んでなり、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)の融点が240℃以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー樹脂組成物100重量部に対し、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)と脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)とを構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)55~99重量部と全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)1~45重量部を含んでなり、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)の融点が240℃以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステルブロック共重合体(A)における高融点結晶性重合体セグメント(a1)が、ポリブチレンテレフタレート単位および/またはポリブチレンイソフタレート単位を主たる構成成分とするものであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステルブロック共重合体(A)における低融点重合体セグメント(a2)が、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位を主たる構成成分とするものであることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
【請求項4】
ポリエステルブロック共重合体(A)成分における低融点重合体セグメント(a2)の共重合量が10~80重量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂強度が高く、成形加工性に優れ、とりわけ低温下での柔軟性が良好であり、流動性にも優れる熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結晶性芳香族ポリエステル単位を高融点結晶性重合体セグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位および/またはポリラクトンのような脂肪族ポリエステル単位を低融点重合体セグメントとするポリエステルブロック共重合体は、樹脂強度、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性、屈曲疲労性などの機械的性質や、低温、高温特性に優れ、さらに熱可塑性で成形加工が容易であることから、自動車部品や産業用資材に幅広く使用されている。
【0003】
近年、自動車の電動化や情報技術分野の発展に伴い小型の電子部品等への樹脂材料の使用が検討されている。こうした場合、部品は射出成形により製造されるが、樹脂材料の流動性が低いと射出成形時に樹脂材料が部品の末端部に到達せず、きれいな成形品が得られないという問題がある。また、流動性を上げるために高温で成形をすることで、成形品が熱劣化するという懸念がある。
【0004】
ポリエステルブロック共重合体の流動性を改善する方法としては、ポリエステルランダム共重合体を添加したポリエステルエラストマー樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の組成物では、流動性は改善されるものの樹脂強度が低下するという問題があった。また、このような部品では使用環境が低温から高温まで広い温度領域にわたっている。そのため、幅広い温度領域で柔軟性をもつことが求められる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために検討した結果達成されたものであり、樹脂強度が高く、成形加工性に優れ、とりわけ低温下での柔軟性が良好であり、流動性にも優れる熱可塑性エラストマー樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明は、熱可塑性エラストマー樹脂組成物100重量部に対し、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)と脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)とを構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)55~99重量部と全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)1~45重量部を含んでなり、前記全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)の融点が240℃以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー樹脂組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下に説明するとおり、樹脂強度が高く、成形加工性に優れ、とりわけ低温下での柔軟性が良好であり、流動性にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について記述する。本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)と脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)とを構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)を含む。
【0011】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a1)と、脂肪族ポリエーテル単位からなる低融点重合体セグメント(a2)とを構成成分とするポリエステルブロック共重合体であり、高融点結晶性重合体セグメントは、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなり、すなわち、主として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から形成されるポリエステルである。
【0012】
前記芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル-4,4' -ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4' -ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、および3-スルホイソフタル酸ナトリウムなどが挙げられる。本発明においては、前記芳香族ジカルボン酸を主として用いるが、この芳香族ジカルボン酸の一部を、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4' -ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、およびダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸に置換してもよい。さらにジカルボン酸のエステル形成性誘導体、たとえば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル、および酸ハロゲン化物などももちろん同等に用い得る。
【0013】
ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は、好ましくはテレフタル酸、ジメチルテレフタレート、イソフタル酸、ジメチルイソフタレートである。
【0014】
前記ジオールまたはそのエステル形成性誘導体としては、分子量400以下のジオール、例えば1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環族ジオール、およびキシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2' -ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4' -ジヒドロキシ-p-ターフェニル、および4,4' -ジヒドロキシ-p-クオーターフェニルなどの芳香族ジオールが好ましく、かかるジオールは、エステル形成性誘導体、例えばアセチル体、アルカリ金属塩などの形でも用い得る。
【0015】
これらのジカルボン酸、その誘導体、ジオール成分およびその誘導体は、2種以上併用してもよい。
【0016】
かかる高融点結晶性重合体セグメント(a1)は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位および/またはイソフタル酸またはジメチルイソフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位を主たる構成成分とするものが好ましく用いられる。
【0017】
高融点結晶性重合体セグメント(a1)の共重合量は、20~90重量%であることが好ましく、より好ましくは30~70重量%、さらに好ましくは40~70重量%である。
【0018】
高融点結晶性重合体セグメント(a1)の共重合量は、例えば、高融点結晶性重合体セグメント(a1)の構成成分がポリブチレンテレフタレート単位である場合、テレフタル酸、1,4-ブタンジオールの各質量%の合計とする。
【0019】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)で使用される低融点重合体セグメント(a2)は、主として脂肪族ポリエーテルからなる。
【0020】
かかる脂肪族ポリエーテルの具体例としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。これらのなかでも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールおよび/またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物および/またはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体が好ましく用いられる。ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位を主たる構成成分とするものであることが特に好ましい。
【0021】
本発明に用いられる(A)ポリエステルブロック共重合体の低融点重合体セグメント(a2)の共重合量は、10~80重量%であることが好ましく、より好ましくは30~70重量%、さらに好ましくは30~60重量%である。低融点重合体セグメント(a2)の共重合量が多いと特に低温特性に優れる。
【0022】
低融点結晶性重合体セグメント(a2)共重合量は、例えば、低融点結晶性重合体セグメント(a2)の構成成分がポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位である場合、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールの質量%とする。
【0023】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は、公知の方法で製造することができる。その具体例としては、例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を溶融重縮合する方法、およびジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を溶融重縮合する方法などのいずれの方法をとってもよい。
【0024】
重縮合で得られたポリエステルブロック共重合体(A)は、次いで固相重縮合を行ってもよい。固相重縮合は、溶融重縮合後にペレット化したポリエステルブロック共重合体(A)が融着しない温度で実施するが、通常は140℃~220℃の温度範囲で行う。固相重縮合の前には、予備結晶化と乾燥工程を経ることが望ましい。また、固相重縮合は、高真空下または不活性気流下で実施する。高真空下の場合は、好ましくは665Pa以下、さらに好ましくは133Pa以下の減圧下で行う。不活性気流下の場合は、代表的には窒素気流下で行うことが好ましく、圧力は特に限定されないが大気圧が好ましい。反応容器としては、回転可能な真空乾燥機や、不活性ガスを流すことのできる塔式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0025】
本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)を含むことを特徴とする。本発明に用いられる全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)は構成される繰り返し単位がいずれも芳香族化合物であるポリエステル樹脂であって、当該技術分野においてサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂と呼ばれているものである。
【0026】
また、本発明に用いられる全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)の融点は240℃以下であることを特徴とする。より好ましくは170℃以上230℃以下である。240℃を超えると、熱可塑性エラストマー樹脂組成物の生産性が低下する。
【0027】
ポリエステルブロック共重合体(A)と全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)の配合量は、熱可塑性エラストマー樹脂組成物100重量部に対し、ポリエステルブロック共重合体(A)55~99重量部と全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)1~45重量部を含んでなる。本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、樹脂成分としてポリエステルブロック共重合体(A)と全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)以外の樹脂を含んでも構わないが、本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物には、樹脂成分としてポリエステルブロック共重合体(A)と全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)のみからなることが好ましい。
【0028】
また、本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤、シリコーンオイル等の添加剤を添加することができる。
【0029】
本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルブロック共重合体に、全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)を配合した原料を、スクリュー型押出機に供給し溶融混練する方法などを適宜採用することができる。
【0030】
本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形などにより成形体とされる。
【実施例0031】
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。本発明は、この発明の要旨の範囲内で、適宜変更して実施することができる。なお、実施例中の%および部とは、ことわりのない場合すべて重量基準である。また、例中に示される物性は次の測定方法により測定したものである。
【0032】
[融点]
ティー・エイ・インスツルメント社製DSC Q100を使用し、窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で40℃から250℃まで加熱し、250℃で3分間保持した後10℃/分の降温速度で40℃まで冷却し、更に10℃/分の昇温速度で250℃まで加熱した際の融解ピークの頂上温度を測定した。
【0033】
[硬度(デュロメーターD)]
高分子計器社製ASKER CL-150を使用し、JIS K7215デュロメーターD硬さにしたがって測定した。
【0034】
[引張破断強さ、引張破断伸び、引張弾性率]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製NEX-1000)を用いて、シリンダー温度240℃と金型温度50℃の成形条件で、JISK7113 2号ダンベル試験片を成形し、JIS K7113(1995年版)に従って23℃下において測定した。
【0035】
[溶融粘度測定]
東洋精機製作所製キャピログラフC1を使用し、測定温度230℃、オリフィス長さ10mm、オリフィス径1.0mmの条件で剪断速度と溶融粘度の関係を測定し、剪断速度600/secの時の溶融粘度を読み取った。
【0036】
[曲げ弾性率]
90℃で3時間以上熱風乾燥したペレットを、射出成形機(日精樹脂工業製 NEX-1000)を用いて、シリンダー温度240℃と金型温度50℃の成形条件で作製した試験片を用いて、ASTM D790に従って23℃および-30℃の雰囲気下にて測定した。
【0037】
[ポリエステルエラストマ(A-1)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸350部、および1,4-ブタンジオール150部、低融点重合体セグメント(a2)として数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール354部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマーを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。
【0038】
高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は37であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は63であった。
【0039】
[ポリエステルエラストマ(A-2)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸420部、および1,4-ブタンジオール196部、低融点重合体セグメント(a2)として数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール480部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマーを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。
【0040】
高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は52であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は48であった。
【0041】
[ポリエステルエラストマ(A-3)の製造]
高融点結晶性重合体セグメント(a1)としてテレフタル酸505部、および1,4-ブタンジオール251部、低融点重合体セグメント(a2)として数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール229部を、チタンテトラブトキシド0.3部とモノ-n-ブチル-モノヒドロキシスズオキサイド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にチタンテトラブトキシド2.0部を追添加し、”イルガノックス”1098(チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.5部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分溶融重縮合を行わせた。得られたポリエステルエラストマ(A-3)を水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。高融点結晶性重合体セグメント(a1)の重量%は65であり、低融点重合体セグメント(a2)の重量%は35であった。
【0042】
[全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)]
全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)として、
(B-1):上野製薬株式会社製AL-7000(融点180℃)
(B-2):上野製薬株式会社製A-8100(融点220℃)
を使用した。
【0043】
[実施例1~5]
直径45mmのスクリューを有する2軸押出機を用いて、参考例で示したポリエステルエラストマー(A-1)、(A-2)および全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)を表1に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。加熱温度は240℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した熱可塑性エラストマー樹脂組成物を得た。
【0044】
得られたペレットを90℃で3時間乾燥後、シリンダー温度240℃、金型温度50℃の条件下で射出成形し、引張破断強さ、引張破断伸び、引張弾性率試験用の試験片を得た。得られた試験片を用いて各種試験を実施した。
【0045】
[比較例1~3]
直径45mmのスクリューを有する2軸押出機を用いて、参考例で示したポリエステルエラストマー(A-1)、(A-2)、(A-3)を表1に示した配合組成で混合し、元込め部から添加した。加熱温度は240℃、スクリュー回転150rpmの押出条件で溶融混合を行い、ストランド状に吐出し、冷却バスを通し、ストランドカッターによりペレット化した熱可塑性ポリエステルエラストマー樹脂組成物を得た。
【0046】
得られたペレットを90℃で3時間乾燥後、シリンダー温度240℃、金型温度50℃の条件下で射出成形し、引張破断強さ、引張破断伸び、引張弾性率試験用の試験片を得た。得られた試験片を用いて各種試験を実施した。
【0047】
【0048】
表1の結果から明らかなように、実施例1~5に示したポリエステルエラストマー(A)に、全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)を配合した本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、引張破断強さ、引張破断伸びに優れる。また、23℃の弾性率に対し、低温(-30℃)の弾性率の上昇が小さく柔軟性に優れている。
【0049】
例えば、ポリエステルブロック共重合体(A-1)を使用した実施例1、2は比較例1に比べ23℃と-30℃の曲げ弾性率の比が小さく、低温での物性変化が小さい。
【0050】
またポリエステルブロック共重合体(A-2)を使用した実施例3と比較例2の場合も同様である。実施例4と比較例2は23℃の曲げ弾性率は同等だが、-30℃の曲げ弾性率は比較例3に比べ実施例4は非常に小さく、低温での柔軟性が保たれている。
【0051】
さらに、230℃で測定した溶融粘度が、剪断速度600/secの条件で、低い結果となった。
【0052】
全芳香族液晶ポリエステル樹脂(B)を配合しない比較例1~3の樹脂組成物は、本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物に比較して、低温時の柔軟性が劣るもしくは溶融粘度が高い。
本発明の熱可塑性エラストマー樹脂組成物は、上記した通り充分な強度・剛性を兼ね備えた上に、優れた流動性をもつことから、自動車部品、電機機器、工業用品等の特に小型の成形品が容易に得られ、低温下での柔軟性が必要な製品に好適である。