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特開2023-127097UV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物、複合成形体の製造方法、および複合成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127097
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】UV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物、複合成形体の製造方法、および複合成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20230906BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230906BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230906BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20230906BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20230906BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20230906BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20230906BHJP
   C08J 5/12 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C08L81/02
C08K3/013
C08L63/00 C
C08L23/26
C08L79/08 B
C08L71/12
C08L81/06
C08J5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030664
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳住 啓太
(72)【発明者】
【氏名】大久保 和哉
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA15B
4F071AA42A
4F071AA42B
4F071AA51B
4F071AA62B
4F071AA64B
4F071AA88B
4F071AB21B
4F071AB28B
4F071AD01B
4F071AH12
4F071AH17
4F071BA01
4F071BB05
4F071BC03
4F071BC12
4F071CB01
4F071CC04
4F071CD05
4J002BB204
4J002BB214
4J002CD032
4J002CD052
4J002CD062
4J002CD072
4J002CD194
4J002CH075
4J002CL033
4J002CM045
4J002CN011
4J002CN035
4J002DA066
4J002DA076
4J002DA096
4J002DC006
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE216
4J002DE236
4J002DF016
4J002DG026
4J002DH056
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DL006
(57)【要約】
【課題】
PPS樹脂が本来有する優れた機械物性、耐薬品性などの諸物性を大きく損なうことなく、UV硬化型エポキシ樹脂との接着性に優れたPPS樹脂組成物を得ることを課題とする。
【解決手段】
(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、(B)無機充填剤を20~350重量部、および(C)エポキシ当量が100~3500g/eq.であるエポキシ樹脂1~20重量部を配合してなる、UV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、(B)無機充填剤を20~350重量部、および(C)エポキシ当量が100~3500g/eq.であるエポキシ樹脂1~20重量部を配合してなる、UV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、さらに(D)エポキシ基、カルボキシル基、および酸無水物基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体を2~20重量部を配合してなる請求項1に記載のUV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、さらに(E)ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびポリフェニレンエーテル樹脂から選択される少なくとも1種の非晶性樹脂を5~50重量部を配合してなる請求項1または2のいずれかに記載のUV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項4】
前記(E)ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびポリフェニレンエーテル樹脂から選択される少なくとも1種の非晶性樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂である、請求項3に記載のUV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)エポキシ当量が100~3500g/eq.であるエポキシ樹脂がビスフェノール型骨格を主としたものである、請求項1~4のいずれかに記載のUV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形体と別の成形体とをUV硬化型エポキシ樹脂を用いて接着する、複合成形体の製造方法。
【請求項7】
前記UV硬化型エポキシ樹脂がカチオン硬化型エポキシ樹脂である請求項6に記載の複合成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形体と別の成形体とをUV硬化型エポキシ樹脂を用いて接着した複合成形体。
【請求項9】
前記UV硬化型エポキシ樹脂がカチオン硬化型エポキシ樹脂である請求項8に記載の複合成形体。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形体と別の成形体とをUV硬化型エポキシ樹脂を用いて接着する接着方法。
【請求項11】
前記UV硬化型エポキシ樹脂がカチオン硬化型エポキシ樹脂である請求項10に記載の接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い機械的強度や剛性を維持したまま、UV硬化型エポキシ樹脂との接着性にも優れるポリフェニレンサルファイド樹脂組成物、それを成形してなる成形体とUV硬化型エポキシ接着剤とからなる複合成形体を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンサルファイド(以下PPSと略す場合がある)樹脂は、耐熱性、難燃性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性および機械的強度や寸法安定性に優れたエンジニアプラスチックであり、射出成形や押出成形などの各種成形法により、各種成形品や繊維、フィルムに成形可能であるため、電気・電子部品、機械部品および自動車部品など広範な分野において実用に供されている。
【0003】
近年、電子部品の封止やカメラ部品のレンズと鏡筒との固定などにはエポキシ接着剤が使用されており、機械的強度や寸法安定性に加えて、高い接着性が求められている。しかしながら、PPS樹脂は耐薬品性に優れることから他樹脂との相溶性に劣り、エポキシ接着剤との密着性が低い。
【0004】
一般に、エポキシ接着性を向上させる手法として、特許文献1のように反応性が高い官能基を有するPPS樹脂を用いることで、密着性が向上した熱可塑性樹脂組成物を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-35229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品の封止やカメラ部品の固定においては、熱硬化性エポキシ樹脂接着剤が使われていた。これまでは、接着剤と成形品を寸法や軸を合わせた状態で電気炉などに入れ、熱を長時間与えることで硬化し、得られた複合成形品の寸法や軸を再度確認する必要があった。そのため、エポキシ樹脂の硬化収縮や加熱時の軟化によって寸法や軸を制御することが難しく、不良率が多く発生してしまう問題があった。
【0007】
それらの課題を解決するために、近年、寸法や軸を調整した状態で硬化することが可能なUV硬化型エポキシ樹脂接着剤が多く検討されている。UV硬化型エポキシ樹脂は、特定波長のUVを数10秒~数分間程度照射することで硬化が進むので仮固定が可能であり、その後のアフターベイクにおいての寸法変化が少ない。そのため、寸法や軸合わせと同時に硬化させることが可能となる。
【0008】
しかしながら、UV硬化型エポキシ樹脂接着剤を使用する場合においては、特許文献1のような反応性が高い官能基を有したPPS樹脂を使用した場合、接着性が満足いくものではなかった。
【0009】
そこで、本発明では、PPS樹脂が本来有する優れた機械物性、耐薬品性などの諸物性を大きく損なうことなく、UV硬化型エポキシ樹脂との接着性に優れたPPS樹脂組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
(1)(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、(B)無機充填剤を20~350重量部、および(C)エポキシ当量が100~3500g/eq.であるエポキシ樹脂1~20重量部を配合してなる、UV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
(2)前記(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、さらに(D)エポキシ基、カルボキシル基、および酸無水物基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体を2~20重量部を配合してなる(1)に記載のUV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
(3)前記(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、さらに(E)ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびポリフェニレンエーテル樹脂から選択される少なくとも1種の非晶性樹脂を5~50重量部を配合してなる(1)または(2)のいずれかに記載のUV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
(4)前記(E)ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびポリフェニレンエーテル樹脂から選択される少なくとも1種の非晶性樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂である、(3)に記載のUV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
(5)前記(C)エポキシ当量が100~3500g/eq.であるエポキシ樹脂がビスフェノール型骨格を主としたものである、(1)~(4)のいずれかに記載のUV硬化型エポキシ樹脂接着用ポリフェニレンサルファイド樹脂組成物。
(6)(1)~(5)のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形体と別の成形体とをUV硬化型エポキシ樹脂を用いて接着する、複合成形体の製造方法。
(7)前記UV硬化型エポキシ樹脂がカチオン硬化型エポキシ樹脂である(6)に記載の複合成形体の製造方法。
(8)(1)~(5)のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形体と別の成形体とをとUV硬化型エポキシ樹脂を用いて接着した複合成形体。
(9)前記UV硬化型エポキシ樹脂がカチオン硬化型エポキシ樹脂である(8)に記載の複合成形体。
(10)(1)~(5)のいずれかに記載のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形体と別の成形体とをUV硬化型エポキシ樹脂を用いて接着する接着方法。
(11)前記UV硬化型エポキシ樹脂がカチオン硬化型エポキシ樹脂である(10)に記載の接着方法。
【発明の効果】
【0011】
PPS樹脂が本来有する優れた機械物性、耐薬品性などの諸物性を大きく損なうことなく、UV硬化型エポキシ樹脂との接着性に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂組成物を得ることができる。また、そのポリフェニレンサルファイド樹脂組成物からなる成形体と別の成形体とをUV硬化型エポキシ樹脂で接着して得られる複合成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】接着試験を評価する際に用いる試験形状(ISOダンベル)を示す。1は切削位置を示す。
図2】接着試験を行う際の接着試験片を示す図である。(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は(a)に示す平面図から抽出したUV硬化型エポキシ樹脂の接着部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0015】
【化1】
【0016】
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
【0017】
【化2】
【0018】
以下に、本発明で用いるPPS樹脂の製造方法を述べる。まず、使用するポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
【0019】
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロ-p-キシレン、1,4-ジブロモベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp-ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p-ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
【0020】
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9モルから2.0モル、好ましくは0.95モルから1.5モル、更に好ましくは1.005モルから1.2モルの範囲が例示できる。
【0021】
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
【0022】
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0023】
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0024】
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からスルフィド化剤を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0025】
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるスルフィド化剤も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からスルフィド化剤を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
【0026】
仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
【0027】
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0028】
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95モルから1.20モル、好ましくは1.00モルから1.15モル、更に好ましくは1.005モルから1.100モルの範囲が例示できる。
【0029】
[重合溶媒]
重合溶媒としては有機極性溶媒を用いることが好ましい。具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドンなどのN-アルキルピロリドン類、N-メチル-ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
【0030】
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25モルから6.0モル、より好ましくは2.5モルから5.5モルの範囲が選択される。
【0031】
[分子量調節剤]
生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
【0032】
[重合助剤]
比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩および/または水が好ましく用いられる。
【0033】
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)(式中、Rは、炭素数1~20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1~3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p-トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
【0034】
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
【0035】
これら重合助剤を用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル~0.7モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1モル~0.6モルの範囲が好ましく、0.2モル~0.5モルの範囲がより好ましい。
【0036】
また水を重合助剤として用いることは、流動性と高靭性が高度にバランスした樹脂組成物を得る上で有効な手段の一つである。その場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.5モル~15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6モル~10モルの範囲が好ましく、1モル~5モルの範囲がより好ましい。
【0037】
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
【0038】
[重合安定剤]
重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
【0039】
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02モル~0.2モル、好ましくは0.03モル~0.1モル、より好ましくは0.04モル~0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
【0040】
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することがより好ましい。
【0041】
次に、前工程、重合反応工程、回収工程、および洗浄工程を、順を追って具体的に説明するが、勿論この方法に限定されるものではない。
【0042】
[前工程]
スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。なお、この操作により水を除去し過ぎた場合には、不足分の水を添加して補充することが好ましい。
【0043】
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温~150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180~245℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
【0044】
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.5モル~10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
【0045】
[重合反応工程]
有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂粉粒体を製造することが好ましい。
【0046】
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温~215℃、好ましくは100℃~215℃の温度範囲で、有機極性溶媒にスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を加える。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
【0047】
かかる混合物を通常200℃~290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01~5℃/分の速度が選択され、0.1~3℃/分の範囲がより好ましい。
【0048】
一般に、最終的には250℃~290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25時間~50時間、好ましくは0.5時間~20時間反応させる。
【0049】
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃~245℃で一定時間反応させた後、270℃~290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃~245℃での反応時間としては、通常0.25時間~20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25時間~10時間の範囲が選択される。
【0050】
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
【0051】
[回収工程]
重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。
【0052】
PPS樹脂の最も好ましい回収方法は、急冷条件下に行うことであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉粒体状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃~250℃の範囲が選択される。
【0053】
フラッシュ法は、溶媒回収と同時に固形物を回収することができ、また回収時間も比較的短くできることから、経済性に優れた回収方法である。この回収方法では、固化過程でNaに代表されるイオン性化合物や有機系低重合度物(オリゴマー)がポリマー中に取り込まれやすい傾向がある。
【0054】
但し、本発明に用いられるPPS樹脂の回収法は、フラッシュ法に限定されるものではない。本発明の要件を満たす方法であれば、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法(クエンチ法)を用いても構わない。しかし、経済性、性能を鑑みた場合、本発明の製造方法はフラッシュ法で回収されたPPS樹脂を用いることがより好ましい。
【0055】
[洗浄工程]
PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄、アルカリ金属やアルカリ土類金属処理を施されたものであってもよい。
【0056】
酸処理を行う場合は次のとおりである。PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられる。なかでも酢酸及び塩酸がより好ましく用いられる。一方、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
【0057】
酸処理の方法は、例えば、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめる方法であり、必要により撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の酢酸水溶液を80℃~200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpH4以上となってもよく、例えばpH4~8程度となっても良い。酸処理を施されたPPS樹脂から残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが望ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわないために、蒸留水、脱イオン水などが好ましい。
【0058】
熱水処理を行う場合は次のとおりである。PPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい、100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学変性の効果が小さいため好ましくない。
【0059】
熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無い。所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器で加熱、撹拌する方法や、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水の割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)が選ばれる。
【0060】
また、末端基の分解が好ましくないので、これを回避するため、処理の雰囲気は不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、残留している成分を除去するため、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は温水で数回洗浄するのが好ましい。
【0061】
有機溶媒洗浄する場合は次のとおりである。PPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はない。例えばN-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノンなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒として挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N-メチル―2-ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類又は2種類以上を混合し使用される。
【0062】
有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬させる方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限は無く、常温~300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温~150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧かに洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限は無い。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。後処理工程は、酸処理、熱水処理、有機溶媒による洗浄のいずれかを施すことが好ましく、2種以上の処理を併用することが、不純物除去の観点から好ましい。
【0063】
アルカリ金属、アルカリ土類金属処理する方法としては、上記前工程の前、前工程中、または前工程後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、重合工程前、重合工程中、または重合工程後に重合釜内にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法、あるいは上記洗浄工程の最初、中間、または最後の段階でアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法などが挙げられる。中でももっとも容易な方法としては、有機溶剤洗浄や、温水または熱水洗浄で残留オリゴマーや残留塩を除いた後にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添加する方法が挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酢酸塩、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンの形でPPS中に導入するのが好ましい。また過剰のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は温水洗浄などにより取り除く方が好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属導入の際のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン濃度としてはPPS1gに対して0.001mmol以上が好ましく、0.01mmol以上がより好ましい。温度としては、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、90℃以上が特に好ましい。上限温度は特にないが、操作性の観点から通常280℃以下が好ましい。浴比(乾燥PPS重量に対する洗浄液重量)としては0.5以上が好ましく、3以上が好ましく、5以上がさらに好ましい。
【0064】
上記前工程、重合反応工程、回収工程、洗浄工程を経て得られたPPS樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略することもある)は1000g/10分以上であることが好ましく、1500g/10分以上、更に好ましくは3000g/10分以上である。MFRが1500g/10分以上であると、流動性に優れ、成形性に優れる。ここで、MFRは、測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM-D1238-70に従って測定した値である。
【0065】
本発明の(B)無機充填剤は、成形体表面の微細な凹凸を形成することに寄与し、UV硬化型エポキシ樹脂との接着性を向上させる。
【0066】
無機充填剤は、一般的な熱可塑性樹脂に用いられるものが使用でき、繊維状充填剤と非繊維状充填剤に分類できる。繊維状充填剤と非繊維状充填剤から数種類を併用して使用することもでき、繊維状充填剤から数種類を併用することや、非繊維状充填剤から数種類を併用することも可能である。
【0067】
繊維状充填剤の具体例としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフラットファイバー、異形断面ガラスファイバー、ガラスカットファイバー、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維やケブラーフィブリルなどの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、などが例示できる。特に、機械特性や寸法特性からガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフラットファイバー、異形断面ガラスファイバーから選ばれる少なくとも1種類を配合するのが好ましい。なお、本発明に使用する上記のガラス繊維やそれ以外のフィラーは、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0068】
非繊維状充填剤の具体例としては、Eガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Hガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Aガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、Cガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、天然石英ガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、合成石英ガラス(板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ロックウール、タルク、カオリン、シリカ(破砕状・球状)、石英、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、マイカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、破砕状・不定形状ガラス、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化アルミニウム(破砕状)、透光性アルミナ(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、酸化チタン(破砕状)、酸化亜鉛(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)などの金属酸化物、水酸化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)などの金属水酸化物、窒化アルミニウム、透光性窒化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ポリリン酸カルシウム、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物などが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。特に機械物性や寸法特性の観点から、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレークから選ばれる少なくとも1種類を配合することが好ましい。
【0069】
本発明に用いる(B)無機充填剤の配合量は、上記(A)PPS樹脂100重量部に対して、20~350重量部であり、好ましくは25~250重量部である。(B)無機充填剤が20重量部未満では、成形体表面の微細凹凸部が形成されないため好ましくない。350重量部を超えると流動性が損なわれ、成形性に影響を及ぼすため好ましくない。
【0070】
本発明のPPS樹脂組成物は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、(C)エポキシ当量が100~3500g/eq.であるエポキシ樹脂(以下、(C)エポキシ樹脂と略記する場合がある。)を1~20重量部配合してなる。
【0071】
かかる(C)エポキシ樹脂の具体例としてはビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールAD、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ-ジフェニルジメチルエタン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,5-ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5-テトラヒドロキス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル、ビスフェノールの代わりにハロゲン化ビスフェノールを用いたもの、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系エポキシ化合物、フタル酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル系化合物、N-グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系化合物等々のグリシジルエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油等の洗浄エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の環状系の非グリシジルエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0072】
また、その他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られる。原料のフェノール類としては特に制限は無いがフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p-ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びこれらの縮合物が挙げられる。
【0073】
また、一分子中にエポキシ基を4個以上有する化合物も挙げられる。具体的にはエポキシクレゾールノボラック樹脂(例えばDIC(株)製N-695)や一分子中に4個のエポキシ基を有する特殊多官能エポキシ樹脂(例えば、三菱化学(株)製jER1031Sなど)が挙げられる。
【0074】
特にUV硬化型エポキシ樹脂との接着性の観点から、ビスフェノールAのグリシジルエーテル(以下、ビスフェノールA型エポキシ樹脂ともいう)を配合することが好ましい。
【0075】
本発明に用いる(C)エポキシ樹脂のエポキシ当量は100~3500g/eq.であり、500~2500g/eq.であることがより好ましく、700~1500g/eq.であることが更に好ましい。エポキシ当量が100g/eq.未満である場合、反応活性点が多くなることから流動性が損なわれるため、成形性に影響を及ぼすため好ましくない。3500g/eq.を超えるとUV硬化型エポキシ樹脂との接着性が失われるため好ましくない。
【0076】
本発明に用いる(C)エポキシ樹脂の配合量は、上記(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、1~20重量部であり、好ましくは1.5~18重量部である。(C)エポキシ樹脂が1重量部未満では、UV硬化型エポキシ樹脂との密着性が向上しないため好ましくない。20重量部を超えると分散性が低下し、機械強度が低下するため好ましくない。
【0077】
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は、(A)PPS樹脂100重量部に対して、(D)エポキシ基、カルボキシル基、および酸無水物基から選択される少なくとも1種の官能基を含有するオレフィン系共重合体(以下、(D)オレフィン系共重合体と略記する場合がある。)を2~20重量部配合することが好ましい。
【0078】
かかる(D)オレフィン系共重合体として、エポキシ基を含有する化合物は、オレフィン系(共)重合体にグリシジル基を有する単量体成分(官能基含有成分)を導入することにより得られるが、その官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのグリシジル基を含有する単量体が挙げられる。オレフィン系(共)重合体の種類としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1、イソブチレンなどのα-オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体、α-オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、などのα,β-不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体などがあり、具体例としては、エチレン/プロピレン共重合体(“/”は共重合を表す、以下同じ)、エチレン/ブテン-1共重合体、エチレン/ヘキセン-1共重合体、エチレン/オクテン-1共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などが挙げられる。
【0079】
これらオレフィン系(共)重合体に官能基含有成分を導入する方法は特に制限がなく、オレフィン系(共)重合体を共重合する際に共重合する、オレフィン系(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入するなどの方法を用いることができる。官能基含有成分の導入量は変性オレフィン系共重合体を構成する全単量体に対して0.001~40モル%、好ましくは0.01~35モル%の範囲内であるのが適当である。特に有用な、オレフィン系(共)重合体にグリシジル基を有する単量体成分を導入して得られるオレフィン共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン-g-メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/ブテン-1-g-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
【0080】
本発明に用いる(D)オレフィン系共重合体の配合量は、上記(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、2~20重量部であることが好ましい。より好ましくは7~15重量部である。(D)オレフィン系共重合体が7重量部以上であると、UV硬化型エポキシ樹脂との密着性が向上し好ましい。20重量部以下であると成形時に発生するガスを抑制でき、成形性に悪影響がなく、好ましい。
【0081】
本発明のポリフェニレンサルファイド樹脂組成物は(A)PPS樹脂100重量部に対して、(E)ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびポリフェニレンエーテル樹脂から選択される少なくとも1種の非晶性樹脂(以下、(E)非晶性樹脂と略記する場合がある。)を5~50重量部配合することが好ましい。特に、ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと略記する場合がある。)樹脂は、UV硬化型エポキシ樹脂との接着性の観点から好ましい。
【0082】
本発明で用いられるポリフェニレンエーテルは、下記一般構造式で示される構成単位を有する。
【0083】
【化3】
【0084】
(式中、R1、R2、R3、およびR4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6個のアルキル基または炭素数6~8個のアリール基を示す。)
上記式で示される構成単位一種の単独重合体であっても、二種以上が組合わされた共重合体であってもよい。好ましい具体例では、R1およびR2が炭素原子数1のアルキル基であり、R3およびR4が水素原子である。例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、が挙げられる。また、PPE共重合体としては、上記ポリフェニレンエーテル繰返し単位中に、アルキル三置換フェノール、例えば、2,3,6-トリメチルフェノールを一部含有する共重合体を挙げることができる。
【0085】
(E)非晶性樹脂の配合量としては、(A)ポリフェニレンサルファイド樹脂100重量部に対して、5~50重量部であることが好ましく、10~30重量部であることがより好ましい。(E)非晶性樹脂の配合量が5重量部以上であるとUV硬化型エポキシ樹脂との接着性が向上し、好ましい。50重量部以下の場合は、機械的性質、特に耐衝撃強度が著しく低下することがなく、成形時の流動性低下および成形時のガス発生量が抑制できるので好ましい。
【0086】
本発明のPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、更に(F)前述の(A)PPS樹脂、(C)エポキシ樹脂、(D)オレフィン系共重合体、および(E)非晶性樹脂に該当する樹脂以外の他の樹脂(以下、(F)その他の樹脂と略す場合がある。)を配合して用いてもよい。かかる(F)その他の樹脂として配合することが可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エポキシ基含有ポリオレフィン共重合体などが挙げられる。かかる(F)その他の樹脂の好適な添加量は、(A)PPS樹脂100重量部に対し、0~20重量部の範囲が選択される。
【0087】
なお、本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒドロキノン系)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、可塑剤(p-オキシ安息香酸オクチル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤などの強度向上材、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0088】
本発明のPPS樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280~380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
【0089】
このようにして得られる本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。
【0090】
以上のように、本発明に用いられるPPS樹脂組成物は、本来有する優れた機械物性、耐薬品性などの諸物性を大きく損なうことなく、UV硬化型エポキシ樹脂との高い接着強度を発現することができるPPS樹脂組成物を得ることができる。
【0091】
本発明に用いられるPPS樹脂組成物と接着されるUV硬化型エポキシ樹脂は硬化収縮が小さいこと、硬化時間が短いこと、耐熱性が高いことなどから、カチオン硬化型エポキシ樹脂が用いられる。UV硬化型エポキシ樹脂中には、以下に示すようなカチオン成分が触媒として存在しており、UVを吸収し分解して、プロトンを引き抜き、プロトン酸を発生する。発生したプロトン酸がエポキシ基に配位する形で活性化され、エポキシ基が攻撃されることで硬化が進む。この際、エポキシ樹脂の硬化に使用されるUVの波長は300~450nmにピーク強度を有するものが多く用いられ、数10秒~数分間の照射によって仮止めを行い、100~150℃の電気炉などを用いて15~120分間のアフターキュアすることで硬化させる。
【0092】
【化4】
【0093】
かかるUV硬化型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールAD、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ―ジフェニルジメチルエタン、4,4‘-ジヒドロキシビフェニル、1,5-ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5-テトラヒドロキス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサンなどのビスフェノール類のグリシジルエーテルなどが挙げられる。また、その他ノボラック型エポキシ樹脂も挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂はエポキシ基を2個以上有し、通常ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させて得られるものである。また、ノボラック型フェノール樹脂はフェノール類とホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られる。原料のフェノール類としては特に制限は無いがフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール、p-ターシャリーブチルフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びこれらの縮合物が挙げられる。特に、硬化率を高める観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールFのグリシジルエーテルが好ましい。
【0094】
本発明のPPS樹脂組成物からなる成形体と、別の成形体とをUV硬化型エポキシ樹脂を用いて接着することで、複合成形体を得ることができる。ここで、複合成形体を構成する「別の成形体」とは、熱可塑性樹脂からなる成形体でも、熱硬化性樹脂からなる成形体でも、金属製の成形体であってもよい。また、本発明のPPS樹脂組成物からなる成形体であってもよい。すなわち、本発明のPPS樹脂組成物からなる成形体同士を、UV硬化型エポキシ樹脂を用いて接着することも構わない。
【0095】
かかる「別の成形体」の具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、シンジオクタクチックポリスチレン樹脂、非晶性ポリアクリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂からなる成形体、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリアミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂からなる成形体、アルミ、マグネシウム、銅および、それらの合金や鉄および、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄などの鉄鋼などの金属からなる成形体などが挙げられる。
【0096】
本発明のPPS樹脂組成物からなる成形体とUV硬化型エポキシ樹脂を接着する方法に特に制限は無いが、成形体の被着面に対して前処理を施してもよい。前処理方法としては、ドライブラスト処理、ウェットブラスト処理、大気プラズマ処理、真空プラズマ処理、エキシマ処理、UV処理などが挙げられる。これらの前処理は、表面自由エネルギーを変化させることで濡れ性を向上させ、成形体とUV硬化型エポキシ樹脂との密着性を向上させるため、好ましい。特に、大気プラズマ、UV処理、エキシマ処理は被着面を粗化することなく密着性を向上させることから、より好ましい。
【0097】
本発明に用いられるPPS樹脂組成物は、前記UV硬化型エポキシ樹脂と高い接着性を有することから、寸法や軸を調整した状態で硬化することが可能であり、得られた複合成形体に高い信頼性を得ることができる。光学特性が要求される光学機器や精密機器関連においてはレンズの光軸調整をした状態で硬化ができることから、これらの用途においては本発明の樹脂組成物が非常に有用である。具体的には、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などのレンズが圧入される用途が挙げられる。
【0098】
その他、本発明のPPS樹脂組成物の適用可能な用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、民生用コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品への適用も可能である。その他、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、ウォーターポンプハウジング、エンジン冷却モジュール、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
【実施例0099】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0100】
[製造したPPS樹脂の評価方法]
(1)メルトフローレート(MFR)
測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM-D1238-70に準ずる方法で測定した。
【0101】
但し、粘度が低いポリフェニレンサルファイド樹脂に関しては、次の方法でMFRを算出した。ポリフェニレンサルファイド樹脂を測定温度315.5℃、345g荷重とし、ASTM-D1238-70に準ずる方法でERを測定し、下記式(2)によりMFRの値を算出した。
式(2)MFR=15.8×4.4×ER。
【0102】
[参考例1]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
【0103】
その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.48kg(71.27モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
【0104】
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
【0105】
得られたケークおよびをNMPで洗浄、濾別した。これを、60リットルのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05重量%酢酸カルシウム水溶液70リットルで洗浄、濾別した。70リットルのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPS-1は、ERが90g/10分であり、MFRに換算すると、6257g/10分であった。
【0106】
[参考例2]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.26kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム3.03kg(72.69モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、およびイオン交換水5.50kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら、反応容器を225℃まで約3時間かけて徐々に加熱して脱水工程を行った。水9.82kgおよびNMP0.28kgが留出した時点で加熱を終え、冷却を開始した。この時点での仕込みアルカリ金属水硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.01モルであった。また、硫化水素の飛散量は1.4モルであったため、本脱水工程後の系内のスルフィド化剤の量は68.6モルであった。また、硫化水素の飛散に伴い、系内には水酸化ナトリウムが新たに1.4モル生成している。
【0107】
その後、反応容器を200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)10.08kg(68.60モル)、p-クロロ安息香酸0.32kg(2.06モル)およびNMP9.37kg(94.50モル)を加えた後に、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら以下の反応条件で重合工程を行った。
【0108】
200℃から230℃までを0.8℃/分で38分かけて昇温した後、230℃から245℃までを0.6℃/分で25分かけて昇温した。次いで245℃から276℃までを0.6℃/分で52分かけて昇温し、その後276℃の定温状態で65分反応を行った。
【0109】
反応終了後、オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、1.10MPa、275℃の反応液を、220℃に加熱した常圧の攪拌機付き容器(蒸留用装置付き)に15分かけてフラッシュした。その後、撹拌しながら容器を240℃に維持してN-メチル-2-ピロリドンを留去した後、加熱を停止して冷却し、容器内の固形分を回収した。
【0110】
得られた固形物を別の撹拌機付き容器に仕込み、イオン交換水108kgを加えて70℃で30分撹拌した後、加圧濾過器で濾過してケークを得た。
【0111】
上記で得られたケークを、撹拌機付き耐圧性容器に仕込み、イオン交換水128kgを加えて窒素置換後192℃まで昇温して30分撹拌した。その後容器を冷却してスラリーを取り出し、加圧濾過器で濾過してケークを得た。
【0112】
上記で得られたケークを、再び撹拌機付き容器に仕込み、イオン交換水108kgを加えて70℃で30分撹拌した後、加圧濾過器で濾過してケークを得る工程を3回繰り返した。
【0113】
得られた湿潤状態のケークを窒素気流下、120℃で3時間乾燥することにより乾燥ポリアリーレンスルフィド(PAS)を得た。乾燥PPSを撹拌機付き容器に仕込み、N-メチル-2-ピロリドン54kg(PPSに対する重量浴比は5)を加えて30℃で20分撹拌した後、加圧濾過器で濾過してケークを得た。
【0114】
得られた湿潤状態のケーク(PPSとして10.8kgを含む)を4L/分(ポリアリーレンスルフィド1kg当たり0.4L/分)の流量で窒素フローを行いながら、200℃で20時間加熱することによりNMPを留去し、乾燥PPSを得た。得られたPPSを酸素濃度2%、220℃、12時間の条件で熱酸化処理を行い、PPS-2を得た。得られたポリマーのMFRは8,342g/10分であった。
【0115】
[参考例3]
撹拌機および底に弁のついたオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.4g(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2925.0g(70.2モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)13860.0g(140.0モル)、酢酸ナトリウム1894.2g(23.1モル)、およびイオン交換水10500.0gを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14772.1gおよびNMP280.0gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.08モルであった。また、硫化水素の飛散量は仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.023モルであった。
【0116】
次に、p-ジクロロベンゼン(p-DCB)10646.7g(72.4モル)、NMP6444.9g(65.1モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、270℃で70分保持した。オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら撹拌機付き容器に向けて内容物を15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
【0117】
得られた固形物およびイオン交換水53リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ポアサイズ10~16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をポアサイズ10~16μmのガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してPPS樹脂ケーク18000g(その内PPS樹脂7550gが含まれる)を得た。
【0118】
前記PPS樹脂ケーク18000g、イオン交換水40リットル、および酢酸43gを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持して酸処理を施した。酸処理時のpHは7であった。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10~16μmのガラスフィルターで濾過した。次いで、70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時間乾燥し、酸処理を施したPPS-3を得た。得られたポリマーのMFRは6300g/10分であった。
【0119】
[参考例4]
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、およびイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通しながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。
【0120】
仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.48kg(71.27モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を撹拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
【0121】
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
【0122】
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
【0123】
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。これをMFR値が150g/10分となるまで酸素気流下200℃で熱処理し、PPS-4を得た。得られたポリマーのMFRは130g/10分であった。
【0124】
実施例および比較例に用いられる原料を以下に示す。
(A)PPS樹脂
PPS-1:参考例1に記載の方法で重合したPPS樹脂
PPS-2:参考例2に記載の方法で重合したPPS樹脂
PPS-3:参考例3に記載の方法で重合したPPS樹脂
PPS-4:参考例4に記載の方法で重合したPPS樹脂
(B)無機充填剤
B-1:扁平ガラス繊維(日本電気硝子(株)社製 T-760FGF扁平率=4)
B-2:チョップドストランド(日本電気硝子(株)社製 T-747GH)
B-3:重質炭酸カルシウム(カルファイン(株)社製 KSS-1000)
(C)エポキシ樹脂
C-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)社製、jER1004AF(商品名)エポキシ当量 875~975g/eq.)
C-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)社製、jER1009(商品名)エポキシ当量 2400~3300g/eq.)
C-3:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)社製、EPICLON N-695(商品名)エポキシ当量 209~219g/eq.)
C-4:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)社製、EPICLON N-775(商品名)エポキシ当量 184~194g/eq.)
(D)オレフィン系共重合体
D-1:エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学(株)社製、ボンドファーストBF-E)
(E)非晶性樹脂
E-1:ポリフェニレンエーテル(旭化成(株)社製、XYRON S202A)
E-2:ポリエーテルスルホン(住友化学(株)社製、スミカエクセル3600P)
E-3:ポリエーテルイミド(サビック(株)社製、ウルテム1010)。
【0125】
[評価方法]
本実施例および比較例における評価方法は以下の通りである。
【0126】
(エポキシ接着強度の測定)
ISO178(2001)に準じて測定を行った。具体的には次のように測定を行った。樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度310℃、金型温度145℃に設定した住友重機械工業社製射出成形機(SE50DUZ-C160)に供給し、充填時間0.8sで充填、充填圧力の75%の保圧にて射出成形を行い、ISO 20753(2008)に規定されるタイプB2試験片を得た。この試験片を、中央から2等分し、接着面積が50mmとなるように作成したスペーサー(厚さ:0.9~1.2mm、開口部5.0mm×10mm)を、2等分した試験片2枚の間に挟み込み、クリップを用いて固定した後、開口部にUV硬化型エポキシ樹脂(協立化学産業(株)社製、ワールドロックNo.9210K)を注入し、ウシオ電機(株)社製UV装置SP-LED-3(UV波長:365nm、照射面積:約20mm×30mm、HEAD径:φ10mm)を用いて120秒間照射した後、120℃に設定した熱風乾燥機中で1時間加熱し、硬化・接着させた。得られた接着試験片を23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、歪み速度1mm/分、支点間距離100mmの条件で島津社製引張試験機を用い引張せん断接着強さを測定し、接着面積で除した値をエポキシ接着強度とした。図1には射出成形した試験片を、図2にはエポキシ接着強度の測定に用いる接着試験片を示す。
【0127】
[PPS樹脂組成物の製造]
シリンダー温度を320℃、スクリュー回転数を400rpmに設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26)を用いて、参考例で得た(A)PPS樹脂100重量部に対して、表1に示す重量比で、(C)エポキシ樹脂、(D)オレフィン系共重合体、および(E)非晶性樹脂は原料供給口から添加して溶融状態とし、(B)無機充填剤は中間添加口から供給し、吐出量30kg/時間で溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。この樹脂組成物ペレットを用いて前記の各特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0128】
(実施例1、比較例1~4)
(A)PPS樹脂100重量部に対し、(B)無機充填材および(C)エポキシ樹脂を配合した実施例1は、エポキシ樹脂を配合していない比較例1~4に比べてエポキシ接着性が強いことがわかる。
【0129】
(実施例2~5)
(C)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが、最も効果が高いことかわかる。
【0130】
(実施例5、6)
(D)オレフィン系共重合体の配合量を増やすことで、エポキシ接着性により効果的であることがわかる。
【0131】
(実施例5、7、8)
(E)非晶性樹脂としてポリフェニレンエーテルを用いることで、エポキシ接着性により効果的であることがわかる。
【0132】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明のPPS樹脂組成物は、高い機械的強度や剛性を維持したまま、UV硬化型エポキシ樹脂との接着性に優れるPPS樹脂組成物に関するものである。
【符号の説明】
【0134】
1 接着試験片を作成するため、1/2カットダンベルを作成する際の切削部分
2 エポキシ接着部の厚み:1mmt
3 エポキシ接着部分の長さ:5mm
4 エポキシ接着部分の幅:10mm
図1
図2