(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127072
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】鋼管杭と建造物との接合構造及び鋼管杭と建造物との接合方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20230906BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
E02D27/00 C
E02D27/00 D
E02D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030624
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592198404
【氏名又は名称】千代田工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】原口 圭
(72)【発明者】
【氏名】大庭 章
(72)【発明者】
【氏名】下園 徳男
(72)【発明者】
【氏名】柴田 卓志
(72)【発明者】
【氏名】柏木 幸基
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 絢子
(72)【発明者】
【氏名】一木 大介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 法子
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA19
2D041BA37
2D041CB06
2D041DB02
2D046AA13
2D046AA14
(57)【要約】
【課題】鋼管杭と建造物を施工性よく接合することができ、鋼管杭と建造物との接合強度を向上させることができる鋼管杭と建造物との接合構造と鋼管杭と建造物との接合方法を実現する。
【解決手段】この接合構造1は、接合部材10の管体12を鋼管杭Pに被せ、棒状部材13と第1の補強部材14を鋼管杭P内に挿し入れた後、鋼管杭Pに充填材40を形成するようにして施工性よく接合することができる。その鋼管杭P内の充填材40には、鋼管杭Pの内壁から張り出している第2の補強部材15と、接合部材10の棒状部材13と第1の補強部材14とが埋め込まれており、第1の補強部材14よりも上側に第2の補強部材15が配置されているので、柱Cが鋼管杭Pから引き抜かれるような応力が作用しても、第1の補強部材14と第2の補強部材15の間に圧縮力が生じることでその応力に抵抗することができ、鋼管杭Pと建造物(柱C)との接合強度が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭と、その鋼管杭の上に構築される建造物との接合構造であって、
ベース板と、前記ベース板の下面に固定された管体と、上端が前記ベース板に連結されて前記管体内を上下方向に延在するように配設されている棒状部材と、前記棒状部材の下端側に配設されている第1の補強部材とを有し、前記管体が前記鋼管杭の杭頭に被せられ、前記棒状部材および前記第1の補強部材が前記鋼管杭内に挿し入れられて設置されている接合部材と、
前記鋼管杭の内壁において前記第1の補強部材よりも上側となる位置に、その鋼管杭の軸心に向けて張り出すように設けられている環状の第2の補強部材と、
上面に前記建造物の柱が固定されている接合板と、
を備え、
前記ベース板と前記接合板には、互いに交差する方向に延在する長孔が形成されており、
前記接合板は、前記接合板の前記長孔と前記ベース板の前記長孔とが一部重なるようにして前記ベース板の上に配置されており、
前記ベース板の前記長孔と前記接合板の前記長孔とに連通された締結部材によって、前記接合部材と前記接合板が締結されており、
前記鋼管杭内における少なくとも前記第1の補強部材と前記第2の補強部材の間には、流動性硬化材料が充填されてなる充填材が設けられていることを特徴とする鋼管杭と建造物との接合構造。
【請求項2】
前記棒状部材は、その上端側が前記ベース板に螺着によって取り付けられており、前記第1の補強部材は、前記棒状部材の下端側に螺着によって取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭と建造物との接合構造。
【請求項3】
前記棒状部材は前記管体の軸心に沿って配置され、前記第1の補強部材は前記第2の補強部材に内接する仮想円よりも小さなサイズに形成された円板部材であり、
前記第1の補強部材は、少なくとも前記仮想円の半径に相当する寸法分、前記第2の補強部材よりも鉛直方向下側の位置に設置されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管杭と建造物との接合構造。
【請求項4】
前記接合部材の前記ベース板には、前記流動性硬化材料を前記鋼管杭内に充填するための第1貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の鋼管杭と建造物との接合構造。
【請求項5】
前記接合部材の前記ベース板には、前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間に流動性硬化材料を充填するための第2貫通孔が設けられており、
前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間には、前記第2貫通孔を通じて前記流動性硬化材料が充填されてなる充填材が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の鋼管杭と建造物との接合構造。
【請求項6】
前記鋼管杭の外周面には、前記管体の下端または前記管体の内面に当接して、前記流動性硬化材料を前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間に留めるための環状部材が配設されていることを特徴とする請求項5に記載の鋼管杭と建造物との接合構造。
【請求項7】
前記ベース板の前記第2貫通孔は、前記管体の内面と内接する位置に設けられており、
前記接合部材は、前記第2貫通孔に挿通されて前記管体の下端よりも下に突き出しているガイド部材を前記鋼管杭の外面に沿わせた状態で、前記鋼管杭の杭頭に被せて設置されるように構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の鋼管杭と建造物との接合構造。
【請求項8】
請求項1に記載の鋼管杭と建造物との接合構造であり、前記ベース板に、前記鋼管杭内に流動性硬化材料を充填するための第1貫通孔と、前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間に流動性硬化材料を充填するための第2貫通孔とが設けられており、前記棒状部材がその上端側が前記ベース板にナットで螺着されており、前記第1の補強部材が前記棒状部材の下端側に螺着されている前記接合構造を施工するための鋼管杭と建造物との接合方法であって、
前記第2の補強部材の配置に応じて前記第1の補強部材を所望する位置に配するように調整する工程と、
前記管体を前記鋼管杭の杭頭に被せるとともに、前記棒状部材および前記第1の補強部材を前記鋼管杭内に挿し入れて、接合部材を前記鋼管杭に設置する工程と、
前記第1貫通孔を通じて前記鋼管杭内に流動性硬化材料を充填する工程と、
前記第2貫通孔を通じて前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間に流動性硬化材料を充填する工程と、
前記ベース板と前記接合板を前記締結部材によって締結する工程と、
を有することを特徴とする鋼管杭と建造物との接合方法。
【請求項9】
前記棒状部材は前記管体の軸心に沿って配置されており、前記第1の補強部材は前記第2の補強部材に内接する仮想円よりも小さなサイズに形成された円板部材であり、
前記第1の補強部材を、少なくとも前記仮想円の半径に相当する寸法分、前記第2の補強部材よりも鉛直方向下側となる所定の位置に配するように調整することを特徴とする請求項8に記載の鋼管杭と建造物との接合方法。
【請求項10】
前記第1貫通孔を通じて前記鋼管杭内に充填した前記流動性硬化材料を固化させてなる充填材を設けた後、前記第1の補強部材を前記ベース板に近接させる方向に前記棒状部材を前記ナットで増し締める工程を含むことを特徴とする請求項8又は9に記載の鋼管杭と建造物との接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管杭とその鋼管杭の上に構築される建造物とを接合する鋼管杭と建造物との接合構造及びその接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構築される建造物を支持するため、地盤に立設されている鋼管杭と、建造物の柱とを接合する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この接合技術では、鋼管杭の杭頭に取り付けられた杭頭キャップ具の上部に天板を固定し、その天板に対して建造物の柱を固定する態様で、鋼管杭と柱を接合している。
そして、杭頭キャップ具に固定する天板の位置を調整することで、鋼管杭と建造物の柱との位置調整を行うことを可能にしている。
また、この接合技術では、杭頭キャップ具が備えている塞ぎ板を杭頭内に落とし込むように設置し、その塞ぎ板よりも上にモルタルなどを充填して杭頭を補強している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の接合技術の場合、杭頭に杭頭キャップ具を取り付けたり、杭頭キャップ具に天板を固定したりするのに用いるボルトが多いので、その接合作業に時間を要してしまうことがあるという問題があった。
また、上記特許文献1の接合技術の場合、鋼管杭の杭頭内にモルタルなどを充填して杭頭を補強しているが、この補強は鋼管杭と建造物の柱との接合強度を向上させるものではなかった。
【0005】
本発明の目的は、鋼管杭と建造物を施工性よく接合することができ、鋼管杭と建造物との接合強度を向上させることができる鋼管杭と建造物との接合構造と鋼管杭と建造物との接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本出願に係る一の発明は、
鋼管杭と、その鋼管杭の上に構築される建造物との接合構造であって、
ベース板と、前記ベース板の下面に固定された管体と、上端が前記ベース板に連結されて前記管体内を上下方向に延在するように配設されている棒状部材と、前記棒状部材の下端側に配設されている第1の補強部材とを有し、前記管体が前記鋼管杭の杭頭に被せられ、前記棒状部材および前記第1の補強部材が前記鋼管杭内に挿し入れられて設置されている接合部材と、
前記鋼管杭の内壁において前記第1の補強部材よりも上側となる位置に、その鋼管杭の軸心に向けて張り出すように設けられている環状の第2の補強部材と、
上面に前記建造物の柱が固定されている接合板と、
を備え、
前記ベース板と前記接合板には、互いに交差する方向に延在する長孔が形成されており、
前記接合板は、前記接合板の前記長孔と前記ベース板の前記長孔とが一部重なるようにして前記ベース板の上に配置されており、
前記ベース板の前記長孔と前記接合板の前記長孔とに連通された締結部材によって、前記接合部材と前記接合板が締結されており、
前記鋼管杭内における少なくとも前記第1の補強部材と前記第2の補強部材の間には、流動性硬化材料が充填されてなる充填材が設けられているようにした。
【0007】
かかる構成の接合構造における接合部材と接合板は、互いの長孔が交差する向き(例えば、直交する向き)に重ねられ、それぞれの長孔に連通させた締結部材によって締結されているので、それぞれの長孔に沿う方向に接合板を動かす調整を行うことが可能になっており、接合部材に対する接合板の位置調整を行うようにして、鋼管杭に対する柱の位置調整を行うことができる。
このように交差させた長孔(長穴)による位置調整を行う作業であれば、比較的容易に鋼管杭に対する柱の配置調整を行うことができるので、鋼管杭と建造物(柱)を施工性よく接合することができる。
【0008】
また、かかる構成の接合構造における鋼管杭内において、第1の補強部材よりも上側となる位置に第2の補強部材が配置されており、その第1の補強部材と第2の補強部材の間には、流動性硬化材料が充填されて硬化されてなる充填材が設けられているので、例えば比較的大きな地震が発生した際に柱が大きく揺れて、その柱が鋼管杭から引き抜かれるような応力が作用しても、第1の補強部材と第2の補強部材の間に圧縮力が生じることでその引き抜き力に抵抗することができるため、その接合箇所は地震などの外力によって損傷し難くなっている。
このような接合構造であれば、鋼管杭と建造物(柱)との接合強度を向上させることができる。
【0009】
また、望ましくは、
前記棒状部材は、その上端側が前記ベース板に螺着によって取り付けられており、前記第1の補強部材は、前記棒状部材の下端側に螺着によって取り付けられているようにする。
具体的には、棒状部材の上端側と下端側には雄ネジが形成されており、その雄ネジに螺合されたナットによる取り付けがなされているようにすればよい。
【0010】
棒状部材に螺着によって取り付けられている第1の補強部材は、棒状部材を螺進・螺退させるようにして、棒状部材に沿って上下に配置を調整することが可能になっている。
その第1の補強部材を棒状部材に沿って上下に移動させ、第1の補強部材を第2の補強部材に近付けたり、第1の補強部材を第2の補強部材から遠ざけたりする調整を行うことができるので、鋼管杭の杭頭が地盤から出ている長さや、その鋼管杭の内壁に設けられている第2の補強部材の位置などに応じて、第1の補強部材の上下位置を調整して、第2の補強部材に対する第1の補強部材の位置を調整することができる。
また、棒状部材の上端側をベース板に螺着する配置の調整によっても、第2の補強部材に対する第1の補強部材の位置を調整することができる。
【0011】
また、望ましくは、
前記棒状部材は前記管体の軸心に沿って配置され、前記第1の補強部材は前記第2の補強部材に内接する仮想円よりも小さなサイズに形成された円板部材であり、
前記第1の補強部材は、少なくとも前記仮想円の半径に相当する寸法分、前記第2の補強部材よりも鉛直方向下側の位置に設置されるように構成されているようにする。
【0012】
第1の補強部材が、第2の補強部材に内接する仮想円の半径に相当する寸法分、あるいはその仮想円の半径より長い寸法分、第2の補強部材よりも鉛直方向下側の位置に設置されていれば、より好適に第1の補強部材と第2の補強部材の間に圧縮力が生じるようになり、柱が鋼管杭から引き抜かれるような応力(引き抜き力)に抵抗することが可能になるので、鋼管杭と建造物(柱)との接合強度をより高めることができる。
【0013】
また、望ましくは、
前記接合部材の前記ベース板には、前記流動性硬化材料を前記鋼管杭内に充填するための第1貫通孔が設けられているようにする。
【0014】
ベース板の第1貫通孔を通じて鋼管杭内に流動性硬化材料(モルタルなどのグラウト材)を充填して硬化させてなる充填材を設けていれば、例えば比較的大きな地震が発生した際に柱が大きく揺れて鋼管杭の杭頭に曲げの応力が作用しても、鋼管杭が変形するなど損傷し難いので、鋼管杭と建造物(柱)との接合強度をより高めることができる。
【0015】
また、望ましくは、
前記接合部材の前記ベース板には、前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間に流動性硬化材料を充填するための第2貫通孔が設けられており、
前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間には、前記第2貫通孔を通じて前記流動性硬化材料が充填されてなる充填材が設けられているようにする。
【0016】
ベース板の第2貫通孔を通じて管体の内面と鋼管杭の外面の間に流動性硬化材料(モルタルなどのグラウト材)を充填して硬化させてなる充填材を設けていれば、例えば柱が大きく揺れて鋼管杭の杭頭に曲げの応力が作用しても、鋼管杭が変形するなど損傷し難いので、鋼管杭と建造物(柱)との接合強度をより高めることができる。
【0017】
また、望ましくは、
前記鋼管杭の外周面には、前記管体の下端または前記管体の内面に当接して、前記流動性硬化材料を前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間に留めるための環状部材が配設されているようにする。
【0018】
鋼管杭の外周面に密着して管体の下端または管体の内面に当接している環状部材が設けられていれば、管体の内面と鋼管杭の外面の間に充填した流動性硬化材料を硬化させてなる充填材を管体と鋼管杭の間に好適に形成することができる。
【0019】
また、望ましくは、
前記ベース板の前記第2貫通孔は、前記管体の内面と内接する位置に設けられており、
前記接合部材は、前記第2貫通孔に挿通されて前記管体の下端よりも下に突き出しているガイド部材を前記鋼管杭の外面に沿わせた状態で、前記鋼管杭の杭頭に被せて設置されるように構成されているようにする。
【0020】
こうすることで、管体の内面と鋼管杭の外面との間隔が全周に亘って均等になるように、接合部材を鋼管杭に設置することができる。
【0021】
また、本出願に係る他の発明は、
上記した鋼管杭と建造物との接合構造であり、前記ベース板に、前記鋼管杭内に流動性硬化材料を充填するための第1貫通孔と、前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間に流動性硬化材料を充填するための第2貫通孔とが設けられており、前記棒状部材がその上端側が前記ベース板にナットで螺着されており、前記第1の補強部材が前記棒状部材の下端側に螺着されている前記接合構造を施工するための鋼管杭と建造物との接合方法であって、
前記第2の補強部材の配置に応じて前記第1の補強部材を所望する位置に配するように調整する工程と、
前記管体を前記鋼管杭の杭頭に被せるとともに、前記棒状部材および前記第1の補強部材を前記鋼管杭内に挿し入れて、接合部材を前記鋼管杭に設置する工程と、
前記第1貫通孔を通じて前記鋼管杭内に流動性硬化材料を充填する工程と、
前記第2貫通孔を通じて前記管体の内面と前記鋼管杭の外面の間に流動性硬化材料を充填する工程と、
前記ベース板と前記接合板を前記締結部材によって締結する工程と、
を有するようにした。
【0022】
かかる構成の接合方法であれば、棒状部材の下端側に螺着されている第1の補強部材は棒状部材を螺進・螺退させるようにして、棒状部材に沿って上下に配置を調整することができるので、鋼管杭の杭頭が地盤から出ている長さや、その鋼管杭の内壁に設けられている第2の補強部材の位置などに応じて、第1の補強部材の上下位置を調整して、第2の補強部材に対する第1の補強部材の位置を所望する位置に調整することができる。
【0023】
また、望ましくは、
前記棒状部材は前記管体の軸心に沿って配置されており、前記第1の補強部材は前記第2の補強部材に内接する仮想円よりも小さなサイズに形成された円板部材であり、
前記第1の補強部材を、少なくとも前記仮想円の半径に相当する寸法分、前記第2の補強部材よりも鉛直方向下側となる所定の位置に配するように調整するようにする。
【0024】
第1の補強部材が、第2の補強部材に内接する仮想円の半径に相当する寸法分、あるいはその仮想円の半径より長い寸法分、第2の補強部材よりも鉛直方向下側の位置に設置するようにすれば、より好適に第1の補強部材と第2の補強部材の間に圧縮力が生じるようになり、柱が鋼管杭から引き抜かれるような応力(引き抜き力)に抵抗することが可能になるので、鋼管杭と建造物(柱)との接合強度をより高めることができる。
【0025】
また、望ましくは、
前記第1貫通孔を通じて前記鋼管杭内に充填した前記流動性硬化材料を固化させてなる充填材を設けた後、前記第1の補強部材を前記ベース板に近接させる方向に前記棒状部材を前記ナットで増し締める工程を含むようにする。
【0026】
鋼管杭内に充填した流動性硬化材料を固化させてなる充填材を設けた後、第1の補強部材をベース板に近接させる方向に棒状部材をナットで増し締めるようにすれば、鋼管杭に対する接合部材の定着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、鋼管杭と建造物を施工性よく接合することができ、鋼管杭と建造物との接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態の鋼管杭と建造物(柱)との接合構造を示す断面図である。
【
図2】本実施形態の鋼管杭と建造物(柱)との接合構造を示す分解斜視図である。
【
図3】ベース板と接合板を締結部材で締結する態様の説明図である。
【
図4】本実施形態の接合構造における第1の補強部材と第2の補強部材の配置に関する説明図である。
【
図5】本実施形態の接合構造を施工する工程の説明図(a)(b)である。
【
図6】鋼管杭の杭頭に接合部材の管体を被せる手順の説明図である。
【
図7】本実施形態の接合構造を施工する工程の説明図(a)(b)である。
【
図8】本実施形態の接合構造を施工する工程の説明図(a)(b)である。
【
図9】本実施形態の接合構造を施工する工程の説明図(a)(b)である。
【
図10】本実施形態の接合構造を施工する工程の説明図(a)(b)である。
【
図11】鋼管杭と建造物(柱)との接合構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明に係る鋼管杭と建造物との接合構造および鋼管杭と建造物との接合方法の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0030】
本実施形態では、鋼管杭Pとその鋼管杭Pの上に構築される建造物との接合構造1であって、鋼管杭Pと建造物の柱Cとの接合構造1について説明する。
この接合構造1は、例えば
図1~
図3に示すように、ベース板11と、ベース板11の下面に固定された管体12と、管体12内を下方に延在するようにベース板11に配設されている棒状部材13と、棒状部材13の下端側に配設されている第1の補強部材14とを有している接合部材10と、鋼管杭Pの内壁において第1の補強部材14よりも上側となる位置に設けられている環状の第2の補強部材15と、上面に建造物の柱Cが固定されている接合板20と、ベース板11と接合板20とを締結している締結部材30と、鋼管杭P内に流動性硬化材料が充填されてなる充填材40等を備えている。
【0031】
接合部材10は、管体12が鋼管杭Pの杭頭に被せられ、棒状部材13および第1の補強部材14が鋼管杭P内に挿し入れられた状態で、鋼管杭Pに設置されている。
その鋼管杭Pは地盤が掘削された凹部Uに打ち込まれており、凹部U内に鋼管杭Pの杭頭が配置されている。その地盤の凹部Uにも流動性硬化材料が充填されてなる充填材40が配設されている。
また、鋼管杭Pの外周面には環状部材50が配設されている。この環状部材50は、管体12の下端または管体12の内面に当接している。
【0032】
第2の補強部材15は、鋼管杭Pの杭頭の内壁面から鋼管杭Pの軸心に向けて張り出すように設けられている。
ここでの第2の補強部材15は、ドーナツ板状の鋼製の円環部材であり、鋼管杭Pの軸心に向けて環状の板材が張り出すように設けられている。
なお、第2の補強部材15は、鋼管杭Pが回転圧入によって変形しないように予め鋼管杭Pの内壁に設けられていた補強材に所定の加工を施して形成したものでも、新たに鋼管杭Pの内壁に溶接などによって固設したものでもよい。
【0033】
接合部材10は、鋼製のベース板11の下面に鋼製の管体12を溶接してなる部材である。
例えば、管体12の内面に内接するドーナツ状の鋼板を裏当て金として用い、ベース板11に管体12を溶接して固定している。
接合部材10の管体12は、鋼管杭Pとの間に隙間をあけて杭頭に被せることができるサイズを有している。
つまり、管体12の内径は鋼管杭Pの外径よりも大きく、例えば、管体12の内面と鋼管杭Pの外面との間に約1cmから10数cm程度の隙間をあけて杭頭に管体12が被せられている。
【0034】
接合部材10のベース板11には、第1の補強部材14が取り付けられた棒状部材13が配設されている。
棒状部材13は、例えば全ネジボルトであり、その上端側がベース板11に螺着によって取り付けられており、棒状部材13の下端側に第1の補強部材14が螺着によって取り付けられている。
具体的には、棒状部材13の上端側に螺着されたナット13aによって棒状部材13がベース板11に配設されており、棒状部材13の下端側に螺着した一対のナット13aに挟まれた第1の補強部材14が棒状部材13の下端側に配設されている。
【0035】
棒状部材13に螺着によって取り付けられている第1の補強部材14は、棒状部材13を螺進・螺退させるようにして、棒状部材13に沿って上下に配置を調整することが可能になっている。
つまり、第1の補強部材14を棒状部材13に沿って上下に移動させ、第1の補強部材14をベース板11や第2の補強部材15に近付けたり、第1の補強部材14をベース板11や第2の補強部材15から遠ざけたりする調整を行うことができる。
また、棒状部材13の上端側をベース板11に螺着する配置の調整によっても、第2の補強部材15に対する第1の補強部材14の位置を僅かではあるが調整することができる。
なお、棒状部材13は全ネジボルトであることに限らず、棒状部材13に取り付けられている第1の補強部材14の配置を調整可能であって、ベース板11や第2の補強部材15との間隔を所定長分調整可能であれば、棒状部材13の上端側と下端側にそれぞれ雄ネジが形成されている棒状部材であってもよい。
【0036】
また、ベース板11に取り付けられている棒状部材13は、管体12の軸心に沿って配置されている。
また、棒状部材13に取り付けられている第1の補強部材14は、環状の第2の補強部材15に内接する仮想円よりも小さなサイズに形成された円板状の鋼製部材である。つまり、第1の補強部材14は、第2の補強部材15の環の内側を通過可能なサイズに形成されている。
そして、
図4に示すように、第1の補強部材14は、少なくとも環状の第2の補強部材15に内接する仮想円の半径rに相当する寸法分、第2の補強部材15よりも鉛直方向下側の位置(第1の補強部材14の所定の位置)に設置されるようになっている。
ここでの第1の補強部材14は、環状の第2の補強部材15に内接する仮想円の半径rより長い寸法分、第2の補強部材15よりも鉛直方向下側の位置に設置されている。
【0037】
なお、環状の第2の補強部材15に内接する仮想円の半径rの寸法分、第1の補強部材14を第2の補強部材15よりも鉛直方向下側の位置に設置する場合、
図4に示すように、第2の補強部材15の内縁から下方に45°(俯角α=45°)となる位置に第1の補強部材14の上面があればよい。
つまり、第2の補強部材15の内縁から俯角αが45°以上となる位置に第1の補強部材14が設置されていればよい。
【0038】
また、接合部材10のベース板11の四隅には、所定方向に延在する長孔11a(
図2、
図3参照)が形成されている。
また、ベース板11の中央側には、流動性硬化材料を鋼管杭P内に充填するための第1貫通孔11bが設けられている。本実施形態では円周方向に等間隔をあけて4つの第1貫通孔11b(
図2参照)が設けられている。
なお、複数の第1貫通孔11bが設けられていれば、いずれかの第1貫通孔11bから流動性硬化材料を充填する際、それ以外の第1貫通孔11bから内部の空気が抜けるし、それ以外の第1貫通孔11bを使って流動性硬化材料の充填状況を確認することができる。
また、ベース板11の中央側であって第1貫通孔11bよりも外側の位置には、管体12の内面と鋼管杭Pの外面の間に流動性硬化材料を充填するための第2貫通孔11cが設けられている。本実施形態では円周方向に等間隔をあけて4つの第2貫通孔11c(
図2参照)が設けられている。この第2貫通孔11cは管体12の内面と内接する位置に設けられており、ベース板11の下面であって管体12の内面に内接するドーナツ状の鋼板も貫いている。
なお、複数の第2貫通孔11cが設けられていれば、いずれかの第2貫通孔11cから流動性硬化材料を充填する際、それ以外の第2貫通孔11cから内部の空気が抜けるし、それ以外の第2貫通孔11cを使って流動性硬化材料の充填状況を確認することができる。
【0039】
そして、鋼管杭P内には第1貫通孔11bを通じて流動性硬化材料が充填されてなる充填材40が設けられている。
また、管体12の内面と鋼管杭Pの外面の間には、第2貫通孔11cを通じて流動性硬化材料が充填されてなる充填材40が設けられている。ここでは貫通孔11cから充填された流動性硬化材料が管体12と鋼管杭Pの間から漏れ出ないように留める機能を有している環状部材50が配設されている。
環状部材50は、ゴムなどの弾性材料からなる部材であり、鋼管杭Pの外周面と管体12の内面に密着して配されている。
【0040】
接合板20は、鋼製の板状部材であり、その四隅には所定方向に延在する長孔20a(
図2、
図3参照)が形成されている。
この接合板20は、例えば
図2や
図3に示すように、接合板20の長孔20aをベース板11の長孔11aと交差させる向き(具体的には直交させる向き)に重ねてベース板11の上に配置されている。このとき、接合板20の長孔20aとベース板11の長孔11aとが交差してその一部が重なっている。
そして、ベース板11の長孔11aと接合板20の長孔20aとを連通している締結部材30によって、接合部材10と接合板20が締結されている。
このように接合部材10と接合板20は、互いの長孔(11a、20a)を交差させる向きに重ね、それぞれの長孔に連通させた締結部材30によって締結されているので、接合部材10に対して接合板20を長孔(11a、20a)に沿う方向に動かす位置調整を行うことが可能になっている。
なお、本実施形態の締結部材30は、ボルト31と、そのボルト31に螺着されるナット32とで構成されている。
【0041】
次に、本実施形態の接合構造1を施工する手順(鋼管杭と建造物との接合方法)について説明する。
【0042】
まず、
図5(a)に示すように、地盤に形成されている凹部Uに、鋼管杭Pを回転圧入などによって打ち込む。
その凹部U内に配置された鋼管杭Pの杭頭の内壁には、第2の補強部材15が設けられている。
また、鋼管杭Pの内部の所定位置には塞ぎ材Sが配置されている。この塞ぎ材Sは、鋼管杭Pの杭頭内にモルタルやコンクリートなどの流動性硬化材料(グラウト材)を確実に充填するため、鋼管杭Pを塞ぐように鋼管杭Pの内壁面に密着して設置されている。
また、鋼管杭Pの外周面には環状部材50を配設している。
【0043】
次いで、凹部U内に配置された鋼管杭Pの内壁に設けられている第2の補強部材15の位置を実測し、その第2の補強部材15の位置に応じて配置が調整された第1の補強部材14が取り付けられている棒状部材13をベース板11に取り付ける。
具体的には、第1の補強部材14の配置は、少なくとも環状の第2の補強部材15に内接する仮想円の半径に相当する寸法分、第2の補強部材15よりも鉛直方向下側の位置になるよう調整されて取り付けられている。
例えば、実測した第2の補強部材15の位置に対応させて、棒状部材13の下端側に第1の補強部材14の取り付け位置をマーキングし、棒状部材13の上端側にベース板11への取り付け位置をマーキングし、そのマーキングに従って、第1の補強部材14を棒状部材13に取り付け、棒状部材13をベース板11に取り付ける。
こうして、
図5(b)に示すように、鋼管杭Pの内壁に設けられている第2の補強部材15の位置に応じて配置が調整されている第1の補強部材14を備えた接合部材10を準備する。
また、接合部材10のベース板11の長孔11aには、締結部材30のボルト31をナット32で仮止めしておく。
【0044】
次いで、鋼管杭Pの杭頭に接合部材10の管体12を被せるように設置する。
このとき、
図6に示すように、ベース板11の第2貫通孔11cに挿通させて、その先端部が管体12の下端よりも下に突き出すガイド部材Gを用いるようにする。このガイド部材Gは、第2貫通孔11cを突き抜けて落下してしまわない形状に形成されている。
なお、
図6においては締結部材30の図示を省略している。
【0045】
そして、
図7(a)(b)に示すように、ベース板11の第2貫通孔11cに挿通されて管体12の下端よりも下に突き出しているガイド部材Gを鋼管杭Pの外面に沿わせた状態で、接合部材10の管体12を鋼管杭Pの杭頭に被せる。
こうすることで、管体12の内面と鋼管杭Pの外面との間隔が全周に亘って均等になるように、接合部材10を鋼管杭Pに設置することができる。
ここで、管体12を鋼管杭Pの杭頭に被せる際に、棒状部材13および第1の補強部材14を鋼管杭P内に挿し入れている。
本実施形態では、円周方向等間隔に4つの第2貫通孔11cを設け、その第2貫通孔11cにガイド部材Gを挿通するようにしたが、円周方向等間隔に3つの第2貫通孔11cを設け、その第2貫通孔11cにガイド部材Gを挿通するようにしても、管体12の内面と杭Pの外面との間隔を全周に亘って均等にすることができる。
なお、接合部材10を鋼管杭Pの杭頭に設置した後、ガイド部材Gを第2貫通孔11cから抜き取る。
【0046】
次いで、
図8(a)に示すように、ベース板11の第1貫通孔11bを通じて鋼管杭P内に流動性硬化材料(モルタルなどのグラウト材)を注入して充填する。また、ベース板11の第2貫通孔11cを通じて管体12の内面と鋼管杭Pの外面の間に流動性硬化材料(モルタルなどのグラウト材)を注入して充填する。
このとき、流動性硬化材料の注入が行われていない第1貫通孔11bや第2貫通孔11cから流動性硬化材料があふれ出したことによって、その内部に流動性硬化材料が充填されたことを確認することができる。
なお、鋼管杭P内に充填する流動性硬化材料と、管体12の内面と鋼管杭Pの外面の間に充填する流動性硬化材料は、同じ材料であっても異なる材料であってもよい。
【0047】
次いで、
図8(b)に示すように、内部に充填した流動性硬化材料を固化させて充填材40を形成する。
鋼管杭P内と、管体12と鋼管杭Pの間に硬化した充填材40を形成したことで、接合部材10が鋼管杭Pの杭頭に固定される。
そして、鋼管杭P内に硬化した充填材40を設けた後、第1の補強部材14および棒状部材13をベース板11に近接させる方向にナット13aを増し締める。
こうして第1の補強部材14が取り付けられている棒状部材13のナット13aを増し締めることでテンションを付与し、鋼管杭Pに対する接合部材10の定着性を向上させることができる。
【0048】
次いで、
図9(a)に示すように、ベース板11上に饅頭モルタルなどと称されるベースモルタル41をセットする。
なお、ベースモルタル41をセットする前に、ベース板11の長孔11aに沿って締結部材30のボルト31を移動させてボルト31の位置調整を行う。
所定位置に配置されたボルト31はナット32によって本締めされてベース板11に固定される。
次いで、
図9(b)に示すように、接合板20の長孔20aに締結部材30のボルト31を挿通させて、ベース板11上に接合板20を設置して柱Cを建て込む。
その建て込んだ柱Cの位置を調整するように、接合板20を長孔20aに沿う方向に移動させて、接合板20および柱Cの位置調整を行う。
そして、
図10(a)に示すように、所定位置に配置された接合板20は、接合部材10のベース板11に締結部材30によって締結される。
つまり、所定位置に配置された接合板20が、ボルト31とナット32によって本締めされて接合部材10に固定され、柱Cが所定位置に立設される。
【0049】
次いで、
図10(b)に示すように、地盤の凹部U内にモルタルやコンクリートなどの流動性硬化材料を充填する。
また、ベース板11と接合板20の間にも流動性硬化材料を充填し、さらに接合板20の上にも流動性硬化材料を充填するようにして、凹部U内を満たすまで流動性硬化材料を充填する。
なお、凹部U内に充填する流動性硬化材料は、鋼管杭P内に充填した流動性硬化材料や、管体12の内面と鋼管杭Pの外面の間に充填した流動性硬化材料と同じ材料であっても異なる材料であってもよい。
そして、凹部U内に満たした流動性硬化材料を固化させて充填材40を形成する。
凹部U内に硬化した充填材40を形成したことで、
図1に示した接合構造1の施工が完了する。
このような手順で、鋼管杭Pと建造物の柱Cとの接合構造1を構築することができる。
【0050】
このような接合構造1であれば、接合部材10の管体12を鋼管杭Pの杭頭に被せ、接合部材10の棒状部材13および第1の補強部材14を鋼管杭P内に挿し入れた後、鋼管杭P内と、管体12と鋼管杭Pの間に流動性硬化材料を充填して充填材40を形成するようにして、接合部材10を鋼管杭Pに固定することができるので、上記従来技術(特許文献1)のように、多くのボルトを使用して、鋼管杭の杭頭に杭頭キャップ具を取り付ける接合作業に比べ、簡便な作業で鋼管杭Pに接合部材10を設置することができる。
つまり、本実施形態の接合構造1であれば、施工性よく接合することができる。
【0051】
また、この接合構造1における接合部材10と接合板20は、互いの長孔(11a、20a)が交差(直交)する向きに重ねられ、それぞれの長孔に連通させた締結部材30によって締結されているので、それぞれの長孔(11a、20a)に沿う方向に接合板20を動かす調整を行うことが可能になっており、接合部材10に対する接合板20の位置調整を行うようにして、鋼管杭Pに対する柱Cの位置調整を行うことができる。
このように交差させた長孔(11a、20a)による位置調整を行う作業であれば、比較的容易に鋼管杭Pに対する柱Cの配置調整を行うことができる。つまり、本実施形態の接合構造1であれば、施工性よく接合することができる。
【0052】
特に、接合部材10の管体12を被せている鋼管杭Pの杭頭の内部に、流動性硬化材料を充填して硬化させてなる充填材40を設けているので、例えば比較的大きな地震が発生した際に柱Cが大きく揺れて鋼管杭Pの杭頭に曲げの応力が作用しても、鋼管杭Pが変形するなど損傷し難くなっている。
また、鋼管杭Pの杭頭に固定された接合部材10と、上面に柱Cが固定されている接合板20とが締結部材30を用いて接合されている箇所は、地盤の凹部Uに埋め込むようにして充填材40で固められているので、その接合箇所は地震などの外力によって損傷し難くなっている。
そして、充填材40に埋め込まれている締結部材30には錆などが生じ難く、その締結部材30は劣化し難くなっている。
つまり、本実施形態の接合構造1であれば、鋼管杭Pと建造物の柱Cとの接合強度を向上させることができる。
【0053】
更に、鋼管杭Pの杭頭内部に設けられている硬化した充填材40には、鋼管杭Pの内壁からその鋼管杭Pの軸心に向けて張り出している第2の補強部材15と、接合部材10の棒状部材13および円板状の第1の補強部材14とが埋め込まれており、第1の補強部材14よりも上側となる位置に第2の補強部材15が配置されているので、例えば比較的大きな地震が発生した際に柱Cが大きく揺れて、その柱Cが鋼管杭Pから引き抜かれるような応力が作用しても、第1の補強部材14と第2の補強部材15の間に圧縮力が生じることでその引き抜き力に抵抗することができるため、その接合箇所は地震などの外力によって損傷し難くなっている。
つまり、本実施形態の接合構造1であれば、鋼管杭Pと建造物の柱Cとの接合強度を向上させることができる。
【0054】
なお、本実施形態の接合構造1では、第2の補強部材15に内接する仮想円の半径rより長い寸法分、第1の補強部材14を第2の補強部材15よりも鉛直方向下側の位置に設置している。これは第2の補強部材15の内縁からの俯角αが45°以上となる位置に第1の補強部材14を設置していることに相当する。
このような寸法や角度に基づいて、第2の補強部材15に対する第1の補強部材14の配置を調整すれば、より好適に第1の補強部材14と第2の補強部材15の間に圧縮力が生じ、柱Cが鋼管杭Pから引き抜かれるような応力(引き抜き力)に抵抗することができることを、本発明者らが見出した。
【0055】
以上のように、本実施形態の接合構造1であれば、鋼管杭Pと建造物の柱Cを施工性よく接合することができ、鋼管杭Pと建造物の柱Cとの接合強度を向上させることができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図11に示すように、鋼管杭Pの杭頭の内壁面に設けられている第2の補強部材15が、丸鋼を用いて形成されたリング状の部材であってもよい。
このリング状の第2の補強部材15は、鋼管杭Pの内壁に内接するサイズに丸鋼を円環状に成形したものを、鋼管杭Pの内壁に溶接などによって固設したものである。
このようなリング状の第2の補強部材15を備えている鋼管杭と建造物との接合構造1であってもよい。
勿論、この接合構造1であっても、第2の補強部材15に内接する仮想円の半径と同じか、仮想円の半径より長い寸法分、第1の補強部材14を第2の補強部材15よりも鉛直方向下側の位置に設置している。換言すれば、第2の補強部材15の内縁からの俯角αが45°以上となる位置に第1の補強部材14を設置している。
【0057】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 接合構造
10 接合部材
11 ベース板
11a 長孔
11b 第1貫通孔
11c 第2貫通孔
12 管体
13 棒状部材
13a ナット
14 第1の補強部材
15 第2の補強部材
20 接合板
20a 長孔
30 締結部材
31 ボルト
32 ナット
40 充填材
41 ベースモルタル
50 環状部材
C 柱(建造物の柱)
P 鋼管杭
S 塞ぎ材
U 地盤の凹部
G ガイド部材