(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127181
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
E03D9/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030806
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 直樹
(72)【発明者】
【氏名】里井 喬行
(72)【発明者】
【氏名】廣崎 和也
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038JA01
2D038JA02
2D038JF00
2D038JF05
2D038JF06
(57)【要約】
【課題】洗浄開始ボタンの操作から温水が人の局部に噴射されるまでの時間を短縮する。
【解決手段】第一ノズル111と、洗浄ノズル113と、水の流路を切り替える切替装置120と、を備え、切替装置120は、第一ノズル111に連通する第一孔123、洗浄ノズル113に連通する洗浄孔125を備える固定板121と、第一孔123を閉塞可能な円盤状の回転板122と、を備え、回転板122は、第一孔123、または洗浄孔125と選択的に連通する選択孔130を備え、固定板121は、洗浄孔125と連通し第一孔123に向かって延在する第一溝126と、第一溝126と第一孔123とを連通させる第二溝127と、を備え、第二溝127は、第一溝126よりも深さが浅く、幅が狭い衛生洗浄装置100。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した人体の局部に向けて水を噴射するノズル装置を備える衛生洗浄装置であって、
前記ノズル装置は、
第一ノズルと、
前記第一ノズルを洗浄する水を噴射する洗浄ノズルと、
水を前記第一ノズルに供給するか前記洗浄ノズルに供給するかを切り替える切替装置と、を備え、
前記切替装置は、
前記第一ノズルに連通するスルーホールからなる第一孔、および前記洗浄ノズルに連通するスルーホールからなる洗浄孔を同一平面に並べて備える固定板と、
前記固定板の表面に密着して前記第一孔を閉塞可能な円盤状の回転板と、を備え、
前記回転板は、
前記固定板の前記表面の法線に沿う回転軸周りに回転することにより前記第一孔、または前記洗浄孔と選択的に連通するスルーホールからなる選択孔を備え、
前記固定板は、
前記表面から前記回転軸の方向に窪み前記洗浄孔と連通し前記第一孔に向かって延在する有底の第一溝と、
前記表面から前記回転軸の方向に窪み前記第一溝と前記第一孔とを連通させる有底の第二溝と、を備え、
前記第二溝は、
前記第一溝よりも深さが浅く、幅が狭い
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記第一溝の深さは、0.4mm以上、1.0mm以下の範囲から選定される深さであり、
前記第一溝の深さは、0.4mm以上、1.0mm以下の範囲から選定される幅であり、
前記第二溝の深さは、0.2mm以上、0.3mm以下の範囲から選定される深さであり、
前記第二溝の深さは、0.1mm以上、0.25mm以下の範囲から選定される幅である
請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズル装置は、
第二ノズル、
前記第二ノズルに連結される第二ノズル、を備え、
前記切替装置は、
水を前記第一ノズルに供給するか前記洗浄ノズルに供給するか前記第二ノズルに供給するかを切り替え、
前記固定板は、
前記第二ノズルに連通するスルーホールからなる第二孔を、前記第一孔、および前記洗浄孔と同一平面に並べて備え、
前記回転板の前記選択孔は、
前記第一孔、前記第二孔、および前記洗浄孔を閉塞し、前記第一孔、前記第二孔、または前記洗浄孔と選択的に連通し、
前記固定板は、
前記表面から前記回転軸の方向に窪み前記洗浄孔と連通し前記第二孔に向かって延在する有底の第三溝、
前記表面から前記回転軸の方向に窪み前記第三溝と前記第二孔とを連通させる有底の第四溝、を備え、
前記第四溝は、
前記第三溝よりも深さが浅く、幅が狭い
請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に取り付けられ、着座した人の局部に水を噴射する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生洗浄装置に備えられる洗浄水噴射用のノズルは、水が充填された状態で待機しているため、加熱装置からノズル内の水が冷えた状態となる。したがって、人体の局部に冷えた水が噴射されないように、冷えた水をノズルから排出した後、温められた水を局部に向かって噴射することが行われている。
【0003】
特許文献1には、ノズルにエアを供給可能な空気ポンプを設け、エアによってノズル内の水を排出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ノズルから排除する冷水を着座した人のおしりに噴射させないためにはノズルを突出させる前に冷水を排除する必要がある。したがって、冷水を排除してからノズルを突出させることになるため、洗浄ボタンが操作されてから局部洗浄が実行されるまでの時間が長くなるという課題が有る。
【0006】
また、空気ポンプを設ける場合、コスト増を招くだけでなく、装置が大型化したり、空気ポンプの駆動により使用時の騒音が大きくなったりするおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、洗浄ボタンの操作後にノズル内の冷水を排除しても人体の局部洗浄開始までの時間を短縮することができる衛生洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の衛生洗浄装置は、着座した人体の局部に向けて水を噴射するノズル装置を備える衛生洗浄装置であって、前記ノズル装置は、第一ノズルと、前記第一ノズルを洗浄する水を噴射する洗浄ノズルと、水を前記第一ノズルに供給するか前記洗浄ノズルに供給するかを切り替える切替装置と、を備え、前記切替装置は、前記第一ノズルに連通するスルーホールからなる第一孔、および前記洗浄ノズルに連通するスルーホールからなる洗浄孔を同一平面に並べて備える固定板と、前記固定板の表面に密着して前記第一孔を閉塞可能な円盤状の回転板と、を備え、前記回転板は、前記固定板の前記表面の法線に沿う回転軸周りに回転することにより前記第一孔、または前記洗浄孔と選択的に連通するスルーホールからなる選択孔を備え、前記固定板は、前記表面から前記回転軸の方向に窪み前記洗浄孔と連通し前記第一孔に向かって延在する有底の第一溝と、前記表面から前記回転軸の方向に窪み前記第一溝と前記第一孔とを連通させる有底の第二溝と、を備え、前記第二溝は、前記第一溝よりも深さが浅く、幅が狭い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルを突出する間に人体に冷水を噴射することなく加熱装置からノズル内の冷水を排除することができ、洗浄ボタンの操作後から局部洗浄開始までの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、便器に取り付けられた衛生洗浄装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、衛生洗浄装置が備える水回路を示す回路図である。
【
図4】
図4は、切替装置を分解状態で示す斜視図である。
【
図5】
図5は、固定板を回転板側から示す平面図である。
【
図6】
図6は、洗浄孔側から第二溝の端部を臨んだ状態を示す平面図である。
【
図7】
図7は、洗浄孔側から第四溝の端部を臨んだ状態を示す平面図である。
【
図8】
図8は、切替装置を回転板側から簡易的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、固定板に対する回転板の位置の第1例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、固定板に対する回転板の位置の第2例を示す平面図である。
【
図11】
図11は、固定板に対する回転板の位置の第3例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、固定板に対する回転板の位置の第4例を示す平面図である。
【
図13】
図13は、固定板に対する回転板の位置の第5例を示す平面図である。
【
図14】
図14は、固定板に対する回転板の位置の第6例を示す平面図である。
【
図15】
図15は、固定板に対する回転板の位置の第7例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る衛生洗浄装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0012】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。また、図中に示す場合があるX軸、Y軸、Z軸は、図の説明のために任意に設定した直交座標を示している。つまりZ軸は、鉛直方向に沿う軸とは限らず、X軸、Y軸は、水平面内に存在するとは限らない。
【0013】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0014】
図1は、便器200に取り付けられた衛生洗浄装置100を示す斜視図である。
図2は、衛生洗浄装置100が備える水回路180を示す回路図である。衛生洗浄装置100は、便器200に取り付けられ、便座190に着座した人の局部に向けて水を噴射する装置である。衛生洗浄装置100は、ノズル装置110と、水回路180と、を備えている。なお、
図1において、便蓋の図示は省略されているが、本実施の形態の場合、衛生洗浄装置100は、便器200に対して開閉可能な便蓋を備えている。また、本明細書、および特許請求の範囲において、「水」とは、冷水、および温水を含む。
【0015】
衛生洗浄装置100が備える水回路180の構成は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、下記の構成となっている。水回路180は、上流から順に給水接続口181、ストレーナ182、止水電磁弁183、減圧弁184、バキュームブレーカ185、加熱装置140を備えている。
【0016】
給水接続口181は、アダプタなどにより水道管に接続される部材であり、内部には、水道水に含まれるごみの流入を防止するストレーナ182が一体に組み込まれている。
【0017】
止水電磁弁183は、制御装置109(
図1参照)からの制御により水道管からの水の流れを開閉することができる弁であり、止水電磁弁183を開放することによりノズル装置110から水を噴射させ、止水電磁弁183を閉ざすことによりノズル装置110からの水の噴射を停止せることができる。
【0018】
減圧弁184は、水道管から供給される水の水圧を減圧し一定に保つ弁である。
【0019】
バキュームブレーカ185は、断水などにより給水接続口181に接続される水道管が負圧になった時などに水回路180の内部の水が水道管に逆流することを防止する。
【0020】
加熱装置140は、水道管から供給される水道水を加熱して温水を生成する装置である。なお、加熱装置140の種類は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、加熱装置140は、水道管から供給される水道水を瞬時に加熱する熱交換器である。加熱装置140は、加熱装置140で加熱された水の温度を均一にするバッファータンク141を一体に備えている。
【0021】
図3は、ノズル装置110を示す斜視図である。ノズル装置110は、本体101(
図1参照)内に収容される待機位置と、便座190に着座した人の局部の下方にノズル装置110の先端が配置される突出位置との間をノズル駆動装置170(
図3において不図示)によって移動することができる装置であって、第一ノズル111と、第二ノズル112と、洗浄ノズル113(
図3において不図示)と、および切替装置120と、を備えている。なお、
図3に示す分岐管114は、洗浄ノズル113に連結される。また、ノズル装置110は、円筒形のジャケット内に収容される場合がある。
【0022】
第一ノズル111は、便座190に着座した人のおしりに向けて水を噴射するためのノズルである。第二ノズル112は、ビデ用のノズルである。第一ノズル、および第二ノズルは、相互に独立した通水路を備えている。
【0023】
洗浄ノズル113は、ノズル装置110が待機位置に配置されている状態において、第一ノズル111、および第二ノズル112の先端部115に水を噴射し、第一ノズル111、および第二ノズル112の先端部115を洗浄するノズルである。
【0024】
切替装置120は、水回路180を経て温められた水を第一ノズル111に供給するか第二ノズル112に供給するか、洗浄ノズル113に供給するかを切り替える装置である。
図4は、切替装置120を分解状態で示す斜視図である。
図5は、固定板121を回転板122側から示す平面図である。切替装置120は、固定板121と、回転板122と、を備えている。なお、
図4におけるハッチングは、断面を示すものではなく、孔、溝を見やすくするために回転板122と密着する固定板121の表面に付している。
図5におけるハッチングは、断面を示すものではなく、貫通していない部分に付している。
図5における異なるハッチングは、異なる高さであることを示している。
【0025】
固定板121は、第一ノズル111、第二ノズル112、および洗浄ノズル113の上流側端部に連結される円盤状の部材であり、第一ノズル111に連通するスルーホールからなる第一孔123、第二ノズル112に連通するスルーホールからなる第二孔124、および洗浄ノズル113に連通するスルーホールからなる洗浄孔125を備えている。第一孔123、第二孔124、洗浄孔125は、回転板122の回転軸102(
図4参照)に直交する同一平面内において、周方向に並ぶように配置されている。
【0026】
第一孔123は、第一ノズル111と連通しており、第一孔123を通過した水は、第一ノズル111にのみ供給されて便座190に着座した人のお尻に噴射される。本実施の形態の場合、第一孔123は、回転軸102を中心とする周方向において、洗浄孔125から遠ざかるに従い径方向の幅が広くなっている。なお、当該形状に基づく効果は後述する。
【0027】
第二孔124は、第二ノズル112と連通しており、第二孔124を通過した水は、第二ノズル112にのみ供給されてビデの用途として噴射される。本実施の形態の場合、第二孔124は、回転軸102を中心とする周方向において、洗浄孔125から遠ざかるに従い径方向の幅が広くなっている。なお、当該形状に基づく効果は同様に後述する。
【0028】
洗浄孔125は、洗浄ノズル113と連通しており、洗浄孔125を通過した水は、洗浄ノズル113にのみ供給されて待機位置に配置される第一ノズル111、第二ノズル112の先端部115に噴射される。本実施の形態の場合、洗浄孔125は、回転軸102を中心とする扇形となっている。
【0029】
固定板121は、回転板122と当接する表面(
図4においてハッチングを付した面)から回転軸102の方向に窪み、洗浄孔125と連通し第一孔123に向かって延在する有底の第一溝126を備えている。本実施形態の場合、第一溝126は、回転軸102を中心とする周方向に沿って延在している。洗浄孔125側から第二溝127の端部を臨んだ状態の
図6に示すように、第一溝126の延在方向に直交する断面形状は矩形である。第一溝126の深さである第一深さD1は、0.4mm以上、1.0mm以下の範囲から選定される深さである。第一溝126の幅である第一幅W1は、0.4mm以上、1.0mm以下の範囲から選定される幅である。
【0030】
固定板121は、回転板122と当接する表面(
図4においてハッチングを付した面)から回転軸102の方向に窪み第一溝126と第一孔123とを連通させる有底の第二溝127を備えている。
図6に示すように、第二溝127の延在方向に直交する断面形状は矩形である。第二溝127の深さである第二深さD2は、0.2mm以上、0.3mm以下の範囲から選定される深さである。第二溝127の幅である第二幅W2は、0.1mm以上、0.25mm以下の範囲から選定される幅である。また、第二深さD2は、第一深さD1よりも浅くなるように設定される。第二幅W2は、第一幅W1よりも狭くなるように設定される。
【0031】
固定板121は、回転板122と当接する表面(
図4においてハッチングを付した面)から回転軸102の方向に窪み、洗浄孔125と連通し第二孔124に向かって延在する有底の第三溝128を備えている。本実施形態の場合、第三溝128は、回転軸102を中心とする周方向に沿って延在している。洗浄孔125側から第四溝129の端部を臨んだ状態の
図7に示すように、第三溝128の延在方向に直交する断面形状は矩形である。第三溝128の深さである第三深さD3は、0.4mm以上、1.0mm以下の範囲から選定される深さである。第三溝128の幅である第三幅W3は、0.4mm以上、1.0mm以下の範囲から選定される幅である。
【0032】
固定板121は、回転板122と当接する表面(
図4においてハッチングを付した面)から回転軸102の方向に窪み第三溝128と第二孔124とを連通させる有底の第四溝129を備えている。
図7に示すように、第四溝129の延在方向に直交する断面形状は矩形である。第四溝129の深さである第四深さD4は、0.2mm以上、0.3mm以下の範囲から選定される深さである。第四溝129の幅である第四幅W4は、0.1mm以上、0.25mm以下の範囲から選定される幅である。また、第四深さD4は、第三深さD3よりも浅くなるように設定される。第四幅W4は、第三幅W3よりも狭くなるように設定される。
【0033】
回転板122は、固定板121の表面に密着して第一孔123、第二孔124、および洗浄孔125を閉塞可能な円盤状の部材である。回転板122は、固定板121の表面の法線に沿う回転軸102周りにモーター131(
図2参照)の駆動力で回転することにより第一孔123、第二孔124、または洗浄孔125と選択的に連通するスルーホールからなる選択孔130を備えている。選択孔130の形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態の場合、
図8に示すように、回転軸102を中心とした扇形の切り欠きとなっている。周方向において選択孔130の長さは、第一溝126、および第三溝128よりも短く設定されている。選択孔130は、洗浄孔125に対し回転軸102を中心とする周方向において広く、径方向において長い。選択孔130は、第一孔123、および第二孔124に対し、周方向において狭く、径方向において第一孔123、および第二孔124の最大幅よりも長い。第一孔123、第二孔124の形状、および選択孔130の形状により、第一孔123、または第二孔124に対する選択孔130の位置によって、選択孔130を通過する水の量を変更することが可能となる。つまり、切替装置120は、複数の流路から水の流れる流路を切り替えるばかりでなく、第一ノズル111、または第二ノズル112に流れる水の流量を調整することができる流量調整装置としても機能する。
【0034】
次に、ノズル装置110の動作を説明する。衛生洗浄装置100が使用されていない状態においては、
図9に示すように、回転板122の選択孔は、固定板121に設けられた第一孔123、第二孔124、洗浄孔125、第一溝126、第二溝127、第三溝128、および第四溝129に重ならない位置に配置され、回転板122が第一孔123、第二孔124、洗浄孔125、第一溝126、第二溝127、第三溝128、および第四溝129を閉塞した状態になっている。
【0035】
次に、制御装置109に設けられたおしり洗浄ボタンが操作されると、ノズル装置110は、待機位置の状態を維持し、回転板122は、
図10に示すように選択孔130が第一孔123に重なる位置にまで回転する。これによりノズル装置110は、待機位置において第一ノズル111の先端部から所定の時間(例えば3秒)噴水し、第一ノズル111の先端部が洗浄される(前洗浄)。
【0036】
次に、前洗浄が終了すると、回転板122は、
図11に示すように選択孔130が洗浄孔125に重なる位置にまで回転する。ノズル装置110は、選択孔130が洗浄孔125に重なるタイミングで待機位置から突出位置に向かって突出を開始する。洗浄ノズル113から噴射された水により第一ノズル111、および第二ノズル112の先端部115が洗浄される。この段階で選択孔130を通過した水の一部は、第一溝126を通り、第二溝127によって絞られ、第一孔123を介して第一ノズル111内に流入する。これにより、第一ノズル111内に残留していた冷水が温水によって押し出される。つまり、ノズル装置110が待機位置から突出位置に向かって動作している間に第一ノズル111内の冷水が温水に押し出される。突出している最中の第一ノズル111の先端は、便座190に着座した人のおしりの下方を通過するが、第一ノズル111内に流入する水は、第二溝127によって絞られ、例えば50cc/分の水量が供給されているため、第一ノズル111の先端から溢れ出るように落下し、人のお尻に水が当たることはない。
【0037】
ノズル装置110が所定の突出位置に達すると、回転板122は、
図12に示すように選択孔130が第一孔123の一部と重なる位置にまで回転する。なお、回転板122の回転位置は、制御装置109により設定される。これにより、第一孔123と選択孔130とが重なっている面積に応じて水が第一ノズル111内に流入し、第一ノズル111の先端から対応した量の水が噴射される。当該水が噴射される段階においては、第一ノズル111内に残存した冷水は温水に入れ替わるため、温水が人のおしりに噴射される。
【0038】
制御装置109に設けられた停止ボタンが操作されると、水の噴射は停止し、ノズル装置110は、待機位置にまで後退する。以上により、ノズル装置110の一連の動作が終了する。
【0039】
また、回転板122が第一孔123、第二孔124、洗浄孔125、第一溝126、第二溝127、第三溝128、および第四溝129を閉塞した状態において(
図9参照)、制御装置109に設けられたビデボタンが操作されると、ノズル装置110は、待機位置の状態を維持し、回転板122は、
図13に示すように選択孔130が第二孔124に重なる位置にまで回転する。これによりノズル装置110は、待機位置において第一ノズル111の先端部から所定の時間(例えば3秒)噴水し、第二ノズル112の先端部115が洗浄される(前洗浄)。
【0040】
次に、前洗浄が終了すると、回転板122は、
図14に示すように選択孔130が第三溝128に重なる位置にまで回転する。ノズル装置110は、選択孔130が第三溝128に重なるタイミングで待機位置から突出位置に向かって突出を開始する。選択孔130を通過した水は、第三溝128を通り、第四溝129によって絞られ、第二孔124を介して第二ノズル112内に流入する。これにより、第二ノズル112内に残留していた冷水は、ノズル装置110が突出する間に温水によって押し出される。突出している最中の第二ノズル112の先端は、便座190に着座した人のおしりの下方を通過するが、第二ノズル112内に流入する水は、第四溝129によって絞られ、例えば50cc/分の水量が供給されているため、第二ノズル112の先端から溢れ出るように落下し、人のお尻に水が当たることはない。
【0041】
ノズル装置110が所定の突出位置に達すると、回転板122は、
図15に示すように選択孔130が第二孔124の一部と重なる位置にまで回転する。これにより、第二孔124と選択孔130とが重なっている面積に応じて水が第二ノズル112内に流入し、第二ノズル112の先端から対応した量の水が噴射される。当該水が噴射される段階においては、第二ノズル112内に残存した冷水は温水に入れ替わるため、温水が人の局部に噴射される。
【0042】
制御装置109に設けられた停止ボタンが操作されると、水の噴射は停止し、ノズル装置110は、待機位置にまで後退する。以上により、ノズル装置110の一連の動作が終了する。
【0043】
以上説明した衛生洗浄装置100では、ノズル装置110が突出する時間を利用して、加熱装置からノズルに残留した冷水をノズルの先端から冷水が噴射しない程度の流量の温水で押し出すため、安定した温度の水を人の局部に向けて噴射することができ、人が制御装置109を操作してから局部の洗浄までの時間を短縮することが可能となる。
【0044】
また、切替装置120の固定板121に溝を新たに形成することにより、目的を達成することができるため、空気ポンプなどの装置をついかする必要が無いため、コストの増加を抑制することができる。
【0045】
また、第一ノズル111、または第二ノズル112から水が噴射している状態において、第一ノズル111、または第二ノズル112は、第一溝126および第二溝127、または第三溝128および第四溝129を介して洗浄ノズル113と連通している。この状態によりエジェクター効果が発生し、洗浄ノズル113の先端から吸い込んだ空気を第一ノズル111内、または第二ノズル112内に混入させることができ、第一ノズル111、または第二ノズル112から気泡混じりの水を噴射させることができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0047】
例えば、ノズル装置110は、第一ノズル111、第二ノズル112、および洗浄ノズル113を備える場合を説明したが、その他のノズルを備えても構わない。この場合、切替装置120の固定板121には、第一孔123、第二孔124、および洗浄孔125以外に孔が存在しても構わない。
【0048】
また、水回路180を例示したが、水回路180には各種センサが設けられてもよい。また、水を加圧し、断続的な水をノズルから噴射させるためのポンプが水回路180内に設けられても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、衛生洗浄装置全般に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
100 衛生洗浄装置
101 本体
102 回転軸
109 制御装置
110 ノズル装置
111 第一ノズル
112 第二ノズル
113 洗浄ノズル
114 分岐管
115 先端部
120 切替装置
121 固定板
122 回転板
123 第一孔
124 第二孔
125 洗浄孔
126 第一溝
127 第二溝
128 第三溝
129 第四溝
130 選択孔
131 モーター
140 加熱装置
141 バッファータンク
170 ノズル駆動装置
180 水回路
181 給水接続口
182 ストレーナ
183 止水電磁弁
184 減圧弁
185 バキュームブレーカ
190 便座
200 便器