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特開2023-127076CD81結合性ペプチド及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127076
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】CD81結合性ペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20230906BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230906BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230906BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230906BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20230906BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61P35/00
A61P29/00
A61P1/00
C07K14/705
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030632
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】大河内 美奈
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐圭
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA23
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZB11
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA25
4H045EA28
4H045FA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CD81結合性ペプチド、及び、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤を提供する。
【解決手段】特定の4種類のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるか、又は、前記特定の4種類のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、且つCD81に対する結合性を有するペプチドからなる、CD81結合性ペプチド、及び、上記CD81結合性ペプチドを有効成分とする、CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるか、又は、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、且つCD81に対する結合性を有するペプチドからなる、CD81結合性ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のCD81結合性ペプチドを有効成分とする、CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤。
【請求項3】
前記CD81関連疾患が、癌細胞の遊走若しくは浸潤、又は、炎症性腸疾患である、請求項2に記載の予防、改善又は治療剤。
【請求項4】
請求項1に記載のCD81結合性ペプチドを有効成分とする、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤と、抗癌剤とを含む、癌治療用医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のCD81結合性ペプチドを有効成分とする、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤と、抗癌剤とを含む、癌治療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD81結合性ペプチド及びその使用に関する。より具体的には、本発明は、CD81結合性ペプチド、CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤、炎症性腸疾患の予防、改善又は治療剤、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤、癌治療用医薬組成物及び癌治療用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
CD81は、テトラスパニンと呼ばれる膜4回貫通型タンパク質スーパーファミリーのメンバーである。CD81は、4つの膜貫通領域、2つの細胞外ループ及び1つの短い細胞内ループを含み、他のテトラスパニンと同じ膜トポロジーを有している。テトラスパニンは他の膜タンパクと結合して、テトラスパニンウェブと呼ばれる複合体を形成し、様々な生物学的プロセスに関与することが知られている。
【0003】
CD81は、膜タンパク質であるEWI-2、B細胞補助受容体CD19等と結合することが知られている。CD81は多くの癌細胞だけでなく、癌細胞が分泌する細胞外小胞にも高度に発現していることが知られている。
【0004】
癌は世界的に死因の上位を占める疾患であり、抗癌剤の開発は世界的に重要である。従来、癌細胞の増殖を阻害する抗癌剤が開発されてきた。これに対し、例えば非特許文献1に記載されているように、癌細胞の浸潤や転移を阻害する新しいタイプの医薬が注目されている。
【0005】
ところで、クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease、IBD)は、アンメット・メディカルニーズが高い疾患であり、炎症性腸疾患を予防、改善又は治療する技術が求められている。近年、大腸炎動物モデルの活性化T細胞においてCD81が発現していること、炎症性腸疾患にはT細胞の遊走が関連していること、抗CD81抗体が炎症性腸疾患の治療に有用であること等が報告されている(例えば、非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gandalovicova A., et al., Migrastatics- Anti-metastatic and Anti-invasion Drugs: Promises and Challenges, Trends in Cancer, 3, (6), 391-406, 2017.
【非特許文献2】Hasezaki T., et al., Anti-CD81 antibodies reduce migration of activated T lymphocytes and attenuate mouse experimental colitis, Scientific Reports, 10:6969, 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、CD81結合性ペプチド、及び、CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるか、又は、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、且つCD81に対する結合性を有するペプチドからなる、CD81結合性ペプチド。
[2][1]に記載のCD81結合性ペプチドを有効成分とする、CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤。
[3]前記CD81関連疾患が、癌細胞の遊走若しくは浸潤、又は、炎症性腸疾患である、[2]に記載の予防、改善又は治療剤。
[4][1]に記載のCD81結合性ペプチドを有効成分とする、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤と、抗癌剤とを含む、癌治療用医薬組成物。
[5][1]に記載のCD81結合性ペプチドを有効成分とする、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤と、抗癌剤とを含む、癌治療用キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CD81結合性ペプチド、及び、CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実験例2におけるペプチドアレイの蛍光画像を示す写真である。
図2図2は、図1に基づいて作成したグラフである。
図3図3は、実験例3におけるペプチドアレイの蛍光画像を示す写真である。
図4図4は、図3に基づいて作成したグラフである。
図5図5は、実験例4において予測した、配列番号1のペプチドとCD81タンパク質の配置を示す図及びその部分拡大図である。
図6図6は、実験例4において予測した、配列番号2のペプチドとCD81タンパク質の配置を示す図及びその部分拡大図である。
図7図7は、実験例4において予測した、配列番号3のペプチドとCD81タンパク質の配置を示す図及びその部分拡大図である。
図8図8は、実験例4において予測した、配列番号4のペプチドとCD81タンパク質の配置を示す図及びその部分拡大図である。
図9図9は、実験例5における細胞浸潤アッセイの結果を示すグラフである。
図10図10は、実験例6における細胞遊走アッセイの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[CD81結合性ペプチド]
一実施形態において、本発明は、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるか、又は、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、且つCD81に対する結合性を有するペプチドからなる、CD81結合性ペプチドを提供する。CD81結合性ペプチドとは、CD81タンパク質に対する結合性を有するペプチドである。
【0012】
本実施形態のCD81結合性ペプチドは、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列からなるか、又は、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つCD81に対する結合性を有するペプチドからなるものであってもよい。
【0013】
本実施形態のCD81結合性ペプチドが結合対象とするCD81タンパク質はヒトCD81タンパク質であることが好ましい。ヒトCD81タンパク質のNCBIアクセッション番号は、NP_001284578.1、NP_004347.1等である。
【0014】
本実施形態のCD81結合性ペプチドは、CD81に対する結合性を有している限り、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有していてもよい。
【0015】
本明細書において、1若しくは数個とは、例えば1~3個であってもよく、例えば1~2個であってもよい。以下、あるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列のことを「変異配列」という場合がある。また、あるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドのことを「変異ペプチド」等という場合がある。
【0016】
本実施形態のCD81結合性ペプチドは、その部分ペプチドが、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド又はその変異ペプチドであってもよい。いい換えると、本実施形態のCD81結合性ペプチドは、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド又はその変異ペプチドを部分ペプチドとし、そのN末端側又はC末端側に、更に他のアミノ酸配列からなるペプチドが連結されていてもよい。このようなペプチドであっても、CD81に結合することができる。
【0017】
CD81結合性ペプチドがN末端側又はC末端側に付加的なアミノ酸配列を有している場合、付加的なアミノ酸配列の長さは、例えば5~100アミノ酸であってもよく、例えば5~50アミノ酸であってもよく、例えば5~40アミノ酸であってもよく、例えば5~30アミノ酸であってもよく、例えば5~20アミノ酸であってもよく、例えば5~10アミノ酸であってもよい。
【0018】
本明細書において、「ペプチドがCD81と結合する」とは、「ペプチドがCD81と反応する」、「ペプチドがCD81を認識する」、「ペプチドがCD81を結合対象とする」等といい換えることもできる。
【0019】
[CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤]
一実施形態において、本発明は、上述したCD81結合性ペプチドを有効成分とする、CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤を提供する。
【0020】
CD81関連疾患とは、CD81がその発症に関連する疾患を意味する。CD81関連疾患としては、癌細胞の遊走若しくは浸潤、炎症性腸疾患等が挙げられる。
【0021】
したがって、一態様において、本実施形態の予防、改善又は治療剤は、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤であるということができる。また、別の一態様において、本実施形態の予防、改善又は治療剤は、炎症性腸疾患の予防、改善又は治療剤であるということができる。炎症性腸疾患としては、潰瘍性大腸炎、クローン病等が挙げられる。
【0022】
実施例において後述するように、CD81結合性ペプチドを、癌細胞の遊走又は浸潤を抑制する用途に使用することができる。したがって、CD81結合性ペプチドを、癌細胞の遊走又は浸潤を抑制する新たなタイプの医薬等として利用することができる。癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤は、癌細胞の転移抑制剤等といい換えることができる。
【0023】
本実施形態の癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤が対象とする癌細胞としては、CD81の発現量が正常細胞と比較して増加した癌細胞であれば特に限定されず、乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌、前立腺癌、メラノーマ、脳腫瘍、リンパ腫、子宮癌、卵巣癌、頭頸部の癌(喉頭癌、咽頭癌、舌癌等)、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫等が挙げられる。また、ここで、正常細胞としては、例えば正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)が挙げられる。
【0024】
また、上述したように、抗CD81抗体が炎症性腸疾患に対する予防、改善、治療効果を有することが報告されている。したがって、CD81結合性ペプチドを、炎症性腸疾患の予防、改善又は治療剤として利用することができる。
【0025】
配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチド又はその変異ペプチドは、通常の方法により化学合成することができる。
【0026】
本実施形態の癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤、又は、炎症性腸疾患の予防、改善又は治療剤は、常法にしたがって、薬学的に許容される担体を混合した医薬組成物として製剤化されていることが好ましい。医薬組成物は、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤等の形態で経口的に、あるいは、注射剤、点滴静注剤等の形態で非経口的に投与することができる。
【0027】
薬学的に許容される担体(添加剤)としては、安定剤、希釈剤、増粘剤、pH調整剤、注射剤用溶剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、乳化剤、湿潤剤、油剤等が挙げられる。
【0028】
安定剤としては、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール等のアルコール類;フェノール、クレゾール等のフェノール類が挙げられる。
【0029】
希釈剤としては、水、エタノール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0030】
増粘剤としては、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カラギナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0031】
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸やそれらのカリウム塩、ナトリウム塩又はアンモニウム塩、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
注射剤用溶剤としては、水、エタノール、グリセリン等が挙げられる。
【0033】
賦形剤としては、有機系賦形剤、無機系賦形剤等が挙げられる。有機系賦形剤としては、乳糖、白糖等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース等のセルロース誘導体;アラビアゴム等が挙げられる。無機系賦形剤としては、硫酸カルシウム等の硫酸塩が挙げられる。
【0034】
結合剤としては、上記の賦形剤、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
崩壊剤としては、上記の賦形剤;クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等のデンプン又はセルロースの誘導体;架橋ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0036】
滑沢剤としては、タルク;ステアリン酸;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイロウ等のワックス類;硫酸ナトリウム等の硫酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等のラウリル硫酸塩;上記の賦形剤におけるデンプン誘導体等が挙げられる。
【0037】
乳化剤としては、ベントナイト、ビーガム等のコロイド性粘土;ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム等の陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤;ステアリン酸ポリグリセリル-10、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10等の(ポリ)グリセリル脂肪酸エステル界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、濃グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0039】
油剤としては、流動パラフィン、スクワラン、ポリイソブテン等の炭化水素油;オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オクチルドデカノール、アラキルアルコール、水添ナタネ油アルコール、ベヘニルアルコール、デシルテトラデカノール等の高級アルコール類;パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;オリーブ油、ホホバ種子油、イソノナン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチグリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリエチルヘキサノイン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、コハク酸ジエチルヘキシル、コハク酸ビスエトキシジグリコール、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸セチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、エルカ酸オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、(ジグリセリン/ジリノール酸/ヒドロキシステアリン酸)コポリマー等のエステル油;シクロメチコン、フェニルトリメチコン、ジメチコン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0040】
癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、例えば、成人に対し、投与単位形態あたり0.1~1,000mgの有効成分(CD81結合性ペプチド)を投与すればよい。
【0041】
また、炎症性腸疾患の予防、改善又は治療剤の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、例えば、成人に対し、投与単位形態あたり0.1~1,000mgの有効成分(CD81結合性ペプチド)を投与すればよい。
【0042】
[癌治療用医薬組成物]
一実施形態において、本発明は、上述した癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤と、抗癌剤とを含む、癌治療用医薬組成物を提供する。
【0043】
本実施形態の医薬組成物によれば、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤により癌の転移や浸潤を抑制しつつ、抗癌剤により癌細胞を殺傷又は細胞増殖抑制することにより、効果的に癌を治療することができる。
【0044】
抗癌剤としては、殺細胞性抗癌剤、分子標的薬等が挙げられる。殺細胞性抗癌剤としては、アルキル化薬、白金化合物、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害薬、抗癌抗生物質、微小管作用抗癌剤等が挙げられる。
【0045】
アルキル化薬としては、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、チオテパ、ブスルファン、ダカルバジン、ニムスチン、ラニムスチン、テモゾロミド等が挙げられる。白金化合物としては、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン等が挙げられる。代謝拮抗薬としては、ピリミジン拮抗薬、プリン拮抗薬、葉酸拮抗薬等が挙げられる。ピリミジン拮抗薬としては、フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、エノシタビン、テガフール、カルモフール、ドキシフルリジン等が挙げられる。プリン拮抗薬としては、メルカプトプリン、フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン等が挙げられる。葉酸拮抗薬としては、ペメトレキセド、メトトレキサート等が挙げられる。トポイソメラーゼ阻害薬としては、イリノテカン、ノギテカン、エトポシド等が挙げられる。抗癌抗生物質としては、アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーム、ダウノルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、アクラルビシン、ピラルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アムルビシン、ジノスタチンスチマラマー等が挙げられる。微小管作用抗癌剤としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル等が挙げられる。
【0046】
分子標的薬としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブ等のチロシンキナーゼ阻害剤、トファシチニブ、バリシチニブ、ルキソリチニブ等のヤヌスキナーゼ阻害剤、オラパリブ等のPARP阻害剤、リツキシマブ、セツキシマブ、トラスツズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ等の抗体医薬等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の医薬組成物は、常法にしたがって、薬学的に許容される担体を混合した医薬組成物として製剤化されていることが好ましい。医薬組成物については上述したものと同様である。
【0048】
癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤、及び、抗癌剤の投与量は、抗癌剤の種類、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、例えば、成人に対し、投与単位形態あたり0.1~1,000mgの各有効成分(0.1~1,000mgのCD81結合性ペプチド、及び、0.1~1,000mgの抗癌剤)を投与すればよい。
【0049】
[癌治療用キット]
一実施形態において、本発明は、上述した癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤と、抗癌剤とを含む、癌治療用キットを提供する。
【0050】
本実施形態の癌治療用キットは、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤と、抗癌剤とが、別々の容器に封入されており、単一の医薬組成物を構成していない点において、上述した癌治療用医薬組成物と主に異なる。
【0051】
抗癌剤については上述したものと同様である。抗癌剤は、常法にしたがって、薬学的に許容される担体を混合した癌治療用医薬組成物として、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤等の形態で経口的に、あるいは、注射剤、点滴静注剤等の形態で非経口的に投与することができる。薬学的に許容される担体(添加剤)については上述したものと同様である。
【0052】
癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤、及び、抗癌剤の投与量は、抗癌剤の種類、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、例えば、成人に対し、投与単位形態あたり0.1~1,000mgの各有効成分(0.1~1,000mgのCD81結合性ペプチド、及び、0.1~1,000mgの抗癌剤)を投与すればよい。
【0053】
[その他の実施形態]
一実施形態において、本発明は、CD81結合性ペプチドの有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制方法を提供する。本実施形態の方法は、癌の転移を抑制する方法であるということもできる。
【0054】
一実施形態において、本発明は、CD81結合性ペプチドの有効量、及び、抗癌剤の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、癌の治療方法を提供する。
【0055】
本実施形態の癌の治療方法において、CD81結合性ペプチド及び抗癌剤は、混合されて単一の医薬組成物を構成していてもよいし、別々の容器に封入されてキットを構成していてもよい。
【0056】
一実施形態において、本発明は、CD81結合性ペプチドの有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、炎症性腸疾患の予防、改善又は治療方法を提供する。
【0057】
一実施形態において、本発明は、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制における使用のための、CD81結合性ペプチドを提供する。
【0058】
一実施形態において、本発明は、癌の治療における使用のための医薬組成物であって、CD81結合性ペプチド、及び、抗癌剤を含む医薬組成物を提供する。
【0059】
一実施形態において、本発明は、癌の治療における使用のためのキットであって、CD81結合性ペプチド、及び、抗癌剤を含むキットを提供する。
【0060】
一実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患の予防、改善又は治療における使用のための、CD81結合性ペプチドを提供する。
【0061】
一実施形態において、本発明は、癌細胞の遊走又は浸潤の抑制剤を製造するための、CD81結合性ペプチドの使用を提供する。
【0062】
一実施形態において、本発明は、癌治療用医薬組成物を製造するための、CD81結合性ペプチド、及び、抗癌剤の使用を提供する。
【0063】
一実施形態において、本発明は、癌治療用キットを製造するための、CD81結合性ペプチド、及び、抗癌剤の使用を提供する。
【0064】
一実施形態において、本発明は、炎症性腸疾患の予防、改善又は治療剤を製造するための、CD81結合性ペプチドの使用を提供する。
【0065】
これらの各実施形態において、CD81結合性ペプチドについては上述したものと同様である。CD81結合性ペプチドは、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなるペプチドであってもよいし、配列番号1~4のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むアミノ酸配列からなり、且つCD81に対する結合性を有するペプチドであってもよい。また、これらの各実施形態において、抗癌剤については上述したものと同様である。
【実施例0066】
次に実験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0067】
[実験例1]
(ペプチドアレイの作製)
上述したように、CD81は、膜タンパク質であるEWI-2と結合することが知られている。そこで、EWI-2のIg3ドメイン以降のアミノ酸配列に基づいて、4残基ずつオーバーラップさせた8残基のペプチドライブラリーを構築し、セルロースメンブレン上にペプチドアレイを作製した。
【0068】
ヒトEWI-2のアミノ酸配列を配列番号6に示す。配列番号6の第303~424番目のアミノ酸からなる配列がIg3ドメインのアミノ酸配列であり、第431~560番目のアミノ酸からなる配列がIg4ドメインのアミノ酸配列である。
【0069】
配列番号6の第301~613番目のアミノ酸からなる配列において、N末端から8アミノ酸からなるペプチドを1ペプチドとし、そこから4残基ずつC末端方向にずらし、長さがそれぞれ8アミノ酸である全78種類のペプチドから構成されるペプチドアレイを作製した。
【0070】
まず、活性化メンブレンを作製した。37℃で1日乾燥させたセルロースメンブレン(フィルターペーパー542、GEヘルスケア社)を、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)に1日浸漬した。続いて、メンブレンをメタノールで2回洗浄した後乾燥させた。続いて、DMF 300mL、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(以下、「Fmoc」という。)-β-アラニン24mL(1.0M)、ジイソプロピルカルボジイミド(以下、「DIPCI」という。)500μL、1-メチルイミダゾール(以下、「NMI」という。)400μLを混合して調製した活性化試薬に、上記のメンブレンを2日間浸漬した。最後に、メンブレンを、DMF及びメタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、冷風をあてて乾燥させた。完成した活性化メンブレンは-20℃の冷凍庫中に保存した。
【0071】
続いて、ペプチドアレイを作製した。ペプチド合成機(型式「ResPep SL、KIFU20140047-0000」、Intavis社)を用いて、上述した活性化メンブレン上の決められた位置にアミノ酸のスポッティングを繰り返すことにより、Fmoc固相合成反応によるペプチドの伸長反応を行った。スポットするアミノ酸溶液としては、N-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」という。)に溶解した0.5M Fmocアミノ酸溶液、及び、DIPCIとヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、「HoBt」という。)をモル比で1:4に混合して調製した活性化剤を、17:100の容量比で混合させたものを使用した。Fmoc基の脱保護には、20%ピペリジン(渡辺化学社)を用いた。キャッピングには、無水酢酸とDMFとを容量比で2:100に混合した溶液を使用した。また、メンブレンの洗浄には、DMF及びエタノールを使用した。
【0072】
[実験例2]
(CD81結合性ペプチドのスクリーニング)
実験例1で作製したペプチドアレイとCD81タンパク質とを反応させ、CD81結合性ペプチドをスクリーニングした。
【0073】
ペプチドアレイを3%ウシ血清アルブミン(BSA)-Tris-HClバッファーに浸して室温で15分間インキュベートし、ブロッキングした。続いて、ペプチドアレイを3回洗浄し、Alexa Fluor488で標識したCD81タンパク質を室温で3時間反応させた。
【0074】
続いて、ペプチドアレイを3回洗浄し、画像解析システム(型式「Typhoon FLA 9500BGR」、GEヘルスケア社)を用いて蛍光画像を取得した。続いて、画像解析ソフトImage Quant(GEヘルスケア社)を用い、測定された蛍光強度を数値化した。
【0075】
図1は、ペプチドアレイの蛍光画像を示す写真である。図1中、「CD81-Alexa488」はAlexa Fluor488で標識したCD81タンパク質を反応させた結果であることを示し、「Control」は対照であることを示す(N=3)。後述するように、ペプチド番号97、132、152、153のペプチドは、特にCD81タンパク質との結合性が高かった。
【0076】
図2は、図1に基づいて作成したグラフである。図2中、横軸はペプチド番号を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。平均値+2SD(標準偏差)を超える蛍光強度を示したペプチドのうち、ペプチド番号97、132、152、153のペプチドに着目して以下の検討を行った。
【0077】
下記表1に、各ペプチドの特性を示す。表1中、pIは(等電点pH)を示し、チャージは電荷を示し、GRAVYは疎水性度(grand average of hydropathy)を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
[実験例3]
(CD81結合性ペプチドとCD81タンパク質との相互作用の評価)
実験例1と同様にして、配列番号1~4のアミノ酸配列からなるペプチド、及び、対照ペプチド(AAAA、配列番号5)をスポット合成したペプチドアレイを作製した。
【0080】
続いて、ペプチドアレイを3%BSA-Tris-HClバッファーに浸して室温で15分間インキュベートし、ブロッキングした。続いて、ペプチドアレイを3回洗浄し、50nM、125nM、250nM、500nM、750nM、1,000nMの、Alexa Fluor488で標識したCD81タンパク質を室温で3時間反応させた。
【0081】
続いて、ペプチドアレイを3回洗浄し、画像解析システム(型式「Typhoon FLA 9500BGR」、GEヘルスケア社)を用いて蛍光画像を取得した。続いて、画像解析ソフトImage Quant(GEヘルスケア社)を用い、測定された蛍光強度を数値化した。
【0082】
図3は、ペプチドアレイの蛍光画像を示す写真である。図3中、「P97」はペプチド番号97(配列番号1)のペプチドを示し、「P132」はペプチド番号132(配列番号2)のペプチドを示し、「P152」はペプチド番号152(配列番号3)のペプチドを示し、「P153」はペプチド番号153(配列番号4)のペプチドを示し、「4A」は配列番号5のペプチドを示す。
【0083】
図4は、図3に基づいて作成したグラフである。図4中、横軸はCD81タンパク質の濃度を示し、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。図4中、「P97」、「P132」、「P152」、「P153」については図3と同様である。
【0084】
続いて、各ペプチドとCD81タンパク質との結合定数Kを算出した。下記表2に算出したKを示す。その結果、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドが、CD81タンパク質との結合親和性が最も高いことが明らかとなった。
【0085】
なお、図4に示すように、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド(ペプチド番号152)の飽和結合量は、配列番号1~4のアミノ酸配列からなるペプチドの中で最も高くはないが、Kは最も高い結果となった。
【0086】
【表2】
【0087】
[実験例4]
(分子ドッキングシミュレーション)
CD81結合性ペプチドとCD81タンパク質の複合構造をMDockPePソフトウエアを用いて予測した。
【0088】
図5~8は、CD81結合性ペプチドとCD81タンパク質の配置を示す図及びその部分拡大図である。図5はペプチド番号97(配列番号1)のペプチドの結果を示し、図6はペプチド番号132(配列番号2)のペプチドの結果を示し、図7はペプチド番号152(配列番号3)のペプチドの結果を示し、図8はペプチド番号153(配列番号4)のペプチドの結果を示す。
【0089】
図5~8中、「N-ter CD81」はCD81のN末端を示し、「C-ter CD81」はCD81のC末端を示し、「Int」は細胞膜の細胞質側を示し、「Ext」は細胞膜の外側を示す。
【0090】
その結果、いずれのペプチドも、細胞膜の近傍で、LEL(Large Extracellular loop)ドメイン及びSEL(Small Extracellular loop)ドメインに挟まれる形でCD81に結合していることが明らかとなった。
【0091】
[実験例5]
(細胞浸潤アッセイ)
ボイデンチャンバーを用いた細胞浸潤アッセイにより、CD81結合性ペプチドが細胞の浸潤を抑制できるか否かを検討した。無血清培地に懸濁した細胞を、多孔質膜を有する上部チャンバーに配置し、血清含有培地を底部ウェルに配置した。細胞としては、ヒト乳腺癌細胞株であるMDA-MB-231細胞を使用した。
【0092】
上部チャンバーの培地には、100nMの各CD81結合性ペプチドをそれぞれ添加した。また、比較のために、ペプチド無添加群、100nMの配列番号5のペプチド添加群、100nMの抗CD81抗体(クローン5A6、サンタクルーズバイオテクノロジー)添加群も用意した。
【0093】
続いて24時間細胞をインキュベートした後、多孔質膜の反対側に浸潤した細胞を回収して溶解し、蛍光色素(CyQuant GR Dye、サーモフィッシャーサイエンティフィック)を用いて定量した。
【0094】
図9は、細胞浸潤アッセイの結果を示すグラフである。図9中、縦軸は蛍光強度(相対値)を示す。また、「No Pep」はペプチド無添加群の結果であることを示し、「4A」は配列番号5のペプチドを添加した結果であることを示し、「97」はペプチド番号97(配列番号1)のペプチドを添加した結果であることを示し、「132」はペプチド番号132(配列番号2)のペプチドを添加した結果であることを示し、「152」はペプチド番号152(配列番号3)のペプチドを添加した結果であることを示し、「153」はペプチド番号153(配列番号4)のペプチドを添加した結果であることを示し、「5A6」は抗CD81抗体を添加した結果であることを示す。
【0095】
その結果、ペプチド番号132(配列番号2)、152(配列番号3)、153(配列番号4)のペプチドで処理することにより、MDA-MB-231細胞の浸潤が抑制されたことが明らかとなった。この結果は、CD81結合性ペプチドが、癌細胞の遊走又は浸潤を抑制し、癌の治療に有用であることを示す。
【0096】
[実験例6]
(細胞遊走アッセイ)
単一細胞追跡遊走アッセイにより、CD81結合性ペプチドが細胞の遊走を抑制できるか否かを検討した。100nM及び1μMの各CD81結合性ペプチドの存在下で、MDA-MB-231細胞の移動を12時間追跡した。また、比較のために、ペプチド無添加群、配列番号5のペプチド添加群、抗CD81抗体(クローン5A6、サンタクルーズバイオテクノロジー)添加群も用意した。
【0097】
図10は、細胞遊走アッセイの結果を示すグラフである。また、下記表3に細胞遊走アッセイの結果を示す。図10中、縦軸は細胞の遊走距離(μm)を示す。また、図10及び下記表3中、「No Pep」はペプチド無添加群の結果であることを示し、「4A」は配列番号5のペプチドを添加した結果であることを示し、「97」はペプチド番号97(配列番号1)のペプチドを添加した結果であることを示し、「132」はペプチド番号132(配列番号2)のペプチドを添加した結果であることを示し、「152」はペプチド番号152(配列番号3)のペプチドを添加した結果であることを示し、「153」はペプチド番号153(配列番号4)のペプチドを添加した結果であることを示し、「5A6」は抗CD81抗体を添加した結果であることを示す。
【0098】
【表3】
【0099】
その結果、ペプチド番号97(配列番号1)、ペプチド番号132(配列番号2)、152(配列番号3)、153(配列番号4)のペプチドで処理することにより、単一細胞レベルでのMDA-MB-231細胞の遊走距離が、ペプチド無添加群と比較して、10~30%程度減少したことが明らかとなった。この結果は、CD81結合性ペプチドが、癌細胞の遊走又は浸潤を抑制し、癌の治療に有用であることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、CD81結合性ペプチド、及び、CD81関連疾患の予防、改善又は治療剤を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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