(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127218
(43)【公開日】2023-09-13
(54)【発明の名称】合成マイカ粉体
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230906BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230906BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20230906BHJP
C01B 33/42 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/19
A61Q1/12
C01B33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030865
(22)【出願日】2022-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000215800
【氏名又は名称】テイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】亀井 優一
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佳誉
【テーマコード(参考)】
4C083
4G073
【Fターム(参考)】
4C083AB431
4C083AB432
4C083BB23
4C083BB26
4C083CC11
4C083DD17
4C083EE03
4C083EE07
4C083FF01
4G073BA05
4G073BA10
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA80
4G073BD21
4G073CM23
4G073FA10
4G073FB29
4G073FD11
4G073GA11
4G073GB02
4G073UA08
4G073UB31
(57)【要約】
【課題】均一性が高く、かつ、光沢の高い化粧膜を形成することが可能な合成マイカ粉体を提供する。
【解決手段】合成マイカ粉体は、レーザー回折式粒度分布測定による体積基準のメジアン径Dv50が5μm以上20μm以下であり、レーザー回折式粒度分布測定による個数基準のメジアン径Dn50に対する走査型電子顕微鏡で測定された個数基準のメジアン径Dn50の比が0.6以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折式粒度分布測定による体積基準のメジアン径Dv50が5μm以上20μm以下であり、
レーザー回折式粒度分布測定による個数基準のメジアン径Dn50に対する走査型電子顕微鏡で測定された個数基準のメジアン径Dn50の比が0.6以上である、合成マイカ粉体。
【請求項2】
前記走査型電子顕微鏡で測定された個数基準のメジアン径Dn50が4μm以上である、請求項1に記載の合成マイカ粉体。
【請求項3】
走査型電子顕微鏡の任意の視野中において、基板20個を観察した際に、1つの基板の表面に付着した微粉が平均0個以上5個以下であり、
前記基板は、走査型電子顕微鏡で測定された粒子径が、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50の±10%以内の粒子であり、
前記微粉は、走査型電子顕微鏡で測定された粒子径が、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50の1/5以下の粒子である、請求項1または請求項2に記載の合成マイカ粉体。
【請求項4】
スライドガラス上に貼り付けた両面テープ上に合成マイカ粉体を化粧用ブラシで塗布して得られた塗膜の60°の光沢度が5.0以上である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の合成マイカ粉体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の合成マイカ粉体を有機表面処理剤で表面処理した表面処理粉体。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の合成マイカ粉体または請求項5に記載の表面処理粉体を含む、化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には合成マイカ粉体に関し、特定的には、化粧料に用いられる合成マイカ粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のメイクアップ化粧品には、隅々まで手入れの行き届いた肌をより引き立たせるため、艶感と透明感が求められている。
【0003】
例えば、特開2001-294508号公報(特許文献1)には、雲母粉の粒径を小さくしても伸展性、付着性を損なうことなく、適度な艶を発現する化粧料用雲母粉を提供することを目的として、pHと電気伝導度特定の範囲にすることによって雲母粉の分散性を向上させることが記載されている。
【0004】
また、特開2003-81767号公報(特許文献2)には、肌への付着性、肌上での伸び、透明感のある光沢を得ることを目的として、アスペクト比が40以上で、雲母粉体中の微粉含有率が低い化粧用雲母粉体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-294508号公報
【特許文献2】特開2003-81767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化粧品に含まれる合成マイカ粉体は板状の形状であり、アスペクト比の増加に伴って光沢が増し、化粧品に艶感を与えることが知られている。アスペクト比を増加させるためには、合成マイカ粉体の薄片化または大粒子化が効果的である。しかし、薄片化には限界があり、大粒子化すると、肌に塗布した際に形成される化粧膜の均一性に悪影響を及ぼす。
【0007】
特許文献1に記載の小さな粒径の雲母粉では、化粧膜の均一性はよくても、アスペクト比を増加させてより高い光沢を得ることができない。
【0008】
一方、特許文献2に記載の雲母粉体のようにアスペクト比を高めるために粒子径を大きくすると、肌上の化粧膜の均一性が悪くなる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、均一性が高く、かつ、光沢の高い化粧膜を形成することが可能な合成マイカ粉体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、従来のアスペクト比を調整することによって艶感や透明度、付着性を向上させる方法とは全く異なるアプローチを見出した。本発明者は、合成マイカ粉体が、主に、肌への付着性がよく均一な化粧膜を形成するために適した粒子径の合成マイカから構成され、この粒子径の合成マイカ上に付着するより小さい径の微粉が低減された状態にすることで、均一性が高く、かつ、光沢の高い化粧膜を形成することができることを見出した。以上の知見に基づいて、本発明は以下のように構成される。
【0011】
本発明に従った合成マイカ粉体は、レーザー回折式粒度分布測定による体積基準のメジアン径Dv50が5μm以上20μm以下であり、レーザー回折式粒度分布測定による個数基準のメジアン径Dn50に対する走査型電子顕微鏡で測定された個数基準のメジアン径Dn50の比が0.6以上である。
【0012】
合成マイカ粉体は一般的に、互いに独立した比較的大きい粒子(以下、「基板」とも称する。)と、基板上に付着した微粉を含む。レーザー回折式粒度分布測定によるDv50およびDn50には合成マイカ粉体中で独立した基板の粒子径が反映されるが、基板上に付着している微粉の粒子径は反映されない。
【0013】
一方、走査型電子顕微鏡で測定されたDn50には、基板の粒子径と微粉の粒子径の両方が反映される。そこで、走査型電子顕微鏡で測定されたDn50とレーザー回折式粒度分布測定によるDn50との比を取ることで、微粉の量を知ることができる。この比が1以上であれば、走査型電子顕微鏡で測定されたDn50(基板と微粉の粒子径をいずれも反映した粒子径)と、レーザー回折式粒度分布測定によるDn50(基板の粒子径のみが反映された粒子径)が等しい、すなわち、基板上に微粉は付着していないことを示す。
【0014】
本発明の合成マイカ粉体は、この比が0.6以上であり、基板上に付着する微粉が少ない。
【0015】
このようにすることにより、均一性が高く、かつ、光沢の高い化粧膜を形成することが可能な合成マイカ粉体を提供することができる。
【0016】
本発明に従った合成マイカ粉体は、走査型電子顕微鏡で測定されたDn50が4μm以上であることが好ましい。
【0017】
上述の通り、走査型電子顕微鏡で測定されたDn50は、基板と、その上に付着する微粉の両方の粒子径を反映する。走査型電子顕微鏡で測定されたDn50が4μm以上であれば、光沢に悪影響を与える微粉が少ないといえる。
【0018】
本発明に従った合成マイカ粉体は、走査型電子顕微鏡の任意の視野中において、基板20個を観察した際に、1つの基板の表面に付着した微粉が平均0個以上5個以下であることが好ましい。ここで、基板とは、走査型電子顕微鏡で測定された粒子径が、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50の±10%以内である粒子を表し、微粉とは、走査型電子顕微鏡で測定された粒子径が、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50の1/5以下である粒子を表す。
【0019】
本発明に従った合成マイカ粉体は、スライドガラス上に貼り付けた両面テープ上に合成マイカ粉体を化粧用ブラシで塗布して得られた塗膜の60°の光沢度が5.0以上であることが好ましい。
【0020】
このようにすることにより、合成マイカ粉体を化粧料に配合した場合に、より高い光沢度の化粧膜を形成することが可能である。
【0021】
本発明に従った表面処理粉体は、上記のいずれかの合成マイカ粉体を、脂肪酸、金属石鹸、アルキルシラン、シリコーン、第四級アンモニウム塩などの有機表面処理剤で表面処理することで得られる。このようにすることで、合成マイカ粉体に疎水性を付与して化粧持ちを向上させたり、肌への塗布時の感触を更に高めたりすることができる。
【0022】
本発明に従った化粧料は、上記のいずれかの合成マイカ粉体または上記の表面処理粉体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例1の合成マイカ粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】比較例3の合成マイカ粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3】実施例1の合成マイカ粉体を塗布した肌の光学顕微鏡写真である。
【
図4】比較例3の合成マイカ粉体を塗布した肌の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の合成マイカ粉体と化粧料について具体例を交えながら詳細に説明する。なお、本発明は以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0025】
1.合成マイカ粉体の製造
本発明の合成マイカ粉体は、1つの実施形態として以下の方法で製造される。
【0026】
<合成マイカ原料粉体の粉砕薄片化>
合成マイカ原料粉体を、粉砕機を使用して目的の厚みになるまで粉砕薄片化する。粉砕機としては公知の各種の粉砕機を使用することができる。
【0027】
ここで使用する合成マイカ原料粉体として、公知のものを適宜用いることができるが、入手容易性や品質安定性などの観点から、合成フッ素金雲母(KMg3AlSi3O10F2)を使用することが好ましい。また、合成マイカ原料粉体として、溶融法、水熱法、固相反応法、インターカレーション法など、いずれの製造方法で得られるものも使用できるが、適切な粒子径の合成マイカ原料粉体を得やすいことから、溶融法で得られる合成マイカ原料粉体を使用することが好ましい。
【0028】
<静置分級1(粗大粒子の除去)>
粉砕薄片化後の粉体を水に分散させ、pHを9以上に調整する。十分に撹拌したのち静置することで粗大粒子を沈降させ、上澄み液を回収することで粗大粒子を除去する。
【0029】
<静置分級2(微粉の除去)>
回収後の上澄み液を十分に撹拌したのち静置することにより、所望の粒子径の粒子を沈降させる。微粉が分散した上澄み液を除去し、沈降した粒子を回収する。回収物に対して静置分級を繰り返すことで、微粉が十分に除去された、所望のメジアン径の薄片化粉体を得る。メジアン径の測定方法は後述する。
【0030】
<沈降分離(表面微粉の除去)>
静置分級後の薄片化粉体を水に分散させ、分散液を40~70℃に加温した後、pHを9以上に調整する。この分散液を、攪拌レイノルズ数が20以下の層流となるように撹拌することで、表面微粉を分離しながら、目的とする粒子を沈降させる。
【0031】
なお、撹拌レイノルズ数Reは、分散液の密度ρ(kg/m3)、撹拌翼の回転数n(1/s)、撹拌翼の直径d(m)、分散液の粘度μ(Pa・s)から以下の式によって算出される。
Re=ρnd2/μ
【0032】
表面微粉が分散した上澄み液を除去し、沈降物を回収することで、表面微粉が取り除かれた本発明の合成マイカ粉体が得られる。なお、沈降物を回収した後に、必要に応じて洗浄、乾燥、焼成、ふるい掛けを行ってもよい。
【0033】
2.メジアン径の測定方法
本明細書において、メジアン径は以下のように測定される。
【0034】
<レーザー回折式粒度分布測定によるメジアン径Dv50およびDn50>
レーザー回折式粒度分布測定装置(一例として、マイクロトラック・ベル社製マイクロトラックMT-3000)にて、溶媒に水を用い、実施例および比較例の粉体を1分間超音波分散させた後、粒度分布を測定する。得られた粒度分布(体積基準および個数基準)から、体積基準のメジアン径(50%積算径)Dv50および個数基準のメジアン径(50%積算径)Dn50を求める。
【0035】
<走査型電子顕微鏡で測定されたメジアン径Dn50>
走査型電子顕微鏡(一例として、株式会社日立ハイテクノロジーズ製S-4800)を用いて任意の視野での電子顕微鏡写真を撮影する。倍率は視野中の最大粒子サイズに合わせて1,000~3,000倍に調整する。撮影された個々の粒子(200個以上)を画像解析式粒度分布測定装置で画像処理し、粒度分布を測定する。得られた粒度分布(個数基準)から、個数基準のメジアン径(50%積算径)Dn50を求める。
【0036】
3.合成マイカ粉体の特性
上述の製造方法で得られた合成マイカ粉体は、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50が5μm以上20μm以下であり、好ましくは、5μm以上16μm以下である。また、合成マイカ粉体は、レーザー回折式粒度分布測定によるDn50に対する走査型電子顕微鏡で測定されたDn50の比が0.6以上である。
【0037】
このようにすることにより、均一性が高く、かつ、光沢の高い化粧膜を形成することが可能な合成マイカ粉体を提供することができる。
【0038】
また、合成マイカ粉体は、走査型電子顕微鏡で測定されたDn50が4μm以上であることが好ましい。
【0039】
また、合成マイカ粉体は、走査型電子顕微鏡の任意の視野中において、基板20個を観察した際に、1つの基板の表面に付着した微粉が平均0個以上5個以下であることが好ましい。ここで、基板とは、走査型電子顕微鏡で測定された粒子径が、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50の±10%以内である粒子を表し、微粉とは、走査型電子顕微鏡で測定された粒子径が、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50の1/5以下である粒子を表す。
【0040】
本発明に従った表面処理粉体は、上記のいずれかの合成マイカ粉体を、脂肪酸、金属石鹸、アルキルシラン、シリコーン、第四級アンモニウム塩などの有機表面処理剤で表面処理することで得られる。このようにすることで、合成マイカ粉体に疎水性を付与して化粧持ちを向上させたり、肌への塗布時の感触を更に高めたりすることができる。
【0041】
本発明に従った化粧料は、上記のいずれかの合成マイカ粉体または表面処理粉体を含む。
【実施例0042】
本発明に係る合成マイカ粉体の具体的な製造例および試験結果を示して、より詳細に説明する。
【0043】
<実施例1>
溶融法で得られた合成マイカ原料粉体(合成フッ素金雲母)を、粉砕機を使用して粉砕薄片化した。
【0044】
<静置分級1(粗大粒子の除去)>
粉砕薄片化された合成マイカ原料粉体について、固形分5~30%になるように水に分散させ、24%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。十分に撹拌したのち静置することで粗大粒子を沈降させ、上澄み液を回収することで粗大粒子を除去した。回収後の上澄み液を十分に撹拌したのち静置することにより、所望の粒子径の粒子を沈降させた。微粉が分散した上澄み液を除去し、沈降した粒子を回収した。回収物に対して静置分級を繰り返し(pH10)、微粉を十分除去した、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50が10.4μmの薄片化粉体を得た。更に、得られた薄片化粉体を固形分5%になるように水に再分散させ、分散液を40℃に加温した後、24%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。そして同分散液について攪拌レイノルズ数2の層流下で沈降分離を行うことで表面微粉を取り除いたのち、沈殿物を回収、乾燥して、実施例1の合成マイカ粉体を得た。この合成マイカ粉体の、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50は10.3μmであった。
【0045】
<実施例2>
実施例1と同様に粉砕薄片化された合成マイカ原料粉体について、実施例1と同様に静置分級を繰り返し(pH10)、微粉を十分除去した、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50が11.7μmの薄片化粉体を得た。更に、得られた薄片化粉体を固形分5%になるように水に再分散させ、分散液を60℃に加温した後、24%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。そして同分散液について攪拌レイノルズ数2の層流下で沈降分離を行うことで表面微粉を取り除いたのち、沈殿物を回収、乾燥して、実施例2の合成マイカ粉体を得た。この合成マイカ粉体の、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50は11.5μmであった。
【0046】
<実施例3>
実施例1と同様に粉砕薄片化された合成マイカ原料粉体について、実施例1と同様に静置分級を繰り返し(pH10)、微粉を十分除去した、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50が13.8μmの薄片化粉体を得た。更に、得られた薄片化粉体を固形分5%になるように水に再分散させ、分散液を40℃に加温した後、24%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。そして同分散液について攪拌レイノルズ数5の層流下で沈降分離を行うことで表面微粉を取り除いたのち、沈殿物を回収、乾燥して、実施例3の合成マイカ粉体を得た。この合成マイカ粉体の、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50は13.5μmであった。
【0047】
<実施例4>
実施例1と同様に粉砕薄片化された合成マイカ原料粉体について、実施例1と同様に静置分級を繰り返し(pH10)、微粉を十分除去した、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50が15.6μmの薄片化粉体を得た。更に、得られた薄片化粉体を固形分5%になるように水に再分散させ、分散液を60℃に加温した後、24%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。そして同分散液について攪拌レイノルズ数5の層流下で沈降分離を行うことで表面微粉を取り除いたのち、沈殿物を回収、乾燥して、実施例4の合成マイカ粉体を得た。この合成マイカ粉体の、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50は15.3μmであった。
【0048】
<比較例1>
実施例1と同様に粉砕薄片化された合成マイカ原料粉体について、静置分級および洗浄を行い、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50が15.0μmの、比較例1の合成マイカ粉体を得た。
【0049】
<比較例2>
実施例1と同様に粉砕薄片化された合成マイカ原料粉体について、実施例1と同様に静置分級を繰り返し、微粉末を十分除去した、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50が7.6μmの、比較例2の合成マイカ粉体を得た。
【0050】
<比較例3>
実施例1と同様に粉砕薄片化された合成マイカ原料粉体について、実施例1と同様に静置分級を繰り返し、微粉末を十分除去した、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50が13.8μmの、比較例3の合成マイカ粉体を得た。
【0051】
実施例1~4と比較例1~3の合成マイカ粉体について、上述の方法で、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50およびDn50と走査型電子顕微鏡で測定されたDn50を求めた。レーザー回折式粒度分布測定装置としてはマイクロトラック・ベル社製マイクロトラックMT-3000を用いた。走査型電子顕微鏡としては株式会社日立ハイテクノロジーズ製S-4800を用いた。結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
表1に示されているように、実施例1~4の合成マイカ粉体では、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50(A)が5~20μmであり、かつ、レーザー回折式粒度分布測定によるDn50(B)に対する走査型電子顕微鏡で測定されたDn50(C)の比(C)/(B)が0.6以上であった。このことから、実施例の合成マイカ粉体は、基板上に付着している微粉が少ないことがわかる。
【0054】
また、実施例の合成マイカ粉体は、走査型電子顕微鏡で測定されたDn50(C)が4μmよりも大きく、より具体的には、5μmよりも大きかった。一方、比較例の合成マイカ粉体は、いずれも、走査型電子顕微鏡で測定されたDn50(C)が4μmよりも小さかった。このことからも、実施例の合成マイカ粉体では微粉が少なく、一方、比較例の合成マイカ粉体では微粉が多いことがわかる。
【0055】
次に、実施例1と比較例3の合成マイカ粉体の走査型電子顕微鏡写真を比較した。
図1,2に示すように、基板上に付着している微粉は、実施例1では極めて少なく、比較例3では非常に多い。
【0056】
実施例と比較例の合成マイカ粉体について、基板上の微粉の数を次のように数えて比較した。走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製S-4800)を用いて任意の視野での電子顕微鏡写真を撮影した。撮影された個々の粒子を、画像解析式粒度分布装置で画像処理して粒子径を算出し、この粒子径が、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50の±10%以内である粒子を基板とし、レーザー回折式粒度分布測定によるDv50の1/5以下である粒子を微粉とした。任意の基板を20個選び、1つの基板の表面に付着した微粉の個数を数え、20個の基板の平均を求めた。結果を表2に示す。
子を表す。
【0057】
【0058】
表2に示すように、実施例の合成マイカ粉体では、基板上に付着している微粉の数が少ないことがわかった。
【0059】
実施例と比較例の合成マイカ粉体の光沢度と曇り度(ヘーズ)を測定した。スライドガラス上に両面テープを貼り付け、その上に実施例および比較例の合成マイカ粉体を化粧用ブラシにて均一に塗布し、日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢計PG-2Mにて、20°、60°、85°の光沢を測定した。また、曇り度(ヘーズ)は日本電色工業株式会社製曇り度計NDH 4000を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0060】
【0061】
実施例および比較例の合成マイカ粉体を、塗布量が2mg/cm
2となるように肌に塗布し、その際の感触評価(官能試験)の結果を表4に示す。また、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-1000)にて観察した実施例1の合成マイカ粉体の塗布膜を
図3に、比較例3の合成マイカ粉体の塗布膜を
図4に示す。
【0062】
【0063】
表3,4に示されているように、実施例1~4の合成マイカ粉体では、光沢度、透明感、艶感、化粧膜の均一性を両立させることができた。特に、実施例1~3では、光沢度、透明感、艶感、均一性のいずれについても高い評価が得られた。一方、比較例1~3の合成マイカ粉体は、いずれの項目でも実施例より低い評価であるか、いずれか1つが非常に悪い評価であった。例えば、比較例3は、光沢度(60°)、透明感、艶感は比較的高いが、均一性が非常に低い。
【0064】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。