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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127180
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】洗顔料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20230906BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230906BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/44
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030802
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】520061767
【氏名又は名称】紅道科研センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】川野 大地
(72)【発明者】
【氏名】付 子華
(72)【発明者】
【氏名】安本 陵太
(72)【発明者】
【氏名】何 雨▲旋▼
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC111
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC711
4C083AC712
4C083BB05
4C083BB07
4C083CC23
4C083DD27
4C083EE03
4C083EE10
(57)【要約】
【課題】洗顔料において、剤型に応じて適切な使用感を得ることができる粘度を調整し得るものとする
【解決手段】洗顔料は、成分(A)アミノ酸系陰イオン界面活性剤、成分(B)脂肪酸カリウム塩、成分(C)スルホベタイン型両性界面活性剤、成分(D)水、を含有する。これらの成分を所定割合で含有させることで、粘度が200mPa・S以上となり、洗顔料として、剤型に応じて適切な使用感を得られる粘度に調整することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)アミノ酸系陰イオン界面活性剤
成分(B)脂肪酸カリウム塩
成分(C)スルホベタイン型両性界面活性剤
成分(D)水
を含有し、粘度が200mPa・S以上である洗顔料。
【請求項2】
pHが7~10であることを特徴とする請求項1に記載の洗顔料。
【請求項3】
前記成分(C)の含有量が、前記成分(A)の含有量の1/2以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗顔料。
【請求項4】
前記成分(B)の含有量が、前記成分(A)の含有量の1/8以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の洗顔料。
【請求項5】
前記成分(B)の含有量が、前記成分(C)の含有量の1/2以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の洗顔料。
【請求項6】
成分(E)グリコールエーテル、グリセリルアルキルエーテル又はアルカンジオール
を更に含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の身体洗浄組成物。
【請求項7】
上記成分(E)の含有量が、前記成分(A)の含有量の1/16以上であることを特徴とする請求項6に記載の洗顔料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸系界面活性剤を洗浄成分として用いた洗顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚等の身体を洗浄するための洗浄料として、脂肪酸石鹸が広く使用されてきた。脂肪酸石鹸は、高級脂肪酸を塩基で中和することで得られる脂肪酸塩から構成される石鹸である。脂肪酸石鹸は、洗浄力、起泡性、水への溶解性等に優れるといった特徴がある一方で、脱脂性が強く、使用後に肌につっぱりを感じる等、皮膚刺激性が強くなる傾向がある。そのため、特に、顔等の刺激に敏感な皮膚を洗浄するための洗顔料には必ずしも適していなかった。
【0003】
そこで、アミノ酸系界面活性剤を洗浄成分として用いたアミノ酸系洗浄料が注目されるようになった。アミノ酸系界面活性剤は、弱酸性~中性で皮膚に対する刺激が少ないという特徴があり(例えば、特許文献1参照)、低刺激性が求められる洗顔料に好適に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-523973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、洗顔料には、使用者の好みや用途に応じた様々な剤型が存在し、剤型に応じた粘度が要求される。しかしながら、アミノ酸系界面活性剤は、粘度を出し難く、洗顔料として用いられる際には、高分子材料を適宜に組み合わせることで、その粘度を調整することが一般的である。粘度は、基本的に高分子材料の量に依存するため、高い粘度が要求される剤型では、高分子材料の量が多くなる。ところが、高分子材料の量が多くなると、例えば、ぬめり感が強くなり過ぎる等、高分子材料に起因する悪影響が生じてしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、アミノ酸系界面活性剤を洗浄成分として用い、且つ剤型に応じて適切な使用感を得ることができる粘度を調整し得る洗顔料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
成分(A)アミノ酸系陰イオン界面活性剤
成分(B)脂肪酸カリウム塩
成分(C)スルホベタイン型両性界面活性剤
成分(D)水
を含有し、粘度が200mPa・S以上である洗顔料である。
【0008】
また、上記洗顔料において、pHが7~10であることが好ましい。
【0009】
また、上記洗顔料において、前記成分(C)の含有量が、前記成分(A)の含有量の1/2以上であることが好ましい。
【0010】
また、上記洗顔料において、前記成分(B)の含有量が、前記成分(A)の含有量の1/8以上であることが好ましい。
【0011】
また、上記洗顔料において、前記成分(B)の含有量が、前記成分(C)の含有量の1/2以上であることが好ましい。
【0012】
また、上記洗顔料において、成分(E)グリコールエーテル、グリセリルアルキルエーテル又はアルカンジオール、を更に含有することが好ましい。
【0013】
また、上記洗顔料において、上記成分(E)の含有量が、前記成分(A)の含有量の1/16以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成分(A)のアミノ酸系陰イオン界面活性剤、成分(B)の脂肪酸カリウム塩、成分(C)のスルホベタイン型両性界面活性剤、成分(D)の水を所定割合で含有させることで、洗顔料として、剤型に応じて適切な使用感を得ることができる粘度に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る洗顔料について、具体的に説明する。本実施形態に係る洗顔料は、以下の成分を含有する。
成分(A)アミノ酸系陰イオン界面活性剤
成分(B)脂肪酸カリウム塩
成分(C)スルホベタイン型両性界面活性剤
成分(D)水
成分(E)グリコールエーテル、グリセリルアルキルエーテル又はアルカンジオール
【0016】
陰イオン界面活性剤は、洗顔料を含む身体用洗浄剤の主剤に使用されるものであり、歴史手的に、石けん系界面活性剤、高級アルコール系界面活性剤、そしてアミノ酸系界面活性剤という順で開発が進められ、使用感の向上、低刺激性化が図られている。アミノ酸系界面活性剤は、高級脂肪酸にアミノ酸を反応させて作られたものであり、使用感、低刺激性向上の両面で、それ以前の高級アルコール系界面活性剤よりその性質が向上している。
【0017】
本実施形態の成分(A)のアミノ酸系陰イオン界面活性剤には、例えば、N-アシルアミノ酸及びその塩が好ましく、特に、N-アシルグリシン、N-アシルアラニン、及びこれらの塩が好ましい。また、アシル基は、炭素数4~22のアシル基が好ましく、14~18のアシル基がより好ましい。具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、ヤシ油脂肪酸、オレイン酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、及びこれらを含む混合脂肪酸から誘導されるアシル基が挙げられる。N-アシルアミノ酸の塩を構成する塩基成分としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、リジン、オルニチン、アルギニン等の塩基性アミノ酸が挙げられる。
【0018】
具体的には、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム(ココイルグリシンカリウム)、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム(ココイルグリシンナトリウム)、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシントリエタノールアミン(ココイルグリシントリエタノールアミン)、N-ヤシ油脂肪酸アシルアラニンカリウム(ココイルアラニンカリウム)、N-ヤシ油脂肪酸アシルアラニンナトリウム(ココイルアラニンナトリウム)、N-ヤシ油脂肪酸アシルアラニントリエタノールアミン(ココイルアラニントリエタノールアミン)、
N-ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム(ココイルグルタミン酸カリウム)、N-ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム(ココイルグルタミン酸ナトリウム)、N-ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン(ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン)、が挙げられ、特に、N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシン塩が好ましい。
【0019】
アミノ酸系陰イオン界面活性剤(成分(A))は、洗顔料の全量に対して、例えば、0.1~20質量%で含有され、好ましくは、4~20質量%で含有され、水(成分(D))がそれらとは相補的に含有される。アミノ酸系陰イオン界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤は、洗浄剤として主要な役割を果たす成分であるから、4質量%以上含有されていることが望ましい。
【0020】
本実施形態の成分(B)の脂肪酸カリウム塩には、例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、イソステアリン酸カリウム、オリーブ脂肪酸カリウム、カメリア油脂肪酸カリウム、サフラワー脂肪酸カリウム、シア脂脂肪酸カリウム、ツバキ脂肪酸カリウム、パーム核脂肪酸カリウム、パーム脂肪酸カリウム、ヒマシ油脂肪酸カリウム、ベヘン酸カリウム、ホホバ油脂肪酸カリウム、マカデミア種子油脂肪酸カリウム、ラノリン脂肪酸カリウム、リノール酸カリウム、水添ヤシ脂肪酸カリウム、牛脂脂肪酸カリウム等が挙げられ、特に、ヤシ脂肪酸カリウムが好ましい。ヤシ脂肪酸カリウムは、ヤシ油とカリウムを材料に作られたカリ石鹸であり、いわゆる純石鹸成分であるが、水溶性が高く、また、起泡力の高いことから洗浄力に優れる。
【0021】
脂肪酸カリウム塩(成分(B))は、洗顔料の全量に対して、例えば、0.01~10質量%で含有され、好ましくは、0.1~5質量%で含有される。また、脂肪酸カリウム塩(成分(B))は、アミノ酸系陰イオン界面活性剤(成分(A))の含有量に対して、1/8以上の含有量とされる。ただし、脂肪酸カリウム塩が多いと、洗顔料の皮膚刺激性が強くなるので、その含有量がアミノ酸系陰イオン界面活性剤の含有量を超えることはなく、アミノ酸系陰イオン界面活性剤の含有量の1/2程度が好ましい。
【0022】
両性界面活性剤は、その分子中の親水基にアニオン基とカチオン基の両方をもっている界面活性剤であり、一般的には、酸性溶液中では陽イオン界面活性剤、アルカリ溶液中では陰イオン界面活性剤、中性溶液中で両性界面活性剤の性質を示す。両性界面活性剤には、主にアミノ酸型とベタイン型とがあり、ベタイン型には更にアミノ酢酸ベタイン型とスルホベタイン型があるが、本実施形態の成分(C)はスルホベタイン型両性界面活性剤である。このものとしては、例えば、ヤシ油脂肪酸ジメチルスルホプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン(ラウリルヒドロキススルタイン)、エルカミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、ラウラミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0023】
ベタイン型両性界面活性剤(成分(C))は、洗顔料の全量に対して、例えば、0.1~20質量%で含有され、好ましくは、1~10質量%で含有される。また、ベタイン型両性界面活性剤(成分(C))は、アミノ酸系陰イオン界面活性剤(成分(A))の含有量に対して、1/2以上の含有量とされる。なお、ベタイン型両性界面活性剤は、皮膚刺激性が弱いので、洗顔料としては、その含有量がアミノ酸系陰イオン界面活性剤の含有量を超えていてもよい。
【0024】
スルホベタイン型両性界面活性剤は、それ自体にも洗浄性及び起泡性を有しているが、陰イオン界面活性剤と併用することによって、洗浄性が増大し、キメの細かいクリーミーな泡質及び泡安定性が向上することが知られている。また、脂肪酸カリウム塩とスルホベタイン型両性界面活性剤とは、洗浄剤としての相性が良く、スルホベタイン型両性界面活性剤は、泡立ちを良くするだけでなく、脂肪酸カリウム塩の安定性を向上させる役割を果たす。
【0025】
本実施形態の成分(C)の水としては、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水、精製水又は天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
【0026】
本実施形態の成分(E)は、グリコールエーテル、グリセリルアルキルエーテル又はアルカンジオールであり、これらは洗顔料において一般に防腐剤として添加される材料である。グリコールエーテルとしては、例えば、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、フェノキシプロパンジオール等が用いられる。グリセリルアルキルエーテルとしては、例えば、1-ヘキシルグリセリルエーテル、1-ヘプチルグリセリルエーテル、1-オクチルグリセリルエーテル、1-デシルグリセリルエーテル、1-ドデシルグリセリルエーテル、1-(2-エチルヘキシル)グリセリルエーテル(エチルヘキシルグリセリン)等が用いられる。アルカンジオールは、1,2-アルカンジオールが好ましく、例えば、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール(カプリリルグリコール)、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール等が挙げられる。
【0027】
<試験1~4>
ココイルグリシンカリウム(成分(A))、ヤシ脂肪酸カリウム(成分(B))、ラウリルヒドロキシスルタイン(成分(C))の各成分の含有量を変化させることで、得られた洗顔料の粘度がどのように変化するかを試験し、その結果を下記の表1に示す。なお、上記3成分に、水(成分(D))に加えて、更に成分(E)として、フェノキシエタノールを配合させた。表中における各成分の含有量の数値は、質量%で示している。また、粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて測定し、ここでは、粘度が200mPa・S以上のものを実施例とし、粘度が出なかったものを比較例とした。
【0028】
【表1】
【0029】
試験1A~1Cでは、成分(A)(B)の含有量を一定とし、成分(C)の含有量のみ変化させた。試験2A~2Cでは、成分(A)(B)の含有量を試験1A~1Cの半分とした。試験3A~3Cでは、成分(B)を無配合とした。試験4A~4Cでは、成分(A)(C)の含有量を一定とし、成分(B)の含有量を変化させた。
【0030】
表1に示したように、試験1A、2A、3Aでは、成分(C)が配合されていないため、全く粘度が出なかった。また、試験3A~3Cでも、成分(B)が配合されていないため、全く粘度が出なかった。これらの結果より、成分(B)(C)のいずれか一方が無配合の場合には、粘度が出ないことが示された。
【0031】
また、試験1B、2Bより、成分(C)が3質量%では粘度が出ず、それ以上の含有量が必要であることが示された。この結果より、成分(C)の含有量は、成分(A)の含有量の1/2以上とすべきであることが分かる。
【0032】
また、試験4Aより、成分(B)が1質量%以上配合されれば、粘度が出ることが示された。この結果より、成分(B)の含有量は、少なくとも成分(A)の含有量の1/8以上あればよいことが分かる。
【0033】
また、試験4A、4B、4C、1Cより、成分(A)(C)の含有量が一定であれば、成分(B)の含有量が多くなる程、粘度が高くなるまた、試験4Cにおける成分(B)の含有量は、試験4Aの3倍であるが、粘度は6倍になっており、試験1Cにおける成分(B)の含有量は、試験4Aの4倍であるが、粘度は13倍になっている。このことから、成分(B)は、成分(A)(C)に対する含有比率以上に粘度を上げる効果が大きいことが分かる。また、試験2C、4Bより、成分(C)の含有量に比べて、成分(A)の含有量が少なくなると粘度が高くなっていることから、成分(A)は粘度に対する寄与がなく、成分(B)(C)の比率が粘度に影響していると考えられる。以上の結果より、成分(B)の含有量は、成分(C)の1/2以上であることが好ましいが分かる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、成分(A)のアミノ酸系陰イオン界面活性剤、成分(B)の脂肪酸カリウム塩、成分(C)のスルホベタイン型両性界面活性剤、成分(D)の水を所定割合で含有させることで、粘度が200mPa・S以上となり、洗顔料として、剤型に応じて適切な使用感を得ることができる粘度に調整することができる。なお、ここでは、粘度が200mPa・Sを実施例としているが、洗顔料として一般的な粘度としては、500mPa・S以上であり、例えば、チューブ詰めのジェル状の剤型の商品では、25000mPa・Sとされる。
【0035】
<試験5>
次に、ココイルグリシンカリウム(成分(A))、ヤシ脂肪酸カリウム(成分(B))、ラウリルヒドロキシスルタイン(成分(C))の含有量を一定にした上で、洗顔料のpHが、その見た目にどのような影響を与えるかを試験し、その結果を下記の表2に示す。なお、pHは、クエン酸を適宜に添加することで調整した。
【0036】
【表2】
【0037】
表2に示したように、上記成分で構成された洗顔料は、5℃環境において、pH7では僅かに白濁し(試験5C)、pH6.5では白濁した(試験5D)。また、室温では、pH6.5で僅かに白濁した(試験5D)。以上の結果より、上記成分で構成された洗顔料のpHは7以上であることが好ましいことが分かる。また、洗顔料である以上、過度にアルカリ性であることは好ましくなく、pH7~10が好ましい。
【0038】
<試験6~9>
次に、ココイルグリシンカリウム(成分(A))、ヤシ脂肪酸カリウム(成分(B))、ラウリルヒドロキシスルタイン(成分(C))の含有量を一定にした上で、成分(E)として、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン又はカプリリルグリコールのいずれかを含有させることで、得られた洗顔料の粘度がどのように変化するかを試験し、その結果を下記の表3に示す。なお、下記の表3では、成分(E)が配合されるものを実施例とし、成分(E)が無配合のもの、及び、一般的な防腐剤として知られる安息香酸ナトリウムを配合させたものを比較例とした。
【0039】
【表3】
【0040】
試験6A~6Cでは、成分(E)として、フェノキシエタノールを用い、その含有量を0、0.5質量%、1質量%の3段階で変化させた。同様に、試験7A~7Cではエチルヘキシルグリセリンを、試験8A~8Cではカプリリルグリコールを、試験9A~9Cでは安息香酸ナトリウムを用いた。
【0041】
試験6A、7A、8Aより、成分(E)が無くても一定の粘度が出るが、試験6B、6C、7B、7C、8B、8Cより、成分(E)の含有量が多くなる程、粘度が高くなることが示された。また、いずれも0.5質量%の添加で、非常に高い増粘効果が得られることが示された。これらの結果より、成分(E)の含有量は、少なくとも成分(A)の1/16以上であればよいことが分かる。また、特に、エチルヘキシルグリセリンの増粘効果が高いことが示された。
【0042】
また、比較例として安息香酸ナトリウムを添加した試験9A~9Cでは、安息香酸ナトリウムの含有量が多くなる程、粘度が低下した。ここで、比較例で用いた安息香酸ナトリウムの水への溶解度は、約62.5g/100gである。一方、実施例で用いたフェノキシエタノールの水への溶解度は、約2.6g/100g、エチルヘキシルグリセリンの溶解度は約0.1g/100g、カプリリルグリコールの溶解度は約0.75g/100gである。すなわち、溶解度の低いアルコール・エーテル材料は、アミノ酸系陰イオン界面活性剤から成る洗顔料に添加されることで増粘作用を示すことが推察される。
【0043】
本実施形態の洗浄用組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、適宜に任意の成分を含有することができる。任意の成分としては、例えば、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、ポリマー、香料、抗菌剤、増粘剤又は色素が挙げられる。具体的には、ポリマーとして、ポリクオタニウム-10、キレート剤として、EDTA-2ナトリウム等が挙げられる。なお、界面活性剤の組み合わせ以外の方法で粘度を出すために、増粘剤を添加することを否定するものではなく、例えば、ポリエチレングリコールジステアレート等の増粘剤が用いられてもよい。また、上述した成分(E)以外の防腐剤が適宜に添加されてもよい。
【0044】
なお、本発明に係る洗顔料は、上記実施例に限らず、種々の変形が可能である。上記実施例では、増粘作用を調べるために、成分(E)を1種のみ用いたが、成分(E)として複数種を混合させてもよい。また、本発明は、特に皮膚刺激性が要求される洗顔料に適用されることを想定しているが、粘度の調整が必要なシャンプー(リンス、コンディショナー又はトリートメント等の成分を含有する各種シャンプーを含む)やボディーソープに転用することができ、界面活性剤を含有するあらゆる全身用洗浄用組成物に展開することができるのは言うまでもない。