(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127126
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】除菌装置
(51)【国際特許分類】
C01B 13/11 20060101AFI20230906BHJP
A61L 9/015 20060101ALI20230906BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C01B13/11 Z
A61L9/015
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030712
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】笹木 宏格
【テーマコード(参考)】
4C180
4G042
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180BB06
4C180BB08
4C180CA10
4C180DD03
4C180DD11
4C180EA17X
4C180HH01
4C180HH05
4C180HH19
4C180KK05
4C180LL20
4C180MM08
4C180MM10
4G042CA01
4G042CC23
4G042CE02
(57)【要約】
【課題】除菌性能を維持しつつ、オゾン生成装置の放電部に人体が接近することを抑制できる除菌装置を提供する。
【解決手段】空気が流通し、前記空気の出入口となる開口部を有する風路と、前記風路の上流側に配置され、空気中の酸素分子からオゾンを生成するオゾン生成装置と、前記オゾン生成装置の下流側に配置され、生成した前記オゾンに照射する紫外線光を発生する紫外線光源と、を備え、前記オゾン生成装置は、オゾンを発生させる放電部を有し、前記放電部は、前記風路内を流通する空気の流通方向で前記開口部から離れた位置に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流通し、前記空気の出入口となる開口部を有する風路と、
前記風路の上流側に配置され、空気中の酸素分子からオゾンを生成するオゾン生成装置と、
前記オゾン生成装置の下流側に配置され、生成した前記オゾンに照射する紫外線光を発生する紫外線光源と、を備え、
前記オゾン生成装置は、オゾンを発生させる放電部を有し、
前記放電部は、前記風路内を流通する空気の流通方向で前記開口部から離れた位置に配置されている除菌装置。
【請求項2】
前記開口部と前記放電部との間の空間距離は、前記開口部と前記放電部との間で絶縁体を通る沿面距離より短い、請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記風路の上流側の第1開口部は、前記オゾン生成装置の前記放電部からの絶縁体を通る沿面距離が30mm以上である、請求項1又は2に記載の除菌装置。
【請求項4】
前記紫外線光源は、前記オゾン生成装置の前記放電部からの絶縁体を通る沿面距離が30mm以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項5】
前記風路の上流側に位置する第1開口部と前記紫外線光源とは、前記オゾン生成装置の前記放電部からの絶縁体を通る沿面距離が30mm以上である、請求項1又は2に記載の除菌装置。
【請求項6】
前記放電部は、前記オゾン生成装置を構成する基板との間で高圧線によって接続され、
前記沿面距離は、前記高圧線から前記開口部および前記紫外線光源のうち少なくとも一方までの絶縁体を通る距離である、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項7】
前記放電部は、風路断面の中央に配置されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項8】
前記紫外線光源と、前記紫外線光源の下流側に位置する第2開口部とは、前記流通方向の空間距離で10mm以上の間隔をあけて配置されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項9】
前記放電部と前記紫外線光源とは、高さ方向にずれた位置に配置されている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項10】
前記紫外線光源は、前記風路の下面に接した状態で配置されている、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項11】
前記開口部は、複数の開口穴から構成され、
前記開口穴の穴径は、6mm以下に設定されている、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項12】
前記風路は、厚さ1mm以上の絶縁体から形成されている、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項13】
前記オゾン生成装置および前記紫外線光源それぞれの給電用のリード線のうち前記オゾン生成装置および前記紫外線光源から露出する部分は、前記風路の外側に配線されている、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の除菌装置。
【請求項14】
前記風路内の結露状態を検出する結露検知部が設けられ、
前記結露検知部で結露を検出したときに、前記オゾン生成装置の動作を停止するように制御されている、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内などに設置される脱臭装置では、OHラジカルの強力な酸化力を利用して、水中の有機物を酸化分解することが浄水に応用されている。OHラジカルの標準酸化還元電位は、2.85Vであり、2.07Vであるオゾンよりも反応性に富み酸化力が高いことから、オゾンの分解速度を高めてOHラジカルの生成を促進する促進酸化処理法が用いられている。このような促進酸化処理法として、空気が流通する風路と、風路の上流側に配置され、空気中の酸素分子からオゾンを生成するオゾン生成装置と、風路の下流側に配置され、生成したオゾンに照射する紫外線光を発生する紫外線光源と、を備えた除菌装置が知られている。
【0003】
この場合、オゾンの促進酸化により酸化力の高いOHラジカルを発生し、除菌や脱臭へ応用する構成するものであるが、オゾンを発生させるために空気中に放電する必要がある。オゾン発生部にはオゾン生成装置の放電部に高電圧が印加されるため、感電を考慮して安全性を確保しながらもOHラジカル発生量を低減させずに除菌性能を確保できる構成とすることが求められる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、除菌性能を維持しつつ、オゾン生成装置の放電部に人体が接近することを抑制できる除菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の除菌装置は、空気が流通し、前記空気の出入口となる開口部を有する風路と、前記風路の上流側に配置され、空気中の酸素分子からオゾンを生成するオゾン生成装置と、前記オゾン生成装置の下流側に配置され、生成した前記オゾンに照射する紫外線光を発生する紫外線光源と、を持つ。前記オゾン生成装置は、オゾンを発生させる放電部を持つ。前記放電部は、前記風路内を流通する空気の流通方向で前記開口部から離れた位置に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の除菌装置の一例を模式的に示した側面図。
【
図3】第2実施形態による除菌装置の一例を模式的に示した側面図。
【
図5】第3実施形態による除菌装置の一例を模式的に示した側面図。
【
図6】
図5に示すA-A線矢視図であって、除菌装置を下流側から見た図。
【
図7】変形例による除菌装置の一例を模式的に示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の除菌装置を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1を参照し、実施形態の除菌装置1について説明する。まず、除菌装置1の全体構成について説明する。ただし、除菌装置1は、以下に説明する構成の全てを有する必要はなく、いくつかの構成が適宜省略されてもよい。
【0010】
図1は、除菌装置の一例を模式的に示した側面図である。
図2は、
図1に示す除菌装置を上方から見た平面図である。
【0011】
除菌装置1は、例えばエアコン、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品の筐体内に装備され、これらの筐体内空間に流通する空気を除菌するために設けられる。例えば、冷蔵庫に本実施形態の除菌装置1を適用する場合の一例として、冷蔵庫内の風路に除菌装置1を配置し、庫内からの戻り空気を風路に流入させ、風路を通過する空気を除菌する。また、
図1および
図2に示す除菌装置1を、筐体内において単体でも複数設けるようにしてもよい。
【0012】
除菌装置1は、空気Aが流通し、空気Aの出入口となる開口部24A、25Aを有する風路2と、風路2内で空気Aを流通させるファン3と、風路2の上流側X1に配置され、空気A中の酸素分子からオゾンを生成するオゾン生成装置4と、風路2の下流側X2に配置され、生成したオゾンに紫外線UVを照射する紫外線光源5と、を備えている。
【0013】
本実施形態の除菌装置1では、オゾン生成装置4および紫外線光源5が設けられる風路2の壁面を設置面Fに取り付けている。以下の説明では、除菌装置1が設置面Fに載置された状態でオゾン生成装置4および紫外線光源5が配置される側を下方、下側とし、オゾン生成装置4および紫外線光源5に対向する側を上方、下側とし、風路2内を空気Aが流通する方向(流通方向X)に直交する平面で上下方向Yに直交する左右方向を幅方向Zとする。
【0014】
[除菌装置の全体構成]
本実施形態の除菌装置1では、オゾン生成装置4および紫外線光源5が設けられた風路2内に空気Aを導入し、オゾン生成装置4によって空気A中の酸素をオゾン(O3)に変換し、次いで紫外線光源5からの紫外線UVを照射して、生成したオゾンをOHラジカルに変換する。除菌装置1では、変換されたOHラジカルによってとくに空気Aに含まれる臭気成分が酸化分解されて無臭化される。
【0015】
[風路]
風路2は、全周囲が壁面で覆われ、除菌対象となる空気Aの流通方向Xに流通させる流路を形成する筒体である。風路2の断面形状は、四角形断面に設定されている。風路2は、上流側X1の上流壁24と下流側X2の下流壁25に開口を有している。本実施形態の除菌装置1では、風路2における
図1の紙面下部にオゾン生成装置4および紫外線光源5が設けられているが、上述したように各部の配置は適宜変更することが可能である。
【0016】
具体的な風路2の形状について説明する。風路2は、上壁21、上壁21から下方に延出される左右一対の側壁22、22、下壁23、流通方向Xの上流側X1に位置する上流壁24、および流通方向Xの下流側X2に位置する下流壁25を備えている。下壁23は、設置面Fに載置される。下壁23の底面231には、オゾン生成装置4および紫外線光源5が取り付けられている。風路2の流通方向Xの長さ寸法は、後述するようにオゾン生成装置4および紫外線光源5の配置に基づいて設定される。
【0017】
上流壁24には、上下方向Yの中央および幅方向Zの中央に壁厚方向に貫通する上流開口部24A(第1開口部)が設けられている。下流壁25には、上下方向Yの中央および幅方向Zの中央に壁厚方向に貫通する下流開口部25A(第2開口部)が上流開口部24Aに流通方向Xに対向した状態で設けられている。
【0018】
風路2の各壁部(上壁21、側壁22、下壁23、上流壁24、下流壁25)は、基礎絶縁を確保可能な厚さ1mm以上の絶縁体から形成されている。具体的に風路2の材質は、ポリプロピレン(PP)やABS等の樹脂が採用されている。また、風路2を構成する壁部は、200~300nmの紫外線光UVを透過しない材料により形成され、かつ可視光を透過する例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの透明樹脂が採用されている。すなわち、紫外線光UVを透過する石英ガラスやフッ素樹脂等は適用対象外である。
【0019】
図1および
図2に示すように、ファン3は、風路2の上流側開口部24Aに設けられ、空気Aを風路2内に導入し、かつ上流側X1から下流側X2に流通させるために設けられている。
【0020】
[オゾン生成装置]
オゾン生成装置4は、放電部41を有し、風路2内において効率よく気体オゾンを発生させるものである。オゾン生成装置4は、基板40と、基板40の一端面40aに電気的に接続された放電部41と、基板40の他端面40bに接続され基板40に給電するリード線42と、を有している。オゾン生成装置4は、基板40の他端面40bを風路2の下壁23に接する状態で、放電部41を上方にして固定されている。本実施形態の放電部41は、流通方向Xで風路2の中央に配置され、かつ風路断面で中央に配置されている。また、放電部41は、
図1に示すように、紫外線光源5に対して高さ方向(上下方向Y)で上方にずれた位置に配置されている。
【0021】
図1に示すように、オゾン生成装置4のリード線42のうち基板40の他端面40b側に露出する部分42aは、風路2の下壁23の外側に配線されている。つまり、本実施形態では、風路2にリード線42が露出していない状態で設けられている。
【0022】
オゾン生成装置4は、放電部41において電極間に数kVの高電圧を印加して放電し、空気中の酸素分子(O2)からオゾン(O3)を生成する放電方式のものである。オゾン生成装置4では、間欠的に高電圧を印加することで、放出するオゾン濃度を、除菌性能があり、さらに人体影響のないオゾン濃度0.01~0.1ppmの範囲となるように制御している。オゾン生成装置4の一例として、例えば無声放電方式(バリア放電方式)や沿面放電方式によるオゾン発生方式で、0.02mg/Hr以上のオゾン発生量となるものを採用できる。本実施形態のオゾン生成装置4は、無声放電方式(バリア放電方式)の一例である。
【0023】
[紫外線光源]
図1および
図2に示すように、紫外線光源5は、基板50と、基板50の一方面(上面50a)上に配置され紫外線光UVを所定の照射角度θ(照射範囲)で照射する照射部51と、基板50の他方面(下面50b)に接続され基板50に給電するリード線52と、を有している。紫外線光源5は、基板50の下面50bを風路2の下壁23に接する状態で、照射部51を上に向けて固定されている。本実施形態の照射部51は、流通方向Xで下流開口部25Aを有する下流壁25寄りの位置に配置され、かつ風路断面で中央に配置されている。また、照射部51は、
図1に示すように、オゾン生成装置4の放電部41に対して高さ方向(上下方向Y)で下方にずれた位置に配置されている。
【0024】
図1に示すように、紫外線光源5のリード線52のうち基板50の下面50b側に露出する部分52aは、風路2の下壁23の外側に配線されている。つまり、本実施形態では、風路2にリード線42が露出していない状態で設けられている。
【0025】
紫外線光源5は、200~300nmの波長領域の紫外線光(UV)を発生するLED素子が採用されている。紫外線光源5は、オゾンが吸収可能なオゾン光吸収波長が200~300nmの紫外線光UVを照射する。紫外線光源5の一例として、例えば光出力が3mW、ピーク波長が280nmのものを採用できる。
【0026】
紫外線光源5における紫外線光UVの照射角θは、120°~150°である。
【0027】
紫外線光源5において、オゾンに紫外線光UVを照射することで、オゾンが酸素分子(O2)と酸素原子(O)とに解離する。そして、解離した酸素原子(O)が水蒸気(H2O)と反応して酸化力の高いOHラジカル(ヒドロキシルラジカル)(OH・)が生成され、放出される。OHラジカルが生成されることにより、空気A中の各種臭気成分と気相で反応する脱臭反応が促進され、オゾン酸化では除去が困難とされるアンモニアや脂肪酸などの酸化除去が可能となる。ここで、一般的に気体状態のオゾンは、200~300nmの波長領域で紫外線を吸収し、光エネルギーによりオゾン分子から酸素原子が解離している。
【0028】
[除菌装置の各部の配置間隔]
次に、除菌装置1の各部の配置間隔について、具体的に説明する。
図1に示すように、風路2の上流開口部24Aと、オゾン生成装置4の放電部41との距離は、絶縁体を通る第1沿面距離L1で30mm以上に設定されている。ここで、オゾン生成装置4の放電部41を支持する基板40は、樹脂製の絶縁体である。また、風路2を構成する壁面(上壁21、側壁22、下壁23、上流壁24、下流壁25)も上述したように絶縁体である。
【0029】
ここで、第1位置P1は、オゾン生成装置4の基板40の放電部41を支持する位置とする。第2位置P2は、基板40の下端40bが風路2の下壁23に接する位置とする。第3位置P3は、下壁23と上流壁24とが接続する位置とする。第1沿面距離L1は、第1位置P1から基板40に沿っての第2位置P2までの上下方向Yの距離と、第2位置P2から下壁23を上流側X1に向けて通って第3位置P3を通過して上流開口部24Aまでの距離と、を合わせた長さとなる。
【0030】
ここで、
図1に示す符号L0は、放電部41とファン3までの最短距離となる空間距離を示している。上述したように第1沿面距離L1が30mmである場合には、空間距離L0は30mmより短くなる。
【0031】
紫外線光源5と、オゾン生成装置4の放電部41との距離は、絶縁体を通る第2沿面距離L2で30mm以上に設定されている。第4位置P4は、紫外線光源5の基板50の基板40側の端部が下壁23に接する位置である。第2沿面距離L2は、オゾン生成装置4の基板40の放電部41を支持する第1位置P1から基板40に沿って第2位置P2までの上下方向Yの距離と、第2位置P2から下壁23を下流側X2に向けて通って第4位置P4までの距離と、を合わせた長さとなる。
【0032】
なお、風路2上流開口部24Aと紫外線光源5は、オゾン生成装置4の放電部41からの絶縁体を通る第1沿面距離L1と第2沿面距離L2とが30mm以上で、かつ同じ距離に設定されていてもよい。
【0033】
第1沿面距離L1と第2沿面距離L2は、放電部41から発生する高電圧の伝播による人体への影響を回避できる距離であることに基づいて、それぞれ30mm以上に設定されている。また、第1沿面距離L1と第2沿面距離L2は、使用環境とか放電部41の電圧によって、30mm以上の範囲で適宜設定される。
【0034】
また、紫外線光源5と風路2の下流開口部25Aとは、流通方向Xの空間距離L3で10mm以上の間隔をあけて配置されている。この空間距離L3で10mm以上とした理由は、オゾン生成装置4で発生したオゾンに対して紫外線光UVを照射する空間を確実に確保するためである。
【0035】
このように構成される除菌装置1のように、空気Aの流通方向Xに対して、オゾン生成装置4を上流側X1に、そして紫外線光源5を下流側X2に設ける配置順が好ましい。紫外線光源5としては、オゾン生成装置4によるオゾン発生量に合わせて光出力の高出力化や使用数を増加することにより、オゾンをリークさせずに高濃度の臭気を無臭化することができ、除菌を促進することができる。
【0036】
また、本実施形態の除菌装置1では、風路2内の結露状態を検出する結露検知部(図示省略)が設けられ、この結露検知部で結露を検出したときに、オゾン生成装置4の動作を停止するように制御する構成を採用してもよい。
【0037】
次に、第1実施形態による除菌装置1の作用について説明する。
【0038】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、空気Aが流通し、空気Aの出入口となる開口部24A、25Aを有する風路2と、風路2の上流側に配置され、空気A中の酸素分子からオゾンを生成するオゾン生成装置4と、オゾン生成装置4の下流側に配置され、生成したオゾンに照射する紫外線光UVを発生する紫外線光源5と、を備えている。オゾン生成装置4は、オゾンを発生させる放電部41を有し、放電部41は、風路2内を流通する空気Aの流通方向Xで開口部24A、25Aから離れた位置に配置されている構成となっている。
【0039】
これにより、本実施形態に係る除菌装置1では、風路2内の空気Aからオゾン生成装置4によって生成されたオゾンに対して紫外線光源5によって紫外線光UVを照射し、発生した酸素原子と水蒸気の反応により生成したOHラジカルなどの活性種を放出できる。このように空気A中で促進酸化させたオゾンに対して確実に紫外線光UVを照射することができるので、OHラジカル量を増加することができ、除菌性能を高めることができる。これにより、除菌や脱臭へ応用することで、高い除菌・脱臭効果を得ることができる。
【0040】
さらに本実施形態では、高電圧が印加されるオゾン生成装置4の放電部41が風路2内の流通方向Xで開口部24A、25Aから離れた位置に配置され、放電部41と風路2の開口部(上流開口部24Aおよび下流開口部25A)との距離を確保することができる。すなわち、風路2の上流開口部24Aや下流開口部25Aから最も距離のある位置に放電部41を配置することができる。そのため、人が開口部24A,25Aに近づいた場合でも、放電部41に人体が接近したり接触することを抑制でき、人が感電することを防止できる。
【0041】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、開口部24A、25Aと放電部41との間の空間距離は、開口部24A、25Aと放電部41との間で絶縁体を通る沿面距離より短い構成となっている。そのため、開口部24A、25Aと放電部41との間の沿面距離を十分に確保した場合でも、開口部24A、25Aと放電部41との間の空間距離を短く設定することができるので、風路2の流通方向の長さを短くすることが可能となり、除菌装置1の小型化を図ることができる。
【0042】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、風路2の上流開口部24Aは、オゾン生成装置4の放電部41からの絶縁体を通る第1沿面距離L1が30mm以上である。ここで、沿面距離L1が30mmより短いときには、放電部41に人体が近接又は接触する可能性が高くなり、放電部41で印加される高電圧の影響を受けやすくなくなるという課題があった。一方、本実施形態では、放電部41と上流開口部24Aとの第1沿面距離L1を確保することができ、人が上流開口部24Aに近づいた場合(あるいは下流開口部25Aも同様)でも、放電部41に対する人体の接近や接触をより確実に抑制でき、人が感電することを防止できる。
【0043】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、紫外線光源5は、オゾン生成装置4の放電部からの絶縁体を通る沿面距離L2が30mm以上である。この場合には、放電部41と紫外線光源5との沿面距離L2を確保することができ、放電部41の高電圧が伝播しない位置に紫外線光源5を配置することができる。そのため、人が下流開口部25Aを通じて紫外線光源5に近づいた場合でも、紫外線光源5自体が放電部41の高電圧の影響を受けていないことからが感電することを防止できる。
【0044】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、風路2の上流開口部24Aと紫外線光源5とは、オゾン生成装置4の放電部41からの絶縁体を通る沿面距離L1、L2が30mm以上で、かつ同じ距離である。この場合には、風路2の開口部(上流開口部24A及び下流開口部25A)と紫外線光源5との両方が放電部41の高電圧の影響を受けにくい最短距離に設定できので、風路2の流通方向Xの長さを必要最小限にすることが可能となる。そのため、除菌装置1の小型化を図ることができる。
【0045】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、放電部41は、風路断面の中央に配置されている。そのため、開口部24A、25Aや紫外線光源5に対する上述した30mm以上の沿面距離を確保しつつ、流通方向Xの空間距離を短くすることができる。そのため、風路2の流通方向Xの長さを必要最小限にすることが可能となり、除菌装置1の小型化を図ることができる。
【0046】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、紫外線光源5と、紫外線光源5の下流側に位置する下流開口部25Aとが、流通方向Xの空間距離L3で10mm以上の間隔をあけて配置されている。紫外線光源5の紫外線光UVにより発生するOHラジカルは10mmの照射距離で照射することで発生可能であるので、オゾン生成装置4で発生したオゾンに対して紫外線光UVを照射する空間を確実に確保することができる。
【0047】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、放電部41と紫外線光源5とが高さ方向にずれた位置に配置されている。これにより、放電部41が風路2の断面中央に配置される場合でも、紫外線光源5を風路2の下壁23に沿う高さに配置することができる。そのため、その放電部41で生成されたオゾンに対して照射する紫外線光UVの照射領域を十分に確保することができ、除菌効率を向上させることができる。
【0048】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、紫外線光源5は、風路2の下面に接した状態で配置されているので、紫外線光UVの照射領域を十分に確保することができ、除菌効率を向上させることができる。
【0049】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、風路2が厚さ1mm以上の絶縁体から形成されているので、風路2の基礎絶縁を確保することができる。そのため、風路2自体がオゾン生成装置4の放電部41の影響を受けず、オゾン生成装置4から風路2の開口部24A、25Aまでの沿面距離を確保することができる。
【0050】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、オゾン生成装置4および紫外線光源5それぞれの給電用のリード線42、52のうちオゾン生成装置4および紫外線光源5から露出する部分は、風路2の外側に配線されている。これにより、オゾン生成装置4および紫外線光源5のリード線42、52が風路2内に存在しないので、導電体であるリード線42、52が放電部41に近づくことにより帯電することがなく、オゾン生成装置4の放電部41から風路2の上流開口部24Aや紫外線光源5までの沿面距離L1、L2が長くなることを抑制できる。
【0051】
本実施形態に係る除菌装置1によれば、風路2内の結露状態を検出する結露検知部が設けられ、この結露検知部で結露を検出したときに、オゾン生成装置4の動作を停止するように制御されている。風路2内が結露すると、結露した水滴が導電体となって放電部41で印加した高電圧が伝播しやすくなるので、結露時には沿面距離が変わってしまう。そのため、結露を結露検知部で検出し、沿面距離が変わったときにオゾン生成装置の動作4を停止することで、人が感電することを防止できる。
【0052】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、除菌性能を維持しつつ、オゾン生成装置4の放電部41に人体が接近することを抑制できる除菌装置を提供することができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による除菌装置1Aについて、
図3および
図4に基づいて説明する。
図3は、第2実施形態の除菌装置1Aの一例を模式的に示した側面図である。
図4は、
図3に示す除菌装置1Aを上方から見た平面図である。除菌装置1Aは、沿面放電式のオゾン生成装置4Aを採用した一例である。第2実施形態のオゾン生成装置4Aのオゾン発生量などの機能としては、上記第1実施形態と同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。また、本実施形態の風路2および紫外線光源5も、上記第1実施形態と同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0054】
図3および
図4に示すように、第2実施形態のオゾン生成装置4Aは、基板40と、放電部41と、リード線42と、基板40と放電部41との間で電気的に接続する高圧線43と、を備えている。基板40と放電部41とは、互いに所定の間隔をあけて配置され、棒状の支持材44によって連結されている。基板40とリード線42は、風路2の下壁23の外側に配線されている。基板40の一端40aから高圧線43が放電部41側に向けて延び出し、その一端40aが風路2の下壁23に接した状態で固定されている。つまり、本実施形態では、風路2にリード線42が露出していない状態で設けられている。放電部41と高圧線43は、支持材44とともに風路2内に配置されている。
【0055】
図3に示すように、風路2の上流開口部24Aと、オゾン生成装置4Aの放電部41との距離は、導電部を通る第1沿面距離L1で30mm以上に設定されている。ここで、風路2の下壁23の底面23aは導電体になっている。そのため、第1沿面距離L1は、オゾン生成装置4の高圧線43が接続される第1位置P1から高圧線43に沿って高圧線43の下端が導電体の底面23aに到達する第2位置P2までの上下方向Yの距離と、第2位置P2から底面23aを通って上流壁24に到達する第3位置P3までの距離と、を合わせた長さとなる。第1沿面距離L1を30mmとした場合には、空間距離L0は30mmより短くなる。
【0056】
また、紫外線光源5とオゾン生成装置4の放電部41との距離は、絶縁体を通る第2沿面距離L2で30mm以上に設定されている。すなわち、第2沿面距離L2は、オゾン生成装置4の高圧線43が接続される第1位置P1から高圧線43に沿って導電体の底面23aに到達する第2位置P2までの上下方向Yの距離と、第2位置P2から底面23aを通って紫外線光源5の基板50に到達する第4位置P4までの距離と、を合わせた長さとなる。
【0057】
また、紫外線光源5と風路2の下流開口部25Aとは、流通方向Xの空間距離L3で10mm以上の間隔をあけて配置されている。
【0058】
第2実施形態による除菌装置1Aでは、放電部41は、オゾン生成装置4を構成する基板40との間で高圧線43によって接続されている。そして、沿面距離は、高圧線43から上流開口部24Aおよび紫外線光源5のうち少なくとも一方までの絶縁体を通る距離である。そのため、人が開口部24A,25Aに近づいた場合でも、放電部41に対する人体の接近や接触をより確実に抑制でき、人が感電することを防止できる。また、放電部41の高電圧が伝播しない位置に紫外線光源5が配置されるので、人が下流開口部25Aを通じて紫外線光源5に近づいた場合でも、紫外線光源5自体が放電部41の高電圧の影響を受けていないことからが感電することを防止できる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態による除菌装置1Bについて、
図5および
図6に基づいて説明する。
図5は、第3実施形態の除菌装置1Bの一例を模式的に示した側面図である。
図6は、
図5に示すA-A線矢視図であって、除菌装置1Bを下流側から見た図である。除菌装置1Bは、上述した第1実施形態の除菌装置1において風路2の下流開口部25の形状を変えた一例である。第3実施形態のオゾン生成装置4、紫外線光源5の構成や配置は、上記第1実施形態と同様であるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0060】
第3実施形態の下流開口部25は、風路2における上下方向Yの中央および幅方向Zの中央に配置され、複数(ここでは4つ)の開口穴251、251から構成されている。これら複数の開口穴251は、それぞれ流通方向Xから見て正方形状であり、上下方向Yと幅方向Zでそれぞれ2列ずつ配列されている。開口穴251の大きさは、縦寸法D1(穴径)および横寸法D2(穴径)がそれぞれ6mm以下に設定されている。
【0061】
第3実施形態では、下流開口部25が複数の開口穴251から構成され、これら開口穴251の穴径D1、D2が6mm以下に設定されているので、圧力損失が生じない開口となる。そして、人の指が開口穴251から風路2内に誤って入ることがなく、風路2内のオゾン生成装置4の放電部41や放電部41の高電圧の影響を受けた部位に指が近づいたり接触することがないため、人が感電することをより確実に防止できる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0063】
本実施形態では、説明上、風路2の向き、姿勢下壁23を設置面Fに載置される側としているが、風路2の向きや姿勢は、除菌装置1を取り付ける対象に合わせて適宜設定することができる。例えば、下壁23を下方に向けた姿勢で上壁21や側壁22が設置面Fに取り付けられていてもよい。また、オゾン生成装置4や紫外線光源5を設ける風路2の壁面が下方であることにも限定されることなく、その壁面を上方、あるいは側方に向けた姿勢で設置することも可能である。
【0064】
また、本実施形態では、風路2の壁面のうち同一の壁面に対してオゾン生成装置4と紫外線光源5とを設けた構成としているが、これに限定されることはなく、オゾン生成装置4と紫外線光源5とをそれぞれ別の壁面に設けられていてもかまわない。
【0065】
また、オゾン生成装置4とLED素子からなる紫外線光源5とが同一の基板上に実装されていてもよい。このように同一基板上にLED素子である紫外線光源5を設けることにより、除菌装置1の小型化や省スペース化を図ることができ、風量が低下しない装置を実現できる。
【0066】
また、本実施形態の紫外線光源5では、照射範囲が決められるLED素子を照射部51としたものを採用しているが、これに限定されることはない。例えば、開口部からの風路2外への紫外線光UVの漏れが少ないように配置可能であれば、照射範囲が360度で全方向照射となるランプ式の紫外線光源を採用することも可能である。
【0067】
また、
図7に示す変形例による除菌装置1Cのように、風路2の下壁23の紫外線光源5が設置される位置に上方に凸となる架台部231を設け、その架台部231の上面231aに紫外線光源5を配置する構成としてもよい。この場合、紫外線光源5の高さを風路2の上方に位置させるだけでなく、第2沿面距離L2を長くすることができる。ここで、本変形例による第2沿面距離L2は、オゾン生成装置4の高圧線43が接続される第1位置P1から高圧線43に沿って導電体の底面23aに到達する第2位置P2までの上下方向Yの距離と、第2位置P2から底面23aを通って架台部231の下端の第5位置P5を通過し、さらに第5位置P5から架台部231の上端の第6位置P6を通過し、さらに第6位置P6から紫外線光源5の基板50に到達する第7位置P7までの距離と、を合わせた長さとなる。すなわち、放電部41と紫外線光源5との空間距離L3を小さくすることができるので、風路2としての流通方向Xの長さを短くでき、除菌装置1として小型化を図ることができる。
【0068】
上述した実施形態の除菌装置1、1A、1Bを構成する風路2、ファン3、オゾン生成装置4、及び紫外線光源5における、形状、大きさ(寸法)、配置、向き、それぞれの間隔、数量、設置個所などの構成は、適用する使用形態や装備する筐体に合わせて適宜設定することが可能である。例えば、風管2内において紫外線光源5が複数設けられていてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、上流側開口24Aにファン3が設けられているが、ファン3は下流開口部25Aにも設けられていても良いし、下流開口部25Aのみにファン3が設けられていても良い。あるいは、ファン3を省略することも可能である。また、上記、第3実施形態のような複数の開口穴からなる開口部は、上流開口部24Aに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、1A、1B…除菌装置、2…風路、3…ファン、4、4A…オゾン生成装置、5…紫外線光源、23…上壁、23a…底面、24…上流壁、25…下流壁、24A…上流開口部(第1開口部)、25A…下流開口部(第2開口部)、40…基板、41…放電部、42…リード線、43…高圧線、50…基板、51…照射部、52…リード線、A…空気、UV…紫外線光、L1…第1沿面距離、L2…第2沿面距離、L0、L3…空間距離、X…流通方向、Y…上下方向、Z…幅方向